説明

外用貼付剤および外用貼付剤の貼付方法

【課題】 高齢者などの手先がやや不自由で、握力が低下した患者においても貼付剤から剥離ライナーを容易に剥離することができ、さらに貼付剤の貼付までの一連の作業を容易に行えるとともに、その剥離に要する力のコントロールが可能な貼付剤の提供。
【解決手段】 支持体と、前記支持体の一面に積層された粘着層と、前記粘着層に剥離可能に付着された剥離ライナーとを備える貼付剤において、該剥離ライナーが少なくとも2枚の剥離フィルムからなり、
a)第一剥離フィルムは支持体の一の短手辺部から長手方向の任意の部位まで被覆するように前記粘着層に付着されるとともに、該第一剥離フィルムの前記長手方向の任意の部位側に先細り状に形成された舌片部を有し、
b)第二剥離フィルムは第一剥離フィルムの付着されていない前記粘着層の露出部位を被覆するように該粘着層に付着されているとともに、その一部が前記舌片部を被覆するように第一剥離フィルムに重ねあわせられている
ことを特徴とする外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスター、テープ、パップなどの外用貼付剤に関する。さらに詳しくは、高齢者などの手先がやや不自由で、握力が低下した患者においても剥離ライナーの剥離から貼付剤の貼付までの一連の作業を容易に行える外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外用貼付剤は、経口剤を服用した場合に問題となる薬物の副作用の発現や生物学的利用率の低下等がなく、かつ薬物を持続的に投与できる点で、非常に優れた投与形態の一つである。近年では、種々の消炎鎮痛薬を含有した外用貼付剤が、打撲、捻挫、筋肉疲労から起こる痛み、肩こりに伴う痛み、腰痛及び関節痛などの治療剤として開発され、市販されている。
【0003】
これら外用貼付剤の外観的特長は、白色や肌色等の支持体と、薬物を含有し、該支持体の一面のほぼ全面に展着された粘着層と、該粘着層の全面を被覆する1枚または1枚を複数に分割した剥離ライナーからなる積層構造として構成されているのが一般的である。
【0004】
剥離ライナーが粘着層の全面を1枚の剥離フィルムで被覆した貼付剤の場合、貼付剤の隅を爪で掻く、あるいは粘着層と剥離ライナーとの間に爪をいれて、剥離ライナーの一部分を膏体層から剥離させ、さらに該部分を引っ張ることにより粘着層の一部を露出させたあと、該露出箇所を目的の患部へ貼付剤し、剥離ライナーを剥離させながら目的の患部へ貼付する方法が挙げられる。
【0005】
剥離ライナーが粘着層の全面を、1枚を複数に分割した剥離フィルムで被覆した貼付剤の場合、該貼付剤を貼付するには該剥離ライナーの分割箇所から1つの剥離ライナーを剥がし取り、該箇所を目的の患部へ貼付したあと、残りの剥離ライナーを剥離させながら貼付剤すべてを患部へ貼付する方法が挙げられる。
【0006】
上記のように、貼付剤から剥離ライナーを剥がす作業には、貼付剤、具体的には剥離ライナーの構造などの物理的な特性に応じて、適切な方法を選択して実施することが重要である。しかしながら、患者、特に高齢者などの手先がやや不自由で、握力が低下した患者にとって、貼付剤から剥離ライナーを除去することは非常に困難である。
【0007】
この問題点を改善した貼付剤が種々提案されている。例えば、剥離フィルムにV型のチューブ状剥離フィルムを用いたもの(特許文献1)、凹凸線状の端縁形状が交互に交差したもの(特許文献2)、剥離フィルムの一部を折り返したもの(特許文献3および4)、剥離ライナーと粘着層との間に保護層を設けたもの(特許文献5)、剥離ライナー上に補強部を設けたもの(特許文献6)、などが挙げられる。
【0008】
しかしながら、次なる課題として、貼付剤から剥離ライナーを除去する際の重さ(剥離に要する力の大きさ)が問題となっている。貼付剤は、患部へ貼付するのに十分な接着力を有しており、そのため、剥離ライナーを剥がすために強い力が必要とされる。その状況のもとで無理に剥離ライナーを除去しようとすると、貼付剤がシワになったり、粘着層面同士が接着したりして、正しく貼付出来ないことが多く、特に、比較的面積が大きい貼付剤でその問題がより大きいものであり、さらなる改善が求められていた。
【0009】
一方、貼付剤の接着力を剥離ライナーの剥離への影響が小さくなるよう調整した場合、貼付中における貼付剤の患部からの剥がれ等が問題となった。さらに、貼付剤の接着力と剥離ライナー除去に要する剥離力とのバランスは、貼付剤および剥離ライナーの面積や材質、形状などで異なるため、製造上それらを調整することは非常に困難であった。
【0010】
【特許文献1】特開2007−175300号公報
【特許文献2】特開2002−65726号公報
【特許文献3】特開2000−219622号公報
【特許文献4】特開2000−351727号公報
【特許文献5】実開平7−44747号公報
【特許文献6】実開平7−42783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決し、高齢者などの手先がやや不自由で、握力が低下した患者においても貼付剤から剥離ライナーを容易に剥離することができ、さらに貼付剤の貼付までの一連の作業を容易に行えるとともに、その剥離に要する力のコントロールが可能な貼付剤を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討を行った結果、剥離ライナーの一部を、例えば山型、波型の直線、曲線またはそれらの組み合わせ、あるいは楕円形状からなる先細り形状に成形した舌片部を設け、該舌片部側から剥離ライナーを剥離することにより、小さい力で剥離ライナーを除去できることを見出した。さらに、前記の舌片部を有する剥離ライナーは、貼付剤および剥離ライナーの面積や材質、形状などにかかわらず、舌片部の形状等を調整することにより、容易に、貼付剤から剥離ライナーを除去する際に要する力をコントロールできることも見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は上記課題を解決するものであり、
支持体と、前記支持体の一面に積層された粘着層と、前記粘着層に剥離可能に付着される剥離ライナーとを備える貼付剤において、該剥離ライナーが少なくとも2枚の剥離フィルムからなり、
a)第一剥離フィルムは支持体の一の短手辺部から長手方向の任意の部位まで被覆するように前記粘着層に付着されるとともに、該第一剥離フィルムの前記長手方向の任意の部位側に先細り形状の舌片部を有し、
b)第二剥離フィルムは第一剥離フィルムの付着されていない前記粘着層の露出部位を被覆するように該粘着層に付着され、その一部が前記舌片部を被覆するように第一剥離フィルムに重ねあわせられる
ことを特徴とする外用貼付剤であり、更に、
第二剥離フィルム除去後、露出した粘着層を貼付したい患部へ貼付し、その状態で第一剥離フィルムの舌片部を引っ張りながら剥離し、該剥離と同時に貼付剤を貼付することを特徴とする外用貼付剤の貼付方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の外用貼付剤は、従来の貼付剤のような、貼付剤からの剥離ライナーの剥離容易性を備え、かつ、従来の貼付剤よりも小さい力で剥離ライナーを剥離することが可能であり、高齢者などの手先がやや不自由で、握力が低下した患者においても貼付剤から剥離ライナーを容易に剥離することが可能である。さらに、その剥離に要する力も、特殊な材料や技術等を用いることなく、容易に調整できるので、実製造上も非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の貼付剤は、支持体と、前記支持体の一面に積層された粘着層と、前記粘着層に剥離可能に付着された剥離ライナーとを備え、該剥離ライナーが少なくとも2枚の剥離フィルムからなることが特徴である。さらに、該剥離フィルムの一部には、先細り状に成形された舌片部を備えることが特徴である(以下では、該舌片部を備えた剥離フィルムを「第一剥離フィルム」という)。
【0016】
上記の通り、本発明の第一剥離フィルムの舌片部の特徴は、先端側に行くにつれてその幅が狭くなっていく先細り形状である。よって、この条件を満たす形状であれば良く、山型、波型の直線、曲線またはそれらの組み合わせ、あるいは楕円形状に成形されたもの以外のものでも良い。該第一剥離フィルムの舌片部の先端部の幅を狭くすることにより、該第一剥離フィルムを剥離するために要する力を小さくすることができる。さらに、該舌片部の幅や形状などを調整することにより、容易にその力をコントロールすることができる。
【0017】
本発明の第一剥離フィルムの舌片部は、貼付剤の長手方向に少なくとも二つ折り以上の折り畳み形態に成形されていることが好ましい。この成形により、舌片先端部を指でつかみやすくなり、使用感が向上するので好ましく、この条件を満たす形状であれば、二つ折り、三つ折り、もしくはそれ以上の折り畳み形態以外でも良く、これに類似の別のフィルムを第一剥離フィルムに取り付けたものでも良い。
【0018】
本発明の第一剥離フィルムの厚さは1〜150μm、好ましくは10〜100μmである。この範囲であれば、二つ折り、三つ折り、もしくはそれ以上の折り畳み形態に成形することが容易である。さらに、1μm未満ではその薄さによりフィルム自体が掴み難くなり、また貼付剤の製造時にあたって、フィルムにシワが発生し易くなるので好ましいものではない。一方、150μmを超えると、貼付剤の製造における裁断性が低下し、貼付剤自体のコストアップの要因となると同時に、剥離フィルム自体もより高価なものとなり、コストの面から見ても好ましいものではない。
【0019】
本発明の第一剥離フィルムの舌片部は、指通し孔および/またはスリットを成形していることが好ましい。該指通し孔および/またはスリットにより、舌片先端部を把持しやすく、さらに小さい力で剥離フィルムを剥離することができるので好ましく、この条件を満たせば孔、スリット以外の形状でも良く、先端部の表面をエンボス加工、凹凸加工などの滑り止め加工を施す方法でも良い。
【0020】
本発明の貼付剤は、第一剥離フィルムがカバーしているのは貼付剤の一の短手辺部から長手方向の任意の部位までであり、さらに第一剥離フィルムの舌片部が先細り形状であるため、粘着層の一部が露出する。よって、第一剥離フィルムの舌片部と該露出部とをカバーするため、第一剥離フィルムの粘着層側の反対側から別途剥離フィルムを備える(以下、これを「第二剥離フィルム」という)。
【0021】
本発明の第二剥離フィルムの形状は、上記露出部をカバーできればよく、この条件を満たせばどのような形状や大きさでも良い。加えて、第一剥離フィルムの舌片部を覆うような形状とすれば、第二剥離フィルムの貼付剤中央側部分は第一剥離フィルムの上に重なり、該重なり部分は粘着力が作用しないため、第二剥離フィルムを剥がし易くすることができる。
【0022】
本発明の第二剥離フィルムは、第一剥離フィルムと同様に、指通し孔および/またはスリットを成形することにより、剥離フィルムを把持し易くなるので、好ましい。なお、第一剥離フィルムおよび第二剥離フィルムのいずれにも指通し孔および/またはスリットを設ける場合、それらが重なると粘着層からの薬物の揮散や包装材との接着等が問題となるので、それらが重ならないようにすることが好ましい。
【0023】
本発明の第一および第二剥離フィルムは、通常貼付剤で使用されている素材を使用することができ、例えば、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の樹脂フィルム、紙、合成紙、合成樹脂を単体またはラミネートして複合させたものや、アルミ箔、蒸着フィルムと上記素材をラミネートさせたもの、等を適宜選択して使用することができる。また、これら単一素材または複合素材にシリコン加工やエンボス加工、さらには印刷、着色等を施したものを使用しても良い
【0024】
本発明の第一および/または第二剥離フィルムは、剥離方法を分かりやすくするため、その一部または全部において、着色および/または文字、矢印、図形、記号、模様またはそれらを組み合わせたものを印刷することが好ましい。
【0025】
以下、本発明の貼付剤の実施態様を、図面に基づいて説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0026】
図1は本発明に係る貼付剤の一態様を示す正面図、図2は図1の貼付剤から第二剥離フィルムを除去した状態を示す図であり、図3は、図1の貼付剤におけるA−A断面図である。図中、1は貼付剤、2は第一剥離フィルム、3は第二剥離フィルム、4は粘着層、5は支持体、21は舌片部、22は第一剥離フィルムの指通し孔、31は第二剥離フィルムの指通し孔をそれぞれ示す。なお、図3の断面図は、本発明の一態様を理解しやすいように模式的に描かれており、実際の実施品の寸法(厚み・長さ)を忠実に表したものではない。後述する図4、図5についても同様である。
【0027】
本発明に係る貼付剤は、図2に示すとおり、支持体の一の短手辺部よりほぼ中央の任意の部位まで粘着層4を覆うように第一剥離フィルム2が付着されている。第一剥離フィルム2はかかる任意の部位側に、先細り形状に成形された舌片部21を有している。更に、舌片部21はその中央付近で二つ折りになるように折り返されており、折り返された片部に指通し孔22が成形されている。そして、図1および図3に示すように、粘着層4の露出部と第一剥離フィルム2の舌片部21全体を覆うように第二剥離フィルム3が付着されており、該第二剥離フィルム3の一部は舌片部21部分で第一剥離フィルム2に重ね合わされている。さらに、この第二剥離フィルム3には2ヵ所に指通し孔31を設けている。
【0028】
本発明の貼付剤の貼付方法の1例について説明する。まず、図4に示すように、第二剥離フィルム3の指通し孔31に指をいれ、そのまま引っ張ることにより第二剥離フィルム3を除去する。ここで、第二剥離フィルム3の中央側は第一剥離フィルム2の上に重なっているため、該重なり部分は粘着力が作用していない。また、第二剥離フィルム3を剥離する過程において、第二剥離フィルム3と粘着層4の接触面積は初め小さく、徐々に接触面積が大きくなっていく状態にある。これらの理由から、軽い力で容易に剥離することが可能である。
【0029】
次に、図5に示すように、露出した粘着層4の端部を、貼付したい患部へ貼付する。その状態で、第一剥離フィルム2の指通し孔22に指を入れ、そのまま引っ張りながら第一剥離フィルム2を除去する。その際、剥離と同時に貼付剤を患部に徐々に貼付していくことにより、スムーズに貼付剤を患部に貼付することができる。ここで、第一剥離フィルム2を除去する過程において、第一剥離フィルム2と粘着層4の接触面積は初め小さく、徐々に接触面積が大きくなっていく状態にあるので、第二剥離フィルムの場合と同様に、軽い力で容易に剥離できる。さらに、第一剥離フィルム2の舌片部21を二つ折りにしているので、指通し孔22に指を入れやすく、かつ、粘着層4に指を触れずに第一剥離フィルム2を除去することが可能である。
【0030】
剥離フィルムの剥離力は、図2のa1、a2、bおよびcの長さを調整することにより容易にコントロールすることができる。具体的には、長さcを短くすることにより、第一剥離フィルムの初期剥離力を小さくできる。また、長さa1を長くすれば第一剥離フィルムの舌片部がつかみ易くなり、長さa2を長さbに対して長く設定すれば、第一剥離フィルム除去に要する剥離力の急な上昇を軽減でき、かつ、第二剥離フィルムの剥離力も軽減できる。
【0031】
さらに具体的には、本態様の貼付剤の場合、c:b=1:2〜2:1の範囲、a2:b=0.5:1〜3:1の範囲に設定することにより、高齢者などの手先がやや不自由で、握力が低下した患者においても貼付剤から剥離ライナーを容易に剥離することが可能であり、好ましい。
【0032】
図6および図7は、本発明の貼付剤の異なる実施態様である。図に示すように、第二剥離フィルム3全体と、第一剥離フィルム2の舌片部21の折り返した部分を着色するとともに、それぞれの剥離フィルムに、剥がす方向を表した矢印と剥がす順番を表す数字表記が印刷されている。このように、着色や記号等の印刷により、使用者に対して使用方法を効果的に提示することができる。
【0033】
図8および図9は、本発明の貼付剤の異なる実施態様である。図に示すように、本実施態様では、それぞれの剥離フィルムに、指通し孔の代わりにスリット32、23が設けられている。そして、使用者がより使用しやすいように、スリットの位置および剥離フィルムを剥がす方向を表した矢印と剥がす順番を表す数字表記が印刷されている。かかるスリットが設けられたタイプのものは、指通し孔が設けられたものと同様、使用時にスリットに指を挿入し、剥離フィルムを剥がせばよい。
【0034】
図10および図11は、本発明の貼付剤の異なる実施態様であり、剥離フィルムが3枚からなるものである。図10に示すように、本実施態様では、支持体5の両側の短手辺部より中央寄りの任意の部位まで第一剥離フィルム2が2枚付着されており、支持体5の中央周辺の粘着層4が露出している。そして、図11に示すように、粘着層4の露出部と2枚の第一剥離フィルム2の舌片部21全体を覆うように成形された第二剥離フィルム3が付着されている。
【0035】
本発明の貼付剤の粘着層に含有する粘着剤としては、特に制約はないが、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤及び水溶性粘着基剤等が挙げられる。
【0036】
ゴム系粘着剤のゴム成分としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、及びブチルゴムから選ばれた1種を単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0037】
アクリル系粘着基剤としては、医薬的に利用できるものであればどのようなものであっても良いが、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子等の粘着剤などが挙げられる。
【0038】
水溶性粘着基剤としては、ゼラチン、ペクチン、アガロース、アルギン酸塩、キサンタンガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びその塩又はそれらの架橋体等の天然高分子もしくはその変性物または合成高分子もしくはその架橋体等が挙げられる。
【0039】
さらに、本発明の貼付剤には、上記粘着剤に加え、公知の貼付剤に使用されている任意成分を配合することができる。この任意成分の例としては、酸化防止剤、例えばジブチルヒドロキシトルエン等、軟化剤、例えば流動パラフィン、ひまし油、綿実油、パーム油、ヤシ油、ラノリン等、粘着付与剤、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂等、無機充てん剤、例えば酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカゲル、酸化マグネシウム、酸化鉄、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0040】
また、本発明の貼付剤には、上記粘着剤、配合成分に加え、公知の貼付剤に使用することのできる任意の有効成分を配合しても良い。この有効成分の例としては、例えばアセトアミノフェノン、フェナセチン、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アミノピリン、アルクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アンフェナクナトリウム、メピリゾール、インドメタシン、ピロキシカム、ロキソプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、フェルビナク、スリンダク、エトドラク、トルメチン、アンピロキシカム、アザプロパゾン、バルデコキシブ、ロフェコキシブ等の消炎鎮痛剤、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイド系抗炎症剤、アミノ安息香酸エチル、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ブロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸オキシブプロカイン、塩酸プロピトカイン等の局所麻酔剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェニルピラリン等の抗ヒスタミン剤、サリチル酸、シクロピロクスオラミン、塩酸コロコナゾール等の寄生性皮膚疾患用剤、尿素等の皮膚軟化剤、カルシトリオール、塩酸チアミン、リン酸リボフラピンナトリウム、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド、パンテノール、アスコルビン酸等のビタミン剤、などを挙げることができる。
【0041】
本発明の貼付剤の支持体としては、薬物の放出に影響しない材質のものが望ましく、各種高分子フィルムやシートあるいはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、紙、布及び不織布等の伸縮性及び非伸縮性のものが用いられる。また、その材質としても、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等高分子材料や、セルロース、綿等天然材料等が挙げられる。
【0042】
本発明の外用貼付剤の製造方法は、特に制限はなく、公知の貼付剤の製造方法を用いて製造することができる。例えば、粘着層へ配合する各成分を加熱溶融または溶媒に溶解し、適当な塗工方法で支持体に塗布・展延して粘着層を設け、該粘着層に第一および第二剥離フィルムを貼り合わせる方法が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等になんら制約されるものではない。なお、実施例中、「部」とあるのはすべて質量部を意味する。
【0044】
実施例 1
貼付剤の調製:
以下の処方及び製法により、外用貼付剤(本発明品)を得た。
【0045】
(処 方)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.0部
(商品名 クレイトンD−KX401)
流動パラフィン 31.0部
脂環族飽和炭化水素樹脂 30.0部
(商品名 アルコンP−100)
ポリエチレングリコール6000 6.0部
(商品名 マクロゴール6000)
l−メントール 2.0部
ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部
【0046】
(製 法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体以下各成分を加熱混合し、均一な融解物を得た。得られた融解物を、塗工機を用いて支持体(不織布)に、膏体重量が100g/mになるように塗工した。塗工した粘着層に、図1および図2に示す第一剥離フィルム(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)および第二剥離フィルム(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)をそれぞれ貼り合わせ、70mm×100mmの大きさに裁断して、外用貼付剤を得た。
【0047】
比較例 1
貼付剤の調製:
以下の処方及び製法により、外用貼付剤(比較品)を得た。
【0048】
(処 方)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.0部
(商品名 クレイトンD−KX401)
流動パラフィン 31.0部
脂環族飽和炭化水素樹脂 30.0部
(商品名 アルコンP−100)
ポリエチレングリコール6000 6.0部
(商品名 マクロゴール6000)
l−メントール 2.0部
ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部
【0049】
(製 法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体以下各成分を加熱混合し、均一な融解物を得た。得られた融解物を、塗工機を用いて支持体(不織布)に、膏体重量が100g/mになるように塗工した。塗工した粘着層に、図12に示す第一剥離フィルム(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)および第二剥離フィルム(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)をそれぞれ貼り合わせ、70mm×100mmの大きさに裁断して、外用貼付剤を得た。
【0050】
試験例:貼付剤の貼付性評価
これまで貼付剤を貼付する際に貼りにくいと感じたことがある成人男性10名を対象に、本発明品および比較品を用いた貼付剤の貼りやすさについて試験を実施した。使用した比較品は、図12に示すように、2枚の長方形の剥離フィルムを支持体の両端部から付着し、中央において一の剥離フィルム端部側を二つ折りし、その二つ折り部分と粘着層の露出部を覆うようにもう1枚の剥離フィルムを付着したものである。試験方法は、(1)貼付剤の第二剥離フィルムを除去し、(2)露出した貼付剤粘着層の端部を腰に貼付し、(3)第一剥離フィルムを除去しながら貼付剤を腰へ貼付する、方法により貼付剤を貼付し、そのときの本発明品および比較品を利用した貼付剤の貼付性についてA.本発明品の方が貼りやすかった、B.比較品の方が貼りやすかった、C.変わらなかった、にて評価した。
【0051】
試験の結果、10名中の10名すべてA.本発明品の方が貼りやすかった、との評価であり、本発明品を使用することにより貼付剤の貼付性が改善されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の貼付剤の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の貼付剤の第二剥離フィルムを除去した状態を示す正面図である。
【図3】図1の貼付剤のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1の貼付剤の第二剥離フィルムを剥離する状態を示す底面図である。
【図5】図1の貼付剤の第一剥離フィルムの剥離および貼付剤の貼付の状態を示す底面図である。
【図6】本発明の貼付剤の別の実施形態を示す正面図である。
【図7】図6の貼付剤の第二剥離フィルムを除去した状態を示す正面図である。
【図8】本発明の貼付剤のさらに別の実施形態を示す正面図である。
【図9】図8の貼付剤の第二剥離フィルムを除去した状態を示す正面図である。
【図10】本発明の貼付剤のさらに別の実施形態を示す正面図である。
【図11】図10の貼付剤の第二剥離フィルムを除去した状態を示す正面図である。
【図12】比較品の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1…貼付剤
2…第一剥離フィルム
3…第二剥離フィルム
4…粘着層
5…支持体
21…舌片部
22…第一剥離フィルムの指通し孔
23…第一剥離フィルムのスリット
31…第二剥離フィルムの指通し孔
32…第二剥離フィルムのスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体の一面に積層された粘着層と、前記粘着層に剥離可能に付着される剥離ライナーとを備える貼付剤において、該剥離ライナーが少なくとも2枚の剥離フィルムからなり、
a)第一剥離フィルムは支持体の一の短手辺部から長手方向の任意の部位まで被覆するように前記粘着層に付着されるとともに、該第一剥離フィルムの前記長手方向の任意の部位側に先細り形状の舌片部を有し、
b)第二剥離フィルムは第一剥離フィルムの付着されていない前記粘着層の露出部位を被覆するように該粘着層に付着され、その一部が前記舌片部を被覆するように第一剥離フィルムに重ねあわせられる
ことを特徴とする外用貼付剤。
【請求項2】
前記第一剥離フィルムの舌片部が、山型、波型の直線、曲線またはそれらの組み合わせ、あるいは半楕円形状の先細り形状であることを特徴とする請求項1に記載の外用貼付剤。
【請求項3】
前記第一剥離フィルムの舌片部が、支持体の長手方向に少なくとも二つ折り以上の折り畳み形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の外用貼付剤。
【請求項4】
前記第一剥離フィルムの舌片部および/または第二剥離フィルムが、指通し孔および/またはスリットを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載の外用貼付剤。
【請求項5】
支持体と、前記支持体の一面に積層された粘着層と、前記粘着層に剥離可能に付着される剥離ライナーとを備える貼付剤において、該剥離ライナーが2枚の第一剥離フィルムおよび1枚の第二剥離フィルムからなり、
a)第一剥離フィルムの一つは支持体の一方の短手辺部から、また第一剥離フィルムのもう一つは他方の短手辺部から対向してそれぞれ該支持体の長手方向の任意の部位までを被覆するように前記粘着層に付着されるとともに、該第一剥離フィルムの少なくとも1枚が前記長手方向の任意の部位側に先細り形状の舌片部を有し、
b)第二剥離フィルムは2枚の第一剥離フィルムの付着されていない前記粘着層の露出部位を被覆するように該粘着層に付着され、その一部が前記舌片部を被覆するように第一剥離フィルムに重ねあわせられる
ことを特徴とする外用貼付剤。
【請求項6】
前記第一剥離フィルムの一方又は両方の舌片部が山型、波型の直線、曲線またはそれらの組み合わせ、あるいは半楕円形状の先細り形状であることを特徴とする請求項5に記載の外用貼付剤。
【請求項7】
前記第一剥離フィルムの一方又は両方の舌片部が、支持体の長手方向に少なくとも二つ折り以上の折り畳み形態であることを特徴とする請求項5または6に記載の外用貼付剤。
【請求項8】
前記第一剥離フィルムの一方又は両方の舌片部および/または第二剥離フィルムに、指通し孔および/またはスリットを有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかの項に記載の外用貼付剤。
【請求項9】
第一剥離フィルムおよび/または第二剥離フィルムが、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンのプラスチックフィルム、紙、合成紙、合成樹脂を単体またはラミネートした複合フィルム、あるいはアルミ箔、蒸着フィルムをラミネートした複合フィルムからなることを特徴とする請求項1ないし8に記載の外用貼付剤。
【請求項10】
第一剥離フィルムおよび/または第二剥離フィルムの一部または全部が、着色および/または文字、矢印、図形、記号、模様またはそれらを組み合わせたものが印刷されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの項に記載の外用貼付剤。
【請求項11】
第一剥離フィルムの厚さが1〜150μmであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの項に記載の外用貼付剤。
【請求項12】
第二剥離フィルム除去後、露出した粘着層を貼付したい患部へ貼付し、その状態で第一剥離フィルムの舌片部を引っ張りながら剥離し、該剥離と同時に貼付剤を貼付することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかの項に記載の外用貼付剤の貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−18539(P2010−18539A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179894(P2008−179894)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390000929)祐徳薬品工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】