説明

墨インキベースの製造方法

【課題】ビーズ状カーボンブラックを使用したインキによって非塗工紙および微塗工紙のような低密度の用紙に安定したオフセット印刷が可能なインキを提供するため、従来の分散手段では避けられない素粒子の混入がない安価なオフセット印刷用墨インキベースの製造方法の提供。
【解決手段】DBP吸油量:100〜140(cm/100g)、窒素吸着比表面積:30〜140(m2/g)、造粒粒子の硬さの平均が3〜20cNをすべて満たすビーズ状のカーボンブラックと粘度が25℃で30〜80Pa・sのワニスとを配合比100重量部対100〜150重量部でニーダーを用いて混練することにより、得られるオフセット印刷用墨インキベース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非塗工紙および微塗工紙等の低密度の用紙に対して用いるオフセット印刷用墨インキベースの製造方法に関する。さらに詳しくは、タイヤ及びゴム用に用いられる安価なビーズ状カーボンブラックを用いて、従来より使用されているパウダー状のカーボンブラックと同等の品位を有し、かつ、粉塵の発生等の製造時における環境負荷を軽減するオフセット印刷用墨インキベースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷用墨インキでは、顔料としてカーボンブラックを用いるのが一般的である。カーボンブラックは一次(基本)粒子と呼ばれる球状のカーボン粒子が融着し、連鎖状あるいは不規則な鎖状に枝分かれした複雑な凝集形態を示しており、ぶどうの房に例えられる凝集体を形成している。この凝集体をアグリゲートと呼び、このアグリゲートを形成している一次粒子の融着の程度をストラクチャーと呼んでいる。インキビヒクル中にカーボンブラックを分散させた場合においては、アグリゲートよりも細かく分散することは不可能とされている(非特許文献1、2)。
【0003】
一般的にカーボンブラックの三大特性として(一次)粒子径・ストラクチャー・粒子表面の化学的性質があり、アグリゲートの大きさは粒子径およびストラクチャーで決まる。
【0004】
粒子径は電子顕微鏡により観察されるカーボンブラックの一次粒子径の平均より算出される数値であるが表面積とほぼ反比例の関係にあるため、近年ではJISK6217−1〜2で規定される窒素吸着比表面積あるいはよう素吸着量で表される場合が多く、現在のカーボンブラック製造法のほとんどを占めるファーネス法により製造されたカーボンブラックの場合、窒素吸着比表面積とよう素吸着量とは近似した値を示す。ストラクチャーが同じである場合、窒素吸着比表面積が小さい(一次粒子径が大きい)ほどアグリゲートが大きいカーボンブラックであるといえる。
【0005】
ストラクチャーはカーボンブラック粒子の連鎖の程度を示すものであり、JISK6217−4により測定されるDBP(ジブチルフタレート)吸油量で表される。DBP吸油量が大きいカーボンブラックほどストラクチャーが大きいカーボンブラックであることを示し、アグリゲートが大きいカーボンブラックであるといえる。
【0006】
特開2004−269572号公報には、特定の物性を有するカーボンブラック及び樹脂ワニスにより製造される印刷インキ組成物が開示されている。しかしながら、カーボンブラックの物性としてはDBP吸油量が、30〜65(cm/100g)であると規定されており、DBP吸油量が低い場合、非塗工紙または微塗工紙に印刷するとドライダウンが大きく印刷濃度を維持できない可能性がある。
【0007】
すなわち、オフセット印刷の中でも高品質を要求される枚葉インキあるいはヒートセットオフ輪用インキでは高い光沢性を要求されるため、インキを薄膜とした場合にもインキ膜表面の平滑度を高くする必要がありアグリゲートが小さいカーボンブラックが選択される。しかしながら、非塗工紙および微塗工紙のような低密度の用紙に対して印刷を行う場合には、紙の表面に平滑性がない(凹凸を有する)ために、光沢性の要求は低く、さらに、カーボンブラックが、インキビヒクルとともに用紙の内部に沈み込んでしまい、印刷濃度が維持できないことから、アグリゲートの大きいカーボンブラックを選択する必要がある。
【0008】
従って、非特許文献1において印刷インキ用途として推奨されているカーボンブラックと新聞インキ用途として推奨されているカーボンブラックとの特性を比較すると、新聞インキ用途として推奨されているカーボンブラックは窒素吸着比表面積が小さい(粒子径が大きい)あるいはDBP吸油量が大きいものとなっており、それぞれの特性は以下の範囲内にほぼ収まっている。
【0009】
窒素吸着比表面積:45〜95m/g
DBP吸油量 :60〜115cm/100g
ゴム用のビーズ状カーボンブラックの代表的な品種であるHAF(N330)、ISAF(N220)及びFEF(N550)はDBP吸油量が大きいことから、特性値から判断すると低密度用紙への印刷用インキ用途に比較的適したカーボンブラックであるといえる。特にHAFは窒素吸着比表面積およびDBP吸油量ともに新聞インキ用途として推奨されているカーボンブラックの特性値の範囲内にある。
【0010】
しかしながら、一方で、オフセット印刷では印刷後の紙上におけるインキ膜厚が薄くなるため、均一なインキ膜厚と着色力とを得るためには、カーボンブラックを充分に分散させておく必要がある。このためビーズ自体が硬く素粒子の残りやすいビーズ状カーボンブラックはあまり用いられず、これまで多くの場合は、パウダー状あるいはパウダー状のカーボンブラックを若干圧縮したフレーク状のカーボンブラックが用いられてきた。これらのカーボンブラックは、カラー用または非ゴム用として分類されているが、カーボンブラックの総需要量に占める割合は5%以下にすぎず、ゴム用カーボンブラックと比較すると大幅に生産量が少なく価格も高い。さらに嵩高いことから原料として輸送する場合の効率も劣り、コスト上昇の要因となっている。また、粉塵の飛散が発生しやすく場合によってはインキの製造環境を悪化させる要因にもなっている。
【0011】
オフセット印刷以外における低級紙印刷用インキおよび諸外国の新聞墨インキには、顔料としてゴム用のビーズ状カーボンブラックを用いている例がある。分散方法としては、カーボンブラックを含めて配合処方中の95%以上を予備混合して得られた低粘度の分散ベースを、サンドミルにより分散する手段が主に用いられている。しかし、低粘度ベースによるサンドミルでの分散はせん弾力が弱いため、硬い粒子やビーズ状に固められたカーボンブラックを充分に分散しきれず、ショートパスとよばれる素粒子の混入が避けられない。このためオフセット印刷においてインキが、薄膜化した際に版の上に堆積し着肉不良を発生させたり、版を磨耗させる等のトラブルの原因となるため、日本国内では実用的な生産手段とはなっていない。
【0012】
また、特開2002−322407号公報、特開2002−322408号公報にはカーボンブラックと常温で固体の樹脂ワニスとを予め乾式粉砕を行い、溶剤等を加えて混合して製造する方法が開示されている。しかも、特定のカーボンブラックを使用することが記載されているが、これらのカーボンブラックを使用し、この製造方法を使用した場合には、ストラクチャーが破壊され、非塗工紙または微塗工紙等の低級紙用途としては印刷濃度が維持できず適切ではない。
【0013】
しかし、ゴム用のビーズ状カーボンブラックは新聞インキに代表される低密度用紙への印刷用インキ用途には適した特性を有しており、また、コスト及び製造における環境の両面から、これを使いこなす製造方法が待望されている。
【非特許文献1】「カーボンブラック年鑑No.55(2005)」 カーボンブラック協会編
【非特許文献2】「カーボンブラック便覧」平成7年4月15日、第三版、編集発行者カーボンブラック協会
【特許文献1】特開2004−269572号公報
【特許文献2】特開2002−322407号公報
【特許文献3】特開2002−322408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ビーズ状カーボンブラックを使用したインキによって非塗工紙および微塗工紙のような低密度の用紙に安定したオフセット印刷が可能なインキを提供するため、従来の分散手段では避けられない素粒子の混入がない安価なオフセット印刷用墨インキベースの製造方法を提供することを目的とする。すなわち、ビーズ状カーボンブラックを高濃度の硬調のベースにより分散することで素粒子の混入のないオフセット印刷用インキ用墨インキベースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ビーズ状カーボンブラックと特定の粘度範囲のワニスをニーダー内で混合させて混練することにより、素粒子の混入がない硬調のインキベースを製造する方法を見出し本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、DBP吸油量:100〜140(cm/100g)、窒素吸着比表面積:30〜140(m2/g)、造粒粒子の硬さの平均が3〜20cNをすべて満たすビーズ状のカーボンブラック及びワニスとを混合したものを分散及び練肉したオフセット印刷用墨インキベースにおいて、ワニスとして、ロジン変性フェノール樹脂あるいは石油樹脂のうち少なくとも一種以上を含有するオフセット印刷用墨インキベースの製造方法に関するものである。
【0017】
また、本発明は、ワニスの粘度が25℃で30〜80Pa・sであることを特徴とする上記の墨インキベースの製造方法に関するものである。
【0018】
さらに、本発明は、カーボンブラックとワニスとの配合比がカーボンブラック100重量部に対してワニスが100〜150重量部であることを特徴とする上記の墨インキベースの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明を用いることにより、安価なゴム用ビーズ状カーボンブラックを用いて従来と同等の品質のオフセット印刷用インキを製造することが可能となる。また、パウダー状のカーボンを使用することによる発生する粉塵等の環境負荷を低減させることが可能となり、工業的に有益な価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
【0021】
本発明に係わる必須成分であるカーボンブラックにおいて、必要な特性は、第一にDBP吸油量が100〜140(cm/100g)であり、さらに、好ましくは100〜125(cm/100g)である。ゴム用カーボンブラックの主要品種は、ゴムの強度を付与する目的で使用され、弾性付与の効果が高いDBP吸油量が比較的高いものが用いられ、その範囲は100〜140(cm/100g)である。DBP吸油量が大きいことでカーボンブラックのアグリゲートは大きくなっており、低密度の用紙に印刷するインキに適したものとなっている。しかし、吸油量が大きいカーボンブラックを使用するほど弾性付与効果が大きいためにインキベースの流動性が低下する傾向となるため、DBP吸油量が100〜125(cm/100g)の範囲のカーボンブラックを使用することがより望ましい。
【0022】
さらに、本発明のカーボンブラックは、さらなる特性として窒素吸着比表面積が30〜140(m2/g)であり、さらに、好ましくは40〜120(m2/g)がよく、より好ましくは、60〜90(m2/g)がよい。表面積が増加する(粒子径が小さくなる)とインキベース製造時に吸着する樹脂や溶剤の量が増加するため、窒素吸着比表面積が140を超えると必要な流動性が得られない。また、窒素吸着比表面積が30より小さいとアグリゲートが大きすぎることによりインキを紙に展色した時の着色力(展色濃度)が不足する。
【0023】
さらに、本発明のカーボンブラックは、さらなる特性として造粒粒子の硬さの平均が3〜20cNの範囲にあることが必要であり、好ましくは6〜10cNが良い。
【0024】
造粒粒子の硬さとはゴム用カーボンブラックのビーズの硬さを表す数値でありJISK6219による測定により規定される。
【0025】
本発明の製造方法によるカーボンブラックの分散は造粒粒子の硬さが低いほど容易であり、造粒粒子の硬さの平均が20cNを超えると充分な分散度を得ることが困難である。また、造粒粒子の硬さの平均が3cNより小さいとニーダーでの混練でカーボンブラックビーズが破砕した際に粉塵の発生が多くなり、製造環境を悪化させたりニーダー内壁に付着して素粒子の原因となる。
【0026】
また、本発明に係わる第二の必須成分であるロジン変性フェノール樹脂あるいは石油樹脂のうち少なくとも一種以上を含有するワニスは、粘度が25℃で30〜80Pa・sであるものを用いる。この範囲よりも粘度の高いワニスと溶剤を別々に投入すること及び複数のワニスや溶剤を併用することも可能であり、その場合投入したワニスと溶剤の混合物の粘度が上記の範囲となるよう配合比を決定すればよい。ワニスとカーボンブラックとをニーダー内で混合し攪拌していくと、カーボンブラックビーズが砕かれるが、その際に見かけのカーボンブラックの表面積が著しく増加するため、砕かれたカーボンブラックをすぐにワニスが覆いこむようにしないとインキベース内に著しく粘度が高い箇所が生じ不均一なインキベースとなる。また、破砕したカーボンブラックが粉塵となり製造環境を悪化させる。ワニス粘度が25℃で80Pa・sを超えると、破砕したカーボンブラックを直ちに覆うことができないため、インキベースが不均一となりやすい。また、ワニス粘度が25℃で30Pa・sより低くなるとニーダー内で攪拌してもトルクがかからずカーボンブラックが破砕できないもしくは破砕するのに非常に時間を必要とする。
【0027】
本発明におけるビーズ状カーボンブラックとワニスの配合比はカーボンブラック100重量部に対してワニスが100〜150重量部の範囲で設定すると良い。カーボンブラックとワニスとをニーダー内で攪拌していくと、徐々にカーボンブラックのビーズが破砕し、インキベースの粘度が上昇する。インキベース粘度が上昇することにより、インキベースにかかるせん弾力が上昇し、ビーズ状カーボンブラックの破砕を促進するとともに強い混練が可能となり攪拌開始から30〜60分程度の時間で良好な分散状態のインキベースが得られる。
【0028】
ニーダーにおける攪拌の初期段階では部分的かつ急激な粘度上昇によるインキベースの不均一化を避けるため破砕したカーボンブラックが直ちにワニスに覆われる必要があり、少なくともカーボンブラックに100重量部に対して100重量部以上のワニスが必要とされる。しかし、ワニスの配合比が高すぎるとビーズ状カーボンブラックの破砕によるインキベース粘度の上昇が鈍化するため、ニーダー内でインキベースにかかるせん断力が弱くなるため強い混連が得られない。カーボンブラックに100重量部に対してのワニス量が150重量部を超えるとインキベースが軟調であるため充分な分散性を確保することが困難となる。
【0029】
本発明において使用されるロジン変性フェノール樹脂もしくは石油樹脂の選定は製造法の容易さあるいは生産コスト等から選定を行えば良く、樹脂製造会社(例えばロジン変性フェノール樹脂であれば荒川化学工業株式会社、石油樹脂であれば新日本石油株式会社など)から提供される樹脂を使用して良い。
【0030】
本発明で使用する溶剤としては石油系溶剤のほかに植物油・脂肪酸エステルなどを用いることができる。
【0031】
石油系溶剤は、例えば炭素数14〜18のナフテン、イソパラフィンを主成分とするもので、環境に与える影響を考慮すると芳香族成分を含有しないものを用いることが望ましい。石油系溶剤のアニリン点はインキにおける性能を維持するため65℃〜110℃の範囲にあることが好ましい。アニリン点が110℃より高い溶剤を使用する場合には、インキ組成中の使用樹脂との溶解性に乏しく、インキの流動性が不十分となる。また65℃より低いアニリン点の溶剤を使用したインキでは、乾燥時のインキ皮膜からの溶剤の離脱性が悪く乾燥劣化を起こしてしまう場合がある。このような非芳香族系石油溶剤としての例は、新日本石油株式会社製0号ソルベントH、AFソルベント4〜7号、エクソン化学(株)のエクソールD80、D110、D130、D160等がある。また、一部高級アルコール系溶剤を添加しても良い。
【0032】
また、これらの石油系溶剤は大気汚染などの地球環境問題や作業環境の安全衛生面での問題が指摘されている揮発性有機化合物(VOC)を含有するものもあり、近年は使用量を低減させる傾向があり、これら石油系溶剤の代わりにVOCを全く含有しない植物油、植物重合油あるいは植物油脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル等の脂肪酸エステルに置換または併用しても良い。また、これら石油系溶剤、植物油、植物重合油、植物油エステルを複数種併用することも可能である。
【0033】
本発明において、植物油としては、ロジン変性フェノール樹脂と相溶性が良いものならば、何でも良く、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、菜種油が挙げられ、大豆油、ヤシ油、アマニ油、菜種油が好ましく、これらを単独で、または2種以上併用できる。
【0034】
本発明において、使用される植物油エステルとしては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、菜種油等の植物油由来の脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、モノアルキルエステル化合物が挙げられ、モノエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来のアルキル基は、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基が例示できる。これら脂肪酸モノエステルは、単独で、または2種以上を組合わせて使用できる。
【0035】
本発明においては、以上の石油系溶剤、植物油および脂肪酸エステルを任意の割合で併用して良い。
【0036】
また、ワニスとしてロジン変性フェノール樹脂及び石油樹脂のほかにギルソナイト樹脂もしくはアルキッド樹脂を併用すると良い。カーボンブラックの分散性向上がより容易となる。分散剤を使用することも可能であるがコストの点で不利であり推奨しない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明は、その趣旨と適用範囲を逸脱しない限り実施例に限定されるものではない。なお、以下の配合の数値は全体を100とした時の質量割合を示す。
〔ワニスの製造方法〕
表1に示す配合比で、ロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製)、大豆油、AFソルベント5(AF−5、新日本石油(株)製)、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH、川研ファインケミカルズ(株)製)を190℃、1時間加熱攪拌してワニス1〜4を得た。粘度については、コーンプレート粘度計(ハーケ社製)を使用して25℃で測定した。
【0038】
【表1】



〔墨インキベースの製造方法〕
ニーダーを用いて、ビーズ状カーボンブラックとワニス1〜4を表2に示す配合比で1時間混練して墨インキベースを作成した。
【0039】
【表2】






表3に本実施例及び比較例で使用したビーズ状カーボンブラックと参照例で使用したパウダー状カーボンブラックの物性値を示す。
【0040】
【表3】



表4に実施例及び比較例として製造した墨インキの評価結果を示す。
【0041】
【表4】



分散性は、JIS K5701−1の4.3.2に記載のグラインドメータによる方法で墨インキベース中の素粒子の大きさを測定し、10μm未満のものを○、10μm以上のものを×と表示した。
【0042】
ガラス板流度は、実施例及び比較例、参照例で得られた墨インキベースをカーボン濃度が同一で、粘度が10Pa・sとなるようにワニス1とAFソルベント5号で調整したものを使用し、インキピペットに一定容量の試験インキを測り盛り、水平に置いたガラス板流度計の基準線上に滴下させ、直ちにガラス板を垂直に立てる。垂直に立てた時から、10分後に試験インキが流れた長さを計測する。測定値の大きいものを流動性が高いと判定し、参照例で得られた墨インキベースの測定値を100%とした百分率で測定値を表示した。
【0043】
着色力は実施例及び比較例、参照例で得られた墨インキベースをカーボン濃度が同一で、粘度が10Pa・sとなるようにワニス1とAFソルベント5号で調整したものを使用し、RIテスターでインキ量0.25ccを非塗工紙に印刷したときの濃度値をグレタグマクベス濃度計で計測する。数値が高いほど着色力が高いと判定し、参照例で得られた墨インキベースの測定値を100%とした百分率で測定値を表示した。
【0044】
以上、DBP吸油量:100〜140(cm/100g)、窒素吸着比表面積:30〜140(m2/g)、造粒粒子の硬さの平均が3〜20cNをすべて満たすビーズ状のカーボンブラックと粘度が25℃で30〜80Pa・sのワニスとを配合比100重量部対100〜150重量部でニーダーを用いて混練することにより、パウダー状のカーボンブラックと同等の品位を有し、かつ、粉塵の発生等の製造における環境負荷を軽減するオフセット印刷用墨インキベースが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DBP吸油量:100〜140(cm/100g)、窒素吸着比表面積:30〜140(m2/g)、造粒粒子の硬さの平均が3〜20cNをすべて満たすビーズ状のカーボンブラック及びワニスとを混合したものを分散及び練肉したオフセット印刷用墨インキベースにおいて、ワニスとして、ロジン変性フェノール樹脂あるいは石油樹脂のうち少なくとも一種以上を含有するオフセット印刷用墨インキベースの製造方法。
【請求項2】
ワニスの粘度が25℃で30〜80Pa・sであることを特徴とする請求項1記載の墨インキベースの製造方法。
【請求項3】
カーボンブラックとワニスとの配合比がカーボンブラック100重量部に対してワニスが100〜150重量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項2何れか記載の墨インキベースの製造方法。