説明

外科用ステープル

【課題】外科用ステープラーを利用する外科的ステープル留め操作の間に、ステープルカートリッジとステープルアンビルとの間で生じる身体組織の遠位方向流れの量を低減する新規かつ改良された外科用ステープルを提供する。
【解決手段】遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって、第1の所定長さを有する第1の脚;遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって、上記第1の脚の第1の所定長さより短い第2の所定長さを有する第2の脚;および上記第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材を備える、外科用ステープル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(1.技術分野)
本開示は外科用ステープルに関し、そしてより特定すれば、外科用ステープルのための脚形態に関し、ここで遠位端が互いに同じ方向に配向されている。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の背景)
外科用ステープル留め装置は、外科的手順で広く用いられており、ファスナーまたはステープルを身体組織中に駆動することによって迅速かつ効率的な様式で身体組織を固定する。特定タイプのステープラーでは、身体組織に接近するために、単一のステープルが、代表的にはアンビル、例えば、皮膚ステープラーに対して形成される。
【0003】
中空の器官をともに機械的に縫うためのような、その他のタイプのステープラーでは、主要な直線状ドラテブ(すなわちカム部材)が、ステープルが駆動されるべき方向を横切る方向で長軸方向に移動する。代表的には、このようなステープラーは、ステープル保持カートリッジの溝付きスロットを通過する多くのステープル駆動部材またはプッシャー要素を採用し、このようなスロットは、端と端を接して列に整列されている。通常の操作では、長軸方向に移動するカム部材は、ステープル保持カートリッジの中およびそれを通って通過し、このカム部材が溝付きスロットを通過するとき、駆動部材上のカム表面に接触する。従って、この駆動部材は、カム部材からの直線状運動を横方向ステープル運動に転換し、それによってステープルの列(単数または複数)を固定されるべき身体組織中に駆動する。
【0004】
このような配列の例は、同一人に譲渡されたGreenらによる米国特許第3,490,675号(特許文献1)に記載されている。米国特許第3,490,675号は、プッシャープレート、案内レールおよび駆動カムに接触するためのV形状部分を有する駆動部材を一般に開示している。さらなる改変は、同一人に譲渡されたGreenらによる米国特許第3,499,591号に示されている。米国特許第3,499,591号(特許文献2)は、単一列のステープルより大きな保持強度のために、単一カムストローク中に二重の列のステープルを駆動し得る2つのステープルドライバーを開示している。
【0005】
代表的には、外科用ステープラーが発射されている(すなわち、ステープルドライバーが遠位方向に進行され、ステープルカートリッジから、身体組織を通ってステープルを発射し、そしてステープルアンビルに対して変形する)とき、このステープルカートリッジとステープルアンビルとの間に握られる遠位方向の身体組織の流れがある。
【0006】
上記に記載のステープルシステムの各々は、鋭くなった皮膚または組織貫通点にある1つの端部で終結し、そして直線状ブリッジによって対向する端部で接続される2つの対向する等しい長さの脚を有する従来のU形状ステープルを駆動するために共通して採用されている。変形されるとき、このようなステープルはB形状を形成する傾向があり、ここで、これらの脚は、縫合されている組織を再穿刺するための位置にある。代表的には、これらステープルの組織貫通位置は、外側に配向され、すなわち、各点の最遠位先端部は、各脚の内面に沿って位置決めされ、そしてそれから各脚の外側面にテーパー状になる。さらに、このようなステープルの脚は等しい長さを有するので、ステープラーが発射されるとき、このようなステープルの各脚は、ステープルポケットを出て、そして身体組織の遠位流れに同時に合致する。明白であるように、組織貫通点の角度をなす配向に起因してステープルの最近位脚を通過するとき、身体組織は遠位方向に流れ続ける。さらに、各ステープルの最近位脚は、その内面に沿って支持されず、その一方、各ステープルの最遠位脚は、各ステープルポケットの遠位壁によってその最遠位面に沿って支持されることは明白である。従って、ステープルがステープルカートリッジ中に形成されたステープルポケットから発射されるとき、身体組織の遠位方向流れは、ステープルの最近位脚を遠位方向に偏向させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,490,675号明細書
【特許文献2】米国特許第3,499,591号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、外科用ステープラーを利用する外科的ステープル留め操作の間に、ステープルカートリッジとステープルアンビルとの間で生じる身体組織の遠位方向流れの量を低減する新規かつ改良された外科用ステープルに対して継続する必要性が存在することが認識され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要約)
本出願は、特有の外科用ステープルに関し、これは、遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって第1の所定長さを有する第1の脚、遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって上記第1の脚の第1の所定長さより短い第2の所定長さを有する第2の脚、およびこの第1の脚および第2の脚の近位端を相互連結するブリッジ部材を含む。
【0010】
1つの好ましい実施形態では、上記第1の脚の遠位端部分は遠位の角度をなす面で終了し、そのうえ、上記第2の脚の遠位端部分は遠位の角度をなす面で終了する。好ましくは、上記第1の脚の遠位の角度をなす面、および上記第2の脚の遠位の角度をなす面は、互いと同じ方向に配列され、そして、より好ましくは、上記第2の脚の遠位の角度をなす面は、上記ブリッジ部材に向かって配向される。上記第1の脚の遠位の角度をなす面は、上記ブリッジ部材に向かって配向され得ることが想定される。
【0011】
上記第1の脚および第2の脚は、各々、個々の長軸方向軸を規定する。好ましくは、上記第1の脚の遠位の角度をなす面は、その長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなし、そして上記第2の脚の遠位の角度をなす面はその長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなす。
【0012】
1つの実施形態において、上記外科用ステープルは、第1の距離を規定するブリッジ部材を含み、そして上記第1の脚の遠位の角度をなす面は、上記第2の脚の遠位の角度をなす面から第2の距離だけ間隔を置かれている。好ましくは、この第2の距離は、上記第1の距離より大きい。
【0013】
代替の実施形態では、上記外科用ステープルは、軸を規定するブリッジ部材を含む。従って、上記第1の脚の長軸方向軸は、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい量だけ角度をなし、そして上記第2の脚の長軸方向軸は、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい量だけ角度をなしている。
【0014】
上記第1の脚および第2の脚は、互いと同一の平面に横たわることが企図される。好ましくは、上記第1の脚および上記ブリッジ部材は第1の平面を規定し、そして上記第2の脚と上記ブリッジ部材は第2の平面を規定する。本開示に従えば、上記第2の平面は、上記第1の平面に対し、上記ブリッジ部材によって規定される軸の周りを所定量だけ角度をなすことが企図される。
【0015】
本開示の代替の実施形態によれば、上記外科用ステープルは、遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって、この第1の脚の遠位端部分が角度をなす遠位面で終結する第1の脚、遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって、この第2の脚の遠位端部分が角度をなす遠位面で終結する第2の脚、およびこの第1の脚の近位端と第2の脚の近位端とを相互連結するブリッジ部材を含み、ここで、この第1の脚の遠位の角度をなす面およびこの第2の脚の遠位の角度をなす面は、互いと同一の方向に配向される。
【0016】
外科用ステープルのこれらの特徴およびその他の特徴は、本出願の以下の詳細な説明、添付の図面および請求項から当業者により容易に明らかになる。
【0017】
より特定すれば、本発明は以下の項目に関する。
(1)外科用ステープルであって:遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって、第1の所定長さを有する第1の脚;遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって、上記第1の脚の第1の所定長さより短い第2の所定長さを有する第2の脚;および上記第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材を備える、外科用ステープル。
(2)上記第1の脚の遠位の角度をもつ面および上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が、互いと同一方向に配向される、項目(1)に記載の外科用ステープル。
(3)上記第1の脚が、上記第2の脚と同じ平面上にある、項目(1)に記載の外科用ステープル。
(4)上記第1の脚および上記ブリッジ部材が、第1の平面を規定し、そして上記第2の脚および上記ブリッジ部材が、このブリッジ部材によって規定される軸の周りで上記第1の平面に対して角度をなす第2の平面を規定する、項目(1)に記載の外科用ステープル。
(5)上記ステープルが、チタンおよびステンレス鋼からなる群から選択される材料から形成される、項目(1)に記載の外科用ステープル。
(6)外科用ステープルであって、遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって、この第1の脚の遠位端部分が角度をもつ遠位面で終結する第1の脚;遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって、この第2の脚の遠位端部分が角度をもつ遠位面で終結する第2の脚;および上記第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材であって、上記第1の脚の遠位の角度をもつ面および上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が互いと同じ方向に配向されているブリッジ部材を備える、外科用ステープル。
(7)上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が、上記ブリッジ部材に向かって配向される、項目(6)に記載の外科用ステープル。
(8)上記第1の脚および上記第2の脚が各々個々の長軸方向軸を規定し、上記第1の脚の遠位の角度をもつ面が、その長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなし、そして上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が、その長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなす、項目(6)に記載の外科用ステープル。
(9)上記ブリッジ部材が距離を規定し、そして上記第1の脚の遠位の角度をもつ面が、上記第2の脚の遠位の角度をもつ面から間隔を置かれた距離にあり、この第1の脚の遠位の角度をもつ面とこの第2の脚の遠位の角度をもつ面との間の上記距離が、上記ブリッジ部材によって規定される距離より大きい、項目(6)に記載の外科用ステープル。
(10)上記ブリッジ部材が軸を規定し、そして上記第1の脚の長軸方向軸が、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい大きさで角度をなし、そして上記第2の脚の長軸方向軸が、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい大きさで角度をなす、項目(6)に記載の外科用ステープル。
【0018】
本発明はまた、以下の項目に関し得る。
【0019】
(1)外科用ステープルであって:遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって、第1の所定長さを有する第1の脚;遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって、上記第1の脚の第1の所定長さより短い第2の所定長さを有する第2の脚;およびこの第1の脚の近位端と第2の脚の近位端とを相互接続するブリッジ部材を備える、外科用ステープル。
【0020】
(2)上記第1の脚の遠位端部分が遠位の角度をもつ面で終結し、そして上記第2の脚の遠位端部分が遠位の角度をもつ面で終結する、項目(1)に記載の外科用ステープル。
【0021】
(3)上記第1の脚の遠位の角度をもつ面と、上記第2の脚の遠位の角度をもつ面とが、互いに同じ方向に配向される、項目(2)に記載の外科用ステープル。
【0022】
(4)上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が、上記ブリッジ部材に向かって配向される、項目(2)に記載の外科用ステープル。
【0023】
(5)上記第1の脚の遠位の角度をもつ面が、上記ブリッジ部材に向かって配向される、項目(4)に記載の外科用ステープル。
【0024】
(6)上記第1の脚および上記第2の脚の各々が、個々の長軸方向軸を規定し、上記第1の脚の遠位の角度をもつ面がその長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなし、そして上記第2の脚の遠位の角度をもつ面がその長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなす、項目(5)に記載の外科用ステープル。
【0025】
(7)上記ブリッジ部材が距離を規定し、上記第1の脚の遠位の角度をもつ面が上記第2の脚の遠位の角度をもつ面から距離を置かれ、この第1の脚の遠位の角度をもつ面と第2の脚の遠位の角度をもつ面との間の距離が、上記ブリッジ部材によって規定される距離より大きい項目(6)に記載の外科用ステープル。
【0026】
(8)上記ブリッジ部材が軸を規定し、そして上記第1の脚の長軸方向軸が、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい大きさの角度をなし、そして上記第2の脚の長軸方向軸が、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい大きさの角度をなす、項目(6)に記載の外科用ステープル。
【0027】
(9)上記第1の脚が、上記第2の脚と同じ平面上にある、項目(8)に記載の外科用ステープル。
【0028】
(10)上記第1の脚および上記ブリッジ部材が第1の平面を規定し、そして上記第2の脚と上記ブリッジ部材が、上記ブリッジ部材によって規定される軸の周りで上記第1の平面に対して角度をなす第2の平面を規定する、項目(8)に記載の外科用ステープル。
【0029】
(11)前記ステープルが、チタンおよびステンレス鋼からなる群から選択される材料から形成される、項目(1)に記載の外科用ステープル。
【0030】
(12)外科用ステープルであって:遠位端部分および近位端を有する第1の脚であって、この第1の脚の遠位端部分が角度をもつ遠位面で終結する第1の脚;遠位端部分および近位端を有する第2の脚であって、この第2の脚の遠位端部分が角度をもつ遠位面で終結する第2の脚;およびこの第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材であって、この第1の脚の遠位の角度をもつ面と第2の脚の遠位の角度をもつ面のが互いと同じ方向に配列される、外科用ステープル。
【0031】
(13)上記第1の脚が第1の所定の長さを有し、そして上記第2の脚が、上記第1の脚の所定の長さより短い第2の所定長さを有する、項目(12)に記載の外科用ステープル。
【0032】
(14)上記第1の脚の遠位の角度をもつ面および上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が同じ方向に配向される、項目(13)に記載の外科用ステープル。
【0033】
(15)上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が、上記ブリッジ部材に向かって配向される、項目(14)に記載の外科用ステープル。
【0034】
(16)上記第1の脚および第2の脚の各々が、個々の長軸方向軸を規定し、上記第1の脚の遠位の角度をもつ面がその長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなし、そして上記第2の脚の遠位の角度をもつ面がその長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の角度をなす、項目(15)に記載の外科用ステープル。
【0035】
(17)上記ブリッジ部材が距離を規定し、そして上記第1の脚の遠位の角度をもつ面が上記第2の脚の遠位の角度をもつ面から距離を置かれ、この第1の脚の遠位の角度をもつ面と第2の脚の遠位の角度をもつ面との間のこの距離が、上記ブリッジ部材によって規定される距離よりも大きい、項目(16)に記載の外科用ステープル。
【0036】
(18)上記ブリッジ部材が軸を規定し、そして上記第1の脚の長軸方向軸が、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい大きさで角度をなし、そして上記第2の脚の長軸方向軸が、上記ブリッジ部材によって規定される軸に対して約90゜より小さい大きさで角度をなす、項目(16)に記載の外科用ステープル。
【0037】
(19)上記第1の脚が上記第2の脚と同じ平面中にある、項目(18)に記載の外科用ステープル。
【0038】
(20)上記第1の脚および上記ブリッジ部材が第1の平面を規定し、そして上記第2の脚および上記ブリッジ部材が、上記ブリッジ部材によって規定される軸の周りで上記第1の平面に対して角度をなす第2の平面を規定する、項目(18)に記載の外科用ステープル。
【0039】
(21)外科用ステープル留め装置における使用のための外科用ステープルであって、この外科用ステープル留め装置は、その中に外科用ステープルを貯蔵するための複数の細長いスロットを有するステープルカートリッジ、およびこのステープルカートリッジに作動可能に連結されるアンビルを含み、かつ上記ステープルの脚がそれに対して衝突するとき、これらステープルの脚を変形するような形態かつ適合された複数のアンビルポケットを含み、該外科用ステープルが:遠位部分および近位端を有する第1の脚であって、第1の所定の長さを有する第1の脚;遠位部分および近位端を有する第2の脚であって、この第1の脚の第1の所定の長さより短い第2所定長さを有する第2の脚;およびこの第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材であって、上記ステープルが、上記ステープルカートリッジのスロット中で、上記第1の脚が上記第2の脚の遠位方向に位置されるように配向される、外科用ステープル。
【0040】
(22)上記第1の脚の遠位端部分が遠位の角度をもつ面で終結し、そして上記第2の脚の遠位端部分が遠位の角度をもつ面で終結する、項目(21)に記載の外科用ステープル。
【0041】
(23)上記第1の脚の角度をもつ面および上記第2の脚の角度をもつ面が、同じ方向に配向される、項目(22)に記載の外科用ステープル。
【0042】
(24)上記第2の脚の遠位の角度をもつ面が上記ブリッジ部材に向かって配向される、項目(23)に記載の外科用ステープル。
【発明の効果】
【0043】
遠位端部分および近位端を有する第1の脚、遠位端部分および近位端を有する第2の脚、およびこの第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材を含む外科用ステープルが提供される。この第1の脚は第1の所定の長さを有し、そしてこの第2の脚は上記第1の脚の第1の所定長さより短い第2の所定長さを有する。第1の脚および第2の脚の両方の遠位端部分は、遠位の角度をもつ面で終結し、ここで、第1の脚の遠位の角度をもつ面および第2の脚の遠位の角度をもつ面は、互いと同じ方向に配向される。第2の脚の遠位の角度をもつ面は、上記ブリッジ部材に向かって配向されるので、外科用ステープラーを利用する外科的ステープル留め操作の間に、ステープルカートリッジとステープルアンビルとの間で生じる身体組織の遠位方向流れの量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本開示の原理による外科用ステープルの前面正面図である。
【図2】図2は、図1のステープルの側面正面図である。
【図3】図3は、図1に示されるステープルの領域「3」によって示される、脚の遠位端の拡大図である。
【図4】図4は、従来の外科用ステープル留め装置の遠位端部分から発射されている先行技術のステープルの断面概略側面正面図である。
【図5】図5は、図4の領域「5」によって示されるような、従来の外科用ステープル留め装置から発射されている先行技術外科用ステープルの拡大図である。
【図6】図6は、従来の外科用ステープル留め装置の遠位端部分から発射されている、図1の外科用ステープルの断面側面正面図である。
【図7】図7は、図5の領域「7」によって示されるような、従来の外科用ステープル留め装置から発射されている、本開示の原理に従う外科用ステープルの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書に援用され、そして本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の例示の実施形態を示し、そして上記に記載の一般的説明、および以下に記載の実施形態の詳細な説明とともに、本開示の原理を説明するために供される。
【0046】
(好適な実施形態の詳細な説明)
現在開示される外科用ステープラーの好ましい実施形態が、ここで、描写する図面を参照して詳細に説明され、ここでは、同様の参照番号は、類似または同一の要素を識別する。図面において、そして以下の説明において、用語「近位」は、伝統であるように、オペレーターに最も近いデバイスまたは要素の端部をいい、その一方、用語「遠位」は、オペレーターから最も遠いデバイスまたは要素の端部をいう。
【0047】
本明細書に開示される外科用ステープルは、種々の手順のために、いくつかの公知のタイプの外科用ステープラー(例は:Tyco Health−Care Group、LP、Norwalk、CTの事業部であるUnited States Surgicalから入手可能な、端と端が接した吻合、「EEA(登録商標)」;円形の端と端とが接した吻合、「CEEA(登録商標)」;胃腸管吻合、「GIA(登録商標)」;内視鏡胃腸管吻合、「Endo GIA(登録商標)」;および横断吻合、「TA(登録商標)」ステープラーを含む。)とともに、各ステープラーは、ステープルカートリッジに対して調節可能に接近されているステープルアンビルを含んで用いられ得ることが想定される。
【0048】
代表的なステープルカートリッジは、一般に、少なくとも2つの、側方に間隔を置かれ、その中に配置されたステープルを有するステープルポケットの列を有し、その一方、このステープルアンビルは、一般に、その中に形成されたステープル変形窪みを含み、このステープル変形窪みは、上記カートリッジ中のステープルポケットの列と整列される。使用において、外科用ステープラーの各々は、固定されるべき身体組織を握ること、個々のステープルの発射、握られた身体組織を通ってステープルを押すこと、およびステープラーのアンビル中に形成されたステープル変形窪みに対してステープルを閉じることに関与する。以下の説明は、一般に、胃腸管縫合外科用ステープラーに関するが、本開示の原理による外科用ステープルの説明は、任意の前述の外科用ステープラーに適用され得ることが理解される。
【0049】
ここで、図1〜3を参照して、本開示の原理による外科用ステープルは、一般に、参照番号100として示される。ステープル100は、第1の脚102および第2の脚104をそれぞれ含み、各々は、面取りした遠位端部分106、108で終結し、そしてブリッジ部分114によってその近位端110、112で相互接続されている。図1に示されるように、第1の脚102は長さ「L1」を有し、その一方、第2の脚104は長さ「L2」を有し、ここで、長さ「L1」は長さ「L2」よりも大きい。
【0050】
好ましくは、本開示によれば、第1の脚102の面取りされた遠位端部分106は、鋭くなった遠位先端部118で終結する遠位の角度のある面116によって規定され、その一方、第2の脚104の面取りされた遠位先端部108は、鋭くなった遠位先端部122で終結する遠位の角度のある面120によって規定される。好ましくは、遠位の角度のある面116および120は、同じ方向に配向されている。より好ましくは、第1の脚102の遠位の角度をもつ面116は、ブリッジ部分114から離れる方向に配向され、その一方、第2の脚104の遠位の角度をもつ面120は、ブリッジ部分114に向かう方向に配向される。
【0051】
異なる言い方をすると、第1の脚102は、第2の脚104に向かって配向される内面102aおよび側方の対向する内面102aによって規定される外面102bを規定し、その一方、第2の脚104は、第1の脚102に向かって配向される内面104aおよび側方の対向する内面104aによって規定される外面104bを規定する。従って、本開示によれば、第1の脚102の遠位の角度のある面116は外面102bに向かって配向され、その一方、第2の脚104の遠位の角度のある面120は、内面104aに向かって配向される。好ましくは、第2の脚104の遠位の角度のある面120は、第1の脚102の遠位の角度のある面116と対向する方向に角度をなす。
【0052】
図1そして図3により詳細に示されるように、遠位の角度をもつ面116、120は、各脚102、104の長軸方向軸に対して「R1」の大きさの角度をなす。好ましくは、遠位の角度をもつ面116、120は、上記長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の範囲の大きさの「R1」の角度をなす。角度の大きさ「R1」は、上記長軸方向軸に対して約45゜〜約55゜の範囲が好ましいが、遠位の角度のある面116、120の異なる角度の配向が可能であることが想定される。
【0053】
遠位の角度をもつ面116、120は同じ方向に配向されることが好ましいが、その一方、第2の脚104の遠位の角度のある面120がブリッジ部分114に向かって配向され、第1の脚102の遠位の角度のある面116がブリッジ部分114に向かって配向されることを含む任意の数の方向に配向され得ることが想定される。
【0054】
図1に戻り、第1の脚102および第2の脚104が互いからそれることが観察される。換言すれば、近位端110、112は互いから距離「D1」の間隔を置かれ、その一方、遠位端部分106、108は互いから距離「D2」の間隔を置かれ、ここで、距離「D2」は距離「D1」より大きい。好ましくは、距離「D1」は、約0.116〜約0.119インチの範囲であり、その一方、距離「D2」は、約0.145〜約0.165イントの範囲である。異なった言い方をすれば、ブリッジ部分114がブリッジ軸「Y」を規定し、その一方、第1の脚102および第2の脚104は、各々長軸方向軸「X」を規定し、ここで、長軸方向軸「X」は、上記「Y」軸に垂直である軸に対して大きさ「R2」の角度をなしている。従って、各脚102、104の長軸方向「X」軸は、約90゜より小さい大きさ「R2」の角度をなしている。
【0055】
ここで図2を参照して、第1の脚102とブリッジ114とは第1の平面「Z1」を規定し、その一方、第2の脚とブリッジ部分114とは第2の平面「Z2」を規定し、互いに対して大きさ「R3」で角度をなしている。好ましくは、第1の平面「Z1」および第2の平面「Z2」は大きさ「R3」の角度をなし、これは、遠位端部分106と遠位端部分108を、互いから第1の平面「Z1」に垂直な方向に約0.006インチに等しい大きさだけずらす。このようにして、第1の脚102および第2の脚104はステープル形成プロセスの間に変形され、遠位端部分106、108は、互いに対して平面の外にあり、それ故、互いを妨害しない。
【0056】
外科用ステープル100は、例えば、ステンレス鋼、チタン、またはその他の外科的利用のために適切なその他の類似の材料のような、医療グレードの材料のワイヤから形成され得ることが想定される。好ましくは、外科用ステープルは、実質的に円形である断面を有する。あるいは、外科用ステープル100は、実質的に、卵形、矩形、半円形またはステープルを構築するために利用され得るその他の断面形態を有するワイヤから形成され得る。
【0057】
ここで図4および5を参照して、従来の外科用ステープル留め装置の遠位部分から発射されている先行技術の外科用ステープルの断面概略側面正面図が示される。図4に見られるように、この従来の外科用ステープル留め装置の遠位部分は、その中に従来のステープル30を貯蔵するための複数の細長いスロット14を有するステープルカートリッジ12を規定する第1の顎10、およびそれを通って滑動可能に延びるステープル駆動部材18を含む。駆動部材18は、従来のステープル30をそこから横方向に発射するための各細長いスロット中に配置されたプッシャー16の横方向運動に、その直線状運動を変換するような形態かつ適合されている。この従来の外科用ステープル留め装置の遠位部分は、アンビル22をその内面上に提供された第2の顎20をさらに含み、そしてステープル30の脚を変形するような形態かつ適合された、スロット14と整列される複数のアンビルポケット24をさらに含む。第1の顎10および第2の顎20は、ステープルカートリッジ12とアンビル22との間の身体組織「T」をクランプするために、互いに回動可能に取り付けられている。
【0058】
従来のステープル30は、鋭くなった遠位先端部34の1つの端部で終結し、そしてブリッジ部材36によって対向する端部で接続される一対の対向する脚32を含む。図4および5に見られるように、従来ステープル30の各脚32は、互いに等しい長さを有する。さらに、従来ステープル30の脚32は互いに平行であり、そしてブリッジ部材36に実質的に垂直である。
【0059】
使用において、身体組織「T」がステープルカートリッジ12とアンビル22との間にクランプされ、駆動部材18がステープルカートリッジ12を通って遠位方向に進行されるとき、駆動部材18は、各プッシャー16をスロット14を通って横方向に、そして最終的にはステープル30をスロット14から出て、かつ身体組織「T」中に押す。ステープル30が、ステープル留め装置の近位端からステープル留め装置の遠位端に向かって発射され、そして成形されるとき、身体組織「T」の遠位方向の流れ「F」がある。従って、各ステープル30の脚32は等しい長さを有するので、それらは、スロット14から同時に発射される。図5に詳細に見られるように、脚32の遠位先端部34が、身体組織「T」の遠位方向流れ「F」に出会うとき、最遠位脚は直立したままである。なぜなら、この最遠位脚はその遠位側面に沿って支持されているからであり(すなわち、スロット14の内壁によって支持されている)、その一方、最近位脚は遠位方向に偏向する傾向にある。なぜなら、この最近位脚は、その遠位側面に沿って支持されていないからである。さらに、図5に見られるように、遠位先端部34は外方に角度をなしているので(すなわち、これら脚のより長い部分は、より短い部分の内側に位置している)、身体組織「T」は、この最近位脚の角度をもつ面にずり上がる傾向にあり、それ故、身体組織「T」の連続した流れ「T」を許容する。
【0060】
ここで、図6および7を参照して、本開示の原理に従う、外科用ステープル100の断面概略側面正面図は、上記のような従来の外科用ステープル留め装置の遠位部分から発射されているのが示される。図4に見られるように、外科用ステープル100は、第1の脚102が第2の脚104の遠位方向に位置決めされるように、ステープルカートリッジ12のスロット14内に慎重に配置される。特に、外科用ステープル100は、スロット14内に、より長い脚(すなわち、脚102)が遠位部分スロット14内に位置し、その一方、より短い脚(すなわち、脚104)がスロット14の近位部分に位置するように配置される。
【0061】
使用において、図6に、そして図7により詳細に見られるように、身体組織「T」がステープルカーリッジ12とアンビル22との間にクランプされ、駆動部材18がステープルカートリッジ12を通って遠位方向に進行されるとき、駆動部材18は、各プッシャー16を、スロット14を通って横方向に、そして最終的にはステープル100をスロット14から外に、かつ身体組織「T」中に押す。ステープル100は、等しくない脚102、104を有するので、そしてより長い脚102がより短い脚104の遠位方向に位置するので、ステープル100がスロット14から発射されるとき、より長い脚102は、より短い脚104の前にステープルカートリッジ12から突出する。従って、脚102の遠位端部分106は、脚104の遠位端部分108の前に身体組織「T」を貫通する。さらに、脚102の遠位端部分106は、脚104の遠位端部分108の前に身体組織「T」の遠位方向流れ「F」に会う。
【0062】
図7に詳細に見られるように、脚102の遠位端部分106が身体組織「T」の遠位方向流れ「F」に会うとき、脚102は直立したままである。なぜなら、それらは、スロット14の内壁によってその外面102Bに沿って支持されるからである。さらに、脚102は、身体組織「T」を「バックアップ」することを引き起こす効果において、身体組織「T」の遠位方向流れ「F」の速度を妨害かつ遅くし、その結果、脚104の遠位部分108が身体組織「T」を貫通するときに、それらは身体組織「T」を通過するとき遠位方向に偏向しない。
【0063】
さらに、図7に見られるように、ステープル100の第2の脚104の遠位の角度をもつ面120は、好ましくは、第2の脚104の内面104aに面するように角度をなすので、第2の脚104の遠位端部分108の上にずり上がる身体組織「T」の効果は、従来ステープル30と比較したとき、本発明のステープル100では低減される。
【0064】
本明細書に開示される実施形態に種々の改変がなされ得ることが理解される。従って、上記の説明は、制限するものとしてとしてではなく、好ましい実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。例えば、ステープルが長軸方向軸の横方向に発射される外科用装置に関して説明された本発明は、それに代わって、ステープルが横方向に延び、かつステープルに対向して配置されるステープル成形面を有するアンビルに対して長軸方向に駆動される装置に関して説明され得る。当業者は、本明細書に添付された請求項の範囲および思想内でその他の改変を想定する。
【0065】
(要約)
遠位端部分および近位端を有する第1の脚、遠位端部分および近位端を有する第2の脚、および該第1の脚の近位端および第2の脚の近位端を相互接続するブリッジ部材を含む外科用ステープルが提供される。本開示によれば、この第1の脚は第1の所定の長さを有し、そしてこの第2の脚は上記第1の脚の第1の所定長さより短い第2の所定長さを有する。第1の脚および第2の脚の両方の遠位端部分は、遠位の角度をもつ面で終結し、ここで、第1の脚の遠位の角度をもつ面および第2の脚の遠位の角度をもつ面は、互いと同じ方向に配向される。第2の脚の遠位の角度をもつ面は、上記ブリッジ部材に向かって配向される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
外科的手順で広く用いられる身体組織を固定するための新規なステープルが提供される。
【符号の説明】
【0067】
10 第1の顎
12 ステープルカートリッジ
14 スロット
16 プッシャー
18 ステープル駆動部材
20 第2の顎20
22 アンビル
24 アンビルポケット
30、100 ステープル
32 脚
34 遠位先端部
36 ブリッジ部材
102 第1の脚
104 第2の脚
106、108 遠位端部分
110、112 近位端部分
114 ブリッジ部分
116 遠位の角度のある面
118、122 遠位先端部
120 遠位の角度のある面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−212454(P2011−212454A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142371(P2011−142371)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2006−19856(P2006−19856)の分割
【原出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】