説明

外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法

【課題】 外干し洗濯物において、花粉によるアレルギーを防ぐことができる簡便な方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、洗濯物を、濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度が0.1以上の水溶性の多価金属塩(A)と、シリコーン及び/又はシリコーン誘導体(B)を含有する組成物で処理することを特徴とする外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法である。また、本発明において、前記組成物は、更にカチオン性を有する水溶性高分子化合物(C)を含有することが好ましい。また、本発明において、前記処理が、前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法と、前記組成物を容器に充填し、当該容器から前記組成物を洗濯物に供する方法の一方又は両方であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スギ花粉等の大量飛散による花粉症が社会問題化している。
この花粉症における花粉対策としては、マスク等を着用して外出等の際になるべく花粉を吸い込まないようにする方法や、着ている衣服や外干しする洗濯物(以下、外干し洗濯物という。)等に付着した花粉を払い落として除去する方法などが行われているが、どれも一時的な対策であり、充分に花粉症の症状を抑えるまでには至っていない。
特に、外干し洗濯物においては、洗浄により汚れと共に花粉を除去したにもかかわらず、外干しすることにより花粉が新たに付着してしまう。そのため、洗濯物を外干しすることを避けるなどの不便が生じる。
【0003】
そこで、花粉対策として、従来、花粉症を引き起こすアレルゲンを除去したり、無害化できる組成物や方法、布帛等が種々提案されている。
例えば、アルミニウム塩、芳香族ヒドロキシ化合物等のアレルゲン低減化成分を含有する組成物で処理することにより、アレルゲン低減化成分を、衣類等に付着した花粉のアレルゲン物質に接触させて花粉アレルゲンを不活化させる方法等が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
また、室温硬化型シリコーン系接着剤を含有するアレルゲン除去剤の皮膜を被処理対象物の表面に形成し、該皮膜に、被処理対象物に存在する花粉を接着させることにより、皮膜とともに花粉を除去する方法等が提案されている(特許文献5参照)。
また、衣類表面全体に、シリコーン水溶液を噴霧して衣類を湿潤させて乾燥機で乾燥することにより、衣類の繊維が膨潤することをもって衣類に付着した花粉を除去する方法等が提案されている(特許文献6参照)。
また、繊維布帛の表面に水分散性カチオン性シリコーン系樹脂を含む被膜を形成することにより、花粉の付着を防止するもしくは付着花粉を容易に離脱させる花粉防止布帛等が提案されている(特許文献7参照)。
【特許文献1】特開2001−247467号公報
【特許文献2】特開2003−81727号公報
【特許文献3】特開2003−82581号公報
【特許文献4】特開2003−334240号公報
【特許文献5】特開平9−25439号公報
【特許文献6】特開2001−46795号公報
【特許文献7】特開2004−346467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によると、外干し洗濯物を従来の方法で処理しても充分な効果を得ることができない。
すなわち、外干し洗濯物は、湿った状態で外に干し、乾いた状態になってから室内へ取り込むものである。したがって、外干し洗濯物においては、洗濯物が湿った状態(湿潤状態)のときに洗濯物に付着する花粉によるアレルギーと、洗濯物が乾いた状態(乾燥状態)のときに洗濯物に付着する花粉によるアレルギーの両方を抑えることができなければ、花粉によるアレルギーを抑える効果は不充分である。
さらに、本発明者が検討を行った結果、花粉において、アレルゲンは花粉の表面に存在しているだけではなく、花粉の内部にも多量に存在することが分かった。そして、花粉は鼻腔内部で鼻汁等と接触すると、破裂して、その内部に存在する多量のアレルゲンを放出する。これにより、アレルギーが引き起こされることがわかった。
そのため、外干し洗濯物における花粉の影響を防ぐためには、花粉の付着を防ぐ、あるいは付着した花粉の表面と内部に存在するアレルゲンの影響の両方を抑制することが重要であることがわかった。
【0006】
したがって、特許文献1〜4に記載された方法の様に、花粉が鼻腔等の体内に入る前に花粉の表面のアレルゲンを不活化するだけでは不充分であり、体内に入った花粉の破裂を抑制することが必要であることが判明した。
すなわち、特許文献1〜4に記載のアレルゲンを不活性化させる方法を外干し洗濯物に適用しても、洗濯物が湿潤状態である場合において、花粉の表面に存在するアレルゲンの不活化効果はあるものの、内部に存在するアレルゲンには効果が無く、その効果は充分ではない。さらに、特許文献1〜4に記載の方法で処理した洗濯物は、乾燥状態になるとアレルゲン不活化効果が低下する。そのため、洗濯物が乾燥状態になったときに付着した花粉の影響を防ぐことはできない。なお、乾燥状態になった洗濯物に、再び特許文献1〜4に記載の方法を適用すると、洗濯物が湿潤状態に戻ってしまうので、屋内に取り込んでから再度、部屋の中で干す手間がかかってしまう等の不具合が生じてしまう。
また、特許文献5に記載された方法においては、手間もかかり、日常的な方法とはいえない。
また、特許文献6に記載された方法は、乾燥機で乾燥することを前提としており、外干し洗濯物の処理には適用できない。
さらに、特許文献7に記載された方法は、予め表面に被膜を形成した布帛を用いるという方法であり、洗濯物を簡便に処理する方法とは異なる。また、例えこの布帛を洗濯し、外干ししたとしても、外干し洗濯物が湿潤状態の場合は効果が得られず、花粉の影響を充分に防ぐことはできない。
【0007】
本発明は、この様に湿潤状態と乾燥状態の両方において花粉の影響を低減することが必要とされる外干し洗濯物独特の課題を解決するためになされたもので、外干し洗濯物において、花粉によるアレルギーを防ぐことができる簡便な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、上記課題を解決するために本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、洗濯物を、濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度が0.1以上の水溶性の多価金属塩(A)と、シリコーン及び/又はシリコーン誘導体(B)を含有する組成物で処理することを特徴とする外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法である。
また、本発明において、前記組成物は、更にカチオン性を有する水溶性高分子化合物(C)を含有することが好ましい。
また、本発明において、前記処理が、前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法と、前記組成物を容器に充填し、当該容器から前記組成物を洗濯物に供する方法の一方又は両方であることが好ましい。
【0009】
本発明において「外干し洗濯物」とは、大気中に飛散している花粉が付着するような環境下に干されている洗濯物をいう。洗濯物としては、衣類、タオルなどの繊維製品に限らず、広く洗濯し得る物を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外干し洗濯物において、花粉によるアレルギーを防ぐことができる簡便な方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、外干し洗濯物が湿潤状態のときに付着する花粉のアレルゲンの働きを抑制することを目的として鋭意検討を行ったところ、上述の様に花粉が鼻腔等の体内に入る前に花粉の表面のアレルゲンを無害化するだけの方法では不充分であり、体内に入った花粉の破裂を抑制することが重要であることを見出した。
そして、(A)成分は、鼻腔等の体内における花粉の破裂を抑制する作用を有し、これにより洗濯物が湿潤状態のときに付着した花粉によるアレルギーを抑制することができることを見出した。
そして、(B)成分を配合することにより、洗濯物が乾いた状態になったときには、洗濯物の表面に花粉が付着することを抑制でき、これら(A)成分と(B)成分の相乗作用によって、湿潤状態と乾燥状態の両方において花粉の影響を低減することが必要とされる外干し洗濯物独特の課題を解決した。
以下、具体的に説明する。
【0012】
本発明は、洗濯物を、濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度が0.1以上の水溶性の多価金属塩(A)(以下、(A)成分という。)と、シリコーン及び/又はシリコーン誘導体(B)(以下、(B)成分という。)を含有する組成物(以下、本組成物ということがある。)で処理する外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法である。
【0013】
<組成物>
本組成物は、少なくとも(A)成分と(B)成分を含有し、好ましくは、更にカチオン性を有する水溶性高分子化合物(C)(以下、(C)成分という。)を含有する。
また、本組成物は、水と、(A)成分と(B)成分、好ましくは更に(C)成分を配合し、混合して溶解することにより得ることができる。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
[濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度が0.1以上の水溶性の多価金属塩(A)]
(A)成分は、主として、花粉と接触することにより花粉の破裂抑制の効果を発揮すると推測される。
(A)成分において「水溶性」とは、25℃の水100gへの溶解量が0.1g以上であることを示す。
「濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度」は、以下のようにして求める。
1質量%濃度のペクチン水溶液2mLに、0.2質量%濃度の多価金属塩水溶液2mLを25℃で添加して撹拌する。
ペクチンは、GENU pectin type LM−102AS−J(製品名、ゲニュー株式会社製)を用いる。
この溶液に、蒸留水4mLを添加して、濁度計を用いて660nmにおける吸光度、すなわち濁度を測定する。濁度計は、SPECTRONIC 20+(製品名、Spectronic Instruments社製)を用いる。測定容器は、外径約18mm、内径約16mmの試験管を用いる。
なお、濁度の測定値において、純水をブランクとしてその濁度を0とし、試験管を取り出して遮光した状態の濁度を無限大とする。
前記の方法により得られた多価金属塩水溶液の濁度を、上記「濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度」(以下、濁度と略記する。)とする。
【0015】
本発明においては、(A)成分の濁度が大きいほど、花粉の破裂抑制の効果が高いことから好ましい。濁度は0.1以上であることが必要であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.4以上である。上限値は、特に限定するものではないが、実質的には2.0以下とされる。
【0016】
(A)成分を構成する金属としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、スズ、チタン、銅、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種以上の多価金属であることが好ましい。
塩を形成する対イオンとしては、SO2−、Clなどが挙げられる。
これらの中でも、アルミニウム、亜鉛、鉄の塩が好ましく、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、明礬、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)などが挙げられ、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)がより好ましい。
(A)成分は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
(A)成分の組成物中の配合量は、0.01〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%とされる。該範囲の下限値以上であれば、花粉の破裂抑制の効果が向上する。他方、上限値以下であれば、保存安定性((A)成分の分散性など)が向上する。
【0017】
[シリコーン及び/又はシリコーン誘導体(B)]
(B)成分は、主として、洗濯物において繊維表面に吸着し、繊維のすべり性を向上する等により花粉の付着抑制の効果を発揮すると推測される。
(B)成分としては、特に限定されるものではないが、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリグリセロール変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
これらの(B)成分は、シリコーンオイルとして、また任意の乳化剤によって乳化分散されたシリコーン乳化物として用いてもよい。
また、変性シリコーン化合物は、1種類の有機官能基により変性されていても、2種以上の官能基により変性されていてもよい。
これらの(B)成分は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
上記の(B)成分の中でも、(A)成分の分散安定性が良好なことから、非イオン性のものが好ましく、その中でも、溶解性及び保存安定性の点から、ポリエーテル変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンがより好ましい。さらに、繊維に対して帯電防止能を有し、花粉の付着抑制の効果が高い点からポリエーテル変性シリコーンが好ましく、中でも下記一般式〔I〕で表されるポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
上記式〔I〕中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基は直鎖又は分岐したアルキル基もしくはアルケニル基のいずれかである。中でも、溶解性の点から水素原子又はメチル基が好ましい。
【0021】
mは、前記式〔I〕中で示されるエチレンオキサイド(mが付された構成単位)の平均付加モル数を表す整数である。mの範囲は1〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは7〜20である。mが該範囲であれば、花粉の付着抑制の効果に優れる。
nは、前記式〔I〕中で示されるプロピレンオキサイド(nが付された構成単位)の平均付加モル数を表す整数である。nの範囲は0〜10であり、好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜3である。nが該範囲内であれば、花粉の付着抑制の効果に優れる。
なお、m、nが付された各構成単位の順序は異なっていてもよい。
ここで「m、nが付された各構成単位の順序は異なっていてもよい」とは、mが付された構成単位とnが付された構成単位が、どのような順序で配置されていてもよいことを示す。
【0022】
xは、前記式〔I〕中で示される−SiO(CH−(ジメチルシロキサン、xが付された構成単位)の平均付加モル数を表す整数である。xの範囲は1〜400であり、好ましくは20〜300であり、より好ましくは60〜250である。xが該範囲内であれば、花粉の付着抑制の効果及び溶解性に優れる。
yは、前記式〔I〕中で示される−SiO(CH)(C−O−(CO)−(CO)−R)−(メチルポリオキシアルキレンプロピルシロキサン、yが付された構成単位)の平均付加モル数を表す整数である。yの範囲は1〜40であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。yが該範囲内であれば、花粉の付着抑制の効果及び溶解性に優れる。
また、xとyとのモル比(x/y)は1〜100が好ましく、より好ましくは5〜50であり、さらに好ましくは15〜30である。x/yが該範囲内であれば、花粉の付着抑制効果及び溶解性に優れる。
【0023】
前記一般式〔I〕で表されるポリエーテル変性シリコーンは、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。例えば、xが付された構成単位、yが付された構成単位の順でブロック状に配列していてもよいし、xが付された構成単位、yが付された構成単位、xが付された構成単位、yが付された構成単位のように、一つ一つの構成単位がランダムに配列していてもよい。
【0024】
前記一般式〔I〕で表されるポリエーテル変性シリコーンの製造方法は、一般に、Si−H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ポリオキシアルキレンアリルエーテルとを付加反応させる等の従来公知の方法により製造することができる。
【0025】
前記一般式〔I〕で表されるポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、東レ・ダウコーニング(株)製のSH3771C、SH3775C、SH3748、SH3749、SF8410、SH8700、BY22−008、BY22−012、BY22−068、CF1188HV、SF8421、SILWET L−7001、SILWET L−7002、SILWET L−7602、SILWET L−7604、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2120、SILWET FZ−2161、SILWET FZ−2162、SILWET FZ−2164、SILWET FZ−2171;信越化学工業(株)製のKF352A、KF6008、KF615A、KF6016、KF6017;GE東芝シリコーン(株)製のTSF4450、TSF4452(以上、商品名)等が挙げられる。
これらのポリエーテル変性シリコーンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
また、(B)成分として好ましいアミノ変性シリコーンの具体例は、信越化学工業(株)製のPOLON−MF−14(商品名)等が挙げられる。
(B)成分の組成物中の配合量は、0.01〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜40質量%とされる。該範囲の下限値以上であれば、花粉の付着抑制の効果が向上する。他方、上限値以下であれば、組成物の粘性が高くなりすぎず、使用性が向上する。
【0027】
[カチオン性を有する水溶性高分子化合物(C)]
(C)成分は、主として、(B)成分の洗濯物への吸着性を向上させる効果を発揮すると推測される。これにより、花粉の付着抑制の効果が向上するとともに、(B)成分の配合量を少なくすることができる。
また、(C)成分は、好ましくは本組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法の場合に用いられる。
【0028】
(C)成分において「水溶性」とは、25℃の水100gに、高分子化合物1gを加えた時に、水溶液が濁らずに透明であることを示す。
また、「カチオン性を有する」とは、水溶性高分子化合物が水に溶解した時にカチオン性を示すことをいう。
カチオン性を有する水溶性高分子化合物としては、カチオン性基を含む水溶性高分子化合物が好ましい。また、カチオン性基は、高分子鎖中のモノマー単位に含まれていることが好ましい。特にカチオン性を有する水溶性高分子としては、アミノ基、アミン基、第4級アンモニウム基から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性基を有する水溶性高分子化合物が好ましい。
【0029】
(C)成分のカチオン化度は0.1%以上が好ましく、2.5%以上がより好ましい。
カチオン化度が0.1%以上であれば、(B)成分を繊維へ吸着させる効果が良好となり、(C)成分の配合量が少量であっても充分な効果が得られて経済的にも有効である。また、(C)成分自身が繊維製品に対して剛性を付与する性質を持っている場合には、多量に配合した際に伴う繊維の柔軟性低下を防ぐことができる。
ここで「カチオン化度」とは、高分子化合物が、カチオン性モノマーの重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体、又はノニオン性重合体の一部をカチオン性基で変性又は置換したもの(例えば、カチオン化セルロースなど)の場合には、下記数式(1)により、また、高分子化合物が、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合体、又はカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体の場合には、下記数式(2)により算出される値と定義する。
なお、下記カチオン化度の算出法によれば、ノニオン性モノマーの重合体やアニオン性モノマーの重合体のカチオン化度は0となる。
【0030】
数式(1):カチオン化度(%)= X’ × Y’ ×100
[数式(1)中、X’は高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(例えば、窒素原子等)の原子量を表し、Y’は高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数を表す。]
【0031】
数式(2):カチオン化度(%)= X’ ×(Y’−Z’)×100
[数式(2)中、X’、Y’は前記と同じであり、Z’は高分子化合物1g中に含まれるアニオン性基のモル数を表す。なお、アニオン性基としては、高分子鎖中のモノマー単位に含まれるカルボキシ基、スルホン酸基等が挙げられ、具体的にはモノマー単位であるアクリル酸中のカルボキシ基などである。ただし、カチオン性基の対イオンは含まない。]
【0032】
(C)成分は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定される質量平均分子量が、1,000〜5,000,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000である。該範囲の下限値以上であれば臭気の点で良好となり、上限値以下であれば組成物の粘性が高くなりすぎず、使用性が向上する。
【0033】
(C)成分としては、水に溶解したときにカチオン性を有する高分子化合物であればよく、具体例としては、MERQUAT100(商品名、Calgon社製)、アデカカチオエースPD−50(商品名、旭電化工業(株)製)、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(以上、商品名;大同化成工業(株)製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体;MERQUAT550 JL5(商品名、Calgon社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、MERQUAT280(商品名、Calgon社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、レオガードKGP(商品名、ライオン(株) 製)等のカチオン化セルロース、LUVIQUAT−FC905(商品名、B.A.S.F社製)等の塩化イミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、LUGALVAN−G15000(商品名、B.A.S.F社製)等のポリエチレンイミン、ポバールCM318(商品名、(株)クラレ製) 等のカチオン化ポリビニルアルコール、キトサン等のアミノ基を有する天然系の高分子誘導体、ジエチルアミノメタクリレート・エチレンオキシド等が付加された親水基を有するビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
中でも、ジメチルジアリルアンモニウム塩を重合して得られる、下記一般式(II)で表されるモノマーからなる高分子化合物が、(B)成分の洗濯物への吸着性を向上させる効果が良好なことから好ましい。
【0034】
【化2】

[式中、X”はマイナスイオン(好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン)を示す。]
【0035】
前記式(II)で表されるモノマーからなる高分子化合物の構造は、通常、下記一般式(III−1)又は下記一般式(III−2)の構成単位で表され、一般式(III−1)の構成単位と一般式(III−2)の構成単位のいずれか一方だけであってもよく、両方が共に含まれていてもよい。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
前記式(III−1)、(III−2)中、X”は前記と同じである。
c、dは共に平均重合度を示し、それぞれ6〜30000であることが好ましく、より好ましくは20〜6,000、さらに好ましくは30〜3,000である。該範囲の下限値以上であれば、臭気の点で良好となる。他方、上限値以下であれば、組成物の粘性が高くなりすぎず、使用性が向上する。
【0039】
前記の好ましい高分子化合物の具体例としては、MERQUAT100(商品名、Calgon社製)、アデカカオエースPD−50(商品名、旭電化工業(株)製)、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(以上、商品名;大同化成工業(株)製)等が挙げられる。
これらの(C)成分は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
(C)成分の組成物中の配合量は、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%とされる。該範囲の下限値以上であれば、(B)成分の洗濯物への吸着性を向上させる効果が向上し、花粉の付着抑制の効果が充分なものとなる。他方、上限値以下であれば、組成物の粘度増加が抑えられて使用性が向上する。
【0040】
本発明において、(B)成分と(C)成分との混合割合は、質量比で99:1〜50:50が好ましく、より好ましくは95:5〜60:40、さらに好ましくは90:10〜70:30である。該混合割合の上限値以下であれば、(B)成分による花粉の付着抑制の効果が向上する。他方、下限値以上であれば、(C)成分による(B)成分の洗濯物への吸着性が良好となる。
【0041】
(その他の成分)
本組成物には、水、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外に、以下に例示するようなその他の成分を配合することができる。
【0042】
本組成物のpHは、本発明の効果の点から、中性もしくは酸性であることが好ましく、より好ましくはpH2.0〜7.0、さらに好ましくは3.0〜6.0である。該範囲に調整することで(A)成分が花粉に均一に作用しやすくなる。
pHは、硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を1種又は2種以上用いて調整することができる。
また、pH調整剤の他に、本組成物に配合可能な任意成分としては、
(1)キレート剤、
(2)ノニオン、カチオン、アニオン界面活性剤、
(3)低級(炭素数1〜4)アルコール、グリコールエーテル系溶剤、多価アルコール等の水溶性溶剤、
(4)pH緩衝剤、
(5)グリセリン、ソルビトール、グルコース、スクロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パラトルエンスルホン酸、キュメンスルホン酸、エタノール等の低温安定化剤、
(6)イソチアゾロン液等の抗菌剤、
(7)溶剤、安定化剤等を含有する香料組成物等の香料
等が挙げられ、それぞれの成分は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
上記の任意成分の中でも、特に長期保存における保存安定性が向上することから、(1)キレート剤を添加することが好ましい。
キレート剤のカルシウムに対する安定度定数としては、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜5である。該範囲の下限値以上であれば本組成物中での多価金属塩の分散性が良好となり、上限値以下であれば花粉の破裂抑制の効果が向上する。
キレート剤としては、グリコール酸(1.6)、乳酸(1.4)、リンゴ酸(2.2)、クエン酸(3.2)、酒石酸(2.8)、グルコン酸(1.2)等のヒドロキシカルボン酸;シュウ酸(3.0)、マロン酸(2.5)、コハク酸(1.0)、フマル酸(2.0)等の多価カルボン酸が好ましく用いられる。
キレート剤の組成物中の配合量は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%とされる。該範囲の下限値以上であれば、本組成物中での多価金属塩の分散性が良好となり保存安定性が向上し、上限値以下であれば花粉の破裂抑制の効果が向上する。
【0044】
なお、上記の各キレート剤の括弧内の数字は、『金属キレート[III]』(坂口武一、上野景平編、南江堂、昭和42年2月20日発行)の付録(安定度定数表)に記載のカルシウム安定度定数である。
カルシウム安定度定数は、例えば下記のカルシウムイオンキレート安定度定数評価法(特開平10−114730号公報[0017]参照。)等により求めることができる。
【0045】
予めpH10.0に調整した0.001MCaCl溶液(100ppm、CaCO換算)100mLに、4MKClを2mL添加する(イオン強度μ=0.08、KCl)。
次いで、1質量%の試料溶液2mLを添加し、試験溶液を調製する。その後、該試験溶液を30℃に保持し、カルシウムイオン電極を用いてCa濃度を求める。
残留Ca濃度より、捕捉Ca濃度、つまりCa錯体の濃度を求める。
そして、カルシウムイオンキレート安定度定数(logKCa)を、Ca錯体の濃度と、残存キレート剤の濃度より算出する(下記数式(3)参照。)。
この方法によりクエン酸を評価すると、カルシウム安定度定数は3.4と求められる。
【0046】
数式(3):logKCa=log〔CaZx〕/(〔Ca〕・〔Z〕
[数式(3)中、Caはカルシウムイオン、Zはキレート剤、CaZxはCa錯体、xはカルシウムイオン1個と結合するキレートの数を表し、〔 〕はそれぞれの濃度を表す。]
【0047】
<処理方法>
洗濯物を前記組成物で処理する方法としては、特に限定されるものではないが、前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法と、前記組成物を容器に充填し、当該容器から前記組成物を洗濯物に供する方法の一方又は両方が好ましく用いられる。
【0048】
前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法とは、例えば衣料(洗濯物)に対して通常の洗濯を行い、濯ぎの段階で、濯ぎ液に前記組成物を添加して溶解させた後に濯ぐ処理をしたり、また、たらいのような容器を用いて、前記組成物を該容器に溜めた水に添加して溶解させ、衣料を浸漬した後に濯ぐ処理をしたりする方法等、広く水に前記組成物を希釈して用いる方法を包含する。中でも好ましくは、通常の洗濯を行い、濯ぎの段階で、濯ぎ液に前記組成物を添加して溶解させた後に濯ぐ処理方法である。
前記組成物の添加量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計濃度が、濯ぎ液全量に対して5〜5000ppmであることが好ましく、10〜2000ppmであることがより好ましい。
洗濯物に対する前記組成物を添加した濯ぎ液全量の比率(浴比)は3〜100倍が好ましく、5〜50倍がより好ましい。
【0049】
前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法により、外干し洗濯物が乾くまでの湿潤状態では、主として本組成物中の(A)成分による花粉の破裂抑制の効果によって、花粉そのものが無害化されることにより花粉対策が可能となる。また、外干し洗濯物が乾いてからは、主として本組成物中の(B)成分による花粉の付着抑制の効果によって花粉対策が可能となる。
【0050】
また、前記組成物を容器に充填し、当該容器から前記組成物を洗濯物に供する方法とは、例えば洗濯物を外干しする前に、前記組成物を次の各種容器、すなわちスプレー式の噴射部を有する容器、ポンプ式の噴射部を有する容器、容器本体の開口部から供する容器、エアゾール式容器等に充填し、当該各種容器から前記組成物を外干し洗濯物に直接噴霧等する方法を包含する。中でも好ましくは、前記組成物をスプレー式の噴射部を有する容器に充填し、前記組成物を外干し洗濯物にスプレーする処理方法である。
洗濯物に供する前記組成物の量は、洗濯物の質量に対して0.5〜100質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましい。
【0051】
外干し洗濯物を外干しする前に、前記組成物を充填した容器から前記組成物を洗濯物に供する方法により処理するだけで、外干し洗濯物が湿潤状態では、主として本組成物中の(A)成分による花粉の破裂抑制の効果によって、また、外干し洗濯物が乾いてからは、主として本組成物中の(B)成分による花粉の付着抑制の効果によって花粉対策が可能となる。
さらに、本発明の効果が充分に得られることから、前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法と、前記組成物を容器に充填し、当該容器から前記組成物を洗濯物に供する方法の両方により処理することも好ましい。
【0052】
本発明の方法によれば、洗濯物を、(A)成分と(B)成分を含有する組成物で処理することにより、外干し洗濯物において花粉によるアレルギーを防ぐことができる。この理由は、定かではないが次のように推測される。
本組成物中に含有される(A)成分による効果は、主に洗濯物が湿潤状態の際に発揮され、一方、(B)成分による効果は、主に洗濯物が乾燥状態の際に発揮されると考えられる。
ペクチンと反応させるとその濁度が大きくなる(A)成分は、乾燥時よりも湿潤時に花粉の殻に存在するペクチンに作用しやすく、ペクチン間を架橋させていると考えられる。
これにより、該架橋によって強固なペクチン層が形成されて殻が強固となり、外干し洗濯物に付着した花粉の破裂が抑制されていると推測される。この作用は、従来の花粉アレルゲンを不活化させる方法よりもアレルギーを防ぐ効果に優れ、また、特に湿潤時に花粉が外干し洗濯物に付着しやすいことから、非常に有効であると考えられる。
一方、繊維表面に吸着して繊維にすべり性を付与する(B)成分は、湿潤時よりも乾燥時にすべり性が高まると考えられる。これにより、花粉が繊維に付着しにくくなるために、花粉の付着が抑制されると推測される。さらに、(B)成分の中でも、ポリエーテル変性シリコーンは、繊維に対して帯電防止能を有することから、花粉との静電的相互作用が低減されることにより、より花粉が繊維に付着しにくくなるものと考えられる。
以上の理由から、外干し洗濯物において花粉によるアレルギーを防ぐことができると推測される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
(組成物の調製)
表1〜4に示す組成物を調製した。表中の配合量の単位は質量%であり、総量が100質量%となるように、イオン交換水でバランスした。また、pHは、25℃におけるpHが同表に示すものとなるように、硫酸、水酸化ナトリウムにて調整した。
調製した組成物のうち、実施例1〜13、比較例1〜4は、スプレー式の噴射部を有する容器に充填して洗濯物に組成物を直接噴霧する方法(以下、スプレー処理ということがある。)により下記評価を行った。
実施例14〜17、比較例5は、濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法(以下、濯ぎ処理ということがある。)により下記評価を行った。
【0055】
実施例及び比較例に使用した(A)成分、(B)成分、任意成分の原料を以下に示す。
(A)成分
a−1:硫酸鉄(試薬、濁度 0.12、純正化学(株)製)
a−2:塩化アルミニウム(試薬、濁度 0.40、純正化学(株)製)
a−3:塩化亜鉛(試薬、濁度 0.29、純正化学(株)製)
a−4:塩化マンガン(試薬、濁度 0.03、純正化学(株)製)
【0056】
(B)成分
b−1:ポリエーテル変性シリコーン(前記一般式〔I〕中、R:メチル基、m=10、n=0、X=210、y=9、実験室合成品)
b−2:ポリエーテル変性シリコーン(前記一般式〔I〕中、R:水素原子、m=14、n=1、X=70、y=4、実験室合成品)
【0057】
b−3:ジメチルシリコーン(商品名:BY22−068、東レ・ダウコーニング(株)製、水性エマルジョン)
b−4:アミノ変性シリコーン(商品名:POLON−MF−14、信越化学工業(株)製、水性エマルジョン)
【0058】
(C)成分
c−1:塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体(商品名:ダイドール EC−004、大同化成工業(株)製)
c−2:塩化イミダゾリウム−ビニルピロノドン共重合体(商品名:LUVIQUAT FC905、B.A.S.F社製)
【0059】
任意成分
d−1:クエン酸(商品名:クエン酸、カルシウム安定度定数 3.4、扶桑化学工業(株)製)
d−2:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:アーカード210−80E、ライオンアクゾ(株)製)
d−3:ポリエチレングリコール〔質量平均分子量300〕(商品名:PEG#300、ライオン(株)製)
d−4:エタノール(試薬1級、関東化学(株)製)
d−5:香料
d−6:ポリオキシエチレンアルキルエーテル〔EO=9〕(商品名:レオックスLC−90、ライオン(株)製)
d−7:イソチアゾロン液(商品名:ケーソンCG−ICP、ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)
【0060】
<評価>
調製した組成物を用いて、「花粉の破裂抑制の評価」及び「花粉の付着抑制の評価」を行った。評価結果を表1〜4に示す。
【0061】
(花粉の破裂抑制の評価)
各組成物10mLにスギ花粉100mgを添加し、常温にて5分間静置後、300rpmで5分間遠心分離した。その後、分離された沈殿物を取り出し、さらにろ過し、抽出された花粉を25℃、湿度60%で15時間乾燥した。
次いで、人工鼻汁液(Na0.2678質量%、K0.1質量%、Ca2+0.003質量%、Mg2+0.0015質量%、Cl0.5606質量%の各イオンを含む。)を含むアンモニア水(pH9に調整した水溶液)0.5mLに、この処理した花粉約0.6mgを添加し、37℃にて5分間放置した。そして、このときに破裂している花粉の数と、破裂していない花粉の数を計測した。
なお、花粉の数の計測は、評価試料を顕微鏡で拡大写真(200倍)を撮影し、目視で測定した。
以上のようにして測定した花粉の数から、下記式に基づいて破裂していない花粉の割合を算出した。
花粉破裂抑制率(%)=[破裂していない花粉数/(破裂した花粉数+破裂していない花粉数)]×100
花粉の破裂抑制の効果を、求めた花粉破裂抑制率により下記の基準で判定した。
◎:花粉破裂抑制率が80%以上。
○:花粉破裂抑制率が60%以上80%未満。
△:花粉破裂抑制率が40%以上60%未満。
×:花粉破裂抑制率が40%未満。
【0062】
(花粉の付着抑制の評価)
アクリルジャージ布を用いて、処理無し布と、処理有り布(スプレー処理した布、濯ぎ処理した布)を下記方法により調製し、評価用試料とした。
【0063】
・処理無し布の調製
二層式洗濯機に50℃の温水30Lを入れ、ノニオン界面活性剤[ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名:LMAO−90、ライオンケミカル製)]7.5gを添加した浴内に、アクリルジャージ布を投入し、洗浄15分を行った後、脱水1分を行った。
その後、50℃温水30Lにより、すすぎ15分、脱水1分を1工程とした操作を6回行った(ここまでを前処理とする。)。
次いで、前処理したアクリルジャージ布を、室温20℃、湿度60%Rhの恒温恒湿室で24時間調湿した。その後、15cm×15cmに裁断したものを処理無し布とした。
【0064】
・スプレー処理した布の調製
前処理したアクリルジャージ布を乾燥させ、15cm×15cmに裁断した。
次いで、各組成物(実施例1〜13、比較例1〜4)200mgを噴霧したアクリルジャージ布(6.2g、15cm×15cm)を、室温20℃、湿度60%Rhの恒温恒湿室で24時間調湿してスプレー処理した布を調製した。
【0065】
・濯ぎ処理した布の調製
アクリルジャージ布1.5kgに対して前処理を行った後、50℃温水30Lに、各組成物(実施例14〜17、比較例5)20gを添加した浴内で、すすぎ3分、脱水1分の操作を行った。
次いで、上記濯ぎ処理したアクリルジャージ布を、室温20℃、湿度60%Rhの恒温恒湿室で24時間調湿した。その後、15cm×15cmに裁断して濯ぎ処理した布を調製した。
【0066】
処理無し布、スプレー処理した布、濯ぎ処理した布それぞれ4枚ずつの評価用試料に対して、以下の花粉の付着抑制の評価を行った。
評価用試料4枚と、スギ花粉(商品名:日本スギ花粉、Lot.92−A、生化学工業製)10mgを入れたポリエチレン製袋(45L)を温調室内空気で膨らませ、1回/秒の速度で上下に60回振った。その後、袋から評価布を取り出し、表面に付着した花粉を、ダストサンプラー(商品名、シントーファイン製)を付けた掃除機で1枚片面/30秒ずつ4枚分をサンプリングした。そして、ダストサンプラー内のフィルター(20cm)を1cm角に切り取り、スライドガラスに載せ、GVグリセリンゼリーにて封印し、1日放置後、150倍の顕微鏡にて1cm角全ての花粉をカウントした。
以上のようにして測定した花粉の数から、下記式に基づいて花粉付着量の低減した割合を算出した。
花粉付着低減率(%)=(1−処理有り布花粉付着量/処理無し布花粉付着量)×100
花粉の付着抑制の効果を、求めた花粉付着低減率により下記の基準で判定した。
◎:花粉低減率が75%以上。
○:花粉低減率が50%以上75%未満。
△:花粉低減率が25%以上50%未満。
×:花粉低減率が25%未満。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
表1〜3から、スプレー処理の場合、本発明にかかる実施例は、花粉の破裂抑制の効果と花粉の付着抑制の効果はいずれも良好であった。
一方、(A)成分が未配合の比較例1と、本発明における(A)成分とは異なる多価金属塩を含有する比較例2〜3は、花粉の破裂抑制の効果が低かった。また、(B)成分が未配合の比較例4は花粉の付着抑制の効果が低かった。
【0072】
表4から、濯ぎ処理の場合、(C)成分を含有する実施例14〜16は、(C)成分が未配合の実施例17に比べて花粉の付着抑制の効果が向上していることが確認された。
本発明における(A)成分とは異なる多価金属塩を含有する比較例5は、花粉の破裂抑制の効果が低かった。
【0073】
なお、実際に、洗濯物を本発明にかかる実施例の組成物で同様に処理して、外で干したところ、花粉の破裂抑制の効果及び花粉の付着抑制の効果はいずれも良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を、濁度測定法にて測定するペクチン水溶液の濁度が0.1以上の水溶性の多価金属塩(A)と、シリコーン及び/又はシリコーン誘導体(B)を含有する組成物で処理することを特徴とする外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法。
【請求項2】
前記組成物は、更にカチオン性を有する水溶性高分子化合物(C)を含有する請求項1記載の外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法。
【請求項3】
前記処理が、前記組成物を濯ぎ液に添加して洗濯物を濯ぐ方法と、前記組成物を容器に充填し、当該容器から前記組成物を洗濯物に供する方法の一方又は両方である請求項1又は2記載の外干し洗濯物への付着花粉の破裂抑制及び花粉の付着抑制方法。

【公開番号】特開2007−31852(P2007−31852A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213499(P2005−213499)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】