説明

増強型磁気粒子ステアリング

本発明は、マイクロチャネル構造を含む回転マイクロ流体ディスクプラットフォームを用いたマイクロ流体システムに関する。より具体的には、本発明はマイクロ流体装置のマイクロチャネル構造内の磁気粒子を制御するための方法および配置に関する。本発明は、磁石アレイの近くで異なる速度でマイクロチャネル構造を回転させた場合のビーズ上の磁力と遠心力の平衡化に基づいている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、マイクロチャネル構造を含む回転マイクロ流体ディスクプラットフォームを用いたマイクロ流体システムに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、マイクロ流体装置のマイクロチャネル構造のマイクロチャンバー内の磁気粒子/ビーズの移動を制御するための方法および配置に関する。
【0003】
粒子は異なる形状を有してもよく、ビーズなどの丸い形状を含み得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
「マイクロ流体の」という用語は、例えば、約0.1μm〜約1μm、例えば約500μmまでの範囲内の少なくとも一つの横断面寸法(深さおよび/または幅)を有するようにマイクロスケールの寸法をもつ一つのチャンバーおよび/もしくはチャネルまたはチャンバーおよび/もしくはチャネルのネットワークを有するシステムまたは装置を指す。この用語はまた、μl範囲内の液体体積(アリコート)が、予め定められたプロトコルに従って輸送され処理されるという事実を指し、ここで該プロトコルに必要なネットワークの部分をマイクロチャネル構造と呼ぶ。μl範囲にはnl範囲ならびにピコリットル範囲が含まれる。アリコートの少なくとも一つは、例えば被分析物および/または試薬の中から選択された少なくとも一つの反応物を含有する。
【0005】
マイクロ流体基板および/または装置は、フォトリソグラフィ、湿式化学エッチング、射出成形、エンボス加工、および半導体業界で利用される技術に類似した他の技術を用いて製造されることが多い。結果として得られる装置は、試料中の一つまたは複数の被分析物の特徴づけのためのアッセイ、精製実験などの分離実験、ならびに生物有機化合物などの有機および/または無機化合物の合成のための実験を含む、さまざまな精巧な化学的および生物学的実験を実施するために使用可能である。
【0006】
マイクロ流体分析システムは、従来の化学的または物理的実験室技術に比べて数多くの利点を有する。例えば、マイクロ流体システムは、典型的にはμl範囲内の体積を有する液体試料を使用して小さな試料サイズを分析するために特に良好に適合している。マイクロ流体装置は比較的低コストで生産でき、同じマイクロ流体装置上で混合、送り出し、弁操作、反応、検出、電気泳動等を含めた数多くの分析作業を実施するようにチャネルを配置することができる。マイクロ流体システムおよび装置の分析能力は、一般に、ネットワークチャネル、反応チャンバー等の数および複雑性を増大させることにより増強される。
【0007】
流体を駆動するために遠心力を用いる技術においては、マイクロ流体装置は典型的には、スピン可能なディスクである。このようなディスクは好ましくは円形であり、典型的には、従来のCDと同じ物理的フォーマット(直径12cm前後)を有し、そうでなければ矩形である。スピン軸に対して内側位置に設置される液体試料は、ディスクが回転するにつれて作り出される遠心力により外側位置まで輸送され、精巧な動電学的または機械的圧送構造を設計する必要性を回避している。毛管力、遠心力を用いて作り出される静圧力等を用いて、外側位置から内側位置まで(スピン軸に対して)液体を輸送することが可能である。
【0008】
以下の記述の中で明らかとなるように、本発明は特に、多くの場合「ラボオンチップ(lab on a chip)」またはCDと呼ばれる通常はプラスチック製の回転可能なディスク内に形成されるマイクロチャネルに基づくマイクロ分析システムに応用できる(ただしそれに限定されるわけではない)。このようなディスクは、少量の流体が関与する分析および/または分離を実施するため、ならびに無機および有機化合物の合成のために使用可能である。
【0009】
さらに、試料の調製中には、該ディスクによりユーザーが、ディスクを修正することなく流体または試料の任意の所望の組合せを予め定められた体積だけ送り出すことができるということが望まれることが多い。回転可能なディスク内に提供されている流体用の適切なマイクロ分析チャネル構造については、例えばWO 0146465(Gyros AB)(特許文献1)、WO 02074438(Gyros AB)(特許文献2)、WO 02075312(Gyros AB)(特許文献3)、WO 9721090(Gamera)(特許文献4)、WO 9853311(Gamera)(特許文献5)、WO 0079285(Gamera)(特許文献6)、WO 9828623(Gamera)(特許文献7)、US 6752961(Abaxis)(特許文献8)、US 5693233(Abaxis)(特許文献9)等の中で記述されている。液体移送ステーションは、例えばスピン可能なディスクの形をしたマイクロ流体装置まで試料および試薬ステーションからの少なくとも一つの試料または他の任意の予め定められた液体アリコートを移送するロボットを有している。ステーションは、反応物を含むかまたは含まない液体試料の移送のための手段を有し、例えばシリンジポンプに連結された多数の送り出し用ニードルまたは多数の中実ピンを試料の輸送のために使用することができる。前記ニードルおよびピンは、両方向で先端部間に異なる距離を有する異なる数の行と列の形で構成可能である。例えばWO 9721090(Gamera)(特許文献4)、WO 0119518(Aclara)(特許文献10)、およびGyrolabワークステーション(Gyros AB)内で使用される送り出しシステム(WO 02075775(Gyros AB)(特許文献11)にまとめられている)を参照のこと。もう一つの代替案は、WO 9701085(Pharmacia AB)(特許文献12)中に記述されているマイクロディスペンサおよびUS 6338820(Alexion)(特許文献13)、US 200300965402(Gyros AB)(特許文献14)等の中で提示されている送り出しシステムである。
【0010】
遠心分離ベースのマイクロ流体装置内での異なる液体の混合は、以前は、例えば装置をスピンさせることにより達成されていた。この種の混合にはかなり長時間、時として数分かかり得る。しかしながら、混合チャンバー内で磁気粒子を使用することにより混合時間を数秒の時間まで加速することがすでに知られている。粒子は、固定された電流揺動式電磁石アレイにより生成される時間変動磁場に曝露される。もう一つの概念が、第8回「化学および生命科学向け小型化システム」("Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences")に関する国際会議(Malmo、Sweden)における論文M. Grumanら、"Magneto-Hydrodynamic micromixing for centrifugal lab-on-a-disk platforms"、2004年9月25〜30日、p593〜595(非特許文献1)でそれより以前から知られている。最適な粒子増強型混合のために、ラボ・フレーム(lab frame)内に1組の永久磁石が等間隔で整列されている。それらの半径方向位置は、チャンバーの平均軌道から正および負のわずかなオフセット量だけ交互に逸脱する。粒子は、回転中に内向きおよび外向きに周期的に偏向される。磁石の既知の配置により、混合チャンバー内の粒子はスピン中に「8」字形の軌跡を追従するように強制される。Steigertら、"Integrated sample preparation, reaction, and detection on a high-frequency centrifugal microfluidic platform" 、J. Assoc. Lab. Autom. 10月(2005)、331〜341(非特許文献2)も参照のこと。特許出願公開US 2002/0025583(Ellsworthら)(特許文献15)から知られているもう一つの先行技術システムは、異なる液体が中に導入される数多くの入口チャンバーを伴う分析ローターを含んでいる。前記入口チャンバーは、いわゆるラベリングチャンバーに連結されている。前記チャンバー内での流体の混合を強化するために、チャンバー内に混合用ボールが導入される。前記混合用ボールは、ローター駆動板の下にあるプラットホーム内に配置された複数の固定磁石との相互作用によって撹拌される。磁石は一定のパターンに配置され、したがってローターが回転するにつれて前記チャンバーの半径方向内側とチャンバーの半径方向外側の間で磁石が交替するようになっている。このようにして、磁気ボールは、ローターがスピンするにつれて半径方向内向きおよび半径方向外向きに交互に移動する。
【0011】
いくつかのステップにおいては懸濁された形でおよび他のステップにおいては堆積した形で、使用されることにより利得が得られると思われる粒子状物質固相が関与するマイクロ流体実験プロトコルが存在する。また、粒子状物質固相のさらなる処理のために、例えばマイクロチャネル構造の分離した部分構造に反応混合物の液相および固相をもってくることにより、マイクロチャネル構造の異なる部分の間で固相を物理的に移動させる必要のあるプロトコルも存在する。喚言すると、マイクロチャネル構造内部で予め定められた回数だけ、粒子状物質固相材料を容易に詰め込み再懸濁させかつ/または同じマイクロチャンバーおよび/またはマイクロチャネル構造の異なる部分構造間で選択的に粒状物質固相材料を輸送することができれば有利であるはずである。
【0012】
粒子結合型反応物と溶解反応物の間の反応のために堆積床を再懸濁させる場合には、液体の体積全体をさらに効率良く横断するよう粒子を強制する改良型方法が望まれる。
【0013】
液体が多孔性床を通過するマイクロ流体実験を実施する場合には、床の目詰まりは破滅的であり得る。この問題は、通過する液体内の凝集体の存在および/またはさまざまな種類の粒子状物質材料に起因して発生する。
【0014】
上述の要望および問題は、粒状物質固相材料として磁気粒子が使用され、かつマイクロチャンバー/粒子ポケット内での粒子の反復的懸濁および/または堆積のためにあるいは粒子を強制してマイクロチャンバー内に置かれた液体内を横断させるために磁力と遠心力が組合わせで使用される場合、少なくとも部分的に対処可能である。有用な粒子ポケットは典型的に液体出口から物理的に離隔されるかまたはこれと一致する。先行技術の配置は、前記問題を解決するために十分優れた粒子ステアリングプロトコルおよび配置を提供しない。
【0015】
【特許文献1】WO 0146465(Gyros AB)
【特許文献2】WO 02074438(Gyros AB)
【特許文献3】WO 02075312(Gyros AB)
【特許文献4】WO 9721090(Gamera)
【特許文献5】WO 9853311(Gamera)
【特許文献6】WO 0079285(Gamera)
【特許文献7】WO 9828623(Gamera)
【特許文献8】US 6752961(Abaxis)
【特許文献9】US 5693233(Abaxis)
【特許文献10】WO 0119518(Aclara)
【特許文献11】WO 02075775(Gyros AB)
【特許文献12】WO 9701085(Pharmacia AB)
【特許文献13】US 6338820(Alexion)
【特許文献14】US 200300965402(Gyros AB)
【特許文献15】US 2002/0025583(Ellsworthら)
【非特許文献1】M. Grumanら、"Magneto-Hydrodynamic micromixing for centrifugal lab-on-a-disk platforms"、2004年9月25〜30日、p593〜595
【非特許文献2】Steigertら、"Integrated sample preparation, reaction, and detection on a high-frequency centrifugal microfluidic platform" 、J. Assoc. Lab. Autom. 10月(2005)、331〜341
【発明の開示】
【0016】
発明の簡単な説明
本発明は、粒子上の磁力と遠心力の平衡化に基づくものである。本発明は、M. Grumanら(Ibido)およびSteigertら(Ibido)により記述されているような粒子を外向きに強制する磁石の必要性が最小限となり、所望の場合にはこれを完全に回避できるという点で既知の解決法と異なっている。単純かつきわめて有利な変形態様においては、全ての磁石が粒子マイクロチャンバーよりもスピン軸に近い所に位置づけされている。すなわち、マイクロチャネル構造の外半径にあるGrumanらの全ての磁石は削除される。したがって磁力は、ディスクの内半径に向かって(ディスクの中心またはスピン軸に向かって)のみ導かれる。半径方向内向き方向すなわちディスクの中心もしくはスピン軸に対して内向き、または半径方向外向き方向すなわちディスク縁部(円周)に対して外向きのビーズの動きは、ディスク回転速度を調整することによって制御される。ディスク回転速度は、磁気粒子が磁場の影響を受ける時間、すなわちマイクロチャンバー内に収容された粒子が磁石の近くを通過する時間または頻度に影響を及ぼす。その上、ディスク回転速度は、粒子の移動を外向きに、ディスクの外半径または円周に向かって(すなわち磁石から離れるように)導く遠心力を作り出す。また、磁場が遠心力以上に強いディスク回転速度についての一定の閾値までは、粒子が磁場による影響を受けることがさらに多いことから、ディスク回転の増加は、粒子が磁場に追従している速度を増大させる。スピン方向(時計回りまたは反時計回り)に応じて、ビーズは、マイクロチャンバー内を任意の角方向/円周方向に移動でき、このことはすなわち、原則的により効率良く粒子が予め定められたおよび制御された形でマイクロチャンバーの全ての部分を横断するように強制され得る、ということを意味している。マイクロチャンバーの内部壁の任意の部分を、マイクロチャンバー内の粒子の全てまたはほんの一部分のみが適切なスピンプログラムにより案内され得る粒子ポケットまたはトラップとして、設計することができる。
【0017】
本発明に関連して、ポケットは、装置をスピンさせることによって作り出される遠心力を受けた時点で粒子がその中に収集または捕捉されうるマイクロチャンバーの一部である。ポケットに隣接するマイクロチャンバーの部分は、典型的にこのようなポケットよりも利用されるスピン軸に近い。粒子ポケットの下部部分は、マイクロチャンバー内に存在する液体用の出口を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。
【0018】
本発明の好ましい態様は、独立請求項1に従ったマイクロ流体装置のマイクロチャネル構造のマイクロチャンバー内の例えば磁気ビーズなどの磁気粒子の移動を制御するための方法である。
【0019】
発明された方法の異なる態様は、従属請求項2〜16によって規定されている。
【0020】
本発明はまた、独立請求項17に従ったマイクロ流体装置のマイクロチャネル構造のマイクロチャンバー内の例えば磁気ビーズなどの磁気粒子の移動を制御するための配置にも言及している。
【0021】
発明された配置の異なる態様が、従属請求項18〜28によって規定されている。
【0022】
本発明に従って粒子がその内部を移動するマイクロチャンバーは、一つまたは複数の粒子ポケット、液体用の一つまたは複数の入口および空気用の一つまたは複数の出口を有している。ベント出口は、液体用の入口または出口として機能してもしなくてもよい。革新的な方法においては、磁気粒子は、マイクロチャンバー内部に収容された液体アリコートまたは相内に提供される。粒子の移動はこのアリコートの内部で起こっている。
【0023】
以下の記述の一つの目的は、本発明の異なる態様が以下のような特定の粒子動作をいかにして達成するかを記述することにある:
− 磁力と遠心力を平衡化することによる粒子の半径方向動作;
− スピン方向を選択することによる粒子の側方動作;
− 粒子マイクロチャンバー(ディスク/装置平面)により規定されたスピン平面の上および/または下に磁石を置くことによる粒子の深さ動作;
− 磁石とスピン平面(すなわち磁石とマイクロチャンバー)の間の距離を制御することによる粒子雲の拡散。
【0024】
これより本発明について、添付の図面を参照しながらさらに詳細に記述する。
【0025】
図3および図5〜7中の参照番号の最初の1桁は図の番号を意味する。これらの図中の対応する部分は、原則として同一の下2桁を有する。
【0026】
図3および5〜7の各々において、遠心力の方向は矢印により表されている。
【0027】
発明の詳細な説明
異なるマイクロ流体システムが知られている。システムの一つのタイプは、制御器ユニットおよびマイクロ流体計器を含む。このようなシステムは独立型システムと呼ばれる。各システムはその独自のデータを有し、完全に独立した形で動作する。システムとの対話は、付随するパーソナルコンピュータ(PC)で実施可能である。
【0028】
もう一つのシステムは、計器群とそれに加えて例えばデータベースなどの共通の持続的な記憶場所とみなすことができる。数多くの計器が同じデータセット(方法データ、マイクロ流体装置データ等)に基づいて動作し得る。システムとの対話は全て、計器接続型コンピュータ、制御器において実施される必要がある。この第2のシステムは多くの場合、分散型データベースソリューションと呼ばれる。
【0029】
第3の解決法、つまり分散型ソリューションでは、システムは計器群、共通記憶持続記憶場所(データベース)および数多くのクライアントとみなされる。この解決法では、上述の分散型データベースソリューションの場合と同じ機能性が達成される。さらに、非計器接続型コンピュータからシステムと対話する可能性が存在する。付加的な提供される機能性の例としては以下のものがある:
− 計器の遠隔監視;
− 計器特有ではない機能の実施(方法開発、処理済みデータの評価など)。
この第3の解決法では、処理を遠隔制御する(開始(Start)、一時中止(Pause)、異常終了(Abort))すること、すなわち非計器接続型コンピュータから制御することが可能である。
【0030】
オペレーター/ユーザーは、制御器からマイクロ流体計器の性能を制御および監視することができる。マイクロ流体計器は、数多くの異なるステーションで構成され、各ステーションは、一つのまたは数多くの規定されたオペレーションを実施する能力をもつ。異なるタイプのマイクロ流体計器は、異なる種類または数のステーションで構成されている。したがって、いくつかのオペレーションは、或るタイプのマイクロ流体計器のためには提供されないか、またはこれらの計器上では応用できない。
【0031】
オペレーションは、制御器から開始される。
【0032】
図1は、以下を内含するマイクロ流体システム100を概略的に描いたブロック図である:
a) 制御器とも表示されている制御ユニット110、ならびに
b) i) 試料および試薬ステーション130、
ii) 液体移送または送り出し機器を洗浄するための洗浄ステーション140、
iii) マイクロ流体装置へ液体試料を移送するための液体移送ステーション150、
iv) 例えばスピナーステーションなど、マイクロ流体装置内部での液体の輸送を実施するための少なくとも一つのステーション160、
v) セグメントを収容するマイクロチャネル構造内での適切な液体取扱いの標示として液体検出セグメント内の液相および/または気相の有/無を検出するための液体検出器ステーション175、ならびに
vi) マイクロチャネル構造と結びつけられた検出部域を介してマイクロ流体装置のマイクロチャネル構造内で実施された実験の結果を反映する信号を収集するための検出器ステーション170
などの品目のうちの一つまたは複数のものを含む計器120。
【0033】
ステーションのいくつかは、互いに一体化されてよく、例えば、液体検出器ステーション175は典型的に、装置内部で液体輸送を実施するためのステーションおよび/または検出器ステーション170と一体化され得る。本発明に従った計器は最低限、液体検出器ステーション175および液体輸送を実施するためのステーション160を含んでいる。円形および/または回転可能なマイクロ流体装置については、液体検出器ステーション175および/または検出器ステーション170が、スピナー/回転機能を内蔵していてよい。
【0034】
検出器ステーション内で収集される信号は典型的に放射線である。
【0035】
制御器110は、計器外部の一つまたは複数のコンピュータであってもよく、かつ/または計器内部の一つまたは複数の中央プロセッサであってもよい。制御器は、計器120およびその異なるステーションに、導線またはデータバス180を介して接続されており、オペレーション指令が、典型的には電気または光信号のいずれかとして伝送されるかまたはステーション間で分配されるハードウェア回路に対する適切な予め定められたプロトコルに内含される。
【0036】
制御器には、例えばオペレーターのインタフェースを伴う電子的かつプログラム可能な制御手段などの異なる制御手段が含まれていてよい。ここではさらには開示されないが、以下を制御するために用いられる検出器配置に対しソフトウェアを割当てることができる:
(i) 先に説明したような、液体検出器セグメント内の液相および/または気相の有無の検出、ならびに/あるいは
(ii) 上述の検出部域を介した実験の結果を表す信号の収集。
【0037】
これらの制御手段は、以下の場合に使用することができる:
a) 利用される検出原理に照射が必要とされる場合には照射のために、かつ/または所望の信号を収集するために、一つまたは複数の開始/停止位置(装置が回転可能なものおよび/または円形である場合、半径方向位置および/または角位置)の対を認識する場合、
b) 検出部域またはディスクの表面内の他の場所、例えば液体の取扱い上の不具合を検出するために用いられる上述のセグメント内で、個別の下位部域を識別する場合、
c) マイクロ流体装置および検出器ヘッドの互いとの関係における移動、例えばマイクロ流体装置および先に説明した2つの検出器配置のいずれかと結びつけられた検出器ヘッドの増分的側方/半径方向変位の同時回転を制御する場合(装置が回転可能でありかつ/または円形である場合)、
d) 検出部域/検出マイクロキャビティ/液体検出セグメントから信号データを収集する場合、
e) 収集されたデータを処理および提示する場合、ならびに/あるいは
f) 特定の角位置が検出器ヘッドの対物レンズの前方にある時点を、回転速度から決定する場合(装置が回転可能である場合)。
【0038】
計器の異なる部分は、制御器110と通信し得る。制御器は、好ましい変形態様においては、例えば検出器がUS 20030054563(Gyros AB)に準ずるものである場合に、ディスクの表面の全く異なる予め選択された部分からの信号を連続して収集するように検出器ヘッドに命令を与える。典型的には、制御器は、意図された検出部域/液体検出セグメントに先行する位置で信号の収集を開始し、かつ同じ検出部域/セグメントに後続する位置で収集を終了するようにプログラミングされている。収集された信号が照射を要求する場合には、検出器配置/ヘッドまたはいくつかの他の手段はまた、このような照射を提供すべきであり、これは蛍光、吸光、反射等が測定される場合にあてはまる。この後者の場合には、制御手段はまた、照射の開始および停止位置についての設定値も規定すべきである。これら後者の設定値は、典型的に信号を収集する場合と基本的に同じである。
【0039】
液体検出セグメント内の液体および/もしくは気体の実験結果または存在を表す信号を収集するための開始および停止信号は、好ましくは、それぞれ信号の収集を開始し終了すべきマイクロ流体装置内の位置に直接関連づけされている。これにはまた、システムに固有であるかまたは予め設定されたものであり得る遅延が十分に考慮されていること、すなわち検出器ヘッドがそれぞれ開始および停止位置の前方に位置づけされる前に、開始および停止信号を開始しなければならない可能性があるということも含まれている。マイクロ流体装置が円形および/または回転可能なものである場合、スピナー機能内部の角度整列システムはエンコーダを含んでいてよく、開始位置および停止位置に対応するエンコーダ信号は、その間に信号が収集されるはずの時限を規定するために用いられる。あるいは、信号収集の開始および停止は、予め設定された回転速度に関連づけされる。すなわち制御器は、予め設定された回転速度から、開始および停止位置が検出器ヘッドの前方にあるべき時間を計算する。
【0040】
さらに、本システムは、試料、試薬または他の液体を保管するための手段を含む試料および試薬ステーション130を有する。前記試料、試薬または他の液体は、マイクロプレートまたはマルチウェルプレート、試験管ラックまたは試験管などの或る種のコンテナ内に保管される。前記プレートは、小型コンテナまたはウェルのマトリクスとして設計される。前記プレートは、ウェル数に応じて異なるサイズを有してもよい。コンテナは、例えば円形の回転プレートである、いわゆるカルーゼルなどのコンテナホルダーにゆるく固定され得る。
【0041】
液体移送ステーション150は、例えばスピン可能なディスクの形をしたマイクロ流体装置に対し試料および試薬ステーション130から少なくとも一つの試料または任意の他の予め定められた液体アリコートを一度に移送するロボット150aを有する。ステーションは、液体試料および他の液体を移送するための手段を有し、例えばシリンジポンプに連結された数多くの注入ニードルまたは数多くの中実ピンを試料移送のために使用することができる。前記ニードルおよびピンは、両方向に異なる先端間距離をもつ異なる数の行と列で構成可能である。他の代替態様については、見出し「背景技術」において上述した。
【0042】
前記ニードルおよびピンは、試料および試薬の移送の間に洗浄溶液中で洗浄されてもされなくてもよい。洗浄は、洗浄ステーション140の中に置かれた手段により行なわれる。
【0043】
マイクロ流体装置に送り出された液体は、液体輸送を実施するためのステーション160と結びつけられた手段により、装置内部を輸送される。このステーションは、マイクロ流体装置がスピンによりひき起こされる液体輸送を可能にするように適合されている場合には、スピナーステーションであってよい。マイクロ流体装置内部で実施されるプロセスの結果は、検出器ステーション170内にある検出用手段(検出器)によって決定される。
【0044】
検出器ステーション170の配置は、実験の結果を反映する信号を測定するように適合されている。信号は、典型的にマイクロ流体装置の表面内の検出部域を介して測定され、典型的にマイクロチャネル構造の一部である下にある検出マイクロキャビティから導出される。有用な検出器配置が、US 20030054563(Gyros AB)に記述されており、これには、以下のものが含まれている:
(a) ディスクがディスクホルダ内に設置された時点で検出器ヘッドすなわち焦点部域がディスクの表面を横断できるようにする手段にリンクしている、焦点部域を伴う検出器ヘッドおよびディスクホルダ、
(b) 特定の時点で焦点部域によりカバーされる部分部域の位置を認識することを目的とし、円形および/または回転可能なマイクロ流体ディスクについては、角度的整列用の一つの部分と、特定の時点で焦点部域によりカバーされる部分部域の半径方向位置を認識するための任意の半径方向整列システムとを含む、整列用システム、ならびに
(c) (i) 例えば円形および/または回転可能なディスクの環状ゾーン内でマイクロ流体ディスク/装置の検出部域を含むゾーンを焦点部域に横断させる機器、および
(ii) 前記ゾーン内の検出部域のうちの少なくとも一つの内部の焦点部域と基本的に同じサイズの個々の下位部域から、予め選択された要領で連続的に信号を収集する検出器ヘッド
を制御する、例えばソフトウェア付きコンピュータなどの制御器。
【0045】
図1に示されているように、前記ステーションの各々は、制御器110に接続され、数多くのオペレーションを用いて制御器110から制御され監視される。ソフトウェアオペレーションは論理的なハードウェア命令群として規定され、以下のような或る種の機能を達成するために実施される:
− 液体輸送の実施。例えば装置が、液体流を誘発するためにスピンさせうるディスクの形をしている場合に、装置をスピンさせること。
− 特定の共通分配チャネルまたは特定のマイクロ構造に対する試料移送。
− 特定の共通分配チャネルまたは特定のマイクロ構造に対する試薬移送。
− マイクロ流体装置の位置決め。
− 特定の時間、マイクロ構造内の或る位置での液体のインキュベーション。
− 検出。すなわち、マイクロ流体装置内で実施された方法の結果の検出、または先に論述したような一つまたは複数の予め選択された液体検出セグメント内における液相および/または気相の存在および/または非存在の検出。
【0046】
オペレーションは、数多くのステップで構成され得る。ステップとは、スピンオペレーション中のランプ(ramp)などの分割不能の命令である。セットは、数多くのこれらのオペレーションを所望の順序で統合することにより構成され得る。このようなセットは、方法として規定され、計器内部で行なわれる全ての部分を制御する。それは、マイクロ流体装置のタイプを定め、1組のアクション、オペレーションを規定する。それは、方法が細胞培養に関するものである場合に、定温インキュベーションなどの計器の外部にステップ実施の停止を定めてもよい。
【0047】
図2は、本発明に従ったマイクロ流体システム(回転可能なマイクロ流体装置)内でスピナー機能を伴って配置された液体検出器ステーションを示している。典型的な変形態様では、ディスクホルダ205を担持する回転可能なシャフト204を伴うモータ203(例えばスピナー)が、フレーム構造213上に支持されている。モータ203は、0〜15,000rpmの間の間隔内で変動し得る例えば60rpm超などの回転速度を制御する。ディスク201の回転は段階的であり得る。ディスクホルダ205は好ましくは、ディスクを設置できるプレートである。ディスクホルダはまた、ディスクをその周囲で保持する装置でもあってよい。好ましい変形態様においては、ディスクは、ディスクに面するプレートの側面を介して適用される真空によってホルダー上に保持される。例えば、US 20030082075(Gyros AB)およびUS 20030064004(Gyros AB)を参照のこと。液体検出セグメント内で液体/気体を検出するために用いられる原理に依存して、液体検出器ステーションは、液体検出セグメントと物理的に直接接触した状態で、センサーユニット175、例えば液体検出器ヘッド(放射線に基づく検出原理)またはセンサー(図示せず)(伝導率などに基づく検出原理)を含んでいてよい。
【0048】
原則として、a) 液相と気相の間で区別を行なう能力および/または、b) マイクロチャネル内の液体メニスカスを検出する能力を有する任意の種類の検出原理を使用することができる。最も魅力的な方法は、一度に一つまたは複数のマイクロチャネル構造の一つまたは複数の液体検出セグメントを画像化するための画像検出器装置である。他の代替案は、マイクロチャネル構造の関連液体検出セグメントの拡大と組合せることのできる目視によるものである。上述の差異は、使用される作用物質が実験の現状または実験結果の測定値を混乱させないことを適正に考慮した上で、塩、吸光性溶質、蛍光性溶質、粒子等などの適切な作用物質を添加することによって増強され得る。
【0049】
WO 031002559(Gyros AB)に記述されたシステムでは、液体検出セグメント中の液体および/または気体の存在/非存在を検出するために使用されているように検出マイクロキャビティからの実験の結果を判定するために同じ原理が用いられている。このシステムは、検出器ステーション170と液体検出器ステーションのセンサーユニット175とを高度に一体化する可能性を例示している。
【0050】
検出素子(デジタルビデオカメラ、ウェブカメラ等)に入射する光放射から出発してデジタルフォーマットで画像を直接生成することのできるセンサーユニット内の検出器ヘッド装置、およびアナログタイプの対応する画像を処理することによりデジタルフォーマットで画像を得る能力をもつ適切な変換器と結びつけられた、センサーユニット内のアナログ検出装置(テレビカメラまたはビデオカメラ)の両装置を用いて、画像検出/レジストレーションを実施することができる。画像検出は、他の技術と比べて、生産コストの削減、同じチップ内にテレビカメラに必要な全ての機能を組込む可能性、低い消費量、高いダイナミクス、高い獲得速度を有するC-MOS装置を用いて実施することができる。液体検出器ヘッド装置は比較的高い解像度を有するべきである。
【0051】
液体検出器ステーションはまた、システムの制御器110の一部である制御器機能と結びつけることができる。この制御器機能は、以下のタスクのうちの一つまたは複数のために使用可能である:
1) 実験プロトコルの予め定められた段階において、特定のマイクロチャネルセグメントとの整列および/またはこのセグメント内での測定を制御すること。予め定められた段階は、液体が上流側からセグメントに入る直前、途中、もしくは後、および/また液体輸送がセグメントから実施される前、途中、もしくは後であり得る。
2) 測定の結果(セグメント中の液相/気相および/または液体メニスカスの存在または非存在)を、実験のプロトコルから予想されるものと関連づけすること。
3) 液体取扱いが失敗した場合に、低品質実験として実験にフラグ付けすること。制御機能のこの部分にはまた、関連する実験の結果が廃棄されかつ/または低信頼度のものとして割振られるということも含まれてよい。
【0052】
システムはまた、マイクロ流体装置またはディスクの予め定められた位置がニードルまたは検出器対物レンズの前方にある時点を判定するための位置装置(図2では209として表されている)を収容していなくてはならない。市場では、異なる位置装置が公知である。回転可能なマイクロ流体装置のためには、エンコーダ、絶対位置エンコーダ等が存在する。単純ではあるものの精度が低いわけではない代替案は、予め設定された回転速度、および予め定められた位置とホームポジションマークの間の角距離から(すなわち予め設定された回転速度および角位置座標から)所要時間を計算する計算手段を含み入れることにある。この種の計算手段は制御器と結びつけることができる。矩形の回転しないマイクロ流体装置のためには、従来のX-Y位置づけ装置を使用することができる。
【0053】
回転可能なマイクロ流体装置内での液体の送り出し、検出部域からの放射線の検出等のための上述の種類の位置づけ装置の使用は、Gyrolab Workstation (Gyros AB, Uppsala Sweden)において利用されてきた。例えばUS 20030094502(Gyros AB)、20030054563(Gyros AB)を参照のこと。液体のための標識された検出器部域および標識された入口ポートと組合わされた位置づけ機能を伴う検出器ヘッドと送り出しヘッドとを利用する代替的変形態様が、US 6338820(Alexion)およびWO 9609548(University of Glasgow)の中で記述されている。
【0054】
絶対エンコーダは、ディスクが回転している間にホームポジションマークからの角距離を漸進的に与える位置装置である。
【0055】
図2の位置装置209は典型的に、モータ203、シャフト204、およびディスクホルダ205と結びつけられ、制御器の位置制御手段に接続される。位置装置を直接ディスク201と結びつけることにより、位置の最も正確な判定が達成される確率が高くなる。この種の位置装置は典型的に、シャフトの各回転を、例えば5,000超、例えば10,000超または20,000超または30,000超などの分解能等級として表示される多数の等級に分割する。位置装置は、±0.1°以内または±0.01°以内(一回転360°であることを条件とする)などの、±1°の精度および分解能でホームポジションマーク検出器の前方にあるディスクの部分についての角位置座標を提供することができなくてはならない。必要とされる正確な精度は、ディスクのサイズ、検出部域の半径方向位置、所要感度、検出部域のサイズなどにより左右される。
【0056】
制御器110の位置制御手段220は、位置装置209のタイプに応じて接続215上で位置信号Pを用いて異なるデータを受信または送信する。位置装置が各々の分解能等級のためのパルスを生成するエンコーダである場合、位置制御手段には、出発位置またはホームポジションとの関係におけるディスクの現行位置を表しているパルス合計値を記録するためのパルスカウンタ、および検出器が関与する。位置装置が絶対エンコーダである場合、位置制御手段は、出発位置またはホームポジションからの角距離の絶対尺度を受信または送信する。いずれの場合でも、制御器の位置制御手段は位置装置を制御することができる。位置制御手段は所望の位置を設定し、所望の値を位置装置に移送し、この装置は位置を受信し、モータ203、シャフト204、およびディスクホルダ205を制御してディスクを所望の位置に設定する。
【0057】
液体検出器ヘッドの位置装置について上述したことは、該当する場合、検出器ステーション170の検出器ヘッド、液体移送ステーション150等にもあてはまる。
【0058】
正しいホームポジションマークを発見し、ディスクホルダ上に存在する現在のディスク上の正確なホームポジションを決定するための方法は、WO 03087779(Gyros AB)に先に記述されている。前記プロセスは、多くの場合「ホーミングプロセス」として表示される。
【0059】
本発明に関係する異なるマイクロ流体ディスクについて記述する前に、図4aおよび4bを参照しながら、本発明の対象である磁気配置について記述する。図4aは、本発明に従った配置の概略的例示である。図4bは、スピナーステーションアクセルおよびモータ上に取付けられているマイクロ流体ディスクのライン4a-4bに沿った断面の側面図である。図1および2に関連して記述されているように、スピナーステーション203は、人間が、最大10,000rpm/秒の加速能力で、0から例えば最大20,000rpmまたは最大30,000rpmなどの非常に高い毎分回転数(rpm)までの回転速度を用いてスピンシーケンスをプログラミングできるようにする制御器110によって制御される。配置は、a) スピナーステーション203、b) 制御器110、c) 内部で粒子の動きが制御されるべきマイクロチャンバーの外側にある1個または複数の磁石、およびd) 任意のマイクロ流体装置201を含む。
【0060】
図3に関連して記述されたマイクロ流体装置ディスク201は、そのマイクロチャンバー405がマイクロ流体装置の中心から等しいまたは異なる半径のところにある状態で、マイクロチャネル構造101を収容する。マイクロチャンバーおよび/またはマイクロチャネル構造の一つまたは複数の半径を得ることは可能である。
【0061】
マイクロ流体装置のマイクロチャンバー内に存在する例えばフェライトなどの磁気材料の磁気粒子410は、典型的に液体中に分散した状態で、全てのまたは少なくとも多数のマイクロチャネル構造内に、例えば図中に記述されているような共通のまたは個別の入口ポートを介して導入される。または、粒子は、装置の製造中に導入されていてもよい。使用される粒子は、ビーズの形をしていてよく、WO 0275312(Gyros AB)の意味の範囲内で単一サイズ(monosize)または多重サイズ(polysize)であり得る。使用される特定の粒子調製物の平均サイズは、1nm、例えば1μmから、最大200μmまたは100μmまたは50μmまでの間隔内で典型的に選択され得る。粒子は、フェライトなどの磁気材料の小さな粒子がすでに取込まれている例えば重合体などの非磁気材料から製造され得、または適切な表面修飾を受けている可能性のあるフェライトなどの磁気粒子状物質に基づくものであってもよい。マイクロチャネル構造の設計およびビーズ/粒子のサイズが、マイクロチャンバーの出口を通っての粒子の望ましくない漏出を回避するために適合されるかまたは選択されることが適切である。
【0062】
図4aおよび4bで例示されているように、マイクロ流体ディスクのスピン平面に対し近接して数多くの磁石400a、400b (1個または複数)が設置されている。各々の磁石は典型的に、例えば各々の個別の磁石について1本のアーム、またはディスク上の磁石のための一つの共通ホルダーおよびディスクの下に設置された磁石のための一つのホルダ、または磁石の位置の如何に関わらず全ての磁石のための一つの共通ホルダーなどの、機械的担持体または支持体402の上に設置される。前記担持体または支持体402は、固定してまたは取り外し可能に取付けられる。もう一つの態様では、該担持体または支持体は、マイクロ流体装置もしくはスピン軸に対して水平方向、例えば半径方向に、および/またはマイクロチャンバーにより規定されたスピン平面から垂直方向上下方向に、磁石を操作できるステアリング装置(図示せず)に連結されている。前記ステアリング装置は、好ましくは制御器に接続され、これにより制御される。磁石と装置の間の距離は、例えば1/2ミリメートルから少なくとも15ミリメートルまで変動し得る。スピン平面の上または下のいずれかに磁石を設置することが可能であるが、スピン平面の上と下の両方に磁石があることが時として有利である。磁石は好ましくは、装置の中心すなわちスピン軸から同じ半径のところに設置され、マイクロ流体装置のセグメントまたは扇形部分に制限されていてよい。前記担持体または支持体は、いくつかの変形態様においては、ディスク部域からの取り外しが可能であり、ディスクをディスクスピナーから取り外すことが可能になる。
【0063】
磁石は、永久磁石または電磁石であり得る。制御器は、磁場をオンオフ切換えするためにまたは磁場の強度を制御するために電磁石に接続されてよい。
【0064】
磁石は、Grumanら(Ibido)によって示されているように、ディスクの全周において等距離に設置される必要はない。本発明に従うと、磁石と半径方向に整列させた場合に少なくとも単一のマイクロチャンバーをカバーする、例えば0.2πラジアン以上または0.4πラジアン以上またはπラジアン以上カバーする磁場を提供する、単一または数個の磁石、例えば2個またはそれ以上の磁石を位置づけするだけで十分である。以前から知られている方法に比べた一つの利点は、ディスク部域近くに他の検出器ユニットをもってくることがより容易であるという点にある。もう一つの利点は、示唆された磁石の位置づけが、磁気検出妨害を無くするかまたは少なくとも著しく低減させるという点にある。
【0065】
1個または複数の磁石(第1のセットI)が、好ましくは粒子ポケットまたはマイクロチャンバーに比べて内半径に(粒子ポケットまたはマイクロチャンバーよりもスピン軸に近接して)位置設定される。すなわち磁石はディスクの中心(スピン軸)とポケットまたはマイクロチャンバーの間に位置設定される。したがって、この変形態様において磁場は、例えば、
a) マイクロチャンバーの最も内側の部分の半径方向位置、または
b) マイクロチャンバーのそれぞれ最も外側の部分および最も内側の部分の半径方向位置の平均半径方向位置、
よりもスピン軸に等しいかまたは近いなどのように、マイクロチャンバーの最も外側の部分の半径位置に等しいかまたはそれよりスピン軸に近い半径方向位置に設置された最初の磁石セットIの400aによって作り上げられる。喚言すると、セットIの磁石は、大部分の変形態様において、スピン軸とポケットまたはマイクロチャンバーとの間にある半径方向位置、あるいはマイクロチャンバーによりカバーされている半径方向位置により包含される半径方向位置に設置されるべきである。
【0066】
さらに、第1のセットIの全磁石を含む1個または複数の磁石は、装置から物理的に離隔されており、ディスクの制限された扇形部分全体にわたって拡がり、好ましくは、例えば装置の外側の固定された位置にあるディスクと同時スピンしていない。
【0067】
第1のセットIは、1個、2個またはそれ以上の磁石400を含み得る。セットIが2個またはそれ以上の磁石を含む場合、該セットは2つのサブセットに分割され得る:装置/スピン平面の一方の側に磁石400aを伴うサブセットIaおよび;装置/スピン平面の反対側に磁石400bを伴う(スピン平面/マイクロキャビティの上下)サブセットIb。
【0068】
もう一つの態様においては、例えばマイクロチャンバーの最も外側の部分の半径方向位置よりも大きい半径方向位置で、セットIの最も外側の磁石よりもスピン軸からさらに離れたところにある半径方向位置に、付加的な第2の磁石(単数または複数)セットIIが提供される。この第2のセットは、第1の磁石セットIを使用した場合の粒子ステアリングへの悪影響を場合によって除去するために取り外し可能であってよい。
【0069】
本発明のもう一つの態様においては、セットIおよび/またはセットII (存在する場合)の磁石のうちの一つまたは複数がマイクロ流体装置に付着し、したがって装置と同時スピンしている。
【0070】
使用される磁石の数、それらの磁気強度(テスラ単位)、マイクロチャンバーにより規定されているスピン平面までのこれらの磁石の距離、マイクロ流体装置内の材料等が、粒子マイクロチャンバーにおける磁場の強度を決定する。磁石がディスクに近接して位置づけされればされるほど、およびより多くの磁石が使用されればされるほど、より強い磁場が提供されマイクロチャンバー内に存在する。これらのパラメータはまた、粒子がいかに迅速に内向きに移動するかを決定し、粒子を外向きに引張るために必要な回転速度および液体内の粒子雲の形状を決定する。
【0071】
粒子雲の形状は、ディスクとの関係における磁石の位置により影響される。磁石がディスク平面に近く位置づけされればされるほど、より濃縮された粒子雲が得られる。すなわちより密度の高い粒子雲が形成される。したがって、磁石をディスク平面からより大きい距離まで移動させることにより、より広い雲が生成される。
【0072】
本発明に従うと、前記粒子は磁場近くを通りその変位はマイクロチャネル構造の内半径に設置された磁石の位置の関数にすぎないことから、磁気粒子は、スピン方向に従って右または左(時計回りまたは反時計回り)に逸脱する。磁力が遠心力を下回るディスク回転速度での時計回りまたは反時計回りのディスクのスピンは、結果として、マイクロチャンバーの先導壁(leading wall)に向かっての粒子の移動をもたらす。
【0073】
この磁石配置およびスピン速度制御を、以下のために使用することができる:a) 粒子マイクロチャンバー内で均質な液相と不均質な液相を混合する;およびb) 磁気粒子に固定化された反応物と、粒子マイクロチャンバー内部に設置された液相中に溶解した形または粒子状物質の形の反応物との間で不均質な反応を行なう。本発明は、特に、例えば粒子ポケットなどの粒子マイクロチャンバーの一定の間隔の中への磁気粒子の制御移動(controlled movement)のために特に有用である。
【0074】
革新的な方法は、以下の3つの主要なステップを含む:
(i) その粒子マイクロチャンバーのうちの一つまたは複数のものの中に磁気粒子がある状態で上述のタイプのマイクロ流体装置を提供するステップ;
(ii) 上述の通りの磁場を提供するステップ;および
(iii) a) 粒子を内向きに引張る傾向をもつ磁力を上回るのに十分な遠心力を作り出す速度で装置をスピンさせることにより粒子を外向きに移動させること、それに続いて
b) 粒子を内向きに引張る傾向をもつ磁力を下回る遠心力を作り出す速度で装置をスピンさせることにより粒子を内向きに移動させること
を実施するステップ。
【0075】
ステップ(iii)には、
(A) サブステップ(a)と(b)の間に他のステップが存在し得ること、
(B) サブステップ(a)はサブステップ(b)の前または後に実施され得ること、および
(C) サブステップ(a)とそれに続くサブステップ(b)のシーケンスまたはその逆を、場合によっては中断させてまたは以下で論述する通り他のステップを後続させて、予め定められた回数だけ反復し得ること
が含まれる。
【0076】
サブステップ(a)が初めて実施される時、それは典型的には、粒子マイクロチャンバーのポケットa内に提供された粒子で開始される。サブステップ(b)が最後に実施される時、それは典型的には、最初のサブステップ(a)において使用されたものと同じマイクロチャンバーのポケットb内に粒子を入れることで終了する。ポケットaはポケットbと同じであっても、またはポケットbから離隔されていてもよい。喚言すると、マイクロチャンバーは、図面に関して記述されている通り、1個、2個またはそれ以上の粒子ポケットを収容していてよい。中間サブステップ(a)および(b)は、最初のサブステップ(a)または終了サブステップ(b)内で利用されるポケットと同じであってもまたは異なっていてもよく、ならびに/あるいはポケットから物理的に離隔されていてもよいポケットの中の粒子によって、開始/終了されてもまたはされなくてもよい。
【0077】
ポケット内に提供された磁気粒子は、堆積または懸濁形状であってよい。中を液体が通過しうる堆積物を、詰め込まれた粒子のカラムまたは多孔質床と呼ぶ。
【0078】
上述の通りに磁石を設置し、適切なスピン速度でスピンさせることにより、粒子を強制的にマイクロチャンバー内部の直線半径方向移動から逸脱させることが可能である。スピン中、したがって、粒子移動は、半径方向成分と角/円周方向成分を含む。後者は、マイクロチャンバーの先導内側面/壁に向かっており、これはすなわち、スピン方向の変更が、粒子移動の角/円周方向成分を反転させることを意味している。時計回り方向のスピンは、正の角方向への粒子の移動および負の角方向での反時計回りのスピンを導く。スピン/遠心力が十分に高い場合、先導内側面/壁に向かう粒子とリンクする傾向は無視できるほどのものであり、スピン/遠心力が十分低い場合、つまり主としてスピン軸の内向きに粒子が移動するのに十分なほど低い場合には、先導内側面に向かう移動のリンクは有意なものである。したがって適切なスピンプログラムにより、粒子がマイクロチャンバー内に設置された全液体体積を横断しかつ/または液体が中に存在するマイクロチャンバーのいずれかの任意の部分まで移動するように簡単に配置することは可能である。粒子ポケットと結びつけられている内部壁の一部分に到達した粒子は、磁力を上回るべく遠心力/スピン速度を増大させることによりポケット内に強制的に堆積させることができる。
【0079】
粒子移動の二つの基本的な発明のパターンは:A) 上下移動、およびB) 角度的前後(ジグザグとも呼ばれる)移動である。次の段落では、これらの基本パターンを、磁気粒子が粒子ポケット内に堆積した形で、かつ1個または複数の磁石を上記のセットIについての記述どおりに位置づけした状態を出発として例示する。
【0080】
上下パターンは、粒子を粒子ポケット内に移動させ、そこで懸濁したまたは堆積した形でそれらを収集することを主たる目的としている。粒子ポケット内に堆積物として存在している粒子と共に移動を開始する。初期スピン速度は、典型的にマイクロチャンバーの先導内側面/壁に沿ってスピン軸に向かってポケットより上の所望のレベルまで移動する粒子雲の詰め込み解除および形成を行うのに十分なほど低く設定される。所望のレベルは典型的に、存在する場合には上部メニスカスであり、またはマイクロチャンバーの内部上部壁である(ただし、液相がこの壁と接触状態にあること)(上部というのは、スピン軸に対してである)。後続するステップについては二つの主たる代替案が存在する:a) 磁力を克服するためスピン速度を増大させる一方でスピン方向を維持する;またはb) スピン方向を反転させ、スピン速度を、(i) 角度成分と共に目下(詰め込み解除中の先導内部壁とは反対に)先導している内部壁に向かって粒子雲が移動するのに十分なほど低く、または(ii) 磁力を上回るのに十分なほど高く、設定する。代替案(a)は、典型的には詰め込み解除中に粒子がそれに沿って移動したものと同じ内部壁と結びつけられた粒子ポケット内、例えばそこから粒子が出発したポケットまたは出発ポケットよりも短い半径方向距離のところに位置設定されたポケット内での粒子の収集を導く。代替案(b.i)は、粒子雲を外向きまたはスピン軸に向かって移動させ、ならびに粒子雲が(詰め込み解除中にそれに沿って雲が輸送された内部壁とは反対側にある)先導内部壁に到達できるようにするスピン速度およびスピン時間を内含する、スピン速度/ステップを含む。十分に高いスピン速度では、磁力を超え、粒子がスピン軸から外向きに移動し、この壁に付随するポケットの中に入れられる。マイクロチャンバーの設計に依存して、この後者のポケットは、詰め込み解除が発生したポケットと同じであってもよく、またはスピン軸により近い離隔したポケットであってもよい。
【0081】
角度的前後パターンは、上下パターンと同様、角度成分がマイクロチャンバーの内側面/壁に向かうかこれに沿っている状態で、粒子雲の形で粒子を内向きに移動させるよう十分低いスピン速度で開始しうる。この開始は、先の段落の場合と同種類の堆積物として粒子が存在する粒子ポケットからであってよい。このとき、スピン方向は、2回またはそれ以上(開始方向に依存して時計回り方向から反時計回り方向にまたはその逆に)反復的に反転させ、すなわち、好ましくは粒子雲が反転の前に先導内部壁/側面に達することができるようにしながら粒子移動において角度成分の方向を反復的に変更する。反復的部分には、粒子の堆積をひき起こすことなくスピン速度を漸進的に増減させる一つまたは複数の反復が含まれていてよい。最終的に、スピン速度は、例えば粒子を懸濁液または堆積物として収集できるポケットの中に、スピン軸から離れて粒子雲を外向きに移動させるために増大させることができる。このポケットが粒子の出口用に設計されている場合には、磁気粒子は、そのような出口を介してマイクロチャンバーから外へ強制的に出され得る。
【0082】
粒子に固定化されている反応物R1と液体中に溶解した形をしている反応物R2 (ここで、R1およびR2は互いに反応性の対応物であると称される)との間の反応を含む一つのステップが存在するさまざまな種類の実験において、該革新的方法を使用することができる。この関係において、溶解しているという用語には、反応物R2が真の溶質であるかまたは懸濁した形態にあることが含まれている。反応は、親和性錯体の形成のための2つの親和性対応物R1およびR2の間の親和性反応であってよく、以下でありうる:a) 酵素反応のような触媒反応の場合のように過渡的に形成される反応、b) 核酸アッセイおよび免疫アッセイのようなさまざまな種類の受容体-リガンド親和性アッセイなどにおいてさらに処理される反応、c) 例えば磁気粒子に接着する懸濁形態で細胞を培養するため、細胞接着性リガンド(R1)と細胞(R2)の間にある反応、d) 磁気粒子等に対するR2の共有結合による固定化を含む、もう一つの基にR1を化学的に変換するための化学反応。したがって、実験は、液体試料中の被分析物を決定するための分析的アッセイ、固相合成、液体等からの溶質(R2)の単離などの一部であり得る。分析アッセイ中の「判定する」という用語には、一つの被分析物の同定および/または定量化ならびに他の特徴づけ局面が含まれる。典型的に分析的アッセイは、酵素アッセイ、ハイブリダイゼーションステップが関与する核酸アッセイ、免疫アッセイ等を含めた受容体-リガンドまたは親和性ベースのアッセイである。アッセイは、競合的または非競合的であってよい。後者の重要な例としては、サンドイッチアッセイがある。
【0083】
したがって、R1およびR2は、以下の中から選択可能である:a) 酵素系のような生体触媒系などの触媒系の構成成分、b) 抗原/ハプテンおよび抗体、細胞表面構造およびその構造と相互作用する能力をもつ可溶性物質または溶解物質などの受容体-リガンド対メンバー、c) 相補的核酸。
【0084】
粒子がその中を移動する液相は、nl範囲内すなわち5000nl以下かまたはそれより大きいもの例えば0.5μl〜1000μl、例えば1〜1000μlまたは1μl〜100μlまたは1μl〜50μlまたは1μl〜10μlの範囲内にあってよい。液相が、10-6M以下または10-9M以下などの低濃度にある反応物R2が粒子によりそこから捕捉されるはずであるもとの生体試料に由来している場合には、nl範囲を上回る体積が最も典型的である。ポケット内に入れられた後の磁気粒子の処理は典型的には、個々のステップにおいて1000nl以下または500nl以下または250nl以下などのnl範囲内であってよい小さい体積の液体を必要とする。この液体は典型的には、前記ポケットと結びつけられかつ/または前記ポケットから物理的に離隔された液体出口を通してポケットから出ていく。ステップ(iii)の液相と後続する処理において用いられる第2の液体との比率は、0.001以上、例えば0.01以上または0.1以上または1以上または10以上または100以上、および/または100以下、例えば10以下または1以下または0.1以下または0.01以下または0.0001以下であってよい。特に、ステップ(iii)でそこから物質を捕捉し濃縮すべき液相については、この比率は、1以下または0.1以下または0.01以下または0.0001以下であってよい。
【0085】
粒体マイクロチャンバーを収容するマイクロチャネル構造の実例を含む、マイクロ流体装置またはディスク
図3は、本発明に従って使用可能であるマイクロ流体装置の8個のマイクロチャネル構造のサブセットを示す。合計で、装置は96個の構造を収容している。本発明に従って用いることのできるマイクロ流体装置は典型的に、液体アリコート(=液滴)が内部で輸送および/または処理される一つまたは複数のマイクロチャネル構造(マイクロラボ)を含む。この文脈で複数というのは、装置1基あたり5以上、例えば、25以上または50以上または100以上のマイクロチャネル構造を意味する。上限は、装置1基あたり200、例えば400または1000のマイクロチャネル構造であってよい。
【0086】
装置は典型的には、一つまたは複数の平面内でマイクロチャネル構造が方向づけされている状態で、ディスク形状を有する。該構造は、それらの内部が別の入口および/または出口開口部および/またはベントを介して周囲雰囲気と接触状態にあるという意味で囲まれている。
【0087】
マイクロチャネル構造は、それらのチャンバーおよび/またはチャネルおよび/または他のマイクロ導管が、約0.1μmから例えば1μmまたは10μmから、約1000μmまで例えば約500μm(深さおよび/または幅)までの範囲内にある少なくとも一つの横断面寸法を有することを意味する微小規模の寸法を有する。μl範囲内の処理対象の液体体積(アリコート)は、ネットワーク内で輸送され処理される。μl範囲は、1000μl未満、例えば100μl以下または20μl以下または10μl以下の体積を包含し、nl範囲ならびにピコリットル範囲を内含する。nl範囲は、5000nl以下、例えば1000nl以下、または500nl以下または200nl以下を包含する。μl範囲内の体積はまた、ネットワークまたは個々のマイクロチャネル構造のさまざまなマイクロキャビティまたはマイクロチャンバー、例えば粒子マイクロキャビティなどについても適用可能である。
【0088】
図3は、本発明に従って使用可能なマイクロ流体装置の8個のマイクロチャネル構造のサブセットを示す。合計して、この装置は96個の構造を収容する。
【0089】
マイクロ流体装置300のマイクロチャネル構造(301a〜hの各々)が下流方向(マイクロチャネル構造301aについて)に以下のものを含む:
a) 入口機能(302+303a+303b+304a)、
b) 粒子が内部を移動するマイクロチャンバー(305a)、
c) 粒子が導かれ/収集される粒子ポケット(306a)および、
d) 出力機能(307a+308a+309)。
【0090】
粒子ポケット(306a)は典型的に、マイクロキャビティの大部分の隣接する他の部分よりもスピン軸から遠い場所にあるマイクロキャビティ305aの一部分の中に形成されている。粒子ポケット(305a)は、粒子の通過を許容しない液体用出口を備えている。
【0091】
入口機能(302+303a+303b+304a)は、マイクロチャネル構造(例えば301a)内への液体の導入のために必要とされる。入口機能はまず第1に、一つまたは複数の物理的に離隔された入口配置(IA)を含んでおり、その各々が少なくとも一つの入口ポート(303a〜b;315a)を含み、典型的にはまた、(構造301aについて)以下のものを含む一つまたは複数の体積規定ユニット(302;310a〜hの各々)をも含んでいる:
i) 少なくとも一つの体積計量マイクロキャビティ(311a、312a)、
ii) 上流側方向で入口ポート(303a〜b、315a)と連絡し、下流側方向では体積計量マイクロキャビティ(311a、312a)と連絡している、少なくとも一つの入口マイクロ導管(313a〜b、314a)、
iii) 体積計量マイクロキャビティ(311a、312a)の出口端部に接続されている出口マイクロ導管(316a、317a)、および
iv) 典型的にはまた、廃棄機能(オーバーフローマイクロ導管=余剰マイクロ導管)に対して余剰の液体をドレインするためのマイクロ導管(303a〜b、318a)。
【0092】
図3は、2種類の入口配置(IA)を例示する。第1の種類(構造301については304aに等しい)は、下流側方向で唯一のマイクロチャネル構造(301a)と連絡し、上流側方向では唯一の入口ポート(315a)と連絡し、典型的に、以下のサブユニットを有する体積規定ユニット(310a)を含む:i) 体積計量マイクロキャビティ(311a)、ii) 入口マイクロ導管(314a)、iii) 出口マイクロ導管(317a)、およびiv) オーバーフローマイクロ導管(318a)。第2の種類(302)は、複数のマイクロチャネル構造(301a〜h)に共通であり、典型的に、下流側方向ではマイクロチャネル構造(301a〜h)と連絡し、かつ上流側方向では体積計量マイクロキャビティ(312a〜h)の全てに共通の1本、2本またはそれ以上の入口マイクロ導管(313a〜b)と連絡している、入口マイクロ導管(316a〜h)を各々有する2つまたはそれ以上の体積計量マイクロキャビティ(312a〜h)を伴う、体積規定ユニット(302)を含んでいる。図3で例示されているように、この種の体積規定ユニットの入口マイクロ導管(313a〜b)は、それがまた少なくとも2つの体積計量マイクロキャビティ(312a〜h)のためのオーバーフローマイクロ導管(=体積規定ユニット(302)のためのオーバーフローマイクロ導管)として機能し得るという意味で二重の機能を有していてよい。複数のマイクロチャネル構造(301a〜h)に共通の体積規定ユニット(302)はまた、分配マニホールドとも呼ばれる。
【0093】
粒子がその内部を移動するマイクロチャンバー(305a)は、典型的なケースにおいて、各々がマイクロキャビティの大部分の隣接する他の部分よりもスピン軸からさらに遠隔であるマイクロチャンバー(305a)の一部分の中で形成されている1個、2個またはそれ以上の粒子ポケット(306a)を収容し得る。粒子ポケットは、ポケット(306a〜hおよび506)について図3および5に例示されている通り、粒子および液体の両方の放出または液体のみの選択的放出を可能にする出口を有していてよい。代替的には、ポケットは、図5でポケット(524)について例示されている通り液体出口を全く含んでいなくてもよい。液体の放出しか許容しない粒子ポケットは、粒子の放出は妨げるものの液体の放出は妨げない横断面積を出口が有している場合に、例えば二重深さ(323a)の形で(下流側方向に深さが減少する)、典型的に達成される。粒子および液体の両方の放出のための粒子ポケットは、内部を粒子が移動するマイクロチャンバーの下流側部分およびマイクロチャンバーからの出口マイクロ導管の上流側部分が、スピン軸から外向きに方向づけされたU字形の下部部分と共にU字形マイクロ導管を規定している場合に、達成可能である。出口の横断面寸法は、液体の通過ならびに粒子の通過を可能にするように選択されるものとする。
【0094】
さまざまな反応物間の反応を含むプロセスプロトコルを実施するために意図されているマイクロチャネル構造は、典型的に、各プロトコルの別々のステップのために意図されている一つまたは複数の反応マイクロキャビティを含む、反応ゾーンを典型的に含む。該反応ゾーンはまた、2つの反応マイクロキャビティ間に付加的な機能的ユニットを含み得る。典型的なこのような機能的ユニットとしては、体積規定ユニット、混合ユニット、望ましくない粒子または望ましくない可溶性材料などの汚染物質を除去するための分離ユニット、プロセスプロトコル/実験の結果またはその部分ステップのいくつかの結果が測定される検出ユニット等がある。いくつかの変形態様においては、この種の機能的ユニットは、例えば意図されたプロトコルの一つまたは複数の反応が内部で実施されるマイクロキャビティを含むことによって、組合せ型の機能を有し得る。考慮対象の反応は典型的には化学反応、生化学反応、および/または生物学的反応である。
【0095】
磁気粒子が内部を移動するマイクロチャンバー(305a〜h)または粒子ポケットそれ自体は、反応マイクロキャビティとして機能し得る。
【0096】
マイクロチャネル構造(301a)の出口機能は典型的には、液体輸送中に作り上げられた過剰圧力を大気に放出する少なくとも一つの出口ポート(319a)を各々含む、一つまたは複数の出口配置(OA)を含む。数多くのケースにおいて、出口ポートはまた、構造内を通過した液体のための出口としても機能する。出口配置には典型的にはまた、大部分の下流側マイクロキャビティからの出口マイクロ導管(307a)、例えば図3のマイクロチャネル構造(301a)内のマイクロチャンバー(305a)、そして場合によってはまた出口ポート(319a)、廃棄マイクロ導管(308a)、および/または廃棄チャンバー/チャネル(309)等を含む廃棄機能も含まれる。図3に例示されている通り、出口配置(OA)は、いくつかのマイクロチャネル構造(301a〜h)に共通の部分(309、319a〜h)を含んでいてもいなくてもよく、または一つのこのような構造(301a)にのみ属している(313a、307a、315a、318a)。
【0097】
マイクロチャネル構造内部で、液体アリコートの輸送は、閉鎖型または非閉鎖型であり得るバルブで停止させることができる。「非閉鎖型」および「閉鎖型」のバルブという用語は、WO 02074438(Gyros AB)において定義されている。マイクロチャネル構造内でのバルブ機能は、典型的には、マイクロキャビティ、マイクロ導管等の出口と結びつけられる。図3では、バルブ(320a〜h、321a〜h、322a〜h)が、各体積計量マイクロキャビティ(312a〜h、311a〜h)の出口においておよび各オーバーフローマイクロ導管(318a〜h)の出口において示されている。バルブはまた、他の種類のマイクロ導管、および/または、例えば混合マイクロキャビティ、検出マイクロキャビティ、反応マイクロキャビティ、収集マイクロキャビティ、予備混合マイクロキャビティ、液体保管マイクロキャビティ等を含むいわゆる保持用マイクロキャビティなどの他の種類のマイクロキャビティの内部および/またはその入口もしくは出口にも存在し得る。
【0098】
本明細書で提示されている構造の流体工学およびさまざまな機能的ユニットについてのさらなる詳細は、その全てが参照により全体として本明細書に組み入れられるWO 02075775、WO 02074438、WO 02075312、WO 03018198、WO 03025498、WO 2005094976、WO 2005032999、US 20050141344、WO 2004103891、およびUS 20050042770(全てGyros ABのもの)等の中に記されている。
【0099】
いくつかのマイクロチャネル構造に共通であるマイクロ導管、マイクロキャビティ、入口ポート、出口ポート、分配マニホールド、廃棄マイクロ導管等は、それらが共通して用いられる全てのマイクロチャネル構造の一部を成す。
【0100】
図5〜7は、ポケットを伴うマイクロチャンバーを有しかつ革新的方法の中で使用可能なマイクロチャネル構造の他の設計を例示している。
【0101】
図3のマイクロチャネル構造(301a〜h)内部での革新的方法の使用についてここで、サンドイッチアッセイなどの非競合的受容体リガンドアッセイの一部として詳述する。各々のマイクロチャンバー(305a〜h)は三角形の形状とポケット(306a〜h)を有する。
【0102】
ステップ1:被分析物(R2)に特異的な捕捉用抗体(R1)でコーティングされた磁気粒子を多孔質床に詰め込む。粒子は典型的には、共通の入口ポート(303a〜b)を介して導入し、その後、ビーズを強制して粒子ポケット(306a〜h)内の多孔質床(カラム)を形成させるのに十分な高い速度で装置をスピンさせる。好ましくは、以下のスピンシーケンス/方法Bが使用される。
【0103】
ステップ2:カラムを洗浄する(スピン流)−急速スピン。洗浄液を典型的に共通入口ポート(303a〜b)を介して導入し、その後急スピンさせて、詰め込み解除せずに多孔質床の中に液体を強制的に通す。
【0104】
ステップ3:ジクザグ法を用いて磁気粒子に被分析物を捕捉する。被分析物を含有する液体試料は、アッセイが並行マルチプリケートとして行なわれる場合には好ましくは共通の入口ポート(303a〜b)を介して導入し、異なる試料を並行してアッセイする場合には個々の入口ポート(315a〜h)を介して導入する。液体は、マイクロチャンバー(305a〜h)に輸送され、そしてポケット(306a〜h)内に粒子を保つスピン速度でスピンさせることにより多孔質床の上面で収集される。その後、ジグザグ方法を開始して効率の良い捕捉を可能にする。ジグザグ方法は、液体が出口マイクロ導管(307a〜h)を通ってチャンバーから出る間にポケット(306a〜h)内の多孔質床として粒子を再度詰め込むべく、スピン速度を増大にすることで終了する。
【0105】
ステップ4:カラムを数回洗浄する(スピン流)−急速スピン。
【0106】
ステップ5:抗体を含有する液体試料を導入することで検出用抗体(抗体に対するフルオロフォア接合体)を添加し、ステップ3における被分析物の捕捉の場合と類似の要領でジグザグ方法を用いる。
【0107】
ステップ6:ステップ2と同じ要領で、カラムを数回洗浄する(スピン流)−急速スピン。
【0108】
ステップ7:ポケット(306a〜h)内で多孔質床から蛍光を検出する。
【0109】
図3の構造/マイクロチャンバーについて、最適な上下スピンシーケンスは以下の通りである。

【0110】
図3の構造/マイクロチャンバーについては、最適なジグザグスピンシーケンスは以下の通りである。

【0111】
図5は、本発明に従った個別のマイクロラボであるマイクロチャネル構造501の一態様を例示する。前記マイクロチャネル構造は、類似のマイクロチャネル構造のサブセットの一つである。このようなマイクロチャネル構造サブセットはすでに図3に記述されている。
【0112】
前記マイクロチャネル構造の部分の大部分が同じものであり、図5のマイクロチャネル構造についてのより詳細な提示については、図3の記述が参照される。
【0113】
本発明の提示された態様に従うと、マイクロラボ501aの出口機能507aの前に粒子マイクロチャンバーが提供される。マイクロチャンバー505aの内部では、磁気粒子525を用いて、異なる液体および/または反応物の密な混合が達成される。この変形態様におけるポケット524は、出口マイクロ導管507とマイクロチャンバー505との間の連結よりもさらにスピン軸に近いところに位置設定される。マイクロチャンバー505の出口は、バルブ機能、好ましくは毛管バルブ機能などの非閉鎖型のバルブ機能を含んでいてよく、必ずしも例えば図3に示された変形態様のように二重深さ323の形をしたトラップ機能をもつポケットとして設計されてはいない。液体および/または反応物間の反応は、実験プロトコルに依存して、例えば、粒子がその中で多孔質床を形成し得る粒子ポケットとして設計されている場合には、チャンバーのバルク体積の内部でおよび/またはポケット524の中でおよび/またはマイクロチャンバー505の出口部分506の中でなどのように、出口マイクロ導管307の前のマイクロチャンバー505内のどこででも発生し得る。磁気粒子が検出を妨害しており、マイクロチャンバーのバルク部分が検出マイクロキャビティとして使用される場合には、検出ステップの間、前記粒子をマイクロチャンバーのバルク部分から除去することが有利である。示唆されている磁石構成を用いると、ポケットが混合チャンバーのどちら側にあるかに依存して一定の方向での低速ディスクスピン中に、内向きに粒子を引っ張って出口から離すことが可能である。上述の通り、粒子は軌跡に追従し先導側壁でまとまるが、これらのいずれかはスピン方向により左右される。スピン速度を増大させることにより、遠心力は増大し、粒子はポケット/トラップ内で下方に強制され、その中に詰め込まれる。したがって、本発明による粒子移動方法は、ビーズが、シーケンスの後またはシーケンスの反復の一部分として案内され、最終サブステップ(a)の結果として、マイクロチャンバーの一部であるかまたはマイクロチャンバーと直接流動連絡状態にあるビーズトラップの中に収集される。
【0114】
図5の記述された態様においては、マイクロチャンバー505は、ポケット524から分離された液体出口507を含む。このマイクロチャネル構造のもう一つの態様においては、液体出口507は、例えば、この部分506とマイクロチャンバー505の出口507との間の縁部における粒子の通過を妨害するために二重深さ等を設置することなどによって、出口部分506でポケットと結びつけられていてよい。
【0115】
例示されている図5中の態様は、粒子が固定化捕捉用抗体R1を担持し、粒子が内部を移動する液相が、溶解反応物R2を含有しており、これらの反応物が互いに反応性である(互いに対する反応性の対応物である)場合に、特に有用であり得る。図5の構造、特に付加的な粒子ポケットとして設計されている出口部分506を伴う構造はまた、多孔質粒子床(溶解物質がすでに捕捉されたかまたは他の形で反応している)を目詰まりさせることになる材料を含有する液体に付随する問題に対処するようにも適合されている。溶解物質との反応後の粒子をポケット524まで移動させることにより、目詰まり材料を含有する液体を、容易にかつ目詰まりのリスクを最小限におさえながら、スピンを増大させることによって出口マイクロ導管507を通って外に通過させることができる。
【0116】
図5の構造内での革新的方法の使用について、これより、図3について使用されたものと同種類のアッセイの一部分として記述する。マイクロチャンバー505は、三角形の形状を有し、2つのポケット506および524を伴って設計されている。
【0117】
ステップ1:堅く付着した捕捉用反応物を担持する磁気粒子の多孔質床への詰め込みは、図3の場合と同じである。
【0118】
ステップ2:マイクロチャンバー内で粒子を洗浄する(スピン流)−急速スピン。原則として、図3(ステップ2)の場合と同じである。
【0119】
ステップ3:溶解物質を含有する試料を導入し、捕捉は原則として図3(ステップ3)の場合と同じである。好ましいジグザグ法は、粒子がポケット524内に詰め込まれ、存在しうるあらゆる目詰まり材料と共に液体が出口マイクロ導管507aを通って外に移行する急速および高速スピン期間によって終了するスピン方法Bとして以下に示されている。
【0120】
ステップ4:洗浄溶液が、図3の場合と同じ要領で導入される。以下のスピンシーケンス/方法Cを適用することにより、粒子をポケット506内に詰め戻すことができる。このとき、急速スピンにより出口マイクロ導管507を通して強制的に液体を外に出すことができる。
【0121】
ステップ5:マイクロチャンバーを数回洗浄する(スピン流)−急速スピン。原則として、図3(ステップ4)の場合と同じである。
【0122】
ステップ6:例えばフルオロフォアで標識された検出用抗体を添加する。構造内への抗体の導入は、図3の場合と同じ要領で行なうことができる。粒子に対するこの抗体の捕捉は、好ましくは、従来通り、詰め込み解除無しで多孔質床を通して液体抗体試料をスピンさせることにより実施される。
【0123】
ステップ7:マイクロチャンバーを数回洗浄する(スピン流)−急速スピン。原則として図3(ステップ6)の場合と同じである。
【0124】
ステップ8:ポケット506内で多孔質床に結合した検出用抗体の量を測定することにより、結果を検出する。
【0125】
図5の場合の上述のスピン方法についてこれより論述する。
【0126】
上下方法:このような方法は各々、典型的に、急速にディスク回転速度を減少させ、ディスクの回転方向を変更し、次にディスク回転を急速に増大させることから成る。これは、いずれかの方向で出発し、次にスピン方向をもう一方の方向に変更することで実施可能である。このようにして、ビーズまたは粒子はまず最初に構造の一方の側に沿って液体の上部メニスカスまで急速に走行し、次にもう一方の側へと移行して、その後急速に下向きに走行していく。マイクロチャンバー505のカラム内部壁および流体の上部メニスカスに沿った軌跡を追従するように粒子を操作するための上下スピンシーケンスの一例は、以下のステップを含み得る。

【0127】
ジグザグ法:この方法は、まず第1ステップで、スピン方向を変更するのと同時にディスク回転速度を漸進的に減少させることから成る。このようにして、粒子は、ジグザグ軌跡に従って構造の一方の側からもう一方の側(右-左)まで走行することにより当初上向きに(内半径に向かって)進み、次に下向きに(外半径に向かって)進む。

【0128】
図6は、より大きなマイクロチャンバー605からより小さいマイクロ構造またはマイクロキャビティ628までの磁気粒子の選択的変位を可能にするマイクロチャネル構造を例示する。この種の構造は、マイクロ流体工学における興味深い一つの問題、すなわちいかにしてマクロの世界とミクロの世界をインタフェースするかという問題を表している。いくつかのケースにおいては、優れた検出感度を得るために大量の試料を使用する必要がある(例えば、1μl超、例えば10μl超または50μl超またはそれ以上の被分析物含有液体試料、典型的には1000μl未満の上限で)。残念なことに、この体積範囲は、マイクロ構造の従来のサイズには適合していない(小型化の利点の喪失)。本発明に従った粒子の磁気撹拌は、一つの解決法を与えることができる:すなわち、磁気粒子に対し予め固定化されている被分析物に対する反応性の対応物(R1)と被分析物(R2)との相互作用、例えば捕捉は、以下を有するポケット626をもつ大きなマイクロチャンバー605の内部で発生し得る:
a) マイクロチャンバー605の合計体積(バルク)よりもはるかに小さい体積および、
b) マイクロチャンバーの最下端643(ポケットの外側にある)よりもスピン軸に近い下端部642。
【0129】
図5について記述された通り、発明の方法を応用することにより、磁気粒子はポケット605内に選択的に誘導され、マイクロキャビティ628まで下流へと輸送され得る。ポケットがバルブ機能627を伴う出口を有する場合、ポケット内に収集された粒子および液体は、このときより低いマイクロキャビティ内へ、またはポケット606の下流側に設置されているあらゆる種類のマイクロ構造内へと放出され得る。このとき、反応物R1とR2の間の相互作用の結果としての粒子に付随する特性を測定することができ、または粒子をマイクロ構造628中でさらに処理することもできる。ポケット606からの粒子の放出は、バルブ627が毛管バルブなどのように非閉鎖型である場合、スピン速度を増大させることによって単純にひき起こされる。閉鎖型バルブは、典型的に積極的に開放されなくてはならない。したがって、もとの試料の小さな画分のみがより低いマイクロ構造628に入り、一方で液体体積の残りの部分は粒子と比べて廃棄物となり、マイクロチャンバー605内にとどまり、ここでそれは、ポケット626にリンクしているマイクロ構造628とは別のマイクロ構造(図示せず)の中で処理されかつ/またはさらに下流へと輸送され得る。液体中に存在する反応物R2と粒子に堅く付着している反応物R1との相互作用により形成された生成物は、この生成物もまたポケット606内に入れられた少量の液体体積内に含まれている粒子に付着している場合、粒子に濃縮される。これは典型的に捕捉と呼ばれ、以下の形成を含んでいる:i) R1およびR2の両方を含有する固定化親和性錯体、ii) 酵素構成要素の一つが反応物R1であり、および生成物が不溶性であるかまたは他の形で粒子等に固定化される、酵素反応の生成物。
【0130】
ポケット606の出口642を通過する液体体積は典型的に、ポケット内への粒子の制御移動中、マイクロチャンバー605内に存在する液体の合計体積の50%以下、例えば10%以下または5%以下、1%以下を構成する。マイクロチャンバー605内の合計液体体積に対するポケット642の体積は典型的に、出口642を通って外に出る対応する相対的液体体積よりも少ない。これらの範囲はまた、同じ機能性をもつ他のポケットにもあてはまる。
【0131】
出口(図中には図示されていない)においてナノリットルの多孔質床を含む構造628については、先に提示した大量の被分析物試料の取り扱い方法によって、カラムの目詰まり(以上で説明したもの)が最小限となり、マイクロチャンバー605の出口に設置されたナノリットル体積の多孔質床(図中には図示されていない)を通して大量の試料を得るのに本来必要である長いスピン流時間が回避される。結果は、アッセイ時間の削減および信頼性などのアッセイ性能の改善を意味する可能性が最も高い。
【0132】
図6により例示されているタイプの構造のための典型的スピンシーケンスは以下の通りである。

【0133】
図6のマイクロチャネル構造は2種類の入口配置629および630を有する。入口配置629は、比較的大きく、先に一般的に記述した通り例えば0.5μl以上、例えば1μl以上である被分析物試料用を意図し、多くの場合たくさんの量を十分な精度でマイクロ流体装置/構造に送り出すことができるため、体積規定ユニットを含まない。入口配置629は、少なくとも一つの入口ポート631、この入口ポート631と同じレベルにあるかまたはそれよりもスピン軸に近いところにある少なくとも一つのベント632、および入口配置とマイクロチャンバー605の間のバルブ633を有する。もう一方の入口配置630は、入口ポート634、ユニットの出口すなわちユニットとマイクロチャンバー605の間にバルブ636を伴う図3について記述されたものと同じ一般的種類の体積規定ユニット635を含む。
【0134】
この構造内および本明細書の他の箇所にあるバルブ627、633、636、および637は、好ましくは、例えば1つ、2つまたはそれ以上の内部壁の非湿潤性局所部域などの、そうでなければ湿潤化可能な内部表面内の表面特性の急激な局所的変化に基づくか、あるいは1つ、2つまたはそれ以上の内部横断面寸法の急激な変化に基づく、さまざまな種類の毛管バルブなどのように非閉鎖型である。大気へのベントは、632、638、639、640、および641に位置づけされ、泡の生成リスクを最小限におさえながら構造の円滑な充填を補助する。液体入口および液体出口、および非閉鎖型バルブはまた、この構造内ならびに他の構造内でベント機能も有する。
【0135】
図7は、内部で磁気粒子が本発明に従った制御移動に供され、マイクロチャンバー705の下極端751のレベルと、同じマイクロチャンバーの下部部分内の液体出口752のレベルとの間に規定されるポケット706の中に収集される、マイクロチャンバー705を開示している。液体出口752には、好ましくは少なくとも液体出口752に隣接して上向きに配向されている出口マイクロ導管753が連結されている。この出口マイクロ導管753は、マイクロチャンバー705内に存在することになる液体の上部表面755より上、下のレベルまたはそれと同じレベルにある上極端754を有していてよい。出口マイクロ導管753の出口端部756は、典型的にマイクロチャンバー705の最下端部751のレベルよりも低い。
【0136】
マイクロチャンバー705は、上流側方向で、例えば予備収集用マイクロキャビティ764などを介してマイクロチャンバー705用の一つまたは複数の入口配置757、758、759と流動連絡状態にある。一つの入口配置(マイクロ導管757として示されている)は、構造の内部でのもとの試料の上流側処理によって得られた液体アリコートを提供することができる。もう一つの入口配置758は、装置の内部のアリコートを計量することなく構造内に液体を導入するためのものであってよい。これは特に、例えば1μl超の、十分な精度でマイクロ流体装置内に導入され得るさらに大きな体積にあてはまる。存在しうる第3の種類の入口配置759は、マイクロチャネル構造内で処理されるかさもなければ使用されることになる液体アリコートを装置内部で計量するための体積規定ユニットを含む。この入口配置は典型的には、十分な精度で送り出すことのできない、すなわち装置内部での計量を必要とするさらに少量のアリコートのために存在する。これらのアリコートは、典型的に1μl未満である。バルブ760、761、762、および763を、a) 入口マイクロ導管753に、例えば上向きに方向づけされた部分内にかつマイクロチャンバー705内に入れられた液体の表面755のレベルよりも低いレベルで、b) 予備収集用マイクロキャビティ764とマイクロチャンバー705との間に、c) 液体の導入のための入口ポート765、766を含むさまざまな入口配置758、759の出口端部に、位置設定され得る。図6の構造と同様に、望ましくない気泡の形成のリスクを最小限におさえながら、さまざまな部分の中への液体の円滑な導入を補助するためのベント777〜780も存在している。さらに好ましくは他の構造について概略的に記されているように、バルブは好ましくは非閉鎖型である。
【0137】
構造7の使用中、磁気粒子は、本明細書で論述されている通りに制御移動に供された後、ポケット706の中に収集される。スピン速度をさらに増大させた時点で、粒子をポケット内に保持しつつ、液体は、バルブ760を通り越し、上極端754上を毛管力により引き出され、廃棄チャンバー763内にサイフォンで吸い上げられる。
【0138】
本発明は、上述の好ましい態様に限定されない。さまざまな変形態様、修正、および等価物を使用することができる。したがって、上述の態様は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】マイクロ流体システムを概略的に描いたブロック図である。
【図2】マイクロ流体システムの配置を示す。
【図3】マイクロ流体ディスク上のマイクロチャネル構造のサブセットの概略図である。各構造は、液体出口と一致する粒子ポケットを伴うマイクロチャンバーを有する。
【図4a】本発明に従った配置の概略図である。
【図4b】スピナーステーションおよびモータの上に取付けられたマイクロ流体ディスクのライン4b-4bに沿った横断面の側面図である。
【図5】液体出口と結びつけられていない粒子ポケットが存在するマイクロチャネル構造の一態様である、個別マイクロラボを例示する図である。
【図6】内部で粒子が制御移動に供されている小量の液体と共に、磁気粒子を下流輸送できるようにする、出口を伴うポケットを有する粒子マイクロチャンバーを備えた構造を提供している。
【図7】内部で粒子が移動している液体を迅速に流出させながら磁気粒子を保持できるようにする、液体出口を有するポケットを備えた粒子マイクロチャンバーを提供している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャンバーが、a) 液体入口および b) 液体用入口または出口としても機能し得る余剰空気用出口を有しており、
i) マイクロチャンバー内に磁気粒子および液相が置かれている状態でマイクロ流体装置を提供するステップ;
ii) (A) 装置がスピンされた時点でマイクロチャンバーを包み込む能力をもち、かつ(B) マイクロチャンバーが磁場により包み込まれた時点で、粒子がマイクロチャンバー内に置かれた場合に内向きに引きつけられるように方向づけされている磁場、を提供するステップ;
iii) 粒子を内向きに引っ張る傾向をもつ磁力を上回るのに十分な遠心力を作り出す速度で装置をスピンさせることにより粒子を外向きに移動させることを含むサブステップ(a)、および粒子を内向きに引っ張る傾向をもつ磁力を下回る遠心力を作り出す速度で装置をスピンさせることにより粒子を内向きに移動させることを含むサブステップ(b)の、サブステップ(a)および(b)のシーケンスまたはサブステップ(b)および(a)のシーケンスを、マイクロチャンバーの一部である第1のポケットの内外への粒子の移動を制御可能とするように、予め定められた回数実施するステップ
を含むことを特徴とする、スピン軸を中心としてスピン可能なマイクロ流体装置のマイクロチャネル構造のマイクロチャンバー内の磁気粒子の移動を制御するための方法。
【請求項2】
粒子がポケット内に提供されることおよびステップ(iii)がサブステップ(b)で開始することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のポケット内に粒子を置くことで移動が終了することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
マイクロチャンバーの第1のポケットおよび部分から物理的に離隔された第2のポケットの中に粒子を置くことで移動が終了することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
マイクロチャンバーの最も外側の部分の半径方向位置と等しいかまたはそれよりもスピン軸に近い半径方向位置に設置されている磁石(1個または複数)のセットIによって、磁場が作り出されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
セットIの全数を含む1個または複数の磁石が、装置から物理的に離隔されていることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
セットIが、2個またはそれ以上の磁石を含み、かつ2つのサブセットに分割され、一方のサブセットIaが装置の一方の側に設置されるのに対し、他方のサブセットIbが装置の反対側に設置されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ステップ(iii)に先立ち均質に混合された2つまたはそれ以上の液体を、液相が含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
サブステップ(b)には、時計回り方向に装置をスピンさせることによってスピン軸に対して正の角度方向にマイクロチャンバー内の粒子を移動させることが含まれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
サブステップ(b)には、反時計回り方向に装置をスピンさせることによってスピン軸に対して負の角度方向にマイクロチャンバー内の粒子を移動させることが含まれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
サブステップ(b)が反復される毎にスピン方向が反転されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
液体出口が、マイクロチャンバーの一部であるポケットと結びつけられていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
マイクロチャンバーが、該チャンバーの一部であるポケットから離隔された液体出口を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
マイクロチャンバーの一部であるポケットまで移動させた粒子が、第2の液体でさらに処理されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
粒子が固定化反応物R1を担持し、かつ液相が溶解反応物R2を担持し、これらの反応物が互いに反応性をもつ(互いに反応性の対応物である)ことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
反応物R1およびR2が、
a) 酵素系のような生体触媒系などの触媒系の構成成分、
b) 抗原/ハプテンおよび抗体、細胞表面構造および該構造と相互作用する能力をもつ可溶性物質または溶解物質などの受容体-リガンド対のメンバー、
c) 相補的核酸、
d) 生体親和性反応(bioaffinity reaction)に関与し得る天然反応物の模倣物である合成反応物をも含む、リガンドおよび細胞受容体等
などの親和性対のメンバーであることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
マイクロチャンバーが、a) 液体入口、b) 液体用の入口または出口としても機能し得る余剰空気用の出口を有し、かつc) 液相を収容しており、
マイクロ流体装置が、制御器により制御されるスピナーステーション上に置かれた時点でスピン軸を中心にしてスピン可能であり、
マイクロ粒体平面のスピン平面に近接接続された状態で固定または可動に設置されている1個または複数の磁石が、
(A) 装置がスピンされた時点でマイクロチャンバーを包み込む能力を持ち、かつ(B) マイクロチャンバーが磁場により包み込まれた時点で、粒子が内向きに引きつけられるように方向づけされている磁場
を提供し、
前記制御器が、
粒子を内向きに引っ張る傾向をもつ磁力を上回るのに十分な遠心力を作り出す速度で装置をスピンさせることにより粒子を外向きに移動させることを含むサブステップ(a)、および粒子を内向きに引っ張る傾向をもつ磁力を下回る遠心力を作り出す速度で装置をスピンさせることにより粒子を内向きに移動させることを含むサブステップ(b)の、サブステップ(a)および(b)のシーケンスまたはサブステップ(b)および(a)のシーケンスの予め定められた回数の実施
をコンピュータプログラム命令を用いて制御する能力を有しており、
前記シーケンスが、マイクロチャネル構造と結びつけられたポケットの内外への粒子の移動を制御可能としている
ことを特徴とする、マイクロ流体装置のマイクロチャネル構造のマイクロチャンバー内の磁気粒子の移動を制御するための配置。
【請求項18】
マイクロチャンバーの最も外側の部分と等しいかまたはそれよりもスピン軸に近い半径方向位置に設置されている磁石(1個または複数)のセットIによって、磁場が作り出されることを特徴とする、請求項17記載の配置。
【請求項19】
セットIの全数を含む1個または複数の磁石が、装置から物理的に離隔されていることを特徴とする、請求項18記載の配置。
【請求項20】
セットIが、2個またはそれ以上の磁石を含み、かつ2つのサブセットに分割され、一方のサブセットIaが装置の一方の側に設置されるのに対し、他方のサブセットIbが装置の反対側に設置されることを特徴とする、請求項18または19記載の配置。
【請求項21】
液相が、2つまたはそれ以上の均質に混合された液体を含有することを特徴とする、請求項17〜20のいずれか一項記載の配置。
【請求項22】
サブステップ(b)においてスピンが時計回り方向となるようにし、それにより正の角度方向にマイクロチャンバー内の粒子を移動させる能力を制御器が有していることを特徴とする、請求項17〜21のいずれか一項記載の配置。
【請求項23】
サブステップ(b)においてスピンが反時計回り方向となるようにし、それにより負の角度方向にマイクロチャンバー内の粒子を移動させる能力を制御器が有していることを特徴とする、請求項17〜22のいずれか一項記載の配置。
【請求項24】
サブステップ(b)が反復される毎にスピン方向を反転させる能力を、制御器が有していることを特徴とする、請求項17〜23のいずれか一項記載の配置。
【請求項25】
液体出口がポケットと結びつけられていることを特徴とする、請求項17〜24のいずれか一項記載の配置。
【請求項26】
マイクロキャビティが、ポケットから離隔された流体出口を含むことを特徴とする、請求項17〜25のいずれか一項記載の配置。
【請求項27】
ポケットまで移動させた粒子を第2の液体でさらに処理させる能力を、制御器が有していることを特徴とする、請求項17〜26のいずれか一項記載の配置。
【請求項28】
粒子が固定化反応物R1を担持し、かつ液相が溶解反応物R2を担持し、これらの反応物が互いに反応性をもつ(互いに反応性の対応物である)ことを特徴とする、請求項17〜27のいずれか一項記載の配置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−530606(P2009−530606A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500321(P2009−500321)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000225
【国際公開番号】WO2007/106013
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508277209)
【Fターム(参考)】