説明

変性ペプチドの製造方法及び変性ペプチド

【課題】黄変及び硫黄様臭を低減でき、実用的な収率を実現できる水溶性の変性ペプチドの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】当該変性ペプチドの製造方法は、ケラチン、水及び還元剤を混合してケラチン混合液を調製する還元工程と、ケラチン混合液に酸化剤を混合する酸化剤混合工程と、酸化剤添加後のケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを中性近傍まで低下させるpH調整工程とを備える変性ペプチドの製造方法において、pH調整工程におけるpH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長いことを特徴とする。特に、pH調整工程におけるpH11〜10の時間をpH9〜7の時間よりも長くするとよい。酸化剤混合工程前に、ケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを9以上11以下に調整する予備的pH調整工程をさらに備えるとよい。前記酸としては、クエン酸又は酢酸が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の変性ペプチドの製造方法及び当該製造方法により得られる変性ペプチドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
羊毛、羽毛等は、衣料品、寝具、インテリア製品などの多くの分野で広く使用されている。このような衣料品等の製造工程や使用済み廃棄物として発生する廃棄羊毛等は年間約5万トンを超えると言われている。かかる廃棄羊毛等は、従来埋め立てや焼却等により処分されているが、この処分に伴う環境問題が懸念されている。
【0003】
一方、羊毛等が廃棄対象にされているか否かに拘わらず、羊毛等を溶解して所定のタンパク質を分離・抽出し、フィルムや繊維等に利用するための研究開発が行われている。
【0004】
このような研究開発の成果として、例えば特開平7−126296号公報には、羊毛等の水に不溶なタンパク質(ケラチン)におけるジスルフィド結合(−S−S−)をメルカプト基(−SH)に還元変換し、そのメルカプト基の全部又は一部をカルボキシメチルジスルフィド基(−SSCH2COOH)に変換することにより得られる可溶化タンパク質(変性ペプチド)及びその製造方法が開示されている。
【0005】
また、特開2009−23924号公報には、水に不溶なα−ケラチンをチオグリコール酸ナトリウムにより変性させる可溶性ケラチン(変性ペプチド)の製造方法が開示されている。この可溶性ケラチンの製造方法は、具体的には、水の存在下でα−ケラチンをチオグリコール酸ナトリウムに接触させる還元工程と、この還元工程後の処理液に酸化剤を添加する酸化剤混合工程と、処理液のpHを5.0〜8.0に調整するpH調整工程とを備えている。このpH調整工程としては、酸化剤混合工程前に行う形態と、酸化剤混合工程後に行う形態とが開示されており、酸化剤混合工程前に行う形態の方が可溶性ケラチンの収率を向上できることが実験例で示されている。
【0006】
上記の通り、変性ペプチドを製造することは可能となっているところであるが、前記従来の変性ペプチドの製造方法では、得られた水溶性の変性ペプチドに、着色(黄変)及び不快な硫黄様臭が認められる。かかる黄変及び硫黄様臭は変性ペプチドの商品価値を著しく損なうため、このような不都合を解消に向ける製造技術の提供が望まれている。また、収率が数パーセントの変性ペプチドの製造方法では実用的であるとはいえず、実用的な収率を実現できる変性ペプチドが当然に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−126296号公報
【特許文献2】特開2009−23924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、黄変及び硫黄様臭を低減でき、かつ実用的な収率を実現できる水溶性の変性ペプチドの製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
羊毛等に含まれるケラチンの利用を促進すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者等は、ケラチンをチオグリコール酸等により変性させる変性ペプチドの製造過程において、酸化剤の存在下、pH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長くなるよう酸によるpH調整を行うと、黄変及び硫黄様臭を低減でき、変性ペプチドを実用的な収率で製造できるという知見を得た。
【0010】
その結果、前記課題を解決するためになされた変性ペプチドの製造方法に係る発明は、
ケラチン、水及び還元剤を混合してケラチン混合液を調製する還元工程と、
前記ケラチン混合液に酸化剤を混合する酸化剤混合工程と、
前記酸化剤添加後のケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを中性近傍まで低下させるpH調整工程と
を備える変性ペプチドの製造方法において、
前記pH調整工程におけるpH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長いことを特徴とする。
なお、pH調整工程は、酸化剤混合工程完了後、開始後又は同時に行うことができる。
【0011】
当該変性ペプチドの製造方法は、酸化剤混合工程後にpH調整工程を設けると共に、前記pH調整工程において、pH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長くなるようにケラチン混合液のpH調整を行うことで、実用的な収率で水溶性の変性ペプチドを製造することができ、得られる変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭が低減する。
【0012】
特に、前記pH調整工程におけるpH11〜10の時間をpH9〜7の時間よりも長くするとよい。このようにpH調整工程におけるpH11〜10の時間をpH9〜7の時間よりも長くすることで、上述の変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭の低減効果が向上する。
【0013】
前記酸化剤混合工程前に、ケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを9以上11以下に調整する予備的pH調整工程をさらに備えるとよい。このように、酸化剤の混合前にケラチン混合液のpHを9以上11以下に調整することによって、上述の変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭をより確実に低減でき、特に酸化剤として過酸化水素水を用いかつpHが11を越える場合に生じる変性ペプチドの着色も効果的に低減する。
【0014】
前記還元剤として、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸及びメルカプトプロピオン酸塩からなる群より選択される一種又は二種以上を用いるとよい。これらの還元剤を用いることで、変性ペプチドの収率がより向上する。
【0015】
前記酸化剤として、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群より選択される一種又は二種以上を用いるとよい。これらのいずれの酸化剤を用いても、変性ペプチドの収率改善と、黄変及び硫黄様臭の低減とを達成することができる。
【0016】
前記pH調整工程及び/又は予備的pH調整工程における酸としては、クエン酸又は酢酸が好ましい。特にクエン酸を用いることで、チオグリコール酸様の特異臭の発生を効果的に低減することが可能となる。
【0017】
前記還元工程において、ケラチン混合液のpHを9以上13以下に調整することが好ましい。還元工程におけるケラチン混合液のpHをこの範囲に調整することで、ケラチン主鎖の切断を抑制しつつジスルフィド基を還元でき、高分子量の変性ペプチドを収率良く製造することができる。
【0018】
前記還元工程において、ケラチン混合液にアルカリ性化合物を混合するとよい。このように、ケラチン混合液にアルカリ性化合物を混合することで、変性ペプチドの収率がより向上する。
【0019】
前記還元工程におけるケラチン混合液の温度としては、20℃以上60℃以下が好ましい。このように還元工程でのケラチン混合液の温度をこの範囲に設定することで、ケラチンのジスルフィド基の還元が円滑に進むと共に、ケラチン主鎖の切断を抑制できる。
【0020】
また、本発明に係る変性ペプチドは、当該変性ペプチドの製造方法により得られるものである。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る変性ペプチドの製造方法によれば、酸化剤混合工程後にpH調整工程を備えると共に、前記pH調整工程において、pH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長くなるようにケラチン混合液のpH調整を行うことで、黄変及び硫黄様臭を低減しつつ、水溶性の変性ペプチドを実用的な収率で製造することができる。その結果、当該変性ペプチドの製造方法によれば、製造性及び低コスト性が向上し、加えて得られた変性ペプチドの利用性、汎用性等が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法を示すフロー図
【図2】本発明の第二の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0024】
<第一の実施形態>
本発明の第一の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法は、図1に示すように、ケラチンを原料として変性ペプチドを製造するものであり、還元工程(STP1)、酸化剤混合工程(STP2)、及びpH調整工程(STP3)を備え、任意工程として不溶物除去工程(STP4)、及び回収工程(STP5)を備えている。
【0025】
(還元工程)
還元工程(STP1)は、ケラチン、水及び還元剤を混合してケラチン混合液を調整する工程である。かかる還元工程において、ケラチンが有するジスルフィド基(−S−S−)をメルカプト基(−SH HS−)に還元する。
【0026】
原料であるケラチンとしては、これを構成タンパク質として含む羊毛(メリノ種羊毛、リンカーン種羊毛等)、人毛、獣毛、羽毛、爪等が挙げられる。これらの中でも、羊毛又は羽毛が安価でかつ安定的に入手できる点で好適に使用される。この羊毛等の原料については、殺菌、脱脂、洗浄、切断、粉砕及び乾燥を適宜に組み合わせて、予め処理すると良い。
【0027】
水の量は、特に限定されないが、例えば、羊毛等の原料1質量部に対して、20容量部以上200容量部以下であるとよく、これにより還元反応が良好に行われる。
【0028】
還元剤は、ケラチンのジスルフィド基をメルカプト基に変換する作用を有する。かかる還元剤としては、例えば、メルカプトアルキルカルボン酸及び/又はその塩、チオ乳酸及び/又はその塩、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、グルタチオン、チオ尿素等が挙げられる。本発明の変性ペプチドの製造方法においては、一種又は二種以上の還元剤を使用することができる。
【0029】
前記還元剤の中でも、メルカプトアルキルカルボン酸及び/又はその塩が好ましく、還元工程で生じたメルカプト基をカルボキシラトアルキルジスルフィド基に変換するための変性剤となる。このメルカプトアルキルカルボン酸及び/又はその塩としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸、及びメルカプトプロピオン酸塩からなる群より選択される一種又は二種以上が使用される。チオグリコール酸塩としては、例えば、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸リチウム、チオグリコール酸アンモニウムが挙げられる。中でも、ケラチンの変性を効率良く行える面から、チオグリコール酸ナトリウム及びチオグリコール酸カリウムが好ましく、チオグリコール酸ナトリウムがより好ましい。また、メルカプトプロピオン酸塩としては、例えばメルカプトプロピオン酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、メルカプトプロピオン酸リチウム、メルカプトプロピオン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、ケラチンの変性を効率良く行える面から、メルカプトプロピオン酸ナトリウム及びメルカプトプロピオン酸カリウムが好ましく、メルカプトプロピオン酸ナトリウムがより好ましい。
【0030】
前記メルカプトアルキルカルボン酸及びその塩の使用量としては、羊毛等の原料1gを基準として、0.0050モル以上0.02モル以下が好ましく、0.0075モル以上0.01モル以下が特に好ましい。また、その使用量は、ケラチン混合液の容量を基準として、0.10mol/L以上0.40mol/L以下が好ましく、0.15mol/L以上0.20mol/L以下が特に好ましい。かかるメルカプトアルキルカルボン酸の使用量を上記範囲とすることにより、ケラチンの還元反応を良好に行うことができる。
【0031】
なお、還元工程におけるケラチン混合液には、アルカリ性化合物を混合すると良い。アルカリ性化合物とは、水に添加することで、その水をアルカリ性にすることができる化合物である。このアルカリ性化合物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等が挙げられ、その他にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸や、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等も挙げられる。中でも、ケラチンの変性を効率良く行う観点から、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。還元工程では、上記アルカリ性化合物を一種又は二種以上使用することができる。
【0032】
アルカリ性化合物の混合量は、特に限定はされないが、前記還元工程におけるケラチン混合液のpHを下記範囲に調整するよう配合するとよい。還元工程におけるケラチン混合液のpHの下限としては、9が好ましく、10が特に好ましい。一方、還元工程におけるケラチン混合液のpHの上限としては、13が良く、12が好ましく、11が特に好ましい。ケラチン混合液のpHが上記下限以上となるように調整することで、変性ペプチドの収率が向上する。一方、混合量の上限は、得られる変性ペプチドの分子量に応じて設定することができる。具体的には、ケラチン混合液のpHが上記上限以下となるように調整することで、ケラチン主鎖の切断を抑制し、高分子量の変性ペプチドを製造することができる。ケラチン主鎖の切断を促進し、低分子量の変性ペプチドを製造することを目的とする場合には、ケラチン混合液のpHが13を超えるよう調整することが好ましい。
【0033】
還元工程におけるケラチン混合液の温度の下限としては、20℃が好ましく、30℃がより好ましく、40℃がさらに特に好ましい。一方、当該ケラチン混合液の温度の上限としては、60℃が好ましい。このケラチン混合液の温度が上記下限より小さいと、ジスルフィド基をメルカプト基に変換するための還元の時間が長くなり、十分な還元を実行できない恐れがある。一方、このケラチン混合液の温度が上記上限を超えると、ケラチン主鎖が切断されることがある。なお、ケラチン混合液の温度を維持する設定時間は、ケラチン混合液の温度が低いほど長時間に設定され、同温度が高いほど短時間に設定される。その時間としては、例えば、20分以上120分以下である。
【0034】
(酸化剤混合工程)
酸化剤混合工程(STP2)は、還元工程(STP1)後のケラチン混合液に酸化剤を混合する工程である。かかる酸化剤の混合は、ケラチンのメルカプト基を変性するための酸化反応を促進するために行われる。
【0035】
酸化剤としては、例えば、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。酸化剤混合工程では、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群より選択される一種又は二種以上の酸化剤が好適に用いられ、変性ペプチドの収率改善と黄変及び硫黄様臭の低減とを達成することができる。
【0036】
酸化剤の使用量は、特に限定されないが、羊毛等の原料1gを基準として、0.001モル以上0.02モル以下が好ましく、ケラチン混合液の容量を基準として、0.02mol/L以上1mol/L以下が好ましい。酸化剤の使用量が上記範囲を超えると、シスチンモノオキシド、シスチンジオキシド、システイン酸が生成するおそれがあり、ひいては変性ペプチドの収率が低下するおそれがある。一方、酸化剤の使用量が上記範囲より小さいと、ケラチンの変性が不十分となるおそれがある。酸化剤の混合においては、酸化剤がケラチン混合液中で局所的に高濃化することを避けるため、1mol/L以上5mol/L以下程度の酸化剤溶液を例えば30分から6時間かけて徐々に混合すると良い。
【0037】
なお、酸化剤混合工程におけるケラチン混合液の温度は、特に限定されないが、例えば還元工程での温度以下に設定することができる。
【0038】
(pH調整工程)
pH調整工程(STP3)は、酸化剤混合工程(STP2)において酸化剤が添加された後のケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを中性近傍まで低下させる工程である。このpH調整工程(STP3)は、酸化剤混合工程(STP2)におけるケラチン混合液への酸化剤の混合の完了後、開始後又は同時に行うことができる。本工程での酸の混合によってケラチン混合液のpHを低下させることで、混合液中のケラチンのメルカプト基をカルボキシラトアルキルジスルフィド基に十分変換することができる。
【0039】
pH調整工程(STP3)において、pH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長くなるようケラチン混合液のpH調整を行う。このようなpH調整によって、変性ペプチドを実用的な収率で得ることができると共に、得られる変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭を低減することができる。当該pH調整工程(STP3)において、pH11〜9の時間は、pH9〜7の時間と比較して、5分以上長いことが好ましく、10分以上長いことがより好ましい。pH9〜7の時間よりpH11〜9の時間をこの程度長くすることで、上述の変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭の低減効果を確実に奏することができる。
【0040】
特に、pH調整工程(STP3)におけるpH11〜10の時間をpH9〜7の時間よりも長くするとよい。このように、pH調整工程(STP3)におけるpH11〜10の時間をpH9〜7の時間よりも長くすることで、上述の変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭の低減効果がさらに向上する。
【0041】
pH調整工程(STP3)におけるpH11〜9の時間は、pH9〜7の時間よりも長い限り特に限定されるものではないが、好ましくは20分以上120分以下、より好ましくは40分以上90分以下とすることができる。また、pH調整工程(STP3)におけるpH9〜7の時間は、pH11〜9の時間よりも短い限り特に限定されるものではないが、好ましくは1分以上90分以下、より好ましくは2分以上60分以下とすることができる。pH11〜9の時間及び/又はpH9〜7の時間を、このような好ましい範囲とすることで、ケラチン混合液中での局所的なpH低下に起因するメルカプト基同士のジスルフィド化を抑制しつつ、良好な収率でかつ黄変及び硫黄様臭が良好に低減された変性ペプチドを得ることができる。
【0042】
pH調整工程で混合する酸としては、有機酸及び無機酸から選択された一種又は二種以上を使用すると良い。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸が挙げられ、無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸が挙げられる。中でも、酢酸又はクエン酸が好ましい。なお、酢酸を用いれば、チオグリコール酸様の特異臭が変性ペプチドから生じることがあるが、クエン酸を用いれば、その特異臭が低減する。
【0043】
酸の混合量としては、特に限定されないが、pH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長くなるように、かつ最終的なpHが中性近傍(具体的には5以上9以下、好ましくは6以上8以下)まで低下するよう配合するとよい。このようにケラチン混合液の最終的なpHを中性近傍に調整することで、ケラチンへの変性基の導入が促進されると共に、ケラチンのメルカプト基同士によるジスルフィド基生成が抑制される。
【0044】
pH調整工程におけるケラチン混合液の温度としては、10℃以上60℃以下が好ましく、20℃以上40℃以下が特に好ましい。このようにケラチン混合液の温度を前記範囲に制御することで、シスチンモノオキシド等の生成を抑制することができる。
【0045】
なお、pH調整工程で酸の混合が終了した後に、ケラチン混合液を例えば1〜48時間放置すると良い。このように、pH調整後に所定時間ケラチン混合液を放置することで、ケラチンへの変性基の導入を十分に行うことができる。
【0046】
上記還元工程(STP1)、酸化剤混合工程(STP2)及びpH調整工程(STP3)を経ることで、変性ペプチド溶液が得られる。得られる変性ペプチドは、還元工程において還元剤としてチオグリコール酸及びその塩から選択された一種又は二種以上を使用した場合、ケラチンのメルカプト基がカルボキシメチルジスルフィドのイオン基(−S−SCH2COO)に変換されたものである。その変換の反応式は、次の通りである。
【0047】
【化1】

【0048】
また、還元工程において還元剤としてメルカプトプロピオン酸及びその塩から選択された一種又は二種以上を使用した場合、得られる変性ペプチドは、ケラチンのメルカプト基がカルボキシエチルジスルフィドのイオン基(−S−SCH2CH2COO)に変換されたものである。その変換の反応式は、次の通りである。
【0049】
【化2】

【0050】
(不溶物除去工程)
pH調整工程を経ることで水溶性の変性ペプチドが製造されるが、得られた変性ペプチド溶液には不溶物が含まれている。そのため、不溶物除去工程(STP4)では、pH調整工程(STP3)の終了により得られた変性ペプチド溶液から不溶物を取り除く。かかる不溶物除去工程(STP4)では、遠心分離、圧搾分離、沈降分離、浮上分離等の公知の固液分離手段を採用することができ、必要に応じてイオン交換や電気透析等による脱塩等を行うと良い。
【0051】
(回収工程)
次の回収工程(STP5)は、変性ペプチド溶液中から固形状の変性ペプチドを回収する工程である。この回収工程(STP5)における固形状変性ペプチドの回収方法としては、(1)変性ペプチド溶液を凍結乾燥することによる回収、(2)変性ペプチド溶液を噴霧乾燥することによる回収、(3)塩酸等の酸を変性ペプチド溶液に添加して、この溶液のpHを2.5から4.0程度に低下させることにより生じた変性ペプチド沈殿物の回収などが挙げられる。なお、回収した固形状の変性ペプチドについては、水や酸性水溶液による洗浄、乾燥等を、必要に応じて行うと良い。
【0052】
このようにして得られた変性ペプチドは、水溶性であり、化粧料原料、繊維の表面処理剤、タンパク質フィルム原料等に利用することができる。
【0053】
なお、不溶物除去工程(STP5)で除去された不溶物に含まれる変性ペプチドも黄変及び硫黄様臭が低減されたものとなる。当該変性ペプチドは、上記回収工程で得られる変性ペプチドよりも硫黄含有量が多いものである。そして、前記の不溶物に含まれる変性ペプチドを加水分解すれば、硫黄含有量が多く、且つ黄変及び硫黄様臭が低減された水溶性の変性ペプチドを得ることができる。加水分解の方法の例としては、(a)酵素による加水分解、(b)酸による加水分解及び(c)アルカリによる加水分解が挙げられる。方法(c)では、ペプチドのカルボキシラトアルキルジスルフィド基のβ−脱離反応が進行する恐れがあるため、(a)酵素による加水分解又は(b)酸による加水分解が、特に好ましい。
【0054】
前記の(a)酵素による加水分解における酵素の例としては、ペプシン、プロテアーゼA、プロテアーゼBなどの酸性タンパク質分解酵素;パパイン、プロメライン、サーモライシン、プロナーゼ、トリプシン、キモトリプシンなどの中性タンパク質分解酵素等が挙げられる。また、市販されているタンパク質分解酵素としては、大和化学工業社製の「プロテライザーA」が羊毛ケラチンの加水分解に好適に使用される。前記(b)酸による加水分解における酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸;蟻酸、シュウ酸等の有機酸等が挙げられる。また、前記(c)アルカリによる加水分解におけるアルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。
【0055】
このように、前記不溶物除去工程の不純物を加水分解することによって得られた変性ペプチドは、水溶性かつ硫黄含量が多いため、化粧料原料、繊維の表面処理剤、タンパク質フィルム原料等の広範な分野に利用することができる。
【0056】
<第二の実施形態>
本発明の第二の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法は、図2に示すように、ケラチンを原料として変性ペプチドを製造するものであり、還元工程(STP1)、予備的pH調整工程(STP6)、酸化剤混合工程(STP2)、及びpH調整工程(STP3)を備え、任意工程として不溶物除去工程(STP4)、及び回収工程(STP5)を備えている。
【0057】
この第二の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法における還元工程(STP1)、酸化剤混合工程(STP2)、pH調整工程(STP3)、不溶物除去工程(STP4)及び回収工程(STP5)は、前記第一の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法と同様であるため、これらの工程に関する詳細な説明はここでは省略する。なお、本実施形態における不溶物除去工程で除去された不溶物に含まれる変性ペプチドもまた、前記第一の実施形態と同様に、加水分解することによって、硫黄含有量が多く、且つ黄変及び硫黄様臭が低減された水溶性変性ペプチドを得ることができる。
【0058】
(予備的pH調整工程)
予備的pH調整工程(STP6)は、還元工程(STP1)後であって酸化剤混合工程(STP2)前のケラチン混合液に酸を混合して、pHを9以上11以下、好ましくは10以上11以下に調整する工程である。この予備的pH調整工程における酸の例としては、第一の実施形態のpH調整工程における酸と同様のものを挙げることができる。
【0059】
ケラチン混合液に酸を混合してpHを9以上11以下に調整するための時間は、好ましくは5分以上60分以下、より好ましくは10分以上30分以下とすることができる。この予備的pH調整工程における酸の混合量としては、特に限定されないが5分以上60分以下の時間をかけてケラチン混合液のpHが9以上11以下に達するように配合することが好ましい。また、予備的pH調整工程におけるケラチン混合液の温度としては、10℃以上60℃以下が好ましく、20℃以上40℃以下が特に好ましい。このようにケラチン混合液の温度を前記範囲に制御することで、シスチンモノオキシド等の生成を抑制することができる。
【0060】
第二の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法は、上記第一の実施形態に係る変性ペプチドの製造方法と同様に、酸化剤混合工程後にpH調整工程を備えると共に、前記pH調整工程において、pH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長くなるようにケラチン混合液のpH調整を行うことで、黄変及び硫黄様臭を低減しつつ、水溶性の変性ペプチドを実用的収率で製造することができる。
【0061】
当該変性ペプチドの製造方法は、酸化剤混合工程(STP2)の前にケラチン混合液のpHを9以上11以下(好ましくは10以上11以下)に調整する予備的pH調整工程(STP6)を備えるため、酸化剤混合工程(STP2)における酸化剤の混合開始後又は混合と同時にpH調整工程(STP3)を行い、酸化剤混合工程(STP2)でのケラチン混合液のpHを9以上11以下に保持するとよい。このように、予備的pH調整工程(STP6)により酸化剤の混合前のケラチン混合液のpHを9以上11以下に調整し、かつこれに続く酸化剤混合工程(STP3)においてケラチン混合液のpHを9以上11以下に保持することによって、いずれの酸化剤を用いた場合においても、反応系内の副反応を抑制し、得られる変性ペプチドの黄変及び硫黄様臭の原因となる副生成物の量が低減し、特に酸化剤として過酸化水素水を用いかつpHが11を越える場合に生じる変性ペプチドの着色も効果的に低減する。
【実施例1】
【0062】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0063】
[実施例1]
以下の還元工程、酸化剤混合工程、pH調整工程、不純物除去工程、及び回収工程に従って、固形状の変性ペプチドを得た。
【0064】
(還元工程)
中性洗剤で洗浄、乾燥させたメリノ種羊毛を、約5mmに切断した。ケラチンを含むこの羊毛25g、30質量%チオグリコール酸ナトリウム水溶液76.8g及び6mol/L水酸化ナトリウム水溶液42.5gを混合し、さらに水を混合して全量750ml、pH11のケラチン混合液を調製した。このケラチン混合液を、45℃、1時間の条件で攪拌した。次に、さらに水を混合して全量を1000mlとし、45℃、2時間の条件で攪拌し、その後、液温が常温になるまで自然冷却した。
【0065】
(酸化剤混合工程)
還元工程後のケラチン混合液に、臭素酸ナトリウムを10.25g配合した水溶液125gを約60分かけて混合した。混合中は、ケラチン混合液を常時攪拌した。
【0066】
(pH調整工程)
酸化剤混合工程後の攪拌されているケラチン混合液に、クエン酸水溶液(クエン酸を35.4g配合した500gの水溶液)約300mlを約50分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次11から9になるように調整した。次に、同クエン酸水溶液約150mlを約30分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次9から8になるように調整した。続いて、同クエン酸水溶液約50mlを約5分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次8から7になるように調整した。このように、ケラチン水溶液にクエン酸を混合することによって、変性ペプチド溶液を得た。
【0067】
(不溶物除去工程及び回収工程)
変性ペプチド溶液をろ過することにより当該溶液の不溶物を除去した。その後、ろ液に36質量%塩酸水溶液を97.2g配合した水溶液160gを添加して変性ペプチド溶液のpHを3.8にすることにより、変性ペプチドの沈殿を生じさせた。この沈殿を回収、水洗し、固形状の変性ペプチドを得た。
【0068】
[比較例1]
pH調整工程において、酸化剤混合工程後の攪拌されているケラチン混合液に、実施例1と同様のクエン酸水溶液約300mlを約5分にわたって徐々に混合して、ケラチン混合液のpHが漸次11から9になるように調整し、次に、同クエン酸水溶液約150mlを約30分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次9から8になるように調整し、続いて、同クエン酸水溶液約50mlを約50分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次8から7になるように調整した以外は、実施例1と同様にして固形状の変性ペプチドを得た。
【0069】
[比較例2]
pH調整工程を予備的pH調整工程に替え、この予備的pH調整工程において、還元工程後の攪拌されているケラチン混合液に、実施例1と同様のクエン酸水溶液約300mlを約5分にわたって徐々に混合して、ケラチン混合液のpHが漸次11から9になるように調整し、次に、同クエン酸水溶液約150mlを約30分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次9から8になるように調整し、続いて、同クエン酸水溶液約50mlを約50分にわたって徐々に混合して、ケラチン混合液のpHが漸次8から7になるように調整した以外は、実施例1と同様にして固形状の変性ペプチドを得た。
【0070】
[実施例2]
以下の予備的pH調整工程、酸化剤混合工程、及びpH調整工程に従った以外は実施例1と同様にして、固形状の変性ペプチドを得た。
【0071】
(予備的pH調整工程)
還元工程後のケラチン混合液に、クエン酸水溶液(実施例1のクエン酸水溶液と同濃度)を混合し、ケラチン混合液のpHが漸次11から10になるように調整した。
【0072】
(酸化剤混合工程)
予備的pH調整工程後のケラチン混合液に、35質量%過酸化水素水を15.26g配合した水溶液178gを攪拌しながら約30分かけて混合した。
【0073】
(pH調整工程)
酸化剤混合工程における酸化剤の混合開始後、ケラチン混合液を常時攪拌すると共に、pHが10以上11以下に保持されるように、同クエン酸水溶液を混合した。また、酸化剤混合工程後の攪拌されているケラチン混合液に、同クエン酸水溶液約50mlを約5分にわたって徐々に混合して、ケラチン混合液のpHが漸次10から7になるように調整した。
【0074】
[比較例3]
酸化剤混合工程における酸化剤を、35質量%過酸化水素水を15.26g配合した水溶液178gに変更し、さらにpH調整工程において、酸化剤混合工程後の攪拌されているケラチン混合液に、実施例1と同様のクエン酸水溶液約300mlを約5分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次11から9になるよう調整し、次に、同クエン酸水溶液約150mlを約30分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次9から8になるように調整し、続いて、同クエン酸水溶液約50mlを約50分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次8から7になるように調整した以外は、実施例1と同様にして固形状の変性ペプチドを得た。
【0075】
[実施例3]
予備的pH調整工程、酸化剤混合工程及びpH調整工程における酸として、酢酸水溶液(酢酸を34g配合した825gの水溶液)を用い、酸化剤混合工程における酸化剤として、臭素酸ナトリウムを10.25g配合した水溶液125gを用いた以外は、実施例2と同様にして固形状の変性ペプチドを得た。
【0076】
[比較例4]
還元工程において、還元剤として30質量%チオグリコール酸水溶液を用い、還元時の温度条件を30℃とし、さらに、pH調整工程において、酸化剤混合工程後の攪拌されているケラチン混合液に、酢酸水溶液(酢酸を34g配合した825gの水溶液)を約5分にわたって徐々に混合して、ケラチン混合液のpHが漸次11から9になるよう調整し、次に、同酢酸水溶液を約30分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次9から8になるように調整し、続いて、同酢酸水溶液を約50分にわたって徐々に混合し、ケラチン混合液のpHが漸次8から7になるように調整した以外は、実施例1と同様にして固形状の変性ペプチドを得た。
【0077】
[実施例4]
予備的pH調整工程、酸化剤混合工程及びpH調整工程における酸として、酢酸水溶液(酢酸を34g配合した825gの水溶液)を用いた以外は、実施例2と同様にして固形状の変性ペプチドを得た。
【0078】
[特性の評価]
(pH調整工程後の液相部の着色及び臭気)
前記実施例及び比較例における変性ペプチド溶液の液相部の着色及び臭気を観察した。着色については黄変の程度が小さいほど良好であり、臭気については硫黄様臭等の不快な臭気が小さいほど良好であると判断される。各実施例及び比較例に関する着色及び臭気の観察結果を、下記表1−1及び1−2に示す。
【0079】
(変性ペプチドの分子量分布)
変性ペプチド水溶液(不純物除去工程後の液相)中の変性ペプチドの分子量分布を確認した。この分子量分布は、タカラバイオ社製「Protein Molecular Weight Marker(Low)」を基準物質とし、Sodium Dodecyl Sulfate−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)法により確認した。分子量分布の確認においては、分子量分布のバンドが明確であるほど、最適条件下で所望の変性ペプチドが得られていると考えられ、分子量分布として良好であると判断される。各実施例及び比較例に関する分子量分布の観察結果を、下記表1−1及び1−2に示す。
【0080】
(変性ペプチドの収率)
前記実施例及び比較例で得られた変性ペプチドの収率結果を、下記表1−1及び1−2に示す。なお、表1における収率は、下記計算式により求めた値である。
【0081】
収率=100×(W−Wres)/W
収率 :変性ペプチドの収率(%)
:還元工程で使用した羊毛の乾燥質量
res:不溶物除去工程で取り除いた不溶物の乾燥質量
【0082】
【表1−1】

【0083】
【表1−2】

【0084】
前記表1−1及び1−2を確認すると、pH調整工程におけるpH11〜9の時間をpH9〜7の時間よりも短くした比較例1〜4では、液相部に黄色の着色及び硫黄臭(比較例4ではさらにチオグリコール酸臭)があることが分かった。また、pH調整を酸化剤混合前にのみ行った比較例2では、変性ペプチドがほとんど得られなかった。これに対し、pH調整工程におけるpH11〜9の時間をpH9〜7の時間よりも長くした実施例1〜4においては、液相部に着色及び硫黄臭がほとんど観察されず、良好な収率で変性ペプチドが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン、水及び還元剤を混合してケラチン混合液を調製する還元工程と、
前記ケラチン混合液に酸化剤を混合する酸化剤混合工程と、
前記酸化剤添加後のケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを中性近傍まで低下させるpH調整工程と
を備える変性ペプチドの製造方法において、
前記pH調整工程におけるpH11〜9の時間がpH9〜7の時間よりも長いことを特徴とする変性ペプチドの製造方法。
【請求項2】
前記pH調整工程におけるpH11〜10の時間がpH9〜7の時間よりも長い請求項1に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項3】
前記酸化剤混合工程前に、ケラチン混合液に酸を混合し、このケラチン混合液のpHを9以上11以下に調整する予備的pH調整工程をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項4】
前記還元剤として、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、メルカプトプロピオン酸及びメルカプトプロピオン酸塩からなる群より選択される一種又は二種以上が用いられる請求項1、請求項2又は請求項3に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項5】
前記酸化剤として、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群より選択される一種又は二種以上が用いられる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項6】
前記pH調整工程及び/又は予備的pH調整工程における酸として、クエン酸又は酢酸が用いられる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項7】
前記還元工程において、ケラチン混合液のpHを9以上13以下に調整する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項8】
前記還元工程において、ケラチン混合液にアルカリ性化合物を混合する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項9】
前記還元工程におけるケラチン混合液の温度が、20℃以上60℃以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の変性ペプチドの製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の変性ペプチドの製造方法により得られた変性ペプチド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−270076(P2010−270076A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124613(P2009−124613)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】