説明

多光子活性のキノリン誘導体、その調製物及びそれらの使用

本発明は、以下の式(I)に対する応答性がある多光子活性の有機化合物に関する。本発明は、本発明の化合物を合成する方法と、少なくとも1つの本発明の化合物を含む水溶液と、それらの特異的使用とにも関する。本発明は、有機リガンドを遊離させる方法であって、本発明による化合物に照射する工程を伴う、有機リガンドを遊離させる方法にも関する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多光子活性の有機化合物と、これらの化合物を合成する方法と、少なくとも1つの本発明の化合物を含む水溶液と、それらの特異的使用とに関する。本発明は、有機リガンドを遊離させる方法であって、本発明の化合物に照射する工程を伴う、有機リガンドを遊離させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
新規の多光子活性のある有機物質の設計及び合成、並びに非線形フォトニクスにおけるそれらの適用の重要性は、多くの研究分野及び技術分野における中心的なパラダイムとして認識されている。基質は小さい有機発色団からデンドリマー、ポリマー及び金属含有化合物までとサイズが様々である。多光子励起プロセスの急速に拡大する分野は効率的な多光子励起を利用する様々な適用の大きな潜在性により主に促進されている。幾つかの例は、周波数アップコンバーションレーザー発振、光出力が制限される周波数アップコンバーションの画像化及び顕微鏡検査、光学微細加工、光学データの記憶及び処理、並びに多光子に関連した生物学的及び医学的な適用である。
【0003】
光活性のコンジュゲート(ケージド(caged)化合物)は、良好な時間分解能、空間時間制御を伴うナノスケール、すなわち数百ナノメートルでの物理的、化学的又は生化学的な事象を開始する際に柔軟性に富む(非特許文献1)。
【0004】
多光子相互作用の高い空間閉じ込めの特徴及び焦光レーザービームの透過能を、三次元(3D)微細構造を創出するのに、又は回折限界を超える(sub-diffraction limit)空間分解能を有するマイクロマシンを作製するのに効果的に利用することができる。3D微細加工の出現は多光子をベースとする適用技法の成果の一つである。この技法は本質的には多光子相互作用をベースとする3Dフォトリソグラフィである(非特許文献2、非特許文献3)。
【0005】
微細加工において、多光子誘起(multiphoton-initiated)化学を、マイクロチャネル、マイクロポンプ、カンチレバー、プラズモンデバイス、並びにマイクロ流体システム、生物医学システム、微小電気機械システム及びフォトニックシステムで用いられるフォトニック結晶を含む3D構造、より具体的には3D微細構造を規定するのに利用することができる。
【0006】
物質の化学特性及び物理化学特性の変更は、溶液中における、ゲルにおける及び単層における二光子プロセスにより達成することができ、染料装飾法等の適当な方法によりモニタリングすることができる(非特許文献4)。二光子脱保護を用いることによる十分に規定されたこのリソグラフィが、極度の空間分解能を有する近接場誘導性の構造化への足掛かりを与える。脱保護後の遊離官能基の存在により、物理吸着だけでなく、様々な反応種(例えば生体分子、機能性ポリマー及びナノ物体)の共有結合による更なる官能基化が見込まれる。このため特に近接場の局在性に関連する二光子誘導性の構造化表面は、超高分解能フォトリソグラフィへの鍵となり得る。
【0007】
他の適用は光によるin vivoでの生物学的プロセスの光化学的な外部制御に関し、このことは最先端の生物学的研究においてますます重要になってきている。実際、照射の際に光解離性化合物を迅速に放出することが可能な光切断試薬は、特に生物学的現象の研究に潜在的に価値のあるツールである。この場合、光応答性化合物は生物学的に活性のある部分と連結するケージング部分を含み、該化合物は照射の際に活性部分を放出することが可能である。そのため、一時的に(照射前には)不活性である光放出化合物を、ペプチド、タンパク質、核酸又はエフェクター分子(「小分子」)のような活性部分を、それらの活性が要求される部位に送達するのに使用することができる。このため、光解離性保護基は光により取り除かれ、「小分子」は不活性状態から活性状態へと切り替わる。
【0008】
光照射は細胞プロセスの最低限の摂動しかもたらさない潜在的に非侵襲的な方法である。放出されるリガンドの生物学的効果を不活性にさせる光解離性前駆体の場合、光分解により生体活性が回復する。これらのケージド化合物は、神経伝達物質、ホスファチジン酸、一酸化窒素、Ca2+等の金属イオンを含む低分子量の調節因子を放出することによる動態及び細胞機構の研究に、また最近では遺伝子調節等のプロセスに広く用いられてきた(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。
二光子吸収の理論的基礎
光分解での二光子活性化(2PA)は2つの光子の準同時吸収に起因し、リガンドの放出をもたらす反応順序を開始させる。2つのエネルギー量子の同時吸収が理論的に予測され(非特許文献13、非特許文献14)、1960年代の高強度レーザーの発見の直後に実験によって観察された(非特許文献15)。放射量子論に基づき、Goeppert-Meyerの理論は原子又は分子の低エネルギーレベルと高エネルギーレベルとの間の中間状態を介した2つ以上の光子の同時吸収を予測する。2PAプロセスでは、このような遷移を、中間状態を分子の2つの実際の状態の間の破線レベルによって概略的に表す図1に示されるように表すことができる。2つの実際の状態の間の分子の遷移を「二段階」事象として可視化することができる。第1の段階では、1つの光子を吸収し、分子がその初期状態Eから離れて、中間状態へと励起する。第2の段階では、別の光子を吸収し、同じ分子が中間状態から最終の実際の状態Eへのその遷移を完了させる。これらの遷移は10−16秒の時間尺度内で起こり、単一素(single elementary)プロセスのように見える。
【0009】
単一光子吸収(1PA)と2PAとを区別する主な特徴はエネルギー吸収(光)の速度が入射強度の関数であるということである(非特許文献16)。中間状態(複数も可)を集束させる可能性が限りなく低い場合、2つ以上の光子の同時吸収には、現在市販の超高速パルスレーザーにより利用可能な高いピーク出力が要求される。1PAでは、光吸収の速度は入射強度に正比例し、2PAでは該速度は入射強度の二乗に比例する。この非線形依存は密接な関係にある。例えば、一光子吸収型の発色団を含有する媒体において、好適な波長の集中光線の経路全体にわたってかなりの吸収が起こる。これがビームに沿ったケージド基質の活性化につながり、非制御の生物学的応答が起こり得る。二光子又は多光子の吸収では、発色団がこの波長で光子を吸収しなければ、適切なエネルギーの光線の焦点のすぐ近くを除いてごくわずかな吸収しか起こらない(非特許文献17)。
【0010】
加えて、より長い波長の励起源の使用は、従来のUV又は可視光法を用いても実現することができない更なる利点、例えば励起ビームの約2倍の深い透過及び散乱光子による励起のはるかな低減をもたらす(非特許文献18)。
【0011】
多くの適用では、二光子の光分解に現在用いられているケージド化合物は1PAケージから誘導されている。これらの化合物は、双極子モーメントの大きな変化(>10D)が基底状態から励起状態への励起下で生じる極性分子である(非特許文献19):吸収断面積は本質的にこの遷移双極子モーメントの関数である(非特許文献20)。これらの化合物の合理的設計は、1PA又は2PAの光分解との構造相関に関するデータ及び検証済みの理論モデルがないために困難である。2PA断面積を改善するのに用いられる一般的な戦略は、π−コンジュゲーションの長さを増大させることにより、又はより効率的に光を集め、フェルスター型の双極子カップリングにより吸収エネルギーをケージへと移動させる「アンテナ」を加えることにより化合物の分極率を増大させることである(非特許文献21)。
【0012】
ニトロベンジル化合物(NB)は既に従来技術において、主要な二光子を吸収するケージ化合物として説明されている。歴史的には、ニトロベンジル由来のケージが初めに開発され、特にカルボン酸、アミド、ホスフェート、アルコール及びカルボニル官能基の遊離のために、UV(1PA)光分解条件下で、通常λ=300nm〜400nmの範囲で使用され、またプロトン(光酸)及び金属イオンの光放出(photorelease)にも使用されてきた。しかしながら、これらの誘導体には2PA条件下で乏しい性能を示すという欠点がある。フラグメンテーションの効率(Φ)はベンジル官能基のホモベンジルによる置き換え(非特許文献22)、又はエステル基又はトリ−ブロモメチル基等の電子求引基(EWG)によるベンジル位の置換のいずれかにより改善されてきた。最も一般的に使用されるニトロフェニルケージ、例えばα−カルボキシ−オルト−ニトロベンジル(CNB)、オルト−ニトロフェニルエチル(NPE)及びジメトキシ−オルト−ニトロベンジル由来の化合物(DMNB)(全て720nm〜980nmの波長で0.1GM未満の二光子断面積δを有する)は以下の式に対する応答性がある(非特許文献23、非特許文献24、非特許文献25、非特許文献26、非特許文献27):
【0013】
【化1】

【0014】
ニトロフェニル誘導体の2PA吸収不良により、細胞損傷を引き起こし得る高いピーク出力の照射を用いなければ、生物学的実験において2PA条件下でこれらのケージド化合物は重大な制限を受ける。
【0015】
7−ニトロインドリン誘導体は光除去性の保護基としても説明されている(非特許文献28)。この化合物の構造及び光化学特性は特に水溶液中での光分解について大幅に高められ、このことが生理学的実験におけるこれらの使用を可能にした(非特許文献29、非特許文献30)。しかしながら、ニトロインドリンのケージドアミノ酸は、7−ニトロインドリニル−グルタメートについては0.06GMとして測定される小さな二光子断面積を呈し、生理学的pHでは加水分解を示さない。
【0016】
別の群のケージド化合物は、以下の化合物のような6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル(BHC)誘導体から誘導される:
【0017】
【化2】

【0018】
BHC誘導体の光分解を、放出されるクマリンによる蛍光の変動をモニタリングすることにより容易に追跡することができ、この蛍光は出発化合物のものよりも強い。二ハロゲン化又は三ハロゲン化クマリン誘導体は適度に良好な2PAアンケージング(uncaging)断面積をもたらすが、フラグメンテーション反応はあまりきれいではない。加えて、BHC誘導体の臭素置換基はフェノールのpKaを低くし、より強く吸収するアニオンの形成を促進し、また化合物の親油性を低減し得る。クマリンの光分解生成物は蛍光性が高いので、クマリンの光分解生成物は光分解反応の追跡において有利であるが、蛍光指示薬とこれらのケージとの併用には制限もある。さらに、BHC誘導体は低い水溶性を有し、それが生理学的条件下でのそれらの使用を困難にしている。
【0019】
このため従来技術において、広範な様々な光解離性の保護基に基づく課題に対するアプローチの報告があるが、全体としてこれらは限られた成果しか上げていない。実際、多光子ケージ化合物の系列及び種類は多いが、これらの化合物の内の多くは限定された範囲、及び中程度の二光子アンケージング効率を有する。赤外(IR)光により活性可能なシステムを開発するのにかなりの努力が為されてきたが、現行の技術水準において開示される光活性のコンジュゲートの制限は、達成される二光子断面積が非効率であること、連結した化合物の高い水溶性を達成することが困難であること、及び照射に市販のレーザーの範囲外の波長が要求されることがあることから生じる。
【0020】
したがって、現在利用可能な試薬と比較して、パルス赤外(IR)照射による二光子の励起とともに使用するために大きく改善された光化学特性、化学特性及び生理化学特性を有し、また生理学的媒体中で優れた可溶性を示し、高い空間的及び時間的制御を可能にする光活性の化合物を提供することが依然として必要とされている。
【0021】
電子構造及び光物理プロセスの観点から、分子内電荷移動プロセスと二光子吸収率との間に強い相関関係がある。このため、基底状態の永久双極子モーメント、及び基底状態又は励起状態のいずれかに連結する遷移双極子が理論的に2PAプロセスにおいて重要な因子であると考えられることになる。高い活性の2PA発色団にとって理想的な分子構造を設計する観点から、数多くの重要な分子特徴が同定されている。駆動力として分子内の電荷移動プロセスを用いる場合、電子の豊富な(電子ドナー)コンポーネント、電子を要求する(電子アクセプター)コンポーネント、又はその両方のコンポーネントの存在が必要とされるが、それだけでは十分ではない。さらに、コンジュゲーションの程度が、広範な電荷分離を有する状態をもたらすため、2PA断面積に特に重要であるとして同定されている。共平面性も分子内の電荷移動の効率を高めるのに特に重要である。
【0022】
さらに、非対称分子における基底状態の双極子の強度又は中心対称分子における多極遷移双極子の強度は有機系における2PAに大きく影響を与えることも分かっている。二次元(2D)又は三次元(3D)配置を形成するためのコンジュゲーション経路の数の増大又は幾つかの線形経路の接続により2PA応答を大きく増大することが可能であることも理論的に及び実験により分かっている。
【0023】
多次元コンジュゲーションの重要な利点が認識されており、2PA分子の断面積の値を更に高めるための分子分岐の使用も実証されてきた。この正確な設計概念が、次元性が付加された多分岐の2PA有機化合物の集合の増大をもたらす。このため2つ以上の二極性分子が広範なコンジュゲーションにより結び付いている。分子内電荷移動の流れは分子の末端から中心へと又はその逆のいずれかであり得る(「外から内」又は「内から外」)。これらの種類の2PA発色団は、それらの全体的な分子構造が以下の対称分類:(八面体)Oh、(四面体)Td、三角形平面Dnh(n)及び三角両錐(C3h)に属する場合、八重極性である。
【0024】
理想的には、この設計概念は二光子の吸収率を高める「共同効果」をもたらすことができる2つの重要な因子を有する:
1つの分子あたりの活性2PA単位の数密度の増大及び
コンジュゲーションを介した(結合による)2PA単位間の相乗的相互作用、すなわちおそらくは「空間を介するが、密接している」電子相互作用。
【0025】
この概念を以下の一般構造:
【0026】
【化3】

【0027】
のうちの1つに対する応答性がある八重極性の多光子活性のD−A又はD−π−A有機化合物の合理的設計に首尾よく適用することができる。
【0028】
本発明者らはここで、一次構造として、キノリンの周りで構造化されたC対称性のトリス−ヘテロアリールアミンドナー−アクセプター(D−A)又はドナー−π−アクセプター(D−π−A)コアを有する新規の優位性のある化合物を同定している。
【0029】
本発明は、パルス赤外線放射(IR)による二光子励起とともに使用するために大きく改善した光化学特性、化学特性及び生理化学特性を有する光活性の化合物を提供することにより従来技術で開示されたケージド化合物の欠点及び不利点を克服している。より具体的には、本発明の化合物は細胞プロセスの最低限の摂動しか生じず、in vivo条件下での薬剤活性化の空間的及び時間的な制御を可能とする非侵襲的な方法に従って光による生物学的プロセスの外部制御を可能にする。本発明の化合物は、従来の光源下で、より具体的には720nm〜800nmの範囲にある赤外(IR)光下で細胞内受容体に作用するリガンド(「小分子」)の放出を可能にし、上記化合物は2PA条件下でより高い光放出感度を示す。このため本発明の化合物の二光子励起がモード同期Ti:サファイアレーザーを用いて可能である。本発明の化合物は加水分解に対して安定性があり、水溶性でもあり、生理学的媒体中での可溶性の改善を示す。さらには、3つの「小分子」を本発明のケージド化合物から放出することができるため、非ケージド「小分子」の実濃度が最終溶液中で3倍高くなる。基質とケージとが連結可能であることは、カルボキシ基又はホスフェート連結基を有するほぼ全てのタイプの基質を使用することを可能にし得る高い柔軟性を示す。本発明のケージド化合物には容易に保存することができ(それらの塩が結晶性固体であることから)、室温で及び更には昼光で遊離塩基よりも比較にならないほど安定しているという別の利点がある。また光フラグメンテーションが暗所における照射後に非常に迅速に起こり、このことにより非常に高速の事象の研究、例えば高速のシナプス伝達の研究にこれらの化合物を使用することが可能となる。加えて、それらの副産物は非毒性である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Buelher et al., Helv. Chim. Acta, 2004, 87, 620-659
【非特許文献2】Zhou et al., Science, 2002, 296, 1106
【非特許文献3】Maruo et al., Laser Photonics Rev., 2008, 2, 100
【非特許文献4】Alvarez et al., Adv. Materials, 2008, 20, 4563-4567
【非特許文献5】Ellis-Davies, Chem. Rev., 2008, 108, 1603-1613
【非特許文献6】Lipp et al., J. Physiol., 1998, 508, 801-901
【非特許文献7】Lindegger et al., J. Physiol, 2005, 565, 801-813
【非特許文献8】Ellis-Davies, Cell Calcium, 2006, 39, 471-473
【非特許文献9】Takano et al., Cell Calcium, 2007, 41, 503-504
【非特許文献10】Brown et al., Method Enzymol, 1998, 201, 356-380
【非特許文献11】DelPrincipe et al., Cell Calcium, 1999, 28, 85-91
【非特許文献12】Momotake et al., Nat. Methods, 2006, 3, 35-40
【非特許文献13】Goeppert, Naturwissenachaften, 1929, 17, 932
【非特許文献14】Goeppert-Mayer, Ann. Phys., 1931, 9, 273-294
【非特許文献15】Peticolas, Ann. Rev. Phys. Chem., 1967, 18, 233-260
【非特許文献16】Belfield et al., Org. Lett., 1999, 1, 1575
【非特許文献17】Denk et al., Science, 1990, 248, 73
【非特許文献18】Oheim et al., J. Neuroscience Methods, 2001, 111, 29-37
【非特許文献19】Birge et al., Molecular Electronics, 1997, Chapter 15
【非特許文献20】Albota et al., Science, 1988, 281, 1653-1656
【非特許文献21】Foerster T., Ann. Physik., 1948, 437, 55
【非特許文献22】Specht et al., ChemBioChem, 2006, 7, 1690-1695
【非特許文献23】Kuzyk et al., S. Characterization Techniques and Tabulations for Organic Nonlinear Optical Materials, 1998, Chapter 7
【非特許文献24】Kantevari et al., ChemBioChem, 2006, 7, 174-180
【非特許文献25】Kiskin et al., Eur. Biophys, J., 2002, 30, 588-604
【非特許文献26】Denk, Proc. Natl. Acad. Sci., 1994, 91, 6629-6633
【非特許文献27】Furuta et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1999, 96, 1193-1200
【非特許文献28】Amit et al., J. Am. Chem. Soc., 1976, 98, 843-844
【非特許文献29】Papageorgiou et al., J. Am., Chem. Soc., 1999, 121, 6503-6504
【非特許文献30】Papageorgiou et al., Tetrahedron, 2000, 56, 8197-8205
【発明の概要】
【0031】
したがって本発明の第1の主題は、以下の式(I):
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、
n=0又は1、
Aは炭素原子、窒素原子、リン原子又はヒ素原子を表し、
Xは、内部スペーサーであり、Aとキノリン基との間の直接単結合;アルキン基−C≡C−;アルケン基−(R)C=C(R’)−(ここで、R及びR’(同一であるか又は異なる)は水素原子、1個〜30個の炭素原子、好ましくは1個〜6個の炭素原子を含有する必要に応じて置換された線状又は分岐のアルキル基又はアルコキシ基を表す);5個〜18個の原子を含有する必要に応じて置換されたアリール基又はヘテロアリール基;6個〜18個の原子を含有する必要に応じて置換されたアラルキル基、アラルキレン基又はアラルキン基を表し、
、R’、R’’、R、R’、R’’、R、R’、R’’、R、R’及びR’’(同一であるか又は異なる)は水素原子又はハロゲン原子、アミン基、ニトリル基又はニトロ基、1個〜30個の炭素原子、好ましくは1個〜6個の炭素原子を含有する必要に応じて置換された線状又は分岐のアルキル基又はアルコキシ基を表し、
Y、Y’及びY’’(同一であるか又は異なる)はハロゲン原子、ヒドロキシル基、アジド基、カルボキシレート基−O(O)CR’’’、カーボネート基−O(O)COR’’’、カルバメート基−O(O)CNR’’’、ホスフェート基−OP(O)(OR’’’)(OR’’’’)又はホスホネート基−OP(O)(OR’’’)(OR’’’’)(ここでR’’’及びR’’’’(同一であるか又は異なる)は水素原子、必要に応じてアミノ基、アミド基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、ニトリル基又はニトロ基から独立して選択される1つ又は複数の基、好ましくはアミノ基及びカルボキシ基で置換され、必要に応じて1つ又は複数のエーテル架橋、エステル架橋、アミノ架橋、アミド架橋を含む1個〜30個の炭素原子、好ましくは1個〜6個の炭素原子を含有する線状又は分岐のアルキル基を表す)を表す)に対する応答性がある新規の化合物である。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態によれば、Aは窒素原子である。
【0035】
本発明の意味では、アルキル基は好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基及びイソブチル基の中から選ばれ、アルコキシ基は好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、エチレンオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソ−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基及びイソブチルオキシ基の中から選ばれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Br及び−Iから、好ましくは−Cl及び−Brから選択されるハロゲン原子を表す。
【0037】
本発明によれば、アラルキルという用語は、水素原子がアリール基に置き換わるアルキル基から誘導される基を表し、アラルケニルという用語は、二重結合の炭素がアリール基と直接連結しているアルケン基から誘導される基を表し、アラルケニルという用語は、三重結合の炭素がアリール基と直接連結しているアルキン基から誘導される基を表す。
【0038】
好ましい実施の形態では、XはAとキノリン基との間の直接単結合、アルキン基−C≡C−又は
【0039】
【化5】

【0040】
基である。
【0041】
本発明によれば、アリール基及びヘテロアリール基は、少なくとも1つの単純芳香環(環の各原子が、自身が重なり合うp軌道を含む非局在化π系を有する任意の平面環状化合物に対応する芳香環)から誘導される任意の官能基又は置換基を表す。必要に応じて置換されたアリール基又はヘテロアリール基の中で、フェニル、フラン、ピリジン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンジルシクロブテン、ペンタレン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、ベンゾチオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、ベンズイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プリン、アントラセン又はアクリジンに言及することができ、好ましいアリール基は置換又は非置換のベンゼンである。
【0042】
別の好ましい代替形態によれば、Y、Y’及びY’’は以下の群:−OH、−N、−Br、−Cl、−OC(O)CH、−OC(O)CHCHCH(NH)COOH、−OC(O)CH(NH)CHCHCOOH、−OC(O)NH、−OC(O)CHCHCHNHの中から選ばれる。
【0043】
本発明は、以下の式:
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、Y、Y’及びY’’が上記で規定されたものと同じ意味を有する)の内の1つに対する応答性がある本発明による一般化合物にも関する。
【0046】
本発明は、以下の式:
【0047】
【化7】


【0048】
(式中、Y、Y’及びY’’が上記で規定されたものと同じ意味を有する)の内の1つに対する応答性がある本発明による一般化合物にも関する。
【0049】
本発明は、以下の式(I)の特定の化合物:
【0050】
【化8】



【0051】
にも関する。
【0052】
本発明の第2の主題は本発明による化合物を合成する特定の方法に関する。
【0053】
上記方法は、以下の工程:
(i)好ましくはVogel's Texbook of Practical Organic Chemistry, Fifth Edition, Longman Scientific Technical, 1989, p. 1187(これは参照により本明細書に援用される)に記載のデーブナー・ミラー反応条件による必要に応じて置換されたブロモアニリンをブロモキナルジンに変換する工程と、
(ii)Huang et al, J. Comb. Chem., 2008, 10, 617-619(これは参照により本明細書に援用される)に記載のような銅及びL−プロリンの存在下での工程(i)で得られた臭素のアミノ化工程と、
(iii)好ましくはB. P. Fors et al. J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 5766-5768及びG. D. Vo, J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 11049-11061(これは参照により本明細書に援用される)に記載のブッフバルト・ハートウィッグ反応条件による工程(ii)で得られたアミノキナルジンと2当量のブロモキナルジンとの間の反応と、
(iv)好ましくは二酸化セレンを用いる酸化工程、その後の好ましくは水素化ホウ素ナトリウムを用いる還元工程と、
を含む。
【0054】
第1の代替形態によれば、(I)又は(I)等の八重極(octupolar)化合物の合成方法は、以下の工程を含み得る:
【0055】
【化9】

【0056】
第2の代替形態によれば、(I)又は(I)等の八重極化合物の合成方法は、以下の工程を含み得る:
【0057】
【化10】

【0058】
この合成の主要工程は、トリオール最終生成物の効率的な3方向性の調製を可能とする反復薗頭カップリング(Huang et al. J. Org. Chem., 2008, 73, 6037-6040)である。ブロモキナルジンが、TMS−アセチレンを使用することによって、薗頭の条件の下で対応するエチニル(ethynyl)誘導体へと変換され、その後、TMS官能基の脱保護の後、アルキン−キナルジンが第2の薗頭反応によってトリアリールアミンと結合する。二酸化セレン(SeO)酸化、その後の水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)還元によって、純粋なトリオールの単離物が得られる。
【0059】
【化11】

【0060】
本明細書の以下に規定されるように、アルキン基を、リンドラー触媒による触媒性水素化を使用することによってアルケン基に、クロロホルム中の過剰量のNBS(N−ブロモスクシンイミド)を使用することによってジブロモアルケン基に、テトラシアノエチレンを使用することによってジエン基に、選択的に変換することができる(点線内の基が、修飾することができる基である):
【0061】
【化12】

【0062】
遊離した場合にはY−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物と称されるケージド基質、例えばアセテート基質又はグルタメート基質は、種々の方法に従って調製することができる。アセテート基質は、ジクロロメタン中のジメチルアミノピリジン(DMAP)及びトリエチルアミンの存在下で無水酢酸を使用することによって調製される。トリグルタメート基質は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を使用することによる遊離酸の活性化、その後のトリエチルアミンの存在下におけるトリオールの付加を含む、N−Boc−グルタメート−t−ブチルエステルの標準的なペプチドカップリング条件を使用することによって調製される。保護基は、強酸、例えばトリフルオロ酢酸の存在下で切断することができる。
【0063】
【化13】

【0064】
その後、調製した化合物をHCl塩として保存することができ、その後、それを、ジオキサン中のHClによる化合物の処理、その後の結晶化(crystallization)によって調製することができる。
【0065】
本発明の別の主題は、少なくとも1つの本発明による化合物、より具体的には3つの本発明による化合物を含む水溶液である。
【0066】
好ましくは、本発明の化合物は、10−5mol・L−1〜10−1mol・L−1の範囲の濃度で上記水溶液中に存在する。
【0067】
別の実施形態によれば、上記水溶液は、6〜8のpHを有する。
【0068】
本発明の更なる主題は、Y−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物を遊離させる方法であって、本発明による化合物に照射する工程であって、それによってY−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物を放出させる、照射する工程を含む、Y−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物を遊離させる方法である。
【0069】
Y−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物を遊離させるメカニズムは、以下の反応によってまとめることができる:
【0070】
【化14】

【0071】
Y−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物を遊離させる方法の照射する工程は好ましくは、600nm〜1000nmの範囲の波長で、より好ましくは650nm〜800nmの範囲の波長で実施される。光フラグメンテーションは段階的プロセスであり、これは、1つ、その後2つ、及びその後3つの基質の遊離を観察することができることを意味する。照射の温度は、0℃から60℃まで変化させてもよく、好ましくは照射工程は、室温(19℃)で又は生理的温度で行われる。照射時間は、使用されるレーザー出力及び経験の種類に依存し、ms(ミリ秒)から10時間まで変化し得る。
【0072】
本発明の最後の主題は、例えば細胞間空間中への又はより具体的には直接的に細胞若しくは組織への、式Y−H、式Y’−H及び/又は式Y’’−Hの治療上の関心が持たれる生物学的に及び/又は生理学的に活性のある物質のベクトル化(vectorisation)又は薬剤送達のための、生物学的分野及び医学的分野等の大規模な用途において使用される本発明の化合物又は本発明の水溶液に関する。この場合、本発明の化合物又は水溶液は、患者の細胞間隙中に又は直接的に細胞若しくは組織に注入され、その後、上で規定されるような照射する工程に供され、それによってY−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−H化合物を遊離させる。
【0073】
本発明の化合物は、マイクロチャネル、マイクロポンプ、カンチレバー、プラズモンデバイス及びフォトニック結晶の中から選ばれる三次元(3D)の微細構造の微細加工に使用することもできる。
【0074】
これらの複素環のモジュール組立てによって、化合物の特定の柔軟性がもたらされる。このアプローチによって、物理化学的試験のための様々な関連構造を手軽に取得することが可能となる。結果として、本発明の化合物に、生物学的な関心が持たれる、又はナノ材料の微細加工に重要な様々な基質を備え付けることができる。
【0075】
上で提供されたものに加えて、本発明は、本発明の化合物の利点を例示する実施例、並びにまた、「同時の」二光子の吸収、及びフルオレセイン溶液の200フェムト秒(fs)のレーザー源を使用する380nm及び760nmの照射によって観察される蛍光差異に関する簡略化ヤブロンスキー図を示す添付の図1を参照する以下の記載から明らかとなる他の提供物も含む。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】「同時の」二光子の吸収、及びフルオレセイン溶液の200フェムト秒(fs)のレーザー源を使用する380nm及び760nmの照射によって観察される蛍光差異に関する簡略化ヤブロンスキー図を示す。
【実施例】
【0077】
多光子活性化の原理の証拠が、アセテート類似体及びグルタメート類似体を調製及び試験することによって、本発明の化合物に関して実証された。
直接結合したトリス−ヘテロアリールアミンケージ化合物の合成の例:
中心対称性の本発明の八重極ケージ化合物が、以下のスキーム1によって実現した:
【0078】
【化15】

【0079】
(I)及び(I)等の八重極ケージ化合物の合成を、2つの相異なる化学的経路に従って実現することができる。スキーム1に示されるように、好都合に置換した出発ブロモアニリンを、デーブナー・ミラー型の反応条件を使用して、ブロモキナルジンに変換する(Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry; Fifth Edition, Longman Scientific Technical, 1989, p.1187)。臭素を、リガンドとしてのL−プロリンの存在下で、銅媒介性アミノ化において−NHによって置き換える。その後、三量体構造を、アミノキナルジン及び2当量のブロモキナルジンを用いて、ブッフバルト・ハートウィグのアミノ化条件を使用することによって組み立てた。最終工程では、二酸化セレンを使用することによるベンジル酸化、その後の水素化ホウ素ナトリウムを用いる還元によって、トリオールの単離がなされた。
【0080】
別の手順によれば、ブロモキナルジンを、SeO媒介性ベンジル酸化、及びメタノール中における水素化ホウ素ナトリウムによる形成したアルデヒドの還元、その後のTBS(t−ブチルジメチルシリルエーテル)としての第一級アルコールの保護によって、保護されたヒドロキシメチレンに変換する。水性アンモニアを使用するブロモキナルジンのアミノ化、その後のブッフバルト・ハートウィグのアミノ化、及びHF−ピリジンによるTBS基の脱保護によって、純粋なトリオールがもたらされた。
【0081】
【化16】

【0082】
内部スペーサーを有するトリス−ヘテロアリールアミン化合物の合成の例:
内部スペーサーを有する中心対称性のケージ化合物の調製は、薗頭の条件(TMS−アセチレンを使用することによる)下での対応するエチニル誘導体へのブロモキナルジンの変換からなるものであり、その後、TMS官能基の脱保護後に、アルキン−キナルジン(3当量)が、第2の薗頭反応によってトリアリールアミンと結合する。手順の最終段階は先に述べたものと同じ官能基変換工程を繰り返すものであり、SeO酸化、その後NaBH還元が行われ、純粋なトリオールが単離される。
【0083】
【化17】

【0084】
本発明による種々の化合物の調製:
A {6−[トリス−(2−ヒドロキシメチル−キノリン−6−イル)−アミノ]−キノリン−2−イル}−メタノールの調製
1)6−ブロモ−2−メチル−キノリンの調製
【0085】
【化18】

【0086】
デーブナー・ミラーの合成:
4−ブロモアニリン(12.4g、55.6mmol)を、0℃で37%HClの溶液(24mL)に添加した。その後、パラアルデヒド(21mL、168mmol、3当量)を導入し、混合物を、室温で1時間放置して反応させ、その後3時間還流させた。0℃への冷却後、水酸化ナトリウム(25mL)を液滴で添加し、混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を水及びブラインで2回洗浄し、その後、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 9/1)によって精製した。白色粉末が得られる(5.9g、48%)。
分子式:C10BrN
分子量:222.08g・mol−1
H NMR:δ7.92(d,J=9.7Hz,1H,H)、7.87(m,2H,H,H)、7.71(dd,J=9.7Hz,J=2.0Hz,1H,H)、7.27(d,J=9.7Hz,1H,H)、2.70(s,3H,CH3(9))。
13C NMR:δ159.9(s,C)、146.8(s,C8a)、135.6(s,C)、133.2(s,C)、130.7(s,C)、129.9(s,C)、128.0(s,H4a)、123.2(s,C)、119.8(s,C)、25.7(s,CH3(9))。
2)6−ブロモ−キノリン−2−カルバルデヒドの調製
【0087】
【化19】

【0088】
ジオキサン(50mL)中の懸濁液における二酸化セレン(Selenium dioxide)(1.3g、12mmol、1.3当量)を60℃で加熱した。その後、6−ブロモキナルジン(2g、9mmol)を導入し、混合物を80℃で3時間放置して反応させた。室温への冷却後、混合物をセライトで濾過し、ジオキサンで溶出し、減圧下で濃縮した。得られる生成物は、純粋な白色固体である(3.3g、>98%)。
分子式:C10BrNO
分子量:236.06g・mol−1
H NMR:δ10.17(s,1H,CHO)、8.19(d,J=8.5Hz,1H,H)、8.08(d,J=9.0Hz,1H,H)、8.04(d,J=2.0Hz,1H,H)、8.02(d,J=8.5Hz,1H,H)。
ESI m/z:236(M+H)、268(ヘミアセタール)、282(アセタール)。
Rf=0.71(シクロヘキサン/EtOAc:3/1)。
3)(6−ブロモ−2−イル)−メタノールの調製
【0089】
【化20】

【0090】
6−ブロモキノリン−2−カルバルデヒド(177mg、0.75mmol)を、0℃でEtOH(5mL)に添加した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(28.4mg、0.75mmol、1当量)を導入し、混合物を室温で1時間撹拌した。エタノールを蒸発させ、水を添加した。溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及びブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。第一級アルコールを白色粉末として得た(179mg、>98%)。
分子式:C10BrNO
分子量:238.08g・mol−1
H NMR:δ8.06(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.95(m,2H,H及びH)、7.79(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.35(d,J=8.5Hz,1H,H)、4.93(s,2H,H)、4.15(b,1H,OH)。
13C NMR:δ160.8(s,C)、148.5(s,C8a)、136.4(s,C)、133.7(s,C)、130.6(s,C)、130.1(s,C)、120.6(s,C4a)、119.7(s,C)、64.5(s,C)。
MS(ESI):m/z=238.0、240.0[M+H]
HRMS(ESI):[C10BrNO+H]についてのm/zの算出値:237.9868、実測値:237.9872(ppm1.9)、239.9847、実測値:239.9852(ppm2.1)。
4)6−ブロモ−2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−キノリンの調製
【0091】
【化21】

【0092】
第一級アルコール(2g、8mmol、1当量)、TBDMSCl(1.4g、9mmol、1.1当量)及びイミダゾール(623mg、9mmol、1.1当量)を、DMF(20mL)に添加した。得られた溶液を室温で3時間撹拌し、その後溶媒を高減圧下で除去した。シクロヘキサンを添加し、混合物を水、その後ブラインで2回洗浄した。その後、有機層をMgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を白色固体として純粋な状態で得た(2.8g、>98%)。
分子式:C1622BrNOSi
分子量:352.34g・mol−1
H NMR:δ7.98(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.84(s,1H,H)、7.82(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.67(d,J=8.5Hz,2H,H及びH)、4.95(s,2H,H)、0.95(s,9H,Bu)、0.95(s,6H,diMe)。
13C NMR:δ162.6(s,C)、146.2(s,C8a)、135.9(s,C)、133.2(s,C)、130.8(s,C)、130.0(s,C)、128.8(s,H4a)、120.0(s,C)、119.6(s,C)、67.0(s,C)、26.3(s,Bu)、18.7(s,Bu)、−4.8(s,diMe)。
=0.48(シクロヘキサン/EtOAc:3/1)。
MS(ESI):m/z=351.9、353.9[M+H]
HRMS(ESI):[C1622BrNOSi+H]についてのm/zの算出値:352.0732、実測値:352.0743(ppm3.0)、354.0712、実測値:354.0726(ppm4.0)。
5)2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−キノリン−6−イルアミンの調製
【0093】
【化22】

【0094】
保護されたブロモキノリン誘導体(600mg、1.7mmol、1当量)、ヨウ化銅(65mg、0.3mmol、20mol%)、L−プロリン(78mg、0.7mmol、40mol%)及びKCO(705mg、5mmol、3当量)を、DMSO(20mL)に溶解した。その後、28%の水性アンモニアNHOH(1.6mL)を導入し、混合物を80℃で18時間加熱した。室温への冷却後、ジクロロメタンを添加し、その後飽和NHCl溶液を添加した。水層をジクロロメタンで2回抽出し、合わせた有機層を飽和NHCl溶液で再度洗浄した。生成物を、カラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 1/1)によって精製し、白色粉末として得た(300mg、61%)。
分子式:C1624OSi
分子量:288.46g・mol−1
H NMR(250MHz):δ7.90(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.83(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.57(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.11(d,J=8.7Hz,1H,H)、6.86(s,1H,H)、4.96(s,2H,H)、3.98(s,2H,NH)、0.97(s,9H,Bu)、0.13(s,6H,diMe)。
13C NMR(250MHz):δ158.2(s,C)、144.7(s,C)、142.6(s,C8a)、134.9(s,C)、130.1(s,C)、129.2(s,C4a)、122.0(s,C)、119.3(s,C)、108.0(s,C)、67.1(s,C)、26.4(s,Bu)、18.8(s,Bu)、−4.8(s,diMe)。
ESI m/z:289.1(M+H)。
=0.16(シクロヘキサン/EtOAc:3/1)。
MS(ESI):m/z=289.2[M+H]
HRMS(ESI):[C1624OSi+H]についてのm/zの算出値:289.1736、実測値:289.1732(ppm−1.4)。
6)トリス−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−キノリン−6−イル]−アミンの調製
【0095】
【化23】

【0096】
グローブボックスに置かれた封管内に、アミノ誘導体(100mg、0.3mmol、1当量)、ブロモ誘導体(269mg、0.8mmol、2.2当量)、ジパラジウムトリス−ジベンジリデンアセトン(Pddba)(70mg、0.07mmol、20mol%)及びナトリウムtertブトキシドNaOC(CH(73mg、0.8mmol、2.2当量)を導入した。トリtertブチルホスフィンPBuの1M溶液(64μL、0.3mmol、80mol%)及び蒸留トルエン(1.7mL)を添加し、管を密閉した。混合物を110℃で18時間加熱した。室温への冷却後、シクロヘキサンを添加し、有機層を水及びブラインで2回洗浄した。生成物を、カラムクロマトグラフィによって精製し(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 9/1)、黄色粉末として得た(268mg、95%)。
分子式:C4866Si
分子量:831.32g・mol−1
H NMR:δ7.97(m,2H,H及びH)、7.66(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.62(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.49(s,1H,H)、5.02(s,2H,H)、1.00(s,9H,Bu)、0.17(s,6H,diMe)。
13C NMR:δ161.2(s,C)、145.4(s,C)、144.9(s,C8a)、136.1(s,C)、130.5(s,C)、128.8(s,C4a)、128.3(s,C)、120.7(s,C)、119.4(s,C)、67.1(s,C)、26.4(s,Bu)、18.8(s,Bu)、−4.8(s,diMe)。
ESI m/z:831.3(M+H)。
=0.12(シクロヘキサン/EtOAc:9/1)、0.68(シクロヘキサン/EtOAc:2/1)。
H NMR(250MHz):δ7.97(m,2H,H)、7.66(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.62(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.49(s,1H,H)、5.02(s,2H,H)、1.00(s,9H,Bu)、0.17(s,6H,diMe)。
13C NMR(63MHz):δ161.2(s,C)、145.4(s,C)、144.9(s,C8a)、136.1(s,C)、130.5(s,C)、128.8(s,C4a)、128.3(s,C)、120.7(s,C)、119.4(s,C)、67.1(s,C)、26.4(s,Bu)、18.8(s,Bu)、−4.8(s,diMe)。
MS(ESI):m/z=831.3[M+H]
HRMS(ESI):[C4866Si+H]についてのm/zの算出値:831.4521、実測値:831.4560(ppm4.7)。
7)トリス−(2−メチル−キノリン−6−イル)−アミンの調製
【0097】
【化24】

【0098】
グローブボックスに置かれた封管内に、6−アミノキノリン誘導体(400mg、2.5mmol、1当量)、6−ブロモキノリン誘導体(1.2g、5.4mmol、2.2当量)、Pddba(259mg、0.25mmol、10mol%)及びナトリウムtertブトキシドNaOC(CH(577mg、6.0mmol、2.4当量)を導入した。トリ−tertブチルホスフィンPBuの1Mトルエン溶液(106μL、0.5mmol、20mol%)及び蒸留トルエン(12mL)を添加し、管を密閉した。混合物を110℃で18時間加熱した。室温への冷却後、溶媒を減圧下で除去し、その後ジクロロメタンを添加し、有機層を水及びブラインで2回洗浄した。生成物を、カラムクロマトグラフィ(SiO、ジクロロメタン−MeOH 99/1)によって精製し、黄色粉末として得た(781mg、71%)。
分子式:C3024
分子量:440.54g・mol−1
H NMR(250MHz):δ7.92(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.74(d,J=8.3Hz,1H,H)、7.53(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.38(s,1H,H)、7.15(d,J=8.3Hz,1H,H)、2.67(s,3H,H)。
13C NMR(125MHz):δ158.1(s,C)、145.4(s,C)、145.1(s,C8a)、135.6(s,C)、130.3(s,C)、128.1(s,C4a)、127.8(s,C)、122.8(s,C)、120.5(s,C)、25.5(s,C)。
ESI m/z:441.3(M+H)。
8)トリス−(キノリン−6−イル−2−カルバルデヒド)−アミンの調製
【0099】
【化25】

【0100】
ジオキサン(2mL)中の懸濁液における二酸化セレン(108mg、1.0mmol、3.3当量)を60℃で加熱した。6−トリス−キノリン(100mg、0.3mmol)を導入し、混合物を80℃で3時間放置して反応させた。室温への冷却後、混合物をセライトで濾過し、ジオキサンで溶出し、減圧下で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 4/1)によって精製し、黄色の油として得た(43mg、30%)。
分子式:C3018
分子量:482.49g・mol−1
H NMR(アセトン d6,250MHz):δ10.15(s,3H,CHO)、8.41(d,J=8.5Hz,3H,H)、8.26(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.97(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.88(m,6H,H及びH)。
13C NMR(75MHz):δ194.4(s,CHO)、153.5(s,C)、148.4(s,C)、146.9(s,C8a)、138.0(s,C)、133.4(s,C)、132.9(s,C4a)、130.2(s,C)、122.4(s,C)、119.0(s,C)。
9){6−[トリス−(2−ヒドロキシメチル−キノリン−6−イル)−アミノ]キノリン−2−イル}−メタノールの調製
【0101】
【化26】

【0102】
6−トリス−キノリン−2−カルバルデヒド(50mg、0.1mmol)を、0℃でEtOH(0.5mL)に添加した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(18mg、0.47mmol、4.5当量)を導入し、混合物を室温で1時間撹拌した。エタノールを蒸発させ、水を添加した。溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及びブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。トリス−アルコールを黄色の油として得た(38mg、80%)。
分子式:C3024
分子量:488.54g・mol−1
H NMR(500MHz):δ8.04(d,J=9.0Hz,3H,H)、7.91(d,J=8.0Hz,3H,H)、7.61(dd,J=9.0Hz,J=2.0Hz,3H,H)、7.61(d,J=2.0Hz,3H,H)、7.25(d,J=8.0Hz,3H,H)、4.90(s,6H,H)。
ESI m/z:489.2(M+H)。
=0.11(RP18,MeOH/HO:3/2)。
H NMR(500MHz)(MeOD):δ8.92(bb,3H,H)、8.48(d,J=6.5Hz,3H,H)、8.10(dd,J=8.0Hz,J=3.0Hz,6H,H)、8.05(d,J=3.0Hz,3H,H)、5.23(s,6H,H)、4.86(bb,3H,OH)。
13C NMR(75MHz)(MeOD):δ161.3(s,C)、148.0(s,C)、146.8(s,C8a)、136.7(s,C)、133.6(s,C4a)、131.2(s,C)、123.9(s,C)、123.5(s,C)、121.7(s,C)、62.0(s,C)。
MS(ESI):m/z=489.1[M+H]
HRMS(ESI):[C3024+H]についてのm/zの算出値:489.1927、実測値:489.1916(ppm−2.2)。
HPLC−MS:(方法C):rt=16.57分、m/z=489.1、260nm及び360nmで抽出(extraction)、λmax=371nm。
9)酢酸[6−(ビス−(2−アセトキシメチル−キノリン−6−イル)−アミノ)−キノリン−2−イル]−メチルエステル「6−トリポード(tripode)−OAc」の調製
【0103】
【化27】

【0104】
トリスアルコール9(11mg、0.02mmol)、トリエチルアミン(14μL、0.1mmol、4.5当量)、無水酢酸(10μL、0.1mmol、4.5当量)及び触媒量のDMAPをジクロロメタン(100μL)に溶解し、混合物を暗所において室温で2時間撹拌した。その後、粗生成物を、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン−MeOH 95:5)によって精製して、化合物トリアセテートを黄色の油として得た(11mg、89%)。
分子式:C3630
分子量:614.65g・mol−1
=0.21(シクロヘキサン/EtOAc:1/3)。
H NMR(500MHz):δ8.01(d,J=9.0Hz,3H,H)、7.90(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.58(dd,J=9.0Hz,J=2.5Hz,3H,H)、7.43(d,J=2.5Hz,3H,H)、7.39(d,J=8.5Hz,3H,H)、5,34(s,6H,H)、2.15(s,9H,OAc)。
13C NMR(125MHz):δ172.0(s,CO)、156.6(s,C)、146.8(s,C)、146.5(s,C8a)、137.3(s,C)、132.1(s,C)、130.0(s,C4a)、129.5(s,C)、121.6(s,C)、68.8(s,C)、22.3(s,OAc)。
MS(ESI):m/z=615.3[M+H]
HRMS(ESI):[C3630+H]についてのm/zの算出値:615.2244、実測値:615.2233(ppm−1.7)。
UV(MeCN):λmax=366nm、ε(λmax)=13900M−1・cm−1
B {7−[トリス−(2−ヒドロキシメチル−キノリン−7−イル)−アミノ]キノリン−2−イル}−メタノールの調製
1)7−ブロモ−2−メチル−キノリンの調製
【0105】
【化28】

【0106】
デーブナー・ミラーの合成:
3−ブロモアニリン(3mL、27mmol)を、0℃で37%HClの溶液(24mL)に添加した。その後、パラアルデヒド(8mL、83mmol、3当量)を導入し、混合物を、室温で1時間放置して反応させ、その後3時間還流させた。0℃への冷却後、水酸化ナトリウム(25mL)を液滴で添加し、混合物を、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水及びブラインで2回洗浄し、その後MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、カラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 9/1)によって精製し、白色固体として得た(2.8g、46%)。
分子式:C10BrN
分子量:222.08g・mol−1
IR(フィルム):1610cm−1、1494cm−1、1264cm−1、841cm−1、736cm−1
融点:57℃
H NMR:δ8.09(s,1H,H)、7.80(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.39(m,2H,H及びH)、7.12(d,J=8.2Hz,1H,H)、2.61(s,3H,H)。
13C NMR:δ160.3(s,C)、148.6(s,C8a)、136.2(s,C)、131.2(s,C)、129.4(s,C)、128.9(s,C)、125.3(s,C4a)、123.7(s,C)、122.6(s,C)、25.7(s,C)。
=0.33(シクロヘキサン/EtOAc:2/1)、0.73(シクロヘキサン/EtOAc:1/1)。
2)7−ブロモ−キノリン−2−カルバルデヒドの調製
【0107】
【化29】

【0108】
ジオキサン(50mL)中の懸濁液における二酸化セレン(1.6g、14mmol、1.3当量)を60℃で加熱した。7−ブロモキナルジン(2.5g、11.2mmol)を導入し、混合物を80℃で3時間放置して反応させた。室温への冷却後、混合物をセライトで濾過し、ジオキサンで溶出し、減圧下で濃縮した。生成物を白色固体として純粋な状態で得た(3.3g、>98%)。
分子式:C10BrNO
分子量:236.06g・mol−1
IR(フィルム):1701cm−1、1587cm−1、1298cm−1、911cm−1、843cm−1、757cm−1
融点:151℃
SM−IC(CHOH)m/z:236(M+H)、268(ヘミアセタール)、282(アセタール)。
MS(ESI):m/z=236.0、238.0[M+H]、258.0、260.0[M+Na]、268.0、270.0(ヘミアセタール)、282.0、284.0(アセタール)。
HRMS(ESI):[C10BrNO+H]についてのm/zの算出値:235.9711、実測値:235.9702(ppm−3.8);237.9691、実測値:237.9681(ppm−4.0)。
3)(7−ブロモ−キノリン−2−イル)−メタノールの調製
【0109】
【化30】

【0110】
7−ブロモキノリン−2−カルバルデヒド(177mg、0.75mmol)を、0℃でEtOH(5mL)に添加した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(28.4mg、0.75mmol、1当量)を導入し、混合物を室温で1時間撹拌した。エタノールを蒸発させ、水を添加した。溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及びブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。第一級アルコールを白色粉末として得た(179mg、>98%)。
分子式:C10BrNO
分子量:238.08g・mol−1
=0.25(シクロヘキサン/EtOAc:3/1)。
H NMR(250MHz):δ8.19(s,1H,H)、8.06(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.64(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.57(d,J=8.0Hz,1H,H)、7.32(d,J=8.5Hz,1H,H)、4.91(s,2H,C)、4.60(bb,1H,OH)。
13C NMR(63MHz):δ160.9(s,C)、147.5(s,C8a)、137.1(s,C)、131.2(s,C)、130.3(s,C)、129.3(s,C)、126.4(s,C4a)、124.3(s,C)、119.2(s,C)、64.6(s,C)。
MS(ESI):m/z=238.0;240.0[M+H]
HRMS(ESI):[C10BrNO+H]についてのm/zの算出値:237.9868、実測値:237.9872(ppm1.9);239.9847、実測値:239.9852(ppm2.1)。
4)2−メチル−キノリン−7−イルアミンの調製
【0111】
【化31】

【0112】
7−ブロモキノリン誘導体(800mg、3.6mmol、1当量)、ヨウ化銅(137mg、0.7mmol、20mol%)、L−プロリン(166mg、1.4mmol、40mol%)及びKCO(1.5g、11mmol、3当量)を、DMSO(20mL)に溶解した。その後、水性アンモニア(28%)NHOH(2mL)を導入し、混合物を80℃で18時間加熱した。室温への冷却後、ジクロロメタンを添加し、その後飽和NHCl溶液を添加した。水層をジクロロメタンで2回抽出し、合わせた有機層を飽和NHCl溶液で再度洗浄した。生成物を、カラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 1/3)によって精製し、白色粉末として得た(511mg、90%)。
分子式:C1010
分子量:158.20g・mol−1
H NMR(500MHz):δ7.69(d,J=8.0Hz,1H,H)、7.38(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.04(s,1H,H)、7.85(d,J=8.0Hz,1H,H)、6.77(d,J=8.5Hz,1H,H)、4.26(bb,2H,NH)、2.58(s,3H,H)。
13C NMR(125MHz):δ160.3(s,C)、151.0(s,C8a)、149.6(s,C)、137.1(s,C)、129.9(s,C)、121.5(s,C4a)、119.6(s,C)、119.0(s,C)、109.8(s,C)、42.2(s,C)。
=0.20(ジクロロメタン/MeOH:95/5)。
ESI m/z:159.2(M+H)。
5)トリス−(2−メチル−キノリン−7−イル)−アミンの調製
【0113】
【化32】

【0114】
グローブボックス内に置いた封管に、6−アミノキノリン誘導体(400mg、2.5mmol、1当量)、6−ブロモキノリン誘導体(1.2g、5.4mmol、2.2当量)、Pddba(259mg、0.25mmol、10mol%)及びナトリウムtertブトキシドNaOC(CH(577mg、6.0mmol、2.4当量)を投入した。トリtertブチルホスフィンPBuの1Mトルエン溶液(106μL、0.5mmol、20mol%)及び蒸留トルエン(12mL)を添加し、管を密閉した。混合物を110℃で18時間加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を減圧下で除去し、その後ジクロロメタンを添加し、有機層を水及びブラインで2回洗浄した。生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、ジクロロメタン−MeOH 99/1)によって精製し、黄色の粉末として得た(715mg、65%)。
分子式:C3024
分子量:440.54g・mol−1
H NMR(250MHz):δ7.93(d,J=8.3Hz,1H,H)、7.68(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.66(d,J=2.5Hz,1H,H)、7.40(dd,J=8.5Hz,J=2.5Hz,1H,H)、7.15(d,J=8.3Hz,1H,H)、2.63(s,3H,H)。
13C NMR(125MHz):δ159.8(s,C)、149.4(s,C8a)、148.6(s,C)、136.0(s,C)、129.0(s,C)、124.4(s,C)、123.9(s,C4a)、122.5(s,C)、121.2(s,C)、25.6(s,C)。
=0.36(ジクロロメタン/MeOH:95/5)。
ESI m/z:441(M+H)、881(2M+H)。
6){7−[トリス−(2−ヒドロキシメチル−キノリン−7−イル)−アミノ]−キノリン−2−イル}−メタノールの調製
【0115】
【化33】

【0116】
第1の合成:
ジオキサン(2mL)中の懸濁液における二酸化セレン(108mg、1.0mmol、3.3当量)を60℃で加熱した。トリス−(2−メチル−キノリン−7−イル)−アミン(100mg、0.3mmol)を投入し、混合物を80℃で3時間反応させた。室温まで冷却した後、混合物をセライトで濾過し、ジオキサンで溶出し、減圧下で濃縮した。得られたトリスアルデヒドの一部(60mg、0.12mmol)をEtOH(0.5mL)に0℃で添加した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(16mg、0.42mmol、4.5当量)を投入し、混合物を室温で1時間撹拌した。エタノールを蒸発させ、水を添加した。溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及びブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。トリオールが黄色の油として得られた(20mg、2工程で8%)。
第2の合成:
トリス−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−キノリン−6−イル]−アミン(35mg、0.04mmol、1.0当量)を蒸留THFに溶解した。その後、混合物にTBAFの1M THF溶液(672μL)を添加し、媒体を室温で3時間撹拌した。減圧下で濃縮した後、HCl/エーテルを添加することによって粗生成物を塩として変換した。濾液を除去した後、塩をMeOHから再結晶化した。黄色の結晶としてHCl塩を得た(14mg、70%)。
分子式:C3024
分子量:488.54g・mol−1
=0.12(RP18,MeOH/HO:7/3)。
H NMR(250MHz)(CDCl):δ8.07(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.76(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.75(d,J=2.0Hz,1H,H)、7.45(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,1H,H)、7.19(d,J=8.5Hz,1H,H)、4.84(s,2H,H)。
(DO)(塩):δ9.06(d,J=8.5Hz,3H,H)、8.36(d,J=9.0Hz,3H,H)、8.19(s,3H,H)、7.97(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.91(d,J=9.0Hz,3H,H)、5.27(s,6H,H)。
13C NMR(125MHz)(CDCl):δ160.1(s,C)、148.6(s,C8a)、148.4(s,C)、136.8(s,C)、129.4(s,C)、125.1(s,C4a)、125.0(s,C)、122.3(s,C)、117.8(s,C)、64.5(s,C)。
(DO)(塩):δ160.9(s,C)、151.7(s,C8a)、148.0(s,C)、140.3(s,C)、132.9(s,C)、128.6(s,C)、127.6(s,C4a)、120.2(s,C)、115.1(s,C)、62.0(s,C)。
MS(ESI):m/z=489.2[M+H]
HPLC−MS:(方法C):rt=17.21分,m/z=489.2[M+H]、260nm及び360nmで抽出,λmax=386nm。
分子式:C3024
分子量:488.54g・mol−1
H NMR(250MHz):δ8.07(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.76(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.75(d,J=2.0Hz,1H,H)、7.45(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,1H,H)、7.19(d,J=8.5Hz,1H,H)、4.84(s,2H,H)。
13C NMR(125MHz):δ160.1(s,C)、148.6(s,C8a)、148.4(s,C)、136.8(s,C)、129.4(s,C)、125.1(s,C4a)、125.0(s,C)、122.3(s,C)、117.8(s,C)、64.5(s,C)。
ESI m/z:489.2(M+H)。
C 本発明によるエチニル中心対称ケージの調製
1)2−メチル−5−トリメチルシラニルエチニル−キノリンの調製:
【0117】
【化34】

【0118】
封管内に、5−ブロモ−2−メチル−キノリン(1.0g、4.5mmol、1.0当量)、PdCl(PPh(154mg、0.22mmol、5mol%)、ヨウ化銅(42mg、0.22mmol、5mol%)及びトリフェニルホスフィン(236mg、0.9mmol、20mol%)を投入した。その後、DMF(10mL)、続いてジエチルアミン(9.5mL、68mmol、15当量)及びトリメチルシリルアセチレン(700μL、5.0mmol、1.1当量)を添加した。混合物を110℃で一晩加熱した。冷却後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(フロリジル、シクロヘキサン−EtOAc 95:5)によって精製し、2−メチル−5−トリメチルシラニルエチニル−キノリンを白色の固体として得た(970mg、90%)。
分子式:C1517NSi
分子量:239.39g・mol−1
=0.26(シクロヘキサン/EtOAc:95/5)。
H NMR:δ8.45(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.97(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.60(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.55(d,J=8.7Hz,1H,H)、7.28(d,J=8.2Hz,1H,H)、2.69(s,3H,H)、0.33(s,9H,TMS)。
13C NMR:δ159.7(s,C)、147.8(s,C8a)、134.9(s,C)、130.5(s,C)、130.1(s,C)、129.0(s,C)、127.3(s,C4a)、123.0(s,C)、121.1(s,C)、102.3(s,C10)、100.3(s,C11)、25.6(s,C)、0.49(s,TMS)。
2)5−エチニル−2−メチル−キノリンの調製:
【0119】
【化35】

【0120】
2−メチル−5−トリメチルシラニルエチニル−キノリン(140mg、0.6mmol、1.0当量)のMeOH溶液(5mL)に、KCO(324mg、2.34mmol、4当量)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した後、水を添加した。水層をシクロヘキサンで2回抽出した後、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。濾過して減圧下で濃縮した後、粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィ(シクロヘキサン−EtOAc 99:1)によって精製し、5−エチニル−2−メチル−キノリンを黄色の油として得た(99mg、98%)。
分子式:C12
分子量:167.21g・mol−1
=0.30(シクロヘキサン/EtOAc:95/5)。
H NMR(250MHz):δ8.50(d,J=8.2Hz,1H,H)、8.03(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.71(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.61(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.35(d,J=8.5Hz,1H,H)、3.47(s,1H,H11)、2.75(s,3H,H)。
13C NMR(63MHz):δ160.0(s,C)、147.8(s,C8a)、134.8(s,C)、131.0(s,C)、130.4(s,C)、129.1(s,C)、127.5(s,C4a)、123.2(s,C)、120.1(s,C)、82.7(s,C11)、81.1(s,C10)、25.6(s,C)。
3)2−メチル−7−トリメチルシラニルエチニル−キノリンの調製:
【0121】
【化36】

【0122】
封管内に、7−ブロモ−2−メチル−キノリン(500mg、2.25mmol、1.0当量)、PdCl(PPh(79mg、0.11mmol、5mol%)、ヨウ化銅(21mg、0.11mmol、5mol%)及びトリフェニルホスフィン(106mg、0.39mmol、20mol%)を投入した。その後、DMF(5mL)、続いてジエチルアミン(3.5mL、34mmol、15当量)及びトリメチルシリルアセチレン(350μL、2.5mmol、1.1当量)を添加した。混合物を110℃で一晩加熱した。冷却後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(フロリジル、シクロヘキサン−EtOAc 95:5)によって精製し、2−メチル−7−トリメチルシラニルエチニル−キノリンを白色の固体として得た(435mg、81%)。
分子式:C1517NSi
分子量:239.39g・mol−1
=0.34(シクロヘキサン/EtOAc:95/5)。
Mp:96℃。
H NMR(250MHz):δ8.15(s,1H,H)、8.00(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.69(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.52(d,J=8.2Hz,1H,H)、7.28(d,J=8.2Hz,1H,H)、2.75(s,3H,H)、0.30(s,9H,TMS)。
13C NMR(63MHz):δ160.1(s,C)、147.8(s,C8a)、136.1(s,C)、132.8(s,C)、128.9(s,C)、127.8(s,C)、126.7(s,C4a)、124.5(s,C)、122.9(s,H)、105.2(s,C10)、96.5(s,C11)、25.8(s,C)、0.40(s,TMS)。
4)7−エチニル−2−メチル−キノリンの調製
【0123】
【化37】

【0124】
2−メチル−7−トリメチルシラニルエチニル−キノリン(140mg、0.59mmol、1.0当量)のMeOH溶液(5mL)に、KCO(324mg、2.34mmol、4当量)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した後、水を添加した。水層をシクロヘキサンで2回抽出した後、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。濾過して減圧下で濃縮した後、粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィ(シクロヘキサン−EtOAc 99:1)によって精製し、84mgの7−エチニル−2−メチル−キノリンを黄色の結晶として得た(86%)。
分子式:C12
分子量:167.21g・mol−1
=0.35(シクロヘキサン/EtOAc:4/1)。
Mp:41℃。
H NMR(500MHz):δ8.19(s,1H,H)、8.01(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.71(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.54(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.29(d,J=8.5Hz,1H,H)、3.23(s,1H,H11)、2.75(s,3H,H)。
13C NMR(125MHz):δ161.3(s,C)、148.7(s,C8a)、137.2(s,C)、134.1(s,C)、129.9(s,C)、129.0(s,C)、127.9(s,C4a)、124.5(s,C)、124.1(s,C)、84.8(s,C10)、80.1(s,C11)、26.7(s,C)。
5)2−メチル−6−トリメチルシラニルエチニル−キノリンの調製
【0125】
【化38】

【0126】
封管内に、6−ブロモ−2−メチル−キノリン(4.6g、21mmol、1当量)、PdCl(PPh(727mg、1mmol、5mol%)、ヨウ化銅(197mg、1mmol、5mol%)及びトリフェニルホスフィン(1.1g、4.1mmol、20mol%)を投入した。その後、DMF(35mL)、続いてジエチルアミン(6mL、62mmol、5当量)及びトリメチルシリルアセチレン(3.2mL、23mmol、1.1当量)を添加した。混合物を一晩還流させた。冷却後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(フロリジル、シクロヘキサン−AcOEt 95/5)によって精製し、白色の固体として得た(4.2g、83%)。
分子式:C1517NSi
分子量:239.39g・mol−1
=0.4(シクロヘキサン/EtOAc:4/1)。
H NMR(250MHz):δ7.98(d,J=8.0Hz,1H,H)、7.94(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.30(m,3H,H,H及びH)、2.75(s,3H,H)、0.31(s,9H,TMS)。
6)6−エチニル−2−メチル−キノリンの調製
【0127】
【化39】

【0128】
2−メチル−6−トリメチルシラニルエチニル−キノリン(2.1g、1.03mmol、1当量)のMeOH溶液(5mL)に、KCO(5.69g、4.12mmol、4当量)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した後、水を添加した。水層をシクロヘキサンで2回抽出した後、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。濾過して減圧下で濃縮した後、粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィ(シクロヘキサン−EtOAc 99:1)によって精製し、169mgの6−エチニル−2−メチル−キノリンを黄色の結晶として得た(98%)。
分子式:C12
分子量:167.21g・mol−1
H NMR(500MHz):δ7.94(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.93(d,J=8.0Hz,1H,H)、7.90(d,J=1.0Hz,1H,H)、7.70(dd,J=8.5Hz,J=1.0Hz,1H,H)、7.25(d,J=8.0Hz,1H,H)、3.16(s,1H,H11)、2.72(s,3H,H)。
13C NMR(125MHz):δ161.4(s,C)、148.8(s,C8a)、137.2(s,C)、133.7(s,C)、133.1(s,C)、130.3(s,C)、127.4(s,C4a)、124.1(s,C)、120.8(s,C)、84.7(s,C10)、79.4(s,C11)、26.8(s,C)。
7)トリス−[4−(2−メチル−キノリン−6−イルエチニル)−フェニル]−アミンの調製
【0129】
【化40】

【0130】
シュレンク管(schlenk)内に、トリス−p−ブロモフェニルアミン(54mg、0.1mmol、1当量)、アルキン誘導体(60mg、0.4mmol、4当量)、PdCl(PPh(12mg、0.02mmol、15mol%)、ヨウ化銅(3mg、0.02mmol、15mol%)及びトリフェニルホスフィン(15mg、0.06mmol、55mol%)を投入した。その後、DMF(500μL)、続いてジエチルアミン(500μL、5mmol、45当量)を添加した。混合物を一晩還流させた。冷却後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−AcOEt 9/1)によって精製し、橙色の固体として得た(16mg、20%)。
分子式:C5436
分子量:740.89g・mol−1
H NMR(500MHz):δ8.00(d,J=7.0Hz,3H,H)、7.98(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.95(d,J=1.5Hz,3H,H)、7.77(dd,J=7.0Hz,J=1.5Hz,3H,H)、7.55(dd,J=7.5Hz,J=2.0Hz,6H,H13)、7.35(dd,J=7.5Hz,J=1.5Hz,6H,H14)、7.55(d,J=8.5Hz,3H,H)、2.74(s,9H,H)。
13C NMR(125MHz):δ161.1(s,C)、137.4(s,C8a)、133.7(s,C15)、133.5(s,C)、133.1(s,C13)、132.2(s,C)、130.0(s,C)、129.9(s,C)、129.8(s,C14)、127.7(s,C4a)、124.5(s,C)、124.1(s,C)、122.2(s,C12)、91.7(s,C10)、90.5(s,C11)、26.7(s,C)。
ESI m/z:741.0(M+H)。
8)トリス−[4−(キノリン−2−カルバルデヒド−6−イルエチニル)−フェニル]−アミンの調製
【0131】
【化41】

【0132】
ジオキサン(1mL)中の懸濁液における二酸化セレン(35mg、0.3mmol、4当量)を60℃で加熱した。トリス−キノリン誘導体(60mg、0.08mmol)を投入し、混合物を80℃で12時間反応させた。室温まで冷却した後、混合物をセライトで濾過し、ジオキサンで溶出し、減圧下で濃縮した。生成物を黄色の固体として得た(15mg、24%)。
分子式:C5430
分子量:782.84g・mol−1
H NMR(500MHz):δ10.20(s,3H,CHO)、8.26(d,J=8.5Hz,3H,H)、8.20(d,J=8.5Hz,3H,H)、8.06(d,J=2.0Hz,3H,H)、8.03(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.89(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,3H,H)、7.57(m,6H,H13)、7.37(m,6H,H14)。
【0133】
【化42】

【0134】
トリアルデヒド(20mg、0.03mmol)のEtOH溶液(0.2mL)に、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(5mg、0.13mmol、4.5当量)を少しずつ(portionwise)添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、水を添加した。溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及びブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。トリオールを黄色の油として得た。
分子式:C5436
分子量:788.89g・mol−1
本発明によるケージドアセテート化合物及びケージドグルタメート化合物の調製
D 酢酸6−[トリス−(2−アセトキシメチル−キノリン−6−イル)−アミノ]−キノリン−2−イルメチルエステルの調製
【0135】
【化43】

【0136】
トリオール(11mg、0.02mmol)、トリエチルアミン(14μL、0.1mmol、4.5当量)、無水酢酸(10μL、0.1mmol、4.5当量)及び触媒量のDMAPをジクロロメタン(100μL)に溶解し、混合物を室温で2時間、暗所で撹拌した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、ジクロロメタン−MeOH 95/5)によって精製し、黄色の油として得た(6mg、43%)。
分子式:C3630
分子量:614.65g・mol−1
=0.21(シクロヘキサン/EtOAc:1/3)。
H NMR(500MHz):δ8.01(d,J=9.0Hz,3H,H)、7.90(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.58(dd,J=9.0Hz,J=2.5Hz,3H,H)、7.43(d,J=2.5Hz,3H,H)、7.39(d,J=8.5Hz,3H,H)、5,34(s,6H,H)、2.15(s,9H,OAc)。
13C NMR(125MHz):δ172.0(s,CO)、156.6(s,C)、146.8(s,C)、146.5(s,C8a)、137.3(s,C)、132.1(s,C)、130.0(s,C4a)、129.5(s,C)、121.6(s,C)、68.8(s,C)、22.3(s,OAc)。
MS(ESI):m/z=615.3[M+H]
HRMS(ESI):[C3630+H]に関するm/zの算出値:615.2244、実測値:615.2233(ppm−1.7)。
UV(MeCN):λmax=366nm、ε(λmax)=13900M−1・cm−1
E 酢酸7−[トリス−(2−アセトキシメチル−キノリン−7−イル)−アミノ]−キノリン−2−イルメチルエステルの調製
【0137】
【化44】

【0138】
トリオール(15mg、0.03mmol)、トリエチルアミン(19μL、0.1mmol、4.5当量)、無水酢酸(13μL、0.1mmol、4.5当量)及び触媒量のDMAPをジクロロメタン(100μL)に溶解し、混合物を室温で2時間、暗所で撹拌した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、ジクロロメタン−MeOH 95/5)によって精製し、黄色の油として得た(12mg、67%)。
分子式:C3630
分子量:614.65g・mol−1
=0.23(シクロヘキサン/EtOAc:1/1)、0.55(シクロヘキサン/EtOAc:1/3)。
H NMR(500MHz):δ8.09(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.73(s,1H,H)、7.72(d,J=8.5Hz,1H,H)、7.44(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,1H,H)、7.36(d,J=8.5Hz,1H,H)、5.28(s,2H,H)。
13C NMR(125MHz):δ170.5(s,C10)、156.6(s,C)、148.8(s,C8a)、148,2(s,C)、136.4(s,C)、128.8(s,C)、124.9(s,C)、124.6(s,C4a)、122.4(s,C)、118.5(s,C)、67,2(s,C)、27.0(s,C11)。
MS(ESI):m/z=615.1[M+H],1229.0[2M+H]
HRMS(ESI):[C3630+H]に関するm/zの算出値:615.2244、実測値:615.2221(ppm−3.7)。
HPLC−MS:(方法C):rt=16.13分、m/z=615.1、260nm及び360nmで抽出、λmax=367nm。
UV(MeCN):λmax=367nm,ε(λmax)=13700M−1・cm−1
F 2−アミノ−ペンタン二酸5−(7−{トリス−[2−(4−アミノ−4−カルボキシ−ブチリルオキシメチル)−キノリン−7−イル]−アミノ}−キノリン−2−イルメチル)エステルの調製
【0139】
【化45】

【0140】
NHBOC tert−ブチルエステルで保護されたトリグルタメート(12mg、0.014mmol)をTFAの50%ジクロロメタン溶液に溶解し、媒体を室温で3時間、暗所で撹拌した。反応が完了した後、溶媒を蒸発させ、得られた塩をMeOH及びエーテルから結晶化した(crystallized)後、濾過し、エーテルで洗浄し、橙色の粉末を得た(7mg、95%)。
分子式:C454512
分子量:875.88g・mol−1
H NMR(500MHz):δ8.43(d,J=8.0Hz,3H,H)、8.02(d,J=8.0Hz,3H,H)、7.76(s,3H,H)、7.59(d,J=8.0Hz,6H,H及びH)、5.38(s,6H,H)、4.04(s,3H,H13)、2.75(m,6H,H12)、2.22(m,6H,H11)。
MS(ESI):m/z=876.1[M+H]、ESI−:874.0[M−H]
HRMS(ESI):[C454512+H]に関するm/zの算出値:876.3204、実測値:876.3236(ppm3.6)。
HPLC−MS:(方法C):rt=15.41分、m/z=876.1[M+H]、260nm及び360nmで抽出、λmax=396nm。
【0141】
【化46】

【0142】
得られたNHBOC tert−ブチルエステルで保護されたトリグルタメート(2mg、0.002mmol)(上記の式を参照されたい)を、99%TFA/ジクロロメタン(1/4)溶液に溶解し、媒体を室温で4時間、暗所で撹拌した。反応が完了した後、溶媒を蒸発させ、得られたHCl塩を乾燥させ、−4℃で使用前まで保存した。
分子式:C454512
分子量:875.88g・mol−1
=0.21(シクロヘキサン/EtOAc:1/1)。
H NMR(500MHz):δ8.08(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.72(d,J=8.5Hz,3H,H)、7.71(s,3H,H)、7.43(dd,J=8.5Hz,J=2.5Hz,3H,H)、7.36(d,J=8.5Hz,3H,H)、5.28(s,6H,H)、4.18(s,3H,H13)、2.48(m,6H,H12)、1.93(m,6H,H11)、1.42(s,H19 回転異性体)、1.41(s,27H,H19)、1.40(s,H16 回転異性体)、1.38(s,27H,H16)。
13C NMR(125MHz):δ173.8(s,C10)、172.6(s,C14)、158.1(s,C)、156.8(s,C17)、149.6(s,C8a)、138.0(s,C)、130.3(s,C)、126.4(s,C)、126.2(s,C)、123.7(s,C4a)、119.9(s,C)、119.8(s,C)、81.1(s,C18)、78.8(s,C15)、68.7(s,C)、50.6(s,C13)、29.7(s,C19)、29.5(s,C16)、27.0(s,C11)、26.3(s,C12)。
MS(ESI):m/z=1344.5[M+H]、1366.3[M+Na]
HRMS(ESI):[C729318+Na]に関するm/zの算出値:1366.6475、実測値:1366.6475(ppm0.0)。
G 6,6’,6’’−(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリス(エチン−2,1−ジイル)トリス(2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)キノリン−8−カルボニトリル)の調製
1)6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−メチルキノリン−8−カルボニトリルの調製
【0143】
【化47】

【0144】
8−シアノ−7−N,N−ジメチルアミノキナルジン(1.1g、5.2mmol、1.0当量)のクロロホルム溶液(26mL)に、NBS(1.2g、6.8mmol、1.3当量)を添加し、溶液を室温で3時間撹拌した。その後、混合物をNaの飽和溶液及びNaClの飽和溶液で2回洗浄し、有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−メチルキノリン−8−カルボニトリルをエーテルから結晶化し、淡黄色の結晶として得た(1.2g、78%)。
分子式:C1312BrN
分子量:290.16g・mol−1
=0.6(シクロヘキサン/EtOAc:4/1)。
H NMR(500MHz):δ7.73(s,1H,H)、7.30(d,J=9.0Hz,1H,H)、6.82(d,J=9.0Hz,1H,H)、3.15(s,6H,H10)、2.59(s,3H,H)。
13C NMR(125MHz):δ160.1(s,C)、157.5(s,C)、150.2(s,C8a)、139.0(s,C)、132.1(s,C)、121.7(s,C4a)、119.8(s,CN)、118.8(s,C)、117.0(s,C)、92.4(s,C)、44.2(s,C10)、27.4(s,C)。
MS(ESI):m/z=290.0,292.0[M+H]
HRMS(ESI):[C1312BrN+H]に関するm/zの算出値:290.0293、実測値:290.0291(ppm−0.6);292.0272、実測値:292.0277(ppm1.6)。
2)6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−ホルミルキノリン−8−カルボニトリルの調製
【0145】
【化48】

【0146】
ジオキサン(1mL)中の懸濁液における二酸化セレン(50mg、0.45mmol、1.3当量)を60℃で加熱した。その後、6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−メチルキノリン−8−カルボニトリル(100mg、0.34mmol、1.0当量)を投入し、混合物を80℃で3時間反応させた。室温まで冷却した後、混合物をセライトで濾過し、ジオキサンで溶出し、減圧下で濃縮した。粗生成物をエーテルから沈殿させ、6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−ホルミルキノリン−8−カルボニトリルを橙色の粉末として得た(74mg、72%)。
分子式:C1310BrN
分子量:304.14g・mol−1
MS(ESI):m/z=304.0、306.0[M+H]、336.0、338.0[ヘミアセタール+H]
3)6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−(ヒドロキシメチル)キノリン−8−カルボニトリルの調製
【0147】
【化49】

【0148】
6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−ホルミルキノリン−8−カルボニトリル(2.4g、7.9mmol、1.0当量)をMeOH(20mL)に0℃で添加した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(328mg、8.7mmol、1.1当量)を投入し、混合物を室温で1時間撹拌した。溶液を1M HClでクエンチし、エタノールを蒸発させ、水を添加した。溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及びブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−(ヒドロキシメチル)キノリン−8−カルボニトリルを橙色の固体として得た(2.4g、98%)。
分子式:C1312BrN
分子量:306.16g・mol−1
=0.55(シクロヘキサン/EtOAc:1/1)。
H NMR(250MHz):δ8.06(s,1H,H)、7.63(d,J=9.5Hz,1H,H)、7.13(d,J=9.5Hz,1H,H)、4.83(s,2H,H)、3.38(s,6H,H10)。
13C NMR(63MHz):δ158.3(s,C)、156.4(s,C)、148.0(s,C8a)、138.8(s,C)、131.3(s,C)、121.4(s,C)、118.5(s,C4a)、118.2(s,CN)、112.6(s,C)、91.0(s,C)、64.0(s,C)、43.1(s,C10)。
MS(ESI):m/z=306.0,308.0[M+H]
HRMS(ESI):[C1312BrNO+H]に関するm/zの算出値:306.0242、実測値:306.0252(ppm3.3);308.0222、実測値:308.0230(ppm2.8)。
4)6−ブロモ−2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)キノリン−8−カルボニトリルの調製
【0149】
【化50】

【0150】
6−ブロモ−7−ジメチルアミノ−2−(ヒドロキシメチル)キノリン−8−カルボニトリル(2g、6.5mmol、1当量)、TBDMSCl(1.4g、7.3mmol、1.1当量)及びイミダゾール(623mg、7.3mmol、1.1当量)をDMF(20mL)に添加した。得られた溶液を室温で3時間撹拌した後、溶媒を高減圧下で除去した。シクロヘキサンを添加し、混合物を水、その後ブラインで2回洗浄した。その後、有機層をMgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。純粋な状態で生成物を黄色の粉末として得た(1.9g、68%)。
分子式:C1926BrNOSi
分子量:420.42g・mol−1
=0.23(シクロヘキサン/EtOAc:3/1)。
5)2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)−6−(トリメチルシリル)エチニル)キノリン−8−カルボニトリルの調製
【0151】
【化51】

【0152】
封管内に、6−ブロモ−2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)キノリン−8−カルボニトリル(946mg、2.25mmol、1.0当量)、PdCl(PPh(79mg、0.11mmol、5mol%)、ヨウ化銅(21mg、0.11mmol、5mol%)及びトリフェニルホスフィン(106mg、0.39mmol、20mol%)を投入した。その後、DMF(5mL)、続いてジエチルアミン(3.5mL、34mmol、15当量)及びトリメチルシリルアセチレン(350μL、2.5mmol、1.1当量)を添加した。混合物を110℃で一晩加熱した。冷却後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(フロリジル、シクロヘキサン−EtOAc 95:5)によって精製し、2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)−6−(トリメチルシリル)エチニル)キノリン−8−カルボニトリルを白色の固体として得た(700mg、71%)。
分子式:C2435OSi
分子量:437.73g・mol−1
H NMR(500MHz):δ7.95(s,1H,H)、7.65(d,J=9.5Hz,1H,H)、7.03(d,J=9.5Hz,1H,H)、5.00(s,2H,H)、3.28(s,6H,H10)、0.97(s,9H,TBDMS)、0.29(s,9H,TMS)、0.17(s,6H,TBDMS)。
6)2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)−6−エチニルキノリン−8−カルボニトリルの調製
【0153】
【化52】

【0154】
2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)−6−(トリメチルシリル)エチニル)キノリン−8−カルボニトリル(263mg、0.6mmol、1当量)のMeOH溶液(5mL)に、KCO(324mg、2.3mmol、4当量)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去した後、水を添加した。水層をシクロヘキサンで2回抽出した後、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。減圧下での濃縮後、白色の固体を純粋な生成物として得た(189mg、86%)。
分子式:C2127OSi
分子量:365.54g・mol−1
=0.22(シクロヘキサン/EtOAc:4/1)。
H NMR(500MHz):δ8.03(s,1H,H)、7.62(d,J=9.5Hz,1H,H)、7.09(d,J=9.5Hz,1H,H)、5.12(s,2H,H)、3.34(s,6H,H10)、0.97(s,9H,TBDMS)、0.20(s,6H,TBDMS)。
13C NMR(125MHz):δ163.9(s,C)、158.2(s,C)、151.0(s,C8a)、141.6(s,C)、132.8(s,C)、120.6(s,C4a)、119.6(s,C)、119.2(s,CN)、114.1(s,C)、94.1(s,C)、84.2(s,C11)、81.4(s,C12)、67.7(s,C)、44.2(s,C10)、27.4(s,TBDMS)、20.0(s,TBDMS)、−3.6(s,TBDMS)。
7)6,6’,6’’−(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリス(エチン−2,1−ジイル))トリス(2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)キノリン−8−カルボニトリルの調製
【0155】
【化53】

【0156】
封管内に、トリス−パラ−ヨードフェニルアミン(62mg、0.1mmol、1.0当量)、2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)−6−エチニルキノリン−8−カルボニトリル(110mg、0.3mmol、3.0当量)、PdCl(PPh(11mg、0.015mmol、15mol%)、ヨウ化銅(3mg、0.015mmol、15mol%)及びトリフェニルホスフィン(16mg、0.06mmol、60mol%)を投入した。その後、DMF(0.3mL)、続いてジエチルアミン(0.6mL、4.5mmol、45当量)を添加した。混合物を110℃で一晩加熱した。冷却後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、シクロヘキサン−EtOAc 95:5)によって精製し、6,6’,6’’−(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリス(エチン−2,1−ジイル))トリス(2−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−7−(ジメチルアミノ)キノリン−8−カルボニトリルを橙色の油として得た(39mg、29%)。
分子式:C819010Si
分子量:1335.90g・mol−1
H NMR(250MHz):δ8.07(s,3H,H)、7.65(d,J=9.5Hz,3H,H)、7.50(d,J=7.8Hz,6H,H14)、7.14(m,9H,H15)、5.21(s,6H,H)、3.36(s,18H,H10)、0.93(s,27H,TBDMS)、0.22(s,18H,TBDMS)。
光分解実験:
次に、UV条件及びIR条件下での本発明のアシル化トリス−ヘテロアリールアミン化合物の光分解を研究した。トリアセテートエステル及びトリグルタメートエステルを試験した。
【0157】
任意の発色団の光化学効率は、観察される発色団の光化学的事象に特徴的な吸光係数(ε)及び量子収率(Q)によって求められる。これらの数値の積(εQ)は、例えば入射光による蛍光又は化学変換等の事象の効率を特徴づける。分子の2PA能は二光子吸収断面積δによって特徴づけられ、マリア・ゲッパート=メイヤーにちなんだGM単位で表される(1GM=10−50cm・s・photons−1)。εに類似したこの数値(quantum)は、特定の波長及び偏光での2つの光子の同時吸収による分子の励起の可能性を反映する。二光子吸収断面積δと二光子光分解アンケージング断面積(δ)との関係は、
δ=Qu2×δ
(式中、Qu2は二光子光分解量子収率である)によって表される。
【0158】
したがって、1PAと同様に、Qu2×δの積はTPAプロセスの効率を特徴づける。
【0159】
【化54】

【0160】
一光子(UV)照射条件下での本発明の化合物の評価:
トリアセテート試料及びトリグルタメート試料を、水性TRIS緩衝液(pH=7)中、又はアセトニトリル/ブリトン−ロビンソン緩衝液の50/50混合物(pH=7)中、0.1mM濃度で調製した。この溶液のアリコート(1mL)に、1mL石英皿内で、およそ366nm(ε366nm=13700M−1・cm−1、εはモル吸光係数である)で照射した。光分解の進行を、C−18逆相クロマトグラフィを用いたHPLC(XTerra、溶離液:アセトニトリル/メタノール/NHCOH、260nm及び360nmで検出)によって追跡した。
【0161】
7−アミノキナルジン三量体から誘導された本発明のトリアセテート化合物について得られた結果は、以下のとおりである:
90%=48分、
アンケージング量子収率:Q=0.045、及び
変換効率:εQ=616。
二光子(IR)照射条件下での7−アミノキナルジン三量体から誘導された本発明のトリアセテート化合物の評価:
0.1mMの試料を、水性TRIS緩衝液(pH=7)中、又はアセトニトリル/TRISの混合物(50/50)中で調製し、45μL石英皿内で以下のように照射した。二光子光分解を、720nmに設定した、80MHzの繰り返し率で100fsのパルスを生成するチタンサファイアレーザー(Ti:Sa;Mai Tai、Spectra Physics, Inc.、USA)を用いて行った。レーザー光を皿上の直径30μmのスポットに対する50mmレンズ(LEICA)によって、直径およそ900nmのスポットに強く集束させた。二光子パターニング実験に用いたレーザー波長は720nmであった。この波長での対物面における最大時間平均レーザー出力は約90mW〜100mWであった(およそ1.3nJのパルスエネルギーに相当する)。脱保護に対する二光子アンケージングの影響を研究するために、総曝露時間及び適用レーザー出力の両方を変化させた。
【0162】
本発明の化合物について得られた結果は以下のとおりである:
δ=0.12GM、及び
δ=2.7GM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

(式中、
n=0又は1、
Aは炭素原子、窒素原子、リン原子又はヒ素原子を表し、
Xは、Aとキノリン基との間の直接単結合;アルキン基−C≡C−;アルケン基−(R)C=C(R’)−(ここで、R及びR’(同一であるか又は異なる)は水素原子、1個〜30個の炭素原子を含有する必要に応じて置換された線状又は分岐のアルキル基又はアルコキシ基を表す);5個〜18個の原子を含有する必要に応じて置換されたアリール基又はヘテロアリール基;6個〜18個の原子を含有する必要に応じて置換されたアラルキル基、アラルケン基又はアラルキン基を表し、
、R’、R’’、R、R’、R’’、R、R’、R’’、R、R’及びR’’(同一であるか又は異なる)は水素原子又はハロゲン原子、アミン基、ニトリル基又はニトロ基、1個〜30個の炭素原子を含有する必要に応じて置換された線状又は分岐のアルキル基又はアルコキシ基を表し、
Y、Y’及びY’’(同一であるか又は異なる)はハロゲン原子、ヒドロキシル基、アジド基、カルボキシレート基−O(O)CR’’’、カーボネート基−O(O)COR’’’、カルバメート基−O(O)CNR’’’、ホスフェート基−OP(O)(OR’’’)(OR’’’’)又はホスホネート基−OP(O)(OR’’’)(OR’’’’)(ここでR’’’及びR’’’’(同一であるか又は異なる)は水素原子、必要に応じてアミノ基、アミド基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、ニトリル基又はニトロ基から独立して選択される1つ又は複数の基で置換され、必要に応じて1つ又は複数のエーテル架橋、エステル架橋、アミノ架橋、アミド架橋を含む1個〜30個の炭素原子を含有する線状又は分岐のアルキル基を表す)を表す)に対する応答性があることを特徴とする化合物。
【請求項2】
Aが窒素原子を表すことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがAとキノリン基との間の直接単結合、アルキン基−C≡C−又は
【化2】

基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Y、Y’及びY’’(同一であるか又は異なる)が以下の群:−OH、−N、−Br、−Cl、−OC(O)CH、−OC(O)CHCHCH(NH)COOH、−OC(O)CH(NH)CHCHCOOH、−OC(O)NH、−OC(O)CHCHCHNHの中から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
以下の式:
【化3】

の内の1つに対する応答性があることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
以下の式:
【化4】


の内の1つに対する応答性があることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
以下のもの:
【化5】



から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を合成する方法であって、以下の工程:
(i)必要に応じて置換されたブロモアニリンをブロモキナルジンに変換する工程と、
(ii)銅及びL−プロリンの存在下での工程(i)で得られたブロモキナルジンのアミノ化工程と、
(iii)工程(ii)で得られたアミノキナルジンと2当量のブロモキナルジンとの間の反応と、
(iv)酸化工程、その後の還元工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を合成する方法。
【請求項9】
少なくとも1つの請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする水溶液。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物が、10−5mol・L−1〜10−1mol・L−1の範囲の濃度で存在することを特徴とする、請求項9に記載の水溶液。
【請求項11】
6〜8のpHを有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の水溶液。
【請求項12】
Y−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−OH化合物を遊離させる方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物に照射する工程を含むことを特徴とする、Y−H化合物、Y’−H化合物及び/又はY’’−OH化合物を遊離させる方法。
【請求項13】
前記照射する工程を600nm〜1000nmの範囲の波長、好ましくは650nm〜800nmの範囲の波長で行うことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式Y−H、Y’−H及び/又はY’’−Hの治療上の関心が持たれる生物学的及び/又は生理学的に活性のある物質のベクトル化若しくは薬剤送達での使用のための請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物又は請求項9〜11のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項15】
マイクロチャネル、マイクロポンプ、カンチレバー、プラズモンデバイス及びフォトニック結晶の中から選ばれる三次元(3D)微細構造を作製するための請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物又は請求項9〜11のいずれか一項に記載の水溶液の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517222(P2013−517222A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547565(P2012−547565)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000207
【国際公開番号】WO2011/086469
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】