説明

変性ジエン−α−オレフィン系共重合体及びその製造方法

【課題】接着性、相溶性を改良した変性ジエン−α−オレフィン系共重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)〜(4)で示される構造単位を含有する共重合体であり、少なくとも共重合体の末端の一方が、下記式(5)示される末端基である変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
−(−CHR−CH=CH−CH−)− (1)
−(−CH−CR−)− (2)
−(−CH−CH(CH=CHR)−)− (3)
−(−CHCR−)− (4)
C=C(R)−COO−(CH−NHCOO− (5)
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、フェニル基、塩素原子、シクロへキシル基又はカルボニルオキシアルキル基であり、Rは、窒素原子を含有する置換基を表す。jは繰り返し数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエン−α−オレフィン系共重合体及びその製造方法に関する。より詳細には、共役ジエン化合物とα−オレフィン化合物から得られる、末端に水酸基を有する低分子量のジエン−α−オレフィン系共重合体を、イソシアネート化合物又はその誘導体で変性した、変性ジエン−α−オレフィン系共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非極性なポリオレフィンやゴム成分等と、極性ポリマーや無機材料等とを相溶化させたり、接着させるため、種々の相溶化剤や接着剤が開発されている。一般的には、ポリオレフィンやゴム成分を極性化合物により変性したものが利用され、工業的にこれらの変性体の価値は高い。
【0003】
ポリエチレンやポリプロピレンの無水マレイン酸や塩素による変性体には、多くの上市品がある。これらは、相溶化剤、接着剤、粘着剤、プライマー等の用途に用いられている。これらは、ラジカル形成可能な変性剤及び/又は極性化合物を用いて調製されている。しかしながら、この手法では、例えば、(メタ)アクリロイル基のような、熱的に不安定な置換基を分子内に導入することができないという欠点がある。
【0004】
熱的に不安定な置換基を導入する手法としては、例えば、分子末端にこのような置換基と反応性を有する置換基を予め導入しておき、この反応性基を介して導入する手法がある。しかし、効率的に末端に反応性基を導入するには、特殊な触媒系や重合技術を用いる必要があり、工業的な応用は難易度が高い。また、高分子量体の末端のみでは、導入率が低いため、その導入効果が充分得られない場合が多い。
【0005】
また、極性の高い被着体へ接着を行う場合、ジエン系とα−オレフィン化合物ベースの極性のみでは、充分の接着力が発現できない場合が多い。これを改良するためには、ベースとなる液状ゴムに、さらに極性の高いオレフィン化合物を導入することが有効である。しかし、極性の高い導入基を用いると変性の手法が限定され、反応性の高い置換基を導入することはさらに難易度が高くなる。
【0006】
一方、ジエン系モノマーは、特殊な触媒系を用いることで、その重合体の末端に、水酸基等の反応性基を効率的に導入できることが開示されている(特許文献1参照)。この末端水酸基は、適当な機能性官能基を導入するために利用されている(特許文献2及び3参照)。
【0007】
特に、末端に反応性基を有する低重合体の場合には、末端基の割合が必然的に増加するため、末端基への機能性官能基の導入効果が高くなる。また、末端反応性の重合体の主鎖構造へ、適当なオレフィン化合物を共重合させると、広い範囲での相溶性、接着性等への効果が制御可能になると考えられる。
【特許文献1】特開昭50−18582号公報
【特許文献2】特開昭62−148346号公報
【特許文献3】特開2002−371101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、接着性、相溶性を改良した変性ジエン−α−オレフィン系共重合体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、共重合体の構成単位にピリジル基等の窒素含有置換基を有するものを導入することにより、被着体の選択範囲がさらに広がることを見出した。具体的に、ジエン−α−オレフィン系共重合体の共重合組成比を変化させ、さらに、その末端の水酸基をイソシアネート誘導体で変性した構造を有する変性共重合体が有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体等が提供される。
1.下記式(1)〜(4)で示される構造単位を含有する共重合体であり、少なくとも共重合体の末端の一方が、下記式(5)で示される基である変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【化2】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、フェニル基、塩素原子、シクロへキシル基又はカルボニルオキシアルキル基であり、Rは、窒素原子を含有する置換基を表す。jは繰り返し数を表す。]
2.数平均分子量が300〜10,000である1に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
3.前記式(2)及び式(4)で示される構造単位が、共重合体分子中に1〜90モル%含まれる1又は2に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
4.前記式(4)で示される構造単位が、共重合体分子中に1〜90モル%含まれる1又は2に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
5.前記式(2)のRがフェニル基である1〜4のいずれか一項に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
6.前記式(4)のRがピリジル基である1〜5のいずれかに記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
7.前記式(1)〜(4)で示される構造単位を含有し、少なくとも末端部の一方が水酸基であるジエン−α−オレフィン系共重合体と、下記式(6)で表される化合物とを、溶剤中で反応させる変性ジエン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、反応液中における前記共重合体の濃度を5〜50重量%とし、前記共重合体100重量部に対し、ラジカル補足剤を0.01〜1重量部添加して反応させる、変性ジエン−α−オレフィン系共重合体の製造方法。
C=C(R)−COO−(CH−NCO (6)
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、jは、繰り返し数を表す。]
8.前記共重合体の全末端基に占める、前記式(6)由来の末端基の量が20〜100モル%である7に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着性、相溶性を改良した変性ジエン−α−オレフィン系共重合体及びその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体(以下、変性共重合体という)は、下記式(1)〜(4)で示される構造単位を含有する共重合体であり、少なくとも共重合体の末端の一部が、下記式(5)示される末端基である。
【化3】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、フェニル基、塩素原子、シクロへキシル基又はカルボニルオキシアルキル基であり、Rは、窒素原子を含有する置換基を表す。jは繰り返し数を表す。]
【0013】
具体的には、式(1)又は式(3)で表される共役ジエン化合物に由来する構造単位と、式(2)又は式(4)で表される二種類のα−オレフィン化合物に由来する構造単位を含み、末端基の少なくとも1つが式(5)で表される基である共重合体である。尚、式(5)の基以外の末端基は、主に水酸基である。
【0014】
式(1)〜(5)のR、R、R及びRにおいて、炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状のいずれでもよい。好ましくは、水素原子又はメチル基である。
式(2)のRのカルボニルオキシアルキル基に含まれるアルキル基は、メチル基、エチル基が好適である。Rはフェニル基が特に好ましい。
式(4)のRの窒素原子を含有する置換基としては、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、ピラジル基等が挙げられる。好ましくは、ピリジル基、ピペリジル基であり、特にピリジル基が好ましい。
式(5)のjは1〜8の整数であり、好ましくは2〜5の整数である。
【0015】
本発明の変性共重合体において、共役ジエン化合物に由来する式(1)及び式(3)の構造単位の含有率(A)と、二種類のα−オレフィン化合物に由来する式(2)及び式(4)の構造単位の含有率(B)の比A:B(モル比:%)は、10:90〜99:1の範囲が好ましく、20:80〜98:2の範囲がより好ましく、30:70〜97:3の範囲がさらに好ましい。
【0016】
α−オレフィン化合物由来の構造単位の比率が1モル%未満では、本発明の目的である接着性、相溶性改良の効果が充分に得られない場合がある。一方、90モル%を越える場合、ジエン系重合体の本来の性質が失われ、柔軟性を保持しない材料となる場合がある。
【0017】
本発明の変性共重合体において、二種類のα−オレフィン化合物の比率(式(2):式(4)、モル比)は、特に制限されないが、好ましくは99:1〜30:70、さらに好ましくは98:2〜50:50の範囲である。
尚、本発明では、変性共重合体を構成する各構造単位の重合様式は、ランダム共重合、ブロック共重合等いずれでもよく特に制限されない。
【0018】
変性共重合体の数平均分子量は、300〜20,000、好ましくは500〜10,000である。
数平均分子量が300未満では、例えば、光硬化後、脆くなるため、目的の性能を発揮することができない場合がある。一方、20,000を越えると、変性部分の割合が相対的に落ちるため、相溶性が低下し、さらに粘度上昇のため、取扱いが困難になり好ましくない。
【0019】
本発明の変性共重合体は、式(1)〜(4)で示される構造単位を含有し、少なくとも末端部の一方が水酸基であるジエン−α−オレフィン系共重合体(以下、未変性共重合体という)と、下記式(6)で表される、水酸基に対して反応性をもつ活性化合物(以下、変性剤という)とを、溶剤中で反応させることで製造できる。
C=C(R)−COO−(CH−NCO (6)
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、jは、繰り返し数を表す。]
【0020】
式(6)において、R及びjは上記式(5)と同様である。
未変性共重合体の数平均分子量は、300〜20,000、好ましくは500〜10,000である。数平均分子量が300未満では、例えば、光硬化後、脆くなるため、目的の性能を発揮することができない場合がある。一方、20,000を越えると、水酸基含有量が落ちるため、相溶性が低下し、さらに粘度上昇のため、取扱いが困難になり好ましくない。
【0021】
未変性共重合体の水酸基含有量は、好ましくは0.2〜10モル/kg、より好ましくは0.4〜7モル/kgである。水酸基含有量が0.2モル/kg未満では、水酸基導入の効果が低下するため、各種用途に適用した場合、効果が発現しない場合がある。一方、10モル/kgを越える導入量では、逆に極性構造が多くなるため、ゴム本来の性質を失い、脆い構造となる場合がある。
【0022】
未変性共重合体は、その構造にシス又はトランスからなる1,4構造(上記式(1)の構造単位)の合計が、50モル%以上を占めることが好ましい。
尚、未変性共重合体の水酸基は、分子鎖の末端だけでなく、分子鎖の内部にあってもよい。
【0023】
未変性共重合体は、共役ジエン化合物と、α−オレフィン化合物と、窒素原子を含有するα−オレフィン化合物とを、触媒(重合開始剤)存在下で共重合させて製造することができる。
共役ジエン化合物としては、炭素数4〜12のジオレフィン性炭化水素が好適である。具体的には、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。
【0024】
また、本発明では、この他にイソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)、シクロペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等も用いることができる。
【0025】
α−オレフィン化合物としては、炭素数2〜12の不飽和基含有化合物が好適である。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、アクリル酸及びそのエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等)、メタクリル酸及びそのエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0026】
窒素原子を含有するα−オレフィン化合物としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、α―メチル−2−ビニルピリジン、α―メチル−3−ビニルピリジン、α―メチル−4−ビニルピリジン、2−ビニルピペリジン、3−ビニルピペリジン、4−ビニルピペリジン、アクリロニトリル、アクリルアミド等がある。また、ビニルピリジン、ビニルピペリジンは、2位、3位、4位の混合物を用いてもよい。
【0027】
共重合を行う触媒としては、過酸化水素(H)、水酸基を有するアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等)又は水酸基を有するパーオキシド(例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド等)等が挙げられる。
【0028】
触媒の使用量は、共役ジエン化合物、α−オレフィン化合物及び窒素原子を含有するα−オレフィン化合物の合計を100重量部としたときに、例えば、Hを用いる場合には、1.0〜100重量部、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕を用いる場合には、5.0〜100重量部、シクロヘキサノンパーオキサイドを用いる場合には、5.0〜100重量部がそれぞれ適当である。
【0029】
共重合は無溶媒で行うことも可能であるが、反応の制御の容易さ、共重合後の後処理の容易さ等から溶媒を用いるのが好ましい。溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が通常用いられる。
反応温度は80〜150℃、反応時間は0.5〜15時間が適当である。また、共重合時に、2種以上の共役ジエン化合物を混合して用い、四元以上の共重合体とすることも可能である。
【0030】
反応終了後に溶液を減圧下で蒸留すれば溶剤、未反応モノマー等が除去され、未変性共重合体が得られる。
【0031】
変性共重合体は、この未変性共重合体と、変性剤とを溶剤中で反応させて製造する。本発明では、変性剤として式(6)で示した活性化合物を用いることで、ウレタン結合を介して、ゴム成分である未変性共重合体に、アクリロイル基やメタクリロイル基等の基を導入することができる。
【0032】
変性剤としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工、カレンズMOI)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工、カレンズAOI)、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
変性反応を行うには、金属触媒を用いることで反応時間を短縮でき、また、反応温度を低下させることができる。触媒は、具体的には、スズ系の触媒が用いられ、たとえば、ジ(2−エチルヘキサン酸)ジブチルスズ、ジドデカン酸ジブチルスズ等がある。
【0034】
この変性反応では、変性剤は、未変性共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部用いられる。より好ましくは、0.02〜10重量部である。
反応温度は−20〜120℃、反応時間は1時間〜4日が適当である。
【0035】
溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ベンゼン、エーテル、石油エーテル等が好適例として挙げられる。尚、この変性反応は、無溶媒で行うことも可能である。
反応液中における未変性共重合体の濃度は、反応の制御及び攪拌混合の容易さから5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%とする。50重量%を超えると、粘度上昇のため、攪拌性が悪化し、反応系の均質性が得られなくなる。
【0036】
本発明では、変性反応の際、未変性共重合体100重量部に対し、ラジカル補足剤を0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部添加する。
ラジカル補足剤を添加するのは、本反応により導入された変性剤由来の置換基が、反応時又は反応後の処理時の熱履歴若しくは過度な光照射により反応する可能性を有しているので、これを避けるためである。
ラジカル補足剤としては、一般的な重合禁止剤として用いられているキノン系化合物や金属等が好適である。具体的には、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジーt−ブチルハイドロキノン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノチアミン、銅粉末等が挙げられる。
【0037】
反応終了後に溶液を減圧下で蒸留すれば、溶剤、未反応変性剤等が除去され、変性共重合体が得られる。
尚、未反応の変性剤が多い場合は、反応溶液に水を加えた後、有機層と水層を分離して、有機層から変性共重合体を抽出してもよい。
【0038】
本反応で得られる変性共重合体は、未変性共重合体の水酸基がウレタン置換された共重合体である。
本反応は、残存水酸基により確認を行うことができる。本反応による水酸基の変性剤による置換率は、全水酸基の、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%である。置換率が20モル%未満では、変性の効果が認められなくなる場合がある。即ち、本発明の変性共重合体は、上記式(6)由来の末端構造をとっているものが、好ましくは全末端基の20〜100モル%である。
【0039】
反応における置換率は、変性後の残存水酸基量で変性量を見積もることによって決定する。
【0040】
尚、これまでの窒素原子を含有しない液状ゴムの場合、分岐構造は特殊な重合方法を用いなければ、ほとんど形成されなかった。従って、水酸基量は、末端量とほとんど同じであった。
しかし、窒素原子を含有するオレフィンを用いた場合、重合性が高いため、1,2−ビニル基や主鎖オレフィンでの後反応が起りやすくなり、分岐構造が形成されやすくなる。そのため、末端水酸基量は、一分子中に3個以上と算出される場合がある。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。尚、水酸基含有共重合体(未変性共重合体)及び変性共重合体の分析は、以下のように行なった。
(1)共重合体に占めるスチレン由来の構造単位、ビニルピリジン由来の構造単位の量
共重合体のH−NMRスペクトルにおける4.7〜5.8ppm(ジエンの吸収)、7.0〜7.4ppm(スチレンの吸収)、ビニルピリジンの吸収(8.3〜8.6ppm)のピーク面積を用い求めた。
【0042】
(2)水酸基含量
水酸基含有共重合体約5gに、無水フタル酸のピリジン溶液25mlを加え、約100℃にて加熱溶解した。冷却後、1/2N水酸化ナトリウム水溶液70ml及び滴定指示薬(フェノールフタレイン/ピリジン溶液)を少量添加し、均一にした。1/5N水酸化ナトリウム水溶液にて滴定し、白色から紅色に変色し、15秒間保持した点を終点とした。また、共重合体を加えない空試験も同時に行い、リファレンス数値(B)の算出も行った。水酸基含量は、以下の式を用いて算出した。
水酸基含量(モル/kg)=(B’−S’)×N/W
W:(共)重合体量(g)
B’:空試験での滴定量(ml)
S’:試料での滴定量(ml) 20
N:1/5N水酸化ナトリウム水溶液の規定度
【0043】
(3)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミネーションクロマトグラフィーにより測定した。
・カラム:TOSOTSK−GEL MULTIPORE HXL−M 2本
Shodex KF−801 1本
・検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS150C
・測定条件
溶媒:THF、測定温度:40℃、流速:1.0ミリリットル/分
PS標準サンプルとの相対比較で数平均分子量を算出した。
【0044】
(4)ジエン部のミクロ構造
共重合体のH−NMRスペクトルを測定し、5.2〜5.8ppm(cis:C)、5.2〜5.8ppm(trans:B)、4.7〜5.1ppm(vinyl:V)のピーク面積比から算出した。
【0045】
製造例1
[水酸基含有ブタジエン−スチレン−ビニルピルジン共重合体の製造]
容量1Lのオートクレーブに、共役ジエン化合物として1,3−ブタジエン239g(4.4モル)、α−オレフィン化合物としてスチレンモノマー75.6g(0.73モル)、窒素原子を含有するα−オレフィン化合物として4−ビニルピリジン(0.49モル)、溶媒としてイソプロピルアルコール198.5g、水1.8g及び35%過酸化水素水67.5gを封入した。この混合物を60分かけて130℃まで昇温した後、さらに60分間反応させた。冷却及び脱圧後、内容物を抜出し、分液漏斗で水洗を実施した。有機層を取り出し、エバポレーターで減圧処理して溶剤等の除去を実施し、残留物として水酸基含有ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体210gを得た。この共重合体の分析値を以下に示す。
スチレン由来の構造単位:9.2モル%
ビニルピリジン由来の構造単位:9.4モル%
数平均分子量:4300
水酸基含量:0.65モル/kg
ジエン部分のミクロ構造 cis:trans:vinyl=20:60:20
【0046】
製造例2
[水酸基含有ブタジエン−スチレン共重合体の製造]
容量1Lのオートクレーブに、1,3−ブタジエン239.4g(4.4モル)、スチレンモノマー75.6g(0.73モル)、イソプロピルアルコール198.5g、水1.8g及び35%過酸化水素水67.5gを封入した。この混合物を60分かけて130℃まで昇温した後、さらに60分間反応させた。冷却及び脱圧後、内容物を抜出し、分液漏斗で水洗を実施した。有機層を取り出し、エバポレーターで減圧処理して溶剤等の除去を実施し、残留物として水酸基含有ブタジエン−スチレン共重合体205gを得た。この共重合体の分析値を以下に示す。
ジエン部分のミクロ構造 cis:trans:vinyl=20:60:20
スチレン由来の構造単位:15モル%
数平均分子量:2200
水酸基含量:1.14モル/kg
【0047】
実施例1
[変性ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン共重合体の製造]
製造例1で製造した水酸基含有共重合体100gを、乾燥エア置換した1Lセパラブルフラスコに投入した。これにエーテル600mlを投入し、均一に溶解させた後、約100mlのエーテルを加熱留去した。共重合体溶液を氷浴で冷却し、これに銅粉500mg、ジドデカン酸ジブチルスズ150mg、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート21gを順に加えた。この混合物を、室温下、24時間攪拌後、溶媒留去を行い、さらに真空乾燥をして、残留物として変性共重合体110gを回収した。
残存水酸基を定量したところ、検出下限以下であり、水酸基のアクリロイル基への置換率は100%となった。また、この変性共重合体の数平均分子量は5080であった。
【0048】
比較例1
[変性ブタジエン−スチレン共重合体の製造]
製造例2で製造した水酸基含有共重合体100gを、窒素置換した1Lセパラブルフラスコに投入した。これにエーテル600mlを投入し、均一に溶解させた後、約100mlのエーテルを加熱留去した。共重合体溶液を氷浴で冷却し、これに銅粉500mg、アクリル酸クロライド22mlを順に加えた。この混合物を、室温下、24時間攪拌後、溶媒留去を行い、残留物として変性共重合体110gを回収した。
残存水酸基を定量したところ、検出下限以下であり、水酸基のアクリロイル基への置換率は100%であった。また、この変性共重合体の数平均分子量は1,900であった。
【0049】
[接着性の評価]
実施例及び比較例で得られた共重合体9gに、それぞれアクリル酸−2−エチルへキシル1g、t−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂パーブチルZ)0.3gを混ぜ、クロロプレン製ゴムシート(厚さ1mm)に塗布した。
この塗布面に同形状のPETシート(厚さ0.1mm)を、160℃にて3分間(予熱3分)、1MPaの強度で圧着した。
24時間以上室温放置した後、JIS K6854に準拠して、この試験片を剥離させて、そのときの荷重から強度を定量化した。評価は、同一変性体に対して3点実施し、その平均値を剥離強度とした。
その結果、実施例1の共重合体では、0.85Nであるのに対し、比較例1の共重合体では、0.70Nであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の変性共重合体は、相溶化剤、接着剤、分散剤等に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(4)で示される構造単位を含有する共重合体であり、少なくとも共重合体の末端の一方が、下記式(5)で示される基である変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、フェニル基、塩素原子、シクロへキシル基又はカルボニルオキシアルキル基であり、Rは、窒素原子を含有する置換基を表す。jは繰り返し数を表す。]
【請求項2】
数平均分子量が300〜10,000である請求項1に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【請求項3】
前記式(2)及び式(4)で示される構造単位が、共重合体分子中に1〜90モル%含まれる請求項1又は2に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【請求項4】
前記式(4)で示される構造単位が、共重合体分子中に1〜90モル%含まれる請求項1又は2に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【請求項5】
前記式(2)のRがフェニル基である請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【請求項6】
前記式(4)のRがピリジル基である請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体。
【請求項7】
前記式(1)〜(4)で示される構造単位を含有し、少なくとも末端部の一方が水酸基であるジエン−α−オレフィン系共重合体と、下記式(6)で表される化合物とを、溶剤中で反応させる変性ジエン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、
反応液中における前記共重合体の濃度を5〜50重量%とし、
前記共重合体100重量部に対し、ラジカル補足剤を0.01〜1重量部添加して反応させる、変性ジエン−α−オレフィン系共重合体の製造方法。
C=C(R)−COO−(CH−NCO (6)
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、jは、繰り返し数を表す。]
【請求項8】
前記共重合体の全末端基に占める、前記式(6)由来の末端基の量が20〜100モル%である請求項7に記載の変性ジエン−α−オレフィン系共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2007−119596(P2007−119596A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313698(P2005−313698)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(301020167)出光サートマー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】