説明

変性ポリイソシアネートの製造方法

【課題】貯蔵安定性に優れたカルボジイミド基及び/又はウレトンイミン基を有する液状の有機イソシアネートの製造方法。
【解決手段】ホスホリン系触媒を用いて有機ポリイソシアネートをカルボジイミド化する変性ポリイソシアネートの製造方法において、比表面積が少なくとも400m/gで吸油量が少なくとも180ml/100gの二酸化珪素粒子を使用することで触媒を吸着不活性化しカルボジイミド化反応を停止させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリイソシアネートをホスホリン系触媒を用いてカルボジイミド化反応を行う変性ポリイソシアネートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基をカルボジイミド(以後「CD」と言う)基に変換することは、有機ポリイソシアネートを高い温度で加熱することにより得られる。
またCD化に際し、高温下での有機ポリイソシアネート自身の重合防止やエネルギー低減等から、比較的低い温度でもCD化が可能な触媒の使用が提言されている。
なかでもホスホリン系の触媒、特にホスホリンオキシド系の触媒が、緩慢な温度条件でも高い触媒活性を有しCD化の反応を開始進行させるので好ましく、米国特許第2853473号、EP−A−515933号及び米国特許第6120699号にも記載されている。
【0003】
しかしながら、CD化の反応は二酸化炭素の発生を伴うことが知られており、CD化の反応を停止する場合は、ホスホリン系の触媒、特にホスホリンオキシド系の触媒を不活性化し除去等をしなければ、CD化が続くと共に二酸化炭素も発生(以後「ガスの放出」と言う)し続けることになる。
これはCD化後の有機ポリイソシアネートの保管中においても、例えば触媒の不活性化が不十分であったりまた除去が不完全である時などにも言えることで、特に高温時でガスの放出が激しくなる。この結果、例えばCD化された有機ポリイソシアネートを貯蔵する容器(タンク、ドラム、石油缶)の内部圧力が上昇し、容器に膨れが発生し、場合によっては破裂などを起こすこともある。
【0004】
EP−A−515933号及び米国特許第6120699号には、ホスホリン系の触媒、ホスホリンオキシド系の触媒によるCD化の停止剤として、例えば酸、酸塩化物、クロロ蟻酸エステル及びシリル化酸やトリメチリルシリルトリフルオロメタンスルホン酸エステルをより高モル当量使用することが記載されている。この方法では、少量では触媒不活性化によるCD化停止の効果が不十分でるために多量に添加する必要が有る。しかし、シリル化酸等を多量に添加した場合は、着色度(色数)がかなり高いカルボジイミド基及び/又はウレトンイミン基を有するイソシアネートになり、これから得られるプレポリマーも着色するので、限定された用途にしか使用できず好ましくない。
【0005】
特公昭57−36906号公報には、吸着剤で触媒を吸着することにより触媒を不活性化し吸着剤を除去する方法で、熱安定性に優れる有機イソシアネートを得る方法が記載されている。吸着剤として珪質土や吸着炭素および金属酸化物が記載されているが各吸着剤の詳細などについては述べられていない。好ましい吸着剤として珪質土が挙げられているが、吸着効果に優れる無水珪酸の含有率なども低い。また、吸着剤が水分を比較的多く含んでいることもあるので、有機イソシアネートと吸着剤中の水分との反応管理などの問題点も考えられ吸着剤として使用するには充分とはいえない。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2853473号
【特許文献2】EP−A−515933号
【特許文献3】米国特許第6120699号
【特許文献4】特開昭51−122023号公報
【特許文献5】特公昭57−36906号公報
【0007】
これらのことから、ホスホリン系の触媒、特にホスホリンオキシド系の触媒を不活性化しCD化の反応を停止することが出来、容易に除去が可能であると共に、色数(着色度合)が低くなるような停止剤が望まれるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、色数が低く、熱安定性に優れたCD化された変性ポリイソシアネートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の色数が低く、熱安定性に優れたCD化された変性ポリイソシアネートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、
有機ポリイソシアネートのカルボジイミド化反応をホスホリン系触媒の存在下で行う変性ポリイソシアネートの製造方法において、
比表面積が少なくとも400m/gで吸油量が少なくとも180ml/100gの二酸化珪素粒子を用いてホスホリン系触媒を吸着除去して、カルボジイミド化反応を停止させることを特徴とする変性ポリイソシアネートの製造方法を提供する。
本発明は、上記製造方法により得られた変性ポリイソシアネートをも提供する。
更に、本発明は、上記変性ポリイソシアネートとカルボジイミド化反応されていない有機ポリイソシアネートとを混合して得られる変性ポリイソシアネート混合物、上記変性ポリイソシアネートまたは上記変性ポリイソシアネート混合物から得られる末端イソシアネート基プレポリマーをも提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明で得られるCD化された変性ポリイソシアネートは、製造時における色数が低く、熱安定性に優れているので、一般的に貯蔵保管される45℃の温度以下ではガスの放出が起こらない。仮に貯蔵保管時の温度が80℃辺りに上昇してもガスの放出が見られない。
またこのCD化された変性ポリイソシアネートとCD化を行っていない有機ポリイソシアネートとの混合品を用いて末端イソシアネート基プレポリマー(以後「末端NCOプレポリマー」と言う)を製造しても、熱安定性に優れているので製造時や製造後の貯蔵保管時にガスの放出が見られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0013】
本発明の方法において、CD化反応は、ホスホリン系触媒の1種以上の存在下で実施される。
ホスホリン系触媒は、ホスホリンオキシドであることが好ましい。ホスホリン系触媒の例としては、1−メチルホスホリン−1−オキシド、1−フェニル−3−メチルホスホリン−1−オキサイドなどがある。好ましくは1−メチルホスホリン−1−オキシドである。
【0014】
本発明で使用されるホスホリン系触媒の量は有機ポリイソシアネートの品質に依存する。従って、必要とされるホスホリン系触媒の量は簡単な予備試験によって決定することができる。本発明では、ホスホリン系触媒の量(重量)は有機ポリイソシアネートの重量に対し0.5〜20ppmが好ましい。特に好ましい量は1〜10ppmである。
CD化反応は、一般に50〜150℃、望ましくは70〜90℃の温度範囲で実施されるが、この温度もまた簡単な予備試験によって決定することができる。CD化反応を行う時間、即ち、CD反応の開始から吸着剤を入れるまでの時間は、1.0時間〜20時間、例えば2.0時間〜10時間であることが好ましい。
CD化反応は、一般にCD化の程度が3〜50%、5〜30%に到達した時に停止されるのが望ましい。CD化の程度は、有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基(以後「NCO基」と言う)の合計量に対するCD化されたNCO基の割合である。
【0015】
CD化の程度は、CD化の反応が進行している間に、NCO含有量の測定によって決定することができる。CD化された変性ポリイソシアネートのNCO含有量は公知の滴定または適切なオンライン分析法により容易に決定することができる。
また、CD化の程度は、CD化の反応が進行している間に、有機ポリイソシアネートから発生する二酸化炭素の量からも決定することができる。二酸化炭素は容易に体積測定ができ、換算式からNCO含有量は容易に決定することができる。
【0016】
本発明では、ホスホリン系触媒を吸着剤によって吸着し不活性化した後に除去する。
【0017】
本発明において吸着剤として二酸化珪素の粒子を使用する。
二酸化珪素粒子の比表面積は、400〜800m/gであることが好ましい。特に500〜750m/gであることが好ましい。
比表面積は、JIS K1150のシリカゲル試験方法に準拠して測定することができる。
【0018】
二酸化珪素粒子の吸油量としては、180〜500ml/100gが好ましい。特に250〜500ml/100gが好ましく、更に好ましくは350〜450ml/100gである。
吸油量は、JIS K5101の顔料試験方法に準拠して測定することができる。
【0019】
CD化反応を停止させるために、比表面積が500〜750m/g、吸油量が350〜450ml/100gの両方を満足できる二酸化珪素粒子であればホスホリン系触媒を吸着不活性化し反応を停止する高い効果が得られるので尚一層好ましい。
二酸化珪素粒子の水分含有量は低い方が良く、二酸化珪素の純度は高い方が好ましい。
水分含有量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に3重量%以下である。
二酸化珪素粒子における二酸化珪素の純度としては80重量%以上が良く、95重量%以上が好ましい。
【0020】
二酸化珪素粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜25.0μm、より好ましくは1.0〜10.0μmである。さらに好ましくは4.0〜5.5μmである。0.5〜25.0μmであれば、CD化された変性ポリイソシアネートから除去するのが容易である。またCD化された変性ポリイソシアネート中のホスホリン系触媒を吸着し反応を停止する効果が充分に得られる。
二酸化珪素粒子の形状は、球状であっても、不整形であっても構わないが、球状の方がCD化された変性ポリイソシアネートへ添加し撹拌混合した時破砕されにくいので好ましい。
二酸化珪素粒子は多孔質のものが良い。多孔質の方が無孔質なものよりホスホリン系触媒を吸着しやすいからである。二酸化珪素粒子は、中空であるよりも、非中空(中実)であることが好ましい。二酸化珪素粒子は、ヒュームドシリカでないことが好ましい。
【0021】
二酸化珪素粒子の市販品の例は、鈴木油脂工業製のゴッドボールE−2C、B−6C、B−25C、AF−16C、SF−16Cである。
【0022】
二酸化珪素粒子は、ホスホリン系触媒1重量部に対して、2.5〜2000重量部で使用するのが好ましい。特に好ましい使用量としては5〜1000重量部である。
二酸化珪素粒子をホスホリン系触媒1重量部に対して2.5〜2000重量部で使用すれば、ホスホリン系触媒を吸着し不活性化するのに充分な量であり、触媒と吸着剤の吸着物のデカンテーション、ろ過、または遠心分離などにより変性ポリイソシアネートの分離除去が容易である。
【0023】
通常、吸着剤による触媒の不活性化は、例えば、吸着剤を添加して0.5〜1時間攪拌混合することにより実施できる。また、この不活性化は室温とCD化反応温度との間の任意の温度で実施することができるが、時間的及びエネルギー的効率から40〜80℃の温度範囲で実施される。
【0024】
本発明のような二酸化珪素粒子を使用すれば、触媒に対する吸着性能が優れているので、吸着時間、触媒を吸着している二酸化珪素粒子のろ過分離における除去が容易であり通常より短い時間で済み熱履歴等も短くなる。従って製造工程の短縮が可能であり、低コスト化も達成できる。また各種の酸、シリル化酸を使用した場合と比べCD化された変性ポリイソシアネートの色数が高くなることもない。
【0025】
本発明に用いる有機ポリイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられ、
2,4及び2,6トルエンジイソシアネート (TDI)およびこれらの混合物、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'MDI)およびこの異性体である2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2'‘MDI)、2,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート (2,4'MDI)、およびこれらの混合物などの芳香族ジイソシアネートがある。
また3官能より高い官能性のポリイソシアネートを含むポリメチレンポリフェニルメタンポリイソシアネート(以下「ポリメリックMDI」という)などがある。
4,4'MDIおよびこの異性体が任意の割合で混合されている芳香族ジイソシアネートが好ましい。
4,4'MDIとその異性体からなる芳香族ジイソシアネートにおいて、一例として、各異性体の比率は次の通りである。
芳香族ジイソシアネートの各異性体の比率は4,4'MDIが0〜100重量%(例えば、1〜99重量%)、2,4'MDIが0〜65重量%(例えば、0.1〜50重量%)で2,2'MDI0〜8重量%(例えば、0.1〜5重量%)の範囲内で異性体の合計が100%になるようにする。
【0026】
CD化される前の有機ポリイソシアネートのNCO含有量は、25.0〜38.0重量%、特に28.0〜36.0重量%のNCO含有量を有しているのが好ましい。
【0027】
本発明の芳香族ジイソシアネートのNCO基をCD基へ変換した変性ポリイソシアネートは室温で色数の低い淡色の液体である。色数を示すAPHA値が、一般に40以下、例えば20以下である。またポリメリックMDIを混合したものなどはその混合比率によって例えば0℃の低温でも液状であることも可能である。また他のCD化反応を行っていない有機ポリイソシアネートと混合使用する場合などは更に0℃より低温下でも液状であることが可能である。
【0028】
通常、CD化された変性ポリイソシアネートは、CD化後常温(例えば、25℃)下等に置いて、CD基に変換されていないNCO基とCD基が反応してウレトンイミン(以後「UI」と言う)基を形成させることができる。この時全てのCD基がUI基に変換しないのでCD基として残りCD基とUI基を含有するポリイソシアネートとなる。
CD化された変性ポリイソシアネートと、CD化されていない有機ポリイソシアネートとからなる変性ポリイソシアネート混合物においては、UI基が容易に形成される。
CD化された変性ポリイソシアネートと、CD化されていない有機ポリイソシアネートとの重量比は、1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10であってよい。
このCD基とUI基を含有するポリイソシアネートは、ポリウレタン樹脂製品を製造するのに適したポリイソシアネートであり、特にポリウレタンエラストマーや自動車部品の内外装材や靴底また家具に用いられる非発泡や低密度発泡を必要としない高密度のインテグラルスキンポリウレタンフォームを作成するのに適している。
【0029】
このUI基を形成させる時に、ホスホリン系触媒の不活性化が不足していたり、ろ過分離除去が不十分で少しでも残っていれば、CD化反応が進み、所望するCD基とUI基を含有するポリイソシアネートが得られないばかりか、ガスの放出が生じ貯蔵容器の内部圧力の上昇が起きてしまうことになる。このことはCD化されていない有機ポリイソシアネートと混合して置いても同様のことが言える。
【0030】
さらには、CD基および/またはUI基を含有するポリイソシアネートと、ポリウレタンに通常用いられるポリオール等を反応させて得られる末端NCOプレポリマーの製造においてもホスホリン系触媒の不活性化やろ過分離除去が不十分であれば、末端NCOプレポリマー化反応温度の上昇によりCD化反応も同時に起きてしまう。所望する特性の末端NCOプレポリマーが得られず、またガスの放出が生じることによって反応時の異常な圧力上昇を伴い危険である。
また製造後の末端NCOプレポリマーの保管時においても、特に保管温度の上昇と共にガスの放出が生じ貯蔵容器内部の圧力上昇が起きてしまうことになる。
【0031】
また、CD基および/またはUI基を含有するポリイソシアネートやそれから得られる末端NCOプレポリマーを用いて、ポリウレタンエラストマーや非発泡または高密度のインテグラルスキンポリウレタンフォームなどのポリウレタン樹脂製品を得ようとしたときなども、ポリウレタン樹脂化反応による発熱によって、ガスの放出が生じ必要以上の発泡が起き密度が低くなるので性能面などで満足のいくポリウレタン樹脂製品が得られなくなる。
【0032】
本発明で得られるCD化された変性ポリイソシアネートは、有機ポリイソシアネート重量に対しホスホリン系触媒を0.5〜20ppm使用し、CD化反応を行うに際し、比表面積が400〜800m/gで、吸油量が180〜500ml/100gの特定の二酸化珪素をホスホリン系触媒1重量部に対して2.5〜2000重量部で使用してホスホリン系触媒を吸着によって不活性化しろ過分離除去し、CD化反応を停止することによって製造されることが好ましい。
この様にして得られるCD化された変性ポリイソシアネートは、色数が低く、熱安定性に優れるため、貯蔵安定性に優れている。
またCD化された変性ポリイソシアネートを常温(例えば、25℃)下等に置いてUI基を形成させる場合も、熱安定性に優れているので、CD化が更に進むことも無くポリウレタンエラストマーや非発泡や高密度のインテグラルスキンポリウレタンフォームを作製するのに適しているCD基および/またはUI基を含有する変性ポリイソシアネートを得ることができる。
またCD化が進むことによるガスの放出も起こらない。このCD基及び/又はUI基を含有するポリイソシアネートから得られる末端NCOプレポリマーも、作製時の熱安定性はもちろんその後の貯蔵安定性にも優れておりまた色数も低い。
【0033】
次に実施例により、本発明を詳しく説明する。例中の「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
【0034】
CD化された変性ポリイソシアネートの色数、触媒を吸着した吸着剤のろ過などの難易性、熱安定性(貯蔵安定性)については、次のようにして判断した。
(1)色数
APHA値(JISK4101−1993色数試験方法)が40以下であれば色数が低くて良好である。
(2)触媒を吸着した吸着剤のろ過などの難易性
ろ過の難易性は、CD化された変性ポリイソシアネート1Kgを、有効捕捉粒子径3ミクロンのろ紙を用いてろ過に要した時間で、60分以上要した時は難と判断した。
【0035】
(3)熱安定性(貯蔵安定性)
500mlの石油缶にCD化された変性ポリイソシアネートを400g投入して、45℃で24時間放置したのち、石油缶の膨れ度合い(レベル0〜6)で、熱安定性を判断した。
レベル0(良好):石油缶に膨れ無し
レベル1(良好):石油缶の側面に僅かに膨れが見られ、手で押さえると僅かに抵抗感有り
レベル2(稍悪):石油缶の側面に膨れが見られ、手で押さえると凹み抵抗感有り
レベル3(悪) :石油缶の側面が大きく膨れ、手で押さえるも凹み無し
レベル4(悪) :石油缶の側面が大きく膨れ、天板の半分にも膨れ
レベル5(悪) :石油缶の側面が大きく膨れ、天板全体にも膨れ有り
レベル6(悪) :原形無し
【実施例1】
【0036】
CD基及び/又はUI基を含有するポリイソシアネートの製造
(1)4,4'MDI(NCO含有量33.6%)1000部にCD化反応用触媒の1−メチルホスホリン−1−オキシド3.5ppm(30%トルエン溶液、触媒有効量としては1.05ppm)を添加混合し、80℃に加熱し約6時間 CD化反応を行った。60℃に冷却した後のイソシアネート基の濃度(NCO含有量)は29.6%であった。(CD化の程度は11%であった)
(2)直ちに、CD化反応用触媒の吸着剤として二酸化珪素粒子(純度85%、比表面積650m/g、吸油量350ml/100g、平均粒子径4.5μm)を、(1)のCD化された変性ポリイソシアネートに0.05%添加(1−メチルホスホリン−1−オキシドに対して476倍)し攪拌しながら約30分毎にNCO含量を測定した。NCO含有量は1時間後に29.6%になり殆ど低下は見られなくなった。その後4時間程撹拌を続けNCO含有量の確認を行ったがNCO含有量低下は殆ど見られず29.4%であった。
(3)(2)の触媒を吸着している二酸化珪素粒子を有効捕捉粒子径3ミクロンのろ紙でろ過した。ろ過は目詰まりも無くろ過時間も50分で容易であった。
このCD化された変性ポリイソシアネートの色数は30APHAと低くNCO含量は29.4%の無色透明液体であった。また25℃における粘度は、37mPasであった。
(4)さらに熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(3)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル1であり、これによりガスの放出が殆ど生じなかったと判断された。
【実施例2】
【0037】
CD基及び/又はUI基を含有する変性ポリイソシアネートの製造
(1)加熱時間を約5.1時間にした以外は実施例1と同様にして行った。
60℃に冷却した後のNCO含有量は29.6%であった(CD化の程度は11%あった)。
(2)直ちに、CD化反応用触媒の吸着剤として二酸化珪素粒子(純度85%、比表面積650m/g、吸油量350ml/100g、平均粒子径4.5μm)を、(1)のCD化された変性ポリイソシアネートに0.01%(1−メチルホスホリン−1−オキシドに対して95倍)添加し攪拌しながら約30分毎にNCO含有量を測定した。NCO含量は1時間後に29.4%で一定となり殆ど低下は見られないようになった。その後も確認のため4時間程撹拌を続けNCO含有量の確認を行ったがNCO含有量低下は殆ど見られず29.1%であった。
(3)(2)の触媒を吸着している二酸化珪素粒子を有効捕捉粒子径3ミクロンのろ紙でろ過した。ろ過は目詰まりも無くろ過時間も9分と短く容易であった。
このCD化された変性ポリイソシアネートの色数は30APHAと低くNCO含量は29.0%の無色透明液体であった。また25℃における粘度は、47mPasであった。
(4)さらに熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(3)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル1であり、これによりガスの放出が殆ど生じなかったと判断された。
【比較例1】
【0038】
CD基及び/又はUI基を含有するポリイソシアネートの製造
(1)CD化反応用触媒の1−メチルホスホリン−1−オキシド3.0ppm(30%トルエン溶液、触媒有効量としては0.9ppm)、加熱温度を83℃、加熱時間を約7.6時間にし、CD化反応を行った。60℃に冷却した後のNCO含有量は29.5%であった(CD化の程度は11%であった)。
(2)直ちに、CD化反応の停止剤としてトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸エステル(TMST)を、(1)のCD化された変性ポリイソシアネートに10ppm(1−メチルホスホリン−1−オキシドに対して11倍)添加し撹拌しながら、約30分毎に、NCO含量を測定した。NCO含量は1時間後に29.3%となり、4時間後のNCO含有量の確認を行ったがNCO含有量は28.9%と更に低下したがその後NCO含有量は28.9%に一定した。また色数は80APHAと高く着色していた。25℃における粘度は47mPasであった。
(3)熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(3)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル2であり、これによりガスの放出が起きたと判断された。
【比較例2】
【0039】
CD基及び/又はUI基を含有するポリイソシアネートの製造
(1)CD化反応用触媒の1−メチルホスホリン−1−オキシド3.6ppm(30%トルエン溶液、触媒有効量としては1.08ppm)、加熱温度を78℃、加熱時間を約7.5時間にし、CD化反応を行った。60℃に冷却した後のNCO含有量は29.6%であった(CD化の程度は11%であった)。
(2)直ちに、CD化反応の停止剤として酸化アルミニウムを(1)のCD化された変性ポリイソシアネートに0.05%(1−メチルホスホリン−1−オキシドに対して463倍)添加して撹拌しながら、約30分毎に、NCO含有量を測定した。NCO含量は1時間後に29.4%となり、4時間後のNCO含有量の確認を行ったがNCO含有量は29.0%に低下した。
(3)(2)の触媒を吸着している酸化アルミニウムを有効捕捉粒子径3ミクロンのろ紙でろ過した。ろ過は目詰まりも無くろ過時間も5分と短く容易であった。
このCD化された変性ポリイソシアネートの色数は30APHAと低く25℃における粘度も47mPasであったが、最終的なNCO含量は28.7%に低下していた。
(4)熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(3)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル3であり、これによりガスの放出が起きたと判断された。
【比較例3】
【0040】
CD基及び/又はUI基を含有するポリイソシアネートの製造
(1)加熱時間を約6.5時間にした以外は実施例1と同様にして行った。
60℃に冷却した後のNCO含有量は29.9%であった(CD化の程度は11%であった)。
(2)触媒を不活性化する停止剤を用いないで、撹拌しながら、約30分毎に、NCO含有量を測定した。1時間後にNCO含有量は29.5%となり、4時間後のNCO含有量の確認を行ったがNCO含有量は28.7%に低下し、その後更にNCO含有量は28.5%まで低下した。
(3)熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(2)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル4であり、ガスの放出が多く起きたと判断された。
【比較例4】
【0041】
(1)加熱温度を83℃、加熱時間を約7.3時間にした以外は実施例1と同様にしてCD化反応を行った。60℃に冷却した後のNCO含有量は29.3%であった(CD化の程度は11%であった)。
(2)直ちに、CD化反応用触媒の吸着剤として比表面積300m/gで吸油量が105ml/100gの二酸化珪素粒子(平均粒子径4.0μm)を、(1)のCD化された変性ポリイソシアネートに0.01%(1−メチルホスホリン−1−オキシドに対して95倍)添加し攪拌しながら約30分毎にNCO含有量を測定した。NCO含有量は1時間後に29.1%で4時間後のNCO含有量は28.5%に低下した。
(3)(2)の触媒を吸着している二酸化珪素粒子を有効捕捉粒子径3ミクロンのろ紙でろ過した。ろ過は目詰まりも無くろ過時間も3分と短く容易であった。
このCD化された変性ポリイソシアネートの色数は30APHAと低く25℃における粘度も81mPasであったが、最終的なNCO含有量は27.7%に低下していた。
(4)熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(3)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル3であり、ガスの放出が起きたと判断された。
【比較例5】
【0042】
1)加熱温度を83℃、加熱時間を約6.3時間にした以外は実施例1と同様にしてCD化反応を行った。60℃に冷却した後のNCO含有量は29.5%であった(CD化の程度は11%であった)。
(2)直ちに、CD化反応用触媒の吸着剤として、比表面積350m/gで吸油量が160ml/100gの二酸化珪素粒子(平均粒子径0.9μm)を、(1)のCD化された変性ポリイソシアネートに0.01%(1−メチルホスホリン−1−オキシドに対して95倍)添加し攪拌しながら約30分毎にNCO含有量を測定した。NCO含有量は1時間後に29.3%で4時間後のNCO含有量は28.8%に低下した。
(3)(2)の触媒を吸着している二酸化珪素粒子を有効捕捉粒子径3ミクロンのろ紙でろ過した。ろ過後のNCO含有量は28.7%で色数は30APHAと低く25℃における粘度も81mPasであったが、ろ過時間は96分で長くかかり容易ではなかった。
(4)熱安定性(貯蔵安定性)を確認するために、(3)のCD化された変性ポリイソシアネート500mlを石油缶に400g投入し窒素ガス封入後密閉し、45℃で24時間放置(UI化進行)した。石油缶の膨れはレベル2であり、ガスの放出が起きたと判断された。



【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネートのカルボジイミド化反応をホスホリン系触媒の存在下で行う変性ポリイソシアネートの製造方法において、
比表面積が少なくとも400m/gで吸油量が少なくとも180ml/100gの二酸化珪素粒子を用いてホスホリン系触媒を吸着除去して、カルボジイミド化反応を停止させることを特徴とする変性ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項2】
有機ポリイソシアネートの重量に対して、ホスホリン系触媒の使用量が0.5〜20ppmであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ホスホリン系触媒1重量部に対して、二酸化珪素粒子の使用量が2.5〜2000重量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
二酸化珪素粒子の比表面積が400〜800m/gで吸油量が180〜500ml/100gである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の製造方法によって得られた変性ポリイソシアネート。
【請求項6】
請求項5に記載の変性ポリイソシアネートと、カルボジイミド化反応されていない有機ポリイソシアネートとからなる変性ポリイソシアネート混合物。
【請求項7】
請求項5に記載の変性ポリイソシアネートまたは請求項6に記載の変性ポリイソシアネート混合物から得られる末端イソシアネート基プレポリマー。

【公開番号】特開2008−143799(P2008−143799A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330240(P2006−330240)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】