説明

外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造並びに接続方法

【課題】外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続部位での結露水や漏水を防止できるようにする。
【解決手段】吹付け断熱材3で被覆された外壁ガラリ用チャンバー2と防露材7で被覆されたダクト6との接続構造であって、チャンバー2のダクト接続側の開口端に内フランジ2aが形成され、ダクト6の開口端に外フランジ6aが形成され、前記内フランジ2aには断熱パネル4が内フランジ2aを覆う状態に取り付けられ、前記断熱パネル4には、ダクト6の内法寸法と等しい大きさの開口aが形成され、且つ、ダクト6の外フランジ6aが前記開口aを囲む状態に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁ガラリの後部に設置され、吹付け断熱材で被覆されたチャンバーと防露材で被覆されたダクトとの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造においては、図7に示すように、外壁ガラリ1の後部に設置されたチャンバー2のダクト接続側の開口端に形成するフランジを外フランジ2bとし、ダクト6の開口端に形成された外フランジ6aとボルト・ナット10で連結するように構成されていた。
【0003】
チャンバー2の外周には予め吹付け断熱材3が施工されているが、開口端の外フランジ2bには、ダクト6の外フランジ6aとボルト連結する必要があるため、吹付け断熱材3が吹き付けられていない。また、接続されるダクト本体には、グラスウール等の防露材7が巻回されているが、外フランジ6aの先端が防露材7から露出している。
【0004】
そのため、外フランジ2b、6aが熱橋となり、周辺の空気が外フランジ2b、6aに触れて結露し、結露水がチャンバーとダクトの接続部(外フランジ2b、6a)から滴下することがあった。また、外フランジ2b、6aによる接続であるから、外フランジ2bがチャンバー内に吹き込んだ雨水の浸入を阻止するように機能する立上り壁(止水壁)とならず、接続部の底辺となる部位で漏水しやすいという問題もあった。
【0005】
尚、断熱材から露出したダクトフランジを断熱する方法としては、断熱材から露出したダクトのフランジ接続部を、外フランジが嵌まり込むスリットが形成された帯状の断熱材で被覆する技術は、特許文献1によって提案されている。上述した結露水の問題を解決する手段として、このフランジ断熱方法を、チャンバーとダクトの接続部(外フランジ2b、6a)に応用することも考えられるが、この場合、チャンバー側が吹付け断熱材3で被覆され、ダクト側がグラスウール等の防露材7で被覆されているため、帯状の断熱材を外フランジ2b、6aに巻き付けて安定良く固定することが難しい。また、接続後、外フランジ2b、6aの外周に吹付け断熱材3を施工することも不可能ではないが、飛散する吹付け断熱材3で屋内が汚れないように周辺を養生シート等で厳重にマスキングする必要があり、現実には行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−88330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑みて成されたものであって、外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続部位での結露水や漏水を防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造は、吹付け断熱材で被覆された外壁ガラリ用チャンバーと防露材で被覆されたダクトとの接続構造であって、チャンバーのダクト接続側の開口端に内フランジが形成され、ダクトの開口端に外フランジが形成され、前記内フランジには断熱パネルが内フランジを覆う状態に取り付けら
れ、前記断熱パネルには、ダクトの内法寸法と等しい大きさの開口が形成され、且つ、ダクトの外フランジが前記開口を囲む状態に取り付けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造を実現するための方法であって、チャンバーのダクト接続側の開口端に形成された内フランジに断熱パネルを内フランジが覆われた状態に取り付けて、チャンバーのダクト接続側の開口端を断熱パネルで閉塞しておき、しかる後、断熱パネルの一部を切り抜いてダクトの内法寸法と等しい大きさの開口を形成し、ダクトの開口端に形成された外フランジを断熱パネルに前記開口を囲む状態に取り付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、吹付け断熱材で被覆されたチャンバーの開口端を内フランジとし、この内フランジに断熱パネルを介してダクトの外フランジを取り付けたので、内フランジが断熱パネルで隠蔽された状態となり、ダクトの外フランジは断熱パネルと防露材で被覆された状態となるので、チャンバーとダクトの接続部位が熱橋とならず、チャンバーとダクトの接続部位での結露水の発生を防止できる。
【0011】
また、チャンバーの開口端を内フランジとしたので、チャンバーとダクトの接続部の底辺となる部位では、内フランジが立上り壁(止水壁)となり、チャンバー内に雨水が吹き込まれた場合でも、内フランジによってそれ以上の浸入が阻止されることになり、漏水を防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、上記の効果を有する外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造を実現するにあたり、ダクトが接続されるまで、チャンバーのダクト接続側の開口端を断熱パネルで閉塞しておくので、建物の躯体に対する外壁ガラリとチャンバーの取付け工事から建物内部に設置されるダクトの接続工事までの工期に自由度がある。しかも、ダクトの接続に際しては、断熱パネルの一部を切り抜いてダクトの内法寸法と等しい大きさの開口を形成し、この開口縁部にダクトを接続するので、ダクトとして、丸型ダクト、角型ダクト、内法寸法の異なるダクトなどを選択でき、接続するダクトの種類に自由度がある。従って、屋内空間の間仕切り位置や要求される給排気性能が一定していない工場、商業施設、研究所等の建物に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造を例示する縦断側面図である。
【図2】本発明に係る外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続方法を説明する縦断側面図である。
【図3】横断平面図である。
【図4】要部の分解斜視図である。
【図5】横断平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す縦断側面図である。
【図7】従来例を説明する縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係る外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造の一例を示す。1は外壁Wに取り付けられた縦型の外壁ガラリであり、方形状の枠体1aと、枠体1a内に通気路を隔てて縦方向に配置された多数の羽根板1bとで構成されている。2は外壁ガラリ1の後部に取り付けられた金属製のチャンバーであり、外周は、ロックウール、バーミキュライト等の吹付け断熱材3で被覆されている。チャンバー2のダクト接続側の開口端のフランジは内フランジ2aとされており、内フランジ2aには断熱パネル4が内フランジ
2aを覆う状態にタッピングビス5aで取り付けられている。断熱パネル4としては、例えば、ガルバリウム鋼板に硬質ウレタンを注入したサンドイッチパネルが使用される。
【0015】
6は金属製のダクトであり、外周はグラスウール等の防露材7で被覆され、防露材7の周囲には保形用のメッシュ8が巻かれている。断熱パネル4には、ダクト6の内法寸法と等しい大きさの開口aが形成され、ダクト6の開口端に設けられた外フランジ6aが断熱パネル4に前記開口aを囲む状態にタッピングビス5bで取り付けられている。
【0016】
チャンバー2の内フランジ2aと断熱パネル4の当接部位の外周には、チャンバー外周の吹付け断熱材3とダクト外周の防露材7にわたる幅の断熱テープ9が貼着されている。
【0017】
上記の構成によれば、吹付け断熱材3で被覆されたチャンバー2の開口端を内フランジ2aとし、この内フランジ2aに断熱パネル4を介してダクト6の外フランジ6aを取り付けたので、内フランジ2aが断熱パネル4で隠蔽された状態となり、ダクト6の外フランジ6aは断熱パネル4と防露材7で被覆された状態となるので、チャンバー2とダクト6の接続部位が熱橋とならず、接続部位での結露水の発生を防止できる。
【0018】
また、チャンバー2の開口端を内フランジ2aとしたので、チャンバー2とダクト6の接続部の底辺となる部位では、内フランジ2aが立上り壁(止水壁)となり、チャンバー2内に雨水が吹き込まれた場合でも、内フランジ2aによってそれ以上の浸入が阻止されることになり、漏水を防止できる。
【0019】
図1に示したチャンバー2とダクト6の接続構造は、例えば、外壁ガラリ1の後部に取り付けられたチャンバー2の内フランジ2aに、開口a付きの断熱パネル4を取り付け、断熱パネル4にダクト6の外フランジ6aを取り付け、ダクト6周囲に防露材7、メッシュ8を巻き付け、内フランジ2aと断熱パネル4の当接部位の外周に断熱テープ9を貼着するといった方法や、予め、開口a付きの断熱パネル4にダクト6の外フランジ6aを取り付けると共に、ダクト6周囲に防露材7、メッシュ8を巻き付けておき、これを施工現場に運び上げて、断熱パネル4をチャンバー2の内フランジ2aに取り付け、断熱テープ9を貼着するといった方法によっても実現できる。
【0020】
しかし、工期やダクト選択の自由度を確保するためには、チャンバー2のダクト接続側の開口端に形成された内フランジ2aに断熱パネル4を内フランジ2aが覆われた状態に取り付けて、チャンバー2のダクト接続側の開口端を断熱パネル4で閉塞しておき、しかる後、必要な時に、断熱パネル4の一部を切り抜いてダクト6の内法寸法と等しい大きさの開口aを形成し、ダクト6の開口端に形成された外フランジ6aを断熱パネル4に前記開口aを囲む状態に取り付けるといった手順の接続方法を採用することが望ましい。
【0021】
この接続方法を更に具体的について説明すると、図2、図3に示すように、外壁ガラリ1の後部に取り付けられたチャンバー2の外周に吹付け断熱材3を吹き付けた後、内フランジ2aに断熱パネル4を内フランジ2aが覆われた状態にタッピングビス5aで取り付けて、チャンバー2のダクト接続側の開口端を断熱パネル4で閉塞しておく。
【0022】
尚、内フランジ2aと断熱パネル4の当接部位の外周には、図示の通り、断熱テープ9を貼着し、タッピングビス5aの頭部まで断熱テープ9で被覆しておいてもよく、ダクト接続後に断熱テープ9を貼着するようにしてもよい。
【0023】
しかる後、建物内部に設置されるダクトの接続工事に際して、図4に示すように、断熱パネル4の一部を切り抜いて、設置を必要とする幾つかのダクト6、6A、6Bの内法寸法と等しい大きさの開口a、b、cを形成する。この切抜き作業は、屋内側から断熱パネ
ル4を取り付けたまま行うことが可能であるが、ダクトが未だ1本も接続されていない時点では、一旦、断熱パネル4を取り外して、切抜き作業を行い、元の状態に取り付けた後、断熱テープ9を貼着することもできる。
【0024】
何れの施工手順を採用した場合でも、チャンバー2の内フランジ2aに取り付けられた状態にある断熱パネル4の後面にダクト6、6A、6Bの外フランジ6aをタッピングビス5bで取り付け、図5に示すように、ダクト6、6A、6Bの外周に防露材7とメッシュ8を巻いて、タッピングビス5bの頭部を被覆し、接続を完了することになる。
【0025】
上記の構成によれば、ダクト6、6A、6Bが接続されるまで、チャンバー2ダクト接続側の開口端を断熱パネル4で閉塞しておくので、建物の躯体に対する外壁ガラリ1とチャンバー2の取付け工事から建物内部に設置されるダクト6、6A、6Bの接続工事までの工期に自由度があり、ダクト6、6A、6Bの接続に際しては、断熱パネル4の一部を切り抜いてダクト6、6A、6Bの内法寸法と等しい大きさの開口a、b、cを形成し、この開口縁部にダクト6、6A、6Bを接続するので、ダクト6、6A、6Bとして、丸型ダクト、角型ダクト、内法寸法の異なるダクトなどを選択でき、接続するダクトの種類に自由度がある。従って、屋内空間の間仕切り位置や要求される給排気性能が一定していない工場、商業施設、研究所等の建物に好適である。
【0026】
図6は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、断熱パネル4をチャンバー2の内フランジ2aよりもチャンバー外周の吹付け断熱材3の厚み分大きい寸法とし、ダクト外周の防露材7で断熱パネル取付け用タッピングビス5aの頭部とダクト6の外フランジ取付け用タッピングビス5bの頭部を覆ってあることを特徴としている。
【0027】
この構成によれば、断熱パネル4が内フランジ2aの基部よりも外側に突出し、内フランジ2aの基部を断熱パネル4とチャンバー外周の吹付け断熱材3とで覆った状態となるので、内フランジ2aと断熱パネル4の当接部位の外周に貼着する断熱テープを省略できる。その他の構成、作用は、図1〜図6の実施形態と同じであるため、同一構成部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、工場、商業施設、研究所等の建物における外気取入れ用、空調機の外気取入れ用、換気用の外壁ガラリの後部に設置されるチャンバーとダクトの接続の他、事務所ビルにおける外気取入れ用、空調機の外気取入れ用、換気用の外壁ガラリの後部に設置されるチャンバーとダクトの接続にも利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 外壁ガラリ
1a 枠体
1b 羽根板
2 チャンバー
2a 内フランジ
2b 外フランジ
3 吹付け断熱材
4 断熱パネル
5a、5b タッピングビス
6、6A、6B ダクト
6a 外フランジ
7 防露材
8 メッシュ
9 断熱テープ
W 外壁
a、b、c 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付け断熱材で被覆された外壁ガラリ用チャンバーと防露材で被覆されたダクトとの接続構造であって、チャンバーのダクト接続側の開口端に内フランジが形成され、ダクトの開口端に外フランジが形成され、前記内フランジには断熱パネルが内フランジを覆う状態に取り付けられ、前記断熱パネルには、ダクトの内法寸法と等しい大きさの開口が形成され、且つ、ダクトの外フランジが前記開口を囲む状態に取り付けられていることを特徴とする外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続構造を実現するための方法であって、チャンバーのダクト接続側の開口端に形成された内フランジに断熱パネルを内フランジが覆われた状態に取り付けて、チャンバーのダクト接続側の開口端を断熱パネルで閉塞しておき、しかる後、断熱パネルの一部を切り抜いてダクトの内法寸法と等しい大きさの開口を形成し、ダクトの開口端に形成された外フランジを断熱パネルに前記開口を囲む状態に取り付けることを特徴とする外壁ガラリ用チャンバーとダクトの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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