説明

変復調装置

【課題】モデムの等化器収束が大きく遅れてもデータモードに移行できるようにした装置を提供する。
【解決手段】発信器から出力されるクロックをカウンタでカウントし、カウンタのオフセット値からオーバフローするまでの間隔がタイマー設定値となる構成で、応答モデムから送出したスクランブルされた“1”信号の送出時間(待機時間)が起呼モデムの等化器の収束に要する時間とその後の検出に要する時間(270ms)の和となるようにオフセット設定部からカウンタのオフセット値を変更可能とするよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送技術における変復調装置に係り、特に変復調装置の接続手順に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変復調装置(モデム)は、国際標準であるITU―Tによって策定された勧告に従って接続手順が定められている。この中で、非特許文献1には回線速度が1200bpsについて述べられており、この接続手順については図4のように説明されている。
【0003】
図4で、応答モデムからアンサトーン信号1に続いてスクランブルされない“1”信号2が時刻t0で無音待機している起呼モデムへ送出されると、起呼モデムはスクランブルされない“1”信号2を時刻t0〜t1の155ms連続検出してからスクランブルされた“1”信号3を時刻t1で応答モデムへ送信する。 応答モデムはスクランブルされた“1”信号3を等化器収束後、時刻t2〜t3の270ms連続検出すると、スクランブルされた“1”信号4を時刻t3〜t7の765ms送出した時刻t7からデータモード5へ移行する。
【0004】
他方、起呼モデムは時刻t3で応答モデムからのスクランブルされた“1”信号4を等化器収束後、時刻t4〜t6の270ms連続検出した後、時刻t6〜t9の765ms待機時間後データモード6へ移行する。この時、スクランブルされた“1”信号を起呼モデムで検出し始めると受信回路の回線等化器が等化を開始するが、スクランブルされた“1”信号4が270ms連続して検出されるためには、固定された待機時間765msを考慮して、起呼モデムの等化器の収束に要する時間は495ms(=765ms―270ms)以下でなければならない。
【非特許文献1】モデム通信規格の国際勧告ITU―TのV.22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4で、等化器の収束に要する時間が時刻t3〜t5の565msとなった波線で示した例は、検出時間が時刻t5〜t7の200msで270msより短いために検出不可となり、データモードへ移行できない場合を示している。
【0006】
このように、起呼モデムの等化器収束が大きく遅れて495ms以上となった場合には、応答モデムがスクランブルされた“1”信号4を時刻t3〜t7の765ms送出後データモード5に移行するため、起呼モデムはスクランブルされた“1”信号4を270ms連続して受け取ることができず、データモード6に移行できなくなる問題があった。本発明の目的は、上記問題を解決してデータモードに移行できるようにした装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、対向モデム間で非同期にデータモードへ移行することができる接続手順を具備したモデムにおいて、
発信器から出力されるクロックをカウンタでカウントし、カウンタのオフセット値からオーバフローするまでの間隔がタイマー設定値となる構成で、応答モデムから送出したスクランブルされた“1”信号の送出時間(待機時間)が起呼モデムの等化器の収束に要する時間とその後の検出に要する時間(270ms)との和になるようにオフセット設定部からカウンタのオフセット値を変更可能とするよう構成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第2は、オフセット設定部にレジスタを用いてカウンタのオフセット値を変更可能とするよう構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によれば、回線の特性が変化して等化器の収束が遅れることがあってもタイマー設定値を変えるだけの簡単な構成で接続が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す変復調装置15の部分構成図である。タイマー11は、発信器7、カウンタ8、及びオフセット設定部9から構成され、発信器7から出力されるクロックをカウンタ8でカウントする。タイマー設定値は、カウンタのオフセット値からオーバフローするまでの間隔となるので、オフセット設定部のオフセット値を変えることにより調整可能である。また、タイマーのセット及びリセット10はCPUからの信号によって行なわれる。また、タイマー11のタイマー設定値の出力はCPU13を介して回線制御部14から回線へ出力される。
【0011】
次に本発明の動作について図3を参照して説明する。応答モデムの時刻t3〜t8の待機時間設定に上記のタイマー11を用いて、スクランブルされた“1”信号4の送出時間を起呼モデムの等化器の収束に要する時刻t3〜t5の時間とその後の検出に要する時刻t5〜t8の時間270msとの和に設定することにより、スクランブルされた“1”信号4を270ms連続して検出することができ時刻t8〜t10の765msの待機時間後データモード6に移ることができる。
【0012】
図2は、本発明の第2の実施形態を示す変復調装置15の部分構成図である。図2において、図1と相違する点は、オフセット設定部9をレジスタ16で構成した点で、その他は同じであるのでその説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す構成図。
【図3】本発明のタイムチャート。
【図4】従来のタイムチャート。
【符号の説明】
【0014】
1… アンサトーン信号
2… 応答モデムのスクランブルされない“1”信号
3… 起呼モデムのスクランブルされた“1”信号
4… 応答モデムのスクランブルされた“1”信号
5… 応答モデムのデータモード
6… 起呼モデムのデータモード
7… 発信器
8… カウンタ
9… オフセット設定部
10… リセット
11、12… タイマー
13… CPU
14… 回線制御部
15… 変復調装置
16… レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向モデム間で非同期にデータモードへ移行することができる接続手順を具備したモデムにおいて、
発信器から出力されるクロックをカウンタでカウントし、カウンタのオフセット値からオーバフローするまでの間隔がタイマー設定値となる構成で、応答モデムから送出したスクランブルされた“1”信号の送出時間(待機時間)が起呼モデムの等化器の収束に要する時間とその後の検出に要する時間(270ms)との和になるようにオフセット設定部からカウンタのオフセット値を変更可能とするよう構成したことを特徴とする変復調装置。
【請求項2】
前記オフセット設定部にレジスタを用いて前記カウンタのオフセット値を変更可能とするよう構成したことを特徴とする請求項1記載の変復調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−49246(P2007−49246A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228976(P2005−228976)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】