多タンパク質複合体のクローニング及び発現のための核酸
本発明は、少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼによっても制限酵素によっても切断され得ないように、HE及びXが選択される、核酸に関する。本発明の別の主題は、本発明の核酸を含むベクター、前記核酸及び/又は前記ベクターを含む宿主細胞、前記ベクター及び宿主細胞を作製して多タンパク質複合体をクローニング及び/又は発現させるためのキット、複数の発現カセットを含むベクターを製造するための方法、並びに多タンパク質複合体を製造するための方法に関する。本発明は、多数のシングルベクター(「ベクター単位」)を融合ベクターに組み立てる方法、及びそのような多数のベクター単位を含む融合ベクターをシングルベクターに解体する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素によって切断され得ないように、HE及びXが選択される、核酸に関する。本発明の別の主題は、本発明の核酸を含むベクター、前記核酸及び/又は前記ベクターを含む宿主細胞、前記ベクター及び宿主細胞を作製して多タンパク質複合体をクローニング及び/又は発現させるためのキット、複数の発現カセットを含むベクターを製造するための方法、並びに多タンパク質複合体を製造するための方法に関する。本発明は、複数のシングルベクター(「ベクター単位」)を融合ベクターに組み立てる方法、及びそのような複数のベクター単位を含む融合ベクターをより低次の融合ベクター及び/又はシングルベクターに解体する方法にも関する。本発明は、複数のベクター単位を含む融合ベクターにも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内の複数の重要なプロセスは、高度な真核生物では10以上のサブユニットを含む、連動的な複数の分子装置へと会合するタンパク質によって制御される(Rual, J.F. et al. Nature 437, 1173-1178 (2005); Charbonnier, S., Gallego, O. and Gavin, A.C. Biotechnol. Annu. Rev. 14, 1-28 (2008))。これは、現在、生理的に関連する分子装置を解明することを目的とする機能及び構造研究に大きな影響を与えている。したがって、複合体の研究は、現代生物学において、次第に肝要なものとなっている。しかしながら、複数のマルチサブユニット複合体が豊富でないこと及び不均一であることが多いという性質によって、起源から抽出することが妨げられる場合が多い。
【0003】
組換え技術による生産方法は、確かに、生命科学研究に非常に大きな影響を与えた。特に、発現宿主として大腸菌は一般的である。タンパク質の機能分析及びそれらの分子構造の解明の成功は、切り詰め、変異、及び精製タグまたは特定のプロモーター/ターミネーター因子を用いた伸長などの変化を導入することに決定的に依存する場合が多い。実験のスループットに関する次の必要条件として、単独のオープンリーディングフレーム(ORF)を多様化させることは、すでに注目に値する。特に、構造ゲノミクスコンソーシアムは、サブクローニングのルーチンの標準化及びこれの自動化の実行を求めている。複数のORFを迅速に多様化してマルチサブユニット複合体に組み立てる必要がある際の作業負荷の指数関数的な増大がやっかいであり、未解決の課題である。
【0004】
近年、真核生物及び原核生物の宿主において複数の遺伝子の発現のための複数の系が導入されている。例えば、Fitzgerald et al. (2006) Nat. Methods 3, 1021-1032; Tan et al. (2005) Protein Expr. Purif. 40, 385-395 (2005); Tolia, N.H. and Joshua-Tor (2006). Nat. Methods 3, 55-64; Chanda et al. (2006) Protein Expr. Purif. 47, 217-224; Scheich et al. (2007). Nucleic Acids Res. 35, e43 (2007)を参照のこと。真核生物における発現系、特に、バキュロウイルス/昆虫細胞発現(上記のFitzgerald et al. (2006))の大きな改善にもかかわらず、低コスト及び複数の特殊化した発現株が得られることなどの複数のもっともな理由のために、大半の研究所において未だに大腸菌が主要な手段のままである。現在の大腸菌の共発現系は、本質的には、単独の発現カセット(上記Tolia et al. (2006); 上記Chanda et al. (2006))又は同一のプロモーターの制御下で複数の遺伝子を構成するプロポリシストロン(上記Tan et al. (2005))のいずれかとして、コードする遺伝子の連続的な主には従来どおりの(すなわち、制限/連結)サブクローニングに依存する。これは、特に構造分子生物学に典型的に必要とされるスループットにおいて、複数のサブユニットを有するタンパク質複合体の製造のためのこれらの共発現技術の適用性を大きく制限する。
【0005】
そのような大部分が連続的な(一度に一遺伝子)構築の主な障害は、多タンパク質複合体が一度製造、精製、及び特性決定されると、発現実験を迅速に修正することに関して、柔軟性が本質的にないことに起因する。しかしながら、タンパク質サブユニットの変化を含む、そのような修正は、現代の機能及び構造研究において必須である。
【0006】
上記Fitzgerald et al. (2006)及びWO-A-2005/085456は、発現カセットへの複数の遺伝子の反復性クローニングを可能にする特別に設計されたペアの制限酵素部位によって、2つの発現カセットがヘッドトゥーヘッド、ヘッドトゥーテール、又はテールトゥテールの配向で隣接する、いわゆるマルチプリケーションモジュール(multiplication module)を有するポリヌクレオチドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO-A-2005/085456
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Rual, J.F. et al. Nature 437, 1173-1178 (2005)
【非特許文献2】Charbonnier, S., Gallego, O. and Gavin, A.C. Biotechnol. Annu. Rev. 14, 1-28 (2008)
【非特許文献3】Fitzgerald et al. (2006) Nat. Methods 3, 1021-1032
【非特許文献4】Tan et al. (2005) Protein Expr. Purif. 40, 385-395 (2005)
【非特許文献5】Tolia, N.H. and Joshua-Tor (2006). Nat. Methods 3, 55-64
【非特許文献6】Chanda et al. (2006) Protein Expr. Purif. 47, 217-224
【非特許文献7】Scheich et al. (2007). Nucleic Acids Res. 35, e43 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、従来の構築物の欠点からして、本発明が解決しようとする技術的課題は、多タンパク質複合体のクローニング及び発現のための用途の広い系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の技術的課題を解決するための手段は、特許請求の範囲に記載の発明の実施態様を提供することによって達成される。
【0011】
特に、本発明は、少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸(又はポリヌクレオチド)であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素によって切断され得ないように、HE及びXが選択される、核酸(又はポリヌクレオチド)に関する。
【0012】
本発明によれば、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、かつ、DNA、RNA、又は1つ若しくは複数のヌクレオチドアナログを含む種を意味する。本発明に係る好ましい核酸又はポリヌクレオチドはDNAであり、最も好ましくは二本鎖(ds)DNAである。
【0013】
好ましくは、本発明の核酸は、以下の配列要素を有する:
HE−Prom−MCS−Term−X又はHE−Prom−MCS−X
ここで、
Promはプロモーターであり;
MCSはマルチプルクローニングサイトであり;及び
Termはターミネーターである。
【0014】
上記の配置は、以下においては、多くの場合に「マルチプルインテグレーションエレメント」(MIE)と称する。
【0015】
本発明において有用なプロモーターは、原核生物、ウイルス、哺乳動物、又は昆虫細胞起源のプロモーター又はそれらの組合せを含むが、それらに限らない。同様に、本発明に係る核酸において有用なターミネーターは、原核生物、ウイルス、哺乳動物、昆虫細胞起源のターミネーター又はそれらの組合せを含むが、それらに限らない。本発明に係る用語「マルチプルクローニングサイト」は、上述の部位Xとは異なる少なくとも1つの制限酵素部位を有する配列を意味する。本発明に係るMCSは、例えば、任意の市販のプラスミドのマルチプルクローニングサイトに由来してよい。
【0016】
好ましい原核生物のプロモーターは、Lac、T7、アラビノース、及びtrcプロモーターである。本発明において有用な別のプロモーターは、ウイルスプロモーター、特に、バキュロウイルスプロモーター、例えば、polh、p10、及びpXIV極後期(very late)バキュロウイルスプロモーター、vp39バキュロウイルス後期プロモーター、vp39polhバキュロウイルス後期/極後期ハイブリッドプロモーター、PCAP/polh、pcna、etl、p35、egt、da26バキュロウイルス早期プロモーターである。本発明において有用な別のプロモーターは、CMV、SV40、UbC、EF−1α、RSVLTR、MT、PDS47、Ac5、PGAL、及びPADHなどのプロモーター配列である。
【0017】
本発明において有用なターミネーター配列の例は、T7、SV40、HSVtk、又はBGHである。
【0018】
本発明に係るマルチプルクローニングサイトは、少なくとも1つの制限酵素部位(X以外)に加えて、1つ又は複数の、特に1から4の相同領域を含んでよい。MCSに含まれる制限酵素部位は、当業者が容易に選択することができ、そのような部位及びその認識配列の例は、New England Biolabs, Ipswich, MA, USAの最新の製品カタログから得ることができる。
【0019】
本発明に係る「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、例えば12から40塩基対又はそれ以上の、好ましくは20から30塩基対の、大きな等長(isometric)認識部位を有する二本鎖DNAに特異的なDNアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼに関する最近の概説については、Stoddard B.L. (2005) Q. Rev. Biophys. 38, 49-95を参照のこと。HE認識配列の長さのために、本発明に係る構築物に挿入される遺伝子又はポリ遺伝子のヌクレオチド配列(又は任意の起源の任意の他のヌクレオチド配列)において、対応する部位が生じる可能性が非常に低く、そのことが、このストラテジーを、より大きく及び/又は複数の興味のある遺伝子(「GOI」)をクローニングするのに特に有用なものとする。
【0020】
本発明に係る好ましいHE部位は、各ホーミングエンドヌクレアーゼによって切断されると4ヌクレオチドの突出を生じるホーミングエンドヌクレアーゼの認識配列である。
【0021】
そのようなHE部位の例は、PI−SceI、I−CeuI、I−PpoI、I−HmuI I−CreI、I−DmoI、PI−PfuI及びI−MsoI、PI−PspI、I−SceI、他のLAGLIDAGグループのメンバー及びそのバリアント、SegH及びHef又は他のGIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼ、I−ApeII、I−AniI、チトクロームbmRNAマチュラーゼbl3、PI−TliI及びPI−TfuII、並びにPI−ThyIなどの認識配列を含むが、それらに限らない。上記Stoddard(2005)を参照のこと。
【0022】
4bp突出を生じるHE部位(例は上に記載)と適合性がある本発明に係る好ましい制限酵素部位Xは、BstXI部位である。
【0023】
対応する酵素は、市販のものであり、例えば、New England Biolabs Inc., Ipswich, MA, USAから市販されているものである。
【0024】
原核生物プロモーター/ターミネーターを含む本発明の特に好ましいMIEは、以下の構造:
I−Ceul − T7 Prom − MCS − T7 Term − BstXI
PI−SceI − T7 Prom − MCS − T7 Term − BstXI
の1つを有する。
【0025】
バキュロウイルスプロモーターを含む本発明の特に好ましいMIEは、以下の構造:
I−CEUI − p10 − MCS − BstXI
PI−SceI − p10 − MCS − BstXI
I−CEUI − polh − MCS − BstXI
PI−SceI − polh − MCS − BstXI
の1つを有する。
【0026】
本発明に係る核酸の特に好ましい例は、配列番号1(詳細なマップは、図13A及びBを参照のこと;配列番号1に対するアンチセンス配列は配列番号54に記載する)、配列番号50(制限マップ:図42)、配列番号51(制限マップ:図43)、配列番号52(制限マップ:図44)、又は配列番号53(制限マップ:図45)の配列を含む。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、上述の核酸は、ベクター又は宿主細胞に核酸を組み込むための少なくとも1つの部位を追加で含む。組込み部位は、一過性の組込み又はゲノムへの組込みを可能にし得る。
【0028】
ベクター、特にプラスミド又はウイルスへの組込みに関しては、組込み部位は、好ましくは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、自律性パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ラジノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、レンチウイルス、セムリキ森林ウイルス、又はバキュロウイルスに核酸を組み込むことに適合性がある。
【0029】
本発明の核酸に組み込まれてよい特に好ましい組込み部位は、Tn7、λ−インテグラーゼ特異的結合部位、及び部位特異的リコンビナーゼ(SSR)、特にLoxP部位又はFLPリコンビナーゼ特異的組換え(FRT)部位のトランスポゾンエレメントから選択することができる。本発明の別の好ましい核酸の組込みメカニズムは、lef2−603/Orf1629などの特定の相同組換え配列である。
【0030】
本発明の別の好ましい実施態様では、本明細書に記載の核酸は、他の有害物質に対して選択するための、1つ又は複数の耐性マーカーを追加で含む。本発明において有用な耐性マーカーの好ましい例は、抗生物質、例えば、アンピシリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、及びカナマイシン耐性マーカーを含むが、それらに限らない。
【0031】
本発明の核酸は、好ましくは上述のMIEに組み込まれる、1つ又は複数のリボソーム結合部位(RBS)も含んでよい。
【0032】
本発明の別の主題は、上述の核酸を含むベクターに関する。
【0033】
本発明の好ましいベクターは、プラスミド、発現ベクター、トランスファーベクター、より好ましくは真核生物の遺伝子トランスファーベクター、一過性又はウイルスベクター媒介遺伝子トランスファーベクターである。本発明に係る他のベクターは、ウイルス、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、自律性パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ラジノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、レンチウイルス、セムリキ森林ウイルス、及びバキュロウイルスである。
【0034】
(例えば、トランスファーベクターなどの適切なプラスミド上に存在する)本発明に係る核酸の組込みに適切なバキュロウイルスベクターも、本発明の主題であり、好ましくは、部位特異的組込み部位、例えば、Tn7結合部位(有効な組込みの青色/白色スクリーニングのためのlacZ遺伝子に組み込まれてよい)及び/又はLoxP部位を含む。本発明に係る別の好ましいバキュロウイルスは、(上述の組込み部位に対して代替的又は追加的に)相同組換えのための配列に隣接した、宿主のための有毒物質を発現するための遺伝子を含む。有毒物質を発現する遺伝子の例は、ジフテリア毒素A遺伝子である。相同組換えのための配列の好ましいペアは、例えば、lsf2−603/Orf1629である。バキュロウイルスは、上述のとおり、蛍光マーカー、例えば、GFP及びYFPなども含むマーカー遺伝子も含むことができる。本発明の対応するバキュロウイルスの特定の例は、図38、39、40、及び41の各々に記載のスキームで開示しているEMBac、EMBAcY、EMBac_Direct、及びEMBacY_Directの構造を有する。
【0035】
原核宿主細胞で有用なベクターは、好ましくは上で例示したマーカー遺伝子(その1つ又は複数)に加えて、複製起点(ori)を含む。例えば、BR322、ColE1、及び条件複製起点、例えば、OriV及びR6Kγ(後者が好ましい条件複製起点であり、本願のベクターの増殖を原核生物宿主内のpir遺伝子に依存させる)を含む。OriVは、本願のベクターの増殖を原核生物宿主のtrfA遺伝子に依存させる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明の核酸及び/又は本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0037】
前記宿主細胞は、原核生物又は真核生物であってよい。真核生物宿主細胞は、例えば、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞であってよい。ヒト宿主細胞の例は、HeLa、Huh7、HEK293、HepG2、KATO−III、IMR32、MT−2、膵臓β細胞、ケラチノサイト、骨髄線維芽細胞、CHP212、初代神経細胞、W12、SK−N−MC、Saos−2、WI38、初代肝細胞、FLC4、143TK、DLD−1、胚性肺線維芽細胞、初代包皮線維芽細胞、MRC5、及びMG63細胞を含むが、それらに限らない。本発明の別の好ましい宿主細胞は、ブタ細胞、好ましくは、CPK、FS−13、PK−15細胞、ウシ細胞、好ましくは、MDB、BT細胞、ウシ細胞、例えば、FLL−YFT細胞である。本発明において有用な他の真核生物細胞は、線虫、C.elegans細胞である。別の真核生物細胞は、酵母細胞、例えば、S.cerevisiae、S.pombe、C.albicans、及びP.pastorisを含む。さらに、本発明は、昆虫細胞、例えば、S.frugiperda由来の細胞、より好ましくはSf9、Sf21、発現Sf+、ハイファイブH5細胞、及びD.melanogaster由来の細胞、特に、S2 シュナイダー細胞を含む宿主細胞にも関する。別の宿主細胞は、Dictyostelium discoideum細胞及び寄生生物、例えば、Leishmania spec由来の細胞を含む。
【0038】
本発明に係る原核生物宿主は、細菌、特に、大腸菌、例えば、TOP10、DH5α、HB101などの市販の株を含む。
【0039】
当業者は、本発明に係る核酸要素の適切な宿主への適当な増殖及び/又は移動のための適当なベクター構築物/宿主細胞のペアを容易に選択することができる。適当な宿主細胞に適当なベクター要素及びベクターを導入するための特定の方法が、同様に、当該技術分野で既知であり、Ausubel et al. (ed.) Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, USAの最新版で確認することができる。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、上述のベクターは、部位特異的リコンビナーゼ(SSR)のための部位、好ましくはCre−lox特異的組換えのための1つ又は複数のLoxP部位を追加で含む。別の好ましい実施態様では、本発明に係るベクターは、トランスポゾンエレメント、好ましくはTn結合部位を含む。
【0041】
上述の結合部位がマーカー遺伝子内に位置することも好ましい。この配置は、転位によって結合部位に成功裡に組み込まれた配列を選択することを可能にする。好ましい実施態様によれば、そのようなマーカー遺伝子は、ルシフェラーゼ、β−GAL、CAT、蛍光コードタンパク質遺伝子、好ましくは、GFP、BFP、YFP、CFP、及びそれらのバリアント、並びにlacZα遺伝子から選択される。
【0042】
本発明に係るベクターの特に好ましい実施態様は、配列番号2から配列番号17からなる群から選択される配列を有する。
【0043】
本発明の別の好ましい実施態様は、上述の本発明の核酸の配列要素の2以上を含み、かつ、場合によって部位特異的リコンビナーゼのための2以上の組換え配列、例えば、2から6、より好ましくは2、3、又は4のそのような認識配列、好ましくは2から6、特に好ましくは1から4のloxP部位を追加で含むベクターである。
【0044】
そのようなベクターの特に好ましい例は、配列番号18の配列を有する。
【0045】
本発明のベクターが2以上の組換え配列を含む場合は、これらが同一又は異なる部位特異的リコンビナーゼの認識配列であり得ると解されるべきである。
【0046】
本発明の別の主題は、上述の少なくとも1つのベクターを少なくとも前記ベクターの増殖に適切な細胞とともに含む、多タンパク質複合体のクローニング及び/又は発現のためのキットである。好ましい宿主細胞は上述のとおりである。好ましくは、本発明の当該態様のキットは部位特異的リコンビナーゼ、例えば、Creを追加で含む。
【0047】
本発明は、
(a)本発明の第一のベクターのHE部位とX部位との間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(b)本明細書に記載の第二のベクターのHE部位とX部位との間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(c)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼ及びX部位に特異的な制限酵素を使用して第一のベクターを切断し、切断したHE部位及びX部位に隣接する少なくとも1つの遺伝子を含む断片を得る工程;
(d)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼを使用して第二のベクターを切断する工程;
(e)工程(d)で得た切断された第二のベクターに工程(c)で得た断片を連結して、第三のベクターを得る工程;及び、場合によって、
(f)1つ又は複数のベクターを使用して工程(a)から(e)を繰り返して、複数の遺伝子を含むベクターを得る工程
を含む、複数の発現カセットを含むベクターの製造方法にも関する。
【0048】
本発明の好ましい実施態様によれば、当業者に既知の方法によって、例えば、MCS内の適合する部位に制限酵素消化/連結によって、又は好ましくは場合によって存在する相同領域を使用する、好ましくはSLIC法を使用する、組換え技術によって、本発明のベクターに1つ又は複数の遺伝子を挿入することができる。2以上の遺伝子を挿入する場合は、これらは単独の発現カセットとして提供され得る。しかしながら、(複数又は多数の)遺伝子が1つのORF内にポリジーンとして存在できることは、当業者には明らかである。
【0049】
本発明は、
(i)上述の方法によって複数の発現カセットを含むベクターを生産する工程;
(ii)上述の宿主細胞などの適切な宿主細胞に工程(i)で得たベクターを導入する工程;及び
(iii)前記ベクターに存在する遺伝子の同時発現を可能にする条件下で前記宿主細胞をインキュベートする工程
を含む、多タンパク質複合体の製造方法にも関する。
【0050】
(上で例示した)適切な宿主細胞にベクターを導入する工程は、当業者に既知の方法によって実施する(例えば、上記Ausubel et al. (ed.)を参照のこと)。
【0051】
本願の別の態様は、n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含み、nが少なくとも3の整数である、融合ベクターである。
【0052】
本発明の当該態様に係る「シングルベクター」又は「ベクター単位」は、一般的には、外来遺伝子要素(特に、1つ又は複数の興味ある遺伝子)の宿主細胞への組込みに適切であり、かつ、増幅に適する核酸である。典型例は、プラスミド、バクミド、ウイルス、ラムダベクター、コスミドなどである。1つ又は複数の上記ベクターの分類の好ましい例は、HE/X部位を含むベクターに関して、既により詳細に概説しており、その定義は本発明の当該態様についても有効である。
【0053】
本発明に係る融合ベクターに組み立てられる(又はそのような融合ベクターから解体される;組み立て/解体方法については下記参照のこと)ベクター単位の数は、一般的には、対応する数の耐性マーカーが得られる限り、特に制限されないことは、当業者に明らかである。実施上の観点からすれば、本発明におけるnの数値は、好ましくは、3、4、5、又は6(若しくはそれ以上であってよい)であり、宿主で増殖し得る構築物のサイズに部分的には依存する。
【0054】
さらに、本発明は、
n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含む、融合ベクター;及び/又は
部位特異的組換え部位、及び他のベクターの耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を各々が含むn個のベクター(ベクター単位)であって
nが少なくとも3の整数である、融合ベクター及び/又はn個のベクター(ベクター単位);並びに
前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼ、及び/又は前記融合ベクター及び/又は前記n個のベクターの増殖のための細胞
を含む、n個のベクターの組み立て及び/又は解体のためのキットにも関する。
【0055】
上記融合ベクター及びベクターキットの好ましい実施態様は、各々、LoxP部位及びCreを対応するリコンビナーゼ酵素として含む、融合ベクター及び/又はベクター単位であるか又はそれらを含む。部位特異的組換え部位/リコンビナーゼの他の例は、FRT部位及び対応する酵素(FLPリコンビナーゼ)である。
【0056】
好ましい実施態様によれば、上記n個のベクター又はベクター単位は、各々、Prom−MCS−Term又はProm−MCS−Term(定義は上述のとおりであり、好ましくは上述のHE及び制限酵素部位Xの間にある)の形態の1つ又は複数の発現カセットを含む。さらに、好ましくはベクター又はベクター単位に存在する発現カセットは、各々、1つ又は複数の興味ある遺伝子(「GOI」)を含むことが好ましい。
【0057】
本発明の当該態様において有用な耐性マーカー遺伝子(又は単に「耐性マーカー」)の例は、上述のとおりである。
【0058】
上述の融合ベクターの特に好ましい例は、以下により詳細に記載するpACKS(配列番号18)ベクターである。
【0059】
ベクター単位の好ましい例は、全て原核生物宿主における発現に適応する、pACE(配列番号2)、pACE2(配列番号3)、pDC(配列番号4)、pDK(配列番号5)、及びpDS(配列番号6)、並びにバキュロウイルスを使用する昆虫細胞における発現に合わせて作られた、pIDC(配列番号7)、pIDK(配列番号8)、pIDS(配列番号9)、pACEBac1(配列番号10)、pACEBac2(配列番号11)、pACEBac3(配列番号12)、pACEBac4(配列番号13)、pOmniBac1(配列番号14)、pOmniBac2(配列番号15)、pOmniBac3(配列番号16)、及びpOmniBac4(配列番号17)である。ベクター単位の上述の好ましい例は、以下により詳細に記載する。
【0060】
さらに、ベクター単位(及び/又は上記キットの個々のベクター)の少なくとも1つが、さらに、耐性マーカー遺伝子とは異なる別の選択マーカーを含むことが好ましい。1つの例は、個々のベクターの増殖を宿主の特定の遺伝的背景に依存させる、条件複製起点である。1つの例は、ベクターの増殖をpir遺伝子に依存させる、R6kγ由来(又はである)Oriである。
【0061】
本発明は、さらに、1から(n−1)個の融合ベクターにn個のベクター単位を組み立てるための方法であって、前記融合ベクターが2からn個の前記ベクター単位を含み、
(1)部位特異的組換え部位及び他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを各々が含むn個のベクター単位を、前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼに接触させて、2からn個の前記ベクター単位を含むベクター単位の融合体の混合物を得る工程、
(2)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;
(3)2からn個のベクター単位を含む所望の融合ベクターを選択するために抗生物質の適当な組み合わせの存在下で形質転換した細胞の1つ又は複数のサンプルを培養する工程、
(4)抗生物質の各組み合わせの存在下で生存可能である、形質転換した細胞のn個のシングルコロニーを工程(3)で得た培養物から得る工程;並びに
(5)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下において、前記n個のシングルコロニーの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが上述のとおりである、方法を提供する。
【0062】
2以上の所望のベクター融合体を選択することが望ましい場合は、上記工程(2)で得られる形質転換された細胞は、適当な数のアリコート又はサンプルに分割する。例えば、全ての可能な(n!−n)個のベクター融合体を選択する(上記の方法のイダクト(educt)としてシングルベクター単位が選択されない)ことが望ましい場合には、形質転換された宿主細胞は、(n!−n)個のアリコート(又はサンプル)に分割し、各アリコートを適当な抗生物質の存在下で培養する。
【0063】
本発明では、本明細書で使用する用語「アリコート」は、必ずしも、複数のアリコートが同じ容量又は同じ数の細胞を有することを意味しない。むしろ、複数のアリコート又はサンプルの各々は、同一又は異なる容量又は数の細胞を有してよい。
【0064】
形質転換された細胞又はアリコート(若しくはサンプル)を「培養する」という用語は、宿主細胞の生存のための適当な条件下において形質転換された細胞を培養することを意味する。例えば、形質転換された細胞を使用して一定(例えば、より大きな)容量の液体培養培地に播種してよく、又はアリコートを適当な固体培地に蒔いてよい。
【0065】
上述のベクターの組み立て方法を使用して2以上の所望のベクター融合体を選択する場合、例えば、全ての可能な融合体が望まれる場合には、選択工程(3)は、好ましくは、96ウェルプレートなどの典型的なウェルプレートフォーマットを使用して実施する。
【0066】
本発明のベクター組み立て方法の好ましい実施態様によれば、(n−1)個の融合されるベクター単位の各々が、耐性マーカーとは異なる別の選択可能なマーカーを含む。そのようなベクター単位は、以下において、「ドナー」ベクターと称する。これは、前記ベクター単位が、耐性マーカーとは異なる選択可能な前記マーカーを含まないベクター単位(以下において「アクセプター」と称する)に融合する際に、ドナーとアクセプターとの間の融合体において、前記ドナーが、ドナー−ドナー融合体ではなく、アクセプター−ドナー融合体の増殖のみを可能にする表現型を有する宿主細胞を提供するからである。そのような選択可能なマーカーの好ましい例は、ドナーの増殖を特定の遺伝的背景に依存させる条件複製起点である。そのような選択可能なマーカーの具体例は、大腸菌などの細菌宿主において、ドナーの増殖をpir遺伝子の存在に依存させるR6kγ Oriである。この場合において、上述のベクター組み立て方法の工程(i)で得られる混合物で、pir遺伝子を有しない細菌細胞を形質転換する(そのような大腸菌株はTOP10、DH5α、HB101、又は他の市販のpir−細胞である)。
【0067】
上述のベクター組み立て方法の好ましい実施態様は、以下により詳細に記載する(ACEMBLシステム;C.2.1の欄)。
【0068】
上述の方法の好ましい実施態様によれば、n個のベクター単位は、各々、(上述のとおり、好ましくは上述のHEと制限酵素部位Xとの間の)Prom−MCS−TermまたはProm−MCSの形態の1つ又は複数の発現カセットを含む。さらに、好ましくはベクター又はベクター単位に存在する発現カセットの各々が、適切な宿主で発現する1つ又は複数の興味のある遺伝子(「GOI」)を含むことが好ましい。
【0069】
本発明に係る融合ベクターを提供するための他の方法は、第一の工程において、2つのベクター単位の組換えを実施し、宿主細胞を形質転換して、2種の抗生物質の存在下で宿主細胞を培養する、連続的な組み立て方法である。2回目は、生存クローンからの二重融合ベクター(n=2)の単離、各リコンビナーゼの存在下における第三のベクター単位との接触、宿主細胞の形質転換、及び三重融合ベクター(n=3)に存在する3つの耐性マーカーについての選択などを、所望の多重融合ベクターが得られるまで含む。
【0070】
言うまでも無く、(例えば、n=3、4、又は5の融合ベクターを組み立てるために)上述の工程(1)から(5)のベクター組み立て方法を使用し、次いで、上の段落に記載したとおりに1つ又は複数のベクター単位を連続的に添加する複合アプローチによって、本発明に係る融合ベクター、特に、より高次(すなわち、n>3)の融合ベクターを提供することもできる。
【0071】
融合ベクターを組み立てるための上述の方法の基礎をなす原理、すなわち、組換え反応におけるイダクトと生成物との平衡は、融合ベクターの解体にも等しく適用することができる。
【0072】
したがって、本発明は、さらに、2から(n−1)個のベクター単位を含む融合ベクターからなる群から選択される1つ又は複数の所望の融合ベクターに、又は1つ又は複数の所望のシングルベクター単位に、n個のベクター単位を含む融合ベクターを解体する方法であって、n個のベクター単位を含む前記融合ベクターにおいて、前記n個のベクター単位がn個の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられており、かつ、各ベクター単位が他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを含み、
(A)2から(n−1)個の前記ベクター単位を含む融合ベクターとシングルベクター単位との混合物を産生するために、n個のベクター単位を含む融合ベクターを前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼと接触させる工程;
(B)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;及び
(C)(C1)2から(n−1)個のベクター単位を含む1つ又は複数の所望の融合ベクターを選択するための抗生物質の適当な組み合わせの存在下において、及び/又は(C2)所望のシングルベクター単位を選択するための単独の適当な抗生物質の存在下において、形質転換した細胞の1つ又は複数のサンプルを培養する工程;
(D)各抗生物質又は抗生物質の組み合わせの各々の存在下で生存可能である、形質転換した細胞のサンプルから形質転換した細胞のn個のシングルクローンを得る工程;及び
(E)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下で前記n個のシングルクローンの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが上述のとおりである、方法を提供する。
【0073】
上記融合ベクターの解体方法を使用してシングルベクターを選択することが望ましい場合には、2から(n−1)個のベクター単位を含む適当な融合ベクターを選択するために、工程(A)、(B)、及び(C1)から(E)を実施し、次いで、前記選択した2から(n−1)個のベクター単位を含む融合ベクターを使用して工程(A)、(B)、及び(C2)から(E)を実施することが好ましい。例えばリコンビナーゼ反応平衡におけるシングルベクター単位の存在が選択工程(C2)から(E)によって前記シングルベクター単位を含む各クローンの選択をし易くするようにn=2又は3の融合ベクターになるまで、連続的なアプローチを繰り返すことができ、これは、より多数のベクター単位を含む融合ベクターから出発する際には特に好ましく、すなわち、(n−1)個の融合ベクターを最初に選択し、次いで、(n−2)個の構築物を二回目に選択するなどとすることができると解される。
【0074】
さらに、上述のベクター組み立て方法と同様に、本発明の融合ベクター解体方法において、n個のベクター単位を含む前記融合ベクターにおける(n−1)個のベクター単位の各々が、別の選択可能なマーカーを含まないベクター単位と前記選択可能なマーカーを含む1つ又は複数のベクター単位との間の融合体で形質転換された宿主細胞のみが工程(C1)で生存可能であるように、耐性マーカーとは異なる別の選択可能なマーカーを含むことが好ましい。
【0075】
好ましい選択可能なマーカー(条件Oriなど)、宿主細胞、マルチウェル試験プレートの使用などに関して、上述のベクター組み立て方法の好ましい実施態様が参照される。
【0076】
本願の融合ベクター解体方法は、さらに、好ましい実施態様に関して以下に詳述する(ACEMBLシステム;C.2.2節)。
【0077】
本発明の核酸及びベクター(融合ベクター及びシングルベクター(すなわち、ベクター単位)を含む)は、さらに、典型的な配列要素、例えば、1つ又は複数の興味のある遺伝子から発現される(複数の)タンパク質の検出及び/又は精製を可能にする又は単純化する要素も含んでよい。そのような要素の典型例は、GFP及びその誘導体、Hisタグ、GSTなどをコードする配列である。
【0078】
本発明に係る融合ベクターは、適切な宿主における多タンパク質複合体の発現に有利に使用される。かくして、本発明は、さらに、(例えば複数若しくは単独の発現カセットの形態又は必要に応じてポリジーンの形態において、1つ又は複数の興味のある遺伝子が挿入されたベクター単位を含む)本発明の融合ベクターで適切な宿主を形質転換する工程、及び興味ある遺伝子の同時発現を可能にする条件下で形質転換した宿主を培養する工程を含む、対応する方法も提供する。
【0079】
本発明の各種の態様の開示から、当業者は、好ましくは複数の発現カセットの反復クローニングに使用される、HE/X部位のポリヌクレオチド(特に、対応するベクター)は、複数遺伝子の構築物を作製するための上述の組み立て(又は解体)方法と組み合わせることができることを容易に理解するであろう。例えば、1つ又は複数の単独遺伝子ベクター又は複数遺伝子ベクターは上述のHE/X部位要素を使用して調製することができ、本明細書に記載の組換えに基いた組み立て方法を使用して最適な融合ベクター(例えば、三重、四重、又はそれよりも高次の融合ベクター)に組み立て得る。その様な融合ベクターは、次いで、本明細書に記載のとおりに(部分的に又は完全に)解体されてよく、当業者によって予期される個々の多タンパク質の用途のために、必要に応じて次に異なる構築物を組み立てることができる。かくして、本発明の態様は、これまでには知られていなかった、多タンパク質の用途のための興味のある複数の遺伝子(又はポリジーン)を組み合わせる自由を当業者に提供するビルディングブロックシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、「ACEMBL」と称される好ましいキットに含まれる原核生物宿主における多タンパク質複合体の発現のための本発明に係る好ましいベクターの概略図である。
【図2】図2は、「マルチプルインテグレーションエレメント」(MIE)と称される本発明の核酸の好ましい実施態様の図である。
【図3】図3は、Sequence and Ligation Independent Cloning(SILC;Tan, S. et al. Protein Expr. Purif. 40, 385 (2005)を参照のこと)によって本発明のベクターに興味のある遺伝子(「GOI」)を挿入するための好ましい方法の概略図である。興味のある遺伝子(GOI1)は、特定のプライマーを用いてPCR増幅され、相補プライマー(相補領域は薄い灰色又は濃い灰色の各々で影を付けている)を用いたPCRで直線化したベクター(アクセプター、ドナー)に組み込まれる。得られたPCR断片は、末端に相同領域を含む。T4 DNAポリメラーゼは、dNTPの非存在下においてエキソヌクレアーゼとして働き、長い付着突出をもたらす。T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターの混合(場合によってアニーリング)に続いて形質転換を実施し、単独遺伝子発現カセットを作製する。
【図4】図4は、SLICによって本発明のベクターにポリシストロンを挿入するための好ましい方法の概略図を示す。興味のある遺伝子(GOI1、2、3)を特定のプライマーを用いてPCR増幅し、ポリシストロンに組み立てられる最初(GOI1)のフォワードプライマー及び最後(GOI3)遺伝子のリバースプライマーの末端に相補的なプライマーを用いてPCR増幅した(相補領域は薄い灰色又は暗い灰色の各々で影を付けた)。得られたPCR断片は、末端に相同領域を含む。T4 DNAポリメラーゼは、dNTPの非存在下においてエキソヌクレアーゼとして働き、長い粘着突出をもたらす。T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターの混合(場合によってアニーリング)に続いて形質転換を実施し、ポリシストロン発現カセットを作製する。
【図5】図5は、LoxP不完全反転反復(配列番号19)の配列を示す。
【図6】(左図)は、本発明のベクターの好ましい実施態様(pACE、pDK、及びpDSベクター)のCreを介する組み立て及び解体を示すピラミッド状の概略図を示す。LoxP部位は赤い丸で示し、耐性マーカー及び複製起点を示している。白色の矢印は、ACEMBLベクターの発現カセット全体(プロモーター、ターミネーター、及びマルチプルインテグレーションエレメントを含む)を示す。明確にするために、全ての有り得る融合産物を示しているわけではない。多重耐性のレベルは右図に示す。
【図7】図7は、本発明に係るCre−deCre組み立て/解体によるベクター構築物を有する細菌コロニーの多重耐性分析の概略図である(図12も参照のこと)。
【図8】図8は、ヒトTFIIFの発現のための、本発明のベクターへのヒトRAP74及びヒトRAP30のクローニングのためのストラテジーの概略図である(左図)。hRAP74はSLICによってpDCにクローニングした。hRAP30はSLICによってpACEにクローニングした。pDC−RAP74(ドナー)及びpACE−RAP30のCre−Lox組換えによって、ベクターpACEMBL−hTFIIFが得られる。11の二重耐性(Cm,Ap)コロニーのBstZ17I/BamHIの二重消化による制限マップ作成の結果は、1%E−ゲル電気泳動のゲル切片によって示す(M:NEB 1kb DNAマーカー)。全ての試験したクローンは、期待されるパターンを示した(5.0+2.8kb)(左図)。
【図9】図9は、複数断片SLICによってベクターpACEにヒトVHL/エロンギンb/エロンギンc複合体(VHLbc)(トリシストロン)をクローニングするためのストラテジーを示す。
【図10】図10は、本発明に係る好ましいホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)/制限酵素部位(X)モジュール(PI−SceI/BstXI)を用いて酵母RES複合体(Pml1p、Snu17p、Bud13p)の成分を反復クローニングするためのストラテジーの概略図である。
【図11】図11は、多重融合ベクターpACKS(配列番号18)からのシングルベクターの産生の概略図を示す。
【図12】図12は、pACKS De−Cre反応の96ウェルマイクロタイター分析を示す概略図及び写真である。
【図13】図13は、本発明に係る好ましい核酸(「マルチプルインテグレーションエレメント」、MIE)の配列及びマップを示す(配列番号1)。配列決定のためのフォワード及びリバースプライマーは、T7及びlacのための標準的なベクタープライマーデあり得る。アダプタープライマー配列(表1参照のこと)を示す。これらの相同領域のDNA配列は、十分に施行された配列決定プライマーを含む(上記Tan et al. (2005))。挿入部位(I1−I4)を示す。アダプター配列及びおそらく相同領域の任意の配列が、複数断片挿入のためのアダプターとして使用することができる。MIEに存在するリボソーム結合部位(rbs)は赤い四角で囲っている。
【図14】図14はアクセプターベクターpACEのプラスミドマップを示す。
【図15】図15はアクセプターベクターpACE2のプラスミドマップを示す。
【図16】図16はドナーベクターpDCのプラスミドマップを示す。
【図17】図17はドナーベクターpDKのプラスミドマップを示す。
【図18】図18はドナーベクターpDSのプラスミドマップを示す。図14から18のプラスミドマップにおいて認められるとおり、アクセプターベクターpACE(図14)及びpACE2(図15)は、T7プロモーター及びターミネーターを含む。ドナーベクターpDC(図16)、pDK(図17)、及びpDS(図18)は、条件複製起点を含む。pDS(図18)及びpDK(図17)はlacプロモーターを有する。pDC(図16)はT7プロモーターを有する。耐性マーカー及び複製起点を示している。LoxP不完全反転反復配列を丸で示す。ホーミングエンドヌクレアーゼ部位及び対応するBstXI部位を四角で囲んでいる。マルチプルインテグレーションエレメント(MIE)の制限酵素部位を示す。全てのMIEはClaIとPmeIとの間に同じDNA配列を有する。特有の制限部位構成における相違は、プラスミド骨格配列における相違に由来する。
【図19】図19は、本発明の好ましいベクターの制限マッピングの結果を示す。未消化のアクセプターベクター(pACE、pACE2)及びドナーベクター(pDC、pDK、pDS)の双方を、BamHIで消化した同ベクターとともに開示している。すべての制限反応によって期待されるサイズのものが生じる。レーン1から5は、未切断のpACE、pACE2、pDC、pDK、及びpDSベクターであり;レーンMはλStylマーカーであり;レーンAからEは、BamHI消化したpACE、pACE2、pDC、pDK、及びpDSベクターを示す。
【図20】図20は、pACE、pDC,pDK、及びpDSの各々に挿入したVon Hippel−Lindau/elonginB/elonginC(VHLbc)複合体(上記のTan et al. (2005)、上記図9を参照のこと)、FtsH可溶性ドメイン(Bieniossek et al. (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 3066-3071)、青色蛍光タンパク質(BFP)、及びコイルドコイルドメインを有する緑色蛍光タンパク質(mGFP)(Berger et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 12177-12182)をコードする遺伝子で例示する、本発明のアクセプター/ドナー組換えのストラテジーを示す。Cre融合の後に、pir−細胞を形質転換する(TOP10)。2種(Ap/Kn;Ap/Cm;Ap/Sp)、三種(Ap/Kn/Sp)、及び四種(Ap/Kn/Sp/Cm)の抗生物質を含む寒天にアリコートを播種した。各プレートから得られた四個のコロニーを96ウェルマイクロタイタープレートで試験した。プレート画像の左のラベルは、横列で培地アリコートに含まれている抗生物質を示す。下の二列のウェルは、異なる試験をした(ラベルはプレート画像の下に示す)。各々1つの寒天プレートから得られた四個のコロニーを播種したものは、黒四角で囲い、寒天プレートに含まれる抗生物質を引出線の先に記載している。そのような各16ウェルの四角の4つの縦列は、同じコロニーで播種した。下の二列は、列の四つのウェルは同じコロニーで播種した。二重、三重(ADD)、及び四重(ADDD)融合の期待されるベクター構造は、プレートの画像の左若しくは右の各々(16ウェルの四角)又は下(下の二列)に示す。赤色色素を位置マーカーとして使用している。ADDD融合体の解体は、逆の方法で成功裡に実施した。
【図21】図21は、ヒトTFIIF(図21A)、Von Hippel−Lindau/elonginB/elonginC(VHLbc)複合体(図21B)、及び原核生物膜貫通ホロトランロコン(holotranlocon:HTL)YidC−SecYEGDF(図21C)の多タンパク質複合体の発現の結果を示す。(A)ヒトTFIIFは、TECAN Freedom Evoll 200 ワークステーションを使用して組み立て、精製し、SDS−PAGEによって分析した。非誘導又は誘導した全細胞抽出物及び精製したhTFIIFを示し、サブユニット(RAP74、RAP30)を記した。RAP74はC末端オリゴヒスチジンタグを含んでいた。(B)図20の全ての多遺伝子構築物を組み立て、発現させ、hTFIIFと同じルーチンにしたがって細胞溶解物を同時に分析した(図20に記した名称)。VHLbc複合体は、VHLサブユニット上のオリゴヒスチジン−チオレドキシン融合体タグによって捕獲した(上記Tan et al.(2005))。FtsHは、そのC末端にオリゴヒスチジンタグを含んでいた(上記Bieniossek et al.(2006))。蛍光タンパク質は、Roche1814460なる抗体(TBST/3%BSA中1:1000)を使用してウエスタンブロットによって溶解物中で同定した。(C)全原核生物膜貫通ホロトランスロコン(HTL)YidC−SecYEGDFの生産。膜小胞生産、界面活性剤可溶化、Ni2+親和性捕獲、及びサイズ排除クロマトグラフィーは、精製ホロトランスロコン複合体(右)をもたらした。サブユニットを記した。SecYの分解産物は、アスタリスクで標識した。すべてのパネルにおいて、MはBiorad broad range marker(サイズ[kDa])である。
【図22】図22は、自動SLIC工程の作業の流れ図を示す。
【図23】図23は、自動Cre融合工程の作業の流れ図を示す。
【図24】図24は、pIDC(配列番号7)と称する、本発明の好ましいベクター(ドナーベクター)のプラスミドマップを示す。
【図25】図25は、pIDK(配列番号8)と称する、本発明の好ましいベクター(ドナーベクター)のプラスミドマップを示す。
【図26】図26は、pIDS(配列番号9)と称する、本発明の好ましいベクター(ドナーベクター)のプラスミドマップを示す。
【図27】図27は、pACEBac1(配列番号10)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図28】図28は、pACEBac2(配列番号11)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図29】図29は、pACEBac3(配列番号12)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図30】図30は、pACEBac4(配列番号13)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図31】図31は、pOmniBac1(配列番号14)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図32】図32は、pOmniBac2(配列番号15)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図33】図33は、pOmniBac3(配列番号16)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図34】図34は、pOmniBac4(配列番号17)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図35】図35は、ColE1複製起点を有する本発明のアクセプターベクター(pACEBac1、pACEBac2、pOmniBac1、pOmniBac2)を使用する複合バキュロウイルスを産生することによる昆虫細胞における多タンパク質発現のスキームを示す。多遺伝子融合体は、所望のドナー/アクセプターの組合せのCre−LoxP融合によって産生する(多遺伝子構築物)。融合ベクターによって、細菌人工染色体(BAC)としてバキュロウイルスゲノム(例えば、バキュロウイルスEMBac又はEMBAcY)を有する細菌を形質転換する。ベクター融合体は、Tn7に基づく転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込まれる。増殖性複合ウイルスは、青色/白色スクリーニングによって選択される(ウイルスのT7付着部位へのベクター融合体の組込みによって、ウイルスに存在するlacZ遺伝子が破壊される)。複合ウイルスを調製し、適切な昆虫細胞をタンパク質製造のために形質転換する。
【図36】図36は、OriV複製起点を有する本発明のアクセプターベクター(pACEBac3、pACEBac4、pOmniBac3、pOmniBac4)を使用して複合バキュロウイルスを産生することによる、昆虫細胞における多タンパク質発現のためのスキームを示す。多遺伝子融合体によって、所望のドナー/アクセプターの組合せのCre−LoxP融合によって産生する。融合ベクターは、細菌人工染色体(BAC)としてバキュロウイルスゲノム(例えば、バキュロウイルスEMBac又はEMBAcY)を有する細菌を形質転換する。ベクター融合体は、Tn7に基づく転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込まれる。trfA遺伝子がトランスで提供されている場合はOriVを有するアクセプターベクターが増殖できるため、trfA遺伝子を含まない細菌における非生産的な組込みは、適当な抗生物質(ここでは、ゲンタマイシン)に対する曝露による、そのような形質転換体の排除をもたらす。かくして、青色/白色スクリーニングは、この場合には必要ではない。次いで、複合ウイルスを調製し、適切な昆虫細胞をタンパク質製造のために形質転換する。
【図37】図37は、lef2−603及びOrf1629相同配列を有する本発明のアクセプターベクター(pOmniBac1、pOmniBac2、pOmniBac3、pOmniBac4)を使用して複合バキュロウイルスを産生することによる、昆虫細胞における多タンパク質発現のためのスキームを示す。多遺伝子融合体は、所望のドナー/アクセプターの組合せのCre−LoxP融合によって産生する(多遺伝子構築物)。lef2−603/Orf1629相同配列に隣接するジフテリア毒素A遺伝子を有するゲノムバキュロウイルスDNA及び多遺伝子構築物を、タンパク質製造のための適切な昆虫細胞に直接的に共トランスフェクトできる。バキュロウイルスゲノムを含む細菌の移入ベクターによる形質転換、複合ウイルスの青色/白色スクリーニング、及びバクテリアからの複合ウイルスの調製はもはや必要ではない。
【図38】図38は、EMBacと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図39】図39は、EMBacYと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図40】図40は、EMBac_Directと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図41】図41は、EMBac_DirectYと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図42】図42は、例えばpACEBac2などのアクセプターベクターにおける、一般的な構造I−CeuI−p10−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図43】図43は、例えばpIDSなどのドナーベクターにおける、一般的な構造PI−SceI−p10−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図44】図44は、例えばpACEBac1などのアクセプターベクターにおける、一般的な構造I−CeuI−polh−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図45】図45は、例えばpIDSなどのドナーベクターにおける、一般的な構造PI−SceI−polh−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図46】図46は、pACEBac1−HisIKK1なるベクターの略図を示す。
【図47】図47は、pIDC−CSIKK2なるベクターの略図を示す。
【図48】図48は、pIDS−CSIKK3なるベクターの略図を示す。
【図49】図49は、pACEBac−HA−NAなるベクターの略図を示す。
【図50】図50は、pIDC−M1−M2なるベクターの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
「ACEMBL」システムである好ましい実施態様を参照して、以下に詳細に本発明を説明する。
【0082】
A.概要
「ACEMBL」と称される、本発明に係る好ましい実施態様は、バキュロウイルス系を使用する昆虫細胞及び大腸菌における多遺伝子発現のための多重発現系を提供する。ACEMBLは、液体処理ワークステーションを使用することによって自動化された設定及び手作業の双方で使用することができる。ACEMBLは、多数の遺伝子を迅速に多遺伝子発現カセットに組み立てるためのタンデム組換え工程を適用する。これらは、ポリシストロン性又は多発現モジュールであってよく、又はこれらの要素の組合せであってよい。ACEMBLは、望ましい場合には、制限酵素及びリガーゼを伴う従来の方法を利用する選択肢も提供する。
【0083】
多遺伝子の組み立て及び発現のための以下のストラテジーをACEMBLシステムにおいて提供する:
(1)単独の遺伝子のベクターへの挿入(組換え又は制限/連結)
(2)多遺伝子のポリシストロンへの組み立て(組換え又は制限/連結)
(3)ホーミングエンドヌクレアーゼを使用する多遺伝子の組み立て
(4)Cre−LoxP反応による多遺伝子プラスミド融合
(5)大腸菌における共形質転換による多遺伝子発現
(6)バキュロウイルス系を使用する昆虫細胞における多遺伝子発現
【0084】
これらのストラテジーは、研究課題及び使用者に応じて、個別又は同時に使用してよい。
【0085】
以下のC節において、ACEMBLシステムで使用できる多遺伝子カセット組み立てのためのこれらの方法の各々のための段階的なプロトコールを提供する。
【0086】
B.ACEMBLシステム
B.1 ACEMBLベクター
本発明は、好ましい例示的な実施態様として、「アクセプター」及び「ドナー」ベクタと称される小さなデノボ設計されたベクターを提供する(図1及び20、プラスミドマップについては、図14から18及び21から31を参照のこと)。原核宿主におけるタンパク質発現のためのアクセプターベクター(例えば、pACE、pACE2)は、ColE1由来の複製起点及び耐性マーカー(アンピシリン又はテトラサイクリン)を含む。ドナーベクターは、pir遺伝子を発現する宿主に依存して増殖させる、条件複製起点(R6Kγ由来)を含む。ドナーベクターは、カナマイシン、クロラムフェニコール、及びスペクチノマイシン耐性遺伝子を含む。好ましくは、1つのアクセプターベクターとともに3つのドナーベクターを使用する。
【0087】
この例に係る全てのドナー及びアクセプターベクターは、LoxP不完全反転反復、加えて、MIE(マルチプルインテグレーションエレメント)を含む。本発明の好ましいMIEは、好ましいプロモーター(原核生物、哺乳動物、昆虫細胞に特異的なもの又はそれらの組合せ)及びターミネーター(原核生物、哺乳動物、昆虫細胞に特異的なもの又はそれらの組合せ)とともに発現カセットを含む。その中間にあるものは、従来のクローニング方法又は好ましい発現要素(さらなるプロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、及び遺伝子)の組込みのための二本鎖破壊をもたらすために使用することができる多数の制限部位を含むDNAセグメントである。MIEは、プロモーター及びターミネーター(B.2を参照のこと)に隣接する特別に設計された制限酵素部位(BstXI)及びホーミングエンドヌクレアーゼ部位によって完成する。
【0088】
原核生物宿主における発現のためのACEMBLベクターの配列は、配列表に記載している(pACE:配列番号2、pACE2:配列番号3、pDC:配列番号4、pDK:配列番号5、pDS:配列番号6、pACKS:配列番号18)。ベクターpACE、pACE2、pDC、pDK、及びpDSのマップは図14から18に示す。
【0089】
本発明に係るACEMBLシステムは、バキュロウイルス(pIDC(配列番号7)、pIDK(配列番号8)、pIDS(配列番号9)、pACEBac1(配列番号10)、pACEBac2(配列番号11)、pACEBac3(配列番号12)、pACEBac4(配列番号13)、pOmniBac1(配列番号14)、pOmniBac2(配列番号15)、pOmniBac3(配列番号16)、及びpOmniBac4(配列番号17))を使用する昆虫細胞における多タンパク質複合体の発現に適合するドナー及びアクセプターベクターも提供する。ベクターのプラスミドマップは図24から34に示す。
【0090】
ドナーベクターであるpIDS、pIDK及びpIDSは、条件複製起点(R6Kγファージ由来)、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)部位(PI−SceI)、及び相補的なBstXI部位を含む(対応する大腸菌ベクターpDC、pDK、pDSを参照のこと)。ドナーは、pir遺伝子を含む細胞株において増殖する。
【0091】
細菌における発現に適合するものとは対照的に、昆虫細胞におけるタンパク質発現のためのベクターは、原核生物プロモーター及びターミネーター構造を含まない。そのかわりに、それらは、polh発現カセット(polh EC)又はp10発現カセット(p10 EC)のいずれかを有する。これらの発現カセットは、共通の多角体又はAcMNPV由来のp10プロモーター、制限部位をコードするオリゴヌクレオチド(原核生物ACEMBLのMIEとは異なる)、及びSV40又はHSVtkポリアデニル化シグナル配列を含む。
【0092】
言うまでもなく、HE及びBstXI部位のために、発現カセットがベクター間で自由に交換することができ、挿入遺伝子を含む場合でも同様である。これは、制限連結又は制限酵素/リガーゼ非依存的な方法(例えば、SLIC)によって実施することができる。したがって、耐性マーカー(スペクチノマイシン、カナマイシン、又はクロラムフェニコールなど)のいずれか1つとともにp10又はpolhマーカーを含むものを、容易に作製することができる。
【0093】
HE/BstXI部位の組合せを使用して、発現カセットを増やすことができ、又はp10及びpolh発現カセットの組合せにベクターを適合させることができる。
【0094】
全てのドナーは、LoxP不完全反転反復を含む。これは、細菌のACEMBLベクターについて説明しているとおり、LoxPを介するアクセプター/ドナー多重融合体の構築及び解体に使用することができる。
【0095】
昆虫細胞におけるタンパク質発現に適合するベクターに関連する本発明の本実施態様は、バキュロウイルス用のACEMBLにおける多数のアクセプターベクターを提供する。これらは、共通の特徴を有する:全てLoxP部位、耐性マーカー(ゲンタマイシン)、及びp10又はpolh発現カセットのいずれか(ドナーに存在するものと同一)を含む。
【0096】
アクセプターの発現カセットは、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位(I−CeuI)及び対応するBstXI部位に隣接する。
【0097】
前記発現カセットは、細菌のACEMBLベクターについて説明したとおり、アクセプター間で交換することができ、HE/BstXIの組合せを使用して増やすか又は結合させることもできる。
【0098】
使用する複製起点の観点から2種のファミリーのアクセプターが存在する:
pACEBac1、pACEBac2、pOmniBac1、及びpOmniBac2の全ては、全ての共通の大腸菌クローニング細胞株における増殖を可能にするColEI複製起点を含む。
【0099】
全てのアクセプターベクターは、Tn7転位方法を使用することによって、中間領域をTn7接合部位に組み込むことを可能にするTn7L及びTn7R配列を含む。
【0100】
pACEBac3、pACEBac4、pOmniBac3、及びpOmniBac4は、使用するクローニング用の株でトランスに提供される必要があるtrfA遺伝子に依存する、V.Cholerae(コレラ菌)由来の条件複製起点(OriV)を含む。遺伝子に適合し、かつ、必要な場合にはドナーと融合されるアクセプターで、細菌人工染色体(すなわち、Invitrogen社製のDH10Bacなど)の形態でバキュロウイルスゲノムを含む細胞を形質転換する際に、バックグラウンド(青色コロニー)を除くことが、このOriVの機能である。ここで、Tn7転位系を使用して、細胞を形質転換したDNAのTn7LとTn7Rの間の領域を、好ましいウイルスゲノムのTn7接合部位に組み込む。通常は、効果がない組込みは、青色コロニーをもたらすであろう(Tn7接合部位がバキュロウイルスゲノムのLacZα遺伝子に組み込まれている場合)。この青色コロニーは、バキュロウイルスゲノムとは別に形質転換されたプラスミドを増殖する。これら4つのOriV含有プラスミドと用いると、青色コロニーはゲンタマイシンに対する曝露で生存することができず(DH10Bac又は他の細胞はtrfAを含まないため)、形質転換されたプラスミドに与えられた異種遺伝子を有する、効果的に組み込まれた複合バクミドを含む白色コロニーのみがもたらされる。図36のスキームも参照のこと。
【0101】
アクセプターベクターであるpOminBac1−4は、Tn7L及びTn7R領域に加えて、lef2−603及びOrf1629相同配列も含む。これらは、Novagen Bacvectorシリーズ、Pharmingen社製のBaculogoldシステム、及びOET社製のFlashBacなどによって使用されるような複合バキュロウイルスの産生のための相同組換え法に使用される。かくして、これらのアクセプターベクターは、Tn7に基づくバキュロウイルス及びlef2,603/1629相同組換え法による全てのウイルスを含む、昆虫細胞培養物で異種遺伝子を発現するために現在利用可能である全てのバキュロウイルス系に使用することができる。図37のスキームも参照のこと。
【0102】
B.2 マルチプルインテグレーションエレメント(MIE)
本発明に係る好ましいマルチプルインテグレーションエレメント(MIE)は、ポリリンカーに由来し(上記Tan et al.(2005))、多遺伝子の組み立てのための複数の方法を可能にする(下記C節を参照のこと)。様々な方法、例えば、BD−InーFusion組換え(ClonTech Takara Bio Europe,www.clontech.com)又はSLIC(配列及び連結非依存的クローニング;Li et al.(2007)Nat.Methods 4,251を参照のこと)によってベクターのいずれか1つのMIEに複数の遺伝子を挿入することができる。このために、ベクターは直線化する必要があり、これは、ベクターがすべて小さいため(2−3.0kb)、適当なプライマーを使用するPCR反応によって効果的に実施することもできる。超高忠実度のポリメラーゼ、例えば、Phusion(Finnzymes/New England BioLabs,www.neb.com)を使用することが好ましい。代替的には、より従来からの方法が、例えば、ロボットなしの通常のウェットラボ環境で使用される場合は、制限消化によってベクターを直線化することができ、興味のある遺伝子を制限/連結によって組み込むことができる(本実施態様の下記のC節を参照のこと)。このMIEのDNA配列(配列番号1)及びマップを図13に示す。
【0103】
B.3 タグ、プロモーター、ターミネーター
原核生物宿主におけるタンパク質発現のために、ACEMBLシステムのベクターは、初期設定で、プロモーターT7及びLac、並びにT7ターミネーター要素を含む(図1、14)。T7系は、T7ポリメラーゼ遺伝子を、例えば、大腸菌ゲノムに含む、細菌株を必要とする。Lacプロモーターは、大半の株で利用することができる、強力な内在性プロモーターである。このACEMBLベクターは、異種発現の抑制のためのlacオペレーター要素を含む。
【0104】
明らかに、ACEMBLドナー及びアクセプターベクターに存在する全てのプロモーター及びターミネーター、並びに実際にはマルチプルインテグレーションエレメント(MIE)全体(HE及びX部位を除く)の各々が、適当な酵素(例えば、ClaI/PmeI、図2)を用いる制限/連結クローニング、又はSLICなどの配列及び連結非依存的な方法によってMIEを除去する、直線化したACEMBLベクターへの挿入を使用することによって、好ましい発現カセットと交換することができる。例えば、pDCのT7プロモーターは、trcプロモーター(pDCtrc)で置換することができ、pACEのT7プロモーターはアラビノースプロモーター(pACEara)で置換することができ、そのようなバリアントは、アラビノース及びIPTGで誘導することによる共発現実験に成功裡に使用することができる。
【0105】
原核生物宿主における発現用のACEMBLベクターとは対照的に、昆虫細胞における発現用のベクターは、原核生物プロモーター及びターミネーター構造を含まない。既に記載したとおり、それらは、polh発現カセット(polh EC)又はp10発現カセット(p10 EC)のいずれかを有する。これらの発現カセットは、共通のポリへドロン又はAcMNPV由来のp10プロモーター、制限部位の配列、及びSV40又はHSVtkポリアデニル化シグナル配列のいずれかを含む。
【0106】
本実施例のACEMBLシステムベクターは、興味のあるタンパク質の精製及び可溶化を容易にするアフィニティータグをコードするDNA配列を含まない。しかしながら、典型的に使用されるC末端又はN末端のオリゴヒスチジンタグは、タグ除去のためのプロテアーゼ部位とともに又はそれなしで、MIEに挿入する前に興味のある遺伝子の増幅に使用される個々のPCRプライマーを用いることによって、例えば、SLIC媒介挿入によって導入することができる。かくして、本発明のドナー及びアクセプターベクターは、興味のある組換え遺伝子を挿入する前に、一連の通例のタグを取り付けてよい。これは、タグの挿入の後に、ACEMBLシステムを使用法の組換えに基づく原理と適合する設計によって為されることが最も良好である。
【0107】
B.4 複合体発現
大腸菌における発現のために、適当なプロモーター又はターミネーターを有する、ACEMBL多遺伝子発現ベクター融合体で適当な好ましい発現宿主を形質転換する。この例示のベクター(T7及びlacプロモーター要素)については、広範な現在利用可能な発現株の大半を利用することができる。特定の発現株がシャペロン又はリソザイムなどをコードするDNAを有するヘルパープラスミドを既に含む場合には、多遺伝子融合体の設計は、ヘルパープラスミドにも存在する耐性マーカーを含むACEMBLベクターが多遺伝子ベクター構築物に含まれないようにすることが好ましい。
【0108】
代替的には、さらなるベクターが実験において複合体の生産に必要とされる場合、その課題は、対立を回避する耐性マーカーを含むACEMBLベクターの代替的なバージョンを作製することによって解決することができる。これは、耐性マーカーを除いたベクターをPCR増幅し、得られた断片をPCR増幅した耐性マーカーと組換え(SLIC)又は平滑末端連結(5’リン酸化プライマーを使用する)によって結合させることによって容易に実施することができる。
【0109】
本発明のドナーベクターは、R6Kγ条件複製起点のために、pir遺伝子産物の宿主による発現に依存する。ドナーベクターは、通常の発現株では、有効な複製のためのアクセプターとの融合に依存する。それにもかかわらず、ドナー又はドナー−ドナー融合体は、pir遺伝子をゲノムに挿入した発現株を使用することによって、アクセプターと融合させない際にも発現のために使用することができる。そのような株は市販されている(Novagen Inc.,Madison WI,USA)。
【0110】
細菌における発現に適合する2つのACEMBLプラスミドの共形質転換は、タンパク質複合体発現の成功をもたらし得る。原核生物宿主における発現のための当該ACEMBLシステムは、耐性マーカー以外は同一である2つのアクセプターベクター、すなわち、pACE及びpACE2を含む(図1、14)。これらを使用して、共形質転換及び双方の抗生物質に対する同時暴露によって、pACE又はpACE2のそれぞれに存在する遺伝子を発現させることができる。事実、アクセプターとしてのpACE又はpACE2に依存する、複数の遺伝子を含むアクセプター−ドナー融合体の全体は、原理上、必要な場合には、多重発現のために共形質転換することができる。
【0111】
バキュロウイルス系を使用する昆虫細胞(例えば、Sf9、Sf21、Hi5など)における発現のために、本発明の適切なACEMBLベクターは、バキュロウイルスゲノムに組み込まれる必要がある(複合ウイルス産生)。これは、典型的には、細菌人工染色体として所望のウイルスゲノムを含む細菌細胞を所望のCre−LoxP融合体で形質転換することによって実施される。バキュロウイルスへの組込みに適合する本発明のベクター系を使用すると、図35、36、及び37の各々に記載の3つの方法が可能である。
【0112】
C.手順
C.1.ACEMBLベクターへのクローニング
原核生物の発現宿主のための好ましい実施態様のドナー及びアクセプターの全てが、MIEを取り囲むホーミングエンドヌクレアーゼ部位/BstXIタンデムを除いて、同一のMIEを含む(図1、14)。MIEは、配列及び連結に非依存的な遺伝子挿入方法にあったものである。加えて、MIEは、一連の特有の制限部位も含み、そのため、制限/連結による従来の遺伝子挿入のための旧知のポリリンカーとして使用することができる。自動化された応用のために、興味のある遺伝子の挿入は、好ましくは、SLICなどの組換え法によって実施される。
【0113】
この好ましい実施態様に係る昆虫細胞における発現のためのドナーベクターは、各ベクターで異なるMIEも含む(図21、22、及び23の各々のベクターpIDC、pIDK、及びpIDSのプラスミドマップを参照のこと)。
【0114】
C1.1.SLICによるMIEへの単独遺伝子挿入
ベクターへの遺伝子の制限/連結に非依存的な挿入のための幾つかの方法が、開示又は市販されている(例えば、Novagen LIC,Becton−Dickinson BD In−Fusionなど)。これらの系は、DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に依存する点において共通している。dNTPの非存在下では、5’伸長が、3’末端の消化によって平滑末端又は突出から作製される。2つのDNA断片が反対の端においてそれらの末端に同じ〜20から30bpの配列を含む場合は、アニーリングすることができる相補的配列を共有する突出をもたらす。これは、相同配列を含む2又は複数のDNA断片の、連結に非依存的な結合に利用することができる。
【0115】
T4DNAポリメラーゼを使用する場合は、これは、相同領域の配列に非依存的な態様で実施することができ(配列及び連結に非依存的なクローニング、すなわち、SLIC)、詳細なプロトコールは当業者には利用可能である。多タンパク質発現では、コードDNA群において、この方法は特有の制限部位の存在又は変異生成によるそれらの作製に非依存的であるため、これが特に有用である。
【0116】
本発明における使用のために、SLIC法は、Phusionポリメラーゼによって増幅されたコードDNAのACEMBLアクセプター及びドナーベクターへの挿入に適合させた。このような方法で、発現カセットへの遺伝子の均一な挿入のみならず、多遺伝子構築物への発現カセットのコンカテマー化(concatamerization)も、容易に自動化可能な同一の単純なルーチンを適用することによって達成することができる。
【0117】
下記のプロトコール1は、上記のLi et al.(2007)に記載の方法に基づく改善した方法である。プロトコール1は、手作業用に設計されている。他の系を使用してもよく(例えば、BD−InFusionなど)、その場合には、製造業者の推奨に従うべきである。このプロトコールは、ロボットによる応用にも採用されてよい。前記プロトコールの対応する修正はD節に概説している。
【0118】
プロトコール1:SLICによる単独遺伝子挿入
必要な試薬:
Phusionポリメラーゼ
Phusionポリメラーゼ用の5×HFバッファー
dNTPミックス(10mM)
T4 DNAポリメラーゼ(及び10×バッファー)
DpnI酵素
大腸菌コンピテント細胞
100mM DTT、2M尿素、500mM EDTA
抗生物質
【0119】
工程1:プライマー設計
SLIC法のためのプライマーは、dNTPの非存在下においてT4 DNAポリメラーゼで処理して長い付着末端をもたらす相同領域を提供するように設計する。
【0120】
インサートのためのプライマーは、相同領域に対応するDNA配列(図3、差込図の「アダプター配列」)、続いて、増幅しようとするインサートに特異的にアニールする配列(図3、差込図)を含む。SLICのためのアダプター配列の有用な例は以下に記載する(表1)。
【0121】
例えば、興味のある遺伝子(GOI)が、発現要素を既に含むベクター(例えば、pETベクターシリーズ)から増幅される場合に、この「インサートに特異的な配列」はリボソーム結合部位(rbs)の上流に位置する。そうでない場合は、フォワードプライマーは、リボソーム結合部位が最終的な構築物にも提供されるように設計される必要がある(図3、差込図)。
【0122】
ベクター骨格のPCR直線化のためのプライマーは、単純に、インサートの増幅に選択されるプライマー対に存在する2つのアダプター配列に相補的である(図3)。
【0123】
工程2:インサート及びベクターのPCR増幅
クローニングするDNAインサート及びPCRによって直線化するベクターについて、100μlの容量で同一の反応を準備する:
ddH2O 75μl
5×Phusion HF反応バッファー 20μl
dNTP(100mMストック) 2μl
鋳型DNA(100ng/μl) 1μl
5 SLICプライマー(100μMストック) 1μl
3 SLICプライマー(100μMストック) 1μl
Phusionポリメラーゼ(2U/μl) 0.5μl
【0124】
次いで、PCR反応を標準的なPCRプログラムで実施する(非常に長いDNAが増幅され、伸長時間が2倍である場合を除いて):
1×98℃ 2分間
30×[98℃ 20秒間→50℃ 30秒間→72℃ 3分間]
10℃に維持。
寒天ゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色によるPCR反応の分析が推奨される。
【0125】
工程3:PCR産物のDpnI処理(場合によって)
次いで、親プラスミド(メチル化されている)を切断する1μlのDpnI酵素をPCR反応産物に添加する。インサートのPCR反応については、鋳型プラスミドの耐性マーカーがデスティネーションベクターと異なる場合に、DpnI処理が必要でない。
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:37℃ 1から4時間
不活化:80℃ 20分間
【0126】
工程4:PCR産物の精製
PCR産物から残存するdNTPを除去すべきである。そうしなければ、T4 DNAポリメラーゼ反応(工程5)が妨げられる。生成物の精製が、好ましくは、市販のPCR精製キット又はNucleoSpinキット(例えば、Qiagen,Macherey−Nagelなど)によって実施される。各製造業者によって示される最小限の取り得る容量で溶出を実施することが望ましい。
【0127】
工程5:T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理
インサート及びベクター(工程4で溶出したもの)について、同一の反応を20μlの容量で準備する:
10×T4 DNAポリメラーゼバッファー 2μl
100mM DTT 1μl
2M尿素 2μl
工程3に由来するDNA溶出物(ベクター又はインサート) 14μl
T4 DNAポリメラーゼ 1μl
【0128】
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:23℃ 20分間
停止 1μlの500mM EDTAの添加
不活化 75℃ 20分間
【0129】
工程6:混合及びアニーリング
次いで、T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターを混合し、続いて、効率を高めるアニーリング工程を場合によって実施する:
T4 DNA pol処理したインサート 10μl
T4 DNA pol処理したベクター 10μl
アニーリング:65℃ 10分間
冷却 ゆっくりと(ヒートブロックにおいて)RT(室温)まで
【0130】
工程7:形質転換
次いで、標準的な形質転換手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換する。
【0131】
pACE及びpACE2誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復(2から4時間)後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種した。
【0132】
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS)を含む寒天に播種した。
【0133】
工程8:プラスミド分析
プラスミドは、対応する抗生物質を含むスモールスケールの培地で培養し、配列決定及び(場合によって)適当な制限酵素を用いた制限マッピングによって分析する。
【0134】
C1.2.SLICによるMIEにおけるポリシストロン組み立て
本発明に係るマルチプルインテグレーションエレメントは、図4に示すマルチフラグメントSLIC組換えを使用して、興味のある遺伝子を組み込むために使用することもできる。リボソーム結合部位(rbs)に先行する遺伝子は、この方法でポリシストロンに組み立てることができる。
【0135】
詳細なプロトコールは下記のプロトコール2に概要を示している:
プロトコール2 SLICによるポリシストロン組み立て
必要な試薬:
Phusionポリメラーゼ
Phusionポリメラーゼ用の5×HFバッファー
dNTPミックス(10mM)
T4 DNAポリメラーゼ(及び10×バッファー)
大腸菌コンピテント細胞
100mM DTT、2M尿素、500mM EDTA
抗生物質
【0136】
工程1:プライマー設計
本実施態様に係るMIE要素は、試験済みのプライマー配列からなる。これらは、単独遺伝子又は多遺伝子構築物の挿入に使用することができる「アダプター」配列を構成する。有用なアダプター配列の例は下記のものである(表1)。
【0137】
アダプター配列は、MIEに挿入するDNA断片を増幅するために使用されるプライマーの5’セグメントを形成する。インサートに特異的な配列は3’に付加し、リボソーム結合部位をコードするDNAは、PCR鋳型に未だ存在していない場合は、場合によって挿入することができる。
【0138】
工程2:インサート及びプライマーのPCR増幅
クローニングする全てのDNAインサート(GOI1、2、3)及びPCRによって直線化するベクターについて、同一の反応を100μlの容量で準備する:
ddH2O 75μl
5×Phusion HF反応バッファー 20μl
dNTP(10mMストック) 2μl
鋳型DNA(100ng/μl) 1μl
5’SLICプライマー(100μMストック) 1μl
3’SLICプライマー(100μMストック) 1μl
Phusionポリメラーゼ(2U/μl) 0.5μl
【0139】
次いで、標準的なPCRプログラムでPCR反応を実施する(非常に長いDNAが増幅され、伸長時間が2倍である場合を除いて):
1×98℃ 2分間
30×[98℃ 20秒間→50℃ 30秒間→72℃ 3分間]
10℃に維持。
【0140】
寒天ゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色によるPCR反応の分析が推奨される。
【0141】
工程3:PCR産物のDpnI処理(場合によって)
次いで、親プラスミド(メチル化されている)を切断する1μlのDpnIをPCR反応産物に添加する。インサートのPCR反応については、鋳型プラスミドの耐性マーカーがデスティネーションベクターと異なる場合に、DpnI処理が必要でない。
【0142】
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:37℃ 1から4時間
不活化:80℃ 20分間
【0143】
工程4:PCR産物の精製
PCR産物から残存するdNTPを除去すべきである。そうしなければ、T4 DNAポリメラーゼ反応(工程5)が妨げられる。
【0144】
生成物の精製が、好ましくは、市販のPCR精製キット又はNucleoSpinキット(例えば、Qiagen,Macherey−Nagelなど)によって実施される。各製造業者によって示される最小限の取り得る容量で溶出を実施することが望ましい。
【0145】
工程5:T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理
各インサート(GOI1、2、3)及びベクター(工程4で溶出したもの)について、同一の反応を20μlの容量で準備する:
10×T4 DNAポリメラーゼバッファー 2μl
100mM DTT 1μl
2M尿素 2μl
工程3に由来するDNA溶出物(ベクター又はインサート) 14μl
T4 DNAポリメラーゼ 1μl
【0146】
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:23℃ 20分間
停止: 1μlの500mM EDTAの添加
不活化: 75℃ 20分間
【0147】
工程6:混合及びアニーリング
次いで、T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターを混合し、続いて、効率を高めるアニーリング工程を場合によって実施する:
【0148】
T4 DNA pol処理したインサート(GOI1) 5μl
T4 DNA pol処理したインサート(GOI2) 5μl
T4 DNA pol処理したインサート(GOI3) 5μl
T4 DNA pol処理したベクター 5μl
アニーリング:65℃ 10分間
冷却 ゆっくりと(ヒートブロックにおいて)RTまで
【0149】
工程7:形質転換
次いで、標準的な形質転換手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換する。
【0150】
pACE及びpACE2誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種する。
【0151】
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS)を含む寒天に播種した。
【0152】
工程8:プラスミド分析
プラスミドを培養し、特定の制限消化及びインサートのDNA配列決定に基づいて、正しいクローンを選択する。
【0153】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0154】
・全てのアダプタープライマー(伸長部除く)は、本実施態様に係るMIEに挿入した興味ある遺伝子の配列決定用プライマーとして使用することができる。
【0155】
C.1.3.制限/連結による遺伝子挿入
本発明のMIEは、一連の特有の制限部位を有するマルチプルクローニング部位として使用することもできる。好ましくは、原核生物宿主におけるタンパク質発現のための本明細書に記載のMIEが、プロモーター及びリボソーム結合部位の後に続き、ターミネーターよりも前にある。昆虫細胞におけるタンパク質発現のための本明細書に記載の好ましい実施態様のMIEは、上述のpolh発現カセット又はp10発現カセットを含む。したがって、従来の制限/連結によるMIEへのクローニングは、機能的な発現カセットももたらす。
【0156】
興味のある遺伝子(GOI)は、標準のクローニング手順を使用することによって、ACEMBLベクターのマルチプルインテグレーションエレメント(MIE)にサブクローニングすることができる(例えば、図13を参照のこと)。
【0157】
プロトコール3.MIEへの制限/連結クローニング
必要な試薬:
Phusionポリメラーゼ
Phusionポリメラーゼ用の5×HFバッファー
dNTPミックス(10mM)
10mM BSA
制限エンドヌクレアーゼ(及び10×バッファー)
T4 DNAリガーゼ(及び10×バッファー)
ウシ又はエビの腸アルカリホスファターゼ
大腸菌コンピテント細胞
抗生物質
【0158】
工程1:プライマー設計
従来のクローニングのために、効率的な切断のための適当な突出(例えば、New England Biolabsカタログを参照のこと)の後ろ、かつ、挿入しようとする興味のある遺伝子との20ヌクレオチド以上のオーバーラップの前に、好ましい制限部位を含むPCRプライマーが設計される。
【0159】
細菌における発現のためのACEMBLシステムの場合には、本実施態様のMIEは、全てのACEMBLベクターについて同一である。それらは、NdeI部位の前にリボソーム結合部位を含む。したがって、単独遺伝子挿入については、rbsがプライマーに含まれる必要がない。
【0160】
多遺伝子挿入が(例えば、MIEの挿入部位I1−I4において)必要な場合は、遺伝子の前のrbs及び3’末端の終止コドンが提供されるように、プライマーを設計すべきである。
【0161】
特に制限/連結によるポリシトロンクローニングについては、カスタム遺伝子合成によって鋳型を構築することが望ましい。その方法では、MIEに存在する制限部位を、コードDNAから除くことができる。
【0162】
工程2:インサート調製
インサートのPCR:
MIEに挿入する興味のある遺伝子について、同一のPCR反応を100μlの容量で準備する:
ddH2O 75μl
5×Phusion HF制限バッファー 20μl
dNTP(10mMストック) 2μl
鋳型DNA(100ng/μl) 1μl
5プライマー(100μMストック) 1μl
3プライマー(100μMストック) 1μl
Phusionポリメラーゼ(2U/μl)0.5μl
【0163】
次いで、標準的なPCRプログラムでPCR反応を実施する(非常に長いDNAが増幅され、伸長時間が2倍である場合を除いて):
1×98℃ 2分間
30×[98℃ 20秒間→50℃ 30秒間→72℃ 3分間]
10℃に維持。
【0164】
寒天ゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色によるPCR反応の分析が推奨される。
【0165】
生成物の精製が、好ましくは、市販のPCR精製キット又はNucleoSpinキット(例えば、Qiagen,Macherey−Nagelなど)によって実施される。各製造業者によって示される最小限の取り得る容量で溶出を実施することが望ましい。
【0166】
インサートの制限消化:
製造業者の推奨(New England Biolabsカタログなどを参照のこと)によって特定される特定の制限酵素を使用して、40μlの反応容量において、制限反応を実施する。
【0167】
PCRキット溶出液(≧1μg) 30μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
5’のための制限酵素 2μl
3’のための制限酵素 2μl(二重消化の場合、そうでなければddH2O)
【0168】
制限消化は、双方の酵素を使用して1回の反応で実施するか(二重消化)、代替的には、必要なバッファー条件が適合しない場合には連続的に実施する(2回の単独消化)。
【0169】
インサートのゲル抽出
加工したインサートは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0170】
工程3:ベクター調製
ACEMBLプラスミドの制限消化:
製造業者の推奨(New England Biolabsカタログなどを参照のこと)によって特定される特定の制限酵素を使用して、40μlの反応容量において、制限反応を実施する。
【0171】
ddH2O中のACEMBLプラスミド(≧0.5μg) 30μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
5’のための制限酵素 2μl
3’のための制限酵素 2μl(二重消化の場合、そうでなければddH2O)
【0172】
制限消化は、双方の酵素を使用して1回の反応で実施するか(二重消化)、代替的には、必要なバッファー条件が適合しない場合には連続的に実施する(2回の単独消化)。
【0173】
ベクターのゲル抽出
加工したベクターは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0174】
工程4:連結
連結反応は、T4 DNAリガーゼの供給業者の推奨にしたがって20μlの反応容量で実施する:
ACEMBLプラスミド(ゲル抽出) 8μl
インサート(ゲル抽出) 10μl
10×T4 DNAリガーゼバッファー 2μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
【0175】
連結反応は、25℃(付着末端)で1時間又は16℃(平滑末端)で一晩にわたって実施する。
【0176】
工程5:形質転換
次いで、標準の形質転換の手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換した。
【0177】
アクセプター誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種した。
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS)を含む寒天に播種した。
【0178】
工程6:プラスミド分析
プラスミドを培養し、特定の制限消化及びインサートのDNA配列決定に基づいて正しいクローンを選択する。
【0179】
C.1.4.HE及びBstXI部位を使用することによる複数化
本発明に係るACEMBLシステムは、マルチプルインテグレーションエレメント(MIE)を包囲する、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)部位及び設計BstXI部位を含む。ホーミングエンドヌクレアーゼ部位を使用して、単独遺伝子又はポリシストロンを含む発現カセット全体を、1つ又は複数の興味のある遺伝子を既に含むベクターに挿入することができる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、長い認識部位(12から40塩基対以上、好ましくは20から30塩基対)を有する。全て等しいストリンジェントであるわけではないが、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位は、より大きなプラスミド、又は、事実、ゲノム全体に対して特有である可能性が非常に高い。
【0180】
本実施態様のACEMBLシステムでは、ドナーベクターは、ホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceIの認識部位を含む(図2)。このHE部位は、切断によって、−CTGC配列を有する3’突出を生じる。アクセプターベクターは、切断によって−CTAAの3’突出をもたらす、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位I−CeuIを含む。アクセプター及びドナー上において、各HE部位は、MIEの前にある。MIEの3’末端は、適合する突出を切断によりもたらす、特別に設計されたBstXI部位を含む。これは、BstXIの切断特異性に基づく。BstXIの認識配列は、CCANNNNN’NTGG(配列番号42)と規定される(アポストロフィーは、ホスホジエステル結合の切断位置を示す)。Nで示した残基は自由に選択され得る。かくして、ドナーベクターは、配列CCATGTGC’CTGG(配列番号43)のBstXI認識部位を含み、アクセプターベクターは、CCATCTAA’TTGG(配列番号44)を含む。各ケースにおいてBstXI切断によって生じる突出は、HE切断によって生じる突出と適合するであろう。アクセプター及びドナーは異なるHE部位を有することに留意すべきである。
【0181】
認識部位は対称ではない。したがって、HE/BstXI消化断片のACEMBLベクターのHE部位への連結は、(1)方向性であり、かつ、(2)HEの半分の部位がBstXIの半分の部位に結合しているハイブリッドDNA配列をもたらすであろう。この部位は、HE及びBstXIで切断されない。したがって、HEで消化した構築物における、1又は複数の遺伝子を有する発現カセットを含むHE/BstXI消化したDNA断片の連結による挿入は、前を完全なHE部位で、かつ、後をBstXI部位で包囲された、全ての異種性の興味のある遺伝子を含む構築物をもたらすであろう。したがって、HE/BstXI消化及び連結によって発現カセット全体をHE部位に組み込む方法は、反復して実施することができる。
【0182】
プロトコール4.ホーミングエンドヌクレアーゼ/BstXIを使用することによる複数化
必要な試薬:
ホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceI、I−CeuI
ホーミングエンドヌクレアーゼ用の10×バッファー
制限酵素BstXI(及び10×バッファー)
T4 DNAリガーゼ(及び10×バッファー)
大腸菌コンピテント細胞
抗生物質
【0183】
工程2:インサート調製
製造業者(例えば、New England Biolabsなど)の推奨どおりにホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター)を使用して、40μlの反応容量で制限反応を実施する。
【0184】
ddH2O中のACEMBLプラスミド(≧0.5μg) 32μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
PI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター) 2μl
【0185】
次いで、PCR抽出キット又は酸性エタノール沈殿によって反応物を精製し、製造業者の推奨にしたがってBstXIで消化する。
【0186】
ddH2O中のHE消化DNA 32μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
BstXI 2μl
【0187】
インサートのゲル抽出:
加工したインサートは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0188】
工程3:ベクター調製
製造業者(例えば、New England Biolabsなど)の推奨どおりにホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター)を使用して、40μlの反応容量で制限反応を実施する。
【0189】
ddH2O中のACEMBLプラスミド(≧0.5μg) 33μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
PI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター) 2μl
【0190】
次いで、PCR抽出キット又は酸性エタノール沈殿によって反応物を精製し、各製造業者の推奨にしたがって腸アルカリホスファターゼで処理する。
【0191】
ddH2O中のHE消化DNA 17μl
10×アルカリホスファターゼバッファー 2μl
アルカリホスファターゼ 1μl
【0192】
ベクターのゲル抽出:
加工したベクターは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0193】
工程4:連結
連結反応は20μlの反応容量で実施する:
HE/ホスファターゼ処理したベクター(ゲル抽出) 4μl
HE/BstXI処理したインサート(ゲル抽出) 14μl
10×T4 DNAリガーゼバッファー 2μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
【0194】
連結反応は、25℃で1時間又は16℃で一晩にわたって実施する。
【0195】
工程5:形質転換
次いで、標準的な形質転換の手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換する。
【0196】
アクセプター誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種した。
【0197】
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC、pIDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK、pIDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS、pIDS)を含む寒天に播種した。
【0198】
工程6:プラスミド分析
プラスミドを培養し、特定の制限消化及びインサートのDNA配列決定に基づいて正しいクローンを選択する。
【0199】
C.2.アクセプター及びドナーのCre−LoxP反応
Creリコンビナーゼは、インテグラーゼファミリーのメンバーである(バクテリオファージP1由来のタイプIトポイソメラーゼ)。Creリコンビナーゼは、34bpのloxP部位(配列番号19;図5を参照のこと)を付属タンパク質及び補助DNA配列なしで組換える。lopP部位は、切断及び連結反応が生じる8bpの中央領域に隣接する反転反復として、2つの13bpリコンビナーゼ結合要素を含んでなる。
【0200】
Creリコンビナーゼに媒介される部位特異的組換えは、ホリデイジャンクション(HJ)の形成を伴う。Creリコンビナーゼによって触媒される組換えは、LoxP部位の位置及び相対配向に基づく。単独のLoxP部位を含む、2つのDNA分子、例えば、アクセプター及びドナープラスミドは、融合される。さらに、Cre組換えは、15から20%の組換え効率の平衡反応である。これは、多タンパク質複合体発現のための多遺伝子の組合せのための有用な選択肢をもたらす。
【0201】
複数のDNA分子、例えば、ドナー及びアクセプターがCreリコンビナーゼとインキュベートされる反応では、酵素の融合/切除活性が、シングルベクター(遊離体ベクター)及び全ての可能な融合体が共存する平衡状態をもたらすであろう。ドナーベクターは、アクセプターベクターと同様に、アクセプター及び/又はドナーと使用することができる。2を超えるベクターが融合している高次の融合体も産生される。これは図6に図示している。
【0202】
この例のドナーが、pir+(pir陽性)の背景に依存する条件複製起点を含むという事実は、全ての所望のアクセプター−ドナーの組合せを反応混合物から選択することを可能にする。このために、反応混合物を使用して、pir陰性株(TOP10、DH5α、HB101、又は他の一般的な実験クローニング株)を形質転換する。次いで、ドナーベクターは、アクセプターと融合していなければ、ドナーがコードする耐性マーカーに対応する抗生物質を含む寒天上に播種する際に、自殺ベクターとして働くであろう。適当な組合せの抗生物質を含む寒天を使用することによって、全ての所望のアクセプター−ドナー融合体を選択することができる。
【0203】
この方法では、25kb又はそれよりも大きい融合ベクターが産生され得る。安定性試験(60世代超の連続的な継代)では、そのような大きなプラスミドであっても、コードされる耐性マーカーに対応する抗生物質の1つのみが増殖培地に与えられている場合ですら、制限マッピングによって確認されるとおり、安定である。
【0204】
C.2.1.アクセプター及びドナーのCre−LoxP融合
下記のプロトコールは、Cre−LoxP反応によってドナー及びアクセプターから多遺伝子融合体を産生するために設計されている。
【0205】
試薬:
Creリコンビナーゼ
標準的な大腸菌コンピテント細胞(pir−株)
抗生物質
96ウェルマイクロタイタープレート
寒天/抗生物質を含む、12ウェル組織培養プレート(又はペトリ皿)
LB培地
【0206】
1. 20μlのCre反応については、1から2μgの各遊離体をおおよそ同量で混合する(5’DNA末端)。ddH2Oを添加して、全体の容量を16から17μlに調節し、次いで、2μlの10×Creバッファー及び1から2μlのCreリコンビナーゼを添加する。
【0207】
2. Cre反応物を37℃(又は30℃)で1時間にわたってインキュベートする。
【0208】
3. 場合によって、2から5μlのCre反応物を分析のための寒天ゲルに試験のために載せる。70℃で10分間にわたって熱不活化した後にゲルに載せることが、非常に望ましい。
【0209】
4. 化学的形質転換については、10から15μlのCre反応物を200μlの化学的コンピテント細胞と混合する。混合物を氷上で15から30分間にわたってインキュベートする。次いで、42度で45から60秒間にわたって熱ショックを実施する。
20μlまでのCre反応物(化学的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量)で、200μlの化学的コンピテント細胞を直接的に形質転換することができる。
【0210】
電気的形質転換については、2μlまでのCre反応物を100μlの電気的コンピテント細胞と直接混合し、1.8から2.0kVでエレクトロポレーター(例えば、BIORAD E.coli Pulser)を使用することによって形質転換できるであろう。
より大量のCre反応物は、電気的形質転換の前に、エタノール沈殿又はPCR精製カラムによって脱塩するべきである。脱塩したCre反応混合物は、好ましくは、電気的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量を超えない。
【0211】
細胞/DNA混合物は、氷上で長期間にわたってインキュベートすることなく、電気的形質転換に直ぐに使用することができるであろう。
【0212】
5. 形質転換(熱ショック又はエレクトロポレーション)のすぐ後に、400μlまでのLB培地(又はSOC培地)を100μlの細胞/DNA懸濁物ごとに添加する。
【0213】
6. 37℃の振盪インキュベーターで一晩又は少なくとも4時間にわたって懸濁物をインキュベートする。
【0214】
2を超える耐性マーカーを含む多重融合プラスミドを回収するためには、懸濁物を37℃で1晩にわたってインキュベートすることが非常に望ましい。
【0215】
7. 所望の組合せの抗生物質を含む寒天上に回収した細胞懸濁物を播種する。37℃で一晩にわたってインキュベートする。
【0216】
8. 一晩のインキュベートの後に現れたコロニーを、上記の工程12から16を参照することによって、この工程で制限消化によって直接検証してよく、特に、1つの多重融合プラスミドのみが望ましい場合に検証してよい。
【0217】
96ウェルマイクロタイタープレート上における単独の抗生物質曝露によるさらなる選択については、工程9に続く。
【0218】
複数の様々な多重融合プラスミドが、1つの96ウェルマイクロタイタープレート上で同時に処理され、かつ、選択され得る。
【0219】
9. 96ウェル抗生物質試験については、各抗生物質寒天プレート由来の4つのコロニーを〜500μlの抗生物質を含まないLB培地に播種する。37℃の振盪インキュベーターで1から2時間にわたって細胞培養物をインキュベートする。
【0220】
10. コロニーのインキュベートの間に、96ウェルマイクロタイタープレートを各ウェルにおいて150μlの抗生物質含有LB培地又は色鮮やかな色素(位置マーカー)で満たす。
【0221】
多重融合プラスミドを同時に選択するために使用する、溶液の典型的な配置は、図7に示す。本発明の当該態様の基礎となる原理は、単独コロニー由来の全ての細胞懸濁物は、4つの単独の抗生物質の全てに曝露される必要があるということである。
【0222】
11. 前培養した細胞培養物の1μlのアリコートを対応するウェルに添加する。次いで、播種された96ウェルマイクロタイタープレートを37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたって180から200rpmでインキュベートする。
プレートを覆うためにパラフィルムを使用することが望ましい。
残りの前培養した細胞培養物は、さらなる播種のために4℃の冷蔵庫で保存することができるであろう。
【0223】
12. 各コロニーに由来する高密度で澄んだ細胞培養物の組合せによって、所望の多重融合プラスミドを含む形質転換体を選択する。対応する抗生物質を含む10mlのLB培地に10から20μlの細胞培養物を播種する。37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたってインキュベートする。
【0224】
13. 一晩インキュベートした細胞培養物を4000gで5から10分にわたって遠心分離する。製造業者の情報にしたがってプラスミドミニプレップキットで細胞ペレットを精製する。
【0225】
14. UV吸収を使用して精製したプラスミド溶液の濃度を測定する(例えば、NanoDrop(商標)1000)。
【0226】
15. 0.5から1μgの精製したプラスミド溶液を20μlの制限消化で消化する(5から10単位のエンドヌクレアーゼを使用する)。推奨される反応条件下で〜2時間にわたってインキュベートする。
【0227】
16. 分析のための寒天ゲル(0.8から1.2%)電気泳動のために5から10μlの消化物を使用する。実際の制限パターンをコンピュータで(例えば、VectorNTIを使用して)予測される制限パターンと比較することによってプラスミドの完全性を検証する。
【0228】
C.2.2.Creによる融合ベクターの解体
以下のプロトコールは、ACEMBLシステムキット(本実施態様の下記E節を参照のこと)の一部を好ましくは形成する、四重融合したpACKSプラスミド(pACE−pDC−pDK−pDS)を解体することによって、例えば、4つの単独ACEMBLベクター(pACE、pDC、pDK、pDS)の回収のために使用することができる。同様に、前記プロトコールは、多重融合構築物に由来する単独遊離体の放出に適する。これは、Cre−LoxP反応、形質転換、及び適当に低減した抗生物質レベルの寒天への播種によって達成される(図6)。遊離体については、コード遺伝子を修飾及び多様化させることができる。次いで、多様化させた構築物は、Cre−LoxP反応によって再供給される。
【0229】
試薬:
Creリコンビナーゼ(及び10×バッファー)
大腸菌コンピテント細胞(pir+株、pir−株は部分的に解体されたアクセプター−ドナー誘導体が望ましい場合にのみ使用される)
抗生物質
【0230】
1. 20μlのDe−Cre反応については、〜1μgの多重融合プラスミドを2μlの10×Creバッファー、1から2μlのCreリコンビナーゼ、及び全反応容量を20μlに調節するddH2Oとともにインキュベートする。
【0231】
2. De−Cre反応物を30℃で1から4時間にわたってインキュベートする。
【0232】
3. 場合によって、2から5μlのDe−Cre反応物を分析のための寒天ゲルに試験のために載せる。
【0233】
70℃で10分間にわたる熱不活化の後に、ゲルに載せることが望ましい。
【0234】
4. 化学的形質転換については、10から15μlのDe−Cre反応物を200μlの化学的コンピテント細胞と混合する。混合物を氷上で15から30分間にわたってインキュベートする。次いで、42℃で45から60秒間にわたる熱ショックを実施する。
【0235】
20μlまでのDe−Cre反応物(化学的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量)で、200μlの化学的コンピテント細胞を直接的に形質転換することができる。
【0236】
電気的形質転換については、2μlまでのDe−Cre反応物を100μlの電気的コンピテント細胞と直接混合し、1.8から2.0kVのエレクトロポレーター(例えば、BIORAD E.coli Pulser)を使用することによって形質転換することができるであろう。
【0237】
より大量のDe−Cre反応物は、電気的形質転換の前に、エタノール沈殿又はPCR精製カラムによって脱塩するべきである。脱塩したDe−Cre反応混合物は、好ましくは、電気的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量を超えない。
【0238】
細胞/DNA混合物は、長期の氷上におけるインキュベートなしで、電気的形質転換にすぐに使用することができるであろう。
【0239】
5. 形質転換(熱ショック又はエレクトロポレーション)の直後に、400μlまでのLB培地(又はSOC培地)を100μlの細胞/DNA懸濁物ごとに添加する。
【0240】
6. 37℃の振盪インキュベーターで懸濁物をインキュベートする。
【0241】
部分的に解体した二重/三重融合体の回収については、37℃の振盪インキュベーターで一晩又は少なくとも4時間にわたって懸濁物をインキュベートする。
【0242】
pACKSプラスミドからの単独ACEMBLベクターなどの個々の遊離体の回収については、37℃のインキュベーターで1から2時間にわたって懸濁物をインキュベートする。
【0243】
7. 所望の組合せの抗生物質を含む寒天に回収した細胞懸濁物を播種する。37℃で一晩にわたってインキュベートする。
【0244】
8. 一晩のインキュベートの後のコロニーは、工程12から16を参照することによって、この工程で制限消化によって直接検証することができる。
【0245】
これは、1つの単独遊離体又は部分的に解体された多重融合プラスミドのみが望ましい場合に、特に推奨される。
【0246】
96ウェルマイクロタイタープレート上における単独抗生物質曝露によるさらなる選択については、工程9に続く。
【0247】
複数の様々な単独遊離体/部分的に解体された多重融合プラスミドが、1つの96ウェルマイクロタイタープレート上で同時に処理及び選択され得る。
【0248】
9. 96ウェル抗生物質試験については、抗生物質を含まない〜500μl LB培地に、各抗生物質寒天プレート由来の4つのコロニーを播種する。37℃の振盪インキュベーターで1から2時間にわたって細胞培養物をインキュベートする。
【0249】
10. コロニーのインキュベートの間に、96ウェルマイクロタイタープレートを150μlの抗生物質含有LB培地又は色鮮やかな色素(位置マーカー)で対応するウェルにおいて満たす。
【0250】
図7を参照すると、4つの様々な単独遊離体/部分的に解体された多重融合プラスミドの同時選択のために使用される、溶液の類似の配置を提供することができる。本発明の当該態様の基礎となる原理は、単独コロニーに由来する全ての細胞懸濁物が、4つの抗生物質全てに別々に曝露されるべきであるということである。
【0251】
11. 前培養した細胞培養物の1μlのアリコートを対応するウェルに添加する。次いで、播種した96ウェルマイクロタイタープレートを37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたって180から200rpmでインキュベートする。
【0252】
プレートを覆うためにパラフィルムを使用することが望ましい。
残った前培養した細胞培養物は、さらなる播種のために4℃の冷蔵庫で保存することができるであろう。
【0253】
12. 各コロニー由来の高密度で澄んでいる細胞培養物の組合せによって、所望の単独遊離体/部分的に解体された多重融合プラスミドを含む形質転換体を選択する。対応する抗生物質を含む10mlのLB培地に、10から20μlの細胞培養物を播種する。37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたってインキュベートする。
【0254】
13. 一晩インキュベートした細胞培養物を4000gで5から10分間にわたって遠心分離する。製造業者の情報にしたがって、プラスミドミニプレップキットを使用して細胞ペレットを精製する。
【0255】
14. UV吸収を使用することによって、精製したプラスミド溶液の濃度を測定する(例えば、NanoDrop(商標)1000)。
【0256】
15. 0.5から1μgの精製したプラスミド溶液を20μlの制限消化で消化する(5から10単位のエンドヌクレアーゼを使用する)。望ましい反応条件下において、〜2時間にわたってインキュベートする。
【0257】
16. 分析のための寒天ゲル(0.8から1.2%)電気泳動のために5から10μlの消化物を使用する。実際の制限パターンをコンピュータで(例えば、VectorNTIを使用して)予測される制限パターンと比較することによって、プラスミドの完全性を検証する。
【0258】
17. 場合によって、4つの単独ACEMBLベクター全てをpACKSプラスミドから回収する間に、1又は複数の単独ACEMBLベクターが1つのDe−Cre反応から遊離できなかった場合に、ただ、所望の単独ACEMBLベクターを含む部分的に解体された二重/三重融合体を選択し、第二のDe−Cre反応を実施する(工程1から8を繰り返す)ことができる。
【0259】
典型的には、2までの連続的なDe−Cre反応が、4つの単独ACEMBLベクター全てをpACKSプラスミドから回収するのに十分であり、二重/三重融合体からの単独遊離体の遊離は、pACKSプラスミド(四重融合体)からよりも効率的であろう。同じ原理が、本発明に係るACEMBLシステムに基づく任意の他の多重融合プラスミドの解体にもあてはまる。
【0260】
C.3.共形質転換による細菌における共発現
タンパク質複合体は、発現株に共形質転換した2つの別個のベクターからも発現させることができる。共形質転換したベクターは、同じ又は異なる複製起点を有し得るが、それらは異なる耐性マーカーをコードする必要がある。プラスミドpACE(アンピシリン耐性マーカー)及びpACE2(テトラサイクリン耐性マーカー)は、ColE1由来レプリコンを有し、そのため、全ての共通の発現株で使用することができる。pACE及びpACE2誘導体(必要な場合には、融合したドナーも含む)は、発現株に共形質添加することができ、二重形質転換体が、アンピシリン及びテトラサイクリン抗生物質の双方を含む寒天プレートに播種することによって選択される。
【0261】
形質転換は、標準の形質転換プロトコール(例えば、上記Ausubel et al.(ed.)の最新版を参照のこと)を使用して実施する。
【0262】
D.自動化
上述のとおり、本発明の核酸、ベクター、及び方法を使用する多タンパク質複合体のクローニング及び発現は、現在のロボット技術を利用する自動化装置に特に適している。
【0263】
以下の一般的なプロトコールでは、Tecan Freedom Evoll 200ピペッティングデバイスの例を挙げる。前記ピペッティングデバイスは、典型的には、リキッドハンドリングアーム1(LiHa1)、4固定チップ(鉄製ニードル)、4使い捨てチップ用コンテナ(Diti’s)、250μlシリンジ、リキッドハンドリングアーム2(LiHa2)、8固定チップ(鉄製ニードル)、2.5mlシリンジ、ロボットマニピュレーターアーム(RoMa/プレートの輸送)、バージョンロング(version long)を備えている。前記ワークステーションは、通常、以下の統合装置:サーモサイクラーPTC−200(Biorad)、Te−Shake、加熱可能なプレートシェイカー(Tecan)、Variomagサーモシェイカー、加熱及び冷却可能なプレートシェイカー(inheco)、Te−Vacs、フィルタープレート用デュアルバキュームステーション(Tecan)、Safirell、UV VISプレートリーダー(Tecan)、及び冷却ユニット400W(FRYKAマルチスター)を備えている。
【0264】
D.1.自動化SLICプロセス
自動化SLICのためのワークフローの代表例を図22に図示する。
【0265】
工程1:最初のPCR
ソースプレート:PCRの鋳型(cDNA 約0.2μg/μl)を含む96ウェル標準マイクロタイタープレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:サンプルミックスプレート(96ウェルPCRプレート;Eppendorf)、1%アガロースE−Gel(登録商標)(Invitrogen)、Phusion(登録商標)DNAポリメラーゼマスターミックス、20μMのオリゴヌクレオチドプライマー、2×DNAローディングダイ(2×DLD)(Fermentas)、E−Gel(登録商標)Low Range定量DNAラダー(Invitrogen)、BSAを含む10×バッファーTango(登録商標)(Fermentas)、DpnI(Fermentas)
PCRプログラム:
11×[98℃で20秒間→60から50℃で30秒間(1回おきに1℃低減させる)→72℃で3分間]
19×[98℃で20秒間→50℃で30秒間→72℃で3分間]
72度で3分間
10度に維持
DpnI消化プログラム:
37℃で3時間
10℃で1分間
手順:
チップ洗浄→89μlのPCRマスターミックスをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→ワークリストに記載の1μlの鋳型DNAをピペットで入れる
チップ洗浄→5μlの各プライマーをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→PCRプログラムを実行する
チップ洗浄→10μlのBSAを含む10×バッファーTango(登録商標)をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→5μlのDpnIをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→DpnI消化プログラムを実行する
チップ洗浄→10μlの2×DLDをサンプルミックスプレートの各ウェルにピペットで入れる
チップ洗浄→15μlの各DNAマーカーをE−gelマーカースロットにピペットで入れる
チップ洗浄→10μlのPCR産物をサンプルミックスプレートの2×DLDにピペットで入れる
チップ洗浄→15μlのサンプルミックスをE−gelサンプルスロットにピペットで入れる
チップ洗浄→E−Gel(登録商標)を25分間実行する
結果を評価する
【0266】
工程2:PCR精製
ソースプレート:PCRサンプルを含む96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
ターゲットプレート:96ウェルマイクロタイター溶出プレート(Macherey−Nagel)
材料:PCR精製キット、NucleoSpin96Extract IIキット(Macherey−Nagel)
手順:製造業者の情報(http://www.macherey-nagel.com/tabid/10887/default.aspx)にしたがう
【0267】
工程3:T4 DNAポリメラーゼ反応
ソースプレート:96ウェルマイクロタイター溶出プレート(Macherey−Nagel)
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:再蒸留(bidest)水、10×T4 DNAポリメラーゼ反応バッファー(Novagen)、100mM DTT、2M尿素、T4 DNAポリメラーゼ(Novagen LIC正規品)、500mM EDTA
インキュベーションプログラム:
23℃で10分間(プログラム1)
75℃で20分間(プログラム2)
手順:
チップ洗浄→6μlの水をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlの10×反応バッファーをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→1μlの100mM DTTをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlの2M尿素をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→先のPCRに由来する8μlのDNAサンプルをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→0.5μlのT4 DNAポリメラーゼをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラム1を実行する
チップ洗浄→1μlの500mM EDTAをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラム2を実行する
【0268】
工程4:アニーリング
ソースプレート:T4 DNAポリメラーゼ反応のリアクションプレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:再蒸留(bidest)水、10×DNAリガーゼ反応バッファー(NEB)、直線化したベクター
インキュベーションプログラム:65℃で8分間→0.4℃/分で35度まで低下→10℃で1分間
手順:
チップ洗浄→ワークリストに記載の150ngのT4 DNAポリメラーゼ処理したインサートDNAをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→ワークリストに記載の150ngの直線化したベクターをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラムを実行する
【0269】
工程5:大腸菌の形質転換
ソースプレート:アニーリング工程のリアクションプレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
培養プレート:2ml 96ウェルプレート(Nunc)
ターゲットプレート:適当な抗生物質(標準的な濃度で使用する:アンピシリン100μg/ml、カナマイシン50μg/ml、スペクチノマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール30μg/ml)を含む2mlのLB寒天を備えた12ウェル細胞培養プレート
材料:形質転換について化学的にコンピテントな大腸菌細胞(Xl1blue)、SOC培地
形質転換プログラム:
サーモサイクラーを42℃に加熱
42℃で30秒間インキュベート
冷却した(0℃)ピペッティングキャリアにすぐに移す
手順:
チップ洗浄→100μlのコンピテント大腸菌細胞をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→アニーリング工程に由来する10μlのDNAサンプルをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→0℃で30分間インキュベートする
形質転換プログラムを実行する
0℃で5分間インキュベートする
チップ洗浄→250μlのSOC培地を培養プレートにピペットで入れる
チップ洗浄→形質転換ミックスを培養プレートにピペットで入れる
37℃及び720rpm(Te−Shake Shaker)で2時間インキュベートする
チップ洗浄→50μlの培養物をターゲットプレート(寒天プレート)にピペットで入れる
チップ洗浄→12Hzで1分間にわたってターゲットプレートを振盪する(プレートアウト)
一晩にわたって37℃でターゲットプレートをインキュベートする
【0270】
工程6:クローンを選択し、一晩培養を開始する(手作業工程)
ソースプレート:大腸菌コロニーを含む12ウェル細胞培養プレート
ターゲットプレート:24ウェル培養プレート
材料:2×TY培養培地、培養プレートを備えたインキュベータ
手順:反応ごとに4つのコロニーを選択し、24ウェル培養プレートの3mlの2×TY培地に移す。37℃及び約220rpmで一晩インキュベートする。
【0271】
工程7:プラスミド抽出(ミニプレップ)
ソースプレート:24ウェル培養プレート(通常3ml培養)
ターゲットプレート:96ウェルマイクロタイター溶出プレート(Macherey−Nagel)
材料:プラスミド抽出キット、NucleoSpin Robot 96 Plasmid Kit(Macherey Nagel)
手順:製造業者(http://www.machereynagel.com/tabid/10885/default.aspxを参照のこと)にしたがう
【0272】
工程8:評価
プラスミド収率は、製造業者にしたがって、Thermo Scientific NanoDrop(商標)1000分光光度計でUV吸収を測定することによって定量する。プラスミドの完全性はE−gel(Invitrogen)によって評価した。
【0273】
SLICプロトコールの有効性は、手作業及びロボットの態様で評価する。比較結果を表2に示す。結果は、調製した一連の25の異なるドナー/アクセプター構築物に基づく。
【0274】
【表2】
【0275】
D.2 自動化Cre融合プロセス
自動化Cre融合のためのワークフローの代表例を図23に図示する。
【0276】
工程1:Cre−LoxPプラスミド融合反応
ソースプレート:Cre−LoxP融合に適するプラスミドを含む、プラスミド抽出工程に由来する96ウェルマイクロタイター溶出プレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:再蒸留(bidest)水、10×Cre反応バッファー(NEB)、Creリコンビナーゼ(NEB)
インキュベーションプログラム:37℃で1時間→10℃で1分間
手順:
チップ洗浄→6μlの再蒸留(bidest)水をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlの10×cre反応バッファーをリアクションプレートにピペットで入れる。
チップ洗浄→ワークリストに記載のCre組換えに適するプラスミドDNAをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlのCreリコンビナーゼをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラムを実行する
全反応容量:20μl
【0277】
工程2、3、及び4:大腸菌形質転換及びプラスミド抽出:
Cre組換え工程に由来するリアクションプレートをソースプレートとして使用し、SOC培地の回復時間が全体で4時間に延長した以外は、上述のD.1節に記載の方法と同一である。化学的コンピテントMach 1細胞を形質転換に使用する。3及び4つのベクターを用いたCre反応については、抗生物質濃度(標準の仕様濃度:アンピシリン100μg/ml、カナマイシン50μg/ml、スペクチノマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール30g/ml)が半分の寒天プレートを使用する。
【0278】
工程5:評価
プラスミド融合体収率は、製造業者の説明書にしたがって、Thermo Scientific NanoDrop(商標)1000分光光度計でUV吸収を測定することによって定量する。プラスミドの完全性は、未消化及び消化したサンプルのE−gel(Invitrogen)によって評価する。個々の融合体に特徴的な消化パターンをもたらす適切な制限部位が、Vector NTI(Invitrogen)を使用することによって同定し、制限マッピングに使用する。
【0279】
Cre反応の有効性は、Evollリキッドハンドリングワークステーションを使用することによって、一連の融合反応を各々3回重複して実施することによって試験する。結果は表IIIにまとめる。
【0280】
【表3】
【0281】
D.3.高速マイクロバッチI.MAC
ソースプレート:2mlディープウェルプレート(Eppendorf)
フィルタープレート:ガラスフィルタープレート(Novagen)
ターゲットプレート:標準のマイクロタイタープレート(Greiner)
材料:20%エタノール中のNi−NTAバルクビーズ50%(Ge−Healthcare)、−20℃の冷凍庫、マイクロタイタープレートに適する卓上遠心分離機、マイクロチップを備えた超音波装置、特定のタンパク質に適するIMAC結合及び溶出バッファー(Berrow et al., Acta Cryst. (2006). D62, 1218 − 1226)
手順:
サンプル調製(オフライン)
ソースプレートで直接的に3000g(4℃)の遠心分離によって、所望のタンパク質を発現する大腸菌を回収する
細胞ペレットを30分間、−20℃で凍結させる
細胞ペレットを15分、室温で融解する
フィルタープレートの調製
チップ洗浄→200μlで20回上下にピペッティングすることによってNi−NTAビーズ懸濁物を再懸濁する→200μlのビーズ懸濁物をフィルタープレートに移す
チップ洗浄→30秒間にわたって550mbarで吸引を適用する(20%エタノールを除去する)
チップ洗浄→1mlの平衡化バッファー(例えば、結合バッファー)を樹脂にピペットで入れる
チップ洗浄→60秒間にわたって300mbarで吸引を適用する(平衡化)
IMAC精製、調製
チップ洗浄→1mlの結合バッファーをソースプレートのサンプルにピペットで入れる
チップ洗浄→750μlで10回上下にピペッティングすることによって細胞ペレットを再懸濁する
チップ洗浄
サンプルの超音波処理(オフライン)
細胞の完全な溶解を確実にするためにサンプルを超音波処理する
IMAC精製、ローディング、及び溶出
チップ洗浄→全溶解物をフィルタープレートに移す
チップ洗浄→90秒間にわたって300mbarで吸引を適用する(結合工程)
チップ洗浄→1mlの洗浄バッファーをサンプルにピペットで入れる
チップ洗浄→90秒間にわたって300mbarで吸引を適用する(洗浄工程)
洗浄工程を3回繰り返す
チップ洗浄→100μlの溶出バッファーをサンプルにピペットで入れる
チップ洗浄→室温で3分間にわたってインキュベートする
90秒間にわたって650mbarで吸引を適用する(溶出工程)
【0282】
評価
溶出したサンプル(10μlから12μl)は、Biorad Minigel Systemを使用して12%変性ゲルに手作業でロードし、135Vで25分間にわたって前実行し、次いで、185Vで65から70分間にわたって実行する。ゲルは、標準の手順にしたがってクマシーブリリアントブルーで染色する。
【0283】
E.原核生物宿主におけるタンパク質発現のためのACEMBLキット
原核生物宿主における発現のための好ましい実施態様に係るキットは、以下のものを含む:
- BW23473、BW23474細胞1、及び/又はCreリコンビナーゼ
- pACE (アクセプター)、及びpDC、pDK、pDS (ドナー)から作製したpACKS四重融合ベクター2
- pACE2ベクター
- pACE-VHLbc、pDK-BFP、pDS-mGFP3から作製したpACE-[VHLbc/BFP/mGFP]対照プラスミド三重融合ベクター
1 ドナー誘導体の増殖のためのpir遺伝子を発現する大腸菌株 (pir+ 背景を有する任意の他の株を使用することができる)。
2 この融合ベクターは、pACE、pDC、pDK、及びpDSのCre-LoxP反応によって作製した。これはアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、及びスペクチノマイシンに耐性を有する。個々のACEMBLベクターは、プロトコールC2.2.に上述したとおり、Cre-LoxPを介する解体によって当該四重融合体から遊離することができる。本実施態様に係る単独ACEMBLベクター及びpACKS四重融合体の配列は、配列番号2から7に提供している。
3 pDS-mGFPは、eGFPのN末端に融合したコイルドコイルを含む (Berger et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 12177-82を参照のこと)。
【0284】
任意の成分は以下のとおりである:
- 抗生物質: アンピリシン、クロラムフェニコール、カナマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン
- 酵素:
T4 DNAポリメラーゼ(遺伝子の組換え挿入用)
Phusionポリメラーゼ(DNAのPCR増幅用)
制限酵素及びT4 DNAリガーゼ(望ましい場合の従来のクローニング用)
【0285】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0286】
上述のACEMBLシステムを使用することによる多タンパク質発現の実施例を、既に概説したような、以下に示す遺伝子の組合せの方法で示す。開示する反応は、上記C節に挙げたプロトコールにしたがって手作業で実施するか、又は上記D節にしたがって適合したプロトコールでTecan Freedom Evoll 200ロボットで実施した。
【0287】
実施例1:ACEMBLベクターへのSLICクローニング:ヒトTFIIF
C末端オリゴヒスチジンタグを有する全長ヒトRAP74をコードする遺伝子及び全長ヒトRAP30をコードする遺伝子を、上述のプロトコールにしたがって、T7InsFor(5’-TCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGG-3’; 配列番号20)及びT7Insrev(5’-CCTCAAGACCCGTTTAGAGGCCCCAAGGGGTTATGCTAG-3’; 配列番号21)のプライマー対を使用することによって、pET系プラスミド鋳型(Gaiser et al. (2000) J. Mol. Biol. 302, 1119-1127)から増幅した。直線化したベクター骨格は、双方のケースにおいてT7VecFor(5’CTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGG-3’; 配列番号22)及びT7VecRev(5’-CCCTATAGTGAGTCGTATTAATTTCGCGGGA-3’; 配列番号23)のプライマー対を使用することによって、pACE及びpDCからPCR増幅によって得られた。上記プロトコール1(C節)にしたがって、pACE−RAP30及びpDC−RAP74hisを生産した(図8)。これらのプラスミドは、Cre−LoxP反応によって融合した(上記C節を参照のこと)。11の二重耐性(Cm、Ap)コロニーのBstZ17I/BamHI二重消化による制限マッピングの結果は、1%E−gel電気泳動(M:NEB 1kb DNAマーカー)からのゲル切片によって図8に示す。全ての試験したコロニーは、予測されたパターン(5.0+2.8kb)を示した。1つのクローンでBl21(DE3)細胞を形質転換した。発現及びNi2+捕捉及びS200クロマトグラフィーによる精製によって、ヒトTFIIF複合体が得られた(図21A)。
【0288】
全長ヒトTFIIFの高レベルの可溶性発現(図21A)は注目すべきであり、サブユニットの個々の発現では不溶性のものが常に得られる。以前は、ヒトTFIIF二量体化ドメインの結晶構造分析は、限定的なタンパク質分解、再クローニング、設計された断片の不溶性発現、及び共再フォールディングの多数の反復するサイクルが必要であった(上記Gaiser et al.(2000))。同様の実験状況は、過去のタンパク質複合体研究において一般的であった。これで、必要とされる大きな労力の投資は、本発明の核酸及びベクター、特に、ACEMBLシステムを使用することによって顕著に低減される。
【0289】
実施例2:SLICによるポリシストロン挿入:ヒトVHL/エロンギンb/エロンギンc複合体
N末端で6ヒスチジン−チオレドキシン融合タグに融合した、Von Hippel Lindauタンパク質(アミノ酸54−213)をコードする遺伝子を、プライマーT7InsFor(上記表1を参照のこと)及びSmaBamVHL(5’-GAATTCACTGGCCGTCGTTTTACAGGATCCTTAATCTCCCATCCGTTGATGTGCAATG-3’; 配列番号45)を使用することによって、プラスミドpET3−HisTrxVHLからPCR増幅した。SmaBamVHLプライマーは、VHL遺伝子の3’末端のインサートに特異的な配列(終止コドンを含む)によって3’で伸長した、SmaBamアダプター配列(表1;配列番号17)の誘導体である。全長エロンギンbをコードする遺伝子は、対応するアダプター(表1)の誘導体である、プライマーBamSmaEB(5’-GGATCCTGTAAAACGACGGCCAGTGAATTCG CTAGCTCTAGAAATAATTTTGTTTAAC-3’; 配列番号46)及びSacHindEB(5’-GAGCTCGACTGGGAAAACCCTGGCGAAGCTTAGATCTGGATCCTTACTGCACGGCTTGTTCATTGG-3’; 配列番号47)を使用することによって、pET3−エロンギンBからPCR増幅した。エロンギンc(アミノ酸17−112)の遺伝子は、対応するアダプター(表1)の誘導体である、プライマーHindSacEC(5’-AAGCTTCGCCAGGGTTTTCCCAGTCGAGCTCCAATTGGAATTCGCTAGCTCTAG-3’; 配列番号48)及びBspEco5EC(5’-GATCCGGA TGTGAAATTGTTATCCGCTGGTACCAAGCTTAGATCTGGATCCTTAACAATCTAAGAAG-3’; 配列番号49)を使用することによって、pET3−エロンギンCから増幅した。ベクター骨格は、プライマーTn7VecRev及びEco5Bsp並びに鋳型としてpACEを使用することによって、PCR増幅した(図9)。多断片SLICは、上記プロトコール2(C節)にしたがって実施して、トリシストロンを含むpACE−VHLbcが得られた。アンピシリンを含む寒天プレートにクローンを播種した。配列決定によって検証された陽性クローンは、
下記の共発現実験に使用した(実施例5)。
【0290】
実施例3:ホーミングエンドヌクレアーゼ/BstXIモジュール:酵母RES複合体
酵母タンパク質(全て全長)Pml1p、Snu17p、及びBud13pの各々をコードする、プラスミドpCDFDuet−Pml1p、pRSFDuet−Snu17p−NHis、及びpETDuet−Bud13pは、Simono Trowitzsch博士およびMarkus Wahl博士(Max−Planck Institute for Biophysical Chemistry,Gottingen,Germany)から得られた。Snu17pは、N末端に融合した6ヒスチジンタグを含む。His6タグを有するSnu17pをコードする遺伝子は、制限酵素NcoI及びXhoIを使用することによって、pRSFDuet−Snu17pNHisから切除し、NcoI/XhoI消化したpACE構築物(NcoI及びXhoI部位の間に無関係の遺伝子を含む)に連結し、pACE−Snu17が得られた。Bud13pをコードする遺伝子は、XbaI及びEcoRVで制限消化することによってpETDuet−Bud13pから遊離し、XbaI/PmeI消化したpDCに入れて、pDC−Bud13を得た。Pm1lpをコードする遺伝子は、NdeI及びXhoIで制限消化することによって、pCDFDuet−Pml1pから遊離し、NdeI/XhoI消化したpDCに入れて、pDC−Pml1を得た。次いで、Bud13pのための発現カセットを、PI−SceI及びBstXIで消化することによってpDC−Bud13pから遊離した。遊離した断片は、PI−SceI消化し、かつ、アルカリホスファターゼで処理したpDC−Pml1pに挿入し、pDC−Bud13p−Pml1pを得た。
【0291】
pACE−Snu17及びpDC−BudPmlは、Cre−LoxP反応によって融合し、アンピシリン及びクロラムフェニコールを含む寒天プレートに播種することによって選択した。融合プラスミドでBl21(DE3)細胞を形質転換した。発現並びにNi2+捕捉及びS200サイズ排除クロマトグラフィーによる精製によって、三量体であるRES複合体が得られた。
【0292】
本発明の方法によって酵母RES複合体をクローニングするためのストラテジーは、図10に図示している。
【0293】
実施例4:共形質転換による共発現:ヒトNYB/NYC
タンパク質NYB(アミノ酸49−141)及びNYC(アミノ酸27−12)をコードする遺伝子は、ベクターpACYC18411−NYB及びpET15−NYCの各々から切除した(Romier et al. (2003 J. Biol. Chem. 278, 1336-1345)。NdeI及びBamHIをNFYBに使用した。XbaI及びBamHIをNYCに使用した。かくして、タンパク質のN末端に6ヒスチジンタグを取込んだ。NYBインサートは、NdeI及びBamHIで消化したpACEに連結した。NYCインサートは、XbaI及びBamHIで消化したpACE2に連結した。pACE−NFYB及びpACE2−NFYCで、pLysSプラスミドを含むBL21(DE3)細胞を形質転換した。アンピシリン、テトラサイクリン、及びクロラムフェニコールを含む寒天プレート上での選択によって、三重耐性コロニーが得られた。複合体が発現し、Ni2+捕捉(IMAC)及びS75HR(Pharmacia)サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0294】
実施例5:アクセプター−ドナー融合体からの共発現
三量体のタンパク質複合体(VHLbc: VonHippel-Lindauタンパク質 アミノ酸54-213 / 全長エロンギンB / エロンギンC アミノ酸 17-112)(Stebbins et al. (1999) Science 284, 455-61)、AAA ATPアーゼ FTsH(アミノ酸147−610)をコードする遺伝子、及び蛍光マーカーをコードする2つの遺伝子(BFP及びGFP)をコードする6つの異種性遺伝子は、図20に示すように組み立てた。1回のCre反応において、1つのアクセプター(pACE−VHLbc)及び3つのドナー(pDC−FtsH、pDK−BFP、pDS−mGFP)の全ての組合せが得られ、選択した。これは、6つの異種遺伝子全てを含む四重融合体を含む(図20を参照のこと)。クローンは、C節のACEMBLシステムについて上述したとおりに96ウェルマイクロタイタープレートによって検証する。発現及びNi2+親和性捕捉によって、タグを有しない蛍光マーカーの免疫染色と組み合わせて、多タンパク質の発現の成功を確認した(図16及び17B)。タンパク質は、自己誘導培地を使用し、スモールスケールにおいて、24ウェルディープウェルプレート中のBL21(DE3)で発現させた(Studier (2005) Protein Expr. Purif. 41, 207-34)。制限マッピングによって、培地中において1つの抗生物質のみに曝露する場合ですら、大きな融合プラスミドであっても複数(60超)の世代にわたって安定である
【0295】
実施例6:YidC−SecYEGDFホロトランスロコンの発現
図21Cに示すとおり、ACEMBLシステムを使用して、全部で33の膜貫通ヘリックスを含む大きな多タンパク質複合体であるYidC−SecYEGDFホロトランスロコンを生産した。この機構は、フォールドされていないポリペプチドを細胞膜に輸送するために使用されるか、又は細菌の周辺質への転位に使用される(Duong et al. (1997) EMBO J. 16, 2757-68)。
【0296】
実施例7:昆虫細胞におけるヒトIKK複合体の発現
上記C.1.節に概説した単独遺伝子のACEMBLシステムへの挿入のためのプロトコールにしたがって、IKK1(IKKαとも称される)、IKK2(IKKβとも称される)、及びIKK3(Nemoとも称される)の遺伝子を、pACEBac1、pIDC、及びpIDSの各々にクローニングした(得られたプラスミドpACEBac1−HisIKK1、pIDC−CSIKK2、及びpIDS−IKK3のマップは、図46、47、及び48の各々に示す)。IKK1−2二重融合体(pIDC−CSIKK2とpACEBac1−HisIKK1)及びIKK1−2−3三重融合体(3つのベクターの全て)は、C.2節に上述したCre−LoxP融合によって作製した。その融合体は、バキュロウイルスゲノム(EMBac)を細菌人工染色体として有する適切な宿主細胞に導入した。前記ベクター融合体は、Tn7転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込んだ。有効な組み込みは、青色/白色スクリーニングによって評価した。複合ウイルスのDNAは、白色クローンから調製し、Sf21細胞に感染させた。
【0297】
実施例8:H1N1インフルエンザウイルス様粒子の発現
タンパク質HA、NA、M1、及びM2を含む、ブタインフルエンザウイルス(H1N1タイプのインフルエンザウイルス)のウイルス様粒子(VLP)は、以下のストラテジーによって昆虫細胞(Sf21)で発現させた:C.1節に概説した単独遺伝子挿入によって、HA及びNAをpACEBac1にクローニングした。同じ手順によって、M1及びM2をコードする遺伝子をpIDCにクローニングした。HA−NAおよびM1−M2の各々の二重発現カセットを、各々のMIEにおけるHE−BstXI部位を使用することによって産生して(上記C1.4節を参照のこと)、プラスミドpACEBac−HA−NA(プラスミドマップは図49を参照のこと)及びpIDC−M1−M2(プラスミドマップは図50を参照のこと)を得た。完全なH1N1インフルエンザVLPをコードするベクターは、上記C.2節のプロトコールにしたがって、pACEBac−HA−NAをpIDC−M1−M2とCreLoxP融合することによって産生した。融合ベクターは、細菌人工染色体としてバキュロウイルスゲノム(EMBac)を有する適切な宿主細胞に導入した。融合ベクターは、Tn7転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込んだ。有効な組み込みは、青色/白色スクリーニングによって評価した。複合ウイルスのDNAは、白色クローンから調製し、Sf21細胞にトランスフェクトした。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素によって切断され得ないように、HE及びXが選択される、核酸に関する。本発明の別の主題は、本発明の核酸を含むベクター、前記核酸及び/又は前記ベクターを含む宿主細胞、前記ベクター及び宿主細胞を作製して多タンパク質複合体をクローニング及び/又は発現させるためのキット、複数の発現カセットを含むベクターを製造するための方法、並びに多タンパク質複合体を製造するための方法に関する。本発明は、複数のシングルベクター(「ベクター単位」)を融合ベクターに組み立てる方法、及びそのような複数のベクター単位を含む融合ベクターをより低次の融合ベクター及び/又はシングルベクターに解体する方法にも関する。本発明は、複数のベクター単位を含む融合ベクターにも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内の複数の重要なプロセスは、高度な真核生物では10以上のサブユニットを含む、連動的な複数の分子装置へと会合するタンパク質によって制御される(Rual, J.F. et al. Nature 437, 1173-1178 (2005); Charbonnier, S., Gallego, O. and Gavin, A.C. Biotechnol. Annu. Rev. 14, 1-28 (2008))。これは、現在、生理的に関連する分子装置を解明することを目的とする機能及び構造研究に大きな影響を与えている。したがって、複合体の研究は、現代生物学において、次第に肝要なものとなっている。しかしながら、複数のマルチサブユニット複合体が豊富でないこと及び不均一であることが多いという性質によって、起源から抽出することが妨げられる場合が多い。
【0003】
組換え技術による生産方法は、確かに、生命科学研究に非常に大きな影響を与えた。特に、発現宿主として大腸菌は一般的である。タンパク質の機能分析及びそれらの分子構造の解明の成功は、切り詰め、変異、及び精製タグまたは特定のプロモーター/ターミネーター因子を用いた伸長などの変化を導入することに決定的に依存する場合が多い。実験のスループットに関する次の必要条件として、単独のオープンリーディングフレーム(ORF)を多様化させることは、すでに注目に値する。特に、構造ゲノミクスコンソーシアムは、サブクローニングのルーチンの標準化及びこれの自動化の実行を求めている。複数のORFを迅速に多様化してマルチサブユニット複合体に組み立てる必要がある際の作業負荷の指数関数的な増大がやっかいであり、未解決の課題である。
【0004】
近年、真核生物及び原核生物の宿主において複数の遺伝子の発現のための複数の系が導入されている。例えば、Fitzgerald et al. (2006) Nat. Methods 3, 1021-1032; Tan et al. (2005) Protein Expr. Purif. 40, 385-395 (2005); Tolia, N.H. and Joshua-Tor (2006). Nat. Methods 3, 55-64; Chanda et al. (2006) Protein Expr. Purif. 47, 217-224; Scheich et al. (2007). Nucleic Acids Res. 35, e43 (2007)を参照のこと。真核生物における発現系、特に、バキュロウイルス/昆虫細胞発現(上記のFitzgerald et al. (2006))の大きな改善にもかかわらず、低コスト及び複数の特殊化した発現株が得られることなどの複数のもっともな理由のために、大半の研究所において未だに大腸菌が主要な手段のままである。現在の大腸菌の共発現系は、本質的には、単独の発現カセット(上記Tolia et al. (2006); 上記Chanda et al. (2006))又は同一のプロモーターの制御下で複数の遺伝子を構成するプロポリシストロン(上記Tan et al. (2005))のいずれかとして、コードする遺伝子の連続的な主には従来どおりの(すなわち、制限/連結)サブクローニングに依存する。これは、特に構造分子生物学に典型的に必要とされるスループットにおいて、複数のサブユニットを有するタンパク質複合体の製造のためのこれらの共発現技術の適用性を大きく制限する。
【0005】
そのような大部分が連続的な(一度に一遺伝子)構築の主な障害は、多タンパク質複合体が一度製造、精製、及び特性決定されると、発現実験を迅速に修正することに関して、柔軟性が本質的にないことに起因する。しかしながら、タンパク質サブユニットの変化を含む、そのような修正は、現代の機能及び構造研究において必須である。
【0006】
上記Fitzgerald et al. (2006)及びWO-A-2005/085456は、発現カセットへの複数の遺伝子の反復性クローニングを可能にする特別に設計されたペアの制限酵素部位によって、2つの発現カセットがヘッドトゥーヘッド、ヘッドトゥーテール、又はテールトゥテールの配向で隣接する、いわゆるマルチプリケーションモジュール(multiplication module)を有するポリヌクレオチドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO-A-2005/085456
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Rual, J.F. et al. Nature 437, 1173-1178 (2005)
【非特許文献2】Charbonnier, S., Gallego, O. and Gavin, A.C. Biotechnol. Annu. Rev. 14, 1-28 (2008)
【非特許文献3】Fitzgerald et al. (2006) Nat. Methods 3, 1021-1032
【非特許文献4】Tan et al. (2005) Protein Expr. Purif. 40, 385-395 (2005)
【非特許文献5】Tolia, N.H. and Joshua-Tor (2006). Nat. Methods 3, 55-64
【非特許文献6】Chanda et al. (2006) Protein Expr. Purif. 47, 217-224
【非特許文献7】Scheich et al. (2007). Nucleic Acids Res. 35, e43 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、従来の構築物の欠点からして、本発明が解決しようとする技術的課題は、多タンパク質複合体のクローニング及び発現のための用途の広い系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の技術的課題を解決するための手段は、特許請求の範囲に記載の発明の実施態様を提供することによって達成される。
【0011】
特に、本発明は、少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸(又はポリヌクレオチド)であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素によって切断され得ないように、HE及びXが選択される、核酸(又はポリヌクレオチド)に関する。
【0012】
本発明によれば、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、かつ、DNA、RNA、又は1つ若しくは複数のヌクレオチドアナログを含む種を意味する。本発明に係る好ましい核酸又はポリヌクレオチドはDNAであり、最も好ましくは二本鎖(ds)DNAである。
【0013】
好ましくは、本発明の核酸は、以下の配列要素を有する:
HE−Prom−MCS−Term−X又はHE−Prom−MCS−X
ここで、
Promはプロモーターであり;
MCSはマルチプルクローニングサイトであり;及び
Termはターミネーターである。
【0014】
上記の配置は、以下においては、多くの場合に「マルチプルインテグレーションエレメント」(MIE)と称する。
【0015】
本発明において有用なプロモーターは、原核生物、ウイルス、哺乳動物、又は昆虫細胞起源のプロモーター又はそれらの組合せを含むが、それらに限らない。同様に、本発明に係る核酸において有用なターミネーターは、原核生物、ウイルス、哺乳動物、昆虫細胞起源のターミネーター又はそれらの組合せを含むが、それらに限らない。本発明に係る用語「マルチプルクローニングサイト」は、上述の部位Xとは異なる少なくとも1つの制限酵素部位を有する配列を意味する。本発明に係るMCSは、例えば、任意の市販のプラスミドのマルチプルクローニングサイトに由来してよい。
【0016】
好ましい原核生物のプロモーターは、Lac、T7、アラビノース、及びtrcプロモーターである。本発明において有用な別のプロモーターは、ウイルスプロモーター、特に、バキュロウイルスプロモーター、例えば、polh、p10、及びpXIV極後期(very late)バキュロウイルスプロモーター、vp39バキュロウイルス後期プロモーター、vp39polhバキュロウイルス後期/極後期ハイブリッドプロモーター、PCAP/polh、pcna、etl、p35、egt、da26バキュロウイルス早期プロモーターである。本発明において有用な別のプロモーターは、CMV、SV40、UbC、EF−1α、RSVLTR、MT、PDS47、Ac5、PGAL、及びPADHなどのプロモーター配列である。
【0017】
本発明において有用なターミネーター配列の例は、T7、SV40、HSVtk、又はBGHである。
【0018】
本発明に係るマルチプルクローニングサイトは、少なくとも1つの制限酵素部位(X以外)に加えて、1つ又は複数の、特に1から4の相同領域を含んでよい。MCSに含まれる制限酵素部位は、当業者が容易に選択することができ、そのような部位及びその認識配列の例は、New England Biolabs, Ipswich, MA, USAの最新の製品カタログから得ることができる。
【0019】
本発明に係る「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、例えば12から40塩基対又はそれ以上の、好ましくは20から30塩基対の、大きな等長(isometric)認識部位を有する二本鎖DNAに特異的なDNアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼに関する最近の概説については、Stoddard B.L. (2005) Q. Rev. Biophys. 38, 49-95を参照のこと。HE認識配列の長さのために、本発明に係る構築物に挿入される遺伝子又はポリ遺伝子のヌクレオチド配列(又は任意の起源の任意の他のヌクレオチド配列)において、対応する部位が生じる可能性が非常に低く、そのことが、このストラテジーを、より大きく及び/又は複数の興味のある遺伝子(「GOI」)をクローニングするのに特に有用なものとする。
【0020】
本発明に係る好ましいHE部位は、各ホーミングエンドヌクレアーゼによって切断されると4ヌクレオチドの突出を生じるホーミングエンドヌクレアーゼの認識配列である。
【0021】
そのようなHE部位の例は、PI−SceI、I−CeuI、I−PpoI、I−HmuI I−CreI、I−DmoI、PI−PfuI及びI−MsoI、PI−PspI、I−SceI、他のLAGLIDAGグループのメンバー及びそのバリアント、SegH及びHef又は他のGIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼ、I−ApeII、I−AniI、チトクロームbmRNAマチュラーゼbl3、PI−TliI及びPI−TfuII、並びにPI−ThyIなどの認識配列を含むが、それらに限らない。上記Stoddard(2005)を参照のこと。
【0022】
4bp突出を生じるHE部位(例は上に記載)と適合性がある本発明に係る好ましい制限酵素部位Xは、BstXI部位である。
【0023】
対応する酵素は、市販のものであり、例えば、New England Biolabs Inc., Ipswich, MA, USAから市販されているものである。
【0024】
原核生物プロモーター/ターミネーターを含む本発明の特に好ましいMIEは、以下の構造:
I−Ceul − T7 Prom − MCS − T7 Term − BstXI
PI−SceI − T7 Prom − MCS − T7 Term − BstXI
の1つを有する。
【0025】
バキュロウイルスプロモーターを含む本発明の特に好ましいMIEは、以下の構造:
I−CEUI − p10 − MCS − BstXI
PI−SceI − p10 − MCS − BstXI
I−CEUI − polh − MCS − BstXI
PI−SceI − polh − MCS − BstXI
の1つを有する。
【0026】
本発明に係る核酸の特に好ましい例は、配列番号1(詳細なマップは、図13A及びBを参照のこと;配列番号1に対するアンチセンス配列は配列番号54に記載する)、配列番号50(制限マップ:図42)、配列番号51(制限マップ:図43)、配列番号52(制限マップ:図44)、又は配列番号53(制限マップ:図45)の配列を含む。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、上述の核酸は、ベクター又は宿主細胞に核酸を組み込むための少なくとも1つの部位を追加で含む。組込み部位は、一過性の組込み又はゲノムへの組込みを可能にし得る。
【0028】
ベクター、特にプラスミド又はウイルスへの組込みに関しては、組込み部位は、好ましくは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、自律性パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ラジノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、レンチウイルス、セムリキ森林ウイルス、又はバキュロウイルスに核酸を組み込むことに適合性がある。
【0029】
本発明の核酸に組み込まれてよい特に好ましい組込み部位は、Tn7、λ−インテグラーゼ特異的結合部位、及び部位特異的リコンビナーゼ(SSR)、特にLoxP部位又はFLPリコンビナーゼ特異的組換え(FRT)部位のトランスポゾンエレメントから選択することができる。本発明の別の好ましい核酸の組込みメカニズムは、lef2−603/Orf1629などの特定の相同組換え配列である。
【0030】
本発明の別の好ましい実施態様では、本明細書に記載の核酸は、他の有害物質に対して選択するための、1つ又は複数の耐性マーカーを追加で含む。本発明において有用な耐性マーカーの好ましい例は、抗生物質、例えば、アンピシリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、及びカナマイシン耐性マーカーを含むが、それらに限らない。
【0031】
本発明の核酸は、好ましくは上述のMIEに組み込まれる、1つ又は複数のリボソーム結合部位(RBS)も含んでよい。
【0032】
本発明の別の主題は、上述の核酸を含むベクターに関する。
【0033】
本発明の好ましいベクターは、プラスミド、発現ベクター、トランスファーベクター、より好ましくは真核生物の遺伝子トランスファーベクター、一過性又はウイルスベクター媒介遺伝子トランスファーベクターである。本発明に係る他のベクターは、ウイルス、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、自律性パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ラジノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、レンチウイルス、セムリキ森林ウイルス、及びバキュロウイルスである。
【0034】
(例えば、トランスファーベクターなどの適切なプラスミド上に存在する)本発明に係る核酸の組込みに適切なバキュロウイルスベクターも、本発明の主題であり、好ましくは、部位特異的組込み部位、例えば、Tn7結合部位(有効な組込みの青色/白色スクリーニングのためのlacZ遺伝子に組み込まれてよい)及び/又はLoxP部位を含む。本発明に係る別の好ましいバキュロウイルスは、(上述の組込み部位に対して代替的又は追加的に)相同組換えのための配列に隣接した、宿主のための有毒物質を発現するための遺伝子を含む。有毒物質を発現する遺伝子の例は、ジフテリア毒素A遺伝子である。相同組換えのための配列の好ましいペアは、例えば、lsf2−603/Orf1629である。バキュロウイルスは、上述のとおり、蛍光マーカー、例えば、GFP及びYFPなども含むマーカー遺伝子も含むことができる。本発明の対応するバキュロウイルスの特定の例は、図38、39、40、及び41の各々に記載のスキームで開示しているEMBac、EMBAcY、EMBac_Direct、及びEMBacY_Directの構造を有する。
【0035】
原核宿主細胞で有用なベクターは、好ましくは上で例示したマーカー遺伝子(その1つ又は複数)に加えて、複製起点(ori)を含む。例えば、BR322、ColE1、及び条件複製起点、例えば、OriV及びR6Kγ(後者が好ましい条件複製起点であり、本願のベクターの増殖を原核生物宿主内のpir遺伝子に依存させる)を含む。OriVは、本願のベクターの増殖を原核生物宿主のtrfA遺伝子に依存させる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明の核酸及び/又は本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0037】
前記宿主細胞は、原核生物又は真核生物であってよい。真核生物宿主細胞は、例えば、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞であってよい。ヒト宿主細胞の例は、HeLa、Huh7、HEK293、HepG2、KATO−III、IMR32、MT−2、膵臓β細胞、ケラチノサイト、骨髄線維芽細胞、CHP212、初代神経細胞、W12、SK−N−MC、Saos−2、WI38、初代肝細胞、FLC4、143TK、DLD−1、胚性肺線維芽細胞、初代包皮線維芽細胞、MRC5、及びMG63細胞を含むが、それらに限らない。本発明の別の好ましい宿主細胞は、ブタ細胞、好ましくは、CPK、FS−13、PK−15細胞、ウシ細胞、好ましくは、MDB、BT細胞、ウシ細胞、例えば、FLL−YFT細胞である。本発明において有用な他の真核生物細胞は、線虫、C.elegans細胞である。別の真核生物細胞は、酵母細胞、例えば、S.cerevisiae、S.pombe、C.albicans、及びP.pastorisを含む。さらに、本発明は、昆虫細胞、例えば、S.frugiperda由来の細胞、より好ましくはSf9、Sf21、発現Sf+、ハイファイブH5細胞、及びD.melanogaster由来の細胞、特に、S2 シュナイダー細胞を含む宿主細胞にも関する。別の宿主細胞は、Dictyostelium discoideum細胞及び寄生生物、例えば、Leishmania spec由来の細胞を含む。
【0038】
本発明に係る原核生物宿主は、細菌、特に、大腸菌、例えば、TOP10、DH5α、HB101などの市販の株を含む。
【0039】
当業者は、本発明に係る核酸要素の適切な宿主への適当な増殖及び/又は移動のための適当なベクター構築物/宿主細胞のペアを容易に選択することができる。適当な宿主細胞に適当なベクター要素及びベクターを導入するための特定の方法が、同様に、当該技術分野で既知であり、Ausubel et al. (ed.) Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, USAの最新版で確認することができる。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、上述のベクターは、部位特異的リコンビナーゼ(SSR)のための部位、好ましくはCre−lox特異的組換えのための1つ又は複数のLoxP部位を追加で含む。別の好ましい実施態様では、本発明に係るベクターは、トランスポゾンエレメント、好ましくはTn結合部位を含む。
【0041】
上述の結合部位がマーカー遺伝子内に位置することも好ましい。この配置は、転位によって結合部位に成功裡に組み込まれた配列を選択することを可能にする。好ましい実施態様によれば、そのようなマーカー遺伝子は、ルシフェラーゼ、β−GAL、CAT、蛍光コードタンパク質遺伝子、好ましくは、GFP、BFP、YFP、CFP、及びそれらのバリアント、並びにlacZα遺伝子から選択される。
【0042】
本発明に係るベクターの特に好ましい実施態様は、配列番号2から配列番号17からなる群から選択される配列を有する。
【0043】
本発明の別の好ましい実施態様は、上述の本発明の核酸の配列要素の2以上を含み、かつ、場合によって部位特異的リコンビナーゼのための2以上の組換え配列、例えば、2から6、より好ましくは2、3、又は4のそのような認識配列、好ましくは2から6、特に好ましくは1から4のloxP部位を追加で含むベクターである。
【0044】
そのようなベクターの特に好ましい例は、配列番号18の配列を有する。
【0045】
本発明のベクターが2以上の組換え配列を含む場合は、これらが同一又は異なる部位特異的リコンビナーゼの認識配列であり得ると解されるべきである。
【0046】
本発明の別の主題は、上述の少なくとも1つのベクターを少なくとも前記ベクターの増殖に適切な細胞とともに含む、多タンパク質複合体のクローニング及び/又は発現のためのキットである。好ましい宿主細胞は上述のとおりである。好ましくは、本発明の当該態様のキットは部位特異的リコンビナーゼ、例えば、Creを追加で含む。
【0047】
本発明は、
(a)本発明の第一のベクターのHE部位とX部位との間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(b)本明細書に記載の第二のベクターのHE部位とX部位との間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(c)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼ及びX部位に特異的な制限酵素を使用して第一のベクターを切断し、切断したHE部位及びX部位に隣接する少なくとも1つの遺伝子を含む断片を得る工程;
(d)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼを使用して第二のベクターを切断する工程;
(e)工程(d)で得た切断された第二のベクターに工程(c)で得た断片を連結して、第三のベクターを得る工程;及び、場合によって、
(f)1つ又は複数のベクターを使用して工程(a)から(e)を繰り返して、複数の遺伝子を含むベクターを得る工程
を含む、複数の発現カセットを含むベクターの製造方法にも関する。
【0048】
本発明の好ましい実施態様によれば、当業者に既知の方法によって、例えば、MCS内の適合する部位に制限酵素消化/連結によって、又は好ましくは場合によって存在する相同領域を使用する、好ましくはSLIC法を使用する、組換え技術によって、本発明のベクターに1つ又は複数の遺伝子を挿入することができる。2以上の遺伝子を挿入する場合は、これらは単独の発現カセットとして提供され得る。しかしながら、(複数又は多数の)遺伝子が1つのORF内にポリジーンとして存在できることは、当業者には明らかである。
【0049】
本発明は、
(i)上述の方法によって複数の発現カセットを含むベクターを生産する工程;
(ii)上述の宿主細胞などの適切な宿主細胞に工程(i)で得たベクターを導入する工程;及び
(iii)前記ベクターに存在する遺伝子の同時発現を可能にする条件下で前記宿主細胞をインキュベートする工程
を含む、多タンパク質複合体の製造方法にも関する。
【0050】
(上で例示した)適切な宿主細胞にベクターを導入する工程は、当業者に既知の方法によって実施する(例えば、上記Ausubel et al. (ed.)を参照のこと)。
【0051】
本願の別の態様は、n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含み、nが少なくとも3の整数である、融合ベクターである。
【0052】
本発明の当該態様に係る「シングルベクター」又は「ベクター単位」は、一般的には、外来遺伝子要素(特に、1つ又は複数の興味ある遺伝子)の宿主細胞への組込みに適切であり、かつ、増幅に適する核酸である。典型例は、プラスミド、バクミド、ウイルス、ラムダベクター、コスミドなどである。1つ又は複数の上記ベクターの分類の好ましい例は、HE/X部位を含むベクターに関して、既により詳細に概説しており、その定義は本発明の当該態様についても有効である。
【0053】
本発明に係る融合ベクターに組み立てられる(又はそのような融合ベクターから解体される;組み立て/解体方法については下記参照のこと)ベクター単位の数は、一般的には、対応する数の耐性マーカーが得られる限り、特に制限されないことは、当業者に明らかである。実施上の観点からすれば、本発明におけるnの数値は、好ましくは、3、4、5、又は6(若しくはそれ以上であってよい)であり、宿主で増殖し得る構築物のサイズに部分的には依存する。
【0054】
さらに、本発明は、
n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含む、融合ベクター;及び/又は
部位特異的組換え部位、及び他のベクターの耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を各々が含むn個のベクター(ベクター単位)であって
nが少なくとも3の整数である、融合ベクター及び/又はn個のベクター(ベクター単位);並びに
前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼ、及び/又は前記融合ベクター及び/又は前記n個のベクターの増殖のための細胞
を含む、n個のベクターの組み立て及び/又は解体のためのキットにも関する。
【0055】
上記融合ベクター及びベクターキットの好ましい実施態様は、各々、LoxP部位及びCreを対応するリコンビナーゼ酵素として含む、融合ベクター及び/又はベクター単位であるか又はそれらを含む。部位特異的組換え部位/リコンビナーゼの他の例は、FRT部位及び対応する酵素(FLPリコンビナーゼ)である。
【0056】
好ましい実施態様によれば、上記n個のベクター又はベクター単位は、各々、Prom−MCS−Term又はProm−MCS−Term(定義は上述のとおりであり、好ましくは上述のHE及び制限酵素部位Xの間にある)の形態の1つ又は複数の発現カセットを含む。さらに、好ましくはベクター又はベクター単位に存在する発現カセットは、各々、1つ又は複数の興味ある遺伝子(「GOI」)を含むことが好ましい。
【0057】
本発明の当該態様において有用な耐性マーカー遺伝子(又は単に「耐性マーカー」)の例は、上述のとおりである。
【0058】
上述の融合ベクターの特に好ましい例は、以下により詳細に記載するpACKS(配列番号18)ベクターである。
【0059】
ベクター単位の好ましい例は、全て原核生物宿主における発現に適応する、pACE(配列番号2)、pACE2(配列番号3)、pDC(配列番号4)、pDK(配列番号5)、及びpDS(配列番号6)、並びにバキュロウイルスを使用する昆虫細胞における発現に合わせて作られた、pIDC(配列番号7)、pIDK(配列番号8)、pIDS(配列番号9)、pACEBac1(配列番号10)、pACEBac2(配列番号11)、pACEBac3(配列番号12)、pACEBac4(配列番号13)、pOmniBac1(配列番号14)、pOmniBac2(配列番号15)、pOmniBac3(配列番号16)、及びpOmniBac4(配列番号17)である。ベクター単位の上述の好ましい例は、以下により詳細に記載する。
【0060】
さらに、ベクター単位(及び/又は上記キットの個々のベクター)の少なくとも1つが、さらに、耐性マーカー遺伝子とは異なる別の選択マーカーを含むことが好ましい。1つの例は、個々のベクターの増殖を宿主の特定の遺伝的背景に依存させる、条件複製起点である。1つの例は、ベクターの増殖をpir遺伝子に依存させる、R6kγ由来(又はである)Oriである。
【0061】
本発明は、さらに、1から(n−1)個の融合ベクターにn個のベクター単位を組み立てるための方法であって、前記融合ベクターが2からn個の前記ベクター単位を含み、
(1)部位特異的組換え部位及び他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを各々が含むn個のベクター単位を、前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼに接触させて、2からn個の前記ベクター単位を含むベクター単位の融合体の混合物を得る工程、
(2)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;
(3)2からn個のベクター単位を含む所望の融合ベクターを選択するために抗生物質の適当な組み合わせの存在下で形質転換した細胞の1つ又は複数のサンプルを培養する工程、
(4)抗生物質の各組み合わせの存在下で生存可能である、形質転換した細胞のn個のシングルコロニーを工程(3)で得た培養物から得る工程;並びに
(5)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下において、前記n個のシングルコロニーの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが上述のとおりである、方法を提供する。
【0062】
2以上の所望のベクター融合体を選択することが望ましい場合は、上記工程(2)で得られる形質転換された細胞は、適当な数のアリコート又はサンプルに分割する。例えば、全ての可能な(n!−n)個のベクター融合体を選択する(上記の方法のイダクト(educt)としてシングルベクター単位が選択されない)ことが望ましい場合には、形質転換された宿主細胞は、(n!−n)個のアリコート(又はサンプル)に分割し、各アリコートを適当な抗生物質の存在下で培養する。
【0063】
本発明では、本明細書で使用する用語「アリコート」は、必ずしも、複数のアリコートが同じ容量又は同じ数の細胞を有することを意味しない。むしろ、複数のアリコート又はサンプルの各々は、同一又は異なる容量又は数の細胞を有してよい。
【0064】
形質転換された細胞又はアリコート(若しくはサンプル)を「培養する」という用語は、宿主細胞の生存のための適当な条件下において形質転換された細胞を培養することを意味する。例えば、形質転換された細胞を使用して一定(例えば、より大きな)容量の液体培養培地に播種してよく、又はアリコートを適当な固体培地に蒔いてよい。
【0065】
上述のベクターの組み立て方法を使用して2以上の所望のベクター融合体を選択する場合、例えば、全ての可能な融合体が望まれる場合には、選択工程(3)は、好ましくは、96ウェルプレートなどの典型的なウェルプレートフォーマットを使用して実施する。
【0066】
本発明のベクター組み立て方法の好ましい実施態様によれば、(n−1)個の融合されるベクター単位の各々が、耐性マーカーとは異なる別の選択可能なマーカーを含む。そのようなベクター単位は、以下において、「ドナー」ベクターと称する。これは、前記ベクター単位が、耐性マーカーとは異なる選択可能な前記マーカーを含まないベクター単位(以下において「アクセプター」と称する)に融合する際に、ドナーとアクセプターとの間の融合体において、前記ドナーが、ドナー−ドナー融合体ではなく、アクセプター−ドナー融合体の増殖のみを可能にする表現型を有する宿主細胞を提供するからである。そのような選択可能なマーカーの好ましい例は、ドナーの増殖を特定の遺伝的背景に依存させる条件複製起点である。そのような選択可能なマーカーの具体例は、大腸菌などの細菌宿主において、ドナーの増殖をpir遺伝子の存在に依存させるR6kγ Oriである。この場合において、上述のベクター組み立て方法の工程(i)で得られる混合物で、pir遺伝子を有しない細菌細胞を形質転換する(そのような大腸菌株はTOP10、DH5α、HB101、又は他の市販のpir−細胞である)。
【0067】
上述のベクター組み立て方法の好ましい実施態様は、以下により詳細に記載する(ACEMBLシステム;C.2.1の欄)。
【0068】
上述の方法の好ましい実施態様によれば、n個のベクター単位は、各々、(上述のとおり、好ましくは上述のHEと制限酵素部位Xとの間の)Prom−MCS−TermまたはProm−MCSの形態の1つ又は複数の発現カセットを含む。さらに、好ましくはベクター又はベクター単位に存在する発現カセットの各々が、適切な宿主で発現する1つ又は複数の興味のある遺伝子(「GOI」)を含むことが好ましい。
【0069】
本発明に係る融合ベクターを提供するための他の方法は、第一の工程において、2つのベクター単位の組換えを実施し、宿主細胞を形質転換して、2種の抗生物質の存在下で宿主細胞を培養する、連続的な組み立て方法である。2回目は、生存クローンからの二重融合ベクター(n=2)の単離、各リコンビナーゼの存在下における第三のベクター単位との接触、宿主細胞の形質転換、及び三重融合ベクター(n=3)に存在する3つの耐性マーカーについての選択などを、所望の多重融合ベクターが得られるまで含む。
【0070】
言うまでも無く、(例えば、n=3、4、又は5の融合ベクターを組み立てるために)上述の工程(1)から(5)のベクター組み立て方法を使用し、次いで、上の段落に記載したとおりに1つ又は複数のベクター単位を連続的に添加する複合アプローチによって、本発明に係る融合ベクター、特に、より高次(すなわち、n>3)の融合ベクターを提供することもできる。
【0071】
融合ベクターを組み立てるための上述の方法の基礎をなす原理、すなわち、組換え反応におけるイダクトと生成物との平衡は、融合ベクターの解体にも等しく適用することができる。
【0072】
したがって、本発明は、さらに、2から(n−1)個のベクター単位を含む融合ベクターからなる群から選択される1つ又は複数の所望の融合ベクターに、又は1つ又は複数の所望のシングルベクター単位に、n個のベクター単位を含む融合ベクターを解体する方法であって、n個のベクター単位を含む前記融合ベクターにおいて、前記n個のベクター単位がn個の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられており、かつ、各ベクター単位が他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを含み、
(A)2から(n−1)個の前記ベクター単位を含む融合ベクターとシングルベクター単位との混合物を産生するために、n個のベクター単位を含む融合ベクターを前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼと接触させる工程;
(B)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;及び
(C)(C1)2から(n−1)個のベクター単位を含む1つ又は複数の所望の融合ベクターを選択するための抗生物質の適当な組み合わせの存在下において、及び/又は(C2)所望のシングルベクター単位を選択するための単独の適当な抗生物質の存在下において、形質転換した細胞の1つ又は複数のサンプルを培養する工程;
(D)各抗生物質又は抗生物質の組み合わせの各々の存在下で生存可能である、形質転換した細胞のサンプルから形質転換した細胞のn個のシングルクローンを得る工程;及び
(E)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下で前記n個のシングルクローンの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが上述のとおりである、方法を提供する。
【0073】
上記融合ベクターの解体方法を使用してシングルベクターを選択することが望ましい場合には、2から(n−1)個のベクター単位を含む適当な融合ベクターを選択するために、工程(A)、(B)、及び(C1)から(E)を実施し、次いで、前記選択した2から(n−1)個のベクター単位を含む融合ベクターを使用して工程(A)、(B)、及び(C2)から(E)を実施することが好ましい。例えばリコンビナーゼ反応平衡におけるシングルベクター単位の存在が選択工程(C2)から(E)によって前記シングルベクター単位を含む各クローンの選択をし易くするようにn=2又は3の融合ベクターになるまで、連続的なアプローチを繰り返すことができ、これは、より多数のベクター単位を含む融合ベクターから出発する際には特に好ましく、すなわち、(n−1)個の融合ベクターを最初に選択し、次いで、(n−2)個の構築物を二回目に選択するなどとすることができると解される。
【0074】
さらに、上述のベクター組み立て方法と同様に、本発明の融合ベクター解体方法において、n個のベクター単位を含む前記融合ベクターにおける(n−1)個のベクター単位の各々が、別の選択可能なマーカーを含まないベクター単位と前記選択可能なマーカーを含む1つ又は複数のベクター単位との間の融合体で形質転換された宿主細胞のみが工程(C1)で生存可能であるように、耐性マーカーとは異なる別の選択可能なマーカーを含むことが好ましい。
【0075】
好ましい選択可能なマーカー(条件Oriなど)、宿主細胞、マルチウェル試験プレートの使用などに関して、上述のベクター組み立て方法の好ましい実施態様が参照される。
【0076】
本願の融合ベクター解体方法は、さらに、好ましい実施態様に関して以下に詳述する(ACEMBLシステム;C.2.2節)。
【0077】
本発明の核酸及びベクター(融合ベクター及びシングルベクター(すなわち、ベクター単位)を含む)は、さらに、典型的な配列要素、例えば、1つ又は複数の興味のある遺伝子から発現される(複数の)タンパク質の検出及び/又は精製を可能にする又は単純化する要素も含んでよい。そのような要素の典型例は、GFP及びその誘導体、Hisタグ、GSTなどをコードする配列である。
【0078】
本発明に係る融合ベクターは、適切な宿主における多タンパク質複合体の発現に有利に使用される。かくして、本発明は、さらに、(例えば複数若しくは単独の発現カセットの形態又は必要に応じてポリジーンの形態において、1つ又は複数の興味のある遺伝子が挿入されたベクター単位を含む)本発明の融合ベクターで適切な宿主を形質転換する工程、及び興味ある遺伝子の同時発現を可能にする条件下で形質転換した宿主を培養する工程を含む、対応する方法も提供する。
【0079】
本発明の各種の態様の開示から、当業者は、好ましくは複数の発現カセットの反復クローニングに使用される、HE/X部位のポリヌクレオチド(特に、対応するベクター)は、複数遺伝子の構築物を作製するための上述の組み立て(又は解体)方法と組み合わせることができることを容易に理解するであろう。例えば、1つ又は複数の単独遺伝子ベクター又は複数遺伝子ベクターは上述のHE/X部位要素を使用して調製することができ、本明細書に記載の組換えに基いた組み立て方法を使用して最適な融合ベクター(例えば、三重、四重、又はそれよりも高次の融合ベクター)に組み立て得る。その様な融合ベクターは、次いで、本明細書に記載のとおりに(部分的に又は完全に)解体されてよく、当業者によって予期される個々の多タンパク質の用途のために、必要に応じて次に異なる構築物を組み立てることができる。かくして、本発明の態様は、これまでには知られていなかった、多タンパク質の用途のための興味のある複数の遺伝子(又はポリジーン)を組み合わせる自由を当業者に提供するビルディングブロックシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、「ACEMBL」と称される好ましいキットに含まれる原核生物宿主における多タンパク質複合体の発現のための本発明に係る好ましいベクターの概略図である。
【図2】図2は、「マルチプルインテグレーションエレメント」(MIE)と称される本発明の核酸の好ましい実施態様の図である。
【図3】図3は、Sequence and Ligation Independent Cloning(SILC;Tan, S. et al. Protein Expr. Purif. 40, 385 (2005)を参照のこと)によって本発明のベクターに興味のある遺伝子(「GOI」)を挿入するための好ましい方法の概略図である。興味のある遺伝子(GOI1)は、特定のプライマーを用いてPCR増幅され、相補プライマー(相補領域は薄い灰色又は濃い灰色の各々で影を付けている)を用いたPCRで直線化したベクター(アクセプター、ドナー)に組み込まれる。得られたPCR断片は、末端に相同領域を含む。T4 DNAポリメラーゼは、dNTPの非存在下においてエキソヌクレアーゼとして働き、長い付着突出をもたらす。T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターの混合(場合によってアニーリング)に続いて形質転換を実施し、単独遺伝子発現カセットを作製する。
【図4】図4は、SLICによって本発明のベクターにポリシストロンを挿入するための好ましい方法の概略図を示す。興味のある遺伝子(GOI1、2、3)を特定のプライマーを用いてPCR増幅し、ポリシストロンに組み立てられる最初(GOI1)のフォワードプライマー及び最後(GOI3)遺伝子のリバースプライマーの末端に相補的なプライマーを用いてPCR増幅した(相補領域は薄い灰色又は暗い灰色の各々で影を付けた)。得られたPCR断片は、末端に相同領域を含む。T4 DNAポリメラーゼは、dNTPの非存在下においてエキソヌクレアーゼとして働き、長い粘着突出をもたらす。T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターの混合(場合によってアニーリング)に続いて形質転換を実施し、ポリシストロン発現カセットを作製する。
【図5】図5は、LoxP不完全反転反復(配列番号19)の配列を示す。
【図6】(左図)は、本発明のベクターの好ましい実施態様(pACE、pDK、及びpDSベクター)のCreを介する組み立て及び解体を示すピラミッド状の概略図を示す。LoxP部位は赤い丸で示し、耐性マーカー及び複製起点を示している。白色の矢印は、ACEMBLベクターの発現カセット全体(プロモーター、ターミネーター、及びマルチプルインテグレーションエレメントを含む)を示す。明確にするために、全ての有り得る融合産物を示しているわけではない。多重耐性のレベルは右図に示す。
【図7】図7は、本発明に係るCre−deCre組み立て/解体によるベクター構築物を有する細菌コロニーの多重耐性分析の概略図である(図12も参照のこと)。
【図8】図8は、ヒトTFIIFの発現のための、本発明のベクターへのヒトRAP74及びヒトRAP30のクローニングのためのストラテジーの概略図である(左図)。hRAP74はSLICによってpDCにクローニングした。hRAP30はSLICによってpACEにクローニングした。pDC−RAP74(ドナー)及びpACE−RAP30のCre−Lox組換えによって、ベクターpACEMBL−hTFIIFが得られる。11の二重耐性(Cm,Ap)コロニーのBstZ17I/BamHIの二重消化による制限マップ作成の結果は、1%E−ゲル電気泳動のゲル切片によって示す(M:NEB 1kb DNAマーカー)。全ての試験したクローンは、期待されるパターンを示した(5.0+2.8kb)(左図)。
【図9】図9は、複数断片SLICによってベクターpACEにヒトVHL/エロンギンb/エロンギンc複合体(VHLbc)(トリシストロン)をクローニングするためのストラテジーを示す。
【図10】図10は、本発明に係る好ましいホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)/制限酵素部位(X)モジュール(PI−SceI/BstXI)を用いて酵母RES複合体(Pml1p、Snu17p、Bud13p)の成分を反復クローニングするためのストラテジーの概略図である。
【図11】図11は、多重融合ベクターpACKS(配列番号18)からのシングルベクターの産生の概略図を示す。
【図12】図12は、pACKS De−Cre反応の96ウェルマイクロタイター分析を示す概略図及び写真である。
【図13】図13は、本発明に係る好ましい核酸(「マルチプルインテグレーションエレメント」、MIE)の配列及びマップを示す(配列番号1)。配列決定のためのフォワード及びリバースプライマーは、T7及びlacのための標準的なベクタープライマーデあり得る。アダプタープライマー配列(表1参照のこと)を示す。これらの相同領域のDNA配列は、十分に施行された配列決定プライマーを含む(上記Tan et al. (2005))。挿入部位(I1−I4)を示す。アダプター配列及びおそらく相同領域の任意の配列が、複数断片挿入のためのアダプターとして使用することができる。MIEに存在するリボソーム結合部位(rbs)は赤い四角で囲っている。
【図14】図14はアクセプターベクターpACEのプラスミドマップを示す。
【図15】図15はアクセプターベクターpACE2のプラスミドマップを示す。
【図16】図16はドナーベクターpDCのプラスミドマップを示す。
【図17】図17はドナーベクターpDKのプラスミドマップを示す。
【図18】図18はドナーベクターpDSのプラスミドマップを示す。図14から18のプラスミドマップにおいて認められるとおり、アクセプターベクターpACE(図14)及びpACE2(図15)は、T7プロモーター及びターミネーターを含む。ドナーベクターpDC(図16)、pDK(図17)、及びpDS(図18)は、条件複製起点を含む。pDS(図18)及びpDK(図17)はlacプロモーターを有する。pDC(図16)はT7プロモーターを有する。耐性マーカー及び複製起点を示している。LoxP不完全反転反復配列を丸で示す。ホーミングエンドヌクレアーゼ部位及び対応するBstXI部位を四角で囲んでいる。マルチプルインテグレーションエレメント(MIE)の制限酵素部位を示す。全てのMIEはClaIとPmeIとの間に同じDNA配列を有する。特有の制限部位構成における相違は、プラスミド骨格配列における相違に由来する。
【図19】図19は、本発明の好ましいベクターの制限マッピングの結果を示す。未消化のアクセプターベクター(pACE、pACE2)及びドナーベクター(pDC、pDK、pDS)の双方を、BamHIで消化した同ベクターとともに開示している。すべての制限反応によって期待されるサイズのものが生じる。レーン1から5は、未切断のpACE、pACE2、pDC、pDK、及びpDSベクターであり;レーンMはλStylマーカーであり;レーンAからEは、BamHI消化したpACE、pACE2、pDC、pDK、及びpDSベクターを示す。
【図20】図20は、pACE、pDC,pDK、及びpDSの各々に挿入したVon Hippel−Lindau/elonginB/elonginC(VHLbc)複合体(上記のTan et al. (2005)、上記図9を参照のこと)、FtsH可溶性ドメイン(Bieniossek et al. (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 3066-3071)、青色蛍光タンパク質(BFP)、及びコイルドコイルドメインを有する緑色蛍光タンパク質(mGFP)(Berger et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 12177-12182)をコードする遺伝子で例示する、本発明のアクセプター/ドナー組換えのストラテジーを示す。Cre融合の後に、pir−細胞を形質転換する(TOP10)。2種(Ap/Kn;Ap/Cm;Ap/Sp)、三種(Ap/Kn/Sp)、及び四種(Ap/Kn/Sp/Cm)の抗生物質を含む寒天にアリコートを播種した。各プレートから得られた四個のコロニーを96ウェルマイクロタイタープレートで試験した。プレート画像の左のラベルは、横列で培地アリコートに含まれている抗生物質を示す。下の二列のウェルは、異なる試験をした(ラベルはプレート画像の下に示す)。各々1つの寒天プレートから得られた四個のコロニーを播種したものは、黒四角で囲い、寒天プレートに含まれる抗生物質を引出線の先に記載している。そのような各16ウェルの四角の4つの縦列は、同じコロニーで播種した。下の二列は、列の四つのウェルは同じコロニーで播種した。二重、三重(ADD)、及び四重(ADDD)融合の期待されるベクター構造は、プレートの画像の左若しくは右の各々(16ウェルの四角)又は下(下の二列)に示す。赤色色素を位置マーカーとして使用している。ADDD融合体の解体は、逆の方法で成功裡に実施した。
【図21】図21は、ヒトTFIIF(図21A)、Von Hippel−Lindau/elonginB/elonginC(VHLbc)複合体(図21B)、及び原核生物膜貫通ホロトランロコン(holotranlocon:HTL)YidC−SecYEGDF(図21C)の多タンパク質複合体の発現の結果を示す。(A)ヒトTFIIFは、TECAN Freedom Evoll 200 ワークステーションを使用して組み立て、精製し、SDS−PAGEによって分析した。非誘導又は誘導した全細胞抽出物及び精製したhTFIIFを示し、サブユニット(RAP74、RAP30)を記した。RAP74はC末端オリゴヒスチジンタグを含んでいた。(B)図20の全ての多遺伝子構築物を組み立て、発現させ、hTFIIFと同じルーチンにしたがって細胞溶解物を同時に分析した(図20に記した名称)。VHLbc複合体は、VHLサブユニット上のオリゴヒスチジン−チオレドキシン融合体タグによって捕獲した(上記Tan et al.(2005))。FtsHは、そのC末端にオリゴヒスチジンタグを含んでいた(上記Bieniossek et al.(2006))。蛍光タンパク質は、Roche1814460なる抗体(TBST/3%BSA中1:1000)を使用してウエスタンブロットによって溶解物中で同定した。(C)全原核生物膜貫通ホロトランスロコン(HTL)YidC−SecYEGDFの生産。膜小胞生産、界面活性剤可溶化、Ni2+親和性捕獲、及びサイズ排除クロマトグラフィーは、精製ホロトランスロコン複合体(右)をもたらした。サブユニットを記した。SecYの分解産物は、アスタリスクで標識した。すべてのパネルにおいて、MはBiorad broad range marker(サイズ[kDa])である。
【図22】図22は、自動SLIC工程の作業の流れ図を示す。
【図23】図23は、自動Cre融合工程の作業の流れ図を示す。
【図24】図24は、pIDC(配列番号7)と称する、本発明の好ましいベクター(ドナーベクター)のプラスミドマップを示す。
【図25】図25は、pIDK(配列番号8)と称する、本発明の好ましいベクター(ドナーベクター)のプラスミドマップを示す。
【図26】図26は、pIDS(配列番号9)と称する、本発明の好ましいベクター(ドナーベクター)のプラスミドマップを示す。
【図27】図27は、pACEBac1(配列番号10)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図28】図28は、pACEBac2(配列番号11)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図29】図29は、pACEBac3(配列番号12)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図30】図30は、pACEBac4(配列番号13)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図31】図31は、pOmniBac1(配列番号14)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図32】図32は、pOmniBac2(配列番号15)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図33】図33は、pOmniBac3(配列番号16)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図34】図34は、pOmniBac4(配列番号17)と称する、本発明の好ましいベクター(アクセプターベクター)のプラスミドマップを示す。
【図35】図35は、ColE1複製起点を有する本発明のアクセプターベクター(pACEBac1、pACEBac2、pOmniBac1、pOmniBac2)を使用する複合バキュロウイルスを産生することによる昆虫細胞における多タンパク質発現のスキームを示す。多遺伝子融合体は、所望のドナー/アクセプターの組合せのCre−LoxP融合によって産生する(多遺伝子構築物)。融合ベクターによって、細菌人工染色体(BAC)としてバキュロウイルスゲノム(例えば、バキュロウイルスEMBac又はEMBAcY)を有する細菌を形質転換する。ベクター融合体は、Tn7に基づく転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込まれる。増殖性複合ウイルスは、青色/白色スクリーニングによって選択される(ウイルスのT7付着部位へのベクター融合体の組込みによって、ウイルスに存在するlacZ遺伝子が破壊される)。複合ウイルスを調製し、適切な昆虫細胞をタンパク質製造のために形質転換する。
【図36】図36は、OriV複製起点を有する本発明のアクセプターベクター(pACEBac3、pACEBac4、pOmniBac3、pOmniBac4)を使用して複合バキュロウイルスを産生することによる、昆虫細胞における多タンパク質発現のためのスキームを示す。多遺伝子融合体によって、所望のドナー/アクセプターの組合せのCre−LoxP融合によって産生する。融合ベクターは、細菌人工染色体(BAC)としてバキュロウイルスゲノム(例えば、バキュロウイルスEMBac又はEMBAcY)を有する細菌を形質転換する。ベクター融合体は、Tn7に基づく転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込まれる。trfA遺伝子がトランスで提供されている場合はOriVを有するアクセプターベクターが増殖できるため、trfA遺伝子を含まない細菌における非生産的な組込みは、適当な抗生物質(ここでは、ゲンタマイシン)に対する曝露による、そのような形質転換体の排除をもたらす。かくして、青色/白色スクリーニングは、この場合には必要ではない。次いで、複合ウイルスを調製し、適切な昆虫細胞をタンパク質製造のために形質転換する。
【図37】図37は、lef2−603及びOrf1629相同配列を有する本発明のアクセプターベクター(pOmniBac1、pOmniBac2、pOmniBac3、pOmniBac4)を使用して複合バキュロウイルスを産生することによる、昆虫細胞における多タンパク質発現のためのスキームを示す。多遺伝子融合体は、所望のドナー/アクセプターの組合せのCre−LoxP融合によって産生する(多遺伝子構築物)。lef2−603/Orf1629相同配列に隣接するジフテリア毒素A遺伝子を有するゲノムバキュロウイルスDNA及び多遺伝子構築物を、タンパク質製造のための適切な昆虫細胞に直接的に共トランスフェクトできる。バキュロウイルスゲノムを含む細菌の移入ベクターによる形質転換、複合ウイルスの青色/白色スクリーニング、及びバクテリアからの複合ウイルスの調製はもはや必要ではない。
【図38】図38は、EMBacと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図39】図39は、EMBacYと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図40】図40は、EMBac_Directと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図41】図41は、EMBac_DirectYと称する、本発明のバキュロウイルスベクターの略図を示す。
【図42】図42は、例えばpACEBac2などのアクセプターベクターにおける、一般的な構造I−CeuI−p10−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図43】図43は、例えばpIDSなどのドナーベクターにおける、一般的な構造PI−SceI−p10−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図44】図44は、例えばpACEBac1などのアクセプターベクターにおける、一般的な構造I−CeuI−polh−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図45】図45は、例えばpIDSなどのドナーベクターにおける、一般的な構造PI−SceI−polh−MCS−BstXIを有する本発明のMIEの略図を示す。
【図46】図46は、pACEBac1−HisIKK1なるベクターの略図を示す。
【図47】図47は、pIDC−CSIKK2なるベクターの略図を示す。
【図48】図48は、pIDS−CSIKK3なるベクターの略図を示す。
【図49】図49は、pACEBac−HA−NAなるベクターの略図を示す。
【図50】図50は、pIDC−M1−M2なるベクターの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
「ACEMBL」システムである好ましい実施態様を参照して、以下に詳細に本発明を説明する。
【0082】
A.概要
「ACEMBL」と称される、本発明に係る好ましい実施態様は、バキュロウイルス系を使用する昆虫細胞及び大腸菌における多遺伝子発現のための多重発現系を提供する。ACEMBLは、液体処理ワークステーションを使用することによって自動化された設定及び手作業の双方で使用することができる。ACEMBLは、多数の遺伝子を迅速に多遺伝子発現カセットに組み立てるためのタンデム組換え工程を適用する。これらは、ポリシストロン性又は多発現モジュールであってよく、又はこれらの要素の組合せであってよい。ACEMBLは、望ましい場合には、制限酵素及びリガーゼを伴う従来の方法を利用する選択肢も提供する。
【0083】
多遺伝子の組み立て及び発現のための以下のストラテジーをACEMBLシステムにおいて提供する:
(1)単独の遺伝子のベクターへの挿入(組換え又は制限/連結)
(2)多遺伝子のポリシストロンへの組み立て(組換え又は制限/連結)
(3)ホーミングエンドヌクレアーゼを使用する多遺伝子の組み立て
(4)Cre−LoxP反応による多遺伝子プラスミド融合
(5)大腸菌における共形質転換による多遺伝子発現
(6)バキュロウイルス系を使用する昆虫細胞における多遺伝子発現
【0084】
これらのストラテジーは、研究課題及び使用者に応じて、個別又は同時に使用してよい。
【0085】
以下のC節において、ACEMBLシステムで使用できる多遺伝子カセット組み立てのためのこれらの方法の各々のための段階的なプロトコールを提供する。
【0086】
B.ACEMBLシステム
B.1 ACEMBLベクター
本発明は、好ましい例示的な実施態様として、「アクセプター」及び「ドナー」ベクタと称される小さなデノボ設計されたベクターを提供する(図1及び20、プラスミドマップについては、図14から18及び21から31を参照のこと)。原核宿主におけるタンパク質発現のためのアクセプターベクター(例えば、pACE、pACE2)は、ColE1由来の複製起点及び耐性マーカー(アンピシリン又はテトラサイクリン)を含む。ドナーベクターは、pir遺伝子を発現する宿主に依存して増殖させる、条件複製起点(R6Kγ由来)を含む。ドナーベクターは、カナマイシン、クロラムフェニコール、及びスペクチノマイシン耐性遺伝子を含む。好ましくは、1つのアクセプターベクターとともに3つのドナーベクターを使用する。
【0087】
この例に係る全てのドナー及びアクセプターベクターは、LoxP不完全反転反復、加えて、MIE(マルチプルインテグレーションエレメント)を含む。本発明の好ましいMIEは、好ましいプロモーター(原核生物、哺乳動物、昆虫細胞に特異的なもの又はそれらの組合せ)及びターミネーター(原核生物、哺乳動物、昆虫細胞に特異的なもの又はそれらの組合せ)とともに発現カセットを含む。その中間にあるものは、従来のクローニング方法又は好ましい発現要素(さらなるプロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、及び遺伝子)の組込みのための二本鎖破壊をもたらすために使用することができる多数の制限部位を含むDNAセグメントである。MIEは、プロモーター及びターミネーター(B.2を参照のこと)に隣接する特別に設計された制限酵素部位(BstXI)及びホーミングエンドヌクレアーゼ部位によって完成する。
【0088】
原核生物宿主における発現のためのACEMBLベクターの配列は、配列表に記載している(pACE:配列番号2、pACE2:配列番号3、pDC:配列番号4、pDK:配列番号5、pDS:配列番号6、pACKS:配列番号18)。ベクターpACE、pACE2、pDC、pDK、及びpDSのマップは図14から18に示す。
【0089】
本発明に係るACEMBLシステムは、バキュロウイルス(pIDC(配列番号7)、pIDK(配列番号8)、pIDS(配列番号9)、pACEBac1(配列番号10)、pACEBac2(配列番号11)、pACEBac3(配列番号12)、pACEBac4(配列番号13)、pOmniBac1(配列番号14)、pOmniBac2(配列番号15)、pOmniBac3(配列番号16)、及びpOmniBac4(配列番号17))を使用する昆虫細胞における多タンパク質複合体の発現に適合するドナー及びアクセプターベクターも提供する。ベクターのプラスミドマップは図24から34に示す。
【0090】
ドナーベクターであるpIDS、pIDK及びpIDSは、条件複製起点(R6Kγファージ由来)、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)部位(PI−SceI)、及び相補的なBstXI部位を含む(対応する大腸菌ベクターpDC、pDK、pDSを参照のこと)。ドナーは、pir遺伝子を含む細胞株において増殖する。
【0091】
細菌における発現に適合するものとは対照的に、昆虫細胞におけるタンパク質発現のためのベクターは、原核生物プロモーター及びターミネーター構造を含まない。そのかわりに、それらは、polh発現カセット(polh EC)又はp10発現カセット(p10 EC)のいずれかを有する。これらの発現カセットは、共通の多角体又はAcMNPV由来のp10プロモーター、制限部位をコードするオリゴヌクレオチド(原核生物ACEMBLのMIEとは異なる)、及びSV40又はHSVtkポリアデニル化シグナル配列を含む。
【0092】
言うまでもなく、HE及びBstXI部位のために、発現カセットがベクター間で自由に交換することができ、挿入遺伝子を含む場合でも同様である。これは、制限連結又は制限酵素/リガーゼ非依存的な方法(例えば、SLIC)によって実施することができる。したがって、耐性マーカー(スペクチノマイシン、カナマイシン、又はクロラムフェニコールなど)のいずれか1つとともにp10又はpolhマーカーを含むものを、容易に作製することができる。
【0093】
HE/BstXI部位の組合せを使用して、発現カセットを増やすことができ、又はp10及びpolh発現カセットの組合せにベクターを適合させることができる。
【0094】
全てのドナーは、LoxP不完全反転反復を含む。これは、細菌のACEMBLベクターについて説明しているとおり、LoxPを介するアクセプター/ドナー多重融合体の構築及び解体に使用することができる。
【0095】
昆虫細胞におけるタンパク質発現に適合するベクターに関連する本発明の本実施態様は、バキュロウイルス用のACEMBLにおける多数のアクセプターベクターを提供する。これらは、共通の特徴を有する:全てLoxP部位、耐性マーカー(ゲンタマイシン)、及びp10又はpolh発現カセットのいずれか(ドナーに存在するものと同一)を含む。
【0096】
アクセプターの発現カセットは、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位(I−CeuI)及び対応するBstXI部位に隣接する。
【0097】
前記発現カセットは、細菌のACEMBLベクターについて説明したとおり、アクセプター間で交換することができ、HE/BstXIの組合せを使用して増やすか又は結合させることもできる。
【0098】
使用する複製起点の観点から2種のファミリーのアクセプターが存在する:
pACEBac1、pACEBac2、pOmniBac1、及びpOmniBac2の全ては、全ての共通の大腸菌クローニング細胞株における増殖を可能にするColEI複製起点を含む。
【0099】
全てのアクセプターベクターは、Tn7転位方法を使用することによって、中間領域をTn7接合部位に組み込むことを可能にするTn7L及びTn7R配列を含む。
【0100】
pACEBac3、pACEBac4、pOmniBac3、及びpOmniBac4は、使用するクローニング用の株でトランスに提供される必要があるtrfA遺伝子に依存する、V.Cholerae(コレラ菌)由来の条件複製起点(OriV)を含む。遺伝子に適合し、かつ、必要な場合にはドナーと融合されるアクセプターで、細菌人工染色体(すなわち、Invitrogen社製のDH10Bacなど)の形態でバキュロウイルスゲノムを含む細胞を形質転換する際に、バックグラウンド(青色コロニー)を除くことが、このOriVの機能である。ここで、Tn7転位系を使用して、細胞を形質転換したDNAのTn7LとTn7Rの間の領域を、好ましいウイルスゲノムのTn7接合部位に組み込む。通常は、効果がない組込みは、青色コロニーをもたらすであろう(Tn7接合部位がバキュロウイルスゲノムのLacZα遺伝子に組み込まれている場合)。この青色コロニーは、バキュロウイルスゲノムとは別に形質転換されたプラスミドを増殖する。これら4つのOriV含有プラスミドと用いると、青色コロニーはゲンタマイシンに対する曝露で生存することができず(DH10Bac又は他の細胞はtrfAを含まないため)、形質転換されたプラスミドに与えられた異種遺伝子を有する、効果的に組み込まれた複合バクミドを含む白色コロニーのみがもたらされる。図36のスキームも参照のこと。
【0101】
アクセプターベクターであるpOminBac1−4は、Tn7L及びTn7R領域に加えて、lef2−603及びOrf1629相同配列も含む。これらは、Novagen Bacvectorシリーズ、Pharmingen社製のBaculogoldシステム、及びOET社製のFlashBacなどによって使用されるような複合バキュロウイルスの産生のための相同組換え法に使用される。かくして、これらのアクセプターベクターは、Tn7に基づくバキュロウイルス及びlef2,603/1629相同組換え法による全てのウイルスを含む、昆虫細胞培養物で異種遺伝子を発現するために現在利用可能である全てのバキュロウイルス系に使用することができる。図37のスキームも参照のこと。
【0102】
B.2 マルチプルインテグレーションエレメント(MIE)
本発明に係る好ましいマルチプルインテグレーションエレメント(MIE)は、ポリリンカーに由来し(上記Tan et al.(2005))、多遺伝子の組み立てのための複数の方法を可能にする(下記C節を参照のこと)。様々な方法、例えば、BD−InーFusion組換え(ClonTech Takara Bio Europe,www.clontech.com)又はSLIC(配列及び連結非依存的クローニング;Li et al.(2007)Nat.Methods 4,251を参照のこと)によってベクターのいずれか1つのMIEに複数の遺伝子を挿入することができる。このために、ベクターは直線化する必要があり、これは、ベクターがすべて小さいため(2−3.0kb)、適当なプライマーを使用するPCR反応によって効果的に実施することもできる。超高忠実度のポリメラーゼ、例えば、Phusion(Finnzymes/New England BioLabs,www.neb.com)を使用することが好ましい。代替的には、より従来からの方法が、例えば、ロボットなしの通常のウェットラボ環境で使用される場合は、制限消化によってベクターを直線化することができ、興味のある遺伝子を制限/連結によって組み込むことができる(本実施態様の下記のC節を参照のこと)。このMIEのDNA配列(配列番号1)及びマップを図13に示す。
【0103】
B.3 タグ、プロモーター、ターミネーター
原核生物宿主におけるタンパク質発現のために、ACEMBLシステムのベクターは、初期設定で、プロモーターT7及びLac、並びにT7ターミネーター要素を含む(図1、14)。T7系は、T7ポリメラーゼ遺伝子を、例えば、大腸菌ゲノムに含む、細菌株を必要とする。Lacプロモーターは、大半の株で利用することができる、強力な内在性プロモーターである。このACEMBLベクターは、異種発現の抑制のためのlacオペレーター要素を含む。
【0104】
明らかに、ACEMBLドナー及びアクセプターベクターに存在する全てのプロモーター及びターミネーター、並びに実際にはマルチプルインテグレーションエレメント(MIE)全体(HE及びX部位を除く)の各々が、適当な酵素(例えば、ClaI/PmeI、図2)を用いる制限/連結クローニング、又はSLICなどの配列及び連結非依存的な方法によってMIEを除去する、直線化したACEMBLベクターへの挿入を使用することによって、好ましい発現カセットと交換することができる。例えば、pDCのT7プロモーターは、trcプロモーター(pDCtrc)で置換することができ、pACEのT7プロモーターはアラビノースプロモーター(pACEara)で置換することができ、そのようなバリアントは、アラビノース及びIPTGで誘導することによる共発現実験に成功裡に使用することができる。
【0105】
原核生物宿主における発現用のACEMBLベクターとは対照的に、昆虫細胞における発現用のベクターは、原核生物プロモーター及びターミネーター構造を含まない。既に記載したとおり、それらは、polh発現カセット(polh EC)又はp10発現カセット(p10 EC)のいずれかを有する。これらの発現カセットは、共通のポリへドロン又はAcMNPV由来のp10プロモーター、制限部位の配列、及びSV40又はHSVtkポリアデニル化シグナル配列のいずれかを含む。
【0106】
本実施例のACEMBLシステムベクターは、興味のあるタンパク質の精製及び可溶化を容易にするアフィニティータグをコードするDNA配列を含まない。しかしながら、典型的に使用されるC末端又はN末端のオリゴヒスチジンタグは、タグ除去のためのプロテアーゼ部位とともに又はそれなしで、MIEに挿入する前に興味のある遺伝子の増幅に使用される個々のPCRプライマーを用いることによって、例えば、SLIC媒介挿入によって導入することができる。かくして、本発明のドナー及びアクセプターベクターは、興味のある組換え遺伝子を挿入する前に、一連の通例のタグを取り付けてよい。これは、タグの挿入の後に、ACEMBLシステムを使用法の組換えに基づく原理と適合する設計によって為されることが最も良好である。
【0107】
B.4 複合体発現
大腸菌における発現のために、適当なプロモーター又はターミネーターを有する、ACEMBL多遺伝子発現ベクター融合体で適当な好ましい発現宿主を形質転換する。この例示のベクター(T7及びlacプロモーター要素)については、広範な現在利用可能な発現株の大半を利用することができる。特定の発現株がシャペロン又はリソザイムなどをコードするDNAを有するヘルパープラスミドを既に含む場合には、多遺伝子融合体の設計は、ヘルパープラスミドにも存在する耐性マーカーを含むACEMBLベクターが多遺伝子ベクター構築物に含まれないようにすることが好ましい。
【0108】
代替的には、さらなるベクターが実験において複合体の生産に必要とされる場合、その課題は、対立を回避する耐性マーカーを含むACEMBLベクターの代替的なバージョンを作製することによって解決することができる。これは、耐性マーカーを除いたベクターをPCR増幅し、得られた断片をPCR増幅した耐性マーカーと組換え(SLIC)又は平滑末端連結(5’リン酸化プライマーを使用する)によって結合させることによって容易に実施することができる。
【0109】
本発明のドナーベクターは、R6Kγ条件複製起点のために、pir遺伝子産物の宿主による発現に依存する。ドナーベクターは、通常の発現株では、有効な複製のためのアクセプターとの融合に依存する。それにもかかわらず、ドナー又はドナー−ドナー融合体は、pir遺伝子をゲノムに挿入した発現株を使用することによって、アクセプターと融合させない際にも発現のために使用することができる。そのような株は市販されている(Novagen Inc.,Madison WI,USA)。
【0110】
細菌における発現に適合する2つのACEMBLプラスミドの共形質転換は、タンパク質複合体発現の成功をもたらし得る。原核生物宿主における発現のための当該ACEMBLシステムは、耐性マーカー以外は同一である2つのアクセプターベクター、すなわち、pACE及びpACE2を含む(図1、14)。これらを使用して、共形質転換及び双方の抗生物質に対する同時暴露によって、pACE又はpACE2のそれぞれに存在する遺伝子を発現させることができる。事実、アクセプターとしてのpACE又はpACE2に依存する、複数の遺伝子を含むアクセプター−ドナー融合体の全体は、原理上、必要な場合には、多重発現のために共形質転換することができる。
【0111】
バキュロウイルス系を使用する昆虫細胞(例えば、Sf9、Sf21、Hi5など)における発現のために、本発明の適切なACEMBLベクターは、バキュロウイルスゲノムに組み込まれる必要がある(複合ウイルス産生)。これは、典型的には、細菌人工染色体として所望のウイルスゲノムを含む細菌細胞を所望のCre−LoxP融合体で形質転換することによって実施される。バキュロウイルスへの組込みに適合する本発明のベクター系を使用すると、図35、36、及び37の各々に記載の3つの方法が可能である。
【0112】
C.手順
C.1.ACEMBLベクターへのクローニング
原核生物の発現宿主のための好ましい実施態様のドナー及びアクセプターの全てが、MIEを取り囲むホーミングエンドヌクレアーゼ部位/BstXIタンデムを除いて、同一のMIEを含む(図1、14)。MIEは、配列及び連結に非依存的な遺伝子挿入方法にあったものである。加えて、MIEは、一連の特有の制限部位も含み、そのため、制限/連結による従来の遺伝子挿入のための旧知のポリリンカーとして使用することができる。自動化された応用のために、興味のある遺伝子の挿入は、好ましくは、SLICなどの組換え法によって実施される。
【0113】
この好ましい実施態様に係る昆虫細胞における発現のためのドナーベクターは、各ベクターで異なるMIEも含む(図21、22、及び23の各々のベクターpIDC、pIDK、及びpIDSのプラスミドマップを参照のこと)。
【0114】
C1.1.SLICによるMIEへの単独遺伝子挿入
ベクターへの遺伝子の制限/連結に非依存的な挿入のための幾つかの方法が、開示又は市販されている(例えば、Novagen LIC,Becton−Dickinson BD In−Fusionなど)。これらの系は、DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に依存する点において共通している。dNTPの非存在下では、5’伸長が、3’末端の消化によって平滑末端又は突出から作製される。2つのDNA断片が反対の端においてそれらの末端に同じ〜20から30bpの配列を含む場合は、アニーリングすることができる相補的配列を共有する突出をもたらす。これは、相同配列を含む2又は複数のDNA断片の、連結に非依存的な結合に利用することができる。
【0115】
T4DNAポリメラーゼを使用する場合は、これは、相同領域の配列に非依存的な態様で実施することができ(配列及び連結に非依存的なクローニング、すなわち、SLIC)、詳細なプロトコールは当業者には利用可能である。多タンパク質発現では、コードDNA群において、この方法は特有の制限部位の存在又は変異生成によるそれらの作製に非依存的であるため、これが特に有用である。
【0116】
本発明における使用のために、SLIC法は、Phusionポリメラーゼによって増幅されたコードDNAのACEMBLアクセプター及びドナーベクターへの挿入に適合させた。このような方法で、発現カセットへの遺伝子の均一な挿入のみならず、多遺伝子構築物への発現カセットのコンカテマー化(concatamerization)も、容易に自動化可能な同一の単純なルーチンを適用することによって達成することができる。
【0117】
下記のプロトコール1は、上記のLi et al.(2007)に記載の方法に基づく改善した方法である。プロトコール1は、手作業用に設計されている。他の系を使用してもよく(例えば、BD−InFusionなど)、その場合には、製造業者の推奨に従うべきである。このプロトコールは、ロボットによる応用にも採用されてよい。前記プロトコールの対応する修正はD節に概説している。
【0118】
プロトコール1:SLICによる単独遺伝子挿入
必要な試薬:
Phusionポリメラーゼ
Phusionポリメラーゼ用の5×HFバッファー
dNTPミックス(10mM)
T4 DNAポリメラーゼ(及び10×バッファー)
DpnI酵素
大腸菌コンピテント細胞
100mM DTT、2M尿素、500mM EDTA
抗生物質
【0119】
工程1:プライマー設計
SLIC法のためのプライマーは、dNTPの非存在下においてT4 DNAポリメラーゼで処理して長い付着末端をもたらす相同領域を提供するように設計する。
【0120】
インサートのためのプライマーは、相同領域に対応するDNA配列(図3、差込図の「アダプター配列」)、続いて、増幅しようとするインサートに特異的にアニールする配列(図3、差込図)を含む。SLICのためのアダプター配列の有用な例は以下に記載する(表1)。
【0121】
例えば、興味のある遺伝子(GOI)が、発現要素を既に含むベクター(例えば、pETベクターシリーズ)から増幅される場合に、この「インサートに特異的な配列」はリボソーム結合部位(rbs)の上流に位置する。そうでない場合は、フォワードプライマーは、リボソーム結合部位が最終的な構築物にも提供されるように設計される必要がある(図3、差込図)。
【0122】
ベクター骨格のPCR直線化のためのプライマーは、単純に、インサートの増幅に選択されるプライマー対に存在する2つのアダプター配列に相補的である(図3)。
【0123】
工程2:インサート及びベクターのPCR増幅
クローニングするDNAインサート及びPCRによって直線化するベクターについて、100μlの容量で同一の反応を準備する:
ddH2O 75μl
5×Phusion HF反応バッファー 20μl
dNTP(100mMストック) 2μl
鋳型DNA(100ng/μl) 1μl
5 SLICプライマー(100μMストック) 1μl
3 SLICプライマー(100μMストック) 1μl
Phusionポリメラーゼ(2U/μl) 0.5μl
【0124】
次いで、PCR反応を標準的なPCRプログラムで実施する(非常に長いDNAが増幅され、伸長時間が2倍である場合を除いて):
1×98℃ 2分間
30×[98℃ 20秒間→50℃ 30秒間→72℃ 3分間]
10℃に維持。
寒天ゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色によるPCR反応の分析が推奨される。
【0125】
工程3:PCR産物のDpnI処理(場合によって)
次いで、親プラスミド(メチル化されている)を切断する1μlのDpnI酵素をPCR反応産物に添加する。インサートのPCR反応については、鋳型プラスミドの耐性マーカーがデスティネーションベクターと異なる場合に、DpnI処理が必要でない。
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:37℃ 1から4時間
不活化:80℃ 20分間
【0126】
工程4:PCR産物の精製
PCR産物から残存するdNTPを除去すべきである。そうしなければ、T4 DNAポリメラーゼ反応(工程5)が妨げられる。生成物の精製が、好ましくは、市販のPCR精製キット又はNucleoSpinキット(例えば、Qiagen,Macherey−Nagelなど)によって実施される。各製造業者によって示される最小限の取り得る容量で溶出を実施することが望ましい。
【0127】
工程5:T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理
インサート及びベクター(工程4で溶出したもの)について、同一の反応を20μlの容量で準備する:
10×T4 DNAポリメラーゼバッファー 2μl
100mM DTT 1μl
2M尿素 2μl
工程3に由来するDNA溶出物(ベクター又はインサート) 14μl
T4 DNAポリメラーゼ 1μl
【0128】
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:23℃ 20分間
停止 1μlの500mM EDTAの添加
不活化 75℃ 20分間
【0129】
工程6:混合及びアニーリング
次いで、T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターを混合し、続いて、効率を高めるアニーリング工程を場合によって実施する:
T4 DNA pol処理したインサート 10μl
T4 DNA pol処理したベクター 10μl
アニーリング:65℃ 10分間
冷却 ゆっくりと(ヒートブロックにおいて)RT(室温)まで
【0130】
工程7:形質転換
次いで、標準的な形質転換手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換する。
【0131】
pACE及びpACE2誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復(2から4時間)後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種した。
【0132】
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS)を含む寒天に播種した。
【0133】
工程8:プラスミド分析
プラスミドは、対応する抗生物質を含むスモールスケールの培地で培養し、配列決定及び(場合によって)適当な制限酵素を用いた制限マッピングによって分析する。
【0134】
C1.2.SLICによるMIEにおけるポリシストロン組み立て
本発明に係るマルチプルインテグレーションエレメントは、図4に示すマルチフラグメントSLIC組換えを使用して、興味のある遺伝子を組み込むために使用することもできる。リボソーム結合部位(rbs)に先行する遺伝子は、この方法でポリシストロンに組み立てることができる。
【0135】
詳細なプロトコールは下記のプロトコール2に概要を示している:
プロトコール2 SLICによるポリシストロン組み立て
必要な試薬:
Phusionポリメラーゼ
Phusionポリメラーゼ用の5×HFバッファー
dNTPミックス(10mM)
T4 DNAポリメラーゼ(及び10×バッファー)
大腸菌コンピテント細胞
100mM DTT、2M尿素、500mM EDTA
抗生物質
【0136】
工程1:プライマー設計
本実施態様に係るMIE要素は、試験済みのプライマー配列からなる。これらは、単独遺伝子又は多遺伝子構築物の挿入に使用することができる「アダプター」配列を構成する。有用なアダプター配列の例は下記のものである(表1)。
【0137】
アダプター配列は、MIEに挿入するDNA断片を増幅するために使用されるプライマーの5’セグメントを形成する。インサートに特異的な配列は3’に付加し、リボソーム結合部位をコードするDNAは、PCR鋳型に未だ存在していない場合は、場合によって挿入することができる。
【0138】
工程2:インサート及びプライマーのPCR増幅
クローニングする全てのDNAインサート(GOI1、2、3)及びPCRによって直線化するベクターについて、同一の反応を100μlの容量で準備する:
ddH2O 75μl
5×Phusion HF反応バッファー 20μl
dNTP(10mMストック) 2μl
鋳型DNA(100ng/μl) 1μl
5’SLICプライマー(100μMストック) 1μl
3’SLICプライマー(100μMストック) 1μl
Phusionポリメラーゼ(2U/μl) 0.5μl
【0139】
次いで、標準的なPCRプログラムでPCR反応を実施する(非常に長いDNAが増幅され、伸長時間が2倍である場合を除いて):
1×98℃ 2分間
30×[98℃ 20秒間→50℃ 30秒間→72℃ 3分間]
10℃に維持。
【0140】
寒天ゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色によるPCR反応の分析が推奨される。
【0141】
工程3:PCR産物のDpnI処理(場合によって)
次いで、親プラスミド(メチル化されている)を切断する1μlのDpnIをPCR反応産物に添加する。インサートのPCR反応については、鋳型プラスミドの耐性マーカーがデスティネーションベクターと異なる場合に、DpnI処理が必要でない。
【0142】
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:37℃ 1から4時間
不活化:80℃ 20分間
【0143】
工程4:PCR産物の精製
PCR産物から残存するdNTPを除去すべきである。そうしなければ、T4 DNAポリメラーゼ反応(工程5)が妨げられる。
【0144】
生成物の精製が、好ましくは、市販のPCR精製キット又はNucleoSpinキット(例えば、Qiagen,Macherey−Nagelなど)によって実施される。各製造業者によって示される最小限の取り得る容量で溶出を実施することが望ましい。
【0145】
工程5:T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理
各インサート(GOI1、2、3)及びベクター(工程4で溶出したもの)について、同一の反応を20μlの容量で準備する:
10×T4 DNAポリメラーゼバッファー 2μl
100mM DTT 1μl
2M尿素 2μl
工程3に由来するDNA溶出物(ベクター又はインサート) 14μl
T4 DNAポリメラーゼ 1μl
【0146】
次いで、以下の反応を実施する:
インキュベーション:23℃ 20分間
停止: 1μlの500mM EDTAの添加
不活化: 75℃ 20分間
【0147】
工程6:混合及びアニーリング
次いで、T4 DNAポリメラーゼエキソヌクレアーゼ処理したインサート及びベクターを混合し、続いて、効率を高めるアニーリング工程を場合によって実施する:
【0148】
T4 DNA pol処理したインサート(GOI1) 5μl
T4 DNA pol処理したインサート(GOI2) 5μl
T4 DNA pol処理したインサート(GOI3) 5μl
T4 DNA pol処理したベクター 5μl
アニーリング:65℃ 10分間
冷却 ゆっくりと(ヒートブロックにおいて)RTまで
【0149】
工程7:形質転換
次いで、標準的な形質転換手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換する。
【0150】
pACE及びpACE2誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種する。
【0151】
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS)を含む寒天に播種した。
【0152】
工程8:プラスミド分析
プラスミドを培養し、特定の制限消化及びインサートのDNA配列決定に基づいて、正しいクローンを選択する。
【0153】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0154】
・全てのアダプタープライマー(伸長部除く)は、本実施態様に係るMIEに挿入した興味ある遺伝子の配列決定用プライマーとして使用することができる。
【0155】
C.1.3.制限/連結による遺伝子挿入
本発明のMIEは、一連の特有の制限部位を有するマルチプルクローニング部位として使用することもできる。好ましくは、原核生物宿主におけるタンパク質発現のための本明細書に記載のMIEが、プロモーター及びリボソーム結合部位の後に続き、ターミネーターよりも前にある。昆虫細胞におけるタンパク質発現のための本明細書に記載の好ましい実施態様のMIEは、上述のpolh発現カセット又はp10発現カセットを含む。したがって、従来の制限/連結によるMIEへのクローニングは、機能的な発現カセットももたらす。
【0156】
興味のある遺伝子(GOI)は、標準のクローニング手順を使用することによって、ACEMBLベクターのマルチプルインテグレーションエレメント(MIE)にサブクローニングすることができる(例えば、図13を参照のこと)。
【0157】
プロトコール3.MIEへの制限/連結クローニング
必要な試薬:
Phusionポリメラーゼ
Phusionポリメラーゼ用の5×HFバッファー
dNTPミックス(10mM)
10mM BSA
制限エンドヌクレアーゼ(及び10×バッファー)
T4 DNAリガーゼ(及び10×バッファー)
ウシ又はエビの腸アルカリホスファターゼ
大腸菌コンピテント細胞
抗生物質
【0158】
工程1:プライマー設計
従来のクローニングのために、効率的な切断のための適当な突出(例えば、New England Biolabsカタログを参照のこと)の後ろ、かつ、挿入しようとする興味のある遺伝子との20ヌクレオチド以上のオーバーラップの前に、好ましい制限部位を含むPCRプライマーが設計される。
【0159】
細菌における発現のためのACEMBLシステムの場合には、本実施態様のMIEは、全てのACEMBLベクターについて同一である。それらは、NdeI部位の前にリボソーム結合部位を含む。したがって、単独遺伝子挿入については、rbsがプライマーに含まれる必要がない。
【0160】
多遺伝子挿入が(例えば、MIEの挿入部位I1−I4において)必要な場合は、遺伝子の前のrbs及び3’末端の終止コドンが提供されるように、プライマーを設計すべきである。
【0161】
特に制限/連結によるポリシトロンクローニングについては、カスタム遺伝子合成によって鋳型を構築することが望ましい。その方法では、MIEに存在する制限部位を、コードDNAから除くことができる。
【0162】
工程2:インサート調製
インサートのPCR:
MIEに挿入する興味のある遺伝子について、同一のPCR反応を100μlの容量で準備する:
ddH2O 75μl
5×Phusion HF制限バッファー 20μl
dNTP(10mMストック) 2μl
鋳型DNA(100ng/μl) 1μl
5プライマー(100μMストック) 1μl
3プライマー(100μMストック) 1μl
Phusionポリメラーゼ(2U/μl)0.5μl
【0163】
次いで、標準的なPCRプログラムでPCR反応を実施する(非常に長いDNAが増幅され、伸長時間が2倍である場合を除いて):
1×98℃ 2分間
30×[98℃ 20秒間→50℃ 30秒間→72℃ 3分間]
10℃に維持。
【0164】
寒天ゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色によるPCR反応の分析が推奨される。
【0165】
生成物の精製が、好ましくは、市販のPCR精製キット又はNucleoSpinキット(例えば、Qiagen,Macherey−Nagelなど)によって実施される。各製造業者によって示される最小限の取り得る容量で溶出を実施することが望ましい。
【0166】
インサートの制限消化:
製造業者の推奨(New England Biolabsカタログなどを参照のこと)によって特定される特定の制限酵素を使用して、40μlの反応容量において、制限反応を実施する。
【0167】
PCRキット溶出液(≧1μg) 30μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
5’のための制限酵素 2μl
3’のための制限酵素 2μl(二重消化の場合、そうでなければddH2O)
【0168】
制限消化は、双方の酵素を使用して1回の反応で実施するか(二重消化)、代替的には、必要なバッファー条件が適合しない場合には連続的に実施する(2回の単独消化)。
【0169】
インサートのゲル抽出
加工したインサートは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0170】
工程3:ベクター調製
ACEMBLプラスミドの制限消化:
製造業者の推奨(New England Biolabsカタログなどを参照のこと)によって特定される特定の制限酵素を使用して、40μlの反応容量において、制限反応を実施する。
【0171】
ddH2O中のACEMBLプラスミド(≧0.5μg) 30μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
5’のための制限酵素 2μl
3’のための制限酵素 2μl(二重消化の場合、そうでなければddH2O)
【0172】
制限消化は、双方の酵素を使用して1回の反応で実施するか(二重消化)、代替的には、必要なバッファー条件が適合しない場合には連続的に実施する(2回の単独消化)。
【0173】
ベクターのゲル抽出
加工したベクターは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0174】
工程4:連結
連結反応は、T4 DNAリガーゼの供給業者の推奨にしたがって20μlの反応容量で実施する:
ACEMBLプラスミド(ゲル抽出) 8μl
インサート(ゲル抽出) 10μl
10×T4 DNAリガーゼバッファー 2μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
【0175】
連結反応は、25℃(付着末端)で1時間又は16℃(平滑末端)で一晩にわたって実施する。
【0176】
工程5:形質転換
次いで、標準の形質転換の手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換した。
【0177】
アクセプター誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種した。
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS)を含む寒天に播種した。
【0178】
工程6:プラスミド分析
プラスミドを培養し、特定の制限消化及びインサートのDNA配列決定に基づいて正しいクローンを選択する。
【0179】
C.1.4.HE及びBstXI部位を使用することによる複数化
本発明に係るACEMBLシステムは、マルチプルインテグレーションエレメント(MIE)を包囲する、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)部位及び設計BstXI部位を含む。ホーミングエンドヌクレアーゼ部位を使用して、単独遺伝子又はポリシストロンを含む発現カセット全体を、1つ又は複数の興味のある遺伝子を既に含むベクターに挿入することができる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、長い認識部位(12から40塩基対以上、好ましくは20から30塩基対)を有する。全て等しいストリンジェントであるわけではないが、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位は、より大きなプラスミド、又は、事実、ゲノム全体に対して特有である可能性が非常に高い。
【0180】
本実施態様のACEMBLシステムでは、ドナーベクターは、ホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceIの認識部位を含む(図2)。このHE部位は、切断によって、−CTGC配列を有する3’突出を生じる。アクセプターベクターは、切断によって−CTAAの3’突出をもたらす、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位I−CeuIを含む。アクセプター及びドナー上において、各HE部位は、MIEの前にある。MIEの3’末端は、適合する突出を切断によりもたらす、特別に設計されたBstXI部位を含む。これは、BstXIの切断特異性に基づく。BstXIの認識配列は、CCANNNNN’NTGG(配列番号42)と規定される(アポストロフィーは、ホスホジエステル結合の切断位置を示す)。Nで示した残基は自由に選択され得る。かくして、ドナーベクターは、配列CCATGTGC’CTGG(配列番号43)のBstXI認識部位を含み、アクセプターベクターは、CCATCTAA’TTGG(配列番号44)を含む。各ケースにおいてBstXI切断によって生じる突出は、HE切断によって生じる突出と適合するであろう。アクセプター及びドナーは異なるHE部位を有することに留意すべきである。
【0181】
認識部位は対称ではない。したがって、HE/BstXI消化断片のACEMBLベクターのHE部位への連結は、(1)方向性であり、かつ、(2)HEの半分の部位がBstXIの半分の部位に結合しているハイブリッドDNA配列をもたらすであろう。この部位は、HE及びBstXIで切断されない。したがって、HEで消化した構築物における、1又は複数の遺伝子を有する発現カセットを含むHE/BstXI消化したDNA断片の連結による挿入は、前を完全なHE部位で、かつ、後をBstXI部位で包囲された、全ての異種性の興味のある遺伝子を含む構築物をもたらすであろう。したがって、HE/BstXI消化及び連結によって発現カセット全体をHE部位に組み込む方法は、反復して実施することができる。
【0182】
プロトコール4.ホーミングエンドヌクレアーゼ/BstXIを使用することによる複数化
必要な試薬:
ホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceI、I−CeuI
ホーミングエンドヌクレアーゼ用の10×バッファー
制限酵素BstXI(及び10×バッファー)
T4 DNAリガーゼ(及び10×バッファー)
大腸菌コンピテント細胞
抗生物質
【0183】
工程2:インサート調製
製造業者(例えば、New England Biolabsなど)の推奨どおりにホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター)を使用して、40μlの反応容量で制限反応を実施する。
【0184】
ddH2O中のACEMBLプラスミド(≧0.5μg) 32μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
PI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター) 2μl
【0185】
次いで、PCR抽出キット又は酸性エタノール沈殿によって反応物を精製し、製造業者の推奨にしたがってBstXIで消化する。
【0186】
ddH2O中のHE消化DNA 32μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
BstXI 2μl
【0187】
インサートのゲル抽出:
加工したインサートは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0188】
工程3:ベクター調製
製造業者(例えば、New England Biolabsなど)の推奨どおりにホーミングエンドヌクレアーゼPI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター)を使用して、40μlの反応容量で制限反応を実施する。
【0189】
ddH2O中のACEMBLプラスミド(≧0.5μg) 33μl
10×制限酵素バッファー 4μl
10mM BSA 2μl
PI−SceI(ドナー)又はI−CeuI(アクセプター) 2μl
【0190】
次いで、PCR抽出キット又は酸性エタノール沈殿によって反応物を精製し、各製造業者の推奨にしたがって腸アルカリホスファターゼで処理する。
【0191】
ddH2O中のHE消化DNA 17μl
10×アルカリホスファターゼバッファー 2μl
アルカリホスファターゼ 1μl
【0192】
ベクターのゲル抽出:
加工したベクターは、次いで、市販のキットを使用して寒天ゲル抽出によって精製する(Qiagen、Macherey−Nagelなど)。各製造業者によって規定される最小限の容量で抽出DNAを溶出することが望ましい。
【0193】
工程4:連結
連結反応は20μlの反応容量で実施する:
HE/ホスファターゼ処理したベクター(ゲル抽出) 4μl
HE/BstXI処理したインサート(ゲル抽出) 14μl
10×T4 DNAリガーゼバッファー 2μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
【0194】
連結反応は、25℃で1時間又は16℃で一晩にわたって実施する。
【0195】
工程5:形質転換
次いで、標準的な形質転換の手順にしたがって、混合物でコンピテント細胞を形質転換する。
【0196】
アクセプター誘導体についての反応産物でクローニング用の標準の大腸菌細胞(例えば、TOP10、DH5α、HB101)を形質転換し、回復後にアンピシリン(100μg/ml)又はテトラサイクリン(25μg/ml)の各々を含む寒天に播種した。
【0197】
ドナー誘導体についての反応産物でpir遺伝子を発現する大腸菌細胞(例えば、BW23473、BW23474、又はPIR1及びPIR2、Invitrogen社製)を形質転換し、クロラムフェニコール(25μg/ml、pDC、pIDC)、カナマイシン(50μg/ml、pDK、pIDK)、及びスペクチノマイシン(50μg/ml、pDS、pIDS)を含む寒天に播種した。
【0198】
工程6:プラスミド分析
プラスミドを培養し、特定の制限消化及びインサートのDNA配列決定に基づいて正しいクローンを選択する。
【0199】
C.2.アクセプター及びドナーのCre−LoxP反応
Creリコンビナーゼは、インテグラーゼファミリーのメンバーである(バクテリオファージP1由来のタイプIトポイソメラーゼ)。Creリコンビナーゼは、34bpのloxP部位(配列番号19;図5を参照のこと)を付属タンパク質及び補助DNA配列なしで組換える。lopP部位は、切断及び連結反応が生じる8bpの中央領域に隣接する反転反復として、2つの13bpリコンビナーゼ結合要素を含んでなる。
【0200】
Creリコンビナーゼに媒介される部位特異的組換えは、ホリデイジャンクション(HJ)の形成を伴う。Creリコンビナーゼによって触媒される組換えは、LoxP部位の位置及び相対配向に基づく。単独のLoxP部位を含む、2つのDNA分子、例えば、アクセプター及びドナープラスミドは、融合される。さらに、Cre組換えは、15から20%の組換え効率の平衡反応である。これは、多タンパク質複合体発現のための多遺伝子の組合せのための有用な選択肢をもたらす。
【0201】
複数のDNA分子、例えば、ドナー及びアクセプターがCreリコンビナーゼとインキュベートされる反応では、酵素の融合/切除活性が、シングルベクター(遊離体ベクター)及び全ての可能な融合体が共存する平衡状態をもたらすであろう。ドナーベクターは、アクセプターベクターと同様に、アクセプター及び/又はドナーと使用することができる。2を超えるベクターが融合している高次の融合体も産生される。これは図6に図示している。
【0202】
この例のドナーが、pir+(pir陽性)の背景に依存する条件複製起点を含むという事実は、全ての所望のアクセプター−ドナーの組合せを反応混合物から選択することを可能にする。このために、反応混合物を使用して、pir陰性株(TOP10、DH5α、HB101、又は他の一般的な実験クローニング株)を形質転換する。次いで、ドナーベクターは、アクセプターと融合していなければ、ドナーがコードする耐性マーカーに対応する抗生物質を含む寒天上に播種する際に、自殺ベクターとして働くであろう。適当な組合せの抗生物質を含む寒天を使用することによって、全ての所望のアクセプター−ドナー融合体を選択することができる。
【0203】
この方法では、25kb又はそれよりも大きい融合ベクターが産生され得る。安定性試験(60世代超の連続的な継代)では、そのような大きなプラスミドであっても、コードされる耐性マーカーに対応する抗生物質の1つのみが増殖培地に与えられている場合ですら、制限マッピングによって確認されるとおり、安定である。
【0204】
C.2.1.アクセプター及びドナーのCre−LoxP融合
下記のプロトコールは、Cre−LoxP反応によってドナー及びアクセプターから多遺伝子融合体を産生するために設計されている。
【0205】
試薬:
Creリコンビナーゼ
標準的な大腸菌コンピテント細胞(pir−株)
抗生物質
96ウェルマイクロタイタープレート
寒天/抗生物質を含む、12ウェル組織培養プレート(又はペトリ皿)
LB培地
【0206】
1. 20μlのCre反応については、1から2μgの各遊離体をおおよそ同量で混合する(5’DNA末端)。ddH2Oを添加して、全体の容量を16から17μlに調節し、次いで、2μlの10×Creバッファー及び1から2μlのCreリコンビナーゼを添加する。
【0207】
2. Cre反応物を37℃(又は30℃)で1時間にわたってインキュベートする。
【0208】
3. 場合によって、2から5μlのCre反応物を分析のための寒天ゲルに試験のために載せる。70℃で10分間にわたって熱不活化した後にゲルに載せることが、非常に望ましい。
【0209】
4. 化学的形質転換については、10から15μlのCre反応物を200μlの化学的コンピテント細胞と混合する。混合物を氷上で15から30分間にわたってインキュベートする。次いで、42度で45から60秒間にわたって熱ショックを実施する。
20μlまでのCre反応物(化学的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量)で、200μlの化学的コンピテント細胞を直接的に形質転換することができる。
【0210】
電気的形質転換については、2μlまでのCre反応物を100μlの電気的コンピテント細胞と直接混合し、1.8から2.0kVでエレクトロポレーター(例えば、BIORAD E.coli Pulser)を使用することによって形質転換できるであろう。
より大量のCre反応物は、電気的形質転換の前に、エタノール沈殿又はPCR精製カラムによって脱塩するべきである。脱塩したCre反応混合物は、好ましくは、電気的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量を超えない。
【0211】
細胞/DNA混合物は、氷上で長期間にわたってインキュベートすることなく、電気的形質転換に直ぐに使用することができるであろう。
【0212】
5. 形質転換(熱ショック又はエレクトロポレーション)のすぐ後に、400μlまでのLB培地(又はSOC培地)を100μlの細胞/DNA懸濁物ごとに添加する。
【0213】
6. 37℃の振盪インキュベーターで一晩又は少なくとも4時間にわたって懸濁物をインキュベートする。
【0214】
2を超える耐性マーカーを含む多重融合プラスミドを回収するためには、懸濁物を37℃で1晩にわたってインキュベートすることが非常に望ましい。
【0215】
7. 所望の組合せの抗生物質を含む寒天上に回収した細胞懸濁物を播種する。37℃で一晩にわたってインキュベートする。
【0216】
8. 一晩のインキュベートの後に現れたコロニーを、上記の工程12から16を参照することによって、この工程で制限消化によって直接検証してよく、特に、1つの多重融合プラスミドのみが望ましい場合に検証してよい。
【0217】
96ウェルマイクロタイタープレート上における単独の抗生物質曝露によるさらなる選択については、工程9に続く。
【0218】
複数の様々な多重融合プラスミドが、1つの96ウェルマイクロタイタープレート上で同時に処理され、かつ、選択され得る。
【0219】
9. 96ウェル抗生物質試験については、各抗生物質寒天プレート由来の4つのコロニーを〜500μlの抗生物質を含まないLB培地に播種する。37℃の振盪インキュベーターで1から2時間にわたって細胞培養物をインキュベートする。
【0220】
10. コロニーのインキュベートの間に、96ウェルマイクロタイタープレートを各ウェルにおいて150μlの抗生物質含有LB培地又は色鮮やかな色素(位置マーカー)で満たす。
【0221】
多重融合プラスミドを同時に選択するために使用する、溶液の典型的な配置は、図7に示す。本発明の当該態様の基礎となる原理は、単独コロニー由来の全ての細胞懸濁物は、4つの単独の抗生物質の全てに曝露される必要があるということである。
【0222】
11. 前培養した細胞培養物の1μlのアリコートを対応するウェルに添加する。次いで、播種された96ウェルマイクロタイタープレートを37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたって180から200rpmでインキュベートする。
プレートを覆うためにパラフィルムを使用することが望ましい。
残りの前培養した細胞培養物は、さらなる播種のために4℃の冷蔵庫で保存することができるであろう。
【0223】
12. 各コロニーに由来する高密度で澄んだ細胞培養物の組合せによって、所望の多重融合プラスミドを含む形質転換体を選択する。対応する抗生物質を含む10mlのLB培地に10から20μlの細胞培養物を播種する。37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたってインキュベートする。
【0224】
13. 一晩インキュベートした細胞培養物を4000gで5から10分にわたって遠心分離する。製造業者の情報にしたがってプラスミドミニプレップキットで細胞ペレットを精製する。
【0225】
14. UV吸収を使用して精製したプラスミド溶液の濃度を測定する(例えば、NanoDrop(商標)1000)。
【0226】
15. 0.5から1μgの精製したプラスミド溶液を20μlの制限消化で消化する(5から10単位のエンドヌクレアーゼを使用する)。推奨される反応条件下で〜2時間にわたってインキュベートする。
【0227】
16. 分析のための寒天ゲル(0.8から1.2%)電気泳動のために5から10μlの消化物を使用する。実際の制限パターンをコンピュータで(例えば、VectorNTIを使用して)予測される制限パターンと比較することによってプラスミドの完全性を検証する。
【0228】
C.2.2.Creによる融合ベクターの解体
以下のプロトコールは、ACEMBLシステムキット(本実施態様の下記E節を参照のこと)の一部を好ましくは形成する、四重融合したpACKSプラスミド(pACE−pDC−pDK−pDS)を解体することによって、例えば、4つの単独ACEMBLベクター(pACE、pDC、pDK、pDS)の回収のために使用することができる。同様に、前記プロトコールは、多重融合構築物に由来する単独遊離体の放出に適する。これは、Cre−LoxP反応、形質転換、及び適当に低減した抗生物質レベルの寒天への播種によって達成される(図6)。遊離体については、コード遺伝子を修飾及び多様化させることができる。次いで、多様化させた構築物は、Cre−LoxP反応によって再供給される。
【0229】
試薬:
Creリコンビナーゼ(及び10×バッファー)
大腸菌コンピテント細胞(pir+株、pir−株は部分的に解体されたアクセプター−ドナー誘導体が望ましい場合にのみ使用される)
抗生物質
【0230】
1. 20μlのDe−Cre反応については、〜1μgの多重融合プラスミドを2μlの10×Creバッファー、1から2μlのCreリコンビナーゼ、及び全反応容量を20μlに調節するddH2Oとともにインキュベートする。
【0231】
2. De−Cre反応物を30℃で1から4時間にわたってインキュベートする。
【0232】
3. 場合によって、2から5μlのDe−Cre反応物を分析のための寒天ゲルに試験のために載せる。
【0233】
70℃で10分間にわたる熱不活化の後に、ゲルに載せることが望ましい。
【0234】
4. 化学的形質転換については、10から15μlのDe−Cre反応物を200μlの化学的コンピテント細胞と混合する。混合物を氷上で15から30分間にわたってインキュベートする。次いで、42℃で45から60秒間にわたる熱ショックを実施する。
【0235】
20μlまでのDe−Cre反応物(化学的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量)で、200μlの化学的コンピテント細胞を直接的に形質転換することができる。
【0236】
電気的形質転換については、2μlまでのDe−Cre反応物を100μlの電気的コンピテント細胞と直接混合し、1.8から2.0kVのエレクトロポレーター(例えば、BIORAD E.coli Pulser)を使用することによって形質転換することができるであろう。
【0237】
より大量のDe−Cre反応物は、電気的形質転換の前に、エタノール沈殿又はPCR精製カラムによって脱塩するべきである。脱塩したDe−Cre反応混合物は、好ましくは、電気的コンピテント細胞懸濁物の0.1倍容量を超えない。
【0238】
細胞/DNA混合物は、長期の氷上におけるインキュベートなしで、電気的形質転換にすぐに使用することができるであろう。
【0239】
5. 形質転換(熱ショック又はエレクトロポレーション)の直後に、400μlまでのLB培地(又はSOC培地)を100μlの細胞/DNA懸濁物ごとに添加する。
【0240】
6. 37℃の振盪インキュベーターで懸濁物をインキュベートする。
【0241】
部分的に解体した二重/三重融合体の回収については、37℃の振盪インキュベーターで一晩又は少なくとも4時間にわたって懸濁物をインキュベートする。
【0242】
pACKSプラスミドからの単独ACEMBLベクターなどの個々の遊離体の回収については、37℃のインキュベーターで1から2時間にわたって懸濁物をインキュベートする。
【0243】
7. 所望の組合せの抗生物質を含む寒天に回収した細胞懸濁物を播種する。37℃で一晩にわたってインキュベートする。
【0244】
8. 一晩のインキュベートの後のコロニーは、工程12から16を参照することによって、この工程で制限消化によって直接検証することができる。
【0245】
これは、1つの単独遊離体又は部分的に解体された多重融合プラスミドのみが望ましい場合に、特に推奨される。
【0246】
96ウェルマイクロタイタープレート上における単独抗生物質曝露によるさらなる選択については、工程9に続く。
【0247】
複数の様々な単独遊離体/部分的に解体された多重融合プラスミドが、1つの96ウェルマイクロタイタープレート上で同時に処理及び選択され得る。
【0248】
9. 96ウェル抗生物質試験については、抗生物質を含まない〜500μl LB培地に、各抗生物質寒天プレート由来の4つのコロニーを播種する。37℃の振盪インキュベーターで1から2時間にわたって細胞培養物をインキュベートする。
【0249】
10. コロニーのインキュベートの間に、96ウェルマイクロタイタープレートを150μlの抗生物質含有LB培地又は色鮮やかな色素(位置マーカー)で対応するウェルにおいて満たす。
【0250】
図7を参照すると、4つの様々な単独遊離体/部分的に解体された多重融合プラスミドの同時選択のために使用される、溶液の類似の配置を提供することができる。本発明の当該態様の基礎となる原理は、単独コロニーに由来する全ての細胞懸濁物が、4つの抗生物質全てに別々に曝露されるべきであるということである。
【0251】
11. 前培養した細胞培養物の1μlのアリコートを対応するウェルに添加する。次いで、播種した96ウェルマイクロタイタープレートを37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたって180から200rpmでインキュベートする。
【0252】
プレートを覆うためにパラフィルムを使用することが望ましい。
残った前培養した細胞培養物は、さらなる播種のために4℃の冷蔵庫で保存することができるであろう。
【0253】
12. 各コロニー由来の高密度で澄んでいる細胞培養物の組合せによって、所望の単独遊離体/部分的に解体された多重融合プラスミドを含む形質転換体を選択する。対応する抗生物質を含む10mlのLB培地に、10から20μlの細胞培養物を播種する。37℃の振盪インキュベーターで一晩にわたってインキュベートする。
【0254】
13. 一晩インキュベートした細胞培養物を4000gで5から10分間にわたって遠心分離する。製造業者の情報にしたがって、プラスミドミニプレップキットを使用して細胞ペレットを精製する。
【0255】
14. UV吸収を使用することによって、精製したプラスミド溶液の濃度を測定する(例えば、NanoDrop(商標)1000)。
【0256】
15. 0.5から1μgの精製したプラスミド溶液を20μlの制限消化で消化する(5から10単位のエンドヌクレアーゼを使用する)。望ましい反応条件下において、〜2時間にわたってインキュベートする。
【0257】
16. 分析のための寒天ゲル(0.8から1.2%)電気泳動のために5から10μlの消化物を使用する。実際の制限パターンをコンピュータで(例えば、VectorNTIを使用して)予測される制限パターンと比較することによって、プラスミドの完全性を検証する。
【0258】
17. 場合によって、4つの単独ACEMBLベクター全てをpACKSプラスミドから回収する間に、1又は複数の単独ACEMBLベクターが1つのDe−Cre反応から遊離できなかった場合に、ただ、所望の単独ACEMBLベクターを含む部分的に解体された二重/三重融合体を選択し、第二のDe−Cre反応を実施する(工程1から8を繰り返す)ことができる。
【0259】
典型的には、2までの連続的なDe−Cre反応が、4つの単独ACEMBLベクター全てをpACKSプラスミドから回収するのに十分であり、二重/三重融合体からの単独遊離体の遊離は、pACKSプラスミド(四重融合体)からよりも効率的であろう。同じ原理が、本発明に係るACEMBLシステムに基づく任意の他の多重融合プラスミドの解体にもあてはまる。
【0260】
C.3.共形質転換による細菌における共発現
タンパク質複合体は、発現株に共形質転換した2つの別個のベクターからも発現させることができる。共形質転換したベクターは、同じ又は異なる複製起点を有し得るが、それらは異なる耐性マーカーをコードする必要がある。プラスミドpACE(アンピシリン耐性マーカー)及びpACE2(テトラサイクリン耐性マーカー)は、ColE1由来レプリコンを有し、そのため、全ての共通の発現株で使用することができる。pACE及びpACE2誘導体(必要な場合には、融合したドナーも含む)は、発現株に共形質添加することができ、二重形質転換体が、アンピシリン及びテトラサイクリン抗生物質の双方を含む寒天プレートに播種することによって選択される。
【0261】
形質転換は、標準の形質転換プロトコール(例えば、上記Ausubel et al.(ed.)の最新版を参照のこと)を使用して実施する。
【0262】
D.自動化
上述のとおり、本発明の核酸、ベクター、及び方法を使用する多タンパク質複合体のクローニング及び発現は、現在のロボット技術を利用する自動化装置に特に適している。
【0263】
以下の一般的なプロトコールでは、Tecan Freedom Evoll 200ピペッティングデバイスの例を挙げる。前記ピペッティングデバイスは、典型的には、リキッドハンドリングアーム1(LiHa1)、4固定チップ(鉄製ニードル)、4使い捨てチップ用コンテナ(Diti’s)、250μlシリンジ、リキッドハンドリングアーム2(LiHa2)、8固定チップ(鉄製ニードル)、2.5mlシリンジ、ロボットマニピュレーターアーム(RoMa/プレートの輸送)、バージョンロング(version long)を備えている。前記ワークステーションは、通常、以下の統合装置:サーモサイクラーPTC−200(Biorad)、Te−Shake、加熱可能なプレートシェイカー(Tecan)、Variomagサーモシェイカー、加熱及び冷却可能なプレートシェイカー(inheco)、Te−Vacs、フィルタープレート用デュアルバキュームステーション(Tecan)、Safirell、UV VISプレートリーダー(Tecan)、及び冷却ユニット400W(FRYKAマルチスター)を備えている。
【0264】
D.1.自動化SLICプロセス
自動化SLICのためのワークフローの代表例を図22に図示する。
【0265】
工程1:最初のPCR
ソースプレート:PCRの鋳型(cDNA 約0.2μg/μl)を含む96ウェル標準マイクロタイタープレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:サンプルミックスプレート(96ウェルPCRプレート;Eppendorf)、1%アガロースE−Gel(登録商標)(Invitrogen)、Phusion(登録商標)DNAポリメラーゼマスターミックス、20μMのオリゴヌクレオチドプライマー、2×DNAローディングダイ(2×DLD)(Fermentas)、E−Gel(登録商標)Low Range定量DNAラダー(Invitrogen)、BSAを含む10×バッファーTango(登録商標)(Fermentas)、DpnI(Fermentas)
PCRプログラム:
11×[98℃で20秒間→60から50℃で30秒間(1回おきに1℃低減させる)→72℃で3分間]
19×[98℃で20秒間→50℃で30秒間→72℃で3分間]
72度で3分間
10度に維持
DpnI消化プログラム:
37℃で3時間
10℃で1分間
手順:
チップ洗浄→89μlのPCRマスターミックスをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→ワークリストに記載の1μlの鋳型DNAをピペットで入れる
チップ洗浄→5μlの各プライマーをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→PCRプログラムを実行する
チップ洗浄→10μlのBSAを含む10×バッファーTango(登録商標)をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→5μlのDpnIをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→DpnI消化プログラムを実行する
チップ洗浄→10μlの2×DLDをサンプルミックスプレートの各ウェルにピペットで入れる
チップ洗浄→15μlの各DNAマーカーをE−gelマーカースロットにピペットで入れる
チップ洗浄→10μlのPCR産物をサンプルミックスプレートの2×DLDにピペットで入れる
チップ洗浄→15μlのサンプルミックスをE−gelサンプルスロットにピペットで入れる
チップ洗浄→E−Gel(登録商標)を25分間実行する
結果を評価する
【0266】
工程2:PCR精製
ソースプレート:PCRサンプルを含む96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
ターゲットプレート:96ウェルマイクロタイター溶出プレート(Macherey−Nagel)
材料:PCR精製キット、NucleoSpin96Extract IIキット(Macherey−Nagel)
手順:製造業者の情報(http://www.macherey-nagel.com/tabid/10887/default.aspx)にしたがう
【0267】
工程3:T4 DNAポリメラーゼ反応
ソースプレート:96ウェルマイクロタイター溶出プレート(Macherey−Nagel)
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:再蒸留(bidest)水、10×T4 DNAポリメラーゼ反応バッファー(Novagen)、100mM DTT、2M尿素、T4 DNAポリメラーゼ(Novagen LIC正規品)、500mM EDTA
インキュベーションプログラム:
23℃で10分間(プログラム1)
75℃で20分間(プログラム2)
手順:
チップ洗浄→6μlの水をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlの10×反応バッファーをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→1μlの100mM DTTをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlの2M尿素をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→先のPCRに由来する8μlのDNAサンプルをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→0.5μlのT4 DNAポリメラーゼをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラム1を実行する
チップ洗浄→1μlの500mM EDTAをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラム2を実行する
【0268】
工程4:アニーリング
ソースプレート:T4 DNAポリメラーゼ反応のリアクションプレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:再蒸留(bidest)水、10×DNAリガーゼ反応バッファー(NEB)、直線化したベクター
インキュベーションプログラム:65℃で8分間→0.4℃/分で35度まで低下→10℃で1分間
手順:
チップ洗浄→ワークリストに記載の150ngのT4 DNAポリメラーゼ処理したインサートDNAをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→ワークリストに記載の150ngの直線化したベクターをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラムを実行する
【0269】
工程5:大腸菌の形質転換
ソースプレート:アニーリング工程のリアクションプレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
培養プレート:2ml 96ウェルプレート(Nunc)
ターゲットプレート:適当な抗生物質(標準的な濃度で使用する:アンピシリン100μg/ml、カナマイシン50μg/ml、スペクチノマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール30μg/ml)を含む2mlのLB寒天を備えた12ウェル細胞培養プレート
材料:形質転換について化学的にコンピテントな大腸菌細胞(Xl1blue)、SOC培地
形質転換プログラム:
サーモサイクラーを42℃に加熱
42℃で30秒間インキュベート
冷却した(0℃)ピペッティングキャリアにすぐに移す
手順:
チップ洗浄→100μlのコンピテント大腸菌細胞をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→アニーリング工程に由来する10μlのDNAサンプルをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→0℃で30分間インキュベートする
形質転換プログラムを実行する
0℃で5分間インキュベートする
チップ洗浄→250μlのSOC培地を培養プレートにピペットで入れる
チップ洗浄→形質転換ミックスを培養プレートにピペットで入れる
37℃及び720rpm(Te−Shake Shaker)で2時間インキュベートする
チップ洗浄→50μlの培養物をターゲットプレート(寒天プレート)にピペットで入れる
チップ洗浄→12Hzで1分間にわたってターゲットプレートを振盪する(プレートアウト)
一晩にわたって37℃でターゲットプレートをインキュベートする
【0270】
工程6:クローンを選択し、一晩培養を開始する(手作業工程)
ソースプレート:大腸菌コロニーを含む12ウェル細胞培養プレート
ターゲットプレート:24ウェル培養プレート
材料:2×TY培養培地、培養プレートを備えたインキュベータ
手順:反応ごとに4つのコロニーを選択し、24ウェル培養プレートの3mlの2×TY培地に移す。37℃及び約220rpmで一晩インキュベートする。
【0271】
工程7:プラスミド抽出(ミニプレップ)
ソースプレート:24ウェル培養プレート(通常3ml培養)
ターゲットプレート:96ウェルマイクロタイター溶出プレート(Macherey−Nagel)
材料:プラスミド抽出キット、NucleoSpin Robot 96 Plasmid Kit(Macherey Nagel)
手順:製造業者(http://www.machereynagel.com/tabid/10885/default.aspxを参照のこと)にしたがう
【0272】
工程8:評価
プラスミド収率は、製造業者にしたがって、Thermo Scientific NanoDrop(商標)1000分光光度計でUV吸収を測定することによって定量する。プラスミドの完全性はE−gel(Invitrogen)によって評価した。
【0273】
SLICプロトコールの有効性は、手作業及びロボットの態様で評価する。比較結果を表2に示す。結果は、調製した一連の25の異なるドナー/アクセプター構築物に基づく。
【0274】
【表2】
【0275】
D.2 自動化Cre融合プロセス
自動化Cre融合のためのワークフローの代表例を図23に図示する。
【0276】
工程1:Cre−LoxPプラスミド融合反応
ソースプレート:Cre−LoxP融合に適するプラスミドを含む、プラスミド抽出工程に由来する96ウェルマイクロタイター溶出プレート
リアクションプレート:96ウェルPCRプレート(Eppendorf)
材料:再蒸留(bidest)水、10×Cre反応バッファー(NEB)、Creリコンビナーゼ(NEB)
インキュベーションプログラム:37℃で1時間→10℃で1分間
手順:
チップ洗浄→6μlの再蒸留(bidest)水をリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlの10×cre反応バッファーをリアクションプレートにピペットで入れる。
チップ洗浄→ワークリストに記載のCre組換えに適するプラスミドDNAをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→2μlのCreリコンビナーゼをリアクションプレートにピペットで入れる
チップ洗浄→インキュベーションプログラムを実行する
全反応容量:20μl
【0277】
工程2、3、及び4:大腸菌形質転換及びプラスミド抽出:
Cre組換え工程に由来するリアクションプレートをソースプレートとして使用し、SOC培地の回復時間が全体で4時間に延長した以外は、上述のD.1節に記載の方法と同一である。化学的コンピテントMach 1細胞を形質転換に使用する。3及び4つのベクターを用いたCre反応については、抗生物質濃度(標準の仕様濃度:アンピシリン100μg/ml、カナマイシン50μg/ml、スペクチノマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール30g/ml)が半分の寒天プレートを使用する。
【0278】
工程5:評価
プラスミド融合体収率は、製造業者の説明書にしたがって、Thermo Scientific NanoDrop(商標)1000分光光度計でUV吸収を測定することによって定量する。プラスミドの完全性は、未消化及び消化したサンプルのE−gel(Invitrogen)によって評価する。個々の融合体に特徴的な消化パターンをもたらす適切な制限部位が、Vector NTI(Invitrogen)を使用することによって同定し、制限マッピングに使用する。
【0279】
Cre反応の有効性は、Evollリキッドハンドリングワークステーションを使用することによって、一連の融合反応を各々3回重複して実施することによって試験する。結果は表IIIにまとめる。
【0280】
【表3】
【0281】
D.3.高速マイクロバッチI.MAC
ソースプレート:2mlディープウェルプレート(Eppendorf)
フィルタープレート:ガラスフィルタープレート(Novagen)
ターゲットプレート:標準のマイクロタイタープレート(Greiner)
材料:20%エタノール中のNi−NTAバルクビーズ50%(Ge−Healthcare)、−20℃の冷凍庫、マイクロタイタープレートに適する卓上遠心分離機、マイクロチップを備えた超音波装置、特定のタンパク質に適するIMAC結合及び溶出バッファー(Berrow et al., Acta Cryst. (2006). D62, 1218 − 1226)
手順:
サンプル調製(オフライン)
ソースプレートで直接的に3000g(4℃)の遠心分離によって、所望のタンパク質を発現する大腸菌を回収する
細胞ペレットを30分間、−20℃で凍結させる
細胞ペレットを15分、室温で融解する
フィルタープレートの調製
チップ洗浄→200μlで20回上下にピペッティングすることによってNi−NTAビーズ懸濁物を再懸濁する→200μlのビーズ懸濁物をフィルタープレートに移す
チップ洗浄→30秒間にわたって550mbarで吸引を適用する(20%エタノールを除去する)
チップ洗浄→1mlの平衡化バッファー(例えば、結合バッファー)を樹脂にピペットで入れる
チップ洗浄→60秒間にわたって300mbarで吸引を適用する(平衡化)
IMAC精製、調製
チップ洗浄→1mlの結合バッファーをソースプレートのサンプルにピペットで入れる
チップ洗浄→750μlで10回上下にピペッティングすることによって細胞ペレットを再懸濁する
チップ洗浄
サンプルの超音波処理(オフライン)
細胞の完全な溶解を確実にするためにサンプルを超音波処理する
IMAC精製、ローディング、及び溶出
チップ洗浄→全溶解物をフィルタープレートに移す
チップ洗浄→90秒間にわたって300mbarで吸引を適用する(結合工程)
チップ洗浄→1mlの洗浄バッファーをサンプルにピペットで入れる
チップ洗浄→90秒間にわたって300mbarで吸引を適用する(洗浄工程)
洗浄工程を3回繰り返す
チップ洗浄→100μlの溶出バッファーをサンプルにピペットで入れる
チップ洗浄→室温で3分間にわたってインキュベートする
90秒間にわたって650mbarで吸引を適用する(溶出工程)
【0282】
評価
溶出したサンプル(10μlから12μl)は、Biorad Minigel Systemを使用して12%変性ゲルに手作業でロードし、135Vで25分間にわたって前実行し、次いで、185Vで65から70分間にわたって実行する。ゲルは、標準の手順にしたがってクマシーブリリアントブルーで染色する。
【0283】
E.原核生物宿主におけるタンパク質発現のためのACEMBLキット
原核生物宿主における発現のための好ましい実施態様に係るキットは、以下のものを含む:
- BW23473、BW23474細胞1、及び/又はCreリコンビナーゼ
- pACE (アクセプター)、及びpDC、pDK、pDS (ドナー)から作製したpACKS四重融合ベクター2
- pACE2ベクター
- pACE-VHLbc、pDK-BFP、pDS-mGFP3から作製したpACE-[VHLbc/BFP/mGFP]対照プラスミド三重融合ベクター
1 ドナー誘導体の増殖のためのpir遺伝子を発現する大腸菌株 (pir+ 背景を有する任意の他の株を使用することができる)。
2 この融合ベクターは、pACE、pDC、pDK、及びpDSのCre-LoxP反応によって作製した。これはアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、及びスペクチノマイシンに耐性を有する。個々のACEMBLベクターは、プロトコールC2.2.に上述したとおり、Cre-LoxPを介する解体によって当該四重融合体から遊離することができる。本実施態様に係る単独ACEMBLベクター及びpACKS四重融合体の配列は、配列番号2から7に提供している。
3 pDS-mGFPは、eGFPのN末端に融合したコイルドコイルを含む (Berger et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 12177-82を参照のこと)。
【0284】
任意の成分は以下のとおりである:
- 抗生物質: アンピリシン、クロラムフェニコール、カナマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン
- 酵素:
T4 DNAポリメラーゼ(遺伝子の組換え挿入用)
Phusionポリメラーゼ(DNAのPCR増幅用)
制限酵素及びT4 DNAリガーゼ(望ましい場合の従来のクローニング用)
【0285】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0286】
上述のACEMBLシステムを使用することによる多タンパク質発現の実施例を、既に概説したような、以下に示す遺伝子の組合せの方法で示す。開示する反応は、上記C節に挙げたプロトコールにしたがって手作業で実施するか、又は上記D節にしたがって適合したプロトコールでTecan Freedom Evoll 200ロボットで実施した。
【0287】
実施例1:ACEMBLベクターへのSLICクローニング:ヒトTFIIF
C末端オリゴヒスチジンタグを有する全長ヒトRAP74をコードする遺伝子及び全長ヒトRAP30をコードする遺伝子を、上述のプロトコールにしたがって、T7InsFor(5’-TCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGG-3’; 配列番号20)及びT7Insrev(5’-CCTCAAGACCCGTTTAGAGGCCCCAAGGGGTTATGCTAG-3’; 配列番号21)のプライマー対を使用することによって、pET系プラスミド鋳型(Gaiser et al. (2000) J. Mol. Biol. 302, 1119-1127)から増幅した。直線化したベクター骨格は、双方のケースにおいてT7VecFor(5’CTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGG-3’; 配列番号22)及びT7VecRev(5’-CCCTATAGTGAGTCGTATTAATTTCGCGGGA-3’; 配列番号23)のプライマー対を使用することによって、pACE及びpDCからPCR増幅によって得られた。上記プロトコール1(C節)にしたがって、pACE−RAP30及びpDC−RAP74hisを生産した(図8)。これらのプラスミドは、Cre−LoxP反応によって融合した(上記C節を参照のこと)。11の二重耐性(Cm、Ap)コロニーのBstZ17I/BamHI二重消化による制限マッピングの結果は、1%E−gel電気泳動(M:NEB 1kb DNAマーカー)からのゲル切片によって図8に示す。全ての試験したコロニーは、予測されたパターン(5.0+2.8kb)を示した。1つのクローンでBl21(DE3)細胞を形質転換した。発現及びNi2+捕捉及びS200クロマトグラフィーによる精製によって、ヒトTFIIF複合体が得られた(図21A)。
【0288】
全長ヒトTFIIFの高レベルの可溶性発現(図21A)は注目すべきであり、サブユニットの個々の発現では不溶性のものが常に得られる。以前は、ヒトTFIIF二量体化ドメインの結晶構造分析は、限定的なタンパク質分解、再クローニング、設計された断片の不溶性発現、及び共再フォールディングの多数の反復するサイクルが必要であった(上記Gaiser et al.(2000))。同様の実験状況は、過去のタンパク質複合体研究において一般的であった。これで、必要とされる大きな労力の投資は、本発明の核酸及びベクター、特に、ACEMBLシステムを使用することによって顕著に低減される。
【0289】
実施例2:SLICによるポリシストロン挿入:ヒトVHL/エロンギンb/エロンギンc複合体
N末端で6ヒスチジン−チオレドキシン融合タグに融合した、Von Hippel Lindauタンパク質(アミノ酸54−213)をコードする遺伝子を、プライマーT7InsFor(上記表1を参照のこと)及びSmaBamVHL(5’-GAATTCACTGGCCGTCGTTTTACAGGATCCTTAATCTCCCATCCGTTGATGTGCAATG-3’; 配列番号45)を使用することによって、プラスミドpET3−HisTrxVHLからPCR増幅した。SmaBamVHLプライマーは、VHL遺伝子の3’末端のインサートに特異的な配列(終止コドンを含む)によって3’で伸長した、SmaBamアダプター配列(表1;配列番号17)の誘導体である。全長エロンギンbをコードする遺伝子は、対応するアダプター(表1)の誘導体である、プライマーBamSmaEB(5’-GGATCCTGTAAAACGACGGCCAGTGAATTCG CTAGCTCTAGAAATAATTTTGTTTAAC-3’; 配列番号46)及びSacHindEB(5’-GAGCTCGACTGGGAAAACCCTGGCGAAGCTTAGATCTGGATCCTTACTGCACGGCTTGTTCATTGG-3’; 配列番号47)を使用することによって、pET3−エロンギンBからPCR増幅した。エロンギンc(アミノ酸17−112)の遺伝子は、対応するアダプター(表1)の誘導体である、プライマーHindSacEC(5’-AAGCTTCGCCAGGGTTTTCCCAGTCGAGCTCCAATTGGAATTCGCTAGCTCTAG-3’; 配列番号48)及びBspEco5EC(5’-GATCCGGA TGTGAAATTGTTATCCGCTGGTACCAAGCTTAGATCTGGATCCTTAACAATCTAAGAAG-3’; 配列番号49)を使用することによって、pET3−エロンギンCから増幅した。ベクター骨格は、プライマーTn7VecRev及びEco5Bsp並びに鋳型としてpACEを使用することによって、PCR増幅した(図9)。多断片SLICは、上記プロトコール2(C節)にしたがって実施して、トリシストロンを含むpACE−VHLbcが得られた。アンピシリンを含む寒天プレートにクローンを播種した。配列決定によって検証された陽性クローンは、
下記の共発現実験に使用した(実施例5)。
【0290】
実施例3:ホーミングエンドヌクレアーゼ/BstXIモジュール:酵母RES複合体
酵母タンパク質(全て全長)Pml1p、Snu17p、及びBud13pの各々をコードする、プラスミドpCDFDuet−Pml1p、pRSFDuet−Snu17p−NHis、及びpETDuet−Bud13pは、Simono Trowitzsch博士およびMarkus Wahl博士(Max−Planck Institute for Biophysical Chemistry,Gottingen,Germany)から得られた。Snu17pは、N末端に融合した6ヒスチジンタグを含む。His6タグを有するSnu17pをコードする遺伝子は、制限酵素NcoI及びXhoIを使用することによって、pRSFDuet−Snu17pNHisから切除し、NcoI/XhoI消化したpACE構築物(NcoI及びXhoI部位の間に無関係の遺伝子を含む)に連結し、pACE−Snu17が得られた。Bud13pをコードする遺伝子は、XbaI及びEcoRVで制限消化することによってpETDuet−Bud13pから遊離し、XbaI/PmeI消化したpDCに入れて、pDC−Bud13を得た。Pm1lpをコードする遺伝子は、NdeI及びXhoIで制限消化することによって、pCDFDuet−Pml1pから遊離し、NdeI/XhoI消化したpDCに入れて、pDC−Pml1を得た。次いで、Bud13pのための発現カセットを、PI−SceI及びBstXIで消化することによってpDC−Bud13pから遊離した。遊離した断片は、PI−SceI消化し、かつ、アルカリホスファターゼで処理したpDC−Pml1pに挿入し、pDC−Bud13p−Pml1pを得た。
【0291】
pACE−Snu17及びpDC−BudPmlは、Cre−LoxP反応によって融合し、アンピシリン及びクロラムフェニコールを含む寒天プレートに播種することによって選択した。融合プラスミドでBl21(DE3)細胞を形質転換した。発現並びにNi2+捕捉及びS200サイズ排除クロマトグラフィーによる精製によって、三量体であるRES複合体が得られた。
【0292】
本発明の方法によって酵母RES複合体をクローニングするためのストラテジーは、図10に図示している。
【0293】
実施例4:共形質転換による共発現:ヒトNYB/NYC
タンパク質NYB(アミノ酸49−141)及びNYC(アミノ酸27−12)をコードする遺伝子は、ベクターpACYC18411−NYB及びpET15−NYCの各々から切除した(Romier et al. (2003 J. Biol. Chem. 278, 1336-1345)。NdeI及びBamHIをNFYBに使用した。XbaI及びBamHIをNYCに使用した。かくして、タンパク質のN末端に6ヒスチジンタグを取込んだ。NYBインサートは、NdeI及びBamHIで消化したpACEに連結した。NYCインサートは、XbaI及びBamHIで消化したpACE2に連結した。pACE−NFYB及びpACE2−NFYCで、pLysSプラスミドを含むBL21(DE3)細胞を形質転換した。アンピシリン、テトラサイクリン、及びクロラムフェニコールを含む寒天プレート上での選択によって、三重耐性コロニーが得られた。複合体が発現し、Ni2+捕捉(IMAC)及びS75HR(Pharmacia)サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0294】
実施例5:アクセプター−ドナー融合体からの共発現
三量体のタンパク質複合体(VHLbc: VonHippel-Lindauタンパク質 アミノ酸54-213 / 全長エロンギンB / エロンギンC アミノ酸 17-112)(Stebbins et al. (1999) Science 284, 455-61)、AAA ATPアーゼ FTsH(アミノ酸147−610)をコードする遺伝子、及び蛍光マーカーをコードする2つの遺伝子(BFP及びGFP)をコードする6つの異種性遺伝子は、図20に示すように組み立てた。1回のCre反応において、1つのアクセプター(pACE−VHLbc)及び3つのドナー(pDC−FtsH、pDK−BFP、pDS−mGFP)の全ての組合せが得られ、選択した。これは、6つの異種遺伝子全てを含む四重融合体を含む(図20を参照のこと)。クローンは、C節のACEMBLシステムについて上述したとおりに96ウェルマイクロタイタープレートによって検証する。発現及びNi2+親和性捕捉によって、タグを有しない蛍光マーカーの免疫染色と組み合わせて、多タンパク質の発現の成功を確認した(図16及び17B)。タンパク質は、自己誘導培地を使用し、スモールスケールにおいて、24ウェルディープウェルプレート中のBL21(DE3)で発現させた(Studier (2005) Protein Expr. Purif. 41, 207-34)。制限マッピングによって、培地中において1つの抗生物質のみに曝露する場合ですら、大きな融合プラスミドであっても複数(60超)の世代にわたって安定である
【0295】
実施例6:YidC−SecYEGDFホロトランスロコンの発現
図21Cに示すとおり、ACEMBLシステムを使用して、全部で33の膜貫通ヘリックスを含む大きな多タンパク質複合体であるYidC−SecYEGDFホロトランスロコンを生産した。この機構は、フォールドされていないポリペプチドを細胞膜に輸送するために使用されるか、又は細菌の周辺質への転位に使用される(Duong et al. (1997) EMBO J. 16, 2757-68)。
【0296】
実施例7:昆虫細胞におけるヒトIKK複合体の発現
上記C.1.節に概説した単独遺伝子のACEMBLシステムへの挿入のためのプロトコールにしたがって、IKK1(IKKαとも称される)、IKK2(IKKβとも称される)、及びIKK3(Nemoとも称される)の遺伝子を、pACEBac1、pIDC、及びpIDSの各々にクローニングした(得られたプラスミドpACEBac1−HisIKK1、pIDC−CSIKK2、及びpIDS−IKK3のマップは、図46、47、及び48の各々に示す)。IKK1−2二重融合体(pIDC−CSIKK2とpACEBac1−HisIKK1)及びIKK1−2−3三重融合体(3つのベクターの全て)は、C.2節に上述したCre−LoxP融合によって作製した。その融合体は、バキュロウイルスゲノム(EMBac)を細菌人工染色体として有する適切な宿主細胞に導入した。前記ベクター融合体は、Tn7転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込んだ。有効な組み込みは、青色/白色スクリーニングによって評価した。複合ウイルスのDNAは、白色クローンから調製し、Sf21細胞に感染させた。
【0297】
実施例8:H1N1インフルエンザウイルス様粒子の発現
タンパク質HA、NA、M1、及びM2を含む、ブタインフルエンザウイルス(H1N1タイプのインフルエンザウイルス)のウイルス様粒子(VLP)は、以下のストラテジーによって昆虫細胞(Sf21)で発現させた:C.1節に概説した単独遺伝子挿入によって、HA及びNAをpACEBac1にクローニングした。同じ手順によって、M1及びM2をコードする遺伝子をpIDCにクローニングした。HA−NAおよびM1−M2の各々の二重発現カセットを、各々のMIEにおけるHE−BstXI部位を使用することによって産生して(上記C1.4節を参照のこと)、プラスミドpACEBac−HA−NA(プラスミドマップは図49を参照のこと)及びpIDC−M1−M2(プラスミドマップは図50を参照のこと)を得た。完全なH1N1インフルエンザVLPをコードするベクターは、上記C.2節のプロトコールにしたがって、pACEBac−HA−NAをpIDC−M1−M2とCreLoxP融合することによって産生した。融合ベクターは、細菌人工染色体としてバキュロウイルスゲノム(EMBac)を有する適切な宿主細胞に導入した。融合ベクターは、Tn7転位によってバキュロウイルスゲノムに組み込んだ。有効な組み込みは、青色/白色スクリーニングによって評価した。複合ウイルスのDNAは、白色クローンから調製し、Sf21細胞にトランスフェクトした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素によって切断され得ないように、HE及びX部位が選択される、核酸。
【請求項2】
以下の配列要素:
HE−Prom−MCS−Term−X又はHE−Prom−MCS−X
[Promはプロモーターであり;
MCSはマルチプルクローニングサイトであり;及び
Termはターミネーターである]
を有する、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記HE部位が、各ホーミングエンドヌクレアーゼによって切断される際に、4ヌクレオチドの突出を生じる認識配列である、請求項1又は2に記載の核酸。
【請求項4】
前記HE部位が、PI−SceI、I−CeuI、I−PpoI、I−HmuI I−CreI、I−DmoI、PI−PfuI、I−MsoI、PI−PspI、I−SceI、SegH、Hef、I−ApeII、I−AniI、チトクロームbmRNAマチュラーゼbl3、PI−TliI、PI−TfuII、及びPI−ThyIからなる群から選択されるホーミングエンドヌクレアーゼの認識配列である、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記X部位がBstXI部位である、請求項3又は4に記載の核酸。
【請求項6】
前記MCSが1又は複数の相同領域を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項7】
配列番号1、配列番号50、配列番号51、配列番号52、及び配列番号53からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
ベクター又は宿主細胞への核酸の組み込みのための少なくとも1つの部位をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項10】
部位特異的リコンビナーゼのための少なくとも1つの認識配列、好ましくはloxP不完全反転反復又はTn7結合部位をさらに含む、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列を有する、請求項9又は10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸の配列要素の2以上を含み、かつ、部位特異的リコンビナーゼの2以上の認識配列を含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
配列番号18の配列を有する、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
ウイルス、好ましくはバキュロウイルスである、請求項9から12のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸及び/又は請求項9から14のいずれか一項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項9から14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのベクターを、前記ベクターの増殖に適する少なくとも1つの宿主細胞とともに含む、多タンパク質複合体のクローニング及び/又は発現のためのキット。
【請求項17】
(a)請求項9から14のいずれか一項に記載の第一のベクターのHE部位及びX部位の間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(b)請求項9から14のいずれか一項に記載の第二のベクターのHE部位及びX部位の間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(c)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼ及びX部位に特異的な制限酵素で第一のベクターを切断し、切断したHE部位及びX部位に隣接する少なくとも1つの遺伝子を含む断片を得る工程;
(d)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼで第二のベクターを切断する工程;
(e)工程(c)で得た断片を、工程(d)で得た切断した第二のベクターに連結して、第三のベクターを得る工程;及び、場合によって、
(f)工程(a)から(e)を1つ又は複数のベクターで繰り返して、複数の遺伝子を含むベクターを得る工程
を含む、複数の発現カセットを含むベクターの製造方法。
【請求項18】
(i)請求項17に記載の方法によって複数の発現カセットを含むベクターを製造する工程;
(ii)工程(i)で得たベクターを宿主細胞に導入する工程;及び
(iii)ベクターに存在する遺伝子の同時発現を可能にする条件下において、前記宿主細胞をインキュベートする工程
を含む、多タンパク質複合体の製造方法。
【請求項19】
複数の発現カセットのクローニング及び/又は発現のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸及び/又は請求項9から14のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項20】
n個のベクター単位を1から(n−1)個の融合ベクターに組み立てるための方法であって、前記融合ベクターは2からn個の前記ベクター単位を含み、
(1)部位特異的組換え部位、及び他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを各々が含むn個のベクター単位を、前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼと接触させて、2からn個の前記ベクター単位を含むベクター単位の融合体の混合物を得る工程;
(2)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;
(3)2からn個のベクター単位を含む1又は複数の所望の融合ベクターを選択するために、抗生物質の適当な組合せの存在下において、形質転換した細胞の1又は複数のサンプルを培養する工程;
(4)抗生物質の各組合せの存在下で生存可能である、形質転換した細胞のn個のシングルクローンを、工程(3)で得られた培養物から得る工程;及び
(5)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下において、前記n個のシングルクローンの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、方法。
【請求項21】
融合しようとするベクター単位の(n−1)個の各々が前記耐性マーカーとは異なる別の選択マーカーを含み、前記別の選択マーカーを含まないベクター単位と前記選択マーカーを含む1又は複数のベクター単位との間の融合体で形質転換された宿主細胞のみが工程(3)で生存可能である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクター単位の(n−1)個が、宿主細胞における特定の遺伝子の存在又は非存在に前記ベクター単位の増殖を依存させる条件複製起点を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記宿主細胞が、細菌、好ましくは大腸菌であり、前記複製起点がR6Kγ又はその誘導体であり、かつ、前記細菌がpir−である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記n個のベクター単位の各々が、1つ又は複数の興味のある遺伝子を、好ましくは1つの発現カセット内に含む、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
2から(n−1)個のベクター単位を含む融合ベクターからなる群から選択される1又は複数の所望の融合ベクターに、又は1又は複数のシングルベクター単位に、n個のベクター単位を含む融合ベクターを解体する方法であって、
n個のベクター単位を含む前記融合ベクターにおいて、前記n個のベクター単位が、n個の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられ、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを含み、
(A)2から(n−1)個の前記ベクター単位を含むベクター単位の融合体及びシングルベクター単位の混合物を得るために、n個のベクター単位を含む融合ベクターを前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼと接触させる工程;
(B)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;
(C)下記:
(C1)2から(n−1)個のベクター単位を含む1又は複数の所望の融合ベクターを選択するための抗生物質の適当な組合せ;及び/又は
(C2)所望のシングルベクター単位を選択するための1つの適当な抗生物質
の存在下において、形質転換した細胞の1又は複数のサンプルを培養する工程;
(D)各抗生物質又は抗生物質の組合せの各々の存在下で生存可能である、形質転換した細胞のn個のシングルクローンを、形質転換した細胞のサンプルから得る工程;並びに
(E)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下において、前記n個のシングルクローンの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、方法。
【請求項26】
n個のベクター単位を含む融合ベクターをシングルベクター単位に解体するために、工程(A)、(B)、及び(C1)が、2から(n−1)個のベクター単位を含む適当な融合ベクターを選択するために実施され、工程(A)、(B)、及び(C2)から(E)が、2から(n−1)個のベクター単位を含む前記選択した融合ベクターを用いて実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
n個のベクター単位を含む前記融合ベクター中のベクター単位の(n−1)個の各々が、前記耐性マーカーとは異なる別の選択マーカーを含み、前記別の選択マーカーを含まないベクター単位と前記選択マーカーを含む1又は複数のベクター単位との間の融合体で形質転換された宿主細胞のみが工程(C1)で生存可能である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ベクター単位の(n−1)個が、宿主細胞における特定の遺伝子の存在又は非存在に前記ベクター単位の増殖を依存させる条件複製起点を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記宿主細胞が、細菌、好ましくは大腸菌であり、前記複製起点がR6Kγ又はその誘導体であり、かつ、前記細菌がpir−である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記n個のベクター単位の各々が、1又は複数の興味のある遺伝子を、好ましくは1つの発現カセット内に含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、融合ベクター。
【請求項32】
以下:
− n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含む、融合ベクター、
− 部位特異的組換え部位、及び他のベクターの耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を各々が含む、n個のベクター(ベクター単位)、並びに
− 前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼ、並びに/又は前記融合ベクター及び/若しくは前記n個のベクターの増殖のための細胞、
を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、n個のベクターを組み立て及び/又は解体するためのキット。
【請求項1】
少なくとも1つのホーミングエンドヌクレアーゼ部位(HE)及び少なくとも1つの制限酵素部位(X)を含む核酸であって、ホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素の各々によって切断される際にHE及びXが適合する付着末端を生じ、HE付着末端及びX付着末端の連結産物がホーミングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素によって切断され得ないように、HE及びX部位が選択される、核酸。
【請求項2】
以下の配列要素:
HE−Prom−MCS−Term−X又はHE−Prom−MCS−X
[Promはプロモーターであり;
MCSはマルチプルクローニングサイトであり;及び
Termはターミネーターである]
を有する、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記HE部位が、各ホーミングエンドヌクレアーゼによって切断される際に、4ヌクレオチドの突出を生じる認識配列である、請求項1又は2に記載の核酸。
【請求項4】
前記HE部位が、PI−SceI、I−CeuI、I−PpoI、I−HmuI I−CreI、I−DmoI、PI−PfuI、I−MsoI、PI−PspI、I−SceI、SegH、Hef、I−ApeII、I−AniI、チトクロームbmRNAマチュラーゼbl3、PI−TliI、PI−TfuII、及びPI−ThyIからなる群から選択されるホーミングエンドヌクレアーゼの認識配列である、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記X部位がBstXI部位である、請求項3又は4に記載の核酸。
【請求項6】
前記MCSが1又は複数の相同領域を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項7】
配列番号1、配列番号50、配列番号51、配列番号52、及び配列番号53からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
ベクター又は宿主細胞への核酸の組み込みのための少なくとも1つの部位をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項10】
部位特異的リコンビナーゼのための少なくとも1つの認識配列、好ましくはloxP不完全反転反復又はTn7結合部位をさらに含む、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列を有する、請求項9又は10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸の配列要素の2以上を含み、かつ、部位特異的リコンビナーゼの2以上の認識配列を含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
配列番号18の配列を有する、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
ウイルス、好ましくはバキュロウイルスである、請求項9から12のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸及び/又は請求項9から14のいずれか一項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項9から14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのベクターを、前記ベクターの増殖に適する少なくとも1つの宿主細胞とともに含む、多タンパク質複合体のクローニング及び/又は発現のためのキット。
【請求項17】
(a)請求項9から14のいずれか一項に記載の第一のベクターのHE部位及びX部位の間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(b)請求項9から14のいずれか一項に記載の第二のベクターのHE部位及びX部位の間に1つ又は複数の遺伝子を挿入する工程;
(c)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼ及びX部位に特異的な制限酵素で第一のベクターを切断し、切断したHE部位及びX部位に隣接する少なくとも1つの遺伝子を含む断片を得る工程;
(d)HE部位に特異的なホーミングエンドヌクレアーゼで第二のベクターを切断する工程;
(e)工程(c)で得た断片を、工程(d)で得た切断した第二のベクターに連結して、第三のベクターを得る工程;及び、場合によって、
(f)工程(a)から(e)を1つ又は複数のベクターで繰り返して、複数の遺伝子を含むベクターを得る工程
を含む、複数の発現カセットを含むベクターの製造方法。
【請求項18】
(i)請求項17に記載の方法によって複数の発現カセットを含むベクターを製造する工程;
(ii)工程(i)で得たベクターを宿主細胞に導入する工程;及び
(iii)ベクターに存在する遺伝子の同時発現を可能にする条件下において、前記宿主細胞をインキュベートする工程
を含む、多タンパク質複合体の製造方法。
【請求項19】
複数の発現カセットのクローニング及び/又は発現のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸及び/又は請求項9から14のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項20】
n個のベクター単位を1から(n−1)個の融合ベクターに組み立てるための方法であって、前記融合ベクターは2からn個の前記ベクター単位を含み、
(1)部位特異的組換え部位、及び他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを各々が含むn個のベクター単位を、前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼと接触させて、2からn個の前記ベクター単位を含むベクター単位の融合体の混合物を得る工程;
(2)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;
(3)2からn個のベクター単位を含む1又は複数の所望の融合ベクターを選択するために、抗生物質の適当な組合せの存在下において、形質転換した細胞の1又は複数のサンプルを培養する工程;
(4)抗生物質の各組合せの存在下で生存可能である、形質転換した細胞のn個のシングルクローンを、工程(3)で得られた培養物から得る工程;及び
(5)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下において、前記n個のシングルクローンの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、方法。
【請求項21】
融合しようとするベクター単位の(n−1)個の各々が前記耐性マーカーとは異なる別の選択マーカーを含み、前記別の選択マーカーを含まないベクター単位と前記選択マーカーを含む1又は複数のベクター単位との間の融合体で形質転換された宿主細胞のみが工程(3)で生存可能である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクター単位の(n−1)個が、宿主細胞における特定の遺伝子の存在又は非存在に前記ベクター単位の増殖を依存させる条件複製起点を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記宿主細胞が、細菌、好ましくは大腸菌であり、前記複製起点がR6Kγ又はその誘導体であり、かつ、前記細菌がpir−である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記n個のベクター単位の各々が、1つ又は複数の興味のある遺伝子を、好ましくは1つの発現カセット内に含む、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
2から(n−1)個のベクター単位を含む融合ベクターからなる群から選択される1又は複数の所望の融合ベクターに、又は1又は複数のシングルベクター単位に、n個のベクター単位を含む融合ベクターを解体する方法であって、
n個のベクター単位を含む前記融合ベクターにおいて、前記n個のベクター単位が、n個の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられ、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカーとは異なる個別の耐性マーカーを含み、
(A)2から(n−1)個の前記ベクター単位を含むベクター単位の融合体及びシングルベクター単位の混合物を得るために、n個のベクター単位を含む融合ベクターを前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼと接触させる工程;
(B)前記混合物で宿主細胞を形質転換する工程;
(C)下記:
(C1)2から(n−1)個のベクター単位を含む1又は複数の所望の融合ベクターを選択するための抗生物質の適当な組合せ;及び/又は
(C2)所望のシングルベクター単位を選択するための1つの適当な抗生物質
の存在下において、形質転換した細胞の1又は複数のサンプルを培養する工程;
(D)各抗生物質又は抗生物質の組合せの各々の存在下で生存可能である、形質転換した細胞のn個のシングルクローンを、形質転換した細胞のサンプルから得る工程;並びに
(E)前記n個のベクター単位に存在するn個の個別の耐性マーカーに特異的なn個の抗生物質の各々の存在下において、前記n個のシングルクローンの各々のn個のサンプルを培養する工程
を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、方法。
【請求項26】
n個のベクター単位を含む融合ベクターをシングルベクター単位に解体するために、工程(A)、(B)、及び(C1)が、2から(n−1)個のベクター単位を含む適当な融合ベクターを選択するために実施され、工程(A)、(B)、及び(C2)から(E)が、2から(n−1)個のベクター単位を含む前記選択した融合ベクターを用いて実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
n個のベクター単位を含む前記融合ベクター中のベクター単位の(n−1)個の各々が、前記耐性マーカーとは異なる別の選択マーカーを含み、前記別の選択マーカーを含まないベクター単位と前記選択マーカーを含む1又は複数のベクター単位との間の融合体で形質転換された宿主細胞のみが工程(C1)で生存可能である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ベクター単位の(n−1)個が、宿主細胞における特定の遺伝子の存在又は非存在に前記ベクター単位の増殖を依存させる条件複製起点を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記宿主細胞が、細菌、好ましくは大腸菌であり、前記複製起点がR6Kγ又はその誘導体であり、かつ、前記細菌がpir−である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記n個のベクター単位の各々が、1又は複数の興味のある遺伝子を、好ましくは1つの発現カセット内に含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、融合ベクター。
【請求項32】
以下:
− n個の同一の部位特異的組換え部位によって互いに隔てられたn個のベクター単位を含む融合ベクターであって、各ベクター単位が、他のベクター単位の耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を含む、融合ベクター、
− 部位特異的組換え部位、及び他のベクターの耐性マーカー遺伝子とは異なる個別の耐性マーカー遺伝子を各々が含む、n個のベクター(ベクター単位)、並びに
− 前記部位特異的組換え部位に特異的なリコンビナーゼ、並びに/又は前記融合ベクター及び/若しくは前記n個のベクターの増殖のための細胞、
を含み、nが少なくとも3の整数、好ましくは3から5である、n個のベクターを組み立て及び/又は解体するためのキット。
【図10】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図24】
【図25】
【図26】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図50】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図21】
【図22】
【図23】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図49】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図24】
【図25】
【図26】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図50】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図21】
【図22】
【図23】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図49】
【公表番号】特表2012−519476(P2012−519476A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552470(P2011−552470)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052892
【国際公開番号】WO2010/100278
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(500262197)ヨーロピアン モレキュラー バイオロジー ラボラトリー (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052892
【国際公開番号】WO2010/100278
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(500262197)ヨーロピアン モレキュラー バイオロジー ラボラトリー (13)
【Fターム(参考)】
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