説明

変性グラフト共重合体

【課題】ポリオレフィン連鎖長が十分に長く、かつ高い変性量を有する変性グラフト共重合体を提供する。
【解決手段】グラフト共重合体の官能基を変性して得られる変性グラフト共重合体であって、該グラフト共重合体が以下の(a)〜(e)を満たし、該官能基が反応してなる機能性側鎖を有する変性グラフト共重合体を提供する。
(a)グラフト率が1〜150質量%
(b)GPCで測定した重量平均分子量が500〜400000
(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
(d)主鎖が、官能基を有する単量体単位を含有する重合鎖
(e)側鎖が、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合鎖若しくは二種以上の共重合鎖、またはエチレン単位が50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィン単位およびエチレン単位からなる共重合鎖のいずれかであり、かつメソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%の重合鎖

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性グラフト共重合体に関し、より詳しくは、特定の単量体単位を含有する主鎖および特定のポリオレフィン連鎖である側鎖を有するグラフト共重合体を変性して得られる、特定の構造を有する変性グラフト共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは、成形性、機械物性、電気的特性に優れ、化学的安定性が高いため、自動車、家電製品、雑貨、電子電気機器等の広範な分野において利用されている。しかしながら、ポリオレフィンは極性がほとんどないため、極性樹脂や極性化合物等の異種材料との親和性に乏しく、これが問題になることが多い。
【0003】
この親和性の問題に関しては、ポリオレフィンを有機酸で変性する方法が検討されている。また、さらなる機能の付与や用途の拡大を目的として、酸無水物等により変性されたポリオレフィンをさらに変性する二次変性技術も知られている。
【0004】
例えば特許文献1は、エチレン系ランダム共重合体を不飽和ジカルボン酸無水物で変性処理し、さらに特定のアミノ化合物による変性処理を行うことで得られる二次変性体、並びに当該二次変性体を含有するエンジン油組成物およびギヤ油組成物を開示する。しかしながら、この方法により得られる二次変性体の二次変性量は不飽和ジカルボン酸無水物の量に依存するため、高い変性量の二次変性体は得られにくいという問題がある。また、この二次変性体における二次変性の反応点は、主鎖であるエチレン系ランダム共重合体上にランダムに配置される。したがって、当該二次変性体は主鎖が長く伸びた構造になりにくく、相溶化等の用途においては優れた性能が得られにくい。
【0005】
また、特許文献2は、エチレン性不飽和ジカルボン酸変性ポリオレフィン等をエポキシ基等の官能基を有する有機ポリシロキサンで二次変性して得られる離型剤を開示する。しかしながら、特許文献2に記載の二次変性体においても、上記の二次変性量の問題や構造上の問題がある。
【0006】
また、主鎖であるプロピレン鎖の立体規則性を規定し、変性ポリオレフィンの性能を向上させる技術も知られている。例えば、特許文献3および4は、特定の立体規則性を有する酸変性プロピレン重合体に対してさらに変性をすることで得られる二次変性体、並びに当該二次変性体を含む表面処理剤、接着剤、および塗料等、さらに二次変性体の製造方法(主鎖であるプロピレン鎖中に変性処理により導入された反応性基を起点として、重合反応により二次変性を行う方法や、親水性高分子を反応させて二次変性を行う方法)を開示する。しかしながら、無水マレイン酸の変性量は高い値ではなく、またその変性位置を制御することは困難である。したがって、特許文献3および4の二次変性体においても上記の問題は解決されていない。
特に接着剤や塗料においては、二次変性体中のプロピレン鎖が十分な連鎖長を有することはポリオレフィン基材や組成物中のポリオレフィン成分との十分な親和性を得るために重要であり、プロピレン鎖中の変性位置がランダムである変性体は好ましくない。したがって、特許文献3および4に記載の二次変性体は、極性物質に対する親和性およびポリプロピレン基材との親和性の両方の性能においてさらなる改良が望まれる。
【0007】
上記のように、相溶性等が要求される用途においては、二次変性体の構造やそのポリオレフィン連鎖の鎖長および二次変性の変性量が重要である。しかしながら、従来の二次変性体はポリオレフィン連鎖中に変性用の官能基がランダムに配置されるものであり、しかも官能基量を増加させることは困難であった。また、その製造方法によっては変性中の副反応により分子量が低下する傾向があった。このため十分な長さのポリオレフィン連鎖と高変性を両立させる二次変性体の開発が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平5−59119号公報
【特許文献2】特開平6−93026号公報
【特許文献3】特開2004−269872号公報
【特許文献4】特開2007−39645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような状況でなされたもので、ポリオレフィン連鎖長が十分に長く、かつ高い変性量を有する変性グラフト共重合体および当該変性グラフト共重合体を含有する相溶化剤、接着剤、水分散体等を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の単量体単位を含有する主鎖および特定のポリオレフィン連鎖である側鎖を有するグラフト共重合体を変性して得られる特定の構造を有する変性グラフト共重合体により、上記目的が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基いて完成したものである。すなわち、本発明は以下の変性グラフト共重合体を提供するものである。
(1) グラフト共重合体の官能基を変性して得られる変性グラフト共重合体であって、該グラフト共重合体が以下の(a)〜(e)を満たし、該官能基が反応してなる機能性側鎖を有する変性グラフト共重合体、
(a)グラフト率が1〜150質量%
(b)GPCで測定した重量平均分子量が500〜400000
(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
(d)主鎖が、官能基を有する単量体単位を含有する重合鎖
(e)側鎖が、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合鎖若しくは二種以上の共重合鎖、またはエチレン単位が50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィン単位およびエチレン単位からなる共重合鎖のいずれかであり、かつメソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%の重合鎖
(2) グラフト共重合体が、以下の(A)〜(C)を満たす反応性ポリオレフィンと、グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体との共重合反応によって形成されたものである、上記(1)に記載の変性グラフト共重合体、
(A)一分子あたりの末端不飽和基量が0.5〜1.0個
(B)メソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%
(C)炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合体若しくは二種以上の共重合体、またはエチレンが50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種以上の単量体とエチレンの共重合体のいずれかの重合体
(3) 官能基が、カルボン酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、エステル基から選ばれる官能基である、上記(1)または(2)に記載の変性グラフト共重合体、
(4) グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体が、式(III)
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R2は、(IV)式〜(VII)式
【0013】
【化2】

【0014】
で表されるいずれかの基である。また、R3は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、または酸素原子、窒素原子および珪素原子のいずれかの原子を含む炭素数1〜12の基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、またはエポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基およびカルボキシル基のいずれかの基を有する炭素数1〜12の基を示す。nは0〜5の整数である。〕
で表される単量体の一種または二種以上である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体、
(5) グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体が、[I]アクリル酸及びその誘導体、[II]メタアクリル酸類及びその誘導体、[III]ビニルエステル及びその誘導体、[IV]スチレン及びその誘導体から選ばれる一種または二種以上である、上記(4)に記載の変性グラフト共重合体、
(6) グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体が、下記A群から選択される一種以上と下記B群から選択される一種以上である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体、
A群;[V]無水マレイン酸及びその置換体、[VI]マレイン酸及びそのエステル、[VII]マレイミド及びその置換体
B群;以下の式(VIII)で表される化合物
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R6は、炭素数1〜28の炭化水素基または(IV)式〜(VII)式
【0017】
【化4】

【0018】
のいずれかの基を示す。また、R3は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、または酸素原子、窒素原子および珪素原子のいずれかの原子を含む炭素数1〜12の基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、またはエポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基およびカルボキシル基のいずれかの基を有する炭素数1〜12の基を示す。nは0〜5の整数である。〕
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する水分散体または溶液、
(8) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する組成物、
(9) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有するコーティング組成物、
(10) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する接着剤、
(11) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有するフィラー処理剤、
(12) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する相溶化剤。
【発明の効果】
【0019】
本発明で使用するグラフト共重合体は、官能基を有する単量体単位を含有する重合鎖が主鎖であり、官能基量の調整が容易である。また本発明の変性グラフト共重合体はポリオレフィン連鎖中に変性点を有しないため、ポリオレフィン連鎖が相対的に短くなることがない。したがって、本発明によれば、ポリオレフィン連鎖長が十分に長く、かつ高い変性量を有する変性グラフト共重合体が得られる。本発明の変性グラフト共重合体は上記構造を有するため、接着剤成分、塗料成分等として優れた性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の変性グラフト共重合体は、官能基を有する単量体単位を含有する主鎖および特定のポリオレフィン連鎖である側鎖を有するグラフト共重合体を変性して得られる、特定の構造を有する変性グラフト共重合体である。また、上記グラフト共重合体は、特定の反応性ポリオレフィンを用いてグラフト共重合反応を行うことで得られる。
なお、本明細書において、「反応性ポリオレフィン」とは、ラジカル開始剤により効率よくグラフト共重合体を生成させるポリオレフィンのことをいい、具体的には末端不飽和基を一分子あたり0.5個以上有するポリオレフィンのことを指す。
また、当該定義からわかるように、反応性ポリオレフィン中に含まれる全ての分子が末端不飽和基を有し、反応性を有するとは限らない。このためグラフト共重合反応終了時に未反応のポリオレフィンが存在することがあるが、末端不飽和基量の制御や精製過程により未反応のポリオレフィン量を低減化することができる。したがって、本明細書においては、グラフト共重合反応の生成物を「組成物」とは表現せず、「グラフト共重合体」と記載する。
また、本明細書においては、グラフト共重合体の製造段階を最初の変性処理と位置づけ、官能基を起点として機能性側鎖を形成する段階を二次変性処理とする。
【0021】
[グラフト共重合体]
グラフト共重合体の主鎖は、二次変性処理によって機能性側鎖を形成する官能基を有する単量体単位を含有する。なお、二次変性処理によって機能性側鎖を形成する官能基とは、後述するように、機能性側鎖を形成する際の重合反応の起点を形成する官能基、または機能性高分子と反応することができる官能基を意味する。また、本明細書において、上記「二次変性処理によって機能性側鎖を形成する官能基」を「官能基I」と省略することがある。
【0022】
官能基Iは、二次変性処理によって機能性側鎖を形成することができるものであれば、特に制限なく使用することができる。好ましい官能基Iとしては、カルボン酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、エステル基が挙げられる。
【0023】
本発明のグラフト共重合体は、官能基Iを有する単量体単位量が、主鎖を形成する単量体単位量に対して0.05〜20mol%となることが好ましく、0.1〜10mol%がより好ましい。上記範囲のグラフト共重合体を用いることで、極性物質に対してもポリオレフィンに対しても十分な親和性を有する変性グラフト共重合体が得られる。後述するように、グラフト共重合体の主鎖の単量体単位の種類や量は、グラフト共重合体の製造時に用いる単量体の種類や量を変えることで制御することができる。
【0024】
グラフト共重合体の側鎖は、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合鎖若しくは二種以上の共重合鎖、またはエチレン単位が50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィン単位およびエチレン単位からなる共重合鎖のいずれかの重合鎖である。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセンなどが挙げられる。
【0025】
グラフト共重合体の側鎖は、メソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%の重合鎖である。上記メソペンタッド分率〔mmmm〕は、好ましくは30〜75モル%、より好ましくは32〜70モル%である。
メソペンタッド分率が30モル%を下回ると、耐熱性、機械物性が低下し、80モル%を超えると、成形加工性、衝撃強度が低下する。なお、グラフト共重合体の側鎖のメソペンタッド分率は、その製造時に用いた反応性ポリオレフィンの立体規則性から知ることができる。また、グラフト共重合体の反応性ポリオレフィンに由来するメチル基、メチン基、メチレン基の立体規則性を後述するNMR解析により決定することができる。さらに、グラフト共重合体を窒素雰囲気下、熱分解した後、側鎖を形成していた断片を集めてNMRを測定することによっても調べることができる。
【0026】
グラフト共重合体のグラフト率は、1〜150質量%であり、好ましくは2〜130質量%、より好ましくは5〜100質量%である。グラフト率が1質量%未満であると、極性物質との親和性が低下し、相溶化能が劣やすく、150質量%を越えると、ポリオレフィンとの親和性が低下し、相溶化能が劣りやすい。
グラフト共重合体のグラフト率は、以下のようにして測定する。
溶媒によりグラフト共重合反応に関与しなかった主鎖を形成する単量体の重合物、および可溶性の重合体成分を溶解除去した不溶のグラフト共重合体成分の質量(W2)と原料として用いた反応性ポリオレフィンの質量(W1)から以下のようにして算出する。
グラフト率(質量%)=(W2−W1)/W1×100
また、使用する溶媒は溶解条件下で、主鎖を形成する単量体からなる単独重合体または共重合体を溶解することが必要である。さらに使用する溶媒は反応性ポリオレフィンに対しては前述と同じ溶解条件下で、溶解性を示さないことが同時に必要である。溶解性を示さないとは1質量%以下の溶解量を示すことを言い、溶解するとは溶液の目視観察により不溶物が認められないことを言う。
【0027】
グラフト共重合体は、重量平均分子量が500〜400000であり、好ましくは700〜350000、より好ましくは1000〜300000、最も好ましくは1500〜250000である。重量平均分子量が500未満では、機械的強度が低下し、400000を超えると、溶融混練性が低下する。
グラフト共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4であり、好ましくは1.55〜3、より好ましくは1.6〜2.5である。分子量分布が1.5を下回ると溶融流動性が低下し、また4を越えると、べたつき成分が発生することがある。
なお、グラフト共重合体の重量平均分子量および分子量分布を求める場合においては、以下のようにゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法を用いることができる。
【0028】
分子量分布(Mw/Mn)は、GPC法により、下記の装置及び条件で、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)測定することにより求めることができる。
GPC測定装置
検出器 :液体クロマトグラフィー用RI検出器 ウオーターズ 150C
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
測定条件
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :0.3質量%
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算分子量を対応するポリマーの分子量に換算するため、Mark−Houwink−桜田の式の定数K及びαを用いてUniversal Calibration法により求めた。
具体的には、「サイズ排除クロマトグラフィー、森定雄著、P67〜69、1992年、共立出版」に記載の方法によって決定した。
なお、K及びαは、「Polymer Handbook、John Wiley&Sons,Inc.」に記載されている。
また、新たに算出する絶対分子量に対する極限粘度の関係から定法によって決定することができる。
【0029】
グラフト共重合体は、デカリン中、135℃において測定した極限粘度〔η〕が0.01〜2.5dl/gが好ましく、より好ましくは0.02〜2.2、さらに好ましくは0.05〜2.0である。
極限粘度〔η〕が0.01dl/g以上であると、樹脂相溶化などの機能が上昇し、2.5dl/g以下であると樹脂への分散性が向上し好ましい。
【0030】
更に、グラフト共重合体は、ゲル成分を含まないことが好ましい。ゲル成分の低減化は末端不飽和基量が高い反応性ポリオレフィンであって、両末端に不飽和基を有する分子を実質上含まない反応性ポリオレフィンを使用し、効率よくグラフト重合反応を行うことで達成される。
(ゲル成分の測定方法)
グラフト共重合体の主鎖成分、側鎖成分の両者を溶解する溶媒を用い、攪拌装置付きガラス製セパラブルフラスコのステンレス製400メッシュ(目開き0.034mm)の網でできた籠に、グラフト共重合体50mgを入れ、攪拌翼に固定する。
酸化防止剤(BHT)0.1質量%を含む溶媒を投入し、沸点下で4時間攪拌しながら溶解する。
溶解後、回収した籠を十分真空乾燥し、秤量により不溶部を求める。
不溶部として定義するゲル成分は以下の式で算出する。
[メッシュ内残量(g)/仕込試料量(g)]×100(単位:%)
溶媒としては、パラキシレン、トルエンなどが挙げられる。
通常、上記式において、0〜1.5質量%の範囲を持ってゲル成分を含まないと規定する。
【0031】
[グラフト共重合体の製造方法]
グラフト共重合体は特定の反応性ポリオレフィンと主鎖を形成する単量体を用いて重合させることで製造することができる。
【0032】
(側鎖用反応性ポリオレフィン)
本発明で使用する反応性ポリオレフィンは、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合体若しくは二種以上の共重合体、またはエチレンが50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種以上の単量体とエチレンの共重合体のいずれかの重合体であって、メソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%であり、一分子あたりの末端不飽和基量が0.5〜1.0個である反応性ポリオレフィンであることが好ましい。上記条件をみたすことで、本発明で使用するグラフト共重合体を製造することができる。
【0033】
上記メソペンタッド分率〔mmmm〕は、好ましくは30〜75モル%、より好ましくは32〜70モル%である。
【0034】
ポリプロピレンを主成分とする重合体の場合、以下のようにして立体規則性を決定する。
上記メソペンタッド分率〔mmmm〕、後述するラセミペンタッド分率〔rrrr〕及びラセミメソラセミメソ分率〔rmrm〕は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)などにより「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率及びラセミメソラセミメソ分率である。
メソペンタッド分率〔mmmm〕が大きくなると、立体規則性が高くなる。
なお、13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)などにより「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
また、後述するメソトリアッド分率〔mm〕、ラセミトリアッド分率〔rr〕及びメソラセミ分率[mr]も上記方法により算出した。
【0035】
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0036】
<計算式>
M=(m/S)×100
R=(γ/S)×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖 :21.7〜22.5ppm
【0037】
ポリブテンを主成分とする重合体の場合、以下のようにして立体規則性を決定する。
メソペンタッド分率(mmmm)及び異常挿入含有量(1,4挿入分率)は、朝倉らにより報告された「Polymer Journal,16,717(1984)」、J.Randallらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,C29,201(1989)」及びV.Busicoらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,198,1257(1997)」で提案された方法に準拠して求めた。
すなわち、13C核磁気共鳴スペクトルを用いてメチレン基、メチン基のシグナルを測定し、ポリ(1−ブテン)分子中のメソペンタッド分率及び異常挿入含有量を求めた。
13C核磁気共鳴スペクトルの測定は、前述の装置及び条件にて行った。
立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}は、上記方法により、(mmmm)、(mmrr)及び(rmmr)を測定した値から算出した。
また、ラセミトリアッド分率(rr)も上記方法により算出できる。
1−ブテン単独及び共重合体は、立体規則性指数{(mmmm)/(mmrr+rmmr)}が20以下であり、好ましくは18以下、より好ましくは15以下である。
立体規則性指数が20を超えると、柔軟性の低下が起こる。
【0038】
炭素数5以上のα−オレフィンを主成分とする重合体の場合は、以下のようにして立体規則性を決定する。
この立体規則性指標値M2は、T.Asakura,M.Demura,Y.Nishiyamaにより報告された「Macromolecules,24,2334(1991)」で提案された方法に準拠して求めた。
すなわち、13CNMRスペクトルで、高級α−オレフィンに由来する、側鎖α位のCH2炭素が立体規則性の違いを反映して分裂して観測されることを利用してM2を求めることができる。
このM2は本願発明においては、上記メソペンタッド分率〔mmmm〕に置き換えることができる。
この値が大きいほど、アイソタクティシティーが高いことを示す。
尚、13C核磁気共鳴スペクトルの測定装置、条件は上記と同じであり、以下のようにして立体規則性指標値M2を求める。
混合溶媒に基づく大きな吸収ピークが、127〜135ppmに6本見られる。このピークのうち、低磁場側から4本目のピーク値を131.1ppmとし、化学シフトの基準とする。
このとき側鎖α位のCH2炭素に基づく吸収ピークが34〜37ppm付近に観測される。
このとき、以下の式を用いてM2(モル%)を求める。
2=〔(36.2〜35.3ppmの積分強度)/(36.2〜34.5ppmの積分強度)〕×100
【0039】
上記反応性ポリオレフィンは、末端不飽和基を一分子当たり、0.5〜1.0個、好ましくは0.6〜1.0個、より好ましくは0.7〜1.0個、より好ましくは0.8〜1.0個、より好ましくは0.82〜1.0個、さらに好ましくは0.85〜1.0個、最も好ましくは0.90〜1.0個有する。
末端不飽和基が0.5個以上では不飽和基の濃度が高く、グラフト共重合体の生成効率が上昇する。
末端不飽和基としては、ビニリデン基が好ましく、末端不飽和基に占めるビニリデン基は、通常、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%である。
本発明に用いる反応性ポリオレフィンは、一分子当たり2個以上の不飽和基を有する成分、例えば両末端に不飽和基を含有するような成分を実質的に含有しないものである。
一分子当たり2個以上の不飽和基を有する成分は、所謂架橋剤として作用するため、グラフト重合時に架橋構造(H型)を形成し、ゲル成分が副生するため好ましくない。
従って、熱分解によって製造された不飽和ポリプロピレンなどは使用することができない。
【0040】
上記末端不飽和基の測定は、一般的には、赤外線吸収スペクトル法、核磁気共鳴スペクトル法、臭素化法などが用いられ、何れの方法によっても測定することができる。
赤外線吸収スペクトル法は、「新版 高分子分析ハンドブック、日本分析化学会、高分子分析研究懇談会編」に記載された方法に準拠して行うことができる。
それによれば、赤外線吸収スペクトル法による末端不飽和基の定量方法においては、ビニル基、ビニリデン基、トランス(ビニレン)基などの不飽和基は、それぞれ、赤外線吸収スペクトルの910cm-1、888cm-1、963cm-1の吸収から定量することができる。
また、核磁気共鳴スペクトル法によるビニリデン不飽和基の定量は、次のようにして行う。
末端不飽和基がビニリデン基である場合の個数は、常法に従った1H−NMRの測定により求められる。
1H−NMR測定から得られたδ4.8〜4.6(2H)に出現するビニリデン基に基づいて、定法によりビニリデン基の含有量(C)(モル%)を算出する。
更に、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)より求めた数平均分子量(Mn)とモノマー分子量(M)から、次式によって一分子当たりのビニリデン基の個数を算出する。
一分子当たりの末端ビニリデン基(個)=(Mn/M)×(C/100)
また、核磁気共鳴スペクトル法による方法の例としては、末端基の定量に基づく方法がある。具体的には1H−NMRと13C−NMRで重合反応により、生じた末端基とその存在量を測定し、全末端基量に対する末端ビニリデン基の存在割合から一分子当たりの末端ビニリデン基数を算出する方法である。
プロピレン重合体の場合を例示する。
1H−NMRによる不飽和末端量の分析)
プロピレン重合体には〔2〕ビニリデン基のメチレン基(4.8〜4.6ppm)、〔1〕ビニル基のメチレン基(5.10〜4.90ppm)が観測される。全プロピレン重合体に対する割合は次式で計算できる。また、〔3〕はプロピレン連鎖(0.6〜2.3ppm)のメチン、メチレン、メチル基に相当するピーク強度に対応する。
末端ビニリデン基量(A)=(〔2〕/2)/[(〔3〕+4×〔1〕/2+3×〔2〕/2)/6]×100 単位:mol%
末端ビニル基量(B)=(〔1〕/2)/[(〔3〕+4×〔1〕/2+3×〔2〕/2)/6]×100 単位:mol%
13C−NMRによる末端分率の分析)
本願プロピレン重合体は〔5〕n−プロピル末端の末端メチル基(14.5ppm付近)、〔6〕n−ブチル末端の末端メチル基(14.0ppm付近)、〔4〕iso−ブチル末端のメチン基(25.9ppm付近)、〔7〕ビニリデン末端のメチレン基(111.7ppm付近)が観察される。13C−NMRでの末端ビニル基量のピーク強度は1H−NMRスペクトルで求めた(A)(B)を用いて以下のようにして算出した。
13C−NMRの末端ビニル基量ピーク強度=(B)/(A)×〔7〕
ここで末端基の全濃度(T)は以下のように表わされる。
T=(B)/(A)×〔7〕+〔4〕+〔5〕+〔6〕+〔7〕
従って、各末端の割合は
(C)末端ビニリデン基=〔7〕/T ×100 単位:mol%
(D)末端ビニル基=(B)/(A) ×〔7〕×100
(E)n−プロピル末端=〔5〕/T ×100
(F)n−ブチル末端=〔6〕/T ×100
(G)iso−ブチル末端=〔4〕/T ×100
となる。
一分子当たりの末端ビニリデン基の個数は2×(C) /100 単位: 個/分子
となる。
【0041】
上記反応性ポリオレフィンは、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下である。
分子量分布は狭いほど好ましく、これは、本発明で使用するグラフト共重合体において、反応性ポリオレフィンが連鎖を形成するため、側鎖長(連鎖長)にばらつきが少なく、構造が制御されたグラフト共重合体が生成するからである。なお、分子量分布の測定は上述のグラフト共重合体の製造で説明した方法を利用することができる。
【0042】
上記反応性ポリオレフィンは、デカリン中、135℃において測定した極限粘度〔η〕が0.01〜2.5dl/g、好ましくは0.05〜2.5、より好ましくは0.05〜2.0、更に好ましくは0.1〜2.0、最も好ましく0.15〜1.8dl/gである。
極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、グラフト共重合体のポリオレフィン側鎖長(連鎖長)が十分であり、相溶化などの機能を十分に発揮する。また、グラフト重合の際、末端不飽和基の濃度が高いためラジカル重合性が上昇する。
【0043】
極限粘度[η]は、135℃のデカリン中、ウベローデ型粘度計で還元粘度(ηSP/c)を測定し、下記一般式(ハギンスの式)を用いて算出する。
ηSP/c=[η]+K[η]2
ηSP/c(dl/g):還元粘度
[η](dl/g):極限粘度
c(g/dl):ポリマー濃度
K=0.35(ハギンス定数)
【0044】
反応性ポリオレフィンは、下記の式を満たすことが好ましい。
ラセミメソラセミメソ分率〔rmrm〕>2.5モル%
反応性ポリオレフィンのラセミメソラセミメソ分率〔rmrm〕が2.5モル%を超えると、ランダム性が増加し、透明性が更に向上する。
【0045】
反応性ポリオレフィンは、示差走査型熱量計(DSC)で観測される融点(Tm、単位:℃)と〔mmmm〕とが下記の関係を満たすことが好ましい。
1.76〔mmmm〕−25.0≦Tm≦1.76〔mmmm〕+5.0
示差走査型熱量計(DSC)で観測される融点(Tm、単位:℃)と〔mmmm〕との上記関係式は、反応性ポリオレフィンのメソペンタッド分率の均一性を表すものである。
反応性ポリオレフィンの立体規則性の均一性が高い場合、すなわち、立体規則性分布が狭い場合は、グラフト共重合体の側鎖の均一性が高いことを示し、ポリプロピレン系樹脂などとの相溶性が上昇する。メソペンタッド分率の高いものと低いものが混在した場合やブロック結合した場合、すなわち、立体規則性分布が広い場合は、ポリプロピレン系樹脂などへの相溶性が低下し、好ましくない。上記〔mmmm〕は、平均値として測定されるものであり、立体規則性分布が広い場合と狭い場合とでは明確に区別することはできないが、上記のように融点(Tm)との関係を特定範囲に限定することによって、好ましい均一性の高い反応性のプロピレン系共重合体を規定することができる。
融点(Tm)が(1.76〔mmmm〕+5.0)を超える場合は、部分的に高い立体規則性部位と、立体規則性を持たない部位が存在することを示す。
また、融点(Tm)が(1.76〔mmmm〕−25.0)に達しない場合、耐熱性が十分ではないおそれがある。
上記観点から、好ましくは
1.76〔mmmm〕−20.0≦Tm≦1.76〔mmmm〕+3.0
より好ましくは
1.76〔mmmm〕−15.0≦Tm≦1.76〔mmmm〕+2.0
である。
上記融点(Tm)は、DSC測定により求める。
試料10mgを窒素雰囲気下、320℃/分で25℃から220℃に昇温し、220℃で5分間保持した後、320℃/分で25℃まで降温し、25℃で50分間保持した。そして、10℃/分で25℃から220℃まで昇温した。この昇温過程で検出される融解熱吸収カーブの最も高温側に観測される吸熱ピークのピークトップを融点(Tm)とした。
【0046】
反応性ポリオレフィンは、更に、下記の規定を満たすことが好ましい。
〔rrrr〕/(1−〔mmmm〕)≦0.1
上記関係を満足すると、べたつきが抑制される。
〔mm〕×〔rr]/〔mr〕2≦2.0
上記〔mm〕×〔rr〕/〔mr〕2の値が2.0以下であると、透明性の低下が抑制され、柔軟性と弾性回復率のバランスが良好となる。〔mm〕×〔rr]/〔mr〕2は、好ましくは1.8〜0.5、より好ましくは1.5〜0.5の範囲である。
20≦昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する成分量(W25)≦100(質量%)
上記昇温クロマトグラフィーにおける25℃以下で溶出する反応性ポリオレフィンの成分量(W25)は、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。
W25は、反応性ポリオレフィンが軟質であるか否かを表す指標であり、この値が小さくなると、弾性率の高い成分が多くなったり、メソペンタッド分率〔mmmm〕の不均一さが広がる。
上記反応性ポリオレフィンにおいては、W25が20質量%以上であると、柔軟性が保たれる。
なお、W25とは、以下のような操作法、装置構成及び測定条件の昇温クロマトグラフィーにより測定して求めた溶出曲線におけるTREF(昇温溶出分別)のカラム温度25℃において充填剤に吸着されないで溶出する成分の量(質量%)である。
【0047】
(1)操作法
試料溶液を温度135℃に調節したTREFカラムに導入し、次いで降温速度5℃/時間にて徐々に0℃まで降温し、30分間ホールドし、試料を充填剤表面に結晶化させる。
その後、昇温速度40℃/時間にてカラムを135℃まで昇温し、溶出曲線を得る。
(2)装置構成
TREFカラム :GLサイエンス社製 シリカゲルカラム(4.6φ×150mm)
フローセル :GLサイエンス社製 光路長1mm KBrセル
送液ポンプ :センシュウ科学社製 SSC−3100ポンプ
バルブオーブン :GLサイエンス社製 MODEL554オーブン(高温型)
TREFオーブン:GLサイエンス社製
二系列温調器 :理学工業社製 REX−C100温調器
検出器 :液体クロマトグラフィー用赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A CVF
10方バルブ :バルコ社製 電動バルブ
ループ :バルコ社製 500μlループ
(3)測定条件
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
試料濃度 :7.5g/L
注入量 :500μl
ポンプ流量 :2.0ml/分
検出波数 :3.41μm
カラム充填剤 :クロモソルブP(30〜60メッシュ)
カラム温度分布 :±0.2℃以内
【0048】
本発明の反応性ポリオレフィンは、メタロセン触媒により製造されるものが好ましい。
メタロセン触媒としては、(A)シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基などを有する周期律表第3〜10の金属元素からなる遷移金属化合物と(B)遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物を含む触媒であって、末端不飽和基を生成することのできる触媒が挙げられる。
遷移金属化合物としては、ジルコノセンクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリドなどのビスシクロペンタジエニル配位子からなる化合物、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン−ビス−[2−メチル−4−フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン−ビス−[2−メチル−4,5−ベンゾインデニル]ジルコニウムジクロリドなどの架橋インデニル配位子からなる化合物、ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメトキシチタニウム、ペンタメチルシクロペンタジエニルトリクロルチタニウムなどのモノシクロペンタジエニル配位子からなる化合物、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムなどのアズレニウム配位子からなる化合物が挙げられる。
【0049】
更に、下記一般式(I)で表される二重架橋遷移金属化合物が挙げられる。
【0050】
【化5】

【0051】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属などが挙げられる。
これらの中ではオレフィン重合活性などの点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適であり、末端ビニリデン基の収率及び触媒活性の点から、ジルコニウムが最も好適である。
1及びE2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及びケイ素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A1及びA2を介して架橋構造を形成している。E1及びE2は互いに同一でも異なっていてもよい。
このE1及びE2としては、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましく、E1及びE2のうちの少なくとも一つは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基又は置換インデニル基である。
Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。
このXの具体例としては、ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアミド基,炭素数1〜20のケイ素含有基,炭素数1〜20のホスフィド基,炭素数1〜20のスルフィド基,炭素数1〜20のアシル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などのアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントニル基などのアリール基などが挙げられる。
なかでもメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基やフェニル基などのアリール基が好ましい。
【0052】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基などが挙げられる。
炭素数1〜20のアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジブチルアミド基、ジシクロヘキシルアミド基、メチルエチルアミド基などのアルキルアミド基や、ジビニルアミド基、ジプロペニルアミド基、ジシクロヘキセニルアミド基などのアルケニルアミド基;ジベンジルアミド基、フェニルエチルアミド基、フェニルプロピルアミド基などのアリールアルキルアミド基;ジフェニルアミド基、ジナフチルアミド基などのアリールアミド基が挙げられる。
炭素数1〜20のケイ素含有基としては、メチルシリル基、フェニルシリル基などのモノ炭化水素置換シリル基;ジメチルシリル基、ジフェニルシリル基などのジ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などのトリ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
なかでも、トリメチルシリルメチル基、フェニルジメチルシリルエチル基などが好ましい。
【0053】
炭素数1〜20のホスフィド基としては、ジメチルホスフィド基、ジエチルホスフィド基、ジプロピルホスフィド基、ジブチルホスフィド基、ジヘキシルホスフィド基、ジシクロヘキシルホスフィド基、ジオクチルホスフィド基などのジアルキルホスフィド基;ジベンジルホスフィド基、ジフェニルホスフィド基、ジナフチルホスフィド基などのジアリールホスフィド基が挙げられる。
【0054】
炭素数1〜20のスルフィド基としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、ヘキシルスルフィド基、シクロヘキシルスルフィド基、オクチルスルフィド基などのアルキルスルフィド基;ビニルスルフィド基、プロペニルスルフィド基、シクロヘキセニルスルフィド基などのアルケニルスルフィド基;ベンジルスルフィド基、フェニルエチルスルフィド基、フェニルプロピルスルフィド基などのアリールアルキルスルフィド基;フェニルスルフィド基、トリルスルフィド基、ジメチルフェニルスルフィド基、トリメチルフェニルスルフィド基、エチルフェニルスルフィド基、プロピルフェニルスルフィド基、ビフェニルスルフィド基、ナフチルスルフィド基、メチルナフチルスルフィド基、アントラセニルスルフィド基、フェナントニルスルフィド基などのアリールスルフィド基が挙げられる。
炭素数1〜20のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、パルミトイル基、テアロイル基、オレオイル基などのアルキルアシル基、ベンゾイル基、トルオイル基、サリチロイル基、シンナモイル基、ナフトイル基、フタロイル基などのアリールアシル基、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などのジカルボン酸からそれぞれ誘導されるオキサリル基、マロニル基、スクシニル基などが挙げられる。
【0055】
一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1,E2又はXと架橋していてもよい。
このYのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類,チオエーテル類などを挙げることができる。
アミン類としては、炭素数1〜20のアミンが挙げられ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルエチルアミンなどのアルキルアミン;ビニルアミン、プロペニルアミン、シクロヘキセニルアミン、ジビニルアミン、ジプロペニルアミン、ジシクロヘキセニルアミンなどのアルケニルアミン;フェニルアミン、フェニルエチルアミン、フェニルプロピルアミンなどのアリールアルキルアミン;ジフェニルアミン、ジナフチルアミンなどのアリールアミンが挙げられる。
【0056】
エーテル類としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、n−アミルエーテル、イソアミルエーテルなどの脂肪族単一エーテル化合物;メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチル−n−アミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテルなどの脂肪族混成エーテル化合物;ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテルなどの脂肪族不飽和エーテル化合物;アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、フェニルベンジルエーテル、α−ナフチルエーテル、β−ナフチルエーテルなどの芳香族エーテル化合物、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化トリメチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環式エーテル化合物が挙げられる。
【0057】
ホスフィン類としては、炭素数1〜20のホスフィンが挙げられる。
具体的には、メチルホスフィン、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、ヘキシルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、オクチルホスフィンなどのモノ炭化水素置換ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジオクチルホスフィンなどのジ炭化水素置換ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのトリ炭化水素置換ホスフィンなどのアルキルホスフィンや、ビニルホスフィン、プロペニルホスフィン、シクロヘキセニルホスフィンなどのモノアルケニルホスフィンやホスフィンの水素原子をアルケニルが2個置換したジアルケニルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルケニルが3個置換したトリアルケニルホスフィン;ベンジルホスフィン、フェニルエチルホスフィン、フェニルプロピルホスフィンなどのアリールアルキルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアリール又はアルケニルが3個置換したジアリールアルキルホスフィン又はアリールジアルキルホスフィン;フェニルホスフィン、トリルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリメチルフェニルホスフィン、エチルフェニルホスフィン、プロピルフェニルホスフィン、ビフェニルホスフィン、ナフチルホスフィン、メチルナフチルホスフィン、アントラセニルホスフィン、フェナントニルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルキルアリールが2個置換したジ(アルキルアリール)ホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルキルアリールが3個置換したトリ(アルキルアリール)ホスフィンなどのアリールホスフィンが挙げられる。チオエーテル類としては、上記のスルフィドが挙げられる。
【0058】
次に、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような架橋基のうち、少なくとも一つは炭素数1以上の炭化水素基からなる架橋基であることが好ましい。
このような架橋基としては、例えば一般式(a)
【0059】
【化6】

【0060】
(Dは周期律表第14族元素であり、例えば炭素,ケイ素,ゲルマニウム及びスズが挙げられる。R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
【0061】
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基などを挙げることができる。これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。
【0062】
一般式(I)で表される二重架橋遷移金属化合物の具体例としては、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−イソプロピリデン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3'−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
【0063】
(1,2'−エチレン)(2,1'−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−イソプロピリデン)(2,1'−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3',4'−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
【0064】
(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−エチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−エチルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,
【0065】
(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−ジメチルシリレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−エチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2'−メチレン)(2,1'−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3'−メチル−5'−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなど及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したもの、及び後述する一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
また、他の族の金属元素の類似化合物であってもよい。
好ましくは周期律表第4族の遷移金属化合物であり、中でもジルコニウムの化合物が好ましい。
上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0066】
【化7】

【0067】
上記一般式(II)において、Mは周期律表第3〜10族の金属元素を示し、A1a及びA2aは、それぞれ上記一般式(I)における一般式(a)で表される架橋基を示し、CH2,CH2CH2,(CH32C,(CH32C(CH32C,(CH32Si及び(C652Siが好ましい。
1a及びA2aは、互いに同一でも異なっていてもよい。
4〜R13はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基又はヘテロ原子含有基を示す。
ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基及びケイ素含有基としては、上記一般式(I)において説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基としては、p−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロ)フェニル基、フルオロブチル基などが挙げられる。
ヘテロ原子含有基としては、炭素数1〜20のヘテロ原子含有基が挙げられ、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの窒素含有基;フェニルスルフィド基、メチルスルフィド基などの硫黄含有基;ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基などの燐含有基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などの酸素含有基などが挙げられる。
なかでも、R4及びR5としてはハロゲン、酸素、ケイ素などのヘテロ原子を含有する基が、重合活性が高く好ましい。
6〜R13としては、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
X及びYは一般式(I)と同じである。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
【0068】
上記一般式(II)で表される二重架橋遷移金属化合物のうち、両方のインデニル基が同一である場合、周期律表第4族の遷移金属化合物としては、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−エトキシメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−エトキシエチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0069】
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メトキシメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メトキシエチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−フェニルメチルシリレン)(2,1’−フェニルメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−フェニルメチルシリレン)(2,1’−フェニルメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0070】
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリドなど、及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
また、第4族以外の他の族の金属元素の類似化合物であってもよい。
好ましくは周期律表第4族の遷移金属化合物であり、中でもジルコニウムの化合物が好ましい。
【0071】
一方、上記一般式(II)で表される二重架橋遷移金属化合物のうち、R5が水素原子で、R4が水素原子でない場合、周期律表第4族の遷移金属化合物としては、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−ベンジルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−ネオペンチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−フェネチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−ベンジルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−ネオペンチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)(インデニル)(3−フェネチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなど、及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
また、第4族以外の他の族の金属元素の類似化合物であってもよい。
好ましくは周期律表第4族の遷移金属化合物であり、中でもジルコニウムの化合物が好ましい。
【0072】
本発明で用いる触媒を構成する(B)遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物としては、比較的低分子量の高純度末端不飽和オレフィン系重合体が得られる点、及び触媒高活性の点でボレート化合物が好ましい。
ボレート化合物としては、テトラフェニルホウ酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニルホウ酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニルホウ酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニルホウ酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニルホウ酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニルホウ酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニルホウ酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニルホウ酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニルホウ酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニルホウ酸メチルピリジニウム,テトラフェニルホウ酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニルホウ酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリメチルアニリニウム,
【0073】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチル(4−シアノピリジニウム) ,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス[ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニルホウ酸フェロセニウム,テトラフェニルホウ酸銀,テトラフェニルホウ酸トリチル,テトラフェニルホウ酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルカルベニウム,テトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸(1,1'−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロホウ酸銀などを挙げることができる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。後述する水素と遷移金属化合物とのモル比(水素/遷移金属化合物)が0である場合、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルカルベニウム及びテトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸メチルアニリニウムなどが好ましい。
【0074】
本発明の製造方法で用いる触媒は、上記(A)成分と(B)成分との組み合わせでもよく、上記(A)成分及び(B)成分に加えて(C)成分として有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
(C)成分の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド及びエチルアルミニウムセスキクロリドなどが挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、本発明においては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム及びトリノルマルオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムが好ましく、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム及びトリノルマルオクチルアルミニウムがより好ましい。
【0075】
(A)成分の使用量は、通常0.1×10-6〜1.5×10-5モル/L、好ましくは0.15×10-6〜1.3×10-5モル/L、より好ましくは0.2×10-6〜1.2×10-5モル/L、特に好ましくは0.3×10-6〜1.0×10-5モル/Lである。
(A)成分の使用量が0.1×10-6モル/L以上であると、触媒活性が十分に発現され、1.5×10-5モル/L以下であると、重合熱を容易に除去することができる。
(A)成分と(B)成分との使用割合(A)/(B)は、モル比で好ましくは10/1〜1/100、より好ましくは2/1〜1/10である。
(A)/(B)が10/1〜1/100の範囲にあると、触媒としての効果が得られると共に、単位質量ポリマー当たりの触媒コストを抑えることができる。
また、目的とする反応性ポリオレフィン中にホウ素が多量に存在するおそれがない。
(A)成分と(C)成分との使用割合(A)/(C)は、モル比で好ましくは1/1〜1/10000、より好ましくは1/5〜1/2000、さらに好ましくは1/10〜1/1000である。
(C)成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができる。(A)/(C)が1/1〜1/10000の範囲にあると、(C)成分の添加効果と経済性のバランスが良好であり、また、目的とする反応性ポリオレフィン中にアルミニウムが多量に存在するおそれがない。
本発明の製造方法においては、上述した(A)成分及び(B)成分、あるいは(A)成分、(B)成分及び(C)成分を用いて予備接触を行うこともできる。
予備接触は、(A)成分に、例えば(B)成分を接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
このような予備接触により触媒活性の向上や、助触媒である(B)成分の使用割合の低減など、触媒コストの低減に効果的である。
【0076】
本発明の反応性ポリオレフィンは、上記触媒残渣が少ないものが好ましい。
特に、遷移金属の含有量が5質量ppm以下、アルミニウムの含有量が300質量ppm以下、ホウ素の含有量が5質量ppm以下のものである。
遷移金属としては、チタン、ジルコニウム及びハフニウムなどが挙げられ、これらの合計量が5質量ppm以下である。
アルミニウムの含有量は、好ましくは280質量ppm以下である。
これらの金属成分は、ICP(高周波誘導結合プラズマ分光分析)測定装置により測定することができる。
触媒残渣が少ない反応性ポリオレフィンを用いると、得られるグラフト共重合体が高純度であり、好ましい。
【0077】
(主鎖用単量体)
上記のように本発明で使用するグラフト共重合体の主鎖は、二次変性処理によって機能性側鎖を形成する官能基(官能基I)を有する単量体単位を含有する。当該主鎖は、官能基Iを含有する単量体を用いて重合反応を行うことで形成することができる。
一般に官能基を有する単量体は、その官能基の種類により反応性が大きく異なる。したがって、本発明において所望の性質、長さを有する主鎖のグラフト共重合体を製造するためには適切な単量体の組み合わせを用いることが好ましい。以下において、マレイン酸等の二塩基酸化合物を単量体として使用する場合と使用しない場合とに分けて説明する。
【0078】
二塩基酸化合物を使用しない場合は式(III)で表される単量体が好ましい。
【0079】
【化8】

【0080】
式(III)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12の炭化水素基を示す。炭素数1〜12の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールアルキル基が挙げられる。R2は、式(IV)〜式(VII)
【0081】
【化9】

【0082】
で表されるいずれかの基である。また、R3は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、または酸素原子、窒素原子および珪素原子のいずれかの原子を含む炭素数1〜12の基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、またはエポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基およびカルボキシル基のいずれかの基を有する炭素数1〜12の基を示す。nは0〜5の整数である。
【0083】
上記単量体を用いてグラフト共重合体を製造する場合は、官能基Iを有する単量体一種以上と、官能基Iを有しない単量体一種以上を組み合わせて用いればよい。官能基Iの好ましい例として、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、エステル基が挙げられる。
【0084】
式(III)で表される単量体の具体例としては、以下の化合物[I]〜[IV]が挙げられる。
【0085】
[I]アクリル酸及びその誘導体
(1)アクリル酸
(2)アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸ノルマルオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアクリレート、ポリ(エチレングリコール−n−テトラメチレングリコール)モノアクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどの分子量30000以下の長鎖ポリアルキレン型グリコール類
(3)アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウムなどのアクリル酸と典型金属元素からなるアクリル酸金属塩
(4)エステル残基に酸素、窒素、硫黄、珪素原子を含むアクリル酸エステル類、例えば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの官能基を有するアクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアクリレート、ポリ(エチレングリコール−n−テトラメチレングリコール)モノアクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどの水酸基を有する分子量30000以下の長鎖ポリアルキレングリコール類
(5)アクリルアミド
(6)置換基に酸素、窒素、硫黄、珪素原子を含むN−置換アクリルアミド、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロへキシルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジシクロへキシルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)−アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド
(7)アクリロニトリル
【0086】
[II]メタアクリル酸及びアクリル酸のα−アルキル置換体(以下、これらを合わせて「メタアクリル酸類」と省略する場合がある。)、並びにそれらの誘導体
上記[I]の単量体のα位にメチル基などのアルキル基(好ましくは、炭素数6以下のアルキル基)を有する単量体
【0087】
[III]ビニルエステル及びその誘導体、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソラク酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ウンデカン酸ビニル、パルミチン酸ビニルなどのビニルエステル及びその誘導体
【0088】
[IV]スチレン、更には、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−プロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−メチルスチレン、o−エチルスチレン、o−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、m−メチルスチレン、m−エチルスチレン、m−イソプロピルスチレン、m−ブチルスチレン、メシチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレンなどのアルキルスチレン類;p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレンなどのアルコキシスチレン類;p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレンなどのハロゲン化スチレン類;トリメチルシリルスチレン、ビニル安息香酸などのスチレン及びその誘導体
【0089】
好ましい単量体及び好ましい単量体の組合せとしては以下のものが挙げられる。
[I]アクリル酸及びその誘導体としては、上記の化合物が全て好ましく、特に、アクリル酸金属塩を除く全ての化合物が好ましい。
[II]メタアクリル酸類及びその誘導体のみでもグラフト重合は可能であるが、[I]アクリル酸及びその誘導体/[II]メタアクリル酸類及びその誘導体を組合せることにより、[II]メタアクリル酸類及びその誘導体のグラフト重合量が上昇し好ましい。
特に、アクリル酸、アクリル酸エステル類とメタアクリル酸、メタアクリル酸エステル類の組合せが好ましい。
[I]アクリル酸及びその誘導体/[II]メタアクリル酸類及びその誘導体の好ましいモル比は、[I]/[II](モル比)が0.1〜2、好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.3〜1.2、更に好ましくは0.5〜1.0の範囲の範囲である。
[I]/[II](モル比)が0.1以上であると、[II]メタアクリル酸類及びその誘導体のグラフト重合量が上昇し、2以下であるとグラフト重合に関与しない[I]アクリル酸及びその誘導体/[II]メタアクリル酸類及びその誘導体からなる共重合体が副生しないため好ましい。
また、スチレン及びその誘導体のみでもグラフト重合は可能であるが、[I]アクリル酸及びその誘導体/[VI]スチレン及びその誘導体を組合わせることにより、スチレン及びその誘導体のグラフト重合量が上昇し好ましい。
特に、アクリル酸、アクリル酸エステル類とスチレン及びその誘導体の組合せが好ましい。
[I]アクリル酸及びその誘導体/[VI]スチレン及びその誘導体の好ましいモル比は、[I]/[VI](モル比)が0.1〜2、好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.3〜1.2、更に好ましくは0.5〜1.0の範囲の範囲である。
[I]/[VI](モル比)が0.1以上であると[VI]スチレン及びその誘導体のグラフト重合量が上昇し、2以下であるとグラフト重合に関与しない[I]アクリル酸誘導体及びその/[VI]スチレン及びその誘導体からなる共重合体が副生しないため好ましい。
【0090】
二塩基酸化合物を使用する場合は、下記A群から選択される一種以上と下記B群から選択される一種以上の単量体を併用することが好ましい。
【0091】
A群
[V]無水マレイン酸及びその置換体
[VI]マレイン酸及びそのエステル
[VII]マレイミド及びその置換体
B群
以下の式(VIII)で表される化合物
【0092】
【化10】

【0093】
式(VIII)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R6は、炭素数1〜28の炭化水素基または(IV)式〜(VII)式
【0094】
【化11】

【0095】
のいずれかの基を示す。また、R3は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、または酸素原子、窒素原子および珪素原子のいずれかの原子を含む炭素数1〜12の基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、またはエポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基およびカルボキシル基のいずれかの基を有する炭素数1〜12の基を示す。nは0〜5の整数である。
【0096】
A群の単量体の具体例としては、
[V]無水マレイン酸、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジフェニル無水マレイン酸などの無水マレイン酸及びその置換体
[VI]マレイン酸、メチルマレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸モノメチル、などマレイン酸及びそのエステル
[VII]マレイミド、N−アルキル置換マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド及びその置換体
が挙げられる。
B群の単量体の具体例としては、
[I]アクリル酸及びその誘導体
[II]メタアクリル酸類及びその誘導体
[III]ビニルエステル及びその誘導体
[IV]スチレン及びその誘導体
[VIII]α−オレフィン
が挙げられる。
[I]〜[IV]の例示化合物としては、前記した化合物が挙げられる。また、α−オレフィンの例示化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜28のα−オレフィンが挙げられる。
【0097】
上記A群の単量体は二重結合の電子密度が小さいため、同種の単量体同士が重合しにくい単量体である。したがって、本発明においてはB群の単量体と併用して重合することで、A群の単量体の含有量を向上させる。また、本発明においては、A群の単量体を使用することで、反応性ポリオレフィンの反応性を高めることができるため、効率よくグラフト共重合体を製造できるという効果も得られる。
【0098】
A群の化合物とB群の化合物の組合せは、A群の化合物/B群の化合物(モル比)は、通常、0.1〜2程度、好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1の範囲である。
モル比が0.1以上であると、A群の化合物のグラフト重合量が上昇し、2以下であるとグラフト重合に関与しないA群の化合物/B群の化合物からなる共重合体が副生せず、好ましい。
A群とB群の化合物の組合せは、A群の[V]無水マレイン酸及びその置換体とB群の化合物からなる組合せが好ましく、A群の[V]無水マレイン酸とB群の[I]アクリル酸及びその誘導体、[III]ビニルエステル及びその誘導体、[VIII]α−オレフィンとの組合せがより好ましい。
【0099】
上記単量体を用いてグラフト共重合体を製造する場合は、官能基Iを有する単量体一種以上と、官能基Iを有しない単量体一種以上を組み合わせて用いればよい。官能基Iの好ましい例として、カルボン酸無水物残基、アミノ基、イソシアナート基、エステル基が挙げられる。
【0100】
本発明のグラフト共重合に用いられるラジカル開始剤としては、特に制限はなく、従来公知のラジカル開始剤、例えば、各種有機過酸化物、アゾ系化合物などの中から適宜選択して用いることができ、両化合物はともに好適なラジカル開始剤である。
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド,ジ−8,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド,ジラウロイルパーオキシド,ジデカノイルパーオキシド,ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキシド類、t−ブチルヒドロパーオキシド,キュメンヒドロパーオキシド,ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド,2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシドなどのヒドロパーオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキシド,ジクミルパーオキシド,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのジアルキルパーオキシド類、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシオクトエート,t−ブチルパーオキシピバレート,t−ブチルパーオキシネオデカノエート,t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーエステル類、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシカーボネート類などが挙げられ、これらの中で、ジアルキルパーオキシド類が好ましい。
アゾ系化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなどが挙げられる。
ラジカル開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
グラフト共重合反応におけるラジカル開始剤の使用量としては、特に制限はなく、グラフト共重合体の所望物性に応じて適宜選定される。
ラジカル開始剤は、反応性ポリオレフィン100質量部に対し、0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部の範囲で用いられる。
【0102】
上記の主鎖を形成するための単量体の使用量は目的に合わせて適宜決定することができるが、反応性ポリオレフィン100質量部に対して、0.2〜200質量部の範囲で選定される。その使用量は、好ましくは0.3〜150質量部、より好ましくは0.4〜130質量部、更に好ましくは1〜100質量部の範囲である。使用量が0.2質量部以上であると、グラフト重合体における共重合する単量体量が上昇し、相溶化などの機能を発現し易く、200質量以下であるとグラフト反応に関与しない重合体が副生せず好ましい。
【0103】
グラフト重合方法としては、特に制限はないが、例えば、反応性ポリオレフィン、上記の単量体及びラジカル開始剤とを、ロールミル、バンバリーミキサー、押出機などを用いて溶融混練して反応させることにより、グラフト共重合体を製造することができる。反応条件としては、60〜140℃の温度で、0.01〜0.5時間が挙げられる。
また、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、液化α−オレフィンなどの適当な有機溶媒中、あるいは無溶媒の条件で、グラフト共重合体を製造することもできる。反応条件としては、40〜140℃、好ましくは50〜140℃の温度で、0.1〜10時間が挙げられる。
通常用いられる高温条件でグラフト重合を行った場合、反応性ポリオレフィンの分解による分子量や粘度の低下や、架橋反応などによるゲルの発生が生じ易い。しかしながら、上記条件は、比較的低温であり、分子量や粘度の低下がなく、架橋反応などの副反応も抑制される。
【0104】
本発明のグラフト共重合はルイス酸存在下で行ってもよく、ルイス酸としては、下記の化合物が挙げられる。
(1)周期律表2族〜4族元素のハロゲン化物(塩素、臭素、フッ素、ヨウ素)、アルキル化物(炭素数1〜20の炭化水素基)、ハロゲン化アルキル物
(2)アルミニウム、硼素、亜鉛、スズ、マグネシウム、カルシウム原子からなるルイス酸
ルイス酸の具体例としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、三塩化硼素、三塩化アルミニウム、三塩化ガリウム、四塩化珪素、四塩化珪素、及び塩素原子を臭素原子、フッ素原子に変換した化合物、ブチルエチルマグネシウム、ジエチル亜鉛、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム、トリメチル硼素、トリエチル硼素、トリエチルガリウム、トリメチルガリウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリドが挙げられ、中でも亜鉛化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物が好ましい。
【0105】
グラフト重合反応におけるルイス酸の使用量としては、ルイス酸/単量体(モル/モル)が0.01〜1、好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.5である。ルイス酸/単量体(モル/モル)が0.01以上であると、グラフト率が高く、1以下であると脱灰によるルイス酸残渣の除去が不必要なため、着色がないなどの理由で好ましい。
ルイス酸は、ラジカル開始剤を添加する前に添加し、グラフト重合反応を行うか、予め単量体とルイス酸を接触させたものを用いることによりグラフト重合反応を行う。
【0106】
[変性グラフト共重合体およびその製造方法]
本発明においては、上記グラフト共重合体中の官能基Iと変性剤を反応させ、二次変性処理を行うことで機能性側鎖を有する変性グラフト共重合体を製造する。該変性グラフト共重合体の製造方法としては、以下に示すように2つの方法が挙げられる。
なお、変性剤中の官能基であって、官能基Iと反応する基のことを官能基IIと略称することがある。また、上記機能性側鎖とは、反応性ポリオレフィンに由来する側鎖とは異なる性質を有する側鎖のことを指し、具体的にはカルボン酸無水物残基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アミノ基、水酸基等の極性基やフェニル基等の芳香族基を有する側鎖を指す。これらの機能性側鎖を有することで、本発明の変性グラフト共重合体は極性物質等に対する親和性が向上する。
【0107】
変性グラフト共重合体を製造するための第1の方法は、(1)官能基Iによって形成された重合反応の起点を利用して機能性側鎖を形成する方法であり、官能基IIおよび重合性の炭素−炭素二重結合を有する変性剤(変性剤A)によってグラフト共重合体を変性し、次いで前記炭素−炭素二重結合と反応する変性剤(変性剤B)を反応させて機能性側鎖を形成する方法である。また、第2の方法は、(2)官能基IIを有する機能性高分子等(変性剤C)を用い、官能基Iと反応させて機能性側鎖を形成する方法である。
【0108】
変性剤AまたはCに含まれる官能基IIは、官能基Iと反応するものであれば特に制限なく利用することができ、例えば、カルボン酸無水物残基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、イソシアナート基等が挙げられる。また、エステル交換反応においては、エステル基を利用することもできる。
官能基Iと官能基IIとの反応としては、カルボキシル基と水酸基のエステル化反応、カルボキシル基とエポキシ基との開環反応、1級又は2級アミノ基とエポキシ基との開環反応、カルボキシル基と1級又は2級アミノ基のアミド化反応、カルボキシル基と3級アミノ基の4級アンモニウム化反応、カルボキシル基とイソシアナート基のウレタン化反応、1級又は2級アミノ基とイソシアナート基のウレタン化反応、フェノール類を含む水酸基とイソシアナート基の反応等が挙げられる。
【0109】
(1)官能基Iによって形成された重合反応の起点を利用して機能性側鎖を形成する方法
この方法においては、官能基IIおよび重合性の炭素−炭素二重結合を有する変性剤(変性剤A)を用いて、グラフト共重合体の官能基Iと反応させる。次いで上記重合性の炭素−炭素二重結合と変性剤Bを用いて重合反応を行い、機能性側鎖を形成する。
この方法の場合は、グラフト共重合体としては、官能基Iを有する単量体単位量が、主鎖を形成する単量体単位量に対して0.05〜10mol%のものが好ましく、0.1〜5mol%のものがより好ましい。上記範囲内においては、架橋物の副生を避けることができ、さらにポリオレフィン、および極性樹脂や極性化合物等の異種材料に対して、優れた接着性が得られる。
【0110】
変性剤Aの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸誘導体や、パラヒドロキシスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタアクリル酸のことを表し、(メタ)アクリル酸誘導体も同様の意味を有する。
【0111】
具体的な組み合わせとしては、官能基Iが無水マレイン酸残基の場合、変性剤Aとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、官能基Iが水酸基の場合、変性剤Aとしては、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられ、官能基Iがカルボキシル基の場合、変性剤Aとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが挙げられ、官能基Iがエポキシ基の場合、変性剤Aとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、官能基Iがアミノ基の場合、変性剤Aとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、官能基Iがイソシアナート基の場合、変性剤Aとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの活性水素を有するものが挙げられる。
【0112】
変性剤Aによる変性は、溶液反応または溶融反応で行うことができる。
溶液反応の場合、溶媒としては、トルエン、キシレン、混合キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族系炭化水素;パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル等カルボン酸エステル;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールなどを使用することができる。その濃度は、グラフト共重合体が1g/リットルから1500g/リットルの範囲で分散又は溶解状態で攪拌が可能な範囲が好ましい。
溶融反応の場合、バッチ式溶融反応、連続式溶融反応が実施できる装置であれば特に制限なく使用することができ、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の装置で行うことが可能である。反応は、通常ポリマーの融点以上で行うのがよく、反応時間は1分〜3時間が適当である。
【0113】
変性剤Aの使用量は、官能基I1モルに対して変性剤Aが0.1〜1.2モルの範囲であることが好ましい。反応温度は、通常30〜200℃、好ましくは40〜150℃である。反応時間は、通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間である。また、ハイドロキノンモノメチルエーテル/酸素などの公知の重合禁止剤を用いることが好ましい。
【0114】
また、上記反応には触媒を用いても良い。触媒としてはアルカリ金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸、無機酸、第三級アミン、有機スズ化合物など公知のものが使用できる。具体的にはp−トルエンスルホン酸、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルアンモニウムブロミド、硫酸、1,8−ジアザビシクロ[5,4.0]−7−ウンデセン酸、ジブチル錫ジラウレート、ジブチルジ酢酸錫、N−メチルモルホリン、N−(ジメチルアミノエチル)モルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール、5−ジメチルアミノ−3−メチル−1−ペンタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、1−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0115】
上記反応の反応率は、30〜100%が好ましく、より好ましくは、50〜100%である。30%未満では、二次変性反応点が少なくなり、目的の変性グラフト共重合体が得られにくい。
【0116】
変性剤Bは、炭素−炭素二重結合と反応する基を有し、重合反応により機能性側鎖を形成する化合物である。変性剤Bとしては、[I]アクリル酸及びその誘導体、[II]メタアクリル酸類及びその誘導体、[III]ビニルエステル及びその誘導体、[IV]スチレン及びその誘導体、[V]無水マレイン酸及びその置換体、[VI]マレイン酸及びそのエステル、[VII]マレイミド及びその置換体、[VIII]α−オレフィンが挙げられる。これらの具体例は前述のとおりである。
変性剤Bの使用量は、変性剤A処理後のグラフト共重合体との質量比が、グラフト共重合体/変性剤Bが通常1/20〜20/1であり、好ましくは1/10〜10/1であり、より好ましくは1/5〜5/1である。この範囲であれば、ポリオレフィンに対しても極性物質等に対しても優れた親和性が得られる。
【0117】
変性剤Bによる重合反応は、触媒を用いて行うことが好ましく、ラジカル重合触媒、アニオン重合触媒、カチオン重合触媒のいずれも使用できるが、好ましくはラジカル重合触媒である。ラジカル重合触媒としては、上記グラフト共重合体の製造で説明した、有機過酸化物、アゾ系化合物を使用することができる。ラジカル重合触媒の使用量は、変性剤Bとの質量比が、ラジカル重合触媒/変性剤Bが通常1/1000〜1/10であり、好ましくは1/500〜1/20である。ラジカル重合触媒の添加方法は一括添加、分割して添加、連続して添加のいずれの方法も利用できる。
【0118】
変性剤Bによる重合反応は、溶液反応または溶融反応で行うことができ、溶媒や装置に関しての詳細は上記変性剤Aによる変性で説明したとおりである。反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜110℃である。反応時間は、通常1分〜20時間、好ましくは5分〜10時間である。また、変性剤Bの転化率をほぼ100%に近づけるために、反応終期にラジカル重合触媒を追加添加し、さらに温度を高温(80〜110℃)保ち、重合反応を行うことが好ましい。
【0119】
変性剤AおよびBを使用した二次変性処理、並びに得られる変性グラフト共重合体について以下に例示する。
二塩基酸化合物を主鎖用の単量体として使用せず、官能基Iと官能基IIの反応がエステル交換反応ではない場合の例は以下のとおりである。
【0120】
【化12】

【0121】
なお、上式中、Xは官能基Iを表し、Yは官能基IIを表す。XおよびYは具体的にはカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基から選ばれる基であって、XとYは異なる基である。Lは、重合性部位(−CR1=CR23)とYを連結する部位であり、重合性部位に直接結合した−CO−O−基または−C64−基(フェニレン環)のどちらかを必須成分として含む、炭素、水素、酸素、窒素原子から選択された原子で構成された連結基である。Wは、−CO−O−,−CO−O−CR42−CR5(OH)−,−CO−NR4−,−CR5(OH)−CR62−O−,−NR4−CO−O−,−CR4(OH)−CR52−NR6−,−NR4−CO−NR5−,−CR4(OH)−CR52−O−CO−から選ばれる基である。R1〜R6は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。
【0122】
上記変性剤Aによる処理の後に、さらに変性剤Bによる処理をして得られる変性グラフト共重合体の機能性側鎖の一部を例示すると以下のようになる。なお、以下の例は変性剤Bとしてスチレンを使用した場合である。
【0123】
【化13】

【0124】
また、二塩基酸化合物を主鎖用の単量体として使用する場合の例は以下のとおりである。
【0125】
【化14】

【0126】
なお、上式中、Zは官能基Iを表し、Nは官能基IIを表す。具体的にはZはカルボン酸無水物残基またはカルボキシル基であり、Nは水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基から選ばれる基である。Lは、重合性部位(−CR1=CR23)とNを連結する部位であり、重合性部位に直接結合した−CO−O−基または−C64−基(フェニレン環)のどちらかを必須成分として含む、炭素、水素、酸素、窒素原子から選択された原子で構成された連結基である。Sは、−CO−O−,−CO−O−CR42−CR5(OH)−,−CO−NR4−、および
【0127】
【化15】

【0128】
から選ばれる基である。R1〜R5は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。
【0129】
(2)官能基IIを有する機能性高分子等を用い、機能性側鎖を形成する方法
この方法においては、官能基IIを有する機能性高分子等(変性剤C)を用い、官能基Iと反応させて機能性側鎖を形成する。
この方法の場合は、グラフト共重合体としては、官能基Iを有する単量体単位量が、主鎖を形成する単量体単位量に対して0.05〜20mol%のものが好ましく、0.1〜10mol%のものがより好ましい。上記範囲内においては、架橋物の副生を避けることができ、さらにポリオレフィン、および極性樹脂や極性化合物等の異種材料に対して、優れた接着性が得られる。
【0130】
変性剤Cは、機能性側鎖が十分な相溶性、親水性、接着性を発揮するためには特定の分子量を有することが好ましく、GPCで測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが100〜100000以下が好ましく、より好ましくは300〜80000、さらに好ましくは500〜60000である。Mwが下限値を満たすことで、変性グラフト共重合体の相溶性、親水性が向上する。この結果、例えば、ポリアクリル酸やポリエーテルアミン等を変性剤Cとする水分散体において粒子径が小さくなり安定化する効果が得られる。Mwが上限値を満たすことで、適切な粘度が得られると同時に、ポリオレフィン連鎖と機能性側鎖の良好なバランスが得られ、優れた相溶性、接着性が得られる。
【0131】
変性剤C中の官能基IIの量は、機能性側鎖の形成効率の観点からは、変性剤一分子あたり1個あればよい。また、ゲル生成の低減化の観点からは、変性剤一分子あたり1〜10個が好ましく、より好ましくは1〜5個、最も好ましくは1個である。官能基が多いと3次元網目構造が形成しやすく、ゲルが生成しやすくなり好ましくない。また、このゲルの生成は官能基IIの種類の調整によっても制御することができる。すなわち、官能基IIを複数有していても、反応性の高い官能基の数が適切であることで、ゲルの生成を抑制することができる。具体例としては、複数の水酸基とそれより反応性の高い1つのアミノ基を有する親水性高分子が挙げられる。
【0132】
変性剤Cの具体例としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を例示することができる。
【0133】
天然高分子としては、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、かんしょデンプン、タピオカデンプン、米デンプンなどのデンプン、ふのり、寒天などの海藻成分(アルギン酸ソーダ等)、アラビアゴム、トラガントゴム、こんにゃく成分などの植物粘質物、にかわ、カゼイン、ゼラチンなどの動物性タンパク、プルラン、デキストリンなどの発酵粘質物等及びそれらの変性物が挙げられる。
【0134】
半合成高分子としては、上記天然高分子に化学的処理を加えたものが挙げられ、カルボキシルデンプン、カチオンデンプン、デキストリンなどのデンプン質、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース等が挙げられる。
【0135】
合成高分子としては、付加重合高分子、縮合重合による高分子、開環重合による高分子が挙げられる。
【0136】
付加重合高分子としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル四級化物、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
上記付加重合高分子に官能基IIを導入する方法(または官能基量を調整する方法)としては、官能基を有する付加重合性単量体を共重合成分として共重合する方法、官能基を有する単独又は共重合体の官能基の一部を残して不活性化する方法、リビング重合により連鎖末端と官能基を有する停止剤との反応で、官能基を導入する方法が挙げられる。
【0137】
縮合重合、開環重合による高分子としては、ポリエステル類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエーテル類、ポリエーテルアミン類等が挙げられる。
【0138】
ポリエステル類、ポリエステルポリオール類の化合物は、多価アルコールと多塩基酸を公知の方法で縮合重合させることにより、或いは脂肪族ラクトン類の開環重合により得ることができる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。多塩基酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびこれらの酸無水物等の脂肪族若しくは芳香族ジカルボン酸、またはトリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの酸無水物等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。脂肪族ラクトンとしては、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類の化合物は水酸基価が30〜250KOHmg/gのものが好ましく用いられる。
【0139】
ポリエステル類、ポリエステルポリオール類の化合物は、末端水酸基等が官能基IIとして作用し、グラフト共重合の官能基Iと反応することで二次変性体を製造でき、例えばカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基とのエステル化反応により二次変性体を製造できる。またエステル交換反応を利用することもできる。
【0140】
ポリエーテルポリオール類の化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状アルキレンオキシドを公知の方法で開環重合させることにより得られる、両末端に水酸基を有する化合物である。具体例としてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオール類の化合物は水酸基価が30〜250KOHmg/gのものが好適である。
ポリエーテルポリオール類の化合物は、末端水酸基が官能基IIとして作用し、グラフト共重合体の官能基Iと反応することで二次変性体を製造できる。
【0141】
ポリエーテル類の化合物は、環状アルキレンオキサイドまたは環状アルキレンイミンを開環重合することで得られる。例えば、グラフト共重合体存在下で環状アルキレンオキサイドを開環重合する方法で二次変性体を製造できる。
【0142】
ポリエーテルアミン類の化合物は、ポリエーテルの主鎖骨格を有し、片末端又は両末端に、反応性基としての1級または2級のアミノ基を有する化合物である。具体的には、ハンツマン社製ジェファーミンMシリーズ、Dシリーズ、EDシリーズなどが挙げられる。末端アミノ基が官能基IIとして作用し、グラフト共重合体の官能基Iと反応することで二次変性体を製造できる。
【0143】
上記のほかに縮合重合、重縮合或いは開環重合などによって得られる高分子であって、分子主鎖中又は末端に官能基IIを有するものであれば、制限なく使用することができる。
【0144】
機能性高分子によっては、エステル交換反応によって機能性側鎖を形成することもできる。この場合、変性剤C(ポリエステル系変性剤)とグラフト共重合体の比率は、重量比で20/1〜1/20の範囲が好ましく、より好ましくは10/1〜1/10であり、さらに好ましくは4/1〜1/4であり、特に好ましくは3/1〜1/3である。上記範囲を満たすことで、ポリオレフィンに対しても、また極性樹脂等に対しても良好な相溶性が得られ、これらに対する良好な密着性、接着性が得られる。
【0145】
変性剤Cによる変性は、溶液反応または溶融反応で行うことができる。
溶液反応の場合、溶媒としては、トルエン、キシレン、混合キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族系炭化水素;パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールなどが挙げられる。
変性剤Cの使用量は、官能基I1モルに対して変性剤Cの官能基II量が0.1〜1.2モルの範囲であることが好ましい。
反応温度は、通常30〜200℃、好ましくは40〜150℃であり、反応時間は、通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間である。グラフト共重合体の濃度は、1g/リットルから1500g/リットルの範囲で分散又は溶解状態で攪拌が可能な範囲で適宜決定すればよい。
溶融反応法の場合、バッチ式溶融反応、連続式溶融反応が実施できる装置であれば制限なく使用することができ、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の装置で行うことが可能である。反応は、通常ポリマーの融点以上で行うのがよく、反応時間は1分〜3時間が適当である。
【0146】
変性剤Cによる二次変性処理および得られる変性グラフト共重合体について以下に例示する。二塩基酸化合物を主鎖用の単量体として使用せず、官能基Iと官能基IIの反応がエステル交換反応ではない場合の例は以下のとおりである。
【0147】
【化16】

【0148】
なお、上式中、Xは官能基Iを表し、Yは官能基IIを表す。XおよびYは具体的にはカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基から選ばれる基であって、XとYは異なる基である。Pは、変性剤Cの官能基IIを除いた部位を表す。Wは、−CO−O−,−CO−O−CR42−CR5(OH)−,−CO−NR4−,−CR5(OH)−CR62−O−,−NR4−CO−O−,−CR4(OH)−CR52−NR6−,−NR4−CO−NR5−,−CR4(OH)−CR52−O−CO−から選ばれる基である。R1〜R6は、水素または炭素数1〜6の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。
【0149】
本発明の変性グラフト共重合体は、以下に示すように低分子量化合物によって二次変性処理をして製造してもよい。当該低分子量化合物は官能基Iに対する反応性を有するものであり、具体的にはアルコール化合物、カルボン酸化合物、エポキシ化合物、イソシアナート化合物、アミン化合物等が挙げられる。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノールなどの炭素数30以下のモノアルコール類が挙げられ、カルボン酸化合物としては、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸化合物類が挙げられ、エポキシ化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ジメチルエポキシド、1,1−ジメチルエポキシシドなどのモノエポキシ化合物類、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、9,10−エポキシステアリン酸などの他官能基を有するモノエポキシ化合物類が挙げられ、イソシアナート化合物としては、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸イソブチル、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸αナフチルなどのモノイソシアナート化合物類、イソシアン酸ニトロフェニルなどの他官能基を有するモノイソシアナート化合物類などのイソシアナート化合物類が挙げられ、アミン化合物としては、1−アミノプロパン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、シクロへキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロペンチルアミン、テトラヒドロナフチルアミン、1−アミノ−2−ブテンなどのモノアミン化合物類、アミノ酸のような他官能基を有するモノアミン化合物類が挙げられる。
【0150】
[変性グラフト共重合体の用途]
以下に示すように本発明の変性グラフト共重合体は種々の用途において使用することができ、主な形態として水分散体や溶液が挙げられる。
水分散体は、変性グラフト共重合体を水に分散させたものであり、通常変性グラフト共重合体1質量部に対して、水1〜10質量部の割合である。また必要に応じて界面活性剤、塩基性物質、親水性有機溶媒、水性樹脂等を添加することができる。
【0151】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチリルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などの第四級アンモニウム塩系等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系、アルキルベタイン、カルボキシベタイン、スルフォベタイン、フォスフォ・ベタインなどのベタイン系、アルキルアミンオキシドなどのアミンオキシド系等が挙げられる。これらの中で、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤は一種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。界面活性剤は、変性グラフト共重合体100質量部に対し、通常0.01〜50質量部、好ましくは0.02〜20質量部、より好ましくは0.02〜1質量部である。
【0152】
塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−エチル−2−アミノプロパノール等のアミン類が挙げられる。塩基性物質を加えることで変性グラフト共重合体の分散安定性が向上する。塩基性物質としてはアミン類が好ましい。
塩基性物質は、一種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塩基性物質は、変性グラフト共重合体100質量部に対し、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。
【0153】
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコ−ル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコ−ル類及びこれらのエーテル類等が挙げられる。親水性有機溶媒を配合することで、水分散体の乾燥速度の向上、外観向上効果が得られやすい。したがって、プライマーや塗料の用途で特に好ましく配合される。
【0154】
水性樹脂としては、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性アルキド樹脂、水性フェノ−ル樹脂、水性アミノ樹脂、水性ポリブタジエン樹脂、水性シリコン樹脂等が挙げられる。
【0155】
必要に応じてその他の添加剤を配合してもよく、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤や酸化チタン、カーボンブラック、有機顔料等の着色剤、導電性カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤、増粘剤、消泡剤が挙げられる。また、塗布される基材との濡れ性を改善するために、必要に応じて少量の有機溶媒を添加しても良い。
【0156】
水分散体を使用する際は、塗布後に加熱することが好ましい。基材がオレフィン系重合体である場合には、加熱により良好な密着性が得られる。加熱温度に特に制限はないが、通常50〜150℃、好ましくは60〜130℃である。塗布方法に関しても特に制限はなく、スプレーで塗布する方法、ローラーで塗布する方法、刷毛で塗布する方法など、従来公知の方法が使用できる。
【0157】
本発明の変性グラフト共重合体の溶液は、上記水分散体において、溶媒を水の代わりに有機溶媒を用いれば得られる。当該溶液においても、界面活性剤、塩基性物質、水性樹脂等を添加することができる。
【0158】
本発明の変性グラフト共重合体は、相溶化能が高く、種々の組成物を形成する際に好適に用いられる。組成物としては、塗料等のコーティング組成物、接着剤、フィラー処理剤および相溶化剤が挙げられる。
【0159】
本発明の変性グラフト共重合体は塗料等のコーティング組成物として利用でき、熱可塑性樹脂等の基材に対して密着性、接着性に優れる塗膜を形成することができる。
基材である熱可塑性樹脂としては、高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ブテン、ポリスチレン等のオレフィン系単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体等のオレフィン系共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などのオレフィン/ジエン共重合体、ポリブタジエン等のポリジエン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンブタジエン(SB)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)等のスチレンとの共重合体、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)などの水添樹脂などが挙げられる。特にポリプロピレンやエチレン・プロピレン共重合体等のプロピレン系重合体またはプロピレン系重合体を含む組成物が好ましい。
【0160】
塗料分野におけるその他の用途としては、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる成形品の表面処理が挙げられる。
【0161】
また、本発明の変性グラフト共重合体は下塗り用コーティング組成物として使用でき、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、脂肪酸変性ポリエステル樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエーテル樹脂等を主成分とする塗料、プライマー、接着剤等をポリオレフィン成型体に塗布する際に好ましく使用できる。例えば、これらの樹脂成分を含む塗料とポリオレフィン成型体の付着性を改善し、表面平滑性、鮮映性、低温衝撃性等に優れる塗膜を形成することができる。
【0162】
本発明の変性グラフト共重合体を含むコーティング組成物は変性グラフト共重合体と溶剤又は水を必須成分として含むものである。溶剤としては脂肪族炭化水素(へキサン、ヘプタン、オクタン等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、脂環式炭化水素(シクロヘキサン、メチルシクロへキサン等)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)が挙げられる。また水を必須成分とする場合は、上記の水分散体を使用することができる。コーティング組成物の塗布方法はスプレー、ロール、刷毛塗り、バーコート、スピンコートなどの方法が使用できる。
【0163】
本発明の変性グラフト共重合体は接着剤の成分として利用できる。接着用の基材としては、上記塗料用の基材として例示した熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリオレフィン系重合体間の接着やポリオレフィン系重合体と異種材料との接着に好ましく利用できる。ポリオレフィン系重合体の中では、特にポリプロピレンやエチレン・プロピレン共重合体等のプロピレン系重合体が好ましく、プロピレン系重合体を含む組成物も接着用の基材として用いられる。
【0164】
上記異種材料としては、ガラス、金属(アルミニウム、鉄、真鍮、ステンレス鋼、銅、金属メッキ処理した表面など)、セラミック、天然有機物(材料の例としては麻、綿、ケナフなど、形態の例としては繊維、紙、ダンボール)、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルエステル樹脂及び当該けん化物、ポリビニルエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエーテル樹脂などの合成高分子が挙げられる。これらの異種材料の形態としてはフィルム、繊維、不織布などの成型体、粉末が挙げられる。
【0165】
接着方法としては、変性グラフト共重合体の溶液又は分散液を塗布(スプレー、ロール、刷毛塗り、バーコート、スピンコートなどの方法)し、溶媒を乾燥除去した後、ヒートシール、圧着、加熱する方法や固体状の変性グラフト共重合体を接着基材間に挟み、ヒートシール、圧着、加熱する方法が挙げられる。
【0166】
本発明の変性グラフト共重合体はフィラー処理剤として利用できる。本発明の変性グラフト共重合体を使用することで、剛性、難燃性、耐震性、質量感、光沢、色むら解消等の各種性能を付与することができる。
【0167】
フィラーとしては無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。
無機フィラーとしては、球状充填剤、板状充填剤,繊維状充填剤、無機系難燃剤、無機顔料が挙げられる。
球状充填剤としては、炭酸カルシウム,カオリン(珪酸アルミニウム),シリカ,パーライト,シラスバルーン,セリサイト,珪藻土,亜硫酸カルシウム,焼成アルミナ,珪酸カルシウムなどが挙げられる。板状充填剤としては、タルクやマイカなどが挙げられる。繊維状充填剤としては、ウォラストナイト,マグネシウムオキシサルフェイト,チタン酸カリウム繊維,繊維状炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。無機系難燃剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン等が挙げられる。無機顔料としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化チタン、酸化クロム、鉛白、カドミウム系顔料、酸化鉄、群青、複合酸化物系顔料(アンチモンクロム黄、ニッケルアンチモン黄、アルミコバルト青、アルミクロムコバルト青緑、銅クロム黒、コバルトチタン緑など)が挙げられる。
【0168】
有機フィラーとしては、天然由来有機フィラー、合成樹脂由来の有機フィラー、有機顔料を挙げることができる。
天然由来有機フィラーとしては木粉や木綿粉などの木質粒子,モミ殻粉末,モミ殻繊維,ジュート,紙細片,コラーゲン粉末、レザー粉末、プロテイン粉末、シルク粉末、セロハン片等、さらにそれら繊維の織布や不織布などが挙げられる。合成樹脂由来の有機フィラーとしては架橋ゴム粉末、プラスチック粉末、熱硬化性樹脂粉末、さらにはポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、芳香族ポリアミド繊維,セルロース繊維,ナイロン繊維,ポリエステル繊維等,さらにそれら繊維の織布や不織布などが挙げられる。有機顔料としてはアゾ顔料、フタロシアニン顔料、染付けレーキ、縮合多環顔料、ニトロソ顔料、アリザリンレーキ、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリンブラック、アルカリブルー、昼光蛍光顔料などが挙げられる。
【0169】
球状フィラー又は板状フィラーの平均粒径は0.01〜100μmが好ましく、0.1〜80μmがより好ましい。この平均粒径が0.01μm未満では成形品の製造が困難となり、100μmを超えると耐衝撃性が低下するおそれがある。繊維状フィラーの繊維長さは10μm〜10mmが好ましく、20μm〜3mmがより好ましい。この繊維長が10μm未満では補強効果の発現が小さくなり、10mmを超えると成形が困難になる場合がある。また、繊維状フィラーの直径は0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましい。また、無機系難燃剤の平均粒径は0.01〜100μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましい。平均粒径が80μmを超えると耐衝撃性や引張り伸びが低下するおそれがある。さらに、有機フィラーの粒度は10〜325メッシュが好ましく、10〜20メッシュがより好ましい。粒度が325メッシュを超えると耐衝撃性が低下するおそれがある。繊維状無機充填材の場合には、繊維長さは10μm〜10mmが好ましく、20μm〜3mmがより好ましい。
【0170】
表面処理において、フィラーはそのまま配合してもよいが、予めシラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミニウム系等のカップリング剤、りん酸系、脂肪酸系等の界面活性剤、油脂、ワックス、ステアリン酸、シランカップリング剤等により処理しても良い。このような処理により複合材料の成形がしやすくなり、製品の外観が向上し、機械的性質が良好となる場合がある。
【0171】
本発明の変性グラフト共重合体によるフィラーの処理は以下の方法により行うことができる。
乾式法(フィラーと変性グラフト共重合体を直接接触させる方法)
フィラー/変性グラフト共重合体、またはフィラー/変性グラフト共重合体/樹脂を混合攪拌機、溶融押出機などで処理する。具体的には、ミキシングロール、インテンシブミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機を使用することができる。本発明の変性グラフト共重合体は軟質であり、融点も低いため、例えば、ケナフ、セルロース類のフィラーは劣化、黄変などを抑制できる。温度条件は室温〜140℃の範囲、好ましくは60〜110℃の範囲が挙げられ、時間は1分〜5時間が挙げられる。
湿式法(変性グラフト共重合体の溶液又は分散液を用いてフィラーと接触させる方法)
変性グラフト共重合体を溶媒に溶解又は分散し、フィラーを浸漬等により接触することで処理する。溶媒としては、へキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。分散液の溶媒としては、上記の溶媒と水が挙げられる。環境保護の観点から水が好ましい。水分散体の製造方法は前述の方法に準拠する。
上記のフィラーの処理においては、フィラー100質量部に対して変性グラフト共重合体を0.05〜10質量部とすることが好ましい。また、マスターバッチの場合、変性グラフト共重合体の配合量は、無機フィラー100質量部に対して5〜400質量部とすることが好ましい。
【0172】
表面処理したフィラーは目的に応じて、熱可塑性樹脂に溶融混合される。
熱可塑性樹脂は、オレフィン系重合体、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーが好ましい。
オレフィン系重合体としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレンランダム共重合体またはブロック共重合体、ポリブテン系重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂の配合量は、表面処理したフィラー(フィラー+変性グラフト共重合体)1質量部に対して、通常2〜1000質量部であり、好ましくは、3〜500質量部である。
【0173】
本発明の変性グラフト共重合体は相溶化剤として好ましく利用でき、熱可塑性樹脂とオレフィン系重合体との複合材料分野での衝撃性、剛性、柔軟性、化学的安定性などを改良することができる。
オレフィン系重合体や熱可塑性樹脂としては、塗料等のコーティング組成物の基材として挙げたものが例示され、特に好ましいオレフィン系重合体としてポリプロピレン、ポリブテンが挙げられる。配合量は、オレフィン系重合体100質量部に対してオレフィン系重合体以外の熱可塑性樹脂が1〜2000質量部であることが好ましい。
【0174】
本発明の変性グラフト共重合体を相溶化剤として使用する場合は、相溶化させる組成物を構成するそれぞれの熱可塑性樹脂の分子構造を有する変性グラフト共重合体が好ましい。
例えば、ポリプロピレンとアクリル系樹脂からなる組成物を相溶化させるのであれば、ポリプロピレン連鎖およびメチルメタクリレートのようなアクリル連鎖を有する変性グラフト共重合体を用いることが好ましい。
【0175】
本発明の変性ポリオレフィン系重合体を相溶化剤として使用する場合は、通常、樹脂組成物(オレフィン系重合体+他の熱可塑性樹脂)100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは、0.5〜10質量部である。
【0176】
本発明の変性グラフト共重合体を相溶化剤として使用して組成物を製造する場合は、溶融混練機、溶融押出機を使用することができ、具体的にはミキシングロール、インテンシブミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機などを使用することができる。混練温度は最も高い融点またはガラス転移温度を持つ組成物成分を基準としてその融点又はガラス転移温度より5〜150℃高い温度が好ましい。また、混練時間は通常1分〜1時間が好ましい。
【実施例】
【0177】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0178】
製造例1[反応性ポリプロピレンの製造]
(1)金属錯体の合成
以下のようにして(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを合成した。
シュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)のリチウム塩3.0g(6.97mmol)をTHF(テトラヒドロフラン)50mlに溶解し−78℃に冷却した。ヨードメチルトリメチルシラン2.1ml(14.2mmol)をゆっくりと滴下し室温で12時間撹拌した。
溶媒を留去し、エーテル50mlを加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.88mmol)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に上記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.88mmol)とエーテル50mlを入れた。−78℃に冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液(1.54M、7.6ml(1.7mmol))を滴下した。室温に上げ12時間撹拌後、エーテルを留去した。得られた固体をヘキサン40mlで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07mmol)を得た(収率73%)。
1H−NMR(90MHz、THF−d8)による測定の結果は、以下のとおりである。
δ:0.04(s,18H,トリメチルシリル),0.48(s,12H,ジメチルシリレン),1.10(t,6H,メチル),2.59(s,4H,メチレン),3.38(q,4H,メチレン),6.2-7.7(m,8H,Ar-H)
窒素気流下で、上記で得られたリチウム塩をトルエン50mlに溶解した。−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1mmol)のトルエン(20ml)懸濁液を滴下した。滴下後、室温で6時間撹拌した。その反応溶液の溶媒を留去した。得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド0.9g(1.33mmol)を得た(収率26%)。
1H−NMR(90MHz、CDCl3)による測定の結果は、以下のとおりである。
δ:0.0(s,18H,トリメチルシリル),1.02,1.12(s,12H,ジメチルシリレン),2.51(dd,4H,メチレン),7.1-7.6(m,8H,Ar-H)
(2)プロピレンの重合
加熱乾燥した内容積1.4Lのステンレス鋼製オートクレーブに、乾燥ヘプタン0.4L、トリイソブチルアルミニウム1.5mmolのヘプタン溶液1.5mlを加え10分間、攪拌した。次にメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.5μmolのヘプタンスラリー2mlを加え、ここに、上記(1)で調製した(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド1.5μmolを含有するヘプタンスラリー0.5mlを投入した。室温(25℃)で水素を100ml計量し、オートクレーブに充填した。
次に、攪拌しながら温度を80℃に昇温し、分圧で0.5MPaまでプロピレンガスを導入した。重合反応中、圧力が一定になるように調圧器によりプロピレンガスを供給して40分間重合し、その後冷却し、未反応プロピレンを脱圧により除去し、内容物を取り出した。内容物を風乾した後、更に80℃で減圧乾燥を8時間行うことによってポリプロピレン189.5gを得た。重合評価結果を表1に示す。
【0179】
製造例2[反応性ポリプロピレンの製造]
製造例1において、水素を用いず、温度を70℃、プロピレン分圧0.55MPa、重合時間を47分に変更して同様に実施した。その結果、83.4gのポリプロピレンを得た。重合評価結果を表1に示す。
【0180】
製造例3[反応性ポリプロピレンの製造]
製造例1において、水素を用いず、温度を60℃、重合時間47分に変更して同様に実施した。その結果、35.9gのポリプロピレンを得た。重合評価結果を表1に示す。
【0181】
製造例4[反応性ポリプロピレンの製造]
(1)金属錯体の合成
以下のようにして、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを合成した。
窒素気流下、200ミリリットルのシュレンク瓶にエーテル50ミリリットルと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビスインデン3.5g(10.2mmol)を加え、ここに−78℃でn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.60モル/リットル、12.8ミリリットル)を滴下した。室温で8時間攪拌した後溶媒を留去し、得られた固体を減圧乾燥することにより白色固体5.0gを得た。この固体をテトラヒドロフラン(THF)50ミリリットルに溶解させ、ここへヨードメチルトリメチルシラン1.4ミリリットルを室温で滴下した。水10ミリリットルで加水分解し、有機相をエーテル50ミリリットルで抽出したのち、有機相を乾燥し溶媒を留去した。ここへエーテル50ミリリットルを加え、−78℃でn−BuLiのヘキサン溶液(1.60モル/リットル、12.4ミリリットル)を滴下したのち、室温に上げ3時間攪拌後、エーテルを留去した。得られた固体をヘキサン30ミリリットルで洗浄した後減圧乾燥した。この白色固体5.11gをトルエン50ミリリットルに懸濁させ、別のシュレンク瓶中でトルエン10ミリリットルに懸濁した四塩化ジルコニウム2.0g(8.60mmol)を添加した。室温で12時間攪拌後溶媒を留去し、残渣をヘキサン50ミリリットルで洗浄した後、残渣をジクロロメタン30ミリリットルから再結晶化させることにより黄色微結晶1.2gを得た(収率25%)。
(2)プロピレンの重合
加熱乾燥した内容積5Lのステンレス鋼製オートクレーブに、乾燥ヘプタン2.5L、トリイソブチルアルミニウム1.4mmolのヘプタン溶液1.4ml、メチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート15.4μmolのヘプタンスラリー2mlを加え、50℃に制御しながら10分間攪拌した。
更に、上記(1)で調製した遷移金属化合物錯体の(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの3.8μmolのヘプタンスラリー6mlを投入した。
更に水素を5ml投入後、攪拌しながら温度を60℃に昇温し、分圧で0.49MPaまでプロピレンガスを導入した。
重合反応中、圧力が一定になるように調圧器によりプロピレンガスを供給して100分間重合し、その後冷却し、未反応プロピレンを脱圧により除去し内容物を取り出した。
内容物を風乾後、更に80℃で減圧乾燥を8時間行なうことによってポリプロピレン1100gを得た。重合評価結果を表1に示す。
【0182】
比較製造例1[末端飽和ポリプロピレンの製造]
加熱乾燥した内容積1Lのステンレス鋼製オートクレーブに、窒素雰囲気下、乾燥ヘプタン400ml、メチルアルミノキサン2.0mmolを投入し50℃に制御しながら10分間攪拌した。
更に、製造例4(1)で調製した遷移金属化合物錯体の(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの0.6μmolのヘプタンスラリー0.6mlを投入した。更に水素を0.01MPaの圧力で導入した後、攪拌しながら温度を60℃に昇温し、プロピレンを導入し全圧で0.8MPaで60分間重合した。反応終了後、冷却し、未反応プロピレンを脱圧により除去し内容物を取り出した。
内容物を風乾後、更に80℃で減圧乾燥を8時間行なうことによって末端飽和ポリプロピレン83gを得た。結果を表1に示す。
【0183】
比較製造例2[末端飽和ポリプロピレンの製造]
加熱乾燥した内容積1Lのステンレス鋼製オートクレーブに、窒素雰囲気下、乾燥ヘプタン400ml、メチルアルミノキサン2.0mmolを投入し50℃に制御しながら10分間攪拌した。
更に、製造例1(1)で調製した遷移金属化合物錯体の(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド0.6μmolのヘプタンスラリー0.6mlを投入した。更に水素を0.05MPaの圧力で導入した後、攪拌しながら温度を60℃に昇温し、プロピレンを導入し全圧で0.8MPaで60分間重合した。反応終了後、冷却し、未反応プロピレンを脱圧により除去し内容物を取り出した。
内容物を風乾後、更に80℃で減圧乾燥を8時間行なうことによって末端飽和ポリプロピレン95gを得た。結果を表1に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
製造例5[グラフト共重合体の製造]
攪拌装置付セパラブルフラスコに製造例1で合成した反応性ポリプロピレン30g、脱水トルエン37mlを窒素雰囲気下で投入した。攪拌しながら、温度70℃で溶解した。これに主鎖用の単量体として、無水マレイン酸5.2g、1−デセン7.7gを投入し溶解させた。
これに、脱水トルエン15mlに溶解したα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.31gを1時間かけて添加した。添加後、6時間反応した。反応終了後、溶媒トルエンを減圧下除去した後、100℃で減圧乾燥を24時間実施した。
重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は前述のGPC法により測定した。
グラフト率を求めるために、乾燥ポリマーをメチルエチルケトンに微分散し、室温で2時間攪拌抽出した後、遠心分離機(21000rpm,15分)で液部を回収した。固体部分は更に抽出分離を2回繰り返し、乾燥してポリマーを回収した。
結果を表2に示した。
また、液部に含まれるポリマーのNMR測定を実施したところ、原料のポリプロピレンに基づく連鎖が検出されることから、可溶部にもグラフト体が存在していることを示していた。
また、同様に無水マレイン酸/デセン−1/反応性ポリプロピレンからなる共重合体のNMR解析では、反応前の反応性ポリプロピレンの末端ビニリデン基が共重合後では94.4%が消費されていることが確認された。このことから、無水マレイン酸/デセン−1共重合体を主鎖として、側鎖が重量平均分子量37200のポリプロピレン鎖であることが示された。
【0186】
製造例6[グラフト共重合体の製造]
攪拌装置付セパラブルフラスコに製造例1で合成した反応性ポリプロピレン100g、脱水トルエン215mlを窒素雰囲気下で投入した。攪拌しながら、温度70℃で溶解した。これにアクリル酸22.5g、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.0gを投入し溶解させた。
これに、脱水トルエン20mlに溶解したα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.50gを1時間かけて添加した。添加後、6時間反応した。反応終了後、溶媒トルエンを減圧下除去した後、100℃で減圧乾燥を24時間実施した。結果を表2に示す。
【0187】
製造例7[グラフト共重合体の製造]
攪拌装置付セパラブルフラスコに製造例4で合成した反応性ポリプロピレン600g、脱水トルエン1000mlを窒素雰囲気下で投入した。攪拌しながら、温度70℃で溶解した。これにアクリル酸メチル91.3g、グリシジルメタアクリレート134gを投入し溶解させた。
これに、脱水トルエン60mlに溶解したα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.50gを1時間かけて添加した。添加後、6時間反応した。反応終了後、溶媒トルエンを減圧下除去した後、100℃で減圧乾燥を24時間実施した。結果を表2に示す。
【0188】
製造例8[グラフト共重合体の製造]
製造例5において、製造例1で得られた反応性ポリプロピレンを製造例2で得られた反応性ポリプロピレンに代えること以外は同様にして製造した。結果を表2に示す。
【0189】
製造例9[グラフト共重合体の製造]
製造例5において、製造例1で得られた反応性ポリプロピレンを製造例3で得られた反応性ポリプロピレンに代えること以外は同様にして製造した。結果を表2に示す。
【0190】
製造例10[グラフト共重合体の製造]
製造例5において、製造例1で得られた反応性ポリプロピレンを製造例4で得られた反応性ポリプロピレンに代えること以外は同様にして製造した。結果を表2に示す。
【0191】
なお、表2に示す製造例5から10のポリマーの組成は、1−デセン以外のモノマーは赤外線吸収スペクトル解析法により、カルボニル基に基づく吸収から算出し、1−デセン含有量はNMR解析から算出した。また、収量、単量体含有量、重量平均分子量、分子量分布は未反応単量体を除去した共重合体の値であり、グラフト率は溶媒洗浄により求めた溶媒不溶部から、上述の方法で決定した。
【0192】
【表2】

【0193】
比較製造例3[無水マレイン酸変性物の製造]
攪拌装置付セパラブルフラスコに比較製造例1で合成したポリプロピレン50g、脱水トルエン93gを窒素雰囲気下で投入した。攪拌しながら、温度110℃で溶解した。これに無水マレイン酸4gを投入し溶解させた。これに、脱水トルエン15mlに溶解したt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂製、パーブチルI)1.4gを添加した。添加後、7時間反応した。反応終了後、室温まで冷却し大量のアセトンに投入しアセトン不溶部をろ過洗浄してポリマーを回収した。
(無水マレイン酸含有量は2.4wt%、Mwは43500)
本反応では原料の末端飽和ポリプロピレンが変性反応をへることで、低分子量化した。このことは、変性反応が分解を伴いながら、無水マレイン酸が付加する反応であり、本願のグラフト共重合体の構造及び生成機構が異なることを示している。
【0194】
比較製造例4[無水マレイン酸変性物の製造]
攪拌装置付セパラブルフラスコに比較製造例2で合成したポリプロピレン50g、脱水トルエン93gを窒素雰囲気下で投入した。攪拌しながら、温度110℃で溶解した。これに無水マレイン酸4gを投入し溶解させた。これに、脱水トルエン15mlに溶解したt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂製、パーブチルI)1.4gを添加した。添加後、7時間反応した。反応終了後、室温まで冷却し大量のアセトンに投入しアセトン不溶部をろ過洗浄してポリマーを回収した。
(無水マレイン酸含有量は2.4wt%、Mwは100000)
上記のように、比較製造例3と同様に低分子量化が生じた。
【0195】
実施例1
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例5のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)15g、トルエン60mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.4g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.04g、ジメチルベンジルアミン0.6gを添加し、100℃で3時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、2−ヒドロキシエチルアクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン30mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、スチレン20gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.2gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。この溶液から一部反応混合物を採取し、溶媒、未反応単量体を除去した後、更に90℃、減圧下、8時間乾燥した。二次変性により増加した重量をポリスチレン生成量(W3)とし原料(製造例5のグラフト共重合体)重量(W4)から二次変性率を[W3/(W4+W3)]×100(%)で示した。結果を表3に示す。
【0196】
実施例2
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例5のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)15g、トルエン60mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート0.5g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.04g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.1gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン30mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、スチレン20gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.2gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0197】
実施例3
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例6のグラフト共重合体(アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート−g−ポリプロピレン)50g、脱水トルエン200mlを仕込み100℃で溶解させた。乾燥空気気流下、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネート2.1g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.12gを添加し、110℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン100mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、スチレン100gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.67gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.6gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0198】
実施例4
実施例3において、スチレン100gに変え、スチレン50g、メチルメタクリレート50gを用いること以外は同様にして実施した。結果を表3に示す。
【0199】
実施例5
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例7のグラフト共重合体(アクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート−g−ポリプロピレン)50g、脱水トルエン200mlを仕込み100℃で溶解させた。乾燥空気気流下、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネート2.1g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.12gを添加し、110℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン100mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、メチルメタクリレート100gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.67gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.6gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0200】
実施例6
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例8のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)15g、トルエン60mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート0.52g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.04g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.1gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン30mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、メチルメタクリレート30gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.2gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0201】
実施例7
実施例6において、メチルメタクリレートに変え、アクリル酸30gを用い、AIBN0.2gのトルエン溶液を1時間にわたり滴下した後、6時間グラフト重合反応を実施した。更にAIBN0.2gを追加し90℃で二時間反応した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0202】
実施例8
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例9のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)10g、トルエン60mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート0.4g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.06g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.15gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン30ml追加し、温度を70℃に制御した。これに、メチルメタクリレート20gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.2gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0203】
実施例9
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例10のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)8g、トルエン50mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート0.2g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.05gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン30ml追加し、温度を70℃に制御した。これに、メチルメタクリレート20gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを投入し、同温度で6時間グラフト重合反応を実施し、その後AIBN0.2gを追加し90℃で2時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。結果を表3に示す。
【0204】
実施例10
実施例9において、メチルメタクリレートに変えてスチレン20gを用いること以外は同様に実施した。結果を表3に示す。
【0205】
実施例11
実施例9において、メチルメタクリレートに変えて酢酸ビニル20gを用いること以外は同様に実施した。結果を表3に示す。
【0206】
実施例12
実施例9において、メチルメタクリレートに変えてアクリル酸20gを用いること以外は同様に実施した。結果を表3に示す。
【0207】
【表3】

【0208】
実施例13
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例9のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)10g、ポリエステルポリオール P−2010(クラレ製)5g、トルエン50ml、ジメチルベンジルアミン0.3gを仕込み110℃で6時間反応させた。反応終了後、ほぼ透明な変性グラフト共重合体溶液を得た。一部サンプリングして、溶媒トルエンを減圧除去し、赤外線吸収スペクトル分析を行ったところ、1785cm-1付近の無水マレイン酸に相当する吸収が減少していることからポリエステルポリオールが反応したことを確認した。
【0209】
実施例14
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例9のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)10g(無水マレイン酸11.4mmol)、トルエン50mlを投入し溶解した。これに、メトキシポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)−2−プロピルアミン [ハンツマン社製ポリエーテルアミン M−1000 分子量1000] 11.4g(11.4mmolアミン相当)を投入し、110℃で、4時間反応した。
溶媒トルエンを減圧留去して21gの変性グラフト共重合体を得た。変性グラフト共重合体の赤外線吸収スペクトル分析を行ったところ、1785cm-1付近の無水マレイン酸に相当する吸収が消失していることからポリエーテルアミンが反応したことを確認した。
【0210】
実施例15
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、製造例9の無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン10g(無水マレイン酸11.4mmol)、トルエン50mlを投入し溶解した。これに、リビングアニオン重合により製造した末端アミノ基含有ポリスチレン[ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=25000、Mw/Mn=1,15] 10gを投入し、110℃で、4時間反応した。
溶媒トルエンを減圧留去して20gの二次変性ポリマーを得た。二次変性ポリマーの赤外線吸収スペクトル分析を行ったところ、1785cm-1付近の無水マレイン酸に相当する吸収強度が低下したことから末端アミノ基と無水マレイン酸とが反応したことを確認した。
【0211】
実施例16
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し窒素雰囲気下、脱水トルエン100ml、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネート0.44g(2.85mmol相当),メチルメタクリレート30gを投入し、温度80℃に制御しながら、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを添加し6時間共重合を実施した。反応終了後、このポリマー溶液に製造例9のグラフト共重合体(無水マレイン酸/1−デセン−g−ポリプロピレン)10g(無水マレイン酸11.4mmol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.12gを添加し、110℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、2−メタクイロイルオキシエチルイソシアネート残基の全量が付加していることを確認した。
反応終了後トルエン30ml追加し、温度を70℃に制御した。これに、末端OH含有ポリブタジエン[出光興産(株)製 R45HT]5gを添加し、更にトリエチレンジアミン0.05g、オクテン酸錫0.02gを加えて、同温度で6時間反応を実施した。その結果、変性グラフト共重合体のトルエン溶液を得た。
【0212】
比較例1
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、比較製造例3の無水マレイン酸変性ポリプロピレン8.3g、トルエン50mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート0.2g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.05gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン30mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、アクリル酸20gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gのトルエン溶液20mlを1時間にわたり滴下した後、6時間グラフト重合反応を実施した。更にAIBN0.2gを追加し90℃で二時間反応した。その結果、二次変性ポリマーのトルエン分散溶液を得た。
【0213】
比較例2
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、比較製造例4の無水マレイン酸変性ポリプロピレン50g、トルエン200mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート1.73g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.04g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.1gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン100mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、メチルメタクリレート100gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gのトルエン溶液20mlを1時間にわたり滴下した後、6時間グラフト重合反応を実施した。更にAIBN0.5gを追加し90℃で二時間反応した。その結果、二次変性ポリマーのトルエン分散溶液を得た。
【0214】
比較例3
攪拌装置付きフラスコに冷却菅、滴下ロート、温度計を装着し、比較製造例4の無水マレイン酸変性ポリプロピレン20g、トルエン80mlを仕込み100℃で溶解させた。空気気流下、グリシジルメタクリレート0.69g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン酸0.05gを添加し、100℃で5時間反応した。ポリマー成分0.2g相当をサンプリングし赤外線吸収スペクトルを測定した結果、グリシジルメタクリレートの全量が付加していることを確認した。反応終了後トルエン100mlを追加し、温度を70℃に制御した。これに、アクリル酸40gを添加した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3gのトルエン溶液20mlを1時間にわたり滴下した後、6時間グラフト重合反応を実施した。更にAIBN0.3gを追加し90℃で二時間反応した。その結果、二次変性ポリマーのトルエン分散溶液を得た。
【0215】
[接着性能の評価1]
(1)接着用溶液の調製
実施例12及び比較例1の二次変性ポリプロピレンと比較製造例1で製造したポリプロピレンを表4に示した量を用い60℃でテトラヒドロフランに溶解し、接着用溶液A〜Dを調製した。
(2)接着用溶液のPP基材への塗布
長さ10cm、幅8cmのポリプロピレンシートをアセトンで洗浄し、上記接着用溶液を0.5ml/7.5cm2(2.5×3cm)の濃度でシートの片末端部分(8×3cm)に塗布し、40℃のオーブンで一時間、65℃で2時間乾燥した。このポリプロピレンシートを幅2.5cmの幅で裁断した。
ポリプロピレンシート:出光ユニテック(株)製 スーパーピュアレイ SG−140TC 厚み0.3mm
(3)接着体の製造
上記(2)で得られたポリプロピレンシートとアセトン洗浄した同一形状のポリプロピレンシートSG−140TC又はガラス板とを接着層を介して合わせ、熱プレスを用い130℃、で20秒間予熱した後、0.5Mpaの圧力で40秒間融着した。これを25℃の冷却プレスに軽く挟み、室温まで冷却した。作成した試験片は一週間、室温に放置したのち接着強度の測定を実施した。
なお、ガラス板はアズワン(株)社製 スライドガラス1201(長さ7.6cm、幅2.6cm、厚み0.15〜0.14cm)を使用した。
(4)接着強度の測定
引張速度50mm/分でT剥離試験を実施した。測定には株式会社島津製作所製オートグラフ(DSC−200)を用い、最大応力から剥離接着強度を求めた。また測定値は3試験片の測定値の平均を用いた。結果を表4に示す。
【0216】
【表4】

【0217】
[分散性能の評価]
(1)PP/PMMA樹脂組成物の製造
ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、J3000GV)35g、ポリメチルメタクリレート(広島和光株式会社製)5g、実施例6で得られた二次変性ポリプロピレン1g及びフェノール系酸化防止剤イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.04gを予め十分に混合した。バッチ式混練機(東洋精機社製、ラボプラストミル)に仕込み、温度200℃、回転数100回転/分で、10分間溶融混練を実施した。
また、上記実施例6で得られた二次変性ポリプロピレンの代わりに比較例2で得られた二次変性ポリプロピレンを用いて組成物を製造した。
(2)PP/PMMA組成物の評価
熱プレスを用いて温度200℃で、5cm×5cm×0.4cmの金型を用いて平板を成型した。実施例6で得られた二次変性ポリプロピレンを使用したものは、外観に光沢があり、分散性は良好であった。一方、比較例2で得られた二次変性ポリプロピレンを使用したものは、平板の表面に分散不良が認められ、光沢も低いものであった。
【0218】
[接着性能の評価2]
(1)接着用水分散体の調製
実施例7及び比較例3の二次変性ポリプロピレンと比較製造例1で製造したポリプロピレンを表5に示した量を用い、60℃でテトラヒドロフランに溶解した。この溶液にイオン交換水20mlを温度40℃で1時間にわたり攪拌しながら滴下した。更に40℃で減圧度を調節しながら容量が25mlになるまで溶媒を留去し、接着用水分散体A〜Dを調製した。
(2)接着用水分散体のPP基材への塗布
長さ10cm、幅8cmのポリプロピレンシートをアセトンで洗浄し、上記接着用水分散体を0.5ml/7.5cm2(2.5×3cm)の濃度でシートの片末端部分(8×3cm)に塗布し、50℃のオーブンで2時間、90℃で6時間乾燥した。このポリプロピレンシートを幅2.5cmの幅で裁断した。
ポリプロピレンシート:出光ユニテック(株)製 スーパーピュアレイ SG−140TC 厚み0.3mm
(3)接着体の製造および接着強度の測定
上記接着性能の評価1(3)、(4)に記載の方法により、接着体を製造し、ポリプロピレン間の接着強度を測定した。結果を表5に示す。
【0219】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明によれば、ポリオレフィン連鎖長が十分に長く、かつ高い変性量を有する変性グラフト共重合体が提供される。当該変性グラフト共重合体は、ポリオレフィン及び極性物質等の異種材料に対して良好な親和性を有する。したがって、本発明の変性グラフト共重合体および当該変性グラフト共重合体を含有する組成物は、相溶化剤、接着剤、塗料等の成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト共重合体の官能基を変性して得られる変性グラフト共重合体であって、該グラフト共重合体が以下の(a)〜(e)を満たし、該官能基が反応してなる機能性側鎖を有する変性グラフト共重合体。
(a)グラフト率が1〜150質量%
(b)GPCで測定した重量平均分子量が500〜400000
(c)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
(d)主鎖が、官能基を有する単量体単位を含有する重合鎖
(e)側鎖が、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合鎖若しくは二種以上の共重合鎖、またはエチレン単位が50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィン単位およびエチレン単位からなる共重合鎖のいずれかであり、かつメソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%の重合鎖
【請求項2】
グラフト共重合体が、以下の(A)〜(C)を満たす反応性ポリオレフィンと、グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体との共重合反応によって形成されたものである、請求項1に記載の変性グラフト共重合体。
(A)一分子あたりの末端不飽和基量が0.5〜1.0個
(B)メソペンタッド分率〔mmmm〕が30〜80モル%
(C)炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種の単独重合体若しくは二種以上の共重合体、またはエチレンが50質量%以下である、炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる一種以上の単量体とエチレンの共重合体のいずれかの重合体
【請求項3】
官能基が、カルボン酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、エステル基から選ばれる官能基である、請求項1または2に記載の変性グラフト共重合体。
【請求項4】
グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体が、式(III)
【化1】

〔式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R2は、(IV)式〜(VII)式
【化2】

で表されるいずれかの基である。また、R3は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、または酸素原子、窒素原子および珪素原子のいずれかの原子を含む炭素数1〜12の基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、またはエポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基およびカルボキシル基のいずれかの基を有する炭素数1〜12の基を示す。nは0〜5の整数である。〕
で表される単量体の一種または二種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の変性グラフト共重合体。
【請求項5】
グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体が、[I]アクリル酸及びその誘導体、[II]メタアクリル酸類及びその誘導体、[III]ビニルエステル及びその誘導体、[IV]スチレン及びその誘導体から選ばれる一種または二種以上である、請求項4に記載の変性グラフト共重合体。
【請求項6】
グラフト共重合体の主鎖を形成する単量体が、下記A群から選択される一種以上と下記B群から選択される一種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の変性グラフト共重合体。
A群;[V]無水マレイン酸及びその置換体、[VI]マレイン酸及びそのエステル、[VII]マレイミド及びその置換体
B群;以下の式(VIII)で表される化合物
【化3】

〔式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R6は、炭素数1〜28の炭化水素基または(IV)式〜(VII)式
【化4】

のいずれかの基を示す。また、R3は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、または酸素原子、窒素原子および珪素原子のいずれかの原子を含む炭素数1〜12の基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示し、R5は水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、またはエポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基およびカルボキシル基のいずれかの基を有する炭素数1〜12の基を示す。nは0〜5の整数である。〕
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する水分散体または溶液。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有するコーティング組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する接着剤。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有するフィラー処理剤。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載の変性グラフト共重合体を含有する相溶化剤。

【公開番号】特開2009−185171(P2009−185171A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26258(P2008−26258)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】