外壁面設置用太陽熱集熱器、建築物および太陽熱利用システム
【課題】マンションなどの外壁面に容易に設置可能であり、かつ意匠性も良い外壁面設置用太陽熱集熱器およびこれを用いた太陽熱利用システムを提供する。
【解決手段】外壁面設置用太陽熱集熱器10は、太陽光入射部が透明層1からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の樹脂枠体21と、樹脂枠体21の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層3で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路5と、樹脂枠体21の中空部の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層4とを有する。集熱層3の少なくとも一部は透明層1と対向しており、断熱層4は、樹脂枠体21の中空部の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられている。
【解決手段】外壁面設置用太陽熱集熱器10は、太陽光入射部が透明層1からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の樹脂枠体21と、樹脂枠体21の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層3で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路5と、樹脂枠体21の中空部の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層4とを有する。集熱層3の少なくとも一部は透明層1と対向しており、断熱層4は、樹脂枠体21の中空部の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外壁面設置用太陽熱集熱器、外壁面設置用太陽熱集熱器を設置した建築物および外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムに関し、例えば、集合住宅および一戸建ての壁面に設置する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
太陽熱集熱器は集熱部を有し、クリーンエネルギである太陽光により得られる熱を集熱可能に構成されており、ガス燃焼式給湯器やヒートポンプ式給湯器などと併用することでCO2排出などの環境負荷を低く抑えられる太陽熱利用温水システムなどに適用が可能である。
【0003】
従来、太陽熱集熱器は建物の屋根に設置する屋根設置型太陽熱集熱器が一般的であったが、この形態の太陽熱集熱器は、アパートやマンションなどの集合住宅の部屋においては個別の屋根が無いため設置は不可能であった。そこで、この問題点を解決するために集合住宅の外壁面やベランダなどに容易に設置が可能な形態の太陽熱集熱器および太陽熱利用システムが提案され開発が進められている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−241031号公報
【特許文献2】特開2005−282925号公報
【特許文献3】特開平6−185813号公報
【特許文献4】特開2001−330327号公報
【特許文献5】特開2002−106974号公報
【特許文献6】特開2009−92290号公報
【特許文献7】特開2010−151331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の外壁面設置型太陽熱利用システムおよびベランダ設置型太陽熱利用システムは、太陽熱集熱器の設置場所が限定されているのが現状である。特に、外壁面に太陽熱集熱器を設置する壁面設置型太陽熱利用システムにおいては、集熱部が重厚長大であるため、形状的に取り付けが困難であり、たとえ取り付けられたとしても意匠性が悪く、また、特に集熱に液体を用いる液集熱型太陽熱集熱器においては、その重量の為に安全に外壁に設置されているとは言えなかった。一方で、ベランダに設置するベランダ設置型太陽熱利用システムにおいては、主としてベランダの手摺面の一部を集熱部の設置に利用する程度で設置場所が限定されており、また、ベランダの手摺などに太陽熱集熱器が設置され、ベランダの手摺の一部もしくは全体が占有されてしまうと、洗濯干しなどの日常生活におけるベランダの手摺の利用に支障が生じるという問題点があった。また、従来の太陽熱利用システムの構成では、昼間に太陽熱をステンレス鋼製貯湯タンクで貯熱することが一般的であり、さらに上記貯湯タンク出口の湯の温度を制御するための電動弁および制御装置などが必要となることから重量がかさみ、ベランダ設置が容易であるとはいえず、また、ベランダの構造上における安全の観点から重量物である太陽熱利用システムの設置は普及しているとは言えなかった。
【0006】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、例えば、太陽熱集熱器や太陽熱利用システムを集合住宅、戸建住宅などに設置する場合において、集熱部を外壁面、例えば、ベランダ下部壁面を利用して簡易に取り付けが可能で、かつ意匠性が良い、外壁面設置用太陽熱集熱器、この外壁面設置用太陽熱集熱器を設置した建築物およびこの外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを提供することである。ここで、ベランダとは、建物から外接して張り出した部分を一般的に指し、バルコニーも含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器である。
【0008】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって形成された中空の枠体の中空部に、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記透明層と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法である。
【0009】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物である。
【0010】
また、この発明は、
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器が、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システムである。
【0011】
また、この発明は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器である。
【0012】
また、この発明は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体の中空部に、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記太陽光入射部と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設け、上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して透明層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法である。
【0013】
また、この発明は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物である。
【0014】
また、この発明は、
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システムである。
【0015】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器である。
【0016】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器を異種の樹脂の同時押し出し成形により製造することを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法である。
【0017】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする建築物である。
【0018】
また、この発明は、
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする太陽熱利用システムである。
【0019】
この外壁面設置用太陽熱集熱器においては、太陽光が透明層を透過し集熱層に入射することにより発生する熱が集熱され、集熱層において集熱された熱が効率よく流体流路内を流れる流体に伝熱されることにより熱交換が行われて流体が加熱され、この加熱された流体が流体流路によって外部に輸送され、利用される。
【0020】
透明層は、入射する太陽光の全ての波長帯の光を透過する完全透明体である構成が最も望ましいが、太陽光に含まれる少なくとも一部の波長帯の光、好適には、少なくとも可視領域から遠赤外領域の波長帯の光を透過する限り、基本的にはどのようなものであってもよく、透明層の材料は具体的には樹脂、ガラスなどが挙げられ、樹脂であれば、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、環状ポリオレフィンなどが好適であって、この中でも、成形の容易性から熱可塑性樹脂が主として選ばれる。また、ガラスなどであれば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、石英ガラスなどが好適である。また、透明層は、上記材料などを組み合わせた複合構造、多層構造などであってもよく、複合構造にあっては、繊維強化プラスチックなどの複合材料で透明層を構成してもよい。また、受光面にコート材、フィルム、形状などにより反射を抑制する低反射機能の構成を有していてもよい。また、透明層に太陽光を散乱させる機構を有してもよく、例えば、透明層と集熱層との間に空気層を有する構成の外壁面設置用太陽熱集熱器においては、透明層の空気層に接する面に太陽光に含まれる少なくとも一部の波長帯の光、少なくとも可視領域から遠赤外領域の波長帯の光を散乱させる凹凸を設けた構成などが好適である。また、透明層と集熱層との間に空気層を有さない構成の外壁面設置用太陽熱集熱器においては、透明層を屈折率の異なる複数の材料を積層させて構成し、積層界面の形状を凹凸形状とすることが好適である。積層界面における凹凸形状により、積層界面を通過する太陽光に含まれる少なくとも一部の波長帯の光、少なくとも可視領域から遠赤外領域の波長帯の光を散乱させることができる。
【0021】
集熱層は、入射する太陽光の放射エネルギを全て吸収するような完全黒体である構成が最も望ましいが、入射する太陽光の放射エネルギの一部を吸収する構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよく、可視領域から遠赤外領域の波長帯の太陽光エネルギを吸収する材料が好適であって、特に、波長1μm〜20μmの光に対する熱吸収率(熱放射率)が完全黒体を1として0.3以上の材料であることが望ましく、さらに熱伝導率の高い材料であることがより望ましい。集熱層の材料は、具体的には、金属、ガラス材、炭素材、セラミックス、樹脂、ゴム、生体材料などが挙げられる。ここで、金属とは、金属単体、合金、金属酸化物などであって、金属単体であれば、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)などが好適であり、また、合金であれば、上記金属単体の二元合金、三元合金などであって、例えば、アルミニウム合金、ニッケル合金、鉄合金、チタン合金などが好適であり、また、金属酸化物であれば、上記に挙げた金属単体および合金の酸化物などであって、例えば、アルミニウム酸化物、銅酸化物、真鍮の酸化物などが好適であるが、金属はこれらに限定されるものではなく、これらの金属を組み合わせたものであってもよい。また、ガラス材であれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、石英ガラス、これらのガラス材を組み合わせたものが好適であるが、ガラス材はこれらに限定されるものではなく、入射光が透過しないようにガラス材に不透明材料を混ぜるなどして不透明とすることもできる。また、炭素材であれば、例えば、グラファイト、グラフェン、フラーレン類、カーボンブラック、これらの炭素材を組み合わせたものなどが好適であるが、炭素材はこれらに限定されるものではない。また、セラミックスであれば、例えば、酸化アルミニウム、炭化珪素、炭化ホウ素、炭化マグネシウム、これらのセラミックスを組み合わせたものなどが好適であるが、セラミックスはこれらに限定されるものではない。また、樹脂であれば、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂であれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォンなどが好適であって、熱硬化性樹脂であれば、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが好適であり、成形の容易性から熱可塑性樹脂が主に選ばれる。また、樹脂は、天然樹脂であっても合成樹脂であっても、結晶性樹脂であっても非結晶性樹脂であってもよいが、樹脂はこれらに限定されるものではなく、基材とフィラーとを組み合わせて構成される熱伝導樹脂であってもよく、基材としては上記に挙げた樹脂などが挙げられ、フィラーとしては上記に挙げたような金属、セラミックスなどが挙げられる。また、ゴムであれば、例えば、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴムなどが好適である。ゴムは、天然ゴムであっても合成ゴムであってもよいが、ゴムはこれらに限定されるものではない。また、生体材料であれば、植物材料、動物材料などが挙げられ、植物材料であれば、例えば、木材、綿、麻などが好適であって、動物材料であれば、例えば、毛、絹などが好適であるが、生体材料はこれらに限定されるものではない。また、その他の材料であれば、例えば、アスファルト、伝熱セメント、コンクリートなどが好適である。また、上記に挙げた材料を適宜組み合わせて集熱層を構成してもよく、具体的には、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどに近赤外線吸収材料(インジウム錫化合物、アンチモン錫化合物など)を練りこんだ構成を有するものが好適である。また、集熱層の太陽光入射部側の面である集熱面を粗面加工し、光反射率を低減させて熱吸収率を向上することも有効であり、例えば、集熱層をアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成する場合においては、集熱層の集熱面をアルマイト処理することによって多孔質構造とすることが特に好ましい。
【0022】
断熱層は、外部への集熱層または流体流路からの熱の流出を遮断する構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよく、断熱層の形態は、具体的には、真空、気体、液体、固体、混相体などであって、気体であれば、例えば、空気などが好適であって、固体であれば、例えば、断熱材などが好適であって、断熱材であれば、例えば、発泡スチロール、グラスウール、ウレタンフォーム、フェノールフォームなどが好適である。また、熱を蓄熱する構成を併せ持った断熱材であってもよく、具体的には、顕熱蓄熱断熱材、潜熱蓄熱断熱材などであり、顕熱蓄熱断熱材であれば、例えば、ゴム、合成樹脂、伝熱セメント、コンクリート、水、シリコーンオイルなどが好適であって、潜熱蓄熱断熱材であれば、例えば、塩化カルシウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、パラフィンなどが好適である。また、潜熱蓄熱断熱材を顕熱蓄熱断熱材に混合した構成も有効で、例えば、パラフィンをゴム、合成樹脂などに練りこみ、板状に成形した構成を有するものであってもよい。また、断熱層が固体であれば、断熱層を外筐として兼用することもできる。
【0023】
枠体は、少なくとも外筐からなる構成を有していれば基本的にはどのようなものであってもよいが、透明層と外筐とからなり、少なくとも一つの流体流路を収納し断熱層の表面の少なくとも一部を覆う筒形の中空形状を有し、枠体の太陽光入射部が透明層である構成が好適であり、筒型の中空形状は流体流路および断熱層の全体を覆う形態であることがより好適である。また、全て樹脂で一体に構成された樹脂枠体とすることもでき、枠体を樹脂枠体とする場合には、透明層は透明樹脂、外筐は樹脂によって構成されるが、枠体はこれらの構成に限定されるものではなく、枠体を全て金属で構成してもよいし、樹脂と金属を組み合わせて構成してもよい。また、枠体を透明層と別体で構成する場合には、筒型の中空形状を有する枠体の太陽光入射部を開口させて構成し、透明層は必要に応じて開口部の少なくとも一部に設けられ、好適には流体流路の上記太陽光入射部に対応する部分に上記開口部を塞ぐ形態で接して設けられる。また、枠体の中空部に流体流路および断熱層を挿入して設ける場合においては、枠体の内側の面に流体流路および断熱層を設けるための位置を決定する受け部を設けることもできる。
【0024】
外筐は、流体流路を収納し断熱層の表面の少なくとも一部を覆うように設けられている構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、流体流路および断熱層の全体を覆っている形態を有する構成が最も好ましく、外壁などの平面部に対する設置部を別体として外筐に取付ける取付け部を有する構成、もしくは設置部を一体に成形してなる構成、外筐の端部を設置部とする構成などを有していてもよい。また、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結可能な目地構造、太陽熱による熱収縮によっても歪みが生じず建築的な意匠パネルと容易に接続できる連結部を有する構成、意匠パネルと容易に接続できる連結部を別体として取付け可能な取付け部を有する構成、意匠パネルと容易に接続できる連結部または設置部を一体に成形してなる構成などを有していてもよい。外筐の材質は耐腐食性、耐熱性、耐衝撃性、耐光性などが高い材質であることが特に好ましく、具体的には金属、合成樹脂、複合材料などが挙げられ、金属であれば、具体的には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などが挙げられるが、金属はこれらのものに限定されるものではない。また、樹脂であれば、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂であれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォンなどが好適であって、熱硬化性樹脂であれば、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが好適であり、成形の容易性から熱可塑性樹脂が主に選ばれる。また、樹脂は、天然樹脂であっても合成樹脂であっても、結晶性樹脂であっても非結晶性樹脂であってもよいが、樹脂はこれらのものに限定されるものではない。また、複合材料であれば、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)などが好適であるが、複合材料はこれらのものに限定されるものではない。また、断熱層が固体である場合には、外筐を断熱材で構成し断熱層を兼ねた外筐としてもよい。
【0025】
外壁面設置用太陽熱集熱器の設置構造は、外壁面に設置が可能な構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、特に、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結した場合において設置面が一様になるような設置構造を設ける構成が好適である。
【0026】
連結部は外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結可能な構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、枠体を構成する外筐と一体に形成されており、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結した場合において設置面が一様になるよう、連結部の両端部は設置面と垂直な方向に設置面と干渉しない程度にそれぞれ逆方向に折り曲げられたかぎ形形状を有する構成が好適である。連結部の形状は両端部を相互に逆方向に折り曲げられた形状に限られず、例えば、一方の連結部を両端が開放された円筒とし、他方の連結部を上記円筒内に挿入可能な円柱とし相互に連結可能にする構成、連結部に相互に噛み合わせを設けて相互に連結可能とする構成であってもよい。また、ベランダの下部壁面における意匠化粧パネルなどとの取り合いとも連結が容易に可能である構造を有してもよい。
【0027】
また、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結する形態は、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結する形態を有する限りにおいては、基本的にはどのような形態であってもよく、例えば、連結部同士を相互に連結する形態、一方の連結部を他方の外筐に直接連結する形態などが挙げられ、特に、連結部と外筐とを相互に直接連結する形態が好適である。連結部と外筐とを相互に直接連結する場合、外壁面設置用太陽熱集熱器の連結時において設置面を一様にするために一方の連結部を設置面から透明層に向かう方向に外筐をえぐる形態でオフセットして設け、他方の連結部は設置面と同一の面に設けられ、オフセットして設けられた一方の連結部が他方の外壁面設置用太陽熱集熱器の外筐に直接接続できるように外筐の端部をえぐった窪み形状を有する構成としてもよいが、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結する形態はこれらに限定されず、連結部を用いないで連結してもよい。また、複数の外壁面設置用太陽熱集熱器が相互に連結することによって列モジュール形成し、外壁面設置用太陽熱集熱器モジュールとしてもよい。
【0028】
流体流路は、流体が流れる形態を有している限り、基本的にはどのようなものであってもよく、断面形状、断面の大きさ、引き回し形状などは必要に応じて決定することができる。また、流体流路の外壁を構成する材料は耐熱性を有し、熱伝導率の高い材料であることが好ましく、具体的には、金属材料、無機材料、樹脂材料などが挙げられ、金属材料であれば金属単体、合金などが挙げられ、金属単体であれば、例えば、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、イリジウム、(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)などが挙げられ、合金であれば、アルミニウム合金、ニッケル合金、銅合金、鋼、ステンレス鋼などが挙げられるが、金属はこれらに限定されるものではない。また無機材料であれば、例えば、グラファイト、セラミックスなどが挙げられるが、無機材料はこれらのものに限定されるものではない。また、樹脂材料であれば、樹脂の基材に熱伝導フィラーを配合した熱伝導性樹脂などが挙げられ、熱伝導性樹脂の基材としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられ、伝熱フィラーとしては、例えば、アルミニウム、銅、セラミックス、ガラス、グラファイトなどが挙げられるが、樹脂材料はこれらに限定されるものではない。ここで、流体流路の外壁とは、流体流路を形成する壁のことをいう。
また、流体流路の外壁の少なくとも一部は集熱層で形成され、集熱層は、流体流路の外壁のうち透明層に対向した一部の領域に構成されることが好適であるが、これに限定されず、流体流路の外壁の全てを集熱層で構成してもよい。流体流路の外壁の少なくとも一部とは、流体流路を構成する外壁の一部分であっても、流体流路の外壁に追加して設けられた一部分であってもよい。流体流路の一部を集熱層で構成する方法は、具体的には、流体流路本体の外壁の一部を熱吸収率の高い材料、好適には熱吸収率が0.3以上の材料である集熱層で構成する方法、流体流路本体の外壁面に熱吸収率の高い材料、好適には熱吸収率が0.3以上の材料を積層して集熱層を設ける方法などが挙げられ、流体流路本体の外壁の少なくとも一部を熱吸収率の高い材料、好適には熱吸収率が0.3以上の材料である集熱層で構成する方法は、具体的には、単一部材の押し出し、異種部材の同時押し出し、熱間接合、冷間接合、接着、溶接などが挙げられるが、流体流路の外壁の一部を集熱層で構成する方法は、これらの方法に限定されるものではない。また、流体流路の外壁面に別の材料を積層させて集熱層を形成する方法は、具体的には、接合、塗布、めっき、蒸着、化学処理、酸化処理などが挙げられ、特に、流体流路の外壁面を金属単体または合金で構成する場合には、流体流路の外壁面を酸化処理することによって熱吸収率の高い金属酸化皮膜を形成し集熱層とすることが好ましく、流体流路の外壁面に形成される集熱層である積層体の厚さは赤外放射の波長程度、具体的には、1μm〜20μmであることが好ましい。また、流体流路の外壁面上に形成された集熱層の太陽光入射部側の面である集熱面を粗面加工し、光反射率を低減させて熱吸収率を向上することも有効であり、例えば、集熱層をアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成する場合においては、集熱層の集熱面をアルマイト処理することによって多孔質構造とすることが特に好ましいが、流体流路の外壁面に材料を積層して集熱層を設ける方法は、これらの方法に限定されるものではない。
流体流路は、典型的には、流体流路とは別に形成された枠体の中空部に挿入され、必要に応じて固定される形態で設けられ、特に、太陽光入射部が透明層からなる枠体に、集熱層の集熱面と枠体を構成する透明層との間に空気層を設ける形態で挿入して構成するものが好適であるが、集熱層の設置形態はこれに限定されるものではなく、空気層を設けない形態で枠体の中空部に挿入して構成してもよいし、太陽光入射部が開口した中空の枠体に流体流路を挿入し、必要に応じて固定し、その後に流体流路に接して設けられた集熱層の集熱面に透明層を接する形態で設けて構成してもよいし、集熱層と断熱層と枠体とを一体に成形し、集熱層または断熱層または集熱層と断熱層とに跨る領域に、一つまたは複数の貫通孔を設けて流体流路を構成してもよい。また、集熱層から流体流路に流れる流体への伝熱を向上させるために、流体流路の表面を伝熱表面積の大きい形状とすることが好ましく、伝熱表面積が大きく、流体の流れ損失の小さな形状とすることがより好ましい。伝熱表面積が大きい形状は、典型的には凹凸形状であって、具体的には、曲面状、ウィック状、フィン状、多孔状などの凹凸形状が挙げられるが、伝熱表面積の大きい形状はこれらに限定されるものではない。
【0029】
流体流路内を流れ、外壁面設置用太陽熱集熱器において熱交換される流体は、液体、気体のいずれであってもよく、例えば、水、不凍液、オイル(油)、空気などが好適であるが、これらに限定されず、流動性を有する物質であれば、基本的にはどのようなものであってもよい。外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける熱交換による熱の授受を行う流体は、それぞれ外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの用途に応じて適宜選ばれる。例えば、外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを給湯器に適用する場合には、外壁面設置用太陽熱集熱器で集熱された熱を熱交換によって受け渡す流体は不凍液であって、熱を熱交換によって受け取る流体は水または湯である。
【0030】
この外壁面設置用太陽熱集熱器は、従来公知の技術を適宜選択することによって製造することができ、必要に応じて製造方法が選択される。その中でも、例えば、太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体を製造した後に、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる流体流路を製造し、枠体の中空部に、集熱層の少なくとも一部が透明層に対向するように流体流路を挿入し、必要に応じて固定し、枠体の中空部の流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を挿入し、必要に応じて固定して製造する方法が好適である。
枠体および流体流路は、従来公知の製造方法を適宜選択して製造することができ、具体的には、樹脂射出成形、樹脂押し出し成形、樹脂ブロー成形、金属押し出し成形、金属引き抜き成形、これらを組み合わせた成形などが挙げられ、枠体を全て樹脂で構成し樹脂枠体とする場合にあっては、例えば、樹脂射出成形、樹脂押し出し成形などの製造方法が選ばれ、流体流路の外壁を全て金属で構成する場合にあっては、金属押し出し成形などの製造方法が選ばれる。
また、外壁面設置用太陽熱集熱器を全て樹脂で構成する場合、流体流路と集熱層とを一体に構成する場合においては、多層異形押し出し成形装置を用いた多層異形押し出し成形法による樹脂の同時押し出し成形により製造する方法が好適である。具体的には、外壁面設置用太陽熱集熱器を全て樹脂で構成する場合にあっては、枠体、断熱層、集熱層を構成する多種の樹脂材料を同時に押し出し成形し、多種の樹脂材料を線状に、流体流路も含め一体に形成する。上述した製造方法で形成された成形物は所望の寸法となるように長手方向の端部を裁断され本体部を形成した後に、本体部の開放された流体流路の両端部を、予め射出成形機などで流路を成形した異形樹脂部材である端部と接合することで繰り返し折れ曲がった引き回し形状を形成した流体流路となり、外壁面設置用太陽熱集熱器となる。
【0031】
建築物は、典型的にはアパート、マンションなどの集合住宅であるが、これに限られず、外壁面を有する建築された構造物であれば、基本的にはどのようなものであってもよく、具体的には、例えば、戸建住宅、ビルディング、駅舎、校舎、病院、教会、工場、倉庫、車庫、橋などが挙げられ、特に、少なくとも一つのベランダを有する建築された構造物であることが特に好ましい。
【0032】
外壁は、外周を囲むことで空間を仕切り、内外の区画を形成可能であれば、基本的にはどのようなものであってもよく、典型的には上記に挙げた建築物の外周壁であるが、外壁はこれに限定されず、塀、建築物の土台の壁などであってもよい。外壁面は、典型的には上記外壁の外周面であって、具体的には、例えば、建築物側壁面、屋根面、屋根下部壁面、ベランダ壁面、ビルディング屋上面、ベランダ下部壁面、基礎壁面、塀の外周面、土台ののり面、煙突、橋脚、橋桁の側面などであるが、外壁面はこれらに限定されるものではなく、屋根の破風面、シャッターボックスの外面などであってもよい。
【0033】
外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、例えば、貯湯タンクを備えた外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムである。この貯湯タンクには、外壁面設置用太陽熱集熱器の流体流路内に水または湯を流すことにより熱交換して得られる湯が貯蔵される。貯湯タンクの壁の材料や構成は必要に応じて選ばれ、従来公知のものを用いることができる。貯湯タンクの耐圧性を確保しつつ、軽量性の向上を図る観点から、好適には、貯湯タンクの壁は、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる内層と、ポリアミド樹脂からなり上記内層の外方に設けられる外層と、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリアミド樹脂を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、上記内層と上記外層との間に位置する中間層とを有する多層構造体から構成される。最も好適には、貯湯タンクの壁の厚さは7mm以上であり、上記内層、上記中間層、上記外層の厚さ比率は、内層:中間層:外層=4:1:5〜8:1:1の範囲である。
【0034】
この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、好適には、被加熱流体の温度調整システムを有する。この温度調整システムは、例えば、被加熱流体を供給する供給部と、下層側から供給される被加熱流体を保持して上層側から排出するタンクと、タンクに供給された被加熱流体を加熱する主加熱部と、タンクに設置され、被加熱流体の供給に伴ってタンク内の下層側から上層側へ遷移するとともに低温域と高温域とを区分けする温度境界を検知する検知部と、タンクから排出された被加熱流体を設定温度に加熱する補助加熱部と、タンクと補助加熱部とを接続して、タンクから排出された被加熱流体を補助加熱部へ導く第1ラインと、第1ラインの途上に設置され、タンクから排出された被加熱流体と供給部から供給される被加熱流体とを混合調整して、タンクから排出された被加熱流体の温度を、供給部から供給される被加熱流体の温度よりも高く、かつ、設定温度よりも低い第1温度に調整する第1調整弁と、第1ラインの途上における第1調整弁と補助加熱部との間に設置され、第1温度に調整された被加熱流体と供給部から供給される被加熱流体とを混合調整して、補助加熱部に導かれる被加熱流体の温度を調整する第2調整弁と、タンクから排出され第1調整弁へ導かれる被加熱流体の温度に基づいて第1調整弁を作動させる第1制御部と、検知部が温度境界を検知したときに第2調整弁を作動させる第2制御部と、供給部と第1調整弁とを接続して、供給部から第1調整弁へ被加熱流体を導く第2ラインと、供給部と第2調整弁とを接続して、供給部から第2調整弁へ被加熱流体を導く第3ラインとを有し、第2制御部は、検知部が温度境界を検知したときに第2調整弁の作動を開始して、第1温度に調整された被加熱流体と第3ラインから導かれる被加熱流体とを混合調整するものである。また、加熱流体、被加熱流体は水に限定されず、流動性のある構成を有するものであれば、基本的にはどのようなものであってもよい。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、例えば、太陽熱集熱器や太陽熱利用システムを建築物に設置する場合において、建築物の外壁面に安全に取り付けが可能で、かつ意匠性の良い、外壁面設置用太陽熱集熱器およびこの外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図および平面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の外壁面設置用太陽熱集熱器の構成部品を示す断面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の設置例を示す断面図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の他の設置例を示す断面図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図および平面図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の外壁面設置用太陽熱集熱器の構成部品を示す断面図である。
【図7】この発明の第3実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図8】この発明の第3実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の製造装置を示す断面図である。
【図9】この発明の第4の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図10】この発明の第5の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図11】この発明の第6の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図12】この発明の第7の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図13】この発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図14】この発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの設置例を示す略線図である。
【図15】この発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの設置例を示す略線図である。
【図16】この発明の第9の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおいて用いられる貯湯タンクを示す略線図である。
【図17】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図18】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図19】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図20】この発明の第10の実施の形態による太陽熱利用システムにおいて用いられるプレートおよび検知部を示す略線図である。
【図21】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける補助加熱部の入口における被加熱流体の温度変化を示す略線図である。
【図22】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける補助加熱部の出口における被加熱流体の温度変化を示す略線図である。
【図23】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの変形例に係る検知部を拡大して示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0038】
第1の実施の形態
図1AおよびBは、第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図1Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図1Aは図1BのA−A’線に沿っての断面図である。
図1AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、透明層1、空気層2、断熱層4、流体流路5および外筐6とからなる本体部10aと、断熱層4、流体流路5、外筐6および接続部であるジョイント11からなる端部10bと、断熱層4、流体流路5および外筐6からなる端部10cとを接合してなる全体として長尺の長方形の平面形状を有するパネル状に構成されている。透明層1の外周部はこの透明層1の太陽光入射部側の面に対して垂直に折れ曲がっており、この折れ曲がった部分が外筐6と一体になって、上記太陽光入射部が透明層1からなる筒型の中空形状を有する樹脂枠体21を構成している。流体流路5は外壁の少なくとも一部が集熱層3からなり、少なくとも一つの流路を有し、上記流路には流体を流すことができる。集熱層3は流体流路5の外壁のうち太陽光入射部側の外面の少なくとも一部に形成されている。樹脂枠体21の中空部には、流体流路5が、透明層1と流体流路5の外壁、好適には流体流路5の外壁を構成する集熱層3とにより囲まれた空間が空気層2を構成するように透明層1と対向して設けられ、断熱層4は樹脂枠体21の中空部の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に流体流路5の外壁の外面のうち、空気層2に接する面の反対側の面または空気層2に接する面以外のほぼ全てを覆う形で接して設けられている。外筐6は、断熱層4と、流体流路5とに接して設けられており、外筐6には流体流路5および断熱層4を設ける際の位置決めが容易となるような受け部が設けられている。流体流路5は断面形状が長方形に形成され、本体部10aと、端部10bと、10cとを接合することで流体流路5が繰り返し折れ曲がった引き回し形状を形成している。流体流路5の両端部は、端部10bにおける本体部10aと端部10bとの接合面と垂直な一方の外面に設けられており、流体流路5の両端部には外部流路との接続バルブであるジョイント11が設けられている。
外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aは、好適には、透明層1および外筐6からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された筒状の中空形状を有する樹脂枠体21の中空部に、流体流路5および断熱層4が挿入される形態で設けられ、流体流路5の外壁は金属である集熱層3で構成され、流体流路5は金属の押し出し成形によって形成され、断熱層4は固体の断熱材で構成されるが、この構成に限定されるものではなく、特に流体流路5の構成においては、例えば、流体流路5を各種の押し出しで成形した後に、流体流路5の外壁のうち透明層1と対向する外面全面に集熱層3を積層させて設けてもよいし、流体流路5の外壁を、集熱層3を含む複数種類の金属材料で構成し、異種金属材料の同時押し出しによって、流体流路5を成形してもよい。また、端部10bおよび10cは、断熱材で構成された中実形状の外筐6に空孔である流体流路5を設ける構成、中空形状の外筐6に断熱材を充填して断熱層4を形成し、外筐6内に断熱層4を介して流体流路5を設ける構成などが好適であるが、本体部10a、端部10bおよび10cの構成はこれらに限定されるものではない。
【0039】
外筐6の長手方向に垂直な方向の両端部には、外壁面設置用太陽熱集熱器10を相互に連結するための連結部7および8が設けられている。連結部7および8は外筐6と一体に形成されている。連結部7は外壁面設置用太陽熱集熱器10の面に平行であり、連結部8は連結部7に対して垂直に折れ曲がっている。外筐6の長手方向に垂直な方向の一端部の連結部8と他端部の連結部8とは連結部7に対して互いに逆方向に折り曲げられている。二つの外壁面設置用太陽熱集熱器10を相互に連結する場合には、一方の外壁面設置用太陽熱集熱器10の一端部の連結部7および8を他方の外壁面設置用太陽熱集熱器10の一端部の連結部7および8によって形成された空間9に挿入する。
【0040】
透明層1、集熱層3、断熱層4、流体流路5の外壁および外筐6の材料は既に挙げた材料の中から必要に応じて選ばれる。透明層1、空気層2、集熱層3、断熱層4、流体流路5および外筐6の形状や寸法などは必要に応じて選ばれる。
【0041】
透明層1、集熱層3、断熱層4、流体流路5の外壁および外筐6の材質の一例を挙げると、透明層1はポリカーボネート、集熱層3は酸化アルミニウム、断熱層4はフェノールフォーム、流体流路5の外壁はアルミニウム合金、外筐6はポリ塩化ビニル樹脂である。また、集熱層3の表面は黒色アルマイト処理が施されている。また、流体流路5を流れる流体は不凍液である。また、外壁面設置用太陽熱集熱器10の寸法は、外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置面に垂直な方向の長さ(以下厚さ方向長さ)が15〜30mm、外壁面設置用太陽熱集熱器10の長手方向に垂直な方向の幅(以下幅方向長さ)が50〜250mm、透明層1の厚さ方向長さが1〜5mm、透明層1の幅方向長さが30〜200mm、透明層1の垂直に折れ曲がり部から伸びる厚さ方向長さが2〜8mm、空気層2の厚さ方向長さが2〜6mm、空気層2の幅方向長さが26〜198mm、流体流路5の厚さ方向長さが5〜20mm、流体流路5の幅方向長さが26〜198mm、流体流路5の外壁の厚さ方向長さが1〜4mm、断熱層4の厚さ方向長さが1〜5mm、断熱層4の幅方向長さが26〜198mm、連結部7の厚さ方向長さが1〜5mm、連結部7の幅方向長さが10〜30mm、連結部8の厚さ方向長さが2〜10mm、連結部8の幅方向長さが1〜5mmの範囲内であることが好適であって、外壁面設置用太陽熱集熱器10の寸法の一例を示すと、外壁面設置用太陽熱集熱器10の厚さ方向長さが20mm、外壁面設置用太陽熱集熱器10の幅方向長さが180mm、透明層1の厚さ方向長さが2mm、透明層1の幅方向長さが150mm、透明層1の垂直に折れ曲がり部から伸びる厚さ方向長さが2mm、空気層2の厚さ方向長さが3mm、空気層2の幅方向長さが146mm、流体流路5の厚さ方向長さが10mm、流体流路5の幅方向長さが145.6mm、流体流路5の外壁の厚さが1mm、流体流路5を構成する4つの流体流路のうちのひとつの流体流路の厚さ方向長さが8mm、上記一つの流体流路の幅方向長さが34.3mm、断熱層4の厚さ方向長さが3mm、断熱層4の幅方向長さが146mm、連結部7の厚さ方向長さが2mm、連結部7の幅方向長さが15mm、連結部8の厚さ方向長さが3mm、連結部8の幅方向長さが2mmである。
【0042】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10の動作について説明する。
透明層1を透過した太陽光は、空気層2を介して集熱層3に入射して熱に変換され、集熱される。集熱された熱の一部は流体流路5の外壁を経て流体流路5の流路内を流れる流体に伝熱され、流体が加熱される。断熱層4に蓄熱材が充填されている場合は、集熱層3に集熱され流体流路5の外壁を経て伝熱した熱の一部は断熱層4に蓄熱される。こうして加熱された流体流路5の流路内の流体は、外壁面設置用太陽熱集熱器10の外部に接続されたポンプなどで輸送され、外部機器などに利用される。
【0043】
図2A、BおよびCは、外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成部品を示す断面図である。
外壁面設置用太陽熱集熱器10は従来公知の技術によって製造することができるが、各種の押し出し成形を組み合わせて製造すると高い生産性で低コストで製造することができる。具体的には、外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aは、図2Aに示すような太陽光入射部が透明層1からなる筒状の中空形状を有する樹脂枠体21と、図2Bに示すような断面を有し、外壁の少なくとも一部が集熱層3で構成される流体流路5と、図2Cに示すような固体の断熱材からなる平板状の断熱層4とをそれぞれ別個に成形製造し、その後に透明層1と集熱層3とを空気層2を介して対向する形態で樹脂枠体21の中空部22内に挿入し、必要に応じて固定し、中空部22内における流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層4を挿入し、必要に応じて固定し、組み合わせて製造されるが、製造方法はこれに限定されるものではなく、断熱層を中空部22内に挿入し、必要に応じて固定した後に流体流路5を中空部22内に挿入し、必要に応じて固定してもよいし、流体流路5の外壁の外面のうち一方の主面に断熱層4を接合し一体の接合体として構成し、上記接合体の断熱層4が接合されている面と反対側の面が太陽光入射部側となるように上記接合体を中空部22内に挿入し、必要に応じて固定してもよい。また、流体流路5を中空部22内に挿入し、樹脂枠体21と流体流路5の太陽光入射部側と反対側の面とで形成された空気層を断熱層4としてもよい。
【0044】
樹脂枠体21は、透明層1と筐体6と連結部7および8とを異形押し出し成形法による同時押し出し(共押し出し)成形などで一体成形して構成してもよいし、透明層1と、筐体6とを異形押し出し成形法による同時押し出し成形などで一体成形し、その後に別個に成形した連結部7および8を接合して構成してもよいし、透明層1と筐体6と、連結部7および8とをそれぞれを別個に樹脂押し出し成形などで成形し、その後、接合して構成してもよいし、これらの製造方法を組み合わせてもよい。
一方、流体流路5は押し出し成形などによって製造され、好適には、流体流路5の外壁を金属材料で構成し、金属の押し出しによる成形によって製造される。流体流路5の外壁を構成する金属材料は、流体流路5の外壁のうち集熱層3で構成しない部分は、上記の流体流路を構成する金属材料として挙げたものから適宜選択することができ、流体流路5の外壁のうち集熱層3で構成する部分は、上記の集熱層を構成する金属材料として挙げたものから適宜選択することができるが、成形の容易さから、流体流路5の外壁を全て金属の単一部材で構成することが好適であって、より好適には、金属材料である集熱層3で流体流路5の外壁が構成され、この場合、集熱層3は、具体的にはアルミニウム合金が選ばれる。
流体流路5の成形は、金属押し出しによる成形のなかでも、直接押し出し成形法による温間押し出し成形が好適であって、特に、使用する金属をアルミニウム合金とする場合にあっては、具体的には、アルミニウム合金の円柱ビレットを500℃に加熱した後に、ポートホールダイス(ホローダイス)が設けられた押し出し成形機のコンテナに挿入し、プレス機によって押し出されることで、ポートホールダイスの口金で図2Bに示すような断面形状のアルミニウム合金部材である流体流路5に成形されるが、成形される流体流路5の形状はこれに限定されず、流体流路5の外壁の一部が開口した形状であってもよい。また、流体流路5の成形方法も、上述されたものには限定されず、マンドレルを用いた打ち抜き法で成形してもよいが、流体流路5の製造方法は、これらの方法に限定されるものではなく、流体流路の外壁を構成する部材が全て樹脂である場合には樹脂の押し出し成形、流体流路の外壁を構成する部材が金属と樹脂などの複数種類である場合には、異種材料の異形押し出し法よる同時押し出しで成形され製造される。
【0045】
流体流路5を集熱層3で構成せずに、成形された流体流路5の外壁の外面に別の材料を積層させて集熱層3を形成する場合にあっては、上記において挙げた方法を、適宜選択または組み合わせることにより製造することができ、特に、流体流路5の外壁を金属材料で構成する場合においては、流体流路5の外壁の外面を酸化処理することによって熱吸収率の高い金属酸化皮膜を形成し集熱層とすることが好適であり、例えば、流体流路5をアルミニウム合金で図2Bに示すような断面形状に成形する場合においては、アルミニウム合金で構成された流体流路5の外壁の外面の少なくとも一部を、熱酸化装置などを用いて酸化することにより面上に5〜10μmの厚さの酸化アルミニウム皮膜を形成し、形成した酸化アルミニウム皮膜を集熱層3とすることが好適である。また、形成した酸化アルミニウム皮膜にアルマイト処理を施して、入射する太陽光の反射を抑え熱吸収率を向上させてもよいが、流体流路5の外壁面に別の材料を積層させて集熱層を形成す方法は、これらの方法に限定されるものではなく、流体流路5の外壁の外面に熱吸収率が0.3以上の材料をめっきしてもよい。
また、流体流路5本体の外壁の少なくとも一部を集熱層3で構成してもよく、上記において挙げた方法を適宜選択、組み合わせることで製造することができ、具体的には、流体流路5の外壁の一部を開口させた形態で成形し、流体流路5の開口部全体を塞ぐ形態で集熱層3を圧着、溶接などの方法を用いて接合して製造する方法、金属および/または樹脂の異種材料を用いた異形押し出しによる同時押し出しによって流体流路5と集熱層3を一体に成形製造する方法、流体流路5の外壁を全て集熱層3で構成する方法などが挙げられるが、流体流路5本体の外壁の少なくとも一部を集熱層3で構成する方法はこれに限定されない。
集熱層3は、上述した方法などを用いて流体流路5の外壁のすくなくとも一部を構成し、こうして成形された外壁の少なくとも一部が集熱層3からなる流体流路5は、樹脂枠体21の中空部22に、透明層1と集熱層3の少なくとも一部とを空気層2を介して対向した形態で挿入され、さらに、樹脂枠体21に挿入された流体流路5の集熱層3とは逆側の面がほぼ覆われる形態で、中空部22に断熱層4が挿入され、必要に応じて流体流路5および断熱層4を固定することで本体部10aを形成する。また、流体流路5および断熱層4を中空部22に挿入する際において、位置決めをするために樹脂枠体21に受け部を設けてもよい
また、端部10bおよび10cは予め射出成形機などで形成され、本体部10aの両端を端部10bおよび10cと接合することで、流体流路5が繰り返し折れ曲がった引き回し形状を形成し、外壁面設置用太陽熱集熱器10となる。
【0046】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置例について説明する。
図3はマンションの外壁12に複数の外壁面設置用太陽熱集熱器10を外壁面設置用太陽熱集熱器10の高さ方向に連結して設置する例を示す断面図である。各外壁面設置用太陽熱集熱器10は、外壁12にボルト14aで固定されたアングル13aと、外筐6の連結部7にボルト14cで取り付けられているアングル13bとをボルト14bで締結することにより外壁12に固定される。外壁面設置用太陽熱集熱器10同士は外筐6の連結部7、8を利用して相互に連結されるが、外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置はこれに限定されるものではなく、また、外壁に設置する方向は高さ方向に限られず、設置する方向は設置場所などによって適宜選択することができる。また、外壁は建築物の外周壁の他に、塀、屋根、住宅の土台ののり面、シャッターボックスの外面なども含むものとする。
【0047】
図4はマンションのベランダ15の下部壁面(スラブ壁面)16に外壁面設置用太陽熱集熱器10をベランダ下部壁面設置用太陽熱集熱器として設置する例を示す。下部壁面16は上面に手摺17が設置されているベランダ手摺下部壁面である。下部壁面16にはアングル18aがボルト19aによって固定されている。また、アングル18bがボルト19cによって外壁面設置用太陽熱集熱器10の連結部7に固定されている。アングル18a、18bがボルト19bによって固定されることで、下部壁面16に外壁面設置用太陽熱集熱器10が設置される。下部壁面16の上面には意匠パネル20が設置されている。この意匠パネル20は外筐6の連結部7、8と同様な形状を有する部分20a、20bを有し、これらの部分20a、20bが外筐6の連結部7、8と連結している。
【0048】
この第1の実施の形態によれば、長尺で薄型のパネル状の外壁面設置用太陽熱集熱器10を得ることができる。この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、樹脂枠体21を全て樹脂部材で構成し、少なくとも一部が集熱層3からなる流体流路5の外壁を金属部材で構成し、それぞれ別個に成形した後に組み合わせて製造したので、外壁面設置用太陽熱集熱器10の成形時における、成形材料の膨張係数の違いにより生じる歪を軽減するとともに、流体流路5の外壁を熱伝導率の高い金属で構成したので、集熱効率を向上させることができる。また、この外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置においては、建築物の壁面の限られた領域においても容易に設置可能であり、例えばマンションのベランダの下部壁面16に容易に設置が可能である。また、連結部7、8を利用することにより、外壁面設置用太陽熱集熱器10を容易に相互連結が可能である。また、ベランダ下部壁面16における意匠パネル20との取り合いも容易であるので、ベランダ15の下部壁面16に外壁面設置用太陽熱集熱器10を設置したとしても、ベランダ15の下部壁面16と一体をなす形で設置されるので、ベランダ15の下部壁面16の意匠性を損なうことがない。さらに、外筐6の連結部7、8の係合により外壁面設置用太陽熱集熱器10同士を連結することができるので、外壁面設置用太陽熱集熱器10が太陽熱により熱収縮してもひずみが生じるのを防止することができ、外壁面に対し安定した設置をすることができる。
【0049】
第2の実施の形態
図5AおよびBは、第2の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す。図5Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図5Aは図5BのB−B’線に沿っての断面図である。
図5AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10の本体部10aは、外筐6からなる樹脂枠体21と、外壁の少なくとも一部が集熱層3からなり、少なくとも一つの流路を有する流体流路5と、断熱層4とからなり、樹脂枠体21は太陽光入射部が開口している。透明層1は流体流路5の外壁の外面のうち、太陽熱入射部に対応する部分に接して設けられており、好適には、透明層1の上記太陽光入射部とは逆側の面の少なくとも一部が流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接して設けられており、より好適には、透明層1の上記太陽光入射部とは逆側の面の全てが流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接するように設けられる。透明層1は上記に挙げた透明材料の中から適宜選択され、その中でも断熱性能の高いものが好ましく、可視領域から遠赤外領域の光の透過率が高く、断熱性能が高いものがより好ましい。透明層1は、具体的には、透明断熱フィルム、透明断熱樹脂、透明断熱ガラスなどの薄い層で構成されるが、透明層1を構成する材料および形態はこれに限られるものではない。その他のことは第1の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0050】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10は従来公知の技術によって製造することができるが、各種の押し出し成形を組み合わせて製造すると高い生産性で製造することができる。具体的には、外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aは、図6Aに示すような太陽光入射部が開口した中空形状を有する樹脂枠体21と、図6Bに示すような少なくとも一つの流路を有し、外壁の少なくとも一部が集熱層3で構成され、上記流路内部には流体を流すことができる流体流路5とをそれぞれ別個に成形製造し、その後に上記太陽光入射部と集熱層3の少なくとも一部が対向するように流体流路5が樹脂枠体21の中空部22に挿入され、必要に応じて固定され、中空部22における流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層4が挿入され、必要に応じて固定され、上記太陽光入射部に対応する部分の流体流路5の外壁面に接して透明層1を設けることによって製造される。透明層1は、透明層1の中空部22側の面の少なくとも一部が、流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接するように設けることが好適であって、透明層1の中空部22側の全面が、流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接するように設けることがより好適である。透明層1を流体流路5の外壁面に接するように設ける方法は、従来公知の方法を適宜選択することができ、具体的には、接着、圧着、融着、蒸着、塗布などが挙げられるが、透明層1を流体流路5の外壁面に接するように設ける方法はこれらに限定されるものではない。また、成形の容易さから、流体流路5の外壁を全て金属の単一部材で構成することが好適であって、より好適には、金属材料である集熱層3で流体流路5の外壁が構成され、この場合、集熱層3は、具体的にはアルミニウム合金が選ばれる。
【0051】
この第2の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、透明層1を流体流路5の太陽熱入射部に対応する部分に接して設けたので、空気層2を設ける必要が無く、さらに透明層1を薄い透明断熱フィルムなどで構成したので、空気層2を設けた構成の外壁面設置用太陽熱集熱器10よりも薄型の外壁面設置用太陽熱集熱器10とすることができる。
【0052】
第3の実施の形態
図7AおよびBは、第3の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図7Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図7Aは図7BのB−B’線に沿っての断面図である。
図7AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aが、透明層1、空気層2、集熱層3、流体流路5および断熱層4を兼用する外筐6により構成され、集熱層3は空気層2を介して透明層1と対向して設けられている。透明層1の外周部はこの透明層1の太陽光入射部側の面に対して垂直に折れ曲がっており、この折れ曲がった部分が断熱層4を兼用する外筐6と一体になって筒型の中空形状を有する樹脂枠体21を構成している。樹脂枠体21の中空部22内の、透明層1と集熱層3とにより囲まれた空間が空気層2を構成している。断熱層4を兼用する外筐6は集熱層3の外表面のうち、空気層2に接する面と反対側の面のほぼ全てまたは空気層2に接する面の空気層2に接する面以外のほぼ全てを覆う形で接して設けられている。断熱層4を兼用する外筐6が空気層2に接する面と反対側の面のほぼ全てを覆う場合にあっては、樹脂枠体21は、透明層1の折れ曲がった部分が集熱層3を介して断熱層4を兼用する外筐6と一体となることで構成される。また、断熱層4および外筐6とはそれぞれ別々に構成しても良く、その場合、断熱層4は、集熱層3の外表面のうち、空気層2に接する面と反対側の面のほぼ全てまたは空気層2に接する面の空気層2に接する面以外のほぼ全てを覆う形で接して設けられ、外筐6は断熱層4の全体を覆う形態で設けられている。流体流路5は、樹脂枠体21の中空部22に、流体流路5の外壁の外面のうち空気層2に接する上記外壁の外面以外が樹脂枠体21と接する形態で一体となるように成形されて構成されており、樹脂枠体21と流体流路5の外壁とが全て樹脂からなり、異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されている構成が好ましい。樹脂枠体21と流体流路5の外壁とが全て樹脂からなる場合においては、樹脂枠体21は透明層1である透明樹脂と断熱層4を兼用する外筐6である断熱性樹脂とによって構成され、流体流路5の外壁は集熱層3である伝熱性樹脂および/または断熱層4を兼用する外筐6である断熱性樹脂によって構成される。流体流路5は、外壁の少なくとも一部が集熱層3により構成される。流体流路5は、具体的には、例えば、集熱層3あるいは集熱層3と断熱層4を兼用する外筐6とに跨る領域に貫通孔を設けて構成してもよいし、上記貫通孔に管を挿入することにより形成してもよい。管の材質は特に使用する流体に対して耐腐食性を持ち、耐熱性が高く、温度変化に安定で熱伝導性が高いものであればどのようなものであってもよく、管は耐圧性が高く圧力損失の低い形態で構成されることが好ましく、典型的には、アルミニウム合金管、銅合金管、ステンレス鋼管などの金属管が使用されるが、管はこれらに限定されるものではなく、樹脂製の管であっても、複合材料管であってもよく、使用する流体によって適宜選択される。また、断熱層4および外筐6とを別々に構成する場合にあっては、流体流路5は、集熱層3あるいは断熱層4が固体の断熱材で充填されていれば、集熱層3と断熱層4に跨る領域に貫通孔を設けて構成してもよいし、上記貫通孔に管を挿入することにより構成してもよいが、流体流路の形態はこれらに限定されるものではない。
【0053】
透明層1、集熱層3、断熱層4、流体流路5の外壁および外筐6の材質の一例を挙げると、透明層1はポリカーボネート、集熱層3は不飽和ポリエステル系複合材、断熱層4を兼用する外筐はポリウレタン樹脂が挙げられる。また、また、流体流路5を流れる流体は不凍液である。
【0054】
また、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、樹脂枠体21が透明層1を有しない構成であってもよく、その場合、外壁面設置用太陽熱集熱器10は、太陽光入射部が開口した中空の樹脂枠体21と、樹脂枠体21の中空部22に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層3からなる一つまたは複数の流体流路5と、樹脂枠体21の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層4と、上記太陽光入射部に対応する部分の流体流路5に接して設けられた透明層1とを有し、集熱層3の少なくとも一部は透明層1と対向しており、樹脂枠体21および流体流路5の外壁は一体成形されて構成され、好適には、異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されて構成される。また、樹脂枠体21は樹脂で構成されない枠体であってもよい。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0055】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10は従来公知の技術によって製造することができるが、樹脂のみを材料として用いた異形押し出し成形法によって一体成形し製造すると高い生産性で製造することができる。特に複数台の単軸押し出し成形機からなる多層異形押し出し成形装置を用いた、多層異形押し出し成形法による異種の樹脂の同時押し出し(共押し出し)によって一体成形することが好適である。具体的には、例えば、図8に示すような単軸スクリュー押し出し成形機33a、33bおよび33cを備えた多層異形押し出し成形装置30を用いて、多層異形押し出し成形装置30のダイス31にセットし、これと同時に透明層1を構成する透明樹脂32a、集熱層3を構成する伝熱性樹脂32bおよび断熱層4を兼用する外筐6を構成する断熱性樹脂32cを、それぞれ単軸スクリュー押し出し成形機33a、33bおよび33cによって、矢印の方向に押し出し成形をする。透明樹脂32a、伝熱性樹脂32bおよび断熱性樹脂32cは予めヒータなどで加熱されており、スクリュー34a、34bおよび34cで押し出され、ダイス31の口金にて図7Aに示すような断面形状に成形される。成形され押し出された樹脂32a、32bおよび32cは冷却され硬化し、硬化した異形樹脂部材は、裁断機によって所望の寸法に裁断され本体部を形成する。
また、この外壁面設置用太陽熱集熱器10の樹脂枠体21が透明層1を有しない構成である場合にあっては、太陽光入射部が開口した中空の樹脂枠体21と、樹脂枠体21の中空部22に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層3からなる一つまたは複数の流体流路5と、樹脂枠体21の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層4とを有し、集熱層3の少なくとも一部は透明層1と対向しており、樹脂枠体21および流体流路5の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されており、上記太陽光入射部に対応する部分の流体流路5に接して透明層1を設けるようにして製造される。樹脂枠体21および流体流路5の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形する方法は上記に挙げた方法を適宜選択することができるが、上述した多層異形押し出し成形法による異種の樹脂の同時押し出しによって一体成形することが好適である。また、流体流路に透明層1を設ける方法は、上記に挙げた方法を適宜選択することができるが、流体流路5の上記太陽光入射部側の面に透明断熱フィルムなどを貼り付けて構成する方法が好適である。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10の製造方法と同様である。
【0056】
この第3の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、透明層1と、集熱層3と、断熱層4を兼用する外筐6とを全て樹脂材料で構成し、多層異形押し出し成形法による異種の樹脂の同時押し出し成形で透明層1と、集熱層3と、断熱層4を兼用する外筐6とを一体に同時成形したので、樹脂枠体21に集熱層3を挿入し接合する工程を省略できるなど、外壁面設置用太陽熱集熱器10の製造工程を最小限とすることができ、集熱層3を別個に形成する必要が無いので、押し出し成形装置一台で外壁面設置用太陽熱集熱器10を製造することができる。
【0057】
第4の実施の形態
図9AおよびBは、第4の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図9Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図9Aは図9BのC−C’線に沿っての断面図である。
図9AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、透明層1、空気層2、集熱層3、断熱層4、流体流路5および外筐6で構成され、外壁面設置用太陽熱集熱器10の形状を少なくとも一箇所に折れ曲り部を有する折曲形状として構成したものである。具体的には、断面形状が長方形の外壁面設置用太陽熱集熱器10の樹脂枠体21、断熱層4および集熱層3を、外壁面設置用太陽熱集熱器10の断面長手方向の中心において「くの字」状に折り曲げた形状を有しており、流体流路5は折れ曲り形状に沿って断面形状が台形と長方形とに形成される。また、この第4の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10の形状は、折曲形状に限られず、設置する外壁面の形状などによって適宜選択可能であって、折曲形状の他には、例えば、屈曲形状、弓形形状、波型形状などが挙げられ、これらの形状を互いに組み合わせたもの、直線形状にこれらの形状を組み合わせたものであってもよく、設置場所に応じて適宜選ばれる。また、この第4の実施の形態における外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成は、第1〜第3の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成を適宜選択して用いることができる。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0058】
この第4の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10によれば、第1の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様な利点に加えて、外壁面設置用太陽熱集熱器10の形状を、少なくとも一箇所の折れ曲り部を有する折曲形状としたので、外壁面設置用太陽熱集熱器10を外壁面の角部などに沿って密着した安全な設置が可能である。また、外壁面設置用太陽熱集熱器10は薄型で簡易な構成であるので設置面の形状に応じて容易に形状を変更可能であり、あらゆる形状の設置面に対して密着して設置が可能なので、設置面が曲面を有する外壁面、凹凸形状を有する外壁面などであっても、設置面に対して最適に設計することで高い集熱効率を発揮することができる外壁面設置用太陽熱集熱器10を得ることができる。
【0059】
第5の実施の形態
図10A、BおよびCは、第5の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図10A、BおよびCは外壁面設置用太陽熱集熱器10の断面図である。
外壁面設置用太陽熱集熱器10を垂直面である外壁面に設置する場合、図10AおよびBに示すように、太陽高度は年間を通して変化するので、外壁面設置用太陽熱集熱器10の透明層1への太陽光の入射角は、例えば、東京(北緯35°)においては冬季では図10Bに示すとおり南中で32°であるのに対し、夏季においては図10Aに示すとおり南中で78°となり入射角が大きいため、全反射する太陽光が相対的に増加することで集熱層3に到達する太陽光は減少する。
【0060】
そこで、この第5の実施の形態においては、透明層1と集熱層3との間に空気層2を有する構成の外壁面設置用太陽熱集熱器10において、透明層1の空気層2に接する面に、図10Cの破線部拡大図に示すように、太陽光を散乱させる凹凸1aを設ける。こうすることで、透明層1への太陽光の入射角が大きくても、透明層1の空気層2に接する面で散乱されることにより、集熱層3に到達する太陽光の減少を低く抑えることができる。透明層1の空気層2に接する面に太陽光を偏光させる機能を備えさせ、透明層1の空気層2と接する面と逆側の面の表面にコーティング材をコーティングすることで低反射・高透過性を得ることもでき、これらを組み合わせてもよい。また、透明層1と集熱層3との間に空気層2を有さない構成の外壁面設置用太陽熱集熱器10においては、透明層1を屈折率の異なる透明材料を積層させて構成し、透明層1の積層界面に、太陽光を散乱させる凹凸1aを設けることで、上述したものと同様の効果を得ることができる。また、この第5の実施の形態における外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成は、第1〜第4の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成を適宜選択して用いることができる。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0061】
この第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、例えば、透明層1に対する太陽光の入射角が大きい夏季の南中時においても、太陽熱を十分に利用することができるという利点を得ることができる。
【0062】
第6の実施の形態
図11A、BおよびCは第6の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図11Aは外壁面設置用太陽熱集熱器10の断面図、図11Bは図11A中の円周で囲った部分10dの要部拡大図、図11Cは図11Aの円周で囲った部分10eの要部拡大図である。
この第6の実施の形態においては、第1〜第4の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10において、透明層1の空気層2に接する面の少なくとも一部に太陽光を散乱させる凸部1bと、流体流路5の外壁の内面のうち少なくとも一部に凹凸を設け、凹凸面3aとしたものである。ここで、流体流路5の外壁の内面とは、流体流路5の外壁が形成する面のうち、流路内を流れる流体に直接接触可能である面のことをいう。
図11Aに示すように、透明層1の空気層2に接する面に太陽光を散乱させる凸部1bが設けられ、さらに流体流路5の外壁の内面のうち、長手方向の面にそれぞれウィック(蛇腹)状の凹凸面3aが設けられている。また、透明層1の空気層2に接する面に太陽光を散乱させる凸部1bのみを設ける構成、流体流路5の外壁の内面にウィック状の凹凸面3aを設けるのみの構成であってもよいが、透明層1および流体流路5の外壁の内面に凹凸を設ける構成はこれらに限定されるものではない。
また、図11Bに示すように、透明層1の空気層2に接する面に少なくとも1つ設けられた凸部1bは、底面が半円の柱形状であって、好適には、透明層1の断面の長手方向の中心部から等間隔で複数の凸部1bが振り分けられる形態で設けられ、特に、同一半径の凸部1bが透明層1に複数設けられる形態が好適である。透明層1に設けられる凸部1bの寸法の一例を挙げると、設置面に垂直な方向の長さ(厚さ)が2mm、長手方向に垂直な方向の幅が150mmである透明層1の空気層2に接する面に、底面が半径1mmの半円である柱形状の凸部1bを設ける場合を考えると、凸部1bは、透明層1の長手方向の中心である、透明層1の長手方向端部から中心に向かって75mmの位置に、凸面1bの底面である半円の中心が来るように設けられ、そこから透明層1の断面の長手方向両端部に向かって、隣り合う凸部1bの底面の中心の距離が5mmの等間隔でそれぞれ平行に14個の凸部1bが設けられ、透明層1の空気層2に接する面には全部で29個の凸部1bが設けられるが、これに限定されるものではなく
また、図11Cに示すように、流体流路5の外壁の内面のうち長手方向の面の形状がウィック状の凹凸面3aとなっている。凹凸面3aは伝熱表面積が大きく、流体の流れ損失の小さな形状であれば、基本的にはどのような形状であってもよく、上記に挙げた形状を適宜選択することができる。その他のことは第5の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0063】
この第6の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点に加えて、流体流路5の外壁の内面のうち少なくとも一部に凹凸面を設け、凹凸面3aとしたので、流体流路5の外壁の内面の表面積が拡大することで流れる流体への伝熱面積が拡大し、流体流路5の外壁を構成する集熱層3または集熱層3から流体流路5の外壁を経て流体流路5の内部を流れる流体への伝熱効率を向上させることができる。
【0064】
第7の実施の形態
図12AおよびBは、第7の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図12Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図12Aは図12BのE−E’線に沿っての断面図である。
図12AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、流体流路5の両端部に接続されているジョイント11が外壁面設置用太陽熱集熱器10の端部10bにおける本体部10aと端部10bとの接合面と平行な外面に設けられていることが、第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と異なる。また、この第7の実施の形態における外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成は、第1〜第6の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成を適宜選択して用いることができる。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
この第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、ジョイント11を端部10bにおける本体部10aと端部10bとの接合面と平行な外面に設けたので、外壁面設置用太陽熱集熱器10を並列に相互連結して外壁面に設置する際に、ジョイント11に連結する配管の取り回しを簡易にすることができる。
【0065】
第8の実施の形態
図13はこの発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムを示す。この外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムは、第1〜第7の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10と貯湯タンクとを組み合わせた外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムである。
図13に示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、外壁面設置用太陽熱集熱器10に設けられた二つのジョイントにそれぞれ配管42が接続されている。これらの配管42には温度センサー41が取り付けられており、配管42を流れる不凍液の温度を測定することができるようになっている。一方の配管42は循環ポンプ43の吐出口と接続されている。循環ポンプ43は、太陽光パネル43aで発電される電力によって駆動することができ、あるいは太陽光パネル43aの出力に応じて制御することができるようになっている。他方の配管42は熱交換器である主加熱部44の入口と接続されている。主加熱部44の出口とポンプ43の吸込口とは配管42によって接続されている。配管42にはリザーブタンク45と接続され、このリザーブタンク45から必要に応じて不凍液を補充することができるようになっている。配管42は不凍液が流れる流体配管である。
【0066】
主加熱部44は貯湯タンク46に貯蔵された水道水を加熱可能な形態で内部に設置されている。貯湯タンク46は、軽量化のために、好適には樹脂により形成されるが、これに限定されるものではない。貯湯タンク46の上部の出口には配管47aが接続されている。貯湯タンク46の側面の上部、中央部、下部には温度センサー41が取り付けられている。配管47aにも温度センサー41が取り付けられている。配管47aには電動三方弁からなる調整弁48が設けられ、その下流には補助加熱装置49が配管47aによって接続されている。調整弁48は制御装置48aによって制御することができるようになっている。調整弁48は、バイパス配管47bによって、貯湯タンク46の底部の入口に接続された給水配管47cと接続されている。給水配管47cにも温度センサー41が取り付けられている。補助加熱装置49で加熱された水は出湯配管47dによって外部に供給される。出湯配管47dにも温度センサー41が取り付けられている。主加熱部44、貯湯タンク46、補助加熱装置49などによって給湯器50が構成される。
【0067】
この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの動作について説明する。
循環ポンプ43から吐出された不凍液は、配管42を通り外壁面設置用太陽熱集熱器10に入り、外壁面設置用太陽熱集熱器10で熱を吸収し加熱された不凍液は、配管42を介して熱交換器である主加熱部44に供給される。この不凍液は、貯湯タンク46内の水道水と熱交換を行って熱を放出した後に循環ポンプ43に吸入され、再び循環ポンプ43から吐出されることにより強制的に循環される。
【0068】
貯湯タンク46には底部に接続された給水配管47cにより外部から水道水が給水され、上部に接続された出湯配管47aによって調整弁48および補助加熱装置49を介して給湯配管47dによって外部に給湯される。
【0069】
貯湯タンク46に貯蔵される温水の温度が所望の温度であれば、出湯配管47aを通り調整弁48および補助加熱装置49を介しそのまま外部に供給されて使用される。貯湯タンク46に貯蔵される温水の温度が所望の温度よりも低い場合は主加熱部44により貯湯タンク46に貯蔵される温水を更に加熱することで、もしくは所望の分量の温水を貯湯タンク46から出湯配管47aを通り調整弁48を介して補助加熱装置49に送り、補助加熱装置49で所望の温度となるまで加熱してから外部に供給される。貯湯タンク46に貯蔵される湯の温度が所望の温度よりも高い場合は、給水配管47cに供給される水道水を貯湯タンク46の底部から内部に導入して貯湯タンク46の内部の温水と混合することにより温度調整が行われ、もしくは所望の分量の温水を貯湯タンク46から出湯配管47aを通り調整弁48を介して補助加熱装置49に送り、温水が調整弁48を通る際に給水配管47cに供給される水道水をバイパス配管47bを介して混合することにより温度調整が行われ、湯の温度が所望の温度とされる。
【0070】
また、調整弁48の制御により、貯湯タンク46から供給される温水と、給水配管47cから供給される水道水とを混合することで、補助加熱装置49の流入口の温度制御を行うことができる。具体的には、温度センサー41と制御装置48aとにより電動三方弁である調整弁48を制御して補助加熱装置49の給水口温度を制御することにより、補助加熱装置49の給水口温度が急激に変動することによる出湯温度のハンチング現象や、最小加熱による温度上昇が比較的大きいことから起きる給水温度が給湯温度に近い場合における給湯温度の設定値越えなどの発生を防止することが可能となる。
【0071】
図14および図15は、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムをマンションなどの集合住宅に設置した一例を示す。
図14に示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおいては、長尺で薄型のパネル状の外壁面設置用太陽熱集熱器10が、手摺52が設置されているベランダ51の下部壁面(スラブ壁面)53および外壁面54に設置されている。
【0072】
図15は図14のF−F’線に沿っての断面図(拡大図)である
図15に示すように、外壁面設置用太陽熱集熱器10がベランダ51における手摺52の下部壁面53に設置され、主加熱部44、貯湯タンク46、補助加熱装置49などによって構成される給湯器50はベランダ51に設置されている。配管42の一部はベランダ51内部に埋設される形で設置されている。
また、外壁面54に設置されている外壁面設置用太陽熱集熱器10は、垂直方向を長手方向として横方向に複数連結され、図3に示すような設置形態で外壁面54に設置されている。外壁面設置用太陽熱集熱器10の長さおよび連結する数は設置する外壁の形態、面積などを勘案して適宜決定される。
【0073】
この第8の実施の形態によれば、マンションのベランダなどに容易に設置可能な外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムを実現することができる。この場合、外壁面設置用太陽熱集熱器10をベランダ51の下部壁面53に設置することにより、ベランダ51の手摺52の一部もしくは全体が太陽熱集熱器によって占有されてしまうということがなく、日常生活におけるベランダ51の手摺52の利用に支障が生じることがない。しかも、外壁面設置用太陽熱集熱器10は長尺で薄型のパネル状に構成され、ベランダ下部壁面のような外壁の限られた領域の外壁面設置に特化されているので、従来の太陽熱集熱器をベランダ下部壁面に設置する場合に比べて安全に設置が可能で意匠性も良い。同様に、他の限られた領域の外壁面においても、外壁面設置用太陽熱集熱器10の長さを自由に設定可能なので、設置する外壁面の領域に合わせて適宜長さを決定し、並列に連結することで従来の太陽熱集熱器を外壁面に設置する場合に比べて安全に設置が可能で意匠性も良い。また、貯湯タンク46を軽量の樹脂タンクにより構成することにより、従来のステンレスタンクに比べて大幅な軽量化が可能となるため、ベランダ51に設置する際の作業が容易となり、一般的な集合住宅のベランダに容易に設置することが可能である。
【0074】
第9の実施の形態
この発明の第9の実施の形態においては、第8の実施の形態における貯湯タンク46として、図16に示すものを用いる。
図11に示すように、この貯湯タンク46は、壁が、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる内層46aと、ポリアミド樹脂からなり内層46aの外方に設けられる外層46bと、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリアミド樹脂を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、内層46aと外層46bとの間に位置する中間層46cとを有する多層構造体から構成される。こうすることで、貯湯タンク46の耐熱性および耐圧の向上を図ることができるだけでなく、壁が樹脂により構成されているため貯湯タンク46の軽量化を図ることができる。好適には、この貯湯タンク46の壁の厚さは7mm以上であり、内層46a、中間層46c、外層46bの厚さ比率は、内層:中間層:外層=4:1:5〜8:1:1の範囲であり、最も好適には内層:中間層:外層=6:1:3である。例えば、壁の厚さが7mm、内層46a、中間層46c、外層46bの厚さ比率が6:1:3である時、87℃での耐圧は1.0MPaとなり、一般水道圧0.5MPaに対し安全係数2を確保することができる。
【0075】
この第9の実施の形態によれば、第8の実施の形態と同様な利点に加えて、貯湯タンク46の耐熱化、高耐圧化および軽量化を図ることができ、外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システム全体の軽量化を図ることができるという利点を得ることができる。
【0076】
第10の実施の形態
図17はこの発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの全体構成、図18はこの外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの温度調整システムを含む要部を示す。この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、第1〜第8の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器と貯湯タンクとを組み合わせ、さらに外部に供給する湯の温度調整システムを設けた外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムである。
図17および図18に示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、外壁面設置用太陽熱集熱器10に設けられた二つのジョイントにそれぞれ配管62が接続されている。これらの配管62には温度センサー61が取り付けられており、配管62を流れる不凍液の温度を測定することができるようになっている。一方の配管62は循環ポンプ63の吐出口と接続されている。循環ポンプ63は、太陽光パネル63aで発電される電力によって駆動することができ、あるいは太陽光パネル63aの出力に応じて制御することができるようになっている。他方の配管62は熱交換器である主加熱部140の入口と接続されている。主加熱部140の出口と循環ポンプ63の吸込口とは配管62によって接続されている。配管62はリザーブタンク65と接続され、このリザーブタンク65から必要に応じて不凍液を補充することができるようになっている。配管62は不凍液が流れる流体配管である。この外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムは、温度調整システムを有する給湯器110を有する。
【0077】
温度調整システムを有する給湯器110(以下「温度調整システム110」とする)の詳細を図18〜図20を参照して説明する。
供給部120から供給された被加熱流体fは、貯湯タンク130の下層側135(図中のタンク下側)に位置する入口131から貯湯タンク130内部に流れ込む。貯湯タンク130内部に設けられた主加熱部140は、被加熱流体f1を加熱する。加熱された被加熱流体f1は、貯湯タンク130の上層側137(図中のタンク上側)に位置する出口133から排出させ、第1ライン171を介して補助加熱装置150に流し込む。この第10の実施の形態において、貯湯タンク130の下層側135とは、貯湯タンク130内に供給された被加熱流体f1が滞留し始める貯湯タンク130の下部側であり、貯湯タンク130の上層側137とは、貯湯タンク130内に供給された被加熱流体f1が排出される出口133が設けられた貯湯タンク130の上部側のことである。
【0078】
第1ライン171には、流体用の配管を利用している。配管には、流体の導流に一般的に利用される鋼管等を適宜選択することができる。第1ライン171上における第1調整弁180と第2調整弁190との間には、被加熱流体f3の逆流を防止するための逆止弁125を設けている。
【0079】
主加熱部140は、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1を加熱して温度を制御する。主加熱部140には、流体を加熱するために用いられるヒータを利用することが可能である。ヒータには、例えば、ヒートポンプ式熱交換システムや、ソーラー式熱交換システム、排熱利用式システム等に組み込まれた循環式の熱交換器等を利用することが可能である。貯湯タンク130内に供給された被加熱流体f1は、主加熱部140によって90℃程度まで加熱している。貯湯タンク130内が満水状態になった場合には、設定された90℃を維持するように保温を行う。主加熱部140が調整する被加熱流体f1の温度は、使用用途に応じて適宜変更することが可能である。
【0080】
補助加熱装置150は、第1ライン171を介して貯湯タンク130から導かれる被加熱流体f4を、ユーザーが望む設定温度に加温調整して提供する。補助加熱装置150は、第1ライン171から導かれた被加熱流体f4の温度を入口温度として検知する。第1ライン171の途上に配置された第1調整弁180、および所定の条件で作動する第2調整弁190によって混合調整された被加熱流体f4が補助加熱装置150の入口151へ導かれる。補助加熱装置150の入口151で検知された被加熱流体f4の温度が設定温度よりも低い場合には、設定温度まで加温調整する、加温調整させた被加熱流体f5は、補助加熱装置150の出口153から排出させて、ユーザーに提供する。補助加熱装置150には、例えば、ユーザーによって直接温度設定が可能な公知の給湯器用ヒータ等を利用することが可能である。
【0081】
供給部120は、温度調整システム110内の貯湯タンク130、第1調整弁180、および第2調整弁190のそれぞれに被加熱流体fを供給する。被加熱流体fには、例えば、常温の上水を利用することが可能である。被加熱流体fの種類、および共有時の温度等は、温度調整システム110の使用目的に応じて適宜変更することが可能であり、特に限定されるものではない。
【0082】
供給部120から貯湯タンク130への被加熱流体fの供給には、タンク用ライン174を利用する。タンク用ライン174は、供給部120から延びて貯湯タンク130の下端部に接続されている。このため、供給部120から貯湯タンク130へ被加熱流体fを供給すると、貯湯タンク130内の下層側135から上層側137へ被加熱流体fが徐々に満たされる。
【0083】
供給部120から第1調整弁180への被加熱流体fの供給には、タンク用ライン174から分岐する第2ライン172を利用する。供給部120から供給された被加熱流体fは、第2ライン172を介して、第1ライン171の途上に設けられた第1調整弁180へ導かれる。第1調整弁180へ供給する被加熱流体fの流量は、第1制御部185によって制御する。
【0084】
供給部120から第2調整弁190への被加熱流体fの供給には、第2ライン172から分岐する第3ライン173を利用する。供給部120から供給された被加熱流体fは、第3ライン173を介して第1調整弁180と補助加熱装置150との間に設けられた第2調整弁190へ導かれる。第2調整弁190へ供給する被加熱流体fの流量は、第2制御部195によって制御する。
【0085】
第2ライン172、第3ライン173、およびタンク用ライン174には、流体用の配管を利用している。配管には、流体の導流用に一般的に利用される鋼管等を適宜選択することが可能である。
【0086】
供給部120は、ユーザーによる貯湯タンク130内の被加熱流体f1の使用に伴って、使用量に応じた量の被加熱流体fを貯湯タンク130に随時供給する。主加熱部140によって90℃まで加熱した被加熱流体f1を単位時間当たりに大量に使用すると、貯湯タンク130内には90℃の被加熱流体f1と供給部120から供給された比較的低温の被加熱流体fとによって温度境界bが形成される。この温度境界bは、下層側135から供給された被加熱流体fによって形成される低温域a1と、低温域a1よりも上層側137に位置する加熱された90℃の被加熱流体f1によって形成される高温域a2とを区分けするものである。単位時間当たりにおける被加熱流体の大量使用が続くと、高温域a2の被加熱流体の残量が低下し、低温域a1の被加熱流体の量が増加する。温度境界bは、下層側135から徐々に上層側137へ遷移する。使用がさらに続くと、温度境界bが貯湯タンク130の出口まで到達し、貯湯タンク130から排出される被加熱流体f2の温度が急激に低下する湯切れが発生する。湯切れ状態になった場合においても、主加熱部140による加熱は継続して行われる。単位時間当たりにおける被加熱流体f1の使用量が減少すると、貯湯タンク130内の被加熱流体f1の加熱が進み、タンク内には90℃の被加熱流体が再び満たされることになる。
【0087】
貯湯タンク130の外壁139には、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1の温度を検知する検知部160を設置している(図20を参照)。検知部160には、ガスを封入した感温筒を利用している。検知部160は、貯湯タンク130内の被加熱流体f1から貯湯タンク130の外壁139に伝わった熱量を取得する。この熱量に基づいて被加熱流体f1の温度境界bを検知する。検知部160は、温度境界bを検知すると、封入したガスを凝縮させて液化させる。この液体は、キャピラリチューブ163を介して第2制御部195へと圧送される。第2制御部195は、検知部160が温度境界bを検知したことをトリガーとして、第2調整弁190の作動を開始する。検知部160が検知する温度境界の閾値や、温度境界を形成する低温域の温度、および高温域の温度等は、特に限定されるものではなく、任意の値に設定することが可能である。また、検知部160として利用される感温筒の外形形状や、内部に封入されるガスの種類等は、特に限定されるものではなく公知のものを適宜利用することが可能である。
【0088】
第1ライン171の途上に設けられた第1調整弁180には、貯湯タンク130の側から見て上流側に位置する第1口181と、供給部120から供給された被加熱流体fを受け入れる第2口182と、貯湯タンク130の側から見て第1口181よりも下流側に位置する第3口183とを備えた三方弁を利用している。第1調整弁180は、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2と、供給部120から供給された被加熱流体fとを混合調整して、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2を所定の第1温度に調整する。第1温度に調整した被加熱流体f3は第3口183から排出させて、第1ライン171に流し込む。
【0089】
一般的に、家庭の浴槽等において湯水を使用する場合には、ユーザーは40〜43℃程度に温度調整して使用する。上記の温度調整システム110にあっては、貯湯タンク130において90℃程度まで被加熱流体f1を加熱させて保持した後、第1調整弁180によって35℃程度まで低下させる。最終的に、補助加熱部150を使用して設定温度である40〜43℃程度まで加温調整する。この40〜43℃に加温調整した被加熱流体f5をユーザーに提供する。貯湯タンク130から排出した被加熱流体f2の温度を一旦第1温度まで低下させることによって、補助加熱装置150による設定温度への加温調整を行うことが可能になる。このため、第1調整弁180によって調整される第1温度は、供給部120から供給される被加熱流体fの温度よりも高く、かつ、ユーザーが望む設定温度よりも低い温度に設定している。供給部120から供給した被加熱流体fを混合調整させるため、第1温度が供給部120から供給される被加熱流体fの温度よりも低くなることはない。
【0090】
第1制御部185は、被加熱流体f3が第1温度に維持されるように、第1調整弁180の作動を制御する。第1調整弁180は、第1口181から入り込む被加熱流体f2の温度に基づいて、第2口182の弁の開度を機械的に調整するワックスサーモアクチュエータを備えている。この機構を第1制御部185として機能させている。貯湯タンク130から導かれた被加熱流体f2の温度が低下すると、第2口182の開度を絞って、供給部120からの被加熱流体fの供給量を低下させる。貯湯タンク130から導かれた被加熱流体f2の温度が高くなると、第2口182の開度を大きくして、供給部120からの被加熱流体fの供給量を増加させる。このように、第1制御部185は、第1口181から入り込む被加熱流体f2の温度に基づいて、第1温度が維持されるように第1調整弁180の作動を機械的に制御する。
【0091】
第1調整弁180と補助加熱装置150との間に配置された第2調整弁190には、第1調整弁180の側から見て上流側に位置する第1口191と、供給部120から供給された被加熱流体fを受け入れる第2口192と、第1調整弁180の側から見て第1口191よりも下流側に位置する第3口193とを備えた三方弁を利用している。第1調整弁180によって第1温度に調整された被加熱流体f3と、供給部120から供給される被加熱流体fとを混合調整する。これによって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度を調整する。第2調整弁190によって混合調整された被加熱流体f4は、第3口193から排出させて、第1ライン171に流し込む。第1ライン171へ流し込まれた被加熱流体f4は、補助加熱装置150の入口151へ流れ込む。
【0092】
第2制御部195は、検知部160が貯湯タンク130内の温度境界bを検知したときに、第2調整弁190を作動させる。この第10の実施の形態にあっては、第2調整弁190に、検知部160が検知した熱量に基づいて第2口192の開度を機械的に制御する温度式制水弁としての機構を付加している。この機構が、第2制御部195として機能する。
【0093】
第2調整弁190は、検知部160に封入したガスが液化してなる作動流体161を駆動源として作動する。検知部160が、低温域a1からの熱、すなわち冷熱を取得すると、封入したガスが液化して作動流体161となる。作動流体161はキャピラリチューブ163を介して第2調整弁190へ流れ込み、第2口192の開動作を駆動する。検知部160が低温域a1から取得する冷熱量が増加すると、封入したガスの液化量が増加する。これに伴って第2口192の開度が大きくなる。供給部120から供給される被加熱流体fの流量が増加し、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度が低下する。このように、第2制御部195は、検知部160が取得した熱量に基づいて第2調整弁190の作動を機械的な方式によって制御する。電気的な制御システムによって第2調整弁190を制御させる構成を付加する場合と比較して、安価に温度を制御するシステムである温度調整システム110を構成することが可能になっている。第1制御部185とともに、第2制御部195が簡易な機械式の制御システムによって構成されているため、第1、第2制御部185、195および第1、第2調整弁180、190を組み合わせたユニットを既存の温度制御システムに簡便かつ安価に組み込むことが可能になっている。
【0094】
検知部160が温度境界bを検知したときには、貯湯タンク130内に低温域a1と高温域a2が発生した状態となっている。湯切れが発生すると、加熱された高温域a2の被加熱流体に続いて、供給部120から供給された被加熱流体fと同程度の温度を有する低温域a1の被加熱流体が排出される。このため、高温域a2から低温域a1へ変化した被加熱流体f4が第1ライン171を介して補助加熱装置150へ流れ込み、補助加熱装置150へ流れ込む被加熱流体f4の単位時間当たりの温度変化が大きくなる。これによって、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が増加する。このため、従来の温度調整システムにあっては、単位時間当たりに要求される加熱量が急激に変化することによって、補助加熱装置150による加温調整が追従できず、設定温度よりも低い温度で被加熱流体をユーザーに提供してしまうことがある。また、補助加熱装置150による急激な加熱によって、設定温度よりも高い温度で被加熱流体を提供してしまうこともある。したがって、湯切れが発生すると、設定温度に調整された被加熱流体を安定的に提供することが困難になる。
【0095】
これに対して、温度調整システム110は、検知部160が貯湯タンク130内の温度境界bを検知した時点において、すなわち湯切れが発生する前に第2調整弁190による被加熱流体fの混合調整を開始する。第2調整弁190は、第1温度に調整された被加熱流体f3の温度を徐々に低下させることによって、補助加熱装置150へ流れ込む被加熱流体f4の温度が急激に低下することを防止する。これによって、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することを防止して、設定温度に調整された被加熱流体f5を安定的に供給することを可能にする。第2調整弁190を付加して補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することを防止しているため、補助加熱装置150自体の応答性等の性能を向上させる必要がなく、補助加熱装置150には従来から利用されているものを適用することができる。したがって、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することを防止する機能を安価に付加することができ、温度調整システム110全体におけるコストの増加を抑制することが可能となる。例えば、タンク径が280mmの場合において、ユーザーが19リットル/minの被加熱流体を使用すると、温度境界bは5.2mm/sの速度で遷移する。タンク130上端から200mmの位置において温度境界bを検知させ、第2調整弁190による混合調整を開始させた場合、ユーザーが19リットル/minの被加熱流体を引き続き使用すると、温度境界bがタンク130上端まで遷移するのに38秒程度掛かる。したがって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度は、第1調整弁180によって調整された第1温度から、供給部120から導かれる被加熱流体fの温度まで38秒の時間をかけて低下することになる。
【0096】
貯湯タンク130の外壁139には、貯湯タンク130の上層側137から下層側135に向けて漸次的に表面積が大きくなるように形成されたプレート201を設置している。プレート201には、貯湯タンク130の上層側137に位置するように検知部160を取り付けている(図20を参照)。
【0097】
貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1の低温域a1から伝わる熱量に基づいて、機械的に第2調整弁190の作動を制御する場合には、検知部160が低温域a1から取得する熱量を徐々に増加させることが望ましい。温度境界bを検知した時点から第2調整弁190の第2口192の開度を徐々に大きくすることが可能になり、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることが可能になるためである。
【0098】
貯湯タンク130の外壁139に設置されたプレート201は、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1から伝わる熱を集熱し、その熱を検知部160へ伝える。プレート201が、貯湯タンク130の上層側137から下層側135に向けて漸次的に表面積が大きくなるように形成されているため、下層側135から上層側137へ低温域a1が遷移すると、これに比例して低温域a1からプレート201全体へ伝わる冷熱量が徐々に増加する。これによって、プレート201から検知部160へ伝わる冷熱量も徐々に増加する。検知部160へ伝わる冷熱量の増加に伴って、封入したガスの液化量が増加して、第2調整弁190の第2口192の開度が大きくなる。このように、プレート201を利用することによって、プレート201が取得する熱量に比例させて第2調整弁190の第2口192の開度を除々に大きくさせることが可能となり、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることができる。プレート201には、例えば、ステンレス鋼や、アルミニウム、銅などの金属製のものを利用することができる。また、これらの材質のものに限定されず、貯湯タンク130の外壁139から伝わる熱を検知部160に伝達することが可能な材質のものを適宜選択することが可能である。検知部160による温度境界bの検知、および低温域a1からの熱量の検知により感度よく行わせるために、例えば、図示されるように、プレート201において検知部160が設置された箇所の背面となる位置に、部分的に断熱部材203を配置させることが望ましい。
【0099】
次に、実施の形態に係る温度調整システム110の作用について説明する。
図18を参照して、湯切れが発生していない場合には、第2調整弁190の第2口192が全閉状態を維持する。
第1調整弁180は、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2を第1温度として設定された35℃程度に混合調整する。
補助加熱装置150には、35℃に調整された被加熱流体f4が入口151から流れ込む。
補助加熱装置150は、35℃に混合調整された被加熱流体f4を設定温度まで加温調整して、加温調整された被加熱流体f5を出口152に介してユーザーに提供する。
図19を参照して、ユーザーの使用に伴って貯湯タンク130内に保持した被加熱流体f1内に低温域a1と高温域a2が形成されると、検知部160が温度境界bを検知する。検知部160が温度境界bを検知したときに、第2制御部195は、第2調整弁190の作動を開始する。
【0100】
第1調整弁180は、第2調整弁190の作動に関わらず、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2が第1温度になるように混合調整を継続して行う。
第2調整弁190は、第1温度に調整された被加熱流体f3と、供給部120から供給された被加熱流体fとを混合調整する。これによって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度を低下させる。
第2制御部195は、プレート201から検知部160へ伝わる冷熱量に基づいて、第2調整弁190の第2口192の開度を調整する。
プレート201が取得する熱量に比例して、第2調整弁190による第2口192の開度が徐々に大きくなる。これに伴って、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度が徐々に低下する。
ユーザーによる被加熱流体の使用が続くと、温度境界bは次第に下層側135から上層側137へ遷移する。
温度境界bが貯湯タンク130の出口まで到達すると、貯湯タンク130から排出される被加熱流体f2の温度が急激に低下する湯切れが発生する。
【0101】
図21を参照して、温度調整システム110による被加熱流体の温度変化を示す。図中において、(イ)は、貯湯タンク130の出口133における被加熱流体f2の温度変化を示し、(ロ)は、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度変化を示し、(ハ)は、供給部120から供給される被加熱流体fの温度変化を示す。温度差(Q)は、第2調整弁190が作動する前における補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度と、供給部120から供給される被加熱流体fの温度との温度差を示す。
【0102】
温度調整システム110にあっては、検知部160が温度境界bを検知したときの時間(T1)の時点から第2調整弁190による混合調整を開始する。補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度は、徐々に低下し、時間(T2)において供給部120から供給される被加熱流体fの温度と一致する。
【0103】
第2調整弁190による混合調整を行わない場合、時間(T3)において湯切れが発生すると、貯湯タンク130の出口133における被加熱流体f2の温度の低下に伴って、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度が時間(T4)の間に急激に低下する。これによって、補助加熱装置150に求められる加熱量も時間(T4)の間に急激に変化する。
【0104】
温度調整システム110にあっては、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度は、第2調整弁190による混合調整を行わない場合と比較して、図中に示す時間(T5)の時間を余分にかけて徐々に低下することになる。第2調整弁190による混合調整を行わない場合と比較して、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度の低下は穏やかになる。したがって、補助加熱装置150による単位時間当たりの加熱量の増加も緩やかに変化する。
【0105】
図22を参照して、温度調整システム110による設定温度への追従性を示す。図中において、(ニ)は、温度調整システム110の補助加熱装置150の出口153における被加熱流体f5の温度を示し、(ホ)は、第2調整弁190による混合調整を行わない従来のシステムにおける補助加熱装置150の出口153における被加熱流体f5の温度変化を示す。なお、(イ)および(ロ)は、図21と同様にそれぞれ、貯湯タンク130の出口133における被加熱流体f2の温度変化、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f5の温度変化を示す。
【0106】
温度調整システム110にあっては、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度を比較的長い時間をかけて緩やかに低下させるため、湯切れが発生しても設定温度に追従させて精度よく加温調整を行うことが可能になる。このため、ユーザーが望む設定温度に追従させることができ、設定温度の被加熱流体f5を安定的に提供することが可能になる。ユーザーは、湯切れによる不快さを感じることなく、設定温度に調整された被加熱流体f5を使用し続けることができる。
【0107】
一方、第2調整弁190による混合調整を行わずに加温調整を行う場合、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化する。設定温度に追従させて加温調整を行うことが困難になるため、図示されるように補助加熱装置150から提供される被加熱流体f5の温度が安定しない状態が続き、ユーザーに不快感を与えることになる。
【0108】
以上のように、この第10の実施の形態によれば、温度調整システム110である給湯器が温度を制御するシステムを有するので、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1の低温域a1と高温域a2とを区分けする温度境界bを検知して、湯切れが発生する前に補助加熱装置150に導かれる被加熱流体f4の温度を徐々に低下させるため、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することがない。このため、湯切れが発生した場合においても、被加熱流体f5の温度をユーザーが望む設定温度に追従させることができ、ユーザーが快適に使用することができる。第2調整弁190を付加した簡易な構成によって設定温度への追従性を維持させることが可能となる。
【0109】
第2制御部195は、検知部160が取得した熱量に基づいて第2調整弁190の作動を機械的な方式によって制御する。電気的な制御システムによって第2調整弁190を制御させる構成を付加する場合と比較して、安価に温度調整システム110を構成することが可能となる。
【0110】
貯湯タンク130の外壁139には、貯湯タンク130の上層側137から下層側135に向けて漸次的に表面積が大きくなるように形成されたプレート201を設置している。プレート201を利用することによって、検知部160が取得する熱量を比例させて第2調整弁190の第2口192の開度を調整することができ、温度境界bを検知した時点から第2調整弁190の第2口192の開度を徐々に大きくすることができる。これによって補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることが可能になる。
【0111】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、形状、構成などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、構成などを用いてもよい。
また、例えば、第6の実施の形態によるベランダ下部壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける温度調整システムは適宜改変することが可能である。
【0112】
具体的には、第6の実施の形態においては、第1、第2調整弁180、190の作動を機械的に制御しているが、これを電気的な制御システムによって制御させることも可能である。第1、第2調整弁180、190の制御システムに要するコストが増加することになるが、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度をより精度よく制御することが可能になる。また、第1、第2調整弁180、190の形態を適宜改変することが可能である。例えば、第1、第2調整弁180、190に、流体の温度に基づいて封入したガスを膨張、凝縮させてアクチュエータを駆動する流体駆動式の弁を利用することも可能である。また、例えば、第2調整弁190に、第1調整弁180として利用されたワックスサーモアクチュエータを備えた弁を利用することも可能である。このように、第1、第2調整弁180、190には、検知した流体の温度に基づいて機械的に弁の作動を制御する公知の形態のものを広く適用することが可能である。さらに、貯湯タンク130の形状や、検知部160を設置する場所も実施の形態において説明したものに限定されるものではない。貯湯タンク130内において発生した温度境界bを検知し、これに基づいて第2調整弁190の作動を開始させることが可能な限りにおいて適宜変更することが可能である。例えば、貯湯タンク130の外壁139の所定の範囲における面積から取得した熱量に基づいて温度境界bを検知させる形態とすることも可能である。貯湯タンク130の下層側135、上層側137に設置した2点間における温度差に基づいて温度境界bを検知させる形態とすることも可能である。
【0113】
プレート201の利用形態についても適宜変更することが可能である。プレート201を利用することによって、タンクのより下層側135から温度境界bを検知させることが可能になるため、例えば、温度境界bが遷移する速度よりもプレート201内部に伝わる熱の速度が速くなるような材質のものをプレート201に適用することによって、プレート201を利用しない場合と比較して第2調整弁190を作動させるタイミングを早めることが可能になる。これに伴って、プレート201の材質や形状、プレート201における検知部160を設置する位置等を適宜調整することによって、第2調整弁190を作動させるタイミング、および第2口192の開閉速度を任意に調整することが可能になっている。
【0114】
図23を参照して、変形例1にあっては、貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さな熱伝達率を有する材料からなるケーシング205に検知部160を収納している。このような点において、貯湯タンク130の外壁139に設置したプレート201に検知部160を取り付けた上記の実施の形態と相違している。以下、変形例について説明する。なお、上述した第6の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0115】
検知部160がケーシング205内に収納されているため、貯湯タンク130の外壁139から検知部160の内部へ熱が伝わりにくくなる。
検知部160が温度境界bを検知すると、第2調整弁190の混合調整が開始する。ケーシング205の熱伝達率が貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さいため、貯湯タンク130内の被加熱流体f1から貯湯タンク130の外壁139に伝わる熱量よりも、貯湯タンク130の外壁139から検知部160内に伝わる熱量の方が小さくなる。低温域a1から伝わる熱によって貯湯タンク130の外壁139の温度が急激に低下する場合においても、検知部160内の温度の急激な低下が生じることを防止できる。
【0116】
下層側135から上層側137へ低温域a1が遷移すると、これに比例して低温域a1からケーシング205全体に伝わる熱量が徐々に増加する。検知部160内に封入したガスの液化量が増加して、第2調整弁190の第2口192の開度が徐々に大きくなる。したがって、検知部160が温度境界bを検知した時点から比較的長い時間をかけて補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度を低下させることが可能になる。
【0117】
このように、貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さな熱伝達率を有する材料からなるケーシング205に検知部160を収納することによって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることが可能になる。プレート201を使用することを妨げるものではないが、プレート201を使用する場合と同様の効果を得ることができ、プレート201を使用する手間を省くことが可能になる。検知部160の設置作業の作業性の向上や、プレート201の作製に要する材料費の削減を図ることができる。
【0118】
ケーシング205は、例えば、断熱性に優れた樹脂材料などから構成することが可能である。その他、貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さな熱伝達率を有する材料を適宜選択することが可能である。形状等も図示されたものに限定されず、検知部160や貯湯タンク130の外壁139の形状に合わせて変更することも可能である。ケーシング205の材質や形状等を選択して、第2調整弁190を作動させるタイミング、および第2口192の開閉速度を任意に調整することが可能になっている。
【符号の説明】
【0119】
1…透明層、1a…太陽光を散乱させる凹凸、1b…太陽光を散乱させる凸部、2…空気層、3…集熱層、3a…ウィック状の凹凸面、4…断熱層、5…流体流路、6…外筐、7、8…連結部、9…連結部により形成された空間、10…外壁面設置用太陽熱集熱器、10a…本体部、10b、10c…端部、11…ジョイント、12…外壁、13a、13b、18a、18b、18c…アングル、14a、14b、14c、19a、19b、19c…ボルト、15、51…ベランダ、16、53…ベランダの下部壁面(スラブ壁面)、17、52…手摺、20…意匠パネル、21…樹脂枠体、22…中空部、30…多層異形押し出し成形装置、31…ダイス、32a、32b、32c…樹脂、33a、33b、33c…単軸スクリュー押し出し機、34a、34b、34c…スクリュー、41、61…温度センサー、42、47a、62…配管、43、63…循環ポンプ、43a、63a…太陽光パネル、44、140…主加熱部、45…リザーブタンク、46、130…貯湯タンク、47b…バイパス配管、47c…給水配管、47d…出湯配管、48…調整弁、48a…制御装置、49、150…補助加熱装置、50…給湯器、54…外壁面、110…温度調整システム(被加熱流体の温度調整システム)を有する給湯器、120…供給部、131…貯湯タンクの入口、133…貯湯タンクの出口、135…タンクの下層側、137…タンクの上層側、138…壁面部、139…タンクの外壁、151…補助加熱装置の入口、153…補助加熱装置の出口、160…検知部、161…作動流体、171…第1ライン、172…第2ライン、173…第3ライン、174…タンク用ライン、180…第1調整弁、185…第1制御部、190…第2調整弁、195…第2制御部、201…プレート、205…ケーシング、f、f1、f2、f3、f4、f5…被加熱流体、a1…低温域、a2…高温域、b…温度境界
【技術分野】
【0001】
この発明は外壁面設置用太陽熱集熱器、外壁面設置用太陽熱集熱器を設置した建築物および外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムに関し、例えば、集合住宅および一戸建ての壁面に設置する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
太陽熱集熱器は集熱部を有し、クリーンエネルギである太陽光により得られる熱を集熱可能に構成されており、ガス燃焼式給湯器やヒートポンプ式給湯器などと併用することでCO2排出などの環境負荷を低く抑えられる太陽熱利用温水システムなどに適用が可能である。
【0003】
従来、太陽熱集熱器は建物の屋根に設置する屋根設置型太陽熱集熱器が一般的であったが、この形態の太陽熱集熱器は、アパートやマンションなどの集合住宅の部屋においては個別の屋根が無いため設置は不可能であった。そこで、この問題点を解決するために集合住宅の外壁面やベランダなどに容易に設置が可能な形態の太陽熱集熱器および太陽熱利用システムが提案され開発が進められている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−241031号公報
【特許文献2】特開2005−282925号公報
【特許文献3】特開平6−185813号公報
【特許文献4】特開2001−330327号公報
【特許文献5】特開2002−106974号公報
【特許文献6】特開2009−92290号公報
【特許文献7】特開2010−151331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の外壁面設置型太陽熱利用システムおよびベランダ設置型太陽熱利用システムは、太陽熱集熱器の設置場所が限定されているのが現状である。特に、外壁面に太陽熱集熱器を設置する壁面設置型太陽熱利用システムにおいては、集熱部が重厚長大であるため、形状的に取り付けが困難であり、たとえ取り付けられたとしても意匠性が悪く、また、特に集熱に液体を用いる液集熱型太陽熱集熱器においては、その重量の為に安全に外壁に設置されているとは言えなかった。一方で、ベランダに設置するベランダ設置型太陽熱利用システムにおいては、主としてベランダの手摺面の一部を集熱部の設置に利用する程度で設置場所が限定されており、また、ベランダの手摺などに太陽熱集熱器が設置され、ベランダの手摺の一部もしくは全体が占有されてしまうと、洗濯干しなどの日常生活におけるベランダの手摺の利用に支障が生じるという問題点があった。また、従来の太陽熱利用システムの構成では、昼間に太陽熱をステンレス鋼製貯湯タンクで貯熱することが一般的であり、さらに上記貯湯タンク出口の湯の温度を制御するための電動弁および制御装置などが必要となることから重量がかさみ、ベランダ設置が容易であるとはいえず、また、ベランダの構造上における安全の観点から重量物である太陽熱利用システムの設置は普及しているとは言えなかった。
【0006】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、例えば、太陽熱集熱器や太陽熱利用システムを集合住宅、戸建住宅などに設置する場合において、集熱部を外壁面、例えば、ベランダ下部壁面を利用して簡易に取り付けが可能で、かつ意匠性が良い、外壁面設置用太陽熱集熱器、この外壁面設置用太陽熱集熱器を設置した建築物およびこの外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを提供することである。ここで、ベランダとは、建物から外接して張り出した部分を一般的に指し、バルコニーも含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器である。
【0008】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって形成された中空の枠体の中空部に、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記透明層と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法である。
【0009】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物である。
【0010】
また、この発明は、
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器が、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システムである。
【0011】
また、この発明は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器である。
【0012】
また、この発明は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体の中空部に、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記太陽光入射部と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設け、上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して透明層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法である。
【0013】
また、この発明は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物である。
【0014】
また、この発明は、
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システムである。
【0015】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器である。
【0016】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器を異種の樹脂の同時押し出し成形により製造することを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法である。
【0017】
また、この発明は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする建築物である。
【0018】
また、この発明は、
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする太陽熱利用システムである。
【0019】
この外壁面設置用太陽熱集熱器においては、太陽光が透明層を透過し集熱層に入射することにより発生する熱が集熱され、集熱層において集熱された熱が効率よく流体流路内を流れる流体に伝熱されることにより熱交換が行われて流体が加熱され、この加熱された流体が流体流路によって外部に輸送され、利用される。
【0020】
透明層は、入射する太陽光の全ての波長帯の光を透過する完全透明体である構成が最も望ましいが、太陽光に含まれる少なくとも一部の波長帯の光、好適には、少なくとも可視領域から遠赤外領域の波長帯の光を透過する限り、基本的にはどのようなものであってもよく、透明層の材料は具体的には樹脂、ガラスなどが挙げられ、樹脂であれば、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、環状ポリオレフィンなどが好適であって、この中でも、成形の容易性から熱可塑性樹脂が主として選ばれる。また、ガラスなどであれば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、石英ガラスなどが好適である。また、透明層は、上記材料などを組み合わせた複合構造、多層構造などであってもよく、複合構造にあっては、繊維強化プラスチックなどの複合材料で透明層を構成してもよい。また、受光面にコート材、フィルム、形状などにより反射を抑制する低反射機能の構成を有していてもよい。また、透明層に太陽光を散乱させる機構を有してもよく、例えば、透明層と集熱層との間に空気層を有する構成の外壁面設置用太陽熱集熱器においては、透明層の空気層に接する面に太陽光に含まれる少なくとも一部の波長帯の光、少なくとも可視領域から遠赤外領域の波長帯の光を散乱させる凹凸を設けた構成などが好適である。また、透明層と集熱層との間に空気層を有さない構成の外壁面設置用太陽熱集熱器においては、透明層を屈折率の異なる複数の材料を積層させて構成し、積層界面の形状を凹凸形状とすることが好適である。積層界面における凹凸形状により、積層界面を通過する太陽光に含まれる少なくとも一部の波長帯の光、少なくとも可視領域から遠赤外領域の波長帯の光を散乱させることができる。
【0021】
集熱層は、入射する太陽光の放射エネルギを全て吸収するような完全黒体である構成が最も望ましいが、入射する太陽光の放射エネルギの一部を吸収する構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよく、可視領域から遠赤外領域の波長帯の太陽光エネルギを吸収する材料が好適であって、特に、波長1μm〜20μmの光に対する熱吸収率(熱放射率)が完全黒体を1として0.3以上の材料であることが望ましく、さらに熱伝導率の高い材料であることがより望ましい。集熱層の材料は、具体的には、金属、ガラス材、炭素材、セラミックス、樹脂、ゴム、生体材料などが挙げられる。ここで、金属とは、金属単体、合金、金属酸化物などであって、金属単体であれば、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)などが好適であり、また、合金であれば、上記金属単体の二元合金、三元合金などであって、例えば、アルミニウム合金、ニッケル合金、鉄合金、チタン合金などが好適であり、また、金属酸化物であれば、上記に挙げた金属単体および合金の酸化物などであって、例えば、アルミニウム酸化物、銅酸化物、真鍮の酸化物などが好適であるが、金属はこれらに限定されるものではなく、これらの金属を組み合わせたものであってもよい。また、ガラス材であれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、石英ガラス、これらのガラス材を組み合わせたものが好適であるが、ガラス材はこれらに限定されるものではなく、入射光が透過しないようにガラス材に不透明材料を混ぜるなどして不透明とすることもできる。また、炭素材であれば、例えば、グラファイト、グラフェン、フラーレン類、カーボンブラック、これらの炭素材を組み合わせたものなどが好適であるが、炭素材はこれらに限定されるものではない。また、セラミックスであれば、例えば、酸化アルミニウム、炭化珪素、炭化ホウ素、炭化マグネシウム、これらのセラミックスを組み合わせたものなどが好適であるが、セラミックスはこれらに限定されるものではない。また、樹脂であれば、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂であれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォンなどが好適であって、熱硬化性樹脂であれば、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが好適であり、成形の容易性から熱可塑性樹脂が主に選ばれる。また、樹脂は、天然樹脂であっても合成樹脂であっても、結晶性樹脂であっても非結晶性樹脂であってもよいが、樹脂はこれらに限定されるものではなく、基材とフィラーとを組み合わせて構成される熱伝導樹脂であってもよく、基材としては上記に挙げた樹脂などが挙げられ、フィラーとしては上記に挙げたような金属、セラミックスなどが挙げられる。また、ゴムであれば、例えば、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴムなどが好適である。ゴムは、天然ゴムであっても合成ゴムであってもよいが、ゴムはこれらに限定されるものではない。また、生体材料であれば、植物材料、動物材料などが挙げられ、植物材料であれば、例えば、木材、綿、麻などが好適であって、動物材料であれば、例えば、毛、絹などが好適であるが、生体材料はこれらに限定されるものではない。また、その他の材料であれば、例えば、アスファルト、伝熱セメント、コンクリートなどが好適である。また、上記に挙げた材料を適宜組み合わせて集熱層を構成してもよく、具体的には、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどに近赤外線吸収材料(インジウム錫化合物、アンチモン錫化合物など)を練りこんだ構成を有するものが好適である。また、集熱層の太陽光入射部側の面である集熱面を粗面加工し、光反射率を低減させて熱吸収率を向上することも有効であり、例えば、集熱層をアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成する場合においては、集熱層の集熱面をアルマイト処理することによって多孔質構造とすることが特に好ましい。
【0022】
断熱層は、外部への集熱層または流体流路からの熱の流出を遮断する構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよく、断熱層の形態は、具体的には、真空、気体、液体、固体、混相体などであって、気体であれば、例えば、空気などが好適であって、固体であれば、例えば、断熱材などが好適であって、断熱材であれば、例えば、発泡スチロール、グラスウール、ウレタンフォーム、フェノールフォームなどが好適である。また、熱を蓄熱する構成を併せ持った断熱材であってもよく、具体的には、顕熱蓄熱断熱材、潜熱蓄熱断熱材などであり、顕熱蓄熱断熱材であれば、例えば、ゴム、合成樹脂、伝熱セメント、コンクリート、水、シリコーンオイルなどが好適であって、潜熱蓄熱断熱材であれば、例えば、塩化カルシウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、パラフィンなどが好適である。また、潜熱蓄熱断熱材を顕熱蓄熱断熱材に混合した構成も有効で、例えば、パラフィンをゴム、合成樹脂などに練りこみ、板状に成形した構成を有するものであってもよい。また、断熱層が固体であれば、断熱層を外筐として兼用することもできる。
【0023】
枠体は、少なくとも外筐からなる構成を有していれば基本的にはどのようなものであってもよいが、透明層と外筐とからなり、少なくとも一つの流体流路を収納し断熱層の表面の少なくとも一部を覆う筒形の中空形状を有し、枠体の太陽光入射部が透明層である構成が好適であり、筒型の中空形状は流体流路および断熱層の全体を覆う形態であることがより好適である。また、全て樹脂で一体に構成された樹脂枠体とすることもでき、枠体を樹脂枠体とする場合には、透明層は透明樹脂、外筐は樹脂によって構成されるが、枠体はこれらの構成に限定されるものではなく、枠体を全て金属で構成してもよいし、樹脂と金属を組み合わせて構成してもよい。また、枠体を透明層と別体で構成する場合には、筒型の中空形状を有する枠体の太陽光入射部を開口させて構成し、透明層は必要に応じて開口部の少なくとも一部に設けられ、好適には流体流路の上記太陽光入射部に対応する部分に上記開口部を塞ぐ形態で接して設けられる。また、枠体の中空部に流体流路および断熱層を挿入して設ける場合においては、枠体の内側の面に流体流路および断熱層を設けるための位置を決定する受け部を設けることもできる。
【0024】
外筐は、流体流路を収納し断熱層の表面の少なくとも一部を覆うように設けられている構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、流体流路および断熱層の全体を覆っている形態を有する構成が最も好ましく、外壁などの平面部に対する設置部を別体として外筐に取付ける取付け部を有する構成、もしくは設置部を一体に成形してなる構成、外筐の端部を設置部とする構成などを有していてもよい。また、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結可能な目地構造、太陽熱による熱収縮によっても歪みが生じず建築的な意匠パネルと容易に接続できる連結部を有する構成、意匠パネルと容易に接続できる連結部を別体として取付け可能な取付け部を有する構成、意匠パネルと容易に接続できる連結部または設置部を一体に成形してなる構成などを有していてもよい。外筐の材質は耐腐食性、耐熱性、耐衝撃性、耐光性などが高い材質であることが特に好ましく、具体的には金属、合成樹脂、複合材料などが挙げられ、金属であれば、具体的には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などが挙げられるが、金属はこれらのものに限定されるものではない。また、樹脂であれば、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂であれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォンなどが好適であって、熱硬化性樹脂であれば、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが好適であり、成形の容易性から熱可塑性樹脂が主に選ばれる。また、樹脂は、天然樹脂であっても合成樹脂であっても、結晶性樹脂であっても非結晶性樹脂であってもよいが、樹脂はこれらのものに限定されるものではない。また、複合材料であれば、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)などが好適であるが、複合材料はこれらのものに限定されるものではない。また、断熱層が固体である場合には、外筐を断熱材で構成し断熱層を兼ねた外筐としてもよい。
【0025】
外壁面設置用太陽熱集熱器の設置構造は、外壁面に設置が可能な構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、特に、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結した場合において設置面が一様になるような設置構造を設ける構成が好適である。
【0026】
連結部は外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結可能な構成を有していれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、枠体を構成する外筐と一体に形成されており、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結した場合において設置面が一様になるよう、連結部の両端部は設置面と垂直な方向に設置面と干渉しない程度にそれぞれ逆方向に折り曲げられたかぎ形形状を有する構成が好適である。連結部の形状は両端部を相互に逆方向に折り曲げられた形状に限られず、例えば、一方の連結部を両端が開放された円筒とし、他方の連結部を上記円筒内に挿入可能な円柱とし相互に連結可能にする構成、連結部に相互に噛み合わせを設けて相互に連結可能とする構成であってもよい。また、ベランダの下部壁面における意匠化粧パネルなどとの取り合いとも連結が容易に可能である構造を有してもよい。
【0027】
また、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結する形態は、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結する形態を有する限りにおいては、基本的にはどのような形態であってもよく、例えば、連結部同士を相互に連結する形態、一方の連結部を他方の外筐に直接連結する形態などが挙げられ、特に、連結部と外筐とを相互に直接連結する形態が好適である。連結部と外筐とを相互に直接連結する場合、外壁面設置用太陽熱集熱器の連結時において設置面を一様にするために一方の連結部を設置面から透明層に向かう方向に外筐をえぐる形態でオフセットして設け、他方の連結部は設置面と同一の面に設けられ、オフセットして設けられた一方の連結部が他方の外壁面設置用太陽熱集熱器の外筐に直接接続できるように外筐の端部をえぐった窪み形状を有する構成としてもよいが、外壁面設置用太陽熱集熱器を相互に連結する形態はこれらに限定されず、連結部を用いないで連結してもよい。また、複数の外壁面設置用太陽熱集熱器が相互に連結することによって列モジュール形成し、外壁面設置用太陽熱集熱器モジュールとしてもよい。
【0028】
流体流路は、流体が流れる形態を有している限り、基本的にはどのようなものであってもよく、断面形状、断面の大きさ、引き回し形状などは必要に応じて決定することができる。また、流体流路の外壁を構成する材料は耐熱性を有し、熱伝導率の高い材料であることが好ましく、具体的には、金属材料、無機材料、樹脂材料などが挙げられ、金属材料であれば金属単体、合金などが挙げられ、金属単体であれば、例えば、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、イリジウム、(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)などが挙げられ、合金であれば、アルミニウム合金、ニッケル合金、銅合金、鋼、ステンレス鋼などが挙げられるが、金属はこれらに限定されるものではない。また無機材料であれば、例えば、グラファイト、セラミックスなどが挙げられるが、無機材料はこれらのものに限定されるものではない。また、樹脂材料であれば、樹脂の基材に熱伝導フィラーを配合した熱伝導性樹脂などが挙げられ、熱伝導性樹脂の基材としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられ、伝熱フィラーとしては、例えば、アルミニウム、銅、セラミックス、ガラス、グラファイトなどが挙げられるが、樹脂材料はこれらに限定されるものではない。ここで、流体流路の外壁とは、流体流路を形成する壁のことをいう。
また、流体流路の外壁の少なくとも一部は集熱層で形成され、集熱層は、流体流路の外壁のうち透明層に対向した一部の領域に構成されることが好適であるが、これに限定されず、流体流路の外壁の全てを集熱層で構成してもよい。流体流路の外壁の少なくとも一部とは、流体流路を構成する外壁の一部分であっても、流体流路の外壁に追加して設けられた一部分であってもよい。流体流路の一部を集熱層で構成する方法は、具体的には、流体流路本体の外壁の一部を熱吸収率の高い材料、好適には熱吸収率が0.3以上の材料である集熱層で構成する方法、流体流路本体の外壁面に熱吸収率の高い材料、好適には熱吸収率が0.3以上の材料を積層して集熱層を設ける方法などが挙げられ、流体流路本体の外壁の少なくとも一部を熱吸収率の高い材料、好適には熱吸収率が0.3以上の材料である集熱層で構成する方法は、具体的には、単一部材の押し出し、異種部材の同時押し出し、熱間接合、冷間接合、接着、溶接などが挙げられるが、流体流路の外壁の一部を集熱層で構成する方法は、これらの方法に限定されるものではない。また、流体流路の外壁面に別の材料を積層させて集熱層を形成する方法は、具体的には、接合、塗布、めっき、蒸着、化学処理、酸化処理などが挙げられ、特に、流体流路の外壁面を金属単体または合金で構成する場合には、流体流路の外壁面を酸化処理することによって熱吸収率の高い金属酸化皮膜を形成し集熱層とすることが好ましく、流体流路の外壁面に形成される集熱層である積層体の厚さは赤外放射の波長程度、具体的には、1μm〜20μmであることが好ましい。また、流体流路の外壁面上に形成された集熱層の太陽光入射部側の面である集熱面を粗面加工し、光反射率を低減させて熱吸収率を向上することも有効であり、例えば、集熱層をアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成する場合においては、集熱層の集熱面をアルマイト処理することによって多孔質構造とすることが特に好ましいが、流体流路の外壁面に材料を積層して集熱層を設ける方法は、これらの方法に限定されるものではない。
流体流路は、典型的には、流体流路とは別に形成された枠体の中空部に挿入され、必要に応じて固定される形態で設けられ、特に、太陽光入射部が透明層からなる枠体に、集熱層の集熱面と枠体を構成する透明層との間に空気層を設ける形態で挿入して構成するものが好適であるが、集熱層の設置形態はこれに限定されるものではなく、空気層を設けない形態で枠体の中空部に挿入して構成してもよいし、太陽光入射部が開口した中空の枠体に流体流路を挿入し、必要に応じて固定し、その後に流体流路に接して設けられた集熱層の集熱面に透明層を接する形態で設けて構成してもよいし、集熱層と断熱層と枠体とを一体に成形し、集熱層または断熱層または集熱層と断熱層とに跨る領域に、一つまたは複数の貫通孔を設けて流体流路を構成してもよい。また、集熱層から流体流路に流れる流体への伝熱を向上させるために、流体流路の表面を伝熱表面積の大きい形状とすることが好ましく、伝熱表面積が大きく、流体の流れ損失の小さな形状とすることがより好ましい。伝熱表面積が大きい形状は、典型的には凹凸形状であって、具体的には、曲面状、ウィック状、フィン状、多孔状などの凹凸形状が挙げられるが、伝熱表面積の大きい形状はこれらに限定されるものではない。
【0029】
流体流路内を流れ、外壁面設置用太陽熱集熱器において熱交換される流体は、液体、気体のいずれであってもよく、例えば、水、不凍液、オイル(油)、空気などが好適であるが、これらに限定されず、流動性を有する物質であれば、基本的にはどのようなものであってもよい。外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける熱交換による熱の授受を行う流体は、それぞれ外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの用途に応じて適宜選ばれる。例えば、外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを給湯器に適用する場合には、外壁面設置用太陽熱集熱器で集熱された熱を熱交換によって受け渡す流体は不凍液であって、熱を熱交換によって受け取る流体は水または湯である。
【0030】
この外壁面設置用太陽熱集熱器は、従来公知の技術を適宜選択することによって製造することができ、必要に応じて製造方法が選択される。その中でも、例えば、太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体を製造した後に、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる流体流路を製造し、枠体の中空部に、集熱層の少なくとも一部が透明層に対向するように流体流路を挿入し、必要に応じて固定し、枠体の中空部の流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を挿入し、必要に応じて固定して製造する方法が好適である。
枠体および流体流路は、従来公知の製造方法を適宜選択して製造することができ、具体的には、樹脂射出成形、樹脂押し出し成形、樹脂ブロー成形、金属押し出し成形、金属引き抜き成形、これらを組み合わせた成形などが挙げられ、枠体を全て樹脂で構成し樹脂枠体とする場合にあっては、例えば、樹脂射出成形、樹脂押し出し成形などの製造方法が選ばれ、流体流路の外壁を全て金属で構成する場合にあっては、金属押し出し成形などの製造方法が選ばれる。
また、外壁面設置用太陽熱集熱器を全て樹脂で構成する場合、流体流路と集熱層とを一体に構成する場合においては、多層異形押し出し成形装置を用いた多層異形押し出し成形法による樹脂の同時押し出し成形により製造する方法が好適である。具体的には、外壁面設置用太陽熱集熱器を全て樹脂で構成する場合にあっては、枠体、断熱層、集熱層を構成する多種の樹脂材料を同時に押し出し成形し、多種の樹脂材料を線状に、流体流路も含め一体に形成する。上述した製造方法で形成された成形物は所望の寸法となるように長手方向の端部を裁断され本体部を形成した後に、本体部の開放された流体流路の両端部を、予め射出成形機などで流路を成形した異形樹脂部材である端部と接合することで繰り返し折れ曲がった引き回し形状を形成した流体流路となり、外壁面設置用太陽熱集熱器となる。
【0031】
建築物は、典型的にはアパート、マンションなどの集合住宅であるが、これに限られず、外壁面を有する建築された構造物であれば、基本的にはどのようなものであってもよく、具体的には、例えば、戸建住宅、ビルディング、駅舎、校舎、病院、教会、工場、倉庫、車庫、橋などが挙げられ、特に、少なくとも一つのベランダを有する建築された構造物であることが特に好ましい。
【0032】
外壁は、外周を囲むことで空間を仕切り、内外の区画を形成可能であれば、基本的にはどのようなものであってもよく、典型的には上記に挙げた建築物の外周壁であるが、外壁はこれに限定されず、塀、建築物の土台の壁などであってもよい。外壁面は、典型的には上記外壁の外周面であって、具体的には、例えば、建築物側壁面、屋根面、屋根下部壁面、ベランダ壁面、ビルディング屋上面、ベランダ下部壁面、基礎壁面、塀の外周面、土台ののり面、煙突、橋脚、橋桁の側面などであるが、外壁面はこれらに限定されるものではなく、屋根の破風面、シャッターボックスの外面などであってもよい。
【0033】
外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、例えば、貯湯タンクを備えた外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムである。この貯湯タンクには、外壁面設置用太陽熱集熱器の流体流路内に水または湯を流すことにより熱交換して得られる湯が貯蔵される。貯湯タンクの壁の材料や構成は必要に応じて選ばれ、従来公知のものを用いることができる。貯湯タンクの耐圧性を確保しつつ、軽量性の向上を図る観点から、好適には、貯湯タンクの壁は、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる内層と、ポリアミド樹脂からなり上記内層の外方に設けられる外層と、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリアミド樹脂を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、上記内層と上記外層との間に位置する中間層とを有する多層構造体から構成される。最も好適には、貯湯タンクの壁の厚さは7mm以上であり、上記内層、上記中間層、上記外層の厚さ比率は、内層:中間層:外層=4:1:5〜8:1:1の範囲である。
【0034】
この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、好適には、被加熱流体の温度調整システムを有する。この温度調整システムは、例えば、被加熱流体を供給する供給部と、下層側から供給される被加熱流体を保持して上層側から排出するタンクと、タンクに供給された被加熱流体を加熱する主加熱部と、タンクに設置され、被加熱流体の供給に伴ってタンク内の下層側から上層側へ遷移するとともに低温域と高温域とを区分けする温度境界を検知する検知部と、タンクから排出された被加熱流体を設定温度に加熱する補助加熱部と、タンクと補助加熱部とを接続して、タンクから排出された被加熱流体を補助加熱部へ導く第1ラインと、第1ラインの途上に設置され、タンクから排出された被加熱流体と供給部から供給される被加熱流体とを混合調整して、タンクから排出された被加熱流体の温度を、供給部から供給される被加熱流体の温度よりも高く、かつ、設定温度よりも低い第1温度に調整する第1調整弁と、第1ラインの途上における第1調整弁と補助加熱部との間に設置され、第1温度に調整された被加熱流体と供給部から供給される被加熱流体とを混合調整して、補助加熱部に導かれる被加熱流体の温度を調整する第2調整弁と、タンクから排出され第1調整弁へ導かれる被加熱流体の温度に基づいて第1調整弁を作動させる第1制御部と、検知部が温度境界を検知したときに第2調整弁を作動させる第2制御部と、供給部と第1調整弁とを接続して、供給部から第1調整弁へ被加熱流体を導く第2ラインと、供給部と第2調整弁とを接続して、供給部から第2調整弁へ被加熱流体を導く第3ラインとを有し、第2制御部は、検知部が温度境界を検知したときに第2調整弁の作動を開始して、第1温度に調整された被加熱流体と第3ラインから導かれる被加熱流体とを混合調整するものである。また、加熱流体、被加熱流体は水に限定されず、流動性のある構成を有するものであれば、基本的にはどのようなものであってもよい。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、例えば、太陽熱集熱器や太陽熱利用システムを建築物に設置する場合において、建築物の外壁面に安全に取り付けが可能で、かつ意匠性の良い、外壁面設置用太陽熱集熱器およびこの外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図および平面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の外壁面設置用太陽熱集熱器の構成部品を示す断面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の設置例を示す断面図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の他の設置例を示す断面図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図および平面図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の外壁面設置用太陽熱集熱器の構成部品を示す断面図である。
【図7】この発明の第3実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図8】この発明の第3実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器の製造装置を示す断面図である。
【図9】この発明の第4の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図10】この発明の第5の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図11】この発明の第6の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図12】この発明の第7の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す断面図である。
【図13】この発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図14】この発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの設置例を示す略線図である。
【図15】この発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの設置例を示す略線図である。
【図16】この発明の第9の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおいて用いられる貯湯タンクを示す略線図である。
【図17】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図18】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図19】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムを示す略線図である。
【図20】この発明の第10の実施の形態による太陽熱利用システムにおいて用いられるプレートおよび検知部を示す略線図である。
【図21】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける補助加熱部の入口における被加熱流体の温度変化を示す略線図である。
【図22】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける補助加熱部の出口における被加熱流体の温度変化を示す略線図である。
【図23】この発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの変形例に係る検知部を拡大して示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0038】
第1の実施の形態
図1AおよびBは、第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図1Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図1Aは図1BのA−A’線に沿っての断面図である。
図1AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、透明層1、空気層2、断熱層4、流体流路5および外筐6とからなる本体部10aと、断熱層4、流体流路5、外筐6および接続部であるジョイント11からなる端部10bと、断熱層4、流体流路5および外筐6からなる端部10cとを接合してなる全体として長尺の長方形の平面形状を有するパネル状に構成されている。透明層1の外周部はこの透明層1の太陽光入射部側の面に対して垂直に折れ曲がっており、この折れ曲がった部分が外筐6と一体になって、上記太陽光入射部が透明層1からなる筒型の中空形状を有する樹脂枠体21を構成している。流体流路5は外壁の少なくとも一部が集熱層3からなり、少なくとも一つの流路を有し、上記流路には流体を流すことができる。集熱層3は流体流路5の外壁のうち太陽光入射部側の外面の少なくとも一部に形成されている。樹脂枠体21の中空部には、流体流路5が、透明層1と流体流路5の外壁、好適には流体流路5の外壁を構成する集熱層3とにより囲まれた空間が空気層2を構成するように透明層1と対向して設けられ、断熱層4は樹脂枠体21の中空部の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に流体流路5の外壁の外面のうち、空気層2に接する面の反対側の面または空気層2に接する面以外のほぼ全てを覆う形で接して設けられている。外筐6は、断熱層4と、流体流路5とに接して設けられており、外筐6には流体流路5および断熱層4を設ける際の位置決めが容易となるような受け部が設けられている。流体流路5は断面形状が長方形に形成され、本体部10aと、端部10bと、10cとを接合することで流体流路5が繰り返し折れ曲がった引き回し形状を形成している。流体流路5の両端部は、端部10bにおける本体部10aと端部10bとの接合面と垂直な一方の外面に設けられており、流体流路5の両端部には外部流路との接続バルブであるジョイント11が設けられている。
外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aは、好適には、透明層1および外筐6からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された筒状の中空形状を有する樹脂枠体21の中空部に、流体流路5および断熱層4が挿入される形態で設けられ、流体流路5の外壁は金属である集熱層3で構成され、流体流路5は金属の押し出し成形によって形成され、断熱層4は固体の断熱材で構成されるが、この構成に限定されるものではなく、特に流体流路5の構成においては、例えば、流体流路5を各種の押し出しで成形した後に、流体流路5の外壁のうち透明層1と対向する外面全面に集熱層3を積層させて設けてもよいし、流体流路5の外壁を、集熱層3を含む複数種類の金属材料で構成し、異種金属材料の同時押し出しによって、流体流路5を成形してもよい。また、端部10bおよび10cは、断熱材で構成された中実形状の外筐6に空孔である流体流路5を設ける構成、中空形状の外筐6に断熱材を充填して断熱層4を形成し、外筐6内に断熱層4を介して流体流路5を設ける構成などが好適であるが、本体部10a、端部10bおよび10cの構成はこれらに限定されるものではない。
【0039】
外筐6の長手方向に垂直な方向の両端部には、外壁面設置用太陽熱集熱器10を相互に連結するための連結部7および8が設けられている。連結部7および8は外筐6と一体に形成されている。連結部7は外壁面設置用太陽熱集熱器10の面に平行であり、連結部8は連結部7に対して垂直に折れ曲がっている。外筐6の長手方向に垂直な方向の一端部の連結部8と他端部の連結部8とは連結部7に対して互いに逆方向に折り曲げられている。二つの外壁面設置用太陽熱集熱器10を相互に連結する場合には、一方の外壁面設置用太陽熱集熱器10の一端部の連結部7および8を他方の外壁面設置用太陽熱集熱器10の一端部の連結部7および8によって形成された空間9に挿入する。
【0040】
透明層1、集熱層3、断熱層4、流体流路5の外壁および外筐6の材料は既に挙げた材料の中から必要に応じて選ばれる。透明層1、空気層2、集熱層3、断熱層4、流体流路5および外筐6の形状や寸法などは必要に応じて選ばれる。
【0041】
透明層1、集熱層3、断熱層4、流体流路5の外壁および外筐6の材質の一例を挙げると、透明層1はポリカーボネート、集熱層3は酸化アルミニウム、断熱層4はフェノールフォーム、流体流路5の外壁はアルミニウム合金、外筐6はポリ塩化ビニル樹脂である。また、集熱層3の表面は黒色アルマイト処理が施されている。また、流体流路5を流れる流体は不凍液である。また、外壁面設置用太陽熱集熱器10の寸法は、外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置面に垂直な方向の長さ(以下厚さ方向長さ)が15〜30mm、外壁面設置用太陽熱集熱器10の長手方向に垂直な方向の幅(以下幅方向長さ)が50〜250mm、透明層1の厚さ方向長さが1〜5mm、透明層1の幅方向長さが30〜200mm、透明層1の垂直に折れ曲がり部から伸びる厚さ方向長さが2〜8mm、空気層2の厚さ方向長さが2〜6mm、空気層2の幅方向長さが26〜198mm、流体流路5の厚さ方向長さが5〜20mm、流体流路5の幅方向長さが26〜198mm、流体流路5の外壁の厚さ方向長さが1〜4mm、断熱層4の厚さ方向長さが1〜5mm、断熱層4の幅方向長さが26〜198mm、連結部7の厚さ方向長さが1〜5mm、連結部7の幅方向長さが10〜30mm、連結部8の厚さ方向長さが2〜10mm、連結部8の幅方向長さが1〜5mmの範囲内であることが好適であって、外壁面設置用太陽熱集熱器10の寸法の一例を示すと、外壁面設置用太陽熱集熱器10の厚さ方向長さが20mm、外壁面設置用太陽熱集熱器10の幅方向長さが180mm、透明層1の厚さ方向長さが2mm、透明層1の幅方向長さが150mm、透明層1の垂直に折れ曲がり部から伸びる厚さ方向長さが2mm、空気層2の厚さ方向長さが3mm、空気層2の幅方向長さが146mm、流体流路5の厚さ方向長さが10mm、流体流路5の幅方向長さが145.6mm、流体流路5の外壁の厚さが1mm、流体流路5を構成する4つの流体流路のうちのひとつの流体流路の厚さ方向長さが8mm、上記一つの流体流路の幅方向長さが34.3mm、断熱層4の厚さ方向長さが3mm、断熱層4の幅方向長さが146mm、連結部7の厚さ方向長さが2mm、連結部7の幅方向長さが15mm、連結部8の厚さ方向長さが3mm、連結部8の幅方向長さが2mmである。
【0042】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10の動作について説明する。
透明層1を透過した太陽光は、空気層2を介して集熱層3に入射して熱に変換され、集熱される。集熱された熱の一部は流体流路5の外壁を経て流体流路5の流路内を流れる流体に伝熱され、流体が加熱される。断熱層4に蓄熱材が充填されている場合は、集熱層3に集熱され流体流路5の外壁を経て伝熱した熱の一部は断熱層4に蓄熱される。こうして加熱された流体流路5の流路内の流体は、外壁面設置用太陽熱集熱器10の外部に接続されたポンプなどで輸送され、外部機器などに利用される。
【0043】
図2A、BおよびCは、外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成部品を示す断面図である。
外壁面設置用太陽熱集熱器10は従来公知の技術によって製造することができるが、各種の押し出し成形を組み合わせて製造すると高い生産性で低コストで製造することができる。具体的には、外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aは、図2Aに示すような太陽光入射部が透明層1からなる筒状の中空形状を有する樹脂枠体21と、図2Bに示すような断面を有し、外壁の少なくとも一部が集熱層3で構成される流体流路5と、図2Cに示すような固体の断熱材からなる平板状の断熱層4とをそれぞれ別個に成形製造し、その後に透明層1と集熱層3とを空気層2を介して対向する形態で樹脂枠体21の中空部22内に挿入し、必要に応じて固定し、中空部22内における流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層4を挿入し、必要に応じて固定し、組み合わせて製造されるが、製造方法はこれに限定されるものではなく、断熱層を中空部22内に挿入し、必要に応じて固定した後に流体流路5を中空部22内に挿入し、必要に応じて固定してもよいし、流体流路5の外壁の外面のうち一方の主面に断熱層4を接合し一体の接合体として構成し、上記接合体の断熱層4が接合されている面と反対側の面が太陽光入射部側となるように上記接合体を中空部22内に挿入し、必要に応じて固定してもよい。また、流体流路5を中空部22内に挿入し、樹脂枠体21と流体流路5の太陽光入射部側と反対側の面とで形成された空気層を断熱層4としてもよい。
【0044】
樹脂枠体21は、透明層1と筐体6と連結部7および8とを異形押し出し成形法による同時押し出し(共押し出し)成形などで一体成形して構成してもよいし、透明層1と、筐体6とを異形押し出し成形法による同時押し出し成形などで一体成形し、その後に別個に成形した連結部7および8を接合して構成してもよいし、透明層1と筐体6と、連結部7および8とをそれぞれを別個に樹脂押し出し成形などで成形し、その後、接合して構成してもよいし、これらの製造方法を組み合わせてもよい。
一方、流体流路5は押し出し成形などによって製造され、好適には、流体流路5の外壁を金属材料で構成し、金属の押し出しによる成形によって製造される。流体流路5の外壁を構成する金属材料は、流体流路5の外壁のうち集熱層3で構成しない部分は、上記の流体流路を構成する金属材料として挙げたものから適宜選択することができ、流体流路5の外壁のうち集熱層3で構成する部分は、上記の集熱層を構成する金属材料として挙げたものから適宜選択することができるが、成形の容易さから、流体流路5の外壁を全て金属の単一部材で構成することが好適であって、より好適には、金属材料である集熱層3で流体流路5の外壁が構成され、この場合、集熱層3は、具体的にはアルミニウム合金が選ばれる。
流体流路5の成形は、金属押し出しによる成形のなかでも、直接押し出し成形法による温間押し出し成形が好適であって、特に、使用する金属をアルミニウム合金とする場合にあっては、具体的には、アルミニウム合金の円柱ビレットを500℃に加熱した後に、ポートホールダイス(ホローダイス)が設けられた押し出し成形機のコンテナに挿入し、プレス機によって押し出されることで、ポートホールダイスの口金で図2Bに示すような断面形状のアルミニウム合金部材である流体流路5に成形されるが、成形される流体流路5の形状はこれに限定されず、流体流路5の外壁の一部が開口した形状であってもよい。また、流体流路5の成形方法も、上述されたものには限定されず、マンドレルを用いた打ち抜き法で成形してもよいが、流体流路5の製造方法は、これらの方法に限定されるものではなく、流体流路の外壁を構成する部材が全て樹脂である場合には樹脂の押し出し成形、流体流路の外壁を構成する部材が金属と樹脂などの複数種類である場合には、異種材料の異形押し出し法よる同時押し出しで成形され製造される。
【0045】
流体流路5を集熱層3で構成せずに、成形された流体流路5の外壁の外面に別の材料を積層させて集熱層3を形成する場合にあっては、上記において挙げた方法を、適宜選択または組み合わせることにより製造することができ、特に、流体流路5の外壁を金属材料で構成する場合においては、流体流路5の外壁の外面を酸化処理することによって熱吸収率の高い金属酸化皮膜を形成し集熱層とすることが好適であり、例えば、流体流路5をアルミニウム合金で図2Bに示すような断面形状に成形する場合においては、アルミニウム合金で構成された流体流路5の外壁の外面の少なくとも一部を、熱酸化装置などを用いて酸化することにより面上に5〜10μmの厚さの酸化アルミニウム皮膜を形成し、形成した酸化アルミニウム皮膜を集熱層3とすることが好適である。また、形成した酸化アルミニウム皮膜にアルマイト処理を施して、入射する太陽光の反射を抑え熱吸収率を向上させてもよいが、流体流路5の外壁面に別の材料を積層させて集熱層を形成す方法は、これらの方法に限定されるものではなく、流体流路5の外壁の外面に熱吸収率が0.3以上の材料をめっきしてもよい。
また、流体流路5本体の外壁の少なくとも一部を集熱層3で構成してもよく、上記において挙げた方法を適宜選択、組み合わせることで製造することができ、具体的には、流体流路5の外壁の一部を開口させた形態で成形し、流体流路5の開口部全体を塞ぐ形態で集熱層3を圧着、溶接などの方法を用いて接合して製造する方法、金属および/または樹脂の異種材料を用いた異形押し出しによる同時押し出しによって流体流路5と集熱層3を一体に成形製造する方法、流体流路5の外壁を全て集熱層3で構成する方法などが挙げられるが、流体流路5本体の外壁の少なくとも一部を集熱層3で構成する方法はこれに限定されない。
集熱層3は、上述した方法などを用いて流体流路5の外壁のすくなくとも一部を構成し、こうして成形された外壁の少なくとも一部が集熱層3からなる流体流路5は、樹脂枠体21の中空部22に、透明層1と集熱層3の少なくとも一部とを空気層2を介して対向した形態で挿入され、さらに、樹脂枠体21に挿入された流体流路5の集熱層3とは逆側の面がほぼ覆われる形態で、中空部22に断熱層4が挿入され、必要に応じて流体流路5および断熱層4を固定することで本体部10aを形成する。また、流体流路5および断熱層4を中空部22に挿入する際において、位置決めをするために樹脂枠体21に受け部を設けてもよい
また、端部10bおよび10cは予め射出成形機などで形成され、本体部10aの両端を端部10bおよび10cと接合することで、流体流路5が繰り返し折れ曲がった引き回し形状を形成し、外壁面設置用太陽熱集熱器10となる。
【0046】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置例について説明する。
図3はマンションの外壁12に複数の外壁面設置用太陽熱集熱器10を外壁面設置用太陽熱集熱器10の高さ方向に連結して設置する例を示す断面図である。各外壁面設置用太陽熱集熱器10は、外壁12にボルト14aで固定されたアングル13aと、外筐6の連結部7にボルト14cで取り付けられているアングル13bとをボルト14bで締結することにより外壁12に固定される。外壁面設置用太陽熱集熱器10同士は外筐6の連結部7、8を利用して相互に連結されるが、外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置はこれに限定されるものではなく、また、外壁に設置する方向は高さ方向に限られず、設置する方向は設置場所などによって適宜選択することができる。また、外壁は建築物の外周壁の他に、塀、屋根、住宅の土台ののり面、シャッターボックスの外面なども含むものとする。
【0047】
図4はマンションのベランダ15の下部壁面(スラブ壁面)16に外壁面設置用太陽熱集熱器10をベランダ下部壁面設置用太陽熱集熱器として設置する例を示す。下部壁面16は上面に手摺17が設置されているベランダ手摺下部壁面である。下部壁面16にはアングル18aがボルト19aによって固定されている。また、アングル18bがボルト19cによって外壁面設置用太陽熱集熱器10の連結部7に固定されている。アングル18a、18bがボルト19bによって固定されることで、下部壁面16に外壁面設置用太陽熱集熱器10が設置される。下部壁面16の上面には意匠パネル20が設置されている。この意匠パネル20は外筐6の連結部7、8と同様な形状を有する部分20a、20bを有し、これらの部分20a、20bが外筐6の連結部7、8と連結している。
【0048】
この第1の実施の形態によれば、長尺で薄型のパネル状の外壁面設置用太陽熱集熱器10を得ることができる。この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、樹脂枠体21を全て樹脂部材で構成し、少なくとも一部が集熱層3からなる流体流路5の外壁を金属部材で構成し、それぞれ別個に成形した後に組み合わせて製造したので、外壁面設置用太陽熱集熱器10の成形時における、成形材料の膨張係数の違いにより生じる歪を軽減するとともに、流体流路5の外壁を熱伝導率の高い金属で構成したので、集熱効率を向上させることができる。また、この外壁面設置用太陽熱集熱器10の設置においては、建築物の壁面の限られた領域においても容易に設置可能であり、例えばマンションのベランダの下部壁面16に容易に設置が可能である。また、連結部7、8を利用することにより、外壁面設置用太陽熱集熱器10を容易に相互連結が可能である。また、ベランダ下部壁面16における意匠パネル20との取り合いも容易であるので、ベランダ15の下部壁面16に外壁面設置用太陽熱集熱器10を設置したとしても、ベランダ15の下部壁面16と一体をなす形で設置されるので、ベランダ15の下部壁面16の意匠性を損なうことがない。さらに、外筐6の連結部7、8の係合により外壁面設置用太陽熱集熱器10同士を連結することができるので、外壁面設置用太陽熱集熱器10が太陽熱により熱収縮してもひずみが生じるのを防止することができ、外壁面に対し安定した設置をすることができる。
【0049】
第2の実施の形態
図5AおよびBは、第2の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を示す。図5Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図5Aは図5BのB−B’線に沿っての断面図である。
図5AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10の本体部10aは、外筐6からなる樹脂枠体21と、外壁の少なくとも一部が集熱層3からなり、少なくとも一つの流路を有する流体流路5と、断熱層4とからなり、樹脂枠体21は太陽光入射部が開口している。透明層1は流体流路5の外壁の外面のうち、太陽熱入射部に対応する部分に接して設けられており、好適には、透明層1の上記太陽光入射部とは逆側の面の少なくとも一部が流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接して設けられており、より好適には、透明層1の上記太陽光入射部とは逆側の面の全てが流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接するように設けられる。透明層1は上記に挙げた透明材料の中から適宜選択され、その中でも断熱性能の高いものが好ましく、可視領域から遠赤外領域の光の透過率が高く、断熱性能が高いものがより好ましい。透明層1は、具体的には、透明断熱フィルム、透明断熱樹脂、透明断熱ガラスなどの薄い層で構成されるが、透明層1を構成する材料および形態はこれに限られるものではない。その他のことは第1の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0050】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10は従来公知の技術によって製造することができるが、各種の押し出し成形を組み合わせて製造すると高い生産性で製造することができる。具体的には、外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aは、図6Aに示すような太陽光入射部が開口した中空形状を有する樹脂枠体21と、図6Bに示すような少なくとも一つの流路を有し、外壁の少なくとも一部が集熱層3で構成され、上記流路内部には流体を流すことができる流体流路5とをそれぞれ別個に成形製造し、その後に上記太陽光入射部と集熱層3の少なくとも一部が対向するように流体流路5が樹脂枠体21の中空部22に挿入され、必要に応じて固定され、中空部22における流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層4が挿入され、必要に応じて固定され、上記太陽光入射部に対応する部分の流体流路5の外壁面に接して透明層1を設けることによって製造される。透明層1は、透明層1の中空部22側の面の少なくとも一部が、流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接するように設けることが好適であって、透明層1の中空部22側の全面が、流体流路5の外壁を構成する集熱層3に接するように設けることがより好適である。透明層1を流体流路5の外壁面に接するように設ける方法は、従来公知の方法を適宜選択することができ、具体的には、接着、圧着、融着、蒸着、塗布などが挙げられるが、透明層1を流体流路5の外壁面に接するように設ける方法はこれらに限定されるものではない。また、成形の容易さから、流体流路5の外壁を全て金属の単一部材で構成することが好適であって、より好適には、金属材料である集熱層3で流体流路5の外壁が構成され、この場合、集熱層3は、具体的にはアルミニウム合金が選ばれる。
【0051】
この第2の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、透明層1を流体流路5の太陽熱入射部に対応する部分に接して設けたので、空気層2を設ける必要が無く、さらに透明層1を薄い透明断熱フィルムなどで構成したので、空気層2を設けた構成の外壁面設置用太陽熱集熱器10よりも薄型の外壁面設置用太陽熱集熱器10とすることができる。
【0052】
第3の実施の形態
図7AおよびBは、第3の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図7Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図7Aは図7BのB−B’線に沿っての断面図である。
図7AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、外壁面設置用太陽熱集熱器10の要部である本体部10aが、透明層1、空気層2、集熱層3、流体流路5および断熱層4を兼用する外筐6により構成され、集熱層3は空気層2を介して透明層1と対向して設けられている。透明層1の外周部はこの透明層1の太陽光入射部側の面に対して垂直に折れ曲がっており、この折れ曲がった部分が断熱層4を兼用する外筐6と一体になって筒型の中空形状を有する樹脂枠体21を構成している。樹脂枠体21の中空部22内の、透明層1と集熱層3とにより囲まれた空間が空気層2を構成している。断熱層4を兼用する外筐6は集熱層3の外表面のうち、空気層2に接する面と反対側の面のほぼ全てまたは空気層2に接する面の空気層2に接する面以外のほぼ全てを覆う形で接して設けられている。断熱層4を兼用する外筐6が空気層2に接する面と反対側の面のほぼ全てを覆う場合にあっては、樹脂枠体21は、透明層1の折れ曲がった部分が集熱層3を介して断熱層4を兼用する外筐6と一体となることで構成される。また、断熱層4および外筐6とはそれぞれ別々に構成しても良く、その場合、断熱層4は、集熱層3の外表面のうち、空気層2に接する面と反対側の面のほぼ全てまたは空気層2に接する面の空気層2に接する面以外のほぼ全てを覆う形で接して設けられ、外筐6は断熱層4の全体を覆う形態で設けられている。流体流路5は、樹脂枠体21の中空部22に、流体流路5の外壁の外面のうち空気層2に接する上記外壁の外面以外が樹脂枠体21と接する形態で一体となるように成形されて構成されており、樹脂枠体21と流体流路5の外壁とが全て樹脂からなり、異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されている構成が好ましい。樹脂枠体21と流体流路5の外壁とが全て樹脂からなる場合においては、樹脂枠体21は透明層1である透明樹脂と断熱層4を兼用する外筐6である断熱性樹脂とによって構成され、流体流路5の外壁は集熱層3である伝熱性樹脂および/または断熱層4を兼用する外筐6である断熱性樹脂によって構成される。流体流路5は、外壁の少なくとも一部が集熱層3により構成される。流体流路5は、具体的には、例えば、集熱層3あるいは集熱層3と断熱層4を兼用する外筐6とに跨る領域に貫通孔を設けて構成してもよいし、上記貫通孔に管を挿入することにより形成してもよい。管の材質は特に使用する流体に対して耐腐食性を持ち、耐熱性が高く、温度変化に安定で熱伝導性が高いものであればどのようなものであってもよく、管は耐圧性が高く圧力損失の低い形態で構成されることが好ましく、典型的には、アルミニウム合金管、銅合金管、ステンレス鋼管などの金属管が使用されるが、管はこれらに限定されるものではなく、樹脂製の管であっても、複合材料管であってもよく、使用する流体によって適宜選択される。また、断熱層4および外筐6とを別々に構成する場合にあっては、流体流路5は、集熱層3あるいは断熱層4が固体の断熱材で充填されていれば、集熱層3と断熱層4に跨る領域に貫通孔を設けて構成してもよいし、上記貫通孔に管を挿入することにより構成してもよいが、流体流路の形態はこれらに限定されるものではない。
【0053】
透明層1、集熱層3、断熱層4、流体流路5の外壁および外筐6の材質の一例を挙げると、透明層1はポリカーボネート、集熱層3は不飽和ポリエステル系複合材、断熱層4を兼用する外筐はポリウレタン樹脂が挙げられる。また、また、流体流路5を流れる流体は不凍液である。
【0054】
また、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、樹脂枠体21が透明層1を有しない構成であってもよく、その場合、外壁面設置用太陽熱集熱器10は、太陽光入射部が開口した中空の樹脂枠体21と、樹脂枠体21の中空部22に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層3からなる一つまたは複数の流体流路5と、樹脂枠体21の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層4と、上記太陽光入射部に対応する部分の流体流路5に接して設けられた透明層1とを有し、集熱層3の少なくとも一部は透明層1と対向しており、樹脂枠体21および流体流路5の外壁は一体成形されて構成され、好適には、異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されて構成される。また、樹脂枠体21は樹脂で構成されない枠体であってもよい。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0055】
この外壁面設置用太陽熱集熱器10は従来公知の技術によって製造することができるが、樹脂のみを材料として用いた異形押し出し成形法によって一体成形し製造すると高い生産性で製造することができる。特に複数台の単軸押し出し成形機からなる多層異形押し出し成形装置を用いた、多層異形押し出し成形法による異種の樹脂の同時押し出し(共押し出し)によって一体成形することが好適である。具体的には、例えば、図8に示すような単軸スクリュー押し出し成形機33a、33bおよび33cを備えた多層異形押し出し成形装置30を用いて、多層異形押し出し成形装置30のダイス31にセットし、これと同時に透明層1を構成する透明樹脂32a、集熱層3を構成する伝熱性樹脂32bおよび断熱層4を兼用する外筐6を構成する断熱性樹脂32cを、それぞれ単軸スクリュー押し出し成形機33a、33bおよび33cによって、矢印の方向に押し出し成形をする。透明樹脂32a、伝熱性樹脂32bおよび断熱性樹脂32cは予めヒータなどで加熱されており、スクリュー34a、34bおよび34cで押し出され、ダイス31の口金にて図7Aに示すような断面形状に成形される。成形され押し出された樹脂32a、32bおよび32cは冷却され硬化し、硬化した異形樹脂部材は、裁断機によって所望の寸法に裁断され本体部を形成する。
また、この外壁面設置用太陽熱集熱器10の樹脂枠体21が透明層1を有しない構成である場合にあっては、太陽光入射部が開口した中空の樹脂枠体21と、樹脂枠体21の中空部22に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層3からなる一つまたは複数の流体流路5と、樹脂枠体21の、流体流路5に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層4とを有し、集熱層3の少なくとも一部は透明層1と対向しており、樹脂枠体21および流体流路5の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されており、上記太陽光入射部に対応する部分の流体流路5に接して透明層1を設けるようにして製造される。樹脂枠体21および流体流路5の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形する方法は上記に挙げた方法を適宜選択することができるが、上述した多層異形押し出し成形法による異種の樹脂の同時押し出しによって一体成形することが好適である。また、流体流路に透明層1を設ける方法は、上記に挙げた方法を適宜選択することができるが、流体流路5の上記太陽光入射部側の面に透明断熱フィルムなどを貼り付けて構成する方法が好適である。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10の製造方法と同様である。
【0056】
この第3の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、透明層1と、集熱層3と、断熱層4を兼用する外筐6とを全て樹脂材料で構成し、多層異形押し出し成形法による異種の樹脂の同時押し出し成形で透明層1と、集熱層3と、断熱層4を兼用する外筐6とを一体に同時成形したので、樹脂枠体21に集熱層3を挿入し接合する工程を省略できるなど、外壁面設置用太陽熱集熱器10の製造工程を最小限とすることができ、集熱層3を別個に形成する必要が無いので、押し出し成形装置一台で外壁面設置用太陽熱集熱器10を製造することができる。
【0057】
第4の実施の形態
図9AおよびBは、第4の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図9Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図9Aは図9BのC−C’線に沿っての断面図である。
図9AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、透明層1、空気層2、集熱層3、断熱層4、流体流路5および外筐6で構成され、外壁面設置用太陽熱集熱器10の形状を少なくとも一箇所に折れ曲り部を有する折曲形状として構成したものである。具体的には、断面形状が長方形の外壁面設置用太陽熱集熱器10の樹脂枠体21、断熱層4および集熱層3を、外壁面設置用太陽熱集熱器10の断面長手方向の中心において「くの字」状に折り曲げた形状を有しており、流体流路5は折れ曲り形状に沿って断面形状が台形と長方形とに形成される。また、この第4の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10の形状は、折曲形状に限られず、設置する外壁面の形状などによって適宜選択可能であって、折曲形状の他には、例えば、屈曲形状、弓形形状、波型形状などが挙げられ、これらの形状を互いに組み合わせたもの、直線形状にこれらの形状を組み合わせたものであってもよく、設置場所に応じて適宜選ばれる。また、この第4の実施の形態における外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成は、第1〜第3の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成を適宜選択して用いることができる。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0058】
この第4の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10によれば、第1の実施の形態の外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様な利点に加えて、外壁面設置用太陽熱集熱器10の形状を、少なくとも一箇所の折れ曲り部を有する折曲形状としたので、外壁面設置用太陽熱集熱器10を外壁面の角部などに沿って密着した安全な設置が可能である。また、外壁面設置用太陽熱集熱器10は薄型で簡易な構成であるので設置面の形状に応じて容易に形状を変更可能であり、あらゆる形状の設置面に対して密着して設置が可能なので、設置面が曲面を有する外壁面、凹凸形状を有する外壁面などであっても、設置面に対して最適に設計することで高い集熱効率を発揮することができる外壁面設置用太陽熱集熱器10を得ることができる。
【0059】
第5の実施の形態
図10A、BおよびCは、第5の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図10A、BおよびCは外壁面設置用太陽熱集熱器10の断面図である。
外壁面設置用太陽熱集熱器10を垂直面である外壁面に設置する場合、図10AおよびBに示すように、太陽高度は年間を通して変化するので、外壁面設置用太陽熱集熱器10の透明層1への太陽光の入射角は、例えば、東京(北緯35°)においては冬季では図10Bに示すとおり南中で32°であるのに対し、夏季においては図10Aに示すとおり南中で78°となり入射角が大きいため、全反射する太陽光が相対的に増加することで集熱層3に到達する太陽光は減少する。
【0060】
そこで、この第5の実施の形態においては、透明層1と集熱層3との間に空気層2を有する構成の外壁面設置用太陽熱集熱器10において、透明層1の空気層2に接する面に、図10Cの破線部拡大図に示すように、太陽光を散乱させる凹凸1aを設ける。こうすることで、透明層1への太陽光の入射角が大きくても、透明層1の空気層2に接する面で散乱されることにより、集熱層3に到達する太陽光の減少を低く抑えることができる。透明層1の空気層2に接する面に太陽光を偏光させる機能を備えさせ、透明層1の空気層2と接する面と逆側の面の表面にコーティング材をコーティングすることで低反射・高透過性を得ることもでき、これらを組み合わせてもよい。また、透明層1と集熱層3との間に空気層2を有さない構成の外壁面設置用太陽熱集熱器10においては、透明層1を屈折率の異なる透明材料を積層させて構成し、透明層1の積層界面に、太陽光を散乱させる凹凸1aを設けることで、上述したものと同様の効果を得ることができる。また、この第5の実施の形態における外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成は、第1〜第4の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成を適宜選択して用いることができる。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0061】
この第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、例えば、透明層1に対する太陽光の入射角が大きい夏季の南中時においても、太陽熱を十分に利用することができるという利点を得ることができる。
【0062】
第6の実施の形態
図11A、BおよびCは第6の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図11Aは外壁面設置用太陽熱集熱器10の断面図、図11Bは図11A中の円周で囲った部分10dの要部拡大図、図11Cは図11Aの円周で囲った部分10eの要部拡大図である。
この第6の実施の形態においては、第1〜第4の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10において、透明層1の空気層2に接する面の少なくとも一部に太陽光を散乱させる凸部1bと、流体流路5の外壁の内面のうち少なくとも一部に凹凸を設け、凹凸面3aとしたものである。ここで、流体流路5の外壁の内面とは、流体流路5の外壁が形成する面のうち、流路内を流れる流体に直接接触可能である面のことをいう。
図11Aに示すように、透明層1の空気層2に接する面に太陽光を散乱させる凸部1bが設けられ、さらに流体流路5の外壁の内面のうち、長手方向の面にそれぞれウィック(蛇腹)状の凹凸面3aが設けられている。また、透明層1の空気層2に接する面に太陽光を散乱させる凸部1bのみを設ける構成、流体流路5の外壁の内面にウィック状の凹凸面3aを設けるのみの構成であってもよいが、透明層1および流体流路5の外壁の内面に凹凸を設ける構成はこれらに限定されるものではない。
また、図11Bに示すように、透明層1の空気層2に接する面に少なくとも1つ設けられた凸部1bは、底面が半円の柱形状であって、好適には、透明層1の断面の長手方向の中心部から等間隔で複数の凸部1bが振り分けられる形態で設けられ、特に、同一半径の凸部1bが透明層1に複数設けられる形態が好適である。透明層1に設けられる凸部1bの寸法の一例を挙げると、設置面に垂直な方向の長さ(厚さ)が2mm、長手方向に垂直な方向の幅が150mmである透明層1の空気層2に接する面に、底面が半径1mmの半円である柱形状の凸部1bを設ける場合を考えると、凸部1bは、透明層1の長手方向の中心である、透明層1の長手方向端部から中心に向かって75mmの位置に、凸面1bの底面である半円の中心が来るように設けられ、そこから透明層1の断面の長手方向両端部に向かって、隣り合う凸部1bの底面の中心の距離が5mmの等間隔でそれぞれ平行に14個の凸部1bが設けられ、透明層1の空気層2に接する面には全部で29個の凸部1bが設けられるが、これに限定されるものではなく
また、図11Cに示すように、流体流路5の外壁の内面のうち長手方向の面の形状がウィック状の凹凸面3aとなっている。凹凸面3aは伝熱表面積が大きく、流体の流れ損失の小さな形状であれば、基本的にはどのような形状であってもよく、上記に挙げた形状を適宜選択することができる。その他のことは第5の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
【0063】
この第6の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点に加えて、流体流路5の外壁の内面のうち少なくとも一部に凹凸面を設け、凹凸面3aとしたので、流体流路5の外壁の内面の表面積が拡大することで流れる流体への伝熱面積が拡大し、流体流路5の外壁を構成する集熱層3または集熱層3から流体流路5の外壁を経て流体流路5の内部を流れる流体への伝熱効率を向上させることができる。
【0064】
第7の実施の形態
図12AおよびBは、第7の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を示す。図12Bは外壁面設置用太陽熱集熱器10の平面図であり、図12Aは図12BのE−E’線に沿っての断面図である。
図12AおよびBに示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器10は、流体流路5の両端部に接続されているジョイント11が外壁面設置用太陽熱集熱器10の端部10bにおける本体部10aと端部10bとの接合面と平行な外面に設けられていることが、第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と異なる。また、この第7の実施の形態における外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成は、第1〜第6の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10の構成を適宜選択して用いることができる。その他のことは第1の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10と同様である。
この第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、ジョイント11を端部10bにおける本体部10aと端部10bとの接合面と平行な外面に設けたので、外壁面設置用太陽熱集熱器10を並列に相互連結して外壁面に設置する際に、ジョイント11に連結する配管の取り回しを簡易にすることができる。
【0065】
第8の実施の形態
図13はこの発明の第8の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムを示す。この外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムは、第1〜第7の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器10と貯湯タンクとを組み合わせた外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムである。
図13に示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、外壁面設置用太陽熱集熱器10に設けられた二つのジョイントにそれぞれ配管42が接続されている。これらの配管42には温度センサー41が取り付けられており、配管42を流れる不凍液の温度を測定することができるようになっている。一方の配管42は循環ポンプ43の吐出口と接続されている。循環ポンプ43は、太陽光パネル43aで発電される電力によって駆動することができ、あるいは太陽光パネル43aの出力に応じて制御することができるようになっている。他方の配管42は熱交換器である主加熱部44の入口と接続されている。主加熱部44の出口とポンプ43の吸込口とは配管42によって接続されている。配管42にはリザーブタンク45と接続され、このリザーブタンク45から必要に応じて不凍液を補充することができるようになっている。配管42は不凍液が流れる流体配管である。
【0066】
主加熱部44は貯湯タンク46に貯蔵された水道水を加熱可能な形態で内部に設置されている。貯湯タンク46は、軽量化のために、好適には樹脂により形成されるが、これに限定されるものではない。貯湯タンク46の上部の出口には配管47aが接続されている。貯湯タンク46の側面の上部、中央部、下部には温度センサー41が取り付けられている。配管47aにも温度センサー41が取り付けられている。配管47aには電動三方弁からなる調整弁48が設けられ、その下流には補助加熱装置49が配管47aによって接続されている。調整弁48は制御装置48aによって制御することができるようになっている。調整弁48は、バイパス配管47bによって、貯湯タンク46の底部の入口に接続された給水配管47cと接続されている。給水配管47cにも温度センサー41が取り付けられている。補助加熱装置49で加熱された水は出湯配管47dによって外部に供給される。出湯配管47dにも温度センサー41が取り付けられている。主加熱部44、貯湯タンク46、補助加熱装置49などによって給湯器50が構成される。
【0067】
この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの動作について説明する。
循環ポンプ43から吐出された不凍液は、配管42を通り外壁面設置用太陽熱集熱器10に入り、外壁面設置用太陽熱集熱器10で熱を吸収し加熱された不凍液は、配管42を介して熱交換器である主加熱部44に供給される。この不凍液は、貯湯タンク46内の水道水と熱交換を行って熱を放出した後に循環ポンプ43に吸入され、再び循環ポンプ43から吐出されることにより強制的に循環される。
【0068】
貯湯タンク46には底部に接続された給水配管47cにより外部から水道水が給水され、上部に接続された出湯配管47aによって調整弁48および補助加熱装置49を介して給湯配管47dによって外部に給湯される。
【0069】
貯湯タンク46に貯蔵される温水の温度が所望の温度であれば、出湯配管47aを通り調整弁48および補助加熱装置49を介しそのまま外部に供給されて使用される。貯湯タンク46に貯蔵される温水の温度が所望の温度よりも低い場合は主加熱部44により貯湯タンク46に貯蔵される温水を更に加熱することで、もしくは所望の分量の温水を貯湯タンク46から出湯配管47aを通り調整弁48を介して補助加熱装置49に送り、補助加熱装置49で所望の温度となるまで加熱してから外部に供給される。貯湯タンク46に貯蔵される湯の温度が所望の温度よりも高い場合は、給水配管47cに供給される水道水を貯湯タンク46の底部から内部に導入して貯湯タンク46の内部の温水と混合することにより温度調整が行われ、もしくは所望の分量の温水を貯湯タンク46から出湯配管47aを通り調整弁48を介して補助加熱装置49に送り、温水が調整弁48を通る際に給水配管47cに供給される水道水をバイパス配管47bを介して混合することにより温度調整が行われ、湯の温度が所望の温度とされる。
【0070】
また、調整弁48の制御により、貯湯タンク46から供給される温水と、給水配管47cから供給される水道水とを混合することで、補助加熱装置49の流入口の温度制御を行うことができる。具体的には、温度センサー41と制御装置48aとにより電動三方弁である調整弁48を制御して補助加熱装置49の給水口温度を制御することにより、補助加熱装置49の給水口温度が急激に変動することによる出湯温度のハンチング現象や、最小加熱による温度上昇が比較的大きいことから起きる給水温度が給湯温度に近い場合における給湯温度の設定値越えなどの発生を防止することが可能となる。
【0071】
図14および図15は、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムをマンションなどの集合住宅に設置した一例を示す。
図14に示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおいては、長尺で薄型のパネル状の外壁面設置用太陽熱集熱器10が、手摺52が設置されているベランダ51の下部壁面(スラブ壁面)53および外壁面54に設置されている。
【0072】
図15は図14のF−F’線に沿っての断面図(拡大図)である
図15に示すように、外壁面設置用太陽熱集熱器10がベランダ51における手摺52の下部壁面53に設置され、主加熱部44、貯湯タンク46、補助加熱装置49などによって構成される給湯器50はベランダ51に設置されている。配管42の一部はベランダ51内部に埋設される形で設置されている。
また、外壁面54に設置されている外壁面設置用太陽熱集熱器10は、垂直方向を長手方向として横方向に複数連結され、図3に示すような設置形態で外壁面54に設置されている。外壁面設置用太陽熱集熱器10の長さおよび連結する数は設置する外壁の形態、面積などを勘案して適宜決定される。
【0073】
この第8の実施の形態によれば、マンションのベランダなどに容易に設置可能な外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムを実現することができる。この場合、外壁面設置用太陽熱集熱器10をベランダ51の下部壁面53に設置することにより、ベランダ51の手摺52の一部もしくは全体が太陽熱集熱器によって占有されてしまうということがなく、日常生活におけるベランダ51の手摺52の利用に支障が生じることがない。しかも、外壁面設置用太陽熱集熱器10は長尺で薄型のパネル状に構成され、ベランダ下部壁面のような外壁の限られた領域の外壁面設置に特化されているので、従来の太陽熱集熱器をベランダ下部壁面に設置する場合に比べて安全に設置が可能で意匠性も良い。同様に、他の限られた領域の外壁面においても、外壁面設置用太陽熱集熱器10の長さを自由に設定可能なので、設置する外壁面の領域に合わせて適宜長さを決定し、並列に連結することで従来の太陽熱集熱器を外壁面に設置する場合に比べて安全に設置が可能で意匠性も良い。また、貯湯タンク46を軽量の樹脂タンクにより構成することにより、従来のステンレスタンクに比べて大幅な軽量化が可能となるため、ベランダ51に設置する際の作業が容易となり、一般的な集合住宅のベランダに容易に設置することが可能である。
【0074】
第9の実施の形態
この発明の第9の実施の形態においては、第8の実施の形態における貯湯タンク46として、図16に示すものを用いる。
図11に示すように、この貯湯タンク46は、壁が、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる内層46aと、ポリアミド樹脂からなり内層46aの外方に設けられる外層46bと、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリアミド樹脂を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、内層46aと外層46bとの間に位置する中間層46cとを有する多層構造体から構成される。こうすることで、貯湯タンク46の耐熱性および耐圧の向上を図ることができるだけでなく、壁が樹脂により構成されているため貯湯タンク46の軽量化を図ることができる。好適には、この貯湯タンク46の壁の厚さは7mm以上であり、内層46a、中間層46c、外層46bの厚さ比率は、内層:中間層:外層=4:1:5〜8:1:1の範囲であり、最も好適には内層:中間層:外層=6:1:3である。例えば、壁の厚さが7mm、内層46a、中間層46c、外層46bの厚さ比率が6:1:3である時、87℃での耐圧は1.0MPaとなり、一般水道圧0.5MPaに対し安全係数2を確保することができる。
【0075】
この第9の実施の形態によれば、第8の実施の形態と同様な利点に加えて、貯湯タンク46の耐熱化、高耐圧化および軽量化を図ることができ、外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システム全体の軽量化を図ることができるという利点を得ることができる。
【0076】
第10の実施の形態
図17はこの発明の第10の実施の形態による外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの全体構成、図18はこの外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムの温度調整システムを含む要部を示す。この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、第1〜第8の実施の形態のいずれかの外壁面設置用太陽熱集熱器と貯湯タンクとを組み合わせ、さらに外部に供給する湯の温度調整システムを設けた外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムである。
図17および図18に示すように、この外壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムは、外壁面設置用太陽熱集熱器10に設けられた二つのジョイントにそれぞれ配管62が接続されている。これらの配管62には温度センサー61が取り付けられており、配管62を流れる不凍液の温度を測定することができるようになっている。一方の配管62は循環ポンプ63の吐出口と接続されている。循環ポンプ63は、太陽光パネル63aで発電される電力によって駆動することができ、あるいは太陽光パネル63aの出力に応じて制御することができるようになっている。他方の配管62は熱交換器である主加熱部140の入口と接続されている。主加熱部140の出口と循環ポンプ63の吸込口とは配管62によって接続されている。配管62はリザーブタンク65と接続され、このリザーブタンク65から必要に応じて不凍液を補充することができるようになっている。配管62は不凍液が流れる流体配管である。この外壁面設置用太陽熱集熱器10を用いた太陽熱利用システムは、温度調整システムを有する給湯器110を有する。
【0077】
温度調整システムを有する給湯器110(以下「温度調整システム110」とする)の詳細を図18〜図20を参照して説明する。
供給部120から供給された被加熱流体fは、貯湯タンク130の下層側135(図中のタンク下側)に位置する入口131から貯湯タンク130内部に流れ込む。貯湯タンク130内部に設けられた主加熱部140は、被加熱流体f1を加熱する。加熱された被加熱流体f1は、貯湯タンク130の上層側137(図中のタンク上側)に位置する出口133から排出させ、第1ライン171を介して補助加熱装置150に流し込む。この第10の実施の形態において、貯湯タンク130の下層側135とは、貯湯タンク130内に供給された被加熱流体f1が滞留し始める貯湯タンク130の下部側であり、貯湯タンク130の上層側137とは、貯湯タンク130内に供給された被加熱流体f1が排出される出口133が設けられた貯湯タンク130の上部側のことである。
【0078】
第1ライン171には、流体用の配管を利用している。配管には、流体の導流に一般的に利用される鋼管等を適宜選択することができる。第1ライン171上における第1調整弁180と第2調整弁190との間には、被加熱流体f3の逆流を防止するための逆止弁125を設けている。
【0079】
主加熱部140は、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1を加熱して温度を制御する。主加熱部140には、流体を加熱するために用いられるヒータを利用することが可能である。ヒータには、例えば、ヒートポンプ式熱交換システムや、ソーラー式熱交換システム、排熱利用式システム等に組み込まれた循環式の熱交換器等を利用することが可能である。貯湯タンク130内に供給された被加熱流体f1は、主加熱部140によって90℃程度まで加熱している。貯湯タンク130内が満水状態になった場合には、設定された90℃を維持するように保温を行う。主加熱部140が調整する被加熱流体f1の温度は、使用用途に応じて適宜変更することが可能である。
【0080】
補助加熱装置150は、第1ライン171を介して貯湯タンク130から導かれる被加熱流体f4を、ユーザーが望む設定温度に加温調整して提供する。補助加熱装置150は、第1ライン171から導かれた被加熱流体f4の温度を入口温度として検知する。第1ライン171の途上に配置された第1調整弁180、および所定の条件で作動する第2調整弁190によって混合調整された被加熱流体f4が補助加熱装置150の入口151へ導かれる。補助加熱装置150の入口151で検知された被加熱流体f4の温度が設定温度よりも低い場合には、設定温度まで加温調整する、加温調整させた被加熱流体f5は、補助加熱装置150の出口153から排出させて、ユーザーに提供する。補助加熱装置150には、例えば、ユーザーによって直接温度設定が可能な公知の給湯器用ヒータ等を利用することが可能である。
【0081】
供給部120は、温度調整システム110内の貯湯タンク130、第1調整弁180、および第2調整弁190のそれぞれに被加熱流体fを供給する。被加熱流体fには、例えば、常温の上水を利用することが可能である。被加熱流体fの種類、および共有時の温度等は、温度調整システム110の使用目的に応じて適宜変更することが可能であり、特に限定されるものではない。
【0082】
供給部120から貯湯タンク130への被加熱流体fの供給には、タンク用ライン174を利用する。タンク用ライン174は、供給部120から延びて貯湯タンク130の下端部に接続されている。このため、供給部120から貯湯タンク130へ被加熱流体fを供給すると、貯湯タンク130内の下層側135から上層側137へ被加熱流体fが徐々に満たされる。
【0083】
供給部120から第1調整弁180への被加熱流体fの供給には、タンク用ライン174から分岐する第2ライン172を利用する。供給部120から供給された被加熱流体fは、第2ライン172を介して、第1ライン171の途上に設けられた第1調整弁180へ導かれる。第1調整弁180へ供給する被加熱流体fの流量は、第1制御部185によって制御する。
【0084】
供給部120から第2調整弁190への被加熱流体fの供給には、第2ライン172から分岐する第3ライン173を利用する。供給部120から供給された被加熱流体fは、第3ライン173を介して第1調整弁180と補助加熱装置150との間に設けられた第2調整弁190へ導かれる。第2調整弁190へ供給する被加熱流体fの流量は、第2制御部195によって制御する。
【0085】
第2ライン172、第3ライン173、およびタンク用ライン174には、流体用の配管を利用している。配管には、流体の導流用に一般的に利用される鋼管等を適宜選択することが可能である。
【0086】
供給部120は、ユーザーによる貯湯タンク130内の被加熱流体f1の使用に伴って、使用量に応じた量の被加熱流体fを貯湯タンク130に随時供給する。主加熱部140によって90℃まで加熱した被加熱流体f1を単位時間当たりに大量に使用すると、貯湯タンク130内には90℃の被加熱流体f1と供給部120から供給された比較的低温の被加熱流体fとによって温度境界bが形成される。この温度境界bは、下層側135から供給された被加熱流体fによって形成される低温域a1と、低温域a1よりも上層側137に位置する加熱された90℃の被加熱流体f1によって形成される高温域a2とを区分けするものである。単位時間当たりにおける被加熱流体の大量使用が続くと、高温域a2の被加熱流体の残量が低下し、低温域a1の被加熱流体の量が増加する。温度境界bは、下層側135から徐々に上層側137へ遷移する。使用がさらに続くと、温度境界bが貯湯タンク130の出口まで到達し、貯湯タンク130から排出される被加熱流体f2の温度が急激に低下する湯切れが発生する。湯切れ状態になった場合においても、主加熱部140による加熱は継続して行われる。単位時間当たりにおける被加熱流体f1の使用量が減少すると、貯湯タンク130内の被加熱流体f1の加熱が進み、タンク内には90℃の被加熱流体が再び満たされることになる。
【0087】
貯湯タンク130の外壁139には、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1の温度を検知する検知部160を設置している(図20を参照)。検知部160には、ガスを封入した感温筒を利用している。検知部160は、貯湯タンク130内の被加熱流体f1から貯湯タンク130の外壁139に伝わった熱量を取得する。この熱量に基づいて被加熱流体f1の温度境界bを検知する。検知部160は、温度境界bを検知すると、封入したガスを凝縮させて液化させる。この液体は、キャピラリチューブ163を介して第2制御部195へと圧送される。第2制御部195は、検知部160が温度境界bを検知したことをトリガーとして、第2調整弁190の作動を開始する。検知部160が検知する温度境界の閾値や、温度境界を形成する低温域の温度、および高温域の温度等は、特に限定されるものではなく、任意の値に設定することが可能である。また、検知部160として利用される感温筒の外形形状や、内部に封入されるガスの種類等は、特に限定されるものではなく公知のものを適宜利用することが可能である。
【0088】
第1ライン171の途上に設けられた第1調整弁180には、貯湯タンク130の側から見て上流側に位置する第1口181と、供給部120から供給された被加熱流体fを受け入れる第2口182と、貯湯タンク130の側から見て第1口181よりも下流側に位置する第3口183とを備えた三方弁を利用している。第1調整弁180は、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2と、供給部120から供給された被加熱流体fとを混合調整して、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2を所定の第1温度に調整する。第1温度に調整した被加熱流体f3は第3口183から排出させて、第1ライン171に流し込む。
【0089】
一般的に、家庭の浴槽等において湯水を使用する場合には、ユーザーは40〜43℃程度に温度調整して使用する。上記の温度調整システム110にあっては、貯湯タンク130において90℃程度まで被加熱流体f1を加熱させて保持した後、第1調整弁180によって35℃程度まで低下させる。最終的に、補助加熱部150を使用して設定温度である40〜43℃程度まで加温調整する。この40〜43℃に加温調整した被加熱流体f5をユーザーに提供する。貯湯タンク130から排出した被加熱流体f2の温度を一旦第1温度まで低下させることによって、補助加熱装置150による設定温度への加温調整を行うことが可能になる。このため、第1調整弁180によって調整される第1温度は、供給部120から供給される被加熱流体fの温度よりも高く、かつ、ユーザーが望む設定温度よりも低い温度に設定している。供給部120から供給した被加熱流体fを混合調整させるため、第1温度が供給部120から供給される被加熱流体fの温度よりも低くなることはない。
【0090】
第1制御部185は、被加熱流体f3が第1温度に維持されるように、第1調整弁180の作動を制御する。第1調整弁180は、第1口181から入り込む被加熱流体f2の温度に基づいて、第2口182の弁の開度を機械的に調整するワックスサーモアクチュエータを備えている。この機構を第1制御部185として機能させている。貯湯タンク130から導かれた被加熱流体f2の温度が低下すると、第2口182の開度を絞って、供給部120からの被加熱流体fの供給量を低下させる。貯湯タンク130から導かれた被加熱流体f2の温度が高くなると、第2口182の開度を大きくして、供給部120からの被加熱流体fの供給量を増加させる。このように、第1制御部185は、第1口181から入り込む被加熱流体f2の温度に基づいて、第1温度が維持されるように第1調整弁180の作動を機械的に制御する。
【0091】
第1調整弁180と補助加熱装置150との間に配置された第2調整弁190には、第1調整弁180の側から見て上流側に位置する第1口191と、供給部120から供給された被加熱流体fを受け入れる第2口192と、第1調整弁180の側から見て第1口191よりも下流側に位置する第3口193とを備えた三方弁を利用している。第1調整弁180によって第1温度に調整された被加熱流体f3と、供給部120から供給される被加熱流体fとを混合調整する。これによって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度を調整する。第2調整弁190によって混合調整された被加熱流体f4は、第3口193から排出させて、第1ライン171に流し込む。第1ライン171へ流し込まれた被加熱流体f4は、補助加熱装置150の入口151へ流れ込む。
【0092】
第2制御部195は、検知部160が貯湯タンク130内の温度境界bを検知したときに、第2調整弁190を作動させる。この第10の実施の形態にあっては、第2調整弁190に、検知部160が検知した熱量に基づいて第2口192の開度を機械的に制御する温度式制水弁としての機構を付加している。この機構が、第2制御部195として機能する。
【0093】
第2調整弁190は、検知部160に封入したガスが液化してなる作動流体161を駆動源として作動する。検知部160が、低温域a1からの熱、すなわち冷熱を取得すると、封入したガスが液化して作動流体161となる。作動流体161はキャピラリチューブ163を介して第2調整弁190へ流れ込み、第2口192の開動作を駆動する。検知部160が低温域a1から取得する冷熱量が増加すると、封入したガスの液化量が増加する。これに伴って第2口192の開度が大きくなる。供給部120から供給される被加熱流体fの流量が増加し、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度が低下する。このように、第2制御部195は、検知部160が取得した熱量に基づいて第2調整弁190の作動を機械的な方式によって制御する。電気的な制御システムによって第2調整弁190を制御させる構成を付加する場合と比較して、安価に温度を制御するシステムである温度調整システム110を構成することが可能になっている。第1制御部185とともに、第2制御部195が簡易な機械式の制御システムによって構成されているため、第1、第2制御部185、195および第1、第2調整弁180、190を組み合わせたユニットを既存の温度制御システムに簡便かつ安価に組み込むことが可能になっている。
【0094】
検知部160が温度境界bを検知したときには、貯湯タンク130内に低温域a1と高温域a2が発生した状態となっている。湯切れが発生すると、加熱された高温域a2の被加熱流体に続いて、供給部120から供給された被加熱流体fと同程度の温度を有する低温域a1の被加熱流体が排出される。このため、高温域a2から低温域a1へ変化した被加熱流体f4が第1ライン171を介して補助加熱装置150へ流れ込み、補助加熱装置150へ流れ込む被加熱流体f4の単位時間当たりの温度変化が大きくなる。これによって、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が増加する。このため、従来の温度調整システムにあっては、単位時間当たりに要求される加熱量が急激に変化することによって、補助加熱装置150による加温調整が追従できず、設定温度よりも低い温度で被加熱流体をユーザーに提供してしまうことがある。また、補助加熱装置150による急激な加熱によって、設定温度よりも高い温度で被加熱流体を提供してしまうこともある。したがって、湯切れが発生すると、設定温度に調整された被加熱流体を安定的に提供することが困難になる。
【0095】
これに対して、温度調整システム110は、検知部160が貯湯タンク130内の温度境界bを検知した時点において、すなわち湯切れが発生する前に第2調整弁190による被加熱流体fの混合調整を開始する。第2調整弁190は、第1温度に調整された被加熱流体f3の温度を徐々に低下させることによって、補助加熱装置150へ流れ込む被加熱流体f4の温度が急激に低下することを防止する。これによって、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することを防止して、設定温度に調整された被加熱流体f5を安定的に供給することを可能にする。第2調整弁190を付加して補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することを防止しているため、補助加熱装置150自体の応答性等の性能を向上させる必要がなく、補助加熱装置150には従来から利用されているものを適用することができる。したがって、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することを防止する機能を安価に付加することができ、温度調整システム110全体におけるコストの増加を抑制することが可能となる。例えば、タンク径が280mmの場合において、ユーザーが19リットル/minの被加熱流体を使用すると、温度境界bは5.2mm/sの速度で遷移する。タンク130上端から200mmの位置において温度境界bを検知させ、第2調整弁190による混合調整を開始させた場合、ユーザーが19リットル/minの被加熱流体を引き続き使用すると、温度境界bがタンク130上端まで遷移するのに38秒程度掛かる。したがって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度は、第1調整弁180によって調整された第1温度から、供給部120から導かれる被加熱流体fの温度まで38秒の時間をかけて低下することになる。
【0096】
貯湯タンク130の外壁139には、貯湯タンク130の上層側137から下層側135に向けて漸次的に表面積が大きくなるように形成されたプレート201を設置している。プレート201には、貯湯タンク130の上層側137に位置するように検知部160を取り付けている(図20を参照)。
【0097】
貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1の低温域a1から伝わる熱量に基づいて、機械的に第2調整弁190の作動を制御する場合には、検知部160が低温域a1から取得する熱量を徐々に増加させることが望ましい。温度境界bを検知した時点から第2調整弁190の第2口192の開度を徐々に大きくすることが可能になり、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることが可能になるためである。
【0098】
貯湯タンク130の外壁139に設置されたプレート201は、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1から伝わる熱を集熱し、その熱を検知部160へ伝える。プレート201が、貯湯タンク130の上層側137から下層側135に向けて漸次的に表面積が大きくなるように形成されているため、下層側135から上層側137へ低温域a1が遷移すると、これに比例して低温域a1からプレート201全体へ伝わる冷熱量が徐々に増加する。これによって、プレート201から検知部160へ伝わる冷熱量も徐々に増加する。検知部160へ伝わる冷熱量の増加に伴って、封入したガスの液化量が増加して、第2調整弁190の第2口192の開度が大きくなる。このように、プレート201を利用することによって、プレート201が取得する熱量に比例させて第2調整弁190の第2口192の開度を除々に大きくさせることが可能となり、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることができる。プレート201には、例えば、ステンレス鋼や、アルミニウム、銅などの金属製のものを利用することができる。また、これらの材質のものに限定されず、貯湯タンク130の外壁139から伝わる熱を検知部160に伝達することが可能な材質のものを適宜選択することが可能である。検知部160による温度境界bの検知、および低温域a1からの熱量の検知により感度よく行わせるために、例えば、図示されるように、プレート201において検知部160が設置された箇所の背面となる位置に、部分的に断熱部材203を配置させることが望ましい。
【0099】
次に、実施の形態に係る温度調整システム110の作用について説明する。
図18を参照して、湯切れが発生していない場合には、第2調整弁190の第2口192が全閉状態を維持する。
第1調整弁180は、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2を第1温度として設定された35℃程度に混合調整する。
補助加熱装置150には、35℃に調整された被加熱流体f4が入口151から流れ込む。
補助加熱装置150は、35℃に混合調整された被加熱流体f4を設定温度まで加温調整して、加温調整された被加熱流体f5を出口152に介してユーザーに提供する。
図19を参照して、ユーザーの使用に伴って貯湯タンク130内に保持した被加熱流体f1内に低温域a1と高温域a2が形成されると、検知部160が温度境界bを検知する。検知部160が温度境界bを検知したときに、第2制御部195は、第2調整弁190の作動を開始する。
【0100】
第1調整弁180は、第2調整弁190の作動に関わらず、貯湯タンク130から排出された被加熱流体f2が第1温度になるように混合調整を継続して行う。
第2調整弁190は、第1温度に調整された被加熱流体f3と、供給部120から供給された被加熱流体fとを混合調整する。これによって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度を低下させる。
第2制御部195は、プレート201から検知部160へ伝わる冷熱量に基づいて、第2調整弁190の第2口192の開度を調整する。
プレート201が取得する熱量に比例して、第2調整弁190による第2口192の開度が徐々に大きくなる。これに伴って、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度が徐々に低下する。
ユーザーによる被加熱流体の使用が続くと、温度境界bは次第に下層側135から上層側137へ遷移する。
温度境界bが貯湯タンク130の出口まで到達すると、貯湯タンク130から排出される被加熱流体f2の温度が急激に低下する湯切れが発生する。
【0101】
図21を参照して、温度調整システム110による被加熱流体の温度変化を示す。図中において、(イ)は、貯湯タンク130の出口133における被加熱流体f2の温度変化を示し、(ロ)は、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度変化を示し、(ハ)は、供給部120から供給される被加熱流体fの温度変化を示す。温度差(Q)は、第2調整弁190が作動する前における補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度と、供給部120から供給される被加熱流体fの温度との温度差を示す。
【0102】
温度調整システム110にあっては、検知部160が温度境界bを検知したときの時間(T1)の時点から第2調整弁190による混合調整を開始する。補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度は、徐々に低下し、時間(T2)において供給部120から供給される被加熱流体fの温度と一致する。
【0103】
第2調整弁190による混合調整を行わない場合、時間(T3)において湯切れが発生すると、貯湯タンク130の出口133における被加熱流体f2の温度の低下に伴って、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度が時間(T4)の間に急激に低下する。これによって、補助加熱装置150に求められる加熱量も時間(T4)の間に急激に変化する。
【0104】
温度調整システム110にあっては、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度は、第2調整弁190による混合調整を行わない場合と比較して、図中に示す時間(T5)の時間を余分にかけて徐々に低下することになる。第2調整弁190による混合調整を行わない場合と比較して、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度の低下は穏やかになる。したがって、補助加熱装置150による単位時間当たりの加熱量の増加も緩やかに変化する。
【0105】
図22を参照して、温度調整システム110による設定温度への追従性を示す。図中において、(ニ)は、温度調整システム110の補助加熱装置150の出口153における被加熱流体f5の温度を示し、(ホ)は、第2調整弁190による混合調整を行わない従来のシステムにおける補助加熱装置150の出口153における被加熱流体f5の温度変化を示す。なお、(イ)および(ロ)は、図21と同様にそれぞれ、貯湯タンク130の出口133における被加熱流体f2の温度変化、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f5の温度変化を示す。
【0106】
温度調整システム110にあっては、補助加熱装置150の入口151における被加熱流体f4の温度を比較的長い時間をかけて緩やかに低下させるため、湯切れが発生しても設定温度に追従させて精度よく加温調整を行うことが可能になる。このため、ユーザーが望む設定温度に追従させることができ、設定温度の被加熱流体f5を安定的に提供することが可能になる。ユーザーは、湯切れによる不快さを感じることなく、設定温度に調整された被加熱流体f5を使用し続けることができる。
【0107】
一方、第2調整弁190による混合調整を行わずに加温調整を行う場合、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化する。設定温度に追従させて加温調整を行うことが困難になるため、図示されるように補助加熱装置150から提供される被加熱流体f5の温度が安定しない状態が続き、ユーザーに不快感を与えることになる。
【0108】
以上のように、この第10の実施の形態によれば、温度調整システム110である給湯器が温度を制御するシステムを有するので、貯湯タンク130内に保持された被加熱流体f1の低温域a1と高温域a2とを区分けする温度境界bを検知して、湯切れが発生する前に補助加熱装置150に導かれる被加熱流体f4の温度を徐々に低下させるため、補助加熱装置150に要求される単位時間当たりの加熱量が急激に変化することがない。このため、湯切れが発生した場合においても、被加熱流体f5の温度をユーザーが望む設定温度に追従させることができ、ユーザーが快適に使用することができる。第2調整弁190を付加した簡易な構成によって設定温度への追従性を維持させることが可能となる。
【0109】
第2制御部195は、検知部160が取得した熱量に基づいて第2調整弁190の作動を機械的な方式によって制御する。電気的な制御システムによって第2調整弁190を制御させる構成を付加する場合と比較して、安価に温度調整システム110を構成することが可能となる。
【0110】
貯湯タンク130の外壁139には、貯湯タンク130の上層側137から下層側135に向けて漸次的に表面積が大きくなるように形成されたプレート201を設置している。プレート201を利用することによって、検知部160が取得する熱量を比例させて第2調整弁190の第2口192の開度を調整することができ、温度境界bを検知した時点から第2調整弁190の第2口192の開度を徐々に大きくすることができる。これによって補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることが可能になる。
【0111】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、形状、構成などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、構成などを用いてもよい。
また、例えば、第6の実施の形態によるベランダ下部壁面設置用太陽熱集熱器を用いた太陽熱利用システムにおける温度調整システムは適宜改変することが可能である。
【0112】
具体的には、第6の実施の形態においては、第1、第2調整弁180、190の作動を機械的に制御しているが、これを電気的な制御システムによって制御させることも可能である。第1、第2調整弁180、190の制御システムに要するコストが増加することになるが、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度をより精度よく制御することが可能になる。また、第1、第2調整弁180、190の形態を適宜改変することが可能である。例えば、第1、第2調整弁180、190に、流体の温度に基づいて封入したガスを膨張、凝縮させてアクチュエータを駆動する流体駆動式の弁を利用することも可能である。また、例えば、第2調整弁190に、第1調整弁180として利用されたワックスサーモアクチュエータを備えた弁を利用することも可能である。このように、第1、第2調整弁180、190には、検知した流体の温度に基づいて機械的に弁の作動を制御する公知の形態のものを広く適用することが可能である。さらに、貯湯タンク130の形状や、検知部160を設置する場所も実施の形態において説明したものに限定されるものではない。貯湯タンク130内において発生した温度境界bを検知し、これに基づいて第2調整弁190の作動を開始させることが可能な限りにおいて適宜変更することが可能である。例えば、貯湯タンク130の外壁139の所定の範囲における面積から取得した熱量に基づいて温度境界bを検知させる形態とすることも可能である。貯湯タンク130の下層側135、上層側137に設置した2点間における温度差に基づいて温度境界bを検知させる形態とすることも可能である。
【0113】
プレート201の利用形態についても適宜変更することが可能である。プレート201を利用することによって、タンクのより下層側135から温度境界bを検知させることが可能になるため、例えば、温度境界bが遷移する速度よりもプレート201内部に伝わる熱の速度が速くなるような材質のものをプレート201に適用することによって、プレート201を利用しない場合と比較して第2調整弁190を作動させるタイミングを早めることが可能になる。これに伴って、プレート201の材質や形状、プレート201における検知部160を設置する位置等を適宜調整することによって、第2調整弁190を作動させるタイミング、および第2口192の開閉速度を任意に調整することが可能になっている。
【0114】
図23を参照して、変形例1にあっては、貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さな熱伝達率を有する材料からなるケーシング205に検知部160を収納している。このような点において、貯湯タンク130の外壁139に設置したプレート201に検知部160を取り付けた上記の実施の形態と相違している。以下、変形例について説明する。なお、上述した第6の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0115】
検知部160がケーシング205内に収納されているため、貯湯タンク130の外壁139から検知部160の内部へ熱が伝わりにくくなる。
検知部160が温度境界bを検知すると、第2調整弁190の混合調整が開始する。ケーシング205の熱伝達率が貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さいため、貯湯タンク130内の被加熱流体f1から貯湯タンク130の外壁139に伝わる熱量よりも、貯湯タンク130の外壁139から検知部160内に伝わる熱量の方が小さくなる。低温域a1から伝わる熱によって貯湯タンク130の外壁139の温度が急激に低下する場合においても、検知部160内の温度の急激な低下が生じることを防止できる。
【0116】
下層側135から上層側137へ低温域a1が遷移すると、これに比例して低温域a1からケーシング205全体に伝わる熱量が徐々に増加する。検知部160内に封入したガスの液化量が増加して、第2調整弁190の第2口192の開度が徐々に大きくなる。したがって、検知部160が温度境界bを検知した時点から比較的長い時間をかけて補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f4の温度を低下させることが可能になる。
【0117】
このように、貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さな熱伝達率を有する材料からなるケーシング205に検知部160を収納することによって、補助加熱装置150へ導かれる被加熱流体f5の温度を徐々に低下させることが可能になる。プレート201を使用することを妨げるものではないが、プレート201を使用する場合と同様の効果を得ることができ、プレート201を使用する手間を省くことが可能になる。検知部160の設置作業の作業性の向上や、プレート201の作製に要する材料費の削減を図ることができる。
【0118】
ケーシング205は、例えば、断熱性に優れた樹脂材料などから構成することが可能である。その他、貯湯タンク130の壁面部138の熱伝達率よりも小さな熱伝達率を有する材料を適宜選択することが可能である。形状等も図示されたものに限定されず、検知部160や貯湯タンク130の外壁139の形状に合わせて変更することも可能である。ケーシング205の材質や形状等を選択して、第2調整弁190を作動させるタイミング、および第2口192の開閉速度を任意に調整することが可能になっている。
【符号の説明】
【0119】
1…透明層、1a…太陽光を散乱させる凹凸、1b…太陽光を散乱させる凸部、2…空気層、3…集熱層、3a…ウィック状の凹凸面、4…断熱層、5…流体流路、6…外筐、7、8…連結部、9…連結部により形成された空間、10…外壁面設置用太陽熱集熱器、10a…本体部、10b、10c…端部、11…ジョイント、12…外壁、13a、13b、18a、18b、18c…アングル、14a、14b、14c、19a、19b、19c…ボルト、15、51…ベランダ、16、53…ベランダの下部壁面(スラブ壁面)、17、52…手摺、20…意匠パネル、21…樹脂枠体、22…中空部、30…多層異形押し出し成形装置、31…ダイス、32a、32b、32c…樹脂、33a、33b、33c…単軸スクリュー押し出し機、34a、34b、34c…スクリュー、41、61…温度センサー、42、47a、62…配管、43、63…循環ポンプ、43a、63a…太陽光パネル、44、140…主加熱部、45…リザーブタンク、46、130…貯湯タンク、47b…バイパス配管、47c…給水配管、47d…出湯配管、48…調整弁、48a…制御装置、49、150…補助加熱装置、50…給湯器、54…外壁面、110…温度調整システム(被加熱流体の温度調整システム)を有する給湯器、120…供給部、131…貯湯タンクの入口、133…貯湯タンクの出口、135…タンクの下層側、137…タンクの上層側、138…壁面部、139…タンクの外壁、151…補助加熱装置の入口、153…補助加熱装置の出口、160…検知部、161…作動流体、171…第1ライン、172…第2ライン、173…第3ライン、174…タンク用ライン、180…第1調整弁、185…第1制御部、190…第2調整弁、195…第2制御部、201…プレート、205…ケーシング、f、f1、f2、f3、f4、f5…被加熱流体、a1…低温域、a2…高温域、b…温度境界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項2】
上記断熱層は、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に挿入固定されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項3】
上記断熱層は断熱材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項4】
上記透明層と上記流体流路との間に空気層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項5】
上記流体流路の外壁の内面の少なくとも一部に凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項6】
少なくとも一箇所に折れ曲がり部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項7】
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって形成された中空の枠体の中空部に、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記透明層と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法。
【請求項8】
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物。
【請求項9】
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器が、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システム。
【請求項10】
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項11】
上記断熱層は、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に挿入固定されていることを特徴とする請求項10に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項12】
上記枠体は樹脂からなり、上記断熱層は断熱材からなり、上記流体流路の外壁は金属からなることを特徴とする請求項10または11に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項13】
上記透明層は透明断熱フィルムからなることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項14】
太陽光入射部が開口した中空の枠体の中空部に、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記太陽光入射部と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設け、上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して透明層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法。
【請求項15】
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物。
【請求項16】
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システム。
【請求項17】
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項18】
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器を異種の樹脂の同時押し出し成形により製造することを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法。
【請求項19】
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする建築物。
【請求項20】
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする太陽熱利用システム。
【請求項1】
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項2】
上記断熱層は、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に挿入固定されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項3】
上記断熱層は断熱材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項4】
上記透明層と上記流体流路との間に空気層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項5】
上記流体流路の外壁の内面の少なくとも一部に凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項6】
少なくとも一箇所に折れ曲がり部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項7】
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって形成された中空の枠体の中空部に、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記透明層と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法。
【請求項8】
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物。
【請求項9】
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器が、
太陽光入射部が透明層からなり、樹脂の異形押し出しによって成形された中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁が金属からなる集熱層で形成され、金属の押し出しによって成形された一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システム。
【請求項10】
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項11】
上記断熱層は、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に挿入固定されていることを特徴とする請求項10に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項12】
上記枠体は樹脂からなり、上記断熱層は断熱材からなり、上記流体流路の外壁は金属からなることを特徴とする請求項10または11に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項13】
上記透明層は透明断熱フィルムからなることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項14】
太陽光入射部が開口した中空の枠体の中空部に、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路を挿入固定し、この際、上記集熱層の少なくとも一部が上記太陽光入射部と対向するようにするとともに、上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に断熱層を設け、上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して透明層を設けるようにしたことを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法。
【請求項15】
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器が外壁面に設置されていることを特徴とする建築物。
【請求項16】
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が開口した中空の枠体と、
上記枠体の中空部に挿入固定され、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の中空部の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層と、
上記太陽光入射部に対応する部分の上記流体流路に接して設けられた透明層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向していることを特徴とする太陽熱利用システム。
【請求項17】
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器。
【請求項18】
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向している外壁面設置用太陽熱集熱器を異種の樹脂の同時押し出し成形により製造することを特徴とする外壁面設置用太陽熱集熱器の製造方法。
【請求項19】
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする建築物。
【請求項20】
外壁面設置用太陽熱集熱器と、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器により加熱された流体を利用して加熱される被加熱流体を保持する一つまたは複数のタンクとを有し、
上記外壁面設置用太陽熱集熱器は、
太陽光入射部が透明層からなる中空の枠体と、
上記枠体の中空部に設けられ、外壁の少なくとも一部が集熱層からなる一つまたは複数の流体流路と、
上記枠体の、上記流体流路に関して上記太陽光入射部と反対側の部分に設けられた断熱層とを有し、
上記集熱層の少なくとも一部は上記透明層と対向しており、
上記枠体および上記流体流路の外壁は異種の樹脂の同時押し出し成形により一体成形されていることを特徴とする太陽熱利用システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−242016(P2012−242016A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113898(P2011−113898)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000134903)株式会社ニシヤマ (33)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000134903)株式会社ニシヤマ (33)
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