説明

外科手術用器具

第1の骨接触要素(14)から突き出た長手方向を規定するロッド状接続部材(18)を備えた第1の骨接触要素(14)と、前記接続部材(18)上で前記第1骨接触要素(14)へと向かう方向に変位可能な第2の骨接触要素(20)とを有する骨板固定デバイス(12)を装着するための外科手術用器具(10)であって、前記第2骨接触要素(20)上の接触位置に位置付け可能な第1のツール要素(34)と、前記第1ツール要素(34)から取り外し可能な第2のツール要素(52,54)と、前記第2ツール要素(52,54)により前記第2骨接触要素(20)上の接触位置にある前記第1ツール要素(34)から離間する近方向に前記接続部材(18)を複数の運搬ステップで段階的に運搬するための運搬デバイスとを有するものを、上記固定デバイスの骨接触要素を簡単な方法で互いに対し変位させることができ、かつ本器具の取り扱いが簡単となるように改良するため、次のことが提案される。即ち、前記第2ツール要素が、前記接続部材から突き出る突起(26)のための複数の受容部(152,154)を有すること、各運搬ステップに関し、前記突起が、係合位置にて受容部と少なくとも部分的に係合可能であり、かつこの係合位置において前記第2ツール要素上で長手方向に動かないように保持されること、及び一の運搬ステップから次の運搬ステップまで、前記突起が前記第2ツール要素上に配された更に近方向にある受容部と係合可能であること、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の骨接触要素から突き出た長手方向を規定するロッド状接続部材を備えた第1の骨接触要素と、前記接続部材上で前記第1骨接触要素へと向かう方向に変位可能な第2の骨接触要素とを備えた骨板固定デバイスを装着するための外科手術用器具に関する。ここで、前記第2骨接触要素上の接触位置に第1のツール要素が位置付け可能であり、前記第1ツール要素から第2のツール要素が取り外し可能である。又、前記第2ツール要素を用いて前記第2骨接触要素上の接触位置にある前記第1ツール要素から離間する近方向に前記接続部材を複数の運搬ステップで段階的に運搬するための運搬デバイスが設けられる。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べた類の器具は、例えばDE 197 00 474 C2から既知である。2つの締め付け顎によって形成される第2のツール要素により、上記ロッド状接続部材は締め付け位置にて締め付けられ、かつこの締め付け位置で上記第2骨接触要素に対して移動されることが可能である。上述の方法により、上記接続部材を上記締め付け顎により引き続き把握することができる。
【0003】
しかしながら、既知である上記器具の場合、上記接続部材の上記第2骨接触要素に対する規定された運搬は明確には保証されない。更に、滑らかな上記接続部材の確実な把握は困難である。構造化された接続部材の場合は、接続部材が構造上上記締め付け顎に食い込み、これを傷つける可能性があるという問題がある。何れにせよ、上記第2ツール要素に大きな牽引力が加わると、上記締め付け顎が上記接続部材から滑り落ちる危険がある。更に、この締め付け顎が上記接続部材の先の鋭い構造によって傷つくと、上記器具は清掃し難くなる。
【特許文献1】DE 197 00 474 C2
【特許文献2】US 6,379,363 B1
【特許文献3】EP 0 857 466 A1
【特許文献4】DE 198 32 798 C1
【特許文献5】DE 298 12 988 U1
【特許文献6】DE 198 32 797 C1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の基調を成す目的は、冒頭で述べた類の外科手術用器具を、上記固定デバイスの骨接触要素を簡単な方法で互いに変位させることができ、かつ本器具の取り扱いが簡単となるように改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、冒頭に述べた類の外科手術用器具について、本発明に従い次のようにすることで達成される。
即ち、上記第2ツール要素が、上記接続部材から突き出る突起のための複数の受容部を有すること、各運搬ステップに関し、上記突起が、係合位置にて受容部と少なくとも部分的に係合可能であり、かつこの係合位置において上記第2ツール要素上で長手方向に動かないように保持されること、及び一の運搬ステップから次の運搬ステップまで、上記突起が上記第2ツール要素上に配された更に近方向にある受容部と係合可能であること、である。
【0006】
本発明に係る器具によれば、規定された方法でかつ所定の大きさのステップにより上記接続部材の突起を本器具に通すことができる。この突起を受けるための受容部を形成するにあたっては、これら受容部が適切な大きさで作成され、従って上記第2ツール要素延ては本器具全体が十分に清掃可能となるようにする。上記係合位置では、上記接続部材は上記第2ツール要素に対して長手方向に移動することができない。このため、上記第2ツール要素は、上記突起により受容部に保持される上記接続部材から滑り落ちることがない。
【0007】
次のようにすると有利である。即ち、上記第2ツール要素が上記第1ツール要素に対する遠位置において上記係合位置にある突起と係合可能であり、上記第2ツール要素が上記係合位置において上記遠位置から上記第1ツール要素より更に離れた近位置へと近方向に移動可能であり、かつ上記第2ツール要素が上記近位置において上記係合位置から上記第2ツール要素及び上記突起が係合解除される解放位置へと移転可能であるようにすることである。このようにして作製される器具は、上記突起が上記第2ツール要素によって掴まれて近方向に移動されることを許容する。こうして、上記第1ツール要素に寄り掛かっている上記第2骨接触要素は、上記接続部材の突起に対して移動される。引き続き上記第2ツール要素により上記突起を掴む、即ち上記突起を再度掴むために、上記係合位置は解放可能となっている。即ち、上記第2ツール要素及び上記突起を互いに長手方向に再度変位させることができる。なお、このことは上記解放位置においてのみ可能である。
【0008】
上記第2ツール要素が、上記解放位置において上記近位置から上記遠位置へと移動可能であると有利である。この場合、上記突起が上記第2骨接触要素に対してその位置を保持しつつ、上記第2ツール要素を上記突起を越えて上記遠位置へと移動させることができる。こうして、上記突起は本器具により近方向に段階的に運搬される。
【0009】
上記突起が上記受容部に正嵌合で挿入可能であると、上記係合位置においてとりわけ確実な接続が得られる。上記突起が設計上上記受容部に対応していると、上記第2ツール要素が傷つくことがない。更に、上記突起及び上記受容部が十分な大きさを有するように設計されると、上記第2ツール要素を簡単に清掃することが可能となる。
【0010】
上記突起を上記第2ツール要素上に長手方向に動くことなく確実に保持することができるよう、上記第2ツール要素が上記突起に対して上記長手方向と直交する方向に移動可能であると有利である。このようにして、いわば、上記突起の上記第2ツール要素へのロックが許容される。
【0011】
上記第2ツール要素が第1及び第2締め付け顎を備え、かつこれら2つの締め付け顎の少なくとも一方が上記受容部を搭載する場合、本器具の構造は特に簡単になる。このようにして、上記突起は2つの上記締め付け顎の間に保持することができる。もちろん、両締め付け顎に受容部を設けることも可能である。こうすると、これら締め付け顎の受容部により上記突起を両側で保持することが可能となる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、上記第2ツール要素が複数の歯を備えた目立てを有し、かつこの目立てが上記受容部を有するようにすることができる。このようにすると、上記第2ツール要素の設計は特に簡単なものとなる。
【0013】
上記突起をヘッドの形態に作製することは想定可能である。しかしながら、上記第2ツール要素と上記突起との接続を改良するために、上記突起が少なくとも2つの歯を含む突起状目立てを有するようにしてもよい。このようにすると、上記第2ツール要素の上記目立ての歯が、上記突起状目立ての少なくとも2つの歯の間で選択的に係合可能となる。また、上記突起全体が、即ち少なくとも2つの歯を有する上記突起状目立てが、上記第2ツール要素の上記目立ての単一の受容部内に挿入可能であることも考え得ることである。
【0014】
上記突起を規定された方法で上記第2骨接触要素から離間するよう運搬するために、上記突起が少なくとも1つの運搬経路上を一の運搬ステップから次の運搬ステップまで近方向に運搬可能であり、かつこの運搬経路が上記目立ての歯の間隔と上記突起状目立ての歯の間隔のうちの小さい方に対応すると有利である。このようにすると、上記目立てまたは上記突起状目立ての形状により、規定される最小の運搬経路を予め決めることが可能となる。実際の運搬経路またはストロークは、もちろん、最小運搬経路の整数倍に対応するようにしてもよい。
【0015】
上記第2ツール要素の清掃を容易にするために、上記第2ツール要素の目立てが上記突起状目立ての目立てピッチの整数倍に対応するピッチを有するようにしてもよい。このようにすると、上記第2ツール要素の目立ての歯の間隔はとりわけ大きなものとなる。特には、ピッチ比は2:1や3:1とすることが可能である。
【0016】
上記突起が、上記目立ての少なくとも1つの歯を受けるための保持受容部を有すると有利である。このようにすると、次のような利点がある。即ち、一方では上記突起が全体として上記第2ツール要素の受容部に挿入可能となり、他方では上記目立ての歯が上記保持受容部に挿入可能となるという利点である。このようにすると、例えば、2つの正方向に係合する歯と2つの歯の間の間隙から成る二重の接続を実現することができる。
【0017】
上記突起状目立てが上記保持受容部を有すると、本デバイスの構造は特に簡単なものとなる。
【0018】
上記突起と上記第2ツール要素との係合位置において長手方向に相対的に移動しないようにするために、上記目立ての少なくとも1つの歯が上記長手方向と直交する方向において上記保持受容部内に導入可能であると有利である。
【0019】
上記保持受容部がリング溝を有すると有利である。この溝は、上記突起上に特に簡単な方法で、または上記接続部材上に直接作ることができる。
【0020】
上記第2ツール要素または上記接続部材が傷つかないようにするために、上記受容部がエッジのない設計であると有利である。このようなエッジのない設計は更に、受容部に進入する際、この受容部の効果的な丸みによって上記突起が受容部内に誘導されるという利点を有する。
【0021】
上記突起が上記第2ツール要素を一切傷つけないようにするために、上記突起がエッジのない設計であると有利である。このようにすると、上記突起は格段にうまく上記第2ツール要素の受容部に滑り込むことができる。この点で、上記突起の丸みを帯びた形状は有益である。
【0022】
本器具の簡単な取り扱いのために、次のようにするのが有利である。即ち、本器具が本体と、前記本体に移動可能式に取り付けられる少なくとも1つの作動要素とを備えること、及び前記本体に対して前記作動要素を移動させることにより上記第1ツール要素から離間する長手方向において上記第2ツール要素に牽引力が伝達可能であることである。このようにすると、簡単な方法で上記ツール要素を長手方向に移動させることができる。
【0023】
本発明の好適な実施形態によれば、上記本体に対して上記作動要素を移動させることにより、上記長手方向と直交する方向において上記第2ツール要素に保持力が伝達可能であるようにしてもよい。このようにすると、上記作動要素を移動させることで保持力及び牽引力が上記第2ツール要素上へ同時に加わることが許容される。従って、作業者は上記作動要素を移動させるだけでよく、これにより上記突起を上記第1ツール要素から離間するように移動させることができる。
【0024】
長手方向に作用する牽引力をこの長手方向と直交する方向に作用する上記保持力に変えるために、力偏向要素を設けるのが有利である。牽引力を加えることで、上記第2ツール要素がこの牽引力の方向に移動されるだけでなく、同時に、この第2ツール要素により上記接続部材(特には上記突起)に保持力を加えることが可能となる。
【0025】
少なくとも1つの上記締め付け顎が、上記力偏向要素に寄りかかり、かつこの力偏向要素を長手方向に移動させる間その上で誘導可能である場合、本器具にとって特にコンパクトな設計が得られる。これは、例えば上記力偏向要素の傾斜した滑り面によって実現可能である。更に、上記力偏向要素から少なくとも1つの上記締め付け顎上へと力を直接伝達することが可能であり、そのための更なるパーツは不要である。
【0026】
牽引力が上記力偏向要素から伝達されるよう、牽引力が少なくとも1つの上記作動要素から上記力偏向要素に伝達可能であると有利である。
【0027】
本器具上での上記第2ツール要素の跳返りまたは反発を回避するために、少なくとも1つの上記締め付け顎が上記力偏向要素上で長手方向に弾性的に支持されるようにしてもよい。このようにすると、上記締め付け顎は上記力偏向要素上で常に付勢された状態で保持される。これにより、本器具を特にソフトに装着することが可能となる。
【0028】
跳返りの力を付加的に吸収するため、少なくとも1つの上記作動要素が不意に解放されると、上記力偏向要素が上記本体上で弾性的に支持されるようにしてもよい。
【0029】
長手方向の上記牽引力を制限するための牽引力リミッタが設けられると、本器具が傷つくのを効果的に回避することができる。作業者により上記作動要素上へ如何に大きな力加えられたところで、この牽引力リミッタによって最大牽引力は制限される。
【0030】
上記作動要素から上記力偏向要素上への力の伝達を制限するために、少なくとも1つの上記作動要素によって起こされる力が上記牽引力リミッタにより上記力偏向要素上へ限定的に伝達可能であると有利である。
【0031】
上記力偏向要素が上記牽引力リミッタ上で弾性的に支持される場合、本器具にとって特に良好な制動特性を得ることができる。
【0032】
本器具の制動特性を更に向上させるために、上記牽引力リミッタが上記本体にて弾性的に支持されるようにしてもよい。この弾性支持により、少なくとも1つの上記作動要素が不意に解放された場合に起こり得る跳返りの力が弱められる。
【0033】
上記第2ツール要素の持ち上げ動作と引張り動作とを分離するために、少なくとも1つの上記締め付け顎が長手方向への変位のために上記本体上へ取り付けられるプッシュプル要素上に取り付けられること、及び牽引力が少なくとも1つの上記作動要素から上記プッシュプル要素上へ伝達可能であると有利である。
【0034】
更なる説明のため、図面と関連させつつ、本発明の好適な実施形態を次に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1ないし4は、外科手術用テンション・プライヤの形式の本発明に係る器具を示す。テンション・プライヤ10は、リベット状の固定要素12を装着する働きをする。この固定要素12は、保持用突起16と自身から突き出す細長い軸18とを備えた第1の接触要素14と、軸18上を第1接触要素14の方向に第1接触要素14に対して変位可能な第2の接触要素20とを備える。第2接触要素20の第1接触要素14に対する第1接触要素14から離れる変位は、この方向へ作用する保持用突起16に起因して不可能である。接触要素14と20との間では、例えば人の頭蓋骨の一部を形成する2つの分離した骨部分22及び24が、骨部分22及び24の両側を両者間で型締めする2つの接触要素14及び20によって互いに付着可能である。
【0036】
軸18の一端には、第1接触要素14から離間する方向に向かって、リング形のくびれ28を有するリング形突起26が配される。このように、突起26には2つの歯30及び32を備える目立てがいわば設けられる。
【0037】
2つの接触要素14及び20間の相対動作は、テンション・プライヤ10によって実現される。この目的のために、テンション・プライヤ10は、第2接触要素20上への配置のために遠方向を向いた、長手方向の孔36を備えかつリング形の接触面38を有するねじ込み式スリーブ34の形式である第1のツール要素を備える。長手方向の穴36は、軸18が突起26を伴ってねじ込み式スリーブ34を通過できるような大きさである。
【0038】
ねじ込み式スリーブ34は、テンション・プライヤ10の本体40の遠位端において、内側のねじ切り部分44に対応する外側のねじ切り部分42を備える。ねじ込み式スリーブ34は、その近位端に近方向を指す円錐面46を有する。円錐面46によって規定される円錐の先端はテンション・プライヤ10の長手軸48上にあり、長手軸48は、テンション・プライヤ10及び固定要素12双方の対称軸を同時に形成する。
【0039】
本体40は細長いスリーブの形式であり、長手軸48に関し対称的に配置される2つの細長い締め付け顎52及び54のための円錐面46に隣接するリング形の接触部分50を有する。遠位端では、締め付け顎52及び54それぞれに円錐面46に対応する傾斜した滑り面56及び58が各々設けられる。近位端では、締め付け顎52及び54の自由端が、ベアリング・ラグ60及び62上へ、即ちピン68及び70により、旋回可能式かつ変位可能式に取り付けられる。ピン68及び70はそれぞれ、締め付け顎52及び54上へ回転可能式に固定された状態で長手軸48と直交するように配向されており、スロット64及び66を通って延伸する。スロット64及び66はそれぞれ、近方向を指して各ベアリング・ラグ60及び62上を長手軸48から角度を付けて延伸する。遠位端では、ベアリング・ラグ60及び62が引っ張りスリーブ72上へ半径方向に突き出すように配置され、引っ張りスリーブ72の近位端は長手軸48に対して回転対称式に形成されるベアリング・ジャーナル74へ接続される。ベアリング・ジャーナル74の遠位端は、ベアリング・ジャーナル74及び締め付けスリーブ76の双方を通って長手軸48に対して直交方向に延伸するボルト78により、締め付けスリーブ76の近位端で回転及び軸方向変位から固定される。
【0040】
締め付けスリーブ76は本体40に軸方向に変位可能なように取り付けられ、かつ長手方向の溝80により本体40に対して回転しないように固定される。溝80は外側が締め付けスリーブ76の近位端から離れて延伸しかつ内側では固定ピン82が係合する。固定ピン82は締め付けスリーブ76から内側へ突出し、長手軸48の方向を向いている。締め付けスリーブ76の遠位端は減少する内径を有し、これによりたわみ曲面84が形成される。たわみ曲面84は、近方向に傾斜しつつ長手軸48の方を向いている。締め付け顎52及び54は各々傾斜した滑り面86及び88を有し、これらはたわみ曲面84に対応しかつ図1に示す初期位置ではその全体がほぼたわみ曲面84上に存在する。
【0041】
引っ張りスリーブ72を取り巻く渦巻ばね90は、一方ではベアリング・ラグ60及び62上で支持され、かつ他方ではベアリング・ジャーナル74上に支持される。従って、渦巻ばね90は締め付け顎52及び54の滑り面86及び88を遠方向にたわみ曲面84へと押しつけ、かつ滑り面56及び58を円錐面46へと押しつける。
【0042】
ベアリング・ジャーナル74は、その内部に細長い円柱形の引抜きボルト94が挿入されかつボルト78によりベアリング・ジャーナル74上へ回転式に固定されかつ軸方向へ変位不能であるように保持される中央の穴92を有する。引抜きボルト94は遠位端で引っ張りスリーブ72に変位可能式に取り付けられ、引っ張りスリーブ72は、長手軸48に平行に延伸する、かつ内部で引抜きボルト94を介して長手軸48に対し直交方向へ延伸するガイドピン100が係合し、これにより引っ張りスリーブ72を軸方向へ変位可能でありかつ回転を防止して固定されるように引抜きボルト94上へ保持する2つのガイド・スロット96及び98を有する。
【0043】
引抜きボルト94の近位端は、概して参照数字102で指示される牽引力リミッタに接続される。これは、本体40の近位端へねじ止めされるベアリング・リング106上で長手方向に変位するために軸方向へ変位可能であるようにガイドされるベアリング・スリーブ104を備える。ベアリング・スリーブ104はその内側で、引抜きボルト94の近位端に回転式に固定されるリング形ヘッド108をガイドする。引抜きボルト94の遠位端は、中央の軸方向スリーブ穴110で軸方向に変位可能式にガイドされる。
【0044】
ベアリング・スリーブ104の遠位端の外側には、遠方向を向いた停止面114を形成する停止リング112がねじ止めされる。図1に示す初期位置では、締め付けスリーブ76の遠位端116とベアリング・ジャーナル74の環状突起118とが接触面114に当たる。環状突起118よりも直径が低減されているジャーナル部分120は、遠方向へ開放されているベアリング・スリーブ104の対応する円柱形リセス122に係合する。ベアリング・ジャーナル74の近位端126はリセス122の底124に隣接し、スリーブ穴110はこれを介して延伸する。
【0045】
引抜きボルト94を囲む板ばねブロック128は、ベアリング・スリーブ104内に配置されかつ一方で底124に、他方でヘッド108に支持され、これによりリセス122内でベアリング・ジャーナル74をバイアスされた状態に保持する。ベアリング・スリーブの遠位端を囲むさらなる渦巻ばね130は本体40の内側に配置され、一方で停止リング112に、他方でベアリング・リング106に支持される。従ってこれは、ベアリング・スリーブ104全体を遠方向へ押しつける。
【0046】
放射状に突き出す2つのベアリング・ブロック132及び134は近位端でベアリング・スリーブ104上へ対称的に配置され、ロッド状リンク136及び138がこれらの各々に回転可能式に取り付けられる。またリンク136及び138は、各々旋回グリップ140及び142へ回転可能式に接続される。旋回グリップ140及び142は、各々長手軸48に対して直交方向へ配向される2つのヒンジ・ボルト144及び146によって、本体40から半径方向へ突き出すベアリング・ラグ148及び150上へ回転可能式に保持される。
【0047】
各締め付け顎52及び54は、長手軸48の方向を向いた複数の歯156及び158を有する各々目立て152及び154を装備している。何れの場合も、各々2つの歯156及び158間には各々受容部157及び159を構成するリセスが形成される。歯156及び158は、全て丸められる。歯156及び158の互いからの間隔は、突起26全体が2つの歯156及び158間に導入され得るように選択される。図5は、このような係合を示したものである。
【0048】
しかしながら、歯156及び158の先端形状は軸18上の突起26のくびれ28の形状にほぼ対応し、よって各々締め付け顎52及び54の歯156及び158は各々くびれ28に係合することができる。図6は、このような係合位置を示したものである。目立て152及び154は、突起26の歯30及び32が2つの歯156同士間及び2つの歯158同士間の半分の間隔で離隔されるように選択される。従って、目立て152及び154のピッチは、突起26の目立て160のピッチの2倍に相当する。従って、目立て152及び154のピッチ間隔の半分に相当する係合位置を規定することができる。図5及び6は、このような間隔で互いから分離されている2つのこのような係合位置を示したものである。
【0049】
以下、図1ないし4に関連して、第2接触要素20が如何にしてテンション・プライヤ10により軸18に対して第1接触要素14の方向へ変位され得るかを更に詳しく説明する。
【0050】
まず、互いに接合されるべき2つの骨部分22及び24の両側に2つの接触要素14及び20が配置され、軸18が骨内の隙間25を介して通される。突起26を伴う軸18は、ねじ込み式スリーブ34を介して導入される。ねじ込み式のスリーブ34は、第2接触要素20にもたれて置かれる。図1は、この初期位置を示す。
【0051】
旋回グリップ140及び142を長手軸48の方向へ旋回させることにより、ベアリング・スリーブ104は近方向へ引っ張られ、渦巻ばね130を圧縮する。旋回グリップ140及び142によって加えられる力が板ばねブロック128によって加えられる力より小さい限り、ベアリング・ジャーナル74はベアリング・スリーブ104の凹部122内に保持される。ベアリング・ジャーナル74と共に、締め付けスリーブ76は近方向へ引っ張られ、これにより締め付け顎52及び54の滑り面86及び88が締め付けスリーブ76のたわみ曲面84に沿ってスライドする。従ってたわみ曲面84は、長手方向48へ作用する牽引力がそれにより長手軸48へ向かう方向の押込み力へ偏向される偏向要素として作用する。締め付け顎52及び54は強制誘導により長手軸48の方向へ移動され、誘導は、一方で円錐面46にもたれる滑り面56及び58によって、他方でスロット64及び66内を誘導されるピン68及び70によって実行される。
【0052】
締め付け顎52及び54は、目立て152及び154が突起26と係合するに至るまで長手軸48の方向へ移動される。この目的のために、図5及び6に関連して既に詳しく説明した2つの係合位置が存在する。図2は、突起26上での締め付け顎52及び54のその遠位位置における係合位置を示す。図5は、図2の部分を拡大した詳細図である。
【0053】
旋回グリップ140及び142が長手軸48の方向へ更に旋回されると、締め付け顎52及び54は近方向に移動される。渦巻ばね90の力は、締め付け顎52及び54を遠方向へと更にバイアスさせるほどのものではない。図3は、突起26が第2接触要素20に対して第2接触要素20から離れて移動され、よって第2接触要素20は既に第1接触要素14方向の変更位置をとっているテンション・プライヤ10の位置を示す。
【0054】
旋回グリップ140及び142が長手軸48の方向へ更に旋回されると、牽引力リミッタ102が作用し始める。ベアリング・スリーブ104にかかる牽引力は、この時点で板ばねブロック128によって加えられる力を超過し、これにより板ばねブロック128が圧縮される。これにより、本体40に対する締め付けスリーブ76の軸方向位置は、ほぼ一定のままになる。これに対して、渦巻ばね130及び板ばねブロック128は更に圧縮される。図4は、この位置を示す。
【0055】
突起26を締め付け顎52及び54で掴むために、旋回グリップ140及び142は再び長手軸48から離間するように旋回される。これは、例えば図示されていないリーフ・スプリングによって自動的に行うことができる。適切に選択された渦巻ばね90及び130により、テンション・プライヤ10の配置は、図3に示す引張り位置において、旋回グリップ140及び142を長手軸48から離間するように旋回させる際に、締め付け顎52及び54がまず長手軸48から離間するように半径方向へ移動され、かつベアリング・スリーブ104上へ作用する牽引力が低減されると突起26から離間するように移動されることを可能にする。その結果、締め付け顎52及び54は軸18上の突起26を開放する。旋回グリップ140及び142が図1に示す初期位置へ戻るために更に旋回されると、締め付け顎52及び54は突起26と係合することなく遠方向へ移動される結果となる。滑り面56及び58が再度円錐面46へもたれる状態に至れば、突起26は、さらなる運搬ステップにおいて更に近方向へ移動されることが可能である。
【0056】
一般的には、2つの骨部分22及び24が2つの接触要素14及び20間に型締めされて保持されるまで、このような複数の運搬ステップが上述の方法で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】締め付け顎が遠位の解放位置にある状態の本発明に係るテンション・プライヤを示す。
【図2】締め付け顎が遠位の係合位置にある状態の図1の器具を示す。
【図3】締め付け顎が近位の引張り位置にある状態の図1の器具を示す。
【図4】牽引力リミッタが作動している状態である図3の器具を示す。
【図5】接続部材の突起と締め付け顎の歯との第1の可能係合位置を示す。
【図6】締め付け顎の歯の上への突起の第2の可能係合位置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の骨接触要素(14)から突き出た長手方向を規定するロッド状接続部材(18)を備えた第1の骨接触要素(14)と、前記接続部材(18)上で前記第1骨接触要素(14)へと向かう方向に変位可能な第2の骨接触要素(20)とを有する骨板固定デバイス(12)を装着するための外科手術用器具(10)であって、
前記第2骨接触要素(20)上の接触位置に位置付け可能な第1のツール要素(34)と、前記第1ツール要素(34)から取り外し可能な第2のツール要素(52,54)と、前記第2ツール要素(52,54)により前記第2骨接触要素(20)上の接触位置にある前記第1ツール要素(34)から離間する近方向に前記接続部材(18)を複数の運搬ステップで段階的に運搬するための運搬デバイスとを有するものにおいて、
前記第2ツール要素(52,54)が、前記接続部材(18)から突き出た突起(26)のための複数の受容部(157,159)を有すること、
各運搬ステップに関し、前記突起(26)が、係合位置にて受容部(157,159)と少なくとも部分的に係合可能であり、かつ該係合位置において前記第2ツール要素(52,54)上で長手方向(48)に動かないように保持されること、及び
一の運搬ステップから次の運搬ステップまで、前記突起(26)が前記第2ツール要素(52,54)上に配された更に近方向にある受容部(157,159)と係合可能であること、
を特徴とする外科手術用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具において、
上記第2ツール要素(52,54)が、上記第1ツール要素(34)に対する遠位置において上記係合位置にある突起(26)と係合可能であること、
上記第2ツール要素(52,54)が、上記係合位置において上記遠位置から上記第1ツール要素(34)より更に離れた近位置へと近方向に移動可能であること、及び
上記第2ツール要素(52,54)が、上記近位置において上記係合位置から上記第2ツール要素(52,54)及び上記突起(26)が係合解除される解放位置へと移転可能であること、
を特徴とするもの。
【請求項3】
請求項2に記載の器具において、
上記第2ツール要素(52,54)が、上記解放位置において上記近位置から上記遠位置へと移動可能であることを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の器具において、
上記突起(26)が上記受容部(157,159)に正嵌合で導入可能であることを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の器具において、
上記第2ツール要素(52,54)が上記突起(26)に対して上記長手方向(48)と直交する方向に移動可能であることを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の器具において、
上記第2ツール要素が第1及び第2締め付け顎(52,54)を備えること、及び
2つの前記締め付け顎(52,54)の少なくとも一方が上記受容部(157,159)を搭載すること、
を特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の器具において、
上記第2ツール要素(52,54)が複数の歯(156,158)を備えた目立て(152,154)を有すること、及び
前記目立て(152,154)が上記受容部(157,159)を有すること、
を特徴とするもの。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の器具において、
上記突起(26)が、少なくとも2つの歯(30,32)を含む突起状目立て(160)を有することを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項8に記載の器具において、
上記突起(26)が、少なくとも1つの運搬経路上を一の運搬ステップから次の運搬ステップまで近方向に運搬可能であること、及び
前記運搬経路が、上記目立て(152,154)の歯の間隔と上記突起状目立て(160)の歯の間隔のうちの小さい方に対応すること、
を特徴とするもの。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の器具において、
上記第2ツール要素(52,54)の目立て(152,154)が、上記突起状目立て(160)のピッチの整数倍に対応するピッチを有することを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の器具において、
上記突起(26)が、上記目立て(152,154)の少なくとも1つの歯(156,158)を受けるための保持受容部(28)を有することを特徴とするもの。
【請求項12】
請求項11に記載の器具において、
上記突起状目立て(160)が上記保持受容部(28)を有することを特徴とするもの。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の器具において、
上記目立て(152,154)の少なくとも1つの歯(156,158)が上記長手方向(48)と直交する方向において上記保持受容部(28)内に導入可能であることを特徴とするもの。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載の器具において、
上記保持受容部がリング溝(28)を有することを特徴とするもの。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の器具において、
上記受容部(157,159)がエッジのない設計であることを特徴とするもの。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の器具において、
上記突起(26)がエッジのない設計であることを特徴とするもの。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の器具において、
本器具(10)が本体(40)と、前記本体(40)に移動可能式に取り付けられる少なくとも1つの作動要素(140,142)とを備えること、及び
前記本体(40)に対して前記作動要素(140,142)を移動させることにより、上記第1ツール要素(34)から離間する長手方向において上記第2ツール要素(52,54)に牽引力が伝達可能であること、
を特徴とするもの。
【請求項18】
請求項17に記載の器具において、
上記本体(40)に対して上記作動要素(140,142)を移動させることにより、上記長手方向(48)と直交する方向において上記第2ツール要素(52,54)に保持力が伝達可能であること、
を特徴とするもの。
【請求項19】
請求項18に記載の器具において、
長手方向(48)に作用する牽引力を該長手方向(48)と直交する方向に作用する上記保持力に変えるための力偏向要素(84)が設けられていることを特徴とするもの。
【請求項20】
請求項19に記載の器具において、
少なくとも1つの上記締め付け顎(52,54)が、上記力偏向要素(84)に寄りかかり、かつ前記力偏向要素(84)を長手方向(48)に移動させる間、該力偏向要素の上で誘導可能であることを特徴とするもの。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の器具において、
牽引力が少なくとも1つの上記作動要素(140,142)から上記力偏向要素(84)に伝達可能であることを特徴とするもの。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれかに記載の器具において、
少なくとも1つの上記締め付け顎(52,54)が上記力偏向要素上(84)で長手方向(48)に弾性的に支持されることを特徴とするもの。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれかに記載の器具において、
上記力偏向要素(84)が上記本体(40)上で弾性的に支持されることを特徴とするもの。
【請求項24】
請求項17又は23に記載の器具において、
長手方向(48)の上記牽引力を制限するための牽引力リミッタが設けられていることを特徴とするもの。
【請求項25】
請求項24に記載の器具において、
少なくとも1つの上記作動要素(140,142)によって起こされる力が、上記牽引力リミッタ(102)により上記力偏向要素(84)上へ限定的に伝達可能であることを特徴とするもの。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の器具において、
上記力偏向要素(84)が上記牽引力リミッタ(102)上で弾性的に支持されることを特徴とするもの。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれかに記載の器具において、
上記牽引力リミッタ(102)が上記本体(40)にて弾性的に支持されることを特徴とするもの。
【請求項28】
請求項17〜26のいずれかに記載の器具において、
少なくとも1つの上記締め付け顎(52,54)が、長手方向(48)への変位のために上記本体(40)上へ取り付けられるプッシュプル要素(72)上に取り付けられること、及び
少なくとも1つの上記作動要素(140,142)により牽引力が上記プッシュプル要素上へ伝達可能であること、
を特徴とするもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−519044(P2006−519044A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501830(P2006−501830)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001346
【国際公開番号】WO2004/075765
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(502154016)アエスキュラップ アーゲー ウント ツェーオー カーゲー (61)
【氏名又は名称原語表記】AESCULAP AG & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap−Platz, 78532 Tuttlingen Germany
【Fターム(参考)】