多孔性炭素
【課題】多孔性樹脂構造を有するメソ多孔性炭素を環境的にも安全でかつ安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】メソ多孔性炭素に炭化され得る多孔性樹脂が、細孔形成剤(好ましくは、100重量部の樹脂当り少なくとも120重量部のエチレングリコールの量のエチレングリコール)の存在下でフェノールホルムアルデヒドプレポリマーを架橋すること、および形成された樹脂を炭化することによって作製され得る。この樹脂は、部分的に架橋した樹脂を熱い油に注ぐことによって、改変剤を用いてかまたは用いずに、フェノールを架橋剤と縮合させることによって形成され得る。メソ多孔性炭素ビーズに炭化され得る多孔性樹脂ビーズが得られる。
【解決手段】メソ多孔性炭素に炭化され得る多孔性樹脂が、細孔形成剤(好ましくは、100重量部の樹脂当り少なくとも120重量部のエチレングリコールの量のエチレングリコール)の存在下でフェノールホルムアルデヒドプレポリマーを架橋すること、および形成された樹脂を炭化することによって作製され得る。この樹脂は、部分的に架橋した樹脂を熱い油に注ぐことによって、改変剤を用いてかまたは用いずに、フェノールを架橋剤と縮合させることによって形成され得る。メソ多孔性炭素ビーズに炭化され得る多孔性樹脂ビーズが得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂として使用され得、そして多孔性炭素物質を調製するために使用され得る改善されたフェノール樹脂構造、およびこれらを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン化フェノール樹脂は、1930年代にイオン交換樹脂として最初に使用され(Adamsら、J Soc Chem Ind.54,(1935)1−GT)、そして比較的安定なカチオンおよびアニオン交換樹脂を、水の軟化および脱塩のために広範に使用した。他のフェノールベースの樹脂としては、食品加工用途において主に使用されている弱塩基性のアニオン交換樹脂(Cristal M J,Chem and Ind,814,(1983)Nov 7)およびセシウムのような金属イオンの吸着について顕著な選択性を与えるように製造され得るキレート化樹脂(米国特許第4,423,159号、1983年および米国特許第5441991号、1995年)が挙げられる。イオン交換粉末は、低多孔性の粉末を生成するための粉砕が続く樹脂のバルク硬化(例えば、WO91/09891)、または逆相縮合(Unitaka Ltd 米国特許第4,576,969号、1986年)のいずれかによって生成され得る。これらの物質の制限の1つは、制限された内部多孔性であり、そしてこれらは、利用可能である場合、高度に多孔性のスルホン化スチレンジビニルベンゼンコポリマーベースのイオン交換樹脂によって迅速に交換された。しかし、フェノールベースの樹脂は、ほとんど消失してしまったが、特定の用途はなお、これらの根底にある性能特徴に基づいて、食品関連産業において存在する。
【0003】
フェノール樹脂は、メソ多孔性炭素を形成するように炭化され得る。メソ多孔性炭素は、吸着剤または触媒担体として使用され、そして球状の顆粒の薄いフィルム形態で使用され得る。既存の生成方法は、メソ多孔性炭素を生成するために気相および化学的活性化経路を使用するが、従来生成されるように、活性化炭素は、メソ孔(2〜50nm)およびマクロ孔(>50nm)の範囲の孔容量をほとんどまたは全く有さない、通常ミクロ多孔性(<2nm孔直径−IUPAC定義)である。エバポレーションエミッションコントロールのようないくつかの重要な吸着プロセスについて、そして触媒担体として使用される場合、特に、液相用途において、これは、主な欠点である。
【0004】
従来の活性炭素は、いくつかの活性化を介してメソ多孔性となり得るが、これは、これらの機械的特性を重大に低下させ、次いでこれらの物質は、一般的に、微粉としてのみ利用可能である。米国特許第4677086号は、このような重大な機械的劣化なしでメソ多孔性炭素を生成する化学的活性化の使用を開示し、これはまた、押し出し物(extrudate)として生成され得る。しかし、これらは、なお、粉末として生成され、次いで、例えば、固定床気相プロセスにおける使用のための押し出し物を生成するために結合されなければならない。多くの場合、使用され得る結合剤は、次いで炭素が使用され得る条件を制限する重合体またはセラミックである。
【0005】
化学的活性化はまた、米国特許第5324703号に開示されているように、可塑化酸性リグニン基剤チャーをペレット化または押し出し、次いで混合物を直接的に炭化および活性化することによって、メソ多孔性炭素を直接的に生成するために、使用され得る。生成経路はまた、低マクロ多孔性を生じ、これは、触媒および液相プロセスにおいて不利益を有し得る。経路はまた、活性化剤としてリン酸および塩化亜鉛のような化合物を必要する不利益を有し、これは、重大な環境問題を引き起こし得、そして処理工場の構築の材料に対して主要な影響を与え得る。
【0006】
代替的な経路は、米国特許第4040990号および米国特許第4839331号において開示されるような、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーを炭化する経路である。これらは、さらなる活性化に頼ることなく、メソ/ミクロ多孔性を用いる熱分解によって直接的に炭素を生成する。従って、これらの物質は、優れた機械的特性を有する。しかし、これらは、ポリマー生成経路によって固定される比較的小さい粒子サイズに制限され、そして制限された範囲のメソ孔構造を有する。これらはまた、前駆体ポリマーの高い費用、低炭素収率、および大量の硫黄を含むポリマーを処理することに関連する環境問題を反映して非常に高価である。得られた炭素はまた、硫黄が混入し、このことは、触媒担体としてのこれらの使用を制限する。
【0007】
さらなる経路が、米国特許第5977016号に開示され、これにより、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー粒子が、大量の縮合硫酸の存在下でペレットに形成され、次いでメソ多孔性およびマクロ多孔性の両方を有する構築された物質を与えるように炭化される。しかし、この経路は、重要な環境問題を有し、複雑かつ高価である。
【0008】
さらなる経路が、米国特許第4263268号に開示され、ここで、所望のマクロ形状(すなわち、球)を有するメソ多孔性シリカが、炭素形成ポリマー(例えば、フェノール樹脂またはポリフルフリル樹脂)を染み込ませられ、次いでアルカリ中でシリカテンプレートを溶解する。このことは、再び、非常に高価な経路であり、そして制限された範囲の形状および形態で炭素物質を生成し得るのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4423159号
【特許文献2】米国特許第5441991号
【特許文献3】米国特許第4576969号
【特許文献4】米国特許第4677086号
【特許文献5】米国特許第5324703号
【特許文献6】米国特許第4040990号
【特許文献7】米国特許第4839331号
【特許文献8】米国特許第5977016号
【特許文献9】米国特許第4263268号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Adamsら、J Soc Chem Ind.54,(1935)1−GT
【非特許文献2】Cristal M J,Chem and Ind,814,(1983)Nov 7
【発明の概要】
【0011】
ここで、本発明者らは、気相または化学的活性化なしで、メソ多孔性炭素のような多孔性炭素を形成するために使用される多孔性樹脂構造を生成する改善された方法を発明した。
【0012】
本発明は、以下を提供する。
[1]多孔性樹脂構造を形成するための方法であって、細孔形成剤の存在下で、求電子性架橋剤と求核性成分とを縮合させる工程を包含する、方法。
[2]上記[1]に記載の多孔性樹脂構造を形成するための方法であって、ここで、上記求核性成分が、フェノール化合物またはフェノール縮合プレポリマーである、方法。
[3]上記フェノール縮合プレポリマーが、本明細書中に定義されるようなNovolac樹脂である、上記[2]に記載の方法。
[4]上記フェノール化合物が、フェノール、ヒドロキノン、またはレゾルシノールである、上記[2]または[3]に記載の方法。
[5]上記細孔形成剤が、ジオール、ジオールエーテル、環状エステル、置換された環状または直鎖状のアミドもしくはアミノアルコールである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記細孔形成剤が、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノンまたはモノエタノールアミンである、上記[5]に記載の方法。
[7]ポリマー成分の100重量部当り、少なくとも120重量部の細孔形成剤が存在する、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]溶液中で実行され、そして上記細孔形成剤がまた溶媒である、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]上記溶媒が水とジオールの混合物を含む、上記[8]に記載の方法。
[10]上記溶媒が、上記[6]に記載の細孔形成剤および水の二成分または三成分またはより複雑な混合物を含む、上記[8]に記載の方法。
[11]上記架橋剤が、ホルムアルデヒド、フルフラールまたはヘキサメチレンテトラミンである、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12]上記細孔形成剤が、樹脂の形成後に洗浄によって除去される、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13]上記[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法であって、溶媒としての細孔形成剤中で、Novolacプレポリマーを、改変試薬、架橋剤および触媒の1つ以上と共に溶解する工程によって溶液を得、そして該溶媒を加熱して架橋反応を起こし、固体樹脂を生じる、方法。
[14]固体多孔性重縮合樹脂が、酸触媒または塩基触媒と共に加熱することによって生成される、上記[13]に記載の方法。
[15]上記改変剤が、尿素、アニリンまたは他の芳香族アミンまたはメラミンまたは他のヘテロ芳香族アミンである、上記[13]または[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16]上記多孔性樹脂が、ブロックで生成され、次いで粉砕され、そして炭化されて、粒子性炭素を得る、上記[13]〜[15]に記載の方法。
[17]上記反応溶液を、限定された程度の架橋が生じるまで加熱して、部分的に架橋した液体樹脂溶液を生成する、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[18]請求項17]に記載の方法であって、上記化合物は限定された程度の架橋が生じるまで加熱され、そして部分的に架橋した液体が分散剤を含む非混和性液体に注がれ、該混合物は、該部分的に架橋したポリマーがビーズに形成されるまで撹拌され、該ビーズが、混合できない液体から除去されて、樹脂ビーズを形成する、方法。
[19]上記混合できない液体が油である、上記[17]または[18]に記載の方法。
[20]水溶性であるが、分散油中に難溶性である、細孔形成剤が、メソ/マクロ多孔性樹脂生成のために使用される、上記[18]または[19]に記載の方法。
[21]形成される上記メソ多孔性樹脂ビーズの粒子サイズが、5ミクロンと2000ミクロンの間である、上記[18]、[19]または[20]に記載の方法。
[22]ヘテロ原子の分散が、多孔性樹脂構造に組み込まれる、上記[1]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]上記へテロ原子が金属であり、そして樹脂を架橋する前に、上記細孔形成剤に塩の溶液を添加することによって、上記多孔性樹脂構造中に組み込まれる、上記[22]に記載の方法。
[24]上記ヘテロ原子が非金属であり、そして樹脂を架橋する前に、上記細孔形成剤に該ヘテロ原子を含む有機前駆体を添加することによって、上記多孔性樹脂構造に組み込まれる、上記[22]に記載の方法。
[25]上記ヘテロ原子が非金属であり、そして樹脂を架橋する前に、上記細孔形成剤に該ヘテロ原子を含む無機前駆体を添加することによって、上記多孔性樹脂構造に組み込まれる、上記[22]に記載の方法。
[26]上記多孔性樹脂が多孔性炭素を生成するように炭化される、上記[1]〜[25]のいずれか1項に記載の方法。
[27]炭化が、800℃までの温度で、そして不活性気体の流れ中で行なわれる、上記[26]に記載の方法。
[28]不活性気体が、二酸化炭素、または窒素、またはアルゴンである、上記[27]に記載の方法。
[29]得られた顆粒炭素が、2ミクロン〜2000ミクロンの範囲のサイズを有する不規則な形態の粒子からなる、上記[26]〜[28]に記載の方法。
[30]上記得られた顆粒炭素が、2ミクロン〜1600ミクロンの範囲のサイズを有する球状粒子からなる、上記[26]〜[28]に記載の方法。
[31]上記多孔性炭素が、約2nmと50nmの間(メソ孔)またはそれより大きい(マクロ孔)平均孔サイズを有し、そして約0.6nmと2nmの間の平均孔サイズを有するミクロ孔が存在する、上記[29]または[30]に記載の方法。
[32]上記多孔性炭素が、二酸化炭素または蒸気中で加熱することによって活性化される、上記[26]〜[31]のいずれか1項に記載の方法。
[33]多孔性炭素が、400℃を超える空気中で加熱することによって活性化される、上記[26]〜[31]のいずれか1項に記載の方法。
[34]上記[26]〜[33]のいずれか1項に記載の方法によって作製された多孔性炭素。
[35]上記[1]〜[24]のいずれか1項に記載の方法によって作製されたメソ多孔性フェノール樹脂ビーズ。
[36]5nm〜50nmの平均直径(メソ孔)および50nmより大きい平均直径(マクロ孔)の孔サイズを有する、2ミクロン〜2000ミクロンの直径を有する、フェノール樹脂ビーズ。
[37]2nm〜50nmの平均直径(メソ孔)および50nmより大きい平均直径(マクロ孔)の孔サイズを有する、2ミクロン〜1600ミクロンの直径を有する、多孔性炭素球。
[38]2nm〜50nmの平均直径のメソ孔および50nmより大きい平均直径(マクロ孔)および0.6nm〜2nmの平均直径のミクロ孔を含む孔サイズの混合物が存在する、2ミクロン〜1600ミクロンの直径を有する、多孔性炭素球。
[39]BET表面積が、250〜800m2/gである、上記[37]または[38]に記載の多孔性炭素球。
【0013】
本発明に従って、多孔性樹脂構造を形成するための方法が提供され、この方法は、細孔形成剤の存在下での、溶液中での求電子性架橋剤と求核性成分との縮合を含む。
【0014】
縮合は、触媒され得るかまたは触媒され得ない。
【0015】
本発明はまた、多孔性炭素構造を形成するための方法を提供し、ここで、多孔性樹脂は、多孔性炭素構造を形成するように炭化される。
【0016】
求核性成分は、例えば、フェノール、フェノールホルムアルデヒドプレポリマー(必要に応じて改変剤を共に使用する、Novolac)であり得る。
【0017】
求電子性成分は、例えば、ホルムアルデヒド、ヘキサミン、フルフラールであり得る。
【0018】
好ましくは、細孔形成剤は、溶媒として作用する。
【0019】
多孔性重縮合樹脂の調製のための方法は、一般的に、触媒(酸性または塩基性)を用いてかまたは用いずに、細孔形成剤中に、求核性成分(例えば、フェノール、Novolac、改変剤)および求電子性架橋成分(例えば、ホルムアルデヒド、ヘキサミン、フルフラール)を溶解する工程、ならびに得られた溶液を熱硬化させて、細孔形成剤が樹脂マトリクス内に均等に分布して、制御されたサイズの孔を作製して、硬化、固体、不溶性および不溶解性の樹脂を得る工程、を包含する。
【0020】
本発明は、メソ多孔性/マクロ多孔性炭素に炭化され得る多孔性炭素を生成するために特に有用である。ここで、窒素吸着および水銀旋光分析法によって測定されるように、そしてIUPACによって定義されるように、メソ多孔性炭素は、本明細書においてミクロ孔とならんで、約2nm〜約50nmの直径を有する孔を保有する炭素を意味し、そしてマクロ多孔性炭素は、ミクロ孔とならんで50nmより大きい直径を有する孔を保有する炭素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、誘導される炭化物質の多孔性に対する樹脂組成物中の孔形剤含有量の効果を示す。
【図2】図2は、誘導される炭素の多孔性に対する、反応系フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸の樹脂組成物中のアニリン含有量の効果を示す。
【図3a】図3aは、フェノール樹脂の多孔性に対する細孔形成剤含有量の効果を示す。
【図3b】図3bは、対応する炭化物質の多孔性に対する樹脂組成物中の細孔形成剤の効果を示す。
【図4】図4は、得られる炭素の多孔性に対するNovolac−ヘキサミン−エチレングリコール反応系の樹脂組成物へのアニリンまたは尿素の添加の効果を示す。
【図5】図5は、反応系Novolac−細孔形成剤−ヘキサミンの樹脂から誘導される炭素の多孔性に対する細孔形成剤の性質の効果を示す。
【図6】図6は、誘導される炭素の多孔性に対するNovolacおよびヘキサミンに基づいた樹脂組成物中における別の溶媒での細孔形成剤の改変の効果を示す。
【図7】図7は、銅含有樹脂から誘導される炭素の多孔性に対する炭化手順の効果を示す。
【図8】図8は、誘導される炭素の多孔性に対する樹脂架橋条件の効果を示す。
【図9】図9は、Novolac−ヘキサミン−フルフラール−エチレングリコール反応系の樹脂から誘導された炭素の多孔性を示す。
【図10】図10は、ブロックで調製された樹脂(Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール反応系)および誘導された炭素の多孔性パラメーターを示す。
【図11】図11は、誘導される炭素の多孔性に対するNovolac−ヘキサミン−エチレングリコール−ホウ酸反応系の樹脂の異なる処理の効果を示す。
【図12a】図12aは、樹脂の多孔性に対するブロック樹脂組成物中のエチレングリコール含有量の効果、反応系Novolac−メラミン−ホルムアルデヒド−エチレングリコールを示す。
【図12b】図12bは、誘導される炭素の多孔性に対する、ブロックで調製された反応系Novolac−メラミン−ホルムアルデヒド−エチレングリコールの樹脂の組成物中のEG含有量の効果を示す。
【図13】図13は、反応系Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール、Novolac−レゾルシノール−ヘキサミン−エチレングリコールおよびNovolac−ヒドロキノン−ヘキサミン−エチレングリコールから誘導された炭素の多孔性の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(フェノール重縮合プレポリマー)
フェノールホルムアルデヒド縮合プレポリマーは、Novolac樹脂であり得る。Novolac樹脂は、代表的に、およそ等モル量のフェノールおよびホルムアルデヒドの酸触媒縮合によって生成される。Novolacは、通常、平均分子量に依存して100℃以上で融解する熱可塑性固体ポリマーである。これらは、500〜2000Dの分子量を有する基本的に直鎖であり、ここで、フェノール部分は、メチレン(大部分)およびメチレンエーテル架橋で結合され、そして主にヒドロキシル基に対して非置換のオルト位置に1つの求核性活性部位を保有する。また、生成条件に依存して、種々の程度の鎖の分枝が存在し得る。
【0023】
商業的な材料は、フェノールおよびホルムアルデヒドを使用して大規模に生成されるが、種々の改変剤が、広範な異なる酸素および窒素の官能性および架橋部位を導入するために、プレポリマー形成段階において使用され得る。これらは、以下を含むがこれらに限定されない:
1.ヒドロキノンおよびレゾルシノール。共にフェノールよりも反応性であり、そしてプレポリマー生成段階においていくつかの架橋を生じ得る。異なる架橋経路を提供するために、架橋段階においてこれらの化合物を導入することはまた可能である。これらはまた、樹脂の酸素官能性を増加する。
【0024】
2.重縮合反応において活性である窒素含有化合物(例えば、尿素、芳香族(アニリン)およびヘテロ芳香族(メラミン)アミン)。これらは、最初のポリマー(および最終炭素)への特定の型の窒素官能性を導入することを可能にし、そして樹脂および最終炭素の両方のメソ多孔性構造の発生に影響する。
【0025】
ヒドロキノンおよびレゾルシノールと同様に、本発明において使用され得る全ての窒素含有求核性改変剤は、2つ以上の活性部位を保有し、そして縮合反応においてフェノールまたはNovolacより反応性である。このことは、これらが、第1の架橋剤と反応する最初の架橋剤であり、インサイチュで第2の架橋剤を形成することを意味する。メラミンの場合において、あらかじめ、第2の架橋剤(ヒドロキシメチル化メラミン)を調製することが好ましい。
【0026】
Novolacは、構造的変化なく繰り返し加熱および冷却され得るという点で、熱安定性である。これらは、架橋剤の添加時および加熱の際に硬化される。
【0027】
本発明のプロセスは、溶媒中で実行され、そして細孔形成剤はまた、溶媒であり得る。例えば、改変剤(必要な場合)、架橋剤および触媒(必要な場合)、ならびに溶媒としての適切な量の細孔形成剤と共に市販のNovolacプレポリマーから得られた溶液は、加熱されて架橋反応を起こし、固体樹脂を生じる。
【0028】
あるいは、本発明において使用され得る固体多孔性重縮合樹脂は、触媒(酸性または塩基性)を含む細孔形成剤中の溶液を加熱する際に、フェノール(および必要に応じて改変剤)およびホルムアルデヒド(または他の架橋剤)から直接生成され得る。
【0029】
両方の場合において、正しい組成が樹脂構造に細孔形成剤を「ロックする」ために使用され、そしてメソ多孔性樹脂を作製する場合、反応溶液は、架橋反応の間に準備される。
【0030】
多孔性樹脂前駆体は、ブロックに鋳造され得、そして粉砕され1〜1000ミクロンの範囲の粒子サイズの粉末を生じ得る。次いで、この樹脂粉末は、炭化され、例えば、2nmと50nmの間(メソ孔)または50nmを超える(マクロ孔)平均孔サイズを生じるように制御され得る孔サイズを有する多孔性炭素、およびまた0.6nmと2nmの間の平均孔サイズを有するミクロ孔を有する多孔性炭素を生じる。
【0031】
部分的に架橋したプレポリマーの粘性溶液が、分散剤を含む鉱油のような熱い液体に注がれ、そして混合物が撹拌される場合、プレポリマー溶液は、ビーズを形成する。これらは、最初は液体であり、次いで硬化が進行するにつれて、これらは、固体になる。平均ビーズ粒子サイズが、スターラーの型および速度、油の温度および粘性、プレポリマー溶液の粘性、ならびに溶液対油の体積比を含むいくつかのプロセスパラメーターによって制御され、そして5ミクロンと2000ミクロンの間で調整され得る。次いで、これらのビーズは、油からろ過され得、そして細孔形成剤が除去された後、熱分解されてメソ多孔性炭素樹脂またはマクロ多孔性炭素樹脂を生じる。
【0032】
メソ孔生成の機構は、架橋反応の間に生じる相分離プロセスに起因すると考えられている。細孔形成剤の非存在下において、直鎖のプレポリマーが架橋を生じるにつれて、分子量は最初増加する。残渣の低分子量成分は、より高分子量領域において不溶性となり、低分子量の連続相内の架橋した高分子量ドメインへの相分離を引き起こす。残渣のより軽いプレポリマーがドメイン間で閉じ込められて、架橋した相が本質的に連続するまで、軽い成分の成長するドメインの外側へのさらなる縮合は、生じる。
【0033】
(細孔形成剤)
細孔形成剤として使用され得る、多数の溶媒が存在する。これらの溶媒に対する主要な要件は、以下である:溶媒への反応成分の高い溶解度/適合性;プレポリマー/架橋剤/溶媒の溶液の、使用可能な粘度(これは例えば、受容不可能に高い粘度を与えるグリセロールを本質的に排除する);重縮合反応を溶媒の有意な蒸発なしに合理的な速度で実施するための、合理的に高い沸点。
【0034】
使用され得る細孔形成材としては、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール(ジオール);ジエチレングリコール、トリエチレングリコール(ジオール−エーテル);ガンマ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート(環状エステル);ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(置換アミド、環状および直鎖状);モノエタノールアミン(アミノアルコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
低レベルの細孔形成剤の存在下で、この細孔形成剤は、架橋した樹脂ドメインと適合性であり、そしてこのドメイン内に維持され(例えば、Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール反応系については、100部のNovolacあたり120部未満)、一方で残りのものは、このドメイン間で部分的に架橋したポリマーと共に、溶液を形成する。より高いレベル(架橋樹脂の容量を越える)の細孔形成剤の存在下では、この細孔形成剤は、軽ポリマー画分を増加させ、ドメイン間の隙間における物質の容量を増加させ、このことは、メソ細孔を生じさせる。一般に、細孔形成剤の含有量が高いほど、ミクロ細孔がより広くなり、そして細孔の容積がより高くなる。
【0036】
次いで、この相分離機構は、架橋樹脂構造中における細孔の発生の、種々の様式での制御を提供する。これらは、以下である:細孔形成剤の化学組成および濃度;架橋性求電子剤の化学組成および量;改変求核剤の存在、化学的性質および濃度;フェノール性求核成分(フェノール、Novolac)の化学組成;触媒の存在、化学的性質(酸性、塩基性)、および濃度。
【0037】
上記油分散法によって球状樹脂を生成するために、溶媒はまた、樹脂ビーズの溶液が油のバルクに分散した「油中水」型のエマルジョンの形成を確実にし、油への溶媒抽出およびその回収に関する問題を最小にし、そして水での洗浄によって固体樹脂ビーズからの溶媒の単純な回収を増強するために、油と非適合性であり、そして水と適合性であるべきである。
【0038】
異なるクラスの有機化合物のプロトジェニック溶媒と非プロトン性溶媒との両方が、これらの要件に適合し、そして細孔形成材として、両方が個々にか、混合物中でか、または水と混合されて、使用され得る。
【0039】
構造が非常に類似しているが異なる溶媒は、架橋樹脂との異なる適合性を有する。その結果、このことは、相分離を異なる程度まで変化させ、次いで樹脂および対応する炭素の多孔性に影響を与える。これらの極性有機溶媒中への故意の水の添加は、樹脂と得られる細孔形成剤との適合性を低下させ、このことは、いくつかの反応系に対して有利であり得るが、1つの反応生成物としての水は、カルボニル化合物が架橋剤として使用される任意の反応において、必然的に存在する。細孔形成剤としてのアミドの共通の特徴は、これらが通常、ヘキサミンとの架橋を促進するために、故意の水の添加(2〜5%)を必要とすることである。アミドが細孔形成剤として使用される場合には、最終の炭素は、窒素吸着によって検出可能なメソ細孔を示さないが、これらは比較的バルク密度が低く、このことは明らかに、大きな細孔(>50nm)の存在を示す。
【0040】
いくつかの細孔形成剤はまた、特定の条件下で、架橋プロセスに寄与し得る。例えば、活性な炭素陽イオンが、強酸性媒体中のエチレングリコールまたはモノエタノールアミンおよびホルムアミドの、ホルムアルデヒドでのメチロール誘導体から形成され得、これらは、第2の架橋剤として反応する。
【0041】
(架橋剤)
本発明において使用される第1の架橋剤は、ホルムアルデヒド、フルフラールおよびヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)である。ホルムアルデヒドは、細孔形成剤中の溶液でかまたは固体パラホルムアルデヒド(CH2O)xとしてかのいずれかで、導入される。ホルムアルデヒドは、フェノール性部分と架橋して、−CH2−架橋および−CH2−O−CH2−架橋を、反応混合物のpHに依存する比で形成する。メチレン架橋は、強酸および強アルカリの媒体中で形成される唯一の架橋であり、一方で中性に近いpHにおいては、いずれかの型の架橋が出現する。水が、化学量論的な第2の縮合生成物として、形成される架橋の型に依存するレベルで形成される。メチレン架橋の場合には1モルのホルムアルデヒドあたり1モル、またはエーテル架橋の場合には2モルのCH2Oあたり1モルのH2Oである。次いで、「縮合」水は、この水を含む細孔形成剤と樹脂ドメインとの適合性を、使用される細孔形成溶媒に依存して低下させることによって、相分離およびメソ細孔形成プロセスに影響を与え得る。
【0042】
メチレン架橋による、フェノールとホルムアルデヒドとの完全な架橋は、約1〜1.5モル比の試薬を必要とする。いくらかのエーテル型架橋の形成を考慮して、本発明の樹脂組成物におけるフェノール対ホルムアルデヒドのモル比は、好ましくは、1.6〜1.8のレベルに維持される。このことは、100重量部のNovolac樹脂あたり、さらに9〜12重量部のホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)を必要とする。
【0043】
フルフラールは、そのカルボニル基の求電子反応性が、複素環の高い求核反応性によって補充される点で、ホルムアルデヒドとは異なる。さらに、環の切断および引き続く反応は、広範な生成物を与え得、これらは、さらなる架橋経路(おそらくフェノール性ヒドロキシルが関与する)を提供し得る。これらは、フラン樹脂誘導体に対して、特に酸性媒体中で代表的であり、そして他の架橋剤と組み合わせて、樹脂の化学構造と多孔性との両方を改変するさらなる経路を提供する。
【0044】
ヘキサミンは、粉末として直接、反応溶液に導入され得る。加熱の際に、微量の水、およびおそらく、プロトン性溶媒によって触媒されて、環の切断が起こり、活性種(アミノカルビノール)の形成を生じる。架橋の際に、これらは異なる架橋(単純なメチレン架橋およびより複雑な架橋(ビス−メチレンアミン、トリス−メチレンアミンおよび1,3−オキサジンのような、窒素含有基形成(grouping))を含む)を形成する。低分子量の縮合副生成物は、水(これは次いで、ヘキサミンの次のプロトンを切断する)およびアンモニアである。アンモニアは、反応条件においては高度に揮発性であるが、酸性触媒も塩基性触媒も存在しない場合には、反応溶液のpHを増加させ、これもまた、相分離およびメソ細孔形成プロセスに影響を与え得る。
【0045】
本発明において、ヘキサミンは、好ましくは、Novolac樹脂を架橋させるために、100重量部のNovolacあたり9重量部のヘキサミンの濃度で使用される。このことは、最大の架橋度を有する固体樹脂の形成を確実にする。このことは、以前に開示された焼結樹脂構造(代表的に、100部のNovolacあたり3部のヘキサミンが使用された)(EP0245551)とは対照的である。ヘキサミンがエチレングリコール溶液中で、100重量部のNovolacあたり3重量部のレベルで使用される場合、非孔質の半固体のゴム状物質のみが得られ、一方で9重量部のレベルでは、高度にメソ細孔のある固体樹脂が生成した。架橋度が十分でない場合には、エチレングリコールが内部可塑剤として作用し得ると考えられる。
【0046】
(改変剤)
本発明において使用され得る改変剤のほとんどは、窒素を含み、従って、この窒素を、樹脂および従って最終の炭素に導入する。これらの共通の特徴は、それらの縮合反応における反応性であり、これは、フェノールとNovolac樹脂との反応性より高い。これらの化合物が比較的少量で(フェノール成分の5〜30重量%)添加された場合に縮合プロセスに関与する、少なくとも以下の3つの区別可能な様式が存在する:
1.Novolac−第1の架橋剤−改変剤の反応系。ここでは、改変剤が第1の架橋剤と迅速に反応して、第2の架橋剤を形成し、次いでこの第2の架橋剤が、Novolac鎖を一緒に結合させる。その結果、ホモ縮合したフェノールホルムアミド鎖からなる樹脂が、窒素含有基形成(またはレゾルシノールもしくはヒドロキノン由来の部分)で架橋される。
【0047】
2.フェノール−架橋剤−改変剤−強酸性または強塩基性触媒。別個のホモ縮合プロセスが、2つの異なる求核試薬(フェノールおよび改変剤)に対して起こる。これは次いで、二成分樹脂マトリックスの形成を生じ、ここで、これら2つの樹脂成分は、熱処理の際に異なる様式で挙動する。
【0048】
3.フェノール−架橋剤−改変剤−弱酸もしくは弱塩基触媒、または触媒なし。これは、共縮合プロセスを導き、改変部分がフェノール系樹脂内に等しく分散している、構造的に均一な物質が形成される。
【0049】
これら3つの異なる場合に対して、生成する樹脂と最終の炭素との両方の多孔性に対する改変剤の影響は、異なり得る。従って、フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸(触媒としての強酸)の反応系については、フェノールに対して0から20モル%に増加するアニリンの量が、メソ細孔を次第に狭くする。逆に、Novolac−アニリン−ヘキサミン−エチレングリコールの反応系およびNovolac−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコールの反応系の場合(触媒なし)には、Novolacに対して0から20重量%に増加するアニリンの量は、メソ細孔の幅と容積との両方の顕著な増加を生じる。
【0050】
(反応速度の効果)
純粋な触媒効果(例えば、反応速度を増加させることおよび反応経路を変化させること)に加えて、強い酸およびアルカリは、フェノレートの形成(アルカリについて)またはプロトン化(酸について)に起因して、極性細孔形成剤中における、成長する樹脂鎖の溶解度および適合性ならびに凝集を劇的に増強する。高すぎる触媒濃度もまた、いくつかの所望でない反応(例えば、アミドおよびエステル細孔形成剤の分解、アルデヒドの不均化(アルカリにより触媒されるカニッッツァーロ反応)、(触媒としての硫酸による)スルホン化に起因する、ベンゼン環の活性部位のブロッキング)の増強を生じ得る。低すぎる触媒濃度は、縮合反応を有意に遅くするのみでなく、多孔性の劣化をもまた生じ得る。
【0051】
一定の組成の樹脂におけるメソ細孔の発生もまた、架橋反応の速度に依存する。縮合反応の速度は、反応温度によって、また樹脂の物理的形状(ブロック、ビーズなど)によって制御される熱移動現象を介して制御され得る。このことは、プロセスが小さな樹脂の液滴を用いて熱油中で実施されるので熱移動の現象が無視され得る、球状樹脂の調製において見出される。固体の硬化した球状樹脂が、エチレングリコール中のNovolacおよびヘキサミンの溶液から、温度を100℃から105℃(溶液はゲル状態に非常に近い)に滑らかに増加させ、この溶液を油中におよそ同じ温度で分散させ、次いで温度を150〜160℃に次第に上昇させて架橋を完了させることによって調製される場合には、メソ多孔性の高い樹脂が形成される。逆に、Novolacおよびヘキサミンが、エチレングリコールに65〜70℃で溶解され、そして160〜180℃で油中に直接分散される場合には、得られる硬化した樹脂のメソ多孔性は劇的に低下する。炭化の際に、第一の樹脂は、中程度〜低いミクロ多孔性を有する、メソ多孔性の高い炭素を生成する。第二の樹脂は、ミクロ多孔性が比較的高いがメソ多孔性が低い炭素を生成する。
【0052】
温度衝撃条件下で架橋が非常に迅速に進行する場合は、穏やかな硬化条件下で形成する通常のサイズのドメインの変わりに、比較的小さなドメインの凝集体が形成されると考えられる。次いで、凝集体における小さなドメイン間の間隙が、さらなるミクロ細孔を生じる。凝集体間のほとんどない細孔は、いくらかのメソ細孔を生じる。
【0053】
硬化した樹脂から細孔形成剤が除去される様式は、対応する炭素における多孔性の生成のために重要であり得ることもまたわかった。細孔形成剤(例えば、エチレングリコール)が、炭素の生成の間に単純に熱分解によって除去される場合には、メソ細孔が失われ得る。細孔形成剤を、低い温度(例えば、100℃未満)で、樹脂の水での洗浄または減圧蒸留によって除去し、そして引き続き細孔形成剤がリサイクルされることが、好ましいことがわかった。洗浄(時々中和後)は、触媒としてアルカリまたは硫酸が使用される場合には、絶対に必要となる。このことは、アルカリが時々非常に望ましくない様式で炭化プロセスに影響を与え、一方で硫酸が炭素を硫黄で汚染し、触媒担体としての炭素の価値を低下させることに起因する。
【0054】
(他の添加剤)
ヘテロ原子が樹脂構造に組み込まれ得ることもまたわかった。銅、ニッケル、クロムなどの金属は、この金属を塩の溶液として細孔形成溶媒中に組み込み、その後、樹脂を架橋させることによって、多孔性樹脂構造に組み込まれ得、そして非金属およびメタロイドは、メソ細孔を有する樹脂に、そして従ってメソ細孔を有する炭素に、直接組み込まれ得る。無機化合物が細孔形成剤に可溶性である場合には、この化合物は最初の反応溶液に直接添加され得る。次いで、調製手順が、通常の様式で実施される。次いで、金属種は、樹脂マトリックス内に均一に分配される。いくつかの場合には、元素がフェノール系樹脂のヒドロキシ基またはアミノ基と錯体を形成するか、またはこれらとの他の何らかの相互作用を有する能力は、最初の分配を原子レベルで増強する。次いで、高度に分散された元素を樹脂に組み込むことによって、熱分解の間に形成する炭素におけるその元素の高度な分散がもたらされる。
【0055】
(炭化および活性化)
任意の物理的形態および形状の多孔性樹脂の、本発明の多孔性炭素への変換は、炭化(すなわち、不活性雰囲気中での高温での処理および約600℃から上の温度での処理)によって、実施される。熱分解プロセスは、約400℃で開始し、そして約700℃でほぼ完了するが、さらに小さな重量損失が、約1400℃まで続く。しかし、表面積の発生は、約600℃より高温でのみ有意であり、この時点で、この材料は厳密には炭素ではない。有意な導電率の発生は、700℃より高温でのみ観察される。熱分解のための不活性雰囲気は、適切なガス流によって保証され得る。窒素およびアルゴンが、任意の温度において不活性なパージガスとして使用され得、一方で触媒金属の非存在下では、約800℃まで、二酸化炭素が効果的に不活性である。減圧もまた使用され得るが、これは分子ふるいの挙動の発生を導き得る。これらの材料におけるメソ細孔(これらは、揮発性生成物に効果的な逃げ道を提供する)の存在に起因して、使用される加熱速度は非常に高く、1分間あたり10℃までであり得る。炭素の多孔性は、従来の活性化方法(例えば、水蒸気中750℃より高温で、または二酸化炭素中800℃より高温で活性化させることによる)によって、さらに増強され得、これは、BET5点方法によって測定した場合に、2000m2/gまでの表面積を与え得る。二酸化炭素での、850から900℃の範囲の温度での「物理的」活性化は、優先的にミクロ細孔を生じ、一方で420〜450℃での空気による活性化は、メソ細孔のサイズおよび容積を、例えばもとの炭素においてと同じ細孔サイズおよび範囲に、かなり増強する。
【0056】
本発明の特徴は、制御された範囲の粒子サイズを有する球状多孔性炭素構造体が生成されることを可能にすることである。例えば、球のサイズ分布が、10より良好(好ましくは5より良好)なD90/D10の分布を与えるように制御され得、そしてより大きな細孔が、2nmから50nmまで(メソ細孔)、または50nmより大きい(マクロ細孔)までの平均直径に制御され得、そして平均のミクロ細孔直径が、従来の活性化手順に頼ることなく、0.6mmと2mmとの間に制御されて、250〜800m2/gのBET表面積を与え得る。
【0057】
本発明の材料は、高い物理的強度および高い耐磨耗性が特定の利点を与える、広範な種々の要求の厳しい適用において有利に使用され得る。これらとしては、液相触媒担体、血液濾過および炭素が流体床中または移動床環境中で使用される任意の適用が挙げられるが、これらに限定されない。大きなメソ細孔はまた、より大きな分子が、細孔内に吸着されるかまたはグラフトされるかのいずれかである系において、有利に使用され得る。これらとしては、薬物放出系、キラル担体などが挙げられ得る。
【0058】
本発明を、以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
94重量部のフェノール、54重量部のパラホルムアルデヒド(PF)(フェノール対ホルムアルデヒドのモル比1:1.8)、特定の量のエチレングリコール(EG)細孔形成剤および濃硫酸(SA)を含む反応混合物を、攪拌しながら特定の縮合温度(パラホルムアルデヒドは、約60℃で完全に溶解する)まで加熱し、そしてこの温度で特定の滞留時間維持した(表1−1)。
【0060】
【表1】
得られた粘性溶液をストリームとして、0.5%の乾性油(分散剤として作用する)を含む2〜4容量の予熱した(110〜115℃)攪拌鉱油に注いだ。得られた混合物の温度を約100〜102℃に低下させ、そして架橋が通常1〜2分で起こった。得られたスラリーを115〜120℃まで30〜60分で次第に加熱して、硬化を完了させ、そして冷却した。ビーズ形態の樹脂を油から濾別し、熱水で数回洗浄して細孔形成剤と触媒との両方を除去した。次いで、得られた多孔性球状樹脂(水、残留油、微量の細孔形成剤および触媒を含む)を、直接炭化して、球状多孔性炭素を生成し得る。樹脂の分析のために、この樹脂を有機溶媒(好ましくは、メタノール−エーテルの1:1 v/v溶液)で繰り返し洗浄し得、そして一定重量となるまで減圧下で乾燥し得る。二酸化炭素気流中800℃で加熱することによって形成した、炭化材料の細孔サイズ分布のグラフおよびいくつかの構造パラメータを、図1および表1−2に示す。ここには、誘導された炭化材料の多孔性に対する、樹脂組成物中の細孔形成剤の含有量および触媒濃度の影響が示されている。反応系フェノール−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸。
【0061】
【表2】
(実施例2)
94重量部のフェノール、特定の量のアニリン(A)、エチレングリコール細孔形成剤、パラホルムアルデヒドおよび濃硫酸を含む反応混合物を、攪拌しながら特定の縮合温度(完全なパラホルムアルデヒドの溶解は約60℃で起こる)まで加熱し、そして特定の滞留時間この温度に維持した(表2−1を参照のこと)。
【0062】
【表3】
得られた粘性溶液をストリームとして、0.5%の乾性油を含む2〜4容量の予熱した(110〜115℃)攪拌鉱油に注ぎ、そして樹脂をさらに、実施例1と同じ様式で処理した。炭素2.1〜2.4および炭素1.1の細孔サイズ分布グラフおよびいくつかの構造パラメータを、図2および表2−2において比較する。ここには、反応系フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸の樹脂組成物におけるアニリン含有量の、誘導された炭素の多孔性に対する影響が示されている。
【0063】
【表4】
(実施例3)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、特定の量のエチレングリコール細孔形成剤(表3−1を参照のこと)と一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65〜70℃にまで冷却し、ここで、9重量部の量のヘキサミン(HA)を添加した。得られた攪拌混合物を、特定の滞留時間で特定の温度に達するような速度で徐々に加熱した(表3−1を参照のこと)。
【0064】
【表5】
次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(115〜120℃)鉱油の2〜4容量中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度は105〜110℃まで下がったが、さらなる加熱によって、架橋は、約115〜120℃で生じた。150℃までの、1分当たり約0.5℃の速度でのさらなる加熱を、硬化を完了するために適用した。冷却後、樹脂ビーズを濾過して油分を除去し、そして熱水で数回洗浄して、細孔形成剤および少量(合計5%未満)の低分子量ポリマーを除去した。得られた多孔性球状樹脂(水、残留油分、微量の細孔形成剤および低分子量画分を含む)を、球状多孔性炭素を生成するために、流動二酸化炭素中で800℃で加熱することによって、炭化した。この樹脂ビーズが、洗浄を伴わずに油分からの分離後直接炭化される場合、得られた炭素の多孔性は、減少する。分析のために、樹脂サンプルを、有機溶媒、好ましくは1:1 v/vのエタノール−エーテル溶液で繰り返し洗浄し、そして減圧下で一定重量まで乾燥させるべきである。細孔サイズ分布グラフ、ならびに樹脂および炭化材料の両方のいくつかの構造的パラメーターを、図3aおよび3b、ならびに表3−2および3−3にそれぞれ示す。
【0065】
【表6】
図3bは、樹脂組成物中の細孔形成剤の、対応する炭化材料の多孔性に対する効果を示す。炭素3.1〜3.9について、反応系、Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール。
【0066】
【表7】
(実施例4)
100重量部の量の工業的Novolac樹脂(N)を、上昇した温度で、特定量のエチレングリコール細孔形成剤(EG)(表4−1を参照のこと)と一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65〜70℃にまで冷却し、ここで、特定量のヘキサミン(HA)および改変剤(MA)−アニリン(A)または尿素(U)を添加した。
【0067】
【表8】
得られた攪拌混合物を、特定の滞留時間(RT)で特定の温度(CT)に達するような速度で徐々に加熱した(表4−1)。次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(110〜115℃)鉱油の2〜4容量中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度は100〜105℃まで下がったが、さらなる加熱によって、架橋は、約105〜110℃で生じた。150℃までの、1分当たり約0.5℃の速度でのさらなる加熱を、硬化を完了するために適用した。冷却後、樹脂ビーズを、実施例3と同じ方法でさらに処理した。細孔サイズ分布グラフ、および炭化材料(炭素4.1〜4.4)(800℃、流動二酸化炭素)のいくつかの構造的パラメーターを、
図4および表4−2において、炭素3.5のものと比較する。
【0068】
【表9】
(実施例5)
327重量部の特定の細孔形成剤(表5−1を参照のこと)中の、100重量部の工業的Novolac樹脂の透明溶液を、65〜70℃にまで加熱し、ここで、9重量部のヘキサミンを添加した。得られた反応混合物を、75〜80分で105〜107℃の最終縮合温度に達するように、攪拌しながら徐々に加熱した。
【0069】
【表10】
次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(115〜120℃)鉱油の2〜4容量中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度は110〜115℃まで下がったが、さらなる加熱によって、架橋は、通常約120℃で生じた。さらなる処理は、実施例3および4と同じであった。細孔サイズ分布グラフ、および二酸化炭素流動中または窒素流動中で800℃で加熱することによって得られる炭化材料(炭素5.1〜5.8)のいくつかの構造的パラメーターを、図5および表5−2に示し、そして炭素3.7のものと比較する。
【0070】
【表11】
(実施例6)
327重量部の特定組成の細孔形成剤(表6−1を参照のこと)中の、100重量部の工業的Novolac樹脂および9重量部のヘキサミンの透明溶液を、実施例5と正確に同じに処理した。
【0071】
【表12】
細孔サイズ分布グラフ、および流動二酸化炭素中で800℃で加熱することによって得られる炭化材料(炭素6.1〜6.3)のいくつかの構造的パラメーターを、図6および表6−2に示し、そして炭素5.3のものと比較する。
【0072】
【表13】
(実施例7)
100重量部の工業的Novolac樹脂、12重量部のヘキサミン、7重量部の無水硫酸銅(II)、190.4重量部のエチレングリコールおよび33.6重量部のモノエタノールアミン(触媒および細孔形成剤)を含む反応溶液を、35〜40分で60℃から100℃まで、徐々に加熱した。次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(115〜120℃)鉱油中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度を110〜112℃に最初に下げた後、さらなる加熱を、1分当たり0.5℃の速度で150℃まで適用した。通常、架橋は115〜120℃で生じた。樹脂ビーズの処理は、実施例3〜6と同じであった。図7および表7は、細孔サイズ分布、ならびにこの樹脂に由来し、かつ微細に分散した銅の約5重量%を含む炭素のいくつかの構造的パラメーターを示す。炭素7.1を、流動二酸化炭素中で800℃で樹脂を加熱処理することによって調製した。炭素7.2を、流動窒素中で800℃で樹脂を加熱処理することによって調製した。
【0073】
【表14】
(実施例8)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、327gのエチレングリコールと一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65℃にまで冷却し、ここで、9重量部の量のヘキサミンを添加した。得られた攪拌混合物を、ヘキサミンの溶解を確実にするためにのみ70℃まで短時間加熱し、0.5%の乾性油を含む攪拌された、予め加熱された(190℃)鉱油の3容量中にストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度を160℃に下がると、ほとんど直後に(1分未満で)架橋が生じた。反応混合物の温度を、15分で175℃にまで上げ、硬化を完了した。冷却後、樹脂ビーズを濾過して油分を除き、実施例3と類似の方法でさらに処理した。細孔サイズ分布グラフ、および得られた樹脂から生成される、厳しい条件下で架橋された炭素(炭素8、800℃、二酸化炭素)のいくつかの構造的パラメーターを、組成的に類似した樹脂に由来するが、穏やかな条件下(実施例3、7)で架橋された炭素(炭素3〜7)の対応する特性と、図8において比較する。
【0074】
(実施例9)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、236重量部のエチレングリコールと一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65℃にまで冷却し、ここで、3重量部の量のヘキサミンおよび15重量部の量のフルフラールを添加した。得られた攪拌混合物を、1時間で110℃に達するように徐々に加熱し、そして粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む攪拌された、予め加熱された(120℃)油の3容量中にストリームとして注いだ。さらなる加熱によって、硬化は、140〜145℃で(15〜20分で)生じた。硬化を完了させるためのさらなる加熱(155℃まで20分で)および冷却後、樹脂ビーズを濾過して除き、そして実施例3〜6に記載のように処理した。対応する炭素の多孔性パラメーターを、図9に示す。
【0075】
(実施例10)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、218重量部のエチレングリコールと一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65〜70℃にまで冷却し、ここで、9重量部の量のヘキサミン(HA)を添加した。得られた攪拌混合物を、70分で95〜97℃に達するような速度で徐々に加熱した。次いで、熱粘性溶液を、不活性材料から作製されるかまたは不活性材料によって裏打ちされたかのいずれかである浅いトレイ(例えば、PyrexTMガラスまたはPTFEフィルムで裏打ちされた金属)に注ぎ、このトレイを、続いて、細孔形成剤の喪失を最小化するために密封した。トレイを、適切な予め加熱した(100℃)オーブン中に配置した。オーブン内の温度を、1時間で150℃まで徐々に上昇させ、そしてもう1時間このレベルで維持した。冷却後、得られた固体ブロック樹脂を粉砕して、最大サイズ1cmの粒子を得た。粉砕した樹脂を、熱水で数回洗浄し、そして空気中で80〜100℃で乾燥させた。乾燥樹脂を粉末化し、分類し、そして通常の方法で炭化して、所望の粒子サイズであるが不規則な粒子形状のメソ細孔性の炭素を生成し得る。この樹脂が、洗浄なしで、粉砕後直接炭化される場合、得られた炭素のメソ細孔性は、実質的に減少する。細孔サイズ分布グラフならびに樹脂および炭化材料(800℃、二酸化炭素流動)の両方のいくつかの構造的パラメーターを、図10に示す。類似の手順を、本発明のすべての他の樹脂をブロックで調製するために適用し得る。
【0076】
(実施例11)
100重量部の工業的Novolac樹脂、9重量部のヘキサミン、20重量部のホウ酸および258重量部のエチレングリコールからなる反応溶液を、45分で70℃から100℃まで加熱した。得られた粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む攪拌された、予め加熱された(105℃)油の3容量中にストリームとして注いだ。さらなる加熱によって、硬化は、110℃辺りで生じた。さらなる加熱を、硬化を完了するために、30分で160℃まで適用した。樹脂ビーズを濾過して除いた後、炭化の前のさらなる処理を、以下の3つの異なる方法で適用する:
1.全く処理しない。
2.熱水で数回洗浄する。
3.Soxhlett装置において、エーテルで抽出する。
得られた炭素11.1〜11.3の細孔サイズ分布グラフおよび他のパラメーターを、図11および表11において比較する。
【0077】
【表15】
(実施例12)
100重量部の工業的Novolac樹脂(N)、27.54重量部のメラミン(M)、26.18重量部のパラホルムアルデヒド(PF)および140.68重量部のエチレングリコール(EG)から作製された194.4重量部の透明溶液、ならびにさらなる特定量のエチレングリコール(EG)を含む溶液(表12−1)を、ガラストレイに配置し、密封し、予め加熱されたオーブン中に配置し、そして140±5℃で15時間維持したが、ゲル化は、最初の2〜3時間で生じた。冷却後、ブロックの樹脂を実施例10のようにさらに処理した。細孔サイズ分布グラフならびに樹脂および炭化材料(800℃、二酸化炭素流動)の両方のいくつかの構造的パラメーターを、図12a、12bおよび表12−2に示す。
【0078】
【表16】
【0079】
【表17】
(実施例13)
100重量部の量の工業的Novolac樹脂(N)を、特定量のエチレングリコール(EG)中に溶解させた。30重量部のEG中の10重量部のレゾルシノール(R)またはヒドロキノン(Hq)の溶液を、12重量部のヘキサミン(HA)と一緒に、Novolac溶液に添加した。得られた反応溶液を、特定の時間で特定の温度まで加熱し(表13−1)、0.5%の乾性油を含む攪拌熱油(120℃)中に注ぎ、そして実施例3〜6に記載のようにさらに処理した。このように得られた樹脂に由来する炭素の特性を、図13および表13−2において、炭素3.2および3.4の特性と比較する。
【0080】
【表18】
【0081】
【表19】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂として使用され得、そして多孔性炭素物質を調製するために使用され得る改善されたフェノール樹脂構造、およびこれらを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン化フェノール樹脂は、1930年代にイオン交換樹脂として最初に使用され(Adamsら、J Soc Chem Ind.54,(1935)1−GT)、そして比較的安定なカチオンおよびアニオン交換樹脂を、水の軟化および脱塩のために広範に使用した。他のフェノールベースの樹脂としては、食品加工用途において主に使用されている弱塩基性のアニオン交換樹脂(Cristal M J,Chem and Ind,814,(1983)Nov 7)およびセシウムのような金属イオンの吸着について顕著な選択性を与えるように製造され得るキレート化樹脂(米国特許第4,423,159号、1983年および米国特許第5441991号、1995年)が挙げられる。イオン交換粉末は、低多孔性の粉末を生成するための粉砕が続く樹脂のバルク硬化(例えば、WO91/09891)、または逆相縮合(Unitaka Ltd 米国特許第4,576,969号、1986年)のいずれかによって生成され得る。これらの物質の制限の1つは、制限された内部多孔性であり、そしてこれらは、利用可能である場合、高度に多孔性のスルホン化スチレンジビニルベンゼンコポリマーベースのイオン交換樹脂によって迅速に交換された。しかし、フェノールベースの樹脂は、ほとんど消失してしまったが、特定の用途はなお、これらの根底にある性能特徴に基づいて、食品関連産業において存在する。
【0003】
フェノール樹脂は、メソ多孔性炭素を形成するように炭化され得る。メソ多孔性炭素は、吸着剤または触媒担体として使用され、そして球状の顆粒の薄いフィルム形態で使用され得る。既存の生成方法は、メソ多孔性炭素を生成するために気相および化学的活性化経路を使用するが、従来生成されるように、活性化炭素は、メソ孔(2〜50nm)およびマクロ孔(>50nm)の範囲の孔容量をほとんどまたは全く有さない、通常ミクロ多孔性(<2nm孔直径−IUPAC定義)である。エバポレーションエミッションコントロールのようないくつかの重要な吸着プロセスについて、そして触媒担体として使用される場合、特に、液相用途において、これは、主な欠点である。
【0004】
従来の活性炭素は、いくつかの活性化を介してメソ多孔性となり得るが、これは、これらの機械的特性を重大に低下させ、次いでこれらの物質は、一般的に、微粉としてのみ利用可能である。米国特許第4677086号は、このような重大な機械的劣化なしでメソ多孔性炭素を生成する化学的活性化の使用を開示し、これはまた、押し出し物(extrudate)として生成され得る。しかし、これらは、なお、粉末として生成され、次いで、例えば、固定床気相プロセスにおける使用のための押し出し物を生成するために結合されなければならない。多くの場合、使用され得る結合剤は、次いで炭素が使用され得る条件を制限する重合体またはセラミックである。
【0005】
化学的活性化はまた、米国特許第5324703号に開示されているように、可塑化酸性リグニン基剤チャーをペレット化または押し出し、次いで混合物を直接的に炭化および活性化することによって、メソ多孔性炭素を直接的に生成するために、使用され得る。生成経路はまた、低マクロ多孔性を生じ、これは、触媒および液相プロセスにおいて不利益を有し得る。経路はまた、活性化剤としてリン酸および塩化亜鉛のような化合物を必要する不利益を有し、これは、重大な環境問題を引き起こし得、そして処理工場の構築の材料に対して主要な影響を与え得る。
【0006】
代替的な経路は、米国特許第4040990号および米国特許第4839331号において開示されるような、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーを炭化する経路である。これらは、さらなる活性化に頼ることなく、メソ/ミクロ多孔性を用いる熱分解によって直接的に炭素を生成する。従って、これらの物質は、優れた機械的特性を有する。しかし、これらは、ポリマー生成経路によって固定される比較的小さい粒子サイズに制限され、そして制限された範囲のメソ孔構造を有する。これらはまた、前駆体ポリマーの高い費用、低炭素収率、および大量の硫黄を含むポリマーを処理することに関連する環境問題を反映して非常に高価である。得られた炭素はまた、硫黄が混入し、このことは、触媒担体としてのこれらの使用を制限する。
【0007】
さらなる経路が、米国特許第5977016号に開示され、これにより、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー粒子が、大量の縮合硫酸の存在下でペレットに形成され、次いでメソ多孔性およびマクロ多孔性の両方を有する構築された物質を与えるように炭化される。しかし、この経路は、重要な環境問題を有し、複雑かつ高価である。
【0008】
さらなる経路が、米国特許第4263268号に開示され、ここで、所望のマクロ形状(すなわち、球)を有するメソ多孔性シリカが、炭素形成ポリマー(例えば、フェノール樹脂またはポリフルフリル樹脂)を染み込ませられ、次いでアルカリ中でシリカテンプレートを溶解する。このことは、再び、非常に高価な経路であり、そして制限された範囲の形状および形態で炭素物質を生成し得るのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4423159号
【特許文献2】米国特許第5441991号
【特許文献3】米国特許第4576969号
【特許文献4】米国特許第4677086号
【特許文献5】米国特許第5324703号
【特許文献6】米国特許第4040990号
【特許文献7】米国特許第4839331号
【特許文献8】米国特許第5977016号
【特許文献9】米国特許第4263268号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Adamsら、J Soc Chem Ind.54,(1935)1−GT
【非特許文献2】Cristal M J,Chem and Ind,814,(1983)Nov 7
【発明の概要】
【0011】
ここで、本発明者らは、気相または化学的活性化なしで、メソ多孔性炭素のような多孔性炭素を形成するために使用される多孔性樹脂構造を生成する改善された方法を発明した。
【0012】
本発明は、以下を提供する。
[1]多孔性樹脂構造を形成するための方法であって、細孔形成剤の存在下で、求電子性架橋剤と求核性成分とを縮合させる工程を包含する、方法。
[2]上記[1]に記載の多孔性樹脂構造を形成するための方法であって、ここで、上記求核性成分が、フェノール化合物またはフェノール縮合プレポリマーである、方法。
[3]上記フェノール縮合プレポリマーが、本明細書中に定義されるようなNovolac樹脂である、上記[2]に記載の方法。
[4]上記フェノール化合物が、フェノール、ヒドロキノン、またはレゾルシノールである、上記[2]または[3]に記載の方法。
[5]上記細孔形成剤が、ジオール、ジオールエーテル、環状エステル、置換された環状または直鎖状のアミドもしくはアミノアルコールである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記細孔形成剤が、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノンまたはモノエタノールアミンである、上記[5]に記載の方法。
[7]ポリマー成分の100重量部当り、少なくとも120重量部の細孔形成剤が存在する、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]溶液中で実行され、そして上記細孔形成剤がまた溶媒である、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]上記溶媒が水とジオールの混合物を含む、上記[8]に記載の方法。
[10]上記溶媒が、上記[6]に記載の細孔形成剤および水の二成分または三成分またはより複雑な混合物を含む、上記[8]に記載の方法。
[11]上記架橋剤が、ホルムアルデヒド、フルフラールまたはヘキサメチレンテトラミンである、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12]上記細孔形成剤が、樹脂の形成後に洗浄によって除去される、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13]上記[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法であって、溶媒としての細孔形成剤中で、Novolacプレポリマーを、改変試薬、架橋剤および触媒の1つ以上と共に溶解する工程によって溶液を得、そして該溶媒を加熱して架橋反応を起こし、固体樹脂を生じる、方法。
[14]固体多孔性重縮合樹脂が、酸触媒または塩基触媒と共に加熱することによって生成される、上記[13]に記載の方法。
[15]上記改変剤が、尿素、アニリンまたは他の芳香族アミンまたはメラミンまたは他のヘテロ芳香族アミンである、上記[13]または[14]のいずれか1項に記載の方法。
[16]上記多孔性樹脂が、ブロックで生成され、次いで粉砕され、そして炭化されて、粒子性炭素を得る、上記[13]〜[15]に記載の方法。
[17]上記反応溶液を、限定された程度の架橋が生じるまで加熱して、部分的に架橋した液体樹脂溶液を生成する、上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
[18]請求項17]に記載の方法であって、上記化合物は限定された程度の架橋が生じるまで加熱され、そして部分的に架橋した液体が分散剤を含む非混和性液体に注がれ、該混合物は、該部分的に架橋したポリマーがビーズに形成されるまで撹拌され、該ビーズが、混合できない液体から除去されて、樹脂ビーズを形成する、方法。
[19]上記混合できない液体が油である、上記[17]または[18]に記載の方法。
[20]水溶性であるが、分散油中に難溶性である、細孔形成剤が、メソ/マクロ多孔性樹脂生成のために使用される、上記[18]または[19]に記載の方法。
[21]形成される上記メソ多孔性樹脂ビーズの粒子サイズが、5ミクロンと2000ミクロンの間である、上記[18]、[19]または[20]に記載の方法。
[22]ヘテロ原子の分散が、多孔性樹脂構造に組み込まれる、上記[1]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]上記へテロ原子が金属であり、そして樹脂を架橋する前に、上記細孔形成剤に塩の溶液を添加することによって、上記多孔性樹脂構造中に組み込まれる、上記[22]に記載の方法。
[24]上記ヘテロ原子が非金属であり、そして樹脂を架橋する前に、上記細孔形成剤に該ヘテロ原子を含む有機前駆体を添加することによって、上記多孔性樹脂構造に組み込まれる、上記[22]に記載の方法。
[25]上記ヘテロ原子が非金属であり、そして樹脂を架橋する前に、上記細孔形成剤に該ヘテロ原子を含む無機前駆体を添加することによって、上記多孔性樹脂構造に組み込まれる、上記[22]に記載の方法。
[26]上記多孔性樹脂が多孔性炭素を生成するように炭化される、上記[1]〜[25]のいずれか1項に記載の方法。
[27]炭化が、800℃までの温度で、そして不活性気体の流れ中で行なわれる、上記[26]に記載の方法。
[28]不活性気体が、二酸化炭素、または窒素、またはアルゴンである、上記[27]に記載の方法。
[29]得られた顆粒炭素が、2ミクロン〜2000ミクロンの範囲のサイズを有する不規則な形態の粒子からなる、上記[26]〜[28]に記載の方法。
[30]上記得られた顆粒炭素が、2ミクロン〜1600ミクロンの範囲のサイズを有する球状粒子からなる、上記[26]〜[28]に記載の方法。
[31]上記多孔性炭素が、約2nmと50nmの間(メソ孔)またはそれより大きい(マクロ孔)平均孔サイズを有し、そして約0.6nmと2nmの間の平均孔サイズを有するミクロ孔が存在する、上記[29]または[30]に記載の方法。
[32]上記多孔性炭素が、二酸化炭素または蒸気中で加熱することによって活性化される、上記[26]〜[31]のいずれか1項に記載の方法。
[33]多孔性炭素が、400℃を超える空気中で加熱することによって活性化される、上記[26]〜[31]のいずれか1項に記載の方法。
[34]上記[26]〜[33]のいずれか1項に記載の方法によって作製された多孔性炭素。
[35]上記[1]〜[24]のいずれか1項に記載の方法によって作製されたメソ多孔性フェノール樹脂ビーズ。
[36]5nm〜50nmの平均直径(メソ孔)および50nmより大きい平均直径(マクロ孔)の孔サイズを有する、2ミクロン〜2000ミクロンの直径を有する、フェノール樹脂ビーズ。
[37]2nm〜50nmの平均直径(メソ孔)および50nmより大きい平均直径(マクロ孔)の孔サイズを有する、2ミクロン〜1600ミクロンの直径を有する、多孔性炭素球。
[38]2nm〜50nmの平均直径のメソ孔および50nmより大きい平均直径(マクロ孔)および0.6nm〜2nmの平均直径のミクロ孔を含む孔サイズの混合物が存在する、2ミクロン〜1600ミクロンの直径を有する、多孔性炭素球。
[39]BET表面積が、250〜800m2/gである、上記[37]または[38]に記載の多孔性炭素球。
【0013】
本発明に従って、多孔性樹脂構造を形成するための方法が提供され、この方法は、細孔形成剤の存在下での、溶液中での求電子性架橋剤と求核性成分との縮合を含む。
【0014】
縮合は、触媒され得るかまたは触媒され得ない。
【0015】
本発明はまた、多孔性炭素構造を形成するための方法を提供し、ここで、多孔性樹脂は、多孔性炭素構造を形成するように炭化される。
【0016】
求核性成分は、例えば、フェノール、フェノールホルムアルデヒドプレポリマー(必要に応じて改変剤を共に使用する、Novolac)であり得る。
【0017】
求電子性成分は、例えば、ホルムアルデヒド、ヘキサミン、フルフラールであり得る。
【0018】
好ましくは、細孔形成剤は、溶媒として作用する。
【0019】
多孔性重縮合樹脂の調製のための方法は、一般的に、触媒(酸性または塩基性)を用いてかまたは用いずに、細孔形成剤中に、求核性成分(例えば、フェノール、Novolac、改変剤)および求電子性架橋成分(例えば、ホルムアルデヒド、ヘキサミン、フルフラール)を溶解する工程、ならびに得られた溶液を熱硬化させて、細孔形成剤が樹脂マトリクス内に均等に分布して、制御されたサイズの孔を作製して、硬化、固体、不溶性および不溶解性の樹脂を得る工程、を包含する。
【0020】
本発明は、メソ多孔性/マクロ多孔性炭素に炭化され得る多孔性炭素を生成するために特に有用である。ここで、窒素吸着および水銀旋光分析法によって測定されるように、そしてIUPACによって定義されるように、メソ多孔性炭素は、本明細書においてミクロ孔とならんで、約2nm〜約50nmの直径を有する孔を保有する炭素を意味し、そしてマクロ多孔性炭素は、ミクロ孔とならんで50nmより大きい直径を有する孔を保有する炭素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、誘導される炭化物質の多孔性に対する樹脂組成物中の孔形剤含有量の効果を示す。
【図2】図2は、誘導される炭素の多孔性に対する、反応系フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸の樹脂組成物中のアニリン含有量の効果を示す。
【図3a】図3aは、フェノール樹脂の多孔性に対する細孔形成剤含有量の効果を示す。
【図3b】図3bは、対応する炭化物質の多孔性に対する樹脂組成物中の細孔形成剤の効果を示す。
【図4】図4は、得られる炭素の多孔性に対するNovolac−ヘキサミン−エチレングリコール反応系の樹脂組成物へのアニリンまたは尿素の添加の効果を示す。
【図5】図5は、反応系Novolac−細孔形成剤−ヘキサミンの樹脂から誘導される炭素の多孔性に対する細孔形成剤の性質の効果を示す。
【図6】図6は、誘導される炭素の多孔性に対するNovolacおよびヘキサミンに基づいた樹脂組成物中における別の溶媒での細孔形成剤の改変の効果を示す。
【図7】図7は、銅含有樹脂から誘導される炭素の多孔性に対する炭化手順の効果を示す。
【図8】図8は、誘導される炭素の多孔性に対する樹脂架橋条件の効果を示す。
【図9】図9は、Novolac−ヘキサミン−フルフラール−エチレングリコール反応系の樹脂から誘導された炭素の多孔性を示す。
【図10】図10は、ブロックで調製された樹脂(Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール反応系)および誘導された炭素の多孔性パラメーターを示す。
【図11】図11は、誘導される炭素の多孔性に対するNovolac−ヘキサミン−エチレングリコール−ホウ酸反応系の樹脂の異なる処理の効果を示す。
【図12a】図12aは、樹脂の多孔性に対するブロック樹脂組成物中のエチレングリコール含有量の効果、反応系Novolac−メラミン−ホルムアルデヒド−エチレングリコールを示す。
【図12b】図12bは、誘導される炭素の多孔性に対する、ブロックで調製された反応系Novolac−メラミン−ホルムアルデヒド−エチレングリコールの樹脂の組成物中のEG含有量の効果を示す。
【図13】図13は、反応系Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール、Novolac−レゾルシノール−ヘキサミン−エチレングリコールおよびNovolac−ヒドロキノン−ヘキサミン−エチレングリコールから誘導された炭素の多孔性の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(フェノール重縮合プレポリマー)
フェノールホルムアルデヒド縮合プレポリマーは、Novolac樹脂であり得る。Novolac樹脂は、代表的に、およそ等モル量のフェノールおよびホルムアルデヒドの酸触媒縮合によって生成される。Novolacは、通常、平均分子量に依存して100℃以上で融解する熱可塑性固体ポリマーである。これらは、500〜2000Dの分子量を有する基本的に直鎖であり、ここで、フェノール部分は、メチレン(大部分)およびメチレンエーテル架橋で結合され、そして主にヒドロキシル基に対して非置換のオルト位置に1つの求核性活性部位を保有する。また、生成条件に依存して、種々の程度の鎖の分枝が存在し得る。
【0023】
商業的な材料は、フェノールおよびホルムアルデヒドを使用して大規模に生成されるが、種々の改変剤が、広範な異なる酸素および窒素の官能性および架橋部位を導入するために、プレポリマー形成段階において使用され得る。これらは、以下を含むがこれらに限定されない:
1.ヒドロキノンおよびレゾルシノール。共にフェノールよりも反応性であり、そしてプレポリマー生成段階においていくつかの架橋を生じ得る。異なる架橋経路を提供するために、架橋段階においてこれらの化合物を導入することはまた可能である。これらはまた、樹脂の酸素官能性を増加する。
【0024】
2.重縮合反応において活性である窒素含有化合物(例えば、尿素、芳香族(アニリン)およびヘテロ芳香族(メラミン)アミン)。これらは、最初のポリマー(および最終炭素)への特定の型の窒素官能性を導入することを可能にし、そして樹脂および最終炭素の両方のメソ多孔性構造の発生に影響する。
【0025】
ヒドロキノンおよびレゾルシノールと同様に、本発明において使用され得る全ての窒素含有求核性改変剤は、2つ以上の活性部位を保有し、そして縮合反応においてフェノールまたはNovolacより反応性である。このことは、これらが、第1の架橋剤と反応する最初の架橋剤であり、インサイチュで第2の架橋剤を形成することを意味する。メラミンの場合において、あらかじめ、第2の架橋剤(ヒドロキシメチル化メラミン)を調製することが好ましい。
【0026】
Novolacは、構造的変化なく繰り返し加熱および冷却され得るという点で、熱安定性である。これらは、架橋剤の添加時および加熱の際に硬化される。
【0027】
本発明のプロセスは、溶媒中で実行され、そして細孔形成剤はまた、溶媒であり得る。例えば、改変剤(必要な場合)、架橋剤および触媒(必要な場合)、ならびに溶媒としての適切な量の細孔形成剤と共に市販のNovolacプレポリマーから得られた溶液は、加熱されて架橋反応を起こし、固体樹脂を生じる。
【0028】
あるいは、本発明において使用され得る固体多孔性重縮合樹脂は、触媒(酸性または塩基性)を含む細孔形成剤中の溶液を加熱する際に、フェノール(および必要に応じて改変剤)およびホルムアルデヒド(または他の架橋剤)から直接生成され得る。
【0029】
両方の場合において、正しい組成が樹脂構造に細孔形成剤を「ロックする」ために使用され、そしてメソ多孔性樹脂を作製する場合、反応溶液は、架橋反応の間に準備される。
【0030】
多孔性樹脂前駆体は、ブロックに鋳造され得、そして粉砕され1〜1000ミクロンの範囲の粒子サイズの粉末を生じ得る。次いで、この樹脂粉末は、炭化され、例えば、2nmと50nmの間(メソ孔)または50nmを超える(マクロ孔)平均孔サイズを生じるように制御され得る孔サイズを有する多孔性炭素、およびまた0.6nmと2nmの間の平均孔サイズを有するミクロ孔を有する多孔性炭素を生じる。
【0031】
部分的に架橋したプレポリマーの粘性溶液が、分散剤を含む鉱油のような熱い液体に注がれ、そして混合物が撹拌される場合、プレポリマー溶液は、ビーズを形成する。これらは、最初は液体であり、次いで硬化が進行するにつれて、これらは、固体になる。平均ビーズ粒子サイズが、スターラーの型および速度、油の温度および粘性、プレポリマー溶液の粘性、ならびに溶液対油の体積比を含むいくつかのプロセスパラメーターによって制御され、そして5ミクロンと2000ミクロンの間で調整され得る。次いで、これらのビーズは、油からろ過され得、そして細孔形成剤が除去された後、熱分解されてメソ多孔性炭素樹脂またはマクロ多孔性炭素樹脂を生じる。
【0032】
メソ孔生成の機構は、架橋反応の間に生じる相分離プロセスに起因すると考えられている。細孔形成剤の非存在下において、直鎖のプレポリマーが架橋を生じるにつれて、分子量は最初増加する。残渣の低分子量成分は、より高分子量領域において不溶性となり、低分子量の連続相内の架橋した高分子量ドメインへの相分離を引き起こす。残渣のより軽いプレポリマーがドメイン間で閉じ込められて、架橋した相が本質的に連続するまで、軽い成分の成長するドメインの外側へのさらなる縮合は、生じる。
【0033】
(細孔形成剤)
細孔形成剤として使用され得る、多数の溶媒が存在する。これらの溶媒に対する主要な要件は、以下である:溶媒への反応成分の高い溶解度/適合性;プレポリマー/架橋剤/溶媒の溶液の、使用可能な粘度(これは例えば、受容不可能に高い粘度を与えるグリセロールを本質的に排除する);重縮合反応を溶媒の有意な蒸発なしに合理的な速度で実施するための、合理的に高い沸点。
【0034】
使用され得る細孔形成材としては、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール(ジオール);ジエチレングリコール、トリエチレングリコール(ジオール−エーテル);ガンマ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート(環状エステル);ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(置換アミド、環状および直鎖状);モノエタノールアミン(アミノアルコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
低レベルの細孔形成剤の存在下で、この細孔形成剤は、架橋した樹脂ドメインと適合性であり、そしてこのドメイン内に維持され(例えば、Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール反応系については、100部のNovolacあたり120部未満)、一方で残りのものは、このドメイン間で部分的に架橋したポリマーと共に、溶液を形成する。より高いレベル(架橋樹脂の容量を越える)の細孔形成剤の存在下では、この細孔形成剤は、軽ポリマー画分を増加させ、ドメイン間の隙間における物質の容量を増加させ、このことは、メソ細孔を生じさせる。一般に、細孔形成剤の含有量が高いほど、ミクロ細孔がより広くなり、そして細孔の容積がより高くなる。
【0036】
次いで、この相分離機構は、架橋樹脂構造中における細孔の発生の、種々の様式での制御を提供する。これらは、以下である:細孔形成剤の化学組成および濃度;架橋性求電子剤の化学組成および量;改変求核剤の存在、化学的性質および濃度;フェノール性求核成分(フェノール、Novolac)の化学組成;触媒の存在、化学的性質(酸性、塩基性)、および濃度。
【0037】
上記油分散法によって球状樹脂を生成するために、溶媒はまた、樹脂ビーズの溶液が油のバルクに分散した「油中水」型のエマルジョンの形成を確実にし、油への溶媒抽出およびその回収に関する問題を最小にし、そして水での洗浄によって固体樹脂ビーズからの溶媒の単純な回収を増強するために、油と非適合性であり、そして水と適合性であるべきである。
【0038】
異なるクラスの有機化合物のプロトジェニック溶媒と非プロトン性溶媒との両方が、これらの要件に適合し、そして細孔形成材として、両方が個々にか、混合物中でか、または水と混合されて、使用され得る。
【0039】
構造が非常に類似しているが異なる溶媒は、架橋樹脂との異なる適合性を有する。その結果、このことは、相分離を異なる程度まで変化させ、次いで樹脂および対応する炭素の多孔性に影響を与える。これらの極性有機溶媒中への故意の水の添加は、樹脂と得られる細孔形成剤との適合性を低下させ、このことは、いくつかの反応系に対して有利であり得るが、1つの反応生成物としての水は、カルボニル化合物が架橋剤として使用される任意の反応において、必然的に存在する。細孔形成剤としてのアミドの共通の特徴は、これらが通常、ヘキサミンとの架橋を促進するために、故意の水の添加(2〜5%)を必要とすることである。アミドが細孔形成剤として使用される場合には、最終の炭素は、窒素吸着によって検出可能なメソ細孔を示さないが、これらは比較的バルク密度が低く、このことは明らかに、大きな細孔(>50nm)の存在を示す。
【0040】
いくつかの細孔形成剤はまた、特定の条件下で、架橋プロセスに寄与し得る。例えば、活性な炭素陽イオンが、強酸性媒体中のエチレングリコールまたはモノエタノールアミンおよびホルムアミドの、ホルムアルデヒドでのメチロール誘導体から形成され得、これらは、第2の架橋剤として反応する。
【0041】
(架橋剤)
本発明において使用される第1の架橋剤は、ホルムアルデヒド、フルフラールおよびヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)である。ホルムアルデヒドは、細孔形成剤中の溶液でかまたは固体パラホルムアルデヒド(CH2O)xとしてかのいずれかで、導入される。ホルムアルデヒドは、フェノール性部分と架橋して、−CH2−架橋および−CH2−O−CH2−架橋を、反応混合物のpHに依存する比で形成する。メチレン架橋は、強酸および強アルカリの媒体中で形成される唯一の架橋であり、一方で中性に近いpHにおいては、いずれかの型の架橋が出現する。水が、化学量論的な第2の縮合生成物として、形成される架橋の型に依存するレベルで形成される。メチレン架橋の場合には1モルのホルムアルデヒドあたり1モル、またはエーテル架橋の場合には2モルのCH2Oあたり1モルのH2Oである。次いで、「縮合」水は、この水を含む細孔形成剤と樹脂ドメインとの適合性を、使用される細孔形成溶媒に依存して低下させることによって、相分離およびメソ細孔形成プロセスに影響を与え得る。
【0042】
メチレン架橋による、フェノールとホルムアルデヒドとの完全な架橋は、約1〜1.5モル比の試薬を必要とする。いくらかのエーテル型架橋の形成を考慮して、本発明の樹脂組成物におけるフェノール対ホルムアルデヒドのモル比は、好ましくは、1.6〜1.8のレベルに維持される。このことは、100重量部のNovolac樹脂あたり、さらに9〜12重量部のホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)を必要とする。
【0043】
フルフラールは、そのカルボニル基の求電子反応性が、複素環の高い求核反応性によって補充される点で、ホルムアルデヒドとは異なる。さらに、環の切断および引き続く反応は、広範な生成物を与え得、これらは、さらなる架橋経路(おそらくフェノール性ヒドロキシルが関与する)を提供し得る。これらは、フラン樹脂誘導体に対して、特に酸性媒体中で代表的であり、そして他の架橋剤と組み合わせて、樹脂の化学構造と多孔性との両方を改変するさらなる経路を提供する。
【0044】
ヘキサミンは、粉末として直接、反応溶液に導入され得る。加熱の際に、微量の水、およびおそらく、プロトン性溶媒によって触媒されて、環の切断が起こり、活性種(アミノカルビノール)の形成を生じる。架橋の際に、これらは異なる架橋(単純なメチレン架橋およびより複雑な架橋(ビス−メチレンアミン、トリス−メチレンアミンおよび1,3−オキサジンのような、窒素含有基形成(grouping))を含む)を形成する。低分子量の縮合副生成物は、水(これは次いで、ヘキサミンの次のプロトンを切断する)およびアンモニアである。アンモニアは、反応条件においては高度に揮発性であるが、酸性触媒も塩基性触媒も存在しない場合には、反応溶液のpHを増加させ、これもまた、相分離およびメソ細孔形成プロセスに影響を与え得る。
【0045】
本発明において、ヘキサミンは、好ましくは、Novolac樹脂を架橋させるために、100重量部のNovolacあたり9重量部のヘキサミンの濃度で使用される。このことは、最大の架橋度を有する固体樹脂の形成を確実にする。このことは、以前に開示された焼結樹脂構造(代表的に、100部のNovolacあたり3部のヘキサミンが使用された)(EP0245551)とは対照的である。ヘキサミンがエチレングリコール溶液中で、100重量部のNovolacあたり3重量部のレベルで使用される場合、非孔質の半固体のゴム状物質のみが得られ、一方で9重量部のレベルでは、高度にメソ細孔のある固体樹脂が生成した。架橋度が十分でない場合には、エチレングリコールが内部可塑剤として作用し得ると考えられる。
【0046】
(改変剤)
本発明において使用され得る改変剤のほとんどは、窒素を含み、従って、この窒素を、樹脂および従って最終の炭素に導入する。これらの共通の特徴は、それらの縮合反応における反応性であり、これは、フェノールとNovolac樹脂との反応性より高い。これらの化合物が比較的少量で(フェノール成分の5〜30重量%)添加された場合に縮合プロセスに関与する、少なくとも以下の3つの区別可能な様式が存在する:
1.Novolac−第1の架橋剤−改変剤の反応系。ここでは、改変剤が第1の架橋剤と迅速に反応して、第2の架橋剤を形成し、次いでこの第2の架橋剤が、Novolac鎖を一緒に結合させる。その結果、ホモ縮合したフェノールホルムアミド鎖からなる樹脂が、窒素含有基形成(またはレゾルシノールもしくはヒドロキノン由来の部分)で架橋される。
【0047】
2.フェノール−架橋剤−改変剤−強酸性または強塩基性触媒。別個のホモ縮合プロセスが、2つの異なる求核試薬(フェノールおよび改変剤)に対して起こる。これは次いで、二成分樹脂マトリックスの形成を生じ、ここで、これら2つの樹脂成分は、熱処理の際に異なる様式で挙動する。
【0048】
3.フェノール−架橋剤−改変剤−弱酸もしくは弱塩基触媒、または触媒なし。これは、共縮合プロセスを導き、改変部分がフェノール系樹脂内に等しく分散している、構造的に均一な物質が形成される。
【0049】
これら3つの異なる場合に対して、生成する樹脂と最終の炭素との両方の多孔性に対する改変剤の影響は、異なり得る。従って、フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸(触媒としての強酸)の反応系については、フェノールに対して0から20モル%に増加するアニリンの量が、メソ細孔を次第に狭くする。逆に、Novolac−アニリン−ヘキサミン−エチレングリコールの反応系およびNovolac−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコールの反応系の場合(触媒なし)には、Novolacに対して0から20重量%に増加するアニリンの量は、メソ細孔の幅と容積との両方の顕著な増加を生じる。
【0050】
(反応速度の効果)
純粋な触媒効果(例えば、反応速度を増加させることおよび反応経路を変化させること)に加えて、強い酸およびアルカリは、フェノレートの形成(アルカリについて)またはプロトン化(酸について)に起因して、極性細孔形成剤中における、成長する樹脂鎖の溶解度および適合性ならびに凝集を劇的に増強する。高すぎる触媒濃度もまた、いくつかの所望でない反応(例えば、アミドおよびエステル細孔形成剤の分解、アルデヒドの不均化(アルカリにより触媒されるカニッッツァーロ反応)、(触媒としての硫酸による)スルホン化に起因する、ベンゼン環の活性部位のブロッキング)の増強を生じ得る。低すぎる触媒濃度は、縮合反応を有意に遅くするのみでなく、多孔性の劣化をもまた生じ得る。
【0051】
一定の組成の樹脂におけるメソ細孔の発生もまた、架橋反応の速度に依存する。縮合反応の速度は、反応温度によって、また樹脂の物理的形状(ブロック、ビーズなど)によって制御される熱移動現象を介して制御され得る。このことは、プロセスが小さな樹脂の液滴を用いて熱油中で実施されるので熱移動の現象が無視され得る、球状樹脂の調製において見出される。固体の硬化した球状樹脂が、エチレングリコール中のNovolacおよびヘキサミンの溶液から、温度を100℃から105℃(溶液はゲル状態に非常に近い)に滑らかに増加させ、この溶液を油中におよそ同じ温度で分散させ、次いで温度を150〜160℃に次第に上昇させて架橋を完了させることによって調製される場合には、メソ多孔性の高い樹脂が形成される。逆に、Novolacおよびヘキサミンが、エチレングリコールに65〜70℃で溶解され、そして160〜180℃で油中に直接分散される場合には、得られる硬化した樹脂のメソ多孔性は劇的に低下する。炭化の際に、第一の樹脂は、中程度〜低いミクロ多孔性を有する、メソ多孔性の高い炭素を生成する。第二の樹脂は、ミクロ多孔性が比較的高いがメソ多孔性が低い炭素を生成する。
【0052】
温度衝撃条件下で架橋が非常に迅速に進行する場合は、穏やかな硬化条件下で形成する通常のサイズのドメインの変わりに、比較的小さなドメインの凝集体が形成されると考えられる。次いで、凝集体における小さなドメイン間の間隙が、さらなるミクロ細孔を生じる。凝集体間のほとんどない細孔は、いくらかのメソ細孔を生じる。
【0053】
硬化した樹脂から細孔形成剤が除去される様式は、対応する炭素における多孔性の生成のために重要であり得ることもまたわかった。細孔形成剤(例えば、エチレングリコール)が、炭素の生成の間に単純に熱分解によって除去される場合には、メソ細孔が失われ得る。細孔形成剤を、低い温度(例えば、100℃未満)で、樹脂の水での洗浄または減圧蒸留によって除去し、そして引き続き細孔形成剤がリサイクルされることが、好ましいことがわかった。洗浄(時々中和後)は、触媒としてアルカリまたは硫酸が使用される場合には、絶対に必要となる。このことは、アルカリが時々非常に望ましくない様式で炭化プロセスに影響を与え、一方で硫酸が炭素を硫黄で汚染し、触媒担体としての炭素の価値を低下させることに起因する。
【0054】
(他の添加剤)
ヘテロ原子が樹脂構造に組み込まれ得ることもまたわかった。銅、ニッケル、クロムなどの金属は、この金属を塩の溶液として細孔形成溶媒中に組み込み、その後、樹脂を架橋させることによって、多孔性樹脂構造に組み込まれ得、そして非金属およびメタロイドは、メソ細孔を有する樹脂に、そして従ってメソ細孔を有する炭素に、直接組み込まれ得る。無機化合物が細孔形成剤に可溶性である場合には、この化合物は最初の反応溶液に直接添加され得る。次いで、調製手順が、通常の様式で実施される。次いで、金属種は、樹脂マトリックス内に均一に分配される。いくつかの場合には、元素がフェノール系樹脂のヒドロキシ基またはアミノ基と錯体を形成するか、またはこれらとの他の何らかの相互作用を有する能力は、最初の分配を原子レベルで増強する。次いで、高度に分散された元素を樹脂に組み込むことによって、熱分解の間に形成する炭素におけるその元素の高度な分散がもたらされる。
【0055】
(炭化および活性化)
任意の物理的形態および形状の多孔性樹脂の、本発明の多孔性炭素への変換は、炭化(すなわち、不活性雰囲気中での高温での処理および約600℃から上の温度での処理)によって、実施される。熱分解プロセスは、約400℃で開始し、そして約700℃でほぼ完了するが、さらに小さな重量損失が、約1400℃まで続く。しかし、表面積の発生は、約600℃より高温でのみ有意であり、この時点で、この材料は厳密には炭素ではない。有意な導電率の発生は、700℃より高温でのみ観察される。熱分解のための不活性雰囲気は、適切なガス流によって保証され得る。窒素およびアルゴンが、任意の温度において不活性なパージガスとして使用され得、一方で触媒金属の非存在下では、約800℃まで、二酸化炭素が効果的に不活性である。減圧もまた使用され得るが、これは分子ふるいの挙動の発生を導き得る。これらの材料におけるメソ細孔(これらは、揮発性生成物に効果的な逃げ道を提供する)の存在に起因して、使用される加熱速度は非常に高く、1分間あたり10℃までであり得る。炭素の多孔性は、従来の活性化方法(例えば、水蒸気中750℃より高温で、または二酸化炭素中800℃より高温で活性化させることによる)によって、さらに増強され得、これは、BET5点方法によって測定した場合に、2000m2/gまでの表面積を与え得る。二酸化炭素での、850から900℃の範囲の温度での「物理的」活性化は、優先的にミクロ細孔を生じ、一方で420〜450℃での空気による活性化は、メソ細孔のサイズおよび容積を、例えばもとの炭素においてと同じ細孔サイズおよび範囲に、かなり増強する。
【0056】
本発明の特徴は、制御された範囲の粒子サイズを有する球状多孔性炭素構造体が生成されることを可能にすることである。例えば、球のサイズ分布が、10より良好(好ましくは5より良好)なD90/D10の分布を与えるように制御され得、そしてより大きな細孔が、2nmから50nmまで(メソ細孔)、または50nmより大きい(マクロ細孔)までの平均直径に制御され得、そして平均のミクロ細孔直径が、従来の活性化手順に頼ることなく、0.6mmと2mmとの間に制御されて、250〜800m2/gのBET表面積を与え得る。
【0057】
本発明の材料は、高い物理的強度および高い耐磨耗性が特定の利点を与える、広範な種々の要求の厳しい適用において有利に使用され得る。これらとしては、液相触媒担体、血液濾過および炭素が流体床中または移動床環境中で使用される任意の適用が挙げられるが、これらに限定されない。大きなメソ細孔はまた、より大きな分子が、細孔内に吸着されるかまたはグラフトされるかのいずれかである系において、有利に使用され得る。これらとしては、薬物放出系、キラル担体などが挙げられ得る。
【0058】
本発明を、以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
94重量部のフェノール、54重量部のパラホルムアルデヒド(PF)(フェノール対ホルムアルデヒドのモル比1:1.8)、特定の量のエチレングリコール(EG)細孔形成剤および濃硫酸(SA)を含む反応混合物を、攪拌しながら特定の縮合温度(パラホルムアルデヒドは、約60℃で完全に溶解する)まで加熱し、そしてこの温度で特定の滞留時間維持した(表1−1)。
【0060】
【表1】
得られた粘性溶液をストリームとして、0.5%の乾性油(分散剤として作用する)を含む2〜4容量の予熱した(110〜115℃)攪拌鉱油に注いだ。得られた混合物の温度を約100〜102℃に低下させ、そして架橋が通常1〜2分で起こった。得られたスラリーを115〜120℃まで30〜60分で次第に加熱して、硬化を完了させ、そして冷却した。ビーズ形態の樹脂を油から濾別し、熱水で数回洗浄して細孔形成剤と触媒との両方を除去した。次いで、得られた多孔性球状樹脂(水、残留油、微量の細孔形成剤および触媒を含む)を、直接炭化して、球状多孔性炭素を生成し得る。樹脂の分析のために、この樹脂を有機溶媒(好ましくは、メタノール−エーテルの1:1 v/v溶液)で繰り返し洗浄し得、そして一定重量となるまで減圧下で乾燥し得る。二酸化炭素気流中800℃で加熱することによって形成した、炭化材料の細孔サイズ分布のグラフおよびいくつかの構造パラメータを、図1および表1−2に示す。ここには、誘導された炭化材料の多孔性に対する、樹脂組成物中の細孔形成剤の含有量および触媒濃度の影響が示されている。反応系フェノール−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸。
【0061】
【表2】
(実施例2)
94重量部のフェノール、特定の量のアニリン(A)、エチレングリコール細孔形成剤、パラホルムアルデヒドおよび濃硫酸を含む反応混合物を、攪拌しながら特定の縮合温度(完全なパラホルムアルデヒドの溶解は約60℃で起こる)まで加熱し、そして特定の滞留時間この温度に維持した(表2−1を参照のこと)。
【0062】
【表3】
得られた粘性溶液をストリームとして、0.5%の乾性油を含む2〜4容量の予熱した(110〜115℃)攪拌鉱油に注ぎ、そして樹脂をさらに、実施例1と同じ様式で処理した。炭素2.1〜2.4および炭素1.1の細孔サイズ分布グラフおよびいくつかの構造パラメータを、図2および表2−2において比較する。ここには、反応系フェノール−アニリン−ホルムアルデヒド−エチレングリコール−硫酸の樹脂組成物におけるアニリン含有量の、誘導された炭素の多孔性に対する影響が示されている。
【0063】
【表4】
(実施例3)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、特定の量のエチレングリコール細孔形成剤(表3−1を参照のこと)と一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65〜70℃にまで冷却し、ここで、9重量部の量のヘキサミン(HA)を添加した。得られた攪拌混合物を、特定の滞留時間で特定の温度に達するような速度で徐々に加熱した(表3−1を参照のこと)。
【0064】
【表5】
次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(115〜120℃)鉱油の2〜4容量中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度は105〜110℃まで下がったが、さらなる加熱によって、架橋は、約115〜120℃で生じた。150℃までの、1分当たり約0.5℃の速度でのさらなる加熱を、硬化を完了するために適用した。冷却後、樹脂ビーズを濾過して油分を除去し、そして熱水で数回洗浄して、細孔形成剤および少量(合計5%未満)の低分子量ポリマーを除去した。得られた多孔性球状樹脂(水、残留油分、微量の細孔形成剤および低分子量画分を含む)を、球状多孔性炭素を生成するために、流動二酸化炭素中で800℃で加熱することによって、炭化した。この樹脂ビーズが、洗浄を伴わずに油分からの分離後直接炭化される場合、得られた炭素の多孔性は、減少する。分析のために、樹脂サンプルを、有機溶媒、好ましくは1:1 v/vのエタノール−エーテル溶液で繰り返し洗浄し、そして減圧下で一定重量まで乾燥させるべきである。細孔サイズ分布グラフ、ならびに樹脂および炭化材料の両方のいくつかの構造的パラメーターを、図3aおよび3b、ならびに表3−2および3−3にそれぞれ示す。
【0065】
【表6】
図3bは、樹脂組成物中の細孔形成剤の、対応する炭化材料の多孔性に対する効果を示す。炭素3.1〜3.9について、反応系、Novolac−ヘキサミン−エチレングリコール。
【0066】
【表7】
(実施例4)
100重量部の量の工業的Novolac樹脂(N)を、上昇した温度で、特定量のエチレングリコール細孔形成剤(EG)(表4−1を参照のこと)と一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65〜70℃にまで冷却し、ここで、特定量のヘキサミン(HA)および改変剤(MA)−アニリン(A)または尿素(U)を添加した。
【0067】
【表8】
得られた攪拌混合物を、特定の滞留時間(RT)で特定の温度(CT)に達するような速度で徐々に加熱した(表4−1)。次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(110〜115℃)鉱油の2〜4容量中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度は100〜105℃まで下がったが、さらなる加熱によって、架橋は、約105〜110℃で生じた。150℃までの、1分当たり約0.5℃の速度でのさらなる加熱を、硬化を完了するために適用した。冷却後、樹脂ビーズを、実施例3と同じ方法でさらに処理した。細孔サイズ分布グラフ、および炭化材料(炭素4.1〜4.4)(800℃、流動二酸化炭素)のいくつかの構造的パラメーターを、
図4および表4−2において、炭素3.5のものと比較する。
【0068】
【表9】
(実施例5)
327重量部の特定の細孔形成剤(表5−1を参照のこと)中の、100重量部の工業的Novolac樹脂の透明溶液を、65〜70℃にまで加熱し、ここで、9重量部のヘキサミンを添加した。得られた反応混合物を、75〜80分で105〜107℃の最終縮合温度に達するように、攪拌しながら徐々に加熱した。
【0069】
【表10】
次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(115〜120℃)鉱油の2〜4容量中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度は110〜115℃まで下がったが、さらなる加熱によって、架橋は、通常約120℃で生じた。さらなる処理は、実施例3および4と同じであった。細孔サイズ分布グラフ、および二酸化炭素流動中または窒素流動中で800℃で加熱することによって得られる炭化材料(炭素5.1〜5.8)のいくつかの構造的パラメーターを、図5および表5−2に示し、そして炭素3.7のものと比較する。
【0070】
【表11】
(実施例6)
327重量部の特定組成の細孔形成剤(表6−1を参照のこと)中の、100重量部の工業的Novolac樹脂および9重量部のヘキサミンの透明溶液を、実施例5と正確に同じに処理した。
【0071】
【表12】
細孔サイズ分布グラフ、および流動二酸化炭素中で800℃で加熱することによって得られる炭化材料(炭素6.1〜6.3)のいくつかの構造的パラメーターを、図6および表6−2に示し、そして炭素5.3のものと比較する。
【0072】
【表13】
(実施例7)
100重量部の工業的Novolac樹脂、12重量部のヘキサミン、7重量部の無水硫酸銅(II)、190.4重量部のエチレングリコールおよび33.6重量部のモノエタノールアミン(触媒および細孔形成剤)を含む反応溶液を、35〜40分で60℃から100℃まで、徐々に加熱した。次いで、粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む、攪拌された、予め加熱された(115〜120℃)鉱油中に、ストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度を110〜112℃に最初に下げた後、さらなる加熱を、1分当たり0.5℃の速度で150℃まで適用した。通常、架橋は115〜120℃で生じた。樹脂ビーズの処理は、実施例3〜6と同じであった。図7および表7は、細孔サイズ分布、ならびにこの樹脂に由来し、かつ微細に分散した銅の約5重量%を含む炭素のいくつかの構造的パラメーターを示す。炭素7.1を、流動二酸化炭素中で800℃で樹脂を加熱処理することによって調製した。炭素7.2を、流動窒素中で800℃で樹脂を加熱処理することによって調製した。
【0073】
【表14】
(実施例8)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、327gのエチレングリコールと一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65℃にまで冷却し、ここで、9重量部の量のヘキサミンを添加した。得られた攪拌混合物を、ヘキサミンの溶解を確実にするためにのみ70℃まで短時間加熱し、0.5%の乾性油を含む攪拌された、予め加熱された(190℃)鉱油の3容量中にストリームとして注いだ。得られた乳濁物の温度を160℃に下がると、ほとんど直後に(1分未満で)架橋が生じた。反応混合物の温度を、15分で175℃にまで上げ、硬化を完了した。冷却後、樹脂ビーズを濾過して油分を除き、実施例3と類似の方法でさらに処理した。細孔サイズ分布グラフ、および得られた樹脂から生成される、厳しい条件下で架橋された炭素(炭素8、800℃、二酸化炭素)のいくつかの構造的パラメーターを、組成的に類似した樹脂に由来するが、穏やかな条件下(実施例3、7)で架橋された炭素(炭素3〜7)の対応する特性と、図8において比較する。
【0074】
(実施例9)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、236重量部のエチレングリコールと一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65℃にまで冷却し、ここで、3重量部の量のヘキサミンおよび15重量部の量のフルフラールを添加した。得られた攪拌混合物を、1時間で110℃に達するように徐々に加熱し、そして粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む攪拌された、予め加熱された(120℃)油の3容量中にストリームとして注いだ。さらなる加熱によって、硬化は、140〜145℃で(15〜20分で)生じた。硬化を完了させるためのさらなる加熱(155℃まで20分で)および冷却後、樹脂ビーズを濾過して除き、そして実施例3〜6に記載のように処理した。対応する炭素の多孔性パラメーターを、図9に示す。
【0075】
(実施例10)
100重量部の量の工業用Novalac樹脂を、上昇した温度で、218重量部のエチレングリコールと一緒に、かつ透明な溶液の形成を増強するために攪拌しながら混合し、次いでこれを65〜70℃にまで冷却し、ここで、9重量部の量のヘキサミン(HA)を添加した。得られた攪拌混合物を、70分で95〜97℃に達するような速度で徐々に加熱した。次いで、熱粘性溶液を、不活性材料から作製されるかまたは不活性材料によって裏打ちされたかのいずれかである浅いトレイ(例えば、PyrexTMガラスまたはPTFEフィルムで裏打ちされた金属)に注ぎ、このトレイを、続いて、細孔形成剤の喪失を最小化するために密封した。トレイを、適切な予め加熱した(100℃)オーブン中に配置した。オーブン内の温度を、1時間で150℃まで徐々に上昇させ、そしてもう1時間このレベルで維持した。冷却後、得られた固体ブロック樹脂を粉砕して、最大サイズ1cmの粒子を得た。粉砕した樹脂を、熱水で数回洗浄し、そして空気中で80〜100℃で乾燥させた。乾燥樹脂を粉末化し、分類し、そして通常の方法で炭化して、所望の粒子サイズであるが不規則な粒子形状のメソ細孔性の炭素を生成し得る。この樹脂が、洗浄なしで、粉砕後直接炭化される場合、得られた炭素のメソ細孔性は、実質的に減少する。細孔サイズ分布グラフならびに樹脂および炭化材料(800℃、二酸化炭素流動)の両方のいくつかの構造的パラメーターを、図10に示す。類似の手順を、本発明のすべての他の樹脂をブロックで調製するために適用し得る。
【0076】
(実施例11)
100重量部の工業的Novolac樹脂、9重量部のヘキサミン、20重量部のホウ酸および258重量部のエチレングリコールからなる反応溶液を、45分で70℃から100℃まで加熱した。得られた粘性溶液を、0.5%の乾性油を含む攪拌された、予め加熱された(105℃)油の3容量中にストリームとして注いだ。さらなる加熱によって、硬化は、110℃辺りで生じた。さらなる加熱を、硬化を完了するために、30分で160℃まで適用した。樹脂ビーズを濾過して除いた後、炭化の前のさらなる処理を、以下の3つの異なる方法で適用する:
1.全く処理しない。
2.熱水で数回洗浄する。
3.Soxhlett装置において、エーテルで抽出する。
得られた炭素11.1〜11.3の細孔サイズ分布グラフおよび他のパラメーターを、図11および表11において比較する。
【0077】
【表15】
(実施例12)
100重量部の工業的Novolac樹脂(N)、27.54重量部のメラミン(M)、26.18重量部のパラホルムアルデヒド(PF)および140.68重量部のエチレングリコール(EG)から作製された194.4重量部の透明溶液、ならびにさらなる特定量のエチレングリコール(EG)を含む溶液(表12−1)を、ガラストレイに配置し、密封し、予め加熱されたオーブン中に配置し、そして140±5℃で15時間維持したが、ゲル化は、最初の2〜3時間で生じた。冷却後、ブロックの樹脂を実施例10のようにさらに処理した。細孔サイズ分布グラフならびに樹脂および炭化材料(800℃、二酸化炭素流動)の両方のいくつかの構造的パラメーターを、図12a、12bおよび表12−2に示す。
【0078】
【表16】
【0079】
【表17】
(実施例13)
100重量部の量の工業的Novolac樹脂(N)を、特定量のエチレングリコール(EG)中に溶解させた。30重量部のEG中の10重量部のレゾルシノール(R)またはヒドロキノン(Hq)の溶液を、12重量部のヘキサミン(HA)と一緒に、Novolac溶液に添加した。得られた反応溶液を、特定の時間で特定の温度まで加熱し(表13−1)、0.5%の乾性油を含む攪拌熱油(120℃)中に注ぎ、そして実施例3〜6に記載のようにさらに処理した。このように得られた樹脂に由来する炭素の特性を、図13および表13−2において、炭素3.2および3.4の特性と比較する。
【0080】
【表18】
【0081】
【表19】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭素であって、
前駆体樹脂の炭化および場合により活性化の生成物であり、
窒素吸着法で測定されるミクロ孔およびメソ孔/マクロ孔を含む多孔性構造を有し、
前記ミクロ孔およびメソ孔/マクロ孔が2−10nmのサイズの孔をほとんど有さない二峰性の分布をしており、
前記前駆体樹脂の炭化の間に前記メソ孔/マクロ孔が揮発性の生成物のための逃げ道を提供する、多孔性炭素。
【請求項2】
前記ミクロ孔が前記前駆体樹脂の炭化の結果および場合によりその生じた炭化物質の活性化の結果であり、前記メソ孔/マクロ孔が孔形成溶媒中での前記前駆体樹脂の架橋の間の相分離の結果である、請求項1に記載の多孔性炭素。
【請求項3】
前記メソ孔/マクロ孔についての孔径Rの対数に対する前記孔容量Vの微分の値(dV/dlogR)が、20nmよりも大きい範囲の孔サイズの少なくともいくつかの値に関して0.2よりも大きい、請求項1または2に記載の多孔性炭素。
【請求項4】
触媒金属が存在しない、請求項1、2、または3に記載の多孔性炭素。
【請求項5】
汚染物である硫黄が存在しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項6】
不活性であり、250〜800m2/gのBET表面積を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項7】
活性化されており、800〜2000m2/gのBET表面積を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項8】
粉末の形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項9】
ビーズの形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項10】
多孔性炭素の作製方法であって、
(a)フェノール化合物またはフェノール縮合プレポリマーを場合によりヒドロキノン、レゾルシノール、尿素、芳香族アミン、およびヘテロ芳香族アミンから選択される1つ以上の改変剤とともに含む求核性成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、およびヘキサメチレンテトラミンからなる群から選択される求電子性架橋剤とを、ジオール、ジオールエーテル、環状エステル、置換環状エステル、置換直線状アミド、置換環状アミド、アミノアルコール、およびこれらいずれかと水との混合物からなる群から選択される細孔形成剤中の溶液中で反応させることによって、前駆体樹脂を形成し、高分子量のドメインと残渣の低分子量材料との間に相分離が起こり、前記細孔形成剤が前記残渣中での前記材料を増大させ、前記前駆体樹脂中での前記メソ孔を生じる工程;
(b)前記前駆体樹脂から前記細孔形成剤を除去する工程;ならびに
(c)不活性雰囲気中で600℃以上の温度で前記前駆体樹脂を炭化する工程であって、細孔が該炭化の間に発生して前記炭化材料が、前記前駆体樹脂からの(a)2nmまでの直径のミクロ孔ならびに(b)直径2−50nmのメソ孔および場合により直径が50nmより大きいマクロ孔を含み、前記ミクロ孔およびメソ孔/マクロ孔が、2−10nmのサイズの孔をほとんど有しない二峰性の分布であり、前記メソ孔/マクロ孔が前記前駆体樹脂の炭化の間に揮発性生成物のための逃げ道を提供する、工程
を含む、作製方法。
【請求項11】
Novolakとヘキサメチレンテトラミンとを細孔形成剤としてのエチレングリコール中の溶液中で反応させることによって、前記前駆体樹脂を形成する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記メソ孔性前駆体樹脂が形成されるにつれ、前記細孔形成剤が前記樹脂構造にロックされるように前記溶液が前記反応の間にセットされる条件下で、前駆体樹脂が形成される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂前駆体をブロックに鋳造し、前記ブロックを砕いて粉末を形成する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液を鉱油中に分散し、該鉱油を加熱して、前記前駆体樹脂のビーズを形成する工程をさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂を活性化する工程をさらに含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
多孔性炭素であって、
前駆体樹脂の炭化および場合により活性化の生成物であり、
窒素吸着法で測定されるミクロ孔およびメソ孔/マクロ孔を含む多孔性構造を有し、
前記ミクロ孔およびメソ孔/マクロ孔が2−10nmのサイズの孔をほとんど有さない二峰性の分布をしており、
前記前駆体樹脂の炭化の間に前記メソ孔/マクロ孔が揮発性の生成物のための逃げ道を提供する、多孔性炭素。
【請求項2】
前記ミクロ孔が前記前駆体樹脂の炭化の結果および場合によりその生じた炭化物質の活性化の結果であり、前記メソ孔/マクロ孔が孔形成溶媒中での前記前駆体樹脂の架橋の間の相分離の結果である、請求項1に記載の多孔性炭素。
【請求項3】
前記メソ孔/マクロ孔についての孔径Rの対数に対する前記孔容量Vの微分の値(dV/dlogR)が、20nmよりも大きい範囲の孔サイズの少なくともいくつかの値に関して0.2よりも大きい、請求項1または2に記載の多孔性炭素。
【請求項4】
触媒金属が存在しない、請求項1、2、または3に記載の多孔性炭素。
【請求項5】
汚染物である硫黄が存在しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項6】
不活性であり、250〜800m2/gのBET表面積を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項7】
活性化されており、800〜2000m2/gのBET表面積を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項8】
粉末の形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項9】
ビーズの形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔性炭素。
【請求項10】
多孔性炭素の作製方法であって、
(a)フェノール化合物またはフェノール縮合プレポリマーを場合によりヒドロキノン、レゾルシノール、尿素、芳香族アミン、およびヘテロ芳香族アミンから選択される1つ以上の改変剤とともに含む求核性成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、およびヘキサメチレンテトラミンからなる群から選択される求電子性架橋剤とを、ジオール、ジオールエーテル、環状エステル、置換環状エステル、置換直線状アミド、置換環状アミド、アミノアルコール、およびこれらいずれかと水との混合物からなる群から選択される細孔形成剤中の溶液中で反応させることによって、前駆体樹脂を形成し、高分子量のドメインと残渣の低分子量材料との間に相分離が起こり、前記細孔形成剤が前記残渣中での前記材料を増大させ、前記前駆体樹脂中での前記メソ孔を生じる工程;
(b)前記前駆体樹脂から前記細孔形成剤を除去する工程;ならびに
(c)不活性雰囲気中で600℃以上の温度で前記前駆体樹脂を炭化する工程であって、細孔が該炭化の間に発生して前記炭化材料が、前記前駆体樹脂からの(a)2nmまでの直径のミクロ孔ならびに(b)直径2−50nmのメソ孔および場合により直径が50nmより大きいマクロ孔を含み、前記ミクロ孔およびメソ孔/マクロ孔が、2−10nmのサイズの孔をほとんど有しない二峰性の分布であり、前記メソ孔/マクロ孔が前記前駆体樹脂の炭化の間に揮発性生成物のための逃げ道を提供する、工程
を含む、作製方法。
【請求項11】
Novolakとヘキサメチレンテトラミンとを細孔形成剤としてのエチレングリコール中の溶液中で反応させることによって、前記前駆体樹脂を形成する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記メソ孔性前駆体樹脂が形成されるにつれ、前記細孔形成剤が前記樹脂構造にロックされるように前記溶液が前記反応の間にセットされる条件下で、前駆体樹脂が形成される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂前駆体をブロックに鋳造し、前記ブロックを砕いて粉末を形成する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液を鉱油中に分散し、該鉱油を加熱して、前記前駆体樹脂のビーズを形成する工程をさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂を活性化する工程をさらに含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13】
【公開番号】特開2011−168484(P2011−168484A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82767(P2011−82767)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2002−518347(P2002−518347)の分割
【原出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(505105693)ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・(インベストメンツ)・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2002−518347(P2002−518347)の分割
【原出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(505105693)ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・(インベストメンツ)・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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