説明

変色性皮膚シーラント

【課題】皮膚処理剤及び皮膚シーラントが塗布された領域を、視覚的に認識できるようにする。
【解決手段】本発明は、皮膚シーラントと共に使用され、ヨウ素を含有する皮膚処理剤の上に塗布される脱色剤であって、Iから2Iへの反応の還元電位よりも高い還元電位を有する少なくとも1つの酸化剤を含むことを特徴とする脱色剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色性の皮膚シーラントに関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第120条及び第119条(e)項に基づき、2006年9月12日付で出願された米国仮特許出願第60/843,935号の優先権を主張する。米国仮特許出願第60/843,935号の全体は、引用を以って本明細書の一部となす。
【背景技術】
【0003】
アメリカ合衆国では外科手術の約2〜3%で手術部位感染(surgical site infection:SSI)が発生しており、患者の罹患率及び死亡率を大幅に高めるSSIが年間50万件発生していると推定されている。手術部位感染は患者の健康に悪影響を与えるのみならず、回避可能であるこの手術部位感染は医療制度の財政負担に大きな影響を及ぼす。SSIは切開部が細菌に汚染されると発生し、多くの手術では、感染を引き起こす微生物の主要な感染経路は皮膚である(消化管を穿刺手術する場合を除く)。
【0004】
手術前に皮膚を処理するために、様々な組成物が使用される。皮膚処理剤(Skin preparation又はprep)は、皮膚切開前に皮膚上に存在する微生物をある程度除去するために使用される。皮膚シーラント材料は、手術部位の切開及び静脈注射針の挿入に伴う細菌感染から患者を保護するために使用される。皮膚処理剤は、皮膚に塗布され、塗布後に微生物を減少させる効果を最大化するために乾燥させる。皮膚処理剤を乾燥させた後、前記シーラントを皮膚上に液体形態で直接的に塗布する。前記シーラントは、前記シーラント組成物の化学的性質に基づいた様々な技術によって、前記皮膚への強力な粘着性を有する粘着性膜を形成する。
【0005】
従来の皮膚処理剤は、主に、ポビドンヨード又はグルコン酸クロルヘキシジンに基づいた製剤であり、乾燥を急速に行うため及び微生物をより効率的に殺滅するためのアルコールを含み得る。手術室での時間的制約及び前記処理剤が乾燥したことを示す表示手段が存在しないことによりドレーピング及び/又は手術を開始するときに皮膚が湿ったままの状態であることが多いため、感染の可能性が創出される。また、前記表示手段が存在しないため、皮膚処理剤及びシーラントが塗布された正確な位置をユーザが知ることができずに感染が生じることがある。
【0006】
最近の皮膚シーラントは、例えば、乾燥すると溶媒の気化によって膜を形成するポリマー組成物を使用する。また、in situ重合してポリマー膜を形成するモノマーユニットを含有する皮膚シーラントもある。2−シアノアクリレートモノマーを含むシアノアクリレートシーラントは、後者のタイプの一例であり、前記モノマーが例えば水やタンパク質分子等の極性種の存在下で重合してアクリル膜を形成する。形成された膜は、皮膚上に存在する細菌フローラを固定する働きをし、細菌フローラが、外科手術中に形成された切開部又は静脈注射針の挿入に関連する皮膚孔へ移動するのを防止する。
【0007】
皮膚シーラントは、膜の柔軟性及び適合性を向上させる可塑剤、液体組成物の塗布を補助するため粘度調整剤、前記製品を使用前に安定させる遊離基及びアニオン性スカベンジャー、前記膜の下に固定された細菌を殺滅するための殺生剤等の添加剤を含み得る。
【0008】
皮膚シーラントはまた、特に広い面積に塗布する場合に、ユーザが液体組成物を皮膚に均一に塗布するのを補助するための着色剤を含む。しかしながら、従来の着色剤には、いくつかの問題がある。皮膚シーラント液体組成物への着色剤の直接的な添加は、シアノアクリレート組成物の場合はin situ重合速度及び変換反応の両方に悪影響を与え、ポリマー溶液組成物の場合は気化速度及び凝集過程に悪影響を与える。また、既知の着色剤は、前記組成物の硬化を視覚的に認識することができない。さらに、外科手術の終了後、前記シーラント中の前記着色剤は創傷部位を見えにくくするため、手術部位の感染、損傷、漏出に関連する赤みの検出を困難にする。
【0009】
そのため、創傷部位を見えにくくすることなく、皮膚処理剤及び皮膚シーラントの被覆領域及び/又は硬化を視覚的に認識できるようにすることが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
当業者が直面する前述の問題点を踏まえて、本願発明者は、様々な脱色剤を含有する皮膚シーラントを使用して、皮膚に塗布された皮膚処理剤及びシーラントを表示することができることを見出した。前記脱色剤は、皮膚処理剤に含まれているヨウ素と反応して、皮膚処理剤を無色に変化させる。前記脱色剤は、皮膚シーラントに直接的に添加される、或いは皮膚シーラントを塗布するための塗布器のスポンジに含浸させて使用される。また、脱色剤は、皮膚シーラントとは別の容器に収容され、皮膚シーラントとは別々に塗布される、或いは皮膚シーラントと同時に塗布される。前記皮膚シーラントに含ませる脱色剤の量は、ユーザが塗布領域及び硬化の程度を視覚的に認識できるように調節される。脱色剤としては、アスコルビン酸、インジゴカルミン、インジゴ、及びその他多数がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
皮膚処理剤は、皮膚切開前に皮膚上に存在する微生物をある程度除去するために使用される。皮膚処理剤は皮膚に塗布された後、微生物を減少させる効果を最大化するために乾燥させられる。現在、主に用いられる皮膚処理剤は、ポビドンヨウ素又はグルコン酸クロルヘキシジンをベースにした製剤であり、急速乾燥のため及び微生物をより効果的に殺滅するためのアルコールを含み得る。ベタディン(Betadine)(登録商標、以下同じ)として市販されているポビドンヨウ素は、外科手術の80%で皮膚処理剤として使用されていると推定されている。ベタディン皮膚処理剤は、1%のヨウ素滴定濃度を有する、10%ポビドンヨウ素の水溶液である。ベタディン皮膚処理剤を皮膚に塗布した際は、ベタディン皮膚処理剤は橙褐色を示す。
【0012】
皮膚シーラント材料は、手術部位の切開及び静脈注射針の挿入に伴う細菌感染から患者を保護するのに使用される。皮膚シーラントは、多くの場合、ベタディン皮膚処理剤の上に直接的に塗布される。皮膚シーラントは、前記シーラント組成物の化学的性質に基づいた様々な技術によって、前記皮膚への強力な粘着性を有する粘着性膜を形成する。
【0013】
適切な領域が覆われたことを確認できるように皮膚シーラント及び皮膚処理剤が塗布された位置を正確に分かることは、医療関係者にとって有益である。本願発明者は、皮膚処理剤の上に塗布した際に皮膚処理剤の色を変化させる皮膚シーラントを創出することにより、医療関係者に有益な情報を提供できると考えている。
【0014】
様々な物質がヨウ素ベースの皮膚処理剤の色を脱色することができる。このような物質(脱色剤)としては、アスコルビン酸(ビタミンC)及びその誘導体や、有機酸化剤(過酸化漂白剤や有機酸化剤等)がある(詳細については後述する)。或る実施形態では、前記脱色反応は10分未満、特に5分未満で起こり、肉眼で見ることができる。
【0015】
アスコルビン酸の誘導体としては、6−パルミチン酸アスコルビル(C−16)、6−カプリル酸アスコルビル(C−8)、6−ラウリン酸アスコルビル(C−12)、或いは、より広く規定すると、アスコルビン酸の6位にR基を有するものがある。ただし、R=C1〜C18のアルキル、アリル、シクロアルキル、R=ハロゲン、ニトロ、シアノ、R=複素環、或いは、R=リン酸、硫酸、硝酸、塩酸である。
【0016】
適切な酸化剤は、Iから2Iへの反応の還元電位よりも高い還元電位を有するものである。I+2e=2Iの反応の標準還元電位E値(温度25℃、圧力1atm)は、0.54Vである。したがって、本発明では、0.54Vより大きい標準還元電位E値を有する酸化剤が使用される。pH2のシアノアクリレート皮膚シーラントでの前記反応の還元電位は、ERed=0.281Vであることに留意されたい。
【0017】
標準還元電位は、特定の材料の酸化/還元力を表す尺度として、化学分野では良く知られている。例えば、CRC化学物理ハンドブック(76版、David R. Lide, PhD, CRC Press)のページ8−21〜8−33に記載されている。標準還元電位を測定するための適切な方法は、電気化学セルを使用して行う標準水素電極(SHE:Standard Hydrogen Electrode)により測定する方法である。この方法は、例えば、Kirk-Othmer工業化学百科事典(1981, vol. 15, page 39-40)に記載されている。標準電位を列挙した表とは異なり、酸化剤についての値は実験値であり、実験条件、電極及び使用する技術によって左右される。従って、実験値として報告されるであろう還元電位は、通常は、中間電位(ポーラログラフィーでのE1/2)又はピーク電位(サイクリック・ボルタンメトリーでのEp)である。条件、電極及び使用される技術が何であれ、本発明での使用に適切な酸化剤は、Iから2Iへの反応の還元電位よりも高い還元電位を有する。言い換えれば、本発明で使用する酸化剤を定義するために、Iから2Iへの反応が同一試験条件で参照として行われる。
【0018】
有機酸化剤としては、L−システインアルキルエステル、特に、L−システインエチルエステル、チタン(III)クエン酸塩、グルタチオン、ジチオスレイトールが挙げられる。使用に適する他の酸化剤しては、酸素漂白剤があり、例えば、過酸化漂白剤又はその誘導体等がある。このような過酸化漂白剤としては、過酸化水素、過炭酸塩、過硫酸塩、アルキルヒドロペルオキシド、過酸化物、ジアシル過酸化物、オゾン化物、超酸化物、オキソ−オゾン化物、過ヨウ素酸塩、それらの塩・混合物が挙げられる。
【0019】
適切な過酸化物としては、例えば、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化アンモニウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、過酸化マグネシウム、過酸化銀、過酸化チタン、過酸化鉄、それらの他のアルカリ金属・アルカリ土類塩・混合物がある。適切な超酸化物としては、例えば、超酸化リチウム、超酸化ナトリウム、超酸化カリウム、超酸化カルシウム、それらの他のアルカリ金属・アルカリ土類塩・混合物がある。適切なオゾン化物としては、例えば、オゾン化リチウム、オゾン化ナトリウム、オゾン化カリウム、オゾン化アンモニウム、オゾン化マグネシウム、それらの他のアルカリ金属・アルカリ土類塩・混合物がある。適切な過ホウ酸塩としては、例えば、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過ホウ酸アンモニウム、それらの他のアルカリ金属・アルカリ土類塩・混合物がある。適切な過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、それらの他のアルカリ金属・アルカリ土類塩・混合物がある。他の適切な過酸化漂白剤としては、ジアセチルペルオキシジカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ(ナフチル)過酸化物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、過炭酸塩(過炭酸ステアリル、2−過炭酸エチルヘキシル、s−過炭酸ブチル等)、対応する過ホウ酸塩・過硫酸塩がある。
【0020】
適切なジアシル過酸化物は、次の化学式を有する。
−C(O)−O−O−(O)C−R
ただし、RとRは、同一又は異なる、置換又は未置換の、飽和又は不飽和の、1〜50個の、好ましくは2〜40個の、より好ましくは4〜18個の炭素原子を有する、線形、分岐状又は環状の水酸基である。
【0021】
適切なジアシル過酸化物の例としては、過酸化ジラウリル、過酸化ジデカノイル、過酸化ベンゾイル、過酸化ベンゾイルステアロイル、過酸化ベンゾイルデカノール、過酸化ベンゾイルセチル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジエチル、過酸化ジクミル、過酸化ジステアロイル、又はそれらの混合物がある。
【0022】
適切なペルオキシ酸は、次の化学式を有する。
−CO
ただし、Rは、置換又は未置換の、飽和又は不飽和の、1〜25個の炭素原子を有する線形、分岐状の水酸基、3〜32個の炭素原子及び随意的に少なくとも1つのヘテロ原子を有する環状の水酸基、或いは、4〜32個の炭素原子及び随意的に少なくとも1つのヘテロ原子を有する環状アルキル基である。
【0023】
脱色剤の他の例としては、FD&Cブルー#2(インジゴカルミン)、D&Cブルー#6(インジゴ)、過ヨウ素酸カリウム(KIO)、過炭酸カリウム(KCO1.5H)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、過塩素酸カリウム(KClO)、過酸化水素(3%が約10分で非常にゆっくりと脱色され、38%が急速に脱色される)、歯の漂白剤及び口内殺菌剤として使用される過酸化尿素(パーカルボアミド又はカルバミド過酸化物(CHC H))、過酸化ベンゾイル(にきびの治療に使用される)、ピロ亜硫酸カリウム(K)、過硫酸カリウム(K)、過ホウ酸ナトリウム(NaBO)が挙げられる。
【0024】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、この反応機序は、アスコルビン酸や、有色であるヨウ素を無色のヨウ素イオンに変化させる酸化剤として反応する上記の他の物質に起因すると考えられる。したがって、本発明で使用する脱色剤は、Iから2Iへの反応の還元電位よりも高い、すなわち、ERed=0.54Vよりも高い還元電位を有する酸化剤であるべきである。
【0025】
アスコルビン酸は、抗酸化特性を有する有機酸である。アスコルビン酸の外見は、白色から淡黄色の結晶又は粉末である。アスコルビン酸は、水溶性である。アスコルビン酸のL−光学異性体は、ビタミンCとして一般に知られている。アスコルビン酸の名前は、この分子の欠乏が壊血病(scorbuticus,scurvy)の原因となることに由来する。1937年のノーベル化学賞は、ウォルター・ハース(Walter Haworth)がアスコルビン酸の構造を決定した功績により受賞した(ビタミンの研究に功績があったポール・カーラー(Paul Karer)と共に受賞した)。また、その年のノーベル生理学医学賞は、L−アスコルビン酸の生物学的機能の研究に功績があったアルベルト・セント=ジェルジ(Albert Szent-Gyorgyi)が受賞した。
【0026】
アスコルビン酸塩は、自身をエネルギー的に好適に酸化させることにより、抗酸化物質として作用する。多くの酸化剤(典型的には活性酸素種)、例えば水酸ラジカル(過酸化水素から作成される)等は、不対電子を含有しているため反応性が高く、人間及び植物に分子レベルでダメージを与える。これは、前記酸化剤が、核酸、タンパク質及び脂質と相互作用することが原因である。活性酸素種は、アスコルビン酸塩を酸化して(アスコルビン酸塩から電子を奪い)、最初はモノデヒドロアスコルビン酸に、その後はデヒドロアスコルビン酸にする。この活性酸素種は、アスコルビン酸塩の酸化型が比較的安定しており非反応性であるため還元されて水になり、細胞の損傷を引き起こさない。
【0027】
インジゴカルミンは、466.36の分子量を有し、ジナトリウム3,3´ジオキソ−2,2´−ビ−インドリニリデン−5,5´−二硫酸塩と、ジナトリウム3,3´ジオキソ−2,2´−ビ−インドリニリデン−5,7´−二硫酸塩との混合物から成る。インジゴカルミンは、5,5´−インジゴジスルホン酸ジナトリウム塩のように、ナトリウム塩として存在する。
【0028】
本願発明者は、脱色剤を皮膚シーラントと共に使用すると、脱色剤がほとんどの皮膚処理剤に存在するヨウ素を脱色し、そのことにより、医療関係者が皮膚処理剤及び皮膚シーラントが塗布された場所を識別できることを見出した。
【0029】
ヨウ素の脱色反応は、錠剤及び果物ジュース内のビタミンCの実験的分析や、屋外での水の汚染を除去するための効果的な方法として知られている。両方とも、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)等の還元剤の働きによるヨウ素の脱色を含む。ヨウ素のアスコルビン酸との反応は、次の通りである。
【化1】

【0030】
また、十分な量の皮膚シーラントをヨウ素含有処理剤に塗布してヨウ素の脱色を肉眼で見えるようにすることも可能である。また、前記処理剤は十分な量のヨウ素を有しているので、残りのヨウ素が強力な抗菌性を保ち続けることができる。
【0031】
上述したように、脱色剤を皮膚シーラントと共に使用する方法には、様々な方法がある。例えば、脱色剤を皮膚シーラントと混合して使用する方法、皮膚シーラントを塗布するのに使用されるスポンジやワイプ(wipe)に脱色剤を含浸させて使用する方法、皮膚シーラントとは別の容器に収容した脱色剤を皮膚シーラントとは別々に塗布する方法、皮膚シーラントとは別の容器に収容した脱色剤を皮膚シーラントと同時にエポキシ樹脂の塗布と同様の方法で塗布する方法がある。
【0032】
脱色剤のキャリアへの塗布は、当業者には周知の「浸漬して絞る(dip and squeeze)」方法により行われる。この方法では、前記キャリア(例えば、スポンジ、不織布繊維(ワイプ)、綿ボール等)を脱色剤が収容された槽内に入れて、脱色剤を吸収させる。脱色剤を吸収させた後、余分な脱色剤を強制的に排出するために、前記キャリアを例えば一対のローラー間で絞る。
【0033】
脱色剤をキャリアに塗布する他の方法としては、脱色剤をキャリア上にスプレーする方法がある。スプレーする方法は、前記浸漬して絞る方法のように前記キャリアに脱色剤を浸透させることはできないが、手早くかつ簡単な方法である。
【0034】
さらなる別の方法としては脱色剤を収容箱にスタックされたワイプに加える方法があり、その方法では脱色剤を前記ワイプが収容された前記収容箱に加える。本願同一出願人による米国特許第4,775,582号及び4,853,281号(引用を以って本明細書の一部となす)には、スタックされたワイプにおいて水分を比較的均一に保つ方法が開示されている。このワイプは、スパンボンド繊維又はメルトブローン繊維或いはその組み合わせ等の、押し出され捕集されて作成されたポリオレフィン系超極細繊維から作成されている。ワイプを構成する一般的な材料としては、様々な構造のスパンボンド及びメルトブローン繊維及び織物がある。
【0035】
「スパンボンド繊維」という用語は、溶融した熱可塑性材料を、スピナレット(spinneret)の通常は円形の断面形状を有する複数の微細なキャピラリから、フィラメントとして押し出すことにより形成される小径の繊維を意味し、押し出された繊維の直径はその後、例えば、米国特許第4,340,563号明細書(Appel et al.)、米国特許第3,692,618号明細書(Dorschner et al.)、米国特許第3,802,817号明細書(Matsuki et al.)、米国特許第3,338,992号及び米国特許第3,341,394号明細書(Kinney)、米国特許第3,502,763号明細書(Hartman)或いは米国特許第3,542,615号明細書(Dobo et al.)に開示されているようにして急激に縮径される。スパンボンド繊維は、一般に、捕集面に堆積したときに粘着性を有しない。スパンボンド繊維は、一般に、連続的であって、7μmより大きい、特に約10〜20μmの(少なくとも10のサンプルに基づく)平均直径を有する。「メルトブローン繊維」という用語は、溶融した熱可塑性材料を、通常は円形の断面形状を有する複数の微細なダイキャピラリから溶融した糸或いはフィラメントとして、収束する通常は高温の高速ガス流(例えば空気)の中に押し出し、その流れにより溶融した熱可塑性材料のフィラメントの直径を、超極細繊維の直径の程度にまで減少させることにより形成される。前記メルトブローン繊維は、その後、前記高速ガス流により搬送され、捕集面に堆積され、ランダムに分散したメルトブローン繊維のウエブを形成する。このような工程は、例えば米国特許第3,849,241号明細書(Butin et al.)に開示されている。メルトブローン繊維は、連続的或いは非連続的な超極細繊維であって、一般に10μm未満の平均直径を有し、一般に捕集面に堆積したときに粘着性を示す。スパンボンド繊維とメルトブローン繊維との積層材は、例えば、動いている成形ベルト上に、スパンボンド繊維層、メルトブローン繊維層、別のスパンボンド層をその順番に堆積させ、その後、これらの層を後述する方法で接合することにより形成される。或いは、前記繊維層を個々に形成してローラーに巻き取っておき、それらの繊維層を別々の接合工程で組み合わせることもできる。このような繊維は、通常は、約0.1〜12osy(6〜400gsm)、特に、約0.75〜3osyの秤量(basis weight)を有する。多層積層材は、様々な数のメルトブローン層(M)やスパンボンド層(S)を様々な構成で備えることができ、膜(F)や複合(coform)材料(米国特許第4,100,324号明細書に例示的な複合材料が示されている)等の別の材料も備えることもでき、例えば、SMMS、SM、SFS等がある。
【0036】
脱色剤とは別の容器に収容したシーラントを塗布することは、その目的のために開発されたディスペンサーの使用を含み得る。或る例示的なディスペンサーは、剛性のナイロンハウジング内に配置された少なくとも1つの楕円形のガラスアンプルに収容された液体シーラントを有する。前記ハウジングは、互いに摺動可能に連結された本体部とキャップ部とを備え、前記キャップ部で前記アンプルを保持するように構成されている。使用する際は、前記液体をディスペンスするために、前記2つの部分を互いに接近させる。前記キャップは前記本体部の内部に入る。前記2つの部分を互いに接近させた結果、前記ガラスアンプルが破壊され、前記液体がディスペンスされる。戻り止め型のロック機構が、移動後の前記本体部と前記キャップ部とを互いに保持する。前記ロック機構は、前記キャップに形成されたスロットと、前記スロットと適合するように前記本体部の内面に塑性形成された突起又は凸部とから構成される。前記アンプルが破壊されると、前記液体は、前記アンプルの破壊によって生じたガラス破片を捕らえる小さな発泡体片を通って、前記本体部の先端部へ移動する。前記先端部は、前記液体が通過可能な多数の小孔を有している。前記本体部の先端部は外側に、前記先端部の適所に嵌め込まれた硬質プラスチック製の卵型のリングにより適所に保持された、別の発泡体片を有している。前記外側の発泡体片は、前記液体をディスペンスするときに、患者の皮膚と接触する。他の型のディスペンサーが、米国特許第4,854,760号、第4,925,327号、第5,288,159号に開示されている(引用を以って本明細書の一部となす)。
【0037】
他の実施形態では、皮膚シーラント及び脱色剤は、皮膚処理剤が塗布された領域に別々に塗布される。米国特許第5,928,611号には、皮膚シーラント容器を有し、シーラントが通過する発泡体片に活性成分(架橋結合促進剤又は開始剤等)が配置されたディスペンサーが開示されている。このようなディスペンサーを使用して、前記発泡体片に脱色剤を配置しておき、皮膚にシーラントを塗布する際に、シーラントが前記発泡体片を通過するようにすることが可能である。米国特許第6,322,852号も参照されたい。
【0038】
さらなる別の実施形態では、米国特許第6,340,097号に、本体部内に少なくとも1つの破壊可能なアンプルを有し、前記本体部が前記アンプルを1つ以上保持可能なディスペンサーが開示されている。このディスペンサーは、第1のアンプルが皮膚シーラントを収容し、第2のアンプルが脱色剤を収容することが可能である。このディスペンサーの使用時は、皮膚に塗布する直前に、両方のアンプルを破壊して皮膚シーラントと脱色剤を混合させる。
【0039】
従来の皮膚シーラント、すなわち、外科的切開術を行う際の膜形成バリアとして使用するのに加えて、脱色剤及び皮膚シーラント組成物は、創傷、擦り傷、やけど、にきび、水脹れ、及び他の皮膚の崩壊を、その後の汚染から保護するために閉じる及び/又は覆う絆創膏(或いは包帯)のように使用することができる。したがって、前記皮膚シーラント組成物の使用は、医療関係者に限定されるものではない。
【0040】
創傷保護は、治癒過程の実施に重要である。従来の絆創膏やガーゼ創傷包帯は、急性創傷又は皮膚炎を治療/保護するために消費者によって使用されてきた。このような絆創膏は一般的に能動的に作用せず、創傷治癒のための化学的治療はほとんど提供しない。むしろ、このような絆創膏は、創傷部に低レベルの圧力を加え、創傷部を周囲環境への露出から保護し、創傷部で生成された浸出液を吸収する働きをする。このような絆創膏は一般に、創傷部に貼った後に消費者から見える基層を含む。前記基層は、典型的には、ポリマー材料(例えばフィルム等)、不織布ウエブ、又はそれらの組み合わせから作成され、可撓性及び/又は通気性をもたらすために何らかの方法で穿孔されている。前記基層は、多くの場合、絆創膏を創傷部に貼った後に消費者から見える上面と、底面(皮膚接触面)とを有する膜要素を備えている。絆創膏を消費者に貼り付ける手段を提供するために、前記基層の前記底面に肌に優しい接着剤が通常は備えられている。或いは、前記絆創膏/創傷包帯が非粘着型である場合は、別個の接着テープを使用して、前記絆創膏/創傷包帯を前記創傷部に貼り付ける。前記基層の前記底面の中央には一般に、前記創傷からの浸出液を吸収するための吸収パッドが通常は配置される。そして、前記吸収パッドと前記創傷部との間にバリアを提供するために、前記吸収パッド上には、非粘性の穿孔膜層が通常は設けられる。創傷液が前記穿孔膜層を通過することにより、創傷部に創傷液が粘着することがなくなる。典型的には、このような絆創膏の前記吸収パッドは薬剤成分を含んでいないが、比較的最近の絆創膏メーカーは、創傷治癒を助長するために、抗生物質製剤を絆創膏の表面又は内部に含めることを始めている。
【0041】
本発明に係る皮膚シーラント組成物は、この複雑な絆創膏構造を、乾燥すると柔軟性コーティングとなり創傷部を絆創膏と同じようにして保護する液体を用いた1回の液体処理に置き換えることができる。さらに、微生物阻害領域の形成及び創傷治癒の促進等の更なる利益をもたらすために、例えば抗生物質製剤等の薬剤が効果的な量で前記組成物に混合される。前記シーラントは、表在性の創傷、やけど、擦り傷の表面を覆う効果的な厚さの膜を形成するために塗布される。治療される創傷が表在性であり皮層下まで延在していないため、創傷内で形成又は拡散されるポリマー残基は、前記皮膚から自然に押し出される。一般に、前記シーラントは、形成されたときに十分な可撓性及び組織に対する粘着性を有し、すぐに剥離及び亀裂が生じない、創傷領域を覆う粘着性膜を提供する。このコーティングは、約0.5mm未満の厚さを有する。
【0042】
このような厚さのシーラントコーティングは、表存性創傷上に物理的なバリア層を形成し、従来の絆創膏と同じような方法で前記創傷を保護する。具体的には、前記コーティングは、創傷部が濡れたときに交換する必要がないほぼ気密性の防水シールを、前記創傷部の周辺に形成する。一旦塗布されると、前記コーティングは、細菌及び汚染物質が前記創傷部に進入するのを防止し、それ故に二次感染の可能性が減少する。一般に、前記粘着性コーティングは、コーティング領域の動きを妨げるものではない、及び創傷の早期治癒を促進することができる。さらに、従来の絆創膏とは異なりシーラントは塗布後2〜3日で皮膚から自然に剥がれ落ちるので、従来の絆創膏を皮膚から剥がすときのような不快感はない。しかし、もし、このポリマー性コーティングを早期に除去したいのであれば、アセトン等の溶剤を使用することにより除去することができる。このことについての詳細は米国特許第6,342,213号を参照されたい。
【0043】
詳述すると、殺菌性塩化ベンザルコニウムと、ポリミキシンB硫酸及び亜鉛バシトラシンの抗生物質混合物とを含む創部治癒製品が、現在いくつか市販されていることに留意されたい。この技術分野の特許には、一般に知られている殺菌剤や抗生物質の使用が開示されている(米国特許第4,192,299号、第4,147,775号、第3,419,006号、第3,328,259号、第2,510,993号)。米国特許第6,054,523号(Braun et al.)には、凝縮可能塩基を含有するオルガノポリシロキサンと、縮合触媒と、オルガノポリシロキサン樹脂と、塩素窒素を含有する化合物と、ポリビニルアルコールとから作成された物質が開示されている。米国特許第5,112,919号には、熱可塑性物質ベースのポリマー(例えばポリエチレン、又はエチレンのコポリマー)を、1−ブテン・1−ヘキセン・1−オクテン等、シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)を含有する固形担体ポリマー(例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA))及び遊離基生成剤(例えば有機過酸化物)と混合し、その混合物を加熱することにより作成される水架橋性ポリマーが開示されている。前記コポリマーは、その後、水と触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ)の存在下での反応により架橋結合させることができる。米国特許第4,593,071号(Keough)には、ペンダントシランアクリロキシ基を有する水架橋性エチレンコポリマーが開示されている。
【0044】
ポリウレタン創傷コーティングが、EP0992 252 A2(Tedeshchl et al.)に開示されている。この文献には、ポリイソシアネートと、アミン供与体及び/又は水酸基供与体と、末端イソシアネート基及びアルコキシルシランを有するイソシアナートシラン付加物とから作成された潤滑性の薬剤含有コーティングが開示されている。水溶性ポリマー(例えばポリ(エチレン酸化物)等)を随意的に存在させることができる。架橋結合は、水酸基供与体又はアミン供与体とのイソシアネート反応により、ポリウレタン又はポリ尿素ネットワークを形成する。米国特許第6,967,261号には、創傷治療へのキトサンの使用が開示されている。キトサンは、豊富に存在する天然グルコサミン多糖であるキチン(C13NOの脱アセチル化産物である。特に、キチンは、甲殻類(カニ、ロブスター、エビ)の殻から得られる。また、キチンは、海洋動物プランクトンの外骨格、或る昆虫(例えば蝶やてんとう虫)の羽根、及び、酵母・キノコ・他の菌類の細胞壁からも得られる。キトサンが、グラム陽性及びグラム陰性細菌(例えば、ストレプトコッカス属(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌)、シュードモナス属、エシェリキア属、プロテウス属、クレブシエラ属、セラシア属、アシネトバクター属、エンテロバクター属及びシトロバクター属)に対する抗菌性を有することが報告されている。また、前記文献には、キトサンは、規則的に配列されたコラーゲン線維束を含有する組織の修復を促進することが開示されている。
【0045】
また、本発明に係る皮膚シーラント組成物は、縫合又は包帯と同じようにして、創傷を閉じるのにも使用される。このように使用するために、前記組成物は、例えば、哺乳類の患者(例えば、人間の患者)の縫合可能な創傷部における対向する皮膚部分の少なくとも一方の皮膚表面に塗布される。前記対向する皮膚部分は、前記組成物の塗布前又は塗布後に互いに接触させられる。どちらの場合でも、前記組成物の塗布後、創傷領域は、前記組成物が重合して前記対向する皮膚部分を結合させるような条件下に維持される。一般に、前記縫合可能な創傷部と、その対向する皮膚部分の少なくとも一方の皮膚表面の近傍とを覆うように、十分な量の前記組成物が使用される。皮膚水分と組織タンパク質とを接触させると、前記組成物は重合する。或いは、前記組成物が部分的に重合されたモノマーを使用した組成物である場合は、周囲条件(皮膚温度)では約10〜60秒の間さらに重合する。この重合により、前記皮膚部分を結合する固形ポリマー膜が形成され、それによって、前記創傷部を閉じる。一般に、前記組成物は、前記離れた(対向する)皮膚部分を覆うポリマー膜を形成することができ、それによって、治癒中における前記創傷部の感染を抑制する。このことについての詳細は米国特許第6,214,332号を参照されたい。
【0046】
前記組成物は、医療施設で使用するために「キット」形態でパッケージ化され、医療関係者が使いやすく便利になるように、適切な皮膚処理剤溶液と共にセット販売される。前記キットは、上述したように、皮膚シーラント組成物を収容する容器と、脱色剤を収容するための別の容器とを備える。また、前記キットは、塗布器と、前記2つの容器の内容物を混合するための手段も備え得る。或いは、皮膚シーラントを塗布するのに使用され塗布時に皮膚シーラントが通過するスポンジに、脱色剤を含浸させることもできる。さらに、様々な混合用(complimentary, mating)容器、及び従来使用されたことがある当該技術分野で周知の別のパッケージスキームを使用することができる。
【0047】
以下の例は、本発明の効果を示す。
【0048】
(例1)
【0049】
n−ブチルシアノアクリレートモノマー(0.5%w/w)を含有する2gの皮膚シーラント(Medlogic Global, Ltd(Plymouth, England)から市販されているインテグシール(InteguSeal)(登録商標、以下同じ))に、0.01g(5.68×10−5mol)のUSPグレードのアスコルビン酸(Sigma-Aldrich Chemical Co. Inc.(Milwaukee WI)から入手可能)を溶解させる。このようにして作成された溶液を連続希釈して、0.25%、0.125%の溶液をそれぞれ作成する。これらの皮膚シーラント溶液をその後、ベタディン皮膚処理剤(Purdue Frederick Co.(Norwalk, Conn)から入手可能)で事前に処理した水和したビトロスキン(Vitroskin)(登録商標、以下同じ)に、綿棒によって塗布する。ビトロスキンは、IMS Inc.(Orange, CT)から市販されており、取扱説明書に記載されているように、使用前にグリセロール/水で12時間水和させる。上記の皮膚シーラント溶液を塗布したとき、ベタディン皮膚処理剤で処理した面の脱色が即座に生じた。このとき、ベタディン皮膚処理剤の色は綿棒には移らない(すなわち、綿棒は白色のままである)。
【0050】
(例2)
【0051】
0.8282gのインテグシール皮膚シーラント(3%w/w)に、0.025g(1.42×10−4mol)のアスコルビン酸を溶解させる。このようにして作成された溶液を連続希釈することにより、1.5%、0.75%、0.38%、0.19%、0.09%の溶液をそれぞれ作成する。これらの皮膚シーラント溶液を、ベタディン皮膚処理剤で処理されたブタの皮膚にピペットを使用して滴下し、滴下したシーラントを綿棒で広げる。上述したビトロスキンを用いた実験で観察されたように、ベタディン皮膚処理剤は、アスコルビン酸含有溶液と接触した全部が脱色された。このとき、綿棒には色は移らなかった。
【0052】
(例3)
【0053】
100mlの脱イオン水に、10mg(2.1×10−5mol)FD&Cブルー#2(インジゴカルミン)(Sigma-Aldrichから入手可能)を溶解させる。このようにして作成された溶液15mlをバイアル(小瓶)に入れた後、その溶液に23mgのベタディン皮膚処理剤を添加した。バイアルを回転させてバイアル内の溶液を攪拌させた後、色の変化を観察した。ベタディン皮膚処理剤を添加したとき、バイアル内の混合液は青色から緑色に変化した。その後、緑色は薄れ始め、10秒後には色は淡黄色に変化した。
【0054】
(例4)
【0055】
500mlの脱イオン水に、22mg(8.4×10−5mol)のD&Cブルー#6(インジゴ)(Sigma-Aldrichから入手可能)を溶解させた後、3時間攪拌した。このようにして作成された溶液15mlをバイアル(小瓶)に入れた後、その溶液に23mgのベタディン皮膚処理剤を添加した。バイアルを回転させてバイアル内の溶液を攪拌させた後、色の変化を観察するために放置した。10秒後には淡緑色が濃い緑色に変化した。この最終的な緑色は、アスコルビン酸溶液(水中で0.5%wt/wt)を添加しても消えなかった。このことは、この緑色が単に青色と黄色を混ぜたことに起因しないことを示している。
【0056】
(例5)
【0057】
n−ブチルシアノアクリレートモノマーを含有する皮膚シーラント(Medlogic Global, Ltd(Plymouth, England)から市販されているインテグシール)に、アスコルビン酸(Sigma-Aldrich Chemical Co. Inc.(Milwaukee WI)から入手可能)を溶解させて、0.3wt/wtの溶液を作成した。このようにして作成された皮膚シーラント溶液をその後、DuraPrep(登録商標、以下同じ)皮膚処理剤で事前に処理した水和されたビトロスキンに、綿棒によって塗布する。DuraPrep皮膚処理剤は、3M Health Care(St. Paul, MN)から市販されており、イソプロピルアルコール(70%wt/wt)中にヨードルホ(iodorphor)(0.7%利用可能なヨウ素)を含んでいる。皮膚シーラント溶液を塗布したとき、ヨウ素の色は急速に脱色された。
【0058】
(例6)
【0059】
さらなる研究によって、ヨードを急速に脱色させる(全ての場合において5分未満で変色させる)他の作用剤が確認された。前記化合物(作用剤)は、4つのクラスに分類される。
・アスコルビン酸の誘導体
6−パルミチン酸アスコルビル、6−ラウリン酸アスコルビル(両方ともSigma-Aldrich Chemical Co. Inc.(Milwaukee WI)から入手可能)。
・有機酸化化合物
システイン、システインエチルエステル(両方ともSigma-Aldrich Chemical Co. Inc.(Milwaukee WI)から入手可能)。
・過酸化漂白剤
過酸化ベンゾイル(Sigma-Aldrich Chemical Co. Inc.(Milwaukee WI)から入手可能)、過酸化カルバミド(GlaxoSmithKline Consumer Healthcare(Moon Township, PA)から入手可能)。
・無機酸化物
過ヨウ素酸カリウム、過炭酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、過臭素酸ナトリウム(全て、Sigma-Aldrich Chemical Co. Inc.(Milwaukee WI)から入手可能)。
【0060】
これらの作用剤は全て、ヨウ素(ベタディン)に対して試験され、脱色の効果を視覚的に観察して記録した。次の一般的な試験手法が全ての作用剤に使用された。
【0061】
前記作用剤を1gのインテグシール皮膚シーラントに、ガラス棒で掻き混ぜることにより溶解又は拡散させ、0.3%wt/wtの混合物を作成した。ベタディン皮膚処理剤を顕微鏡のスライドガラス上に綿棒で塗布した後に乾燥させ、茶色/黄色のコーティングを作成した。そして、前記活性剤を含有するインテグシール皮膚シーラントを綿棒(例えばQ-tip(登録商標))に含ませた後、前記スライドガラス上の前記ベタディン皮膚処理剤コーティング上に塗布した。脱色を観察して、有効性を記録した。
【0062】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚シーラントと共に使用され、ヨウ素を含有する皮膚処理剤の上に塗布される脱色剤であって、
から2Iへの反応の還元電位よりも高い還元電位を有する少なくとも1つの酸化剤を含むことを特徴とする脱色剤。
【請求項2】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記酸化剤が、過酸化漂白剤、無機酸化物又は有機酸化化合物であることを特徴とする脱色剤。
【請求項3】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントの約0.09〜1.5重量パーセントの量で存在することを特徴とする脱色剤。
【請求項4】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントと混合させて使用されることを特徴とする脱色剤。
【請求項5】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントの塗布に使用されるスポンジに含浸させて使用されることを特徴とする脱色剤。
【請求項6】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントとは別の容器に収容され、前記皮膚シーラントとは別々に塗布されることを特徴とする脱色剤。
【請求項7】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントとは別の容器に収容され、前記皮膚シーラントと同時に塗布されることを特徴とする脱色剤。
【請求項8】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントと共に、創傷、擦り傷、やけど、にきび、水脹れ又は他の皮膚崩壊をその後の汚染から保護するために覆う目的で使用されることを特徴とする脱色剤。
【請求項9】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントと共に、前記創傷を閉じる目的で使用されることを特徴とする脱色剤。
【請求項10】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラントと共にキット形態でパッケージ化されることを特徴とする脱色剤。
【請求項11】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記皮膚シーラント及びヨウ素を含有する皮膚処理剤の溶液と共にセット販売されることを特徴とする脱色剤。
【請求項12】
請求項1に記載の脱色剤であって、
前記ヨウ素を含有する皮膚処理剤を10分未満で脱色することを特徴とする脱色剤。
【請求項13】
脱色剤を含有する皮膚シーラント。
【請求項14】
請求項13に記載の皮膚シーラントであって、
前記脱色剤が、0.54Vよりも高い還元電位を有する少なくとも1つの酸化剤を含むことを特徴とする皮膚シーラント。
【請求項15】
請求項13に記載の皮膚シーラントであって、
前記脱色剤が、アスコルビン酸又はその誘導体であることを特徴とする皮膚シーラント。
【請求項16】
請求項13に記載の皮膚シーラントであって、
創傷、擦り傷、やけど、にきび、水脹れ又は他の皮膚崩壊をその後の汚染から保護するために覆うため、及び創傷を閉じるために使用されることを特徴とする皮膚シーラント。
【請求項17】
医療キットであって、
皮膚シーラント及び脱色剤を備えることを特徴とする医療キット。
【請求項18】
請求項17に記載の医療キットであって、
ヨウ素を含有する皮膚処理剤をさらに備えることを特徴とする医療キット。
【請求項19】
請求項17に記載の医療キットであって、
前記脱色剤が、前記皮膚シーラントの塗布に使用されるスポンジに含浸させて塗布されることを特徴とする医療キット。
【請求項20】
請求項17に記載の医療キットであって、
前記脱色剤は前記皮膚シーラントとは別の容器に収容されており、前記脱色剤が前記皮膚シーラントと同時に塗布されることを特徴とする医療キット。

【公表番号】特表2010−503423(P2010−503423A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527233(P2009−527233)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053274
【国際公開番号】WO2008/032231
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】