説明

変化したレベルの不飽和脂肪酸を含有する種子油およびその生産方法

【課題】不飽和脂肪酸レベルが変化した植物の種子及びそれから得られる油脂を提供する。
【解決手段】植物中の不飽和脂肪酸の性質およびレベルを調節するための手段を見いだし、脂肪酸デサチュラーゼをコードするcDNAまたは遺伝子由来の核酸断片を使用してキメラ遺伝子を作成する。このキメラ遺伝子で脂肪種子ブラッシカ(Brassica)種等の植物を形質転換して、植物のまたは植物により生産された油産物の脂肪酸組成を変化せしめ、それを用いて油脂を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の脂質組成を改変する脂質酸デサチュラーゼ酵素をコードする核酸断片の調製および使用に関する。特に、本発明は、そのような核酸断片および適当な調節配列を含むキメラ遺伝子は不飽和脂質酸のレベルが変化したトランスジェニック植物を作成するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性の脂質は工業用および食用の広い用途を有し、そして植物膜機能および気候的適用の中心である。これらの脂質は莫大な化学構造の配列を表し、そしてこれらの構造が脂質の生理学的および工業的性質を決定している。これらの構造の多くは、脂質の不飽和度を変化させる直接的または間接的のいずれかの代謝過程で生じたものである。種々の植物中で種々の代謝型によりこれら変化した脂質が生成し、そして所望する脂質を大量に経済的に生産するためには通常、外来種の栽培植物化または作物学的な適合種の改良のいずれかが必要とされる。
【0003】
植物性脂質の主な用途はトリアシルグリセロールの状態の食用油である。食用油の特別な高機能性および健康的貢献度は、その脂肪酸組成により主として決定される。様々な商用植物品種由来のほとんどの植物油は主にパルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)である。パルミチン酸およびステアリン酸はそれぞれ16−および18−炭素長の飽和脂肪酸である。オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸はそれぞれ1つ、2つおよび3つの二重結合を含む18−炭素長の不飽和脂肪酸である。オレイン酸はモノ−不飽和脂肪酸と呼ばれるが、リノール酸およびリノレン酸はポリ−不飽和脂肪酸と呼ばれる。通常使用される食用植物油中の飽和および不飽和脂肪酸の相対量を下の表に要約する(表1):
【0004】
【表1】

【0005】
最近の多くの研究努力により、飽和および不飽和脂肪酸の冠状心臓疾患の危険性を減少する役割が調査された。過去にはモノ−不飽和脂肪酸は、飽和およびポリ−不飽和脂肪酸と比較して血清コレステロールおよび冠状心臓疾患の危険性には効果が無いと思われて来た。幾つかの最近のヒトに関する臨床的な研究では、モノ−不飽和脂肪が高く、そして飽和脂肪が低い食事は“悪性”(低密度リポタンパク質)コレステロールを減少し、一方“良性”(高−密度リポタンパク質)コレステロールを維持することを示唆している(非特許文献1参照)。
【0006】
総飽和物が低く、そしてモノ−不飽和物が高い植物油は有意に健康的な利点を消費者に提供し、そして油生産者には経済的な利点を提供する。例として、カノーラ油は大変健康的な油であると考えられている。しかし使用においては、カノーラ油中の高レベルのポリ−不飽和脂肪酸が油を不安定にし、容易に酸化させ、そして不快臭および不快な風味を発生し易くする(非特許文献2、非特許文献3参照)。ポリ−不飽和物のレベルは水素化により減少できるが、この工程は高価であり、そして栄養的に問題がある残りの不飽和脂肪酸のトランス異性体の同時生成により、総体的に水素化された油は望ましくなくなる(非特許文献4参照)。同様な問題は大豆およびトウモロコシ油でも存在する。
【0007】
特定の使用には、高レベルのポリ−不飽和物が望ましい。リノール酸塩およびリノレン酸塩はヒトの食事に必須な脂肪酸であり、これらの脂肪酸が高い食用油は例えばベビーフードの栄養補助剤に使用できる。
【0008】
いくつかの突然変異−育種プログラムでは、作物種の食用油中に見いだされるポリ−不飽和脂肪酸レベルの変更に成功した。商用的に生育させた植物の例は、高い(85%)オレイン酸ヒマワリおよび低い(2%)リノレン酸アマである(非特許文献5参照)。表1に示す別の植物での同様な商業的方法は、方法の難しさ、ならびに植物ハーディネス(hardiness)および収量の増大に対する突然変異法の多様発現性作用に起因して大変わかりにくい。
【0009】
主な植物脂質の生合成について、多くの研究がそそがれてきた(非特許文献6参照)。これらの研究では、可溶性のステアロイル−アシルキャリアータンパク質デサチュラーゼは特に除外すると、不飽和脂肪酸の生成段階の調節は主に膜−結合脂肪酸デサチュラーゼにより触媒されている。不飽和化反応はガラクトリピッド、スルホリピッドおよびホスホリピッドを含む様々な基質を使用してプラスチドおよび少胞体中で起こる。様々な脂肪酸不飽和化反応を欠失しているアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)の核突然変異体の遺伝的および生理学的分析は、これらの反応のほとんどが植物中の単一の遺伝子座でコードされている酵素により触媒されていることを示している。さらにこの分析では、脂肪酸不飽和化の様々な欠失には深い意味があり、そして植物の超−構造的形態学、低温感受性および光合成能に影響を及ぼしうることを示している(非特許文献7参照)。しかしデサチュラーゼ反応の生化学的特徴付けは不十分なものであった。酵素の不安定性およびその適切なアッセイの行い難さから、研究者は粗膜調製物中の酵素活性を調査するのに限界があった。しかしこれらの調査により、2−オレイル−ホスファチジルコリンおよび2−リノレオイル−ホスファチジルコリンから、それぞれリノレートおよびリノレネートの生成におけるデルタ−12デサチュラーゼおよびデルタ−15デサチュラーゼ活性の役割が明らかにされた(非特許文献8参照)。したがって遺伝子工学により脂質不飽和化のレベルを変えるために、これらの酵素活性を修飾することは魅力のある目的である。
【0010】
酵母、ラットおよびマウス由来のミクロソーム デルタ−9ステアロイル−コエンザイム−Aデサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列も記載されている(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11参照)。高等植物由来の可溶性のデルタ−9ステアロイル−アシルキャリアータンパク質デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列も記載されている(非特許文献12、非特許文献13参照)。コリアンダー(coriander)植物由来の可溶性脂肪酸デサチュラーゼ(そのアミノ酸配列はステアロイル−アシルキャリアータンパク質デサチュラーゼのアミノ酸配列と高度に同一であり、そしてペトロセリン脂肪酸(18:1、6c)中に二重結合を導入する原因である)をコードするヌクレオチド配列も記載されている[非特許文献14参照]。ラン色細菌(cyanobacterium)、シネコシステス(Synechocystis)PCC6803由来の2つの脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子は記載されている。その1つはdesAと命名され、そしてオレイン酸をガラクトリピッドのsn−1位置でリノール酸に転換するのを触媒する脂肪酸デサチュラーゼをコードし[非特許文献15参照]、もう1つはリノール酸をガラクトリピッドのsn−1の位置でγ−リノレン酸(18:2、6c、9c)に転換することを触媒するデルタ−6脂肪酸デサチュラーゼをコードする[特許文献1参照]。高等植物の膜−結合ミクロソームおよびプラスチドデルタ−15脂肪酸デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列も記載されている[特許文献2参照、非特許文献16参照]。可溶性デルタ−6およびデルタ−9デサチュラーゼならびに膜−結合(ミクロソームおよびプラスチド)デルタ−15デサチュラーゼ以外の脂肪酸デサチュラーゼをコードする高等植物遺伝子の単離に関する報告は無い。可溶性デサチュラーゼ間には広範囲のアミノ酸配列の同一性が、ならびに高等植物ミクロソームおよびプラスチドデルタ−15デサチュラーゼ間には有意なアミノ酸配列同一性がある一方、可溶性と膜−結合デサチュラーゼ間には有意な相同性が無い。ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼについては、デルタ−15デサチュラーゼをコードする配列に基づく配列−依存的手法は配列をクローニングするのには成功しなかった。例えばハイブリダイゼーションプローブとしてのミクロソームまたはプラスチドデルタ−15デサチュラーゼのヌクレオチド配列は、植物ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼのクローンを単離するのに成功しなかった。さらにプラスチドデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼを単離するために、高等植物の12アミノ酸(これはすべての植物デルタ−15デサチュラーゼと同一であり、そしてラン色細菌のdesAデサチュラーゼに高度(10/12)に保存されている)に伸長するように作成した縮退オリゴヌクレオチドの1組をハイブリダイゼーションプローブとして使用したが、この方法はミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAの単離に失敗した。さらに高等植物デルタ−15とdesAデサチュラーゼ間に保存されているアミノ酸に伸長するように作成したPCRプライマーを使用した植物DNA、植物RNAまたは植物cDNAライブラリー由来のポリメラーゼ鎖連鎖反応生成物を使用することによるミクロソームデルタ−12デサチュラーゼの単離は成功しなかった。したがって植物ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼまたは植物脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素の単離を可能にする技術は無い。さらにデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼまたはヒドロキシラーゼをコードする核酸を使用して植物中のデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼまたはヒドロキシル化のレベルを制御する方法に関する証拠はない。
【0011】
重要でない植物脂質の生合成はさらに研究されていない。何百もの様々な脂肪酸(多くは植物界から)が見いだされたが、すべての植物のわずかな分画のみがその脂質含量について調査された(非特許文献17参照)。したがってこれらの変わった脂肪酸および脂肪酸誘導体の生合成については知られていない。そのような脂肪酸に見られる興味深い化学的特徴は、例えばアレン形かつ共役二重結合、アセチレン形結合、トランス二重結合、多二重結合、および多くの位置での単一二重結合、ならびに脂肪酸鎖に沿った配置である。同様に変わった脂質中に見られる多くの構造的修飾(例えばヒドロキシル化、エポキシ化、環状化など)は不飽和化による脂肪酸の化学的活性化後の代謝を介してさらに作成されるか、あるいはそれらは不飽和化と機構的に同様な化学反応に関与していることによる。そのような特徴をその構造中に持つ多くのこれらの脂肪酸および誘導体は、もし作物学的に生育能力のある種が適当なデサチュラーゼをコードする遺伝子の導入によりそれらの合成を誘導できるなら、商業的に有用であると証明できるだろう。特に興味深いのは12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸(リシノール酸)が豊富な植物油である。リシノール酸およびその誘導体は滑剤、ポリマー、化粧品、被覆剤および医薬品の製造において広く使用されている(例えば非特許文献18参照)。リシノール酸の唯一の商用源はひまし油であり、そして米国で使用されているひまし油の100%が世界中、主にブラジルで生育されている豆由来のものである。カスター豆中のリシノール酸はオレイン酸のデルタ−12位にヒドロキシル基を付加することにより合成される(非特許文献19参照)。この反応はオレエートをデルタ−12位で不飽和化してリノレートを生じることができるメカニズムの初期反応に似ている。なぜなら大腸菌のヒドロキシデカノイルデヒドラーゼに類似した酵素活性により12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸の脱水がリノール酸の形成を生じるからである(非特許文献20参照)。真核生物での一般的な酵素−触媒不飽和化の部分であるヒドロキシル化反応の証明は、ステアリン酸のデルタ−9位の炭素を硫黄原子に置換することにより得られた。酵母細胞抽出物と一緒にインキュベーションした時、チオステアレートは9−スルホキシドに転換した(非特許文献21参照)。このスルホキシド化はデルタ−9位の硫黄に特異的であり、そして酵母デルタ−9デヒドラーゼ欠失突然変異体では起こらなかった(非特許文献22参照)。この9−スルホキシドは9−ヒドロキシオクタデカステアレートの硫黄類似体であり、ステアレート不飽和化の提案されている中間体である。
【0012】
カスター豆細胞中のオレイン酸のレシノール酸へのヒドロキシル化は、植物中のオレイン酸塩のミクロソーム不飽和化と同様に、ミクロソーム中でホスファチジルコリンのsn−2で脂肪酸のデルタ−12位で起こる(非特許文献23参照)。さらにカスターオレエートデルタ−12ヒドロキシル化および植物オレエートミクロソームデルタ−12不飽和化の両方が鉄錯体で阻害され、そして分子酸素を必要とする[非特許文献24、非特許文献25参照]。これらの生化学的な類似性は、シトクロームbに対して生成した抗体が完全にベニバナミクロソーム中のオレエートデルタ−12不飽和化およびカスターミクロソーム中のオレエートデルタ−12ヒドロキシラーゼの両方の活性を完全に阻害するという観察[非特許文献26参照]に関連し、ヒドロキシラーゼおよびデサチュラーゼが機能的に関連しているという強力な証拠を含むものである。したがって植物デルタ−12デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列が、配列−依存的な手法によってカスターからオレエートヒドロキシラーゼ遺伝子をクローニングするのに有用となることを推定することは合理的であるように思われる。例えばデルタ−12デサチュラーゼ間に保存されたアミノ酸領域またはデルタ−12と他のデサチュラーゼとの間に保存された領域に基づくオリゴマーまたはデルタ−12デサチュラーゼと既知の膜−結合ヒドロキシラーゼとの間に保存されたアミノ酸に基づいたオリゴマーでカスターDNAライブラリーをスクリーニングすることによる。カスターオレエートヒドロキシラーゼcDNAを、配列依存的手法と“確認(differential)”ライブラリー研究法とを組み合わせることにより単離することはより効率的となるだろう。そのような確認ライブラリーの例がカスター種子の様々な発生段階に基づくのは、リシノール酸は大変若いカスター種子では合成されず(12DAP未満、非特許文献27参照のスキームの第Iおよび第II段階の種子に対応する)、この初期段階の20日後にリシノレート含有率は0%から全種子脂肪酸の90%に上昇するからである(非特許文献28,非特許文献29参照)。したがってリシノール酸が高率で合成されている時の段階で存在するmRNAで作成したcDNA確認ライブラリーを作ることは可能となったが、その中からは初期段階に存在するmRNAは除去されていた。初期段階のmRNAについては、リシノール酸は合成されないが別の不飽和脂肪酸は合成されている第2段階(10DAP)が適当である。ディファレンシャリーに(differentially)発現した遺伝子を含むライブラリーの構築は当該技術分野で周知である(非特許文献30参照)。リシノイル−CoAを介する遊離リシノール酸のトリアシルグリセロールへの構成はカノーラおよびベニバナ種子ミクロソームにより容易に触媒され(非特許文献31参照)、そしてリシノール酸は調査したすべてのオイルシードに共通のリパーゼによりホスファチジルコリンから除去される。したがって油穀物(oil crop:カノーラ種子および大豆のような)中でのカスター豆オレエートヒドロキシラーゼ遺伝子の発現は、リシノール酸を含有するトリグリセリドが豊富な油を生成すると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願公開第9306712号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第9311245号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Mattsonら、Journal of Lipid Research(1985)26:194-202
【非特許文献2】Gailliard,1980、第4巻、第85−116頁
【非特許文献3】Stumpf,P.K.編集、植物の生化学(Biochemistry of Plants)、アカデミック出版(Academic Press、ニューヨーク
【非特許文献4】Mensinkら、New England J.Medicine(1990) N323:439-445
【非特許文献5】Knowles,(1980)、第35−38頁:Applewhite,T.H.編集、脂肪および油の産業的応用に関する生化学についての世界会議(World Conferanceon Biotechnology for the Fats and Oils Industry Proceedings)、米国油脂化学者学会
【非特許文献6】Browseら、Ann.Rev.Plant Physiol.Mol.Biol.(1991)42:467-506
【非特許文献7】Ohlroggeら、Biochim. Biophys.Acta(1991)1082:1-26
【非特許文献8】Wangら、Plant Physiol.Biochem.(1988)26:777-792
【非特許文献9】Stukeyら、J.Biol.Chem.(1990)265:20144-20149
【非特許文献10】Thiedeら、J.Biol.Chem.(1986) 261:13230-13235;
【非特許文献11】Kaestnerら、J.Biol.Chem.(1989)264:14755-1476
【非特許文献12】Thompsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:2578-2582;
【非特許文献13】Shanklinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:2510-2514
【非特許文献14】Cahoonら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11184-11188
【非特許文献15】Wadaら、Nature(1990)347:200-203
【非特許文献16】Arondel,V.ら(1992)Science258:1353-1355
【非特許文献17】Gunstoneら、編集(1986)、脂質ハンドブック(The Lipids Handbook)、ChapmanおよびHall社、ケンブリッジ
【非特許文献18】Gunstoneら、編集(1986)、脂質ハンドブック、ChapmanおよびHall社、ケンブリッジを参照にされたい
【非特許文献19】Galliard & Stumpf(1966)J.Biol.Chem.241:5806-5812
【非特許文献20】Cronanら、(1988)J.Biol.Chem.263:4641-4646
【非特許文献21】Buistら、(1987)Tetrahedron Letters 28:857-860)。
【非特許文献22】Buist & marecak(1991)Tetrahedron Letters 32:891-894)
【非特許文献23】Baforら、(1991)PlantPhysiol 280:507-514
【非特許文献24】Moreau & Stumpf(1981)Plant Physiology67:672-676;
【非特許文献25】Somerville,C.(1992)MSU-DOE Plant Research LaboratoryAnnual Report
【非特許文献26】Somerville,C.(1992)MSU-DOE Plant Research LaboratoryAnnual Report
【非特許文献27】Greenwood & Bewley,Can.J.Bot.(1982) 60:1751-1760
【非特許文献28】Jamesら、Biochem.J.(1965)95:448-452,
【非特許文献29】Canvin.Can.J.Biochem,Physiol.(1963)41:1879-1885
【非特許文献30】Sargent.Meth.Enzymol.(1987)152:423-432
【非特許文献31】Baforら、Biochem.J.(1991)280:507-514、Wibergら、第10回植物脂質の代謝、構造および機能に関するシンポジウム(10th International Symposiumon the Metabolism,Structure & Function of Plant Lipids)(1992),Jerba,Tunisia
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
植物中の不飽和脂肪酸の性質およびレベルを調節するための手段を見いだした。脂肪酸デサチュラーゼをコードするcDNAまたは遺伝子由来の核酸断片をキメラ遺伝子を作成するために使用する。このキメラ遺伝子は種々の植物を形質転換して植物の、または植物により生産された油産物の脂肪酸組成を変化させるために使用できる。より詳細には本発明の1つの態様は、配列番号1、3、5、7、9、11または15によりコード化されたポリペプチドとアミノ酸同一性がそれぞれ50%、60%、90%またはそれより高い脂肪酸デサチュラーゼあるいは脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素をコードする配列を含んで成る単離核酸断片である。より特別には本発明は植物ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素の遺伝子配列に関する。この態様の植物はより具体的には大豆、脂肪種子ブラッシカ(Brassica)種、アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)、ひまし油およびトウモロコシであることができる。
【0016】
本発明の別の態様にはこれらの核酸断片を配列依存的な手法に使用することを含む。例には他の脂肪酸デサチュラーゼまたは脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素をコードするヌクレオチド配列を単離するためのハイブリダイゼーションプローブとしての断片の使用を含む。関連する態様には開示された配列を他の脂肪酸デサチュラーゼまたは脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素をコードするRNAまたはDNA断片の増幅のために使用することを含む。
【0017】
本発明の別の観点には形質転換した植物の種子中の脂肪酸組成を変更できるキメラ遺伝子を含み、その遺伝子は適当な制御配列に対して適当な方向で操作可能に連結した脂肪酸デサチュラーゼをコードする配列番号1、3、5、7、9または15に定義する配列に関連した核酸断片、あるいはデサチュラーゼまたはデサチュラーゼ関連酵素をコードする配列番号11の核酸断片を含んで成る。好適であるのはミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素をコードする核酸断片を含むキメラ遺伝子である。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、変化したレベルの不飽和脂肪酸を含む種子油を生産する方法を関し、その方法は;(a)植物細胞を上記キメラ遺伝子で形質転換し;(b)工程(a)の形質転換した植物細胞からの性的に成熟した植物を生育させ;(c)所望するレベルの不飽和脂肪酸のために工程(b)の性的に成熟した植物からの継代種子をスクリーニングし、そして(d)工程(c)の継代種子を加工して不飽和脂肪酸レベルが変化している脂肪種子を得る、工程を含んで成る。好ましい植物細胞および油は、大豆、菜種種子、ヒマワリ、綿、ココア、ピーナッツ、ベニバナ、ココナッツ、アマ、アブラヤシおよびトウモロコシ由来のものである。そのような植物を形質転換する好適な方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)のTiおよびRiプラスミド、電気穿刺法および高速弾道衝撃法がある。
【0019】
本発明はまた、油生産植物種の種子油中の変化したオレイン酸レベルを得るためにRFLP育種法にて具体化される。この方法は(a)オレイン酸特性が異なる2種類の油生産植物種を交配させ;(b)交配から生成した幾つかの継代植物から単離した制限酵素消化ゲノムDNAのサザンブロットを作成し;そして(c)サザンブロットを脂肪酸デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素をコードする放射線標識核酸断片とハイブリダイズさせることを含む。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載する単離ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAまたは関連するゲノム断片を使用するRFLPマッピング法で具体化される。
【0021】
また本発明は本明細書に記載されたキメラ遺伝子を含有することにより変化した脂肪酸デサチュラーゼレベルを生産できる植物により具体化される。さらに本発明はそのような植物から得られた種子油により具体化される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
[発明の詳細な記述]
本発明は本出願の一部を形成する以下の詳細な説明および配列に関する記載からより完全に理解できる。配列の記載については、37C.F.R.1.822に定義されているように(これは引用により本明細書に編入される)アミノ酸について3つの文字コードを含む。
【0023】
配列番号1は、ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードするアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)cDNAの1372塩基対の5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド93−95およびヌクレオチド1242−1244は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド93−1244)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−92および1245−1372はそれぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。
【0024】
配列番号2は読み取り枠(配列番号1のヌクレオチド93−1244)から派生した383アミノ酸タンパク質配列である。
【0025】
配列番号3はプラスミドpCF2−165d中のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードするブラッシカ ナプス(Brassica napus)cDNAの1394塩基対の5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド99−101およびヌクレオチド1248−1250は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド99−1250)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−98および1251−1394はそれぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。
【0026】
配列番号4は配列番号3の読み取り枠(ヌクレオチド99−1250)から派生した383アミノ酸タンパク質配列である。
【0027】
配列番号5はプラスミドpSF2−169K中のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードする大豆(グリシン マックス:Glycine max)cDNAの1369塩基対の5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド108−110およびヌクレオチド1245−1247は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド108−1247)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−107および1248−1369はそれぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。
【0028】
配列番号6は配列番号5の読み取り枠(ヌクレオチド113−1258)から派生した381アミノ酸タンパク質配列である。
【0029】
配列番号7はプラスミドpFad2#1中のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードするトウモロコシ(ゼア メイズ:Zea mays)cDNAの1790塩基対の5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド165−167およびヌクレオチド1326−1328は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド164−1328)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−163および1329−1790はそれぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。
【0030】
配列番号8は配列番号7の読み取り枠(ヌクレオチド164−1328)から派生した387アミノ酸タンパク質配列である。
【0031】
配列番号9はプラスミドpRF2−1C中のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼの一部をコードするカスター(リシヌス コムニス:Ricinus communis)の不完全cDNAの5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。読み取り枠をコードする配列は塩基1から塩基673である。
【0032】
配列番号10は配列番号9の読み取り枠(ヌクレオチド1−657)から派生した219アミノ酸タンパク質配列である。
【0033】
配列番号11はプラスミドpRF197C−42中のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素の一部をコードするカスター(リシヌス コムニス:Ricinus communis)cDNAの1369塩基対の5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド184−186およびヌクレオチド1340−1342は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド184−1347)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−183および1348−1369はそれぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。
【0034】
配列番号12は配列番号11の読み取り枠(ヌクレオチド184−1342)から派生した387アミノ酸タンパク質配列である。
【0035】
配列番号13はNS3と命名された64−倍縮退26ヌクレオチド−長のオリゴマーの組の配列であり、これは配列番号2のアミノ酸101−109を保存するために作成され、ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−様酵素をコードする新規配列を単離するためにPCRのセンスプライマーとして使用するように設計された。
【0036】
配列番号14はNS9と命名された64−倍縮退し、26ヌクレオチド−長のオリゴマーの組の配列であり、これは配列番号2のアミノ酸313−321を保存するために作成され、そしてミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−様酵素をコードする新規配列を単離するためにPCRのアンチセンスプライマーとして使用するように設計された。
【0037】
配列番号15はプラスミドpAGF2−6中に含まれるミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ遺伝子を含有する2973bpのアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)ゲノム断片の5’から3’へのヌクレオチド配列を表す。このヌクレオチド433および2938はそれぞれ配列番号1の開始および終止に対応する。そのヌクレオチド521−1654は1134bpイントロンである。
【0038】
配列番号16はRB5aと命名された256−倍縮退し、25ヌクレオチド−長のオリゴマーの組の配列であり、これは配列番号2のアミノ酸318−326を保存するために作成され、そしてミクロソームデルタ−12デササュラーゼまたはデサチュラーゼ−様酵素をコードする新規配列を単離するためにPCRのアンチセンスプライマーとして使用するように設計された。
【0039】
配列番号17はRB5bと命名された128−倍縮退し、25ヌクレオチド−長のオリゴマーの組の配列であり、これは配列番号2のアミノ酸318−326を保存するために作成され、そしてミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−様酵素をコードする新規配列を単離するためにPCRのアンチセンスプライマーとして使用するように設計された。
【0040】
出願人は植物脂肪酸デサチュラーゼをコードし、かつ油生産種子の脂肪酸組成を遺伝的形質転換により変化させるのに有用である単離核酸断片を有する。
【0041】
したがって機能的酵素をコードする本発明の核酸断片またはその一部を、そのmRNAの転写を支配する適当な調節配列と一緒に生存細胞中に移すことにより、植物脂肪酸デサチュラーゼの生産または過剰−生産を導き、かつトリアシルグリセロールを含む細胞脂質の不飽和脂肪酸のレベルの上昇を生じるだろう。
【0042】
本発明の核酸断片またはその一部を、そのアンチセンスRNAの転写を支配する適当な調節配列と一緒に植物中に移すことにより、実質的に転移した核酸断片に相同的な内生的な脂肪酸デサチュラーゼの発現の阻害をもたらし、かつトリアシルグリセロールを含む細胞脂質の不飽和脂肪酸のレベルの減少を生じるだろう。
【0043】
本発明の核酸断片またはその一部を、そのmRNAの転写を支配する適当な調節配列と一緒に植物中に移すことにより、実質的に転移した核酸断片に相同的な内生的な脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の発現のコーサプレッション(cosuppression)により阻害を導くことができ、かつトリアシルグリセロールを含む細胞脂質の不飽和脂肪酸のレベルの減少を生じることができる。
【0044】
本発明の核酸断片は植物遺伝子マッピングおよび植物育種プログラムで、制限断片長多型(RFLP)マーカーとして使用することもできる。 本発明の核酸配列断片またはそれらから派生したオリゴマーは、DNA、RNAまたは同じまたは異なる種からのクローン化したヌクレオチド配列のライブラリーを使用して、周知の配列依存的な手法(例えば核酸ハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ連鎖反応による増幅法を含む)により、他の関連する脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を単離するために使用できる。
【0045】
<定義>
本開示の内容において、多くの用語を使用する。脂肪酸は炭素原子の数および二重結合の位置により特定され、コロンの前および後の数は、それぞれ鎖の長さおよび二重結合の数を言う。脂肪酸の名前の次の数は脂肪酸のカルボキシル末端からの二重結合の位置を示し、接辞“c”は二重結合のシス−配置を示す。例えばパルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1,9c)、ペトロセリン酸(18:1,6c)、リノール酸(18:2,9c,12c)、γ−リノレン酸(18:3,6c,9c,12c)およびα−リノレン酸(18:3,9c,12c,15c)である。特に言及しないかぎり、18:1、18:2、および18:3はオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸脂肪酸を言う。リノール酸はシス−9二重結合および12−ヒドロキシル基を持つ18炭素脂肪酸を言う。本明細書で使用する“脂肪酸デサチュラーゼ”とは炭素−水素結合を壊し、炭素−炭素二重結合を脂肪酸分子中に導入することを触媒する酵素を言う。脂肪酸は遊離、またはアシルキャリアータンパク質、コエンザイムA、ステロールおよびグリセロリピッドのグリセロール部分を含む(限定するわけではない)別の分子にエステル化されてもよい。本明細書で使用する用語“グリセロリピッドデサチュラーゼ”とはグリセロール骨格にエステル化された脂肪アシル部分に作用する脂肪酸デサチュラーゼの部分集合を言う。
【0046】
“デルタ−12デサチュラーゼ”とは炭素6および7位(メチル末端からの数)(すなわち18炭素−長の脂肪アシル鎖の炭素12および13位(カルボニル炭素からの数)に対応する)の間に二重結合を形成することを触媒する脂肪酸デサチュラーゼを言う。“デルタ−15デサチュラーゼ”とは炭素3および4位(メチル末端からの数)(すなわち18炭素−長の脂肪アシル鎖の炭素15および16位(カルボニル炭素からの数)に対応する)の間に二重結合を形成することを触媒する脂肪酸デサチュラーゼを言う。脂肪酸デサチュラーゼは、限定されるものでないが、次のものを含む;ホスファチジルコリン脂質基質に作用するミクロソームのデルタ−12およびデルタ−15デサチュラーゼ;ホスファチジルグリセロールおよびガラクトリピッドに作用するクロロプラストまたはプラスチドのデルタ−12およびデルタ−15デサチュラーゼ;ならびにホスホリピッド、ガラクトリピッドおよびスルホリピッドのような脂肪酸基質に作用する他のデサチュラーゼ類。“ミクロソームのデサチュラーゼ”とは酵素の細胞質での局在を言い、一方“クロロプラストデサチュラーゼ”および“プラスチドデサチュラーゼ”とは酵素のプラスチドでの局在を言う。これらの脂肪酸デサチュラーゼは、限定されるものでないが、高等植物、珪藻植物ならびに種々の真核および原核微生物(真菌および光合成細菌および藻類のような)を含む様々な生物に見いだすことができる。“相同的脂肪酸デサチュラーゼ”とは同じ脂質基質に対して同じ不飽和化を触媒する脂肪酸デサチュラーゼを言う。したがってたとえ異なる植物種であっても、ミクロソームのデルタ−15デサチュラーゼ類は相同的な脂肪酸デサチュラーゼである。“異質な脂肪酸デサチュラーゼ”とは異なる位置および/または異なる脂質基質で不飽和化を触媒する脂肪酸デサチュラーゼを言う。すなわち例えばミクロソームのデルタ−12およびデルタ−15デサチュラーゼはホスファチジルコリン脂質に作用するが、たとえ同じ植物由来であっても異質な脂肪酸デサチュラーゼである。同様にホスファチジルコリン脂質に作用するミクロソームのデルタ−15デサチュラーゼ、ガラクトリピッドに作用するクロロプラストのデルタ−15デサチュラーゼは、それらが同じ植物由来であっても異質な脂肪酸デサチュラーゼである。これらの脂肪酸デサチュラーゼはこれまでに単離されたことがなく、“タンパク質として特性決定されていない。したがってデルタ−12デサチュラーゼ”および“デルタ−15デサチュラーゼ”という用語は、これらの破壊により引き起こされる表現型の効果に基づき単離された核酸断片によりコードされるタンパク質を説明するために便利であるので使用する。これらはいかなる触媒的メカニズムを意味するものではない。例えばデルタ−12デサチュラーゼは、メチル、カルボキシル末端または第一の二重結合から“数えられ”ても、数えられなくても、18炭素脂肪酸の12と13の炭素の間に二重結合を形成するのを触媒する酵素を言う。“脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素”とはその触媒産物が炭素−炭素二重結合ではないが、触媒作用のメカニズムが脂肪酸デサチュラーゼに似ている酵素を言う(すなわち脂肪酸の炭素−水素結合を置き換えて脂肪酸ヒドロキシアシル中間体または最終産物を形成する触媒)。例としてデルタ−12ヒドロキシラーゼを意味するデルタ−12ヒドロキシラーゼまたはオレイン酸からリシノール酸を合成するためのオレエートヒドロキシラーゼがある。
【0047】
“核酸”という用語は、糖、リン酸塩および他のプリン又はピリミジンを含有する単量体ヌクレオチドから成る一本鎖または二本鎖であることができる巨大分子を言う。“核酸断片”とは与えられた核酸分子の分画である。高等植物では、デオキシリボ核酸(DNA)が遺伝物質であり、一方リボヌクレオチド(RNA)はDNAの情報をタンパク質に転写することに関与する。“ゲノム”とは各生物の細胞中に含有される遺伝物質の全体である。“ヌクレオチド配列”という用語はDNAまたはRNAポリマーの配列を言い、これは一本−または二本−鎖であることができ、場合によってはDNAまたはRNAポリマーに包含できる合成の、非−天然または変化したヌクレオチド塩基を含むことができる。“オリゴマー”という用語は通常最高100塩基長までの短いヌクレオチド配列を言う。“相同的”という用語は2つの核酸分子のヌクレオチド配列間、または2つのタンパク質のアミノ酸配列の間の関連性を言う。そのような相同性の推定は、当業者に周知のストリンジェンシー条件下でのDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションのいずれかにより与えられる(HamesおよびHiggins編集、(1985) 核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridisation,IRL 出版、オックスフォード、英国);あるいは例えばNeedlemanらの方法(J.Mol.Biol.(1970) 48;443-453)により2つの核酸またはタンパク質間の配列同一性を比較することにより提供される。本明細書で使用するように、“実質的に相同的な”という用語は、言及された配列のコーディング領域とヌクレオチドレベルで90%より高い全体的な同一性を有するヌクレオチド配列を言い、これはコーディング領域に対応する遺伝子および擬−遺伝子である。本明細書に記載された核酸断片は人工的または天然の可能な変更を含んで成る分子を含むことができ、例えば限定するわけではないが(a)コードするアミノ酸は変化しない塩基の変更に関するもの、あるいは(b)DNA配列によりコードされたタンパク質の機能的特性には影響せずにアミノ酸を変更する塩基の変更に関するもの、(c)核酸断片の欠失、再配列、増幅、無作為なまたは制御された突然変異体由来のもの、ならびに(d)さらなる突発的なヌクレオチド配列の誤りがある。
【0048】
“遺伝子”とは特別なタンパク質を発現できる核酸断片を言い、コーディング領域の(5’非−翻訳)から始まり、そして(3’非−翻訳)まで続く調節配列を含む。“脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子”という用語は、脂肪酸デサチュラーゼ活性を持つタンパク質を発現する核酸断片を言う。“天然”遺伝子という用語は自然に見いだされるその遺伝子が所有する調節配列と一緒に単離された遺伝子を言う。“キメラ遺伝子”とは自然には見られない異質な、調節およびコーディングを含む遺伝子配列を言う。“内因性”遺伝子とは天然のゲノムの位置で通常見られる天然遺伝子を言い、そして単離されていない。“外来”遺伝子とは宿主生物に通常見られないが、遺伝子転移により導入された遺伝子を言う。“擬−遺伝子”とは機能的な酵素をコードしないゲノムヌクレオチド配列を言う。
【0049】
“コーディング配列”とは特別なタンパク質をコードし、そして非−コーディング配列を排除するDNA配列を言う。これは“非中断コーディング配列”を構成することができ、すなわちイントロンを欠くか、また適当なスプライス連結部により結合した1つ以上のイントロンを含んでもよい。“イントロン”という用語は第一転写物中に転写されるが、開裂により除去され、そして細胞中でRNAの再結合によりタンパク質に翻訳されることができる成熟mRNAを生成するヌクレオチド配列である。
【0050】
“開始コドン”および“終止コドン”とはそれぞれタンパク質合成(mRNA翻訳)の開始および鎖終止を特定するコーディング配列中の3つの隣接するヌクレオチド単位を言う。“読み取り枠”とはアミノ酸配列をコードする開始および終止コドンの間をイントロンにより中断されないコーディング配列を言う。
【0051】
“RNA転写物”とはRNAポリメラーゼが触媒したDNA配列の転写から生成した生成物を言う。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーであるとき、第一転写物と言い、あるいはこれは第一転写物の翻訳後プロセッシングから派生したRNA配列であることができ、そしてこれを成熟RNAと言う。“メッセンジャーRNA(mRNA)”はイントロンが無く、かつ細胞によりタンパク質に翻訳されることができるRNAを言う。“cDNA”とはmRNAに相補的であり、それから派生した二本鎖DNAを言う。“センス”RNAとはmRNAを含むRNA転写物を言う。“アンチセンスRNA”とは標的第一転写物の全部または一部あるいはmRNAに相補的であり、かつ標的遺伝子の発現を第一転写物またはmRNAのプロセッシング、転移および/または翻訳で妨害することにより遮断するRNAを言う。アンチセンスRNAの相補性は任意の特別な遺伝子転写物(すなわち、5’非−コーディング配列、3’非−コーディング配列、イントロン、またはコーディング配列)の部分を持つことができる。さらに本明細書で使用するように、アンチセンスRNAはアンチセンスRNAが遺伝子発現を遮断する効率を上昇させるリボザイム配列の領域を含んでもよい。“リボザイム”とは触媒的RNAを言い、そして配列−特異的エンドリボヌクレアーゼ類を含む。
【0052】
本明細書で使用するように“適当な調節配列”とは本発明の核酸配列の(5’)上流、中、および/または(3’)下流に位置する天然またはキメラ遺伝子中のヌクレオチド配列を言い、これは本発明の核酸断片の発現を制御する。本明細書で使用する“発現”という用語は、本発明の核酸配列(1つまたは複数)から派生したセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を言い、これは細胞のタンパク質装置と共に、脂肪酸デサチュラーゼ(1つまたは複数)のレベルの変化を生じる。遺伝子の発現および過剰発現は、遺伝子の転写およびmRNAの前駆体または成熟脂肪酸デサチュラーゼタンパク質への翻訳が関与する。“アンチセンス阻害”とは標的タンパク質の発現を妨害できるアンチセンスRNA転写物の生成を言う。“過剰発現”とは正常または非−形質転換生物中での生産レベルを越えるトランスジェニック生物中での遺伝子産物の生産を言う。“コーサプレッション”とは内因性遺伝子に実質的な相同性を有する外来遺伝子の発現を言い、外来および内因性遺伝子の両方の発現のサプレッションを生じる。“変化したレベル”とはトランスジェニック生物中の遺伝子産物(1つまたは複数)の、正常または非−形質転換生物とは異なる量または比率の生産について言う。
【0053】
“プロモーター”とは遺伝子中のDNA配列を言い、通常そのコーディング配列の(5’)上流であり、RNAポリメラーゼおよび適切な転写に必要な他の因子の認識を提供することによりコーディング配列の発現を制御する。人工的なDNA構築物では、プロモーターはアンチセンスRNAを転写するために使用することもできる。またプロモーターは生理学的または発生的な条件に反応して転写開始の効率を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含むこともできる。これはまたエンハンサー要素を含むこともできる。“エンハンサー”とはプロモーター活性を刺激できるDNA配列である。これは生来のプロモーター要素、またはプロモーターのレベルおよび/または組織−特異性を増強するために挿入された異質な要素であってよい。“構築プロモーター”とはすべての組織中で、かついつでも遺伝子発現を支配するものを言う。本明細書の“組織−特異的”または“発生−特異的”プロモーター”とは、特別な組織中(例えば葉または種子のような)で、あるいは組織の特別な発生段階(例えばそれぞれ胚発生の初期または後期で)でほとんど排他的に遺伝子発現を支配するものを言う。
【0054】
“3’非−コーディング配列”とはポリアデニレーションシグナルおよびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響することができる任意の他の調節シグナルを含む遺伝子のDNA配列部分を言う。このポリアデニレーションシグナルは通常mRNA前駆体の3’末端のポリアデニル酸域の付加に影響することが特徴である。
【0055】
本明細書の“形質転換”とは外来遺伝子の宿主生物のゲノム中への転移、ならびにその遺伝的に安定な存在を言う。“制限断片長多型”(RFLP)とは、遺伝子の変異体中または周りの変化したヌクレオチド配列ゆえに種々の大きさの制限断片長を言う。“分子育種”とは例えば育種でのRFLP、RAPDおよびPCRのようなDNAに基づく診断を言う。“受精能力のある”とは性的に増殖できる植物を言う。
【0056】
“植物”とは真核または原核の両方の光合成生物を言い、一方“高等植物”とは真核植物を言う。本明細書の“油−生産種”とは、特別な器官中(主に種子)にトリアシルグリセロールを生産および保存できる植物種を言う。そのような植物には大豆(グリシン マックス:Glycine max)、菜種およびカノーラ(ブラッシカ ナプス:Brassica napus、ビー.カンペストリス:B.campestrisを含む)、ヒマワリ(ヘリアンタス アナス:Helianthus annus)、綿(ゴシッピウム ヒルストン:Gossypium hirsutum)トウモロコシ(ゼア メイズ:Zea mays)、ココア(セオブローマ カカオ:Theobroma cacao)、ベニバナ(カルタムス チンクトリウス:Carthamus tinctorius)、アブラヤシ(エラエイス グイニーンス:Elaeis guineensis)、ココナツ ヤシ(ココス ヌシフェラ:Cocos nucifera)、アマ(リヌム ウシタチシム:Linum usitatissimum)、カスター(リシヌス コムニス:Ricinus communis)およびピーナッツ(アラチス ハイポガエア:Arachis hypogaea)。この群には適当な発現ベクターの開発に有用な植非−作物種(non-agronomic species)(タバコ、周期が早いブラッシカ(Brassica)種、およびアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)および独自の脂肪酸源となりうる野生種)を含む。
【0057】
“配列−依存的手法”とはヌクレオチド配列の利用性に依存した技術を言う。配列−依存的手法の例には制限するわけではないが、核酸およびオリゴマーハイブリダイゼーション法ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の種々の使用に例示されるようなDNAおよびRNAの増幅法がある。
【0058】
実験操作に使用される種々の溶液は、“SSC“、“SSPE”、“デンハーツ溶液”等のそれらの通常の名前で言う。これらの溶液の組成はSambrookらの添付B(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル:Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第二版、(1989)、コールドスプリングハーバー ラボラトリー 出版:Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照にすることにより理解できる。
【0059】
<T−DNA突然変異誘発法およびミクロソームのデルタ−12デサチュラーゼ欠失アラビドプシス(Arabidopsis)突然変異体の同定>
T−DNA突然変異誘発法(Feldmannら、Science(1989)243:1351-1354)では、T−DNAのゲノムへの組み込みは組み込み部位またはその近くの遺伝子の正常な発現を妨害できる。もし生成した突然変異体の表現型が検出、そして遺伝的にT−DNA挿入物に強固に連結していることを示すことができれば、“標識した”突然変異体の位置およびその野生型の対を当業者による分子クローニングにより容易に単離できる。
【0060】
アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)種子をアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58Clrif株(複製領域のオリジンにより置き換えられたT−DNAの右および左境界の間にT−DNA領域、およびプラスミドpBR322のアノピシリン耐性遺伝子、細菌のカナマイシン耐性遺伝子、および植物カナマイシン遺伝子を持つ悪性ではないTi−プラスミドpGV3850::pAK1003を寄宿させている)により形質転換させた(Feldmannら、Mol.Gen.Genetics(1987)208:1-9)。処理した種子からの植物を自己−受精させ、そしてカナマイシンの存在中で発芽した生成した継代種子を自己−受精させて集団を作成し、これをT3と命名し、これはT−DNA挿入物が分離していた。約1700のT2植物からのT3種子を発芽させ、そして制御された環境下で生育させた。各系の各10個体のT3植物からの1枚の葉をプールし、そして脂肪酸組成を分析した。1つの系を658と命名し、これは上昇したオレイン酸(18:1)レベルを表した。658系の12個の別個のT3種子の分析から、36%より高いオレイン酸を含む2個の種子、一方残りの種子は12−22%のオレイン酸を含有することを確認した。658系およびT3種子中のその分離物中の葉および種子組織のオレイン酸レベルが上昇した突然変異体表現型は、658系がオレイン酸をリノール酸に、葉および種子の両方で不飽和化することに影響を与える突然変異体を宿していることを示唆した。658系からの約200個のT3種子をカナマイシン存在下でそれらの発芽能力について試験した時、4個のカナマイシン−感受性種子を同定し、これらは恐らく3つの多T−DNA挿入物を元のT2系中に有することを示した。100個の別個のT3植物の継代種子をその脂肪酸組成、およびカナマイシンに対する発芽ついて分析し、1つの植物を658−75と命名し、これはその継代が7つの野生株:2つの上昇オレイン酸レベルの突然変異体および28のカナマイシン感受性:60のカナマイシン耐性を分離することが確認された。約400の658−75のT4継代種子を生育させ、そしてその葉の脂肪酸組成を分析した。91のこれらの種苗が突然変異体(高オレイン酸)表現型にホモ接合性であると確認された。83のこれらのホモ接合性植物をノパリン、T−DNAに関する別のマーカー、の存在下で試験し、そしてそれらすべてがノパリン感受性であった。これらの遺伝学的研究に基づき、ミクロソームデルタ−12不飽和化の突然変異はT−DNAに関連すると結論した。
【0061】
<ミクロソームデルタ−12不飽和化を制御する破壊された遺伝子を含有するアラビドプシス(Arabidopsis)658−75ゲノムDNAの単離>
野生型のアラビドプシス(Arabidopsis)からミクロソームのデルタ−12不飽和化を制御する遺伝子を単離するために、宿主植物DNA中に組み込まれたT−DNAの境界を含むT−DNA植物DNA“ジャンクション(junction)”断片を、アラビドプシス(Arabidopsis)の658−75系のホモ接合性突然変異体植物から単離した。このために、突然変異体植物からのゲノムDNAを単離し、そしてBamHIまたはSalI制限酵素のいずれかで完全に消化した。各々の場合において、1つの生成断片がpBR322の複製起源およびアンピシリン−耐性遺伝子、ならびにT−DNA−植物DNA左部のジャンクション断片を含むと思われた。そのような断片を、自己連結をし易くするために消化ゲノムDNA断片を希釈濃度で連結してプラスミドとして取り出し、そして次ぎに連結した断片を大腸菌細胞を形質転換するために使用した。SalI−消化植物ゲノムDNAから取り出したプラスミドからはアンピシリン−耐性コロニーが得られないが、BamHI−消化植物ゲノムDNAから取り出したプラスミドから得たコロニーには1つのアンピシリン−耐性コロニーが得られた。この形質転換から得られたプラスミドをp658−1と命名した。プラスミドp658−1のBamHI、SalIおよびEcoRI制限酵素による制限分析では、このプラスミドが期待された14.2kbのT−DNA部分(pBR322配列を含む)および推定上の植物DNA/左部T−DNA境界断片を1.6kBのEcoRI−BamHI断片中に含むことが強く示唆された。この1.6kbのEcoRI−BamHI断片をSambrookら(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、第二版、(1989)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に記載された標準的なクローニング法でpBluescript SK[ストラタジーン:Stratagene]中でサブクローン化し、そして生成したプラスミドをpS1658と命名した。
【0062】
<ミクロソームのデルタ−12デサチュラーゼcDNAおよび野生型アラビドプシス(Arabidopsis)由来の遺伝子の単離>
プラスミドpS658−1中にT−DNAの周辺を含む推定上の植物DNAを含む1.6kbのEcoRI−BamHI断片を単離し、そして放射線標識ハイブリダイゼーションプローブとして使用して、上記アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)植物の部分からのpolyAmRNAに対して作成されたcDNAライブラリーをスクリーニングした。これにより薹立ちし、ちょうど第一葉を開き、そして開花している植物からの大きさを確認した[Elledgeら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1731-1735]。ライブラリー中のcDNA挿入物はラムダYesベクター中のEcoRI部位により周辺を含んだXhoI部位に挿入された[Elledgeら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1731-1735]。
【0063】
幾つかの陽性−ハイブリダイズプラークの中から、4つをプラーク精製に供した。プラスミドを精製したファージから部位特異的組換え法により、大腸菌BNN132株中でcre−lox組換えシステムを使用して切り出した[Elledgeら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1731-1735]。4つの切り出しプラスミドをEcoRI制限酵素により消化し、大きさが1kBから1.5kBの範囲のcDNA挿入物が含まれることが示された。4つのすべてのcDNAの部分的ヌクレオチド配列決定法および制限酵素マッピングにより、それらに共通する同一性を明らかにした。
【0064】
それぞれ約1.2kBおよび約1.4kBの挿入物を含有する2つのcDNA(pSF2bおよびp92103)の部分的ヌクレオチド配列を決定した。これらのプラスミドに由来する混合配列は配列番号1であり、これはプラスミドp92103中に完全に含まれるものと思われる。配列番号1はミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするアラビドプシス(Arabidopsis)cDNAの1372塩基対の5’から3’ヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド93−95は読み取り枠(93−1244)の推定上の開始コドンである(本出願中の他の植物デルタ−12デサチュラーゼと比較により確認した)。ヌクレオチド1242−1244は終止コドンである。ヌクレオチド1−92および1245−1372はそれぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。配列番号2の383アミノ酸タンパク質配列は読み取り枠から派生し、そして分子量が44kDと推定される。
【0065】
配列番号1に対応する遺伝子は、アラビドプシス(Arabidopsis)ゲノムDNAライブラリーを放射線標識pSF2b cDNA挿入物を使用してスクリーニングすることにより単離し、そして陽性−ハイブリダイズプラークを精製し、ファージDNAからの6kBのHindIII挿入断片をpBluescriptベクター中にサブクローン化した。遺伝子の2973ヌクレオチド配列を配列番号15に表す。遺伝子の配列(配列番号15)とcDNA(配列番号1)とを比較すると、1134bpの1つのイントロンがcDNAのヌクレオチド88位と89位との間に存在することが明らかになり、これは開始コドンに対しの4ヌクレオチド5’側である。
【0066】
pS1658中の1.6kBのEcoRI−BamHIゲノム境界断片挿入物もBamHIおよびEcoRI末端から部分配列決定した。遺伝子(配列番号15)、cDNA(配列番号1)、境界断片および報告されたT−DNAの左末端配列(Yadavら、(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.79:6322-6326)の比較により、a)BamHI末端からの境界配列断片のはじめの451ヌクレオチドはcDNAのヌクレオチド539(BamHI部位)−89の対応する部分と同一線形順序に並んでおり、b)EcoRI末端から、境界断片はヌクレオチド1−61からのT−DNAの左末端(境界断片中の42位の9つの連続ヌクレオチドの欠失は除外する)の対応する部分と同一線形順序に並んでおり、そしてヌクレオチド57−104からは、cDNA41−88ヌクレオチドの対応する部分と同一線形順序に並んでおり、そしてc)境界断片とcDNAとの間の配列の相違は境界断片中のイントロンによるものである、ことが明らかとなった。これらの結果はT−DNAがプロモーターとコーディング領域の間の転写領域中のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ遺伝子、および5’から非翻訳配列中のイントロンを破壊したことを表す。 アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ遺伝子を含有するファージDNAを、HindIIIで消化した数種の継代アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)(生態型Wassileskijaおよびマーカー系W100生態型Landesberg バックグラウンド)からのゲノムDNAを含有するサザンブロットのRFLPマーカーとして使用した。これはミクロソームデルタ−12デルタ−12遺伝子を染色体3[Koorneef,M.ら、(1993)遺伝子マップについて(inGenetic Maps)、O'Brien,S.J.編集:Yadavら(1993)Plant Physiology 103:467-476]のc3838座に対し13.6cM近位に、1At228座に対し9.2cM遠位に、そしてFadD座に対し4.9cM近位にマップした。この遺伝子座はすでに提案されたミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ(Fad2)についての位置にきわめて親密に対応する[Hugly,S.ら、(1991)Heredity 82:4321]。
【0067】
配列番号1、ならびにアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−15デサチュラーゼ[国際特許出願第9311245号]、アラビドプシス(Arabidopsis)プラスチドデルタ−15デサチュラーゼ[国際特許出願第9311245号]およびラン色細菌(cyanobacterial)のデサチュラーゼ desA[Wadaら、Nature(1990)347:200-203;ジーンバンクID:CSDESA;ジーンバンク寄託番号:X53508]をコードする配列中の読み取り枠ならびにそれから派生するアミノ酸配列を、Needlemanら[J.Mol.Biol.(1970)48:443-453]の方法により、ヌクレオチド配列には5.0および0.3の値のキャップ(gap)重量およびギャップ長を使用して、そしてタンパク質配列にはそれぞれ3.0および0.1の値を使用して比較した。全体の同一性を表2にまとめる。
【0068】
【表2】

【0069】
a2、a3、adおよびdseAはそれぞれ配列番号1/2、アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−15デサチュラーゼ、アラビドプシス(Arabidopsis)プラスチドデルタ−15デサチュラーゼ、およびラン色細菌(cyanobacterial)のデサチュラーゼ desAを言う。各々の比較での同一性の割合を、ヌクレオチドおよびアミノ酸レベルの両方で表す;比較により付記されたギャップの数は同一性の割合の後のカッコ中に示す。ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列を単離するためのハイブリダイゼーションプローブとしてのデルタ−15脂肪酸ヌクレオチド配列を使用した失敗の試みに基づき予想したように、ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼ(配列番号1)と他の3つのデサチュラーゼ間のヌクレオチドレベルでの全相同性は低い(43%から48%の範囲)。アミノ酸レベルでも、ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼ(配列番号1)はラン色細菌(cyanobacterial)のデサチュラーゼ desA(24%未満の同一性)および植物デルタ−15デサチュラーゼ(39%未満の同一性)よりも関係が低い。
【0070】
上記発明から派生したアミノ酸配列の全体的関連性および報告された脂肪酸デサチュラーゼは限られており、より重要な同一性は上記比較中のより短いアミノ酸配列長(stretches)に観察される。これらの結果は658−75中のT−DNAが脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の正常な発現を妨害することを確認するものであった。
【0071】
ホモ接合性突然変異体658−75系の脂肪酸表現型に基づき、配列番号1はデルタ−12デサチュラーゼをコードすると結論した。さらに、それはミクロソームデルタ−12デサチュラーゼであり、クロロプラストのデルタ−12デサチュラーゼではないと結論した。なぜならば:a)突然変異体の表現型は種子の中で強力に発現するが、658−75系の葉ではあるとしてもわずかに発現するだけであり、そしてb)デルタ−12デサチュラーゼポリペプチドは、ミクロソームおよびプラスチドデルタ−15デサチュラーゼポリペプチド[国際特許出願第9311245号明細書]と比較することにより、核がコードするプラスチドデサチュラーゼについて期待される一時的なペプチドのN−末端ひろがり(extension)を持たなかったからである。
【0072】
プラスミドp92103は1992年10月16日にメリーランド州、ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクションにブタペスト条約に基づき寄託され、寄託番号ATCC69095を有する。
【0073】
<デルタ−12脂肪酸デサチュラーゼの突然変異を相補するためのアラビドプシス(Arab
idopsis)Fad2−1突然変異体でのミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼの発現>
配列番号1(アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼcDNA)の同一性を確認するために、配列番号1を含んで成るキメラ遺伝子をミクロソームデルタ−12脂肪デサチュラーゼが影響を受けているアラビドプシス(Arabidopsis)突然変異体中に形質転換した。このために、約1.4kbのEcoRI断片(cDNA(配列番号1)を含む)をプラスミドp92103から単離し、そしてpGA748ベクターにサブ−クローン化し[Anら、(1988)バイナリーベクター(Binary Vector):植物分子生物学マニュアル(Plant MolecularBiology Manual)Gelvin,S.Bら編集、クルワー アカデミック プレス(Kluwer Academic Press)]、これはあらかじめEcoRI制限酵素で直線化したものであった。生成したバイナリープラスミドの1つ(pGA−Fad2と命名)で、cDNAがベクターのCaMV35Sプロモーターの後部でセンス方向に位置し、構成的発現を提供した。
【0074】
バイナリーベクターpGA−Fad2を凍結/融解法[Holstersら、(1978)Mol.Gen.Genet.163:181-187]により、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)R1000株(アグロバクテリウム リゾジーンズ(Agrobacterium rhizogenes)からのRiプラスミドpRiA4b[Mooreら、(1979)プラスミド2:617-626]を持つ)中に形質転換し、形質転換体R1000/pGA-Fad2を生成した。
【0075】
アグロバクテリウムR1000株およびR1000/pGA-Fad2をアラビドプシス(Arabidopsis)突然変異体fad2−1を形質転換するために使用し[Miguel,M.& Browse,J.(1992)Journal of Biological Chemistry267:1502-1509]、そしてR1000株を野生型アラビドプシス(Arabidopsis)を形質転換するために使用した。植物の若いボルト(bolt)を滅菌し、単一の節が各エクスプラントに存在するように切断した。エクスプラントをアグロバクテリアで接菌し、そして25℃の暗室中で、薬剤−無しのMS最少有機物培地中(30g/Lのシュクロースを含有する(ギブコ:Gibco))でインキュベーションした。4日後、エクスプラントを新しいMS培地(500mg/Lのセホタキシム(cefotaxime)および250mg/mlのカルベニシリンをアグロバクテリウム(Agrobacterium)のカウンターセレクションのために含有する)に移した。5日後、根毛がR1000/pGA-Fad2から発生し、形質転換を摘出し、50mg/mlのカナマイシンを含有する同培地に移した。脂肪酸メチルエステルを5−10mmの根から調製し、この方法は本質的にはBrowseら(Anal.Biohcem.(1986)152:141-145)に記載されているものであるが、2.5%HSO(メタノール中)をメチル化試薬として使用し、そして種子のトリグリセリドがメタノリシスするように試料を80℃で1.5時間加熱する点を変更した。結果を表3に表す。根の試料41−46、48−51、58および59はR1000/pGA-Fad2で形質転換したfad2-1植物由来であり:根の試料52、53および57はR1000で形質転換したfad2-1植物由来ならびに対照であり、:根の試料60は野生型アラビドプシス(Arabidopsis)をR1000で形質転換した根の試料、ならびに対照である。
【0076】
【表3】

【0077】
これらの結果は、デルタ−12脂肪酸不飽和化欠失突然変異体アラビドプシス(Arabidopsis)のアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼの発現により、突然変異体に部分的から完全な相補を生じることがてきることを表している。トランスジェニック根のオレイン酸レベルの減少は、18:2および18:3の両レベルの増加によるものである。したがってこの遺伝子の別の脂肪植物中での過剰発現も、特にカノーラにおいては(これはアラビドプシス(Arabidopsis)に近縁であり、そして天然に高レベルの18:1を種子に有する)、高レベルの18:2を生成することが期待され、このことはミクロソームデルタ−15脂肪酸デサチュラーゼが極めて高い18:3を生成するだろうということに関連している。
【0078】
<他の植物種からミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼcDNAを単離するために、アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼcDNAのハイブリダイゼーションプローブとしての使用>
デルタ−12デサチュラーゼ配列が種の間で保存されるという証拠は、pSF2からのアラビドプシス(Arabidopsis)cDNA挿入物をハイブリダイゼーションプローブとして使用してブラッシカ ナプス(Brassica napus)および大豆由来の関連配列をクローン化ことにより提供された。さらに、トウモロコシおよびカスター豆ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼを、ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼの保存領域に対して作成されたプライマーを使用してPCRにより単離した。
【0079】
<種子ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子cDNAのクローニング>
種子ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子cDNAクローニングのために、pSF2bからのcDNA挿入物を、pSF2bをEcoRIで消化し、そして1.2kbの挿入物をゲル電気泳動により精製して単離した。この1.2kb断片を放射線標識して、授粉20−21日後に発生したブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子からのpolyA mRNAで作成したラムダファージcDNAライブラリーをスクリーニングするためのハイブリダイゼーションプローブとして使用した。約600,000個のプラークを、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(50mM Tris pH7.6、6XSSC、5Xデンハーツ溶液、0.5%SDS、100ug変性ウシ胸腺DNA、そして50℃)でスクリーニングし、そして洗浄(2XSSC、0.5%SDS、室温でそれぞれ15分間を2回、そして次に0.2XSSC、0.5%SDS、室温でそれぞれ15分間を2回、そして0.2XSSC、0.5%SDS、50℃でそれぞれ15分間を2回)した。10個の強く−ハイブリダイズしたファージをプラーク−精製し、そしてcDNA挿入物の大きさを、ファージを鋳型とし、そしてT3/T7オリゴマーをプライマーとして使用して、挿入物をPCR増幅することにより測定した。これらの中の2つ(165Dおよび165F)がそれぞれ1.6kbおよび1.2kbのPCR増幅挿入物を有し、そして上記のようにこれらのファージを、ファジェミド(phagemid)を切り出すためにも使用した。ファージ165D由来のファジェミドはpCF2−165Dと命名されたが、これは1本鎖が完全に配列決定された1.5kbの挿入物を含んでいた。配列番号3はデルタ−12デサチュラーゼをコードするプラスミドpCF2−165D中のブラッシカ ナプス(Brassica napus)cDNAの1394塩基対の5’−3’ヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド99−101およびヌクレオチド1248−1250は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド99−1250)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−98およびヌクレオチド1251−1394は、それぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。配列番号3の読み取り枠から派生した383アミノ酸タンパク質配列を配列番号4に表す。確認するために他の鎖は容易に配列決定でき、配列番号1および3、ならびに配列番号2および4の比較により、たとえ起こり得る配列誤差を考慮しても、ヌクレオチドおよびアミノ酸レベルで約84%の全相同性が示され、このことはpCF2−165Dがデルタ−12デサチュラーゼをコードするブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子cDNAであることを確認するものであった。プラスミドpCF2−165Dは1992年10月16日に、メリーランド州ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクションにプタペスト条約に基づき寄託され、受託番号ATCC69094を有する。
【0080】
<種子ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードする大豆(グリシン マックス:Glycine max)cDNAのクローニング>
発生している大豆種子から単離したpolyA mRNAに対してcDNAライブラリーを作成し、上記のようにスクリーニングした。上記のように調製したpSF2bからの放射線標識プローブを加え、50℃で18時間ハイブリダイズさせた。プローブを上記のように洗浄した。フィルターのオートラジオグラフィーでは、14個の強く−ハイブリダイズしているプラーク−および多くの弱くハイブリダイズしているプラークが示された。14個の強くハイブリダイズした中の6個を上記のようにプラーク精製し、そしてcDNA挿入物の大きさを、ファージを鋳型とし、そしてT3/T7オリゴマーをプライマーとして使用して、挿入物をPCR増幅することにより測定した。これらのファージの1つ(169K)が1.5kbの大きさの挿入物を有し、そして上記のようにこれらのファージを、ファジェミドを切り出すためにも使用した。ファージ169K由来のファジェミドはpSF2−169Kと命名されたが、これは2本鎖が完全に配列決定された1.5kbの挿入物を含んでいた。配列番号5はデルタ−12デサチュラーゼをコードするプラスミドpCF2−169K中の大豆(グリシン マックス:Glycine max)cDNAの1473塩基対の5’−3’ヌクレオチド配列を表す。ヌクレオチド108−110およびヌクレオチド1245−1247は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド108−1247)の推定上の開始コドンおよび終止コドンである。ヌクレオチド1−107およびヌクレオチド1248−1462は、それぞれ5’および3’非翻訳ヌクレオチドである。配列番号5の読み取り枠から派生した380アミノ酸タンパク質配列を配列番号6に表す。配列番号1および5、ならびに配列番号2および6の比較により、たとえ起こり得る配列誤差を考慮しても、ヌクレオチドレベルで65%の全相同性を、そしてアミノ酸レベルでの70%の全相同性が示され、このことはpSF2−169Kがデルタ−12デサチュラーゼをコードする大豆種子cDNAであることを確認するものであった。配列番号1、配列番号3および配列番号5の比較、ならびにPSF2−169Kの挿入物を包含する(センスまたはアンチセンス方向に、適当な調節配列とともに)キメラ遺伝子を使用することにより生産されたトランスジェニック植物の表現型を分析することにより、さらにこのクローンに関する知見を得ることができる。プラスミドpSF2−169Kは1992年10月16日に、メリーランド州ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクションにプタペスト条約に基づき寄託され、寄託番号ATCC69092を有する。
【0081】
<種子ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするトウモロコシ(ゼア メイズ:Zea mays)cDNAのクローニング>
トウモロコシミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼcDNAはPCR法を使用して単離した。このためLambda ZapIIベクター中に、発生しているトウモロコシ胚からpolyA RNAに対してcDNAライブラリーを作成した。このライブラリーはPCRの鋳型として縮退オリゴマーNS3(配列番号13)およびRB5A/B(配列番号16および17)の組をそれぞれセンスおよびアンチセンスプライマーとして使用した。NS3およびRB5A/Bは、それぞれ配列番号2のアミノ酸101−109および318−326の広がり(Streches)に対応し、これらはほとんどのミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ中(例えば配列番号2、4、6、8)に保存されている。PCRはPCRキット(パーキン−エルマー:Perkin-Elmer)を使用して、94℃で1秒、45℃で1分そして55℃で2分の40回循環した。PCR生成物のアガロースゲルでの分析では、期待された大きさ(720bp)の生成物の存在が示され、これはセンスまたはアンチセンスプライマーのいずれかだけを含む対照反応中には存在しなかった。断片をゲル精製し、そして上記のように60℃でトウモロコシcDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用した。1つの陽性にハイブリダイズしたプラークを精製し、そしてそのcDNAで部分配列決定することにより、これはミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列であるが3’末端が短縮されていることが示された。部分的デサチュラーゼをコードするこのcDNA挿入物をゲル単離し、そして再度トウモロコシcDNAライブラリーを釣り上げるために使用した。幾つかの陽性プラークを回収し、特性を決定した。DNA配列分析では、すべてのこれらのクローンが5’または3’末端の長さが異なる同じ配列を表すと思われることが明らかになった。最長の挿入物を含有するクローン(pFad2#1と命名した)を、完全に配列決定した。cDNAの全長は1790bp(配列番号7)であり、388アミノ酸のポリペプチドをコードする165−1328bpのヌクレオチド由来の読み取り枠を含んで成るものである。派生したポリペプチド(配列番号8)のアミノ酸配列は、それぞれアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ、アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−15デサチュラーゼ、およびアラビドプシス(Arabidopsis)プラスチドデルタ−15デサチュラーゼと71%、40%および38%の同一性を共有した。さらにこれはN−末端アミノ酸の広がり(extension)を欠き、これはプラスチド酵素であることを示すものである。これらの考察に基づき、これはミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードすると結論した。
【0082】
<カスター豆種子からデルタ−12ミクロソーム脂肪酸デサチュラーゼおよびデサチュラーゼ−関連酵素をコードするcDNAの単離>
ポリソームのmRNAを第I−II期(5−10DAP)のカスター豆および第IV−V期(20−25DAP)のカスター豆から単離した。10ngの各mRNAをパーキン−エルマーRT−PCRキットを使用する別個のRT−PCR反応に使用した。逆転写酵素反応はランダムヘキサマーで釣り上げ、そしてPCR反応は縮退デルタ−12デサチュラーゼプライマー(NS3およびNS9:配列番号13および14)で行った。PCR反応のアニーリング−伸長温度は50℃であった。約700bpのDNA断片を第I−II期および第IV−V期の両方のmRNAから増幅した。1つの反応からの増幅DNA断片をゲル精製し、pGEM−TベクターにプロメガpGEM−T PCRクローニングキットを使用してクローン化し、プラスミドpRF2−1Cを作成した。pRF2−1C中の700bpの挿入物は上記のようにシークエンシングされ、その結果のDNA配列を配列番号9に示す。配列番号9中のDNAは、配列番号2に記載されたアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼのアミノ酸135−353と81%の同一性(90%の類似性)を有する219アミノ酸(配列番号10)をコードする読み取り枠を含む。したがってpRF2−1C中のcDNA挿入物はカスター豆種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードする676bpの完全長cDNAである。完全長カスター豆種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAはカスター種子cDNAライブラリーを60℃で、上記例に記載されたように標識したpRF2−1Cの挿入物でスクリーニングすることにより単離できる。またpRF2−1Cの挿入物はカスター豆ライブラリーを低温でスクリーニングしてデルタ−12デサチュラーゼ−関連配列(デルタ−12ヒドロキシラーゼのような)を単離するために使用できる。
【0083】
発生中のカスター豆(第IV−V期、20−25DAP)から単離したpolyAmRNAに対して作成されたcDNAライブラリーを上記のようにスクリーニングした。pSF2bまたはpRF2−1Cから上記のように調製した放射線標識プローブを加え、そして50℃で18時間ハイブリダイズさせた。フィルターを上記に記載されているように洗浄した。フィルターのオートラジオグラフィーでは、多くのハイブリダイズプラークがあり、これらは強くハイブリダイズしているか、または弱くハイブリダイズしていた。3つの強くハイブリダイズしているプラークを(190A−41、190A−42および190A−44)ならびに3つの弱くハイブリダイズしているプラーク(190B−41、190b−43および197c−42)を上記のようにプラーク精製した。精製したファージのcDNA挿入物の大きさは、挿入物のpCR増幅により、ファージを鋳型として、そしてラムダ−gt11オリゴマー(クローンテック:Clontech ラムダ−gt11アンプリマー:Amplimer)をプライマーとして使用して行った。増幅ファージのPCRで増幅した挿入物を、すでにEcoRIで切断され、クレノウで満たされたpBluescript(ファルマシア:Pharmacia)(Sambrookら(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーアプローチ、第二版、(1989)コールドスプリングハーバー出版編集)中にサブ−クローン化した。生成したプラスミドをpRF190a−41、pRF190a−42、pRF190a−44、pRF190b−41、pRF190b−43およびpRF197c−42と呼ぶ。pRF197b−42の挿入物が約1.5kbであることを除いて、すべての挿入物は約1.1kbであった。プラスミド中の挿入物を上記のように配列決定した。pRF190b−43は読み取り枠を含まず、同定しなかった。pRF190a−41、pRF190a−42、pRF190a−44およびpRF190b−41中の挿入物は同一であった。pRF197c−42中の挿入物はpRF190a−41、pRF190a−42、pRF190a−44およびpRF190b−41挿入物のすべてのヌクレオチドに加えてさらに約400bpを含んだ。したがってpRF197c−42はpRF190a−41、pRF190a−42、pRF190a−44およびpRF190b−41の挿入物のより長い変更物であり、すべては同じ完全長のmRNAに由来すると推定された。プラスミドpRF197c−42中の挿入物の完全なcDNA配列を配列番号11に示す。配列番号11の予想されるアミノ酸配列(配列番号12に示す)は、上記カスターミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ(配列番号10)とは78.5%の同一性(90%の類似性)であり、そして配列番号2のアラビドプシス(Arabidopsis)デルタ−12デサチュラーゼアミノ酸配列とは66%の同一性(80%の類似性)である。このような類似性はpRF197c−42がミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ関連酵素(デルタ−12ヒドロキシラーゼのような)をコードするカスター豆種子cDNAであることを確認するものである。pRF2−1CおよびpRF197c−42用の特異的なPCRプライマーを作成した。pRF2−1c用は、上流プライマーが配列番号9中のcDNA配列の180−197塩基であった。pRF197c−42用は、上流プライマーが配列番号11のcDNA配列の717−743塩基であった。共通の下流プライマーを配列番号9に記載された配列の463−478ヌクレオチドの完全な相補鎖に対応して作成された。RT−PCRをランダムヘキサマーおよび上記プライマーを用いて行い、pRF2−1Cに含まれるcDNAがカスター豆種子の第I−II期および第IV−V期の両方で発現するが、プラスミドpRF197c−42に含まれるcDNAはカスター豆種子の第IV−V期のみに発現し、すなわちこれは組織中でリシノール酸が活発に合成されている時のみに発現する。したがってこのcDNAはデルタ−12ヒドロキシラーゼをコードすることができる。
【0084】
配列番号2のアミノ酸311−353に対応する高度保存領域を比較するために、配列番号10および配列番号12に記載された2つのカスター配列から派生した十分なアミノ酸配列がある。配列番号2、4、6、8および10を上記Hein法により整列させると、コンセンサス配列はちょうど配列番号2のアミノ酸311−353に対応する。上記の種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼのすべては、この領域にわたってコンセンサスと高度な同一性を有し、すなわちそれはアラビドプシス(Arabidopsis)(100%同一性)、大豆(90%同一性)、トウモロコシ(95%同一性)、カノーラ(93%同一性)、そしてカスター豆配列の1つ(pRF2−1C)(100同一性)である。しかし他のカスター豆種子デルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ関連配列(pRF197c−42)は、コンセンサスとの同一性は低く、すなわちpRF197c−42中の挿入物のアミノ酸配列(配列番号12)については81%である。したがってpRF197c−42中の挿入物はミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードすることは可能であり続けるが、この考察はこれがデサチュラーゼ関連配列、すなわちデルタ−12ヒドロキシラーゼをコードするという仮説も支持する。
【0085】
カスター豆種子デルタ−12ヒドロキシラーゼをクローニングするためのさらなる方法は、特異なcDNA群のスクリーニングである。発生中のカスター豆の内胚乳(第IV−V期、20−25DAP)から単離したポリソームmRNAに対して作成されたラムダ−Zap(ストラタジーン)cDNAライブラリーを、発生中のカスター豆の内胚乳(第I−II期、5−10DAP)から単離したポリソームmRNAから作成された32P−標識cDNA、および発生中のカスター豆の内胚乳(第IV−V期、20−25DAP)から単離したポリソームmRNAから作成された32P−標識cDNAでスクリーニングした。個々のプラークを単離するようにライブラリーを137mmのプレートあたり2000プラーク密度でスクリーニングした。約60,000プラークがスクリーニングされ、後期(第IV/V期)cDNAとハイブリダイズするが、前期(第I/II期)とはしないプラーク(これは200プラークあたり約1に相当した)をプールした。
【0086】
様々に発現したcDNAのライブラリーを、上記カスターデルタ−12デサチュラーゼcDNAおよび/またはデルタ−12デサチュラーゼの中で保存されたアミノ配列に基づく縮退オリゴヌクレオチドでスクリーニングして、関連カスターcDNA(デルタ−12オレイン酸塩ヒドロキシラーゼ酵素コードするcDNAを含む)を単離できる。これらアミノ酸配列の保存領域は、制限するわけではないが配列番号2に記載されたアミノ酸配列のアミノ酸101−109、137−145および318−327を含むか、あるいは以下の表7に記載の任意の配列を含むことができる。そのようなオリゴマーの例は、配列番号13、14、16および17である。プラスミドpCF2−197c中の挿入物をEcoRIで切断し、ベクター配列を取り出し、ゲル電気泳動で精製し、そして上記のように放射線標識することができる。上記保存アミノ酸配列に基づく縮退オリゴマーは、上記のように32Pで標識できる。発生中の内胚乳の特異ライブラリーからクローン化されたcDNAで、初期のmRNAプローブとはハイブリダイズしないが、後期mRNAプローブおよびカスターデルタ−12デサチュラーゼcDNAまたはデルタ−12デサチュラーゼに基づくオリゴマーとハイブリダイズするものは、カスターデルタ−12ヒドロキシラーゼであろう。推定のヒドロキシラーゼcDNAを含有するpBluescriptベクターを切り出し、その挿入物を上記のように直接シークエンシングすることができる。
【0087】
pRF2−1CおよびpRF197c−42のようなクローン、ならびに特異スクリーニングからの他のクローン(これはそのDNA配列に基づく)は、カスター豆種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼとの関連が低く、上記または国際特許出願第9311245に記載された周知の脂肪酸デサチュラーゼではなく、例えば大豆胚または別の適当な植物組織あるいは微生物(例えば酵母など)中で発現することができるが、これは適当な発現ベクターおよび形質転換法を使用して、通常リシノール酸を含有しない。カスターcDNAを発現している形質転換組織(1つまたは複数)中の新規リシノール酸の存在を、カスターcDNAの同一性をオレイン酸塩ヒドロキシラーゼを、コードするDNAとして確認する。
【0088】
<種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ間の配列比較>
ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードする完全長ヌクレオチド配列のコーディング領域間の全同一性の割合を、Needlemanら(J.Mol.Biol.(1970)48:443-453)の方法により、5.0および0.3のギャップ重量およびギャップ長の値を使用して、それらを整列することにより決定した(表4)。ここでa2、c2、s2、z2およびdesAは、それぞれアラビドプシス(Arabidopsis)(配列番号1)、ブラッシカ ナプス(Brassica napus)(配列番号3)、大豆(配列番号5)トウモロコシ(配列番号7)およびラン色細菌desA由来のミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列を言い、一方r2はカスター豆由来のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素を言う(配列番号12)。
【0089】
【表4】

【0090】
Needlemanら(J.Mol.Biol.(1970)48:443-453)の方法により、それぞれ3.0および0.1のギャップ重量およびギャップ長の値の使用による整合性により決定した本発明のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素(すなわち配列番号2、4、6、8および12)の推定されるアミノ酸配列間の全関連性を、表5に表す。ここでa2、c2、s2、z2およびdesAは、それぞれアラビドプシス(Arabidopsis)(配列番号2)、ブラッシカ ナプス(Brassica napus)(配列番号4)、大豆(配列番号6)トウモロコシ(配列番号8)およびラン色細菌desA由来のミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼを言い、一方r2はカスター豆由来のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素を言う(配列番号12)。酵素間の関連性を、全同一性の割合/全類似性の割合で表す。
【0091】
【表5】

【0092】
ブラッシカ ナプス(Brassica napus)、大豆、カスターおよびトウモロコシ酵素とアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ間のアミノ酸レベルでの高度な全同一性(60%以上)、ならびに核にコードされたクロロプラストに期待される一時的なペプチドのN−末端のひろがり(extension)の欠失から、配列番号4、6、8、10および12はミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ関連酵素をコードすると結論する。さらにこれは生物的機能からも確認されるだろう。すなわち上記配列をセンスまたはアンチセンス方向に包含するキメラ遺伝子を使用して、適当な調節配列で作成したトランスジェニック植物または他の生物の表現型を分析することによる。したがって同じまたは異なる高等植物種、特に油−生産種由来の相同的な脂肪酸デサチュラーゼのcDNAまたは遺伝子を単離することができる。さらにこれらの比較に基づき、すべての高等植物種由来の高等植物ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼは、60%以上の同一性を表し、配列番号1、3、5、7、9および11を使用して、配列依存的な手法により相同的な脂肪酸デサチュラーゼ配列を容易に単離できると期待する。 上記整合法を使用した選択した植物デサチュラーゼ間のアミノ酸レベルでの全同一性の割合を表6に示す。
【0093】
【表6】

【0094】
表6では、a2、a3、ad、c3、cDおよびS3は、それぞれ配列番号2、アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−15デサチュラーゼ、アラビドプシス(Arabidopsis)プラスチドデルタ−15デサチュラーゼ、カノーラミクロソームデルタ−15デサチュラーゼ、カノーラプラスチドデルタ−15デサチュラーゼ、および大豆ミクロソームデルタ−15デサチュラーゼを言う。これらの比較に基づき、ミクロソームおよびプラスチドの両方の型のデルタ−15デサチュラーゼは同じ植物種からであってもアミノ酸レベルで65%以上の同一性を有する。上記に基づき、すべての高等植物種由来のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼは同様なレベルの同一性(すなわちアミノ酸レベルで60%以上)を示し、そして配列番号1、3、5、7、および9も相同的なデルタ−12デサチュラーゼ配列およびおそらく脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素の配列(オレイン酸塩ヒドロキシラーゼのような)(これは50%以上のアミノ酸相同性を有する)を単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用できると期待される。
【0095】
植物ミクロソーム脂肪酸デルタ−12デサチュラーゼ[配列番号2、4、6および8]ならびに植物デルタ−15デサチュラーゼ[アラビドプシス(Arabidopsis)およびブラッシカ ナプス(Brassica napus)、国際特許出願第9311245号明細書由来のミクロソームおよびプラスチドデルタ−15デサチュラーゼ]のタンパク質配列の同様な整合性から、種々のデサチュラーゼ間に保存されたアミノ酸配列の同一性を表すことができる。
【0096】
【表7】

【0097】
表7は保存アミノ酸配列の12の領域(A−Lと命名、カラム1)を表し、その配列番号2の中での位置をカラム2に表す。植物デルタ−12脂肪酸デサチュラーゼおよび植物デルタ−15脂肪酸デサチュラーゼ中のこれらの領域については保存配列をカラム3および4にそれぞれ示し;アミノ酸は標準的な略号により表し、下線を付したアミノ酸はデルタ−12およびデルタ−15デサチュラーゼ間に保存されており、そしてカッコの中のアミノ酸はその位置で見られた置換を表す。これら領域のコンセンサス配列をカラム5に示す。これらの短い保存アミノ酸および関連する位置は、さらに単離したcDNAが脂肪酸デサチュラーゼをコードすることを確認するものである。
【0098】
<相同の、および異質の脂肪酸デサチュラーゼおよびデサチュラーゼ−様酵素をコードするヌクレオチド配列の単離>
本発明の断片を、本発明の断片として同じ種由来の、あるいは異なる種由来の相同の、および異質の脂肪酸デサチュラーゼのcDNAおよび遺伝子を単離するために使用できる。配列依存的手法を使用する相同的遺伝子の単離は、当該技術分野で周知であり、アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNA配列がブラッシカ ナプス(Brassica napus)、大豆、トウモロコシおよびカスター豆由来の関連する脂肪酸デサチュラーゼのcDNAを単離するために使用できることを実証した。
【0099】
さらに重要なことは配列番号1、3、5、7および9またはそれより小さい、より保存された領域を含むものを新規脂肪酸デサチュラーゼおよび脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素を単離するために使用できる。
【0100】
本発明の特別な態様では、種々のデサチュラーゼ間に保存された本発明の核酸断片の領域は、相同の、または異質な脂肪酸デサチュラーゼcDNAまたは遺伝子をコードする核酸断片を単離するために、配列依存的な手法の使用において縮退オリゴマーの混合物を設計するために当業者により使用されることができる。例えばポリメラーゼ連鎖反応では(Innisら、編集(1990)PCR法:方法および応用へのガイド(A Guide to Methods and Applications)、アカデミックプレス、サンディエゴ)、2つの短い本発明の断片を、DNAまたはRNAからのより長い脂肪酸デサチュラーゼDNA断片を増幅するために使用できる。ポリメラーゼ連鎖反応は、本発明の断片に基づく1つのプライマーでクローン化したヌクレオチド配列のライブラリーについて行い、そしてもう一方はpolyAテイルまたはベクター配列のいずれかについても行うこともできる。これらのオリゴマーは独自の配列または本発明の核酸断片由来の縮退配列であることができる。次に本方法により生成した相同的な脂肪酸デサチュラーゼDNAのより長いものを、次にアラビドプシス(Arabidopsis)または他の種由来の関連する脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子またはcDNAを単離するためのプローブとして使用し、そして既知のデサチュラーゼ配列の特異スクリーニングおよびヌクレオチド配列決定法で実質的に同定することができる。ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応のためのオリゴマーの設計(デオキシイノシンを使用する長いオリゴマーを含む)および“ゲッセマーズ(guessmers)”は、当業者に周知であり、Sambrookら、(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、第二版、(1989)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に考察されている。ラン色細菌のデルタ−12デサチュラーゼ(Wadaら、Nature(1990)347:200-203)および植物デルタ−15デサチュラーゼ[国際特許出願公開第9311245号明細書]の間に保存されたアミノ酸配列の短い広がり(stretches)は、すでに縮退した、かつ/またはデオキシイノシンを使用したオリゴヌクレオチドを作成するために使用された。ラン色細菌のデルタ−12デサチュラーゼおよび高等植物デルタ−15デサチュラーゼ間に保存されている12アミノ酸に広がるように作成されたこれらのオリゴマーの1組は、プラスチドデルタ−12デサチュラーゼcDNAをクローニングすることに成功した;これらの植物デサチュラーゼは、ラン色細菌のデルタ−12デサチュラーゼに対し50%より高い同一性を有する。これらのオリゴヌクレオチドの中には、植物由来のpolyARNAを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物を作成するためにプライマーとして使用されるものもあった。しかしオリゴヌクレオチドおよびPCR生成物のいずれも、放射線標識ハイブリダイゼーションプローブとしてミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするヌクレオチド配列を単離するのに成功しなかった。したがって予想どおりアラビドプシス(Arabidopsis)デルタ−12およびアラビドプシス(Arabidopsis)デルタ−15デサチュラーゼ間に保存された4つ以上のアミノ酸の広がりはいずれもラン色細菌デサチュラーゼ中のものとは同一ではなく、これはちょうどアラビドプシス(Arabidopsis)デルタ−15とラン色細菌デサチュラーゼ間に保存された4つ以上のアミノ酸の広がりが配列番号2のものとは同一でないことと同じである。本発明とデルタ−15デサチュラーゼ間に保存されたアミノ酸の広がりは、今、他のデサチュラーゼおよびデサチュラーゼ関連酵素をコードする配列を単離するために使用されるオリゴマーの設計を可能にする。例えばデルタ−12デサチュラーゼとデルタ−15デサチュラーゼとの間のアミノ酸の保存された広がり(表7に示す)は、ハイブリダイゼーションのための長いオリゴマーを設計するために有用であり、ならびにポリメラーゼ連鎖反応には短いプライマーとして使用するのに有用である。これに関して、デルタ−12とデルタ−15デサチュラーゼとの間の保存配列(表7に示す)は特に有用である。当業者に知られている、例えばLys/Arg、Glu/Asp、Ile/Val/Leu/Met、Ala/Gly、Gln/AsnおよびSer/Thrのようなコンセンサス配列も保存的置換として考慮されるだろう。4アミノ酸長のような短いアミノ酸配列はPCRで成功裏に使用できる[Nunbergら、(1989)Journal of Virology 63:3240-3249]。デルタ−12デサチュラーゼ間(配列番号2、4、6、8および10)に保存されたアミノ酸配列は、脂肪酸デサチュラーゼおよびデルタ−12デサチュラーゼにより関連していると思われる脂肪酸デサチュラーゼ−関連酵素(カスター豆由来のオレエートヒドロキシラーゼのような)を単離するための配列−依存的な手法にも使用できる。カラム3(表7)の保存配列はデルタ−15デサチュラーゼ(カラム4、表7)間にも良く保存されているので特に有用である。
【0101】
多様なデサチュラーゼから保存アミノ酸配列を決定することは、新規脂肪酸デサチュラーゼ[真菌、藻類(長鎖n−3脂肪酸の不飽和化に関与するデサチュラーゼを含む)、およびラン色細菌、ならびに他の生物由来の他の膜−結合デサチュラーゼを含む]を非−植物源から単離する助けとな得るより多くの、より良いコンセンサス配列を同定可能にするだろう。
【0102】
本発明を使用して単離できた脂肪酸デサチュラーゼまたはデサチュラーゼ−関連酵素をコードする多様なヌクレオチド断片の機能は、センスまたはアンチセンス方向に植物発現に必要な適当な制御配列に連結した単離した配列で植物を形質転換し、生成したトランスジェニック植物の脂肪酸表現型を観察すことにより確認できる。形質転換に好ましい標的植物は、目的がアンチセンス阻害またはコーサプレッションによる対応する内因性遺伝子の抑制を得ることであるならば、単離したヌクレオチド断片の起源と同じである。単離した核酸配列断片の発現または過剰発現に使用する好適な標的植物は、野生型植物または不飽和化反応に既知の突然変異をもつ植物であり、例えばアラビドプシス(Arabidopsis)突然変異体fadA、fadB、fadC、fadD、fad2およびfad3;デルタ−15不飽和化欠失のアマ突然変異体;またはデルタ−12不飽和化欠失のヒマワリ突然変異体などである。あるいは単離した核酸断片の機能は他の生物(核酸配列断片および適当な調節配列を含有するキメラ遺伝子を持つ酵母、ラン色細菌のような)の形質転換介して、その後に脂肪酸組成および/または酵素活性を測定することができる。
【0103】
<トランスジェニック種での脂肪酸デサチュラーゼ酵素の過剰発現>
機能的な脂肪酸デサチュラーゼ(1つまたは複数)をコードし、適当な調節配列をもつ本発明の核酸断片(1つまたは複数)は、トランスジェニック生物で酵素(1つまたは複数)の過剰発現に使用することができる。そのような発現または過剰発現の例はオレエート不飽和化を欠くアラビドプシス(Arabidopsis)突然変異体の形質転換により実証される。そのような組換えDNA構築物は、宿主生物と同じまたは異なる種から単離された天然の脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子またはキメラ脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を含んでもよい。脂肪酸デサチュラーゼ(1つまたは複数)の過剰発現には、コーサプレッションのようなものを減少するために導入する遺伝子は異なる種由来のものが好ましい。例えば大豆、菜種または他のポリ不飽和化脂肪酸を生産する油−生産種のデルタ−12デサチュラーゼ過剰発現はp92103,pCF2−165DおよびpSF2−169Kに見いだされる完全長cDNA由来のRNAを発現させることにより達成できる。デルタ−12デサチュラーゼを過剰発現しているトランスジェニック系は、デルタ−15デサチュラーゼを過剰発現している系と交配させると18:3の超高レベルを生じる。同様にアラビドプシス(Arabidopsis)、菜種および大豆由来の脂肪酸デサチュラーゼをコードする単離した核酸断片は、当業者に使用されて、もし未だ得られていないならば他の実質的に相同的な完全長cDNAならびに対応する遺伝子を本発明の断片として得るために使用することができる。これらは次に植物中で対応するデサチュラーゼを過剰発現するために使用できる。当業者は、Sambrookら(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、第二版(1989)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に記載されているように制限エンドヌクレアーゼの部位を使用および/または作成することにより、本発明の断片(1つまたは複数)からコーディング配列(1つまたは複数)を単離することができる。
【0104】
本発明の特に有用な応用は、種子油中に極めて高いオレエートレベルを含有する植物突然変異体の作物学的性能を補修することである。アラビドプシス(Arabidopsis)では、ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼの突然変異に起因するホスファチジルコリン中のリノレートの減少が、低温生存能に影響した[Miguel,M.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6208-6212]。さらに種子中に極めて高い(>80%)レベルのオレエートを含むカノーラ植物の作物学的機能の低さは、根および葉のホスファチジルコリン中のリノレートレベルを減少させるミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ遺伝子の突然変異に起因するという証拠がある。すなわち突然変異は種子−特異的ではない。したがって、種子の油中に超高いレベルのオレエートがある脂質種子の突然変異体のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ活性の根および/または葉に特異的な発現(すなわち、種子では発現しない)は、種子油中に超高いレベルのオレエートを持つ作物学的に改良された突然変異植物を生むだろう。
【0105】
<アンチセンスRNAの使用による植物標的遺伝子の阻害>
アンチセンスRNAは植物の標的遺伝子を組織−特異的な様式で阻害するために使用された(van der Krolら、Biotechniques(1988)6:958-976)。アンチセンス阻害は全cDNA配列(Sheehyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85:8805-8809)ならびに部分的なcDNA配列(Cannonら、Plant Molec.Biol.(1990)15:39-47)を使用して示された。3’非−コーディング配列(Ch'ngら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86:10006-10010)および1.87kb cDNAのわずか41塩基−対を含む5’コーディング配列の断片(Cannonら、Plant Molec.Biol.(1990)15:39-47)が、アンチセンス阻害に重要な役割を果たすことができるという証拠もある。
【0106】
脂肪酸デサチュラーゼのアンチセンス阻害の使用には、標的植物の標的組織中に発現する1つ以上の標的脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子に関して転写された配列の単離が必要であるかもしれない。より高度に発現している遺伝子がアンチセンス阻害の最高の標的である。これらの遺伝子は当業者には周知のmRNAのレベルの定量分析または核ラン−オフ転写のような技術により遺伝子の転写レベルを測定することにより同定できる。
【0107】
全大豆ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAを、大豆b−コングリシニン、大豆KTi3および豆ファセロリンプロモーターに関してアンチセンスの方向にクローン化し、そしてこのキメラ遺伝子をすでに大豆接合胚について良いモデル系を与えると示された大豆体胚中に形質転換し、そしてその種子組成を示す(表11)。形質転換した体胚はリノレート生合成の抑制を示した。同様に全ブラッシカ ナプス(Brassica napus)のミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAを、菜種ナピンプロモーターに関してアンチセンスの方向でクローン化し、そしてこのキメラ遺伝子をビー.ナプス(B.napus)中に形質転換した。形質転換したビー.ナプス(B.napus)植物の種子はリノレートの生合成の抑制を示した。したがってポリ不飽和脂肪酸レベルの変化を生じる油−生産種子(トウモロコシ、ブラッシカ ナプス(Brassica napus)および大豆を含む)中のデルタ−12デサチュラーゼのアンチセンス阻害は、ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードする全または部分的cDNA由来のアンチセンスRNAの発現により達成できる。
【0108】
<コーサプレッションによる植物標的遺伝子の抑制>
コーサプレッションの現象も組織−特異的な様式で植物標的遺伝子を阻害するために使用された。全cDNA配列(Napoliら、The Plant Cell(1990)2:279-289;van der Krolら、The Plant Cell(1990)2:291-299)ならびに部分的cDNA配列(1770bp cDNAの730bp)(Smithら、Mol.Gen.Genetics(1990)224:477-481)を使用する内因性遺伝子のコーサプレッションは知られている。
【0109】
脂肪酸デサチュラーゼまたはその部分をコードする本発明の核酸断片は、適当な調節配列とともに脂肪酸デサチュラーゼのレベルを減少するために使用でき、これにより実質的に導入した核酸配列断片に相同的な内因性遺伝子を含むトランスジェニック植物中の脂肪酸組成を変化させることができる。これに必要な実際的な方法は、部分的cDNAも使用できることを除いて、上記の脂肪酸デサチュラーゼ核酸断片の過剰発現の方法と同様である。例えば、ポリ不飽和脂肪酸のレベルの変化を生じるブラッシカ ナプス(Brassica napus)および大豆のデルタ−12デサチュラーゼのコーサプレッションは、pCF2−165DおよびpSF2−165K中のセンス方向に、それぞれ全または部分的種子デルタ−12デサチュラーゼcDNAを発現させることにより行い得る。内因性遺伝子も導入された遺伝子コピーの非−コーディング領域により阻害できる[例えば、Brusslan,J.A.ら、Plant Cell 5:667-677;Matzke,M.A.ら、Plant Molecular Biology 16:821-830]。我々はcDNA(配列番号1)に対応するアラビドプシス(Arabidopsis)遺伝子(配列番号15)を単離できることを示した。当業者はこの遺伝子の周辺をも含むゲノムcDNAを容易に単離し、そしてそのようなトランス遺伝子(transgene)阻害法で、コーディングまたは非コーディング領域を使用することができる。
【0110】
ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ欠失アラビドプシス(Arabidopsis)突然変異体の根および種子中の脂肪酸組成を分析することにより、それらの18:2および16:0レベルの減少が示される(野生型と比較して突然変異種では40%も減少)[MiquelおよびBrowse(1990)、植物脂質生化学、構造および利用(Plant Lipid Biochemistry,Structure,and Utilization)、第456-458頁、Quinn,P.J.およびHarwood,J.L.,編集、ポートランド出版)。16:0レベルの減少も、ビー.ナプス(B.napus)の超高オレエート突然変異体で観察される。したがって前述の配列を使用するアンチセンス阻害またはコーサプレッションに起因するトランスジェニック植物での超高18:1レベルも、16:0のレベルを減少するだろうと思われる。
【0111】
<宿主、プロモーターおよびエンハンサーの選択>
本発明の核酸断片の発現に好適な異質宿主の種類は、真核宿主、特に高等植物の細胞である。高等植物の中でも特に好ましいのは、大豆(グリシン マックス;Glycine max)、菜種(ブラッシカ ナプス:Brassica napus、ビーカンペストリス:B.campestrisを含む)、ヒマワリ(ヘリアンテス アヌス:Helianthus annus)、綿(ゴシッピウム ヒルステム:Gossypium hirsutum)、トウモロコシ(ゼア メイズ:Zea mays)、ココア(セオブローマ カカオ:Theobroma cacao)、ベニバナ(カーサムス チンクトリス:Carthamus tinctorius)、アブラヤシ(エラエイス クイニーンス:Elaeis quineensis) アマ(リナム ウシタチスシム:Linum usitatissimum)およびピーナッツ(アラチス ハイポゲーラ:Arachis hypogaea)である。
【0112】
植物中での発現はそのような植物中で機能する調節配列を使用するであろう。
【0113】
植物中での外来遺伝子の発現は、よく確立されている(De Blaereら、Meth.Enzymol.(1987)153:277-291)。本発明の断片の発現を駆動するために選択されたプロモーターの起源は重要ではないが、ただしプロモーターは所望の宿主組織中で脂肪酸デサチュラーゼの転写可能なmRNAのレベルをそれぞれ増加または減少することにより発明を達成するための十分な転写活性を有する。好ましいプロモーターにはa)カリフラワーモザイクウイルス中の19Sおよび35S転写物を支配するような強力な構成的植物プロモーター(Odellら、Nature(1985)313:810-812;Hullら、Virology(1987)86:482-493)、b)組織−または発生的−(developmentally-)に特異的なプロモーター、およびc)例えば外来遺伝子を発現するためのバクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を使用するような、植物中で工作される転写可能なプロモーター系がある。組織−特異的なプロモーターの例としてはリボース1,5−ビス−リン酸塩カルボキシラーゼの小さいサブユニットの光−誘導性プロモーター(発現が光合成組織中で所望される場合)、メイズ ゼインタンパク質プロモーター(Matzkeら、EMBO J.(1984)3:1525-1532)およびクロロフィルa/b結合タンパク質プロモーター(Lampaら、Nature(1986)316:750-752)。
【0114】
特に好適なプロモーターは種子−特異的発現を可能にするプロモーターである。これは種子が植物油の主要源であり、また種子−特異的発現は非−種子組織に有害な影響の可能性を避けるので特に有用となり得る。種子−特異的プロモーターの例には制限するわけではないが、多くの植物中に種子タンパク質の最高90%を表すことができる種子保存タンパク質のプロモーターである。種子保存タンパク質は厳しく調節されており、種子中でほとんど排他的に組織−特異的および段階−特異的様式で発現されている(Higginsら,Ann.Rev.Plant Physiol.(1984)35:191-221;Goldbergら、Cell(1989)56:149-160)。さらに種々の種子保存タンパク質を種子発生の種々の段階で発現させることができる)。
【0115】
種子−特異的遺伝子の発現は極めて詳細に研究された(Goldbergら、Cell(1989)56:149-160およびHigginsら,Ann.Rev.Plant Physiol.(1984)35:191-221を総説として参照されたい)。現在では多くのトランスジェニック双子葉植物中で種子保存タンパク質遺伝子の種子−特異的発現の例がある。それらには豆b−パセロインの双子葉植物由来の遺伝子(Sengupta-Gopalanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:3320-3324;Hoffmanら、Plant Mol.Biol.(1988) 11:717-729)、豆レクチン(Voelkerら、EMBO J.(1987) 6:3571-3577)、大豆レクチン(Okamuroら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986) 83:8240-8244)、大豆クニッツ(kunitz)トリプシンインヒビター(Perez-Grauら、Plant Cell(1988) 1:095-1109)、大豆b−コングリシニン(Beachyら、EMBO J.(1985) 4:3047-3053;エンドウ ビシリン(Higginsら、Plant Mol.Biol.(1988) 11:683-695)、エンドウ コンビシリン(Newbiginら、Planta(1990) 180:461-470)、エンドウ レグミン(Shirsatら、Mol.Gen.Genetics(1989) 215:326-311;菜種ナピン(Radkeら、Theor.Appl.Genet.(1988) 75:685-694)、ならびにメイズ15kDゼインのような単子葉植物由来の遺伝子(Hoffmanら、EMBO J.(1987) 6:3213-3221)、メイズ18kDオレオシン(Leeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991) 888:6181-6185)、大麦b−ホーデイン(Marrisら、Plant Mol.Biol.(1988) 10:359-366)および小麦グルテニン(Colotら、EMBO J.(1987) 6:3559-3564)。さらにキメラ遺伝子構築物中の異質コーディング配列に操作可能に連結された種子−特異的遺伝子のプロモーターは、トランスジェニック植物中での一時的および局在的発現パターンも維持する。そのような例にはアラビドプシス(Arabidopsis)およびビー.ナプス(B.napus)中でエンケファリンペプチドを発現するための、アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)2S種子保存タンパク質遺伝子プロモーター(Vandekerckhoveら、Bio/Technology(1989) 7:929-932)、ルシフェラーゼを発現するための豆レクチンおよび豆b−パセオリンプロモーター(Riggsら、Plant Sci.(1989)63:47-57)、およびクロラムフェニコールアシルトランスフェラーゼを発現するための小麦グルテニンプロモーター(Colotら、EMBO J.(1987) 6:3559-3564)がある。
【0116】
本発明の核酸断片の発現で特に有用であるのは、例えばクニッツ トリプシンインヒビター(Jofukuら、Plant Cell(1989)1:1079-1093;グリシニン(Neilsonら、Plant Cell(1989)1:313-328)、およびb−コングリシニン(Haradaら、Plant Cell(1989) 1:415-425)のような数種の大豆保存タンパク質遺伝子由来の異質プロモーターであろう。大豆b−コングリシニン保存タンパク質のa−およびb−サブユニットの遺伝子のプロモーターは、トランスジェニック植物で種子の中−から後期発生段階中の単子葉植物中でmRNAまたはアンチセンスRNAを発現するのに特に有用である(Beachyら、EMBO.J.(1985)4:3047-3953)これはトランスジェニック種子にはそれらの発現に影響する位置が大変少なく、そしてこの2つのプロモーターが異なる一時的な調節を示すからである。a−サブユニット遺伝子のためのプロモーターはb−サブユニット遺伝子よりも2−3日早く発現する。これは油の生合成が種子保存タンパク質合成よりも約1週間早く開始するトランスジェニック菜種には重要である(Murphyら、J.Plant Physiol.(1989) 135:63-69)。
【0117】
初期の胚発生および油合成中に発現する遺伝子のプロモーターも特に有用であろう。当業者により本発明の核酸配列を発現する脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の天然の調節配列(天然のプロモーターを含む)を、それらの単離後に使用できる。種子の油生合成に関与する他の遺伝子由来の異質プロモーターも有用であり、それにはビー.ナプス(B.napus)イソシアネート リアーゼおよびマレイトシンターゼ(Comaiら、Plant Cell(1989)1:293-300)、ベニバナ(Thompsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991) 88:2578-2582)およびカスター(Shanklinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991) 88:2510-2514)由来のデルタ−9デサチュラーゼ、アラビドプシス(Arabidopsis)(Post-Bettenmillerら、Nucl.Acid.Res.(1989) 17:1777)、ビー.ナプス(B.napus)(Saffordら、Eur.J.Biochem.(1989) 174:287-295)およびビー.カンペストリス(B.campestris)(Roseら、Nucl.Acid.Res.(1987) 15:7197)由来のアシルキャリアータンパク質(ACP)、大麦由来のb−ケトアシル−ACPシンセターゼ(Siggaard-Andersenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991) 88:4114-4118)、ならびにゼア メイズ(zea mays)(Leeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:6181-6185)、大豆(ジーンバンク寄託番号:X60773)およびビー.ナプス(B.napus)(Leeら、Plant
Physiol.(1991) 96:1395-1397)由来のオレオシンがある。対応する遺伝子の配列が開示されていない、あるいはそのプロモーター領域が同定されていないならば、当業者はプロモーターを含有する対応する遺伝子およびその断片を単離するために公開されている配列を使用できる。比較的豊富なエノイル−ACPレダクターゼおよびアセチルCoAカルボキシラーゼの部分的なタンパク質配列も公開されている(Slabasら、Biochem.Biophys.Acta(1987) 877:271-280;Cottnghamら、Biochim.Biophys,Acta(1988) 954:201-207)、そして当業者は対応する種子遺伝子とそのプロモーターとを単離するためにこれらの配列を使用できる。同様に脂肪酸デサチュラーゼをコードする本発明の断片をキメラ遺伝子の発現に使用するために、対応する遺伝子のプロモーター領域を得るために使用できる。
【0118】
本発明の核酸断片の適切な発現レベルを達成するためには、種々のプロモーターを利用して種々のキメラ遺伝子の使用が必要になるかもしれない。そのようなキメラ遺伝子は単一の発現ベクターと一緒に、あるいは1つ以上のベクターを連続的に使用するかのいずれかにより、宿主植物に移動させることができる。
【0119】
エンハンサーまたはエンハンサー−様要素を本発明の天然のまたはキメラ核酸断片のプロモーター領域に導入することは本発明を達成するための発現の増加を生じるものと思われる。このようなエンハンサーには35Sプロモーターに見られるようなウイルスエンハンサー(Odellら、Plant Mol.Biol.(1988) 10:263-272)、オピン(poine)遺伝子由来のエンハンサー(Frommら、Plant Cell(1988) 1:977-984)、または本発明の核酸断片に操作可能な状態で連結したプロモーター中に配置したときに転写の上昇を生じる任意の他の起源のエンハンサーである。
【0120】
特に重要なのは40倍の種子−特異的増強を構築的プロモーターに付与することができるb−コングリシンのa−サブユニットについて単離されたDNA配列要素である(Chen
ら、Dev.Genet.(1989) 10:112-122)。当業者は容易にこの要素を単離し、そしてトランスジェニック植物中のプロモーターとともに種子−特異的な増強された発現を得るための任意の遺伝子のプロモーター領域中に挿入できる。そのような要素をb−コングリシン遺伝子とは異なる時期に発現する種子−特異的遺伝子へ挿入することは、トランスジェニック植物に種子発生中により長期間の発現を生じるであろう。
【0121】
本発明は所望の結果を得るために他の種々の方法により達成することもできる。1つの形態では、本発明は本発明の核酸断片を含有する外来遺伝子の1つ以上のコピーを導入することにより、脂肪酸デサチュラーゼレベルの上昇をもたらすために、植物を改良(modifying)することに基づく。ポリ不飽和脂肪酸の所望レベルは、1種類以上の脂肪酸デサチュラーゼの外来遺伝子の導入が必要かもしれない場合もある。
【0122】
本発明の核酸断片の適切な発現のために必要であるかもしれないポリアデニレーションシグナルおよび他の調節配列を提供できる3’非−コーディング領域を、本発明を達成するために使用できる。これは天然脂肪酸デサチュラーゼ(1つまたは複数)の3’末端、35Sまたは19Sカリフラワーモザイクウイルス転写物由来のようなウイルス遺伝子、オピン合成遺伝子由来、リブロース1,5−ビホスフェイト カルボキシラーゼまたはクロロフィルa/b結合タンパク質を含む。3’非−コーディング領域の有用性を教示する当該技術の例は沢山ある。
【0123】
<形質転換法>
当業者は本発明の高等植物細胞の形質転換法を入手することができる(欧州特許出願公開第0295959A号明細書および0318341A1号明細書を参照のこと)。そのような方法はアグロバクテリウム エスエスピー.(Agrobacterium ssp.)のTiおよびRiプラスミドを使用する形質転換ベクターに基づく方法を含む。これらのベクターのバイナリー型を使用することは特に好ましい。Ti−由来ベクターは広範な高等植物を形質転換し、その中には単子葉および双子葉植物を含む(Sukhapindaら、Plant Mol.Biol.(1987) 8:209-216:Potykus,Mol.Gen.Genet.(1985) 199:193)。当業者は他の形質転換法も可能であり、例えば外来DNA構築物の直接的な取り込み(欧州特許出願公開第0295959A号明細書)、電気穿刺法(Frommら、Nature(1986)(ロンドン) 319:791)、または核酸構築物で被覆した金属粒子による高速度弾道衝撃法(Klineら、Nature(1987)(ロンドン)327:70)である。いったん形質転換したら、細胞は当該技術により再生できる。
【0124】
最近記載された外来遺伝子を市販の重要な作物に形質転換する方法の中で特に関連が深いのは、例えば菜種(De Blockら、Plant Physiol.(1989) 91:694-701)、ヒマワリ(Everettら、Bio/Technology(1987) 5:1201)および大豆(Christouら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989) 86:7500-7504)。
【0125】
<分子育種>
プラスミドpSF2−169Kから得られた1.6kbの挿入物を、数種の制限酵素の1つで消化された大豆(グリシン マックス:Glycine max(栽培変種 ボーナス:Bonus)、およびグリシン ソージャ:Glycine soja(PI81762))由来のゲノムDNAを含有するサザンブロットについて、放射線標識プローブとして使用する。ハイブリダイゼーションの種々のパターン(多型性)を、制限酵素HindIIIおよびEcoRIで処理された消化物で同定した。これらの多型性は、本質的にHelentjarisら(Theor.Appl,Genet.(1986) 72:761-769)に記載されたような大豆ゲノムに対する他の遺伝子座に対して、2つのpSF2−169座をマップするために使用された。1つは4404.00および1503.00座の間の連結群11(それぞれ4404.00および1503.00から4.5cMおよび7.1cM)にマップされ、そしてもう1つは4010.00および5302.00座の間の連結群19(それぞれ4010.00および5302.00から1.9cMおよび2.7cM)にマップされた[Rafalski,AおよびTingey,S(1993)、遺伝マップ(Genetic Maps)O'Brien.S.J.編集]。植物育種での制限断片長多型(RFLP)マーカーの使用は当該技術分野で詳細に記載された(Tanksleyら、Bio/Technology(1989) 7:257-264)。したがって本発明の核酸断片は脂肪酸デサチュラーゼの発現に関連する特徴(trait)のRFLPマーカーとして使用できる。これらの特徴には不飽和脂肪酸レベルの変化を含む。本発明の核酸断片は不飽和脂肪酸レベルの変化を有する変更(突然変異を含む)植物から脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を単離するためにも使用できる。これら遺伝子のシークエンシングでは、変化を引き起こす正常遺伝子とは異なるヌクレオチドが明らかになった。これらの差異をかこんで設計された短いオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションプローブとして、または脂肪酸が変化した後のDNAを基本とした診断のいずれかで、分子育種に使用できる。変更に関連した差異に基づくオリゴヌクレオチドは、これら変更体の油特性物の育種の分子マーカーとして使用できる。
【実施例】
【0126】
本発明は以下の実施例でさらに説明され、特に言及しない限りその中のすべての部および百分率は重量で、温度は摂氏で表す。これらの実施例は本発明の好適態様を示すものであり説明のみを目的とするものであることを理解すべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、その精神から逸脱することなく様々な使用および条件に適合させるために、本発明の変更および修飾を行うことができる。特許明細書および特許明細書ではなものを含むすべての文献は、引用により本明細書に編入される。
【0127】
[実施例1]
アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)突然変異体658系中の挿入物のT−DNA周辺領域を含むゲノムDNAの単離
高オレイン酸含量をもつアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)T−DNA突然変異体の単離
アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciencs)の修飾T−DNAを含有するアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)(地種 Wassilewskija)形質転換体を、Felmannら、(Mol.Gene.Genetics(1987)208:1-9)に記載されるように種子形質転換により生成した。この集団で形質転換体はT−DNA境界配列中にpBR322細菌ベクター、ノパリンシンターゼ、ネオマイシン ホスホトランスフェラーゼ(NPTII、カナマイシン耐性を付与する)およびb−ラクタマーゼ(アンピシリン耐性を付与する)をコードするDNA配列を含有する。T−DNAを個々の形質転換体の染色体の種々の領域への組み込みは、植物遺伝子機能の破壊を挿入部で、またはその付近で引き起こす。この遺伝子機能の損失に関連する表現型は、表現型に関する集団をスクリーニングすることにより分析できる。
【0128】
T3種子は、Felmannら、(Science(1989)243:1351-1354)に記載されたように、2回の自己受精によりアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciencs)で処理して野生型から生成した。これらの継代はT−DNA挿入物について分離しており、したがってこの挿入物から任意の突然変異が生じていた。各1700の系から約10−12枚の葉を混合し、そして各1700のプールした試料の脂肪酸含量を、2.5%のHSO(メタノール中)をメチル化試薬として使用する以外はBrowseら、(Anal.Biochem(1986)152:141-145)に本質的に記載されるように脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィーにより測定した。“658”と命名された系の試料が657および659から同時採取した試料と比較して変化した脂肪酸プロフィールを与えた(表8)。
【0129】
【表8】

【0130】
658系からの12の個々のT3種子の脂肪酸組成分析では、658プールがこれらのクラスから分離されている種子から成ることが示された:“高い”、“中間範囲”および“低い”クラスはそれぞれ約37%(12種子)、21%(7種子)および14%(3種子)のオレイン酸を含有する(表9)。
【0131】
【表9】

【0132】
したがって高オレイン酸突然変異体表現型は、およそメンデル比で分離されている。独立的に分離している658系中のT−DNA挿入物の数を測定するために、200個のT3種子をカナマイシンの存在下での発芽および成長能力について試験した[Felmanら、(1989)Science 243:1351-1354]。この実験で、4個のカナマイシン−耐性個体植物が同定されただけであった。分離比は(約50:1)は、658系が3つのT−DNA挿入物を宿していることを示していた。この実験および他の2つの実験で、全部で56個のカナマイシン−感受性植物が確認され;その中の53の脂肪酸組成を分析し、そして少なくともの中の7個がこれらの条件下で成長する野生型種子に対して期待されるよりも高いオレイン酸レベルを示した。
【0133】
高オレイン酸を生じる突然変異がT−DNA挿入によるものか否かをより正確に試験するために、脂肪酸表現型突然変異体から分離している誘導系および単一のカナマイシン耐性遺伝子座を同定した。このために約100個のT3植物を個々に成熟するまで成長させ、種子を回収した。各T3植物の種子試料の1つを、カナマイシン存在下での発芽および成長能力について試験した。さらに、さらなる10種の各系からの個々の種子の脂肪酸組成について測定した。1つのT3植物(658−75と命名した)が、その継代種子が28個のカナマイシン−感受性から個の60カナマイシン−耐性突然変異体を分離し、そして7個の低い、または中程度のオレイン酸から2個の高いオレイン酸を含有するものを分離した。
【0134】
658−75系から派生した約400個のT4継代種子を生育させ、そして葉の脂肪酸組成を分析した。全部で91個の植物を高オレイン酸特性についてホモ接合性であると同定した(18:2/18:1、0.5未満)。残りの植物(18:2/18:1、1.2より高い)は、葉の脂肪酸組成からでは野生型およびホモ接合性のクラスを決定的に確認できず、したがってカナマイシンマーカーと脂肪酸突然変異との間の関係を試験するために使用できなかった。91個の中で明らかにホモ接合性の高オレイン酸突然変異体の83個を、葉抽出物中のノパリン、別のT−DNAマーカーの存在について試験した(Errampalliら、The Plant Cell(1991)3:149-157)、そしてすべての83個の植物はノパリンの存在について陽性であった。この脂肪酸表現型突然変異体とT−DNAとの強固な関連は、658突然変異体中の高オレイン酸特性がT−DNA挿入の結果であることの証拠を提供するものである。
【0135】
<プラスミドの取り出し、および分析>
葉の組織から調製した(Rogers,S.O.およびA.J.Bendich(1985) Plant Molecular Biology 5:69-76に記載されているように)658−75系のホモ接合性突然変異植物由来のゲノムDNAの0.5および1マイクログラムを、製造元の仕様により50μLの反応容量中の20単位のBamHIまたはSalI制限酵素(ベセスダリサーチラボラトリー:Bethesda Research Laboratory)で消化した。消化後、DNAを緩衝液−飽和フェノール(ベセスダリサーチラボラトリー)で抽出し、続いてエタノールで沈殿させた。0.5から1マイクログラムのBamHIまたはSalI消化ゲノムDNAを200μLまたは400μLのライゲーション緩衝液(50mM Tris-Cl pH8.0、10mM MgCl、10mM ジチオスレイトール、1mMATPおよび4単位のT4 DNAリガーゼ(ベセスダリサーチラボラトリー)を含有する)に再懸濁した。希釈した約2.5ug/mL濃度のDNA(ライゲーション反応中)を分子内結合に反して環状化し易くするために選択した。反応物を16℃で16時間インキュベーションした。コンピテントなDH10B細胞(ベセスダリサーチラボラトリー)を10ngの連結DNA(100μLのコンピテント細胞あたり)で製造元の仕様によりトランスフェクションした。SalIまたはBamHI消化物からの形質転換体を100μg/mLのアンピシリンを含有するLBプレート(10g バクト−トリプトン、5gのバクト−酵母エキス、5g NaCl、15gの寒天/リットル、pH7.4)で選択した。一晩37℃でインキュベーションした後、プレートをアンピシリン−耐性コロニーについて計数した。
【0136】
BamHI−消化植物DNA由来の1つのアンピシリン−耐性形質転換体を25mg/Lのアンピシリンを含有する35mLのLB培地(1リットルあたり10gのバクト−トリプトン、5gの酵母エキス、5gのNaCl)で培養を開始するために使用した。培養は一晩37℃で撹拌しながらインキュベーションし、そして次に細胞を1000xgで10分間遠心して回収した。プラスミドDNA、(p658−1と命名した)を細胞からBirmbiomら[Nucleic Acids Res(1979) 7:1513-1523]のアルカリ溶解法によりSambrookら(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、第二版(1989)コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に記載されているように単離した。プラスミドp658−1DNAを制限酵素BamHI、EcoRIおよびSalI(ベセスダリサーチラボラトリー)で消化し、そして1xTBE緩衝液(0.089M tris−ホウ酸、0.002M EDTA)中の1%アガロースゲルを通して電気泳動を行った。制限パターンはこのプラスミド中に期待された14.2kBのT−DNA断片および1.6kBの推定植物DNA/T−DNA境界断片の存在を示した。
【0137】
[実施例2]
アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)
突然変異体658−75系中の挿入物のT−DNAの周辺を含むゲノムDNAをハイブリダイゼーションプローブとして使用するアラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAのクローニング 100ナノグラムの1.6kBのEcoRI−BamHI断片を、EcoRIおよびBamHIによるプラスミドの消化、およびアガロース中での電気泳動精製後、アルファ[32P]-dCTPで、ランダムプライミングラベリングキット(Random Priming Laveling Kit:ベセスダリサーチラボラトリー)を使用して製造元の仕様に従い放射線標識した。
【0138】
放射線標識DNAはプローブとして、上記の様々な成長段階の挽いた部分から単離したRNAで作成されたアラビドプシス(Arabidopsis)cDNAライブラリー(Elledgeら(1991)Proc.Natl Acad.Sci.,88:1731-1735)を、本質的にSambrookら(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、第二版(1989)コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に記載されているようにスクリーニングするために使用した。このために、約17,000プラ−ク形成単位をNZY寒天(1リットルあたり5g NaCl、2g MgSO4-7H2O、5g酵母エキス、10g カゼイン酸加水分解物、13g寒天)培体上に大腸菌LE392の生育を含む7つの90mmペトリ皿にまいた。ファージプラークのレプリカ用フィルターを、プラークをニトロセルロースフィルターに吸着させて調製し(BA85、シュライヒャー アンド シゥエル:Schleicher and Schuell)、次に連続的に5分間づつ、0.5M NaOH/1M NaCl、0.5M Tris(pH7.4)/1.5M NaClおよび2xSSPE(0.36M NaCl、20mM NaH2PO4(pH7.4)、20mM EDTA(1pH7.4))に含浸させた。このフィルターを次に風乾し、80℃で2時間焼いた。焼いた後、フィルターを2X SSPE中で湿潤化し、そして次に42℃でプレハイブリダイゼーション緩衝液(50% ホルムアミド、5X SSPE、1% SDS、5X デンハーツ溶液、および100ug/mL変性サケ精巣DNA)中で2時間インキュベーションした。フィルターをプレハイブリダイゼーション緩衝液から取り出し、そして次に変性放射線標識プローブ(上記)を含有するハイブリダイゼーション緩衝液に移し(50% ホルムアミド、5X SSPE、1% SDS、1X デンハーツ溶液、および100ug/mL変性サケ精巣DNA)、そして42℃で40時間インキュベーションした。フィルターを2X SSPE/0.2%SDSで42℃にて2回(各15分間づつ)、そして0.2X SSPE/0.2%SDSで55℃にて2回(各30分間づつ)洗浄し、続いてコダックXAR−5フィルムで増感スクリーンと一緒に−80℃で一晩オートラジオグラフィーを行った。15個のプラークがレプリカフィルター上に陽性にハイブリダイズするものとして確認された。これらの中の5つを本質的にSambrookら(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、第二版(1989)コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に記載されているようにプラーク精製に供した。ラムダYES−R cDNAクローンは、大腸菌BNN−−132細胞中でファージを伝達することによりプラスミドに転換し、これはファージ中に存在する’lox’部位でcre−が媒介するインビボ部位−特異的組換えによりcDNA挿入物を二本鎖プラスミドとして切り出すCreタンパク質を発現する。cDNA挿入物を含有するアンピシリン−耐性プラスミドクローンを液体培養で成長させ、そしてプラスミドDNAをアルカリ溶解法を使用してすでに記載したように調製した。生成したプラスミドの大きさをアガロースゲル電気泳動により分析した。アガロースゲルは0.5M NaOH/1M NaCl、および0.5M Tris(pH7.4)、1.5M NaClでそれぞれ15分間処理し、そしてゲルを次にゲルドライヤーで65℃にて完全に乾燥した。ゲルを2X SSPE中で水和し、そして一晩42℃にて変性放射線標識プローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液中でインキュベーションし、次に上記のように洗浄した。オートラジオグラフィーの後、精製cDNAクローンの4つの挿入物がこのプローブにハイブリダイズすることが分かった。ハイブリダイズするクローンからのプラスミドDNAをCsCl/エチジウムブロミド勾配(上記参照)の平衡化により精製した。4つのcDNAクローンをシークエナーゼT7 DNAポリメラーゼ(米国バイオケミカル社:Biochemical Corp.)を使用して、cDNA挿入物の両側を含むベクター配列に相同的であるプライマーから開始して、そして製造元の仕様に従い配列決定した。4つのクローンから得た挿入物の部分配列を比較した後、各々が共通の配列を含むことが明らかになった。約1.4kBのcDNA挿入物を含む1つのcDNAクローン(p92103)を配列決定した。最長の3つのクローンをプラスミドベクターpBluescript(ストラタジーン)中にサブクローン化した。3つの中で約1.2kB cDNA挿入物を含有する1つ(pSF2b)も、すでに行ったシークエンシング実験のように新たに獲得した配列から設計されたプライマーで連続的に配列決定された。pSF2bおよびp92103から派生した混合配列を配列番号1に示す。
【0139】
[実施例3]
アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAクローンをハイブリダイゼーションプローブとして使用する植物脂肪酸デサチュラーゼcDNAのクローニング
配列番号1のアラビドプシス(Arabidopsis)デルタ−12デサチュラーゼのコーディング配列を含有する約1.2kb断片をプラスミドpSF2bから得た。このプラスミドをEcoRIで消化して、そして1.2kbデルタ−12デサチュラーゼcDNA断片をアガロースゲル電気泳動によりベクター配列から精製した。この断片を32Pですでに記載したように放射線標識した。
【0140】
ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子cDNAのクローニング
放射線標識プローブをブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子のcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用した。ライブラリーを構築するために、ブラッシカ ナプス(Brassica napus)種子を授粉20−21日後に収穫し、液体窒素中に置いて、そしてポリソームRNAをKamalayら(Cell(1980)19:935-946)に従い単離した。ポリアデニル化mRNA画分をオリゴ−dTセルロースでアフィニティークロマトグラフィーにより精製した(Avivら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1972) 69:1408-1411)。4マイクログラムのこのmRNAを種子cDNAライブラリーをラムダファージ中に構築するために(Uni−ZAP(商標)XRベクター)にZAP−cDNA(商標)合成キット(1991ストラタジーンカタログ、商品番号#200400)を記載された手順を使用した。約600,000クローンが陽性にハイブリダイズしたプラークから、pSF2bからの放射線標識EcRI断片をプローブとして使用して、本質的にSambrookら(モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、第二版(1989)コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に記載されているようにスクリーニングし、しかし低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(50mM Tris、p7.6、6X SSC、5Xデンハーツ溶液、0.5% SDS、100μg変性ウシ胸腺DNA、50℃)を使用し、そしてハイブリダイゼーション後の洗浄は2X SSC、0.5% SDSで室温にて15分間2回、次に0.2X SSC、0.5% SDSで室温にて15分間2回、そして次に0.2X SSC、0.5% SDSで50℃で15分間2回行った。強いハイブリダイゼーションを示す陽性プラークを取り出し、プレートにまいて、そしてスクリーニング法を繰り返した。2回目のスクリーニングから、9つの純粋なファージプラークを単離した。cDNA挿入物を含有するプラスミドクローンをヘルパーファージを使用してストラタジーンで提供しているインビボ切り出し法により得た。二本鎖DNAをアルカリ溶解法で前記のように調製し、そして生成したプラスミドのサイズをアガロースゲル電気泳動で分析した。9つの中の最長をものは(pCF2−165Dと命名した)、上記のように配列決定された約1.5kbの挿入物を含んでいた。pCF2−165DのcDNA挿入物の1394塩基配列を配列番号3に示す。挿入物中に含まれるが配列番号3に示さないものは、挿入物の5’非翻訳領域の5’端約40塩基、および3’末端のpolyAテイルの約38塩基である。
【0141】
ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードする大豆種子cDNAのクローニング
cDNAライブラリーを次のように作成した:大豆胚(新しい約50mg重量)を莢から取り出し、そして液体窒素中で凍結した。凍結胚を微細粒子に液体窒素の存在下で挽いて、そしてポリトロンホモジネーションで抽出し、そしてChirgwinら(Biochemistry(1979)18:5294-5299)の方法により全RNAを濃縮するために分画した。核酸画分を全RNAをオリゴ−dTセルロースカラムに通過させ、そして塩を含むpolyARNAをGoodamanら、(Meth.Enzymol.(1979)68:75-90)に記載されるように溶出して濃縮した。cDNAを精製したpolyARNAから、cDNA合成システム(ベセスダリサーチラボラトリー)および製造元の指示に従い合成した。生成した二本鎖DNAをEcoRI DNAメチラーゼ(プロメガ:Promega)によりメチル化し、そして次にその末端をT4 DNAポリメラーゼ(ベセスダリサーチラボラトリー)で満たし、そして平滑末端をリン酸化EcoRIリンカーにT4 DNAリガーゼ(ファルマシア:Pharmacia)を使用して連結した。この二本鎖DNAをEcoRI酵素で消化し、ゲル濾過カラム(Sepharose CL-4B)通過させることにより過剰なリンカーを除去し、そしてラムダZAPベクター(ストラタジーン)に製造元の指示に従い連結した。連結したDNAをファージに、Gigapakパッケージングエキストラクト(ストラタジーン)を使用して製造元の指示に従いパッケージングした。生成したcDNAライブラリーをストラタジーンの指示に従い増幅し、そして−80℃に保存した。
【0142】
ラムダZAPクローニングキットマニュアル(ストラタジーン)の指示に従い、cDNAファージライブラリーを大腸菌BB4細胞を感染させるために使用し、そして約600,000プラーク形成単位を直径150mmのペトリ皿にまいた。プレートから二重移しをニトロセルロースフィルター上(シュライヒャー アンド シュエル)に作成した。フィルターを25mLのハイブリダイゼーション緩衝液(6x SSPE、5xデンハーツ溶液、0.5% SDS、5% 硫酸デキストランおよび0.1mg/mLの変性サケ精巣DNA(シグマ化学社:Sigma Chemical))で50℃で2時間プレハイブリダイズさせた。上記のように調製したpSF2bからの放射線標識プローブを加え、50℃で18時間ハイブリダイズさせた。フィルターを上記と全く同じように洗浄した。フィルターのオートラジオグラフィーでは14個の強くハイブリダイズしたプラークを示した。この14個のプラークを前記のような第2回目のスクリーニングに供した。多くの強くハイブリダイズしたプラークが14のフィルターの6つから観察され、そしてさらに分析するために6つの各プレートから他のファージからよく単離された1つを取り出した。
【0143】
ラムダZAPクローニングキットのインストラクショクマニュアル(ストラタジーン)に従い、精製したファージからcDNA挿入物を含むpBluescriptベクターの配列を、ヘルパーファージの存在下で切り出し、そして生成したファジェミドをを大腸菌XL−1ブルー細胞を感染させるために使用した。プラスミドからのDNAをプロメガ“マジック ミニプレップ(Magic Miniprep)”により製造元のインストラクショクにより作成した。制限分析ではプラスミドが1kbから2.5kbの大きさの範囲の挿入物を含むことを示した。これらの中の1つからのアルカリ−変性二本鎖DNA(pSF2−169Kと命名)は1.6kbの挿入物を含有し、これを上記のように配列決定した。プラスミドpSF2−169K中のcDNA挿入物のヌクレオチド配列を配列番号5に示した。
【0144】
種子ミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするトウモロコシ(ゼア メイズ:Zea mays)cDNAのクローニング
トウモロコシミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAを、PCR法を使用して単離した。このために、cDNAライブラリーを発生しているトウモロコシの胚由来のpolyARNAに対して、ラムダZAPIIベクター(ストラタジーン)中に作成した。5−10ulのこのライブラリーをPCRの鋳型として、100pmolの各縮退オリゴマーNS3の2組(配列番号13)および等モル量のRB5a/b(すなわち等モル量の配列番号16/17)をそれぞれセンスおよびアンチセンスプライマーとして使用した。NS3およびRB5a/bはそれぞれ配列番号2のアミノ酸101−109および318−326の広がりに相当し、これはほとんどのミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ(配列番号2、4、6、8)に保存されている。PCRはPCRキット(パーキン エルマー)を使用して、94℃で1分間、45℃で1分間、そして55℃で2分間の40循環を使用して行った。PCR生成物をアガロースゲルで分析することにより、期待された大きさ(720bp)の生成物の存在が示され、これはセンスまたはアンチセンスプライマーのいずれかだけを含有する対照領域には無かった。PCR生成物断片をゲル精製し、そして次に同じトウモロコシcDNAライブラリーを60℃で上記のようにスクリーニングするために使用した。1つの陽性にハイブリダイズするプラークを精製し、そしてそのcDNAを部分配列決定し、これがミクロソームデルタ-12デサチュラーゼをコードするが3'末端が短縮していることが示された。この部分的デサチュラーゼをコードするcDNA挿入物をゲル単離し、そしてトウモロコシcDNAライブラリーを釣り上げるために再度使用した。数個の陽性プラークを回収し、そして特性決定した。DNA配列分析では、これらすべてのクローンが同じ配列を表すが、異なる5’または3’末端の長さを持つことが明らかとなった。最長の挿入物を含有するクローン(pFad2#1と命名)を、完全に配列決定した。配列番号7はプラスミドpFad2#1中にミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードする、トウモロコシ(ゼア メイズ:Zea mays)cDNAの1790塩基対の5’−3’ヌクレオチド配列を示す。ヌクレオチド165−167およびヌクレオチド1326−1328は、それぞれ読み取り枠(ヌクレオチド164−1328)推定の開始コドンおよび終止コドンである。配列番号8は配列番号7の読み取り枠(ヌクレオチド164−1328)由来の387アミノ酸タンパク質配列である。このポリペプチド由来のアミノ酸配列はアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ、アラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−15デサチュラーゼおよびアラビドプシス(Arabidopsis)プラスチドデルタ−15デサチュラーゼと、それぞれ71%、40%および38%の全同一性を共有する。さらにこれはN−末端アミノ酸の広がりを欠き、これがプラスチド酵素であることを示した。これらの考察に基づき、これがミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードすると結論した。
【0145】
カスター豆種子由来のミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼをコードするcDNAおよびミクロソームデルタ−12脂肪酸デサチュラーゼ関連酵素をコードするcDNAのクローニング
カスターミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAをRT−PCR法を使用して単離した。ポリソームmRNAを第I−II期(5−10DAP)および第IV−V期(20−25DAP)のカスター豆から単離した。10ngの各mRNAを別個のRT−PCR反応に、パーキン−エルマーRT−PCRキットをキットの手法が推薦する試薬濃度で使用した。逆転写酵素反応はランダムヘキサマーおよび100pmolの各縮退デルタ−12デサチュラーゼプライマー NS3およびNS9(それぞれ配列番号13および14)で釣り上げた。逆転写反応は25℃で10分間、42℃で15分間、99℃で5分間そして5℃で5分間インキュベーションした。PCR反応は95℃で2分間インキュベーションし、続いて95℃で1分間/50℃で1分間の35循環を使用して行った。最後のインキュベーションは60℃で7分間で反応を完成させた。第I−II期および第IV−V期の両方のmRNAから720bpのDNA断片が増幅した。1つの反応から増幅したDNA断片をゲル精製し、そしてpGEM−Tベクターに、プロメガ pGEM−T PCRクローニングキットを使用してクローン化し、プラスミドpRF2−1Cを作成した。pRF2−1C中の720bp挿入物を上記のように配列決定し、生成したDNA配列を配列番号9に表す。配列番号9中のDNA配列は219アミノ酸(配列番号10)をコードする非−翻訳領域を含み、これは配列番号2に記載されたアラビドプシス(Arabidopsis)ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼのアミノ酸135−353と81%の同一性(90%の類似性)を持つ。それゆえにpRF2−1C中のcDNA挿入物はカスター豆ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼをコードする完全長cDNAの673bp断片である。完全長のカスター豆種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼcDNAはカスター種子cDNAライブラリーを、60℃で上記実施例に記載したpRF2−1Cの標識挿入物でスクリーニングすることにより単離できる。pRF2−1C中の挿入物はデルタ−12デサチュラーゼ関連配列(デルタ−12ヒドロキシラーゼなど)を単離するために、低温でカスター豆ライブラリーをスクリーニングするためにも使用できる。
【0146】
発生しているカスター豆(第IV−V期、20−25DAP)から単離されたpolyAmRNAに対して作成されたcDNAライブラリーを上記のようにスクリーニングした。pSF2bまたはpRF2−1Cから上記のように調製した放射線標識プローブを加え、そして50℃デ18時間ハイブリダイズさせた。フィルターは上記のように洗浄した。フィルターのオートラジオグラフィーは、多くのハイブリダイズプラークがあり、それらは強くまたは弱くハイブリダイズしていることを示した。強くハイブリダイズしている3つのプラーク(190A−41、190A−42および190A−44)およびを弱くハイブリダイズしている3つのプラーク(190B−41、190b−43および197c−42)を上記のようにプラーク精製した。精製したファージcDNA挿入物の大きさを挿入物のPCR増幅で、ファージを鋳型として、そしてラムダgt11オリゴマー(クローンテック ラムダgt11アンプリマー)をプライマーとして測定した。増幅したファージのPCR−増幅挿入物を、すでにEcoRIで切断され、そしてクレノで満たされたpBluescript(ファルマシア)中にサブクローン化した(Sambrookら、(モレキュラークローニング、ア ラボラトリーアプローチ、第二版、(1989)コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)。生成したプラスミドをpRF190a−41、pRF190a−42、pRF190a−44、pRF190b−41、pRF190b−43、およびpRF197c−42と呼ぶ。pRF190a−42が約1.5kbであったのを除いて、すべての挿入物は約1.1kbであった。プラスミド中の挿入物を上記のように配列決定した。pRF190b−43の挿入物はいかなる読み取り枠を含まず、同定しなかった。pRF190b−41、pRF190a−42、pRF190a−44およびpRF190b−41中の挿入物は同一であった。pRF197c−42中の挿入物はpRF190b−41、pRF190a−42、pRF190a−44およびpRF190b−41中の挿入物のすべてのヌクレオチドに加えてさらに約400bpを含んでいた。したがってpRF197c−42中の挿入物はpRF190b−41、pRF190a−42、pRF190a−44およびpRF190b−41の挿入物の長い変更体であり、それらはすべて同じ完全長のmRNA由来であると推定された。プラスミドpRF197c−42中の挿入物の完全なcDNA配列を配列番号11に示す。配列番号12に表される配列番号11由来のアミノ酸配列は、上記カスター ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ(配列番号10)と78.5%の同一性(90%の類似性)、そして配列番号2のアラビドプシス(Arabidopsis)デルタ−12デサチュラーゼのアミノ酸配列と66%の同一性(80%の類似性)であった。これらの類似性はpRF197c−42が、ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼまたはミクロソームデルタ−12デサチュラーゼ関連酵素(デルタ−12ヒドロキシラーゼのような)をコードするカスター豆種子cDNAであることが確認される。pRF2−1CおよびpRF197c−42の特異的PCRプライマーが作成された。pRF2−1cについての上流プライマーは配列番号9のcDNA配列の塩基180−197であった。pRF197−42についての上流プライマーは配列番号11のcDNA配列の塩基717−743であった。共通の下流プライマーは配列番号9に記載された配列のヌクレオチド463−478の完全な相補鎖に対応して作成された。ランダムヘキサマーおよび上記プライマーでのRT−PCRを使用して、そして上記のインキュベーション温度で、pRF2−1C中に含有されるcDNAに対して生じたmRNAが、第I−II段階および第IV−V段階の両方のカスター種子中に存在するが、プラスミドpRF197c−42中に含有されるcDNAに対して生じたmRNAは第IV−V段階のカスター種子中のみに存在することが観察され、したがってこれはレシノール酸合成が活性な組織中でのみ発現する。すなわちこのcDNAはデルタ−12ヒドロキシラーゼをコードすることができる。
【0147】
pRF2−1CおよびpRF197c−42のようなクローン、および他の差異スクリーニングからのクローン(そのDNA配列に基づき、カスター豆種子ミクロソームデルタ−12デサチュラーゼとは関係が低く、そして上記または国際特許出願公開第9311245号中のいずれの既知の脂肪酸デサチュラーゼとも関係がない)は、例えば大豆胚または別の適当な植物組織、あるいは微生物(例えば酵母)のような通常はリシノール酸を含有しないものの中で、適当な発現ベクターおよび形質転換法を使用して発現させることができる。カスターcDNAの発現する形質転換組織(1つまたは複数)中での新規リシノール酸の存在は、カスターcDNAとオレエートヒドロキシラーゼをコードするDNAとの同一性を確認するものである。
【0148】
[実施例4]
アラビドプシス(Arabidopsis)におけるデルタ−12 デサチュラーゼの遺伝子座の地図を作製するための制限断片長多形性(RFLP)としてのアラビドプシス タリアナ(Arabidopsis thaliana)の デルタ−12 デサチュラーゼ ゲノム クローンの利用
アラビドプシス(Arabidopsis)のミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼをコード化する遺伝子を用いてアラビドプシス タリアナ(Arabidopsis thaliana)のミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼをコード化する遺伝子座の地図を作製した。アラビドプシス(Arabidopsis)のミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼDNAをコード化するpSF2b cDNA挿入断片を放射ラベル化し、そしてこれを用いてアラビドプシス(Arabidopsis)のゲノムDNAライブラリーのスクリーニングを行った。強固なハイブリッド形成を示す数々の純粋なファージからのDNAを単離した。放射ラベル化したpSF2b cDNA挿入断片をプローブとして用いる様々なファージからのDNAのサザンブロット分析により、6kbのHind III挿入断片がその遺伝子のコーディング領域を含むことが同定された。この断片をpBluescriptベクター内にサブクローン化させてプラスミドpAGF2−6を作製し、そしてこれを部分的配列決定に用いた。この配列(配列番号15)により、この挿入断片がミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼ遺伝子であることが証明された。2つのファージからのDNAを単離し、そしてPharmacia社からのランダムプライミングキットを用い、製造業者により推奨される条件下において32Pでのラベル化を行った。放射活性性DNAを用いて、数々の制限エンドヌクレアーゼの内の一つで消化させたアラビドプシス タリアナ(Arabidopsis thaliana)(生態型Wassileskijaおよび標識株W100生態型Landesbergバックグラウンド)からのゲノムDNAを含むサザンブロットの探索を行った。標準条件下でのハイブリッド形成および洗浄後(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Labortatory Manual、2nd ed.(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press)にオートラジオグラムを作製した。ファージDNAの内の一つのものを用いて異なるパターンのハイブリッド形成(多形性)をHind III消化済みゲノムDNAにおいて同定した。この多形性は、多形性を示すこのファージDNA中の7kb Hind III断片に対するものとして存在していた。この7kb断片をpBluescriptベクター内にサブクローン化させてプラスミドpAGF2−7を作製した。プラスミドpAGF2−7をHind III酵素で制限消化し、そして放射ラベル化プローブとして用いて、本質的にはHelentjaris et al.、(Theor.Appl.Genet.(1986)72:761−769)により記載される要領で多形性の地図を作製した。この放射ラベル化DNA断片を既述のように、アラビドプシス タリアナ(Arabidopsis thaliana)標識株W100と生態型Waasileskijaとの間の交雑から得られる117の組換え同系子孫(F世代までの単一種子血縁株から得られる)(Burr et al.、Genetics(1988)118:519−526)から単離したHind III消化済みゲノムDNAのサザンブロットに適用させた。オートラジオグラム上のバンドを、父性(生態型Waasileskija)もしくは母性(標識株W100)のDNA、あるいはその両者(ヘテロ接合体)のいずれかの遺伝から生じるものとして解釈した。獲られる分離データを、コンピュータープログラムMapmakerを用いる遺伝子分析に供した(Lander et al.,Genomics(1987)1:174−181)。アラビドプシス タリアナ(Arabidopsis thaliana)における63の無名RFLP標識および9つの形態学的標識について既に得られている分離データを組み合わせて(Chang et al.、Proc.Natl.Acad.Sci. USA(1988)85:6856−6860;Nam et al.、Plant Cell(1989)1:699−705)、ミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼ遺伝子に相当する単一遺伝子座の位置を突き止めた。従って、ミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼ遺伝子の位置は、第3染色体上の、遺伝子座c3838の13.6cM近位、遺伝子座1At228の9.2cM遠位、およびFadD遺伝子座の4.9cM近位に存在することを決定した[Koorneef、M.et al.(1993)in Genetic Maps、Ed.O’Brien、S.J.;Yadav et al.(1993)Plant Physiology 103:467−476]。
【0149】
[実施例5]
制限断片長多形性(RFLP)標識としてのダイズ ミクロソームのデルター−12 デサチュラーゼcDNA配列の利用
先に記載し多様にプラスミドpSF2−169Kから取得した1.6kbの挿入断片を、Bethesda Research Laboratories社からのランダムプライミングキット(Random Priming Kit)を用いて製造業者により推奨される条件下において32Pでのラベル化を行った。得られる放射ラベル化プローブを用いて、数々の制限酵素の内の一つで消化したダイズ(グリシン マックス(Glycine max)(栽培品種Bonus)およびグリシン ソジャ(Glycine soja)(PI81762))からのゲノムDNAを含むサザンブロット(Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd Ed.81989) Cold Spring Harbor Laboratory Press)の探索を行った。低緊縮性条件下(ハイブリッド形成および初回洗浄のためには56℃下で50mM Tris、pH7.5、6×SSPE、10%硫酸デキストラン、1%SDSを用い、最終洗浄用には2×SSPEおよび0.1%SDSへと変化させる)でのハイブリッド形成および洗浄後、オートラジオグラムを取得し、そして制限酵素Hind IIIおよびEco RIでの消化を施した消化物中に様々なパターンのハイブリッド形成(多形性)を同定した。これらの多形性を用いて、本質的にはHalentjaris et al.,(Theor.Appl Genet.(1986)72:761−769)により記載される要領でダイズゲノム上の他の遺伝子座に関連する2つのpSF2−169k遺伝子座の地図を作製した。多形性の地図上での位置は、4404.00と1503.00遺伝子座との間の連鎖群11(4404.00および1503.00から各々4.5cMおよび7.1cM)、ならびに4010.00と5302.00遺伝子座との間の連鎖群19(4010.00および5302.00から各々1.9cMおよび2.7cM)であることを決定した[Rafalski、A.およびTingey、S.(1993)in Genetic Maps、Ed.O’Brien、S.J.]。
【0150】
[実施例6]
ダイズにおけるミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼの発現 発芽中のダイズ種子のミクロソーム デルタ−12 デサチュラーゼの発現を低下させるためのグリシン マックス(Glycine max)の形質転換用ベクターの作製
ダイズのクニッツ トリプシン インヒビター3(Kunitz Trypsin Inhibitor 3)(KTi3)プロモーター(JofukuおよびGoldberg、Plant Cell(1989)1:1079−1093)、ファセオルス ブルガリス(Phaseolus vulgaris)の7S種子貯蔵蛋白質(ファセオリン)プロモーター(Sengupta−Gopalan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:3320−3324;Hoffman et al.,Plant Mol.Biol.(1988)11:717−729)、およびダイズのベーター−コングリシニンプロモーター(Beachy et al.、EMBO J.(1985)4:3047−3053)の調節下にあるアンチセンスG.マックス(G. max)ミクロソーム デルタ−12 デサチュラーゼcDNA配列を含むプラスミドを作製した。これらのプロモーターの調節下にあるダイズのデルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンスcDNAを発現するベクターの作製は、以下に示すプラスミド、pML70、pCW108、およびpCW109Aを使用することにより容易に行うことができた。
【0151】
pML70ベクターはKTi3プロモーターおよびKTi3の3’非翻訳領域を含み、そして中間体プラスミドpML51、pML55、pML64、およびpML65を介して市販品として入手可能なベクターpTZ18R(Pharmacia社)から取得した。ダイズKTi3の全遺伝子(JofukuおよびGoldberg(1989)Plant Cell 1:1079−1093)の2.4kbのBst BI/Eco RI断片は、5’非翻訳領域の全2039ヌクレオチド、およびJofuku et al.(1989)Plant Cell 1:427−435において記載される塩基755−761の配列に相当するEco RI部位で終結するKTi3遺伝子のコーディング配列内の390塩基を含んでおり、これをpTZ18RのAcc I/Eco RI部位内に連結させてプラスミドpML51を作製した。このプラスミドpML51をNco Iで切断し、クレノウ断片を用いて末端重点を行い、そして連結させてKTi3挿入断片の5’非翻訳領域の中央にあるNco I部位をなくして、プラスミドpML55を取得した。このプラスミドpML55を、Xmn I/Eco RIで部分消化して先に引用した配列内の塩基732−755に相当する0.42kbの断片を切り出し、これを棄却した。Nco I部位を含む合成Xmn I/Eco RIリンカーは、Eco RI部位(5’−GAAGG−3’)の一部分の前に直接つながるように、Xmn I部位(5’−TCTTCC−3’)およびNco I部位(5’−CCATGGG−3’)のためのコーディング配列を含んでなる相補的な合成オリゴヌクレオチドの2量体を作製することにより構築した。Xmn IおよびNco I/Eco RI部位を短い介在配列(5’−ATAGCCCCCCAA−3’)により連結させた。この合成リンカーを4.94kbの断片のXmn I/Eco RI部位内に連結させてプラスミドpML64を作製した。KTi3遺伝子の3’非翻訳領域をJofuku et al.(上述)において記載される配列から、標準的なPCR法(Perkin Elmer Cetus社、GeneAmp PCR キット)により、プライマーML51およびML52を用いて増幅した。プライマーML51は、先に引用した配列の内の塩基1072−1091に相当する20ヌクレオチドに加えて、そのプライマーの5’端にEco RV(5’−GATATC−3’)、Nco I(5’−CCATGG−3’)、Xba I(5’−TCTAGA−3’)、Sma I(5’−CCCGGG−3’)、およびKpn I(5’−GGTACC−3’)部位に相当するヌクレオチドを含んでいた。プライマーML52は、先に引用した配列の塩基1242−1259に相当するヌクレオチドに対して完全な相補性を示すヌクレオチドに加えて、そのプライマーの5’端にSma I(5’−CCCGGG−3’)、Eco RI(5’−GAATTC−3’)、Bam HI(5’−GGATCC−3’)、およびSal I(5’−GTCGAC−3’)部位に相当するヌクレオチドを含んでいた。KTi3遺伝子のPCR増幅済み3’端をpML64のNco I/Eco RI部位内に連結してプラスミドpML65を作製した。合成の多重クローニング部位リンカーを、Pst I(5’−CTGCA−3’)、Sal I(5’−GTCGAC−3’)、Bam HI(5’−GGATCC−3’)、およびPst I(5’−CTGCA−3’)部位についてのコーディング配列を含んでなる相補的合成オリゴヌクレオチドの二量体を作製することにより構築した。このリンカーをpML65のPst I部位内に連結させて(KTi3プロモーター領域に対して5’端を直接連結することになる)プラスミドpML70を作製した。
【0152】
pSF2−169K(先に記載したダイズのデルタ−12 デサチュラーゼcDNA)からの1.46kbのSma I/Kpn I断片をpML70中の対応する部位内に連結させてプラスミドpBS10を取得した。このデサチュラーゼcDNA断片は、pBS10中のKTi3プロモーターに関して逆(アンチセンス)の向きになっていた。このプラスミドpBS10をBam HIで消化させ、そしてKTi3プロモーター/アンチセンス デサチュラーゼcDNA/KTi3−3’端転写ユニットである3.47kb断片をアガロースゲル電気泳動により単離した。このベクターpML18は、Beck et al.,(1982)Gene 19:327−336に記載されるネオマイシン ホスホトランスフェラーゼ遺伝子の発現を指令する非組織特異的であって構成性のカリフラワーモザイクウイルス(35S)プロモーター(Odell et al.、Nature (1985)313:810−812;Hull et al..Virology(1987)86:482−493を含んでなり、その後にはDepicker et al.(1982)J.Appl.Genet. 1:561−574により記載されるヌクレオチド848−1550を含むノパリンシンターゼ遺伝子の3’端が続いている。この転写ユニットを市販のクローニングベクターpGEM9Z(Gibco−BRL社)内に挿入し、そしてこの35Sプロモーターの5’端に制限部位Sal I、Xba I、Bam HI、およびSma Iをこの順序でつなげた。追加的なSal I部位がNOSの3’配列の3’端に存在し、そしてXba I、Bam HI、およびSal I部位は非反復である。pBS10から放出される3.47kbの転写ユニットをベクターpML18のBam HI部位内に連結させた。得られるプラスミドをSma IおよびKpn Iで二重消化させたところ、所望の向きで挿入断片を含むプラスミドから5.74、2.69、および1.46kbの3つの断片が生じた。転写ユニットが正しい向きになっているプラスミドを選択し、そしてそれをpBS13と表示した。
【0153】
pCW108ベクターはマメのファセオリンプロモーターおよび3’非翻訳領域を含み、そしてプラスミドAS3およびpCW104を介して市販品として入手可能なpUC18プラスミド(Gibco−BRL社)から取得した。pUC18のHind III部位内にクローン化させたプラスミドAS3は、5’−TGGTCTTTTGGT−3’で始まるマメ(ファセオルス ブルガリス(Phaseolus vulgaris))のファセオリン(7S種子貯蔵蛋白質)の内の495塩基対を含み、その後に同一遺伝子の3’非翻訳領域の全1175塩基対が続く(Doyle et al.,(1986)J.Biol.Chem.261:9228−9238、およびSlightom et al.,(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:1897−1901、を参照せよ。更に別の配列記述は国際公開第9113993号において見いだすことができる)。pUC18の多重クローニング領域の追加クローニング部位(Eco RI、Sph I、Pst I、およびSal I)を、Eco RIおよびSal Iでの消化、クレノウ断片での末端重点、および再連結により除去してプラスミドpCW104を取得した。新規の多重クローニング部位を、5’ファセオリン内の495bpと3’ファセオリンの1175bpとの間で、3つのフィラー塩基(filer bases)(5’−TAG−3’)、Sma I部位(5’−CCCGGG−3’)についてのコーディング配列、Kpn I部位の最後3つの塩基(5’−TAC−3’)、一つのシトシン、およびXba I部位(5’−TCTAGA−3’)についてのコーディング配列の前に入るように、Nco I部位(5’−CCATGG−3’)についてのコーディング配列を含んでなる相補的な合成オリゴヌクレオチドの2量体を挿入することにより作製して、プラスミドpCW108を作製した。このプラスミドは、ファセオリンプロモーターのすぐ後ろに非反復なNco I、Sma I、Kpn I、およびXba I部位が付いている。pSF2−169Kからの1.4kbのEco RV/Sma I断片を、市販品として入手可能なファゲミドpBC SK+(Stratagene社)のSma I部位内に連結した。cDNAが所望の向きになっているファゲミドをPfl MI/Xho Iでの消化により選択して約1kbおよび4kbの断片を生じ、そしてpM1−SF2と表示した。pM1−SF2からの1.4kbのXmn I/Xba I断片をpCW108のSma I/Xba I部位内に挿入してプラスミドpBS11を取得したが、これはファセオリンプロモーターの後ろに逆(3’−5’)の向きでダイズのデルタ−12 デサチュラーゼが入っている。このプラスミドpBS11をBam HIで消化させ、そしてファセオリンプロモーター/アンチセンス デサチュラーゼcDNA/ファセオリン3’端転写ユニットである3.07kbの断片をアガロースゲル電気泳動により単離し、そしてpML18(既述)のHind III部位内に連結させた。得られるプラスミドをXba Iで消化させると、所望の向きで挿入断片を含むプラスミドは8.01および1.18kbの2つの断片を生じた。転写ユニットが正しい向きになっているプラスミドを選択し、そしてpBS14と表示した。
【0154】
ベクターpCW109Aはダイズのb−コングリシンプロモーター配列とファセオリンの3’非翻訳領域とを含み、そしてこれは市販品として入手可能なプラスミドpUC18(Gibco−BRL社)から得られたベクターpCW109の改変版である。ベクターpCW109は、pCW108について先に記載したNco I、Sma I、Kpn I、およびXba Iについての制限エンドヌクレアーゼ部位を含む多重クローニング配列の前にあるクローニングベクターpUC108のHind III部位内にb−コングリシニン遺伝子の555bpの5’非コーディング領域(プロモーター領域を含む)を挿入し、そしてその後にそのHind III部位内(既述)マメのファセオリンの共通3’非翻訳領域の1174bpを挿入することにより作製した。用いたb−コングリシニンプロモーター領域は27のヌクレオチドの位置が異なっていることが原因で、公表されているb−コングリシニン遺伝子(Doyle et al.,J.Biol.Chem.(1986)261:9228−9238)の対立遺伝子となっている。この遺伝子の更に詳しい記載は、Slightom(国際公開第9113993号)において見いだすことができる。アンチセンス構築における利用を容易にさせるために、プラスミドpCW109内のNco I部位および可能な翻訳開示部位をNco Iでの消化、ヤエナリ(mung bean)のエキソヌクレアーゼでの消化、および平滑部位の再連結によって失わせて、改変型プラスミドpCW109Aを取得した。このプラスミドpCW109AをHind IIIで消化し、そして得られるb−コングリシニン/アンチセンス デルタ−12 デサチュラーゼcDNA/ファセオリン3’非翻訳領域を含む1.84kbの断片をゲルにより単離した。プラスミドpML18(既述)は、Xba I部位を除去する目的でXba Iで消化させ、クレノウ断片を用いて末端充填を行い、そして連結させた。得られるプラスミドをpBS16と表示した。プラスミドpCW109A(既述)の1.84kb断片をpBS16のHind III部位内に連結させた。所望の向きに挿入断片が入っているプラスミドはKpn Iで消化した際に3.53kbおよび4.41kbの断片を生じ、そしてこのプラスミドをpCST2と表示した。pML1−SF2(既述)のXmn I/Xba I断片をpCST2のSma I/Xba I部位内に連結させてベクターpST11を取得した。
【0155】
ダイズの体細胞胚芽培養物の形質転換およびダイズ植物の再生
ダイズ胚芽の懸濁培養物をロータリー式震盪機(150rpm)内の35mLの液体培地(SB55もしくはSBP6)中、28℃下で16:8時間の昼/夜計画で蛍光灯/白熱灯を混合して用いて維持した。培養物は4週間毎に約35mgの組織を35mLの液体培地中に接種させることにより継代培養した。
【0156】
ダイズの胚芽懸濁培養物を粒子ガン衝撃法(Kline et al.(1987)Nature(London)327:70、を参照せよ)によりpCS3FdST1Rで形質転換させた。DuPont Biolistic PDS1000/HE装置(ヘリウム用改装部品)をこれらの形質転換用に用いた。
【0157】
50mLの60mg/mLの1mm金粒子懸濁液に対して、以下に示す、5μLのDNA(1μg/μL)、20μLのスペルミジン(0.1M)、および50μlのCaCl(2.5M)を順に添加した。この粒子調製物を3分間撹拌し、10秒間微量用遠心機内で遠心し、そして上清を取り出した。その後、DNA含有性粒子を400μLの70%エタノール中で一回洗浄し、そして40μLの無水エタノール中に再懸濁させた。DNA/粒子懸濁液を各1秒間、3回超音波処理にかけた。その後5μLのDNA−金粒子を各マクロ担体ディスク上に乗せた。
【0158】
約300−400mgの4週齢懸濁培養物を空の60×15mmペトリ皿に入れ、そして残存している液体を、ピペットを用いて組織から除去した。各形質転換実験については、通常約5−10プレート分の組織を衝撃法にかけた。膜破壊圧を100psiに設定し、チャンバーの排気を行い、20インチの水銀圧にまで吸引した。組織を保持用スクリーンから約3.5インチ離れたところに入れ、そして3回衝撃を与えた。衝撃後、この組織を液体に戻し入れ、そして既述の要領で培養した。
【0159】
衝撃後11日目には液体培地を、50mg/mLのハイグロマイシンを含む新鮮なSB55と交換した。選択培地は毎週新鮮なものと交換した。衝撃後7週間目には、壊死症状を呈する形質転換しなかった胚芽形成性クラスターから緑色を示す形質転換された組織が生育していることが観察された。緑色組織を単離して取り出し、そして個々のフラスコ内に接種して、新規にクローンとして継代する形質転換済み胚芽懸濁培養物を作製した。従って、新規の各株を個々の形質転換体として処理した。その後これらの懸濁物は、継代培養を通して未成熟な発生段階においてクラスターを形成している胚芽の懸濁物として維持することができるか、あるいは個々の体細胞胚芽の成熟および発芽により完全な植物へと再生させることができる。
【0160】
形質転換させた胚芽形成性クラスターを液体培養物から取り出し、そしてホルモンもしくは抗生物質を含まない固体アガロース培地(SB103)上に置いた。胚芽を8週間、26℃下、16:8時間の昼/夜計画で蛍光灯と白熱灯の混合光を用いて培養した。この期間中に個々の胚芽をクラスターから取り出し、そして胚芽発生の様々な段階での分析を行った。8週間後には体細胞胚芽が発芽に適するようになってくる。発芽のためには、8週齢の胚芽を成熟培地から取り出し、そして空のペトリ皿で1−5日間乾燥させた。その後乾燥済み胚芽をSB71−1培地中に植え込むが、この培地中ではそれらの胚芽は、既述のものと同一の電照および発芽条件下で発芽することができた。発芽した胚芽を滅菌した土壌に移し、そして種子を回収するために成熟するまで育成した。
【0161】
【表10】

【0162】
アンチセンス デルタ−15 デサチュラーゼを含む形質転換グリシン マックス(Glycine max)の胚芽および種子の分析:
形質転換ダイズ体細胞胚芽の表現型によりこれらの胚芽から再生させた植物から得られる種子の表現型が予想されることの証明
既述の液体培養物中で球状胚芽状態である際には、ダイズの体細胞胚芽は成熟中のダイズ接合体胚芽に典型的なトリアシルグリセロールもしくは貯蔵蛋白質を非常に微量にのみ含んでいるに過ぎない。この発生段階においては、極性脂質(リン脂質およびグリコリピド)に対する総トリアシルグリセリドの比率は約1:4であり、この比率は体細胞胚芽の培養を開始したばかりの発生段階でのダイズ接合体胚芽に典型的な比率である。その上この球状段階においては、顕著な種子蛋白質(ベーター−コングリシニンのアルファーサブユニット、クニッツ トリプシン インヒビター3、およびダイズ種子のレクチン)についてのmRNAが本質的に欠失している。先に記載されるような、成熟中の体細胞胚芽状態への分化を可能にするためにホルモン非含有性培地に移す場合には、トリアシルグリセロールは最も豊富な種類の脂質となっている。その上、ベーター−コングリシニンのアルファーサブユニット、クニッツ トリプシン インヒビター3、およびダイズ種子のレクチンについてのmRNAは総mRNA集団の内でも非常に豊富な伝達物質である。これらの点においては、ダイズの体細胞胚芽系はインビボでの成熟中のダイズ接合体胚芽に非常に類似した挙動を示し、そしてそのため脂肪酸生合成経路での遺伝子発現を改変させることの表現型効果を分析するための良好かつ迅速なモデル系となる。その上、このモデル系により形質転換胚芽から得られる植物からの種子の脂肪酸組成を予測することができる。逆の向きであってしかもダイズ コングリシニンプロモーター(pCS3FdST 1R)の調節下にあるダイズのミクロソーム デルタ−15 デサチュラーゼを含むベクターで形質転換させた液体培養球状胚芽から18:3含有量が減少している成熟胚芽が生じた(国際公開第9311245号)。株A2872(pCSTで形質転換させた対照組織)、ならびに株299/1/3、299/15/1、303/7/1、306/3/1、306/4/3、306/4/5(プラスミドpCS3FdST1Rで形質転換させた株2872)からの多数の胚芽を脂肪酸含有量について分析した。脂肪酸分析は、国際公開第9311245号に記載されている要領で、組織源として単一胚芽を使用して実施した。これらの株の各々からの成熟した体細胞胚芽も記載される要領で再生培地に移すことによりダイズ植物内で再生させた。これらの胚芽株から再生させた植物から採取した多数の種子を脂肪酸含有量について分析した。pCS3FdST1Rで形質転換させた組織から採取した胚芽の相対的脂肪酸組成を、pCS3FdST1Rで形質転換させた胚芽から取得した植物から採取した種子の相対的脂肪酸組成と比較した。更に、pCS3FdST1Rで形質転換させた胚芽および種子の相対的脂肪酸組成を、pCSTで形質転換させた対照組織と比較した。全ての事例において、対照と比較して形質転換胚芽株では18:3含有量が減少しており、また対照種子と比較した際に、その株から得られた植物の分離種子においても18:3含有量の減少が観察された(表11)。
【0163】
【表11】

【0164】
従って本出願により、形質転換させた成熟体細胞胚芽株において観察されるポリ不飽和脂肪酸表現型の変化によって、その株から得られる植物の種子の脂肪酸組成の変化を予測することができるということが結論付けられる。
【0165】
ベクターpBS13、pBS14、およびpST11は、先に記載するアンチセンス ミクソローム デルター−12 デサチュラーゼ構築物を含む形質転換グリシン マックス(Glycine max)胚芽の分析から明らかなように、アンチセンスの向きになっていて、ダイズのクニッツ トリプシン インヒビター3(KTi3)、ファセオルス(Phaseolus)のファセオリン、およびダイズのベーター−コングリシニンプロモーターの調節下にあるダイズのミクロソーム デルタ−12 デサチュラーゼcDNAを含む。ベクターpBS13、pBS14、およびpST11で形質転換させた液体培養球状胚芽により先に記載の成熟胚芽株が生じた。脂肪酸分析は、国際公開第9311245号において記載される要領で、組織源として単一の成熟胚芽を使用して実施した。株A2872(pCSTで形質転換させた対照組織)ならびにベクターpBS13、pBS14、およびpST11で形質転換させた株A2872からの多数の胚芽を脂肪酸含有量について分析した。約30%の形質転換株は既述のpCSTで形質転換させた対照株と比較した際に18:1含有量の増加を示し、このことによりデルタ−12 デサチュラーゼがこれらの株において阻害されていることが証明された。残りの形質転換株は、対照株のものに類似する相対的脂肪酸組成を示した。18:1含有量の増加を示す株の相対的18:1含有量は、対照胚芽株における最大値である12.5%と比較すると50%という高い値を示した。18:1含有量が増加している胚芽株の平均18:1含有量は約35%であった(表11)。18:1含有量が増加している全ての株においては、相対的な18:2含有量がそれに比例して減少していた(表12)。他の主要脂肪酸(16:0、18:0、および18:3)の相対比は対照のものに類似していた。
【0166】
【表12】

【0167】
表12においては、形質転換体の18:1の平均値は、相対的18:1含有量が最高対照値(12.5)からの2つの標準偏差よりも大きい特別なベクターで形質転換させた全ての胚芽の平均値となっている。対照の平均値は10のA2872胚芽の平均である(標準偏差=1.2)。表12のデータは、以下に示す表13から取得したものである。
【0168】
【表13】

【0169】
【表14】

【0170】
【表15】

【0171】
これらの胚芽株の内の一つであるG335/1/25は、20%を下回る平均18:2含有量および45%を上回る(そして53.5%程の高い値の)平均18:1含有量を有する。本出願者は、表のデータに基づき、このような株から再生させた植物から取得した種子は18:1が等価であるかあるいはかなり増加しており、かつ18:2含有量が等価であるかあるいはかなり減少しているであろうと期待している。
【0172】
<実施例>
カノーラ(canola)におけるミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼの発現 発育中のカノーラ種子におけるミクロソームのデルタ−12 デサチュラーゼの発現を減少させるためのブラッシカ ナープス(Brassica napus)の形質転換用のベクターの作製
プラスミドpCF2−165D中に含まれるカノーラのデルタ−12 デサチュラーゼ配列からポリAテイル伸長部分を除去し、そしてクローニング用の追加制限部位を以下に記載するように導入した。配列番号3の塩基354から371までに対応するPCRプライマーを合成した。5’端に15の追加塩基(GCAGATATCGCGGCC)が添加してある塩基1253から1231までの相補物としての第二PCRプライマーを合成した。この追加塩基はEco RV部位とNot I部位との両方をコード化している。これらのプライマーを用いるPCR増幅のための鋳型としてpCF2−165Dを用いた。PCR増幅の914塩基対産物をEco RVとPfl MIとで消化させて、Not I部位が追加されているpCF2−165Dの塩基450から1253までに相当する812塩基対を取得した。
【0173】
pCF2−165DをPst Iで消化し、このPst Iの張り出し部分をクレノウ断片で平滑末端化させ、そしてPfl MIで消化させた。pBluescriptに相当する3.5kB断片をカノーラFad2のcDNAの5’端の450塩基と共にゲル精製し、そして既述の812塩基対断片に連結させた。この連結産物を大腸菌(E.coli)の形質転換およびプラスミドDNAの単離により増幅させた。pBluescriptとカノーラのFad2 cDNAとの間のクローニング連結部に残存するEco RI部位を、消化、平滑末端作製、および再連結により消失させた。回収されるプラスミドをpM2CFd2と命名した。
【0174】
pM2CFd2をEco RVとSma Iとで消化させて平滑末端断片としてFad2挿入断片を取り出した。この断片をゲル精製にかけ、そしてpBC(Stratagene社、La Jolla、CA)のSma I部位内にクローン化させた。pBC中に、現存のNot I部位から遠ざかる向きのPCRによりNot I部位を導入してあるプラスミドをNot I消化により同定し、そしてこの消化物をゲル分離法にかけた。その後、得られる構築物はカノーラのFad2 cDNA断片の両端にNot I部位が存在し、そしてこれをpM3CFd2と命名した。
【0175】
アグロバクテリウム ツメファキエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いる植物内への、β−コングリシニン、クニッツ トリプシン インヒビターIII、ネピン、およびファセオリンのプロモーターの調節下にあるアンチセンス細胞質性デルタ−12 デサチュラーゼ構築物の形質転換用のベクターは、2元性のTiプラスミドベクター系(Bevan、(1984) Nucl.Acids Res.12:8711−8720)を構築することにより作製した。この系についてのある出発用ベクター(pZS199)は、(1)形質転換植物細胞用の選択標識としてのキメラ遺伝子であるノパリンシンターゼ/ネオマイシン ホスホトランスフェラーゼ(Brevan et al.(1984)Nature 304:184−186)、(2)TiプラスミドのT−DNAの左右の境界領域部分(Brevan et al.(1984)Nucl.Acids res. 12:8711−8720)、(3)Eco RI、Kpn I、Bam HI、およびSal Iについての非反復な制限エンドヌクレアーゼ部位を有する大腸菌(E.coli)のlacZ a−相補性形成性セグメント(Vieria and Messing(1982)Gene 19:259−267)、(4)シュードモナス(Pseudomonas)属のプラスミドpVS1からの細菌性複製起点(Itoh et al.(1984)Plasmid 11:206−220)、ならびに(5)形質転換を生じているA.ツメファキエンス(A. tumefaciens)についての選択標識としてのTn5(Berg et al.(1975) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.72:3628−3632)からの細菌性ネオマイシン ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、を含むベクターに基づくものである。植物の選択標識中のノパリン シンターゼ プロモータを、標準的な制限エンドヌクレアーゼ消化および連結手法により35Sプロモーター(Odell et al.(1985)Nature、313:810−813)で置換した。この35Sプロモーターは、以下に記載するようにブラッシカ ナプス(Brassica napus)の効率のよい形質転換に必要である。第二ベクター(pZS212)は、pZS199の非反復部位のクローニング領域中の制限部位の順番を逆にすることにより作製した。
【0176】
カノーラ ネピンのプロモーター発現カセットは、以下に記載するように作製した。10のオリゴヌクレオチドプライマーを、欧州特許出願第255378号において公開されているネピン ラムダー クローンCGN1−2のヌクレオチド配列を基にして合成した。それらのオリゴヌクレオチド配列は以下に記載のものである。
【0177】
・欧州特許出願第255378号の図2に列挙される配列の内の塩基1132−1156(BR42)および塩基2248−2271(BR43)の相補物に相当するBR42およびBR43。
【0178】
・欧州特許出願第255378号の図2に列挙される配列の内の塩基1150−1170(BR46)および塩基2120−2155(BR45)の相補物に相当するBR45およびBR46。その上、BR46はSal I部位(5’−GTCGAC−3’)に相当する塩基および幾つかの追加塩基(5’−TCAGGCCT−3’)がそのプライマーの5’端に付いており、そしてBR45はBgl II部位(5’−AGATCT−3’)に相当する塩基および2つの(5’−CT−3’)追加塩基がそのプライマーの5’端に付いている。
【0179】
・欧州特許出願第255378号の図2に列挙される配列の内の塩基2705−2723(BR47)および塩基2643−2666(BR48)に相当するBR47およびBR48。その上BR47は、そのプライマーの5’端に2つの(5’−CT−3’)追加的な塩基、およびその後に続くBgl II部位(5’−AGATCT−3’)に相当する塩基、およびその後に続く幾つかの追加塩基(5’−TCAGGCCT−3’)が付いている。
【0180】
・欧州特許出願第255378号の図2に列挙される配列の内の塩基3877−3897(BR49)の相補物および塩基3985−3919(BR50)の相補物に相当するBR49およびBR50。その上BR49には、Sal I部位(5’−GTCGAC−3’)に相当する塩基および幾つかの追加塩基(5'−TCAGGCCT−3’)がその5’端に付いている。
【0181】
・欧州特許出願第255378号の図2に列挙される配列の内の塩基3875−3888(BR57)の相補物および塩基2700−2714(BR58)に相当するBR57およびBR58。その上BR57の5’端には、幾つかの余分な塩基(5’−CCATGG−3’)、およびそれに続くSac I部位(5’−GAGCTC−3’)に相当する塩基、およびそれに続く更に他の塩基(5’−GTCGACGAGG−3’)が付いている。BR58の5’端には、追加塩基(5’−GAGCTC−3’)、およびその後に続くNco I部位(5’−CCATGG−3’)に相当する塩基、およびその後に続く追加塩基(5’−AGATCTGGTACC−3’)が付いている。
【0182】
・欧州特許出願第255378号の図2に列挙される配列の内の塩基1846−1865(BR61)および塩基2094−2114(BR62)に相当するBR61およびBR62。その上BR62の5’端には、追加塩基(5’−GACA−3’)、およびその後に続くBgl II部位に相当する塩基(5’−AGATCT−3’)、およびその後に続く幾つかの追加塩基(5’−GCGGCCGC−3’)が付いている。
【0183】
カノーラ品種「Hyola401」(Zeneca Seeds社)からのゲノムDNAをネピン プロモーターおよびネピン ターミネーターのPCR増幅用の鋳型として用いた。このプロモーターを最初にプライマーBR42とBR43とを用いて増幅させ、そしてプライマー45とBR46とを用いて再増幅させた。プラスミドpIMC01を、Sal I/Bgl IIでの1.0kbのプロモーターPCR産物の消化、およびSal I/Bam HI消化済みpBluescript SK(Stratagene社)内への連結により取得した。ネピン ターミネーター領域をプライマーBR48とBR50とを用いて増幅させ、そしてプライマーBR47とBR49とを用いて再増幅させた。プラスミドpIMC06を、Sal I/Bgl IIでの1.2kbのターミネーターPCR産物の消化、およびSal I/Bgl II消化済みpSP72(Promega社)内への連結により取得した。pIMC06を鋳型として用いて、このターミネーター領域を、プライマーBR57とプライマーBR58とを用いるPCRにより再増幅させた。ネピンのプロモーターとターミネーターとの両方を含むプラスミドpIMC101を、Sac I/Nco IでのPCR産物の消化およびSac I/Nco I消化済みpIMC01内への連結により作製した。プラスミドpIM101は、ネピンの完全な5’および3’非翻訳配列、ならびに翻訳開始ATGに導入されたNco I部位を含む2.2kbのネピン発現カセットを含む。プライマーBR61およびプライマーBR62を用いて、ネピン プロモーターの3’端から〜270bpの断片をPCR増幅した。プラスミドpIMC401を、Eco RI/Bgl IIでの先より得られるPPCR産物の消化、およびEco RI/Bgl II消化済みpIMC101内への連結により取得した。プラスミドpIMC401は、ネピンの5’非翻訳配列を欠失している2.2kbのネピン発現カセットを含み、そして転写開始の位置にNot I部位を含んでいる。
【0184】
アンチセンス発現ベクターを作製するために、pM3CFd2をNot Iで消化し、そして同様の消化反応をpIMC401についても実施した。pM3CFd2の消化物からの挿入断片を含むデルタ−12 デサチュラーゼをゲル単離し、そしてNot I消化済みであってかつホスファターゼ処理済みであるpIMC401内に連結させた。デルタ−12 デサチュラーゼがネピン プロモーターに対してアンチセンスの向きになっている単離物をXho IとPfl MIとでの消化により選択してプラスミドpNCFd2Rを取得した。pNCFd2RをSal Iで消化し、ホスファターゼ処理に付し、そして同一処理により既に開環してあるpZS212内に連結させた。導入済みのネピン:デルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンス転写ユニットが選択標識に関して所望の向きになっているプラスミドをPvu Iでの消化により選択し、そして得られる2元性ベクターをpZNCFd2Rと命名した。
【0185】
プラスミドpML70(先の実施例6に記載)をNco Iで消化し、平滑末端を作製し、そしてその後Kpn Iで消化した。プラスミドp
M2CFdをKpn IとSma Iとで消化し、そして単離された断片を環化させてあるpML70内に連結させてアンチセンス発現カセットpMKCFd2Rを取得した。このプロモーター:デルタ−12 デサチュラーゼ:ターミネーター配列をBam HI消化によりpMKCFd2Rから取り出し、そして既にBam HI消化およびホスファターゼ処理を施してあるpZS199内に連結させた。選択標識に関して所望の向きになっているものをXho IとPfl MIとでの消化により決定して発現ベクターpZKCFd2Rを取得した。
【0186】
β−コングリシニンプロモーターを含む発現ベクターを、pM2CFd2のSma IおよびEco RV消化、ならびにSma I切断済みpML109A内への連結により作製した。アンチセンスの向きになっている単離物をXho IおよびPfl mIとの消化により同定し、そしてその転写ユニットをSal IおよびEco RI消化により単離した。単離したSal I−Eco RI断片をEco RI−Sal I消化済みpZS199内に連結させてpCCFd2Rを取得した。プロモーター含有性出発用ベクターとしてのpCW108およびベクターの2元性部分としてのpZS212とを用いる同様の方法を使用して、ファセオリン プロモーターを含む発現ベクターを取得してpZPhCFd2Rを作製した。
【0187】
ブラッシカ ナプス(Brassica napus)のアグロバクテリウム(Agrobacterium)介在性形質転換
2元性ベクターであるpZNCFd2R、pZCCFd2R、pZPhCFd2R、およびpZNCFd2Rを凍結/解凍法(Holsters et al.(1978)Mol Gen Genet 163:181−187)によりアグロバクテリウム(Agrobacterium)株LBA4404/pAL4404(Hockema et al.(1983)、Nature 303:179−180)内に転移させた。
【0188】
適切な2元性ベクターを保持する無感染化済みのアグロバクテリウム ツメファキエンス(Agrobacterium tumefaciens)株LAB4404と共に苗片を共栽培することによりブラッシカ ナプス(Brassica napus)培養物の品種「Wester」を形質転換させた。
【0189】
B.ナプス(B. napus)の種子を10%クロロックス(Chlorox)、0.1%SDS中で30分間撹拌し、そして滅菌済み蒸留水で完全にすすぐことにより滅菌した。この種子を、30mMのCaClおよび1.5%のアガロースを含む滅菌培地で発芽させ、そして24℃の暗所で6日間生育させた。
【0190】
植物形質転換用のアグロバクテリウム(Agrobacterium)の液体培養物を28℃下で、100mg/Lのカナマイシンを含む最少A培地中で一晩生育させた。細菌細胞を遠心によりペレット化させ、そして100μMのアセトシリンゴン(acetosyringone)を含む液体のムラシゲ アンド スツーグ 最少有機培地(Murashige and Skoog Minimal Organic medium)中10細胞/mLの濃度で再懸濁させた。
【0191】
B. ナプス(B. napus)苗の胚軸を5mm片に切断し、これを即座に細菌懸濁物中に入れた。30分後、胚軸片を細菌懸濁物から取り出し、そして100μMのアセトシリンゴンを含むBC−35カルス培地中に入れた。この植物組織とアグロバクテリア(Agrobacteria)とを薄明かりの中、24℃で3日間共栽培させた。
【0192】
胚軸片を、アグロバクテリア(Agrobacteria)を殺すための200mg/Lのカルベニシリン(carbenicillin)および形質転換済み植物細胞増殖についての選択を行うための25mg/Lのカナマイシンを含むBC−35カルス培地に移すことにより共栽培を停止させた。この苗片を、継続光の下、28℃で、この培地で3週間インキュベートした。
【0193】
4週間後にこれらのセグメントを、200mg/Lのカルベニシリンと25mg/Lのカナマイシンを含むBS−48再生培地に移した。植物組織は、カルス培地について記載してあるのと同一の培養条件下で、2週間毎に新鮮な選択再生培地で継代培養した。形質転換を生じたものと仮定される細胞は再生培地上で迅速に生育し、カリ(calli)が約2mmの直径に達した時点でそれらを苗軸片から取り出し、そしてカナマイシンを添加していない同一培地に入れた。
【0194】
BS−48再生培地へ転移させた後7週間以内に苗条が現れ始めた。苗条が識別可能な茎を形成したらすぐにそれらをカリから切除し、MSV−1A伸長培地に移し、そして24℃下の16:8時間の光り周期下へと移した。
【0195】
苗条が数節間分にまで伸長したら、それらをアガロース表面より上の位置で切断し、そして切断末端をルートン(Rooton)内に浸した。処理済み苗条を湿ったメトロ−ミックス350無土壌鉢植え培地(Metro−Mix 350 soiless potting medium)に植えた。この鉢をビニール袋で覆い、この袋は、その後約10日目に植物が完全に成長した際に取り外した。
【0196】
植物を、昼時間温度が23℃であって、かつ夜時間温度が17℃である16:8時間の光周期下で生育させた。最初の開花茎が伸長し始めたら、それをメッシュの花粉格納袋を被せて他配を防いだ。毎日数回植物を揺することにより自家授粉を容易にさせた。このようにしてこれまでに51の植物がpZCCFd2RおよびpZPhCFd2Rの両方を用いた形質転換から得られており、40の植物がpZKCFd2Rから得られており、そして26の植物がpZNCFd2Rから得られている。
最少A細菌増殖培地
以下のものを蒸留水に溶解せよ:
10.5グラムのリン酸カリウム、二塩基酸
4.5グラムのリン酸カリウム、一塩基酸
1.0グラムの硫酸アンモニア
0.5グラムのクエン酸ナトリウム、二水和物
蒸留水で979mLにメスアップせよ。
【0197】
オートクレーブ処理を行うこと。
【0198】
20mLのフィルター滅菌済み10%スクロースを添加せよ。
【0199】
1mLのフィルター滅菌済み1M MgSOを添加せよ。
ブラッシカ(Brassica)のカルス培地BC−35
リットル当たり:
ムラシゲ アンド スクーグの最少有機培地(Murashige and Skoog Minimal Organic Medium(MS塩、100mg/Lのi−イノシトール、0.4mg/Lのチアミン;GIBCO社 #510−3118)
30グラムのスクロース
18グラムのマニトール
0.5mg/Lの2,4−D
0.3mg/Lのカイネチン
0.6%のアガロース
pH5.8
ブラッシカ(Brassica)の再生培地BS−48
ムラシゲ アンド スクーグの最少有機培地
ガンボルグ B5 ビタミン(Gamborg B5 Vitamins)(SIGMA #1019)
10グラムのグルコース
250mgのキシロース
600mgのMES
0.4%のアガロース
pH5.7
フルター滅菌を行い、そして以下のものをオートクレーブ処理後に添加せよ:
2.0mg/Lのゼラチン
0.1mg/LのIAA
ブラッシカ(Brassica)の苗条伸長培地MSV−1A
ムラシゲ アンド スクーグの最少有機培地
ガンボルグ B5 ビタミン(Gamborg B5 Vitamins)
10グラムのスクロース
0.6%のアガロース
pH5.8
【0200】
アンチセンス ミクロソーム デルター−12 デサチュラーゼ構築物を含む形質転換ブラッシカ ナプス(Brassica napus)の種子の分析
51の植物がpZPhCFd2RとpZCCFd2Rとの両方での形質転換から得られ、そして40の植物がpZKCFd2Rから得られ、そして26の植物がpZNCFd2Rから得られた。オレイン酸(18:1)、リノレン酸(18:2)、およびリノール酸(18:3)の相対的レベルが発育中に変化しており、そのため種子脂肪酸表現型を高い信頼性を以て決定するには、正常な成熟および乾燥落種(drydown)を受けた種子で実施するのが最良である。相対的にはほとんどの形質転換済み植物は成熟にまで達しないが、鉢に移し変えてから少なくとも80日間が経過しており、そして黄色を呈ししかも黒色の沈着物を生じている種皮のある種子を含む莢が付いている植物から種子を採取した。プロモーターの種類、挿入されたデルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンス遺伝子の存在およびコピー数、ならびにその植物の稔性に基づく初期分析用に植物を選択した。
【0201】
脂肪酸分析は、形質転換植物および対照植物からの個々の種子のいずれかのものについて、実施例6に記載されるように個々の植物からの40mgの種子混合物について実施した。カノーラのデルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンス遺伝子の存在の検出用のサザン分析は、形質転換植物の葉から取得したDNAについて実施した。形質転換ベクターからプロモーター:デルタ−12 デサチュラーゼ断片を放出させるため、あるいはデルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンス遺伝子のコーディング領域の外側を切断するかのいずれかのためにDNAの消化処理を実施したが、ただしそれはそのベクターの左右のT−DNA境界領域内においてのみの消化処理であった。
【0202】
【表16】

【0203】
デルタ−12 デサチュラーゼのアンチセンス抑制について予期された脂肪酸表現型では、18:2の相対的含有量が減少しており、それに相関して18:1の含有量が増加している。植物番号151−22と158−8との両方は、植栽後83日目にWester対照と比較した際に、種子混合物の18:2含有量が実質的に減少していた。植物151−22も、Wester対照もしくは植物151−127(この植物は選択標識で形質転換させてあるがデルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンス遺伝子での形質転換は行っていない)と比較した際に、成熟した時点ではこの種の違いを示す。
【0204】
脂肪酸分析を一次形質転換体からの種子について実施したため、個々の種子を導入遺伝子の単数コピーもしくは複数コピーの存在について分離するべきである。分離した表現型はデルタ−12 デサチュラーゼ アンチセンス遺伝子の効果についての内部対照として役立つ。Westerの10の個々の種子、151−22の10の個々の種子、および12の個々の158−8の種子についての脂肪酸表現型の相対比を以下の表15に示す。
【0205】
【表17】

【0206】
Wester対照は、18:1もしくは18:2の含有量についての種子毎の変化が比較的小さい。その上、18:3/18:2の比率が各種子間で約0.35であり、この値が常に維持されている。植物#158−8は、1:2:1もしくは1:3のいずれかの分離比を示し、それは、サザン分析によるとその植物が単一の導入遺伝子を含んでいることがその理由となっている。1:2:1の比率は半優性のコピー数効果を示す一方で、1:3の比率は完全優性を示すものと思われる。野生型158−8の2つの分離個体が表15において明らかに示されているが、一方で残りの種子は同一であるか、あるいは84%を上回る18:1の2つの種子はホモ接合性形質転換体であるかのいずれかの可能性がある。いずれの場合においても、それらの種子の脂肪酸表現型は、この世代における効率のよいデルタ−12 デサチュラーゼ抑制について予測されたものである。植物151−22の種子の脂肪酸表現型は、18:1および18:2の含有量においては変化が観察されており、18:1は対照平均値よりも高く、かつ18:2はそれよりも低くなっている。多重コピー形質転換植物の分離が非常に複雑であることは、予期されるとりに明白なことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子の脂肪酸含量が、少なくとも80%の含量のオレインサンおよび5%以下の含量のパルミチン酸とステアリン酸の混合物を含んでなるブラシカ(Brassica)植物の種子。
【請求項2】
少なくとも80%の含量のオレインサンおよび5%以下の含量のパルミチン酸とステアリン酸の混合物を含んでなる、ブラシカ(Brassica)植物の種子から得られる油。

【公開番号】特開2009−171968(P2009−171968A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10456(P2009−10456)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【分割の表示】特願2006−108930(P2006−108930)の分割
【原出願日】平成5年10月15日(1993.10.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】