説明

変圧器及び変圧器の冷却方法

【課題】変圧器本体を適正な温度に維持すると共に絶縁油の保有する熱を回収可能な変圧器及び絶縁油を適正な温度に冷却すると共に絶縁油の保有する熱を汽力発電プラントの運転に有効利用できる変圧器の冷却方法を提供する。
【解決手段】変圧器1は、汽力発電プラントに備えられる変圧器であって、変圧器本体2と、絶縁油を冷却する水冷式冷却器3と、油循環ポンプ4を備え、前記変圧器本体2と前記水冷式冷却器3との間を絶縁油を循環可能に接続する絶縁油循環ライン5と、を備え、前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器11、前記復水器11の出口部に設けられた復水ポンプ12及びこれらの間を送水可能に結ぶ管路を含み構成される復水系統10を有し、前記水冷式冷却器3に冷却媒体として前記復水系統10の復水を送り、前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水系統10に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汽力発電プラントに備えられる変圧器及びその冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所に備えられる主変圧器など容量の大きい変圧器には、変圧器本体に収納された鉄心及び巻線が絶縁油に浸された油入変圧器が多く使用されている。変圧器本体の外部には冷却装置が設けられ、変圧器本体と冷却装置とは管路で結ばれ油循環ラインが形成され、絶縁油は、油循環ラインの途中に設けられた油循環ポンプを介して変圧器本体と冷却装置との間を循環し、変圧器本体内の温度の高くなった絶縁油は、冷却装置で冷却された後、変圧器本体内に戻される。冷却装置は、一般的に絶縁油が流通する空冷式冷却器と空冷式冷却器に冷却用の空気を送るファンとで構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
変圧器の冷却方法については、これまでに多くの発明がなされている(例えば特許文献2)。特許文献2に記載の変圧器の冷却方法は、消費電力を抑制しつつ絶縁油を適正な温度に冷却するために絶縁油の温度に応じて、油循環ポンプとファンとを同時に稼働させる、ファンを稼働させることなく油循環ポンプのみ稼働させ油を循環させる、油循環ポンプ及びファンを共に停止させる方法を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−68119号公報
【特許文献2】特開2009−290109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで変圧器に関しては、変圧器の冷却方法、特に絶縁油の適切な冷却方法又は効率的な冷却方法の開発、改善に注目が集まっており、特許文献2以外にも多くの変圧器の冷却方法に関する発明がなされている。絶縁油の冷却は、逆方向からみれば絶縁油の保有する熱の回収と捉えることができるが、これまで絶縁油の保有する熱の回収については、殆ど着目されておらず、絶縁油の保有する熱を回収しつつ変圧器を冷却する方法、さらにはそれに使用する装置の発明は、これまでになされていない。発電所に備えられる主変圧器などでは、変圧器本体を適正な温度に維持すると共に絶縁油の保有する熱を回収し、回収した熱を発電プラントの運転に有効利用することができれば、発電プラントの熱効率が高まり好ましい。
【0006】
本発明の目的は、汽力発電プラントに備えられる変圧器であって、変圧器本体を適正な温度に維持すると共に絶縁油の保有する熱を回収可能な変圧器及び絶縁油を適正な温度に冷却すると共に絶縁油の保有する熱を汽力発電プラントの運転に有効利用できる変圧器の冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、汽力発電プラントに備えられる変圧器であって、変圧器本体と、絶縁油を冷却する水冷式冷却器と、循環ポンプを備え、前記変圧器本体と前記水冷式冷却器との間を絶縁油を循環可能に接続する絶縁油循環ラインと、を備えることを特徴とする変圧器である。
【0008】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法であって、前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器、前記復水器の出口部に設けられた復水ポンプ及びこれらの間を送水可能に結ぶ管路を含み構成される復水系統を有し、前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記復水系統の復水を送り、前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水系統に戻すことを特徴とする変圧器の冷却方法である。
【0009】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法において、前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記復水ポンプの出口部から復水を送ることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法において、前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水ポンプの吸込側に戻すことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法であって、前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器、前記復水器の出口部に設けられた復水ポンプ、前記復水ポンプの出口部に設けられた復水熱交換器及びこれらの間を送水可能に結ぶ管路を含み構成される復水系統と、軸受冷却水ポンプを通じて水素ガスクーラ、補機等に冷却水を送り、温度の高くなった戻り冷却水を軸受冷却水冷却器で冷却し、冷却水を循環使用する軸冷系統と、を備え、前記復水熱交換器の高温側と前記軸冷系統とが接続し、前記軸冷系統の戻り冷却水で復水が加熱可能に構成され、前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記軸冷系統の冷却水を送り、前記絶縁油と熱交換した冷却水を前記軸冷系統に戻すことを特徴とする変圧器の冷却方法である。
【0012】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法において、前記変圧器は、前記水冷式冷却器を複数備え、複数の水冷式冷却器が前記絶縁油循環ラインに直列に配置され、上流側の前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記復水系統の復水を送り、前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水系統に戻し、下流側の前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記軸冷系統の冷却水を送り、前記絶縁油と熱交換した冷却水を前記軸冷系統に戻すことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法において、前記変圧器の負荷及び/又は外気温に応じて、前記上流側水冷式冷却器及び/又は前記下流側水冷式冷却器に冷却媒体を送ることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記変圧器の冷却方法において、前記循環ポンプを常時運転し、前記変圧器本体内を規定温度以下に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変圧器は、汽力発電プラントに備えられる変圧器であって、絶縁油を冷却する水冷式冷却器を備えるので、汽力発電プラントから水冷式冷却器に冷却用の水を送ることで、絶縁油を十分に冷却することができる。これにより変圧器本体を適正な温度に維持するができる。また絶縁油を冷却し温度を上昇させた水を汽力発電プラントの運転に利用することで汽力発電プラントの熱効率を高めることができる。
【0016】
本発明の変圧器の冷却方法は、絶縁油を冷却する水冷式冷却器に冷却媒体として汽力発電プラントの復水系統から復水を送り、絶縁油と熱交換した復水を復水系統に戻すので、絶縁油を適正な温度に冷却しつつ復水を加熱することができる。これにより汽力発電プラントの熱効率を高めることができる。
【0017】
また本発明によれば、絶縁油を冷却する水冷式冷却器に冷却媒体として復水ポンプ出口部から復水を送るので、簡単に送水することができる。
【0018】
また本発明によれば、絶縁油と熱交換した復水を復水ポンプの吸込側に戻すので、水冷式冷却器の低温流体側圧力を低くすることができる。この結果、水冷式冷却器の設計圧力を低くすることが可能となり好ましい。
【0019】
また本発明の変圧器の冷却方法は、絶縁油を冷却する水冷式冷却器に冷却媒体として軸冷系統の冷却水を送り、絶縁油と熱交換した冷却水を軸冷系統に戻すので、絶縁油を適切に冷却することができる。特に軸冷系統の冷却水は、夏季においても低い温度に調整されているので、夏季でも絶縁油を十分に冷却することができる。また絶縁油と熱交換した冷却水は復水熱交換器に送られ復水を加熱するので、汽力発電プラントの熱効率を高めることができる。
【0020】
また本発明によれば、変圧器は、水冷式冷却器を複数備え、複数の水冷式冷却器が絶縁油循環ラインに対して直列に配置され、上流側の水冷式冷却器を復水で、下流側の水冷式冷却器を軸冷系統の冷却水で冷却するので、絶縁油を適正な温度に冷却すると共に絶縁油の保有する熱を汽力発電プラントの運転に有効利用することができる。
【0021】
また本発明によれば、変圧器の負荷及び/又は外気温に応じて、前記上流側水冷式冷却器及び/又は前記下流側水冷式冷却器に冷却媒体を送るので、冷却媒体供給のランニングコストを抑制しつつ絶縁油を適切な温度に冷却し、さらに絶縁油の保有する熱を汽力発電プラントの運転に有効利用することができる。
【0022】
また本発明によれば、循環ポンプを常時運転し、変圧器本体内を規定温度以下に維持するので、変圧器の寿命低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態としての変圧器の構成及び水冷式冷却器へ送る冷却媒体の系統を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態としての変圧器の水冷式冷却器へ送る冷却媒体の系統を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態としての変圧器の構成及び水冷式冷却器へ送る冷却媒体の系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態としての変圧器の構成及び水冷式冷却器へ送る冷却媒体の系統を示す図である。変圧器1は、汽力発電プラント内に設置されている。
【0025】
変圧器1は、油入変圧器であり、変圧器本体2と、絶縁油を冷却する水冷式冷却器3と、油循環ポンプ4を備え、変圧器本体2と水冷式冷却器3との間を絶縁油を循環可能に接続する絶縁油循環ライン5とを備える。
【0026】
変圧器本体2は、密閉した筐体内に鉄心及び巻線を収納し、鉄心及び巻線は、絶縁油に浸漬した状態で筐体内に収納されている。鉄心及び巻線の損失熱により温度を上昇させた絶縁油は、油循環ポンプ4を介して水冷式冷却器3に送られる。
【0027】
水冷式冷却器3は、隔壁式熱交換器であり、水冷式冷却器3に送られた絶縁油は、冷却媒体である汽力発電プラントの復水系統10から送られる復水と熱交換し温度を低下させる。ここで使用可能な水冷式冷却器3は、隔壁式熱交換器であれば、特定の熱交換器に限定されるものではなく、例えば、シェルアンドチューブ形熱交換器、多管式熱交換器を使用することができる。冷却された絶縁油は、絶縁油循環ライン5を通じて変圧器本体2内に返送される。このように変圧器1は、変圧器本体2内の温度の上昇した絶縁油を水冷式冷却器3で冷却後、変圧器本体2内に返送することで、変圧器本体2内の温度上昇を抑制する。
【0028】
水冷式冷却器3には、汽力発電プラントの復水系統10の復水が冷却媒体として送られ、絶縁油は復水により冷却される。汽力発電プラントの復水系統10は、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させ復水にする復水器11、復水を圧送する復水ポンプ12、水中の塩類を除去する脱塩装置13、復水昇圧ポンプ14、復水昇圧ポンプ14から送られる復水と軸冷系統の軸冷水とを熱交換させ、軸冷水から熱回収する復水熱交換器15及びこれらを送水可能に結ぶ管路16、17、18、19、20を含み構成される。
【0029】
復水ポンプ12と脱塩装置13とを結ぶ管路17の途中には、流量調整が可能な三方弁25が取付けられている。三方弁25の一方の出口部は、管路26を通じて水冷式冷却器3の冷却媒体入口部と結ばれ、水冷式冷却器3の冷却媒体出口部は、管路27を通じて脱塩装置13の入口部と接続する管路17につながる。
【0030】
三方弁25の制御は、温度調節計7が行う。水冷式冷却器3出口部の絶縁油循環ライン5には、温度調節計7と接続する温度検出器6が装着されており、温度調節計7は、水冷式冷却器3出口部の絶縁油温度が設定温度となるように、三方弁25を介して水冷式冷却器3に送る復水の量を調整する。
【0031】
上記のように構成される変圧器1は、絶縁油を冷却する冷却器が水冷式であるので、空冷式冷却器に比較して冷却能力に優れ、絶縁油を十分に冷却することができる。また絶縁油と熱交換し温度を上昇させた復水は、復水系統10に戻されるので復水の温度が上昇する。この結果、給水加熱器の負荷が低下し、汽力発電プラントの熱効率が上昇する。また水冷式冷却器3への復水の供給を、復水ポンプ12の出口部から行うので簡単に行うことができる。
【0032】
上記実施形態は、次のように変更することもできる。上記実施形態では、水冷式冷却器3から排出される戻り復水は、脱塩装置13の入口部に戻されるが、この戻り復水を復水ポンプ12の吸込側に戻してもよい。具体的には、水冷式冷却器3の冷却媒体出口部に設けられる管路27の出口部を管路16につなぎ、必要に応じて管路27の途中に背圧弁を設ける。水冷式冷却器3から排出される戻り復水を復水ポンプ12の吸込側に戻す場合、一部の復水が循環使用されることとなる。一般的に、復水を循環使用する方法は、復水の温度が上昇するので、冷却媒体の供給方法として好ましい方法とは言えない。しかし復水ポンプ12の吐出量に比べ、水冷式冷却器3に送る復水の量が小さい場合には、殆ど温度上昇がないか、温度上昇してもほんのわずかであるので、冷却媒体として十分に使用することができる。
【0033】
水冷式冷却器3から排出される戻り復水を脱塩装置13の入口部に戻す場合、水冷式冷却器3は、復水ポンプ12の吐出圧に耐える仕様とする必要がある。一方、水冷式冷却器3から排出される戻り復水を復水ポンプ12の吸込側に戻す場合、水冷式冷却器3の設計圧力を、大幅に低下させることができる。通常、汽力発電プラントに設けられる復水器11は真空状態で運転されているため復水ポンプ12の吸込側圧力は低く、復水ポンプ12の吸込側と連絡する管路27内の圧力も低くなる。復水ポンプ12の吐出圧は、通常、1MPa程度であるので、水冷式冷却器3から排出される戻り復水を復水ポンプ12の吸込側に戻す方法は、水冷式冷却器3の設計圧力を低下させる点において有用な方法と言える。
【0034】
図2は、本発明の第2実施形態としての変圧器の水冷式冷却器へ送る冷却媒体の系統を示す図である。第1実施形態に示す変圧器及び冷却媒体の系統と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、水冷式冷却器3には、汽力発電プラントの軸冷系統30の冷却水が冷却媒体として送られ、絶縁油は軸冷系統30の冷却水より冷却される。汽力発電プラントの軸冷系統30は、軸受冷却水ポンプ31、軸受冷却水冷却器32及びこれらの間を結び冷却水を循環させる管路を含み、循環路が形成され、冷却水は、循環使用される。
【0036】
軸受冷却水ポンプ31から送水された戻り冷却水は、軸受冷却水冷却器32で温度を低下させた後、管路33を通じて水素ガスクーラ51に送られる。水素ガスクーラ51で水素ガスを冷却し温度を上昇させた戻り冷却水は、管路34を通じて復水熱交換器15に送られる。同様に軸受冷却水冷却器32を出た冷却水は、管路33に接続する管路35を通じて給水ポンプ、通風機などのボイラ・タービン補機52に送られ、軸受部を冷却し温度を上昇させた戻り冷却水は、管路36を通じて管路34に合流した後、復水熱交換器15に送られる。復水熱交換器15では、復水と戻り冷却水とが熱交換し、復水は温度を上昇させ、戻り冷却水は、熱を奪われ温度を低下させる。復水と熱交換した戻り冷却水は、管路37を通じて軸受冷却水ポンプ31に送られる。軸受冷却水冷却器32には、冷却媒体として海水が使用される。なお、図示を省略したが、軸冷系統30の冷却水は、水素ガスクーラ51と同様の要領で、交流励磁器冷却器、固定子冷却水装置、タービン油冷却器、離相母線冷却器を冷却する。
【0037】
管路33には、冷却水を水冷式冷却器3に送る管路41が接続し、管路41は他端部を水冷式冷却器3の冷却媒体入口部と接続する。水冷式冷却器3の冷却媒体出口部には、冷却水を軸冷系統に戻すための管路42が接続し、管路42は、管路34に接続する。管路41の途中には、流量調整弁43が設けられ、流量調整弁43は、水冷式冷却器3出口部の絶縁油温度を検出する温度検出器6と接続する温度調節計7からの信号により、水冷式冷却器3出口部の絶縁油温度が設定温度となるように冷却水量を調整する。
【0038】
第2実施形態に示す水冷式冷却器3も第1実施形態の変圧器1と同様に、絶縁油を十分に冷却することができる。軸冷系統30の冷却水は、年間を通じて30℃程度に維持されているので、好ましい冷却媒体と言える。絶縁油と熱交換し温度を上昇させた冷却水は、復水熱交換器15で熱回収されるので復水の温度が上昇し、結果、給水加熱器の負荷が低下し、汽力発電プラントの熱効率が上昇する。
【0039】
図3は、本発明の第3実施形態としての変圧器の構成及び水冷式冷却器へ送る冷却媒体の系統を示す図である。第1及び第2実施形態に示す変圧器及び冷却媒体の系統と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
第3実施形態に示す変圧器8は、水冷式冷却器3a、3bを2基備え、上流側に配置される水冷式冷却器3aで冷却された絶縁油をさらに下流側に配置される水冷式冷却器3bで冷却可能に2基の水冷式冷却器3a、3bが、絶縁油循環ライン5に直列に配置されている。この水冷式冷却器3a、3bは共に隔壁式熱交換器である。上流側に配置される水冷式冷却器3aには、汽力発電プラントの復水系統10の復水が冷却媒体として送られ、下流側に配置される水冷式冷却器3bには、汽力発電プラントの軸冷系統30の冷却水が冷却媒体として送られる。
【0041】
第3実施形態に示す変圧器8は、水冷式冷却器3a、3bが2基、絶縁油循環ライン5に直列に配置されているので、より効率的に絶縁油を冷却し、さらに熱回収することができる。夏季には、復水の温度は40℃程度となるので、上流側に配置される水冷式冷却器3aで絶縁油を50℃程度まで冷却した後、下流側に配置される水冷式冷却器3bで絶縁油を45℃程度まで冷却させることもできる。冬季では、復水の温度も30℃程度であるので、上流側に配置される水冷式冷却器3aにのみ冷却媒体を送るようにしてもよい。温度の異なる冷却媒体を使用し、上流側の水冷式冷却器3aに温度の高い冷却媒体を供給することで、変圧器8の負荷、季節、外気温によらず効率的に絶縁油を冷却することができる。
【0042】
上記実施形態で示すように本発明の変圧器1、8は、絶縁油を冷却する水冷式冷却器3、3a、3bを備えるので、冷却媒体として汽力発電プラントから復水系統10、軸冷系統30の冷却水を送ることで、絶縁油を十分に冷却することができる。さらに絶縁油を冷却し温度を上昇させた水を汽力発電プラントの運転に利用することで、変圧器本体2を適正な温度に冷却しつつ絶縁油の保有する熱を汽力発電プラントの運転に有効利用することができる。また油循環ポンプ4を常時運転し、変圧器本体2内を規定温度以下に維持することで、変圧器1、8の寿命低下を抑制することができる。このような変圧器は、容量の大きい主変圧器に好適に使用することができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に、また先の実施形態で使用された数値に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更し使用することができる。例えば、第1から第3実施形態では、流量を調整する三方弁25、流量調整弁43を冷却媒体の入口側に設けているが、出口側に設けてもよい。三方弁25に代え、流量調整弁を設けてもよい。さらに場合によっては、常時一定量の冷却水を復水系統10、軸冷系統30から送るようにして流量調整弁、温度調節計を省略してもよい。また上記実施形態の復水系統10には、脱塩装置13、復水昇圧ポンプ14が設けられていたが、これらを備えない復水系統10の復水を使用可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 変圧器
2 変圧器本体
3、3a、3b 水冷式冷却器
4 油循環ポンプ
5 絶縁油循環ライン
8 変圧器
10 復水系統
11 復水器
12 復水ポンプ
15 復水熱交換器
25 三方弁
30 軸冷系統
31 軸受冷却水ポンプ
32 軸受冷却水冷却器
51 水素ガスクーラ
52 ボイラ・タービン補機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汽力発電プラントに備えられる変圧器であって、
変圧器本体と、
絶縁油を冷却する水冷式冷却器と、
循環ポンプを備え、前記変圧器本体と前記水冷式冷却器との間を絶縁油を循環可能に接続する絶縁油循環ラインと、
を備えることを特徴とする変圧器。
【請求項2】
請求項1に記載の変圧器の冷却方法であって、
前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器、前記復水器の出口部に設けられた復水ポンプ及びこれらの間を送水可能に結ぶ管路を含み構成される復水系統を有し、
前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記復水系統の復水を送り、前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水系統に戻すことを特徴とする変圧器の冷却方法。
【請求項3】
前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記復水ポンプの出口部から復水を送ることを特徴とする請求項2に記載の変圧器の冷却方法。
【請求項4】
前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水ポンプの吸込側に戻すことを特徴とする請求項3に記載の変圧器の冷却方法。
【請求項5】
請求項1に記載の変圧器の冷却方法であって、
前記汽力発電プラントは、タービンの排気蒸気を冷却し復水にする復水器、前記復水器の出口部に設けられた復水ポンプ、前記復水ポンプの出口部に設けられた復水熱交換器及びこれらの間を送水可能に結ぶ管路を含み構成される復水系統と、
軸受冷却水ポンプを通じて水素ガスクーラ、補機等に冷却水を送り、温度の高くなった戻り冷却水を軸受冷却水冷却器で冷却し、冷却水を循環使用する軸冷系統と、を備え、
前記復水熱交換器の高温側と前記軸冷系統とが接続し、前記軸冷系統の戻り冷却水で復水が加熱可能に構成され、
前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記軸冷系統の冷却水を送り、前記絶縁油と熱交換した冷却水を前記軸冷系統に戻すことを特徴とする変圧器の冷却方法。
【請求項6】
請求項1に記載の変圧器は、前記水冷式冷却器を複数備え、複数の水冷式冷却器が前記絶縁油循環ラインに直列に配置され、
上流側の前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記復水系統の復水を送り、前記絶縁油と熱交換した復水を前記復水系統に戻し、下流側の前記水冷式冷却器に冷却媒体として前記軸冷系統の冷却水を送り、前記絶縁油と熱交換した冷却水を前記軸冷系統に戻すことを特徴とする請求項5に記載の変圧器の冷却方法。
【請求項7】
前記変圧器の負荷及び/又は外気温に応じて、前記上流側水冷式冷却器及び/又は前記下流側水冷式冷却器に冷却媒体を送ることを特徴とする請求項6に記載の変圧器の冷却方法。
【請求項8】
前記循環ポンプを常時運転し、前記変圧器本体内を規定温度以下に維持することを特徴とする請求項2から7のいずれか1に記載の変圧器の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−104574(P2012−104574A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250372(P2010−250372)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】