説明

墨出し方法

【課題】墨出しを正確且つ簡易に行うことができるようにすると共に、工期の短縮や作業者の負担の軽減を図ることができるようにする。
【解決手段】建築設計図に部分図を貼るための基準線を縦横方向に作図して計画図を作成する。次に、計画図から、縦横方向の基準線同士の交点を含む範囲を原寸大となるように印刷してなる部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを作成する。次いで、計画図に作図した基準線に対応する部分図を貼るための基準線5´を、基材10上に墨出しする。更に、基材10上に墨出しした基準線5´に部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの基準線5を合わせると共に計画図1に基づいて部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの方向を合わせて基材10上に貼り付けて、基材10上に墨出しする。その後、貼り付けた部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G以外を、基材10上に墨出しする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の躯体が出来上がった後に間仕切り壁や扉等の位置決めをしたり、建物の躯体が出来上がる前、あるいは、建物の外部で位置決めをするために用いる墨出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一例として、建物内部について説明すると、建物の躯体(柱、壁、梁等)が出来上がると、建物の内部で間仕切り工事や内装仕上げ工事、更には、電気・衛生設備工事等が行われるが、これらの工事を行うためのガイドライン、たとえば、間仕切り壁や扉等の位置決めをするため、建物内部のコンクリート表面あるいは置き床表面の所定位置に墨で印を付ける、いわゆる墨出しが行われる。この墨出しは、一般的に、間仕切り壁や扉等の設置位置を、作業者が設計図に記載されている寸法を確認しながらメジャー等にて測定して一壁ずつコンクリート表面あるいは置き床表面にポイントを取り、そのポイントを繋ぐように墨つぼ等を用いて墨打ちしてラインを出すことにより行われている。
【0003】
一方、建物の外部では、たとえば、ブロック塀、フェンスの位置や、基礎工事における捨てコンクリート上への墨出しも、上記建物内部の墨出しと同様に作業者により行われている。
【0004】
しかしながら、かかる墨出し方法では、ポイント付けの誤差、墨打ち時の誤差、設計図の読み間違いによる墨出し間違い等のヒューマンエラーを防ぐため、墨出しに慎重を期す必要があり、工期を短縮することが難しいという問題がある。又、墨出しに際しては、作業者が腰を屈めて長時間作業をしなければならず、作業者の身体へかかる負担が大きいという問題もある。このため、現在では、これらの問題点を解消すべく、種々の墨出し方法が提案されてきている。
【0005】
図7は、屋根のない外部で打設されたコンクリート上への墨出しを雨の日でも行えるようにする方法の一例の概略を示すもので、図7(イ)(ロ)に示すように、基材13の表面16にマーク19(図7では+)を印刷あるいは筆記具で描くと共に該基材13の裏面17に接着剤14を塗布し、且つ該接着剤14の表面18を剥離シート15で覆うようにしてなる墨出しシール12を多数用意し、該墨出しシール12を、図7(ハ)(ニ)に示すように、コンクリート20の濡れ表面21における墨出しエリア22の4隅である基準位置に接着して該基準位置に基準墨23を墨出しするようにする。次に、図7(ニ)に示すように、該墨出しした基準墨23同士を結ぶ4つの辺24上において建物の通り芯26の端部となる端部位置を測距して求め、該求めた端部位置に墨出しシール12を接着することによって該端部位置に基準墨25を墨出しするようにする。次いで通り芯26の両端の基準墨25を墨出しした端部位置同士を結ぶ辺上において他の通り芯26と交差する交差位置を求め、該交差位置に墨出しシール12を接着して碁盤目状に基準墨27を墨出しするようにし、しかる後、該碁盤目状の基準墨23,25,27を基準に、柱、壁、梁等の設置位置28を求め、該設置位置28に墨出しシール12を接着することにより小墨と呼ばれる墨出しをするようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
又、図示してないが、建物設計時のCADデータを所定数に分割すると共に該分割データ毎に指標情報を付加して印刷データとし、該印刷データを各床パネルに印刷して、該各床パネルを基礎上に設置することにより、耐力壁パネルや間仕切り壁等の設置位置の墨出しをするようにしたものも提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−240296号公報
【特許文献2】特開2008−261095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1に記載された墨出し方法は、墨出しエリアの基準位置、建物の通り芯26の端部となる端部位置、通り芯26同士の交差する交差位置に、基準墨23,25,27を墨出しし、更に、建物の構成物の設置位置28に小墨と呼ばれる墨出しをするものであり、これを、たとえば、建物内部の墨出しに適用した場合、実際に躯体が出来上がった後の建物内部の間仕切り工事等に利用するには墨出しが不十分で、作業者が現場で従来とほぼ同様の墨出し作業を行う必要があり、工期の短縮や作業者の負担の軽減を図ることが難しいという問題がある。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載された墨出し方法は、本来、各床パネルを設置した後に、耐力壁パネルを設置し、その後、該耐力壁パネルに外壁部や内壁部の設置をするようにするものであるため、躯体が出来上がった後の建物内部の間仕切り工事等に利用するには、設計図と実際の建物の寸法のずれ等から隣接する床パネル間に隙間や重なる部分が発生しやすいことから、墨出しの正確さに問題がある。この問題を防ぐため、建物内部を採寸してから各床パネルに印刷するデータを作成することが考えられるが、躯体の出来上がりを待たなければならず、結局、工期の短縮を図れない。
【0010】
又、間仕切り位置等に急な設計変更が生じたときには、隣接する床パネルについても再度作成し直したうえで建築現場に搬入し、該床パネルを基礎上に設置する必要があり、工期の短縮を図れないばかりか作業者に新たな負担が生じる場合もある。
【0011】
更に、基礎上に各床パネルを隣接させて複数設置するものであるため、この考え方を、建物外部の墨出しにそのまま適用できるものではない。
【0012】
そこで、本発明は、墨出しを正確に且つ簡易に行うことができるようにすると共に、工期の短縮や作業者の負担の軽減を図ることができるようにする墨出し方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、建築設計図に部分図を貼るための基準線を該設計図に記載された基準となる線から所要寸法離れた位置に縦横方向に加えて計画図を作成し、該計画図に基づき該計画図における上記基準線同士の交点を含む範囲を原寸大としてなる部分図を作成し、次に、上記計画図上の基準線に対応する部分図を貼るための基準線を基材上に墨出しして、該基材上に墨出しした基準線に上記部分図の基準線を合わせると共に上記計画図に基づいて部分図の方向を合わせて基材上に貼り付けることにより基材上に墨出しするようにし、しかる後、基材上に貼り付けた部分図以外の部分を上記計画図に基づいて基材上に墨出しするようにする。
【0014】
又、請求項2に対応して、上記構成において、計画図を、建築設計図に部分図を貼るための基準線を間仕切り壁の芯墨に対して逃げ墨となるよう縦横方向に作図してなるものとして、該計画図から作成する部分図を、上記基準線同士の交点と上記間仕切り壁の芯墨同士の交点とを含む範囲を原寸大としてなるものとする。
【0015】
更に、請求項3に対応して、上記構成において、計画図を、建築設計図に作図した部分図を貼るための基準線同士の交点毎に記号を付したものとして、該計画図の記号と該計画図から作成した部分図の記号に基づいて該部分図を基材上に貼り付けるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の墨出し方法によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)建築設計図に部分図を貼るための基準線を該設計図に記載された基準となる線から所要寸法離れた位置に縦横方向に加えて計画図を作成し、該計画図に基づき該計画図における上記基準線同士の交点を含む範囲を原寸大としてなる部分図を作成し、次に、上記計画図上の基準線に対応する部分図を貼るための基準線を基材上に墨出しして、該基材上に墨出しした基準線に上記部分図の基準線を合わせると共に上記計画図に基づいて部分図の方向を合わせて基材上に貼り付けることにより基材上に墨出しするようにし、しかる後、基材上に貼り付けた部分図以外の部分を上記計画図に基づいて基材上に墨出しするようにするので、作業者は、墨だしを正確且つ簡易に行うことが出来る。又、部分図を貼り付けたところは、従来の墨出し作業を省略できるので、作業者は計画図に基づいて、貼り付けた部分図以外の部分だけを墨出しすればよく、工期の短縮と作業者の負担の軽減を図ることができる。
(2)又、計画図を、建築設計図に部分図を貼るための基準線を間仕切り壁の芯墨に対して逃げ墨となるよう縦横方向に作図してなるものとして、該計画図から作成する部分図を、上記基準線同士の交点と上記間仕切り壁の芯墨同士の交点とを含む範囲を原寸大としてなるものとすることにより、作業者は、建物の躯体が出来上がった後に建物内部で行われる間仕切り壁が交差する部分の墨だしを正確且つ簡易に行うことができて、墨出し間違いによる間仕切り壁等の建て直し作業の発生を防止することができ、又、工期の短縮と作業者の負担の軽減も図ることができる。
(3)更に、計画図を、建築設計図に作図した部分図を貼るための基準線同士の交点毎に記号を付したものとして、該計画図の記号と該計画図から作成した部分図の記号に基づいて該部分図を基材上に貼り付けるようにすることにより、作業者が、基材に部分図を貼り付けるときに、該部分図の貼り付け位置を間違えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の墨出し方法の実施の一形態を示すフローチャートである。
【図2】建築設計図から作成した計画図の一例を示す概略図である。
【図3】計画図から作成した部分図の一例を示す概略図である。
【図4】計画図上の部分図を貼るための基準線に対応させて建物内部の基材上に部分図を貼るための基準線を墨出しした状態を示す概略平面図である。
【図5】部分図を図4に示す基材上に貼り付けた状態を示す概略平面図である。
【図6】図5のように基材上に貼り付けた部分図以外の部分を、計画図に基づいて墨出しした状態を示す概略平面図である。
【図7】従来の墨出し方法の一例の概略図を示すもので、(イ)は墨出しシールの概略平面図、(ロ)は(イ)のA−A方向概略断面図、(ハ)は墨出しシールをコンクリートに接着させた状態を示す概略断面図、(ニ)は墨出しシールにより墨出しした状態を示す建物の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1乃至図6は本発明の実施の一形態として、建物内部の墨出しを行う場合を示すもので、建物9内部の間仕切り工事等に必要な墨出しを行うときに用いられる建築設計図に、部分図を貼るための基準線5を、たとえば、間仕切り壁2,2a,2b,2cの芯墨3の逃げ墨となるよう縦横方向に記入して作図すると共に、縦横方向に延びる芯墨3同士の交点4から所定範囲内にある部分図を貼るための基準線5同士の交点毎に記号A,B,C,D,E,F,Gを付すようにして計画図1を作成する。次いで、該計画図1における記号A,B,C,D,E,F,Gを付した上記縦横方向の部分図を貼るための基準線5同士の交点と上記間仕切り壁2,2a,2b,2cの芯墨3同士の交点4とを含む範囲を、原寸大となるように印刷してなる部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを作成する。次に、建物9の躯体が出来上がった後の該建物9内部の基材10上に、上記計画図1上の部分図を貼るための基準線5に対応する部分図を貼るための基準線5´を、図4に示すように墨出しし、上記部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの貼り付ける位置を、該各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G上の記号A,B,C,D,E,F,Gと上記計画図1の記号A,B,C,D,E,F,Gに基づいて求めて、上記基材10上に墨出しした縦横方向の部分図を貼るための基準線5´上に上記各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを配置する。しかる後、各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの縦横方向の部分図を貼るための基準線5を上記基材10上の部分図を貼るための基準線5´に合わせると共に上記計画図1に基づいて部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの方向の位置合わせを行って建物9内部の基材10上に貼り付け、該基材10上に墨出しするようにする。しかる後、基材10上に貼り付けた部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G以外の部分を、上記計画図1に基づいて基材10上に墨出しするようにする。
【0020】
詳述すると、先ず、図2に示す如く、建物9内部の間仕切り工事等に必要な墨出しを行うときに用いられる建築設計図から、間仕切り壁2,2a,2b,2cの芯墨3(図2では中心線)同士の交点4を求めて、該交点4を覆うように所定の用紙サイズ(A1、A2、B1等)を現す枠6を建築設計図に記入する。次に、該枠6内に位置し且つ上記交点4を通る間仕切り壁2,2a,2b,2cの芯墨3に対して逃げ墨となるように、部分図を貼るための基準線5(図2では二点鎖線)を、上記設計図に縦横方向に記入するようにする。次いで、枠6内にある上記部分図を貼るための基準線5同士の交点毎に、記号A,B,C,D,E,F,Gを付してなる計画図1を作図するようにする(ステップI)。
【0021】
上記部分図を貼るための基準線5は、基準となる線7(図2では、建物9の通り芯)との間隔や部分図を貼るための基準線5同士の間隔が、できるだけ100mm未満の端数が出ない寸法となるように建築設計図に記入するようにして、現場にて基材10上に部分図を貼るための基準線5´の墨出し作業がし易くすることにより、墨出し間違いが生じないようにする。又、上記建築設計図への部分図を貼るための基準線5の記入位置や上記枠6の記入位置は、該枠6内にできるだけ部分図を貼るための基準線5が重複して現れないようにする。更に、上記枠6は、互いに重なる部分が生じないようにして、図1のステップIIで作成する部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gに無駄な部分が生じないようにしてある。
【0022】
なお、図2に示すものにおいて、記号Dが付された交点のある枠6には、間仕切り壁2cの芯墨3同士の交点4は存在してないが、水回りの間仕切り壁2cの墨出しを行わせるようにするために、記号Dが付された交点のある枠6を、記号Eが付された交点のある枠6と記号Fが付された交点のある枠6に隣接させて記入するようにする。又、建築設計図への部分図を貼るための基準線5の記入や記号A,B,C,D,E,F,Gを付す作業は、建築設計図に手書きで行うようにしてもよいが、建築設計図がCADデータであれば、作図の精度や簡便さからCADを使って作図するようにすることが望ましい。
【0023】
次に、上記のようにして図2に示す如き計画図1が作成されると、上記計画図1に基づいて、各交点の記号A,B,C,D,E,F,Gが付されている部分の枠6毎に作成するようにする(ステップII)。図3は一例として記号Aが付されている枠6を部分図8Aとしたものを示している。図3に示す部分図8Aは、記号Aが付された部分図を貼るための基準線5同士の交点と間仕切り壁2の芯墨3同士の交点4とを含む上記計画図1に作図した枠6を原寸大に拡大して作成するようにする。
【0024】
なお、上記部分図8Aは、上記計画図1が手書き図であれば、記号Aが付された交点のある枠6の部分を拡大コピー等することにより作成するようにするが、上記計画図1がCAD図であれば、計画図1の縮尺や印刷の設定等を変更して印刷することにより作成する。その他の記号B,C,D,E,F,Gが付された交点がある枠6についても図3に示したのと同様に原寸大に印刷等をして、部分図8B,8C,8D,8E,8F,8Gを作成するようにする。
【0025】
次いで、図4に示す如く、作業者が、上記計画図1上の部分図を貼るための基準線5に対応させて建物9内部の床面となる基材10上に部分図を貼るための基準線5´(図4では実線)を、建築現場に引かれた図示しない親墨を基準にして、該親墨からの距離を測定して、建物9内部の床面となる基材10上に墨出しするようにする(ステップIII)。
【0026】
この際、上記したように、枠6内に部分図を貼るための基準線5ができるだけ重複して現れないようにしてあるので、作業者が建物9内部で墨出しする部分図を貼るための基準線5´を最小本数にでき、工期の短縮や作業者の負担の軽減を図ることができる。
【0027】
しかる後、上記ステップIIで作成した各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを、図5に示す如く、作業者が建物9内部の床面となる基材10上に貼り付けて行くことにより、該基材10上に墨出しするようにする(ステップIV)。
【0028】
上記部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの基材10上への貼り付け位置は、該部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G毎に印刷された記号A,B,C,D,E,F,Gが対応する上記計画図1に記入した記号A,B,C,D,E,F,Gの位置に基づいて求めるようにする。又、上記部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gは、該各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの縦横方向の部分図を貼るための基準線5を、上記基材10上に墨出しした部分図を貼るための基準線5´に重ね合わせるようにすると共に上記計画図1に基づいて各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの方向を合わせて、たとえば、貼着部材11としてのガムテープを用いて建物9内部の基材10上に貼り付けるようにする。なお、図5、図6では説明の便宜上、貼着部材11としてのガムテープは大きく記載してあるもので、図示した大きさに限定されるものではない。
【0029】
その後、図6に示す如く、上記部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを貼り付けて墨出しした部分以外の基材10上の部分の間仕切壁の位置を、作業者が現場作業として上記計画図1に基づいて基材10上に墨出しするようにする(ステップV)。
【0030】
上記において、たとえば、間仕切り壁2,2a,2b,2cを構成する建材が一体のパネル状のものであるような場合には、図6において、記号Aが付された部分図8Aと記号Bが付された部分図8Bとの間の墨出しや、記号A,Bが付された部分図8A,8B、記号Eが付された部分図8Eから建物9の壁へ繋がる間仕切り壁2,2a,2b,2cの墨出しを省略するようにしてもよい。
【0031】
このように、本発明によれば、建物9内部の間仕切り工事等に必要な墨出しを行うときに用いられる建築設計図に部分図を貼るための基準線5を加えた計画図1を作成し、該計画図1から上記部分図を貼るための基準線5同士の交点と間仕切り壁2の芯墨3同士の交点4とを含むように作成した部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを建物9内部の基材10上の要所に貼り付けるようにするだけで、墨出しする上で重要な間仕切り壁2が交差する部分などを墨出しすることが可能となるため、貼り付けた部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G以外の建物9内部の基材10だけに、必要に応じて従来どおりの墨出しをすればよいので、ポイント付けの誤差、墨打ち時の誤差、設計図の読み間違いによる墨出し間違い等のヒューマンエラーを防げて、建物内部の墨出しを正確且つ簡易に行うことができると共に、工期の短縮や作業者の負担軽減も図ることができる。又、間仕切り壁2,2a,2b,2cの位置に急な設計変更が生じた場合でも、計画図1を変更した上で必要な部分だけ部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを作成し直して、該部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを建物9内部の基材10上に貼り付け直すだけで墨出しの変更が可能となるため、建物内部の設計変更に伴う工期の遅れや作業者の負担を減らすことができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、建物9内部の工事における墨出しとして、主に間仕切り工事に必要な墨出しに適用した場合について説明したが、間仕切り工事以外の建物内部の内装仕上げ工事や、電気・衛生設備工事等の墨出し、あるいは、建物の屋根のないところや建物の外部での墨出しの場合には、現場での墨出しを省略したい部分を覆うように枠6を建築設計図に作図すると共に、該枠6内を通り且つ基準となる線7から所定寸法離れた位置にくるよう建築設計図の縦横方向に部分図を貼るための基準線5を作図して計画図1とし、その後、該計画図1から、部分図を、上記部分図を貼るための基準線5同士の交点を含む範囲としてなるものとして作成して、上記実施の形態と同様に、計画図1に基づく部分図を貼るための基準線5´の墨出し作業、上記各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの基材10上への貼り付け作業を行い、しかる後、該貼り付けた部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G以外の部分を基材10上へ墨出しをするようにして行うようにしてもよいこと、又、図2では、枠6内に部分図を貼るための基準線5がくるように建築設計図に作図するようにしているが、部分図を貼るための基準線5を、枠6を構成する辺上にくるように建築設計図に作図してもよいこと、部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gを作成した後、建物9内部の基材10上に部分図を貼るための基準線5´を墨出しする場合について説明したが、これらを並行して行うようにしたり、順番を逆にして行うようにしてもよいこと、更に、用紙サイズを所定サイズ(A1、A2、B1等)とした場合を示したが、部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gをロール紙を用いて作成し、隣接する部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G、たとえば、記号Aを付した交点のある部分図8Aから記号Cを付した交点のある部分図8Cを一体のものとして建物9内部の基材10上に貼り付けて、墨出しするようにしてもよいこと、貼着部材11は、ガムテープに限らず、シールタイプの貼紙を用いるようにしてもよく、又、各部分図8A,8B,8C,8D,8E,8F,8Gの裏面側に接着剤を塗布するようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 計画図
2,2a,2b,2c 間仕切り壁
3 芯墨(間仕切り壁)
4 芯墨の交点(間仕切り壁)
5 部分図を貼るための基準線
5´ 部分図を貼るための基準線
8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G 部分図
9 建物
10 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築設計図に部分図を貼るための基準線を該設計図に記載された基準となる線から所要寸法離れた位置に縦横方向に加えて計画図を作成し、該計画図に基づき該計画図における上記基準線同士の交点を含む範囲を原寸大としてなる部分図を作成し、次に、上記計画図上の基準線に対応する部分図を貼るための基準線を基材上に墨出しして、該基材上に墨出しした基準線に上記部分図の基準線を合わせると共に上記計画図に基づいて部分図の方向を合わせて基材上に貼り付けることにより基材上に墨出しするようにし、しかる後、基材上に貼り付けた部分図以外の部分を上記計画図に基づいて基材上に墨出しするようにすることを特徴とする墨出し方法。
【請求項2】
計画図を、建築設計図に部分図を貼るための基準線を間仕切り壁の芯墨に対して逃げ墨となるよう縦横方向に作図してなるものとして、該計画図から作成する部分図を、上記基準線同士の交点と上記間仕切り壁の芯墨同士の交点とを含む範囲を原寸大としてなるものとする請求項1記載の墨出し方法。
【請求項3】
計画図を、建築設計図に作図した部分図を貼るための基準線同士の交点毎に記号を付したものとして、該計画図の記号と該計画図から作成した部分図の記号に基づいて該部分図を基材上に貼り付けるようにする請求項1又は2記載の墨出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−240764(P2010−240764A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90524(P2009−90524)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【特許番号】特許第4317584号(P4317584)
【特許公報発行日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(509094160)株式会社ホライズン (1)