説明

多価抗体

N末端から順に、V1と呼称する可変ドメイン、C1領域、及びV2と呼称するさらなる可変ドメインを含む重鎖と、N末端から順に、V1と呼称する可変ドメイン、CLドメイン及びV2と呼称する可変ドメインを含む軽鎖とを含む多価抗体融合タンパク質であって、前記重鎖及び軽鎖が、V1及びV1の第1可変ドメイン対により形成される第1結合部位と、V2及びV2の第2可変ドメイン対により形成される第2結合部位とを提供するように整列され、結合部位を形成する可変ドメイン対の間にジスルフィド結合が存在し、前記融合タンパク質が、PEGポリマーにコンジュゲートされている融合タンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つの抗原結合部位を有する抗体であって、例えば各部位の周辺の立体障害が最小限であることにより、単数又は複数の標的抗原に対する親和性がフォーマットにより有害に影響されない抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
多価抗体は既知である。しかし、基本的な概念は数年前に開示されたものの、この技術を活用することに関連して実際上の困難性が存在し、よって、これは、開発中の薬学的な生物学的製品の調製のために広く採用されていない。
【0003】
自然でない/天然でない抗体フォーマットは発現させることが困難であり得、このことは、商品の経費を支持できないレベルまで著しく押し上げることがある。これらのフォーマットは、標準的な抗体又は断片と比較して免疫原性を増加するか若しくはin vivo安定性を低減することがあり、且つ/或いは望ましくない薬物動態を有することがある。
【0004】
特に、均質な生成物を調製することに関連する問題点は、自然でないフォーマットについての懸念である。例えば、単量体成分を組み合わせる順列が1より多いならば、混合物を得ることができる。よって、所望の/標的の物体を満足のいく純度レベルで単離するために精巧な精製方法が要求されることがある。
【0005】
このことは、いくつかの方法により対処されており、例えば二重特異性ダイアボディの生成における短いリンカーの使用は、適当な二量体形成を助けると言われた。しかし、可変ドメインの配向が、フォーマットの発現及び活性結合部位の形成に影響し得ることがデータにより示されている。
【0006】
所望の配置又は配向での組み立てを強要するためのあるアプローチは、「ノブ−イン−ホール」法とよばれ、ここでは、例えばいくつかの抗体ではバリン137を大きい残基であるフェニルアラニンに交換し、ロイシン45をトリプトファンで置き換えることにより、大きい「ノブ」がVHドメインに導入される。例えばVLドメインに、いくつかの抗体ではフェニルアラニン98をメチオニンに且つトリプトファン87をアラニンに変異させることにより、相補的な穴が導入できる。しかし、いくつかの構築物について、抗原結合活性の低減が観察された。
【0007】
本発明では、CLを軽鎖中に、そしてC1を重鎖中にもたらすことにより、鎖の正しい配向を確実にする。
【0008】
よって、
N末端から順に、V1と呼称する可変ドメイン、C1領域、及びV2と呼称するさらなる可変ドメインを含む重鎖と、
N末端から順に、V1と呼称する可変ドメイン、CLドメイン、及びV2と呼称する可変ドメインを含む軽鎖と
を含む組換え融合タンパク質であって、
前記重鎖及び軽鎖が、V1及びV1の第1可変ドメイン対により形成される第1結合部位と、V2及びV2の第2可変ドメイン対により形成される第2結合部位とを提供するように整列され、
結合部位を形成する可変ドメイン対の間、例えばV1とV1及び/又はV2とV2との間にジスルフィド結合が存在し、
前記融合タンパク質が、PEGポリマーにコンジュゲートされている組換え融合タンパク質が提供される。
【0009】
本明細書で提供する組換え融合タンパク質は、完全抗体のものと同様の半減期も有利に有し、よって、治療における使用のために適切である見込みがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示による様々な融合タンパク質フォーマットを示す。
【図2A】様々な既知の抗体断片フォーマットを示す。
【図2B】本願で請求する発明による二量体フォーマットについてのある可能性のある配置を示す。
【図3】抗体4D5についての軽鎖アミノ酸配列を示す。
【図4】抗体4D5についての重鎖アミノ酸配列を示す。
【図5】太字で示す表面Cys変異の位置とともにA26Fab−(3xG4S)−dsFv645を示す。
【図6】A26Fab−(3xG4S)−dsFv645、S182及びS163のPEG化変異体の非還元ゲルを示す。
【0011】
重鎖は、本明細書で採用する場合、C1ドメインを含む鎖である。
【0012】
全般的に、重鎖は、Fc断片、すなわちC2及び/又はC3断片を含まない。
【0013】
一実施形態では、重鎖は、1つのC1ドメインだけを含む。
【0014】
1及びV2は、本明細書で採用する場合、本発明による抗体の重鎖中に可変領域があるという事実に言及することを意図する。これは、それ自体、そのような可変領域の起源を示すものではない。
【0015】
1及びV2は、本明細書で採用する場合、本発明による抗体の軽鎖中に可変領域があるという事実に言及することを意図する。これは、それ自体、そのような可変領域の起源を示すものではない。
【0016】
軽鎖は、本明細書で採用する場合、CLドメインを含む。一実施形態では、軽鎖は、1つのCLドメインだけを含む。
【0017】
軽鎖中の定常領域断片としてのCL、及び重鎖中の定常領域断片としてのC1の本明細書における配置は、不適当な二量体形成を最小限にすると考えられる。
【0018】
一実施形態では、本開示による融合タンパク質は、例えば可変ドメインとのリンカーとしてのヒンジを含む。
【0019】
ヒンジは、全長抗体で見出されるものに対応する位置でC1のC末端に付着させることができ、C1とV2との間の連結を形成できる。この実施形態では、リンカーが軽鎖上にも備えられ、よってV2が、重鎖中でV2と対形成するように適切に配置される。軽鎖中で採用されるリンカーは、重鎖中で採用されるヒンジリンカーと同一、類似又は完全に異なっていてよい。
【0020】
代わりの実施形態では、軽鎖は、例えばCLドメインのC末端に付着し、CLドメインをV2に連結するヒンジを含む。この実施形態では、V2及びV2ドメインが適切に対形成して活性部位を形成できることを確実にするためにリンカーが重鎖中に要求されることがある。重鎖中のリンカーは、軽鎖中で採用されるリンカーと同一、類似又は完全に異なることができる。
【0021】
適切なヒンジの例を、以下に示す。
【0022】
可変ドメインが、標的抗原と適切/適格に結合する予め定義された対を形成するように、各鎖にもたらされる。
【0023】
一実施形態では、可変ドメイン対は、100nm以下、例えば50nm以下、特に1nm以下の、標的抗原に対する親和性を有する。
【0024】
適切な可変ドメイン対は、例えば宿主での抗体の産生とその後のB細胞のスクリーニングを含む任意の可能な手段により同定してよい。代わりに、適切な対は、ファージディスプレイにより同定してよい。
【0025】
ファージディスプレイ方法は、当該技術において既知であり、Brinkmanら、J.Immunol.Methods、1995、182、41〜50;Amesら、J.Immunol.Methods、1995、184、177〜186;Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.、1994、24、952〜958;Persicら、Gene、1997 187、9〜18;及びBurtonら、Advances in Immunology、1994、57、191〜280;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;及びWO95/20401;並びにUS5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743;及び5,969,108に開示されるものを含む。
【0026】
トランスジェニックマウス又はその他の哺乳動物を含むその他の生物を用いて、ヒト化抗体を産生してよい。
【0027】
一実施形態では、可変ドメイン対(又は各可変ドメイン対)は、同族の対である。
【0028】
同族の対は、本明細書で採用する場合、可変ドメインの自然な対、すなわち単一の抗体又は抗体発現細胞から単離されたものに言及することを意図する。
【0029】
一例では、同族の対は、協同して抗原と結合する相補的VH/VL対であり、すなわちこれらは、相補的VH/VL対である。
【0030】
典型的に、同族の対は、同じ抗体に由来するVH/VL対である。一例では、同族の対は、Fabファージディスプレイライブラリーのような「対のライブラリー」からの対として単離された可変ドメインの対である。
【0031】
一例では、VH/VL対は、単一特異性である。
【0032】
第1及び第2結合部位は相対的(互いに相対的)な用語であり、互いを区別するために結合部位に与えられた呼称表示である。一方の結合部位を「第1」と表示するならば、他方は「第2」と表示される。
【0033】
第1同族対及び第2対も、対を呼称上区別するための相対的な表示である。本明細書で「第1対」と表示されるある対は、分子中の位置について定義するものではない。
【0034】
可変ドメインは、最適化及び/又はヒト化されていることがある。同族の対に由来する最適化/ヒト化可変ドメインは、最適化/ヒト化の後でもまだ同族の対とみなされる。
【0035】
CLは、本明細書で採用する場合、軽鎖中の定常領域部分のことをいい、これは、自然に存在する軽鎖定常領域であってよい。
【0036】
各可変ドメインは、関係する鎖中の定常ドメインと直接又はリンカーを介してつなぎ合わせることができる。
【0037】
「直接連結された」は、本明細書で採用する場合、遮られない連続アミノ酸配列、すなわちペプチド結合により直接連結された、例えば可変ドメインの配列又は逆に定常領域断片に直接連結され、リンカーによりつなぎ合わされていないものに言及することを意図する。アミノ酸配列中に「自然でないペプチドリンカー」を挿入することは、配列を中断するので、「自然でないペプチドリンカー」を含有する配列は、本明細書の意味の範囲内で、関係する部分に直接融合されるとはみなされない。自然なペプチドリンカーの付加も、それが可変ドメイン又は定常領域断片(例えばCLドメイン又はC1ドメイン)のような1又は複数の関係する成分の配列の一部を形成するとみなすことができないならば、アミノ酸配列を遮るとみなされる。
【0038】
1は、全般的に、C1と直接つなぎ合わされる。
【0039】
1は、全般的に、CLと直接つなぎ合わされる。
【0040】
一実施形態では、V1 C1及びV1 CLは一緒に、Fab又はFab’を形成する。
【0041】
一実施形態では、V2中(例えばそのN末端)のアミノ酸は、ペプチド結合によりC1のアミノ酸(例えばC1のC末端に)に直接連結される。
【0042】
一実施形態では、V2中(例えばそのN末端)のアミノ酸は、リンカーによりC1(例えばC1のC末端に)に間接的に連結される。
【0043】
一実施形態では、V2中(例えばそのN末端)のアミノ酸は、ペプチド結合によりCLのアミノ酸(例えばCLのC末端に)に直接連結される。
【0044】
一実施形態では、V2中(例えばそのN末端)のアミノ酸は、リンカーによりCL(例えばCLのC末端に)に間接的に連結される。
【0045】
一実施形態では、重鎖中のV1は、重鎖からの可変ドメインである。すなわち、これは、抗体の自然の重鎖若しくはその関係する断片に由来するか、又はファージディスプレイのような代替の供給源に由来し、重鎖に由来する可変ドメインの特徴を有する。
【0046】
一実施形態では、重鎖中のV1は、軽鎖からの可変ドメインである。すなわち、これは、抗体の自然の軽鎖若しくはその関係する断片に由来するか、又はファージディスプレイのような代替の供給源に由来し、軽鎖に由来する可変ドメインの特徴を有する。
【0047】
一実施形態では、重鎖中のV2は、重鎖からの可変ドメインである。
【0048】
一実施形態では、重鎖中のV2は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0049】
一実施形態では、軽鎖中のV1は、重鎖からの可変ドメインである。
【0050】
一実施形態では、軽鎖中のV1は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0051】
一実施形態では、軽鎖中のV2は、重鎖からの可変ドメインである。
【0052】
一実施形態では、軽鎖中のV2は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0053】
一実施形態では、V1は、軽鎖からの可変ドメインであり、V2は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0054】
一実施形態では、V1は、重鎖からの可変ドメインであり、V2は、重鎖からの可変ドメインである。
【0055】
一実施形態では、V1は、軽鎖からの可変ドメインであり、V2は、重鎖からの可変ドメインである。
【0056】
一実施形態では、V1は、重鎖からの可変ドメインであり、V2は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0057】
一実施形態では、V1は、軽鎖からの可変ドメインであり、V2は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0058】
一実施形態では、V1は、重鎖からの可変ドメインであり、V2は、重鎖からの可変ドメインである。
【0059】
一実施形態では、V1は、軽鎖からの可変ドメインであり、V2は、重鎖からの可変ドメインである。
【0060】
一実施形態では、V1は、重鎖からの可変ドメインであり、V2は、軽鎖からの可変ドメインである。
【0061】
一実施形態では、第1可変ドメイン対は、第2可変ドメイン対と同じエピトープと結合する。
【0062】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、標的抗原と強く結合する。
【0063】
一実施形態では、第1可変ドメイン対は、第2可変ドメイン対と同じ抗原と結合し、例えば、第1可変ドメイン対及び第2可変ドメイン対は、同じ抗原上の異なるエピトープと結合する。
【0064】
よって、一実施形態では、本開示による融合タンパク質は、単一特異性である。単一特異性は、本明細書で採用する場合、全ての結合部位が同じ標的抗原と結合することに言及することを意図する。
【0065】
本実施形態の一態様では、全ての結合部位は、前記抗原の同じエピトープ(単数又は複数)と結合する。
【0066】
代わりの実施形態では、少なくとも2つの結合部位は、標的抗原上の異なるエピトープと結合する。
【0067】
一実施形態では、第1可変ドメイン対は、第2可変ドメイン対とは異なる/別個の抗原と結合する。
【0068】
よって、一実施形態では、本開示による融合タンパク質は、二重特異性であり、例えば2つの結合部位は、異なる又は別個の抗原と特異的に結合する。
【0069】
特異的に結合するとは、本明細書で採用する場合、標的抗原(すなわちそれらが特異的である抗原)に対する親和性が高く、それらが特異的でない抗原と低い親和性又はかなりより低い親和性で結合する(又は全く結合しない)抗体に言及することを意図する。親和性を測定する方法は、当業者に知られており、BIAcoreのようなアッセイを含む。
【0070】
一実施形態では、同族の対のような少なくとも1つの可変ドメイン対の可変ドメインは、ジスルフィド結合により連結される。
【0071】
一実施形態では、例えば第1同族対において第1結合部位を形成する可変ドメイン間にジスルフィド結合が存在する。
【0072】
一実施形態では、例えば第2同族対において第2結合部位を形成する可変ドメイン間にジスルフィド結合が存在する。
【0073】
一実施形態では、例えばV2とV2との間のジスルフィド結合の非存在下で、V1とV1との間にジスルフィド結合が存在する。
【0074】
一実施形態では、例えばV1とV2との間のジスルフィド結合の非存在下で、V2とV2との間にジスルフィド結合が存在する。
【0075】
一実施形態では、第1結合部位を形成する可変ドメイン間のジスルフィド結合と、第2結合部位を形成する可変ドメイン間にさらなるジスルフィド結合とが存在する。
【0076】
一実施形態では、ジスルフィド結合は、間である(文脈がそうでないと示さない限り、以下のリストにおいてKabat番号付けを採用する)。Kabat番号付けに言及する場合いつでも、関係する参考文献は、Kabatら、1987、免疫学的対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、US Department of Health and Human Services、NIH、USAである:
・VH37+VL95C、例えばProtein Science6、781〜788 Zhuら(1997)を参照されたい;
・VH44+VL100、例えばBiochemistry33 5451〜5459 Reiterら(1994);又はJournal of Biological Chemistry 269巻28号18327〜18331頁Reiterら(1994);又はProtein Engineering、10巻12号1453〜1459頁Rajagopalら(1997)を参照されたい;
・VH44+VL105、例えばJ Biochem.118、825〜831 Luoら(1995)を参照されたい;
・VH45+VL87、例えばProtein Science 6、781〜788 Zhuら(1997)を参照されたい;
・VH55+VL101、例えばFEBS Letters377 135〜139 Youngら(1995)を参照されたい;
・VH100+VL50、例えばBiochemistry29 1362〜1367 Glockshuberら(1990)を参照されたい;
・VH100b+VL49;
・VH98+VL46、例えばProtein Science6、781〜788 Zhuら(1997)を参照されたい;
・VH101+VL46
・VH105+VL43、例えばProc.Natl.Acad.Sci.USA90巻7538〜7542頁Brinkmannら(1993);又はProteins19、35〜47 Jungら(1994)を参照されたい、或いは
・VH106+VL57、例えばFEBS Letters377 135〜139 Youngら(1995)を参照されたい。
【0077】
上で列挙するアミノ酸対は、ジスルフィド結合が形成できるようにシステインで置き換えることができる位置にある。システインは、これらの位置に、既知の技術により工学的に作製できる。
【0078】
したがって、一実施形態では、本発明の可変ドメイン対(VH/VL)は、一方がVH中で他方がVL中の2つのシステイン残基間のジスルフィド結合により連結でき、システイン残基の対の位置は、VH37とVL95、VH44とVL100、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH100bとVL49、VH98とVL46、VH101とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される。
【0079】
一実施形態では、本発明の可変ドメイン対(VH/VL)は、一方がVH中で他方がVL中であってCDRの外側の2つのシステイン残基間のジスルフィド結合により連結でき、システイン残基の対の位置は、VH37とVL95、VH44とVL100、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH98とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される。
【0080】
一実施形態では、本発明の可変ドメイン対(VH/VL)は、一方がVH中で他方がVL中であってCDRの外側の2つのシステイン残基間のジスルフィド結合により連結でき、システイン残基の対の位置は、VH37とVL95、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH98とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される。
【0081】
一実施形態では、本発明の可変ドメイン対(VH/VL)は、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合により連結でき、VHのシステイン残基は44位であり、VLのシステイン残基は100位である。
【0082】
典型的に、システイン対は、VH及びVL中のこれらの位置に工学的に作製され、したがって、一実施形態では、本発明の可変ドメイン対(VH/VL)は、一方がVH中で他方がVL中の2つの工学的に作製されたシステイン残基間のジスルフィド結合により連結でき、工学的に作製されたシステイン残基の対の位置は、VH37とVL95、VH44とVL100、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH100bとVL49、VH98とVL46、VH101とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される。
【0083】
一実施形態では、本発明の可変ドメイン対(VH/VL)は、一方がVH中で他方がVL中であってCDRの外側の2つの工学的に作製されたシステイン残基間のジスルフィド結合により連結でき、工学的に作製されたシステイン残基の対の位置は、VH37とVL95、VH44とVL100、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH98とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される。
【0084】
一実施形態では、可変ドメイン対(VH/VL)は、一方がVH中で他方がVL中であってCDRの外側の2つの工学的に作製されたシステイン残基間のジスルフィド結合により連結され、工学的に作製されたシステイン残基の対の位置は、VH37とVL95、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH98とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される。
【0085】
一実施形態では、可変ドメイン対(VH/VL)は、2つの工学的に作製されたシステイン残基間のジスルフィド結合により連結され、VHの工学的に作製されたシステイン残基は44位であり、VLの工学的に作製されたシステイン残基は100位である。
【0086】
一実施形態では、V1は、C1に直接融合され、V1は、CLに直接融合され、V2とV2との間にジスルフィド結合が存在する。
【0087】
一実施形態では、1又は複数の結合部位の可変領域間の1又は複数のジスルフィド結合は、安定化の効果を有し、例えば、発現を助け、且つ/又は不適当な二量体形成を最小限にする。
【0088】
一実施形態では、第1同族対中の可変ドメイン間及び/又は第2同族の対中の可変ドメイン間にジスルフィド結合が存在し、C1及びCLのような定常領域断片間にジスルフィド結合が存在する。
【0089】
本明細書で提供するフォーマットのいずれも、定常ドメイン間のジスルフィド結合あり又はなしで提供してよい。
【0090】
CLドメインは、カッパ又はラムダのいずれかに由来する。一実施形態では、CLは、cカッパである。
【0091】
一実施形態では、C1とCLとの間に「自然の」ジスルフィド結合が存在する。「鎖間」システインを形成する結合のための自然の位置は、ヒトcカッパ及びcラムダ中の214である(Kabat番号付け(Kabat numbering)第4版1987)。
【0092】
1中のシステイン又は「鎖間システイン」で形成される結合の厳密な位置は、実際に採用する特定のドメインに依存する。よって、例えば、ヒトガンマ−1におけるジスルフィド結合を形成する鎖間システインの自然の位置は、233位にある(Kabat番号付け(Kabat numbering)第4版1987)。ガンマ2、3、4、IgM及びIgDのようなその他のヒトアイソタイプについての結合形成システインの位置は知られており、例えば127である。
【0093】
様々な鎖間ジスルフィド結合及びその欠如を図2Aに示す。
【0094】
一実施形態では、本開示による融合タンパク質は、ジスルフィド結合を、自然に存在するC1及びCL中のものと対応する等価な位置に有する。
【0095】
一実施形態では、C1又はCLを含む定常領域は、自然に存在しない位置にあるジスルフィド結合を有する。これは、要求される位置にてアミノ酸鎖中にシステイン(単数又は複数)を導入することにより、分子中に工学的に作製できる。この自然でないジスルフィド結合は、C1とCLとの間に存在する自然のジスルフィド結合に加えて又はその代わりにある。
【0096】
一実施形態では、C1とCとの間の自然のジスルフィド結合は存在しない。一実施形態では、C1とCLとの間の全ての鎖間ジスルフィド結合は存在しない。
【0097】
一実施形態では、各定常領域断片は、少なくとも1つの可変ドメインと融合される。
【0098】
一実施形態では、各定常領域断片も、ペプチド、例えば表1及び/又は2中の配列のような人工の/自然に存在しないリンカーを介して、可変ドメイン、例えばそれが融合される可変ドメインに対して非同族の対であるものに連結される。
【0099】
一実施形態では、例えば重鎖中の定常領域断片は、C1ドメインを含む。一実施形態では、定常領域断片は、C1ドメインからなる。
【0100】
1は、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)又はIgMドメイン及びそれらのアイソタイプに由来してよい。
【0101】
一実施形態では、軽鎖は、CLドメインを含む。一実施形態では、軽鎖中の定常領域は、CLドメインからなる。
【0102】
一実施形態では、N末端から、重鎖は次のように配置される:可変ドメインV1(第1同族対の一部)、C1、可変ドメインV2(第2同族対の一部)。この配置では、C1は、例えば、第1同族対からの可変ドメインV1に融合され、ペプチドを介して第2同族対の可変ドメインに連結され得る。
【0103】
一実施形態では、N末端から、軽鎖は次のように配置される:V1(第1同族対の一部)、CL、V2(第2同族対の一部)、例えばCLは、第1同族対のV1に融合され、ペプチドを介して第2同族対のV2に連結され得る。
【0104】
適切なペプチドリンカーの例を以下に、例えば表1に示す。
【表1−1】


【表1−2】

【0105】
(S)は、配列3〜7において場合によって存在する。本開示で採用されるリンカーは、表1に示すリンカーを含んでよい。
【0106】
本開示による融合タンパク質で用いるための剛直性リンカーの例は、ペプチド配列GAPAPAAPAPA(配列番号42)、PPPP(配列番号43)及びPPPを含む。
【0107】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、アルブミン結合性ペプチドを含む。
【0108】
アルブミン結合性ペプチドの例は、WO2007/106120に示され、以下のものを含む:
【表2】

【0109】
一実施形態では、リンカーは、エフェクター機能を有する。
【0110】
一実施形態では、本開示の融合タンパク質は二量体形成して、本明細書で(Fab’Fv)と言及する分子をもたらす。二量体形成は、例えば、本開示による2つの融合タンパク質のそれぞれ(すなわちFab−dsFv)上にある2つの溶媒露出「標的」システイン間のジスルフィド結合形成、又は2つのFab−Fvのそれぞれにある「標的」システイン、リシン、糖部分若しくは非自然アミノ酸の化学架橋によることがある。
【0111】
Fab−Fv間ジスルフィド結合形成(分子間結合形成)の形成が所望される場合、Fab−Fv内の1つのリンカーだけが単数又は複数のシステインを含有する。すなわち、CLとV2との間のリンカーが1又は複数のシステインを含有する場合、C1とV2との間のリンカーは、通常、システインを欠く。
【0112】
1とV2との間のリンカーが1又は複数のシステインを含有する場合、CLとV2との間のリンカーは、通常、システインを欠く。
【0113】
リンカーは、1から8の間のシステインを含有してよく、1〜8システインを含有する任意のペプチド配列で構成されてよい。
【0114】
適切なペプチド配列を表1、2及び3に示し、これらも、要求に応じて、1〜8システインを含有するように工学的に改変してよい。
【0115】
ヒンジを、二量体形成を促進するためにリンカーとして採用してよい。なぜなら、これらは、元来フレキシブルであり、効率的で安定なジスルフィド形成を促進するのに十分な2次構造を含有するからである。特に、任意のクラス又はアイソタイプの自然のヒンジ又は改変ヒンジは、それらが1から8の間のシステイン残基を含有する場合に、用いてよい。
【0116】
CLとV2との間の自然の又は改変ヒンジリンカー配列が1又は複数のシステインを含有する場合、C1とV2との間のリンカーは、通常、システインを欠く。
【0117】
1とV2との間のヒンジリンカーが1又は複数のシステインを含有する場合、CLとV2との間のリンカーは、通常、システインを欠く。
【0118】
代わりに、Fab−Fv間二量体形成は、V1、V1、cカッパ、cラムダ、C1、V2又はV2の任意の溶媒露出又は表面露出領域上に「標的」残基を工学的に作製することにより促進できる。同様に、「標的」残基は、軽鎖又は重鎖ポリペプチドのいずれかのC末端にて、例えばV2又はV2の後に工学的に作製してよい。これらの標的残基は、好ましくは、V2若しくはV2の最後の残基の直後又はポリペプチドのリンカー、ヒンジ若しくはスペーサ領域内のシステイン残基である。
【0119】
「標的」残基が化学架橋リンカーにより連結される場合、長さ、組成、活性又はヘテロ機能性は、抗原への近づきやすさ、機能的結合力、血清半減期、精製特性又は貯蔵及び処方特性を微調整するために変動してよい。化学架橋リンカーは、部分的にポリエチレングリコールで構成されてよいか、又は第3特異性を加えるための追加の反応性基若しくは活性剤を含有してよい。
【0120】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ポリマー、例えばPEGを用いて、第1融合タンパク質中の1つの鎖がポリペプチド、例えば抗体又は断片にコンジュゲートしてヘテロ二量体を形成するように二量体形成する。
【0121】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ポリマーを用いて、本開示による第2融合タンパク質と二量体形成して、ヘテロ二量体又はホモ二量体を形成する。
【0122】
図2Bは、本開示の2つのタンパク質を含むPEGで連結された二量体フォーマットの例を示す。PEGリンカーは、第1融合タンパク質のC1と第2融合タンパク質のC1との間を連結する。しかし、適切な特性を有するヒンジ領域を導入して、PEGリンカー分子をそれにコンジュゲートしてよい。代わりに、CLドメインを採用して、PEGをそれにコンジュゲートしてよい。
【0123】
1又は複数の可変ドメイン対間のジスルフィド結合の位置は、本明細書で記載される任意の位置であり得る。
【0124】
フォーマットは、定常領域間のジスルフィド結合あり又はなしで提供してもよく、その例は上でより詳細に議論される。
【0125】
ヒンジは、自然のヒンジ又は改変ヒンジであってよい。改変ヒンジは、表3のように採用してよい。
【0126】
いくつかの改変ヒンジ領域は、例えばUS5,677,425、US6642356、WO9915549、WO2005003170、WO2005003169、WO2005003170、WO9825971及びWO2005003171に既に記載されており、これらは、本明細書に参照により組み込まれている。ヒンジの具体例は、表3に示すものを含む。
【表3−1】


【表3−2】


【表3−3】


【表3−4】


【表3−5】


ここで、Xは、任意のアミノ酸を表し、例えばXXはAAを表すことがある。
【0127】
一実施形態では、本開示による融合タンパク質は、ヒンジを含まない。
【0128】
本発明者らは、最終構築物中に同族の対として可変ドメインを提供することにより、関係する対により形成される結合部位の抗原結合特性が最適化され、維持されると考える。
【0129】
同族の対中のジスルフィドブリッジは、フォーマットの安定化を助けることにおいて有利であると考えられる。
【0130】
1若しくは複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を、本発明により提供される抗体可変ドメインに、抗体が標的抗原と結合し、その活性を中和する能力を著しく変更することなく作製できることが認識される。任意のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失の影響は、例えばin vitroアッセイ、例えばBIAcoreアッセイを用いることにより、当業者により容易に試験できる。
【0131】
一実施形態では、軽鎖と重鎖との間の鎖間ジスルフィド結合は存在せず、通常結合を形成しないシステインの1つ又は2つ(鎖間システイン)をポリマーにコンジュゲートする。1つの鎖間システインを、遺伝子工学技術を採用して選択的にコンジュゲートして、対応する鎖間システインを、セリンのような代替アミノ酸で置き換えることができる。
【0132】
両方の鎖間システインを、ポリマーに、適切に強い還元剤を採用することによりコンジュゲートしてよい。鎖間システインの様々な配置又はその欠如を図2Aに示す。
【0133】
カッパ又はラムダドメインは、適切なポリマーとの化学的コンジュゲーションにより改変してよい。
【0134】
一実施形態では、本開示の融合タンパク質中のヒトcカッパは、C末端に:
【化1】


から選択される配列を含む。
【0135】
例えばすぐ上に記載するようなcカッパのC末端における1又は複数のシステインを用いて、それにPEGポリマーをコンジュゲートしてよい。
【0136】
コンジュゲーションのためのcカッパ中の適切な位置は、以下のものを含む:
1.上部cカッパ、これは、本開示による融合タンパク質中のV1及びV2からほぼ等距離にあり、例えばGlu143、Gln199及び/又はVal110(直鎖状及びKabat番号付け)、
2.中部cカッパ、これは、有効な抗原結合のために要求されると考えられる全ての可動性でフレキシブルなモチーフから離れており、例えばLys145及び/又はGln147(直鎖状及びKabat番号付け)並びに/或いは
3.下部cカッパ、例えばLys190、Asn210、Arg211及び/又はGlu213(直鎖状及びKabat番号付け)。
【0137】
これらのアミノ酸は、既知の技術を採用して、要求に応じて例えばシステインで置き換えてよい。
【0138】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列:
【化2】


を、例えばcカッパ中に、特にアミノ酸配列中の108位〜214位(Kabat番号付け)に含む。
【0139】
一実施形態では、本開示の融合タンパク質中のヒトC1は、C末端に、
KSC、
KSS及び
KCS
から選択される配列を含む。
【0140】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列:
【化3】


を含む。太字で示すアミノ酸S120は、C1の遺伝子/エキソン定義の一部ではないが、構造上の「肘」の一部と考えられる。
【0141】
下線で示す配列は、C1の遺伝子/エキソン定義の一部ではないが、例えばC1中、特にアミノ酸配列の121位〜218位(Kabat番号付け)における上部ヒンジの一部である。
【0142】
コンジュゲーションのためのC1中の適切な位置は、以下のものを含む:
1.上部C1、これは、本発明による融合タンパク質中のV1及びV2からほぼ等距離にあり、例えばAsn211(216)及び/又はThr123(Kabat番号付けによりAsn216及び/又はThr116)、
2.中部C1、これは、有効な抗原結合のために要求されると考えられる全ての可動性でフレキシブルなモチーフから離れており、例えばSer163及び/又はSer127(Kabat番号付けによりSer163及び/又はSer120)並びに/或いは
3.下部C1、例えばLys136、Ser137及び/又はSer222(Kabat番号付けによりLys129、Ser130、Ser232)。
【0143】
これらのアミノ酸は、既知の技術を採用して、要求に応じて例えばシステインで置き換えてよい。よって、一実施形態では、本発明による工学的に作製されたシステインは、所定のアミノ酸の位置での自然に存在する残基がシステイン残基で置き換えられていることをいう。
【0144】
工学的に作製されたシステインの導入は、当該技術において既知の任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法は、それらに限定されないが、PCR伸長オーバーラップ突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発又はカセット突然変異誘発を含む(全般的に、Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbour Laboratory Press、Cold Spring Harbour、NY、1989;Ausbelら、分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、Greene Publishing&Wiley−Interscience、NY、1993を参照されたい)。部位特異的突然変異誘発キットは商業的に入手可能であり、例えばQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キットである(Stratagen、La Jolla、CA)。カセット突然変異誘発は、Wellsら、1985、Gene、34:315〜323に基づいて行うことができる。代わりに、変異体は、アニーリング、ライゲーション及びPCR増幅による完全遺伝子合成と、オーバーラップオリゴヌクレオチドのクローニングとにより作製できる。
【0145】
一実施形態では、融合タンパク質は、ポリマーのコンジュゲーションのためにCH1及び/又はCL領域中にシステインを有さない。
【0146】
一実施形態では、VH1はCH1に融合され、それらを接続するアミノ酸配列は、本明細書において肘という。一実施形態では、前記肘は、それにコンジュゲートされた、例えばVH1とVH2との間の等距離の位置にコンジュゲートされた、例えばThr123(Kabat番号付けによりThr116)及び/又はS119(Kabat番号付けによりSer112)及び/又はS122(Kabat番号付けによりSer115)残基にコンジュゲートされた1又は複数の、例えば1つのPEGポリマーを有する。ジスルフィド結合は、例えば単数又は複数のシステインを、分子中の適切な位置に工学的に作製して、それにPEGポリマーをコンジュゲートするための基質をもたらすことによりもたらされる。
【0147】
一実施形態では、VL1はCLに融合され、それらを接続するアミノ酸配列は、本明細書において肘という。一実施形態では、前記肘は、それらにコンジュゲートされた、例えばVL1とVL2との間の等距離の位置にコンジュゲートされた、例えばLys107、Arg108及び/又はThr109(直鎖状及びKabat番号付け)残基にコンジュゲートされた1又は複数の、例えば1つのPEGポリマーを有する。上で論じたように、システインは、コンジュゲーションのために要求に応じてもたらすことができる。
【0148】
一実施形態では、PEGは、凝集傾向の領域と空間的に近い残基とコンジュゲートされる。有利には、このような領域と近いPEG化は、対象の領域を、分子間相互作用から、治療用の投与のために適切な溶液での濃度にて実質的に遮蔽し得る。軽鎖中では、コンジュゲーションは、例えばThr109若しくはGln199(直鎖状及びKabat番号付け)にて又はその付近にあって、例えばValAla−AlaLysスポットを打ち消し、且つ/或いはLys149又はAsn152(直鎖状及びKabat番号付け)で、例えば単一のLeuスポットを打ち消してよい。重鎖中では、コンジュゲーションは、例えばGln178(Kabat番号付けによりGln179)若しくはSer180(Kabat番号付けによりSer182)若しくはGly181(Kabat番号付けによりGly183)にて又はその付近にあって、ValLys−Tyrスポットに対処してよい。
【0149】
一実施形態では、PEG分子は、溶媒露出、反応性及び/又は表面曝露/露出アミノ酸、例えばシステインに付着される。
【0150】
表面曝露システイン(遊離システイン)は、本明細書で採用する場合、融合タンパク質が「自然の」折り畳まれた立体構造にある場合に、それにPEG分子のようなエフェクター分子をコンジュゲートするために露出しているシステインに言及することを意図する。表面システインは、抗体又は断片の親水性部分で見出されるものである。このタイプの遊離システインをどのように工学的に作製するかの例は、US7,521,541にも示される。
【0151】
システインで置き換えることができる4D5の軽鎖(図3に示す配列)中の適切なアミノ酸は、以下のものを含む:
セリン(S):7、9、10、12、14、26、56、60、63、67、76、77、114、121、127、156、159、168、171、202、203、
トレオニン(T):5、20、22、31、69、72、74、129、197、206、
グリシン(G):16、41、57、68、128、143、157、200、212
アスパラギン酸(D):17、28、70、122、151、167、170
アルギニン(R):18、24、61、211、
グルタミン(Q):27、79、147、160、195、199
アスパラギン(N):30、152、158、210、
アラニン(A):34、153、
リシン(K):39、42、126、145、149、169、
グルタミン酸(E):55、81、123、161、213。
【0152】
上で採用する番号は、PDB結晶構造配列ファイル1FVEで示すような抗体1次配列番号付けである。これらの番号は、Kabat番号付けにも対応する。この開示は、本発明の融合タンパク質に含まれるその他の抗体又は断片中の対応するアミノ酸(Kabat番号付けを採用する)の置き換えにも拡張される。
【0153】
よって、一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化4】


からなる群から選択される。
【0154】
一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化5】


からなる群から選択される。
【0155】
その他の適切な残基は、WO2006/034488及びWO2008/038024を含む文献に記載されている。したがって、一実施形態では、システインを、融合タンパク質軽鎖中に、例えば:
V15をCで置き換えて、
A43をCで置き換えて、
V110をCで置き換えて、
S114をCで置き換えて、
S121をCで置き換えて、
S127をCで置き換えて、
A144をCで置き換えて、
A153をCで置き換えて、
N158をCで置き換えて、
S168をCで置き換えて、
V205をCで置き換えて、
S171をCで置き換えて、
S156をCで置き換えて、
S202をCで置き換えて、且つ/又は
S203をCで置き換えて
工学的に作製する。
【0156】
上記の番号付けは、図3に示す軽鎖配列を参照するが、本明細書の開示は、その他の軽鎖における対応するKabat位置にも拡張される。
【0157】
一実施形態では、システインを、融合タンパク質軽鎖中に、例えば:
S171をCで置き換えて、
S156をCで置き換えて、
S202をCで置き換えて、且つ/又は
S203をCで置き換えて
工学的に作製する。
【0158】
一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化6】


からなる群から選択される。
【0159】
一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化7】


からなる群から選択される。
【0160】
一実施形態では、システインを、融合タンパク質軽鎖定常領域、CL中に、例えば:
T109をCで置き換えて、
E143をCで置き換えて、
K145をCで置き換えて、
K149をCで置き換えて、且つ/又は
N210をCで置き換えて
工学的に作製する。
【0161】
一実施形態では、システインを、融合タンパク質軽鎖可変領域中に、例えば:
配列番号44のS77をCで置き換えて、且つ/又は
配列番号44のK107をCで置き換えて
工学的に作製する。
【0162】
一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、S77、K107、T109、E143、K145、K149及びN210からなる群から選択される。
【0163】
本明細書において上で特定された全ての残基はIgG1に由来するが、本明細書における開示は、抗体のその他のクラス及びアイソタイプからのその他の軽鎖中の対応するKabat位置までも拡張される。
【0164】
したがって、一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして
【化8】


からなる群から選択される。
【0165】
一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして
【化9】


からなる群から選択される。
【0166】
したがって、一実施形態では、抗体融合タンパク質軽鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして77位、107位、109位、143位、145位、149位及び210位からなる群から選択される。
【0167】
システインで置き換えることができる4D5の重鎖(図4に示す配列)中の適切なアミノ酸は、以下のものを含む:
セリン(S):7、17、21、63、71、86、119、120、122、127、134、135、137、139、160、163、168、179、180、193、194、195、210、222
トレオニン(T):58、69、123、138、167、198、200、
グリシン(G):8、9、10、15、16、26、66、100、101、103、140、141、164、169、181、197、
アスパラギン酸(D):62、73、102、215、
アルギニン(R):59、67、87、
グルタミン(Q):3、13、112、155、199、219、
アスパラギン(N):84、211、
アラニン(A):88、121、165
リシン(K):43、65、124、136、208、213、217、
グルタミン酸(E):89。
【0168】
上で採用する番号は、PDB結晶構造配列ファイル1FVEで示すような抗体1次配列番号付けである。この開示は、本発明の融合タンパク質に含まれるその他の抗体又は断片中の対応するアミノ酸(Kabat番号付けを採用する)の置き換えにも拡張される。
【0169】
重鎖中の位置についての等価なKabat配列番号付けは、以下のとおりである:
セリン(S):7、17、21、62、70、82b、112、113、115、120、127、128、130、134、156、163、168、180、182、195、196、197、215、232
トレオニン(T):57、68、116、133、167、200、205、
グリシン(G):8、9、10、15、16、26、65、96、97、99、135、136、164、169、183、199、
アスパラギン酸(D):61、72、98、220、
アルギニン(R):58、66、86、
グルタミン(Q):3、13、105、203
アスパラギン(N):82a、216、
アラニン(A):84、114、165
リシン(K):43、64、117、129、213、218、222、
グルタミン酸(E):85。
【0170】
したがって、一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化10】


からなる群から選択される。
【0171】
一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化11】


からなる群から選択される。
【0172】
その他の適切な残基は、WO2006/034488及びWO2008/038024を含む文献に記載されている。したがって、一実施形態では、システインを、融合タンパク質重鎖中に、例えば:
A40をCで置き換えて、
L86をCで置き換えて、
A88をCで置き換えて、
S119をCで置き換えて、
S120をCで置き換えて、
A121をCで置き換えて、
S122をCで置き換えて、
A175をCで置き換えて、
V176をCで置き換えて、且つ/又は
S179をCで置き換えて
工学的に作製する。
【0173】
上記の番号付けは、図4に示す重鎖配列を参照するが、本明細書の開示は、その他の重鎖における対応するKabat位置にも拡張される。
【0174】
Kabat番号付けによる等価な位置は、次のとおりである:
A40をCで置き換え、
L82cをCで置き換え、
A84をCで置き換え、
S112をCで置き換え、
S113をCで置き換え、
A114をCで置き換え、
S115をCで置き換え、
A176をCで置き換え、
V177をCで置き換え、且つ/又は
S180をCで置き換える。
【0175】
したがって、一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化12】


からなる群から選択される。
【0176】
一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、
【化13】


からなる群から選択される。
【0177】
一実施形態では、システインを、融合タンパク質重鎖定常領域CH1中に、例えば:
T116をCで置き換えて、
S163をCで置き換えて、
S182をCで置き換えて、且つ/又は
N216をCで置き換えて
工学的に作製する。
【0178】
一実施形態では、システインを、融合タンパク質重鎖可変ドメイン、VH中に、例えば:
配列番号227のS82bをCで置き換えて
工学的に作製する。
【0179】
一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、S82b、T116、S163、S182及びN216からなる群から選択される。
【0180】
本明細書において上で特定された全ての残基はIgG1に由来するが、本明細書における開示は、抗体のその他のクラス及びアイソタイプからのその他の重鎖中の対応するKabat位置にも拡張される。
【0181】
したがって、一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして
【化14】


の位置からなる群から選択される。
【0182】
一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして
【化15】


の位置からなる群から選択される。
【0183】
一実施形態では、抗体融合タンパク質重鎖は、工学的に作製されたシステインを含み、前記工学的に作製されたシステインの位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして82b、116、163、182及び216の位置からなる群から選択される。
【0184】
一実施形態では、本発明の組換え融合タンパク質は、重鎖中の163位及び/又は182位にて工学的に作製されたシステインを通じてPEG化される。
【0185】
一実施形態では、融合タンパク質は、PEG分子が付着されているか又はPEG分子を付着できる遊離システインを含む。一実施形態では、融合タンパク質又はその一部は:
【化16】


から選択される1又は複数の配列を含む。
【0186】
一実施形態では、遊離システインを含み、以下:
【化17】


の1又は複数から選択される配列を場合によって含むシステインが工学的に作製された融合タンパク質を提供する。
【0187】
一実施形態では、配列:
【化18】


を含む軽鎖が提供される。
【0188】
凡例
下線 表面露出側鎖
二重下線 システインに置き換えるのに適切な残基
太字 コンジュゲーション用に特に実際的に対象となる領域(CDR及び外側/フレキシブルループから離れている)
斜体 実際上あり得ない対象の領域(CDR残基に近いか又はその中)
淡い影付き 埋め込まれている/露出されていない領域
濃い影付き 「凝集傾向」を有するCH1残基。
【0189】
一実施形態では、配列:
【化19】


を含む重鎖が提供される。
【0190】
一実施形態では、PEGポリマーを、CDRから適切に離れ、肘領域に近い/隣接しているがその中にはコードされていない下部軽鎖可変ドメイン、例えばVL1及び/又はVL2中の位置、例えばSer12、Ser14、Gln79又はGlu81にコンジュゲートして、物体の結合がどのような様式でも少なくならず又は有害に影響されないようにする。これらの軽鎖残基の番号付けは、Kabat番号付けを用いて同じである。
【0191】
一実施形態では、PEGポリマーを、CDRから適切に離れ、肘領域に近い/隣接しているがその中にはコードされていない下部重鎖可変ドメイン、例えばVH1及び/又はVH2中の位置、例えばGln13(Kabat番号付けによりGln13)又はGlu89(Kabat番号付けによりGlu85)にコンジュゲートして、物体の結合がどのような様式でも少なくならず又は有害に影響されないようにする。
【0192】
一実施形態では、重鎖は、配列番号225及び/又は227に示す配列を含む。
【0193】
一実施形態では、軽鎖は、配列番号228及び/又は44に示す配列を含む。
【0194】
本明細書における全ての実施形態は、物体とのPEGポリマーのコンジュゲーションが、本開示の融合タンパク質の結合/親和性を少なくせず又はそれに有害に影響しないようなものである。
【0195】
適切なポリマーは、ポリ(エチレングリコール)又は特にメトキシポリ(エチレングリコール)若しくはその誘導体、特に約15000Daから約40000Daまでの範囲の分子量を有するもののようなポリアルキレンポリマーを含む。その他の適切なポリマー、例えばデンプン、複合グリコフォーム、例えばN−GlucNac及びその他のもの、例えば調査されたポリマーは、アミノ酸に基づくもの、例えばポリ−GGGGS、ポリグルタミン酸及びポリアスパラギン酸(Schlapschyら、2007;Jultaniら、1997;Zuninoら、1982);炭水化物に基づくもの、例えば酸化デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、デンプン及びポリシアル酸(Fagnaniら、1990;Baudysら、1998;Gregoriadisら、2000);並びに完全合成ポリマー、例えばポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリオキシエチル化グリセロール、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリレート、蝶ネクタイ型デンドリマー及びPEG(Kanedaら、2004;Calicetiら、1999;Soucekら、2002)を含む。
【0196】
ポリマーのサイズは、所望により変動してよいが、全般的に、500Daから80000Daまで、例えば5000から50000Daまで、例えば20000から40000Daまでの平均分子量の範囲内である。ポリマーサイズは、特に、生成物の意図する使用、例えば腫瘍のようなあるいくつかの組織に局在化する能力又は循環半減期を拡張する能力に基づいて選択してよい(概説について、Chapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、54、531〜545を参照されたい)。よって、例えば、生成物が循環を離れて組織に侵入することを意図する場合、例えば腫瘍の治療において用いるために、小さい分子量のポリマー、例えば5000Da付近の分子量を有するものを用いることが有利であり得る。生成物が循環中に残ることを意図する用途について、より高い分子量のポリマー、例えば20000Daから40000Daまでの範囲の分子量を有するものを用いることが有利であり得る。
【0197】
PEG分子は、抗体断片中にある任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離のアミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を通じて付着してよい。このようなアミノ酸は、抗体断片中に自然に存在するか、又は組換えDNA法を用いて断片中に工学的に作製してよい(例えばUS5,219,996;US5,667,425;WO98/25971を参照されたい)。一例では、本発明の抗体分子は、改変が、その重鎖のC末端の端への、エフェクター分子の付着を可能にする1又は複数のアミノ酸の付加である、改変Fab断片である。適切には、追加のアミノ酸は、1又は複数のシステイン残基を含有する改変ヒンジ領域を形成し、これに対してエフェクター分子が付着できる。2以上のPEG分子を付着させるために、複数の部位を用いることができる。
【0198】
一実施形態では、Fab又はFab’は、1つ又は2つのPEG分子でPEG化されている。
【0199】
一実施形態では、PEG分子は、軽鎖中のシステイン171と連結されており、例えば本明細書に参照により組み込まれているWO2008/038024を参照されたい。
【0200】
1つにおいて、Fab又はFab’は、溶媒露出又は表面露出システインを通じてPEG化されている。
【0201】
適切には、PEG分子は、融合タンパク質中の少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を通じて共有的に連結されている。融合タンパク質に付着している各ポリマー分子は、タンパク質中にあるシステイン残基の硫黄原子に共有的に連結され得る。共有結合は、一般的に、ジスルフィド結合、又は特に硫黄−炭素結合である。付着点としてチオール基を用いる場合、適切に活性化されたPEG分子、例えばマレイミドのようなチオール選択的誘導体及びシステイン誘導体を用い得る。活性化されたPEG分子は、上記のようなポリマー−融合タンパク質含有分子の調製において出発物質として用いてよい。活性化されたPEG分子は、α−ハロカルボン酸若しくはエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドのようなチオール反応性基を含有する任意のポリマーであってよい。このような出発物質は、商業的に得ることができる(例えばNektar、USA;Nippon Oils and Fats(NOF)、Japan;Dr Reddy、UK;JenKem、China;Pan Asia Bio、China;SunBio、South Korea;Biovectra、USAから)か、又は商業的に入手可能な出発物質から従来の化学的手順を用いて調製できる。具体的なPEG分子は、20Kメトキシ−PEG−アミン及び20Kメトキシ−PEG−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えばNippon Oils and Fats(NOF)、Japan;Dr Reddy、UK;JenKem、China;Pan Asia Bio、China;SunBio、South Korea;Rapp Polymere、Germanyから)を含む。
【0202】
PEG分子のようなエフェクター分子は、融合タンパク質に、アルデヒド糖を通じて、又はより一般的には抗体断片中にある任意の利用可能なアミノ酸側鎖若しくは末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離のアミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を通じることを含むいくつかの異なる方法により付着できる。エフェクター分子の付着の部位は、ランダム又は部位特異的のいずれでもあり得る。
【0203】
ランダム付着は、リシンのようなアミノ酸を通じて頻繁に達成され、このことにより、PEG分子のようなエフェクター分子が、リシンの位置に依存して抗体断片全体を通していくつかの部位で付着されることになる。このことはいくつかの場合において成功しているが、付着されるPEG分子のようなエフェクター分子の厳密な場所及び数は制御できず、このことは、例えば付着されるものが少なすぎるならば活性の喪失及び/又は例えばそれらが抗原結合部位に干渉するならば親和性の喪失(Chapman 2002 Advanced Drug Delivery Reviews、54、531〜545)を導き得る。結果として、PEG分子のようなエフェクター分子の制御された部位特異的付着が、通常、選択される方法である。
【0204】
PEG分子のようなエフェクター分子の部位特異的付着は、システイン残基への付着により最も一般的に達成される。なぜなら、このような残基は、抗体断片中で比較的非凡であるからである。抗体ヒンジは、部位特異的付着のために好ましい領域である。なぜなら、これらは、システイン残基を含有し、抗原結合に関与しやすい融合タンパク質の他の領域から離れているからである。適切なヒンジは、断片中に自然に存在するか、又は組換えDNA技術を用いて創出できるかのいずれかである(例えばUS5,677,425;WO98/25971;Leongら、2001 Cytokine、16、106〜119;Chapmanら、1999 Nature Biotechnology、17、780〜783を参照されたい)。代わりに又はさらに、部位特異的システインを抗体断片中に工学的に作製して、例えばエフェクター分子付着のための表面曝露システイン(単数又は複数)を創出してもよい(US5,219,996)。
【0205】
一実施形態では、本発明による融合タンパク質は、ヒンジを、ヒンジにほぼ対応する長さの、CLとVL2スペーサとの間のリンカーとして含む。
【0206】
自然の及び工学的に作製されたシステインをPEG分子のようなエフェクター分子の部位特異的付着のために用いる技術は、記載されている(WO2005003169、WO2005003170及びWO2005003171を参照されたい)。これらの断片の全てにおいて、重鎖定常領域と軽鎖定常領域(CH1とCL)との間の自然の鎖間ジスルフィド結合は、鎖間システインがエフェクター分子の付着の部位として用いられているからか、又は鎖間システインが、エフェクター分子がこれらのシステインに付着することを回避するために別のアミノ酸に置き換えられているからかのいずれかにより、存在しない。これらの断片は、エフェクター分子の付着の部位として用いるための工学的に作製されたシステインも含み得る。一例では、これらの工学的に作製されたシステインは、抗体断片出発物質の重鎖定常領域と軽鎖定常領域との間のジスルフィド連結を形成する工学的に作製されたシステインの対である。上記のジスルフィド結合は、しかし、エフェクター分子がこれらのシステインに一旦付着すると、喪失される。
【0207】
一実施形態では、抗体断片の重鎖及び軽鎖が天然鎖間ジスルフィド結合でない工学的に作製された鎖間ジスルフィド結合により連結された融合タンパク質PEG分子コンジュゲートが提供される。この工学的に作製された鎖間ジスルフィド結合は、強い還元剤を用いる場合であっても、エフェクター分子の付着中は保持される。軽鎖:重鎖界面では、システインの対がうまく工学的に作製されて、還元剤及びエフェクター分子がほぼ近づくことができないように十分に埋め込まれたジスルフィド結合が導入される部位も提供される。「埋め込まれたジスルフィド」の例は、WO2007010231に示される。
【0208】
これらの断片の具体的な利点は、工学的に作製された鎖間システイン間のジスルフィド結合が、エフェクター分子の付着中にインタクトのままであることにある。
【0209】
よって、本発明による一実施形態では、1又は複数のエフェクター分子が付着した融合タンパク質であって、重鎖(CH1)及び軽鎖(CL)定常領域間の自然の鎖間ジスルフィド結合が存在せず、重鎖(CH1)及び軽鎖(CL)定常領域が、一方が軽鎖(CL)定常領域中で他方が重鎖定常(CH1)領域中の工学的に作製されたシステインの対の間の鎖間ジスルフィド結合により連結されていることを特徴とする融合タンパク質が提供される。
【0210】
一実施形態では、PEGは、表面露出システインにコンジュゲートされる。
【0211】
用語「自然の鎖間ジスルフィド結合」は、本明細書で用いる場合、自然に存在する生殖系列抗体遺伝子においてコードされる重鎖及び軽鎖定常領域中のシステイン間に存在する鎖間ジスルフィド結合のことをいう。特に、自然の鎖間システインは、自然に存在する抗体中で互いにジスルフィド連結されている軽鎖の定常領域(CL)中のシステインと重鎖の第1定常領域(CH1)中のシステインである。このようなシステインの例は、Kabatら、1987、免疫学的対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、US Department of Health and Human Services、NIH、USAにより定義されるように、ヒトIgG1の軽鎖の214位及び重鎖の233位、ヒトIgM、IgE、IgG2、IgG3、IgG4の重鎖の127位、並びにヒトIgD及びIgA2Bの重鎖の128位で典型的に見出すことができる。これらのシステインの厳密な位置は、欠失、挿入及び/又は置換のような任意の改変が抗体断片に対して作製されているならば、自然に存在する抗体のものから変動し得ることが認識される。
【0212】
よって、1又は複数の実施形態では、自然の鎖間ジスルフィド結合は、存在しない。自然の鎖間ジスルフィド結合は、存在しないことがある。なぜなら、1又は複数のエフェクター分子がそれに付着されるからである。
【0213】
別の実施形態では、自然の鎖間ジスルフィド結合は、本発明の抗体断片中に存在しない。なぜなら、鎖間システインは、セリンのような別のアミノ酸で置き換えられているからである。
【0214】
本発明の抗体断片では、重鎖及び軽鎖定常領域は、軽鎖及び/又は重鎖中の工学的に作製されたシステイン間の鎖間ジスルフィド結合により連結される。
【0215】
本発明の融合タンパク質は、高い結合親和性、特にピコモル濃度を適切に有する。親和性は、BIAcoreを含む当該技術において既知の任意の適切な方法を用いて測定できる。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約100pM又はそれより良い結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、約50pM又はそれより良い結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、約40pM又はそれより良い結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、約30pM又はそれより良い結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、完全にヒト又はヒト化されており、約100pM又はそれより良い結合親和性を有する。
【0216】
所望により、本発明の融合タンパク質は、1又は複数のさらなるエフェクター分子(単数又は複数)にコンジュゲートされてよい。エフェクター分子が、単一のエフェクター分子、又は本発明の抗体に付着できる単一部分を形成するように連結された2以上のそのような分子を含んでよいことが認識される。エフェクター分子に連結された抗体断片を得ることが所望される場合、これは、抗体断片がエフェクター分子に直接若しくはカップリング剤を介して連結される、標準的な化学的又は組換えDNA手順により調製できる。このようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートするための技術は、当該技術において公知である(Hellstromら、制御された薬物送達(Controlled Drug Delivery)、第2版、Robinsonら編、1987、623〜53頁;Thorpeら、1982、Immunol.Rev.、62:119〜58及びDubowchikら、1999、Pharmacology and Therapeutics、83、67〜123を参照されたい)。具体的な化学的手順は、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03031581に記載されるものを含む。代わりに、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、結合は、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載されるような組換えDNA手順を用いて達成してよい。
【0217】
用語エフェクター分子は、本明細書で用いる場合、例えば、抗悪性腫瘍薬剤、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば酵素、他の抗体若しくは抗体断片、合成の若しくは自然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びそれらの断片、放射性核種、特に放射性ヨウ素、放射性同位体、キレートされた金属、ナノ粒子並びにNMR若しくはESR分光法により検出できる単数又は複数の蛍光化合物のようなレポーター基を含む。
【0218】
エフェクター分子の例は、細胞毒又は細胞にとって不利益な(例えば死滅させる)任意の薬剤を含む細胞傷害性薬剤を含んでよい。例は、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンギスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン並びにそれらの類似体及び同族体を含む。
【0219】
エフェクター分子は、それらに限定されないが、代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC並びにシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリチアマイシン又はデュオカルマイシン)、並びに有糸分裂阻害薬剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)を含む。
【0220】
その他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188のようなキレート化された放射性核種;又はそれらに限定されないがアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンのような薬物を含み得る。
【0221】
その他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド及び酵素を含む、対象の酵素は、それらに限定されないが、タンパク質分解酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼを含む。対象のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドは、それらに限定されないが、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素若しくはジフテリア毒素のような毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子若しくは組織プラスミノゲンアクチベータのようなタンパク質、血栓性薬剤若しくは抗血管新生薬剤、例えばアンジオスタチン若しくはエンドスタチン、又はリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)若しくはその他の成長因子及び免疫グロブリンのような生物学的応答調節剤を含む。
【0222】
その他のエフェクター分子は、例えば診断において有用な検出可能物質を含んでよい。検出可能物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射活性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影法で用いるため)及び非放射活性常磁性金属イオンを含む。診断薬として用いるために抗体にコンジュゲートできる金属イオンについて、全般的に、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリントランスフェラーゼを含み、適切な補欠分子族は、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み、適切な蛍光物質は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリスリンを含み、適切な発光物質は、ルミノールを含み、適切な生物発光物質は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み、適切な放射活性核種は、125I、131I、111In及び99Tcを含む。
【0223】
別の例では、エフェクター分子は、抗体のin vivoでの半減期を増加し、且つ/又は抗体の免疫原性を低減し、且つ/又は免疫系までの上皮性関門を横切る抗体の送達を増進させることができる。このタイプの適切なエフェクター分子の例は、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合性タンパク質又はWO05/117984に記載されるもののようなアルブミン結合性化合物を含む。
【0224】
エフェクター分子がポリマーである場合、これは、全般的に、合成の又は自然に存在するポリマー、例えば場合によって置換されてよい直鎖状若しくは分岐鎖状のポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー、或いは分岐鎖状若しくは非分岐鎖状の多糖、例えばホモ又はヘテロ多糖であってよい。
【0225】
上記の合成ポリマー上に存在し得る具体的な場合によって存在する置換基は、1又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基を含む。
【0226】
合成ポリマーの具体例は、場合によって置換されてよい直鎖状若しくは分岐鎖状のポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はそれらの誘導体、特にメトキシポリ(エチレングリコール)のような場合によって置換されてよいポリ(エチレングリコール)又はそれらの誘導体を含む。
【0227】
具体的な自然に存在するポリマーは、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はそれらの誘導体を含む。
【0228】
「誘導体」は、本明細書で用いる場合、反応性誘導体、例えばマレイミドのようなチオール選択的反応性基などを含むことを意図する。反応性基は、直接、又はリンカーセグメントを通じてポリマーと連結してよい。このような基の残基が、融合タンパク質とポリマーとの間の連結基として生成物の一部分を形成するいくつかの場合があることが認識される。
【0229】
本発明は、本明細書で記載する抗体、又はそれらの重鎖若しくは軽鎖のそれらの断片をコードする単離DNAも提供する。
【0230】
さらなる態様では、前記DNAを含むベクターが提供される。
【0231】
ベクターを構築し得る全般的な方法、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者に公知である。この点に関して、「分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(編)、Wiley Interscience、New York及びCold Spring Harbor Publishingにより出版されるManiatisマニュアル(Maniatis Manual)が参照される。
【0232】
さらなる態様では、上記のベクター及び/又はDNAを含む宿主細胞が提供される。
【0233】
任意の適切な宿主細胞/ベクター系を、本発明の融合タンパク質分子をコードするDNA配列の発現のために用いてよい。細菌、例えば大腸菌(E.coli)及びその他の微生物の系を用いてよいか、又は真核、例えば哺乳類の宿主細胞発現系も用いてよい。適切な哺乳類宿主細胞は、CHO、ミエローマ又はハイブリドーマ細胞を含む。
【0234】
本発明は、本発明による融合タンパク質分子を生成するためのプロセスであって、本発明のベクター(及び/又はDNA)を含有する宿主細胞を、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現を導くために適切な条件下で培養するステップと、抗体分子を単離するステップとを含む方法も提供する。
【0235】
重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物の生成のために、細胞系に、2つのベクター、すなわち軽鎖ポリペプチドをコードする第1ベクターと、重鎖ポリペプチドをコードする第2ベクターとを用いてトランスフェクトしてよい。代わりに、軽鎖及び重鎖のポリペプチドをコードする配列を含む単一のベクターを用いてよい。
【0236】
本開示による融合タンパク質分子は、宿主細胞から良好なレベルで発現される。よって、融合タンパク質分子の特性は最適化され、商業的に処理することができる。
【0237】
本発明の融合タンパク質分子は、病的状態の治療及び/又は予防において有用である。
【0238】
よって、その治療有効量を投与することによる、治療で使用するための融合タンパク質分子が提供される。一実施形態では、融合タンパク質分子は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤として投与される。
【0239】
よって、本発明は、本発明の融合タンパク質分子を、1若しくは複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物或いは診断用組成物も提供する。したがって、医薬品の製造のための本発明の融合タンパク質分子の使用が提供される。組成物は、薬学的に許容される担体を通常含む滅菌医薬組成物の一部として通常供給される。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバントを追加で含み得る。
【0240】
本発明は、本発明の融合タンパク質分子を、1若しくは複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に加えて混合することを含む、医薬組成物又は診断用組成物を調製するプロセスも提供する。
【0241】
融合タンパク質分子は、医薬組成物若しくは診断用組成物における単独の活性成分であってよいか、或いはその他の抗体成分、例えば抗TNF、抗IL−1β、抗T細胞、抗IFNγ若しくは抗LPS抗体又はキサンチンのような非抗体成分を含むその他の活性成分を伴ってよい。その他の適切な活性成分は、寛容を誘導できる抗体、例えば抗CD3又は抗CD4抗体を含む。
【0242】
さらなる実施形態では、本開示による融合タンパク質分子又は組成物は、さらなる薬学的に活性な薬剤、例えばコルチコステロイド(例えばフルチカゾンプロピオン酸エステル)及び/或いはベータ−2−アゴニスト(例えばサルブタモール、サルメテロール若しくはホルモテロール)又は細胞成長及び増殖の阻害剤(例えばラパマイシン、シクロホスファミド、メトトレキセート)又は代わりにCD28及び/若しくはCD40阻害剤と組み合わせて採用される。一実施形態では、阻害剤は、小分子である。別の実施形態では、阻害剤は、標的に特異的な抗体である。
【0243】
医薬組成物は、治療有効量の本発明の抗体を適切に含む。用語「治療有効量」は、本明細書で用いる場合、標的の疾患若しくは状態を治療、緩和又は予防するため、或いは検出可能な治療又は予防的効果を示すために必要な治療薬剤の量のことをいう。任意の抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ若しくは霊長類における動物モデルのいずれかにおいて初期に見積もることができる。動物モデルは、適当な投与濃度範囲及び投与経路を決定するために用いることもできる。このような情報は、次いで、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定するために用いることができる。
【0244】
ヒト対象についての精密な治療有効量は、疾患の状態の重症度、対象の全身健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食餌、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ(単数又は複数)、反応感受性並びに治療に対する耐性/応答に依存する。この量は、日常的な実験により決定でき、臨床医の判断の範囲内である。全般的に、治療有効量は、0.01mg/kgから50mg/kgまで、例えば0.1mg/kg〜20mg/kgである。医薬組成物は、用量あたりの予め決定された量の本発明の活性薬剤を含有する単位剤形で簡便にもたらすことができる。
【0245】
組成物は、患者に個別に投与してよいか、又はその他の薬剤、薬物若しくはホルモンと組み合わせて(例えば同時、逐次的又は別々に)投与してよい。
【0246】
本発明の融合タンパク質分子を投与する用量は、治療される状態の性質、存在する炎症の程度及び抗体分子が予防的に又は現存する状態を治療するためのいずれに用いられるかに依存する。
【0247】
投与の頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続期間に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば2〜10時間)を有するならば、1日あたり1又は複数の用量を与えることが必要なことがある。代わりに、抗体分子が長い半減期(例えば2〜15日)を有するならば、1日あたり1回、1週間あたり1回又は1若しくは2カ月毎に1回さえの投与量を与えることだけが必要なことがある。
【0248】
薬学的に許容される担体は、それ自体が、組成物を受容する個体にとって有害な抗体の生成を誘導しないものであるべきであり、且つ毒性でないべきである。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子のような大きく緩慢に代謝される巨大分子であってよい。
【0249】
薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩のような鉱酸塩又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩のような有機酸の塩を用いることができる。
【0250】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセロール及びエタノールのような液体を追加で含有してよい。さらに、湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝物質のような補助物質が、このような組成物に存在してよい。このような担体により、医薬組成物が、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー及び懸濁剤に処方されることが可能になる。
【0251】
投与のための適切な形は、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために適切な形を含む。生成物が注射又は注入用である場合、これは、油性若しくは水性媒体中の懸濁物、溶液又はエマルジョンの形をとることができ、懸濁剤、防腐剤、安定化剤及び/又は分散剤のような処方用剤を含有できる。代わりに、抗体分子は、適当な滅菌液体での使用前の再構成のための乾燥形であってよい。
【0252】
一旦処方されると、本発明の組成物は、対象に直接投与できる。治療される対照は、動物であり得る。しかし、1又は複数の実施形態では、組成物は、ヒト対象への投与のために適合される。
【0253】
適切には、本開示による製剤において、最終製剤のpHは、抗体又は断片の等電点の値に類似せず、例えば製剤のpHが7であるならば、8〜9又はそれより高いpIが適当であり得る。理論に拘束されることを望まないが、このことが、安定性が改善された最終製剤を最終的に提供し得る、例えば抗体又は断片が溶解されたままになると考えられる。
【0254】
本発明の医薬組成物は、それらに限定されないが、経口、静脈内、筋内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経真皮、経皮(例えばWO98/20734を参照されたい)、皮下、腹腔内、鼻内、経腸、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む任意の数の経路により投与してよい。ハイポスプレーを用いて、本発明の医薬組成物を投与してもよい。典型的に、治療用組成物は、液体の溶液又は懸濁物のいずれかとして注射剤として調製してよい。注射前に液体媒体に溶解又は懸濁するために適切な固体の形も調製してよい。
【0255】
組成物の直接送達は、全般的に、注射により、皮下、腹腔内、静脈内若しくは筋内で達成されるか、又は組織の間質空間内に送達される。組成物は、病変に投与することもできる。投与量処理は、単回用量計画又は複数回用量計画であってよい。
【0256】
組成物中の活性成分は、融合タンパク質分子であることが認識される。それ自体で、これは、消化管内の分解に対して感受性である。よって、消化管を用いる経路により組成物を投与するならば、組成物は、抗体を分解から保護するが、抗体が消化管から一旦吸収されると抗体を放出する因子を含有する必要がある。
【0257】
薬学的に許容される担体についての詳細な議論は、Remingtonの製薬科学(Pharmaceutical Sciences)(Mack Publishing Company、N.J.1991)において入手可能である。
【0258】
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。
【0259】
適切な吸入用調製物は、吸入用粉剤、噴射用ガス又は噴射用ガスを含まない吸入用溶液を含有する定量エアロソルを含む。活性物質を含有する本開示による吸入用粉剤は、上記の活性物質のみからなるか、又は上記の活性物質と生理的に許容される賦形剤との混合物からなることができる。
【0260】
これらの吸入用粉剤は、単糖(例えばグルコース又はアラビノース)、二糖(例えばラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えばデキストラン)、ポリアルコール(例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)又はこれらの互いの混合物を含み得る。単糖及び二糖が適切に用いられ、それのみではないが特にそれらの水和物の形のラクトース又はグルコースの使用。
【0261】
肺における沈着のための粒子には、10ミクロン未満、例えば1〜9ミクロン、例えば0.1から5μmまで、特に1から5μmまでの粒子サイズが要求される。活性成分(例えば抗体又は断片)の粒子サイズは、第一に重要である。
【0262】
吸入用エアロソルを調製するために用いることができる噴射用ガスは、当該技術において知られている。適切な噴射用ガスは、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタンのような炭化水素、並びにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン若しくはシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体のようなハロ炭化水素から選択される。上記の噴射用ガスは、そのまま又はそれらの混合物として用いてよい。
【0263】
特に適切な噴射用ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)並びにそれらの混合物が特に適切である。
【0264】
噴射用ガス含有吸入用エアロソルは、共溶媒、安定化剤、表面活性剤(界面活性剤)、抗酸化剤、滑沢剤及びpHを調製するための手段のようなその他の成分も含有してよい。これらの全ての成分は、当該技術において知られている。
【0265】
本発明による噴射用ガス含有吸入用エアロソルは、5重量%までの活性物質を含有してよい。本発明によるエアロソルは、例えば、0.002〜5重量%、0.01〜3重量%、0.015〜2重量%、0.1〜2重量%、0.5〜2重量%又は0.5〜1重量%の活性成分を含有する。
【0266】
代わりに、肺への局所投与も、例えばネブライザー、例えば圧縮機に接続されたネブライザー(例えばPari Respiratory Equipment,Inc.、Richmond、Va.により製造されるPari Master(登録商標)圧縮機に接続されたPari LC−Jet Plus(登録商標)ネブライザー)のようなデバイスを採用する液体の溶液又は懸濁物製剤の投与によることができる。
【0267】
本発明の融合タンパク質分子は、溶剤に分散して、例えば溶液又は懸濁物の形で送達できる。これは、適当な生理的溶液、例えば食塩水又はその他の薬理学的に許容される溶剤又は緩衝溶液に懸濁できる。当該技術において既知の緩衝溶液は、0.05mgから0.15mgのエデト酸二ナトリウム、8.0mgから9.0mgのNaCl、0.15mgから0.25mgのポリソルベート、0.25mgから0.30mgの無水クエン酸塩、及び0.45mgから0.55mgのクエン酸ナトリウムを水1mlあたりに含有して、約4.0から5.0のpHを達成することができる。懸濁物は、例えば凍結乾燥抗体を採用できる。
【0268】
治療用の懸濁物又は溶液の製剤は、1又は複数の賦形剤も含有できる。賦形剤は、当該技術において公知であり、緩衝液(例えばクエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液及び重炭酸塩緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールを含む。溶液又は懸濁物は、リポソーム又は生分解性ミクロスフェアにカプセル化できる。製剤は、全般的に、滅菌製造プロセスを採用する実質的な滅菌形で提供される。
【0269】
これは、製剤に用いるための緩衝された溶剤/溶液のろ過、滅菌緩衝溶剤溶液中への抗体の無菌懸濁、及び当業者が熟知している方法による滅菌貯蔵容器への製剤の分配による製造及び滅菌処理を含み得る。
【0270】
本開示による噴霧化用製剤は、例えばホイルエンベロープに包装された単回用量単位(例えば密閉プラスチック容器又はバイアル)として提供してよい。各バイアルは、例えば2mlの容量の溶剤/溶液の緩衝液中に単位用量を含有する。
【0271】
本開示の融合タンパク質分子は、噴霧化による送達のために適切であると考えられる。
【0272】
本明細書の文脈における含む(Comprising)は、含む(including)を意味することを意図する。
【0273】
技術的に適当である場合、本発明の実施形態は組み合わせることができる。
【0274】
実施形態は、あるいくつかの特徴/要素を含むと本明細書において記載される。本開示は、前記特徴/要素からなる又は実質的にそれらからなる別々の実施形態にも拡張される。
【0275】
本発明は、以下の実施例により例示によってのみさらに記載され、これらは、添付の図面に言及する。添付の図面において、以下のとおりである。
図1は、本開示による様々な融合タンパク質フォーマットを示す。
図2Aは、様々な既知の抗体断片フォーマットを示す。
図2Bは、本願で請求する発明による二量体フォーマットについてのある可能性のある配置を示す。
図3は、抗体4D5についての軽鎖アミノ酸配列を示す。
図4は、抗体4D5についての重鎖アミノ酸配列を示す。
図5は、太字で示す表面Cys変異の位置とともにA26Fab−(3xG4S)−dsFv645を示す。
図6は、A26Fab−(3xG4S)−dsFv645、S182及びS163のPEG化変異体の非還元ゲルを示す。
【実施例】
【0276】
Fab−dsFv
Fab−dsFvフォーマットでの抗体融合体を、WO2010/035012に記載されるようにして作製した。Fab−dsFvは、WO2010/096418に記載され、図5に示すA26として知られるOX−40抗体からの可変領域(配列番号225及び228)と、WO2010/035012及び図5に記載される645として知られる抗ヒト血清アルブミン抗体の可変領域配列、配列番号227及び44とを含んだ。フォーマットは、A26Fab−ds645Fvであった。
【0277】
Fab−dsFv A26−645中の特定の残基は、システイン残基の導入のためにPEG化のための点として選択した。選択された変異は、重鎖及び軽鎖の両方の中であり、Fab及びFvの両方の中であった。効果をタンパク質生成、折り畳み、親和性及び安定性の対するものに限定するために、CDR及びいずれのその他の構造的に重要なモチーフから離れた残基を選択するように注意した。
【0278】
選択した残基を、図5及び表4に示す。特定の残基に番号をつけ、図5において太字で強調する。
【表4】

【0279】
変異5及び13は、鎖間ジスルフィド結合に寄与する2つのシステイン残基のうち1つがセリンに変異され、他方がPEG化部位のために残されている対照として作製した。
【0280】
Fab−dsFvの突然変異誘発
Kabat番号付けシステムに従って番号付けした表4における各位置でのFab−dsFv A26−645の部位特異的突然変異誘発は、以下のようにして行った。Fab−dsFv A26−645をコードするベクターを、標準的な「オーバーラップPCR法」を用いる部位特異的突然変異誘発に供した。簡単に述べると、2つの変異原性オリゴヌクレオチドを、2つのフランキングオリゴヌクレオチドとともに用いて、2回の別々のPCR反応において2つの変異PCR生成物を作製した。各反応からの小容量(典型的に約1ul)のオーバーラップPCR粗生成物を、同じ2つのフランキングオリゴヌクレオチドを用いる3回目のアセンブリPCRにおいて鋳型として用いた。このことにより、全長変異DNA配列が作製され、これを発現プラスミドに制限/ライゲーションによりクローニングした後に、DNA配列決定により確認した。
【0281】
哺乳類細胞における発現のためのFab−dsFv融合プラスミドの構築
各Fab−dsFv重鎖変異体を、哺乳類発現ベクターに、HCMV−MIEプロモーター及びSV40EポリA配列の制御下でクローニングした。これらを、哺乳類細胞における発現のために(以下を参照されたい)、対応するFab−dsFv軽鎖を含有する類似のベクターと対形成させた。
【0282】
Fab−dsFvの哺乳類発現
HEK293細胞に、重鎖及び軽鎖のプラスミドを、Invitrogenの293fectinトランスフェクション試薬を製造者の使用説明に従って用いてトランスフェクトした。簡単に述べると、2μgの重鎖プラスミド+2μgの軽鎖プラスミドを、10μlの293fectin+340μlのOptimem培地とRTにて20分間インキュベートした。混合物を、次いで、懸濁された5×10のHEK293細胞に加え、37℃にて振とうしながら4日間インキュベートした。
【0283】
プロテインG精製
哺乳類発現懸濁物を遠心分離により清澄化し、上清を2mLまで、10kDa分子量カットオフ遠心分離濃縮器を用いて濃縮した。濃縮された上清を、16000×gにて10分間遠心分離して、いずれの沈殿物も除去し、次いで1.8mLを、1mlのHiTrapプロテインGカラム(GE Healthcare)に1ml/分にて装填した。カラムを20mMリン酸塩、40mM NaCl pH7.4で洗浄し、結合した物質を0.1Mグリシン/HCl pH2.7で溶出した。溶出ピーク(2.5mL)を回収し、pHを約pH7に、100μLの2M Tris/HCl pH8.5を用いて調整した。pHを調整した溶出物をPBS中に、10kDa分子量カットオフ遠心分離濃縮器を用いてダイアフィルトレーションし、約500μLに濃縮した。
【0284】
Thr109Cys及びAsn216Cys以外の全てのFab−dsFvは、適度に良好に発現された。これらの両方の発現が乏しい変異体のDNA配列を確認した。配列に問題はなかったが、これらはともに収率が非常に低く、軽鎖についてのThr109Cysも重鎖についてのAsn211Cysもさらに分析しなかった。
【0285】
Biacore
Fab−dsFv構築物の相互作用についての結合親和性及び動態パラメータを、CM5センサチップ及びHBS−EP(10mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v界面活性剤P20)実行緩衝液を用いるBiacore3000で行う表面プラズモン共鳴(SPR)により決定した。Fab−dsFv試料を、センサチップ表面に、ヒトF(ab’)特異的ヤギFab(Jackson ImmunoResearch、109−006−097)又は内部で作製した抗ヒトCH1モノクローナル抗体のいずれかを用いて捕捉した。捕捉抗体の共有的固定化を、標準的なアミンカップリング化学により達成した。
【0286】
各アッセイサイクルは、まず、1分間の注入を用いてFab−dsFvを捕捉した後の、抗原の3分間の注入からなる会合段階からなり、その後、解離を20分間監視した。各サイクルの後に、捕捉表面を、40mM HClを2×1分間、その後5mM NaOHを30秒間注入することにより再生した。用いた流速は、捕捉について10μl/分、会合及び解離段階について30μl/分並びに再生について10μl/分であった。
【0287】
動態アッセイのために、抗原の力価決定を行い、ブランクのフローセルを参照の減算のために用い、緩衝液ブランク注入を含めて、装置ノイズ及びドリフトを減算した。
【0288】
得られたセンサグラムを、標準的な1:1結合モデルにBiacore 3000評価ソフトウェアを用いて同時グローバルフィッティングすることにより、動態パラメータを決定した。
【表5】

【0289】
Fab−dsFv−Cysの還元及びPEG化
CH1上のS182C又はS163CにてシステインPEG化部位が導入された、0.1Mリン酸塩、2mM EDTA pH6中のプロテインGにより精製したFab−dsFvを、0.1Mリン酸塩、2mM EDTA pH6中の100mMβ−メルカプトエチルアミン(βMEA)を1mMの最終濃度まで加えることにより還元した。還元反応を周囲温度にて1時間インキュベートした後に、0.1Mリン酸塩、2mM EDTA pH6の定組成勾配中で運転するSephacryl−200 10/30カラム上でのSE−HPLCにより分画した。ほとんどの単量体Fab−dsFvを含有する500μlの画分を同定して2つに分けた。一方の半分には、0.1Mリン酸塩、2mM EDTA pH6中の5μlの150mg/ml SUNBRIGHT ME−200MA PEG(NOF)を加えたが、これは、20kDaマレイミド活性PEGである。他方の半分には、0.1Mリン酸塩、2mM EDTA pH6中の5μlの100mM N−エチルマレイミド(NEM)を加えた。全ての試料を、周囲温度にて1晩インキュベートした。試料を、非還元4〜20%アクリルアミドTris/グリシンゲルで分析した。ゲルを、Owl銀染色キットを製造者の使用説明に従って用いて銀染色した。図6を参照されたい。
【0290】
図6
A=S182C CH1+PEG
B=S163C CH1+PEG
C=S182C CH1+NEM
【0291】
図6のレーンCは、還元が、Fab−dsFv内の内部及び間のジスルフィド結合を破壊しないことを証明する。存在する唯一のバンドは、還元及びNEMキャッピングを受けていない標準物質と比較した場合に、正しくジスルフィド結合されたFab−dsFvと同じ位置で移動する(データは示さず)。レーンA及びBでは、2つのバンドがあり、より低いものは、正しくジスルフィド結合されたFab−dsFvに相当し、より高いものは、PEG化された正しくジスルフィド結合されたFab−dsFvである。ゲル上でのシフトは、1つの20k PEGの付加を示す。用いたマレイミド化学により、このデータは、CH1上のS182C及びS163Cの導入されたシステインPEG部位でのFab−dsFvの部位特異的PEG化を証明する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端から順に、V1と呼称する可変ドメイン、C1領域、及びV2と呼称するさらなる可変ドメインを含む重鎖と、
N末端から順に、V1と呼称する可変ドメイン、CLドメイン、及びV2と呼称する可変ドメインを含む軽鎖と
を含む組換え融合タンパク質であって、
前記重鎖及び軽鎖が、V1及びV1の第1可変ドメイン対により形成される第1結合部位と、V2及びV2の第2可変ドメイン対により形成される第2結合部位とを提供するように整列され、
結合部位を形成する可変ドメイン対の間にジスルフィド結合が存在し、
前記融合タンパク質が、PEGポリマーにコンジュゲートされている、
上記組換え融合タンパク質。
【請求項2】
1及びV1の第1可変ドメイン対の間並びに/又はV2及びV2の第2可変ドメイン対の間にジスルフィド結合が存在する、請求項1に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項3】
2及びV2の第2可変ドメイン対の間にジスルフィド結合が存在する、請求項1又は請求項2に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項4】
2のアミノ酸が、C1のアミノ酸に、ペプチド結合により直接連結されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項5】
2が、C1に、リンカーにより間接的に連結されている、請求項1に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項6】
2が、CLのアミノ酸に、ペプチド結合により直接連結されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項7】
2が、CLに、リンカーにより間接的に連結されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項8】
リンカーが、配列番号226に示す配列を有する、請求項5又は請求項7に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項9】
溶媒露出システインを通じてPEG化されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項10】
CH1及び/又はCLの鎖間システインを通じてPEG化されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項11】
軽鎖中に工学的に作製されたシステインを通じてPEG化され、前記工学的に作製されたシステインの位置が、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして
【化1】


の位置からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項12】
軽鎖中に工学的に作製されたシステインを通じてPEG化され、前記工学的に作製されたシステインの位置が、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして、77位、107位、109位、143位、145位、149位及び210位からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項13】
重鎖中に工学的に作製されたシステインを通じてPEG化され、前記工学的に作製されたシステインの位置が、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして
【化2】


の位置からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項14】
重鎖中に工学的に作製されたシステインを通じてPEG化され、前記工学的に作製されたシステインの位置が、Kabat番号付けシステムに従って番号付けして、82b、116、163、182及び216の位置からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項15】
1つ又は2つのPEG分子によりPEG化されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項16】
PEG分子が、5000から80000Daの範囲にある、請求項15に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項17】
重鎖中のV1が、重鎖からの可変ドメイン又は軽鎖からの可変ドメインである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項18】
重鎖中のV2が、重鎖からの可変ドメイン又は軽鎖からの可変ドメインである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項19】
軽鎖中のV1が、軽鎖又は重鎖からの可変ドメインである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項20】
軽鎖中のV2が、軽鎖又は重鎖からの可変ドメインである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項21】
2が、重鎖からの可変ドメインであり、V2が、軽鎖からの可変ドメインである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項22】
一方がV2中で他方がV2中の2つのシステイン残基間のジスルフィド結合により、第2可変ドメイン対が連結され、2つのシステイン残基の位置が、VH37とVL95、VH44とVL100、VH44とVL105、VH45とVL87、VH100とVL50、VH100bとVL49、VH98とVL46、VH101とVL46、VH105とVL43及びVH106とVL57からなる群から選択される、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項23】
2のシステインが44位にあり、V2のシステインが100位にある、請求項21又は請求項23に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項24】
2つの可変ドメイン対が、それぞれ同族の対である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項25】
2つの可変ドメイン対が、それぞれ、協同して抗原と結合する相補的VH/VL対である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項26】
CH1及びCLドメインが、IgG1に由来する、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項27】
二量体形成している、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項28】
溶媒露出システインを介して二量体形成している、請求項27のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項29】
ジスルフィド結合を介して直接二量体形成している、請求項27又は28に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項30】
化学的リンカーを介して二量体形成している、請求項27に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項31】
PEGリンカーを介して二量体形成している、請求項30に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項32】
ペプチドリンカーを介して二量体形成している、請求項27に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項33】
二重特異性又は単一特異性である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510897(P2013−510897A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539406(P2012−539406)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002120
【国際公開番号】WO2011/061492
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】