説明

壁パネルの壁組方法

【課題】壁組作業の作業効率を向上できる壁パネルの壁組方法を得る。
【解決手段】壁パネル16〜36のうち、最も幅寸法が短い壁パネル16を基準パネルとして最初に立設し、その後、床パネル12の外周方向一方に沿って壁パネル20〜36を順番に立設する。このように壁パネル16〜36を立設すると、クレーンCから最も遠い壁パネル24を立設する際には、壁パネル32や壁パネル36が未だ立設されていない。このため、クレーンCの方から壁パネル24を充分に視認できる。これにより、効率よく壁組を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の施工時における壁パネルの壁組方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された建築物の施工方法では、出隅部及び入隅部に対応した外壁部を組み立てた後に、直線部分(全体的に平板状)の外壁部を出隅部及び入隅部に対応した外壁部の間に組み立てる。
【特許文献1】特開平5−163773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1に開示された建築物の施工方法では、直線部分(全体的に平板状)の外壁部を組み立てる際には既に出隅部及び入隅部に対応した外壁部が乱立している。このため、直線部分の外壁部を吊り上げるクレーン等の操縦席から、吊り上げた外壁部の組立位置や、実際に吊り上げた外壁部を目視するにあたり、乱立した外壁部が障害になる。このため、外壁部の組み立て、すなわち、壁組作業の効率が悪い。しかも、クレーン等を操作する作業者と、壁パネルの位置決めをする作業者とが互いに見難くなることから、互いの意思の疎通を図ることも困難になりやすい等、著しく作業の労力がかかっていた。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、壁組作業の作業効率を向上できる壁パネルの壁組方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法は、各壁パネルの幅方向両端側で他の壁パネルが隣接して立設される建造物で、前記複数の壁パネルを立設する際の壁パネルの壁組方法であって、前記複数の壁パネルのうちの何れか1つを他の壁パネルに先立って立設した後に、この最初に立設した壁パネルを基準として前記建造物の外周方向一方に沿って順番に他の壁パネルを立設することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、複数の壁パネルのうちの何れか1つが他の壁パネルに先立って立設され、その後は、この最初に立設された壁パネルを基準として、建造物の外周方向の一方に沿って順番に他の壁パネルを立設される。このため、最も新しく立設された壁パネルの幅方向一端(既に立設された壁パネルが隣接しない方の側の端部)から最初に立設された壁パネルの幅方向他端までの間は連続して壁パネルが立設されていない。このため、既に立設された壁パネルが新たに立設される壁パネルを目視する際の障害になり難い。
【0007】
請求項2に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法は、請求項1に記載の本発明において、前記複数の壁パネルのうち、最初に立設される壁パネルの幅方向寸法が他の壁パネルよりも短いことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、最初に立設される壁パネルは他の壁パネルよりも幅方向寸法が短いため、他の壁パネルに比べて自立し易い。このため、最初の壁パネルを立設してから次の壁パネルを立設するまでの間、最初の壁パネルを立設状態で保持するための特別な構成が不要になる。
【0009】
請求項3に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、最初に立設される壁パネルの幅方向に対して2番目に立設される壁パネルの幅方向が交差するように最初に立設される壁パネルを設定すると共に、2番目の壁パネルが立設された後に、2番目に立設した壁パネルを最初に立設した壁パネルに一体的に連結することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、最初に立設された壁パネルの幅方向に対して2番目に立設された壁パネルの幅方向が交差しており、しかも、2番目に立設された壁パネルが最初に立設された壁パネルに一体的に連結される。このため、最初に立設された壁パネルと2番目に立設された壁パネルとは互いに支え合う。これにより、最初に立設された壁パネルと2番目に立設された壁パネルとを立設状態で保持するための特別な構成が不要になる。
【0011】
請求項4に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法は、請求項1に記載の本発明において、前記複数の壁パネルのうち、最初に立設される壁パネルは前記建造物の高さ方向を軸方向とする軸周りに屈曲又は湾曲していることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、最初に立設される壁パネルは建造物の高さ方向を軸方向とする軸周りに屈曲又は湾曲しているため、幅方向が直線的な平板状の壁パネルに比べて自立し易い。このため、最初の壁パネルを立設してから次の壁パネルを立設するまでの間、最初の壁パネルを立設状態で保持するための特別な構成が不要になる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、立設する壁パネルを目視するにあたり既に立設された壁パネルが障害になり難く、円滑に効率よく壁パネルを立設できる。
【0014】
請求項2に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、最初の壁パネルを立設してから次の壁パネルを立設するまで間、最初の壁パネルを立設状態で保持するための特別な構成が不要になるため、壁パネルを立設する工数を軽減でき、コストを安価にできる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、最初に立設された壁パネルと2番目に立設された壁パネルとを立設状態で保持するための特別な構成が不要になるため、壁パネルを立設する工数を軽減でき、コストを安価にできる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る壁パネルの壁組方法では、最初に立設される壁パネルは高さ方向を軸方向とする軸周りに屈曲又は湾曲していることで基本的に自立でき、これによって、最初の壁パネルを立設状態で保持するための特別な構成が不要になるため、壁パネルを立設する工数を軽減でき、コストを安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係る壁パネル立設方法を施工工程の一工程として施工された建造物10の概略が平面図により示されており、図7には建造物10の概略が斜視図により示されている。なお、各図において建造物10の天井部や屋根等に関しては図示を省略している。
【0018】
図1及び図7に示されるように、建造物10は床パネル12を備えている。床パネル12は基礎仕上げ、配筋工事が終了した土地に土台床根太工事、防湿工事、及び床組といった工程を経ることで形成されている。本実施の形態において床パネル12は平面視で長方形の1隅側を更に長方形状に切り欠いた形状とされている。この長方形の切欠部分の短辺に対応した第1辺部14には、基準パネルとなる壁パネル16が立設されている。壁パネル16は長手方向が建造物10の高さ方向に沿い、幅方向が第1辺部14に沿った平板状とされており、釘やボルト等の固定手段により第1辺部14にて壁パネル16が床パネル12に固定されている。
【0019】
また、第1辺部14の一端から第1辺部14に対して直交するように連続した床パネル12の第2辺部18には壁パネル20が立設されている。壁パネル20は長手方向が建造物10の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル16の幅方向に対して直交する方向に沿った平板状とされている。壁パネル20は釘やボルト等の固定手段により第2辺部18にて床パネル12に固定されており、壁パネル20が床パネル12に固定された状態では、壁パネル20の幅方向他端部が壁パネル16の幅方向一端部近傍における厚さ方向一端側で壁パネル20が壁パネル16に隣接している。
【0020】
さらに、第2辺部18の一端から連続した床パネル12の第3辺部22には壁パネル24が立設されている。壁パネル24は長手方向が建造物10の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル16の幅方向に対して平行な平板状とされている。壁パネル24は釘やボルト等の固定手段により第3辺部22にて床パネル12に固定されており、壁パネル24が床パネル12に固定された状態では、壁パネル24の幅方向他端部近傍で壁パネル24の厚さ方向一方の面(壁パネル16と対向する側の面)が壁パネル20の幅方向一端部に対向した状態で壁パネル24が壁パネル20に隣接している。
【0021】
また、第3辺部22の一端から連続すると共に床パネル12の幅方向に沿って第2辺部18とは反対側に位置する床パネル12の第4辺部26には壁パネル28が立設されている。壁パネル28は長手方向が建造物10の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル20の幅方向に対して平行な平板状とされている。壁パネル28は釘やボルト等の固定手段により第4辺部26にて床パネル12に固定されており、壁パネル28が床パネル12に固定された状態では、壁パネル28の幅方向他端部近傍で壁パネル28の厚さ方向一方の面(壁パネル20と対向する側の面)が壁パネル24の幅方向一端部に対向した状態で壁パネル28が壁パネル24に隣接している。
【0022】
さらに、第1辺部14を介して第3辺部22とは反対側で第4辺部26の一端から連続すると共に、第1辺部14や第3辺部22に対して平行な床パネル12の第5辺部30には壁パネル32が立設されている。壁パネル32は長手方向が建造物10の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル24の幅方向に対して平行な平板状とされている。壁パネル32は釘やボルト等の固定手段により第5辺部30にて床パネル12に固定されており、壁パネル32が床パネル12に固定された状態では、壁パネル32の幅方向他端部が壁パネル28の幅方向一端部近傍における厚さ方向一方の面(壁パネル20と対向する側の面)に対向した状態で壁パネル32が壁パネル28に隣接している。
【0023】
また、第5辺部30及び第1辺部14の双方に対して直交すると共に、一端が第1辺部14の他端に繋がり他端が第5辺部30の一端に繋がった第6辺部34には壁パネル36が立設されている。壁パネル36は長手方向が建造物10の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル28の幅方向に対して平行な平板状とされている。壁パネル36は釘やボルト等の固定手段により第6辺部34にて床パネル12に固定されており、壁パネル36が床パネル12に固定された状態では、壁パネル36は幅方向他端部近傍の厚さ方向一方の面(壁パネル28と対向する側の面)が壁パネル32の幅方向一端部と対向した状態で隣接していると共に、壁パネル36の幅方向一端部が第1辺部14の幅方向他端部近傍における厚さ方向一方の面(壁パネル32側の面)に対向した状態で隣接している。
【0024】
ここで、本実施の形態では、第1辺部14〜第6辺部34までの各辺のうち、第1辺部14が最も短く、このため、第1辺部14〜第6辺部34までの各辺にて立設された壁パネル16〜壁パネル36の各幅寸法のうち、壁パネル16の幅寸法が最も短い。
【0025】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、壁パネル16〜壁パネル36の壁組工程の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0026】
本建造物10では、基礎仕上げや配筋工事が終了した土地に、土台床根太工事や防湿工事が成される。このような工程を経た土地に床組が成されて床パネル12が形成される。次いで、図1に示されるように、床パネル12の長手方向一端部の側方で、且つ、床パネル12の幅方向に沿った第4辺部26と第6辺部34との間にクレーンCが配置される。壁組工程では先ず壁パネル16がクレーンCに吊り上げられ、床パネル12の第1辺部14の近傍に搬送される。
【0027】
この状態で、図2に示されるように床パネル12上で壁パネル16が床パネル12に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル16が床パネル12に固定される。これにより、壁パネル16が床パネル12上に立設される。
【0028】
次に、壁パネル20がクレーンCに吊り上げられ、床パネル12の第2辺部18の近傍に搬送される。この状態で、図3に示されるように床パネル12上で壁パネル20が第2辺部18に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル20が床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段によって壁パネル20が壁パネル16に連結固定される。これにより、壁パネル16の幅方向一端部近傍における厚さ方向一方の側(第3辺部22の側)で壁パネル20の幅方向他端部が対向した状態で、壁パネル16に隣接して壁パネル20が床パネル12上で立設される。
【0029】
次に、壁パネル24がクレーンCに吊り上げられ、床パネル12の第3辺部22の近傍に搬送される。この状態で、図4に示されるように床パネル12上で壁パネル24が第3辺部22に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル24が床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段によって壁パネル24が壁パネル20に連結固定される。これにより、壁パネル20の幅方向一端部の側方で壁パネル24の幅方向他端部近傍における厚さ方向一方の面(壁パネル16と対向する側の面)が対向した状態で、壁パネル20に隣接して壁パネル24が床パネル12上で立設される。
【0030】
次に、壁パネル28がクレーンCに吊り上げられ、床パネル12の第4辺部26の近傍に搬送される。この状態で、図5に示されるように床パネル12上で壁パネル28が第4辺部26に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル28が床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段によって壁パネル28が壁パネル24に連結固定される。これにより、壁パネル24の幅方向一端部の側方で壁パネル28の幅方向他端部近傍における厚さ方向一方の面(壁パネル20と対向する側の面)が対向した状態で、壁パネル24に隣接して壁パネル28が床パネル12上で立設される。
【0031】
次に、壁パネル32がクレーンCに吊り上げられ、床パネル12の第5辺部30の近傍に搬送される。この状態で、図6に示されるように床パネル12上で壁パネル32が第5辺部30に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル32が床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段によって壁パネル32が壁パネル28に連結固定される。これにより、壁パネル28の幅方向一端部における厚さ方向一方の面(壁パネル20と対向する側の面)に壁パネル32の幅方向他端部が対向した状態で、壁パネル28に隣接して壁パネル32が床パネル12上で立設される。
【0032】
次に、壁パネル36がクレーンCに吊り上げられ、床パネル12の第6辺部34の近傍に搬送される。この状態で、図7に示されるように床パネル12上で壁パネル36が第6辺部34に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル36が床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段によって壁パネル36が壁パネル32及び壁パネル16の双方に連結固定される。これにより、壁パネル32の幅方向一端部に壁パネル36の幅方向他端部近傍における厚さ方向一方の面(第4辺部26と対向する側の面)が対向すると共に、壁パネル36の幅方向一端部が壁パネル16の幅方向他端部近傍における厚さ方向一方の面(壁パネル32の側の面)に対向した状態で壁パネル32及び壁パネル16の双方に隣接した状態で壁パネル36が床パネル12上で立設される。
【0033】
すなわち、本実施の形態に係る壁組方法では、壁パネル16が最初に立設され、その後、床パネル12の外周部に沿った一方向(図1の矢印R方向)に沿って、壁パネル20、壁パネル24、壁パネル28、壁パネル32、壁パネル36が順番に立設される。このように、各壁パネル16〜36が順番に立設されると共に、床パネル12の長手方向一端部の側方で、且つ、床パネル12の幅方向に沿った第4辺部26と第6辺部34との間に各壁パネル16〜36を搬送するクレーンCが配置されることで、例えば、クレーンCから最も遠い壁パネル24を立設する際には、壁パネル32や壁パネル36が未だ立設されていないため、クレーンCの方から壁パネル24を充分に視認できる。このため、効率よく壁組を行なうことができる。
【0034】
しかも、クレーンCを操作する作業者から壁パネル24等を位置決めする作業者を充分に視認できるため、壁パネル24等を位置決めする作業者の意思をクレーンCの作業者が充分に汲み取ることが可能となり、作業の労力を極めて効果的に軽減できる。
【0035】
さらに、最初に立設される壁パネル16は、他の壁パネル24〜36に比べて幅寸法が短い。このため、幅寸法が長い他の壁パネル24〜36は筋交い等を用いなくては自立させることが難しいのに比べて、壁パネル16は筋交い等を用いなくても自立させることができる。これにより、コストを安価にできると共に、筋交い等、壁パネル16を立設状態で保持するための特別な構成を組み立てたりするための工数を削減でき、壁組の工数を短縮できる。
【0036】
さらに、壁パネル16の次に立設された壁パネル20は壁パネル16に連結されることで壁パネル16と壁パネル20とが互いに支持しあう。これにより、壁パネル20を立設状態で保持するために筋交い等を用いなくてもよく、コストを安価にでき、工数を短縮できる。壁パネル20以降に立設される各壁パネル24〜36に関しても同様に筋交い等を用いなくても立設状態を保持できるため、コストを安価にでき、工数を短縮できる。
【0037】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0038】
図8には本発明の第2の実施の形態に係る壁パネル立設方法を施工工程の一工程として施工された建造物50の概略が平面図により示されている。この図に示されるように、本建造物50は壁パネル20及び壁パネル24を備えておらず、代わりに壁パネル52、壁パネル54、及び、基準パネルとなる壁パネル56を備えている。
【0039】
壁パネル52は長手方向が建造物50の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル16の幅方向に対して直交する方向に沿った平板状とされ、第2辺部18に沿って立設されている点では壁パネル20と同じであるが、幅寸法が壁パネル20よりも短い。このため、壁パネル52は壁パネル20と同様に、床パネル12に固定された状態では幅方向他端部が壁パネル16の幅方向一端部近傍における厚さ方向一端側で壁パネル16に隣接しているが、幅方向一端部は第2辺部18の第3辺部22側の端部近傍まで到達していない。
【0040】
一方、壁パネル54は長手方向が建造物50の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル16の幅方向に対して平行な平板状とされ、第3辺部22に沿って立設されている点では壁パネル24と同じであるが、幅寸法が壁パネル24よりも短い。このため、壁パネル54は壁パネル24と同様に、床パネル12に固定された状態では幅方向一端部が壁パネル28の幅方向他端部近傍における厚さ方向一方の面(壁パネル20と対向する側の面)と対向した状態で隣接しているが、幅方向他端部は第3辺部22の第2辺部18側の端部近傍まで到達していない。
【0041】
この第2辺部18と第3辺部22とが交わる角部に対応して壁パネル56が設けられている。壁パネル56は一対の壁部58、60を備えている。壁部58及び壁部60の各々の長手方向は建造物50の高さ方向に沿っている。また、壁部58の幅方向と壁部60の幅方向とは互いに直交しており、壁部58の幅方向は第2辺部18に沿い、壁部60の幅方向は第3辺部22に沿っている。このように壁部58と壁部60とで構成されたアングル状の壁パネル56は、第2辺部18と第3辺部22とが交わる角部とその近傍で釘やボルト等の固定手段によって床パネル12に固定されている。
【0042】
このように床パネル12に壁パネル56が固定された状態では、壁部58の壁部60とは反対側の端部は壁パネル52の幅方向一端部と対向した状態で壁パネル52に隣接し、壁部58と壁パネル52とが釘やボルト等の固定手段によって壁パネル52に連結固定されている。これに対し、壁部60の壁部58とは反対側の端部は壁パネル54の幅方向他端部と対向した状態で壁パネル54に隣接しており、壁部60と壁パネル54とが釘やボルト等の固定手段によって壁パネル54に連結固定されている。
【0043】
<第2の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本建造物50における壁組工程では、第2辺部18の第4辺部26とは反対側に配置されたクレーンCにより、最初に壁パネル56が吊り上げられ、第2辺部18と第3辺部22とが交わる角部近傍に壁パネル56が搬送される。壁パネル56は壁部58が第2辺部18に沿い、壁部60が第3辺部22に沿った状態で床パネル12上に載置され釘やボルト等の固定手段にて床パネル12に固定される。
【0044】
次いで、クレーンCにより壁パネル54が吊り上げられ、壁部60の壁部58とは反対側の端部の側方に搬送される。床パネル12上で壁パネル54が第3辺部22に沿って載置され、釘やボルト等の固定手段で壁パネル54が床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段によって壁パネル54が壁パネル56に連結固定される。これにより、壁パネル54の幅方向他端部が壁部60の壁部58とは反対側の端部と対向した状態で、壁部60に隣接して壁パネル54が床パネル12上で立設される。
【0045】
その後、前記第1の実施の形態と同様に、壁パネル28、壁パネル32、壁パネル36が順番に立設され、壁パネル36が立設された後に壁パネル16が立設される。壁パネル16が立設された後には、壁パネル16の幅方向一端部近傍における壁パネル16の厚さ方向一方の側(第3辺部22側)の面と、壁部58の壁部60とは反対側の端部との間に壁パネル52がクレーンCにより搬送される。壁パネル52は第2辺部18に沿った状態で床パネル12上に載置され釘やボルト等の固定手段にて床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段にて壁パネル16及び壁パネル56の双方へ固定される。
【0046】
すなわち、本実施の形態に係る壁組方法では、壁パネル56が最初に立設され、その後、床パネル12の外周部に沿った一方向(図8の矢印R方向)に沿って、壁パネル28、壁パネル32、壁パネル36、壁パネル16、壁パネル52が順番に立設される。このように、各壁パネル56、54、28、32、36、16、52が順番に立設されると共に、第2辺部18の第4辺部26とは反対側にクレーンCが配置されることで、例えば、壁パネル28を立設する際には、壁パネル36や壁パネル52が未だ立設されていないため、クレーンCの方から壁パネル28を充分に視認できる。このため、効率よく壁組を行なうことができる。
【0047】
さらに、最初に立設される壁パネル56は平面視で略直角に屈曲したアングル状であるため、壁パネル56は筋交い等を用いなくても自立させることができる。これにより、コストを安価にできると共に、筋交い等、壁パネル56を立設状態で保持するための特別な構成を組み立てたりするための工数を削減でき、壁組の工数を短縮できる。
【0048】
さらに、壁パネル56の次に立設された壁パネル54は壁パネル56に連結されることで壁パネル56に支持されるため、壁パネル54を立設状態で保持するために筋交い等を用いなくてもよく、コストを安価にでき、工数を短縮できる。壁パネル54以降に立設される各壁パネル28〜52に関しても同様に筋交い等を用いなくても立設状態を保持できるため、コストを安価にでき、工数を短縮できる。
【0049】
なお、本実施の形態は、最初に立設される(すなわち、基準パネルとなる)壁パネル56を構成する壁部58の幅方向に対して壁部60の幅方向が直交している(すなわち、壁パネル56が建造物50の高さ方向を軸方向とする軸周りに直角に屈曲している)構成である。
【0050】
しかしながら、最初に立設する壁パネル56を平面視で(すなわち、壁パネル56が建造物50の高さ方向を軸方向とする軸周りに)湾曲する構成であってもよい。また、壁部58の幅方向に対して壁部60の幅方向が成す角度を直角にせず、壁部58の幅方向に対して壁部60の幅方向が成す角度を鋭角や鈍角に設定してもよい。さらには、壁部58と壁部60との間に、幅方向が壁部58、60の双方の幅方向に対して傾斜した壁部を介在させた構成(すなわち、平面視で壁パネル56の角部を面取りした形状)としてもよい。このような構成であっても、筋交い等を用いずに壁パネル56を自立させることができる。
【0051】
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0052】
図9には本実施の形態に係る壁パネル立設方法を施工工程の一工程として施工された建造物70の概略が平面図により示されている。この図に示されるように、本建造物70は壁パネル20を備えておらず、代わりに基準パネルとなる壁パネル72及び壁パネル74を備えている。
【0053】
壁パネル72は長手方向が建造物70の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル16の幅方向に対して直交する方向に沿った平板状とされ、第2辺部18に沿って立設されている点では壁パネル20と同じであるが、幅寸法が壁パネル24、28、32、36の各々の幅寸法よりも短く、好ましくは、壁パネル16の幅寸法よりも短い。この壁パネル72は、幅方向一端部における厚さ方向一方の側(第4辺部26の側)の面が壁パネル24の幅方向他方の端部と対向した状態で壁パネル24に隣接した状態で釘やボルト等の固定手段により床パネル12及び第3辺部22に固定されている。
【0054】
一方、壁パネル74は長手方向が建造物70の高さ方向に沿い、幅方向が壁パネル16の幅方向に対して直交する方向に沿った平板状とされ、第2辺部18に沿って立設されている点では壁パネル20と同じであるが、幅寸法が壁パネル20よりも短く、壁パネル74の幅寸法は、壁パネル20の幅寸法と壁パネル72の幅寸法との差に略等しく設定されており、換言すれば、壁パネル72と壁パネル74とで壁パネル20を構成している。壁パネル74は壁パネル16の幅方向一端部近傍における厚さ方向一方の側(第3辺部22の側)の面と壁パネル72の幅方向他端部と間に設けられ、釘やボルト等の固定手段により床パネル12、72、16に固定されている。
【0055】
<第3の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本建造物70における壁組工程では、第2辺部18の第4辺部26とは反対側に配置されたクレーンCにより、最初に壁パネル72が吊り上げられ、第2辺部18の第3辺部22側の端部近傍に壁パネル72が搬送される。壁パネル72は第2辺部18に沿った状態で床パネル12上に載置され釘やボルト等の固定手段にて床パネル12に固定される。
【0056】
次いで、壁パネル24、壁パネル28、壁パネル32、壁パネル36が順番に立設され、壁パネル36が立設された後に壁パネル16が立設される。壁パネル16が立設された後には、壁パネル16の幅方向一端部近傍における壁パネル16の厚さ方向一方の側(第3辺部22側)の面と、壁パネル72の幅方向他端部と間に壁パネル74がクレーンCにより搬送される。壁パネル74は第2辺部18に沿った状態で床パネル12上に載置され釘やボルト等の固定手段にて床パネル12に固定されると共に、釘やボルト等の固定手段にて壁パネル16及び壁パネル72の双方へ固定される。
【0057】
すなわち、本実施の形態に係る壁組方法では、壁パネル72が最初に立設され、その後、床パネル12の外周部に沿った一方向(図9の矢印R方向)に沿って、壁パネル24、壁パネル28、壁パネル32、壁パネル36、壁パネル16、壁パネル74が順番に立設される。このように、各壁パネル72、24、28、32、36、16、74が順番に立設されると共に、第2辺部18の第4辺部26とは反対側にクレーンCが配置されることで、前記第2の実施の形態と同様に、壁パネル28を立設する際には、壁パネル36や壁パネル74が未だ立設されていないため、クレーンCの方から壁パネル28を充分に視認できる。このため、効率よく壁組を行なうことができる。
【0058】
さらに、最初に立設される壁パネル72は、他の壁パネル24〜36及び壁パネル74に比べて幅寸法が短い。このため、幅寸法が長い他の壁パネル24〜36及び壁パネル74は筋交い等を用いなくては自立させることが難しいのに比べて、壁パネル72は筋交い等を用いなくても自立させることができる。これにより、コストを安価にできると共に、筋交い等、壁パネル72を立設状態で保持するための特別な構成を組み立てたりするための工数を削減でき、壁組の工数を短縮できる。
【0059】
さらに、壁パネル72の次に立設された壁パネル20は壁パネル72に連結されることで壁パネル72と壁パネル20とが互いに支持しあう。これにより、壁パネル20を立設状態で保持するために筋交い等を用いなくてもよく、コストを安価にでき、工数を短縮できる。壁パネル20以降に立設される各壁パネル24〜36及び壁パネル16、74に関しても同様に筋交い等を用いなくても立設状態を保持できるため、コストを安価にでき、工数を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る壁パネルの壁組方法を説明する概略的な平面図である。
【図2】最初の壁パネルが立設された状態を示す斜視図である。
【図3】2番目の壁パネルが立設された状態を示す斜視図である。
【図4】3番目の壁パネルが立設された状態を示す斜視図である。
【図5】4番目の壁パネルが立設された状態を示す斜視図である。
【図6】5番目の壁パネルが立設された状態を示す斜視図である。
【図7】最後の壁パネルが立設された状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る壁パネルの壁組方法を説明する概略的な平面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る壁パネルの壁組方法を説明する概略的な平面図である。
【符号の説明】
【0061】
16 壁パネル
20 壁パネル
24 壁パネル
28 壁パネル
32 壁パネル
36 壁パネル
52 壁パネル
54 壁パネル
56 壁パネル
72 壁パネル
74 壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各壁パネルの幅方向両端側で他の壁パネルが隣接して立設される建造物で、前記複数の壁パネルを立設する際の壁パネルの壁組方法であって、
前記複数の壁パネルのうちの何れか1つを他の壁パネルに先立って立設した後に、この最初に立設した壁パネルを基準として前記建造物の外周方向一方に沿って順番に他の壁パネルを立設することを特徴とする壁パネルの壁組方法。
【請求項2】
前記複数の壁パネルのうち、最初に立設される壁パネルの幅方向寸法が他の壁パネルよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の壁パネルの壁組方法。
【請求項3】
最初に立設される壁パネルの幅方向に対して2番目に立設される壁パネルの幅方向が交差するように最初に立設される壁パネルを設定すると共に、2番目の壁パネルが立設された後に、2番目に立設した壁パネルを最初に立設した壁パネルに一体的に連結することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁パネルの壁組方法。
【請求項4】
前記複数の壁パネルのうち、最初に立設される壁パネルは前記建造物の高さ方向を軸方向とする軸周りに屈曲又は湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の壁パネルの壁組方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−262724(P2007−262724A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88138(P2006−88138)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】