説明

外来遺伝子発現要素及びその利用

【課題】従来のIRES(外来遺伝子発現要素)よりもポリシストロニックな翻訳効率が高く、有用物質の生産等の工業的な利用が可能な外来遺伝子発現要素の提供。
【解決手段】ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のタンパク質読み枠の間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素1であって、特定の配列で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さの配列を含むポリヌクレオチドである、外来遺伝子発現要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシストロニックな翻訳効率が高く、有用物質の生産等の工業的な利用が可能な外来遺伝子発現要素、該要素を有する多重遺伝子発現構造体、該要素を有する外来遺伝子発現ベクター、該要素を有する形質転換体とその製造方法、該形質転換体を用いた外来遺伝子発現方法、該形質転換体を用いた外来遺伝子産物の製造方法、前記外来遺伝子発現要素を用いた外来遺伝子高効率発現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物細胞などの真核細胞においては、核酸から転写されたmRNAの翻訳はその5’末端側のキャップ構造にリボソームが結合することにより開始されるいわゆるキャップ依存性のmRNAの翻訳が主体となっている。一方、ある種のレトロウイルスにおいては、キャップ構造以外にリボソームが結合する内部リボソーム導入部位(Internal Ribosomal Entry Site,以下単にIRESともいう。)を有しており、キャップ非依存性のmRNA翻訳が行われることが知られている。
【0003】
動物ピコルナウイルスの1種であるencephalomyocarditis virus(EMCV)のゲノムはプラス鎖1本鎖RNAであり、全長834塩基からなる5’UTRを持っている。この5’UTRのうち260〜836の約574塩基にIRES配列が存在し、この配列にリボソームが直接結合して翻訳を開始することが証明されている(Jackson et al., 1990; Hellen and Sarnow, 2001)。このEMCV−IRESを使用したバイシストロニック(bicistronic)なタンパク質発現系は動物細胞においてはほぼ確立されており、市販品として入手可能である。EMCV−IRESは試験管内翻訳系においてもキャップ非依存的翻訳を促進する働きを示し、ウサギ網状赤血球の系では有効に機能することが明らかとなっている。しかし、コムギ胚芽の系ではEMCV−IRESは全く機能せず、むしろ翻訳抑制的に働いた。これらのことから、当初はEMCV−IRESは植物細胞においては機能しないと推定されていた。しかし、一過的発現系や形質転換植物を用いたin vivo実験系においてEMCV−IRESの挿入による翻訳効率上昇が観察され、植物細胞内でEMCV−IRESが機能することが判明した(非特許文献1)。
【0004】
また、植物ウイルスの1種であるアブラナ感染性トバモウイルス(crucifer-infecting tobamovirus(crTMV))は1分節のプラス鎖1本鎖RNAである。ゲノムRNAの5’側から複製酵素、移動タンパク質(movement protein(MP))、コートタンパク質(coat protein(CP))をコードするタンパク質読み枠(Open reading frame;以下、ORFと記す。)を持っており、各ORFはそれぞれ数塩基ずつ重なっている。そのため、最も上流に存在する複製酵素はゲノムRNAから翻訳されるが、その際MPおよびCP遺伝子は翻訳されないメカニズムとなっている。このcrTMVについては、crTMVゲノムRNAから生じたサブゲノムRNAの5’UTR部分を2種類の遺伝子のORF間に挿入したバイシストロニックベクターを用いた実験が行われ、sgRNAI2とmonocistronic sgRNAの5’UTRがin vitro翻訳実験およびタバコプロトプラストにおける一過的遺伝子発現実験において下流遺伝子を翻訳すること、すなわち各サブゲノムの5’UTRにIRES配列が存在することが証明された(非特許文献2および非特許文献3)。
【0005】
さらに、crTMV以外の植物ウイルスでは、tobacco etch virus(TEV)のゲノムRNA(非特許文献4)やhibiscus chlorotic ringspot virus(HCRSV)のサブゲノムRNAの5’UTR(非特許文献5)などにおいてもIRES配列が存在するという報告がある。また、植物ウイルス由来IRESの長さは100塩基前後であり、ピコルナウイルス由来のIRESよりも非常にサイズが小さいのが特徴的である。
【0006】
また、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能なポリリボヌクレオチドであり、該ポリリボヌクレオチドの近傍に接続されるIRESを介してキャップ非依存性RNAの翻訳効率を向上させる翻訳効率制御要素についても知られている(例えば、特許文献1,非特許文献6)。
さらに、Blackcurrant reversion nepovirus(BRV)のゲノムRNAの非翻訳領域についても翻訳効率を向上させる可能性が示されている(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Urwin, P., Yi, L., Martin, H., Atkinson, H., and Gilmartin, P.M. (2000). Functional characterization of the EMCV IRES in plants. Plnat J. 24, 583-589.
【非特許文献2】Ivanov, P.A., Karpova, O.V., Skulachev, M.V., Tomashevskaya, O.L., Rodionova, N.P., Dorokhov, Y.L., and Atabekov, J.G. (1997). A tobamovirus genome that contains an internal ribosome entry site functional in vitro. Virology 232, 32-43.
【非特許文献3】Skulachev, M.V., Ivanov, P.A., Karpova, O.V., Korpela, T., Rodionova, N.P., Dorokhov, Y.L., and Atabekov, J.G. (1999). Internal initiation of translation directed by the 5’-untranslated region of the tobamovirus subgenomic RNA I2. Virology 263, 139-154.
【非特許文献4】Niepel, M., and Gallie, D.R. (1999). Identfiation and characterization of the functional elements within the tobacco etch virus 5’leader required for cap-independent translation. J. Virol. 73, 9080-9088.
【非特許文献5】Koh, D.C.-Y., Wong, S.-M., and Liu, D.X. (2003). Synergism of the 3’-untranslated region and an internal ribosome entry site differentially enhances the translation of a plant virus coat protein. J. Biol. Chem. 278, 20565-20573.
【非特許文献6】松尾直子,橋本千種,市橋茜,平塚和之,“ウイルス由来配列を利用した多重遺伝子発現に関する研究”,ウイルス病理研究会レポート,7,63−72,2004
【非特許文献7】A. Karetnikov, K. Lehto / Virology 371 (2008), 292-308
【非特許文献8】Matsuo, N., Gilmartin, P.M., and Hiratsuka, K. Characterization of the EMCV-IRES mediated bicistronic translation in plant cells. Plant Biotechnol. 21, 119-126. 2004
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−55091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、IRESが植物細胞内において機能し、mRNAにおける多重的な翻訳領域を翻訳することは既に明らかとなっている。そして、有用物質の高効率・高生産が可能な遺伝子組換え植物を創成するために、複数の外来遺伝子を植物細胞や植物体に計画的に導入する多重遺伝子導入技術において、複数の外来遺伝子の間にIRESを介在させた配列を構築することで、単一の転写単位に複数のORFが挿入された多重遺伝子発現系を構築できる。この複数の外来遺伝子の間にIRESを介在させた配列を有する多重遺伝子発現系は、外来遺伝子のポリシストロニックな遺伝子発現が可能であり、複数の外来遺伝子を確実に発現させる方法として極めて有用である。
【0010】
しかしながら、既知のIRESを用いて前記多重遺伝子発現系を構築した場合、翻訳効率が低く、有用物質の生産等の工業的な利用のためには不向きであった。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、従来のIRESよりもポリシストロニックな翻訳効率が高く、有用物質の生産等の工業的な利用が可能な外来遺伝子発現要素、該要素を有する多重遺伝子発現構造体、該要素を有する外来遺伝子発現ベクター、該要素を有する形質転換体とその製造方法、該形質転換体を用いた外来遺伝子発現方法、該形質転換体を用いた外来遺伝子産物の製造方法、前記外来遺伝子発現要素を用いた外来遺伝子高効率発現方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素であって、
配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さの配列を含むポリヌクレオチドである、外来遺伝子発現要素を提供する。
前記外来遺伝子発現要素は、(1)配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第227位からなる塩基配列、(2)配列番号2で表される塩基配列、(3)配列番号3で表される塩基配列、(4)配列番号4で表される塩基配列、(5)配列番号5で表される塩基配列、(6)配列番号6で表される塩基配列、(7)配列番号7で表される塩基配列、(8)配列番号8で表される塩基配列、(9)配列番号9で表される塩基配列、又は(10)配列番号10で表される塩基配列のいずれか1つ又は2つ以上を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。
【0013】
また本発明は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素であって、
配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さを有するポリヌクレオチドである、第1の塩基配列部分と、
配列番号11で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチド、又は、配列番号12で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチドである、第2の塩基配列部分と、を少なくとも含む外来遺伝子発現要素を提供する。
前記外来遺伝子発現要素において、前記第1の塩基配列部分は、(1)配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第227位からなる塩基配列、(2)配列番号2で表される塩基配列、(3)配列番号3で表される塩基配列、(4)配列番号4で表される塩基配列、(5)配列番号5で表される塩基配列、(6)配列番号6で表される塩基配列、(7)配列番号7で表される塩基配列、(8)配列番号8で表される塩基配列、(9)配列番号9で表される塩基配列、又は(10)配列番号10で表される塩基配列のいずれか1つ又は2つ以上を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。
前記外来遺伝子発現要素において、前記第2の塩基配列部分は、(a)配列番号11で表される塩基配列のうち、第13位〜第34位の塩基配列、(b)配列番号12で表される塩基配列のうち、第13位〜第65位の塩基配列のいずれか一方を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。
【0014】
また本発明は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素が挿入された多重遺伝子発現構造体を提供する。
【0015】
また本発明は、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素とを含む外来遺伝子発現ベクターを提供する。
また本発明は、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを含む外来遺伝子発現ベクターを提供する。
前記外来遺伝子発現ベクターは、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記多重遺伝子発現構造体とを含むことが好ましい。
前記外来遺伝子発現ベクターは、プラスミドベクターであることが好ましい。
前記外来遺伝子発現ベクターは、植物細胞用ベクターであることが好ましい。
【0016】
また本発明は、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを保持する形質転換体を提供する。
前記形質転換体は、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記多重遺伝子発現構造体とを保持することが好ましい。
前記形質転換体は、植物細胞であることが好ましい。
前記形質転換体は、植物体であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを植物細胞又は植物体に導入して形質転換体を作製する形質転換体の製造方法を提供する。
前記形質転換体の製造方法において、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記多重遺伝子発現構造体とを植物細胞又は植物体に導入して形質転換体を作製することが好ましい。
前記形質転換体の製造方法は、植物細胞である形質転換体を作製するために用いることが好ましい。
前記形質転換体の製造方法は、植物体である形質転換体を作製するために用いることが好ましい。
【0018】
また本発明は、前記形質転換体の製造方法によって作製された形質転換体によって、前記外来遺伝子にコードされたペプチド又はタンパク質を発現させる工程を備える外来遺伝子発現方法を提供する。
【0019】
また本発明は、前記形質転換体の製造方法によって作製された形質転換体を増殖又は生育させて、前記外来遺伝子にコードされたペプチド又はタンパク質である外来遺伝子産物を製造する工程を備える外来遺伝子産物の製造方法を提供する。
【0020】
また本発明は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素を挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させる、外来遺伝子高効率発現方法を提供する。
前記外来遺伝子高効率発現方法において、上流側に配置されたORFと、これに連結するORFとの間に、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素を挿入することにより、上流側に配置されたORFの翻訳効率を向上させることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の外来遺伝子発現要素は、配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さの配列を含むポリヌクレオチドであり、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間にこれを挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有しており、異なるORF間に本発明に係る外来遺伝子発現要素を挿入することにより、外来遺伝子でコードされたペプチド又はタンパク質の翻訳効率を飛躍的に向上させることが可能である。
特に、既知のIRES配列と比較して、上流側のORFの発現効率を著しく向上させることが可能となる。
また、既知のIRESとは相同性を有しない新規な配列であるため、既知IRESと同時に使用しても遺伝子発現の共抑制等の問題が起こらない。
【0022】
本発明の外来遺伝子発現要素は、配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さを有するポリヌクレオチドである、第1の塩基配列部分と、配列番号11で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチド、又は、配列番号12で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチドである、第2の塩基配列部分と、を少なくとも含む構成とすることが好ましい。前記第1の塩基配列部分と前記第2の塩基配列部分とを組み合わせることによって、外来遺伝子でコードされたペプチド又はタンパク質の翻訳効率をより一層向上させることが可能である。
【0023】
本発明の多重遺伝子発現構造体は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に、前記外来遺伝子発現要素が挿入された構造なので、該多重遺伝子発現構造体は、遺伝子組換え植物体あるいは植物細胞を利用して、複数の外来遺伝子を効率よく発現させるための導入遺伝子作製時に好適に用いることができる。この多重遺伝子発現構造体を植物細胞や植物体などに導入して作製された形質転換体は、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる。
【0024】
本発明の外来遺伝子発現ベクターは、前記外来遺伝子発現要素又は前記多重遺伝子発現構造体を含むものなので、この外来遺伝子発現ベクターを植物体や植物細胞に導入して、複数の外来遺伝子を効率よく発現させることが可能な形質転換体を効率よく作製することができる。この外来遺伝子発現ベクターを植物細胞や植物体などに導入して作製された形質転換体は、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる。
【0025】
本発明の形質転換体は、前記外来遺伝子発現要素又は前記多重遺伝子発現構造体を含むものなので、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる。
【0026】
本発明の形質転換体の製造方法は、真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを植物細胞又は植物体に導入して形質転換体を作製することによって、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる形質転換体を効率よく生産することができる。
【0027】
本発明の外来遺伝子発現方法は、本発明の形質転換体の製造方法により得られ、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素を含む形質転換体によって外来遺伝子を発現させることによって、既知のIRES配列と比較して、上流側のORFの発現効率を著しく向上させることが可能となる。
【0028】
本発明の外来遺伝子産物の製造方法は、本発明の形質転換体の製造方法により得られ、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素を含む形質転換体を増殖又は生育させて、外来遺伝子にコードされたペプチド又はタンパク質である外来遺伝子産物を製造する工程を備えたものなので、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる。
【0029】
本発明の外来遺伝子高効率発現方法は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素を挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるものなので、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】複数のORFの間にIRESを挿入した多重遺伝子発現構造体を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る実施例において使用したIRES活性の測定方法を説明するための概略構成図である。
【図3】本発明に係る実施例1〜3及び比較例1,2のIRES活性測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例1,4〜6及び比較例1のIRES活性測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1,7〜10及び比較例1のIRES活性測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の外来遺伝子発現要素の第1の形態は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素であって、配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さの配列を含むポリヌクレオチドである。すなわち、本発明の外来遺伝子発現要素は、いわゆるIRESの一種であり、既知のIRESよりも前記IRES活性が高い新規なIRESである。なお、IRESは、RNAあるいはmRNA上において内部リボソーム導入部位として機能するものであるため、IRESとして機能する状態のポリヌクレオチドのタイプはRNAであり、IRESは、本来的にRNA分子の一部分あるいはRNA配列である。本発明の外来遺伝子発現要素、多重遺伝子発現構造体、外来遺伝子発現ベクター、形質転換体等において、この語を用いるときには、IRESとして機能するRNA分子の一部分あるいはRNA配列を意味する他、これらをコードするポリヌクレオチドとして表現するものとする。したがって、IRESはDNAであってもRNAであっても使用することができ、配列番号1〜10において表す塩基配列は、DNAとして表記している。
【0032】
本発明の外来遺伝子発現要素の第2の形態は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素であって、配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さを有するポリヌクレオチドである、第1の塩基配列部分と、配列番号11で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチド、又は、配列番号12で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチドである、第2の塩基配列部分と、を少なくとも含む外来遺伝子発現要素を提供する。
【0033】
これらの本発明に係る外来遺伝子発現要素は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間にこれを挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有しており、異なるORF間に本発明に係る外来遺伝子発現要素を挿入することにより、外来遺伝子でコードされたペプチド又はタンパク質の翻訳効率を飛躍的に向上させることが可能である。
特に、既知のIRES配列と比較して、上流側のORFの発現効率を著しく向上させることが可能となる。
また、既知のIRESとは相同性を有しない新規な配列であるため、既知IRESと同時に使用しても遺伝子発現の共抑制等の問題が起こらない。
【0034】
以下、本発明の最良の実施形態として、外来遺伝子発現要素の2つの形態(外来遺伝子発現要素−1、外来遺伝子発現要素−2)について説明するとともに、該外来遺伝子発現要素を利用した多重遺伝子発現構造体、該要素を有する外来遺伝子発現ベクター、該要素を有する形質転換体とその製造方法について併せて説明する。
【0035】
(外来遺伝子発現要素−1)
本発明に係る外来遺伝子発現要素の第1の形態は、配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上、好ましくは40塩基対以上、より好ましくは50塩基対以上の長さの配列ならびにそのホモログを含むポリヌクレオチドである。ここで、ホモログとは、本来の配列とは異なるが類似のIRES活性を有する変異体を指すものとする。通常、ホモログは、本来の配列と少なくとも70%以上の相同性を有し、好ましくは、80%以上、より好ましくは90%以上、一層好ましくは95%以上の相同性を有している。また、ホモログは、本来の配列に対して1あるいは2以上の塩基の置換、欠失および/または挿入を有している。なお、本明細書において、DNAなどの核酸のホモロジーは、遺伝子解析プログラムBLAST(http://blast.genome.ad.jp),FASTA(http://fasta.genome.ad.jp/SIT/FASTA.html)などによって決定することができる。
【0036】
本発明の好適な実施形態において、前記外来遺伝子発現要素は、
(1)配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第227位からなる塩基配列
(2)配列番号2で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第113位からなる塩基配列)
(3)配列番号3で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第114位〜第227位からなる塩基配列)
(4)配列番号4で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第170位からなる塩基配列)
(5)配列番号5で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第58位〜第227位からなる塩基配列)
(6)配列番号6で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第58位〜第170位からなる塩基配列)
(7)配列番号7で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第57位からなる塩基配列)
(8)配列番号8で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第58位〜第113位からなる塩基配列)
(9)配列番号9で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第114位〜第170位からなる塩基配列)
(10)配列番号10で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第171位〜第227位からなる塩基配列)
のいずれか1つ又は2つ以上を有するポリヌクレオチドあるいはそのホモログであることが好ましい。
【0037】
この外来遺伝子発現要素は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している、新規なIRES配列である。ここで、本発明において用いている「IRES活性」の用語の意味について、図1を参照して説明する。
【0038】
図1は、複数のORF2,3,4の間にIRES1,1を挿入した多重遺伝子発現構造体5を示す概略構成図である。
本図において、プロモーター6が接続される上流側のORF2は、第1のペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である第1の外来遺伝子Aを有している。
前記ORF2の下流側には、第1のIRES1が接続され、該第1のIRES1の下流側には、第2のペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である第2の外来遺伝子Bを有しているORF3(中間のORF)が接続されている。
さらに、前記中間のORF3の下流側には、第2のIRES1が接続され、該第2のIRES1の下流側には、第3のペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である第3の外来遺伝子Cを有しているORF4(下流側のORF)が接続されている。そして、該下流側のORF4の下流側には、ターミネーター7が接続されている。前記第1のIRESと第2のIRESは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、前記第1のIRESと第2のIRESとが異なるものである場合、上流側に配置される第1のIRESを本発明に係る外来遺伝子発現要素とすればよく、下流側の第2のIRESは、本発明に係る外来遺伝子発現要素であってもよいし、或いは既知のIRESであってもよい。
【0039】
図1に示す多重遺伝子発現構造体5において、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子A,B,Cを導入した複数のORF2,3,4の間に、IRES活性を有する本発明の外来遺伝子発現要素(図1中のIRES1,1)を挿入することにより、この多重遺伝子発現構造体5の翻訳における外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を大幅に向上させることができる。各ORF2,3,4間にIRESを挿入しない構造体、すなわち、外来遺伝子A,B,Cを導入した複数のORF2,3,4を直接接続した構造では、上流側のORF2の翻訳終了とともに、終始コドンでリボソームが解離し翻訳が終了し、2番目以降のORF3,4が翻訳されない。一方、図1に示すように異なるORF2,3,4間に本発明に係る外来遺伝子発現要素をIRESとして挿入することにより、外来遺伝子A,B,Cでコードされた複数のタンパク質のポリシストロニックな翻訳効率を大幅に向上させることが可能である。特に、本発明に係る外来遺伝子発現要素は、既知のIRES配列と比較して上流側のORFの発現効率を著しく向上させることが可能となることで、既知のIRESを用いた場合と比較して複数のタンパク質のポリシストロニックな翻訳効率を飛躍的に向上させることが可能であり、その「ポリシストロニックな翻訳効率の向上効果」のことを、本発明では「IRES活性」と称している。
つまり、本発明において「IRES活性」とは、IRESを含まない一つのORFの翻訳において発現するペプチド又はタンパク質の発現量(P1)に対し、前述したように複数のORF間にIRES(外来遺伝子発現要素)を挿入した構造体の翻訳において、それぞれの外来遺伝子でコードされたペプチド又はタンパク質の発現量(P2,P3)の割合(P2/P1,P3/P1)のことを言う。
【0040】
(外来遺伝子発現要素−2)
本発明に係る外来遺伝子発現要素の第2の形態は、外来遺伝子発現要素−1で記載した通りの塩基配列部分である第1の塩基配列部分と、配列番号11で表される塩基配列又は配列番号12で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチドまたはそのホモログである第2の塩基配列部分と、を少なくとも含む。ここで、ホモログとは、外来遺伝子発現要素−1で記載したホモログと同様に、本来の配列とは異なるが類似のIRES活性を有する変異体を指すものとする。通常、ホモログは、本来の配列と少なくとも70%以上の相同性を有し、好ましくは、80%以上、より好ましくは90%以上、一層好ましくは95%以上の相同性を有している。また、ホモログは、本来の配列に対して1あるいは2以上の塩基の置換、欠失および/または挿入を有している。
【0041】
前記ステム−ループ構造は、相補的塩基対からなる二重鎖のポリヌクレオチドからなるステムと、ステムを結合する端部であるループを有していればよい。なお、ループは、互いに塩基対を形成しない配列を有する一重鎖からなるループのみならず実質的にループを形成しない端部であってもよい。したがって、本発明におけるステム−ループ構造は、ヘヤピン構造を含んでいる。この外来遺伝子発現要素−2におけるステム−ループ構造の形成は、この外来遺伝子発現要素−2のポリヌクレオチド鎖が自己相補性を有することにより、該自己相補性を有する鎖部分が塩基対を形成することによりステムが形成される。したがって、この外来遺伝子発現要素−2は、少なくともステムを形成可能な一対の自己相補性鎖部位を有していればよく、さらに、該自己相補性鎖部位に加え、該部位間に介在されるループを形成可能な自己相補性を有しない(あるいは自己相補性がほとんどない)非自己相補性鎖部位を有していてもよい。
【0042】
ステムを形成可能な自己相補性鎖部位は、自己相補的塩基間で結合するのに十分な長さを有していることが好ましいが、例えば、合わせて合計で50ヌクレオチド残基以上100ヌクレオチド残基以下の範囲とすることができる。また、自己相補性部位が自己塩基対合してステムを形成したときには、5塩基対以上35塩基対以下の二重鎖または部分二重鎖を形成可能とすることができる。形成する塩基対が少なすぎるとステムの安定性が低く、安定したステム−ループ構造を形成しにくく、塩基対が多すぎるキャップ依存性翻訳やキャップ非依存性翻訳の双方を阻害するおそれがあるからである。好ましくは、一対の自己相補性部位は6塩基対以上30塩基対以下の塩基対合が形成可能である。塩基対合は、より好ましくは、7塩基対以上25塩基対以下であり、さらに好ましくは8塩基対以上22塩基対以下である。
【0043】
また、自己相補性鎖部位を構成するヌクレオチド鎖の構成塩基は、本発明に係る外来遺伝子発現要素がDNAとしたとき、グアニン(G)およびシトシン(C)の比率がアデニン(A)およびチミン(T)より多いことが好ましく、より好ましくはGC含量が54%以上である。
【0044】
ループを形成可能な非自己相補性鎖部位は、ステムの二重鎖の安定性を阻害しないことが好ましく、2ヌクレオチド残基以上であることが好ましく、より好ましくは4ヌクレオチド残基以上である。また、上限は、好ましくは20ヌクレオチド残基程度であり、より好ましくは10ヌクレオチド残基程度である。
【0045】
少なくとも自己相補性部位を備えるステム−ループ構造部分は、全体として20以上60以下のヌクレオチド残基からなることが好ましい。また、この外来遺伝子発現要素−2は、ステム−ループ構造部分以外の部分、すなわち、ステムのループに連続しない3’末端および5’末端の部分を有することができる。この両テール部分は、この第2の塩基配列部分の上流あるいは下流に結合される、IRES活性を有する前記第1の塩基配列部分やORFとの介在配列となり、前記第1の塩基配列部分やORFとの間で適切な距離や位置関係を形成するのに寄与することができる。このような介在配列としては、3’側には20残基以上23残基程度有することが好ましく、5’側には10残基以上15残基以下程度有することが好ましい。
【0046】
本発明の好適な実施形態において、前記第2の塩基配列部分は、
(a)配列番号11で表される塩基配列のうち、第13位〜第34位の塩基配列、
(b)配列番号12で表される塩基配列のうち、第13位〜第65位の塩基配列、
のいずれか一方を有するポリヌクレオチドあるいはそのホモログであることが好ましい。
【0047】
前記第2の塩基配列部分は、IRES活性を有する前記第1の塩基配列部分を介してのキャップ非依存性翻訳効率を向上させ、その結果として外来遺伝子発現要素−2のポリシストロニックな翻訳効率をより一層向上させることができる。前記第2の塩基配列部分は、IRES活性を有する前記第1の塩基配列部分に対して好ましくはその上流に位置される。好ましくは、前記第1の塩基配列部分の直前に第2の塩基配列部分を結合することが好ましい。第1の塩基配列部分と第2の塩基配列部分との間にヌクレオチド残基が多いと、この第2の塩基配列部分によるキャップ非依存性翻訳効率の向上効果が低下するおそれがある。
【0048】
(多重遺伝子発現構造体)
本発明に係る多重遺伝子発現構造体は、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のORFの間に、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素が挿入された構造になっている。
図1は、本発明に係る多重遺伝子発現構造体の一例を示す概略構成図であり、本例の多重遺伝子発現構造体5は、3つのORF2,3,4の間に、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素(IRES1,1)を挿入した構成になっている。なお、図1の例示は一例に過ぎず、ORF及びIRESの個数は本例示に限定されるものではなく複数のORFがIRESを介して連結された構造であればよく、本例示よりも少ない個数のORF及びIRES(ORFが2つ、IRESが1つ)又は多い個数のORF及びIRES(ORFが4つ以上、IRESが3つ以上)を連結した多重遺伝子発現構造体を構成してもよい。
【0049】
本発明に係る多重遺伝子発現構造体において、複数のORF2,3,4に導入される外来遺伝子は、宿主、特に植物細胞又は植物体に当該多重遺伝子発現構造体を導入して得られた形質転換体を増殖又は生育させた際に、該外来遺伝子でコードされたペプチド又はタンパク質が発現されるものであればよく、複数のORF毎に異なるものであることが好ましい。
【0050】
本発明において用いる外来遺伝子によりコードされるペプチド又はタンパク質としては、前述した通り、宿主、特に植物細胞又は植物体において発現可能なペプチド又はタンパク質であればよく、例えば、医薬用途のあるペプチドあるいはタンパク質;栄養価が高められたタンパク質;殺虫性ペプチドあるいはタンパク質;植物病原体等に対する抗菌性ペプチドあるいはタンパク質;プロテアーゼ、アミラーゼ、あるいは植物細胞内における糖合成経路、タンパク質合成経路における酵素タンパク質;ある種の酵素阻害剤であるペプチドあるいはタンパク質;などが挙げられる。
【0051】
前記医薬用途のあるペプチドあるいはタンパク質としては、例えば、抗体、抗原、受容体アンタゴニスト、神経ペプチド、酵素、血液因子、第VIII因子、第IX因子、インスリン、プロインスリン、ソマトスタチン、血液アルブミン、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、造血因子、絨毛性性腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン−絨毛性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、ケラチン細胞成長因子、グリア細胞由来神経栄養因子、これらの断片、可溶性型、機能性誘導体、融合タンパク質などが挙げられる。
【0052】
また、前記外来遺伝子として、宿主である植物体に対して、特定の薬剤に対する耐性を付与する遺伝子、例えば、除草剤であるラウンドアップ耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ブロモキシニル耐性遺伝子、スルホニルウレア耐性遺伝子、2,4−D耐性遺伝子などを使用してもよいし、BT(Bacillus thuringiensis)毒素産生遺伝子などの従来より遺伝子組換え作物の生産において知られている各種の有用な遺伝子を使用してもよい。
【0053】
さらに、前記外来遺伝子は、前述したペプチド又はタンパク質とともに発現され、適切なアッセイによって検出された場合にこれらペプチド又はタンパク質の発現の間接的な証拠となる選択マーカーを発現可能なマーカー遺伝子を含んでいてもよい。このような選択マーカーとしては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)、ヒカリコメツキ(Click beetle)由来の緑色発光タンパク質(CBG)及び赤色発光タンパク質(CBR)など細胞に識別可能な色を付与する選択マーカーの他、薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性遺伝子などを始めとする公知の各種選択マーカー遺伝子を利用できる。
なお、後述する実施例においては、外来遺伝子として、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ヒカリコメツキ(Click beetle)由来の緑色発光タンパク質(CBG)及び赤色発光タンパク質(CBR)を発現するレポーター遺伝子を用いて多重遺伝子発現構造体を構築しているが、あくまでもこれはIRES活性の測定を3レポーター同時定量法によって容易に行うためのものであり、本発明に係る多重遺伝子発現構造体、外来遺伝子発現ベクター及び形質転換体を外来遺伝子産物の工業的生産に利用する場合には、レポーター遺伝子ではなく、前述した有用なペプチド又はタンパク質を発現可能な遺伝子配列が用いられる。
【0054】
本発明に係る多重遺伝子発現構造体において、IRESが複数存在する場合、その全てが本発明に係る前記外来遺伝子発現要素であってもよいし、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と他のIRESとを組み合わせて使用してもよい。後者の場合、本発明に係る前記外来遺伝子発現要素は、上流側に配置することが望ましい。
【0055】
本発明に係る多重遺伝子発現構造体において、他のIRESとしては、RNAウイルスゲノムにコードされる該ウイルスゲノム由来のIRESであることが好ましい。こうしたIRESは、本制御要素によってキャップ非依存性翻訳効率を向上させやすいからである。なかでも植物RNAウイルスであり、例えば、アブラナ感染性トバモウイルス(crucifer-infecting tobamovirus(crTMV))、タバコエッチウイルス(tobacco etch virus(TEV))、ハイビスカスクロロティックリングスポットウイルス(hibiscus chlorotic ring spot virus(HCRSV))が有するIRESが好ましいものとして挙げられる。特に、アブラナ感染性トバモウイルス(crTMV)の移動タンパク質をコードする遺伝子またはコートタンパク質をコードする遺伝子のIRESを用いることが好ましい。
【0056】
本発明に係る外来遺伝子発現要素及び多重遺伝子発現構造体は、化学合成法、PCR法等の当業者に周知の如何なる方法によっても製造することができる。これらの方法によって得られる外来遺伝子発現要素及び多重遺伝子発現構造体は、塩基配列決定用ゲルを用いたゲル濾過等の当業者に周知の方法により精製されることが好ましい。
【0057】
なお、好ましい外来遺伝子発現要素及び多重遺伝子発現構造体として挙げた配列は、いずれもDNA配列であるが、これらの各DNA配列に対応するRNA配列(これらのDNA配列によってコードされるRNA配列)を有するポリヌクレオチドも本発明において好ましいポリヌクレオチドである。
【0058】
(外来遺伝子発現ベクター)
本発明に係る外来遺伝子発現要素及び多重遺伝子発現構造体は、所望のペプチド又はタンパク質を宿主細胞内で発現させるための外来遺伝子発現ベクターの構成部分としての形態で使用することができる。本発明に係る外来遺伝子発現ベクターは、真核細胞において動作可能なプロモーターと、この下流側に結合された少なくとも1つの前記外来遺伝子発現要素、又は多重遺伝子発現構造体を備えることができる。こうした外来遺伝子発現ベクターに少なくとも前記外来遺伝子発現要素によって翻訳開始可能に所望の外来遺伝子を含む複数のORFを連結し、この外来遺伝子発現ベクターを宿主細胞に導入することで、複数のペプチド又はタンパク質をポリシストロニックに産生させることができる。
【0059】
本発明に係る外来遺伝子発現ベクターにおいて、図1に示すようにプロモーター6により作動可能に第1のペプチド又はタンパク質のコード領域を含む上流側のORF2を結合し、この上流側のORF2の下流側に第1のIRES1を接続し、該第1のIRES1の下流側に、第2のペプチド又はタンパク質のコード領域を含む中間のORF3を接続し、この中間のORF3の下流側に、第2のIRES1を接続し、該第2のIRES1の下流側に、第3のペプチド又はタンパク質のコード領域を含む下流側のORF4を接続して構成した多重遺伝子発現構造体5を保持させた場合、この外来遺伝子発現ベクターを宿主真核細胞に導入することで、第1のペプチド又はタンパク質、第2のペプチド又はタンパク質及び第3のペプチド又はタンパク質のポリシストロニックな翻訳効率を向上させることができる。各ORF2,3,4がコードするタンパク質は同一であってもよいし異なっていてもよい。すなわち、本発明の外来遺伝子発現ベクターによれば、一つのmRNAから複数のタンパク質が発現可能となっている。したがって、例えば、第1〜第3のペプチド又はタンパク質を同じくすれば、結果として一つのプロモーターの制御下でより多くのペプチド又はタンパク質を発現可能となり、第1〜第3のペプチド又はタンパク質がそれぞれ異なるものであれば、異種のタンパク質を一つのプロモーターで発現可能となる。こうした外来遺伝子発現ベクターは、特に、一つの好ましい表現型を構成するのに複数種類のタンパク質が必要なときに好ましい。さらに、例えば、第1のタンパク質を目的のタンパク質とし、第2のタンパク質を選択マーカーとするなど、選択マーカーを同一プロモーターの作動下で好ましくはキャップ非依存的に翻訳開始することで、目的遺伝子を発現するクローンを容易に選択できるようになる。
【0060】
本発明に係る外来遺伝子発現ベクターによれば、本発明に係る外来遺伝子発現要素の種類や個数を適宜変更することで、従来、IRES単独ではキャップ非依存性翻訳効率が十分に得られなかった真核細胞においてもキャップ非依存性翻訳効率を向上させることができる。特に、IRESとして本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いることで、上流側のORFの翻訳効率が高められることから、外来遺伝子のポリシストロニックな発現効率を飛躍的に向上させることができる。本発明に係る外来遺伝子発現ベクターによれば、IRESによってキャップ非依存性翻訳が可能な真核細胞、特に植物細胞の種類を拡張でき、また、これらの細胞におけるIRESによる複数の外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させることができる。
【0061】
本発明に係る外来遺伝子発現ベクターにおける真核細胞において動作可能なプロモーターは、特に限定されるものではなく、必要に応じ宿主真核細胞において構成的、誘導的、時期特異的あるいは組織特異的なプロモーターを用いることができる。植物細胞に用いる外来遺伝子発現ベクターとしては、例えば、CaMV35Sプロモーター、エロンゲーションファクター1α遺伝子のプロモーター(EF1αプロモーター)などの植物における構成プロモーター、光誘導プロモーターなどの誘導的プロモーターを用いることができる。また、本発明に係る外来遺伝子発現ベクターにおいては、最も3’側に位置された最後のORF(図1におけるORF4)の3’側には、ターミネーターを備えることが好ましい。ターミネーターとしては、NOSターミネーターなどを使用できる。宿主細胞で使用するプロモーターやターミネーターは、当業者であれば公知物を適宜選択して使用し、あるいは公知物を改変して使用することができる。
【0062】
本発明に係る外来遺伝子発現ベクターには、必要に応じて、エンハンサーなどのシスエレメント、人工イントロン、シグナルペプチドなどを連結することができる。また、本発明に係る外来遺伝子発現ベクターにおいて使用する選択マーカーは、特に限定しないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)など細胞に識別可能な色を付与する選択マーカーの他、薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性遺伝子などを始めとする公知の各種選択マーカー遺伝子を利用できる。これらの選択マーカーは、予め、いずれかのORF、好ましくは、前記外来遺伝子発現要素によって翻訳可能に備えられていることが好ましく、例えば、最も下流側に位置されるORFにコードされていることが好ましい。また、本発明に係る外来遺伝子発現ベクターには、前記プロモーターや各開始要素の下流に各コード領域を含むポリヌクレオチド鎖を挿入可能なマルチクローニングサイトを備えることもできる。このマルチクローニングサイトを備えたベクターを用いる場合には、いずれかのクローニングサイトに本発明に係る多重遺伝子発現構造体を挿入し、且つ他のクローニングサイトに別の外来遺伝子を挿入して外来遺伝子発現ベクターを構成することもできる。
【0063】
本発明に係る外来遺伝子発現ベクターは、染色体外で自律複製できるものの他、染色体組込み型ベクターとして構築されていてもよい。また、形態としては、線状の断片、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、トランスポゾン、酵母人工染色体(YAC)や植物人工染色体(PAC)、哺乳類人工染色体(MAC)等を採ることができる。これらの中でも、プラスミドベクターが好ましく、さらに植物細胞用又は植物体用のベクターが好ましい。
【0064】
(形質転換体およびその作製)
前記外来遺伝子発現ベクターは、植物細胞、植物体、動物細胞、昆虫細胞、酵母、真菌などの真核細胞に導入することによって、複数の外来遺伝子のポリシストロニックな発現が可能な形質転換体を作製するために用いられる。本発明に係る形質転換体において、好ましい宿主細胞は、植物細胞又は植物体である。前記外来遺伝子発現ベクターの導入方法は、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿法、アグロバクテリウム法、PEG法、直接マイクロインジェクション法等の遺伝子組換え技術で従来より知られている各種の適切な手段のいずれかを採用して行うことができる。
【0065】
前記外来遺伝子発現ベクターの導入後、その宿主細胞を培養又は生育させることで、真核細胞において動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを保持する形質転換体を得ることができる。
【0066】
前記外来遺伝子発現ベクターが宿主細胞に導入されたか否か、あるいは染色体上に保持されているか否かの確認は、PCR法やサザンハイブリダイゼーション法により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、導入部位特異的プライマーによりPCRを行い、PCR産物について、電気泳動において予期されるバンドを検出することによって確認できる。あるいは蛍光色素などで標識したプライマーでPCRを行うことでも確認できる。これらの方法は、当業者において周知である。
さらに、外来遺伝子発現ベクターに外来遺伝子として、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ヒカリコメツキ(Click beetle)由来の緑色発光タンパク質(CBG)及び赤色発光タンパク質(CBR)を発現するレポーター遺伝子を組み込んでおくことで、培養した宿主細胞について簡単な発光検出法を行うことで、前記外来遺伝子発現ベクターが宿主細胞に導入されたか否かを簡易に確認することができる。
【0067】
植物細胞の形質転換体を得る場合、前記外来遺伝子発現ベクターが導入される細胞としては、植物体に再生可能なあらゆる種類の形態の植物細胞を含めることができる。例えば、培養細胞、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根、カルス等が挙げられる。また、形質転換される植物種としては、特に限定されるものではなく、単子葉植物でも双子葉植物でもよいが、農作物あるいは園芸用作物であることが好ましい。たとえば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、サトウキビなどの穀類、じゃがいも、さつまいもなどの根茎又は塊根を形成する作物、インゲンマメ、ソラマメ、エンドウなどのマメ科植物、ピーナッツ、ごま、ナタネ、綿実、ヒマワリ、サフラワーなどの種子作物、リンゴ、メロン、ブドウなどの果実を有する作物、トマト、ナスなどの作物、各種花卉植物であることが好ましい。植物の形質転体は、所定の再生工程を実施することで細胞を植物体に変換することができる。再生の方法は、植物の種類によって異なるが、各種公知の方法を使用できる。
【0068】
こうして得られる形質転換体は、真核細胞において動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された本発明に係る前記外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子と、からなるポリシストロンを、染色体内あるいは染色体外で保持していてもよい。また、形質の発現は、一時的であっても安定的であってもよい。
【0069】
また、形質転換体としては、特に限定しないで全ての種類、形態の細胞を包含し、各種細胞の他、動植物個体、その動植物個体を構成しうる真核細胞、およびその一部である組織や器官ならびに生殖細胞を含む。また、ウイルス粒子も包含する。さらに、また植物個体の一部であるその繁殖媒体(種子、根茎、果実、切穂等)も包含する。
【0070】
本発明に係る形質転換体は、宿主生物の増殖又は生育に適切な条件下で培養又は生育し、増殖させることにより、形質転換体の細胞内、細胞表面、あるいは細胞外に生産すべき有用なペプチド又はタンパク質を製造する。形質転換体により生産されたペプチド又はタンパク質は、植物体の生育にとって有利な条件(例えば、除草剤耐性、BT毒素生産、成長促進、多収穫など)となって植物体やその産物の増産をもたらしたり、或いは、植物体やその産物中に含まれる栄養成分の増大又は新生をもたらすことが可能である。さらに、培養した植物細胞又は生育した植物体から、有用なペプチド又はタンパク質を抽出、分離、精製することによって、医療用等に有用なペプチド又はタンパク質を工業的な規模で安定して生産することが可能となる。このように、本発明の形質転換体は、前記外来遺伝子発現要素又は前記多重遺伝子発現構造体を含むものなので、高効率多重遺伝子発現が可能となり、有用物質の生産等の工業的な利用が可能となる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明の具体例と効果を説明するが、これらの実施例は単なる例示であり、本発明を限定するものではない。
以下の各実施例及び比較例においては、IRES活性を測定するために、外来遺伝子として、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ヒカリコメツキ(Click beetle)由来の緑色発光タンパク質(CBG)及び赤色発光タンパク質(CBR)を発現するレポーター遺伝子を用い、図2に示す3レポーター同時定量法によって、前記Rluc、CBG及びCBRの発現量を定量分析している。
【0072】
<3レポーター同時定量法>
(1)3レポーター同時定量用ベクターの作製
カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター・NOSターミネーターカセット内に、上流側遺伝子として、ヒカリコメツキ(Click beetle)由来の赤色発光タンパク質(CBR)を発現するレポーター遺伝子(以下、CBR遺伝子と記す。)、IRES活性測定するIRES、その下流側にヒカリコメツキ(Click beetle)由来の緑色発光タンパク質(CBG)を発現するレポーター遺伝子(以下、CBG遺伝子と記す)を順に連結して挿入し、さらに下流側のカセット内にウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)を発現するレポーター遺伝子(以下、Rluc遺伝子と記す)を挿入し、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
【0073】
(2)植物細胞への遺伝子導入
作製した前記3レポーター同時定量用ベクターを植物細胞に導入するのにあたり、遺伝子銃(model PDS-1000/He Biolistic Particle Delivery System(Bio-Rad社))を用い、付属のプロトコールにしたがって実験を行った。ヘリウムガスの圧力は1100psiで、1サンプルに対して1回ずつ打ち込んだ。金粒子(直径1.6μm)へのDNAの吸着方法は次に示す。まず、金粒子は50%グリセロールで60mg/mlに調製し、3回の遺伝子導入実験用サンプル当たり金粒子懸濁液25μLを用いた。金粒子懸濁液25μLをチューブに分注し、DNAを2μg、2.5M塩化カルシウム25μL、0.1mMスペルミジン10μLを順次加えて穏やかに撹拌した。1分間静置した後、12000rpmで3秒間遠心し上清を除去した。金粒子を70%エタノール200μL及び100%エタノール200μLで1回ずつ洗浄し、最後に30μLの100%エタノールで懸濁した。そして、この溶液7.5μLを1回の遺伝子導入実験に使用した。導入細胞は、タバコBY−2細胞を用い、培養5日目の該細胞2mlを3%アガープレートの上に1層になるように拡げ、余分な液体を除去した後、十分に乾燥させた上で用いた。遺伝子導入後は27℃で24時間静置した。なお、各ベクターについて3回ずつ遺伝子導入を行った。
【0074】
(3)細胞抽出液の調製
遺伝子導入から24時間経過後、プレート当たり2mlのPassive Lysis Buffer(Promega社)を加えて細胞を回収し、このうち1mlを1.5mLチューブに分注し、15000rpmで1分間遠心して上清を除去した。回収した細胞にPassive Lysis Bufferを250μL加え、電動ホモジェナイザーを用いて10秒間破砕した。これを15000rpmで1分間遠心し、上清を活性測定に使用した。
【0075】
(4)IRES活性測定
本実施例において、IRES活性の測定に用いた3レポーター同時定量法の原理を図2に示す。
前述した通り調製した細胞抽出液11を測定容器に入れ、該測定容器を超高感度受光素子とフィルター12とを備えた発光検出装置にセットした。前記フィルター12は、前記測定容器と前記超高感度受光素子との間に設けられ、赤色光透過フィルターと緑色光透過フィルターと全光透過部(又は青色光透過フィルター)とを切り替え可能に備えている。CBR遺伝子発現量を測定する場合には、フィルター12を赤色光透過フィルターに切り替えて赤色発光を検出し、CBG遺伝子発現量を測定する場合には、フィルター12を緑色光透過フィルターに切り替えて緑色発光を検出し、またRluc遺伝子の発現量を測定する場合には、フィルター12を全光透過部に切り替えて前記測定容器から発する光量を前記超高感度受光素子によって検出する。
この3レポーター同時定量法では、まず、細胞抽出液11を入れた測定容器に、第1の基質としてD−ルシフェリンを添加し、CBRとCBGを発光させ、前記フィルター12を赤色光透過フィルターに切り替えて、CBRによる赤色発光量を超高感度受光素子によって検出する。続いて、前記フィルター12を緑色光透過フィルターに切り替えて、CBGによる緑色発光量を超高感度受光素子によって検出する。
次に、第2の基質としてセレンテラジンを添加して、ルシフェリン反応を停止させるとともに、Rlucを発光させ、Rlucによる発光量を超高感度受光素子によって検出する。
【0076】
(5)IRES活性の数値化
前述した通り、サンプルとした細胞抽出液11について、CBRによる発光量、CBGによる発光量、ならびにRlucによる発光量をそれぞれ測定後、以下の計算式によって、測定対象のIRESについてのIRES活性を求めた。
・上流側遺伝子のIRES活性(CBR)=(CBRによる発光量)/(Rlucによる発光量)
・下流側遺伝子のIRES活性(CBG)=(CBGによる発光量)/(Rlucによる発光量)
【0077】
[比較例1]
pBI221(Clontech社)の35Sプロモーター・NOSターミネーター間に多色発光レポーター遺伝子であるCBRとCBG68を並列に挿入したIRESを含まないベクターは、以下(1)から(3)の手順でプラスミドの構築を行った。
(1)pCBR-LUC+Nde/XN(Hf/Nf)
pCBR-Basic vector(Promega社)50ngを鋳型に、NheI-4CBRFW(配列番号13)とBglII-8CBRREV(配列番号14)プライマー15pmolesとKOD DNA Polymerase(TOYOBO)を用いて50mlの反応系でPCRを行い、NheI及びBglIIサイトを付加したCBR断片を増幅した。
反応は94℃:2分変性後、94℃:15秒-53℃:30秒-68℃:2分を25サイクル行い、続けて68℃:5分行った。
増幅したCBR断片を1%ゲルで回収後、NheI/BglIIで処理し、pRluc-LUC+Nde/XN(Hf/Nf)(非特許文献8)のNheI及びBglII切断部位にクローニングした。
(2)pCBR- CBG68+Nde/XN(Hf/Nf)
pCBG68-Basic vector(Promega)を鋳型に、BglIIAvrIICBG68FW(配列番号15)とXbaI-1CBG68REV(配列番号16)プライマーを用いて上記(1)と同様の条件でPCRを行い、BglII及びXbaIサイトを付加したCBG68断片を増幅した。
CBG68断片を1%ゲルで回収後、BglII / XbaIで処理し、pCBR-LUC+Nde/XN(Hf/Nf)のBglII及びXbaI切断部位にクローニングし、pCBR- CBG68+Nde/XN(Hf/Nf)を得た。
(3)35S::CBR- CBG68
pCBR- CBG68+Nde/XN(Hf/Nf)をXbaI(平滑末端化)/ NheI処理し、得られた断片をpBI221のSacI(平滑末端化)/XbaI切断部位にクローニングし、比較例1のプラスミドベクター(3レポーター同時定量用ベクター)を得た。
前述した通り作製した比較例1の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、比較例1で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0078】
[比較例2]
比較例1で作製した35S::CBR-CBG68のORF間にcrucifer-infecting tobamovirus (crTMV)のmonocistronic subgenomic RNAの5’UTRに存在するCP-IRESにStem-Loop(SL)を付加したSLCP-IRES(特許文献1参照)を挿入した3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、前記35S::CBR-CBG68をBgIII(平滑末端化)/AvrII処理し、得られた断片をpR-SLCP-F(特許文献1)のNheI(平滑末端化)/AvrII切断部位にクローニングし、比較例2のプラスミドベクター(3レポーター同時定量用ベクター)を得た。
前述した通り作製した比較例2の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、比較例2で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0079】
[実施例1]
IRESとして、配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第227位からなる塩基配列からなる第1の塩基配列部分の上流側に、配列番号11の塩基配列のうち、第13位〜第34位の塩基配列からなる第2の塩基配列部分(以下、SL構造部と記する。)を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用い、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、アラビスモザイクウイルス(ArMV) NM株RNA1の5’UTRを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ BglII/Fw(配列番号21)およびArMV/R1/ XbaI/Rv(配列番号22)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例1の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例1の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例1で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0080】
[実施例2]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号2で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第113位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの5’末端から113塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ BglII/Fw(配列番号21)およびArMV/R1/ upstream+XbaI/Rv(配列番号23)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例2の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例2の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例2で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0081】
[実施例3]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号3で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第114位〜第227位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの114塩基から227塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw (配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ downstream+BglII/Fw(配列番号24)およびArMV/R1/ XbaI/Rv(配列番号22)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例3の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例3の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例3で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0082】
[実施例4]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号4で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第170位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの5’末端から170塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ BglII/Fw(配列番号21)およびArMV/R1/ three-quarter+XbaI/Rv(配列番号25)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例4の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例4の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例4で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0083】
[実施例5]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号5で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第58位〜第227位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの58塩基から227塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ quarter+BglII/Fw(配列番号26)およびArMV/R1/ XbaI/Rv(配列番号22)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例5の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例5の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例5で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0084】
[実施例6]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号6で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第58位〜第170位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの58塩基から170塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ quarter+BglII/Fw(配列番号26)およびArMV/R1/ three-quarter+XbaI/Rv(配列番号25)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例6の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例6の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例6で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0085】
[実施例7]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号7で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第57位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの5’末端から57塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ BglII/Fw(配列番号21)およびArMV/R1/ quarter+XbaI/Rv(配列番号27)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。 この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例7の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例7の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例7で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0086】
[実施例8]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号8で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第58位〜第113位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの58塩基から113塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ quarter+BglII/Fw(配列番号26)およびArMV/R1/ upstream+XbaI/Rv(配列番号23)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例8の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例8の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例8で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0087】
[実施例9]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号9で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第114位〜第170位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの114塩基から170塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ downstream+BglII/Fw(配列番号24)およびArMV/R1/ three-quarter+XbaI/Rv(配列番号25)を20pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例9の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例9の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例9で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0088】
[実施例10]
実施例1において、第1の塩基配列部分を、配列番号10で表される塩基配列(配列番号1で表される塩基配列の第171位〜第227位からなる塩基配列)に替え、その上流側に前記SL構造部を接続した本発明に係る外来遺伝子発現要素を用いたこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例2のプラスミドをBglII/BlnI処理してCP-IRESの配列を切り出し、ArMV NM株RNA1の5’UTRの171塩基から227塩基までを挿入した。
挿入したDNA断片は、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応により作製した。
PCR反応はTOYOBOのKOD-plus ver.2を用いて行った。ArMV/R1/11-50/Fw(配列番号17)、ArMV/R1/31-110/Fw(配列番号18)、ArMV/R1/91-170/Rv(配列番号19)、ArMV/R1/151-230/Rv(配列番号20)を100pmolずつ加えた全量50μLの反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、45℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
次に、得られた反応物を1μL用いて、ArMV/R1/ three-quarter+BglII/Fw(配列番号28)およびArMV/R1/ XbaI/Rv(配列番号22)を20pmolずつ加えた全量50の反応液を94℃で2分間変性させたのち、98℃で30秒、55℃で30秒、68℃で40秒を25サイクル反応させた。
この反応液をアガロースゲル電気泳動で分離し、予想される長さのバンドを回収し、BglIIとXbaIで処理し、比較例2のプラスミドのBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例10の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例10の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例10で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
【0089】
本発明に係る実施例1〜3及び比較例1,2のIRES活性測定結果を図3に示す。
また、実施例1,4〜6及び比較例1のIRES活性測定結果を図4に示す。
さらに、実施例1,7〜10及び比較例1のIRES活性測定結果を図5に示す。
なお、これらの図中、「CBR」は上流側のCBR遺伝子を発現させるIRES活性を示し、「CBG」は下流側のCBG遺伝子を発現させるIRES活性を示す。
また、図3〜図5に示す測定結果は、それぞれの組み合わせによる3回の独立した遺伝子導入細胞から得られた値の平均値を用い、図3〜図5中に示す誤差棒は標準偏差を表している。
【0090】
図3〜図5に示す通り、本発明に係る実施例1〜10で用いた外来遺伝子発現要素はIRES活性を有しており、該外来遺伝子発現要素を複数のORFの間に挿入した構造体を保持させた形質転換体を培養することで、複数の遺伝子でコードされた複数種のタンパク質をポリシストロニックに発現可能であることが実証された。
一方、IRESとなる配列を含まない比較例1では、上流側のCBRが発現したものの、下流側のCBGは発現しなかった。
【0091】
また、強力なIRESとして既知であるcrTMV由来のIRESを用いた比較例2は、上流側のCBRと下流側のCBGとが両方発現したものの、上流側のCBRの発現量が低い傾向であったが、これに対し本発明に係る実施例1,3,5,6,8〜10では、上流側のCBRの発現量が下流側のCBGよりも高くなる傾向を示し、さらに実施例1,2,4,5,7では、トータルのIRES活性が比較例2よりも高くなった。
【0092】
[実施例11]
実施例1において、SL構造部を接続しなかったこと以外は実施例1と同様にして、3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
具体的には、比較例1のプラスミドをBglII/BlnI処理してリンカー配列を切り出し、実施例1〜10で用いたプライマーセットとPCR反応条件で作製してBglIIとXbaIで処理したDNA断片を、同様にBglII/BlnI切断部位に挿入し、実施例11の3レポーター同時定量用ベクターを作製した。
前述した通り作製した実施例11の3レポーター同時定量用ベクターを用い、前述した(2)植物細胞への遺伝子導入〜(5)IRES活性の数値化を実施し、実施例11で作製した外来遺伝子発現要素のIRES活性を調べた。
その結果、トータルのIRES活性は実施例1よりも低かったものの、上流側遺伝子のIRES活性(CBR)と下流側遺伝子のIRES活性(CBG)とが両方観測された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、遺伝子組換え植物を利用して、複数の外来遺伝子を効率よく発現させるための導入遺伝子作製時に用いる。具体的には、異なるORF間に本発明に係る外来遺伝子発現要素を挿入することにより、タンパク質の翻訳量を飛躍的に向上させることが可能である。現在、植物工場等の閉鎖系システムにより、高付加価値な医薬品等の生産に遺伝子組換え植物を用いる研究が盛んに行われているが、本発明はそれらの生産効率を向上させる基盤技術として汎用性も高いと思われる。
【符号の説明】
【0094】
1…IRES(外来遺伝子発現要素)
2…ORF(タンパク質読み枠)
3…ORF(タンパク質読み枠)
4…ORF(タンパク質読み枠)
5…多重遺伝子発現構造体
6…プロモーター
7…ターミネーター
11…細胞抽出液
12…フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のタンパク質読み枠の間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素であって、
配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さの配列を含むポリヌクレオチドである、外来遺伝子発現要素。
【請求項2】
配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第227位を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項3】
配列番号2で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項4】
配列番号3で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項5】
配列番号4で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項6】
配列番号5で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項7】
配列番号6で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項8】
配列番号7で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項9】
配列番号8で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項10】
配列番号9で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項11】
配列番号10で表される塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項12】
ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のタンパク質読み枠の間に挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させるIRES活性を有している外来遺伝子発現要素であって、
配列番号1で表される塩基配列のうち、少なくとも30塩基対以上の長さを有するポリヌクレオチドである、第1の塩基配列部分と、
配列番号11で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチド、又は、配列番号12で表される塩基配列のうち、少なくとも1つのステム−ループ構造を形成可能であり、且つ前記ステム−ループ構造のステムは6塩基対以上30塩基対以下の二重鎖又は部分二重鎖を形成するポリヌクレオチドである、第2の塩基配列部分と、を少なくとも含む外来遺伝子発現要素。
【請求項13】
前記第1の塩基配列部分は、(1)配列番号1で表される塩基配列の第1位〜第227位からなる塩基配列、(2)配列番号2で表される塩基配列、(3)配列番号3で表される塩基配列、(4)配列番号4で表される塩基配列、(5)配列番号5で表される塩基配列、(6)配列番号6で表される塩基配列、(7)配列番号7で表される塩基配列、(8)配列番号8で表される塩基配列、(9)配列番号9で表される塩基配列、又は(10)配列番号10で表される塩基配列のいずれか1つ又は2つ以上を有するポリヌクレオチドである、請求項12に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項14】
前記第2の塩基配列部分は、(a)配列番号11で表される塩基配列のうち、第13位〜第34位の塩基配列、(b)配列番号12で表される塩基配列のうち、第13位〜第65位の塩基配列のいずれか一方を有するポリヌクレオチドである、請求項12又は13に記載の外来遺伝子発現要素。
【請求項15】
ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のタンパク質読み枠の間に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素が挿入された多重遺伝子発現構造体。
【請求項16】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素とを含む外来遺伝子発現ベクター。
【請求項17】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを含む外来遺伝子発現ベクター。
【請求項18】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項15に記載の多重遺伝子発現構造体とを含む請求項17に記載の外来遺伝子発現ベクター。
【請求項19】
プラスミドベクターである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現ベクター。
【請求項20】
植物細胞用ベクターである、請求項16〜19のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現ベクター。
【請求項21】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを保持する形質転換体。
【請求項22】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項15に記載の多重遺伝子発現構造体とを保持する請求項21に記載の形質転換体。
【請求項23】
植物細胞である、請求項21又は22に記載の形質転換体。
【請求項24】
植物体である、請求項21又は22に記載の形質転換体。
【請求項25】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素と、前記プロモーターによって作動可能に結合されるとともに、前記外来遺伝子発現要素によってポリシストロニックな翻訳が可能に結合された、ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子とを植物細胞又は植物体に導入して形質転換体を作製する形質転換体の製造方法。
【請求項26】
真核細胞で動作可能なプロモーターと、該プロモーターの下流側に結合された請求項15に記載の多重遺伝子発現構造体とを植物細胞又は植物体に導入して形質転換体を作製する請求項25に記載の形質転換体の製造方法。
【請求項27】
植物細胞である形質転換体を作製する、請求項25又は26に記載の形質転換体の製造方法。
【請求項28】
植物体である形質転換体を作製する、請求項25又は26に記載の形質転換体の製造方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか1項に記載の形質転換体の製造方法によって作製された形質転換体によって、前記外来遺伝子にコードされたペプチド又はタンパク質を発現させる工程を備える外来遺伝子発現方法。
【請求項30】
請求項25〜28のいずれか1項に記載の形質転換体の製造方法によって作製された形質転換体を増殖又は生育させて、前記外来遺伝子にコードされたペプチド又はタンパク質である外来遺伝子産物を製造する工程を備える外来遺伝子産物の製造方法。
【請求項31】
ペプチド又はタンパク質のコード領域を有するポリヌクレオチド鎖である外来遺伝子を導入した複数のタンパク質読み枠の間に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素を挿入することにより、前記外来遺伝子のポリシストロニックな翻訳効率を向上させる、外来遺伝子高効率発現方法。
【請求項32】
上流側に配置されたタンパク質読み枠と、これに連結するタンパク質読み枠との間に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の外来遺伝子発現要素を挿入することにより、上流側に配置されたタンパク質読み枠の翻訳効率を向上させる、請求項31に記載の外来遺伝子高効率発現方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−167123(P2011−167123A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33763(P2010−33763)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度経済産業省「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発 /植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】