説明

変性ポリオレフィン樹脂および組成物

本発明は、含塩素化合物を使用しなくとも、ポリオレフィン系樹脂などの難密着性を示す低極性または非極性の樹脂からなる基材に対する密着性が良好であり、溶剤への溶解性、および耐水性に優れた非塩素系変性ポリオレフィン樹脂を提供することを目的のひとつとする。ポリオレフィン樹脂(A)を、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)を含むビニル系単量体(B)でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、難密着性を示す低極性または非極性の熱可塑性樹脂からなる基材表面に対する密着性と、溶剤への溶解性とが改善された変性ポリオレフィン樹脂組成物、およびその用途に関するものである。
本願は、2003年6月26日に出願された特願2003−183050号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
ポリオレフィン系樹脂は、機械的性質、耐薬品性に優れる上に、低コストで成形加工が容易であることから、多種の用途に幅広く利用されている。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、リサイクル性にも優れることから、近年の地球環境問題を背景としてその用途はさらに拡大しつつある。
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は非極性であることから、これからなる基材表面に、塗料、接着剤、印刷インキを強固に付着させることが困難である。
よって、ポリオレフィン系樹脂からなる成形物の表面に塗装や接着を行う場合には、該成形物の表面にプラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、およびクロム酸処理などの表面処理を施して、成形物の表面を活性化させて、ポリオレフィン系樹脂への密着性を改良する方法が一般に採用されている。
しかしながら、このような表面処理を行うことは、その付加的な処理のため、塗装工程が複雑で多大な設備費や時間的なロスを伴い、また、成形物の形や大きさ、樹脂中に含まれる顔料や添加物の影響により、表面処理効果にバラつきが生じやすいという欠点を有していた。
また、無処理のポリオレフィン系樹脂に対して、密着性を有する樹脂として塩素化ポリオレフィンが知られている。しかしながら、近年の環境問題への関心の高まりから含塩素化合物は、その使用が回避される傾向にある。また、塩素化ポリオレフィンは、トルエン、キシレン、ベンゼン以外の溶剤には溶解しづらく、密着性を維持したまま非芳香族溶剤に溶解させることが困難であった。
ポリオレフィン系樹脂に対して密着性を有する非塩素系樹脂として、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂をはじめとする種々の酸変性ポリオレフィン樹脂が提案されている。例えば、ポリオレフィン樹脂にアクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸をグラフト共重合させた後、さらにポリエステルまたはアルコールなどを反応させた変性共重合体が開示されている(例えば、特開平11−217537号公報)。また、ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸および特定の(メタ)アクリレートでグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂が開示されている(例えば、特開2002−173514号公報)。
しかしながら、これら酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する組成物は、ポリオレフィン系樹脂のような難密着性を示す低極性または非極性の樹脂への密着性を有するものの、トルエン、キシレン、ベンゼン以外の溶剤への溶解性が未だ不十分という問題があった。
また、その使用環境によっては、吸水してしまい、ポリオレフィン系樹脂のような難密着性を示す低極性または非極性の樹脂への密着性が低下してしまう問題があった。
【発明の開示】
よって、本発明の目的は、含塩素化合物を使用しなくとも、ポリオレフィン系樹脂などの難密着性を示す低極性または非極性の樹脂からなる基材に対する密着性が良好であり、溶剤への溶解性、および耐水性に優れた非塩素系変性ポリオレフィン樹脂、それを含む樹脂組成物、およびその用途を提供することにある。
すなわち、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂(A)を、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル(b)を含むビニル系単量体(B)でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂である。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、前述の変性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とするものである。
また、前記、ビニル系単量体(B)が不飽和カルボン酸およびその無水物を含有しないことが望ましい。
また、前記、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)が、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルから選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
また、ビニル系単量体(B)としてさらに、分子内に水酸基を有する単量体を含むことが望ましい。
また、本発明の前記変性ポリオレフィン樹脂組成物は、塗料用プライマー用途に適する。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、接着剤用途に適する。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、印刷インキ用途に適する。
【図面の簡単な説明】
図1は、接着剥離試験に使用する接着試験片(1)を示す斜視図である。
図2は、接着剥離試験に使用する接着試験片(2)を示す斜視図である。
図3は、接着剥離試験の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について説明する。ただし、本発明は以下の各実施例に限定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリオレフィン樹脂(A)>
本発明におけるポリオレフィン樹脂(A)とは、オレフィン系単量体のラジカル重合、イオン重合等で得られるオレフィン系単独重合体または共重合体;優位量のオレフィン系単量体と劣化量のビニル系単量体との共重合体;オレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体等を主成分とするものである。
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとからなる共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、およびその水素添加物等を挙げることができる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも溶剤への溶解性を考慮した場合、ポリオレフィン樹脂(A)として、低結晶性もしくは非晶性ポリオレフィンを用いることが好ましい。低結晶性もしくは非晶性ポリオレフィンの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、およびその水素添加物が挙げられる。
また、ポリオレフィン樹脂(A)は、環境への影響を考慮した場合、塩素原子を含むポリオレフィン樹脂、すなわち塩素化されたポリオレフィンを含有しないことが好ましい。
<ビニル系単量体(B)>
本発明におけるビニル系単量体(B)は、アクリロイルオキシ基(CH=CHCOO−)またはメタクリロイルオキシ基(CH=C(CH)COO−)が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)を含むことを特徴とするものである。
ここで、2級炭素原子または3級炭素原子とは、アクリロイルオキシ基(CH=CHCOO−)またはメタクリロイルオキシ基(CH=C(CH)COO−)を除く、水素原子以外の任意の基を2つまたは3つ有する炭素原子であり、これら任意の基は互いに結合して環を形成していてもよいものである。また、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)の具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸シクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸ジプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリプロピルメチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸ジブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリブチルメチル、(メタ)アクリル酸ジイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸ジt−ブチルメチル、および(メタ)アクリル酸トリt−ブチルメチル等の分岐状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でもポリオレフィン基材への密着性、溶剤への溶解性を考慮した場合、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、および(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いることが好ましい。さらに好ましくは(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルである。
本発明におけるビニル系単量体(B)は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)以外に、その他の単量体を含んでいてもよい。
その他の単量体は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)とラジカル共重合できるものであれば特に限定されない。
その他の単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、「ブレンマーPME−100、200またはAME−100、200」(日本油脂(株)製、商品名)、「ブレンマー50POEP−800Bまたは50AOEP−800B」(日本油脂(株)製、商品名)、「ブレンマー20ANEP−600」(日本油脂(株)製、商品名)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のα,β−不飽和カルボン酸類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド類;カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン等のジエン類;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン等の芳香族ビニル化合物;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ブトキシメタクリルアミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ブトキシアクリルアミド等重合性アミド類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート類、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の不飽和有機シラン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、入手のし易さ、密着性の面から、(メタ)アクリル酸エステル類、およびα,β−不飽和カルボン酸類が好ましい。さらに、これらの中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸がより好ましい。これら、その他の単量体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、ポリオレフィン系樹脂のような難密着性を示す低極性または非極性の樹脂に対する、吸水による密着性低下を考慮した場合、ビニル系単量体(B)は不飽和カルボン酸およびその無水物を含まないことが好ましい。
ここで、「不飽和カルボン酸およびその無水物を含まない」とは、ビニル系単量体(B)に不飽和カルボン酸およびその無水物が実質的に含まれていないことを意味し、本発明においては、不純物などとしてビニル系単量体(B)に不飽和カルボン酸およびその無水物が本発明の効果を損なわない量、具体的には0.1質量%以下含まれていても構わないものとする。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、塗料への密着性、顔料の分散性を考慮すれば単量体(B)は分子内に水酸基を有する単量体を含むことが好ましい。このような単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、「プラクセルFMまたはFA」(ダイセル化学(株)製;カプロラクトン付加単量体、商品名)、「FM−1またはFM−2」(ダイセル化学(株)製;メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン1分子または2分子付加物、商品名)、および「CHDMMA」(日本化成(株)製;アクリル酸1,4−シクロヘキサンジメタノール、商品名)等の水酸基含有各種(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
これらの中でも、入手のしやすさ、密着性の面から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、「FM−1またはFM−2」、および「CHDMMA」が好ましい。これら、その他の単量体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、ビニル系単量体(B)は、環境への影響を考慮した場合、分子内に塩素原子を含有しないものであることが好ましい。
ビニル系単量体(B)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)の含有量は特に制限されないが、ポリオレフィン基材への密着性、溶剤への溶解性、極性樹脂などへの密着性を考慮すれば、ビニル系単量体(B)100質量%中、5〜99.5質量%であることが好ましい。さらに好ましくは10〜95質量%である。
<変性ポリオレフィン樹脂>
本発明における変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂(A)を、ビニル系単量体(B)でグラフト変性したものである。
ここで、「グラフト変性」とは、変性対象樹脂(本発明におけるポリオレフィン樹脂(A))の存在下で、ビニル系単量体(B)をラジカル重合してグラフト共重合体を生成させることをいう。ポリオレフィン樹脂(A)をビニル系単量体(B)でグラフト変性して得られる変性ポリオレフィン樹脂には、通常、グラフト共重合体とともに、未変性のポリオレフィン樹脂(A)、およびビニル系単量体(B)の単独重合体またはランダム共重合体が含まれるが、本発明においては、発明の趣旨を損なわない限り、これらを含めて変性ポリオレフィン樹脂という。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物が、ポリオレフィン基材および極性樹脂に良好な密着性を示し、かつ溶剤への良好な溶解性を有するためには、変性ポリオレフィン樹脂はポリオレフィン樹脂(A)を、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)を含むビニル系単量体(B)でグラフト変性したものである必要がある。
また、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、強度、形態保持性の観点から10,000〜300,000が好ましく、20,000〜200,000がより好ましい。ここで、重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒として用い、35℃の条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters製、GPC150−C、ポリメチルメタクリレート換算)を用いて測定される。
<変性ポリオレフィン樹脂の製造>
変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂(A)をキシレン等の芳香族炭化水素溶媒中に高温下で溶解させ、これにビニル系単量体(B)を加えてグラフト重合させる溶液法;ポリオレフィン樹脂(A)とビニル系単量体(B)とを過酸化物存在下で、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などを用いて溶融混練する混練法;ポリオレフィン樹脂(A)とビニル系単量体(B)との混合物に放射線を照射する放射線法;ポリオレフィン樹脂(A)にビニル系単量体(B)を含浸せしめた後、有機過酸化物でビニル系単量体(B)をラジカル重合させる含浸重合法など、公知の方法により製造することができる。
グラフト変性は、ポリオレフィン樹脂(A)とビニル系単量体(B)との質量比(A/B)が1/95〜99/5の範囲で行われることが好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)が少なすぎると、ポリプロピレンなどの難密着を示す低極性または非極性の樹脂からなる基材への密着性が低下する場合がある。また、ビニル系単量体(B)が少なすぎると、溶剤への溶解性、極性樹脂への密着性が低下する場合がある。さらに好ましくは、質量比(A/B)=5/95〜90/10の範囲である。
ビニル系単量体(B)を、ポリオレフィン樹脂(A)の存在下、ラジカル重合する際には、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、通常、有機化酸化物あるいはアゾ化合物が使用される。有機過酸化物の具体例としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、およびジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。他方、アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂(A)にグラフト点を発生させるために、有機過酸化物を使用するのが好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、ビニル系単量体(B)100質量部に対し、通常、0.001〜20質量部の範囲で使用される。ラジカル重合開始剤が少なすぎると、重合反応が円滑に進まない場合があり、多すぎると、ポリオレフィン樹脂(A)の分子開裂が生じやすくなる場合がある。ラジカル重合開始剤の使用量は、より好ましくは0.01〜10質量部であり、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。
ビニル系単量体(B)を重合させる温度は、使用したラジカル重合開始剤が分解する範囲であれば特に制限ないが、通常50〜150℃である。
本発明においては、グラフト変性の際、必要に応じて連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては、通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いればよく、好ましくは、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノールあるいはそれらの混合物などのメルカプタン系連鎖移動剤が用いられる。
<変性ポリオレフィン樹脂組成物>
本発明の変性ポリオレフィン樹脂に溶剤等を加えて、変性ポリオレフィン樹脂組成物とすることができる。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、上述の変性ポリオレフィン樹脂を含有するものであり、塗料用プライマー、接着剤、印刷インキ等いろいろな用途に使用できる。本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、これ自身を塗料用プライマー、接着剤、印刷インキ等として使用することができる。あるいは、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、塗料用プライマー組成物、接着剤樹脂組成物、印刷インキ用樹脂組成物における、密着性付与のための成分としても使用することができる。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、用途に応じて、溶液、粉末、ペースト、シート等の形態とすることができる。また、その際に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の各種安定剤;酸化チタン等の無機顔料、有機顔料等の着色剤;カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤などをさらに含有することができる。
溶液として使用する場合、その溶剤としては、トルエン、キシレン、「スワゾール#1000」(丸善石油化学(株)製、商品名)、「ソルベッツ#150」(エクソン化学(株)製、商品名)などのような芳香族系炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのような脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、「DBE」(デュポン(株)製、商品名)などのようなエステル類;n−ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノールなどのようなアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルターペン、「アイソパーE」(エクソン化学(株)製、商品名)などのような脂肪族炭化水素類が挙げられる。中でも、作業性の点から芳香族系炭化水素類、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素が特に好ましい。
また、変性ポリオレフィン樹脂は、取り扱い性の点から通常、溶液中において60質量%以下になるように、有機溶剤に溶解されることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂が水酸基を有する成分を含有する場合には、架橋剤成分としてメラミン樹脂やイソシアネート化合物を混合することにより、耐溶剤性、耐水性、耐候性等塗膜性能の向上を達成することができる。
メラミン樹脂の具体例としては、n−ブチル化メラミン樹脂やメチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
また、イソシアネートとしては、フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、ブロック化されたものが挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートやトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(ないしは2,6−)ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ジ(イソシアネートメチル)−シクロヘキサンのような環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート類;これらの有機ジイソシアネート自体、またはこれらの有機ジイソシアネートの過剰量と多価アルコールや水等との付加物、前記各有機ジイソシアネートの重合体、さらにはイソシアネート・ビューレット体等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、印刷インキ用樹脂組成物中の水酸基含有成分との当量比で、NCO/OH=0.1/1〜3/1の範囲で含まれることが好ましい。
以上説明した変性ポリオレフィン樹脂組成物は、組成物中に、ポリオレフィン樹脂(A)を、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)を含むビニル系単量体(B)でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂を含有するので、塩素を含む化合物を使用しなくとも、ポリオレフィン系樹脂などの難密着性を示す低極性樹脂からなる基材に対する密着性が良好であり、しかも、溶剤への溶解性に優れる。
また、本発明における変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂からなる非極性基材だけでなく、上塗り塗料やクリアーとの密着性に優れるため、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、塗料用プライマーの用途に適する。プライマーとして用いる際には、その厚みは1〜80μmの範囲内であることが好ましい。
接着剤や印刷インキを成形物に使用した場合、その成形物には、ポリオレフィン樹脂からなる非極性基材だけではなく、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の極性樹脂が併用されていることが多い。本発明における変性ポリオレフィン樹脂は、このような極性樹脂への密着性を有することから、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、接着剤、印刷インキの用途に適する。印刷インキとして用いる際には、その厚みは0.1〜1,000μmの範囲内であることが好ましい。
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。また、各記載中「部」および「%」はすべて「質量部」および「質量%」を示す。
【実施例1】
冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌機を備えたフラスコに、トルエン1400部と、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体(デグサ・ヒュルスジャパン製、VESTOPLAST792)70部とを加え、内温85℃にてプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を溶解させた。次いで、メタクリル酸メチル21部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物を20分にわたって滴下した後、内温85℃にて7時間保持して重合反応させた。反応物を、室温に冷却した後、大量のメタノール中に投入して精製し、重量平均分子量が109,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例2】
メタクリル酸メチル21部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物を、メタクリル酸メチル18部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル3部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物に変更した以外は、実施例1と全く同様に操作して重量平均分子量が112,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例3】
プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体70部を20部に変更し、かつメタクリル酸メチル21部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物をアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル60部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル19部とメタクリル酸1部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.8部との混合物に変更した以外は、実施例1と全く同様に操作して重量平均分子量が25,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例4】
プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体をスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成製、タフテックH1221)に変更した以外は実施例3と同様に操作して重量平均分子量117,000の変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を得た。
【実施例5】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルをメタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルに変更した以外は、実施例2と全く同様に操作して重量平均分子量117,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例6】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルをアクリル酸シクロヘキシルに変更した以外は、実施例2と全く同様に操作して重量平均分子量124,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例7】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルをメタクリル酸シクロヘキシルに変更した以外は、実施例2と全く同様に操作して重量平均分子量128,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例8】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルをメタクリル酸t−ブチルに変更した以外は、実施例2と全く同様に操作して重量平均分子量134,000の変性変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例9】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルをメタクリル酸イソボルニルに変更した以外は、実施例2と全く同様に操作して重量平均分子量126,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例10】
冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌機を備えたフラスコに、酢酸ブチル980部とシクロヘキサン420部とプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体(デグサ・ヒュルスジャパン製、VESTOPLAST792)45部とスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成製、タフテックH1221)15部とを加え、内温85℃にてそれぞれの共重合体を溶解させた。次いで、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル30部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル10部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.4部との混合物を20分にわたって滴下した後、内温85℃にて5時間保持して重合反応させた。反応物を、室温に冷却した後、大量のメタノール中に投入して精製し、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は140,000であった。
【実施例11】
プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体(デグサ・ヒュルスジャパン製、VESTOPLAST792)45部とスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成製、タフテックH1221)15部とをプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体(デグサ・ヒュルスジャパン製、VESTOPLAST792)35部とスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成製、タフテックH1221)35部とにそれぞれ変更した以外は実施例10と全く同様に操作して、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は135,000であった。
【実施例12】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル30部をアクリル酸シクロヘキシル30部に変更した以外は、実施例10と全く同様に操作して、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は147,000であった。
【実施例13】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル30部をメタクリル酸t−ブチル30部に変更した以外は、実施例10と全く同様に操作して、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は146,000であった。
【実施例14】
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体をエチレン−プロピレン共重合体に変更した以外は実施例10と全く同様に操作して、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は136,000であった。
【実施例15】
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体をプロピレン−1−ブテンランダム共重合体(宇部興産製、ウベッタクUT2780)に変更した以外は実施例10と全く同様に操作して、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性プロピレン−1−ブテンランダム共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は128,000であった。
【実施例16】
メタクリル酸メチル21部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物を、メタクリル酸メチル17部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル3部とジメタクリル酸1,3−ブチレン1部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物に変更した以外は、実施例1と全く同様に操作して重量平均分子量が144,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例17】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル30部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル10部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.4部との混合物をアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル29部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル10部とジメタクリル酸1,3−ブチレン1部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.4部との混合物に変更した以外は、実施例10と全く同様に操作して変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は150,000であった。
【実施例18】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部をメタクリル酸t−ブチルに変更した以外は実施例16と全く同様に操作して重量平均分子量が147,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例19】
アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル30部をメタクリル酸t−ブチルに変更した以外は実施例17と全く同様に操作して変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は151,000であった。
【実施例20】
冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌機を備えたフラスコに、イオン交換水900部とリン酸三カルシウム6部とドデシルスルホン酸ナトリウム0.09部とプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体70部とメタクリル酸メチル18部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル3部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部とを加え、内温40℃にて1時間撹拌した後、昇温を行い内温85℃にて5時間保持し、重合反応させた。室温に冷却した後、ろ過により回収、次いで水洗、乾燥させ、重量平均分子量125,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
【実施例21】
冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌機を備えたフラスコに、イオン交換水900部とリン酸三カルシウム6部とドデシルスルホン酸ナトリウム0.09部とプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体45部とスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体15部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル30部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル10部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.4部とを加え、内温40℃にて1時間撹拌した後、昇温を行い内温85℃にて5時間保持し、重合反応させた。室温に冷却した後、ろ過により回収、次いで水洗、乾燥させ、変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体と変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体の混合物を得た。重量平均分子量は160,000であった。
【実施例22】
冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌機を備えたフラスコに、メタクリル酸メチル600部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル300部とアクリル酸4−ヒドロキシブチル100部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部とプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体100部とを加え、内温40℃にて1時間撹拌した後、ろ過によりプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を回収した。プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体100部には、メタクリル酸メチルとアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルとアクリル酸4−ヒドロキシブチルとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートとの混合物が52部含浸されていた。
得られたプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を200℃の条件下、2軸押出機にて溶融させ、バレルにて脱気を行い、残留する未反応物を除去して、重量平均分子量120,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
比較例1
メタクリル酸メチル21部とアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル9部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物をメタクリル酸メチル30部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部との混合物に変更した以外は実施例1と全く同様に操作して重量平均分子量120,000の変性プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体を得た。
比較例2
メタクリル酸メチルとアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルとのランダム共重合体(メタクリル酸メチル成分70%、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル成分30%、重量平均分子量50000)30部と、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体70部との混合物を200℃の条件下、2軸押出機にて溶融してブレンド物を得た。
試験1(溶剤溶解性)
実施例1〜22、および比較例1で調製した変性ポリオレフィン樹脂組成物、および比較例2で調製したブレンド物をトルエン、または酢酸ブチル/シクロヘキサン(=30%/70%)の溶液にポリマー濃度10%となるように加え、50℃、24時間で撹拌した。評価は撹拌後の溶液を200メッシュのナイロン(保留粒子径77μm)にてろ過し、ナイロン上に不溶残渣が回収されなかったものを○、回収されたもの×とした。表1に試験結果を示す。
試験2(PP基材への密着性)
試験1で調製したポリマー溶液を、基材であるポリプロピレン射出成形板(3mm厚、日本ポリケム(株)製、ノバテックTX−1810A)上に、乾燥膜厚10μmとなるようにスプレー塗装した。15分間室温放置、次いで80℃で30分加熱乾燥して塗装板を得た。基材上の塗膜をゴバン目(1mm間隔、100マス)にカットし、塗膜のセロハン粘着テープによる剥離テストを行い、付着率(基材に残ったマスの数)により密着性を評価した(JIS K 5400)。表1に試験結果を示す。
試験3(プライマーとしての密着性)
実施例1〜22、比較例1で調製した変性ポリオレフィン樹脂組成物、および比較例2で調製したブレンド物を、酢酸ブチル/シクロヘキサン(30%/70%)にポリマー濃度5%となるように溶解させ、プライマー溶液を調製した。基材であるポリプロピレン射出成形板(3mm厚、日本ポリケム(株)製、ノバテックTX−1810A)上に、プライマー溶液を塗布して厚み10μmのプライマー層を形成した後、この上にウレタン系塗料を乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装した。15分間室温放置し、次いで90℃で40分加熱乾燥してウレタン塗料塗装板を得た。
基材上の塗膜をゴバン目(1mm間隔、100マス)にカットし、塗膜のセロハン粘着テープによる剥離テストを行い、付着率(基材に残ったマスの数)により密着性を評価した(JIS K 5400)。表1に試験結果を示す。
試験4(接着剥離強度)
実施例1〜22、比較例1で調製した変性ポリオレフィン樹脂組成物、および比較例2で調製したブレンド物を、トルエンにポリマー濃度20%となるように溶解させ、接着剤溶液を調製した。得られた接着剤溶液をポリプロピレン製基材(日本ポリケム(株)製、ノバテックFA3DA、ISO棒、64×12.6×6mm)の中央部分に、20μl塗布し、図1のように、ポリプロピレン製基材1同士を十字になるよう重ね合わせた(接着面3のサイズ:1.26cm×1.26cm)。500gの荷重下、室温で15分間放置後、80℃に設定した乾燥機で30分乾燥させ、ポリプロピレン基材の接着試験片(1)を作製した。
また、前記と同様な操作により、図2に示すように、ポリプロピレン製基材1とメタクリル樹脂製基材2(三菱レイヨン(株)製、アクリペット(登録商標)VH3、ISO棒、64×12.6×6mm)との接着試験片(2)を作製した。
上記試験片の接着強度測定をテンシロンUTM−1−2500(東洋ホールディング(株))を用いて行った。具体的には、図3に示すように、接着試験片の上側の基材の両端を固定治具4,4上に載せ、下側の基材の2箇所に力を加え、その際の接着剥離強度を測定した。剥離速度は2mm/minに設定した。表1に試験結果を示す。
試験5(印刷インキとしての密着性)
実施例1〜22、比較例1で調製した変性ポリオレフィン樹脂組成物、および比較例2で調製したブレンド物それぞれ1部に、インキ用ウレタン樹脂(三洋化成工業(株)製、サンプレンIB−422)9部と顔料(石原産業(株)製、白色顔料 TiOタイペークR−820)40部とトルエン50部を加え、これらを混合し、ペイントシェーカーで練肉し、白色印刷インキを調製した。
得られた白色印刷インキを、基材であるポリプロピレン射出成形板(3mm厚、日本ポリケム(株)製、ノバテックPP・FA3DA)上に#12マイヤーバーで塗工した。室温で15分間放置後、80℃設定した乾燥機で30分乾燥させ、厚み30μmの塗膜を形成した。この塗膜をゴバン目(1mm間隔、100マス)にカットし、塗膜のセロハン粘着テープによる剥離テストを行い、付着率(基材に残ったマスの数)により密着性を評価した(JIS K 5400)。表1に試験結果を示す。


産業上の利用の可能性
以上説明したように、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)を、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)を含むビニル系単量体(B)でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂を含有するものであるので、溶剤への溶解性とポリオレフィン系樹脂などの難密着性の基材に対する密着性が良好である。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂からなる非極性基材だけでなく、上塗り塗料やクリアーとの密着性に優れるので、塗料用プライマーの用途に適する。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂からなる非極性基材だけでなく、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の極性樹脂との密着性を有するので、接着剤や印刷インキの用途に適する。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)を、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)を含むビニル系単量体(B)でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂。
【請求項2】
請求項1記載の変性ポリオレフィン樹脂を含有する変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ビニル系単量体(B)が不飽和カルボン酸およびその無水物を含有しない請求項2記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(b)が、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルから選ばれた少なくとも1種である請求項2記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
ビニル系単量体(B)としてさらに、分子内に水酸基を有する単量体を含む請求項2記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項2記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する塗料用プライマー樹脂組成物。
【請求項7】
請求項2記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着剤樹脂組成物。
【請求項8】
請求項2記載の変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する印刷インキ用樹脂組成物。

【国際公開番号】WO2005/000925
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511124(P2005−511124)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009388
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】