説明

外壁構造およびその施工方法

【課題】 建物外壁における足場つなぎ部材の取付跡の補修を容易になし得る外壁構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】 本発明の外壁構造Uは、足場つなぎ部材が取付可能な外壁構造Uであって、外壁構造Uの外壁パネル1の上端面の室内側突部2aに足場つなぎ部材の基端部Tが挿通される基端部挿通孔10が設けられ、外壁パネル1のパネルフレーム3に基端部Tと係合する基端部係合部20が設けられてなるもので、足場撤去後に基端部Tが引き抜かれた基端部挿通孔10を補修するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁構造およびその施工方法に関する。さらに詳しくは、足場の取付けおよび取外しが容易な外壁構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の外装工事等の際に用いる足場は、倒壊を防ぐために、所定本数の足場つなぎ部材により建物外壁につなぎ止めることがなされている。
【0003】
図7に、足場つなぎ部材を取り付けた外壁構造の要部を断面図で示す。外壁構造100においては、コンクリート板等の壁材101に例えば高ナット102を埋設し、その雌ねじ孔103の開口を露出させるように足場を解体するまでの間、その部分のタイル等の外装材104を未装着としている。この状態で、足場つなぎ部材105の雄ねじが形成された基端部106を高ナット102に螺合して足場つなぎ部材を建物外壁に取り付けている。
【0004】
このため、足場解体の際には、解体作業と並行して前記外装材の未装着部分の補修を行う必要がある。しかしながら、そのような補修作業は、熟練を要する特殊な接着工法による必要があり、作業員の技量が未熟である場合には補修部分の見栄えが悪くなるなどの不具合が発生するおそれもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、建物外壁における足場つなぎ部材の取付跡の補修を容易になし得る外壁構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外壁構造は、足場つなぎ部材が取付可能な外壁構造であって、前記外壁構造の外壁パネルの上端面の室内側突部に足場つなぎ部材の基端部が挿通される基端部挿通孔が設けられ、前記外壁パネルのパネルフレームに前記基端部と係合する基端部係合部が設けられてなることを特徴とする。
【0007】
本発明の外壁構造においては、基端部に雄ねじが形成され、基端部係合部に前記雄ねじと螺合するナットが設けられてなるのが好ましい。
【0008】
また、本発明の外壁構造においては、基端部挿通孔の内径が基端部の直径より大きくされ、前記基端部が前記基端部挿通孔との接触が回避されてなるのが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の外壁構造においては、基端部挿通孔が補強部材により補強されてなるのが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の外壁構造においては、基端部挿通孔の周縁部が補強部材により補強されてなるのが好ましい。
【0011】
一方、本発明の外壁構造の施工方法は、足場つなぎ部材が取付可能な外壁構造の施工方法であって、外壁構造の外壁パネルの上端面の室内側突部に設けられた基端部挿通孔に足場つなぎ部材の基端部を挿通する手順と、前記基端部を前記外壁パネルのパネルフレームに設けられた係合部に係合する手順と、前記係合を解除して前記基端部を前記基端部挿通孔から引き抜く手順と、前記基端部が引き抜かれた基端部挿通孔を補修する手順とを含んでいることを特徴とする。
【0012】
本発明の外壁構造の施工方法においては、基端部挿通孔の補修が、湿式シーリングと乾式シーリングとを組合すことによりなされてもよく、充填材と湿式シーリングとを組合すことによりなされてもよく、あるいは基端部挿通孔を塞ぐように水切り材を貼設することによりなされてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前記の如く構成されているので、足場撤去後におけるタイルなどの外装材の補修が不要となるという優れた効果が得られる。そのため、施工期間の短縮および施工コストの低減が図られるという優れた効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
実施形態1
図1に、本発明の実施形態1に係る外壁構造の要部を断面図により示す。図2に、同外壁構造を断面図により示す。
【0016】
外壁構造Uは、図1および図2に示すように、全体は図示しない足場つなぎ部材の雄ねじ(例えばM16ねじ)が形成された基端部Tを挿通するように、外壁パネル1のコンクリート板2の所定位置に設けられた基端部挿通孔10と、外壁パネル1のパネルフレーム3に設けられた基端部係合部20とを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0017】
外壁パネル1は、壁材としてのコンクリート板2と、このコンクリート板2の室内側に配され、コンクリート板2と連結されたパネルフレーム3と、コンクリート板2の室外側表面に装着された外装材としてのタイル4とを有する。
【0018】
また、外壁パネル1は、図2に示すように、パネルフレーム3に取り付けられたファスナー5により、鉄骨梁6に台座8等を介して支持されるものとされる。なお、図中、符号7は床下地コンクリートを示す。
【0019】
次に、基端部挿通孔10を説明する。
【0020】
図2に示すように、基端部挿通孔10は、上下方向に並ぶ2枚の外壁パネル1、1の一方、例えば下側の外壁パネル1Aのコンクリート板2上端面室内側の突部2aに設けられるものとされる。
【0021】
すなわち、上下方向に並ぶ2枚の外壁パネル1、1の間隙である水平目地9は、水平目地9から雨水が浸入するのを防ぐために、室内側が高くなるように形成されている。つまり、下側外壁パネル1Aのコンクリート板2の上端面室内側および上側外壁パネル1Bのコンクリート板2の下端面室外側にそれぞれ突部2a、2bが形成され、これら突部2a、2bが形成された端面を突き合わせて、水平目地9が形成されている。
【0022】
しかして、基端部挿通孔10は、足場つなぎ部材の取付位置において、水平目地9の室外側間隙9aから差し込まれる前記基端部Tが挿通可能なように、前記突部2aの前記間隙9aと正対する位置に穿設されるものとされる。
【0023】
また、基端部挿通孔10は、図1に示すように、前記突部2aにパイプ(補強部材)11を埋設して形成されている。ここで、パイプ11の内径は、基端部Tとコンクリート板2との接触を回避するためのクリアランスを確保するように、基端部Tの外径より例えば2mm以上大きくされる。これにより、足場つなぎ部材からの荷重を、パネルフレーム3を介して構造躯体である鉄骨梁6に全て負担させることが可能となり、基端部Tとの接触によるコンクリート板2の損傷を防止することができる。
【0024】
さらに、基端部Tとコンクリート板2とが接触した場合に、コンクリート板2にひび割れが生ずるのを防止するために、基端部挿通孔10の周囲に、ガラスネット12をコンクリート板2の表面に埋め込むようにして設けるのもよい。
【0025】
なお、図中、符号Gにより示される部材は、水平目地9を止水するために圧装されたガスケットである。
【0026】
次に、基端部係合部20を説明する。
【0027】
図1に示すように、基端部係合部20は、足場つなぎ部材の取付位置において、基端部挿通孔10に挿通された基端部Tと係合し得る状態でパネルフレーム3に取り付けられる係合補助具21と、係合補助具21に取り付けられ、足場つなぎ部材の基端部Tが螺合するナット22とを有する。
【0028】
係合補助具21は、所定長さに切断した例えば50×50×5(mm)の等辺山形鋼(アングル)からなり、その1つの外面21aをパネルフレーム3の鉛直面に例えば溶接により接合するとともに、1つの長手方向端面21bをパネルフレーム3の水平面に溶接により接合して、パネルフレーム3から上方に突出するように取り付けられるものとされる。
【0029】
また、係合補助具21の基端部挿通孔10と正対する位置には、足場つなぎ部材の基端部Tを通すための透孔21cが設けられるものとされる。
【0030】
ナット22は、例えばM16ナットからなり、その雌ねじ孔22aが前記透孔21cと合致するよう係合補助具21内面に取り付けられるものとされる。
【0031】
しかして、足場つなぎ部材の基端部Tは、水平目地9の前記室外側間隙9aを通して水平目地9の内部に差し込まれ、基端部挿通孔10および係合補助具21の透孔21cを通してナット22に螺合される。前述したとおり、基端部挿通孔10は、水平目地9内部のコンクリート板2の端面突部2aに設けられるものであるため、その補修跡を目立たなくすることが可能である。また、基端部挿通孔10は、外装材であるタイル4が本来装着されない部分に設けられるものであるため、外装材の一部を未装着とする必要がなく、その補修の必要もない。
【0032】
次に、足場つなぎ部材を取り外した後の基端部挿通孔10の補修方法を説明する。
【0033】
図3に、一補修例を示す。
【0034】
図3の補修例は、湿式シーリングと乾式シーリングとを組み合わせたものであり、基端部装通孔10の奥側(室内側)にシリコン31などのシーリング剤を充填し(湿式シーリング)、その上側(室外側)からゴム製キャップ32を嵌め込み(乾式シーリング)、これにより基端部挿通孔10を止水している。ゴム製キャップ32は、ねじ込み式であり、その取付に特別の技能を要しない。したがって、足場つなぎ部材の取付跡の補修が極めて容易となる。
【0035】
図4に、他の補修例を示す。
【0036】
図4の補修例は、基端部装通孔10の奥側(室内側)にバッカー(充填材)33を詰め込み、その上側(室外側)に湿式シーリング34を施して、補修したものである。
【0037】
図5に、さらに他の補修例を示す。
【0038】
図5の補修例は、ゴム薄板材からなるフラッシング(水切り材)35を基端部挿通孔10を塞ぐように突部2aの室外側表面に貼設して補修したものである。
【0039】
このように、実施形態1の外壁構造Uは、足場つなぎ部材の取付位置において、水平目地9の室外側間隙9aから差し込まれる足場つなぎ部材の基端部Tを挿通し得るように、下側外壁パネル1A上端面室内側の突部2aに基端部挿通孔10を設けるとともに、基端部挿通孔10に挿通された前記基端部Tと係合する係合部20をパネルフレーム3に設けたものとされる。これにより、従来の外壁構造のように、外装材であるタイル4の一部を未装着とするとともに、その未装着部分のコンクリート板2に高ナットを埋設等して、足場つなぎ部材の取付箇所を確保する必要がない。したがって、足場の解体と並行して行われる取付跡の補修作業が極めて容易となるとともに、見栄えが悪くなる等の不具合の発生も抑えることが可能となる。
【0040】
実施形態2
以下、本発明の実施形態2を説明する。図6に示すように、実施形態2の外壁構造U1は、実施形態1を改変してなるものであり、基端部係合部20を改変したものである。すなわち、基端部係合部20Aにおいては、図6に示すように、足場つなぎ部材の取付位置において、Z型クリップからなる係合補助具21Aがパネルフレーム3に取り付けられる。なお、その余の構成は実施形態1と同様であるため、その詳細説明は省略する。
【0041】
ここで、係合補助具21Aは、基端部挿通孔10に挿通される前記基端部Tと係合し得る状態でパネルフレーム3に取り付けられるものとされる。すなわち、パネルフレーム3の上方から一つの板部21dが突出するように、これと平行な別の板部21eの一方の平滑面21fがパネルフレーム3の鉛直面に溶接により接合されて、パネルフレーム3に取り付けられる。
【0042】
また、前記一つの板部21dの基端部挿通孔10と正対する位置には、前記基端部Tを通すための透孔21cが設けられる。
【0043】
このように、実施形態2の外壁構造U1においては、軽量なZ型クリップから係合補助具21Aが形成されるので、外壁構造を軽量化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、建物外壁に足場を繋ぐ場合に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態1に係る外壁構造の要部断面図である。
【図2】同外壁構造の断面図である。
【図3】同外壁構造の一補修例を示す一部断面図である。
【図4】同外壁構造の他の補修例を示す要部断面図である。
【図5】同外壁構造のさらに他の補修例を示す一部断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る外壁構造の要部断面図である。
【図7】従来の外壁構造の図1相当図である。
【符号の説明】
【0046】
U 外壁構造
T 足場つなぎ部材基端部
1 外壁パネル
2 コンクリート板
2a 突部
3 パネルフレーム
9 水平目地
9a 水平目地室外側間隙
10 基端部挿通孔
20 基端部係合部
21 係合補助具
22 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場つなぎ部材が取付可能な外壁構造であって、
前記外壁構造の外壁パネルの上端面の室内側突部に足場つなぎ部材の基端部が挿通される基端部挿通孔が設けられ、
前記外壁パネルのパネルフレームに前記基端部と係合する基端部係合部が設けられてなる
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
基端部に雄ねじが形成され、基端部係合部に前記雄ねじと螺合するナットが設けられてなることを特徴とする請求項1記載の外壁構造。
【請求項3】
基端部挿通孔の内径が基端部の直径より大きくされ、前記基端部が前記基端部挿通孔との接触が回避されてなることを特徴とする請求項1記載の外壁構造。
【請求項4】
基端部挿通孔が補強部材により補強されてなることを特徴とする請求項1記載の外壁構造。
【請求項5】
基端部挿通孔の周縁部が補強部材により補強されてなることを特徴とする請求項1記載の外壁構造。
【請求項6】
足場つなぎ部材が取付可能な外壁構造の施工方法であって、
外壁構造の外壁パネルの上端面の室内側突部に設けられた基端部挿通孔に足場つなぎ部材の基端部を挿通する手順と、
前記基端部を前記外壁パネルのパネルフレームに設けられた係合部に係合する手順と、
前記係合を解除して前記基端部を前記基端部挿通孔から引き抜く手順と、
前記基端部が引き抜かれた基端部挿通孔を補修する手順
とを含んでいることを特徴とする外壁構造の施工方法。
【請求項7】
基端部挿通孔の補修が、湿式シーリングと乾式シーリングとを組合すことによりなされることを特徴とする請求項6記載の外壁構造の施工方法。
【請求項8】
基端部挿通孔の補修が、充填材と湿式シーリングとを組合すことによりなされることを特徴とする請求項6記載の外壁構造の施工方法。
【請求項9】
基端部挿通孔の補修が、該基端部挿通孔を塞ぐように水切り材を貼設することによりなされることを特徴とする請求項6記載の外壁構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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