説明

変位検出用差動トランス及び角度検出器

【目的】 検出しようとする変位に対し、直角方向の偏荷重の影響をなくす。
【構成】 円筒状本体21内に一体の突条で差動トランスコイル22が位置決めされて取付けられ、本体21のほぼ軸心位置に可動軸29が隔壁31,32で軸方向に移動自在に保持され、コイル22内で可動軸29上に磁心28が挿通固定される。可動軸29の一端面に鋼球37が固定され、その鋼球37に一端面が対接されて伝達軸38が軸心方向に移動自在に配される。ゴム製ジャバラ43内に伝達軸38が配され、その他端がジャバラ43の一端に固定され、ジャバラ43の他端は本体21に固定される。ジャバラ43の突出端面に、L字金具46を介してローラ47が回転自在に伝達軸38に固定される。ローラ47の軸心は伝達軸38の延長線と直角とされる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は変位に応じて差動トランスの磁心を移動させてその変位を検出する変位検出用差動トランス、及びその差動トランスを用いて、バルブの開度のような角度を検出する角度検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】図5に従来の変位検出用差動トランスを示す。円筒体11内に差動トランスコイル12が同軸心的に嵌合収容され、差動トランスコイル12の両端に一対の固定部材13,14が円筒体11内に嵌合され、差動トランスコイル12が固定保持される。差動トランスコイル12内の軸心位置に柱状磁心15が配され、磁心15の一端より突出した可動軸16が、一端が閉塞された円筒状固定部材13を通じて外部に突出すると共に、その固定部材13に、軸心に沿って移動自在に保持されている。可動軸16の中間部に固定したつば17と差動トランスコイル12の端面との間にコイルばね18が介在されて、可動軸16が外側へ偏倚されている。
【0003】可動軸16の突出端、つまり検出端19が被変位検出体に対接され、その被変位検出体の変位に応じて可動軸16がその軸心に沿って移動し、つまり磁心15が軸心に沿って移動し、被変位検出体の変位に応じた信号を差動トランスコイル12から得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図5に示した従来の変位検出用差動トランスは、可動軸16が固定部材13に片持支持され、かつ被変位検出体と接する検出端19が可動軸16と一体に構成されているため、検出端19が偏心荷重や偏心振動を受け、図5に点線で示すように可動軸16と直角方向の力を受けると、磁心15がその軸心に対し、直角方向に拡大偏位し、変位を正しく検出することができない。このため振動を受け易い現場での変位検出を高い精度で行うことは困難であった。
【0005】差動トランスコイル12を、固定部材13,14で挟み、かつこれらを円筒体11で相対的に保持するため、4つの部品で相互に固定することになり、差動トランスコイル12と磁心15とを所定の位置関係にするためには、各部品の加工精度、及び組立て精度を高くする必要があった。検出端19は先端がとがったものであるため、被変位検出体が可動軸16と直角な平面で検出端19と接触すればよいが、斜めに当ったり、被変位検出体の検出端19との接触点が可動軸16と直角方向又は斜め方向にずれると、検出端19が滑らかでなく、がたついて移動する、いわゆるスティックスリップ現象が発生し、動作不良が生ずる場合があり、実用面での制限、使用する上での信頼性に問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明の変位検出用差動トランスによれば、差動トランスコイルが本体に取付けられ、差動トランスコイル内の磁心の両端より突出した可動軸の両端部が本体に軸心方向に移動自在に保持され、その可動軸の一端面は半球状面とされ、可動軸の延長線上においてこれに沿って移動自在に伝達軸が本体に保持され、その伝達軸の一端面にコイルばねで可動軸の半球状面が圧接され、伝達軸は抜け止め手段により本体より抜け落ちないようにされている。
【0007】請求項2の発明の角度検出器によればケースに請求項1の発明の変位検出用差動トランスが取付けられ、その伝達軸の他端に、その軸心とほぼ垂直な軸心をもつローラが回転自在に取付けられ、伝達軸の延長線上で、ローラの軸心と平行した軸心をもって入力軸が回転自在にケースに取付けられ、その入力軸にカムが取付けられ、カムの周面は入力軸からの距離が連続的に変化しており、この周面がローラと転接される。カム周面の短い径の部分がローラと接するようにカムが回動偏倚される。
【0008】
【実施例】図1及び図2に請求項1の発明の実施例を示す。本体21は円筒状をしており、この例では二つの半円筒状の半体21aと21bとにより構成され、これらは合成樹脂材のモールド品として作られる。本体21内に、その軸心方向におけるほぼ一半部内に差動トランスコイル22がその軸心を本体21の軸心とほぼ一致させて収容される。差動トランスコイル22は例えばセラミック製のボビン23上に巻かれている。ボビン23を位置決め保持するために、本体21の内周面に一対のリング状突条24,25が一体に形成され、突条24,25の互いの内側の面にボビン23の両端面の周縁部がほぼ対接されて、軸心方向の位置決めがなされ、リング状突条24,25の互いの内側において突条24,25よりも低いリング状受け面26,27が形成され、受け面26,27にボビン23の両端のつばの周面がほぼ嵌合されて、軸心と直角方向の位置決めがなされる。
【0009】差動トランスコイル22内の軸心位置に柱状磁心28がほぼ同一軸心で、軸心に沿って移動自在に配される。磁心28の両端から突出して可動軸29が固定される。この例では可動軸29が磁心28に挿通されて固定されている。可動軸29の両端部が本体21に、軸心に沿って移動自在に保持される。このため本体21内に、リング状突条24,25の互いの外側に隔壁31,32がそれぞれ一体に形成され、隔壁31,32の中心孔33,34に可動軸29が挿通され、軸方向に移動自在に保持される。
【0010】可動軸29の一端面は半球状面35とされる。この例では可動軸29の一端上にねじが形成され、保持筒体36の一端に可動軸29がねじ込まれて固定され、保持筒体36の他端面凹部に鋼球37が保持され、鋼球37により半球状面35が構成される。可動軸29の延長線上に、同一方向の伝達軸38が配される。伝達軸38の一端面は半球状面35と対接される。コイルばね39により可動軸29の半球状面35が伝達軸38に圧接される。つまりコイルばね39は可動軸29の端部のつば、この例では保持筒体36のつば41と、隔壁31との間に介在され、可動軸29の外側に同軸心的に配される。
【0011】伝達軸38が抜け止め手段により、本体21から抜け落ちないようにされる。この例では本体21の端部の径が小とされ、その小径部の外周に周方向の溝42が形成され、溝42にゴム製の防じんジャバラ43の一端が固定され、ジャバラ43の他端の中心部に、その軸心に位置している伝達軸38の他端面が固定される。伝達軸38の本体21側端部外周につば44が形成され、つば44が本体21の端板45に形成された孔を通過しないようにされる。
【0012】この例ではジャバラ43の外端面にL字状取付け具46の一半部が対接されて伝達軸38の一端にねじ止め固定され、取付け具46の他半部にローラ47が回転自在に取付けられる。ローラ47の軸心は、伝達軸38の延長線に対しほぼ直角である。ローラ47はローラベアリングが好ましい。ローラ47の本体21に対する姿勢はジャバラ43により常に一定に保持されている。
【0013】本体21の半体21a,21bとはその対接面の適当個所に形成した穴48とピン(図示せず)とにより互いに位置決めされる。本体21の一端部の両側に取付け部49が一体に形成されている。また本体21の他端部に導線引出し孔51が形成され、その導線引出し孔51が形成されている側に、配線基板取付け用のボス52が本体21の外周に4個所形成されている。
【0014】上述の構成においてローラ47が検出端として作用し、ローラ47が本体21側に押されると伝達軸38が可動軸29を押して磁心28が差動トランスコイル22内に深く入り、ローラ47を押した被変位検出体が本体21から離れる方向に移動すると、コイルばね39の作用により、可動軸29を介して伝達軸38が被変位検出体に追従して突出し、磁心28の差動トランスコイル22に対する挿入が浅くなる。このようにして可動軸29の延長線に沿う被変位検出体の変位を検出することができる。
【0015】上述において、検出端はローラ47でなくてもよく、例えば従来と同様に先細のものでもよく、この場合は伝達軸38自体を先細としてもよく、またジャバラ43を省略して本体21の端板45に形成した孔に伝達軸38を軸受け保持させてもよい。半球状面35は可動軸29の端面を直接半球状面としてもよい。ジャバラ43はベローズでもよい。
【0016】次に図3及び図4を参照して請求項2の発明による角度検出器の実施例を説明する。ケース61内に図1及び図2に示した変位検出用差動トランス62が収容固定される。つまりケース61内面に突出した固体部63の側面に本体21の取付け部49が対接され、ねじ64が取付け部49にねじ込まれて固定される。ケース61の端部内にローラ47の移動方向とほぼ直角に入力軸65がケース61に回動自在に保持される。
【0017】入力軸65の一端部は外部に突出し、必要に応じてレバー66が固定され、レバー66を介して被検出角度が入力軸65に与えられる。入力軸65にカム67が取付けられる。カム67はその周面の入力軸65に対する距離が連続的に変化する形状とされ、その周面、つまりカム面68がローラ47に転接される。入力軸65のまわりにコイルばね69が配され、コイルばね69の一端はケース61に立てたピン71と係合し、他端はカム67に立てたピン72と係合してカム67はその短かい径の部分がローラ47と対向するように回動偏倚される。図4ではカム67は右回りの回動偏倚力を受けている。入力軸65に取付けたストッパ73により、図に示していないがケース61の外面凹部74の形状によりカム67の回動が初期回動位置で停止され、この位置でローラ47が最も突出してカム面68と接している。
【0018】ボス52に配線基板75が取付けられる。この例はケース61を本体21が収容されるケース本体61aと、そのケース本体61aの配線基板75側を蓋するカバー61bと、ケース本体61aから突出したジャバラ43を収容し、入力軸65を保持するヘッド部61cとにより構成し、これらを互いに取外し自在としている。またこれら各部の対接面にオーリング76を介在させ、入力軸65とその軸受77との間にもオーリング78を介在させ、ケース61内を気密構造としている。ケース61内には端子台79が設けられている。ヘッド部61cは図3においてケース本体61aに対し、上下を逆にして取付けることもできる。
【0019】この構成において、被検出角度がレバー66を介し、又は直接入力軸65に与えられ、入力軸65が左回りに回動すると、カム67も回動し、ローラ47と接する部分が入力軸65からの距離が徐々に大となり、ローラ47が本体21側に押され、つまり被検出角度による回転が直線運動に変換されて、変位検出用差動トランス62で被検出角度が変位として検出される。被検出角度が初期状態にもどると、ばね69によりカム67も初期状態にもどり、ローラ47が最初の位置に突出する。
【0020】
【発明の効果】以上述べたように請求項1の発明によれば検出端の変位が伝達軸を介し、かつその端面と半球状面35との接点を介して可動軸29に伝達されるため、検出端に伝達軸38と直角方向の偏荷重や偏振動が加わっても、これは可動軸29に伝達されないため、機械的なダメージを受けないばかりか、変位の可動軸29に沿う成分のみしか伝達されないため、変位検出精度も高い状態に維持でき、振動、衝撃など過酷な使用条件でも耐久性が高く、かつ高精度が維持できる。
【0021】また本体に差動トランスコイルを位置決め保持し、かつ可動軸も本体に保持されるため、簡単な組込みで高い位置精度を得ることができ、量産に適する。請求項2の発明によれば伝達軸の一端に回転自在に保持したローラに、入力軸に取付けたカムを転接させているから、スティックスリップ現象が生じることなく、回転角度が円滑に変位に変換されて、高い精度で角度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の実施例を示す断面図。
【図2】図1の一半部を断面としかつジャバラを外した状態の平面図。
【図3】請求項2の発明の実施例を示す垂直断面図。
【図4】図3の水平断面図。
【図5】従来の変位検出用差動トランスを示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体と、その本体に取付けられた差動トランスコイルと、その差動トランスコイル内にその軸心に沿って移動自在に配された磁心と、その磁心の両端より突出し、その磁心が固定され、両端部が上記本体に軸心に沿って移動自在に保持され、一端面が半球状面とされた可動軸と、その可動軸の延長線上において、上記半球状面と一端面が対接され、上記本体に上記延長線に沿って移動自在に保持された伝達軸と、その伝達軸の端面に上記半球状面を圧接するコイルばねと、上記伝達軸が上記本体より抜け落ちるのを防止する抜け止め手段と、を具備する変位検出用差動トランス。
【請求項2】 ケースと、そのケースに取付けられた請求項1に記載した変位検出用差動トランスと、その差動トランスの上記伝達軸の他端に、その軸心とほぼ垂直な軸心まわりで回転自在に取付けられたローラと、上記伝達軸の延長線上で上記ローラの軸心と平行な軸心まわりで回転自在に上記ケースに取付けられた入力軸と、その入力軸に取付けられ、その入力軸からの距離が連続的に変化する周面が上記ローラと転接するカムと、そのカムを上記入力軸から短かい部分が上記ローラに接する方向に回動偏倚するコイルばねと、を具備する角度検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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