説明

外装ルーバー装置

【課題】外観を損なうことなく、円滑なルーバーの固定・開放を可能とし、進入口が形成される外装ルーバー装置を提供する。
【解決手段】建物1外周部に横方向を長手方向として設けられたレール9を有する上横枠7と、上横枠の下方に所定の間隔を有して該上横枠に平行に設けられたレール15を有する下横枠13と、上横枠及び下横枠に渡されるように縦向きに配置され、所定の間隔を有して上横枠及び下横枠の長手方向に並列状に配列される複数のルーバー20、20、…、30、30と、レール上を転動する車輪42a〜42d、43a〜43dを有し、該車輪が備えられた側の一端側が該レールに沿って移動可能とされるとともに、他端側が複数のルーバーのうちの1つの該ルーバー30に取り付けられる少なくとも一対の移動手段40、50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外装ルーバー装置に関し、詳しくは外観を損なわずに円滑なルーバーの固定・開放が可能なことにより進入口が形成される外装ルーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、特に3階以上のビル等の建物では、非常時において建物の外側から該建物の内側へ進入するための進入口を確保することが義務付けられている。これは、意匠性を高めるために外装を施した建物であっても例外ではない。
【0003】
一方、建物の意匠性向上のための建物外装の1つにルーバーを利用したものがある。これは、建物の外周に配置される縦格子を主要とした外装であり、鉛直に配置されたアルミの長尺型材(ルーバー)が所定の間隔を有して並べられているものである。各ルーバーを固定するために該各ルーバーを渡されるように横材が設けられている。従ってこのような外装ルーバー装置が設けられた建物は、その外観視で該格子により意匠性に優れたものとなる。
【0004】
このような観点から近年においてビル等の意匠性を向上させるため、外装ルーバー装置を適用するビル等が増加している。
【0005】
外装ルーバー装置を備えるビルにおいても、上述のように屋外側からの進入口を設置することが義務付けられている。従来において、この進入口は、開き形式のものが多く、かかる形式の進入口では、進入口形成のための枠体を必要としていた。従って該枠体が外観視で見えることがあり、必ずしも意匠上好ましいものではなかった。
【0006】
これに対して、外装ルーバー装置とは異なるが、開閉操作可能な面格子が特許文献1に開示されている。特許文献1に示された面格子によれば、縦格子が水平方向に移動可能とされ、大きい開口を形成することができる。
【0007】
【特許文献1】実開平6−40290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のような開き形式の進入口では、上述のように枠体の配置により意匠上好ましくない上、該進入口を開いたときに敷地境界線を越える虞があった。
【0009】
また、特許文献1に記載された面格子は、いわゆる一般住宅等の窓等に取付けられる面格子であり、その長さが短いものを対象としており、ルーバーの長さが長い外装ルーバー装置ではルーバーが円滑に移動することができない問題があった。
【0010】
そこで本発明は、外観を損なうことなく、円滑なルーバーの固定・開放を可能とし、進入口が形成される外装ルーバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
請求項1に記載の発明は、建物(1)外周部に横方向を長手方向として設けられたレール(9)を有する上横枠(7)と、上横枠の下方に所定の間隔を有して該上横枠に平行に設けられたレール(15)を有する下横枠(13)と、上横枠及び下横枠に渡されるように縦向きに配置され、所定の間隔を有して上横枠及び下横枠の長手方向に並列状に配列される複数のルーバー(20、20、…、30、30)と、レール上を転動する車輪(42a〜42d、43a〜43d)を有し、該車輪が備えられた側の一端側が該レールに沿って移動可能とされるとともに、他端側が複数のルーバーのうちの1つの該ルーバー(30)に取り付けられる少なくとも一対の移動手段(40、50)と、を備える外装ルーバー装置(2)を提供することにより前記課題を解決する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の外装ルーバー装置(2)の一対の移動手段(40、50)の移動を禁止及び許容する機械的に動作するロック装置(60)を備え、ロック装置は、一対の移動手段の移動が禁止された姿勢から、上横枠側及び下横枠側の移動手段(40、50)を同時に、かつ、室外側からの1つの動作で移動を許容することができることを特徴とする。
【0014】
ここで、「機械的に動作する」とは、その動作に関して、電気的、化学的作用によることがないことを意味する。これには例えばリンク機構等を挙げることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の外装ルーバー装置(2)のロック装置(60)が、上側移動手段(40)に係合離脱可能に回動する第一係止片(67)と、下側移動手段(50)に係合離脱可能に回動する第二係止片(74)と、第一係止片に軸着した該第一係止片の回動軸である第一回動軸(66)と、第二係止片に軸着した該第二係止片の回動軸である第二回動軸(73)と、一端側が第一回動軸に、他端側が第二回動軸に取り付けられ該第一回動軸又は該第二回動軸の回動を他方の該第一回動軸又は該第二回動軸に伝達する棒体(61、62、63、64、69、70、71)と、を備え、第一回動軸又は第二回動軸のいずれかを回動させることにより、第一係止片及び第二係止片のいずれもが回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、移動可能なルーバーの存在により該ルーバーを移動させることで進入口を形成することができる。このとき、外観視で表れる例えばスイング形式の開口部装置における縦枠、横枠等がないので、進入口であっても外観を損なうことのない外観ルーバー装置を提供することができる。そして該ルーバーの移動は、車輪を有する移動手段のレール内の移動によるものなので、円滑に行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、通常時においてはルーバーの移動を禁止して予期せぬ該ルーバーの移動を防止するとともに、必要なときには室外側から容易な操作でルーバーの移動を許容することができる。従って円滑に進入口を形成することができ、例えば緊急時における活動を円滑に行うことができる外装ルーバー装置を提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載のロック装置を簡易的な構成とすることができ、その動作の信頼性の向上等をはかることができる。
【0019】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0021】
図1は1つの実施形態にかかる本発明の外装ルーバー装置2、2、…が備えられた建物1の外観図である。外装ルーバー装置2、2、…はビル等の外装として建物1の外周りを形成し、建物1の意匠性を向上させている。本実施形態の外装ルーバー装置2、2、…は、建物1の各階ごとに当該階の上下の階とは異なる趣を有する外装ルーバー装置2、2、…を用いることによりさらに建物1の意匠性が向上されている。
【0022】
また、外装ルーバー装置2、2、…には進入口3、3、…が形成可能とされ、当該進入口3、3、…は屋外側から開放させることができる。図1では進入口に該当する部分を破線で示した。これにより例えば緊急時において消防隊等が屋外側から進入口3、3、…を利用して屋内へ入ることが可能となる。ここで、本発明の外装ルーバー装置2、2、…では、後述のように該外装ルーバー装置2、2、…の一部のルーバーが移動可能とされることにより進入口が形成される。従って通常の姿勢では進入口3が他の部分と区別されずに外観に優れた外装ルーバー装置2、2、…を提供することができる。外装ルーバー装置2、2、…の詳細については後で詳しく説明する。
【0023】
本実施形態では、3階以上の全ての階に本発明の外装ルーバー2、2、…が配置され、侵入口3、3、…が形成されているが、必ずしも全ての階に外装ルーバー2、2、…が配置される必要はなく、適宜建物の態様に応じて採用する階を選択することができる。外装ルーバー2、2、…が設けられていない階は、意匠性向上の目的で例えばアルミパネルが別途取り付けられる等することができる。これにより異なる意匠を有する建物とすることが可能となる。
【0024】
図2は図1に示した建物1の一部で、進入口3の周辺に注目して示した正面図である。図2でも進入口3、3、…に該当する部分に備えられたルーバー30、30は破線で示している。図2では、理解容易のため、図2中の下段に示した外装ルーバー装置2は進入口3が開放された場面を示し、その上の段に備えられた外装ルーバー装置2は通常における場面を示している。
【0025】
外装ルーバー装置2はその室外側正面視で、上横枠7と、下横枠13と、固定ルーバー20、20、…と、進入口ルーバー30、30とを備えている。上横枠7及び下横枠13は建物1の外周に左右方向を長手方向として設けられた横材である。固定ルーバー20、20、…は、上下方向を長手方向として立てられた姿勢で上横枠7及び下横枠13に渡されるように配置された長尺の型材である。そして、複数の該固定ルーバー20、20、…が所定の間隔を有して上横枠7及び下横枠13の長手方向に並列に並べられて設けられる。進入口ルーバー30、30も固定ルーバー20、20、…と同様、上下方向を長手方向として立てられた姿勢で上横枠7及び下横枠13に渡されるように配置された長尺の型材である。そして、複数の固定ルーバー20、20、…の一部が当該進入口ルーバー30、30に置き換えられる位置に設けられている。本実施形態の外装ルーバー装置2は、2本の進入口ルーバー30、30を備えている。上記各構成要素及びその取り付けについては後で詳しく説明する。
【0026】
固定ルーバー20、20については、本実施形態では上横枠7及び下横枠13に渡して該上横枠7及び下横枠13に取り付けられているが、直接建物躯体に取り付けられていてもよい。固定ルーバーは、後述のように移動させる必要がないので、その取り付け方法は特に限定されるものではない。固定ルーバーがこのように建物躯体に取り付けられる場合には、上横枠及び下横枠は、進入口ルーバーの部分にのみ設けられていればよい。
【0027】
進入口ルーバーは1つの外装ルーバー装置2に対し、進入口ルーバーの移動により人の出入りが可能な進入口が形成されれば、その本数は限定されるものではない。
【0028】
図3は、図1に示した建物1の所定の階における横断面で外装ルーバー装置2の周囲に注目して示した図である。図3では、紙面上が屋外側、紙面下が室内側を示している。このように、外装ルーバー装置2の室内側には通路5が建物1の周囲に沿って設けられている。そして該通路5を介して扉6に達することができ、ここからさらに室内側へ進入することができるように形成されている。従って、例えば緊急時において、図3に直線矢印で示したように、消防隊員等が進入口3から室内側へ進入し、通路5を通って扉6を開けて室内へ入ることができ、円滑な消防及び救助活動等をすることができる。この際進入口3に配置された進入口ルーバー30、30は、その固定を容易に解除することができるとともに、移動も容易なので当該消防及び救助活動を妨げることがない。従って本発明は、外観を損なうことなしに円滑なルーバーの固定・開放を可能とした進入口を有する外装ルーバー装置2を提供することができる。
【0029】
ここでは、外装ルーバー装置2が設置される周囲の一例として図3のような建物の構成を示したが、これに限定されるものではない。これには例えば、通路5、扉6が配置されず、進入口3から直接建物の室内へ入ることができる建物を挙げることができる。
【0030】
次に外装ルーバー装置2の各構成について詳しく説明する。図4は固定ルーバー20の中央部横断面図、図5は固定ルーバー20を含む外装ルーバー装置2の縦断面図である。図4では紙面上が屋外側、紙面下が室内側であり、図5では紙面左が屋外側、紙面右が室内側を示している。図4、及び図5からわかるように、固定ルーバー20は上下方向を長手方向とする長尺部材である。そして該固定ルーバー20は横断面において、先細の略矩形である外側部材21と、該外側部材21の室内側辺21aの左右端部から室内側に延在する片22、23と、該片22、23のそれぞれからさらに室内側に延在する片24、25と、を備えている。これにより固定ルーバー20は室内側に開口した部位を有するものとされる。ここで、片24、25は、図5からわかるように、固定ルーバー20の長手方向については上下最端部までは延在しておらず、その両端部には配置されない。また、外側部材21及び片22、23、24、25の外周部には溝20a、20aが刻設されており、固定ルーバー20の意匠性を向上させている。
【0031】
上横枠7は図5に示したように、横材8と、レール9とを有している。横材8は建物1の躯体に取り付けられ、L字型断面を有する部材である。レール9は横材8のL字型である断面の内側に配置され、略E字の断面を有する部材で、E字型断面における開口部分を下に向けるように取り付けられている。そしてE字型断面における2つの開口部分のうち屋外側に配置される開口部分には、該開口部分を形成する端部から互いに向かい合わせる方向に片9a、9aが延在する。この片9a、9aが後述するようにレール部を形成する。
【0032】
下横枠13は、上横枠7と略同一の構成を有し、その配置が水平面に対して対称とされたものである。
【0033】
かかる構成を有する固定ルーバー20と、上横枠7とは次に説明する部材を介して連結される。すなわち、レール9の下面側に設けられた板材である部材10と、該部材10の下面側に一辺を取り付けられたL字型断面を有する連結部材11と、連結部材11の他の一辺及び固定ルーバー20の辺21aに取り付けられるルーバー側部材12とにより、安定して連結される。
【0034】
一方、固定ルーバー20と、下横枠13とについても同様に、レール15の上面側に設けられた板材である部材16と、該部材16の上面側に一辺を取り付けられたL字型断面を有する連結部材17と、連結部材17の他の一辺及び固定ルーバー20の辺21aに取り付けられるルーバー側部材18とを介して、安定して連結される。
【0035】
これにより固定ルーバー20は、安定して上下横材7、13に取り付けられる。
【0036】
次に進入口ルーバー30及び該進入口ルーバー30に関連する構成について説明する。図6は進入口ルーバー30の中央部横断面図、図7は進入口ルーバー30を含む外装ルーバー装置2の縦断面図である。図6では紙面上が屋外側、紙面下が室内側であり、図7では紙面左が屋外側、紙面右が室内側を示している。図6、及び図7からわかるように、進入口ルーバー30も固定ルーバー20と同様、上下方向を長手方向とする長尺部材である。そして該進入口ルーバー30は横断面において、先細の略矩形である外側部材31と、該外側部材31の室内側辺31aの左右端部から室内側に延在する片32、33と、該片32、33のそれぞれからさらに室内側に延在する片34、35とを備えている。これにより進入口ルーバー30は室内側に開口した部位を有するものとされる。ここで、片34、35は、図7からわかるように、進入口ルーバー30の長手方向に関しては上下最端部までは延在しておらず、その両端部には配置されない。また、外側部材31及び片32、33、34、35の外周部には溝30a、30aが刻設されており、進入口ルーバー30の意匠性を向上させている。さらに進入口ルーバー30は、その内側にブラケット36を備えている。ブラケット36は、横断面がT字型であるとともに長手方向には、図7に示すように後述する連結部材37とルーバー側部材18との間に延在するように取り付けられる。
【0037】
上横枠7及び下横枠8については、固定ルーバー20における説明が該当するのでここでは省略する。
【0038】
進入口ルーバー30は、上横枠7との連結に関して、上側移動手段40と、連結部材37と、ルーバー側部材12とを備えている。それぞれについて説明する。図8及び図9は上側移動手段40に注目し、その周辺を含めて示した図で、図8は図7と同じ視点による。図9は、図8を紙面上側からみた図で上側移動手段40が見えるように適宜部材を透視して示している。従って図8では紙面左が屋外側、紙面右が室内側であり、図9では紙面上が屋外側、紙面下が室内側である。
【0039】
上側移動手段40は、略直方体であるベース41と、縦車輪42a、42b、42c、42dと、横車輪43a、43b、43c、43dと、連結部44とを備えている。ベース41は、略直方体である形状を有し、その大きさは、レール9の内側に収めることができるものである。また、べース41には、レール9に沿った方向の略中央部で屋外側に上下方向に貫通した切欠き41aが設けられている。
【0040】
縦車輪42a、42b、42c、42dはベース41の屋外側、室内側に面する側面に各2つずつ配置され、縦方向の回転が可能とされた車輪である。横車輪43a、43b、43c、43dは、ベース41の上部に配置された車輪で、水平方向の回転が可能とされている。4つの横車輪43a、43b、43c、43dのうち2つの横車輪43a、43dの一部がベース41の室内側側面よりさらに室内側に突出するように配置される。そして他の2つの横車輪43b、43cについてはその一部がベース41の屋外側側面よりさらに屋外側に突出するように配置される。
【0041】
連結部44は、縦断面においてL字型の断面を有する部材で、該L字型である断面における一方の辺の端部がベース41の下面に取り付けられるとともに、L字型断面における他方の辺は屋外側に向くように具備される。このとき、該連結部44は、レール9の開口部から該レール9外に下方及び屋外方向に延在する。また、屋外側に延在した他方の辺を形成する側の部分には上下に貫通した長孔44a、44bが設けられている。
【0042】
かかる構成を有する上側移動手段40は、図8及び図9に示したようにレール9の内側に配置され、縦車輪42a、42b、42c、42dがレール9の片9a上を転動することができるように設置される。これにより上側移動手段40はレール9内を移動可能とされる。また、横車輪43a、43b、43c、43dは当該配置により上側移動手段40の屋外、室内方向の移動を制限することができる。従って、レール9と上側移動手段40との間ではベース41が直接接触することがなく、車輪による低い抵抗で移動が可能である。
【0043】
そして進入口ルーバー30と、上横枠7とは、上記上側移動手段40と、該移動手段40の連結部44に一辺を取り付けられたL字型断面を有する連結部材37と、連結部材37の他の一辺及び進入口ルーバー30の辺31aに取り付けられるルーバー側部材12とにより連結される。
【0044】
一方、進入口ルーバー30と、下横枠13とについても同様に、下側移動手段50と、該下側移動手段50の上部に一辺を取り付けられたL字型断面を有する連結部材38と、連結部材38の他の一辺及び進入口ルーバー30の辺31aに取り付けられるルーバー側部材18とを介して連結される。
【0045】
ここで、下側移動手段50の構成は上記上側移動手段40を水平面で対称に配置するとともに、縦車輪が備えられていない以外の部分は共通であり、上記の説明が該当する。
【0046】
以上説明した構成により進入口ルーバー30は、上側移動手段40及び下側移動手段50のレール9、15に沿った移動に追随して上横枠7及び下横枠13に沿って移動可能とされる。このとき、上側及び下側移動手段40、50は、車輪以外の部分ではレール9、15と接触することがないので、長い進入口ルーバー30であっても円滑にその移動をすることができる。
【0047】
次に進入口ルーバー30の移動について説明する。図10に当該移動を説明するための模式図を示した。これは、1つの進入口ルーバー30とこれに隣り合う固定ルーバー20の横断面図で上部移動手段40を含む水平面による断面である。図10(a)は移動前(定位置)、図10(b)は移動後(進入口が開放された姿勢)を示す図で、いずれも紙面上が屋外側、紙面下が室内側である。図10(a)に示した姿勢から、進入口ルーバー30を隣り合う固定ルーバー20に近づけるように移動させると図10(b)に示したように進入側ルーバー30の紙面左側に空間が形成される。この空間が進入口となり円滑な出入りをすることができるようになる。一方、レール9内には、上側移動手段40の軌道上にストッパー45が配置されており、上側移動手段40が該ストッパー45に当接し、それ以上の移動が禁止される。これにより進入口ルーバー30が必要以上に移動することを規制し、隣の固定ルーバー20を破損することも防止できる。
【0048】
次にロック装置60について説明する。上述した進入口ルーバー30は移動可能とされることにより進入口3を形成するので、移動が可能でなければならない。しかし、通常の状態においても移動可能であると例えば風等により移動してしまうことも考えられる。そこで本発明の外装ルーバー装置2は、通常には進入口ルーバー30が移動しないようにロック装置60を備えている。以下に当該ロック装置60について説明する。
【0049】
図11は外装ルーバー装置2の室外視正面図で、ロック装置60に注目して示した図である。図12はロック装置60のうち進入口ルーバー30に隣合う固定ルーバー20の位置に備えられる部分を示した縦断面図である。図13はロック装置60のうち進入口ルーバー30の位置に備えられる部分を示した縦断面である。図12及び図13は紙面左が屋外側、紙面右が室内側である。図11〜図13を参照しつつロック装置60の構成を説明する。図11〜図13はロックされた姿勢におけるロック装置60を示している。
【0050】
ロック装置60は、連動棒61と、該連動棒61の上端から延在する棒62、63と、一端を棒63と回動可能に他端を第一回動軸66に軸着された部材64とを備えている。さらにロック装置60は、第一回動軸66の軸受け部を有するとともにレール9の屋外側端部に固定して取り付けられているレール側部材65を備えている。
【0051】
一方、連動棒61の下端には、該連動棒61の下端から延在する棒69、70と、一端を棒70と回動可能に他端を第二回動軸73に軸着された部材71とを備えている。さらにロック装置60は、第二回動軸73の軸受け部を有するとともにレール15の屋外側端部に固定して取り付けられているレール側部材72を備えている。
【0052】
ここで、上記連動棒61、棒62、63、69、70、部材64、71及びレール側部材65、72は、進入口ルーバー30に隣り合う固定ルーバー20が配置される位置に設けられている。また、第一回動軸66、第二回動軸67はそれぞれレール9、15に沿って設けられる軸体である。
【0053】
さらに、ロック装置60は、進入口ルーバー30の移動前(定位置)における位置に第一係止片67、第二係止片74及び軸受け68、68、75、75を有している。第一係止片67は上横枠7のレール9の室外側に設けられ、第一回動軸66に軸着された部材である。同様に第二係止片74は、下横枠13のレール15の室外側に設けられ、第二回動軸73に軸着された部材である。軸受け68、68、75、75はそれぞれ第一及び第二回動軸66、73の軸を受けるもので、第一及び第二係止片67、74の左右に配置されている。
【0054】
さらに、ロック装置60は操作部80を有している。操作部80は、第二回動軸73に軸着されたレバー81と、第二回動軸73の軸受けを有するとともにレール15に固定して取り付けられるレール側部材82とを備えている。
【0055】
以上のようにロック装置60は、上記の各部材により全てが連結して構成されており、連動して動作させることが可能である。次に具体的にロックされた状態及び該ロックが解除された状態について説明する。図14にロックされた姿勢及びロックが解除された姿勢のロック装置60を模式的に示した。図14(a)がロックされた姿勢、図14(b)がロックが解除された姿勢である。図14では、便宜のため、連動棒61等の固定ルーバー20に備えられた部分と、係止片67等の進入口ルーバー30に備えられた部分とを同一平面上に示した。また、図15には操作部80を示した。図15(a)がロックされた姿勢、図15(b)はロックが解除された姿勢である。図14及び図15を参照しつつロック装置60の動作について説明する。
【0056】
ロックがされている場合、ロック装置60は、図14(a)、図15(a)の姿勢である。このとき第一係止片67は水平の姿勢となるように設置され、その室内側先端が図9に示した上側移動手段40のベース41に設けられた切欠き41a内に位置し、これによりベース41は移動することができない。第二係止片74に関しても同様に下側移動手段50に係止してその移動を禁止する。このようにして、通常の状態では上下移動手段40、50の移動が制限され、進入口ルーバー30の移動ができないようにされている。
【0057】
かかる姿勢から、図15(b)に示すようにレバー81を回動させると第二回動軸73が回動し、これに連動してロック装置80の各構成部材が移動及び回動して図14(b)のような姿勢となる。具体的には、レバー81の回動により第二回動軸73が回動し、これにより第二係止片74が回動する。これと同時に連動軸61が下方に移動して第一回動軸66を回動される。そして該第一回動軸66の回動により第一係止片67も回動する。
【0058】
このように、レバー81の回動により第二回動軸73及び第一回動軸66の回動を同時に行うことができるので、これに軸着した第一及び第二係止片67、74が回動して鉛直となる。これによって第一及び第二係止片67、74は上下側移動手段40、50から離脱する。ここで、係止片67、74の回動の軌道上にあるレール9、15の部分はその回動に干渉しないように予め切り欠かれている。これによりロックが解除され進入口ルーバー30は移動可能となる。
【0059】
以上説明したロック装置80により、一度の操作で全てのロックを解除することができ、緊急時における円滑な進入口の確保をすることが可能となる。
【0060】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う外装ルーバー装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】1つの実施形態にかかる本発明の外装ルーバー装置を備えた建物の外観図である。
【図2】図1の外装ルーバー装置の進入口を含む部分に注目して示した図である。
【図3】建物の1つの階における横断面図で、外装ルーバー装置の進入口を含む部分に注目して示した図である。
【図4】固定ルーバーの横断面図である。
【図5】固定ルーバーを含む外装ルーバー装置の縦断面図である。
【図6】進入口ルーバーの横断面図である。
【図7】進入口ルーバーを含む外装ルーバー装置の縦断面図である。
【図8】上側移動手段を説明するための縦断面図である。
【図9】上側移動手段を説明するための平面図である。
【図10】進入口ルーバーの移動を模式的に示した平面図である。
【図11】ロック装置を示す室外視正面図である。
【図12】ロック装置を示す外装ルーバー装置の縦断面図である。
【図13】ロック装置を示す外装ルーバー装置の縦断面図である。
【図14】ロック装置の動作を示す図である。
【図15】ロック装置の操作手段及びその動作を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 建物
2 外装格子
3 進入口
4 通常出入口
5 通路
6 扉
7 上横枠
8 横材
9 レール
10 部材
11 連結部材
12 ルーバー側部材
13 下横枠
14 横材
15 レール
16 部材
17 連結部材
18 ルーバー側部材
20 固定ルーバー
21 外側部材
22 片
23 片
24 片
25 片
30 進入口ルーバー
31 外側部材
32 片
33 片
34 片
35 片
36 ブラケット
37 連結部材
38 連結部材
40 上側移動手段
41 ベース
41a 切欠き
42a、42b、42c、42d 縦車輪
43a、43b、43c、43d 横車輪
44 連結部
44a、44b 長孔
45 ストッパー
50 下側移動手段
60 ロック装置
61 連動棒
62 棒
63 棒
64 部材
65 レール側部材
66 軸
67 係止片
68 軸受け
69 棒
70 棒
71 部材
72 レール側部材
73 軸
74 係止片
75 軸受け
80 操作部
81 レバー
82 レール側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外周部に横方向を長手方向として設けられたレールを有する上横枠と、
前記上横枠の下方に所定の間隔を有して該上横枠に平行に設けられたレールを有する下横枠と、
前記上横枠及び前記下横枠に渡されるように縦向きに配置され、所定の間隔を有して前記上横枠及び下横枠の長手方向に並列状に配列される複数のルーバーと、
前記レール上を転動する車輪を有し、該車輪が備えられた側の一端側が該レールに沿って移動可能とされるとともに、他端側が前記複数のルーバーのうちの1つの該ルーバーに取り付けられる少なくとも一対の移動手段と、を備える外装ルーバー装置。
【請求項2】
前記一対の移動手段の移動を禁止及び許容する機械的に動作するロック装置を備え、
前記ロック装置は、前記一対の移動手段の移動が禁止された姿勢から、前記上横枠側及び下横枠側の前記移動手段を同時に、かつ、室外側からの1つの動作で前記移動を許容することができることを特徴とする請求項1に記載の外装ルーバー装置。
【請求項3】
前記ロック装置が、
前記上側移動手段に係合離脱可能に回動する第一係止片と、
前記下側移動手段に係合離脱可能に回動する第二係止片と、
前記第一係止片に軸着した該第一係止片の回動軸である第一回動軸と、
前記第二係止片に軸着した該第二係止片の回動軸である第二回動軸と、
一端側が前記第一回動軸に、他端側が前記第二回動軸に取り付けられ、該第一回動軸又は該第二回動軸の回動を他方の該第一回動軸又は該第二回動軸に伝達する棒体と、を備え、
前記第一回動軸又は前記第二回動軸のいずれかを回動させることにより、前記第一係止片及び前記第二係止片のいずれもが回動することを特徴とする請求項2に記載の外装ルーバー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate