説明

変速位置検出器

【課題】ニュートラル位置を検出し、外部機器の表示手段を動作させる変速位置検出器を提供する。
【解決手段】鞍型車両の変速位置を定める被検出体であるシフトカム3に連動して回動する磁石5と、磁石5に対向して配置され磁石5が回転することによって磁石5の磁界の強さを検出する磁気検出部6と、を備えた変速位置検出器1において、磁気検出部6は、変速位置を検出する第1の磁気検出素子6aと、変速のニュートラル位置を検出する第2の磁気検出素子6bと、を備え、第1の磁気検出素子6aは、シフトカムの回転角度に応じた信号S1を出力し、第2の磁気検出素子6bは、ニュートラル位置であるか否かを示すスイッチ信号S2を出力し、第2の磁気検出素子6bは、スイッチ信号S2に基づいて外部機器8の表示手段9を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速装置の変速位置を検出する変速位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変速位置検出装置は、特許文献1に開示されるものが知られている。この変速位置検出装置は、変速装置のギアの組み合わせを操作するシフトレバーの揺動と連動して回転するシフトカムと、このシフトカムの回転角度を検出すべくシフトカムと対向して固設された端子台と、この端子台に配設されたアース用固定端子および複数の接触固定端子と、シフトカムと連動し得る一方、端子台に対して回転が許容されつつ連結されて一体化すると共に、シフトカムと端子台との間に介在された連動部材と、この連動部材に配設されてシフトカムの回転角度に応じて所定の接触固定端子と接触する可動端子と、この可動端子をアース用固定端子および接触固定端子側に付勢するコイルスプリングとを具備し、可動端子が何れの接触固定端子と接触して導通するかに応じてシフトレバーによるギアの組み合わせである変速位置を検出するものである。即ち、シフトカムの回転角度を検出することで、変速位置が検出できるというものである。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の変速位置検出装置は、可動端子の接触部が固定端子に接触する接触式であるため、繰り返し使用されることによって接触箇所の耐久性が低下しやすい。また、機械的な接点による検出であるため、小刻みな回転角度での検出が不可能である。よって、位置検出数も限られてしまい、数多くの位置検出を必要とした際に対応できないという問題点を有している。
【0004】
この問題を解決するものとして、本願出願人は、特許文献2に開示される変速位置検出装置を提供している。この変速位置検出装置は、回転部材と、この回転部材に固着され回転部材の回転に伴って回転する磁石と、この磁石に対向して配置され磁石が回転することによって磁石の磁界の強さを検出する磁気検出部とを備えたものであり、耐久性に優れ、連続した回転角度での検出が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−208834号公報
【特許文献2】特開2009−204567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の変速位置検出装置では、ニュートラル位置を検出し、車両用計器等の外部機器に設けた光源等の表示手段を動作させる際、複雑な回路構成を要し、部品点数増しによる、コストアップ、装置の容量の増大などの問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、ニュートラル位置を検出し、外部機器の表示手段を動作させる変速位置検出器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鞍型車両の変速位置を定めるシフトカムに連動して回動する磁石と、前記磁石に対向して配置され前記磁石が回転することによって前記磁石の磁界の変化を検出する磁気検出部と、を備えた変速位置検出器において、前記磁気検出部は前記磁界の変化によって変速位置を検出する第1の磁気検出素子と前記磁界の変化によって変速のニュートラル位置を検出する第2の磁気検出素子と、を備え、前記第1の磁気検出素子は前記シフトカムの回転角度に応じた信号を出力し、前記第2の磁気検出素子は前記ニュートラル位置であるか否かを示すスイッチ信号を出力し、前記スイッチ信号に基づいて外部機器の表示手段を制御するものである。
【0009】
また、前記スイッチ信号に基づいて前記表示手段を動作させるスイッチ手段を有するものである。
【0010】
また、前記外部機器は車両用計器である。
【0011】
また、前記表示手段は、光源からなるものである。
【0012】
また、前記磁気検出素子に対向して配置される前記磁石は、前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子を覆うとともに、前記磁石の回転中心と前記第1の磁気検出素子内に備えた集磁板が同一直線上に配置されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、ニュートラル位置を検出し、外部機器の表示手段を動作させる変速位置検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の変速位置検出装置を装着した車両の概略図。
【図2】同実施形態の変速位置検出装置のブロック図。
【図3】同実施形態の変速位置検出装置の断面図。
【図4】同実施形態の磁石と変速位置検出装置の位置関係を示す図。
【図5】同実施形態の変速位置検出装置の信号の出力波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明の変速位置検出器1は、鞍型乗車する車両(例えば、二輪車、鞍型乗車型の4輪バギー)のシフトペダル2の操作によって回動する被検出体であるシフトカム3(シャフト)に連動して回動する主軸4と、この主軸4とともに回動する磁石5が、回転することによって、磁石5の磁界の強さを検出する磁気検出部6とを備えたものである。
【0016】
磁石5は、N極とS極をそれぞれ一つ有する二極備えた磁石であり。略円柱形状をしている。
【0017】
磁気検出部6は、図5に示すように、シフトカム3の位置に応じて変動する電圧を検出信号S1として出力する第1の磁気検出素子6aと、シフトカム3のニュートラル位置において検出信号S2を出力する第2の磁気検出素子6bを備えている。
【0018】
第1の磁気検出素子6aは、二輪車に搭載されるエンジンの制御装置(以下、ECUという)7と電気的に接続されており、検出信号S1をECU7へ出力する。
【0019】
第2の磁気検出素子6bは、外部機器である車両用計器8とに電気的に接続されており、検出信号S2を車両用計器8へ出力する。
【0020】
ECU7は、検出信号S1および他のセンサからの信号に基づいて、前記エンジンの制御を行うものである。
【0021】
車両用計器8は、ニュートラルか否かを表す表示手段9を備えており、表示手段9は、第2の磁気検出素子6bから出力される検出信号S2に基づいて、ニュートラルか否かを表示する。表示手段9は、発光ダイオードなどの光源であり、第2の磁気検出素子6bから出力されるニュートラル位置検出信号に基づいて、前記光源を点灯させて、ニュートラルであることを表示する。
【0022】
次に、変速位置検出器1の具体的構成について説明する。
【0023】
変速位置検出器1は、主軸4と、磁石5と、磁気検出部6に加えて、回路基板10と、車両用計器8の光源9を点灯させるためのスイッチ手段である点灯用回路11と、これらを収納するハウジング12とを備えている。
【0024】
磁気検出部6は、第1の磁気検出素子6aと第2の磁気検出素子6bとを合成樹脂などからなるパッケージ13内に収納している。
【0025】
磁気検出部6は、回路基板10に半田付けで接続され、ECU7または車両用計器8などから電源を取り込み、主軸4の回転角度に応じた検出信号S1、S2をECU7または車両用計器8へ出力する。
【0026】
第1の磁気検出素子6aは、ホールIC、磁気抵抗IC等であり、磁石5の回転角度によって変動する漏れ磁束を検出し、磁石5の回転角度に比例した電圧の検出信号S1に変換するものであり、図5に示すように、磁石5の回転角度に対応した電圧の検出信号S1は、第1の磁気検出素子6aに設けた図示しない記憶部(例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリ)に記憶されている。
【0027】
第2の磁気検出素子6bも、第1の磁気検出素子6aと同様に、ホールIC、磁気抵抗IC等である。第2の磁気検出素子6bの検出信号S2は、スイッチ信号であり、第1の磁気検出素子6aの検出信号S1とは異なり、磁石5の回転角度によって変動する漏れ磁束を検出し、磁石5の所定の範囲の回転角度のみに電圧の検出信号S2に変換するものであり、図5に示すように、磁石5の所定の回転角度に対応した電圧の検出信号S2は、第2の磁気検出素子6bに設けた図示しない記憶部(例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリ)に記憶されている。
【0028】
回路基板10は、ガラスエポキシ樹脂などからなる絶縁体に、図示しない配線パターンが設けられており、この配線パターンを介して、磁気検出部6、点灯用回路11が電気的に接続されるとともに、ECU7、車両用計器8に電気的に接続されている。
【0029】
点灯用回路11は、トランジスタ、整流器、抵抗等からなり、回路基板10に実装されている。点灯用回路11は、第2の磁気検出素子6bによりニュートラル位置が検出されると、車両用計器8に設けた発光ダイオードなどの光源9を点灯させるべく駆動信号を出力する。
【0030】
第1の磁気検出素子6a、第2の磁気検出素子6bは、それぞれ、集磁板14a、14bを内蔵している。集磁板14a、14bは、鉄などの磁性体材料からなり、その外径が円の円板状であり、磁石5の回転軸方向に対して所定の厚みを備えている。この集磁板14a、14bの背後、すなわち、磁石5の存在する側とは反対側に、ホール素子や磁気抵抗素子を備えている。
【0031】
特に、第1の磁気検出素子6aは、その集磁板14の中心と、磁石5の回転中心と同一直線上に配置されている。このように構成したことによって、磁石5の回転に伴う磁力変化を最も安定した形で受けることができ、磁石5の回転角度に比例した電圧の検出信号S1の精度が、向上する。また、磁石5の回転方向において、磁石5は、第2の磁気検出素子6bを覆うように配置されている。
【0032】
また、集磁板14の中心と、磁石5の中心を同一直線上に配置するために、位置決め構造を採用している。位置決め構造は、ハウジング12に設けた位置決めピン15と、磁気検出部6を実装した回路基板11に設けた貫通孔16とで構成されており、位置決めピン15を貫通孔16に挿入することで、集磁板14aの中心と磁石5の中心が、同一直線上に配置することができる。
【0033】
なお、17は、磁気検出部6や回路基板10などを保護する樹脂である。
【0034】
以上の構成によって、変速位置検出器1は、磁気検出部6の2つの磁気検出素子6a、6bをそれぞれ変速位置用、ニュートラル検出用に使い分けることで、ニュートラル時に車両用計器8の光源9を複雑な回路を要せずに点灯させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両の変速装置の変速位置を検出する変速位置検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 変速位置検出器
3 シフトカム
5 磁石
6 磁気検出部
6a 第1の磁気検出素子
6b 第2の磁気検出素子
8 車両用計器(外部機器)
9 表示手段(光源)
11 点灯用回路(スイッチ手段)
S1 第1の磁気検出素子が出力する検出信号
S2 第2の磁気検出素子が出力する検出信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍型車両の変速位置を定めるシフトカムに連動して回動する磁石と、前記磁石に対向して配置され前記磁石が回転することによって前記磁石の磁界の変化を検出する磁気検出部と、を備えた変速位置検出器において、
前記磁気検出部は前記磁界の変化によって変速位置を検出する第1の磁気検出素子と前記磁界の変化によって変速のニュートラル位置を検出する第2の磁気検出素子と、を備え、前記第1の磁気検出素子は前記シフトカムの回転角度に応じた信号を出力し、前記第2の磁気検出素子は前記ニュートラル位置であるか否かを示すスイッチ信号を出力し、前記スイッチ信号に基づいて外部機器の表示手段を制御することを特徴とする変速位置検出器。
【請求項2】
前記スイッチ信号に基づいて前記表示手段を動作させるスイッチ手段を有することを特徴とする請求項1に記載の変速位置検出器。
【請求項3】
前記外部機器は車両用計器であることを特徴とする請求項1に記載の変速位置検出器。
【請求項4】
前記表示手段は、光源からなることを特徴とする請求項1に記載の変速位置検出器。
【請求項5】
前記磁気検出素子に対向して配置される前記磁石は、前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子を覆うとともに、前記磁石の回転中心と前記第1の磁気検出素子内に備えた集磁板が同一直線上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の変速位置検出器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137383(P2012−137383A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289932(P2010−289932)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】