説明

外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン

【目的】ヘッドホンの発音部(スピーカー部)と耳への押接部の間に適度な幅で設けた間隙部によりヘッドホンを装着したままでも使用者近傍の外部音を適切に聴取させる技術を提供するものである。
【構成】外耳部に押接して使用するヘッドホン9タイプのスピーカー10であって、発音部と押接部との間に離隔部材1を挿入して間隙部2を形成することで外部音声をも同意に聞き取ることが出来るようにしたことを特徴とする外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンの発音部(スピーカー部)と耳への押接部の間に適度な幅で設けた間隙部により、ヘッドホンを装着したままでも使用者近傍の外部音を適切に聴取させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般のヘッドホンは、再生する音声を外部に逃がさない事を主眼として製作されているため、ヘッドホンを装着した状態では近傍の外部音声を適切に聴取することは出来ないものとなっている。
【0003】
すなわち、既存のヘッドホンはそのスピーカーを介して再生される音声のみをクリアーに聴取することのみを目的としているもので、それ以外の外部音声は可能な限り除去することを目標として開発されてきたものである。
なお、ヘッドホンを装着したままでも外部音声を聴取させようとする先行技術としては以下の2件の文献が見出される。
【特許文献1】特開平10−174187号公報
【特許文献2】特開平08−023594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような従来一般のヘッドホンでは、その装着状態において外部音声を適切に聴取することが出来ず、使用状況によっては、非常に危険な場合がある。すなわち、ヘッドホン装着状態では周囲の音響を聴取することが困難で、危険の接近を知ることが出来ないのである。
【0005】
特許文献1,2に記載のものは、外部音声を聞き取るために別種の操作を必要としたり別種の集音マイクや電機回路を必要とするもので、とっさの場合に役立たなかったり複雑な構造を付加することで、コストアップや該部分の故障の可能性を増加させることになってしまう。
また、外部音を聴取するための特殊な操作を必要とするのであれば不測の危険音を察知することは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記したような課題を解消することに関して研究と実験を重ねて創案されたものであり、ヘッドホンの発音部(スピーカー部)と耳への押接部の間に適度な幅で設けた間隙部により、ヘッドホンを装着したままでも使用者近傍の外部音を適切に聴取させる技術を確立したものであって、具体的には以下の如くである。
【0007】
(1)外耳部に押接して使用するヘッドホンタイプのスピーカーであって、発音部と押接部との間に離隔部材を挿入して間隙部を形成することで外部音声をも同時に聞き取ることができるようにしたことを特徴とする外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。
【0008】
(2)離隔部材を移動することで間隙部の幅を調整できるようにしたことを特徴とする前記(1)項に記載の外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン
【0009】
(3)所定の音量、距離、方向とされた音源から得られる標準音をヘッドホンのスピーカーにより再生するように調整し、さらに同じ所定の音量、距離、方向の外部音源から得られる外部音を標準音と同等となるように間隙部幅を調整していることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。
【0010】
(4)ヘッドホンのスピーカーにより再生される標準音と間隙部を介して得られる外部音とが同等とされていることで、ヘッドホンのスピーカーにより聴取する音声と外部音声のどちらか一方に意識を集中するだけで任意に一方の音声をクリアーに聴取できることを特徴とする前記(1)項〜(3)項の何れか1つに記載の外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。
【発明の効果】
【0011】
(1)項に記載の発明は、外耳部に押接して使用するヘッドホンタイプのスピーカーであって、発音部と押接部との間に離隔部材を挿入して間隙部を形成することで外部音声をも同時に聞き取ることが出来るようにしたものであり、該間隙部を解してヘッドホン外部からの音声も聴取させることが可能となるものである。
【0012】
(2)項に記載の発明は、離隔部材を移動することで間隙部の幅を調整できるようにしたものであり、この幅調整によって間隙部を介して得られる外部音声の量を任意に調整することが出来るようにしたものである。
【0013】
(3)項に記載の発明は、所定の音量、距離、方向とされた音源から得られる標準音をヘッドホンのスピーカーにより再生するように調整し、さらに同じ所定の音量、距離、方向の外部音源から得られる外部音を標準音と同等となるように間隙部幅を調整しているものであり、ヘッドホンスピーカーからの音声と間隙部を介して得られる音声との各音量を同等にバランス良く得られるように調整してどちらも聴取しやすくするものである。
【0014】
(4)項に記載の発明は、ヘッドホンのスピーカーにより再生される標準音と間隙部を介して得られる外部音とが同等とされていることで、ヘッドホンのスピーカーにより聴取する音声と外部音声のどちらか一方に意識を集中するだけで任意に一方の音声をクリアーに聴取できることを(3)項に記載の発明内容によって実現するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記してきたような本発明の具体的な実施形態の若干例を添付図面を用いながら以下において説明する。
図1は、ホン発明のヘッドホン9の耳当て部分断面的構造図とそこで用いるメシュ状離隔材1の説明図である。
【0016】
本発明の技術的特徴は、ヘッドホン9のスピーカー10部分と押接される外耳部との間に敢えて間隙部(空間)2を形成するように適宜な離隔部材1を取り付けることにある。
この間隙部2の幅を適度なものに設定することで、利用者は、ヘッドホンを装着したままの状態であっても近傍の外部音を適切に聴取できることになるのである。
【0017】
つまり、図1(A)にあるように、間隙部2による空間を形成するために離隔部材1としてステンレス製のワイヤーメッシュによる籠状部材としてスピーカー10の外側に取り付けるものである。スピーカー10により再生される音声は、メッシュ部分を通して装着者の耳に通常同様に伝えられることになる。
一方、間隙部2による空間は、ヘッドホン9の外部からの音声を取り込んでこれを装着者の耳に届ける機能を果たすものである。
【0018】
どの程度の外部音声を取り込むべきかは、離隔部材1によって形成される間隙部2の幅11によって任意に調整することができる。つまり幅を狭めれば少なく、広げれば多くの外部音声を取り込むことになる。
【0019】
どの程度の幅を採用すべきかは、本発明のヘッドホン9を装着する者の聴力等にも依存するが、一般的には4mm程度の幅11を持たせることでバランス良く外部音声を取り込むことが出来ることを実験により確認している。
ただし、この幅11は、可変なものとすることが望ましく、そのための手法としては、種々の公知手段を採用すれば足りる。幅11を0とすれば構造的には、外部音声を取り込まないものとなりヘッドホン9の装着に殊更な違和感を与えることなく最大限に外部音声を取り込むためには6〜7mm程度の幅11とすることが好ましいと理解される。
【0020】
また、本発明ヘッドホン9を補聴器と併用するか否かによっても最適な幅11の数値は左右されるものと理解される。繰り返し行った実験の結果から判断すると、補聴器と併用する場合には、幅11を3mm程度とすることが好ましく、補聴器を併用しない通常の場合には、上記のように4mmから4.5mm程度が好ましい。
【0021】
ヘッドホン9に使用するイヤーパッド3としては、スポンジ製やバッフル製のものが一般的であるが、外部音声をバランス良く適切に取り込むためにはバッフル製のものが好ましいことが実験結果から判明している。
また、離隔部材1としては、上記のようにステンレス製のメッシュ材を採用することが強度及び経済性の観点から優れている。
離隔部材1としてのメッシュ材の材質としては、上記のようにステンレス製のものを採用する事が望ましいが、同等の効果を実現するものであれば材質は選ばないものである。
【0022】
図2は、本発明によるヘッドホン9の外観斜視図およびその一部の切欠説明図である。
イヤーパッド3の内側に離隔部材1を取り付けた状態であってもその外観上は従来一般のこの種のヘッドホンと殆ど相違が無いことが理解される。
【0023】
図3は、従来の一般的なヘッドホン9aについてその構造を断面図的に示すとともにその要部を一部切欠図として示したものである。すなわちマグネット4上に張られたスピーカー幕10の振動として音声が再生されるものであり、カバー7に開けられた音声透過孔8を通して装着者の耳に音声が伝えられるもので、アーム6により左右のハウジング5が連結されながら使用者の頭部に耳を覆うようにして装着されるようになっている。
【0024】
本発明において重要なことは、ヘッドホン9のスピーカー10により再生される音声と空隙部2から取り込まれる外部音声とが標準条件において同等の音量となるようにそのバランスを調整されていることである。
すなわち、以下のような条件を設定してこれを満足すべく実験を重ねて適正な構成を見出したものである。
【0025】
「本発明のヘッドホン9が満足すべき条件設定」:
(1)所定の音量、距離、方向にある音源から得られる音声を標準音量と規定し、これがヘッドホン9のスピーカー10により再生されるように調整する。
(2)上記と同じ所定の音量、距離、方向にある音源からの外部音声を標準音量と同等の音量として間隙部2を介して取り込めるように間隙部幅11を調整する。
(3)このようにして得られた間隙部幅11を標準幅11aとして規定する。
【0026】
例えば、音源として、1mの距離を置いて正対する相手が普通の声量で話しかける際に得られる音量を標準音量とし、これが本発明のヘッドホン9により再生されるように調整する。
【0027】
同条件の音源から得られる音声を、ヘッドホン9を装着した使用者が上記標準音量と同じ音量として取得できるように間隙幅11を調整するために実験を重ねた結果、最終的に得られた標準幅11aが4mm前後であることは前記の通りである。
【0028】
このように調整された本発明のヘッドホン9を装着した状態で標準音量による音声を、スピーカー10を介して取得しながら、標準音量相当の外部音声を取得すると両者は略同等の音量としてヘッドホン9の装着者に得られることになる。これはあたかも室内で話し声程度のバックグラウンドミュージックを流しながら話相手と通常の会話を交わしている場合と同様であり、両者は互いに特殊な障害となることなく聴取することが可能である。
【0029】
どちらかの音声のみをよりクリアーに聴取したい場合には、その一方の音声に対して意識を集中するだけで他方の音声は略意味のある音声情報としては取得されなくなる。これは両者の音量が略同等となるようにバランスを調整されて取得されるからであり、仮に一方の音声が他方よりも明らかに大きい場合に意識の集中切換えによってどちらか一方の音声のみをよりクリアーに聴取すると言うことは非常に困難となる。
【0030】
このように本発明においては、ヘッドホン9により取得される音声と外部音声とを略同等にバランスさせて取得させることが最も重要な技術的ポイントであるが、加えて外部音声をバランスよく取得させることで、ヘッドホン装着に伴う閉塞感(密閉感)からも装着者を解放することが理解された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明してきたような本発明によれば、ヘッドホンを装着中であっても周囲の外部音声を適切に聴取することが可能となり、例えば、日常生活においてヘッドホンを装着したままであっても適時に周囲からの音声情報を取得することが可能となり、緊急事態などを、安全に回避することが出来るようになる。
【0032】
また、ヘッドホンにより取得する音声情報と周辺の外部音声情報とをバランスよく取得させることで、どちらか一方の音声情報を単に意識の集中を切り替えるだけでよりクリアーに聴取することが可能となるものであって、補聴器等との併用も可能であり、音声情報をより多様な形態で取得する上で非常に有用な機器を提供するものであるから、産業上の利用可能性において優れた発明であると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のヘッドホン9の耳当て部分断面的構造図とそこで用いるメッシュ離隔材1の説明図である。
【図2】本発明によるヘッドホン9の外観斜視図およびその一部の切欠説明図である。
【図3】従来の一般的なヘッドホン9aについてその構造を断面図的に示すと共にその要部を一部切欠図として示したものである。
【符号の説明】
【0034】
1離隔部材
2間隙部
3イヤーパッド
4マグネット
5ハウジング
6アーム
7カバー
8音声透過孔
9本発明のヘッドホン
9a従来技術によるヘッドホン
10スピーカー部
11間隙幅
11a標準幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳部に押接して使用するヘッドホンタイプのスピーカーであって、発音部と押接部との間に離隔部材を挿入して間隙部を形成することで外部音声をも同時に聞き取れることが出きるようにしたことを特徴とする外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。
【請求項2】
離隔部材を移動することで間隙部の幅を調整できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。
【請求項3】
所定の音量、距離、方向の音源より得られる標準音量をヘッドホンのスピーカーにより再生するように調整し、さらに同じ所定音量、距離、方向の外部音源から得られる外部音量を標準音量と同等となるように間隙部幅を調整していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。
【請求項4】
ヘッドホンのスピーカーにより再生される標準音量と間隙部を介して得られる外部音量とが同等とされていることで、ヘッドホンのスピーカーにより聴取する音声と外部音声のどちらか一方に意識を集中するだけで任意に一方の音声をクリアーに聴取できることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の外部音をもクリアーに聴取できる構造とされたヘッドホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−340334(P2006−340334A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192759(P2005−192759)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(501407621)
【Fターム(参考)】