説明

増加した量のグルコサミノグリカンを合成する植物

本発明は、増加量のグルコサミノグリカンを合成する植物細胞及び植物、ならびに、そのような植物を調製するための方法、ならびに、また、これらの植物細胞又は植物を用いてグルコサミノグリカンを調製するための方法に関する。ここで、本発明の植物細胞又は遺伝子改変植物は、野生型の植物細胞又は野生型の植物と比較し、グルコサミノグリカン合成酵素活性及び加えて増加したグルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ活性及び増加したUDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼ活性を有する。本発明は、さらに、増加したグルコサミノグリカン合成を有する植物細胞を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増加した量のグルコサミノグリカンを合成する植物細胞及び植物、ならびに、そのような植物を調製するための方法、ならびに、また、これらの植物細胞又は植物を用いてグルコサミノグリカンを調製するための方法に関する。ここで、本発明の植物細胞又は遺伝子改変植物は、野生型の植物細胞又は野生型の植物と比較し、グルコサミノグリカン合成酵素活性及び加えて増加したグルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ活性及び増加したUDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼ活性を有する。本発明は、さらに、増加したグルコサミノグリカン合成を有する植物細胞を含む組成物に関する。
【0002】
プロテオグリカン、糖タンパク質のクラスは、とりわけ、軟骨の必須成分であり、コアタンパク質に付着し、繰り返し二糖単位で構成されるグルコサミノグリカンを有する。それらの部分のための繰り返し二糖単位は、特徴的な炭水化物結合配列を介して、コアタンパク質に共有結合的に付着する。二糖単位の組成に応じて、区別が、とりわけ、グルコサミノグリカンへパラン/ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、及びコンドロイチン/デルマタン硫酸の間でなされ、その二糖単位は各々、グルコサミン又はグルコサミン誘導体である分子を含む。ヒアルロナンは、さらなるグルコサミノグリカンであり、やはり、その二糖単位の成分の1つとしてグルコサミン(N−アセチル−グルコサミン)の誘導体を有するが、しかし、本来は、タンパク質に付着していない。ヒアルロナンを除き、言及したグルコサミノグリカンは自然で硫酸化ポリマーである。これらの物質において、硫酸基を二糖単位の種々の原子又は置換基に導入し、言及した物質が均一なポリマーではないが、しかし、各一般用語の下でまとめられるポリマーのグループであるようになっている。問題になっているポリマー基の個々の分子は、硫酸化の程度及び硫酸基を有するモノマーの位置の両方において異なりうる。
【0003】
ヒアルロナンは、自然発生的な非分岐、直鎖ムコ多糖類(グルコサミノグリカン)であり、グルクロン酸(GlcA)とN−アセチル−グルコサミン(GlcNAc)の交互分子で構築される。ヒアルロナンの基本的な構成要素は、二糖グルクロン酸−ベータ−1,3−N−アセチル−グルコサミンからなる。ヒアルロナンにおいて、これらの繰り返し単位は、互いに、ベータ−1,4結合を介して付着する。薬学において、ヒアルロン酸という用語が頻繁に使用される。ヒアルロナンは、大半の場合において、遊離酸としてではなくポリアニオンとして存在するため、以下に、ヒアルロナンという用語が好ましく使用されるが、しかし、各々の用語は両方の分子形態を包含すると理解すべきである。
【0004】
ヒアルロナンは、異常な物理的、化学的特性、例えば、高分子電解質の特性、粘弾性特性、水を結合する高い能力、ゲル形成の特性を有し、それらは、ヒアルロナンのさらなる特性に加えて、Lapcik et al.(1998, Chemical Reviews 98(8), 2663−2684)による総説文献に記載される。ヒアルロナンは、脊椎動物の細胞外結合組織及び体液の成分である。ヒトでは、ヒアルロン酸は、全ての体細胞、特に間葉細胞の細胞膜により合成され、身体において一様に存在し、結合組織、細胞外マトリクス、臍帯、滑液、軟骨組織、皮膚、及び眼の硝子体において特に高濃度である(Bernhard Gebauer, 1998, Inaugural-Dissertation, Virchow-Klinikum Medizinische Fakultat Charite der Humboldt Universitat zu Berlin; Fraser et al., 1997, Journal of Internal Medicine 242, 27-33)。最近、ヒアルロナンは、非脊椎動物の生物体(軟体動物)でも見出された(Volpi and Maccari, 2003, Biochimie 85, 619-625)。さらに、一部のヒト病原性グラム陽性細菌(ストレプトコッカス(Streptococcus)グループA及びC)及びグラム陰性細菌(パスツレラ(Pasteurella))は、これらの細菌を、それらの宿主の免疫系による攻撃に対して防御するエキソ多糖類としてヒアルロナンを合成する。なぜなら、ヒアルロナンは非免疫原性物質であるからである。クロレラ属の単細胞緑藻類に感染するウイルスは、その一部がゾウリムシ種において内部共生体として存在し、単細胞緑藻類に、ウイルスによる感染後にヒアルロナンを合成する能力を与える(Graves et al., 1999, Virology 257, 15-23)。しかし、ヒアルロナンを合成する能力は、問題になっている藻類を特徴付ける特色ではない。藻類がヒアルロナンを合成する能力は、ウイルスでの感染により媒介され、そのゲノムはヒアルロナン合成酵素をコードする配列を有する(DeAngelis, 1997, Science 278, 1800-1803)。
【0005】
ヒアルロナン合成の触媒作用は、単一の膜組込み酵素又は膜結合酵素である、ヒアルロナン合成酵素による影響を受ける。合成されたヒアルロナン分子の細胞質膜を越えた細胞周辺の培地中への転移の機構は、まだ完全には解明されていない。より初期の仮説では、細胞膜を越えた輸送は、ヒアルロナン合成酵素自体の影響を受けることが想定された。しかし、より最近の結果では、ヒアルロナン分子の細胞質膜を越えた輸送が、この作用に関与する輸送タンパク質を介したエネルギー依存的輸送により起こることが示されている。このように、能動輸送タンパク質の合成が阻害されたストレプトコッカス株が突然変異により生成された。これらの株は、対応する野生型細菌株よりも少ないヒアルロナンを合成した(Ouskova et al., 2004, Glycobiology 14(10), 931-938)。ヒト繊維芽細胞において、公知の輸送タンパク質を特異的に阻害する薬剤を用いて、産生されるヒアルロナンの量及びヒアルロナン合成酵素の活性の両方を低下させることが可能である(Prehm and Schumacher, 2004, Biochemical Pharmacology 68, 1401-1410)。仮にある場合、ヒアルロナンを輸送できる輸送タンパク質がどのくらいの量で植物中に存在するかは公知ではない。
【0006】
ヒアルロナンの異常な特性によって、種々の分野、例えば、薬学、化粧品産業における適用のため、食品及び飼料の産生において、技術的適用(例えば、潤滑剤)などにおいて豊富な可能性を提供する。ヒアルロナンが現在使用されている最も重要な適用は、医薬及び化粧品の分野である(例えば、Lapcik et al., 1998, Chemical Reviews 98(8), 2663-2684, Goa and Benfield, 1994, Drugs 47(3), 536-566を参照のこと)。医学分野において、ヒアルロナン含有産物は、現在、関節症の関節内処置のため、及び、眼の手術のために使用される眼薬中で使用される。ヒアルロナンは、また、競走馬での関節障害の処置のために使用される。また、ヒアルロナンは一部の鼻科薬の成分であり、例えば、点眼薬及び鼻薬の形態で、乾燥した粘膜を湿らせるために役立つ。注射用のヒアルロナン含有溶液を、鎮痛剤及び抗リウマチ剤として使用する。ヒアルロナン又は誘導体化ヒアルロナンを含むパッチを創傷治癒に用いる。皮膚科薬として、ヒアルロナン含有ゲルインプラントを、形成外科において皮膚変形を矯正するために使用する。薬学的用途のために、高分子量を有するヒアルロナンの使用が好まれる。化粧品医学において、ヒアルロナン調製物は最も適した皮膚充填物質の1つである。ヒアルロナンを注射することにより、限られた時間期間にわたり、しわを伸ばし、唇の容積を増加することが可能である。化粧品産物中で、特に皮膚クリーム及びローション中で、ヒアルロナンは、その高い水結合能力を理由に、保湿剤として頻繁に使用される。
【0007】
さらに、ヒアルロナン含有調製物は、いわゆる栄養補給食品(食品添加物)として販売され、関節症の予防及び軽減のために動物(例えば、イヌ、ウマ)でも使用できる。
【0008】
商業目的のために使用されるヒアルロナンは、現在、動物組織(ケイトウ)から単離される、又は、細菌培養物を使用して発酵性に調製される。US 4,141,973には、ケイトウから、又は、代わりに臍帯からヒアルロナンを単離するための方法が記載されている。ヒアルロナンに加えて、動物組織(例えば、ケイトウ、臍帯)は、また、ヒアルロナンに関連するさらなるムコ多糖類、例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラタン硫酸、及びヘパリンを含む。さらに、動物生物体は、ヒアルロナンに特異的に結合し、生物体における最も異なる機能、例えば、肝臓でのヒアルロナンの分解、細胞移動のためのリード構造としてのヒアルロナンの機能、エンドサイトーシスの調節、ヒアルロナンの細胞表面への固定、又はヒアルロナンネットワークの形成に必要とされるタンパク質(ヒアルアドヘリン)を含む(Turley, 1991, Adv Drug Delivery Rev 7, 257 ff.; Laurent and Fraser, 1992, FASEB J. 6, 183 ff.; Stamenkovic and Aruffo, 1993, Methods Enzymol. 245, 195 ff; Knudson and Knudson, 1993, FASEB 7, 1233 ff.)。
【0009】
ヒアルロナンの細菌産生のために使用されるストレプトコッカス株は、もっぱら、ヒトに病原性を持つ細菌である。培養中でも、これらの細菌は(発熱性)外毒素及び溶血素(ストレプトリジン、特にアルファ−及びベータ−溶血素)を産生し(Kilian, M.: Streptococcus and Enterococcus. In: Medical Microbiology. Greenwood, D.; Slack, RCA; Peutherer, J. F. (Eds.). Chapter 16. Churchill Livingstone, Edinburgh, UK: pp.174-188, 2002, ISBN 0443070776)、それらは培地中に放出される。これによって、ストレプトコッカス株を用いて調製されたヒアルロナンの精製及び単離がより困難になる。特に、薬学的用途では、調製物中での外毒素及び溶血素の存在が問題である。
US 4,801,539には、突然変異細菌株(ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus))の発酵によるヒアルロナンの調製が記載されている。使用される突然変異細菌株は、ベータ−溶血素をもはや合成しない。達成される収量は、培養物1リットル当たり3.6gのヒアルロナンであった。
EP 0694616には、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)又はストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)を培養するための方法が記載されており、ここで、用いられる培養条件下で、ストレプトリジンは合成されず、しかし、増加量のヒアルロナンが合成される。達成される収量は、培養物1リットル当たり3.5gのヒアルロナンであった。
培養中に、ストレプトコッカス株は培地中に酵素ヒアルロニダーゼを放出し、その結果として、この産生系でも、分子量が精製中に低下する。ヒアルロニダーゼ陰性ストレプトコッカス株の使用又は培養中にヒアルロニダーゼの産生が阻害されるヒアルロナンの産生のための方法が、US 4,782,046に記載されている。達成される収量は、培養物1リットル当たり2.5gのヒアルロナンまでであり、達成される最高平均分子量は3.8×10Daであり、分子量分布は2.4×10〜4.0×10であった。
US 20030175902及びWO 03 054163には、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)におけるストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)からのヒアルロナン合成酵素の異種発現を用いたヒアルロナンの調製が記載されている。十分量のヒアルロナンの産生を達成するために、ヒアルロナン合成酵素の異種発現に加えて、バチルス細胞中でのUDPグルコースデヒドロゲナーゼの同時発現も必要とされる。US 20030175902及びWO 03 054163には、バチルス・スブチリスを用いた産生において得られる絶対量のヒアルロナンについて述べられていない。達成される最高平均分子量は約4.2×10である。しかし、この平均分子量は組換えバチルス株についてだけ達成され、ここでストレプトコッカス・エクイシミリスからのヒアルロナン合成酵素遺伝子をコードする遺伝子及びバチルス・スブチリスからのUDPグルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、amyQプロモーターの制御下で、バチルス・スブチリスのゲノム中に組込まれ、ここで、同時に、バチルス・スブチリスの内因性cxpY遺伝子(チトクロムP450オキシダーゼをコードする)が不活化された。Chien and Lee(2007, Biotechnol. Prog. Online publication, ASAP Article 10.1021/bp070036w, S8756-7938(07)00036-7)は、種々の組換えバチルス・スブチリス株について記載している。1つの株は、ヒアルロナン合成酵素をコードする核酸配列及びUDPグルコースデヒドロゲナーゼをコードする核酸配列で形質転換されており、最大1.14g/lのヒアルロナンを合成した。先ほど言及した核酸配列に加えて、ビトレオシラ(Vitreoscilla)ヘモグロビンをコードする核酸配列で形質転換した株は、1.8g/lのヒアルロナンを合成した。
【0010】
WO 06 032538には、ヒアルロナン合成酵素をコードする核酸分子で形質転換されたトランスジェニック植物について記載されている。問題になっている植物中でのヒアルロナンの合成は、明確に実証された。
【0011】
WO 05 012529には、クロレラ感染ウイルスからのヒアルロナン合成酵素をコードする核酸分子を使用して形質転換されたトランスジェニックタバコ植物の産生が記載されている。WO 05 012529において、一方では、クロレラ・ウイルス株CVH1、そして、他方では、タバコ植物を形質転換するためのクロレラ・ウイルス株CVKA1のヒアルロナン合成酵素をコードする核酸配列が使用された。ヒアルロナンの合成は、クロレラ・ウイルス株CVKA1から単離されたヒアルロナン合成酵素をコードする核酸で形質転換された植物についてだけ実証できた。クロレラ・ウイルス株CVH1から単離されたヒアルロナン合成酵素をコードする核酸配列で形質転換されたタバコ植物について、対応するトランスジェニック植物においてヒアルロナン合成を検出することは可能ではなかった。WO 05 012529におけるヒアルロナン産生トランスジェニックタバコ植物だけにより合成されたヒアルロナンの量が、測定された容積1ml当たり約4.2μgのヒアルロナンであると述べられており、問題になっている実験を行うための説明を考慮に入れると、植物材料の新鮮重量1グラム当たりで産生される最大12μgのヒアルロナンの量にほぼ相当する。
【0012】
WO 2007 039314には、ヒアルロナン合成酵素の活性、及び、加えて、増加したグルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)活性を有するトランスジェニック植物が記載されている。これらの植物は、ヒアルロナン合成酵素の活性だけを有する植物と比較し、増加量のヒアルロナンを合成する。これらのタバコ植物により合成される最高量のヒアルロナンは、測定のために使用される植物材料の新鮮重量1グラム当たり約0.03%である(WO 2007 039316における図5を参照のこと)。
【0013】
WO 2007 039316には、ヒアルロナン合成酵素の活性、ならびに、加えて、野生型植物と比較し、増加したグルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)活性、及び、増加したUDPグルコースデヒドロゲナーゼ(UDP−Glc−DH)活性を有するトランスジェニック植物が記載されている。これらの植物は、ヒアルロナン合成酵素の活性及び同時にGFATの活性を有するタンパク質の活性を有する植物と比較し、増加量のヒアルロナンを合成する。これらのタバコ植物により合成される最高量のヒアルロナンは、測定のために使用される植物材料の新鮮重量1グラム当たり約0.2%である(WO 2007 039316における図6を参照のこと)。
【0014】
さらに、WO 2007 039316には、植物細胞において発現されて、植物細胞においてヒアルロナンの合成量をさらに増加できるタンパク質のリストが含まれている。WO 2007 039316において提示されるタンパク質は、種々の生物において、UDP−GlcNAcの合成に関与する酵素の無作為なリストである。WO 2007 039316に列挙されるタンパク質は種々の酵素機能を有する。WO 2007 039316は、列挙される酵素が、トランスジェニック植物において発現された場合に、実際にヒアルロナン含量を増加させうるか否か、及び、それがいずれの酵素であるのかの示唆を与えていない。
【0015】
コンドロイチン/デルマタン([ベータ−1,4)]−[グルクロン酸−ベータ−1,4−N−アセチル−ガラクトサミン])の二糖鎖の合成は、コンドロイチン合成酵素により触媒され、UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)及びUDP−N−アセチル−ガラクトサミン(UDP−GalNAc)、即ち、UDP−N−アセチル−グルコサミン(UDP−GlcNAc)のエピマーから開始される(Kitagawa et al., 2001, J Biol Chem 276(42), 38721-38726)。エピメラーゼにより、コンドロイチンのグルクロン酸分子をイズロン酸に変換できる。グルクロン酸分子の10%超がイズロン酸として存在する場合、ポリマーをデルマタンと呼ぶ。コンドロイチン又はデルマタンの二糖鎖の種々の位置での硫酸基の導入は、次に、他の酵素により触媒され、コンドロイチン/デルマタン硫酸の形成をもたらす。ここで、硫酸化の程度は分子ごとに異なりうる。
【0016】
しばらくの間、コンドロイチン硫酸は、変形性関節症の処置のための潜在的な活性化合物として検討されてきた(Clegg et al., 2006, The New England Journal of Medicine 354(8), 795-808)。
【0017】
ヘパリン/ヘパラン(ヘパロサン)([アルファ−1,4]−[グルクロン酸−ベータ−1,4−グルコサミン]n又は[アルファ−1,4]−[イズロン酸−アルファ−1,4−グルコサミン]n)の二糖鎖の合成は、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素により触媒され、UDP−GlcA及びUDP−GlcNAcから開始される(DeAngelis and White, 2004, J. Bacteriology 186(24), 8529-8532)。ヘパロサンのグルクロン酸分子をエピメラーゼによりイズロン酸に変換できる。ヘパロサンの二糖鎖の種々の位置での硫酸基の導入は、次に、他の酵素により触媒され、ヘパリン又はヘパラン硫酸の形成をもたらす。ヘパリン硫酸は、ヘパラン硫酸よりも大幅に高い硫酸基による置換を有する。ヘパリン硫酸は約90%のイズロン酸分子を有するが、ヘパラン硫酸において、グルクロン酸分子が優勢である(Gallagher et al., 1992, Int. J. Biochem 24, 553-560)。コンドロイチン/デルマタン硫酸の場合のように、ヘパリン/ヘパラン硫酸の場合においても、硫酸化の程度は分子ごとに異なりうる。
ヘパリン硫酸を、とりわけ、抗凝固剤として、例えば、血栓症の予防及び処置のために使用する。
【0018】
現在、コンドロイチン/デルマタン硫酸及びヘパリン/ヘパラン硫酸は、動物組織からの単離により調製される。コンドロイチン硫酸は主にウシ軟骨又はサメ軟骨から単離され、ヘパリン/ヘパラン硫酸はブタ腸又はウシ肺から単離される。コンドロイチン/デルマタン硫酸及びヘパリン/ヘパラン硫酸の二糖鎖は均一な硫酸化パターンを有さないため、均一な特定の産物を得ることは困難である。したがって、産物は常に種々の硫酸化の程度を有する分子の混合物である。既に記載した通り、グルコサミノグリカン、例えば、コンドロイチン硫酸又はヘパリン/ヘパラン硫酸が、現在、動物組織から単離される。所望の物質に加えて、これらの組織は他のグルコサミノグリカンも含む。個々のグルコサミノグリカンの分離は、仮に可能な場合でも、困難で費用がかかる。さらに、病原性微生物による、及び/又は、他の物質、例えば、BSE又は鳥インフルエンザ病原体による動物組織の潜在的な汚染は、ヒトにおいて疾患を招きうるが、動物組織から単離されたグルコサミノグリカンを使用した場合に問題を引き起こす。患者において、動物タンパク質により汚染された医薬調製物の使用は、特に、患者が動物タンパク質にアレルギーを持つ場合、身体の不要な免疫学的反応をもたらしうる(ヒアルロナン調製物については、例えば、US 4,141,973を参照のこと)。
また、動物原材料から調製された物質は、例えば、完全菜食主義者などの一部の生活方法において、又は、コーシャー食品の調製において許容できない。
動物組織からのグルコサミノグリカンの単離におけるさらなる問題は、動物組織がグルコサミノグリカン分解酵素も含むため、頻繁にグルコサミノグリカンの分子量が精製中に低下する効果にある。
動物組織から満足できる質及び純度で得ることのできるグルコサミノグリカンの量(収量)は低く(例えば、ケイトウからのヒアルロナン:0.079% w/w、EP 0144019、US 4,782,046)、それは多量の動物組織が加工されなければならないことを意味する。
細菌株の発酵によるグルコサミノグリカンの産生は高コストと関連する。なぜなら、細菌を、費用がかかる制御培養条件下で密封された無菌容器内で発酵させなければならないからである(例えば、ヒアルロナンについて、US 4,897,349を参照のこと)。さらに、細菌株の発酵により産生できるグルコサミノグリカンの量は、各場合において存在する産生設備により制限される。ここで、発酵槽が、物理法則の結果、過剰に大きな培養容積で構築できないことも考慮に入れなければならない。ここで、外から供給された物質の均質な混合について特に言及してよく(例えば、細菌のための必須栄養源、pHを調節するための試薬、酸素)、効率的な産生に必要な培地は、大きな発酵槽中で、仮にある場合でも、大きな技術的出費を伴ってだけ確実にできる。
【0019】
植物は、グルコサミノグリカン、例えば、ヒアルロナン、ヘパラン/ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、又はコンドロイチン/デルマタン硫酸を自然で産生しない。自然発生的な植物自体は、それらのゲノム中に、グルコサミノグリカンの合成を触媒するタンパク質をコードする任意の核酸を有さないが、多数の植物炭水化物が記載され、特性付けされてきたが、今までに、非感染自然植物細胞において言及したグルコサミノグリカンのいずれも検出することが可能ではない(Graves et al., 1999, Virology 257, 15-23)。
【0020】
WO 98 35047(US 6,444,878)には、植物細胞におけるGlcNAcの合成のための代謝経路が記載されており、そこでは、グルコサミンが、複数の連続的な酵素触媒反応工程を経て、代謝産物GlcNAc、N−アセチル−グルコサミン6−リン酸、及びN−アセチル−グルコサミン1−リン酸の形成を伴い、UDP−GlcNAcに変換される。高濃度で、グルコサミン6−リン酸は植物細胞に有毒である(WO 98 35047)。
植物について記載される代わりの代謝経路は、フルクトース6−リン酸及びグルタミンの反応を含み、グルコサミン6−リン酸を与え、それは続いて多数の連続的な酵素触媒反応工程を経て、代謝産物グルコサミン1−リン酸及びN−アセチル−グルコサミン1−リン酸の形成を伴い、UDP−GlcNAcに変換される(Mayer et al., 1968, Plant Physiol. 43, 1097-1107)。
【0021】
今日まで、植物が増加量のグルコサミノグリカンを合成するために、植物中でのUDP−GlcNAcの合成のための代謝経路においてどのタンパク質活性を修飾しなければならないかは、依然として明らかではない。
【0022】
したがって、植物において効率的な量のグルコサミノグリカンを調製するための代わりの手段及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0023】
この目的は、特許請求の範囲において言及する実施態様により達成される。
【0024】
驚くべきことに、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする核酸分子を含み、及び、加えて、グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子、及び単機能性のUDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼの活性を含むタンパク質をコードする外来核酸分子を含む遺伝子改変植物細胞又は遺伝子改変植物が、グルコサミノグリカン合成酵素の活性(だけ)を有する植物細胞又は植物よりも有意に高い量のグルコサミノグリカンを産生することが見出されている。
【0025】
このように、本発明は、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子を含む遺伝子改変植物細胞又は遺伝子改変植物に関し、遺伝子改変植物細胞又は遺伝子改変植物が、加えて、グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子及び単機能性のUDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を含むことを特徴とする。
【0026】
細菌株の発酵によるグルコサミノグリカンの産生は高コストと関連する。なぜなら、細菌を、費用がかかる制御培養条件下で密封された無菌容器内で発酵させなければならないからである(例えば、US 4,897,349を参照のこと)。さらに、細菌株の発酵により産生できるグルコサミノグリカンの量は、各場合において存在する産生設備により制限される。例えば、現在市販されているヒアルロナンの高コストは、このグルコサミノグリカンが、その特別な特性(例えば、粘弾性特性、水を結合する高い能力)にもかかわらず、工業的用途には利用可能ではない。
このように、グルコサミノグリカンを産生するための公知の手段と比較し、本発明の植物細胞及び本発明の植物は、それらが、グルコサミノグリカン合成酵素の活性だけを含む植物細胞又は植物と比較し、増加量のグルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を合成するという利点を提供する。
【0027】
ここで、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物の遺伝子改変は、任意の遺伝子改変でよく、植物細胞又は植物中への、グルコサミン合成酵素をコードする外来核酸分子の組込み及びグルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子の組込み及び単機能性のUDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子の組込みをもたらす。
【0028】
本発明に関連して、「グルコサミノグリカン合成酵素」という用語は、基質UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)及びUDP−N−アセチル−アルドヘキソサミン(UDP−AldohexNAc)からグルコサミノグリカンを合成するタンパク質を意味すると理解すべきである。グルコサミノグリカンの触媒作用は、以下の一般的な反応スキームに従って起こる:
nUDP−GlcA + nUDP−AldohexNAc → [GlcA−GlcNAc] + 2 nUDP
【0029】
好ましくは、上の反応順序で調製されたUDP−N−アセチル−アルドヘキソサミンは、UDP−N−アセチル−グルコサミン又はUDP−N−アセチル−ガラクトサミンである。
【0030】
好ましい実施態様において、本発明は、本発明の植物細胞又は本発明の植物に関し、ここでグルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子は、ヒアルロナン合成酵素又はコンドロイチン合成酵素又はヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする。
【0031】
本発明に関連して、「ヒアルロナン合成酵素」(EC 2.4.1.212)という用語は、基質UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)及びUDPN−アセチル−グルコサミン(UDP−GlcNAc)からヒアルロナンを合成するタンパク質を意味すると理解すべきである。ヒアルロナンの合成は、以下の反応スキームに従って触媒される:
nUDP−GlcA + nUDP−GlcNAc → ベータ−1,4−[GlcA−ベータ−1,3−GlcNAc] + 2 nUDP
【0032】
今までに試験されてきたヒアルロナン合成酵素は、2つのグループに分類できる:クラスIのヒアルロナン合成酵素及びクラスIIのヒアルロナン合成酵素(DeAngelis, 1999, CMLS, Cellular and Molecular Life Sciences 56, 670-682)。脊椎動物からのヒアルロナン合成酵素は、同定されたアイソザイムによりさらに識別される。種々のアイソザイムが、アラブ数字により、それらの同定の順番で呼ばれる(例えば、hsHAS1、hsHAS2、hsHAS3)。
【0033】
ヒアルロナン合成酵素をコードする核酸分子及び対応するタンパク質配列が、とりわけ、以下の生物について記載されている:ウサギ(カイウサギ(Oryctolagus cuniculus))ocHas2(EMBL AB055978.1, US 20030235893)、ocHas3(EMBL AB055979.1, US 20030235893);ヒヒ(アヌビスヒヒ(Papio anubis))paHas1(EMBL AY463695.1);カエル(アフリカツメガエル(Xenopus laevis))xlHas1(EMBL M22249.1, US 20030235893)、xlHas2(DG42)(EMBL AF168465.1)、xlHas3(EMBL AY302252.1);ヒト(ホモ・サピエンス(Homo sapiens))hsHAS1(EMBL D84424.1, US 20030235893)、hsHAS2(EMBL U54804.1, US 20030235893)、hsHAS3(EMBL AF232772.1, US 20030235893);マウス(ムス・ムスクスル(Mus musculus))mmHas1(EMBL D82964.1, US 20030235893)、mmHAS2(EMBL U52524.2, US 20030235893)、mmHas3(EMBL U86408.2, US 20030235893);ウシ(ボス・タウルス(Bos taurus))btHas2(EMBL AJ004951.1, US 20030235893);トリ(ガルス・ガルス(Gallus gallus))ggHas2(EMBL AF106940.1, US 20030235893);ラット(ラッタス・ノルベギクス(Rattus norvegicus))rnHas 1(EMBL AB097568.1, Itano et al., 2004, J. Biol. Chem. 279(18) 18679−18678)、rnHas2(EMBL AF008201.1);rnHas 3(NCBI NM_172319.1, Itano et al., 2004, J. Biol. Chem. 279(18) 18679−18678)、ウマ(エクウス・キャバルス(Equus caballus ))ecHAS2(EMBL AY056582.1, GI:23428486)、ブタ(サス・スクローファ(Sus scrofa))sscHAS2(NCBI NM_214053.1, GI:47522921)、sscHas 3(EMBLAB159675)、ゼブラフィッシュ(ゼブラ・ダニオ(Danio rerio))brHas1(EMBL AY437407)、brHas2(EMBL AF190742.1) brHas3(EMBL AF190743.1);パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)pmHas(EMBL AF036004.2);ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)spHas(EMBL, L20853.1, L21187.1, US 6,455,304, US 20030235893);ストレプトコッカス・エクイス(Streptococcus equis)seHas(EMBL AF347022.1, AY173078.1)、ストレプトコッカス・ユベリス(Streptococcus uberis)suHasA(EMBL AJ242946.2, US 20030235893)、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)seqHas(EMBL AF023876.1, US 20030235893);スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)ssHAS(US 20030235893)、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)stHas(AP000988.1)、パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1(Paramecium bursaria Chlorella virus 1)cvHAS(EMBL U42580.3, PB42580, US 20030235893)。
【0034】
好ましい実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、ここでグルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それがヒアルロナン合成酵素をコードすることを特徴とする。ヒアルロナン合成酵素をコードする問題になっている外来核酸分子は、好ましくは、ウイルスヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子である。好ましくは、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子は、藻類に感染するウイルスのヒアルロナン合成酵素をコードする。
藻類感染ウイルスに関し、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子は、好ましくは、クロレラ感染ウイルスのヒアルロナン合成酵素、特に好ましくはパラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1のヒアルロナン合成酵素、及び、特に好ましくはH1株のパラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルスのヒアルロナン合成酵素をコードする。
好ましくは、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それがヒアルロナン合成酵素をコードすることを特徴とし、そのアミノ酸配列は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号2の下に示すアミノ酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それが配列番号2の下に示すアミノ酸配列を有するヒアルロナン合成酵素をコードすることを特徴とする。
さらなる実施態様において、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号1又は配列番号3の下に示す核酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それが配列番号3の下に示す核酸配列を有すること、又は、外来核酸分子の配列が、遺伝コードの縮重のため、配列番号1又は3の下に示す核酸配列とは異なることを特徴とする。
【0035】
2004年8月25日、パラメシウム・ブルサリア・クロレラウイルスのヒアルロナン合成酵素をコードする合成核酸分子を含むプラスミドIC 341−222を、番号DSM16664の下、ブダペスト条約に従い、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Mascheroder Weg 1b, 38124 Brunswick, Germany)に寄託した。配列番号2の下に示すアミノ酸配列は、プラスミドIC 341−222に組込まれた核酸配列のコード領域に由来しうるが、パラメシウム・ブルサリア・クロレラウイルスのヒアルロナン合成酵素をコードする。
【0036】
したがって、本発明は、また、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、ここでヒアルロナン合成酵素をコードする核酸分子が、それが、そのアミノ酸配列がプラスミドDSM16664中に挿入された核酸配列のコード領域に由来しうるタンパク質をコードすること、又は、それが、そのアミノ酸配列が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、プラスミドDSM16664中に挿入された核酸配列のコード領域に由来しうるアミノ酸配列と同一であるタンパク質をコードすることを特徴とする。
本発明は、また、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、ここでヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子が、それがプラスミドDSM16664中に組込まれたヒアルロナン合成酵素コード核酸配列であること、又は、それが、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、プラスミドDSM16664中に組込まれた核酸配列と同一であることを特徴とする。
【0037】
本発明に関連して、「コンドロイチン合成酵素」(EC 2.4.1.175, EC 1.4.1.226)という用語は、基質UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)及びUDP−N−アセチル−ガラクトサミン(UDP−GalNAc)からコンドロイチンを合成する2つのタンパク質からなるタンパク質又はタンパク質複合体を意味すると理解すべきである。コンドロイチンの合成は、以下の反応スキームに従って触媒される:
nUDP−GlcA + nUDP−GalNAc → ベータ−1,4−[GlcA−ベータ−1,3−GalNAc] + 2 nUDP
【0038】
一部の生物において、プロテオグリカンに付着したコンドロイチン分子の伸長は、2つの異なるタンパク質からなるコンドロイチン合成酵素の酵素複合体により触媒される。2つのタンパク質の1つ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼII(EC 2.4.1.175)は、N−アセチル−ガラクトサミンモノマーをベータ−1,4−付着を介して加え、第2タンパク質、N−アセチルガラクトサミニル−プロテオグリカン3−ベータ−グルクロノシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.226)は、グルクロン酸モノマーをベータ−1,3−付着を介してコンドロイチン分子に加える。しかし、当業者は二機能性タンパク質にも精通しており、ここで単一のタンパク質がN−アセチル−ガラクトサミンモノマー及びグルクロン酸モノマーの両方をコンドロイチン分子に加える。
【0039】
さらなる好ましい実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、ここでグルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それがコンドロイチン合成酵素をコードすることを特徴とする。
本発明の好ましい実施態様は、本発明の植物細胞又は本発明の植物に関し、ここでコンドロイチン合成酵素をコードする外来核酸分子は、N−アセチル−ガラクトサミンモノマー及びグルクロン酸モノマーの両方をコンドロイチン分子に付着する二機能性コンドロイチン合成酵素をコードする。
【0040】
本発明に関連して、「二機能性コンドロイチン合成酵素」という用語は、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼII(EC 2.4.1.175)の活性及びアセチルガラクトサミニル−プロテオグリカン3−ベータ−グルクロノシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.226)の活性が1分子中に存在するタンパク質を意味すると理解すべきである。
【0041】
単機能性のコンドロイチン合成酵素をコードする核酸分子及びそれに由来するアミノ酸配列が、例えば、細菌から(例えば、大腸菌、US 2003109693、EP 1283259を参照のこと)、記載されている。
二機能性コンドロイチン合成酵素をコードする核酸分子及びそれに由来するアミノ酸配列が、例えば、哺乳動物(例えば、ホモ・サピエンス、WO 03 012099、US 2005048604、US 2006052335、NCBI acc. No: BC046247.1、BC023531.2;Kitagawa et al., 2001, J. Biol. Chem. 276(42), 38721-38726)又はパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multicoda)(US 2003104601, EMBL acc. No: AF195517, DeAngelis and Padgett-McCue, 2000, J. Biol. Chem. 275(31), 24124-24129)から、記載されている。
【0042】
コンドロイチン合成酵素をコードする外来核酸分子は、好ましくは、細菌コンドロイチン合成酵素をコードする、好ましくはパスツレラからのコンドロイチン合成酵素をコードする、特に好ましくはパスツレラ・マルトシダからのコンドロイチン合成酵素をコードする外来核酸分子である。
好ましくは、コンドロイチン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それがコンドロイチン合成酵素をコードすることを特徴とし、そのアミノ酸配列は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号5の下に示すアミノ酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、コンドロイチン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それが配列番号5の下に示すアミノ酸配列を有するコンドロイチン合成酵素をコードすることを特徴とする。
さらなる実施態様において、コンドロイチン合成酵素をコードする外来核酸分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号4の下に示す核酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、コンドロイチン合成酵素をコードする核酸分子は、それが配列番号4の下に示す核酸配列を有すること、又は、外来核酸分子の配列が、遺伝コードの縮重のため、配列番号4の下に示す核酸配列とは異なることを特徴とする。
【0043】
本発明に関連して、「ヘパリン/ヘパロサン合成酵素」又は「ヘパロサン合成酵素」(EC 2.4.1.224, EC 2.4.1.225)という用語は、基質UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)及びUDP−N−アセチル−グルコサミン(UDP−GlcNAc)からヘパリン/ヘパランを合成する2つのタンパク質からなるタンパク質又は酵素複合体を意味すると理解すべきである。ヘパリン/ヘパランの合成は、以下の反応スキームに従って触媒される:
nUDP−GlcA + nUDP−GlcNAc → アルファ−1,4−[GlcA−ベータ−1,4−GlcNAc] + 2 nUDP
【0044】
ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする核酸分子及びそれに由来するアミノ酸配列が、例えば、細菌から(パスツレラ・マルトシダEMBL acc. Nos: AF425591, AF439804, AY292199, AY292200, US 20030099967, 大腸菌EMBL acc. No: X77617.1)又はヒトから(NCBI acc. Nos: BC001174.1, NM_207122.1)、記載されている。
【0045】
一部の生物において、プロテオグリカンに付着したヘパリン/ヘパロサン分子の伸長は、2つの異なるタンパク質からなるヘパリン/ヘパロサン合成酵素の酵素複合体により触媒される。2つのタンパク質の1つ、グルクロノシル−N−アセチルグルコサミニル−プロテオグリカン4−アルファ−N−グルコサミニルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.224)は、N−アセチル−グルコサミンモノマーをベータ−1,4−付着を介して加え、第2タンパク質、N−アセチルグルコサミニル−プロテオグリカン4−ベータ−グルクロノシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.225)は、グルクロン酸モノマーをベータ−1,3−付着を介してヘパリン/ヘパラン分子に加える。しかし、当業者は二機能性タンパク質にも精通しており、ここで単一のタンパク質はN−アセチル−グルコサミンモノマー及びグルクロン酸モノマーの両方をヘパリン/ヘパロサン分子に加える。そのような二機能性ヘパリン/ヘパロサン合成酵素が、例えば、ヒトから(Busse and Kusche-Gullberg, 2003, J. Biol. Chem. 278(42), 41333-41337)又はパスツレラから(DeAngelis and White, 2004, J. Bacteriology 186(24), 8529-8532)、記載されている。ヘパリン/ヘパロサン合成酵素の活性を有する二機能性タンパク質は、EC番号2.4.1.224の下に分類される酵素の活性及びEC番号2.4.1.225の下に分類される酵素の活性の両方を有する。
【0046】
さらなる好ましい実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、ここでグルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それがヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードすることを特徴とする。
本発明の好ましい実施態様は、本発明の植物細胞又は本発明の植物に関し、ここでヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする外来核酸分子は、N−アセチル−グルコサミンモノマー及びグルクロン酸モノマーをヘパリン/ヘパラン分子に付着させる二機能性ヘパリン/ヘパラン合成酵素をコードする。
ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする外来核酸分子は、好ましくは細菌ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする、好ましくはパスツレラからのヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする、特に好ましくはパスツレラ・マルトシダからのヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする外来核酸分子である。
【0047】
好ましくは、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それがヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードすることを特徴とし、そのアミノ酸配列は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号7の下に示すアミノ酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする外来核酸分子は、それが配列番号7の下に示すアミノ酸配列を有するヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードすることを特徴とする。
さらなる実施態様において、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする外来核酸分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号6の下に示す核酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素をコードする核酸分子は、それが配列番号6の下に示す核酸配列を有すること、又は、外来核酸分子の配列が、遺伝コードの縮重のため、配列番号6の下に示す核酸配列とは異なることを特徴とする。
【0048】
本発明に関連して、「グルコサミンリン酸N−アセチルトランスフェラーゼ(アセチル−CoA:D−グルコサミンリン酸N−アセチルトランスフェラーゼ又はGlcN−Pアセチルトランスフェラーゼ)」(EC 2.3.1.4)という用語は、基質D−グルコサミンリン酸(GlcN−P)及びアセチル−CoA(AcCoA)からN−アセチル−D−グルコサミンリン酸(GlcNAc−P)を合成するタンパク質を意味すると理解すべきである。N−アセチル−グルコサミン6−リン酸の合成は、以下の反応スキームに従って触媒される:
GlcN−P + AcCoA → GlcNAc−P + CoASH
【0049】
示した反応方程式において、基質GlcN−Pはグルコサミン1−リン酸(GlcN−1−P)又はグルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)のいずれかでありうる。
【0050】
UDP−N−アセチル−グルコサミンの合成のための問題になっている代謝経路において、試験された細菌生物と真核生物の間の本質的な違いは、問題になっている代謝経路の異なる中間体をアセチル化反応の基質として使用することである。細菌生物において、GlcN−1−Pのアセチル化は、GlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.157)の活性を有するタンパク質により行われるが(Gehring et al., 1996, Biochemistry 35, 579-585)、真核動物又は菌類において、GlcN−6−Pのアセチル化は、グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.4)の活性を有するタンパク質により触媒される(Milewski et al., 2006, Yeast 23, 1-14、Wiley InterScience, DOI: 10.1002./yea.1337にオンラインで発表)。したがって、異なる生物において、異なる基質及び異なるタンパク質の両方をUDP−GlcNAcの合成のために使用する。
驚くべきことに、先行技術における開示(WO 2007 023682)とは対照的に、GlcN−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする任意の核酸分子を植物細胞中に導入することにより植物細胞において合成されるグルコサミノグリカンの量を増加させることは可能ではないことが見出されている。むしろ、GlcN−1−P(例えば、大腸菌からのglmu)をアセチル化するGlcN−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子の導入によって植物細胞又は植物により合成されるグルコサミノグリカンの量における増加はもたらされないことが見出されている。したがって、本発明の植物細胞又は本発明の植物のために、外来核酸分子が、GlcN−6−Pをアセチル化反応のための基質として使用し、このためGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.4)の活性を有するタンパク質であるGlcN−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードすることが必須である。対照的に、GlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.157)の活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、アセチル化反応のためにGlcN−1−Pを使用し、本発明の植物細胞又は本発明の植物を産生するために適さない。
さらに、グルコサミン6−リン酸ムターゼ(GlcN−6−Pムターゼ)をコードする外来核酸分子を有する植物細胞又は植物は、GlcN−6−PのGlcN−1−Pへの異性化を触媒し、有意に高い量のグルコサミノグリカンを合成しないことが見出されている。
【0051】
本発明に関連して、「グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ(アセチル−CoA:D−グルコサミン6−リン酸N−アセチルトランスフェラーゼ又はGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼ)」(EC 2.3.1.4)という用語は、基質D−グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)及びアセチル−CoA(AcCoA)からN−アセチル−D−グルコサミン6−リン酸(GlcNAc−6−P)を合成するタンパク質として理解されるように意味する。N−アセチル−グルコサミン6−リン酸の合成は、以下の反応スキームに従って触媒される:
GlcN−6−P + AcCoA → GlcNAc−6−P + CoASH
【0052】
GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有する機能的形態のタンパク質は、ホモダイマーである。モノマーの三次構造は中央コア領域を有する。このコア領域は、4つのアルファ−ヘリックス及び6番目のベータ鎖(ベータ−6鎖)により囲まれた、5つの逆平行鎖(ベータ鎖1〜5)を有するベータ−シート構造からなる。ホモダイマーの形成中、サブユニットのベータ−6鎖と、それぞれの他のサブユニットの対応するベータ−6鎖との相互作用が存在する。
配列番号9の下に示すアミノ酸配列(EMBL acc. No: AB017626.1)は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする。配列番号9の下に示すアミノ酸配列において、アミノ酸7〜11はベータ−1鎖を形成し、アミノ酸13〜26はアルファ−1鎖を形成し、アミノ酸37〜47はアルファ−2鎖を形成し、アミノ酸62〜69はベータ−2鎖を形成し、アミノ酸74〜86はベータ−3鎖を形成し、アミノ酸92〜103はベータ−4鎖を形成し、アミノ酸111〜125はアルファ−3鎖を形成し、アミノ酸130〜136はベータ−5鎖を形成し、アミノ酸139〜146はアルファ−3鎖を形成し、そして、アミノ酸154〜159はベータ−6鎖を形成する。配列番号9の下に示す配列中のベータ−4鎖に存在するアミノ酸Glu(位置98)、Asp(位置99)、及びIle(位置100)は、基質AcCoAと相互作用し、それらはそのカルボニル結合を極性化し、そして、それらはAcCoA及びGlcN−6−PならびにGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼからなるテトラデリック(tetraedric)反応中間体においてAcCoAの酸素原子の負電荷を安定化する。配列番号9の下に示す配列中のアミノ酸Tyr(位置143)は、切除されるべきCoA分子のチオレートアニオンを安定化させる。反応の触媒作用中でのこれらの相互作用は、配列番号9の下に示す配列中のアミノ酸Leu(位置133)により支持される。反応の触媒作用中に、GlcN−6−Pは、ホモダイマーのモノマーの間に形成されるポケットにおいて結合し、ベータ−6鎖のアミノ酸残基がその形成に関与する。反応の触媒作用中に、配列番号9の下に示す配列中のアミノ酸Asp(位置134)は、GlcN−6−Pのアミノ基の求核性を増加させる(Milewski et al., 2006, Wiley InterScience, www.interscience.wiley.com, DOI:10.1002/yea.1337にオンラインで発表)。問題になっている反応の触媒作用に関与するGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質のさらなるアミノ酸が、Peneff et al.(2004, J. Biological Chemistry 276(19), 16328-16334, 図1)に記載されている。
ここで、サッカロマイセス・セレビシエのアミノ酸配列について例示的な方法で、反応の触媒作用に関与するアミノ酸も、他の生物からのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において同定できる。例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(EMBL acc. No: AB017627.1)からのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列においてアミノ酸Glu88、Asp80、Ile90、Asp124、及びTyr133が存在する。
【0053】
GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子及び対応するタンパク質配列が、とりわけ、以下の生物について記載されている:サッカロマイセス・セレビシエ(EMBL acc. No: AB017626.1)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(EMBL acc. No: AB017629.1)、カンジダ・アルビカンス(EMBL acc. No: AB017627.1)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(EMBL CDS acc. No: BAE62756.1)、シノラブディス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(NCBI acc. No: NM_073253.4, EMBL CDS acc. No: BAA63497.1, CAA044531.1)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(EMBL CDS acc. No: AAL13916.1)、ゼノパス・トロピカリス(Xenopus traopicalis)(EMBL acc. No: CR760021.2)、ムス・ムスクスル(Mus musculus)(EMBL CDS acc. No: BAE39886.1)、ホモ・サピエンス(EMBL CDS acc. No: BAC03482.1)、オランウータン(Pongo pygmaeus)(EMBL CDS acc. No: CR858996.1)、アカントアモエバ・ポリファガ・ミミウイルス(Acanthamoeba polyphaga mimivirus)(EMBL CDS acc. No: AAV50586.1)。既に記載した通り、反応の触媒反応に関与するアミノ酸残基は、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有する種々の生物に由来するタンパク質において保存されているが、一部の場合において、それらの配列は互いに非常低い同一性を有する。このように、サッカロマイセス・セレビシエ(EMBL acc. No: AB017626.1)からのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列は、カンジダ・アルビカンス(EMBL acc. No: AB017627.1)からの対応する配列とわずか44%同一であり、シゾサッカロミセス・ポンベ(EMBL acc. No: AB017629.1)からのものとわずか25%の同一性を有する(Wiley InterScience, www.interscience.wiley.com, DOI:10.1002/yea.1337にオンラインで発表)。問題になっているアミノ酸配列の互いの低い同一性にもかかわらず、GlcN−6−P−アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする全ての上記の配列が、本発明の植物細胞又は本発明の植物の産生に適する。
【0054】
本発明に従い、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、任意の生物に由来しうる;好ましくは、核酸分子は、菌類、動物又は植物に、特に好ましくは菌類及び特に好ましくはサッカロマイセス・セレビシエに由来する。
好ましくは、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼをコードする外来核酸分子は、それがGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼをコードすることを特徴とし、そのアミノ酸配列は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号9の下に示すアミノ酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、それが配列番号9の下に示すアミノ酸配列を有するGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードすることを特徴とする。
さらなる実施態様において、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号8の下に示す核酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸分子は、それが配列番号8の下に示す核酸配列を有すること、又は、外来核酸分子の配列が、遺伝コードの縮重のため、配列番号8の下に示す核酸配列とは異なることを特徴とする。
【0055】
本発明に関連して、「UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼ(2−アセトアミド−2−デオキシ−d−グルコース1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)(EC 2.7.7.23)」という用語は、基質ウリジン三リン酸(UTP)及びN−アセチル−D−グルコサミン1−リン酸(GlcNAc−1−P)からUDP−N−アセチル−グルコサミン(UDP−GlcNAc)を合成するタンパク質を意味すると理解すべきである。UDP−GlcNAcの合成は、以下の反応スキームに従って触媒される:
UTP + GlcNAc−1−P ⇔ P−P + UDP−GlcNAc
【0056】
UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する原核生物タンパク質は、一般的に、二機能性タンパク質であり、上に示す反応(EC 2.7.7.23)に加えて、グルコサミン1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ(GlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ、EC 2.3.1.157)の機能を有する。即ち、それらは、グルコサミン1−リン酸(GlcN−1−P)のN−アセチル−グルコサミン1−リン酸(GlcNAc−1−P)へのN−アセチル化(GlcN−1−P + AcCoA → GlcNAc−1−P + CoASH)を触媒する(Gehring et al., 1996, Biochemistry 35, 579-585)。対照的に、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する真核生物タンパク質は、上に記載した反応(UTP + GlcNAc−1−P ⇔ P−P + UDP−GlcNAc)を触媒するだけの単機能性タンパク質である(Mio et al., 1998, J. Biol. Chem. 273 (23), 14392-14397)。
【0057】
本発明に関連して、「UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する単機能性タンパク質」という用語は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質について上に示す反応(UTP + GlcNAc−1−P ⇔ P−P + UDP−GlcNAc)を触媒するタンパク質を意味すると理解すべきである。UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する単機能性タンパク質は、GlcN−1−PのGlcNAc−1−Pへのアセチル化を触媒する(追加の)活性を有さない。したがって、GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する単機能性タンパク質は、従って、EC番号2.7.7.23の下に分類されるタンパク質であるが、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する二機能性タンパク質は、EC番号2.7.7.23の下に分類される酵素の活性及びEC番号2.3.1.157の下に分類される酵素の活性の両方を有する。
【0058】
驚くべきことに、先行技術における開示(例えば、WO 2007 023682)とは対照的に、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性及びGlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼの活性(例えば、glmU aus E. coli、EC 2.7.7.23及びEC 2.3.1.157)を有する二機能性タンパク質をコードする外来核酸分子を有する、本発明の植物細胞又は本発明の植物は、増加量のグルコサミノグリカンを合成しないことが見出されている。したがって、本発明の植物細胞又は本発明の植物のために、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードする外来核酸分子が、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼ(EC 2.7.7.23)の活性を有する単機能性タンパク質をコードすることが必須である。したがって、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードする外来核酸分子は、先ほど言及したUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性に加えて、GlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.157)の追加活性を有するタンパク質をコードする必要なない。このように、それは、好ましくは、真核生物由来の外来核酸分子である。さらに、驚くべきことに、先行技術における開示(例えば、WO 2007 023682)とは対照的に、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質の発現及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質の発現に加えて、ホスホアセチルグルコサミンムターゼ(GlcNAc−Pムターゼ、EC 5.4.2.3)の発現は、植物細胞又は植物においてさらなる増加量のグルコサミノグリカンをもたらさないことが見出されている。
【0059】
UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する単機能性タンパク質をコードするアミノ酸配列は、タンパク質の間で高度に保存されているアミノ酸残基を含む。UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する真核生物タンパク質をコードするアミノ酸配列は、各々の場合において、タンパク質の間で保存されている3つのドメインを有する。第1ドメインのコンセンサス配列は、GlyGlyGlnXxxThrArgLeuGlyXxxXxxXxxProLysGly(配列番号11の下に示す配列中のアミノ酸111〜124)、第2ドメインのそれはPro(Asp又はAsn)GlyAsn(Gly又はAla)GlyXxxXxxXxxAla(配列番号11の下に示す配列中のアミノ酸219〜228)、そして、第3ドメインのそれはLysXxxGluXxxPheXxxPheAspXxxPhe(配列番号11の下に示す配列中のアミノ酸377〜386)、ここでXxxは任意のアミノ酸である。UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する原核生物タンパク質(例えば、glmU aus Escherichia coli, EMBL acc. No: EAY46949.1)は、真核生物からの対応するタンパク質の第1ドメインと類似の保存ドメイン(GlyXxxGlyThr(Arg又はSer)XxxXxxXxxXxxProLys)を有する。真核生物タンパク質のドメイン2及び3について、対応するドメインは原核生物タンパク質において見出されない(Mok and Edwards, 2000, J. Biol. Chem. 280(47), 39363-39372)。
【0060】
配列番号11の下に示すアミノ酸配列中のアミノ酸Gly(位置112)、Gly(位置114)、Thr(位置115)、Arg(位置116)、Pro(位置122)、及びLys(位置123)は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする一次配列中で保存されている。配列番号11の下に示すアミノ酸配列中のアミノ酸Gly(位置112)、Arg(位置116)、又はLys(位置123)の交換は、実質的に不活性なタンパク質をもたらす。対照的に、配列番号11の下に示すアミノ酸配列中のアミノ酸Gly(位置114)、Thr(位置115)、又はPro(位置122)の交換は、問題になっているタンパク質の活性の低下だけを示す。したがって、配列番号11の下に示すアミノ酸配列中のアミノ酸Gly(位置112)、Arg(位置116)、及びLys(位置123)は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質において触媒機能を有するアミノ酸である(Mio et al., 1998, J. Biol. Chem. 273(23), 14392-14397)。
【0061】
ランブル鞭毛虫(Giardia intestinalis)(EMBL acc. No: AAM54702.1)からのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、アミノ酸Gly(位置108)は、配列番号11の下に示す配列のアミノ酸Gly(位置112)に対応する。ランブル鞭毛虫からのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列における、アミノ酸Alaを介した、アミノ酸Gly(位置108)の交換も、タンパク質の活性のほぼ完全な低下をもたらす(Mok and Edwards, 2005, J. Biol. Chem. 280(47), 39363-39372)。ホモ・サピエンス(EMBL acc. No: BAA31202.1)からのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列におけるアミノ酸Gly(位置111)(配列番号11の下に示す配列中のアミノ酸Gly(位置112)に対応する)の交換も、活性のほぼ完全な低下をもたらす(Wang-Gillam et al., 2000, J. Biol. Chem. 275(2), 1433-1438)。ホモ・サピエンス(EMBL acc. No: BAA31202)からのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードするタンパク質中のアミノ酸Gly(位置222)及びランブル鞭毛虫(EMBL acc. No: AAM54702.1)から対応するタンパク質の対応するアミノ酸Gly(位置210)の交換は、両方の場合において同様に、活性のほぼ完全な低下をもたらし、言及したアミノ酸が、同様に、触媒作用に関与するアミノ酸であることを示す(Mok and Edwards, 2005, J. Biol. Chem. 280(47), 39363-39372)。ホモ・サピエンス(EMBL acc. No: BAA31202)からのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードするタンパク質中のアミノ酸Gly(位置224)の交換は、タンパク質の活性の大幅な、しかし、完全ではない喪失をもたらし、アミノ酸Pro(位置222)の交換は活性のわずかな低下だけをもたらす。このことから、配列番号11の下に示す配列のアミノ酸Gly(位置221)及びGly(位置223)がUTPの認識に関与し、配列番号11の下に示す配列のアミノ酸Gly(位置111)及びGly(位置112)は、それぞれの一次配列において保存されており、GlcNAc−1−Pの結合に関与すると結論付けた(Wang-Gillam et al., 2000, J. Biol. Chem. 275(2), 1433-1438)。
【0062】
上に言及した特性を有するUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの単機能性の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子及び対応するタンパク質配列は、とりわけ、以下の生物について記載されている:ランブル鞭毛虫(EMBL acc. No: AAM54702.1)、サッカロマイセス・セレビシエ(EMBL acc. No: X79380.1, NCBI protein ID: accession No: CAA557927)、カンジダ・アルビカンス(NCBI acc. No: XM_715480.1)、ピキア・スチピチス(Pichia stipitis)(NCBI acc. No: XM_001385151.1)、ムス・ムスクスル(NCBI acc. No: NM_133806.4)、タイリクオオカミ(Canis lupus)(NCBI acc. No: XM_844774.1);ボス・タウルス(NCBI acc. No: NM_001046404.1)、ゼノパス・トロピカリス(Xenopus tropicalis)(NM_001011142.1)、アフリカツメガエル(NCBI acc. No: BC077836.1)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(NCBI acc. No: NM_102845.4)、ゼブラ・ダニオ(NCBI acc. No: NM_212621.1)、ホモ・サピエンス(NCBI acc. No: NM_003115.3, EMBL acc. No.: BAA31202.1)。
【0063】
本発明に従って、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、任意の真核生物に由来しうる;好ましくは、核酸は、真菌、動物又は植物、特に好ましくは真菌、特に好ましくはサッカロマイセス・セレビシエに由来する。
好ましくは、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、それがUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードすることを特徴とし、そのアミノ酸配列は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号11の下に示すアミノ酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、それが配列番号11の下に示すアミノ酸配列を有するUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードすることを特徴とする。
さらなる実施態様において、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び、特に好ましくは少なくとも98%、配列番号10の下に示す核酸配列と同一である。特に好ましい実施態様において、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードする核酸分子は、それが配列番号10の下に示す核酸配列を有すること、又は、外来核酸分子の配列が、遺伝コードの縮重のため、配列番号10の下に示す核酸配列とは異なることを特徴とする。
【0064】
本発明に関連して、「外来核酸分子」という用語は、対応する野生型植物細胞において自然発生しない、又は、野生型植物細胞において具体的な空間的配置で自然発生しない、又は、野生型植物細胞のゲノム中の、それが自然発生しない部位に局在化している、のいずれかの分子を意味すると理解すべきである。好ましくは、外来核酸分子は、組換え又は特定の空間的配置が植物細胞において自然発生しない種々のエレメントを含む組換え分子である。
【0065】
本発明に関連して、「組換え核酸分子」という用語は、組換え核酸分子中に存在するもののような組み合わせにおいて自然に存在しない種々の核酸分子を含む核酸分子を意味すると理解すべきである。このように、組換え核酸分子は、グルコサミノグリカン合成酵素及び/又はGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及び/又はUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に加えて、また、言及した核酸分子との組み合わせにおいて自然に存在しない核酸配列を含みうる。グルコサミノグリカン合成酵素及び/又はGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及び/又はUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子との組み合わせでの組換え核酸分子に存在する言及した追加の核酸配列は、任意の配列でよい。例えば、それらは、ゲノム植物核酸配列でよい。追加の核酸配列は、好ましくは、調節配列(プロモーター、終結シグナル、エンハンサ―)、特に好ましくは植物組織において活性である調節配列、特に好ましくは植物組織において活性である組織特異的な調節配列である。組換え核酸分子を生成するための方法は、当業者に公知であり、遺伝子操作方法、例えば、ライゲーションによる核酸分子の連結、遺伝子組換え又は核酸分子のデノボ合成などを含む(例えば、Sambrok et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY.ISBN: 0879695773, Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons; 5th edition (2002),ISBN:0471250929を参照のこと)。
【0066】
本発明の好ましい実施態様は、本発明の植物細胞又は本発明の植物に関し、その中において、外来核酸分子が植物細胞又は植物のゲノム中に安定的に組込まれる。
【0067】
それらのゲノム中に(安定的に)組込まれた外来核酸分子、又は、それらのゲノム中に組込まれた、グルコサミノグリカン合成酵素及び/又はGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及び/又はUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする複数の核酸分子を有する遺伝子改変植物細胞及び遺伝子改変植物は、とりわけ、それらが、野生型植物細胞及び野生型植物においてそれぞれ自然発生しない外来核酸分子を含むという事実により、又は、そのような分子が、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物の、野生型植物細胞及び野生型植物においてそれぞれ発生しないゲノム中の部位(即ち、異なるゲノム環境中である)に組込まれる点において、野生型植物細胞及び野生型植物から識別できる。さらに、本発明のそのような遺伝子改変植物細胞及び本発明の遺伝子改変植物は、それらが、適宜、野生型植物細胞又は野生型植物において自然に存在するそのような分子のコピーに加えて、それらのゲノム中に組込まれた少なくとも1コピーの外来核酸分子を含む点で、非遺伝子改変野生型植物細胞及び非遺伝子改変野生型植物からそれぞれ識別できる。本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物中に導入された外来核酸分子が、野生型植物細胞又は野生型植物において既に自然に存在する追加コピーの分子である場合、本発明の遺伝子改変植物細胞及び本発明の遺伝子改変植物が、特に、この追加コピー/これらの追加コピーが、それ/それらが野生型植物細胞及び野生型植物においてそれぞれ存在しないゲノム中の部位に局在化するとの事実により、野生型植物細胞及び野生型植物からそれぞれ識別できる。
核酸分子の植物細胞及び植物のゲノム中への組込みが、遺伝的方法及び/又は分子生物学の方法により実証できる。核酸分子の植物細胞のゲノム又は植物のゲノム中への安定的な組込みは、遺伝された核酸分子を有する子孫において、安定的に組込まれた核酸分子が親世代と同じゲノム環境に存在することを特徴とする。植物細胞のゲノム又は植物のゲノムにおける核酸配列の安定的な組込みの存在は、当業者に公知の方法、とりわけ、RFLP分析(制限断片長多型)のサザンブロット解析(Nam et al., 1989, The Plant Cell 1, 699-705;Leister and Dean, 1993, The Plant Journal 4 (4), 745-750)を用いて、PCRに基づく方法、例えば、増幅断片の長さの差の分析(増幅断片長多型、AFLP)(Castiglioni et al., 1998, Genetics 149, 2039-2056;Meksem et al., 2001, Molecular Genetics and Genomics 265, 207-214;Meyer et al., 1998, Molecular and General Genetics 259, 150-160)などで、又は、制限エンドヌクレアーゼを使用して切断した増幅断片(増幅切断多型配列、CAPS)を使用して(Konieczny and Ausubel, 1993, The Plant Journal 4, 403-410;Jarvis et al., 1994, Plant Molecular Biology 24, 685-687;Bachem et al., 1996, The Plant Journal 9 (5), 745-753)、実証できる。
【0068】
本発明に関連して、「野生型植物細胞」という用語は、本発明の遺伝子改変植物細胞の産生のための出発材料として役立った植物細胞を意味すると理解すべきであり、即ち、それらの遺伝情報が、導入され、そして、グルコサミノグリカン合成酵素及び/又はGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及び/又はUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の組込みをもたらす遺伝的改変は別として、本発明の遺伝子改変植物細胞のものに対応する。
【0069】
本発明に関連して、「野生型植物」という用語は、本発明の遺伝子改変植物の産生のための出発材料として役立った植物を意味すると理解すべきであり、即ち、それらの遺伝情報が、導入され、そして、グルコサミノグリカン合成酵素及び/又はGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及び/又はUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の組込みをもたらす遺伝的改変は別として、本発明の遺伝子改変植物のものに対応する。
【0070】
本発明に関連して、「ゲノム」という用語は、植物細胞中に存在する全遺伝物質を意味すると理解すべきである。核に加えて、他の画分(例えば、色素体、ミトコンドリア)も遺伝物質を含むことが当業者に公知である。
【0071】
核酸分子を植物宿主細胞中に(安定的に)組込むための多数の技術を利用可能である。これらの技術は、形質転換、プロトプラスト融合、注入、DNAのエレクトロポレーション、微粒子銃アプローチによるDNAの導入、及び、また、さらなる選択肢の手段として、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)又はアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を使用したt−DNAでの植物細胞の形質転換を含む(“Transgenic Plants”, Leandro ed., Humana Press 2004, ISBN 1-59259-827-7の総説)。植物細胞のアグロバクテリウム媒介性の形質転換の使用は、徹底的な試験の対象であり、EP 120516;Hoekema, IN: The Binary Plant Vector System Offsetdrukkerij Kanters B.V. Alblasserdam (1985), Chapter V;Fraley et al., Crit. Rev. Plant Sci. 4, 1-46及びAn et al. EMBO J. 4, (1985), 277-287において網羅的に記載されている。ジャガイモの形質転換については、例えば、Rocha-Sosa et al., EMBO J. 8, (1989), 29-33を参照のこと。トマト植物の形質転換については、例えば、US 5,565,347を参照のこと。
【0072】
アグロバクテリウム形質転換に基づくベクターを使用した単子葉植物の形質転換も記載されている(Chan et al., Plant Mol. Biol. 22, (1993), 491-506;Hiei et al., Plant J. 6, (1994) 271-282;Deng et al, Science in China 33, (1990), 28-34;Wilmink et al., Plant Cell Reports 11, (1992), 76-80;May et al., Bio/Technology 13, (1995), 486-492;Conner and Domisse, Int. J. Plant Sci. 153 (1992), 550-555;Ritchie et al, Transgenic Res. 2, (1993), 252-265)。単子葉植物を形質転換するための代わりのシステムは、微粒子銃アプローチを使用した形質転換(Wan and Lemaux, Plant Physiol. 104, (1994), 37-48; Vasil et al., Bio/Technology 11 (1993), 1553-1558; Ritala et al., Plant Mol. Biol. 24, (1994), 317 325; Spencer et al., Theor. Appl. Genet. 79, (1990), 625-631)、プロトプラスト形質転換、部分的透過性細胞のエレクトロポレーション、グラスファイバーを使用したDNAの導入である。特に、トウモロコシの形質転換が、文献中に数回記載されている(WO95/06128、EP0513849、EP0465875、EP0292435;Fromm et al., Biotechnology 8, (1990), 833-844; Gordon Kamm et al., Plant Cell 2, (1990), 603-618; Koziel et al., Biotechnology 11 (1993), 194-200; Moroc et al., Theor. Appl. Genet. 80, (1990), 721-726を参照のこと)。他の草、例えば、サトウキビ(Bower and Birch, 1992, Plant Journal 2(3), 409-416; Bower et al., 1996 Molecular Breeding 2, 239-249; Arencibia et al., 1998, Transgenic Research 7, 213-222)又はアワ(Casas et al., 1993, PNAS 90, 11212-11216;US 6,369,298)のスイッチグラス(Panicum virgatum, Somleva et al., 2002 Crop Science 42: 2080 - 2087; Richards et al., 2001, Plant Cell Reporters 20, 48-54)などの形質転換も記載されている。
他の穀物種での形質転換の成功が、また、例えば、オオムギ(Wan and Lemaux, s.o.; Ritala et al., s.o.; Krens et al., Nature 296, (1982), 72-74)及びコムギ(Nehra et al., Plant J. 5, (1994), 285-297; Becker et al., 1994, Plant Journal 5, 299-307)について記載されている。上の方法の全てが本発明に関して適する。
【0073】
先行技術と比較し、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物は、それらがグルコサミノグリカン合成酵素の活性だけを有する植物よりも多量のグルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を産生するという利点を提供する。これによって、ほとんど費用をかけずにグルコサミノグリカンを産生することが可能になる。なぜなら、より高いグルコサミノグリカン含量を有する植物からのグルコサミノグリカンの単離は、それほど複雑ではなく、より費用効率が高いからである。さらに、先行技術に記載した植物と比較し、より小さな栽培面積が、本発明の遺伝子改変植物を使用してグルコサミノグリカンを産生するために必要とされる。これは、それが現在、その希少性及び高価格のために使用されない工業的用途のためでさえ十分量でグルコサミノグリカンを産生する可能性をもたらす。クロレラ属のウイルス感染植物生物は、比較的多量のグルコサミノグリカン(ヒアルロナン)を産生するためには不適である。グルコサミノグリカン(ヒアルロナン)の産生において、ウイルス感染藻類は、グルコサミノグリカン合成酵素に必要とされる遺伝子がそれらのゲノム中に安定的に組込まれず(Van Etten and Meints, 1999, Annu. Rev. Microbiol. 53, 447-494)、そのため、グルコサミノグリカン(ヒアルロナン)を産生するために、ウイルス感染を繰り返さなければならないという不利点を有する。したがって、持続的に所望の質及び量のグルコサミノグリカン(ヒアルロナン)を合成する個々のクロレラ細胞を単離することは可能ではない。さらに、ウイルス感染したクロレラ藻類において、グルコサミノグリカン(ヒアルロナン)は限られた期間だけ産生され、ウイルスが原因となる溶解の結果として、藻類は感染からわずか約8時間後に死滅する(Van Etten et al., 2002, Arch Virol 147, 1479-1516)。対照的に、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞及び本発明の遺伝子改変植物を、無制限な方法で栄養的又は有性的に繁殖でき、それらがグルコサミノグリカン(ヒアルロナン)を持続的に産生するという利点を提供する。
WO 05 012529に記載されるトランスジェニック植物は、ヒアルロナン合成酵素をコードする核酸分子を有し、比較的少量のグルコサミノグリカン(ヒアルロナン)を合成する。対照的に、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞及び本発明の遺伝子改変植物が大幅に多量のグルコサミノグリカンを合成するという利点を提供する。
【0074】
したがって、本発明は、また、グルコサミノグリカンを合成する本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物を提供する。
好ましい実施態様において、本発明の植物細胞又は本発明の植物は、コンドロイチン、ヘパリン/ヘパロサン、及びヒアルロナンからなる群より選択されるグルコサミノグリカンを合成する。
【0075】
本発明の遺伝子改変植物中の新鮮重量に関して、グルコサミノグリカン含量を測定するために、好ましくは、植物、即ち、根を除く全ての植物部分の上の全粉砕材料を使用する。
グルコサミノグリカンを合成する本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物は、それらにより合成されるグルコサミノグリカンを単離し、その構造を確認することにより同定できる。植物組織は、それが任意のグルコサミノグリカンを含まないという利点を有するため、簡単で速い単離方法を、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物におけるグルコサミノグリカンの存在を実証するために使用できる。植物組織は、それが任意のグルコサミノグリカン分解酵素を含まないという利点を有するため、簡単で速い単離方法を、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物におけるグルコサミノグリカンの存在を実証するために使用できる。この目的のために、水を検証すべき植物組織に加えて、そして、植物組織を次に機械的に粉砕する(例えば、ビード・ミル、ワーリングブレンダー、ジュース抽出器などを用いて)。必要な場合、より多くの水を次に懸濁液に加えてよく、そして、細胞残骸及び不水溶性成分をその後に遠心分離により除去する。遠心分離後に得られた上清中のグルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)の存在を、次に、例えば、関連するグルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)に特異的に結合するタンパク質を使用して実証できる。
種々のグルコサミノグリカンについての免疫学的試薬(ELISA)に基づくそのようなテストキットが、当業者に公知であり、市販されている(例えば、ヘパリンのためのテストキット:Lifespan Technologies, 2401 Foothill Drive, Salt Lake City, UT 84109-1405, Prod. No.: K-2100)。
ヒアルロナンに特異的に結合するタンパク質を用いたヒアルロナンの検出のための方法が、例えば、US 5,019,498に記載されている。US 5,019,498に記載されている方法を行うためのテストキットが市販されている(例えば、Corgenix, Inc.(Colorado, USA)からのヒアルロン酸(HA)テストキット(Prod. No. 029-001);一般方法事項4も参照のこと)。
コンドロイチンが、例えば、免疫学的方法を用いて検出できる(Mizuguchi et al., 2003, Nature 423, 443-448)。
遠心分離の上清中でのグルコサミノグリカンの存在は、さらに、他の分析方法、例えば、IR、NMR、又は質量分析などを使用して確認することもできる。
【0076】
本発明の植物の発生時間にわたり、グルコサミノグリカンが植物組織中に蓄積することが観察されているため、本発明の遺伝子改変植物における新鮮重量に関するグルコサミノグリカンの量は、特に好ましくは、問題になっている植物の回収時又は回収(1又は2)日前に測定する。
【0077】
好ましい実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、それらが、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子だけを有する遺伝子改変植物細胞と比較し、もしくは、遺伝子改変植物と比較し、又は、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子を有し、UDP−GlcNAcアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸を有さず、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を有さない遺伝子改変植物と比較し、増加量のグルコサミノグリカンを産生することを特徴とする。
【0078】
好ましくは、本発明の遺伝子改変植物細胞中又は本発明の遺伝子改変植物中の植物材料の新鮮重量に関して産生されるグルコサミノグリカンの量は、グルコサミノグリカン合成酵素の活性(だけ)を有する、対応する遺伝子改変植物細胞と比較し、又は、対応する遺伝子改変植物と比較し、少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.4倍、特に好ましくは少なくとも1.6倍、そして、特に好ましくは少なくとも1.8倍増加する。本発明の遺伝子改変植物細胞中又は本発明の遺伝子改変植物中の植物材料の新鮮重量に関するグルコサミノグリカン含量の増加を測定するために、好ましくは、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物と対応する植物細胞及び植物(グルコサミノグリカン合成酵素活性(だけ)を有する)をそれぞれ比較し、ここで植物細胞又は植物の等価材料(例えば、葉、塊茎)を比較すべきであり、この材料を取った植物細胞又は植物を同じ条件下で栽培しており、そして、ここで同等の齢(発生段階)を有する植物材料のグルコサミノグリカン含量を比較すべきである。例えば、植物の若葉は、異なる植物の古葉と比較すべきではない。同じことを、植物の全地上部分のグルコサミノグリカン含量の測定に適用する。比較すべき植物は、同等の条件下で培養されたはずであり、同じ発生段階を有する。
【0079】
好ましい実施態様において、本発明は、植物材料の新鮮重量(FW)1g当たり少なくとも160μg、好ましくは少なくとも180μg、特に好ましくは少なくとも200μg、特に好ましくは少なくとも225μg、そして、最も好ましくは少なくとも250μgのグルコサミノグリカンを合成する本発明の植物細胞又は本発明の植物に関する。
さらなる実施態様において、本発明の植物細胞又は本発明の植物は、植物材料の新鮮重量(FW)1g当たり最大450μg、好ましくは最大400μg、特に好ましくは最大300μg、特に好ましくは最大280μg、そして、最も好ましくは最大260μgのグルコサミノグリカンを合成する。
【0080】
本発明のさらなる実施態様において、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物はそれぞれ緑色陸生植物の植物細胞又は緑色陸生植物であり、グルコサミノグリカンを合成する。
【0081】
本発明に関連して、「緑色陸生植物(Embryophyta)」という用語は、Strasburger, “Lehrbuch der Botanik”[Textbook of Botany], 34th ed., Spektrum Akad. Verl., 1999, (ISBN 3-8274-0779-6)に定義される通りに理解すべきである。
【0082】
本発明の好ましい実施態様は、多細胞植物又は多細胞生物である本発明の遺伝子改変植物の本発明の遺伝子改変植物細胞に関する。したがって、この実施態様は、単細胞植物(原生生物)に由来しない、又は、原生生物ではない植物細胞又は植物に関する。
【0083】
本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物は、原則として、それぞれ任意の植物種、即ち、単子葉植物及び双子葉植物の両方の植物細胞及び植物でよい。それらは、好ましくは、作物植物、即ち、ヒト及び動物に与える目的のため、又は、バイオマスを産生するため、及び/又は、技術的、工業的な目的のための物質を調製するために、ヒトにより栽培される植物である(例えば、トウモロコシ、コメ、コムギ、アルファルファ、ライムギ、オートムギ、オオムギ、カサバ、ジャガイモ、トマト、スイッチグラス(パニカム・ヴーガラタム(Panicum virgatum))、サゴ、リョクトウ、エンドウ、モロコシ、ニンジン、ナス、ダイコン、アブラナ、ダイズ、ピーナッツ、キュウリ、カボチャ、メロン、ニラ、ニンニク、キャベツ、ホウレンソウ、サツマイモ、アスパラガス、ズッキーニ、レタス、アーティチョーク、スイートコーン、パースニップ、フタナミソウ、キクイモ、バナナ、サトウダイコン、サトウキビ、ビート、ブロッコリー、キャベツ、タマネギ、黄色ビート、タンポポ、ストロベリー、リンゴ、アンズ、プラム、桃、ブドウ、カリフラワー、セロリ、ピーマン、スウェーデンカブ、ルバーブ)。トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモ又は糖キビ(sugar millet)が特に好ましく、トマト又はジャガイモ植物が非常に特に好ましい。
【0084】
好ましい実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関し、ここでタンパク質をコードする外来核酸分子は、外来核酸分子のコドンが、元の生物のそれぞれのタンパク質をコードする核酸分子のコドンと比較して改変されていることを特徴とする。特に好ましくは、外来核酸分子のコドンは改変され、それらは、そのゲノム中にそれらが組込まれた、又は、組込まれるはずである植物細胞又は植物のコドン使用頻度に適応するようにする。
【0085】
遺伝コードの縮重のため、アミノ酸は1つ又は複数のコドンによりコードされうる。様々な生物において、アミノ酸をコードするコドンを異なる頻度で使用する。コード核酸配列のコドンを、ゲノム中に発現させるべき配列が組込まれるはずである植物細胞又は植物におけるそれらの使用頻度に適応させることは、特に植物細胞又は植物における、増加量の翻訳タンパク質及び/又は問題になっているmRNAの安定性に寄与しうる。問題になっている植物細胞又は植物におけるコドン使用頻度は、特定のコドンが特定のアミノ酸をコードするために使用される頻度について、問題になっている生物のコード核酸配列を可能な限り多く検証することにより、当業者により決定できる。特定の生物のコドン使用頻度は当業者に公知であり、コンピュータプログラムを使用した簡単で迅速な方法で決定できる。適したコンピュータプログラムは公的にアクセス可能であり、無料で、とりわけ、インターネット(例えば、http://gcua.schoedl.de/;http://www.kazusa.or.jp/codon/;http://www.entelechon.com/eng/cutanalysis.html)で提供される。コード核酸配列のコドンを、ゲノム中に発現させるべき配列が組込まれるはずである植物細胞又は植物におけるそれらの使用頻度に適応させることは、インビトロ突然変異生成により、又は、好ましくは、遺伝子配列のデノボ合成により行うことができる。核酸配列のデノボ合成のための方法は当業者に公知である。デノボ合成は、例えば、最初に個々の核酸オリゴヌクレオチドを合成すること、これらをそれに相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすること、それによりそれらがDNA二本鎖を形成するようにし、そして次に個々の二本鎖オリゴヌクレオチドを連結すること、それにより所望の核酸配列が得られるようにすることにより行うことができる。コドンが特定の標的生物に使用される頻度の適応を含む、核酸配列のデノボ合成は、このサービスを提供する会社(例えば、Entelechon GmbH, Regensburg, Germany)へ供給することもできる。
【0086】
本発明に関連して、「同一性」という用語は、少なくとも60%、特に同一性において、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、そして、特に好ましくは少なくとも95%のタンパク質をコードする、核酸分子のコード領域の全長又はアミノ酸配列の全長にわたる配列同一性を意味する。本発明に関連して、「同一性」という用語は、パーセントで表わされる、他のタンパク質/核酸と同一のアミノ酸/ヌクレオチドの数(同一性)を意味すると理解すべきである。好ましくは、ヒアルロナン合成酵素の活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号2の下に与えるアミノ酸配列との比較により決定し、ヒアルロナン合成酵素の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号1又は配列番号3の下に与える核酸配列との比較により決定し、コンドロイチン合成酵素の活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号5の下に示すアミノ酸配列との比較により決定し、又は、コンドロイチン合成酵素の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号4の下に示す核酸配列との比較により決定し、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素の活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号7の下に示すアミノ酸配列との比較により決定し、又は、ヘパリン/ヘパロサン合成酵素の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号6の下に示す核酸配列との比較により決定し、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号9の下に示すアミノ酸配列との比較により決定し、又は、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号8の下に示す核酸配列との比較により決定し、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号11の下に与えるアミノ酸配列との比較により決定し、又は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号10の下に示す核酸配列との比較により決定する(他のタンパク質/核酸とコンピュータプログラムを用いて)。互いに比較すべき配列が異なる長さである場合、同一性は、より短い配列がより長い配列と共有するアミノ酸の数のパーセントでの同一性を決定することにより決定すべきである。好ましくは、同一性は、公知の公的に利用可能なコンピュータプログラムClustalW(Thompson et al., Nucleic Acids Research 22 (1994), 4673-4680)を使用して決定する。ClustalWは、Julie Thompson(Thompson@EMBL-Heidelberg.DE)及びToby Gibson(Gibson@EMBL-Heidelberg.DE)、European Molecular Biology Laboratory(Meyerhofstrasse 1, D 69117 Heidelberg, Germany)により公的に利用可能にされている。ClustalWは、また、種々のインターネットページから、とりわけ、IGBMC(Institut de Genetique et de Biologie Moleculaire et Cellulaire, B.P.163, 67404 Illkirch Cedex, France; ftp://ftp−igbmc.u−strasbg.fr/pub/)から、ならびに、EBI(ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/software/)及びEBI(European Bioinformatics Institute, Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge CB10 1SD, UK)の全ての類似のインターネットページからダウンロードできる。
好ましくは、バージョン1.8のClustalWコンピュータプログラムを使用し、本発明に関連して記載するタンパク質と他のタンパク質の間の同一性を決定する。ここで、パラメーターを以下の通りに設定しなければならない:KTUPLE=1、TOPDIAG=5、WINDOW=5、PAIRGAP=3、GAPOPEN=10、GAPEXTEND=0.05、GAPDIST=8、MAXDIV=40、MATRIX=GONNET、ENDGAPS(OFF)、NOPGAP、NOHGAP。
好ましくは、バージョン1.8のClustalWコンピュータプログラムを使用し、例えば、本発明に関連して記載する核酸分子のヌクレオチド配列と他の核酸分子のヌクレオチド配列の間の同一性を決定する。ここで、パラメーターを以下の通りに設定しなければならない:KTUPLE=2、TOPDIAGS=4、PAIRGAP=5、DNAMATRIX:IUB、GAPOPEN=10、GAPEXT=5、MAXDIV=40、TRANSITIONS:非加重。
【0087】
同一性は、さらに、問題になっている核酸分子又はそれらによりコードされるタンパク質の間の機能的及び/又は構造的な等価性が存在することを意味する。上に記載する分子と相同であり、これらの分子の派生物を表わす核酸分子は、一般的に、同じ生物学的機能を有する改変を表わすこれらの分子のバリエーションである。それらは、自然発生のバリエーション、例えば、他の種からの配列、又は突然変異のいずれかでありうるが、ここでこれらの突然変異は自然の方法で発生したかもしれず、又は、標的突然変異生成により導入された。さらに、バリエーションは合成的に産生された配列でありうる。対立遺伝子変異体は、自然発生する変異体又は合成的に産生された変異体又は組換えDNA技術により生成された変異体のいずれかでありうる。特別な形態の派生物は、例えば、遺伝コードの縮重による、本発明に関連して記載する核酸分子とは異なる核酸分子である。
【0088】
異なる核酸分子の派生物によりコードされるタンパク質は、特定の共通する特徴を有する。
これらは、例えば、生物学的活性、基質特異性、分子量、免疫学的反応性、立体構造などでありうる。
【0089】
本発明は、さらに、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする、及び、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする、及び/又は、UDP−GlcNAcアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする、植物細胞又は植物のゲノム中に組込まれた外来核酸分子が、植物細胞において転写を開始する調節エレメント(プロモーター)に連結されていることを特徴とする、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物を提供する。これらは同種又は異種のプロモーターでありうる。プロモーターは、構成的、組織特異的、発生特異的、又は、外部因子(例えば、化学物質の適用後、熱及び/又は冷気、渇水、疾患などの非生物因子の作用による)により調節されうる。ここで、グルコサミノグリカン合成酵素又はGlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質又はUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物のゲノム中に組込まれ、各々の場合において、同じプロモーターに付着できる、又は、異なるプロモーターを個々の配列に付着できる。ここで、2つ又は3つのプロモーターが、任意の組み合わせで存在でき、各々の場合において、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物においてグルコサミノグリカン合成酵素、又は、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、又は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする関連核酸分子に付着される。
【0090】
本発明の好ましい実施態様は、グルコサミノグリカン合成酵素、又は、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、又は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子からなる群より選択される、少なくとも1つの外来核酸分子、特に好ましくは少なくとも2つの外来核酸分子、特に好ましくは3つの外来核酸分子が、組織特異的プロモーターに連結される、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物に関する。好ましい組織特異的プロモーターは、特異的に植物の塊茎、果実もしくは種子細胞、又は葉において転写開始を開始するプロモーターである。
【0091】
一般的に、植物細胞において活性である各プロモーターは、グルコサミノグリカン合成酵素、又は、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、又は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の発現に適する。
ここで、プロモーターは、発現が、構成的である、又は、特定の組織中、植物発生の特定の時点又は外部因子により決定される時間点だけであるように選んでよい。植物に関して、及び、発現される核酸分子に関して、プロモーターは同種又は異種でありうる。
適したプロモーターは、例えば、構成的発現のためのカリフラワーモザイクウイルスの35S RNSのプロモーター又はトウモロコシに由来するユビキチンプロモーター(Christensen and Quail, 1996, Transgenic Research 5(3), 213-218)、キビからのカフィリン(kafirin)プロモーター(De Rose et al., 1996, Plant Molecular Biology 32 1029-1035; Mishra et al., 2007, Molecular Biology Reports online: 2 February 2007, DOI: 10.1007/s11033-007-9056-8)又はCestrum YLCVプロモーター(Yellow Leaf Curling Virus; WO 01 73087;Stavolone et al., 2003, Plant Mol.Biol.53, 703-713)、ジャガイモにおける塊茎特異的発現のためのパタチンゲン(patatingen)プロモーターB33(Rocha-Sosa et al., EMBO J. 8 (1989), 23-29)、又は、トマトのための果実特異的プロモーター(Montgomery et al., 1993, Plant Cell 5, 1049-1062)、例えば、トマトからのポリガラクツロナーゼプロモーター(Montgomery et al., 1993, Plant Cell 5, 1049-1062)又はトマトからのE8プロモーター(Metha et al., 2002, Nature Biotechnol. 20(6), 613-618)又はモモからのACCオキシダーゼプロモーター(Moon and Callahan, 2004, J. Experimental Botany 55 (402), 1519-1528)又は光合成活性組織においてのみ発現を確実にするプロモーター、例えば、ST−LS1プロモーター(Stockhaus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 7943-7947; Stockhaus et al., EMBO J. 8 (1989), 2445-2451)、又は、胚乳特異的発現のために、コムギからのHMWGプロモーター、トウモロコシからのUSPプロモーター、ファセオリンプロモーター、ゼイン遺伝子のプロモーター(Pedersen et al., Cell 29 (1982), 1015-1026; Quatroccio et al., Plant Mol. Biol. 15 (1990), 81-93)、グルテリンプロモーター(Leisy et al., Plant Mol. Biol. 14 (1990), 41-50; Zheng et al., Plant J. 4 (1993), 357-366; Yoshihara et al., FEBS Lett. 383 (1996), 213-218)又はshrunken−1プロモーター(Werr et al., EMBO J. 4 (1985), 1373-1380)である。しかし、外部因子により決定される時間点でだけ活性であるプロモーターを使用することも可能である(例えば、WO 9307279を参照のこと)。ここで、特に興味深いのは、簡単な誘導を許すヒートショックタンパク質のプロモーターでありうる。さらに、種子特異的プロモーター、例えば、ソラマメ(Vicia faba)及び他の植物における種子特異的発現を確実にするソラマメからのUSPプロモーターなどを使用することが可能である(Fiedler et al., Plant Mol. Biol. 22 (1993), 669-679; Baumlein et al., Mol. Gen. Genet. 225 (1991), 459-467)。
【0092】
藻類感染ウイルスのゲノム中に存在するプロモーターの使用は、また、植物において核酸配列を発現させるために適する(Mitra et al., 1994, Biochem. Biophys Res Commun 204(1), 187-194; Mitra and Higgins, 1994, Plant Mol Biol 26(1), 85-93, Van Etten et al., 2002, Arch Virol 147, 1479-1516)。
【0093】
本発明に関連して、「組織特異的」という用語は、発現(例えば、転写の開始)の、特定の組織への実質的な限定を意味すると理解すべきである。
【0094】
本発明に関連して、「塊茎、果実、又は種子細胞」という用語は、塊茎、果実、又は種子中に存在する全ての細胞を意味すると理解すべきである。
【0095】
本発明に関連して、「同種プロモーター」という用語は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物の産生のために使用する植物細胞又は植物に自然に存在する(植物細胞又は植物に関して同種である)プロモーターを意味する、又は、配列が単離された生物における(発現させるべき核酸分子に関して同種である)遺伝子の発現調節を調節するプロモーターを意味すると理解すべきである。
【0096】
本発明に関連して、「異種プロモーター」という用語は、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物の産生のために使用する植物細胞又は植物に自然に存在しない(植物細胞又は植物に関して異種である)プロモーターを意味する、又は、発現させるべき核酸配列が単離された生物において、核酸配列の発現調節のために自然に存在しない(発現させるべき核酸分子に関して異種である)プロモーターを意味すると理解すべきである。
【0097】
また、ポリAテールを、核酸分子のmRNA転写産物に付加するために役立つ終結配列(ポリアデニル化シグナル)が存在してよい。ポリAテールは転写産物の安定化に作用すると考えられる。そのようなエレメントは文献(Gielen et al., EMBO J. 8 (1989), 23-29を参照のこと)に記載されており、所望の通りに交換できる。
【0098】
また、イントロン配列が、プロモーターとコード領域の間に、又は、タンパク質をコードする外来核酸分子に存在することも可能である。そのようなイントロン配列は、植物における発現の安定性及び発現増加をもたらしうる(Callis et al., 1987, Genes Devel. 1, 1183-1200; Luehrsen, and Walbot, 1991, Mol. Gen. Genet. 225, 81-93; Rethmeier et al., 1997; Plant Journal 12(4), 895-899; Rose and Beliakoff, 2000, Plant Physiol. 122 (2), 535-542; Vasil et al., 1989, Plant Physiol. 91, 1575-1579; XU et al., 2003, Science in China Series C Vol.46 No.6, 561-569)。適したイントロン配列は、例えば、トウモロコシからのsh1遺伝子の第1イントロン、トウモロコシからのポリユビキチン遺伝子の第1イントロン、コメからのEPSPS遺伝子の第1イントロン、又は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのPAT1遺伝子の第1の2つのイントロンの1つである。
【0099】
本発明は、また、本発明の遺伝子改変植物細胞を含む植物に関する。そのような植物は、本発明の遺伝子改変植物細胞からの再生により産生してよい。
【0100】
さらなる実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子改変植物の回収可能な植物部分、例えば、果実、貯蔵根及び他の根、花、芽、新芽、葉又は茎、好ましくは種子、果実、又は塊茎、本発明の遺伝子改変植物細胞を含むこれらの回収可能な部分に関する。
【0101】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の回収可能な植物部分は、本発明の遺伝子改変植物細胞を含む本発明の遺伝子改変植物の加工可能又は消費可能な部分である。
【0102】
本発明に関連して、「加工可能な部分」という用語は、食材又は飼料を調製するために使用される植物部分を意味すると理解すべきであり、それらは工業的方法のための原料源として、薬学的産物の産生のための原料源として、又は、化粧品産物の産生のための原料源として使用される。
【0103】
本発明に関連して、「消費可能な部分」という用語は、ヒト用の食物として役立つ、又は、動物飼料として使用される植物部分を意味すると理解すべきである。
【0104】
本発明は、また、本発明の遺伝子改変植物細胞を含む本発明の遺伝子改変植物の繁殖物質に関する。
【0105】
ここで、「繁殖物質」という用語は、栄養的又は有性的な経路を介して子孫を生成するために適した植物の成分を含む。栄養繁殖に適するのは、例えば、挿し木、カルス培養物、根茎、又は塊茎であるが、しかし、また、例えば、プロトプラスト及び細胞培養である。有性方法を用いて産生される繁殖物質は、例えば、果実、種子、実生などを含む。繁殖物質は、好ましくは、塊茎、果実、又は種子の形態を取る。
【0106】
好ましくは、本発明は、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を含む本発明の繁殖物質又は本発明の植物の回収可能部分に関する。特に好ましくは、本発明の繁殖物質又は本発明の植物の回収可能部分は、グルコサミノグリカンを合成する本発明の繁殖物質又は本発明の植物の回収可能部分である。好ましくは、グルコサミノグリカンは、コンドロイチン、ヘパリン/ヘパラン、又はヒアルロナン、特に好ましくはヒアルロナンである。
【0107】
本発明に関連して、「ジャガイモ植物」又は「ジャガイモ」という用語は、ナス属の植物種、特にナス属及び特にソラナム・チュベロサム(Solanum tuberosum)の塊茎産生種を意味すると理解すべきである。
【0108】
本発明に関連して、「トマト植物」又は「トマト」という用語は、リコペルシコン属、特にリコペルシコン・エスカレンタム(Lycopersicon esculentum)の植物種を意味すると理解すべきである。
【0109】
本発明のさらなる利点は、本発明の遺伝子改変植物の回収可能部分、繁殖物質、加工可能部分、又は消費可能部分が、グルコサミン合成酵素をコードする外来核酸分子だけを含む植物よりも多くのグルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を含むことである。したがって、本発明の遺伝子改変植物は、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を単離できる原材料としての使用にだけでなく、予防的又は治療的な特徴(例えば、変形性関節症の予防ため、US 6,607,745)を有する食材/飼料として直接的に、又は、食材/飼料の調製のためにも使用できる。本発明の遺伝子改変植物は、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子だけを有する植物よりも高いグルコサミノグリカン含量を有するため、そのような食材/飼料の産生は、より少量の本発明の遺伝子改変植物の回収可能部分、繁殖物質、加工可能、又は消費可能部分を必要とする。本発明の遺伝子改変植物の消費可能部分が、例えば、直接的にいわゆる「栄養補給食品」として消費される場合、比較的少量の物質を摂取することでさえポジティブな効果を達成することが可能になる。これは、とりわけ、動物飼料の産生において特に有用でありうる。なぜなら、高過ぎる植物成分含量を有する動物飼料は、種々の動物種のための飼料として不適であるからである。
グルコサミノグリカン、特にヒアルロナンの高い水結合能力を理由に、本発明の遺伝子改変植物の回収可能部分、繁殖物質、加工可能部分、又は消費可能部分は、固型化した食材/飼料を産生する際に、より少ない増粘剤を必要とするとの利点を有する。このように、例えば、ゼリーの産生にはより少ない砂糖が必要になり、これは健康に及ぼす追加のポジティブな効果と関連する。粗植物物質の脱水に必要となる食材/飼料の産生において、本発明の遺伝子改変植物の回収可能部分、繁殖物質、加工可能部分、又は消費可能部分を使用する利点は、より少ない水を問題になっている植物材料から除去しなければならない事実において、より低い産生コスト、及び、より穏やかな調製方法(より低い及び/又はより短い加熱)により、問題になっている食材/飼料の栄養価の上昇をもたらすことにある。このように、例えば、トマトケチャップの産生において、所望の稠度を達成するために、ほとんどエネルギーを導入する必要がない。
【0110】
本発明は、さらに、以下を含む植物を産生するための方法を提供する
a)植物細胞の遺伝的改変、ここで遺伝子改変は以下の工程i〜iiiを含む
i)グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子の植物細胞中への導入
ii)グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼをコードする外来核酸分子の植物細胞中への導入
iii)UDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼをコードする外来核酸分子の植物細胞中への導入
ここで工程i〜iiiは任意の順番で個々に行うことができ、又は、工程i〜iiiの任意の組み合わせを同時に行ってよい
b)工程a)i及び/又はa)ii及び/又はa)iiiiからの植物細胞からの植物の再生;
c)適宜、工程b)の植物を使用したさらなる植物の生成、
ここで、適宜、植物細胞は、工程b)又はc)の植物から単離し、そして、方法工程a)〜c)を、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子及びグルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を有する植物が生成されるまで繰り返す。
【0111】
植物を産生するための本発明の方法の好ましい実施態様は、以下を含む、植物を調製するための方法に関する
a)植物細胞の遺伝的改変、ここで遺伝子改変は以下の工程i〜iiiを任意の順番で含み、又は、以下の工程i〜iiiの任意の組み合わせを個々に又は同時に行う、
i)グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子の植物細胞中への導入
ii)グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼをコードする外来核酸分子の植物細胞中への導入
iii)UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼをコードする外来核酸分子の植物細胞中への導入
b)以下の工程
i)a)i
ii)a)ii
iii)a)iii
iv)a)i及びa)ii、
v)a)i及びa)iii、
vi)a)ii及びa)iii、又は
vii)a)i及びa)ii及びa)iii
の遺伝子改変を含む植物細胞からの植物の再生
c)以下の工程
i)b)i工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、
ii)b)i工程の植物の植物細胞中へのa)iiiの遺伝子改変の導入、
iii)b)i工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、及び同時に、工程a)iiiの遺伝子改変の導入、
iv)b)ii工程の植物の植物細胞中へのa)iの遺伝子改変の導入、
v)b)ii工程の植物の植物細胞中へのa)iiiの遺伝子改変の導入、
vi)b)ii工程の植物の植物細胞中へのa)iの遺伝子改変の導入、及び同時に、工程a)iiiの遺伝子改変の導入、
vii)b)iii工程の植物の植物細胞中へのa)iの遺伝子改変の導入、
viii)b)iii工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、
ix)b)iii工程の植物の植物細胞中へのa)iの遺伝子改変の導入、及び同時に、工程a)iiの遺伝子改変の導入、
x)b)iv工程の植物の植物細胞中へのa)iiiの遺伝子改変の導入、
xi)b)v工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、又は
xii)b)vi工程の植物の植物細胞中へのa)iの遺伝子改変、
の植物の植物細胞中への遺伝子改変の導入及び植物の再生、
d)以下の工程
i)c)i工程の植物の植物細胞中へのa)iiiの遺伝子改変の導入、
ii)c)ii工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、
iii)c)iv工程の植物の植物細胞中へのa)iiiの遺伝子改変の導入、
iv)c)v工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、
v)c)vii工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、
vi)c)vii工程の植物の植物細胞中へのa)iの遺伝子改変の導入、又は
vii)c)ix工程の植物の植物細胞中へのa)iiの遺伝子改変の導入、
の植物の植物細胞中への遺伝子改変の導入及び植物の再生
e)適宜、工程b)vii c)iii、c)vi、c)x、c)xi、c)xiiのいずれか、又は、工程d)i〜d)viiのいずれかの植物を用いてさらなる植物を生成すること。
【0112】
植物を産生するための本発明の方法の工程a)の外来核酸分子を導入するために、任意の利用可能な方法を使用できる。植物細胞の形質転換のための種々の方法が既に記載されており、ここで、対応する方法で適用できる。植物を産生するための本発明の方法の工程a)の方法工程が同時でないが、連続的に行える場合、同一の又は異なる方法を個々の形質転換工程のために使用してよい。
【0113】
植物を産生するための本発明の方法の工程b)、ならびに、適宜、工程c)及びd)の植物の再生を、当業者に公知の方法により行うことができる(例えば、Plant Cell Culture Protocols, 1999, edt. by R. D. Hall, Humana Press, ISBN 0-89603-549-2に記載)。
【0114】
植物を産生するための本発明の方法の(方法に依存した、工程c)又は工程e)の)さらなる植物の生成は、例えば、栄養繁殖により(例えば、挿し木を介して、塊茎、又はカルス栽培及び全植物の再生を介して)又は有性繁殖により起こりうる。ここで、有性繁殖は、好ましくは、制御された方法で行われ、即ち、特定の特性を伴う選択された植物を別のものと交配し、繁殖させる。選択は、好ましくは、さらなる植物(方法に依存して、工程c)又は工程e)に従って生成される)が先行する工程において導入された外来核酸分子を有するように行われる。
【0115】
植物を産生するための本発明の方法において、本発明の遺伝子改変植物細胞のための遺伝子改変を、同時に、又は、連続工程において、任意の組み合わせで行うことができる。外来核酸分子がまだ導入されていない野生型植物及び野生型植物細胞の両方を使用することが可能である、又は、既に遺伝子改変されており、1つ又は複数の外来核酸分子が既に導入されている植物細胞又は植物を使用することが可能である。
【0116】
植物を産生するための本発明の方法の工程a)における、植物細胞又は植物中に外来核酸分子を導入する遺伝子改変において、外来核酸分子は単一の核酸分子又は複数の核酸分子でよい。このように、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする、又は、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする、又は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子は、単一の核酸分子上に一緒に存在でき、又は、言及した外来核酸分子の2つが単一の核酸分子上に一緒に存在しうる、及び、第3の外来核酸分子が別の核酸分子上に任意の可能な組み合わせで存在しうる、又は、言及した外来核酸分子の全て3つが個々の別々の核酸分子上に各々存在しうる。
【0117】
外来核酸分子又は組換え核酸分子の好ましい特性は、本発明の植物細胞又は本発明の植物に関連して既に上に記載されており、それらは植物を産生するための本発明の工程の実践において対応して適用できる。
【0118】
さらなる好ましい実施態様において、植物を産生するための本発明の方法を、本発明の遺伝子改変植物を産生するために使用する。
【0119】
本発明は、また、ヒアルロナンを合成する植物を産生するための本発明の方法により入手可能な植物を提供する。
【0120】
本発明は、さらに、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を産生するための方法に関し、本発明の遺伝子改変植物細胞から、本発明の遺伝子改変植物から、本発明の繁殖物質から、本発明の回収可能部分から、又は、植物を産生するための本発明の方法により入手可能な植物もしくはこれらの植物の部分からグルコサミノグリカンを抽出する工程を含む。好ましくは、そのような方法は、また、本発明の栽培された遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能な植物部分、本発明の加工可能な植物部分を、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を抽出する前に回収する工程、及び、特に好ましくは、さらに、本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物を、回収前に栽培する工程を含む。
【0121】
細菌又は動物組織とは対照的に、植物組織はグルコサミノグリカン分解酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)を有さない。したがって、既に上に記載した通り、植物組織からのグルコサミノグリカンの抽出は、比較的簡単な方法を使用して可能である。必要な場合、上に記載した、グルコサミノグリカンを含む植物細胞又は組織の水性抽出物は、当業者に公知の方法、例えば、エタノールでの繰り返し沈殿などを使用して精製できる。ヒアルロナンを精製するための好ましい方法は、一般方法事項3の下に記載されている。
【0122】
グルコサミノグリカンを本発明の遺伝子改変植物細胞又は本発明の遺伝子改変植物から抽出するための既に記載した方法は、また、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を、ヒアルロナンを合成する植物を調製するための本発明の繁殖物質から、本発明の回収可能な植物部分から、又は、本発明の方法により入手可能な植物又はこれらの植物の部分から単離するために適する。
【0123】
本発明は、また、グルコサミノグリカンを調製するための本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能な植物部分、又は植物を産生するための本発明の方法により入手可能な植物の使用を提供する。
【0124】
本発明は、さらに、本発明の遺伝子改変植物細胞を含む組成物に関する。ここで、植物細胞が無傷であるのか、又は、もはや無傷ではないのかは重要ではない。なぜなら、それらは、例えば加工により破壊されているからである。組成物は、好ましくは、食材又は飼料、薬学的産物又は化粧品産物である。
【0125】
本発明は、好ましくは、本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能部分、又は、本発明の方法により入手可能な植物の成分を含む、及び、組換え核酸分子を含む組成物を提供し、ここで、組換え核酸分子は、それらがグルコサミノグリカン合成酵素、及び、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質、及び、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含むことを特徴とする。
【0126】
植物細胞又は植物のゲノム中への外来核酸分子の安定的組込みによって、外来核酸分子が、植物細胞又は植物のゲノム中への組込み後、ゲノムの植物核酸配列により隣接される。したがって、好ましい実施態様において、本発明の組成物は、本発明の組成物中に存在する組換え核酸分子がゲノムの植物核酸配列により隣接されることを特徴とする。
ここで、ゲノムの植物核酸配列は、組成物を調製するために使用される植物細胞又は植物のゲノム中に自然に存在する任意の配列でよい。
【0127】
本発明の組成物中に存在する組換え核酸分子は、個々の又は異なる組換え核酸分子でありうるが、ここで、グルコサミノグリカン合成酵素(例えば、ヒアルロナン合成酵素)、及び、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、及び、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子が、1つの核酸分子中に存在し、又は、言及した核酸分子が別々の核酸分子に存在する。グルコサミノグリカン合成酵素(例えば、ヒアルロナン合成酵素)、又は、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、及び、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子が、単一の組換え核酸分子上に一緒に存在しうる、又は、言及した核酸分子の2つが単一の組換え核酸分子上に一緒に存在しうる、そして、第3の核酸分子が別の組換え核酸分子上に任意の可能な組み合わせで存在しうる、又は、言及した全て3つの核酸分子が各場合において個々の別々の組換え核酸分子上に存在しうる。グルコサミノグリカン合成酵素(例えば、ヒアルロナン合成酵素)をコードする、又は、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする、又は、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子がどのように本発明の組成物中に存在するのかに依存して、それらは同一の又は異なるゲノム植物核酸配列により隣接されうる。
【0128】
本発明の組成物が組換え核酸分子を含むことは、当業者に公知の方法、例えば、ハイブリダイゼーションに基づく方法を使用し、又は、好ましくは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に基づく方法を使用して実証されうる。
【0129】
既に上に言及した通り、本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能な植物部分、又は、本発明の方法により入手可能な植物を、食材/飼料を調製するために使用することが可能である。しかし、工業的用途のための原材料としての使用は、また、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を単離しなくても可能である。このように、例えば、本発明の遺伝子改変植物又は本発明の遺伝子改変植物の部分を、農業栽培下の領域に適用し、土壌の水分結合の増加を達成できる。さらに、本発明の遺伝子改変植物又は本発明の遺伝子改変植物細胞を、乾燥剤を調製するために(例えば、水分感受性品目の輸送時での使用のために)又は液体の吸収剤として(例えば、おむつ中で、又は、こぼれた水性液体を吸収するために)使用できる。そのような用途のために、本発明の遺伝子改変植物の全体、本発明の遺伝子改変植物の部分、又は、本発明の粉砕された(例えば、挽かれた)遺伝子改変植物、又は本発明の遺伝子改変植物部分を、適宜、使用することが可能である。挽かれた植物又は植物部分を使用する用途に適するのは、特に、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を含むが、しかし、低い割合の水だけを含む植物部分である。これらは、好ましくは、穀物植物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ライムギ、オートムギ、オオムギ、サゴ、又はモロコシ)の穀物である。本発明の遺伝子改変植物細胞及び本発明の遺伝子改変植物が、グルコサミノグリカン合成酵素をコードする1つの外来核酸分子だけを有する植物よりも高いグルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)含量を有するため、これらと比較し、本発明の遺伝子改変植物細胞及び本発明の遺伝子改変植物を使用する場合にはほとんど材料を工業的用途のために使用する必要がない。
【0130】
本発明は、また、本発明の組成物を調製するための方法を提供し、ここで本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能な植物部分、又は、植物を産生するための本発明の方法により入手可能な植物を使用する。本発明の組成物を調製するための方法は、好ましくは、食材又は飼料を調製するための方法、薬学的産物を調製するための方法、又は、化粧品産物を調製するための方法である。
【0131】
食材又は飼料を調製するための方法は、当業者に公知である。本発明の遺伝子改変植物又は本発明の植物部分の工業領域での使用のための方法も当業者に公知であり、とりわけ、本発明の遺伝子改変植物又は本発明の植物部分を粉砕すること、又は、挽くことを含む;しかし、それらにもっぱら限定されない。食材/飼料を調製するため、又は、工業領域での使用のために本発明の材料を使用することに起因する利点のいくつかが、既に上に記載されている。
【0132】
組成物を調製するための本発明の方法は、特に好ましくは、グルコサミノグリカン(例えば、ヒアルロナン)を含む組成物を調製するための方法である。
【0133】
本発明の組成物を調製するための方法により入手可能な組成物は、同様に、本発明により提供される。
【0134】
本発明は、また、本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能な植物部分、又は、本発明の方法により入手可能な植物の、本発明の組成物を調製するための植物を産生するための使用に関する。好ましくは、本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖物質、本発明の回収可能な植物部分、又は、本発明の方法により入手可能な植物の、食材又は飼料を調製するため、薬学的産物を調製するため、又は、化粧品産物を調製するための植物を産生するための使用である。
【0135】
配列の説明
配列番号1:パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのヒアルロナン合成酵素をコードする核酸配列。
配列番号2:パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのヒアルロナン合成酵素のアミノ酸配列。アミノ酸配列は配列番号1に由来しうる。
配列番号3:パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのヒアルロナン合成酵素をコードする合成核酸配列。示した配列のコドンの合成は、それらが植物細胞でのコドンの使用に適応されるように実施した。示した核酸配列は、配列番号2の下に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
配列番号4:パスツレラ・マルトシダからのコンドロイチン合成酵素の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号5:パスツレラ・マルトシダからのコンドロイチン合成酵素の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号4に由来しうる。
配列番号6:パスツレラ・マルトシダからのヘパロサン合成酵素の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号7:パスツレラ・マルトシダからのヘパロサン合成酵素の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号6に由来しうる。
配列番号8:サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号9:サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号8に由来しうる。
配列番号10:サッカロマイセス・セレビシエからのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号11:サッカロマイセス・セレビシエからのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号10に由来しうる。
配列番号12:YLCVプロモーター、制限酵素部位、アグロバクテリウムからのocsターミネーターのポリアデニル化シグナル配列、及び、アグロバクテリウムからのnosターミネーターのポリアデニル化シグナル配列を含む発現カセットの核酸配列。
配列番号13:MCS(「マルチクローニングサイト」)を調製するための合成オリゴヌクレオチド。
配列番号14:MCS(「マルチクローニングサイト」)を調製するための合成オリゴヌクレオチド。
配列番号15:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号16:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号17:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号18:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号19:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号20:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号21:大腸菌からのGlcN−1−Pムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号22:大腸菌からのGlcN−1−Pムターゼの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号21に由来しうる。
配列番号23:PCRプライマーとして使用した合成オリゴヌクレオチド。
配列番号24:PCRプライマーとして使用した合成オリゴヌクレオチド。
配列番号25:大腸菌からのグルコサミン1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質をコードする核酸配列(glmu)。
配列番号26:大腸菌からのグルコサミン1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号25に由来しうる。
配列番号27:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号28:PCR反応に使用したプライマー。
配列番号29:サッカロマイセス・セレビシエからのホスホアセチルグルコサミン(GlcN−P)ムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号30:サッカロマイセス・セレビシエからのホスホアセチルグルコサミンムターゼの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。示したアミノ酸配列は配列番号30に由来しうる。
【0136】
一般方法
本発明に関連して使用できる方法を以下に記載する。これらの方法は特定の実施態様である;しかし、本発明はこれらの方法に限定されない。本発明を、記載の方法を改変することにより、及び/又は、個々の方法又は方法の部分を代わりの方法又は方法の代わりの部分により交換することにより、同じ方法で行うことができることは、当業者に公知である。
【0137】
1.ジャガイモ植物の形質転換
ジャガイモ植物を、アグロバクテリウムを用いて、Rocha-Sosa et al.(EMBO J. 8, (1989), 23-29)に記載の通りに、形質転換した。
2.植物組織からのヒアルロナンの例を使用したグルコサミノグリカンの単離
植物組織においてヒアルロナンの存在を検出し、ヒアルロナン含量を測定するために、植物材料を以下の通りに用意した:200μlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)を約0.3gの植物材料に加え、混合物を実験用振動ボールミル(MM200, Retsch, Germany)中で粉砕した(30Hzで30秒間)。さらに800μlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)を次に加え、混合物を十分に混合した(例えば、ボルテックスミキサーを使用)。細胞残骸及び不溶性成分を、16000xgで5分間遠心分離することにより上清から分離した。植物の全地上部分中のヒアルロナンの量を測定するために、植物の全地上部分を培養基質の上約1cm〜3cmで切断し、小片に切り、次に、ワーリングブレンダーを使用して、一般方法事項3の下に記載の通りに粉砕した。ヒアルロナン含量を測定するために、一定分量を、次に、得られた遠心分離上清から除去してよい(一般方法事項3を参照のこと)。
3.ヒアルロナンの例を使用したグルコサミノグリカンの精製
粉砕した植物材料又は植物の全地上部分を、水(約100mlの水、脱塩、伝導率≧18MΩ、各場合において100gの植物材料)の添加後、ワーリングブレンダー中で、最高速度で約30秒間粉砕した。細胞残骸を次に茶こしを使用して除去した。除去した細胞残骸を300mlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)中に再懸濁し、茶こしを使用して再び除去した。得られた2つの懸濁液(100ml+300ml)を合わせ、13000xgで15分間遠心分離した。NaClを、最終濃度が1%に達するまで、得られた遠心分離上清に加えた。NaClが溶液になった後、沈殿を、2倍容積のエタノールの添加、続く十分な混合及び−20℃で一晩のインキュベーションにより行った。混合物を次に13000xgで15分間遠心分離した。この遠心分離後に得られた沈降沈殿物を100mlのバッファー(50mM Tris HCl, pH8, 1mM CaCl)中に溶解し、プロテイナーゼKを次に最終濃度100μg/mlまで加え、溶液を42℃で2時間インキュベートした。これに95℃で10分間のインキュベーションが続いた。さらに1回、NaClを、最終濃度が1%に達するまで、この溶液に加えた。NaClが溶液になった後、別の沈殿を、2倍容積のエタノールの添加、十分な混合、及び−20℃で約96時間のインキュベーションにより行った。これに13000xgで15分間の遠心分離が続いた。この遠心分離後に得られた沈降沈殿物を30mlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)中に溶解し、さらに1回、NaClを最終濃度1%まで加えた。2倍容積のエタノールの添加、十分な混合、及び−20℃で一晩のインキュベーションにより、別の沈殿を行った。続く13000xgで15分間の遠心分離後に得られた沈殿物を、20mlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)中に溶解した。
さらなる精製を遠心ろ過により行った。この目的のために、各場合において、5mlの溶解した沈殿物をメンブレンフィルター(CentriconAmicon,孔幅10 000 NMWL, Prod. No. UCF8 010 96)に適用し、サンプルを、わずか約3mlの溶液がフィルター上に残るまで、2200xgで遠心分離した。さらに2回、各場合において、3mlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)を次にメンブレン上の溶液に加えて、各場合において、同一条件下で、最後にわずか約3mlの溶液がフィルター上に残るまで、再遠心分離した。溶液は、遠心ろ過を取り外した後、依然としてメンブレン上に存在し、メンブレンを約1.5mlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)で繰り返し(3〜5回)リンスした。依然としてメンブレン上に存在した全ての溶液及びリンスから得られた溶液を合わせ、NaClを最終濃度1%まで加え、NaClが溶液になった後、2倍容積のエタノールを加え、サンプルを混合し、沈殿物を−20℃で一晩の保存により得た。続く13000xgで15分間の遠心分離後に得られた沈殿物を4mlの水(脱塩、伝導率≧18MΩ)中に溶解し、次に凍結乾燥した(0.37mbarの圧力下で24時間、凍結乾燥機器Christ Alpha 1-4、Christ(Osterode, Germany)から)。
4.ヒアルロナンの検出及びヒアルロナン含量の測定
ヒアルロナンを市販テスト(ヒアルロン酸(HA)テストキット、Corgenix, Inc.(Colorado, USA)から、Prod. No. 029-001)を使用し、製造者の指示(これと共に記載中に参照により組み入れられる)に従って検出した。テスト原理は、ヒアルロナン(HABP)に特異的に結合するタンパク質の可用性に基づき、ELISAと同様に行い、ここで呈色反応は検証されたサンプル中のヒアルロナン含量を示す。ヒアルロナン値を、検量線を用いて、テストキットと共に含まれる規定量のヒアルロナンを使用して測定する。したがって、ヒアルロナンの定量的測定のために、測定すべきサンプルを、記載した限度内にある濃度で用いるべきである(例えば、限度を超えている、又は、限度に達していないかに依存し、問題になっているサンプルの希釈又は植物組織からヒアルロナンを抽出するためのより少ない水の使用)。
並列バッチで、測定すべきサンプルの一定分量を最初にヒアルロナン消化にかけ、次に市販テスト(ヒアルロン酸(HA)テストキット、Corgenix, Inc.(Colorado, USA)から、Prod. No. 029-001)を使用して測定した。ヒアルロニダーゼ消化を、ヒアルロニダーゼバッファー(0.1Mリン酸カリウムバッファー、pH 5.3;150mM NaCl)中の400μlの植物抽出物を使用し、5μg(〜3単位)のヒアルロニダーゼ(hyaluronidase type III、Sigmaから、Prod. No. H 2251)を加え、37℃で30分間インキュベートすることにより行った。各場合において、1:10希釈で、全てのサンプルを次にヒアルロナン含量の測定のために使用した。
5.GFATの活性の測定
GFATの活性を有するタンパク質の活性をRachel et al.(1996, J. Bacteriol. 178 (8), 2320-2327)に記載の通りに測定する。
GFAT−1又はGFAT−2の活性を有するタンパク質を区別するために、Hu et al.(2004, J. Biol. Chem. 279 (29), 29988-29993)に記載の方法を使用する。
【0138】
実施例
1.植物発現ベクターIR 47−71の調製
プラスミドpBinARは二成分ベクターpBin19(Bevan, 1984, Nucl Acids Res 12: 8711-8721)の派生物であり、以下の通りに構築する:カリフラワーモザイクウイルスの35S RNSのプロモーターのヌクレオチド6909〜7437を含む529bp長のフラグメントを、プラスミドpDH51(Pietrzak et al, 1986 Nucleic Acids Res. 14, 5858)からのEco RI/Kpn Iフラグメントとして単離し、pUC18のポリリンカーのEco RI及びKpn I制限酵素部位の間に連結した。この方法で、プラスミドpUC18−35Sを形成した。制限エンドヌクレアーゼHind III及びPvu IIを使用し、TiプラスミドpTiACH5のT−DNAのオクトピン合成酵素(octopine synthase)遺伝子(遺伝子3)のポリアデニル化シグナル(3’末端)を含む192bp長のフラグメント(Gielen et al, 1984, EMBO Journal 3, 835-846)(ヌクレオチド11 749−11 939)を、プラスミドpAGV40(Herrera-Estrella et al, 1983 Nature, 303, 209-213)から単離した。Sph IリンカーのPvu II制限酵素部位への付加後、フラグメントをpUC18−35SのSph I及びHind III制限酵素部位の間に連結した。これはプラスミドpA7を与えた。ここで、35Sプロモーター及びOcsターミネーターを含む全ポリリンカーを、Eco RI及びHind IIIを使用して除去し、適切に切断されたベクターpBin19中に連結した。これは植物発現ベクターpBinARを与えた(Hofgen and Willmitzer, 1990, Plant Science 66, 221-230)。ソラナム・チュベロサムからのパタチン遺伝子B33のプロモーター(Rocha-Sosa et al., 1989, EMBO J. 8, 23-29)を、Dra Iフラグメント(ヌクレオチド−1512 − +14)として、Sst I切断ベクターpUC19(末端をT4−DNAポリメラーゼを使用して平滑化した)中に連結した。これはプラスミドpUC19−B33を与えた。このプラスミドから、B33プロモーターをEco RI及びSma Iを使用して除去し、適した制限ベクターpBinAR中に連結した。これは植物発現ベクターpBinB33を与えた。
さらなるクローニング工程を容易にするために、MCS(マルチクローニングサイト)を延長した。この目的のために、2つの相補的オリゴヌクレオチドを合成し、95℃で5分間加熱し、徐々に室温まで冷却し、良好なアニーリング及びpBinB33のSal I及びKpn I制限酵素部位中へのクローニングを可能にした。この目的のために使用するオリゴヌクレオチドを配列番号13及び配列番号14の下に示す。得られたプラスミドをIR 47−71と名付けた。
【0139】
2.植物発現ベクターpBinARHygの調製
35Sプロモーター、Ocsターミネーター、及び全マルチクローニングサイトを含むフラグメントを、pA7から、制限エンドヌクレアーゼEco RI及びHind IIIを使用して除去し、同じ制限エンドヌクレアーゼを使用して切断したベクターpBIBHyg(Becker, 1990, Nucleic Acids Res. 18, 203)中にクローニングした。得られたプラスミドをpBinARHygと名付けた。
【0140】
3.クローニングベクターIC 317−204の調製
制限エンドヌクレアーゼXho I及びHind IIIを使用し、ocsターミネーターを含む核酸フラグメントをプラスミドIR 47−71から単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpBlueScript KS(Stratageneから、Prod. No. 212207)中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 306−204と名付けた。
制限エンドヌクレアーゼBam HI及びEco RIを使用し、B33プロモーターを含む核酸フラグメントをプラスミドIR 47−71から単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpBlueScript KS(Stratageneから、Prod. No. 212207)中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 314−204と名付けた。
IC 306−204から、OCSターミネーターを制限エンドヌクレアーゼBam HIを使用して単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したプラスミドIC 314−204中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 317−204と名付けた。
【0141】
4.核酸分子の合成
a)パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのヒアルロナン合成酵素をコードする核酸分子の合成
パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1のヒアルロナン合成酵素をコードする核酸配列をMedigenomix GmbH(Munich, Germany)により合成し、InvitrogenからのベクターpCR2.1(Prod. No. K2000-01)中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 323−215と名付けた。パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのHASタンパク質をコードする合成核酸配列を配列番号3の下に示す。パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1から元々単離された対応する核酸配列を配列番号1の下に示す。
b)YLCVプロモーター及びMCS、nosターミネーター及びocsターミネーターを含む核酸配列の合成
YLCVプロモーター(Stavolone et al., Plant Molecular Biology 53: 703-713, 2003)ならびに制限酵素部位Sac I及びSma Iを含むMCS(「マルチクローニングサイト」)、nosターミネーター及びocsターミネーターを含む核酸分子がEntelechon GmbHにより合成され、InvitrogenからのベクターpCR4Topo(Prod. No. K4510-20)中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 389−337と名付けた。合成核酸配列を配列番号12の下に示す。
【0142】
5.核酸分子の単離
a)GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列の単離及びクローニング
サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列(gna1)をPCRにより単離し、InvitrogenからのベクターpCR 2.1(Prod. No. K4510-20)中にクローニングした。PCRのための反応条件は以下の通りであった:
1.工程:5分、94℃
2.工程:45秒、94℃
3.工程:45秒、59℃
4.工程:45秒、72℃
5.工程:10分、72℃
6.工程:4℃
工程2〜4を35回繰り返し、手順を次に工程5で続けた。
50μlの反応バッチは、バッファー(10mM Tris−HCl(pH 9.0)、50mM KCl、及び3mM MgSO)、各場合での500nMの増幅プライマー(配列番号15及び配列番号16の下に示す)、10μlのQ溶液(Qiagen, Prod. No. 206143に含まれる)、各場合での0.2mMのデオキシリボヌクレオチド、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Prod. No.: 11304-011)、及び鋳型としての250ngのゲノム酵母DNAを含んだ。PCRを、EppendorfからのMastercycler(Prod. No. 5331 000.010)を使用して行った。
サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸配列を、配列番号8の下に示す。
得られたフラグメントのベクターpCR 2.1中へのクローニング及び配列の確認後、サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする問題になっている核酸配列を、制限エンドヌクレアーゼKpn I及びXba Iを使用して単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpA7中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 298−204と名付けた。
【0143】
b)UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列の単離及びクローニング
サッカロマイセス・セレビシエからのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列(qri)をPCRにより単離し、InvitrogenからのベクターpCR 2.1(Prod. No. K2000-01)中にクローニングした。PCRのための反応条件は以下の通りであった:
1.工程:5分、94℃
2.工程:45秒、94℃
3.工程:45秒、59℃
4.工程:45秒、72℃
5.工程:30分、72℃
6.工程:4℃
工程2〜4を35回繰り返し、手順を次に工程5で続けた。
50μlの反応バッチは、バッファー(10mM Tris−HCl(pH 9.0)、50mM KCl、及び3mM MgSO)、各場合での500nMの増幅プライマー(配列番号17及び配列番号18の下に示す)、10μlのQ溶液(Qiagen, Prod. No. 206143に含まれる)、各場合での0.2mMのデオキシリボヌクレオチド、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Prod. No.: 11304-011)、及び鋳型としての250ngのゲノム酵母DNA(Invitrogen Prod. No. 40802)を含んだ。PCRを、EppendorfからのMastercycler(Prod. NR. 5331 000.010)を使用して行った。
サッカロマイセス・セレビシエからのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸配列を、配列番号10の下に示す。
得られたフラグメントのベクターpCR 2.1中へのクローニング及び配列の確認後、サッカロマイセス・セレビシエからのUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を、制限エンドヌクレアーゼKpn I及びXba Iを使用して単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpA7中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 303−204と名付けた。
【0144】
c)GlcNAc−Pムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の単離及びクローニング
サッカロマイセス・セレビシエからのホスホアセチルグルコサミンムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列(pcm I, EC 5.4.2.3)をPCRにより単離し、InvitrogenからのベクターpCR 2.1(Prod. No. K2000-01)中にクローニングした。PCRのための反応条件は以下の通りであった:
1.工程:5分、94℃
2.工程:45秒、94℃
3.工程:45秒、59℃
4.工程:45秒、72℃
5.工程:30分、72℃
6.工程:4℃
工程2〜4を35回繰り返し、手順を次に工程5で続けた。
50μlの反応バッチは、バッファー(10mM Tris−HCl(pH 9.0)、50mM KCl、及び3mM MgSO)、各場合での500nMの増幅プライマー(配列番号27及び配列番号28の下に示す)、10μlのQ溶液(Qiagen, Prod. No. 206143に含まれる)、各場合での0.2mMのデオキシリボヌクレオチド、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Prod. No.: 11304-011)、及び鋳型としての250ngのゲノム酵母DNA(Invitrogen Prod. No. 40802)を含んだ。PCRを、EppendorfからのMastercycler(Prod. No. 5331 000.010)を使用して行った。
得られたフラグメントのベクターpCR 2.1中へのクローニング及び配列の確認後、サッカロマイセス・セレビシエからのホスホアセチルグルコサミンムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を、制限エンドヌクレアーゼKpn I及びXba Iを使用して単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpA7中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 304−204と名付けた。
【0145】
d)大腸菌からのGlcN−1−Pムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の単離及びクローニング
大腸菌からのグルコサミン1−リン酸ムターゼ(GlcN−1−Pムターゼ)の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列(glmm)をPCRにより単離し、InvitrogenからのベクターpCR 2.1(Prod. No. K2000-01)中にクローニングした。PCRのための反応条件は以下の通りであった:
1.工程:5分、94℃
2.工程:45秒、94℃
3.工程:45秒、59℃
4.工程:45秒、72℃
5.工程:30分、72℃
6.工程:4℃
工程2〜4を35回繰り返し、手順を次に工程5で続けた。
50μlの反応バッチは、バッファー(10mM Tris−HCl(pH 9.0)、50mM KCl、及び3mM MgSO)、各場合での500nMの増幅プライマー(配列番号19及び配列番号20の下に示す)、10μlのQ溶液(Qiagen, Prod. No. 206143に含まれる)、各場合での0.2mMのデオキシリボヌクレオチド、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Prod. No.: 11304-011)、及び鋳型としての250ngのゲノム大腸菌DNAを含んだ。PCRを、EppendorfからのMastercycler(Prod. No. 5331 000.010)を使用して行った。
大腸菌からのグルコサミン1−リン酸ムターゼタンパク質の活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸配列(glmm)を、配列番号21の下に示す。
得られたフラグメントのベクターpCR 2.1中へのクローニング及び配列の確認後、大腸菌からのGlcN−1−Pムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を、制限エンドヌクレアーゼKpn I及びXba Iを使用して単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpA7中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 300−204と名付けた。
【0146】
e)大腸菌からのGlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAc−1−Pピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の単離及びクローニング
大腸菌からのグルコサミン1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する二機能性タンパク質をコードする核酸配列(qlmu)をPCRにより単離し、InvitrogenからのベクターpCR 2.1(Prod. No. K2000-01)中にクローニングした。PCRのための反応条件は以下の通りであった:
1.工程:5分、94℃
2.工程:45秒、94℃
3.工程:45秒、59℃
4.工程:45秒、72℃
5.工程:30分、72℃
6.工程:4℃
工程2〜4を35回繰り返し、手順を次に工程5で続けた。
50μlの反応バッチは、バッファー(10mM Tris−HCl(pH 9.0)、50mM KCl、及び3mM MgSO)、各場合での500nMの増幅プライマー(配列番号23及び配列番号24の下に示す)、10μlのQ溶液(Qiagen, Prod. No. 206143に含まれる)、各場合での0.2mMのデオキシリボヌクレオチド、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Prod. No.: 11304-011)、及び鋳型としての250ngのゲノム大腸菌DNAを含んだ。PCRを、EppendorfからのMastercycler(Prod. No. 5331 000.010)を使用して行った。
大腸菌からのグルコサミン1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸配列(glmu)を、配列番号25の下に示す。
得られたフラグメントのベクターpCR 2.1中へのクローニング及び配列の確認後、大腸菌からのGlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有する二機能性タンパク質をコードする核酸配列(glmu)を、制限エンドヌクレアーゼKpn I及びXba Iを使用して単離し、同じ制限エンドヌクレアーゼで切断したベクターpA7中にクローニングした。得られたプラスミドをIC 299−204と名付けた。
【0147】
6.パラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのヒアルロナン合成酵素のためのコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 341−222の調製
ヒアルロナン合成酵素のコード配列を含む核酸分子を、プラスミドIC 323−215から、BamHI及びXho Iでの制限酵素消化により単離し、プラスミドIR 47−71のBamHI及びXho I制限酵素部位中にクローニングした。得られた植物発現ベクターをIC 341−222と名付けた。
【0148】
7.サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質のためのコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 351−222の調製
開始プラスミドは上に記載の植物発現ベクターpUBI bar(WO 97 44472)であり、その中のEco RI及びSda I制限酵素部位中に、酵母からのgna遺伝子のコード配列をクローニングした。酵母からのgna遺伝子のコード配列をEco RI及びSda I制限酵素消化によりプラスミドIC 298−204から単離した。得られたベクターをIC 351−222と名付けた。
【0149】
8.GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質のためのコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 392−337の調製
開始プラスミドは上にさらに記載するプラスミドIC 351−222であり、その中のEco RI制限酵素部位中に、制限エンドヌクレアーゼEco RIを使用してプラスミドIC 389−337から単離したYLCVプロモーター及びNOSターミネーター及びOCSターミネーターのカセットをクローニングした。得られたベクターをIC 390−337と名付けた。
上に記載したプラスミドIC 303−204から、qri遺伝子のコード配列をSac I及びEco RV制限酵素消化により単離し、ベクターIC 390−337のSac I及びSma I制限酵素部位中に連結した。得られたベクターをIC 391−337と名付けた。
重複性のOCSターミネーターを除去するために、ベクターIC 391−337をAat IIで消化し、次に再連結した。得られた植物発現ベクターをIC 392−337と名付けた。
【0150】
9.大腸菌からのGlcN−1−Pムターゼの活性を有するタンパク質ならびにGlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの二機能性活性を有する二機能性タンパク質のためのコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 360−237の調製
大腸菌からのGlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAc−1−Pピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の導入のための開始プラスミドは、上にさらに記載するプラスミドIC 299−204であり、そのコード配列はEco RI制限酵素消化により単離され、pMCS5ベクター(MoBiTec GmbH, Prod. No.: pMCS5)のEco RI制限酵素部位中にクローニングした。得られたベクターをIC 307−204と名付けた。次の工程では、ベクターIC 307−204をPme I及びSma I制限エンドヌクレアーゼで消化し、再連結した。得られたベクターをIC 311−204と名付けた。GLMUの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を、次に、プラスミドIC 311−204からBam HI及びKpnIでの制限酵素消化により単離し、ベクターIC 312−204の制限酵素部位Bam HI及びKpn I中に連結した。得られたベクターをIC 315−204と名付けた。ベクターIC 312−204を、35Sプロモーターフラグメント(Eco RI及びSal I制限酵素消化によりプラスミドpA7から単離)、ocsフラグメント(Hind III及びSal I制限酵素消化によりIC 309−204から単離)、及びベクターIC310−204(Eco RI制限酵素消化により開環)で構成される3つのフラグメントの同時連結により調製した。プラスミドIC310−204はpUC 18ベクターであり、そのMCSの部分はHind III及びEcl 135II制限酵素消化及び続く再連結により除去されている。IC 309−204は、pA7からHind III及びSal Iを使用してocsフラグメントを単離し、それをHind III及びSal Iで消化したpBS KSベクター中にクローニングすることにより調製した。
プラスミドIC 315−204から、35Sプロモーター、大腸菌からのグルコサミン1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質をコードする核酸配列(qlmu)、及びocsターミネーターをEco RI制限酵素消化により単離し、Ubi Barベクター(WO 97 44472)のEco RI制限酵素部位中にクローニングした。得られたベクターをIC 359−237と名付けた。
GlcN−1−Pムターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の導入のための開始プラスミドは、上にさらに記載するプラスミドIC 299−204であり、そのコード配列をSda I及びSma I制限酵素消化により単離し、Ubi barベクターのSda I及びHpa I制限酵素部位中に連結した。得られたベクターをIC 355−222と名付けた。
プラスミドIC 355−222から、glmm遺伝子のコード配列をSpe I及びDra I制限酵素消化により単離し、IC 359−237プラスミドのSpe I及びPme I制限酵素部位中にクローニングした。得られたベクターをIC 360−237と名付けた。
【0151】
10.サッカロマイセス・セレビシエからのGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質、及びGlcNAc−Pムターゼの活性を有するタンパク質のためのコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 393−337の調製
サッカロマイセス・セレビシエからのGlcNAc−Pムターゼをコードする核酸配列の導入のための開始プラスミドは、上にさらに記載するプラスミドIC 304−204であり、そのコード配列をEco RI制限酵素消化により単離し、pMCS5ベクター(MoBiTec GmbH, Prod. No.: pMCS5)のEco RI制限酵素部位中にクローニングした。得られたベクターをIC 313−204と名付けた。次の工程では、サッカロマイセス・セレビシエからのGlcNAc−Pムターゼをコードする核酸配列を、ベクターIC 313−204からPme I及びPac I制限酵素消化により単離し、Pme I及びPac Iで消化したベクターIC 393−337中にクローニングした。得られたベクターをIC 394−337と名付けた。
プラスミドIC 393−337の調製のための開始ベクターは上にさらに記載するプラスミドIC 391−337であり、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質のための核酸配列を既に含んだ。この目的のために、上にさらに記載するB33プロモーターをPac I及びAvr II制限酵素消化により単離し、Pac I及びAvr IIで消化したベクターIC 391−337中にクローニングした。得られた植物発現ベクターをIC 393−337と名付けた。
【0152】
11.ジャガイモ植物の形質転換
ジャガイモ植物を、一般方法事項1に記載する方法に従って植物発現ベクターIC 341−222(ソラナム・チュベロサムからのパパチン遺伝子B33のプロモーターの制御下にあるパラメシウム・ブルサリア・クロレラ・ウイルス1からのヒアルロナン合成酵素のためのコード核酸配列を含む(Rocha-Sosa et al., 1989, EMBO J. 8, 23-29))で形質転換した。
得られたジャガイモ植物を、プラスミドIC 341−222で形質転換し、365 ES X(Xは形質転換から独立的に得られた植物を意味する)と名付けた。形質転換後に得られた栽培品種を、365 ES Xと名付け、問題になっている植物により合成されるヒアルロナンの量について分析した(WO 2006 032538も参照のこと)。栽培品種365 ES 13及び365 ES 74を以下に記載の形質転換にために選んだ。
栽培品種365 ES 13及び365 ES 74のジャガイモ植物を、植物発現ベクターIC 392−337又はIC 360−237又はIC 394−337で、一般方法事項1に記載する方法に従って形質転換した。
プラスミドIC 392−337で形質転換された栽培品種365 ES 13の得られたトランスジェニックジャガイモ植物を、437 ES X(Xは形質転換から独立的に得られる植物を意味する)と名付けた。
プラスミドIC 392−337で形質転換された栽培品種365 ES 74の得られたトランスジェニックジャガイモ植物を、438 ES X(Xは形質転換から独立的に得られる植物を意味する)と名付けた。
プラスミドIC 360−237で形質転換された栽培品種365 ES 13の得られたトランスジェニックジャガイモ植物を、397 ES X(Xは形質転換から独立的に得られる植物を意味する)と名付けた。
プラスミドIC 360−237で形質転換された栽培品種365 ES 74の得られたトランスジェニックジャガイモ植物を、398 ES X(Xは形質転換から独立的に得られる植物を意味する)と名付けた。
プラスミドIC 393−337で形質転換された栽培品種365 ES 13の得られたジャガイモ植物を、444 ES X(Xは形質転換から独立的に得られる植物を意味する)と名付けた。
プラスミドIC 393−337で形質転換された栽培品種365 ES 74の得られたジャガイモ植物を、445 ES X(Xは形質転換から独立的に得られる植物を意味する)と名付けた。
【0153】
12.ヒアルロナン合成酵素をコードする、GlcNAc−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする、及び、UDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を含むジャガイモ植物の分析
グリーンハウスでは、栽培品種365 ES 13、365 ES 74、437 ES X、438 ES X、397 ES X、398 ES X、444 ES X、及び445 ES Xの個々の植物を6cmポット中の土壌で栽培した。植物の全地上部分を7〜9週目の植物から回収し、一般方法事項3に記載する方法に従って加工した。問題になっている植物抽出物中のヒアルロナンの量は、問題になっている植物抽出物の一定分量中に含まれるヒアルロナンを、一般方法事項4に記載する方法に従って、検量線を用いて測定することにより決定した。ヒアルロナン含量の決定のために、遠心分離後に得られた上清を1:10希釈で使用した。選択した植物について、以下の結果を得た:
【0154】
【表1】


表1:栽培品種365 ES 13及び365 ES 74の独立した選択されたトランスジェニック植物(ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子だけを含む)により産生される、問題になっている植物の全地上部分中でのヒアルロナンの量(μg(ヒアルロナン)/g(新鮮重量))。カラム1は、材料を回収した植物の名称を示す(「wt Desiree」は栽培品種Desireeの非形質転換野生型植物を指す)。カラム2は、用いた新鮮重量に基づくヒアルロナンの量を示す。
【0155】
【表2】


表2:栽培品種437 ES又は438 ESの独立した選択されたトランスジェニック植物により産生される、問題になっている植物の全地上部分中でのヒアルロナンの量(μg(ヒアルロナン)/g(新鮮重量))。カラム1は、材料を回収した植物の名称を示す。カラム2は、用いた新鮮重量に基づくヒアルロナンの量を示す。
示した結果は、ヒアルロナン合成酵素をコードする、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする、及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を同時に含む植物が、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子だけを含む植物よりも大幅に高いヒアルロナン量を合成することを例示する。
【0156】
【表3】




表3:栽培品種497 ES又は498 ESの独立した選択されたトランスジェニック植物により産生される、問題になっている植物の全地上部分中でのヒアルロナンの量(μg(ヒアルロナン)/g(新鮮重量))。カラム1は、材料を回収した植物の名称を示す。カラム2は、用いた新鮮重量に基づくヒアルロナンの量を示す。
示した結果は、ヒアルロナン合成酵素をコードする、ならびに、GlcN−Pムターゼの活性を有するタンパク質、GlcN−1−Pアセチルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの二機能性活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を同時に含む植物が、ヒアルロナン合成酵素をコードする外来核酸分子だけを含む植物よりも有意に高いヒアルロナン量を合成しないことを例示する。
【0157】
【表4】


表4:栽培品種444 ES又は445 ESの独立した選択されたトランスジェニック植物により産生される、問題になっている植物の全地上部分中でのヒアルロナンの量(μg(ヒアルロナン)/g(新鮮重量))。カラム1は、材料を回収した植物の名称を示す。カラム2は、用いた新鮮重量に基づくヒアルロナンの量を示す。
示した結果は、ヒアルロナン合成酵素をコードする、ならびに、GlcN−Pムターゼの活性を有するタンパク質及びGlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を同時に含む植物が、ヒアルロナン合成酵素、GlcN−6−Pアセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質、及びUDP−GlcNAcピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子だけを含む植物よりも有意に高いヒアルロナン量を合成しないことを例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコサミノグリカン合成酵素をコードする外来核酸分子を含む遺伝子改変植物細胞であって、該植物細胞が、追加で、グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子及び単機能性UDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来核酸分子を含む遺伝子改変植物細胞。
【請求項2】
請求項1記載の遺伝子改変植物細胞を含む植物。
【請求項3】
請求項1記載の遺伝子改変植物細胞を含む、請求項2記載の植物の繁殖物質。
【請求項4】
請求項1記載の遺伝子改変植物細胞を含む、請求項2記載の植物の回収可能な植物部分。
【請求項5】
植物を産生するための方法であって、以下を含む
a)植物細胞の遺伝的改変、ここで遺伝子改変は以下の工程i〜iiiを含む
i)グルコサミノグリカン合成酵素の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の植物細胞中への導入
ii)グルコサミン6−リン酸アセチルトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の植物細胞中への導入
iii)UDP−N−アセチル−グルコサミンピロホスホリラーゼの単機能性活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の植物細胞中への導入
b)工程a)i及び/又はa)ii及び/又はa)iiiiからの植物細胞からの植物の再生;
c)適宜、工程b)の植物を使用したさらなる植物の生成、
ここで工程a)i〜a)iiiは任意の順番で個々に行うことができ、又は、工程a)i〜a)iiiの任意の組み合わせを同時に行ってよく、適宜、工程a)i〜a)iiiの失われた外来核酸分子を、工程b)又はc)に従って得られた植物の植物細胞中に導入してよい。
【請求項6】
グルコサミノグリカンを産生するための方法であって、請求項1記載の遺伝子改変植物細胞から、請求項2記載の植物から、請求項3記載の繁殖物質から、請求項4記載の回収可能な植物部分から、又は、請求項5記載の方法により入手可能な植物からのグルコサミノグリカンの抽出の工程を含む方法。
【請求項7】
グルコサミノグリカンを製造するための、請求項1記載の遺伝子改変植物細胞、請求項2記載の植物、請求項3記載の繁殖物質、請求項4記載の回収可能な植物部分、又は、請求項5記載の方法により入手可能な植物の使用。
【請求項8】
請求項1記載の遺伝子改変植物細胞を含む、組成物。
【請求項9】
グルコサミノグリカンを含む組成物を調製するための方法であって、請求項1記載の遺伝子改変植物細胞、請求項2記載の植物、請求項3記載の繁殖物質、請求項4記載の回収可能な植物部分、又は請求項5記載の方法により入手可能な植物を使用することを含む方法。
【請求項10】
請求項8記載の組成物を調製するための、請求項1記載の遺伝子改変植物細胞、請求項2記載の植物、請求項3記載の繁殖物質、請求項4記載の回収可能な植物部分、又は、請求項5記載の方法により入手可能な植物の使用。

【公表番号】特表2010−538626(P2010−538626A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524414(P2010−524414)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007837
【国際公開番号】WO2009/033752
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】