説明

壁面緑化ユニットと、その壁面緑化ユニットを用いた壁面緑化設備

【課題】プランターからの余剰水が従来のように垂れ流し状態になるのを極力防止することができ、それによって余剰水が地上部の歩行者にかかるようなことを極力防止することができる壁面緑化ユニットと、その壁面緑化ユニットを用いた壁面緑化設備を提供することを課題とする。
【解決手段】植栽基盤と植物とを収容するための収容部と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランターの内部で誘導する内部余剰水誘導部とが前記プランター内に形成され、前記収容部側から内部余剰水誘導部側へ余剰水が排出されるように前記収容部と前記内部余剰水誘導部とが余剰水排出孔を有する区画部によってプランター内で区画されており、該内部余剰水誘導部で誘導される余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導するための外部余剰水誘導部がさらに具備されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築,構築物の壁面に沿って設置することによって、その壁面を緑化する壁面緑化ユニットと、そのような壁面緑化ユニットを用いて壁面の緑化を行う壁面緑化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道等の場所で人為的に樹木を植設する等によって緑化が行われている。特に建築物、構築物等が立ち並ぶような場所では、自然木等が少ないので、そのような建築物、構築物等の壁面の緑化を行うことが盛んに試みられている。このような建築物、構築物等の壁面の緑化は、都市部における景観の改善を図るだけでなく、いわゆるヒートアイランド現象を緩和する点でも好ましいものであり、今後、益々普及が望まれるものである。
【0003】
このような壁面緑化の技術として、土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能なプランターを壁面の上下左右に複数段に設置し、灌水パイプを配置してプランターに収容された植栽基盤や植物に灌水する技術があり、そのような技術として、たとえば特許文献1のような特許出願がなされている。この特許文献1に記載された技術においては、プランターに灌水された水は、植栽基盤や植物に吸収されて利用される他、利用されない余剰水は、プランターに穿設された水抜き孔から排出されることとなる。このようにして排出された余剰水は、下段側に配置されたプランターに落下し、その下段側のプランター内に収容された植栽基盤や植物に利用され得る。
【0004】
しかし、このような技術においては、水抜き孔から排出される余剰水はそのまま垂れ流し状態で下方へ落下するため、風等で飛散するおそれがあり、地上部の歩行者にかかるおそれがあるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−289087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、プランターからの余剰水が従来のように垂れ流し状態になるのを極力防止することができ、それによって余剰水が地上部の歩行者にかかるようなことを極力防止することができる壁面緑化ユニットと、その壁面緑化ユニットを用いた壁面緑化設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために、植栽基盤と植物とが収容されるプランターを具備し、壁面に沿って上下複数段に配置される壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物とを収容するための収容部と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランターの内部で誘導する内部余剰水誘導部とが前記プランター内に形成され、前記収容部側から内部余剰水誘導部側へ余剰水が排出されるように前記収容部と前記内部余剰水誘導部とが余剰水排出孔を有する区画部によってプランター内で区画されており、該内部余剰水誘導部で誘導される余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導するための外部余剰水誘導部がさらに具備されていることを特徴とする壁面緑化ユニットを提供する。
【0008】
また本発明は、植栽基盤と植物とが収容されるプランターを具備する壁面緑化ユニットが壁面に沿って上下複数段に配置されてなる壁面緑化設備であって、植栽基盤と植物とを収容するための収容部と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランターの内部で誘導する内部余剰水誘導部とが前記プランター内に形成され、前記収容部側から内部余剰水誘導部側へ余剰水が排出されるように前記収容部と前記内部余剰水誘導部とが余剰水排出孔を有する区画部によってプランター内で区画されており、上段側の壁面緑化ユニットの余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導させうるように、上段側の壁面緑化ユニットには、該内部余剰水誘導部で誘導される余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導するための外部余剰水誘導部がさらに具備されていることを特徴とする壁面緑化設備を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のような構成からなるため、プランターに灌水される水は、そのプランターの収容部内に収容される植物や植栽基盤に好適に供給される一方で、該収容部内の植栽基盤と植物に利用されない余剰水は、区画部の余剰水排出孔を介して収容部側から内部余剰水誘導部側へ排出されることとなる。そして、内部余剰水排出部に排出された余剰水は、さらに外部余剰水誘導部によって下段側の壁面緑化ユニットのプランター内に誘導されることとなる。
【0010】
このようにして、灌水された水は、上下複数段に配置された壁面緑化ユニットのプランターの収容部内に収容される植栽基盤と植物とに好適に供給される一方で、それらの植栽基盤や植物に利用されない余剰水は、上記のような余剰水排出孔を介しての収容部側から内部余剰水誘導部側への排出と、内部余剰水誘導部及び外部余剰水誘導部での誘導を経て、上段側の壁面緑化ユニットから下段側の壁面緑化ユニットに誘導されることとなる。
従って、余剰水は上記のように内部余剰水誘導部及び外部余剰水誘導部を介して上段側の壁面緑化ユニットから下段側の壁面緑化ユニットに誘導されるので、プランターからの余剰水が従来のように垂れ流し状態で落下するのが極力防止されることとなり、それによって余剰水が地上部の歩行者にかかるようなことを極力防止することができるという効果がある。
【0011】
特に、収容部から排出される余剰水は、直接外部余剰水誘導部から下段側のプランターへ誘導されるのではなく、プランターの内部において区画部の余剰水排出孔を介しての収容部側から内部余剰水誘導部側へ一旦排出され、その内部余剰水誘導部を経て外部余剰水誘導部から下段側のプランターへ誘導されるので、排出される余剰水の勢いが緩やかなものとなってプランターから余剰水が垂れ流し状態で落下する場合に比べて歩行者に余剰水がかかるようなことを防止する効果がより向上することとなる。
【0012】
しかも、植物や植栽基盤に利用されない余剰水は、区画部の余剰水排出孔を介して収容部側から内部余剰水誘導部側へ排出されるので、収容部内に水が貯留することもなく、収容部内の植栽基盤が過湿の状態になるのを好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の壁面緑化ユニットのプランターの概略平面図。
【図2】同プランターの概略側面図。
【図3】同プランターの概略正面図。
【図4】プランター内に被包材を収納した状態を示す概略平面図。
【図5】図4のA−A線断面図。
【図6】被包材をプランター内で固定する固定金具の斜視図。
【図7】プランターを取り付けるLアングルの正面図。
【図8】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略側面断面図。
【図9】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略斜視図。
【図10】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略正面図。
【図11】壁面緑化ユニットをフレームに取り付けた状態を示す概略正面図。
【図12】壁面緑化ユニットをフレームに取り付けた状態を示す概略側面図。
【図13】他実施形態の壁面緑化ユニットの概略平面図。
【図14】同壁面緑化ユニットの概略側面図。
【図15】図13のB−B線断面図。
【図16】外部余剰水誘導管の概略正面図。
【図17】プランターのフランジをアングルに取り付け、プランターに外部余剰 水誘導管を取り付けた状態を示す概略断面図。
【図18】壁面緑化ユニットを上下2段に配置した状態を示す概略正面図。
【図19】壁面緑化ユニットをフレーム等に取り付けた状態を示す概略平面図。
【図20】壁面緑化ユニットを上下2段に配置した状態を示す概略側面図。
【図21】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態を示す概略正面図。
【図22】プランター内に植栽基盤を収容した状態を示す概略断面図。
【図23】他の実施形態の外部余剰水誘導管の概略正面図。
【図24】他の実施形態の外部余剰水誘導管をプランターに取り付けて壁面緑化 ユニッ トを上下2段に配置した状態を示す概略正面図。
【図25】他の実施形態の外部余剰水誘導管をプランターに取り付けて壁面緑化 ユニッ トを上下複数段に配置した状態を示す概略正面図。
【図26】壁面緑化ユニットを上下複数段に配置した状態の、さらに他の実施形 態 の概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の壁面緑化ユニットは、上述のように、植栽基盤と植物とが収容されるプランターを具備し、壁面に沿って上下複数段に配置される壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物とを収容するための収容部と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランターの内部で誘導する内部余剰水誘導部とが前記プランター内に形成され、前記収容部側から内部余剰水誘導部側へ余剰水が排出されるように前記収容部と前記内部余剰水誘導部とが余剰水排出孔を有する区画部によってプランター内で区画されており、該内部余剰水誘導部で誘導される余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導するための外部余剰水誘導部がさらに具備されているものである。
【0015】
植栽基盤としては、主として土壌が用いられ、その土壌としては、天然土壌の他、人口土壌を用いることもできる。植栽する植物の種類は特に限定されるものではない。
【0016】
プランターの形状は特に限定されるものではなく、植栽基盤と植物が収容可能で、該植栽基盤と植物が収容されている収容部と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランターの内部で誘導する内部余剰水誘導部とが、余剰水排出孔を有する区画部によってプランター内で区画されうるような形状であればよい。一般には箱状の形態に形成される。
【0017】
また、プランターの材質も特に限定されるものではなく、合成樹脂、木材、金属、その他、種々の素材のものを使用することができる。たとえば合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の汎用性の合成樹脂等を使用することができ、またこれら以外の合成樹脂を用いることも可能である。
【0018】
前記収容部と前記内部余剰水誘導部とを前記プランター内で区画する具体的な手段としては、たとえば植栽基盤と植物とを複数の孔を有する被包材で被包してプランター内に収容させて被包材によって収容部を画定させるとともに前記被包材とプランターの内壁面との間に設けた間隙部を内部余剰水誘導部として区画する手段が挙げられる。また、植栽基盤と植物とを直接プランター内に収容させる場合であれば、壁面に貫通孔を有する中空体を併せてプランター内に収容させ、しかも、該中空体を少なくとも前記貫通孔が設けられている箇所を前記植栽基盤に埋設させるようにしてプランター内に収容させ、該中空体の内部空間を内部余剰水誘導部として残りのプランター内の空間を前記収容部とさせることができる。すなわち、前者の場合は、被包材が本発明における区画部として機能し、その孔が余剰水排水孔として機能することとなり、後者の場合は、中空体が本発明における区画部として機能し、その貫通孔が余剰水排水孔として機能することとなる。
【0019】
前者の被包材を区画部として用い、その被包材によって収容部が形成(画定)される場合には、その被包材は、たとえば不織布のようなメッシュ状の通水性のある素材で構成される。そして、植物の根の部分が活着した植栽基盤を被包してプランター内に収容された被包材に灌水がなされると、灌水された水は、植栽基盤や植物の根の部分に吸収されて利用される。その一方で、植栽基盤や植物に利用されない余剰水は、メッシュ状の被包材の微細な通水孔を介して、被包材で区画された収容部以外の部分に排出されることとなる。この場合には、被包材自体の微細な通水孔が余剰水排出孔とされる。
【0020】
一方、後者の中空体のようなものを区画部として用い、その中空体以外のプランター内の空間を収容部として形成する場合、そのような中空体として、たとえばパイプ状のものを用いることができる。その場合には、内部余剰水誘導部として、たとえばパイプ状の内部余剰水誘導管を、その通水方向を上下方向に延在させた状態でプランター内に設けることができる。
【0021】
このような内部余剰水誘導管を用いる場合には、その内部余剰水誘導管自体が余剰水排出孔を有する区画部とされ、その内部余剰水誘導管の内部が内部余剰水誘導部とされる。このような内部余剰水誘導管は、たとえば上下両端部が開口した形態のものであり、その内部余剰水誘導管の上部開口部を、プランター内に収容される土壌等の植栽基盤の上面よりも高く、且つ、プランターの上部開口よりも低く位置させるように形成される。
【0022】
このように植栽基盤の上面よりも高くなるように形成されることで、灌水される水がプランター内の植栽基盤に供給される一方で、プランターから溢流しようとする水は、内部余剰水誘導管の上部開口部から該内部余剰水誘導管排水管内に流入し、下部開口部側へ誘導されることとなるのである。
【0023】
内部余剰水誘導管としては、主として円筒状のパイプのようなものが用いられるが、これに限らず、たとえば四角筒状や三角筒状のものを用いることも可能であり、その形状は問わない。また、内部余剰水誘導管の材質も問うものではないが、主として合成樹脂製や金属製のものが用いられる。
【0024】
内部余剰水誘導管は、その下部開口部が、後述するプランターの底面部の排水口に連通するように、プランターの底部から立設するように設けられることが望ましい。これによって、プランターから溢流しようとする余剰水は、内部余剰水誘導管の上部開口部から流入し、該内部余剰水誘導管を通過し、そのままプランターの底部から排出されるとともに、後述する外部余剰水誘導管を通過して下段側の壁面緑化ユニットのプランターに誘導されることとなる。また、溢流しようとする余剰水のみならず、灌水された水が直接内部余剰水誘導管の上部開口部から流入する場合もある。この場合も、直接内部余剰水誘導管に流入した水は、余剰水として内部余剰水誘導管を通過し、プランターの底部から排出されることとなる。
【0025】
内部余剰水誘導管には、プランター内に灌水された水であって、該プランター内の植物や植栽基盤に利用されない余剰水を排出させるための余剰水排出孔が形成される。この余剰水排出孔は、管壁を貫通するように形成される。また、この余剰水排出孔は、極力、内部余剰水誘導管の下部開口部に近い側に形成されることが望ましい。植物や植栽基盤に利用されない余剰水は、プランターの底部の近傍に貯水されるため、多量の水が底部に貯水されないように、余剰水排出孔を内部余剰水誘導管の下部開口部に近い側に形成して、該余剰水排出孔を介して余剰水を速やかに内部余剰水誘導管に流入させる必要があるからである。また、内部余剰水誘導管の中央若しくはそれより上部側に形成されると、上部開口部から内部余剰水誘導管内に流入した余剰水が、下部開口部に至るまでの間に、上記余剰水排出孔から逆にプランター内に収容されている植栽基盤側に流出するおそれがあり、植栽基盤に供給される水が過剰となるおそれがあるからである。
【0026】
また、この余剰水排出孔は、スリット状に形成されていることが望ましい。上部開口部から内部余剰水誘導管内に流入した余剰水が、プランター内に収容されている植栽基盤側、すなわち収容部側に流出するのを極力防止するためである。
【0027】
さらに、外部余剰水誘導部としては、たとえば鎖状のものやパイプ状のものを用いることができる。いずれも、プランターの底面部に取り付けることができる。鎖状の外部余剰水誘導鎖の場合には、その外部余剰水誘導鎖を伝って余剰水が下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導され、パイプ状の外部余剰水誘導管の場合には、その外部余剰水誘導管内を通過して余剰水が下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ誘導される。
【0028】
上記のような外部余剰水誘導鎖は、たとえばプランターの底面部に排水口を設け、該排水口から下側に延びる短い筒状の取付部に取り付けられる。具体的には、そのような短い筒状の取付部の内面側に、外部余剰水誘導鎖の上端部を取り付けることによって、外部余剰水誘導鎖をプランターに取り付けることができる。その場合、外部余剰水誘導鎖の下端部が、下段側の壁面緑化ユニットのプランター内に臨出するように、該外部余剰水誘導鎖の上端部が筒状の取付部に取り付けられることとなる。
【0029】
また、パイプ状の外部余剰水誘導管の場合にも、外部余剰水誘導鎖の場合と同様にプランターの底面部に排水口が設けられ、該排水口から下側に筒状に延びる取付部が設けられ、その取付部に外部余剰水誘導管が取り付けられる。そして、外部余剰水誘導管を連結する連結手段として、短い筒状の取付部の外周面に螺子が形成されるとともに、その螺子に螺合可能な螺子が、外部余剰水誘導管の開口端部の内周面に形成されることとなる。そして、両螺子を螺合させることによって、外部余剰水誘導管が取付部を介してプランターの底部の裏面側に取り付けられることとなる。また、前記内部余剰水誘導管をプランターの底部を貫通させた状態で設け、この内部余剰水誘導管がプランターから下向きに突出する部分を外部余剰水誘導管の取付部とすることもできる。
【0030】
さらに、本発明の壁面緑化設備は、上記のような構成からなる壁面緑化用ユニットが、上段側の壁面緑化ユニットの内部余剰水誘導部、及び外部余剰水誘導部を介して上段側の壁面緑化ユニットから下段側の壁面緑化ユニットのプランターへ余剰水が誘導されるように、上下複数段に配置されているものである。
【0031】
このように壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置する場合、たとえばLアングルのような取付具をプランターの背面側に設け、同様の取付具を壁面に取り付け、両取付具を相互に取り付けることによりプランターを壁面に取り付けて壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置することができる。また、この壁面緑化用ユニットは、上下方向のみならず、左右方向にも配置することができ、その場合には上下左右に複数段の壁面緑化用ユニットが配置されることになる。
【0032】
さらに、格子状のフレームを壁面に取り付け、その格子状のフレームにプランターを取り付けることも可能である。この場合には、プランターと壁面間に格子状のフレームが介在した状態となり、壁面緑化用ユニットのプランター内の植物がたとえば蔓性植物である場合に、その蔓性植物を格子状のフレームに登攀させることができる。
【0033】
さらに、別の態様として、プランターの底部の両側方にフランジを設け、そのフランジをフレームに取り付けることで壁面緑化用ユニットを上下複数段に配置することができる。
【0034】
このような壁面緑化設備において、上記のような被包材で収容部を画定、形成し、その被包材を区画部とするとともに、該被包材の通水孔を余剰水排出孔とし、被包材とプランターの内壁面との間に設けた間隙部を内部余剰水誘導部として区画する場合には、該内部余剰水誘導部と連通するようにプランターの底面部に排水口が形成されるとともに、該排水口にたとえば鎖状の外部余剰水誘導鎖の上端部が取り付けられ、該鎖状の外部余剰水誘導鎖の下端部が、下段側の壁面緑化ユニットのプランター内に臨出するように、壁面緑化ユニットが上下複数段に配置される。
【0035】
また、上記のような壁面緑化設備において、植栽基盤と植物とを直接プランター内に収容し、上記のような内部余剰水誘導管を併せてプランター内に収容させ、内部余剰水誘導管を区画部とするとともに、該内部余剰水誘導管の内部を内部余剰水誘導部とし、外部余剰水誘導部として上記のような外部余剰水誘導管を用いた場合には、上段側の壁面緑化ユニットの外部余剰水誘導管から、下段側の壁面緑化ユニットのプランター内に余剰水が誘導されるように、壁面緑化ユニットが上下複数段に配置される。このような外部余剰水誘導管を取り付ける場合、用いる外部余剰水誘導管には2種の態様のものがある。
【0036】
そのうちの一の態様は、円筒パイプ状のものが上下に真っ直ぐ形成された外部余剰水誘導管である。この外部余剰水誘導管は、上部開口部がプランターの底部の取付部に取り付けられ、下部開口部が、下段側の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管の上部開口部に近接するように配置される。このように配置することで、上段側の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管を通過する余剰水が、該プランターの底部の取付部を介して外部余剰水誘導管を通過し、そのさらに外部余剰水誘導管の下部開口部から、下段側の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管の上部開口部に供給されることになる。
【0037】
このようにして、上下段の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管及び外部余剰水誘導管を順次通過して最下段の壁面緑化ユニットまで余剰水が供給されるので、灌水された水のうち、必要な水は収容部内の植物や植栽基盤に供給されるが、植物や植栽基盤に利用されない余剰水は、内部余剰水誘導管と外部余剰水誘導管のみを通過して収容部側に供給されることがない。従って、各段の壁面緑化ユニットの高低差、或いは壁面自体の高低差が大きいような場合でも、各段の壁面緑化ユニットのプランター内の植栽基盤の湿潤状態に極端な差異が生じることもない。
【0038】
外部余剰水誘導管の他の態様は、外部余剰水誘導管の下部開口部が、たとえば、下段の壁面緑化ユニットの収容部に余剰水を供給し得るように構成されているものであり、屈曲部分を有する外部余剰水誘導管である。この外部余剰水誘導管は、たとえば上下に真っ直ぐ形成された2本のパイプの中間部分に、連結具を介して短い1本のパイプを横向きに連結することによって構成される。また、この外部余剰水誘導管は、上部開口部がプランターの底部の取付部に取り付けられ、下部開口部は、下段側の壁面緑化ユニットの、植栽基盤が収容された収容部内に位置するように配置される。
【0039】
この外部余剰水誘導管の他の態様では、該外部余剰水誘導管の下部開口部が、下段側の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管の上部開口部から離間して配置されることになるので、上段側の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管を通過する余剰水を、該プランターの底部の取付部を介して外部余剰水誘導管を通過させることができるが、その外部余剰水誘導管を通過する余剰水は、上記一の態様の外部余剰水誘導管のように、さらに下段側の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管に誘導されることはなく、その外部余剰水誘導管の下部開口部から、プランターの収容部に供給されることとなる。
【0040】
従って、この他の態様の場合には、上記一の態様の場合のように、上下段の壁面緑化ユニットのプランターの内部余剰水誘導管及び外部余剰水誘導管を順次通過して最下段の壁面緑化ユニットまで連続して余剰水が供給されることはなく、上段側の壁面緑化ユニットの内部余剰水誘導管から下段側の壁面緑化ユニットの外部余剰水誘導管を通過した余剰水は、一旦、その下段側の壁面緑化ユニットのプランターの収容部内の植栽基盤に供給され、その後に、内部余剰水誘導管及び外部余剰水誘導管を介して、さらに下段側の壁面緑化ユニットに供給されることとなる。
【0041】
このため、この他の態様では、各段の壁面緑化ユニットの高低差、或いは壁面自体の高低差が大きいような場合においてまで、各段の壁面緑化ユニットのプランター内の植栽基盤の湿潤状態に差異を生じさせにくいという効果が上記一の態様の場合と同様に生じるわけではない。
【0042】
しかしながら、この他の態様では、上記のような屈曲部分を有する外部余剰水誘導管によって、余剰水が各段のプランターの収容部内の植栽基盤にすべて供給されることになる。従って、他の態様の外部余剰水誘導管を用いた場合、各段のすべての壁面緑化ユニットに灌水パイプを設置する必要がなく、余剰水を有効に利用することができるという、上記一の態様の外部余剰水誘導管の場合には生じないような別の効果が生じることなる。従って、壁面の上下の高低差が小さい場合には、各段の壁面緑化ユニットにおいて乾燥や加湿の程度の差異がさほど生じることがないので、この他の態様の外部余剰水誘導管を有効に利用することができる。
【0043】
(実施形態1)
以下、本発明の壁面緑化ユニットのより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。本実施形態の壁面緑化ユニット1は、プランター2と、被包材3と、外部余剰水誘導鎖9とを具備して構成されている。
【0044】
プランター2は、水の貯留と誘導を行うためのもので、図1乃至図3に示すように、上面に開口部6を有し、四方の側面部2a、2b、2c、2dと、底面部2eとで構成されて、全体が略箱形に形成されている。底面部2eは、図2に示すように、湾曲して形成されている。プランター2の材質は特に限定されるものではないが、金属製のものを好適に使用することができる。
【0045】
被包材3は、図5に示すように、土壌7等の植栽基盤と植物8とを被包して収容部4を形成するためのもので、図4に示すように、収容部4を形成する被包材3が収納されている以外のプランター2内の部分が、内部余剰水誘導部5として形成されている。この被包材3は、通水性の不織布によって構成され、その不織布に形成されている多数の微細な通水孔が、余剰水排出孔として形成される。また、この被包材3は、それ自体が、収容部4と内部余剰水誘導部5とをプランター2内で区画する区画部とされる。
【0046】
そして、被包材3によって土壌7と植物8とが被包される場合、植物8の葉や茎の部分は裸出させ、土壌7及び土壌7に活着されている根の部分のみが被包材3に被包されることとなる。植物8としては、本実施形態では低木の植物が土壌7に植設されている。また、本実施形態では、2個の被包材3、3がプランター2内に収納されている。2個の被包材3、3間には、仕切板16が介装されている。
【0047】
被包材3、3をプランター2内に収納した状態で、図4に示すように被包材固定金具13で被包材が固定されている。より具体的には、被包材固定金具13の長辺部13aをプランター2の挿入孔47に挿入し、該被包材固定金具13の短辺部13bを前記挿入孔47の周辺部に係止させた状態で、該被包材固定金具13の長辺部13aの孔15に抜け止めビス14が挿入されて固定されている。
【0048】
またプランター2の底面部2eの両側には、排水口10を形成するための排水口形成体11が設けられている。排水口形成体11は、短い筒状に形成されたものであり、図1乃至図3に示すように、プランター2の両側面部2c、2dに近い底面部2eの部分に下向きに突設されている。
【0049】
外部余剰水誘導鎖9は、図8乃至図10に示すように、全体が鎖状に形成されている。
【0050】
さらに、プランター2の後側の側面部2bの両側には、図1及び図2に示すように、Lアングル12が取り付けられている。このLアングル12は、プランター2の後側の側面部2bに取り付けられるプランター用取付部12aと、後述する別のLアングルに取り付けられるLアングル用取付部12bとで構成されている。さらに、プランター2の前側及び後側の側面部2a、2bには、図示しないが、後述する被包材固定金具13を挿入するための挿入孔が穿設されている。
【0051】
図6において、13は、プランター2内に収納された状態の被包材3を固定するための被包材固定金具を示す。この被包材固定金具13は、長辺部13a及び短辺部13bを有する側面略L字状に形成されている。長辺部13aは、上記プランター2の挿入孔(図示せず)に挿入可能に形成され、短辺部13bは、該挿入孔の周辺部に係止可能に形成されている。また長辺部13aには、抜け止めビス14を挿入して固定するための孔15が穿設されている。図4において、16は、プランター2内に収納される2個の被包材3、3間に介装される仕切板を示す。
【0052】
そして、上記のような構成からなる壁面緑化ユニット1を、図8乃至図10に示すように、上下複数段に配置することによって、壁面緑化設備が構成されることとなる。すなわち、本実施形態の壁面緑化設備においては、上記壁面緑化ユニット1が上下複数段(図10においては4段)に配置され、それぞれの壁面緑化ユニット1のプランター2の裏面側に突設された短い筒状の排水口形成体11の内面側に外部余剰水誘導鎖9が取り付けられている。
【0053】
このようにプランター2の排水口形成体11に外部余剰水誘導鎖9が取り付けられた状態において、外部余剰水誘導鎖9の下端部が、下段側の壁面緑化ユニットのプランター2の内部余剰水誘導部5内に臨出するように外部余剰水誘導鎖9が排水口形成体11に取り付けられる。
【0054】
排水口形成体11がプランター2の両側に設けられているので、外部余剰水誘導鎖9も、図10に示すように、プランター2の両側に設けられることとなる。
【0055】
さらに、上記のようにプランター2を上下複数段に設置するに際しては、図7に示すようなLアングル17が、図8に示すように予め壁面18に取り付けられ、そのLアングル17に、プランター2の背面側のLアングル12が取り付けられ、それによってプランター2が壁面18に取り付けられる。より具体的には、両Lアングル12、17の孔19、20を相互に合致させた状態でボルト21が挿入され、さらに別のボルト22によってLアングル17が壁面に固定されている。
【0056】
各段の壁面緑化ユニット1においては、図9に示すように、収容部4に灌水するための灌水パイプ23が配置されている。
【0057】
そして、上記のように構成された壁面緑化設備で灌水を行う場合には、図8乃至図10に示すように、壁面緑化ユニット1を上下複数段に設置した状態で、収容部4を形成しているプランター2内の被包材3に対して、灌水パイプ23から灌水する。
【0058】
灌水パイプ23から灌水される水は植物8に供給されるとともに、通水性素材である被包材3を通過して植物8の根を活着している土壌7に浸透する。植物8に供給され、或いは被包材3を通過して土壌7に浸透した水は、植物の生育に利用されるが、利用されない余剰水は、被包材3を通過して該被包材3の外側、すなわち、プランター2の内部余剰水誘導部5に排出される。
【0059】
このような灌水パイプ23は、各段の壁面緑化ユニット1にそれぞれ設けられており、従って、灌水パイプ23からの植物8や被包材3に被包された土壌7への灌水、植物8や土壌7に利用されない余剰水の、被包材3を通過させての内部余剰水誘導部5側への排出は、各段の壁面緑化ユニット1においてそれぞれなされることとなる。
【0060】
各段の壁面緑化ユニット1において内部余剰水誘導部5内に排出された余剰水は、内部余剰水誘導部5内で排水口10に向かって誘導され、該排水口10から排出されるとともに、排水口形成体11に取り付けられた外部余剰水誘導鎖9を伝って、下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2に誘導される。この場合、外部余剰水誘導鎖9の下端部は、下段側のプランター2の内部余剰水誘導部5に臨出しているため、外部余剰水誘導鎖9を伝って誘導される余剰水は、下段側のプランター2の内部余剰水誘導部5に確実に誘導されることとなる。
【0061】
内部余剰水誘導部5に誘導された余剰水は、同様に排水口10に向かって誘導され、該排水口10から排出されるとともに、排水口形成体11に取り付けられた外部余剰水誘導鎖9を伝って、さらに下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2に誘導される。
【0062】
このようにして、外部余剰水誘導鎖9を伝って誘導される余剰水は、収容部4を形成する被包材3側へは誘導されず、上段側のプランター2の内部余剰水誘導部5、及び外部余剰水誘導鎖9から、下段側のプランター2の内部余剰水誘導部5、及び外部余剰水誘導鎖9へ誘導され、これを順次繰り返して最下段のプランター2まで誘導されることとなる。
【0063】
このように、収容部4を形成する被包材3から内部余剰水誘導部5へ排出される余剰水は、内部余剰水誘導部5で一旦貯留されるような状態で、該内部余剰水誘導部5内で排水口10に向かって誘導されるので、排水口10から余剰水が勢いよく排出されることがない。しかも、排水口10まで誘導された余剰水は、排水口形成体11に取り付けられた外部余剰水誘導鎖9を伝って下段側のプランター2の内部余剰水誘導部5へ誘導されるので、余剰水は、上段側の壁面緑化ユニット1のプランター2から下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2へ確実に誘導されることとなる。従って、従来のように、余剰水がプランターの排水口からいわゆる垂れ流し状態で排出されることがないので、風等で飛散し、地上部の歩行者にかかるようなことを極力防止することができるのである。
【0064】
(実施形態2)
本実施形態では、図11及び図12に示すように、格子状のフレーム24が、プランター2の背面側に位置するように壁面18に取り付けられている。この格子状のフレーム24は、同図に示すように、その上端部が図7に示すようなLアングル17に取り付けられ、下端部が、プランター2の背面側に取り付けられたLアングル12に取り付けられている。この格子状のフレーム24は、上下に隣接するプランター2に跨がるように取り付けられている。
【0065】
このような格子状のフレーム24をプランター2の背面側に位置するように壁面18に取り付けることによって、図12の下段側に示すように、蔓性植物のような登攀性の植物8を、壁面18に沿って好適に登攀させることができる。
【0066】
その他の構成は実施形態1と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0067】
(実施形態3)
本実施形態では、土壌7や植物8はプランター2内に直接収容され、プランター2と内部余剰水誘導管5aとの間が土壌7や植物8の収容部4となる。この点で、被包材3によって土壌7や植物8が被包され、その被包材3が収容部4となる上記実施形態1と相違している。
【0068】
本実施形態の壁面緑化ユニット1は、プランター2と、1対のフランジ25、25と、内部余剰水誘導部5を構成する内部余剰水誘導管5a、外部余剰水誘導管9aとを具備して構成されている。
【0069】
プランター2は、図13乃至図15に示すように、上面に開口部6を有し、四方の側面部2a、2b、2c、2dと、底面部2eとで構成されて、全体が箱形に形成されている。この点は、上記実施形態1と共通している。
【0070】
フランジ25、25は、壁面緑化ユニット1をフレーム等に設置する場合の取付部分となるものので、1対のフランジ25、25が、それぞれ前記プランター2の底部の両側に延設されて形成されている。このフランジ25は、図13に示すように、平面略五角形状に形成されており、ボルト等を挿通するための孔26、26が、それぞれのフランジ25、25に2箇所ずつ、計4箇所に穿設されている。また、このフランジ25は、図15に示すように、複数の足片27を有するような断面櫛形に形成されている。
【0071】
内部余剰水誘導管5aは、土壌7や植物8に利用されない余剰水をプランター2内で誘導する内部余剰水誘導部5を構成するもので、図13及び図15に示すように、上部及び下部にそれぞれ開口部28、29を有して全体が細い円筒状に形成されている。
【0072】
そして、この内部余剰水誘導管5aは、前記プランター2の底面部2eにおける後方の側面部2bに近い側の中央に立設されている。また、前記内部余剰水誘導管5aの下部側の開口部29の近傍には、図15に示すように、プランター2の収容部4内で発生する余剰水を、内部余剰水誘導部5側へ排出するための余剰水排出孔30が穿設されている。この余剰水排出孔30は、図13に示すように、円筒状の内部余剰水誘導管5aにおいて放射状となるような位置に穿設されている。
【0073】
さらに、内部余剰水誘導管5aの下部側の開口部29から裏面側に突出するように、後述する外部余剰水誘導管9aを取り付けるための取付部31が設けられている。この取付部31は、図15に示すように、短い筒状に形成され、その外周面には、外部余剰水誘導管9aとの螺合部分となるねじ32が形成されている。この取付部31の上部側の開口部は前記内部余剰水誘導管5aの下部側の開口部29と兼用されており、前記取付部31の下部側の開口部33は、さらにその下方に形成されている。
【0074】
次に、前記プランター2の裏面側の取付部31に取り付けられる外部余剰水誘導管9aの構成について説明する。すなわち、外部余剰水誘導管9aは、図16に示すように、上部及び下部にそれぞれ開口部34、35を有して全体が細い円筒状に形成されている。すなわち、本実施形態の外部余剰水誘導管9aは、円筒パイプ状のものが上下に真っ直ぐ形成されたものである。外部余剰水誘導管9aの上部の内周面36には、前記取付部31の外周面に形成されたねじ32に螺合可能なねじ37が形成されており、また外部余剰水誘導管9aの上部の外周面38は、該外部余剰水誘導管9aの胴部39よりも幅広に形成されている。
【0075】
そして、上記のような構成からなる壁面緑化ユニット1を、図18乃至図21に示すように、上下複数段に配置することによって、壁面緑化設備が構成されることとなる。すなわち、本実施形態の壁面緑化設備においては、上記壁面緑化ユニット1が上下複数段(図21においては4段)に配置される。
【0076】
また、プランター2の裏面側に突設された取付部31に外部余剰水誘導管9aが取り付けられている。より具体的には、図17に示すように、外部余剰水誘導管9aの上部の内周面に形成されたねじ37を、取付部31の外周面に形成されたねじ32に螺合させることによって、外部余剰水誘導管9aが取付部31に取り付けられることになる。
【0077】
このようにして、外部余剰水誘導管9aが取付部31に取り付けられた状態において、図18に示すように、上段側の壁面緑化ユニット1の取付部31に取り付けられた外部余剰水誘導管9aの下部開口部35の直下に、下段側の壁面緑化ユニット1の内部余剰水誘導管5aの上部側の開口部28が位置するように、上記外部余剰水誘導管9aが取付部31に取り付けられることとなる。
【0078】
さらに、図17に示すように、断面略L字状のアングル40が前記フランジ25に当接され、フランジ25の孔26内にボルト41が挿通されているとともにアングル40に穿設された孔42内にボルト41が挿通されている。このようにして、プランター2がフレーム43に掛止されるとともに、フランジ25がボルト41によってアングル40に固定されている。
【0079】
図18乃至図20においては、上下2段の壁面緑化ユニット1が設置された状態がより詳細に示されている。すなわち、プランター2の両側には、架台44、44が配置されており、そのプランター2や架台44、44を全体的に包囲するように、フレーム43が所定位置に配置されている。さらに、両外側には、枠体45が配置されている。
【0080】
図18乃至図20では、上下2段の壁面緑化ユニット1が設置された状態が示されていたが、実際には、図21に示すように、複数段の壁面緑化ユニット1が設置されて壁面緑化設備が構成されることとなる。尚、図21では、複数段の壁面緑化ユニット1が上下1列に設置されている場合を示しているが、複数列に複数段の壁面緑化ユニット1を設置することも可能である。実際に壁面緑化を行う場合、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置する場合が多い。このように、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置することで、上下左右に複数の壁面緑化ユニットが配置されることとなる。
【0081】
さらに、上記のように壁面緑化ユニットが配置された後に、図22に示すように、プランター2の収容部4内には土壌7が収容され、また図22では図示しないが、生育させる植物もプランター2の収容部4内に収容される。
【0082】
このように土壌や植物が収容された状態で、灌水パイプ(図示せず)から収容部4内の土壌や植物に灌水する。灌水された水は土壌や植物に利用され、利用されない余剰水は、収容部4から余剰水排出孔30を介して内部余剰水誘導管5aで構成される内部余剰水誘導部5側へ排出されることとなる。また、収容部4から溢流する水は、内部余剰水誘導管5aの上部の開口部28から該内部余剰水誘導管5a内に流入して内部余剰水誘導部5側へ排出されることとなる。
【0083】
そして、内部余剰水誘導部5側へ排出された余剰水は、内部余剰水誘導管5aを通過して、底部の取付部31に取り付けられた外部余剰水誘導管9aに供給されることとなる。外部余剰水誘導管9aに供給された水は、下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2内に収容された土壌7に供給され、その一方で、その下段側の壁面緑化ユニットのプランター2で生じる余剰水は、そのプランター2の外部に飛散することなく、該プランター2内に設けられた内部余剰水誘導管5aを通過して、底部の取付部31に取り付けられた外部余剰水誘導管9aに供給され、さらにその外部余剰水誘導管9aを介して下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2内に収容された土壌7に供給されることとなる。
【0084】
上述のように、本実施形態においては、円筒パイプ状のものが上下に真っ直ぐ形成された外部余剰水誘導管9aが、プランター2の底部の取付部31に取り付けられ、その外部余剰水誘導管9aの下部開口部35が、下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5aの上部開口部28に近接するように配置されているので、上段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5aを通過する余剰水は、該プランター2の底部の取付部12を介して外部余剰水誘導管9aを通過し、さらにその外部余剰水誘導管9aの下部開口部35から、下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5aの上部開口部28に供給されることになる。
【0085】
このようにして、上下複数段に配置された壁面緑化ユニット1のプランター2内に収容されている土壌7に好適に供給される一方で、各壁面緑化ユニット1のプランター2から溢流しようとする余剰水は、プランター2の外部に飛散することなく、それぞれのプランター2内に設けられた内部余剰水誘導管5a及び外部余剰水誘導管9aを通過して下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の収容部4内に収容された土壌に供給され、このような内部余剰水誘導管5aと外部余剰水誘導管9aの通過を繰り返して、上段側から下段側に供給されることとなる。従って、本実施形態においても、プランター2からの余剰水が従来のように垂れ流し状態になるのを好適に防止することができ、それによって余剰水が地上部の歩行者にかかるようなことを防止することができるという効果がある。
【0086】
また、上下段の壁面緑化ユニット1の内部余剰水誘導管5aと外部余剰水誘導管9aを順次通過して最下段の壁面緑化ユニット1まで余剰水が供給されるので、余剰水は、プランター2の収容部4内の土壌7にほとんど浸透することがない。従って、各段の壁面緑化ユニット1の高低差、或いは壁面自体の高低差が大きいような場合に、各段の壁面緑化ユニット1のプランター2内の土壌23の湿潤状態に差異を生じさせないという効果がある。
【0087】
(実施形態4)
本実施形態では、外部余剰水誘導管として、上記実施形態3とは別の形態の外部余剰水誘導管を用いている。図23は本実施形態の外部余剰水誘導管を示す概略正面図、図24は図23の外部余剰水誘導管を用いて壁面緑化ユニットを2段に設置した状態を示す概略正面図、図25は図23の外部余剰水誘導管を用いて壁面緑化ユニットを複数段に設置した状態を示す概略正面図である。
【0088】
本実施形態で用いる外部余剰水誘導管9aは、図23に示すように、上下に真っ直ぐ形成された2本のパイプ9b、9cと、横向きに配置される1本の短いパイプ9dとが、2個の連結具46、46を介して連結された構成からなるものである。このように構成されている結果、本実施形態の外部余剰水誘導管9aは、図23に示すように、全体が屈曲して形成されたものとなっている。このように全体が屈曲して形成されている点で、上下に真っ直ぐ形成された1本のパイプのみで外部余剰水誘導管9aが構成されていた上記実施形態1の場合と相違している。
【0089】
本実施形態においては、図24に示すように、外部余剰水誘導管9aの上部開口部34側がプランター2の底部の取付部31に取り付けられ、この点では上記実施形態1と共通しているが、外部余剰水誘導管9aの下部開口部35は、下段側の壁面緑化ユニット1の土壌7が収容されたプランター2内に位置するように配置される。すなわち、外部余剰水誘導管9aの下部開口部35は、下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5aの上部開口部28から離間して配置されることになる。
【0090】
このため、本実施形態においては、上段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5aを通過する余剰水を、該プランター2の底部の取付部31を介して外部余剰水誘導管9aを通過させることができるが、その外部余剰水誘導管9aを通過する余剰水は、上記実施形態3のように、下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5aに供給されることはなく、その外部余剰水誘導管9aの下部開口部35から、プランター2内の土壌7が収容された部分に供給されることとなる。
【0091】
従って、本実施形態では、上記実施形態3のように、上下段の壁面緑化ユニット1のプランター2の内部余剰水誘導管5a及び外部余剰水誘導管9aを順次通過して最下段の壁面緑化ユニット1まで連続して余剰水が供給されることはなく、上段側の壁面緑化ユニットの1の内部余剰水誘導管5aから下段側の壁面緑化ユニット1の外部余剰水誘導管9aを通過した余剰水は、一旦、その下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2の土壌7に供給され、その後に、該プランター2の底部の取付部31を介して、さらに下段側の壁面緑化ユニット1の内部余剰水誘導管5aに供給されることとなる。
【0092】
このため、本実施形態では、上記実施形態3のように、各段の壁面緑化ユニット1の高低差、或いは壁面自体の高低差が大きいような場合に、各段の壁面緑化ユニット1のプランター2内の土壌23の湿潤状態に差異を生じさせないという効果が生じるわけではない。
【0093】
しかしながら、本実施形態では、上記のような屈曲部分を有する外部余剰水誘導管9aによって、余剰水が各段のプランター2内の土壌7にすべて供給されることになる。従って、本実施形態では、各段のすべての壁面緑化ユニット1に灌水パイプを設置する必要がなく、余剰水を有効に利用することができるという、上記実施形態1の外部余剰水誘導管9aの場合には生じないような別の効果が生じることなる。このため、壁面の上下の高低差が小さい場合には、各段の壁面緑化ユニットにおいて乾燥や過湿の程度の差異がさほど生じることがないので、本実施形態の外部余剰水誘導管9aを有効に利用することができる。
【0094】
壁面緑化ユニット1におけるプランター2の構成、プランター2の両側にフランジ25、25を設けた点、内部余剰水誘導管5aの構成、外部余剰水誘導管9aを取り付けるための取付部31を内部余剰水誘導管5aの下部開口部29から裏面側に突出するように設けた点、フランジ25をボルト41によってアングル40に固定する点、プランター2をフレーム43に掛止させる点、外部余剰水誘導管9aを取付部31に取り付ける手段、フレーム43の他に架台44や枠体45を配置する点等は、上記実施形態3と共通するため、その詳細な説明は省略する。また、複数列に複数段の壁面緑化ユニットを設置することで、縦横に多数の壁面緑化ユニットを配置することが可能である点も、上下実施形態3と同様である。
【0095】
さらに、灌水される水が上下複数段に配置された壁面緑化ユニット1のプランター2内に収容されている土壌7に好適に供給される一方で、各壁面緑化ユニット1のプランター2から溢流しようとする余剰水が、プランター2の外部に飛散することなく、それぞれのプランター2内に設けられた内部余剰水誘導管5aを通過し、外部余剰水誘導管9aを介して下段側の壁面緑化ユニット1のプランター2内に収容された土壌7に供給され、このような内部余剰水誘導管5a、外部余剰水誘導管9aの通過を繰り返して、上段側から下段側に供給される点も実施形態3と同様である。
【0096】
従って、本実施形態においても、プランター2からの余剰水が垂れ流し状態になるのを好適に防止することができ、それによって余剰水が地上部の歩行者にかかるようなことを防止することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0097】
1 壁面緑化ユニット
2 プランター
3 被包材
4 収容部
5 内部余剰水誘導部
5a 内部余剰水誘導管
7 土壌
8 植物
9 外部余剰水誘導鎖
9a 外部余剰水誘導管
30 余剰水排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽基盤と植物とが収容されるプランター(2)を具備し、壁面に沿って上下複数段に配置される壁面緑化ユニットにおいて、植栽基盤と植物とを収容するための収容部(4)と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランター(2)の内部で誘導する内部余剰水誘導部(5)とが前記プランター(2)内に形成され、前記収容部(4)側から内部余剰水誘導部(5)側へ余剰水が排出されるように前記収容部(4)と前記内部余剰水誘導部(5)とが余剰水排出孔を有する区画部によってプランター(2)内で区画されており、該内部余剰水誘導部(5)で誘導される余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランター(2)へ誘導するための外部余剰水誘導部(9)がさらに具備されていることを特徴とする壁面緑化ユニット。
【請求項2】
植栽基盤と植物とが収容されるプランター(2)を具備する壁面緑化ユニットが壁面に沿って上下複数段に配置されてなる壁面緑化設備であって、植栽基盤と植物とを収容するための収容部(4)と、該植栽基盤や植物に利用されない余剰水をプランター(2)の内部で誘導する内部余剰水誘導部(5)とが前記プランター(2)内に形成され、前記収容部(4)側から内部余剰水誘導部(5)側へ余剰水が排出されるように前記収容部(4)と前記内部余剰水誘導部(5)とが余剰水排出孔を有する区画部によってプランター(2)内で区画されており、上段側の壁面緑化ユニット(1)の余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランター(2)へ誘導させうるように、上段側の壁面緑化ユニット(1)には、該内部余剰水誘導部(5)で誘導される余剰水を下段側の壁面緑化ユニットのプランター(2)へ誘導するための外部余剰水誘導部(9)がさらに具備されていることを特徴とする壁面緑化設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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