説明

壁紙用防汚フィルム

【課題】有機溶剤を使用せず、共押出成形によって接着層を形成することができ、かつ、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が含まれている場合でも基材層との強力な接着力を維持し、防汚性、アンチブロッキング性及び低温接着性に優れる壁紙用防汚フィルム及び壁装材を提供する。
【解決手段】結晶性ポリプロピレンからなる防汚層と、非晶性ポリエステルからなる接着層とを有する壁紙用防汚フィルムであって、前記非晶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むジオール成分とを有し、かつ、前記ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールに由来する成分の比率が32モル%以上である壁紙用防汚フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を使用せず、共押出成形によって接着層を形成することができ、かつ、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が含まれている場合でも基材層との強力な接着力を維持し、防汚性、アンチブロッキング性及び低温接着性に優れる壁紙用防汚フィルム及び壁装材に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の壁やクローゼット、家具等に貼り付けて使用される壁紙としては、諸物性に優れ、成形加工性もよく安価であるという理由から塩化ビニル層を含む塩化ビニル壁紙が多用されている。しかし、塩化ビニル壁紙は汚れやすく、また、一度汚れるとその汚れが落ちにくいという問題があった。また、塩化ビニル壁紙は、一般に可塑剤が配合されているため、その可塑剤が表面にブリードして空気中の浮遊物が付着することにより汚れが生じやすいという問題もあった。
【0003】
そこで、塩化ビニル壁紙に防汚性を付与する手段の一つとして、防汚性を有する樹脂からなる基材層上に接着層が形成された防汚フィルムを塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に積層し、接着する方法が知られている。従来、このような基材層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)やアクリル系フィルムが使用されており、特にEVOHフィルムが広く使用されている。
例えば、特許文献1には、基材層として透明2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた防汚フィルムが開示されており、また、例えば、特許文献2には、基材層として共重合ポリエステルフィルムを用いた防汚フィルムが開示されている。
【0004】
このような防汚フィルムに要求される特性としては、基材層の防汚性に加えて、塩化ビニル層の表面に対する強固な接着力がある。特に、塩化ビニル壁紙の表面にエンボス加工等を施して微細な凹凸を形成し、立体的な意匠性を付与する場合には、防汚フィルムが塩化ビニル層の表面から浮き上がって塩化ビニル壁紙の美観を損ないやすくなるため、塩化ビニル層の表面に対する強固な接着力が要求されていた。
【0005】
しかしながら、従来の防汚フィルムは、低温での塩化ビニル層の表面に対する接着力が不充分であったため、防汚フィルムを塩化ビニル層の表面に強固に接着させるためには100℃を超えて高温で処理する必要があった。ところが、可塑剤を含有する塩化ビニル層は、100℃を超えて加熱されると、その表面に可塑剤が促進的にブリードアウトするという問題があった。
【0006】
また、従来の方法では、樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を基材上に塗布した後、乾燥を行う、いわゆるコーティング法等によって接着層を形成していたが、近年はトルエンやキシレン等の揮発性有機化合物(VOC)対策として、有機溶剤を使用せずに接着層を形成することが求められており、このような要求に対して、コーティング法ではなく、共押出成形によって基材上に接着層を直接形成する方法が検討されている。共押出成形によって接着層の形成を行った場合、塗布工程や乾燥工程等を行う必要がなく、工程を簡略化できるだけでなく、形成された接着層は、コーティング法と異なり基材表面状態の相違による接着層のハジキや厚み等のバラツキの少ないものとなる。
【0007】
そこで、本発明者らは、特許文献3に、結晶性ポリプロピレンからなる防汚層と、所定のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステルからなる接着層とを有する壁紙用防汚フィルムを開示しており、このなかで、共押出成形によって接着層を形成する方法を開示している。このような壁紙用防汚フィルムは、防汚性及び低温での塩化ビニル層の表面に対する強固な接着性を有するとともに、アンチブロッキング性が高く取扱い性に優れたものとなる。
【0008】
しかしながら、近年は、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が使用される傾向にあり、壁紙内に可塑剤が残り易くなっていることから、このような壁紙用防汚フィルムを使用する場合であっても、長期間経過すると、接着強度が低下してしまうことがあった。
そこで、有機溶剤を使用せず、共押出成形によって接着層を形成することができ、壁紙用防汚フィルムとして必要とされる防汚性、アンチブロッキング性、基材層との密着性及び低温接着性を有するとともに、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が含まれる場合であっても、長期間に渡って接着力が低下することのない壁紙用防汚フィルムが求められていた。
【特許文献1】特開平07−232415号公報
【特許文献2】特開平07−290667号公報
【特許文献3】特許第3098205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、有機溶剤を使用せず、共押出成形によって接着層を形成することができ、かつ、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が含まれている場合でも基材層との強力な接着力を維持し、防汚性、エンボス追従性、アンチブロッキング性及び低温接着性に優れる壁紙用防汚フィルム及び壁装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の壁紙用防汚フィルムは、結晶性ポリプロピレンからなる防汚層と、非晶性ポリエステルからなる接着層とを有する壁紙用防汚フィルムであって、前記非晶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むジオール成分とを有し、かつ、前記ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールに由来する成分の比率が32モル%以上である壁紙用防汚フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、接着層を構成する樹脂である非晶性ポリエステルのジオール成分として、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を用い、かつ、ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールに由来する成分の比率を規定することで、共押出成形によって接着層を形成することができ、かつ、高沸点の可塑剤を含有する塩化ビニル壁紙に使用する場合であっても、長期間に渡って高い接着強度を維持できる壁紙用防汚フィルムとすることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の壁紙用防汚フィルムは、結晶性ポリプロピレンからなる防汚層を有する。
上記結晶性ポリプロピレンからなる防汚層は、上述したEVOHからなる樹脂基材等と同様に防汚性を有するものであり、該防汚層上に後述する特定の配合からなる接着層を形成することにより、防汚性、アンチブロッキング性及び低温での塩化ビニル層に対する接着性に優れる壁紙用防汚フィルムが得られる。
【0013】
上記防汚層を構成する結晶性ポリプロピレンは、防汚性とともにエンボス追従性に優れているため、結晶性ポリプロピレンのエンボス特性と後述する接着層の接着性との相乗効果により、例えば、発泡させた塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層の表面に対してであっても強固に接着させることができる。エンボス追従性とは、壁紙のデザインである凹凸にフィルムが追従することである。追従性がないと部分的に色が白く見えたり、表面の凹凸等にシャープ性がなくなったりする。
上記結晶性ポリプロピレンとしては特に限定されず、例えば、ホモのポリプロピレン樹脂、エチレンとプロピレンとのブロック共重合体、エチレン等と共重合可能な1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体等が挙げられる。なお、非晶性のポリプロピレンでは、油性の汚れに対する防汚性が充分でない。
本発明において、「結晶性」とは、原料ペレット又はフィルムを一旦加熱溶融させた後、徐冷したものが結晶性であることをいい、樹脂本来が持つ性質をいう。
【0014】
上記防汚層は、無延伸のものであっても延伸したものであってもよいが、本発明の壁紙用防汚フィルムを接着した塩化ビニル壁紙のエンボス追従性の点から無延伸のものであることが好ましい。
【0015】
また、上記防汚層には、本発明の壁紙用防汚フィルムの特性を阻害しない範囲であれば、難燃剤、防カビ剤、抗菌剤、防湿剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、充填剤、着色剤当の添加剤が添加されていてもよく、更に、目的に応じて他の樹脂をブレンドしてもよい。
【0016】
本発明の壁紙用防汚フィルムにおいて、上記防汚層の厚さとしては特に限定されず、該基材層の性能、価格等を考慮して適宜決定されるが、1〜100μm程度であることが好ましい。1μm未満であると、外部からの衝撃等により容易に破損することがあり、また、充分な防汚性を発揮することができないことがある。100μmを超えると、製造コストの高騰を招くとともに、塩化ビニル層の表面に表された図柄等の意匠が隠蔽されたり、本発明の壁紙用防汚フィルムの可撓性が低下したりして取扱い性が劣ることがある。
【0017】
本発明の壁紙用防汚フィルムにおいて、上記接着層は非晶性ポリエステルからなる。
上記非晶性ポリエステルは、結晶性ポリエステルと比較してポリ塩化ビニル基材への熱圧着性能が高い。従って、上記接着層を設けることで、本発明の壁紙用防汚フィルムとポリ塩化ビニル基材とを熱圧着により強固に接着するだけでなく、エンボス追従性に優れた複合フィルムを得ることができる。
なお、本明細書において、「非晶性」とは、原料ペレット又はフィルムを一旦加熱溶融させた後、徐冷したものが非晶性であることをいい、樹脂本来が持つ性質をいう。
【0018】
上記非晶性ポリエステルのジカルボン酸成分としては特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、及び、それらの誘導体等に由来する成分が挙げられる。なかでも、上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸に由来する成分が好ましい。なお、上記ジカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記非晶性ポリエステルは、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むジオール成分を有する。上記シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むことで、可塑剤に対する高いブリード防止性を実現することができる。
上記シクロヘキサンジメタノールに由来する成分以外のジオール成分としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ブタンジオール等のアルキレングリコール、キシリレングリコール等の芳香族ジオール、及び、それらの誘導体に由来する成分が挙げられる。
なかでも、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分とエチレングリコールに由来する成分との組み合わせが好ましい。
なお、上記シクロヘキサンジメタノールに由来する成分以外のジオール成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールに由来する成分の比率の下限は32モル%である。32モル%未満であると、可塑剤に対するブリード防止性、特に長期間経過後のブリード防止性が低下し、それに伴って接着強度が低下する。好ましい下限は34モル%である。なお、上限については、本発明の効果を損なわず、壁紙用防汚フィルムとして必要な性能を有する範囲であれば特に限定されないが、好ましい上限は80モル%である。
【0021】
上記非晶性ポリエステルのガラス転移点の好ましい下限は35℃、好ましい上限は100℃である。上記範囲内とすることで、ポリ塩化ビニル基材と熱圧着により強固に接着するだけでなく、エンボス追従性に優れた複合フィルムを得ることができる。即ち、上記接着層はエンボス追従性に非常に優れるため、防汚層がたとえエンボス性に欠けるものであっても、結果として本発明の壁紙用防汚フィルムがエンボス追従性に優れたフィルムとなる。従って、従来、防汚性に優れるがエンボス追従性に欠けるために良好な製品とならなかった結晶性ポリプロピレン樹脂であっても、防汚層として有効に使用することができる。上記ガラス転移点が35℃未満であると、得られる壁紙用防汚フィルムの熱安定性が悪く、フィルム同士がブロッキングする。100℃を超えると、ポリ塩化ビニル基材との熱圧着性能が悪くなることがある。より好ましい下限は50℃、より好ましい上限は95℃であり、更に好ましい下限は65℃、更に好ましい上限は90℃である。
【0022】
上記非晶性ポリエステルの固有粘度の好ましい下限は0.4dl/g、より好ましい下限は0.5dl/g、更に好ましい下限は0.6dl/g以上である。0.4dl/g未満であると、フィルム強度が弱くなり、ポリ塩化ビニル基材との接着力についても弱くなることがある。
【0023】
上記接着層は無延伸であっても延伸したものであってもよいが、熱安定性の点からは無延伸であるほうがより望ましい。また、上記接着層の表面にはコロナ放電処理等公知の表面処理を施してもよい。
【0024】
このような本発明の壁紙用防汚フィルムを構成する接着層には、上述した材料のほかに、上記接着層としての特性を阻害しない範囲であれば、更に帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、充填剤、着色剤等の添加物を添加してもよいし、目的に応じて他の樹脂をブレンドしてもよい。上記ブレンドする樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレンとアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のモノマーとからなる2元共重合体、3元共重合体等が挙げられる。
【0025】
上記接着層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は3μmであり、上限は20μmである。3μm未満であると、本発明の壁紙用防汚フィルムの塩化ビニル層の表面に対する接着力が不充分となることがあり、また、その接着力にばらつきが生じやすくなる。20μmを超えると、製造コストの高騰を招くとともに、結晶性ポリプロピレンからなる防汚層に反りが生じたり、塩化ビニル層の表面に表された図柄等の意匠が隠蔽されたり、本発明の壁紙用防汚フィルムの可撓性が低下したりすることがある。
【0026】
更に、上記接着層は、上記防汚層の厚さの0.05倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましい。0.05倍未満であると、上記防汚層へのエンボス追従性の付与が不充分となることがある。
【0027】
本発明の壁紙用防汚フィルムにおいては、防汚層と接着層との間に、防汚層と接着層との接着性を高める目的で、中間層を積層してもよい。上記中間層を構成する樹脂としては、接着性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等を用いることができる。
【0028】
本発明の壁紙用防汚フィルムを製造する方法としては、有機溶剤を使用せずに接着層を形成できることから、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、防汚層を構成する樹脂として結晶性ポリプロピレン、接着層を構成する樹脂として非結晶性ポリエステルをそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスにより、シート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、必要に応じて、1軸又は2軸に延伸する方法を用いることができる。また、必要に応じて、防汚層と接着層との間に中間層を介在させてもよい。
【0029】
本発明の壁紙用防汚フィルムに塩化ビニル壁紙を積層することで、壁装材とすることができる。このような壁装材もまた本発明の1つである。
【0030】
上記塩化ビニル壁紙の塩化ビニル層としては、公知の塩化ビニル壁紙に使用されるいかなるものも挙げることができ、発泡体であっても非発泡体であってもよい。特に本発明では、高沸点の可塑剤を含有する塩化ビニル壁紙であっても好適に用いることができるため、使用可能な壁紙の種類が大幅に広がる。
また、本発明の壁紙用防汚フィルムを積層した後に上記塩化ビニル層を発泡させてもよい。なお、上記塩化ビニル層に印刷を施す場合、印刷インキは、通常用いられるインキでよい。例えば、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系、セルロース系の樹脂に顔料、染料等の着色剤、分散剤、溶剤等を混合し溶解させたもの等が挙げられる。また、上記印刷は公知の方法により行うことができる。
【0031】
本発明の壁装材を製造する際、本発明の壁紙用防汚フィルムを上記塩化ビニル層の表面に接着する方法としては特に限定されないが、熱圧着法により接着することが好ましい。熱圧着法は有機溶剤を用いないので、有機溶剤に起因する弊害、例えば、自然環境への影響、火災の危険性、作業者の健康面への影響及び資源の浪費等の問題を解決することができる。
【0032】
また、上記熱圧着法により本発明の壁紙用防汚フィルムを塩化ビニル層の表面に接着する場合の処理条件としては特に限定されず、本発明の壁紙用防汚フィルムの接着層を構成する材料、及び、その配合等より適宜決定されるが、本発明の壁紙用防汚フィルムを用いれば、100℃程度の低温雰囲気下でも好適に処理を行うことができる。
また、塩化ビニル壁紙にエンボス加工を施す場合、該エンボス加工は、本発明の壁紙用防汚フィルムと塩化ビニル層との熱圧着と同時に行ってもよく、後工程で行ってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、接着層を構成する樹脂である非晶性ポリエステルのジオール成分として、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を用い、かつ、ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールに由来する成分の比率を規定することで、共押出成形によって接着層を形成することができ、かつ、高沸点の可塑剤を含有する塩化ビニル壁紙に使用する場合であっても、長期間に渡って高い接着強度を維持できる壁紙用防汚フィルム及びこのような壁紙用防汚フィルムを用いた壁装材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
防汚層を構成する樹脂として、結晶性ポリプロピレン(プライムポリマー社製、「F707V」)、結晶性ポリプロピレン(チッソ社製、「HF3122」)、及び、結晶性ポリプロピレン(チッソ社製、「XFP1498H」)を40:60:6の重量比で混合し、2軸混練押出機を用いて溶融混練して、防汚層用樹脂ペレットとしたものを用いた。
中間層を構成する樹脂として、接着性ポリオレフィン(三井化学社製、「アドマー SE800」)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を50モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を50モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた。
これらの樹脂をそれぞれ3台の押出機に投入し、溶融した後、Tダイスから3層構造のシート状に共押出し、引き取りロールにて冷却固化することにより、防汚層、中間層及び接着層からなる無延伸の壁紙用防汚フィルムを作製した。得られた壁紙用防汚フィルムは、総厚みが20μmであり、防汚層の厚みが10μm、中間層の厚みが5μm、接着層の厚みが5μmであった。
【0036】
(実施例2)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を56モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を44モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0037】
(実施例3)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を60モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を40モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0038】
(実施例4)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を64モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を36モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0039】
(実施例5)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を66モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を34モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0040】
(実施例6)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を68モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を32モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0041】
(実施例7)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてブタンジオールに由来する成分を50モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を50モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0042】
(実施例8)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を50モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を50モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0043】
(比較例1)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を30モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0044】
(比較例2)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を75モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を25モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0045】
(比較例3)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を80モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を20モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0046】
(比較例4)
接着層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を100モル%含有し、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を100モル%含有する非晶性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして壁紙用防汚フィルムを作製した。
【0047】
(評価)
実施例1〜8及び比較例1〜4において作製した壁紙用防汚フィルムの接着強度の経時変化、低温接着性及び耐可塑剤性を以下の方法により評価した。結果を表1に示した。
【0048】
(120℃で接着した場合の接着強度の経時変化)
実施例及び比較例で得られた壁紙用防汚フィルムの接着層と塩化ビニル壁紙とを重ね合わせ、熱傾斜ヒートシール機(東洋精機製作所社製)にて120℃、0.26MPa、1秒の条件で、1cm×2.5cmの面積でヒートシールした。
次に、ヒートシールを行ったサンプルについて、50℃の恒温槽に72時間放置し、シール部分が1cm×1cmとなるように切り出して短冊状の試料を作製した。
このようにして得られた短冊状の試料のヒートシールをした部分をオートグラフ(AGS−100A、島津製作所社製)にて引張強度測定を行い、その値を接着強度[120℃]とした。また、参考として、恒温槽に入れる前の接着強度についても測定した。
なお、接着強度が0.5kgf/cm以上の場合は、壁紙と壁紙用防汚フィルムとの接着強度が高く、壁紙自体が破壊され、壁紙の強度を測定していることとなるため、「壁紙破壊」と記載する。
【0049】
(100℃で接着した場合の接着強度の経時変化)
実施例及び比較例で得られた壁紙用防汚フィルムの接着層と塩化ビニル壁紙とを重ね合わせ、熱傾斜ヒートシール機(東洋精機製作所社製)にて100℃、0.26MPa、1秒の条件で、1cm×2.5cmの面積でヒートシールした。
次に、ヒートシールを行ったサンプルについて、50℃の恒温槽に72時間放置し、シール部分が1cm×1cmとなるように切り出して短冊状の試料を作製した。
このようにして得られた短冊状の試料のヒートシールをした部分をオートグラフ(AGS−100A、島津製作所社製)にて引張強度測定を行い、その値を接着強度[100℃]とした。また、参考として、恒温槽に入れる前の接着強度についても測定した。
【0050】
(耐可塑剤性)
実施例及び比較例で得られた壁紙用防汚フィルムを塩化ビニル樹脂用の可塑剤として一般的に用いられているフタル酸ジオクチル(DOP)に40℃、24時間浸漬して、接着層が溶解しているか否かを目視にて確認した。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1〜8に係る壁紙用防汚フィルムでは、初期、経時の何れの場合も充分な接着強度を有するとともに、低温接着性も高いものであった。これは、塩化ビニル壁紙が破壊するほどの力を掛けない限り、壁紙用防汚フィルムが剥離しないということを意味しており、実施例1〜8に係る壁紙用防汚フィルムと塩化ビニル壁紙との接着強度は実用上充分であるといえる。また、実施例1〜8に係る壁紙用防汚フィルムに用いる接着剤は、所望の耐可塑剤性を有していた。
これに対し、比較例に係る壁紙用防汚フィルムは、特に経時における接着強度の低下が著しく、耐可塑剤性が低いものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、有機溶剤を使用せず、共押出成形によって接着層を形成することができ、かつ、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が含まれている場合でも基材層との強力な接着力を維持し、防汚性、アンチブロッキング性及び低温接着性に優れる壁紙用防汚フィルム及び壁装材を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリプロピレンからなる防汚層と、非晶性ポリエステルからなる接着層とを有する壁紙用防汚フィルムであって、
前記非晶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むジオール成分とを有し、かつ、前記ジオール成分中のシクロヘキサンジメタノールに由来する成分の比率が32モル%以上であることを特徴とする壁紙用防汚フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の壁紙用防汚フィルムと塩化ビニル壁紙とからなることを特徴とする壁装材。

【公開番号】特開2009−72967(P2009−72967A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242546(P2007−242546)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】