説明

増設機器排水の処理方法及び処理システム

【目的】 既に建築されているビル等で、建築完了後に計画変更により増設要望のある便器等の増設機器排水を、既設の排水系統に容易に接続することができ、新たに排水立管を新設することなく、排水を可能とする。
【構成】 電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクにより、水洗トイレ、洗面器およびシャワユニット等の増設機器排水を、小径排水管7で満流圧送し、前記排水管7を既設便器の下部に敷設したトイレスタンド2内を通した排水ノズル8を介し、既設便器1の排水管に排出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計画変更等によって水洗便器等を増設する必要が生じた場合、増設機器の排水処理のために、新たに排水立管を増設することなく、既設の排水管への処理方法及び排水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般衛生設備基準によると、例えばトイレ器具と排水管との接続は、管勾配を付して排水する必要がある。トイレ機器排水管の管径は太く(75A)、排水負荷流量が大きい。従って、通常、そのままでの増設機器排水の既設排水系統への排水合流は難しい。このため一般には設計を見直し、排水立管の排水能力増強のための更新工事を行うか、屋外に別途排水立管を新設し、これを介して排水処理する。この従来工法は、施工費用と時間の大幅増大となる。
【0003】
このように、従来の排水処理方式では機器の横引排水管に管勾配が絶対必要とされ、排水管は太く排水負荷が大きかった。従って既設排水立管には新設機器の排水能力増に見合う余力がないので、設計が成立せず、増設を諦めていたのが実状である。まれに既設排水管に排水能力の余裕があり設計が可能であっても、在来型便器と排水管工法では、床撤去そして工事後の復旧工事など目的外の付帯工事が多く発生し、管工事の数倍に及ぶ工事・手間・時間等が嵩むことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既に建築されているビル等で、建築完了後に計画変更により増設要望のある便器等の増設機器排水を、既設の排水系統に容易に接続することができ、新たに排水立管を新設することなく、排水を可能とする処理方法及び排水処理システムを提供することを第1の課題とする。
【0005】
また既設排水系統の排水能力には増設余力は少ないのが一般的であるが、既設の排水立管にまだ余裕がある場合に、この既設の排水立管を使用し、これに新規な処理手段を付加することにより、施工時間と工事費を大幅に削減できる経済的な増設機器の排水処理方法及び排水処理システムを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の排水処理方法として、増設機器排水を、電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクに接続された小径排水管により満流圧送し、既設便器の下に重ねて敷設されたトイレスタンド内を通した排水ノズルを介して既設便器用の排水管に排出するようにした。
上記の処理方法を実施する処理システムとして、増設機器排水管に接続された電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクと、この小型排水タンクに接続された小径排水管の先端に接続された排水ノズルと、この排水ノズルを通す凹溝を有し、既設便器の下に重ねて敷設される板状のトイレスタンドとからなり、前記排水ノズルの先端を既設便器用の排水管に開口させた。
そして、前記小径排水管の先端に接続した排水ノズルは、その直径が前記トイレスタンドの厚み以下とした。
また、前記トイレスタンドは前記既設便器を取外したのち、これを床上に固定し、しかるのちトイレスタンド上に前記既設便器を載せて固定するようにした。
また、前記トイレスタンドの素材は合板または硬質の発泡プラスチック等であることが好ましい。
さらに、前記トイレスタンドはその厚さが約20mmの板状をなし、中心に前記既設便器の排水管に嵌る開口を備えていることが好ましい。
次に、もう1つの排水処理方法として、増設機器排水を電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクに接続された小径排水管により満流圧送し、前記小径排水管の先端に設けた排水ノズルを介し、既設排水立管の内周面に沿って排出するようにした。
上記の方法を実施する処理システムとして、増設機器排水管に接続された電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクと、前記小型排水タンクに接続された小径排水管と、前記小径排水管に取付けた排水ノズル付ポンプ排水アダプタとからなり、前記排水ノズル付ポンプ排水アダプタの排水ノズルを既設排水立管を貫通させて既設排水立管の内壁に向って排出するようにした。
そして、前記排水ノズル付ポンプ排水アダプタは、前記既設排水立管にサドル継手を介し取付けられ、前記排水ノズルを既設排水立管に設けた孔を貫通させ、その先端が前記既設排水立管の内壁面に沿ってこれと略平行に配設され、排水ノズルからの排水を既設排水立管の内壁面に沿って排出させるようにした。
【発明の効果】
【0007】
既設便器の下にトイレスタンドを敷設し、このトイレスタンドの部分に、その厚み内におさまるように排水ノズルを配設するようにしたので、既設便器の排水管をそのまま利用でき、排水立管を新設する必要がなく、安価に増設トイレ等の増設機器を設けることができる。
【0008】
また、トイレスタンドの厚さの範囲内に排水ノズルを設けることができるので、増設機器排水の排水設備工事は容易であり、その工事費ならびに材料費の面でも理想的である。
【0009】
さらに、既設の排水立管の排水能力に余裕があり、これを利用できる場合には、増設機器側の排水管からサドル継手及びこれに取付けた排水ノズルを介し既設の排水立管に排水できるようにしたので、安価に増設機器の排水を処理することができる。
【0010】
そして排水ノズルからの排水を、既設の排水立管の内壁面に沿って排出するようにしたので、その吐出エネルギーによるウォータブラスト効果により、内壁面の洗浄が可能である。そして内壁面に沿って排出されるので既設の排水立管内の通気作用を阻害することのない排水処理が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る増設機器排水の処理システムの斜視図である。図1で1は既設の便器である。2は既設便器1の下に敷設したトイレスタンドである。トイレスタンド2の厚さは約20mmで、その素材は合板または硬質プラスチック等の切断加工し易い材料である。厚さ約20mmは平均的な使用者にとって好ましい厚さであるが、便器の使用者の背丈により任意の厚さを採用でき、特に限定するものではない。
【0012】
トイレスタンド2には中心部に開口6を有し、ここにガスケット3が取付けられ、既設の便器1はこの開口上に載せられる。トイレスタンド2は床5上に固定具4で固定される。
【0013】
トイレスタンド2内には、電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクに接続された小径排水管7の端に接続される排水ノズル8が取付けられている。この排水ノズル8はフランジ9で前記小径排水管7に接続される。小径排水管7は壁・床上・天井裏などを通し配管される。排水ノズル8は例えばトイレスタンド2に設けた凹溝2a内に納っている(図1(b))。
【0014】
増設機器排水管30に接続された電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクは公知ものを使用する(図2)。これは例えば図2に示すフランスSFA社製の強制排水ポンプで、排水中の汚物は内蔵されたグラインディングシステム内の粉砕用カッター11によって微細に粉砕され泥状化さらには液状化状態にされて前記小径排水管7内を満水圧送される。そして汚水のタンク10内への流れ込みを検知して自動的にカッター11が働き、汚物は3〜4秒で泥状化さらには液状化され、ほとんどの泥状汚物を内蔵ポンプ12で前記小径排水管7に満水圧送する。タンク10がほぼ空になるとポンプ12は自動的に停止する構成になっている。
【0015】
以上説明した電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクから強制排水ポンプで圧送された泥状汚物等を含む汚水は、壁・床・天井裏等を通って小径排水管7に送られ、トイレスタンド2内の凹溝2aを通る排水ノズル8を経て既設の排水管に排出される。そしてこの排水ノズル8はトイレスタンド2の厚み内に納まるようになっている。また、トイレスタンド2は排水ノズル8を設置する上でさけられないものであるが、もしこれで便器1の高さが高すぎる場合には便器の両側に、高さ超過分を補う踏み台等が必要になるが、必要に応じて対処すればよい。
【0016】
次に図3と図4は、図1の場合とは異り、既設の排水立管13に少し余裕があり、これを利用できる場合の排水処理例で、小径排水管14を既設の排水立管13に接続する構成になっている。
【0017】
図3では増設機器排水を、電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクに接続された小径排水管14により満流圧送し、小型排水管14の先端にサドル継手15により設けた排水ノズル付ポンプ排水アダプタ16を介し、既設の排水立管13の内周面に沿って排出するようになっている。
【0018】
図4に示すように、排水ノズル17は既設排水立管13に穿設した孔18に挿入され、パッキン19を介し漏水しないよう固定される。図5はサドル継手15の一例で、前記既設排水立管13にこれを締め付け、固定ねじ15aで取り付けている。ノズル付ポンプ排水アダプタ16はこのサドル継手15に溶接付け等で取り付けられ、その先の排水ノズル17はその先端が既設排水立管13の内壁面20に沿うよう角度をつけて設置されている。排水ノズル17の先端はたとえば120°〜150°程度開いている。
【0019】
排水ノズル17はその先端で小径排水管14からの排水を排水立管13の内壁面20にそってこれと略平行に排出するよう取付けられており、しかも先端が120°〜150°の角度をもって開いているので、内壁面に沿って渦流状でしかも拡散状態で排出するよう構成されている。このように構成したので、既設の排水立管13の排水能力にあまり余裕がない場合でも、内壁面20に沿って渦流状をなして噴出し、排水負荷を小さくする効果を有している。又排水を内壁面20に沿って拡散させて排出するので(図4の符号21参照)、排水は排水立管13の内壁面20を洗浄する効果を有している。また排水を排水立管13の内壁面20に沿って渦流状をなして排出させるので、排水立管13の中心部を塞ぐことがなく、排水立管13の通気障害を惹起することがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る増設機器排水の処理システムの斜視図である。(b)はトイレスタンドの排水ノズル取付部の詳細斜視図である。
【図2】公知強制排水ポンプの一例としてのフランスSFA社製の電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクを示す断面図である。
【図3】既設の排水立管を利用できる場合の増設機器排水管の接続構造を示す斜視図である。
【図4】図3における排水ノズルの取付部の詳細を示す断面図である。
【図5】サドル継手の斜視図である。
【図6】既設の排水立管にサドル継手を介し排水ノズル付ポンプ排水アダプタを取付けた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 既設の便器 2 トイレスタンド
2a 凹溝 3 ガスケット
4 固定具 5 床
6 開口 7 小径排水管
8 排水ノズル 9 フランジ
10 タンク 11 カッター
12 内蔵ポンプ 13 既設の排水立管
14 小径排水管 15 サドル継手
15a 固定ねじ 16 排水ノズル付ポンプ排水アダプタ
17 排水ノズル 18 孔
19 パッキン 20 (既設排水立管の)内壁面
21 (管の内壁に沿って吐出す)水流
30 増設機器排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増設機器排水を、電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクに接続された小径排水管により満流圧送し、既設便器の下に重ねて敷設されたトイレスタンド内を通した排水ノズルを介して既設便器用の排水管に排出することを特徴とする増設機器排水の処理方法。
【請求項2】
増設機器排水管に接続された電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクと、前記小型排水タンクに接続された小径排水管と、前記小径排水管の先端に接続された排水ノズルと、前記排水ノズルを通す溝部を有し既設便器の下に重ねて敷設される板状のトイレスタンドとからなり、前記排水ノズルの先端を既設便器用の排水管に開口させたことを特徴とする増設機器排水の処理システム。
【請求項3】
前記小径排水管の先端に接続された排水ノズルは、その管径が前記トイレスタンドの厚み以下である請求項2記載の増設機器排水の処理システム。
【請求項4】
前記トイレスタンドは前記既設便器を取外した後、床上に固定し、その上に前記既設便器を重ねて固定することを特徴とする請求項2記載の増設機器排水の処理システム。
【請求項5】
前記トイレスタンドの素材は合板または硬質の発泡プラスチックである請求項2記載の増設機器排水の処理システム。
【請求項6】
前記トイレスタンドはその厚さが約20mmの板状をなし、中心に前記既設便器の排水管に嵌る開口を備えている請求項2記載の増設機器排水の処理システム。
【請求項7】
増設機器排水を、電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクに接続された小径排水管により満流圧送し、前記小径排水管の先端に設け、既設排水立管を貫通するた排水ノズルを介し、既設の排水立管の内周面に沿って排出するようにしたことを特徴とする増設機器排水の既設排水立管への処理方法。
【請求項8】
増設機器排水管に接続された電動マセレータ・ポンプ内蔵の小型排水タンクと、前記小型排水タンクに接続された小径排水管と、前記小径排水管に取付けた排水ノズル付ポンプ排水アダプタとからなり、前記排水ノズル付ポンプ排水アダプタの排水ノズルを既設排水立管を貫通させて既設排水立管の内壁に向って排出するようにしたことを特徴とする増設機器排水の既設排水立管への処理システム。
【請求項9】
前記排水ノズル付ポンプ排水アダプタは、前記既設排水立管にサドル継手を介し取付けられ、前記排水ノズルを既設排水立管に設けた孔を貫通させ、その先端が前記既設排水立管の内壁面に沿ってこれと略平行に配設され、排水ノズルからの排水を既設排水立管の内壁面に沿って排出させるようにした請求項8記載の増設機器排水の既設排水立管への処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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