説明

多周波用モノポールアンテナ

【課題】インピーダンスマッチングを容易に行うことが可能で、コンパクトな多周波用モノポールアンテナを提供する。
【解決手段】多周波用モノポールアンテナ50は、複数の周波数帯のうち、所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数f1の波長に応じて設定された長さからなる棒状体で構成されている第1放射導体部1と、当該第1放射導体部1と一体に接続されると共に、給電部から最も遠い位置となる最遠点までの直線距離が、複数の周波数帯のうち、第1周波数帯f1と異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数f2の波長に応じて設定された長さからなる板状体で構成され、給電部から最遠点まで至る板状体の外縁部の一部が切り取られている第2放射導体部2と、からなり、給電部は、第1放射導体部1の先端の位置に対して、第1周波数f1の波長に応じて設定された長さに基づく位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯において信号の送受信が可能な多周波用モノポールアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の周波数帯において信号の送受信を行うことが可能なアンテナが利用されている。この種のアンテナとして、下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の多周波共用アンテナ装置は、複数のモノポールアンテナを備えて構成される。これらのモノポールアンテナは、ストリップ導体を介して基板の一方の面に設けられ、基板の他方の面には地板が設けられる。これにより、ストリップ導体と基板と地板とによりマイクロストリップラインが形成され、当該マイクロストリップラインを介して夫々のモノポールアンテナに給電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−306436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の多周波共用アンテナ装置にあっては、ストリップ導体は、当該ストリップ導体の全長を共振周波数の波長の1/2程度とするためにメアンダ状に折り返して形成される。ストリップ導体と当該ストリップ導体に接続される同軸ケーブルとの間には、インピーダンスマッチングを行うためにインピーダンス変換器が備えられる。このようなインピーダンス変換器の設定は複雑なものであり、設計開発に手間を要する。また、メアンダ状にすることで面積が広くなるためアンテナ装置としてのサイズも大きくなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、インピーダンスマッチングを容易に行うことが可能で、コンパクトな多周波用モノポールアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る多周波用モノポールアンテナの特徴構成は、複数の周波数帯のうち、所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数の波長に応じて設定された長さからなる棒状体で構成されている第1放射導体部と、前記第1放射導体部と一体に接続されると共に、給電部から最も遠い位置となる最遠点までの直線距離が、前記複数の周波数帯のうち、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数の波長に応じて設定された長さからなる板状体で構成されている第2放射導体部と、からなり、前記給電部は、前記第1放射導体部の先端の位置に対して、前記第1周波数の波長に応じて設定された長さに基づく位置に設けられる点にある。
【0007】
このような特徴構成とすれば、第1放射導体部で、複数の周波数帯のうちの1つの周波数帯における信号の送受信を行うことができ、第2放射導体部で、別の周波数帯における信号の送受信を行うことができる。また、第1放射導体部及び第2放射導体部と対を成す接地導体部を備える必要が無いので、多周波用モノポールアンテナをコンパクトに形成することができる。更に、第2放射導体部の形状に応じて当該第2放射導体部のリアクタンス成分を調整することができる。このため、インピーダンスマッチングを容易に行うことができる。したがって、インピーダンス変換部を備える必要がないので、低コストで多周波用モノポールアンテナを構成することができる。
【0008】
また、前記給電部は、前記第2放射導体部に設けられていると好適である。
【0009】
このような構成とすれば、第2周波数の波長に応じた電気長を第2放射導体部のみで設定することができる。
【0010】
また、前記第2放射導体部は、前記給電部から前記最遠点まで至る前記板状体の外縁部の一部が切り取られていると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、第2放射導体部の一部を切り取ることで、第2放射導体部のリアクタンス成分を調整することができる。このため、インピーダンスマッチングを容易に行うことができる。したがって、インピーダンス変換部を備える必要がないので、低コストで多周波用モノポールアンテナを構成することができる。
【0012】
また、前記第1周波数帯は、前記複数の周波数帯のうち、最も低い周波数帯であると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、第2放射導体のサイズを小さくすることができるので、多周波用モノポールアンテナをコンパクトに形成することが可能となる。
【0014】
また、前記第2放射導体部に、前記給電部と前記最遠点とを結ぶ線を横切る開口部が形成されていると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、第2放射導体部に、給電部と最遠点とを直接、結ぶ線の長さを電気長とするアンテナエレメントと、給電部から開口部の端部を介して最遠点まで結ぶ線の長さを電気長とするアンテナエレメントとを形成することができる。したがって、第2放射導体部で複数の周波数帯における信号の送受信を行うことが可能となる。
【0016】
また、前記開口部は、スリットで構成することが可能である。
【0017】
このような構成とすれば、例えば第2放射導体部をプレス等の打ち抜き加工により形成する場合に、第2放射導体部の形成と同時に開口部を形成することができる。したがって、製造コストを低減できる。
【0018】
また、前記第2放射導体部は、矩形断面における1つの角部を含む直角三角形を切り落とした五角形断面を有する板状体で構成され、前記切り取られて露出した外縁部が前記切り落として露出した斜辺部であると好適である。
【0019】
このような構成とすれば、例えば薄い鉄板からの打ち抜き加工で第2放射導体部を形成することが可能である。したがって、インピーダンスマッチングが行えている第2放射導体部を容易に形成することができる。
【0020】
また、前記第1放射導体部と接続される前記第2放射導体部の接続部が前記斜辺部に対向する角部に設けられ、前記給電部が前記斜辺部に隣接する2つの辺部のうちの一方の辺部に設けられるように構成することが可能である。
【0021】
このような構成とすれば、給電部と接続部とを離間させることができる。したがって、給電部から接続部までの長さを含めて第1放射導体部の電気長を構成することができる。
【0022】
或いは、前記第1放射導体部と接続される前記第2放射導体部の接続部が前記斜辺部に対向する角部を挟む2つの辺部のうちの一方の辺部に設けられ、前記給電部が前記2つの辺部のうちの他方の辺部と前記斜辺部とで挟まれる辺部に設けられるように構成することも可能である。
【0023】
このような構成であっても、給電部と接続部とを離間させることができる。したがって、給電部から接続部までの長さを含めて第1放射導体部の電気長を構成することができる。
【0024】
また、前記第2放射導体部は当該第2放射導体の一部を切り欠いて形成された切欠部を有し、前記給電部が前記切欠部の縁部に設けられていると好適である。
【0025】
このような構成とすれば、第2放射導体部のリアクタンス成分を変更することができるので、インピーダンスマッチングを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】多周波用モノポールアンテナの概念を模式的に示した図である。
【図2】多周波用モノポールアンテナの各部の構成を模式的に示した図である。
【図3】多周波用モノポールアンテナの放射パターンを示す図である。
【図4】多周波用モノポールアンテナの電圧定在波比特性を示す図である。
【図5】多周波用モノポールアンテナを自動車に装備した例を示す斜視図である。
【図6】切欠部について示す図である。
【図7】その他の実施形態に係る多周波用モノポールアンテナについて示した図である。
【図8】その他の実施形態に係る第2放射導体部について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。ただし、各図における寸法は考慮せずに示している。図1は本発明に係る多周波用モノポールアンテナ50の概念を模式的に示した図である。本多周波用モノポールアンテナ50は、複数の周波数帯の信号を送受信する機能を備えている。本実施形態では、複数の周波数帯が720MHz帯と2.45GHz帯と5.8GHz帯との3つの周波数帯であるとして説明する。
【0028】
図1に示されるように、多周波用モノポールアンテナ50は第1放射導体部1と第2放射導体部2とを備えて構成される。図1の左上図に示されるように、第1放射導体部1と第2放射導体部2とで電気長L1が規定され、図1の右上図及び右下図に示されるように、第2放射導体部2で電気長L2及び電気長L3が規定される。詳細は後述するが、第2放射導体部2には所定の幅からなる開口部25が形成される。電気長L2は開口部25を飛び超えて規定され、電気長L3は開口部25を迂回して規定される。
【0029】
電気長L1は、720MHz帯に含まれる周波数に応じて設定される。また、電気長L2は、5.8GHz帯に含まれる周波数に応じて設定される。更に、電気長L3は、2.45GHz帯に含まれる周波数に応じて設定される。多周波用モノポールアンテナ50は、これらの電気長L1,L2,L3を有して構成されるので、3つの周波数帯の信号の送受信を行うことが可能となる。
【0030】
図2は、多周波用モノポールアンテナ50の各部の構成を模式的に示した図である。図2に示されるように、第1放射導体部1は、複数の周波数帯のうち、所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数の波長に応じて設定された長さからなる棒状体で構成される。複数の周波数帯とは、本実施形態では3つの周波数帯である。また、本実施形態では、所定の第1周波数帯とは、3つの周波数体のうち、最も低い周波数帯が相当する。したがって、第1周波数帯は720MHz帯が相当する。720MHz帯は例えば720MHzを中心周波数として±10%程度の範囲で設定される。このため、理解を容易にするために、第1周波数f1は720MHzであるとして説明する。
【0031】
また、第1放射導体部1は、第1周波数f1の波長λ1に応じた長さの棒状体で構成される。すなわち、第1放射導体部1の棒状体の先端部1aから後述する第2放射導体部2に設けられる給電点22までの長さが、第1周波数f1の波長λ1に応じた電気長L1となるように構成される。本実施形態では、電気長L1はλ1/4として設定される。このため、第1放射導体部1は、当該第1放射導体部1を構成する棒状体の先端部1aから後述する第2放射導体部2に設けられる給電点22までの長さが約105mmになるように構成される。このような第1放射導体部1は、多周波用モノポールアンテナのアンテナエレメントを構成する。
【0032】
第2放射導体部2は、上述の第1放射導体部1と共に、多周波用モノポールアンテナのアンテナエレメントを構成し、板状体で構成される。本実施形態では、第2放射導体部2は、矩形断面における1つの角部を含む直角三角形を切り落とした五角形断面を有する板状体で構成される。このような第2放射導体部2は、接続部21と給電部22と切取部23とを有して構成される。接続部21は、第2放射導体部2が第1放射導体部1に接続される部分である。ここで、第1放射導体部1は、上述のように棒状体で構成される。このような棒状体の一方の端部に、第2放射導体部2の接続部21が電気的に接続される。電気的に接続されるとは、第1放射導体部1と第2放射導体部2とが接続された状態で導電性があり、理想的には第1放射導体部1と第2放射導体部2とが接続インピーダンスが0Ωで接続されている状態を示す。このような接続部21は、本実施形態では、詳細は後述するが、第2放射導体部2を構成する五角形断面の外縁部分における、前記直角三角形を切り落とした部分に対向する角部30に設けられる。
【0033】
給電部22は、第1放射導体部1及び第2放射導体部2の双方に通電する通電端子に相当する。ここで、本多周波用モノポールアンテナ50は、モノポールアンテナである。したがって、多周波用モノポールアンテナ50のアンテナエレメント(第1放射導体部1及び第2放射導体部2)と対をなす接地導体は備えられていない。詳細は後述するが、接地導体は多周波用モノポールアンテナ50が備えられる金属導体が相当する。このような給電部22は、接続部21から離間して、第2放射導体部2を構成する板状体の外縁部に設けられる。本実施形態では、給電部22は、第1放射導体部1の先端の位置に対して、第1周波数f1の波長λ1に応じて設定された位置に設けられる。すなわち、給電部22は、第1放射導体部1を構成する棒状体の先端部1aから当該給電点22までの長さが上述の約105mmになる位置に設けられる。
【0034】
切取部23は、給電部22から最遠点24まで至る板状体の外縁部の一部が切り取られた部分である。ここで、最遠点24とは、第2放射導体部2を構成する板状体において、給電部22から最も遠い位置が相当する。本実施形態では、第2放射導体部2は、五角形断面で形成される。このため、最遠点24は五角形断面の外縁部分に設けられる。したがって、給電部22から最遠点24まで至る板状体の外縁部とは、給電部22と最遠点24との間の五角形断面の外縁部分が相当する。切取部23は、このような外縁部分の一部を切り取って構成され、切り取られて露出した外縁部は、矩形断面からその1つの直角部を含む直角三角形を切り落として露出した斜辺部に相当する。以下では、斜辺部に符号23を付して説明する。
【0035】
本実施形態では、第1放射導体部1に一体に接続される第2放射導体部2の接続部21が斜辺部23に対向する角部30に設けられる。斜辺部23に対向する角部30とは、五角形断面が有する5つの頂点のうち、斜辺部23に隣接する2つの辺41,42の夫々に接していない頂点が相当する。
【0036】
給電部22は、斜辺部23に隣接する2つの辺部のうちの一方の辺部に設けられる。本実施形態では、2つの辺部とは、辺部41,42であり、一方の辺部は辺部41が相当する。
【0037】
第2放射導体部2は、給電部22から最遠点24までの直線距離が、複数の周波数帯のうち、第1周波数帯と異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数の波長に応じて設定された長さから板状体で構成される。複数の周波数帯とは、3つの周波数帯である。本実施形態では、第2周波数帯は、5.8GHz帯が相当する(図1参照)。5.8GHz帯は、例えば5.8GHzを中心周波数として±10%程度の範囲で設定される。このため、理解を容易にするために、第2周波数f2は5.8GHzであるとして説明する。
【0038】
また、給電部22から最遠点24までの直線距離が、第2放射導体部2のアンテナエレメントとしての電気長L2に相当する。このような第2放射導体部2は、当該第2放射導体部2のみでモノポールアンテナとして機能させることも可能である。特に、本実施形態では、電気長L2はλ2/4として設定される。係る場合、電気長L2は約30mmとして設定される。
【0039】
また、本実施形態では、第2放射導体部2に開口部25が形成される。開口部25は、給電部22と最遠点24とを結ぶ線を横切るように形成される。給電部22と最遠点24とを結ぶ線とは、上述の第2放射導体部2の電気長L2に沿った線に相当する。本実施形態では、開口部25は、延設部25aと直交部25bとを有して構成される。延設部25aは、斜辺部23から延設して設けられる。直交部25bは、延設部25aの先端部(斜辺部23に接しない側の端部)から辺44の側に直交するように折り曲げられて設けられる。これらの延設部25a及び直交部25bは、一定の幅で形成される。したがって、本実施形態では、開口部25はスリットで形成される。開口部25が給電部22と最遠点24とを結ぶ線を横切るとは、開口部25と給電部22と最遠点24とを結ぶ線とが交差している状態をいう。本実施形態では、直交部25と、給電部22と最遠点24とを結ぶ線と、が交差するように構成される。
【0040】
ここで、アンテナ内においては、信号は、その周波数が低い場合にはアンテナを構成する導体部を伝搬する。一方、信号の周波数が高くなれば、少々の開口部を飛び越えて伝搬する。このような伝搬する形態は、信号の周波数と開口部の幅に応じて定まる。本実施形態では、開口部25の幅は、第2周波数帯の信号は飛び越えることができるが、後述する第3周波数帯の信号は飛び越えることができない程度の幅で形成される。
【0041】
これにより、第2放射導体部2は、複数の周波数帯のうち、第1周波数帯より高く第2周波数帯より低い、第3周波数帯に含まれる第3周波数の波長に応じた電気長を有して構成することが可能となる。複数の周波数帯とは、3つの周波数帯である。本実施形態では、第3周波数帯は、2.45GHz帯が相当する。2.45GHz帯は、例えば2.45GHzを中心周波数として±10%程度の範囲で設定される。このため、理解を容易にするために、第3周波数f3は2.45GHzであるとして説明する。
【0042】
ここで、第3周波数f3の波長λ3に応じた電気長は、符号L3を付して示される(図1参照)。特に、本実施形態では、電気長L3はλ3/4として設定される。係る場合、電気長L3は、給電部22から開口部25に沿った第2放射導体部2において最も遠い位置となる最遠点24との間の長さに相当し、約30mmとして設定される。
【0043】
図3は、本実施形態における多周波用モノポールアンテナ50の指向性が示される。図3(a)は720MHzにおける指向性であり、図3(b)は2.45GHzにおける指向性であり、図3(c)は5.8GHzにおける指向性である。指向性の方向は、図3(d)に示されるとおりである。図3(a)−(c)から明らかなように、X−Y平面を水平面とした場合には、多周波用モノポールアンテナ50の指向性を示すパターンの形状が少し歪んでいるものの、その歪み量はパターン全体形状からすると比較的小さく、水平方向で指向性に殆ど偏りがなく、広帯域に対応していることが理解できる。
【0044】
また、図4には、多周波用モノポールアンテナ50における周波数−電圧定在波比(VSWR)特性の実測データが示されている。この多周波用モノポールアンテナ50が、実測データから、アンテナ機能として所望する周波数である720MHz、2.45GHz、5.8GHzに関してVSWR2.0以下となっており、所望する周波数帯で利用可能な多周波用モノポールアンテナ50が実現している。なお、図4での実測データから、5GHz帯以上は広帯域特性を有することが示されている。このように、本多周波用モノポールアンテナ50は、複数の周波数帯で適切に利用することができる。
【0045】
次に、多周波用モノポールアンテナ50の好適な実施形態について説明する。図5は、このような多周波用モノポールアンテナ50を、樹脂でできたケース内に封入し、自動車のボディに装備した状態を示す斜視図である。ここで、第1放射導体部1と第2放射導体部2とは、導体薄板からの一体的な打ち抜き加工品で構成される。このような導体薄板は、例えば厚さが1mm以下の鉄板を打ち抜いて加工することができる。このように構成することにより、第1放射導体部1及び第2放射導体部2のサイズを精度良く加工することができる。一方、厚さが1mm以下であるので折り曲げ強度が比較的弱くなる。このため、打ち抜き加工により形成された第1放射導体部1及び第2放射導体部2は、図5に示されるように、例えば樹脂内に封入される。これにより、折り曲げ強度を高めることができる。
【0046】
また、図5に示されるように、多周波用モノポールアンテナ50は車両のボディに装備される。この際、車両のボディが、モノポールアンテナと対をなす接地導体として利用される。このため、多周波用モノポールアンテナ50の接地線をボディに接続すると好適である。図5に示されるように、第1放射導体部1を鉛直方向に対して傾けて、第2放射導体部2と接続することも可能である。
【0047】
このような多周波用モノポールアンテナ50によれば、第1放射導体部1で、複数の周波数帯のうちの1つの周波数帯における信号の送受信を行うことができ、第2放射導体部2で、別の周波数帯における信号の送受信を行うことができる。また、第1放射導体部1及び第2放射導体部2と対を成す接地導体部を備える必要が無いので、多周波用モノポールアンテナ50をコンパクトに形成することができる。更に、第2放射導体部2の一部を切り取ることで、第2放射導体部2のリアクタンス成分を調整することができる。このため、インピーダンスマッチングを容易に行うことができる。したがって、インピーダンス変換部を備える必要がないので、低コストで多周波用モノポールアンテナ50を構成することができる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第1放射導体部1と第2放射導体部2とは、導体薄板からの一体的な打ち抜き加工品で構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、第1放射導体部1及び第2放射導体部2をプリント基板上に形成された導体層とすることも可能である。このように、プリント基板を用いて構成することにより、インダクタンス成分が増えるので、夫々の電気長(L1,L2,L3)を短くすることができる。したがって、多周波用モノポールアンテナ50をコンパクトに形成することが可能となる。
【0049】
上記実施形態では、第1周波数帯は、複数の周波数帯のうち、最も低い周波数帯であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第1周波数帯を、最も低い周波数帯以外とすることも当然に可能である。係る場合でも、第1放射導体部1を対象となる周波数帯の周波数の波長に応じた電気長に設定することで、第2放射導体部2と共に、多周波用モノポールアンテナ50を構成することが可能である。
【0050】
上記実施形態では、第2放射導体部2に、給電部21と当該給電部21から第2放射導体部2においても最も遠い位置となる最遠点24とを結ぶ線を横切る開口部25が形成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。開口部25を形成せずに第2放射導体部2を構成することも当然に可能である。係る場合でも、第1放射導体部1及び第2放射導体部2により、複数の周波数帯の信号の送受信を行うことが可能である。
【0051】
上記実施形態では、第2放射導体部2が五角形断面を有する面状で形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第2放射導体部2を五角形断面以外の形状で形成することも当然に可能である。
【0052】
上記実施形態では、面取部23が、五角形断面の斜辺部に相当するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。面取部23を、五角形断面の斜辺部以外の辺に形成することも当然に可能である。係る場合でも、第2放射導体部2のリアクタンス成分を調整することは当然に可能である。
【0053】
上記実施形態では、接続部24が斜辺部23に対向する角部30に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、接続部21が斜辺部23に対向する角部30を挟む2つの辺部43,44のうちの一方の辺部43に設けられ、給電部22が2つの辺部43,44のうちの他方の辺部44と斜辺部23とで挟まれる辺部41に設けられるように構成することも当然に可能である。或いは、接続部21が斜辺部23に対向する角部30を挟む2つの辺部43,44のうちの他方の辺部44に設けられ、給電部22を2つの辺部43,44のうちの一方の辺部43と斜辺部23とで挟まれる辺部42に設けることも当然に可能である。更には、接続部21が斜辺部23に対向する角部30を挟む2つの辺部43,44のうちの一方の辺部43に設けられ、給電部22を2つの辺部43,44のうちの一方の辺部43と斜辺部23とで挟まれる辺部42に設けることも当然に可能である。
【0054】
上記実施形態では、給電部22は、五角形断面の外縁部に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、五角形断面以外で形成することも可能である。
【0055】
上記実施形態では、複数の周波数帯が720MHz帯と2.45GHz帯と5.8GHz帯との3つの周波数帯であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。夫々の周波数帯は、一例であり、他の周波数帯に設定することは当然に可能である。
【0056】
上記実施形態では、各アンテナエレメントの電気長が、各周波数帯の中心周波数で設定されるとして説明した。しかしながら、本発明に適用範囲はこれに限定されるものではない。各周波数帯の中心周波数からずれた周波数に応じて電気長を設定することも当然に可能である。
【0057】
上記実施形態では、給電部22は、五角形断面の外縁部に接するように、即ち、辺41に接するように形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示されるように、第2放射導体部2が、当該第2放射導体部2の一部を切り欠いて形成された切欠部60を有しても良い。係る場合には、切欠部60の縁部に給電部22を設けることができる。したがって、切欠部60により、第1放射導体部1及び第2放射導体部2の電気長を変更すると共に、第2放射導体部2のリアクタンス成分を調整することができるので、インピーダンスマッチングを適切に行うことが可能となる。
【0058】
上記実施形態では、多周波用モノポールアンテナ50の第1放射導体部1と第2放射導体部2とが打ち抜き加工で形成され、樹脂内に封入して形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。図7に示されるように、第1放射導体部1をステンレスの棒で形成し、第2放射導体部2を封入した土台部に接合して形成することも可能である。
【0059】
上記実施形態では、開口部25は延設部25aと直交部25bとを有して構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。開口部25は、給電部22と最遠点24とを結ぶ線と交差すれば、延設部25aのみで設けることも可能であるし、円弧状に形成しても良い。また、直線と円弧とを組み合わせて開口部25を形成しても良い。更には、第2放射導体部2の外縁部に接していなくても良い。いずれの場合であっても、第1周波数帯及び第2周波数帯と異なる周波数帯に含まれる周波数の波長に応じた電気長を形成することが可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、第2放射導体部2は、開口部25を1つだけ備えているように図示した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。第2放射導体部2に、複数の開口部25を備えるように構成することも当然に可能である。図8には、2つの開口部26,27を備えている例が示される。このような開口部26,27は、互いに異なる幅を有して構成することが可能である。図8の例では、開口部26の幅より開口部27の幅の方が広く構成されている。係る場合には、図示はしないが、双方の開口部26,27を飛び越える周波数帯(上述の第2周波数帯に相当)と、図8(a)に示されるような一方の開口部26を飛び越える周波数帯(上述の第3周波数帯に相当)と、双方の開口部26,27を飛び越えない周波数帯(例えば電気長L4に対応する第4周波数帯)の少なくとも3つの周波数帯を、第2放射導体部2で設定することが可能である。もちろん、3つ以上の開口部25を構成して電気長を規定することにより、更に多くの周波数帯に対応させることが可能である。
【0061】
本発明は、複数の周波数帯において信号の送受信が可能な多周波用モノポールアンテナに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:第1放射導体部
2:第2放射導体部
21:接続部
22:給電部
23:切取部、斜辺部
24:最遠点
25:開口部
30:角部
41〜44:辺部
50:多周波用モノポールアンテナ
60:切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯のうち、所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数の波長に応じて設定された長さからなる棒状体で構成されている第1放射導体部と、
前記第1放射導体部と一体に接続されると共に、給電部から最も遠い位置となる最遠点までの直線距離が、前記複数の周波数帯のうち、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数の波長に応じて設定された長さからなる板状体で構成されている第2放射導体部と、からなり、
前記給電部は、前記第1放射導体部の先端の位置に対して、前記第1周波数の波長に応じて設定された長さに基づく位置に設けられる多周波用モノポールアンテナ。
【請求項2】
前記給電部は、前記第2放射導体部に設けられている請求項1に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項3】
前記第2放射導体部は、前記給電部から前記最遠点まで至る前記板状体の外縁部の一部が切り取られている請求項1又は2に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項4】
前記第1周波数帯は、前記複数の周波数帯のうち、最も低い周波数帯である請求項1から3のいずれか一項に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項5】
前記第2放射導体部に、前記給電部と前記最遠点とを結ぶ線を横切る開口部が形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項6】
前記開口部は、スリットである請求項5に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項7】
前記第2放射導体部は、矩形断面における1つの角部を含む直角三角形を切り落とした五角形断面を有する板状体で構成され、前記切り取られて露出した外縁部が前記切り落として露出した斜辺部である請求項3に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項8】
前記第1放射導体部と接続される前記第2放射導体部の接続部が前記斜辺部に対向する角部に設けられ、前記給電部が前記斜辺部に隣接する2つの辺部のうちの一方の辺部に設けられる請求項7に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項9】
前記第1放射導体部と接続される前記第2放射導体部の接続部が前記斜辺部に対向する角部を挟む2つの辺部のうちの一方の辺部に設けられ、前記給電部が前記2つの辺部のうちの他方の辺部と前記斜辺部とで挟まれる辺部に設けられる請求項7に記載の多周波用モノポールアンテナ。
【請求項10】
前記第2放射導体部は当該第2放射導体の一部を切り欠いて形成された切欠部を有し、前記給電部が前記切欠部の縁部に設けられている請求項1から9のいずれか一項に記載の多周波用モノポールアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134739(P2012−134739A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284693(P2010−284693)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)