説明

多孔性材料の迅速な完全性試験

【課題】迅速な多孔性材料の完全性試験の方法を提供すること。
【解決手段】a)液体により多孔性材料を湿らせること;b)多孔性材料の第一の表面をキャリアおよび検出可能な物質を含んだ混合物と接触させること;c)キャリアおよび検出可能な物質の少なくとも一部が多孔性材料を透過するように多孔性材料の第一の表面に圧力をかけること;d)c)の圧力をかけ続ける一方で、多孔性材料の透過物中に見出されるキャリアおよび検出可能な物質を一定体積で透過側で再循環させ、e)経時的に、多孔性材料の透過物中の検出可能な物質の濃度を測定することを含む完全性試験の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は妥当性確認試験の分野、具体的には、多孔性材料の完全性試験に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性材料は、例えば工業製品や原料物質の選別(フィルタリング)、包装、収容、輸送などの製造工程を含めた広く多様な産業分野で重要な役割を果たしている。それらが使用される産業環境としては、ほんの僅か例を挙げるとすると、製薬およびバイオテクノロジー産業;石油およびガス産業、ならびに、食品加工および包装産業などが含まれる。
【0003】
製薬およびバイオテクノロジー産業と食品加工業のようなこれらの産業のいくつかで、多孔性材料(例えば膜)は、市場向きの最終製品には好ましくなく潜在的に有害な汚染物質を除去する濾過装置として使用できる。品質管理と品質保証のために、これらの濾過装置が、必要な性能基準に適合することを要求する。完全性試験は、特定の装置が必要な性能基準に適合させるための手段を提供する。典型的には、膜の場合、完全性試験は、好ましいサイズ制限を上回っていることなどにより膜の機能が損なわれ、さらに最終製品が有害材料または好ましくない材料で汚染されてしまう膜の欠陥、を生じないようにする。
【0004】
膜(例えば濾過装置)の性能基準をクリアするのに適した様々な完全性試験が、従来から、開示されている。これらは、粒子試験(particle challenge test)、液体−液体ポロメトリー試験(liquid-liquid porometry test)、泡立ち点試験(bubble point test)、気体水分拡散試験(air-water diffusion test)、および拡散テストを含む(例えば、米国特許第6983505号明細書、米国特許第6568282号明細書、米国特許第5457986号明細書、米国特許第5282380号明細書、米国特許第5581017号明細書; Phillips および Dileo, 1996, Biologicals 24:243; Knight および Badenhop, 1990, 8th Annual Membrane Planning Conference, Newton, MA; Badenhop; Meltzer および Jorritz, 1998, Filtration in the Biopharmaceutical Industry, Marcel Dekkar, Inc., New York, N.Y.参照)。さらに、膜の完全性の試験に適した多くの機器も開示されている(例えば、米国特許第4701861号明細書、米国特許第6907770号明細書、米国特許第4881176号明細書参照)。
【0005】
従来の完全性試験は、かなりの欠点がある。たとえば、粒子試験(the particle challenge test)は、破壊的であり、従って、所定サンプルで、試験は一度しか行うことができない。それは、サンプルの使用後の完全性試験には適用できるが、生産ロットの性能の確認を除いて、使用前の確認には適してない。しかしながら、ロットの確認試験は、ロット生産の中で個々の膜の完全性に関し、ほとんど保証がない。さらに、テスト手順および分析が、難しく、複雑である。
【0006】
サンプルの破壊を必要としない多孔性材料の完全性試験の1つの方法として、流れに基づく試験(フローベーステスト;flow based test)がある。これは、個々のサンプルの繰り返し試験を可能とした。試験は、サンプルの使用前、一回の使用後、二回以上の使用後に行って良い。しかしながら、流れに基づく試験(フローベーステスト;flow based test)は、その感度(例えば膜欠陥検出のサイズ制限)の点、で制限がある。特定の流れに基づく試験(フローベーステスト;flow based test)は、非常に扱いにくい検出方法のその信頼性に、さらに制限がある。さらに、いくつかの流れに基づく試験(フローベーステスト;flow based test)は、試験の開始前に、定常状態を保つことが必要となる。これらの試験は、比較的遅く、また、高価で環境的に不適切な試薬を消費する点で効果的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6983505号明細書
【特許文献2】米国特許第6568282号明細書
【特許文献3】米国特許第5457986号明細書
【特許文献4】米国特許第5282380号明細書
【特許文献5】米国特許第5581017号明細書
【特許文献6】米国特許第4701861号明細書
【特許文献7】米国特許第6907770号明細書
【特許文献8】米国特許第4881176号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Phillips および Dileo, 1996, Biologicals 24:243
【非特許文献2】Knight および Badenhop, 1990, 8th Annual Membrane Planning Conference, Newton, MA
【非特許文献3】Badenhop; Meltzer および Jorritz, 1998, Filtration in the Biopharmaceutical Industry, Marcel Dekkar, Inc., New York, N.Y.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、例えば、単層あるいは複層の装置(例えば、膜を含んだ装置)の両方を含んだ、あらゆる多孔体材料に適した完全性試験が必要である。試験は迅速で、感度が高く、非破壊性で、低廉で、実行が簡単であるべきである。また、試験による高価な試薬の消費を最小限にすべきである。欠陥を有することで多孔性材料の必要な性能基準から外れるのか、または、その欠陥が性能基準と関係ないのかを決定するために、サイズと密度など欠陥の特性を表すことも、また、有用である。そのような試験を実行できる装置とシステムもまた、必要である。ここでは、このような要求を満たす、本発明の具体的な実施例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある実施例においては、本発明は、a)液体により多孔性材料を湿らせること;b)多孔性材料の第一の表面をキャリアおよび検出可能な物質を含んだ混合物と接触させること;c)キャリアおよび検出可能な物質の少なくとも一部が多孔性材料を透過するように多孔性材料の第一の表面に圧力をかけること;d)c)の圧力をかけ続ける一方で、多孔性材料の透過物中のb)の混合物を一定体積で透過側で再循環させ、e)経時的に、多孔性材料の透過物中の検出可能な物質の濃度を測定することを含む、多孔性材料の完全性を評価する方法を、提供する。試験は、f)完全性を有する多孔性材料の透過物中の検出可能な物質の濃度とe)の測定濃度を比較し、完全性を有する多孔性材料の透過物中のフッ化炭素の濃度を超えるe)の測定濃度により多孔性材料が完全ではないということを示す付加的なステップを、任意に、含んでも良い。完全性を有するとは、多孔性材料に使用された時、欠陥がないということを意味する。
【0011】
別の実施例においては、本発明は、a)液体により多孔性材料を湿らせること;b)多孔性材料の第一の表面を、圧縮空気とフッ化炭素を含んだ混合物が形成されるように圧縮空気とフッ化炭素に接触させること;c)キャリアおよびフッ化炭素の少なくとも一部が多孔性材料を透過するように多孔性材料の第一の表面に圧力をかけること;d)c)の圧力をかけ続ける一方で多孔性材料を透過した透過物たるb)の混合物を一定体積で透過側で再循環させ;e)経時的に、多孔性材料の透過物中のフッ化炭素の濃度を測定すること、ならびに、f)経時的に、同じ条件下に置かれていた完全性を有する多孔性材料の透過物中のフッ化炭素の濃度とe)の測定濃度を比較することを含み、e)の測定濃度が完全性を有する多孔性材料の透過物中のフッ化炭素の濃度を超えるときに、多孔性材料が完全ではないということを示す、多孔性膜の完全性を評価する方法を提供する。
【0012】
別の実施例においては、本発明は、a)液体により多孔性材料を湿らせること;b)多孔性材料の第一の表面をキャリアおよび検出可能な物質を含んだ混合物と接触させること;c)キャリアおよび検出可能な物質の少なくとも一部が多孔性材料を透過するように多孔性材料の第一の表面に圧力をかけること;d)c)の圧力をかけ続ける一方で、多孔性材料の透過物中に見出されるキャリアおよび検出可能な物質を一定体積で透過側で再循環させ、e)経時的に、多孔性材料の透過物中の検出可能な物質の濃度を測定し、および、f)経時的に、一つまたは二つ以上の基準となる多孔性材料の透過物中の検出可能な物質の濃度とe)の測定濃度を比較し、既知のサイズの欠陥を有している前記の基準となる検出可能な物質を、評価対象の多孔性材料と同じ条件で試験することで、欠陥のサイズを決定する多孔性材料の完全性を評価する方法を提供する。
【0013】
さらに別の実施例においては、本発明は、a)液体により多孔性材料を湿らせること;b)多孔性材料の第一の表面をキャリアおよび検出可能な物質を含んだ混合物と接触させること;c)少なくとも一部のキャリアおよび検出可能な物質の少なくとも一部が多孔性材料を透過するように多孔性材料の第一の表面に圧力をかけること;d)c)の圧力をかけ続ける一方で、多孔性材料の透過物中に見出されるキャリアおよび検出可能な物質を一定体積で透過側で再循環させ、e)経時的に、多孔性材料の透過物中の検出可能な物質の濃度を測定し、および、f)事前に決定した欠損サイズを有する一つまたは二つ以上の基準となる検出可能な物質を透過した理論的に算出した検出可能な物質の濃度とe)の測定濃度を比較することを含む方法を提供する。
【0014】
上記に述べたそれぞれの方法中の一つまたは二つ以上のステップを一つのステップに結合できることは、当業者にとっては自明のことである。
【0015】
さらに、別の実施例において、本発明は、a)完全性試験を行う多孔性材料を収容するのに適した収納部;b)収納部と流体連通している検出可能な物質の供給源;c)収納部と流体連通している検出可能な物質のためのキャリアの供給源;d)検出可能な物質を検出する検出器;e)検出器と、多孔性材料を含むための収納部とに接続している再循環ポンプ;ならびに、f)外力の供給源を含む、多孔性材料の完全性を評価する装置を提供する。
【0016】
さらに、別の実施例において、本発明は、多孔性材料の完全性を評価するのに適した装置、およびユーザーのインプットを受けるのに適したプログラムが可能なロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)を含む、評価対象の多孔性材料の完全性を評価するシステムを提供する。
【0017】
本発明の他の目的及び長所は以下の詳細な説明に記載される。本発明の目的及び長所は付随する請求の範囲に記載されている手段及びそれらの組合せから実現されるだろう。
【0018】
本発明の上述の説明及び以下の詳細な説明は例としてのものであり、付随する請求の範囲によって規定される本発明を制限するものではない。
【発明の効果】
【0019】
ある実施例においては、本発明は、迅速で、感度が高く、再現が可能で、非破壊性で、低廉で、多孔性材料の位置に関して柔軟性があり、多様なシグナル検出装置に適用可能で、実行が簡単な多孔性材料を評価するための方法を提供する。多孔性材料は、単層または多層膜を含んでいても良い。ある実施例においては、本発明は、多孔性材料(例えば膜)の透過で、一つまたは二つ以上の検出可能な物質の濃度を基礎として多孔性材料の完全性試験の方法を提供する。またある実施例においては、試験は、例えば、二種の独立した気体のような、一対の気体試験であっても良い。しかしながら、例えば、一つまたは二つ以上の液体のような、他の検出可能な物質を、二種以上の気体により予測する。本発明の他の実施例においては、欠陥を有することで多孔性材料の必要な性能基準から外れるのか、または、その欠陥が性能基準と関係ないのかを、サイズと密度など欠陥の特性を表すための方法を提供する。さらには、他の実施例においては、これらの完全性試験を実行できる装置とシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の一実施形態である膜のカートリッジの完全性の試験に使用する装置の模式図である。
【図1B】装置の収納部およびサンプル膜の第一の断面図である。
【図1C】装置の収納部およびサンプル膜の第2の断面図である。
【図1D】装置の収納部およびサンプル膜の側面図である。
【図2】異なるサイズの欠陥を有する膜カートリッジのフーリエ変換赤外分光(FTIR)シグナルの比較を示したグラフである。
【図3】サイズが既知の欠陥を有する膜カートリッジの理論的に算出した透過濃度と実験で観察された透過濃度の比較を示したグラフである。
【図4A】膜サブアセンブリ生産のサンプリングから得られたフレオン(freon、商標)のシグナルの時間変化のグラフを示したものである。
【図4B】さらに生産後に図4Aで記したのと同じ膜から得られたフレオン(freon、商標)のシグナルの時間変化のグラフを示したものである。
【図5】1.31μmの一定の開口部の欠損を有した既知の良好な膜カートリッジの試験を10回繰り返した結果と、欠陥をつくる前の同じ膜カートリッジの試験の結果を示したグラフである。
【図6】いくつかの非対称PES膜カートリッジの完全性試験を最適化されていない条件(順相)(フレオン(freon、商標)の分圧が15.5 psigであり、非透過側などの総接触側の圧力が46 psigである)で行った結果を示したグラフである。開口部は既知のサイズの一定の欠陥を有しているものである。カートリッジ0620は、欠陥を作成していないが、既知の欠陥を有したカートリッジである。
【図7】図6の非対称PES膜カートリッジの完全性試験を最適化された条件(逆相)および最適化されていない条件(順相)(フレオン(freon、商標)の分圧が11.25 psigであり、非透過側などの総接触側の圧力が30 psigである)で行った結果を比較したグラフである。開口部は既知のサイズの一定の欠陥を有しているものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法
本発明の実施例では、多孔性材料の完全性を評価するための方法を提供する。典型的には、下流側または透過側の体積は、相対的に不変であった方が良い。さらに、下流の体積が既知であり、および完全性を有する膜を通した拡散流入が既知か、または、欠陥のある流入と比べて小さいものである場合、実質的な欠陥のサイズを透過した検出可能な物質の濃度の増加の割合から決定することができる。このように、多孔質材料を透過した気体および蒸気などの少なくとも1つの検出可能な物質の濃度を時間関数として測定すること、および、その濃度が膜などの完全性を有する多孔性材料、または、その代わりに粒径など欠陥のサイズが既知である多孔性材料の濃度と相関関係を有していることを、根拠として、試験を行う。検出可能な物質は検出器に常に透過サンプルを提供するために、再循環すると良い。再循環は、ポンプを使用し行い、そのポンプは完全性試験を行っている多孔性材料の透過側と接続されている。ある実施例においては、再循環は、使用する試薬の総量を抑えるという点で、経済的にも、環境に対しても、利点がある。検出器への流れている流入に検出可能な物質が早く取り込まれるように、再循環の割合を調節すると良い。再循環により定常状態を達成する必要がなくなり、また、従来開示された完全性試験に比べてより迅速に結果を得ることができる。さらに、本方法は、当業者に知られているあらゆる対応の検出器に実質的適応させるように調節することは容易であり、また、ある実施例において、本願発明は、光音響探知機(photo acoustic detector)のような直接的な視線を必要とする扱いが難しい探知手段の使用を避けることができる。本発明の方法は、従来技術と比較して、より小さな欠陥の発見を可能とした。本方法は、高い割合で再現性を有し、また、ある実施例においては、本方法は、どのような位置関係であっても膜の完全性を試験することができる。従って、例えば、非対称膜は、孔のサイズが小さい硬い表面、または、孔のサイズが大きい開いた表面のどちらか一方から、キャリアおよび検出可能な物質に接触しても良い。同様に、検出器に満たされる透過液は、混合物と最初に接触する側と反対である限りは、膜のどちらの側から来ても良い。このように、物理的に膜を再配置することなく、どちらの位置関係であっても、膜の完全性を試験することができる。試験された多孔性材料の両側は、多孔性材料の各々の側と流体連通している一つか二つ以上の排気パイプにより排出され、試験の後の検出可能な物質の除去が促進され、それによりその後の試験のバックグランドを減少させることができ、感度を上げることができる。
【0022】
定常状態の拡散方程式は、ここで述べる完全性試験により定常状態を保たれた時に観察されるであろう最大値となる流量を提供する。これは、迅速に行う短い試験時間(transient test time)が、試験される多孔性材料の完全性を評価することに何故適しているのかを示唆する。もしシステムを定常状態にするとなると、拡散は欠陥を通じて対流を乗り越えて、それにより不可能でないにしろ検出可能な物質を検出するが困難となる。
定常状態の拡散方程式(Fick's First Law)
【数1】

ここで、
Q=下流で評価された気体の流入(cm3/sec)
ρL=液体密度(g/cm3)
ΜL=液体の分子量(g/mol)
D=液体に対する気体の拡散定数(cm2/sec)
H=ヘンリーの法則の定数(Henry's law constant)(psi)
Ρin=上流の絶対圧力(psia)
Ρout=下流の絶対圧力(psia)
L=膜厚(cm)
R=気体定数(1205.95 cm3 psi/mol/K)
Τ=絶対温度(K)
Αf=膜の総前面面積(cm2)
ε=膜の多孔性
閉塞流は時間が短い試験時間(transient test time)に適用できるもので、下記に記述している特定の実施例において、本発明の完全性試験は、システムを定常状態にする必要なく実行して良く、よって、膜などの多孔性材料の完全性に関して迅速に判断することができる。
【0023】
本発明の方法を実施する条件は、当業者であれば選択できる。例えば、本発明の約0℃〜約100℃、4℃〜約60℃、10℃〜約50℃、または15℃〜約30℃の範囲で実施しても良い。ある実施例においては、本発明は約20℃で実施し、また、別の実施例では、本発明は約4℃で実施しても良い。
【0024】
試験は、異なった圧力のもとで行っても良く、試験する多孔性材料サンプルの第一の側は最初の圧力として良く、また、試験する多孔性材料サンプルの第2の側は第2の圧力とすると良い。ある実施例においては、評価対象の多孔性材料の少なくとも片側に多孔性材料の泡立ち点の圧力と等しいか、その近くの圧力をかける。それゆえ、多孔性材料の供給側の圧力が、多孔性材料の透過側の圧力より大きいと良い。
【0025】
本発明の方法は、供給側の圧力を約1PSI〜約100PSI;約10PSI〜約70PSI;約5PSI〜約60PSIまたは約20〜約45PSIで実施すれば良い。他の実施例においては、本発明の方法は、圧力を約30〜50PSIで実施しても良い。ある実施例においては、本発明の方法は、圧力を約50PSIで実施しても良い。また、他の実施例においては、本発明の方法は、圧力を約30PSIで実施しても良い。さらに、他の実施例においては、本発明の方法は、圧力を約15PSIで実施しても良い。さらに、別の実施例においては、多孔性材料の泡立ち点の圧力より小さい圧力で実施しても良い。さらに、別の実施例においては、圧力は、例えば、流量及び濃度を測定しながら、少量の増大量ずつ緩やかに増大する等の様式で、一定の比率で増大されてもよい。もう別の実施例において、圧力は、例えば、流量及び濃度を測定しながら、少量の減少量ずつ緩やかに減少する等の様式で、一定の比率で減少されてもよい。圧力は段階的な増大または減少ずつ、増大または減少されてもよい。段階的な増大または減少は0.5psi〜100psi;1psi〜25psi;または、5psi〜10psiの範囲であってもよい。ある実施例においては、試験される多孔性材料サンプルの少なくとも片側については、例えば14.7psia以下または5psia以下などの減圧下で、試験を行っても良い。
【0026】
ある実施例においては、キャリアと検出可能な物質、両方が気体であると良い。これらの実施例において、試験の感度は以下の通りとなる。一旦圧力の勾配が確立され、維持されるなら対流の流量は一定に維持される一方で、拡散によるトレーサー気体の流量は時間依存的であって良い(時間が0の時は0)。膜の上流側に圧力がかかっている時、対流の流量が十分に確立している一方で、拡散による流量は0であろう(しかし増加する)。従って、感度の制限は、次のようになる、すなわち、1)標本サンプルを検出器に置くのに必要な時間、2)検出器の感度、および3)対流と比較して拡散による流入が大きくなってしまう前の遅延。
【数2】

ここで、
Tracerは、透過側のトレーサー気体のモル数(または体積)
Tracerは、トレーサーのモル流量(モル/秒)
ΝTotalは、透過側の気体の総量(モル)である。
【0027】
ある実施例において、湿らせるための液体の成分と反応するような、トレーサー気体などの検出可能な物質を使用しても良い。例えば、多孔性材料は、水酸化ナトリウム水溶液により湿っていても良い。水に拡散するCO2が作用するように、多孔性材料を、二酸化炭素(検出可能な物質)および圧縮空気(キャリア)の混合物と接触させても良い。しかしながら、欠陥を通る気体は作用しないので、透過側のCO2の存在は欠陥を示すものとなる。当業者であれば理解できることであるが、反応の副産物(この場合、水溶性物質)は、使用される前に、多孔性材料から排出されるべきであった。
【0028】
1.欠陥サイズの定量
上記で議論したように、単に多孔性材料の欠陥の有無だけでなく、特定の条件で、その単一の欠陥、複数の欠陥を特徴づけることが望ましい。本発明の特定の実施例は、特にその保持力に関連するような材料の完全性の評価に有用な欠陥の直径と分布密度を算出できる方法を提供する。欠陥を通る気体の流入は拡散移送によるものではなく、むしろ対流によるものである。いくつかの研究はハーゲン−ポアズイユの法則を仮定して、欠陥内のガスの流入をモデル化している。しかしながら、この式は、薄膜の両側に非常に小さい圧力差しか存在しないときのみに有効である(R.Prudhomme,T.Chapman および J.Bowen 1986,Applied Scientific Research,43:67,1986)ことは当業者にとって明白である。典型的な完全性試験条件において、特に、欠陥の直径が薄膜の保持領域の厚さに比べて大きいときに、欠陥を通る流入は閉塞流に従う。一般に、ハーゲン−ポアズイユの法則の流入から乱流及び閉塞流への遷移は供給圧力に対する透過圧力の比率の関数となる。閉塞流の式は、下記のように与えられ、欠陥が単一であると仮定して欠陥の直径を計算するのに使用すれば良い。
【数3】

ここで
Q=下流で見積もられた気体の流入(cm3/sec)
Νp=欠陥の数
p=欠陥の直径(μm)
γ=比熱比
Μw=気体の分子量(g/mole)
R=気体定数(1205.95 cm3 psi/mol/K、または8.314 E+7 g cm2/mol/K/s2)
Τ=絶対温度(K)
Ρin=上流の絶対圧力(psia)
Ρout=下流の絶対圧力(psia)
【0029】
本発明の方法、装置、及びシステムを使用して全ての多孔性材料の完全性を評価することができる。多孔性材料は、特に以下に制限されないが、例えば、カートリッジ、カセット、シート、円柱、チップ、ビーズ、プレート、ボトル、カップ、シリンダ、チューブ、ホース、またはモノリスの形状であってもよい。
【0030】
多孔性材料は有機または無機分子、または有機及び無機分子の組合せを含有していて良い。多孔性材料は親水性組成物、疎水性組成物、親油性組成物、疎油性組成物、または、それらの組合せを含有していて良い。多孔性材料はポリマーまたはコポリマーを含有していて良い。また、ポリマーは架橋されていても良い。
【0031】
多孔性材料は、特に制限はないが、ポリエーテルスルホン、ナイロン等のポリアミド、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル))(poly (tetrafluoroethylene-co-perfluoro(alkyl vinyl ether))等のフルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエチレン、グラスファイバー、ポリカーボネート、セラミック(陶器)、および金属を含む適当な材料を含有していて良い。多孔性材料は単層または多層の薄膜であっても良い。多孔性材料は、例えば、中空の繊維、管状形状、フラットプレート(または、平らな板)、または螺旋状に巻かれたものであっても良い。
【0032】
特定の実施例において、多孔性材料は膜を備えるフィルタまたは濾過装置等の、膜であっても良い。多孔性材料は溶質のサイズに基づいて溶質を排除する能力を有するものであっても良い。例えば、材料の孔は直径または特定の分子量等の特定のサイズの粒子の通過を許さない小さ過ぎるものであっても良い。膜は、カートリッジ、シリンダ、カセットなどの収納部に含まれていると良い。膜は、平らなシート、単層のシート、複層のシートまたはそれらの組み合わせで良い。膜の孔の構造は対称でも非対称でも良い。膜は、環境有害物質および環境汚染物質だけでなく感染性の生物およびウイルスなどの汚染物質を含んだ好ましくない物質の濾過に使用すれば良い。膜は、限外濾過膜、精密濾過膜、および逆透過膜を含んでも良い。
【0033】
液体および湿潤剤
ある実施例においては、多孔性材料は、試験の前に、一つ、または二つ以上の液体により湿らせると良い。本発明の方法は、多孔性材料に対する湿潤剤として適した液体を使用する。湿潤剤の選択は当業者によって、多孔性材料の化学的および物理的特質に基づいて決定すれば良い。多孔性材料は接触角θによってしばしば表されるそれらの湿潤性の点で異なるものであっても良い。本発明の方法は、例えば、非水溶性溶剤を選択することによって、または(30%のイソプロピルアルコールと70%の水の混合物等の)低い表面張力の流体で事前に浸し、そして、低い表面張力の流体を水で置き換えることよって、またはそれに代わって一種か二種以上の有機溶媒で膜を湿らせることによって、疎水性の薄に対して適用することができる。動作圧力は、水に対して約74ダイン(dyne)/cmから過フッ化溶剤に対して約10ダイン/cmの範囲の適当な表面張力γを有する流体を選択することによって調節することができる。したがって、液体は試験される多孔性材料の化学的特性を考慮することによって選択されてもよいことは当業者にとって明白である。例えば、多孔性材料が親水性材料を含有している場合、適当な液体は水または水を含む溶液を含む。例えば、溶液は塩及びアルデヒドまたはアルコール、またはイソプロピルアルコール等のニートアルコール等の酸素を含む炭化水素を含む。多孔性材料が疎水性材料を含有している場合、適当な液体はドデカン、過フッ化(ペルフルオロ)組成物、四フッ化炭素、ヘキサン、アセトン、ベンゼン、及びトルエン等の多様な有機溶剤を含む。
【0034】
キャリアおよび検出可能な物質
キャリアおよび検出可能な物質は、検出可能な物質のキャリアへの溶解性に基づき当業者により選択すれば良い。ある実施例においては、検出可能な物質は一つ、または二つ以上の蒸気、または液体であって良いと考えられる。他の実施例においては、キャリアおよび検出可能な物質は気体および蒸気の混合物であっても良い。他の実施例においては、キャリアおよび検出可能な物質は、両方気体であっても良い。実質的には、多孔性材料を湿らせるために使用される液体への溶解性が、検出器から検出可能な物質の存在を覆い隠してしまうキャリアが検出器に流入しないような溶解性であれば、どのような気体組成物でも本発明の方法に使用できる。典型的には、キャリアおよび検出可能な物質を含んだ混合物は、検出可能な物質の濃度よりキャリアの濃度が高い。
【0035】
キャリアおよび検出可能な物質が全て気体である時のように複数の気体を使用するとき、混合物中の各々の気体の割合を、当業者によって選択して良い。例えば、二種類の気体が使用されているとき、第一の気体の割合は、約0.01〜99.99体積%で良く、第2の気体の割合は、約0.01〜99.99体積%で良い。
【0036】
本発明においては、液体と気体の成分および組成の選択に関して融通が利く。キャリアおよび検出可能な物質は多孔性材料を湿らせるための液体(湿潤剤)への溶解性に基づいて選択できる。キャリアの検出可能な物質への溶解性の割合は当業者であれば、直ちに決定することができ、約500:1;約250:1;約100:1;約80:1;約60:1;約50:1;約40:1;約30:1;約20:1;約10:1または約5:1の範囲であれば良い。もしキャリアおよび検出可能な物質の溶解性の割合が(例えば1000:1より大きい)大きすぎると、キャリアが流入してしまった場合、検出器が検出可能な物質を検出することが難しくなるかもしれない。
【0037】
キャリアとして適しているものとしては、圧縮空気、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの希ガス、および、メタン、エタン、プロパンなどのアルカンなどが含まれる。検出可能な物質として適しているものとしては、フレオン(freon、商標)およびC26などのフッ化炭素、アルコール、六フッ化硫黄、ヘリウム、アルカン(例えば、メタン、エタン、プロパンなど)、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、揮発性の有機溶媒の蒸気(例えば、メタノール、エタノール、アセトンなど)などが含まれる。完全性試験の感度が探知機の性能および拡散が生じる割合によって影響を受けることは当事者にとって自明である。
【0038】
ある実施例においては、例えば、キャリアおよび検出可能な物質の両方とも気体である場合、その透過性の差が緩やかな気体の組み合わせ、および、片方が、例えば検出可能な物質などが微量濃度で、またキャリアなどが大量にあるような気体組成を選択することが有用である。希釈したトレーサー気体の使用制限の中で、気体測定の感度は、供給された組成物の機能、およびΦである。ここでΦは気体組成iの透過性と別の気体組成jの透過性の割合である。
【数4】

【0039】
例えば、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、水素およびヘキサフルオロエタンなどの通常の気体種を細孔充填液体として水を利用した2種の混合気体において、Φはおおよそ0.001〜1の間で変化することができる。湿潤液がドデカンなどの疎水性溶液である場合、気体の組み合わせは、ヘリウム、水素および窒素などの低透過性の気体と共に、エタン、プロパンおよびブタンなどの高透過性の気体を含むと良い。
【0040】
ある実施例においては、気体の中の少なくとも一つはヘキサフルオロエタンである。他実施例においては、気体の中の少なくとも一つは希ガスである。さらに他の実施例においては、気体の中の少なくとも一つはCO2である。さらに他の実施例においては、気体は空気などの混合気体から構成されている。気体が2種以上の混合物であるとき、混合物は多孔性材料に接触される前に予め混合しておくと良い。幅広い範囲の気体組成物が利用可能である。例えば、CO2中のヘキサフルオロエタンの供給側混合気体は、0.1%未満〜99.9%を超える範囲で変化して良い。当業者であれば、湿潤液中の溶解性および透過性などの既知の性質に基づいて適切な気体および気体混合物を選択することができる。
【0041】
装置およびシステム
ある実施例において、本発明は、多孔性材料の完全性を評価するのに適した装置を提供する。本発明の方法に使用するのに適した装置の例は図1Aに模式的に示している。装置は、a)完全性試験を行う多孔性材料を収容するのに適した収納部;b)収納部と流体連通している検出可能な物質の供給源;c)収納部と流体連通しているキャリアの供給源;d)検出可能な物質を検出する検出器;e)検出器と多孔性材料を収容する収納部とに接続している再循環ポンプ;ならびに、f)外力の供給源を含む装置を含むと良い。
【0042】
検出器は、トレーサー気体および蒸気などの検出可能な物質を適切に検出できるものであれば商業的に利用できるどのような検出器であっても良い。検出器については、上記で述べた光音響探知機(photo acoustic detector)の場合に必要となるようなオーダーメードの必要がない。例えば、検出器は、フーリエ変換赤外分光器、質量分析器、およびガスクロマトグラフィーで良い。
【0043】
外部エネルギーの供給源には、圧縮窒素および圧縮空気などの圧縮気体が含まれていて良い。その代わりに、外部エネルギーの供給源として、減圧ポンプ、または、一つか二つ以上の圧縮空気および一つが二つ以上の減圧ポンプの組み合わせであっても良い。一つが二つ以上の圧縮気体および一つが二つ以上の減圧ポンプなどの外部エネルギーの供給源の組み合わせも、また、考慮に入れて良い。
【0044】
収納部に含まれているサンプルへの、検出器への、または/および再循環ポンプへの、キャリアまたは/および検出可能な物質の流入を制御するために、装置は、二つの弁および3方向弁などの一つか二つ以上の弁を含んでいると良い。一つか二つ以上の弁は、また、サンプルの外力への露出を制御しても良い。一つか二つ以上の弁は、多孔性材料が2以上の位置関係で完全性が試験できるようにキャリアおよび検出可能な物質の流入を制御するために使用されても良い。従って、膜の試験を行うとき、硬い表面、または、開いた表面のどちらかで透過が見られるように、弁により、キャリアおよび検出可能な物質の流入を制御しても良い。本発明の同様の実施例においては、皮膜を有する膜表面、または皮膜を有しない膜表面のどちらか一方に透過を検出できるようにしても良い。
【0045】
図1Aに示すように、膜カートリッジなどの完全性を試験するサンプルを受け入れるための収納部201を有する。収納部201は、一つか二つ以上のポートおよび中空管を有するヘッドを有する。中空管は収納部ヘッドに接続し、収納部の壁と平行に伸び収納部の胴体に及ぶ。中空管は、気体を輸送するのに適していれば良い。収納部は、気体の供給源(TK201)、検出器、および再循環ポンプ(PU201)と流体連通している。装置は、気体の供給源と収納部の間、および収納部と検出器、再循環ポンプ(PU201)の両方との間の位置に、気体の流入を制御するための一つか二つ以上の弁を有していると良い。装置は3つの一連の弁(FV 220;FV 221,FV 222)を有している良い。これらの弁が、収納部に出入りする気体の流入を制御することで、カートリッジなどの膜サンプルを、一旦収納部に置くと、膜サンプルを物理的に操作する必要なく、カートリッジ表面のどちらか片方から完全性を試験することができるようになる。
【0046】
図1Bに示すように、図1Aの装置の一部分の断面図であり、収納部ヘッド300、収納部から伸び膜サンプルを受け入れるのに適した膜カートリッジの内部支持軸301、完全性試験のための膜サンプル302、中空管303、収納部の開放された内部の体積を減少させそれによりトレーサー気体などの検出可能な物質の迅速な検出を可能とするプラスチックフィルタ304、膜サンプルを受け入れるのに適した収納部のボウル305、適切な位置に膜サンプルを保持するブレーキングシリンダ306を含む。
【0047】
図1Cは、収納部ヘッド300、膜カートリッジの内部支持軸301、および、収納部フレームの別角度からの断面図である。この図中には、4つのポート307、308、309、310全てが収納部ボウルの外側および膜カートリッジの内側と接続するために提供されることが示され、それにより気体の供給源、検出器および再循環ポンプとの接続が提供される。図1Dは、収納部ヘッド300のさらに別の図であり、収納部ヘッド300は、ポート307、308、310、膜サンプル302、収納部ボウル305、および、ブレーキングシリンダ306を含む。
【0048】
一つの実施例においては、サンプルが湿潤な膜カートリッジである場合、サンプルは外側で収納部の外側に面する第一の表面、および、内側で中空管に面する第2の表面を持つ。気体は、納部の外側に面する膜の第一の表面と接触できるように、圧力のもとで、3方向弁FV220を通じて気体の供給源201から、ポート307を通じて収納部へと、圧力の下で流れると良い。気体は湿潤な膜を通じて、膜の透過側などに透過すれば良く、中空管303に貫流し、検出器と接続している3方向弁FV221と接続しているポート308を介して収納部から排出されると良い。気体は、3方向弁FV221と接続している第一の検出器用のポートを介して、検出器に流入して良く、再循環ポンプPU−201と接続している第2の検出器用のポートを介して、検出器から排出されると良い。気体が、収納部へ再循環するように、ならびに、3方向弁FV222と接続しているポート309を介して収納部に、および、膜サンプルの透過側の中空管に、再流入するように、再循環ポンプは3方向弁FV222と接続していると良い。従って、再循環された気体は、再び上記の経路を介して検出器へと流入し、もう一度利用することができる。
【0049】
別の実施例においては、装置を、膜カートリッジを上記と逆の位置関係にして、多孔性材料の完全性試験のために使用しても良い。すなわち、それにより、上記で述べた透過側の膜表面は、ここでは気体と最初に接触する表面となり、上記で述べた最初の膜表面は、透過側の膜表面となる。この位置関係の変化は、複数の3方向弁を介した気体の流れを変えることで行われる。この実施例においては、気体は、気体の供給源から、3方向弁FV220通じて、ここで、膜サンプルの内側部分と接続しているポート308に迂回する。気体は、膜サンプルを通じて収納部と膜サンプルの間の空間に透過して、そして、3方向弁FV221と接続しているポート310を通じて収納部に流入する。3方向弁FV221は、検出器と接続されており、気体は、第一の検出器用のポートを通じて、検出器に輸送される。気体は、再循環ポンプPU−201と接続している第2の検出器用のポートを通じて、検出器から排出されると良い。気体は、再循環された気体が、膜の収納部の壁に面している方の表面側などの膜の透過側に再輸送され、上記の経路を介して検出器にもう一度再流入させることができるように、第一のポートを介して再循環ポンプに流入して良く、収納部の底近傍に位置するポート(図1A)と接続している3方向弁FV222と接続して第2のポートを介して、排出されると良い。
【実施例】
【0050】
実施例1:検出可能な気体の再循環を伴った多孔性材料の完全性試験
複数の3方向弁を有していないことを除いて、図1に示したのと同様の装置を利用して、多孔性材料の完全性を試験した。以下のプロトコールを使用した。膜の特定のタイプに適した液体を利用して、膜カートリッジを湿らせた。FTIR検出器、再循環ポンプ、減圧ポンプ、および、複数の弁に接続されているフィルタ収納部にカートリッジを設置した。
【0051】
プログラムが可能なロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)、圧力変換器、および、自動化された弁を使用して、カートリッジの試験は以下の手順で行った。
1.再循環ポンプを設置し、Venturi減圧器を使用して(Vaccon, Medfield, MA)、システムを減圧状態にした(マイナス10PSIG未満、圧力センサPT203および204による)。
2.透過側の再循環を10秒間行った。FTIRのシグナルを設定値の閾値(44ppmvC2F6)未満となるようにチェックを行った。数回のクリーンアップの後、FTIRのバックグランドシグナルを使用し、設定値を決定した。そのレベルが閾値未満で、透過側が大気圧中であったなら、ステップ4を実行した;透過側が減圧状態であったなら、ステップ5を実行した。検出可能な物質などのトレーサー気体のレベルが上記閾値より大きいときは、ステップ3を実行した。
3.カートリッジの両側に窒素または圧縮空気により設定圧力(1PSIG)まで加圧した。PT203およびPT204でモニターした。上記の設定値まで10秒経過し、その後ステップ1を繰り返した。
4.フィルタの両側を窒素または圧縮空気により0PSIG(14.696PSIA)とした。PT203およびPT204でモニターした。両側が0PSIG(+/−)となった時、ステップ5を実行した。
5.トレーサー気体は、15.5PSIGの分圧セットポイントまで、添加した。PT203が圧力が設定値であると示した時、ステップ6を直ちに実行した。当業者にとっては、一方では添加が一時に行うが、例えばpsi/秒などの勾配の割合を使用して、添加することもできることは、明白なことである。勾配を付けることでいくつかの利点がある。緩やかな勾配により、トレーサーの総量を添加する前に、著しい欠陥については潜在的に検知できるようになった。また、それにより再現性が高くなる設定圧力を提供することができた。別の利点としては、ひだ付きの膜の欠陥の検出に関連する。異なる高い圧力差の下では、ひだのピークにある特定の欠陥は見過ごされるであろうが、緩やかな勾配によって、その目隠し効果は消失する。
6.窒素または圧縮空気により、上流を最終設定圧力差まで加圧した。PT203とPT204の間の圧力差をモニターした。その差が設定値に達した時、ステップ7を実行した。加圧は一時に行うが、しかし、例えばpsi/秒などの勾配を付ける定められた方法を利用することもできた。
7.時間経過によるFTIRシグナル変化をモニターした。以下のいずれかが起こった場合、ステップ8を実行した、さもなければ、設定時間が経過するまで、絶えず時間経過によるFTIRシグナル変化をモニターした。
a.PT204が、著しいリークを意味する定められた過剰圧力の設定値を越えた時
b.FTIRシグナルが上記と同じく、著しいリークを意味する設定値を超えた時
c.試験用タイマーの定められた時限が切れた時で、典型的にはタイマーは60〜120秒でセットされている。
8.フィルタの下流/透過側を真空状態にする。これはFTIR検出器および再循環ポンプも含む、これらは排出のために真空状態にする。PT204をモニターし、圧力が定められた設定値(−10PSIG)未満となった時、20秒のタイマーをセットした。
9.膜カートリッジの上流側を排出のために真空状態にした。PT203をモニターし、圧力が定められた設定値(−10PSIG)未満となった時、20秒のタイマーをセットした。タイマーの制限が切れた時、ステップ10に進んだ。
10.膜カートリッジの上流側を窒素または圧縮空気により定められた設定圧力(30PSIG)まで加圧した。PT203をモニターし、圧力が設定値を超えたとき、5秒のタイマーをセットした。タイマーが制限を超えた時、ステップ11を実行した。また、もしクリーンアップサイクル数(サイクル回数の定められた設定値は1にすぎないが)を完了できないときは、ステップ12を実行した。
11.膜カートリッジの上流側を排出のために真空状態にした。PT203をモニターした。圧力が定められた設定値(−10PSIG)未満となった時、10秒のタイマーをセットした。その後、排出されるキャリア気体による加圧がどの程度のサイクル実行されたかについて経過を追うために、クリーンアップ回数の増大が用いられた。上記に述べたように、この実験で、一回のサイクルが終了である。タイマーが制限を超えた時、ステップ10が繰り返される。
12.フィルタ排水管弁は開けられて、フィルタの下流に排水口を作った。モニターPT203およびPT204をモニターした。PT203およびPT204が0PSIG(+/−)となった時、10秒のタイマーをセットした。タイマーが制限を超えた時、試験を終了した。
【0052】
実施例2:既知の欠陥を有する膜のFTIRシグナルの比較
個々の良好なカートリッジは、一連の一定の開口部と共に試験した。比較のための基準を得るために、プラグを開口部ホルダーに指しこんで、既知の欠陥の効果を消失させた。直径が既知である単一の欠陥を有するカートリッジを試験すると共に、同じカートリッジについて一連の試験を行った。カートリッジとしては、10インチ、22μmの親水性のPVDF Durapore(登録商標、ミリポアコーポレーション、Billerica、MA)膜カートリッジサブアセンブリを利用した。その結果は、図2に示し、それによると、異なるサイズの欠陥は明確に区別できるカーブを有していることが分かった。試験条件としては、25体積%C26と、75体積%の圧縮空気で、膜の反対側との圧力差は46psiであった。図2の時間の単位は、秒である、C26濃度の単位は体積ppmである。検出器としては、検出限界がC261ppmvと低いMKS InDuct FTIR(MKS Instruments, Wilmington, MA)を使用した。
【0053】
時間に対するC26濃度の理論値も、既知のサイズの欠陥を有する個々の膜の閉塞流を仮定して、算出した。図3では、算出された理論値と一定の開口部の欠損を使用して得られた実験結果の比較を示した。
【0054】
実施例3:サブアセンブリ生産の完全性試験
0.22μmの親水性のPVDF Durapore(登録商標、ミリポアコーポレーション、Billerica、MA)膜の10プロセスカートリッジサブアセンブリを48生産単位で、完全性試験を行った。γ線照射前後両方でこの単位で試験を行った。試験の条件は、上記実施例2で報告した通りである。その結果は図4A(γ線照射前)および図4B(γ線照射後)に示した。FTIR検出器を使用した完全性試験の後、本発明の一実施形態例に従って、同じユニットに対して、PLATO(光音響探知機(photo acoustic detection))(米国特許第5581017号明細書)および既存の生産質量の流量試験(production mass flowrate test、分散試験)を行った(Millipore Catalog 94-95, Millipore Corporation, Billerica MA)。機能的な細菌保持試験もまた行った。表1でこれらの結果の比較を示した(ここで「?」は中間の結果であった)。図4Bの結果(1.31μmの欠陥を有した既知の良好なカートリッジ)は、欠陥のある膜との区別と考察される。ここで示したように、完全性試験は良好な感度を有している。
【表1】


欠陥のある膜との区別は、既存の生産質量の流量試験をした場合、1分当たり0.47標準立方cmであった(sccm)。
【0055】
実施例4:完全性試験の結果の再現性
本願で述べている完全性試験が再現性のある結果を得られることを実証するために、既知の一定の開口部の欠損を有した既知の良好な膜カートリッジの試験を行った。膜カートリッジとしては、PVDF Durapore(登録商標、ミリポアコーポレーション、Billerica、MA)膜カートリッジを使用し、検出可能物質としてフレオン(freon、商標)(15.5psi)を使用した条件で試験を行った。システムは、圧力差46psidとし、稼動させた。図5は、1.31μmの意図的な開口部の欠損を有した既知の良好な膜カートリッジの試験を10回繰り返した結果である。10回の測定のFTIRシグナルの傾きは平均2.90ppmv C26/秒であり、標準偏差は0.20ppmv C26/秒であった。比較のために、同じフィルタ単独(欠陥なし)での複数の測定結果を示した。
【0056】
実施例5:非対称膜の完全性試験
本発明の一実施例に従って、非対称膜の完全性試験を行った。ある条件下における試験の感度が、完全性を有する膜を通じてトレーサー気体の拡散によるバックグランドによって影響を受けることを発見した。したがって、異なる膜は(気体/蒸気混合物を含んだ)異なった最適化された試験条件、および検出限界を有していることとなる。図6および7は、意図的な欠陥を有しているなどの様々なサイズの開口部を有した非対称薄膜を含んだ装置を試験により得られた結果を示したものである。Gamma Durapore(登録商標、100〜150μmの厚さの対称性のある膜)ように開発された条件を使用してこれらの膜を試験したところ、検出限界はおよそ5〜10μmであった。最初に、混合気体が膜の硬い表面と接触するように(非対称構造の水分膜の厚さが最小とするために)逆方向で、低い圧力差(30psigおよび46psig)で試験を行ったところ、検出限界は2〜5μmまで下がった。
【0057】
本発明は、その意図と範囲から外れることなく、多くの改良と変形が加えることができることは、当業者にとっては明白である。上述の特定の実施例は例として説明されたものであり、本発明を限定するためのものではない。すなわち、上述の発明の詳細な説明及び実施例は例として意図されたものであり、本発明の本来の範囲は付随する請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0058】
201 収納部
300 収納部ヘッド
301 内部支持軸
302 膜サンプル
303 中空管
304 プラスチックフィルタ
305 ボウル
306 ブレーキングシリンダ
307、308、309、310 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性膜の完全性を定常状態へ到達させることなく評価する装置であって、
a)完全性試験を行う多孔性膜を収容するのに適した収納部;
b)収納部と流体連通している検出可能な物質の供給源;
c)収納部と流体連通している検出可能な物質のためのキャリアの供給源;
d)検出可能な物質を検出する検出器;
e)検出器と、多孔性膜を収容する収納部とに接続している再循環ポンプ;ならびに、
f)外力の供給源
を含み、
前記装置におけるa)の収納部に収容される多孔性膜の完全性を評価する方法が、
i)液体により第一の表面及び第一の表面と対向する第二の表面を有する多孔性膜を湿らせること;
ii)多孔性膜の第一の表面をb)の検出可能な物質の供給源およびc)の検出可能な物質のためのキャリアの供給源を含んだ混合物と接触させること;
iii)キャリアおよび検出可能な物質の少なくとも一部が多孔性膜を透過するように多孔性膜の第一の表面にf)の圧力をかけること;
iv)iii)の圧力をかけ続ける一方で、e)の再循環ポンプにより多孔性膜の第二の表面上の透過物中に見出されるキャリアおよび検出可能な物質を一定体積で多孔性膜の第二の表面上から第一の表面上に再循環させること;
v)d)の検出器を用いて、経時的に、多孔性膜の透過物中の検出可能な物質の濃度を測定すること;及び
vi)経時的に同じ条件に晒された完全性を有する多孔性膜の透過物中の検出可能な物質の濃度とv)の測定濃度を比較することであって、v)の測定濃度が完全性を有する多孔性膜の透過物中の検出可能な物質の濃度を超えるときに多孔性膜が完全ではないということを示すことを含む装置。
【請求項2】
多孔性膜の完全性を定常状態へ到達させることなく評価する装置であって、
a)完全性試験を行う多孔性膜であって、第一の表面及び第一の表面と対向する第二の表面を有する多孔性膜を収容するのに適した収納部;
b)収納部と流体連通している検出可能な物質の供給源;
c)収納部と流体連通している検出可能な物質のためのキャリアの供給源;
d)検出可能な物質を検出する検出器;
e)検出器と、多孔性膜を収容する収納部とに接続している再循環ポンプであって、多孔性膜の第一の表面から第二の表面に圧力を加える間に多孔性膜の第二の表面上に見出される透過物を第一の表面上に循環させる再循環ポンプ;ならびに、
f)外力の供給源
を含む装置。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−32417(P2012−32417A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252019(P2011−252019)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2007−294710(P2007−294710)の分割
【原出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION