説明

多孔質インクジェット受理体のプラズマ処理

相互連通ボイドを有する多孔質画像受理層を含むインクジェット記録要素を開示する。インク寿郎の上部表面はプラズマ処理されており、プラズマ処理前のインク受理層の上部表面は、40%以上の測定元素炭素含有量を有する。本発明は、増大したドットの広がりを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録要素に関する。より具体的には、本発明は、プラズマ処理されたその表面層内に40パーセント以上の元素炭素を含有する多孔質インク受理層を含んで成るインク記録要素に関する。本発明はまた、このようなインクジェット記録媒体の製造方法、及びこのような媒体上の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なインクジェット記録又は印刷システムの場合、記録要素又は記録媒体に向かって高速でノズルからインク液滴を噴射することにより、媒体上に画像を生成する。インク液滴又は記録液滴は一般に、記録剤、例えば色素又は顔料、及び、ノズルの目詰まりを防止するための大量の溶剤を含む。溶剤又はキャリヤ液は典型的には、水、有機材料、例えば一価アルコール、多価アルコール、又はこれらの混合物から形成される。
【0003】
種々のインクジェット・プリンターにおいて使用されるインクは、色素系又は顔料系として分類することができる。色素系インクの場合、着色剤は、キャリヤ媒質によって分子分散又は溶媒和される。顔料系インクの場合、着色剤は不連続の粒子として存在する。顔料系インクは、光褪色又はオゾン褪色のような安定性に関して、顔料系インクよりも良好な性能を発揮する。
【0004】
インクジェット記録要素は典型的には、インク受理層又は画像形成層を、少なくとも1つの表面上(必ずしも隣接する必要はない)に有する支持体を含む。インク受理層は多孔質又は膨潤性となることができる。
【0005】
一般に、多孔質インクジェット受理体は、膨潤性インクジェット受理体よりも著しく速くインクを吸収する。これは、印刷物の取り扱いをより速く行うことを可能にし、そして画像アーチファクト、例えば凝集の傾向が低減される。多くの多孔質インクジェット受理体が今日入手可能である。これらは、小さな(<200 nm)無機粒子と、通常は有機ポリマーであるバインダーとから成る多孔質光沢受理体を含む。高分子バインダーは性質上親水性であってよく、例えばポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(ビニルアセテート)、又はこれらのコポリマー、又はゼラチンであってよい。高分子バインダーは性質上疎水性であってもよい。疎水性バインダーの例は、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、ポリ(n-ブチルアクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、n-ブチルアクリレートとエチルアクリレートとのコポリマー、又はビニルアセテートとN-ブチルアクリレートとのコポリマーを含む。
【0006】
これらの多孔質光沢受理体の場合、無機粒子と有機バインダーとの典型的な重量比は75:25〜95:5である。無機粒子を接着させて一緒にし、層の完全性を提供するのに十分なバインダーが存在しなければならない。しかし存在するバインダーがあまりにも多いと、層の多孔率又はボイド容積が低減され、その結果、乾燥速度が低下し、画像アーチファクトの傾向が増大する。
【0007】
これらの多孔質光沢受理体が顔料インクで印刷されると、インク液滴が受理体表面に衝突する結果として発生するドットの広がりは、極めて僅かでしかないことが判っている。このことは画像鮮鋭度の点からは或る程度望ましくはあるが、しかし印刷効率及び印刷濃度のためには望ましくないことがある。インク液滴が受理体表面に衝突し、そして広がることができると、このことはインクのカバー力を増大させ、結果として濃度を高くすることになる。
【0008】
米国特許第6,399,159号明細書及び同第6,565,930号明細書には、感光性コーティング材料、画像形成層、非感光性高分子コーティング又はラミネート、及び/又はこれらに典型的にコーティングされる層の付着力を促進するための適正な表面特性を得るために、紙及びポリオレフィン画像形成用支持体のプラズマ処理を用いることが論じられている。しかし、インクジェット用途のための表面インク受理層に直接的にプラズマ処理を施すことに関しては教示されていない。
【0009】
米国特許第5,605,750号明細書には、溶剤吸収性マイクロ多孔質材料から成る下側層と、多孔質疑似ベーマイトから成る上側画像形成層とを含む、インクジェット・プリンター内に使用するための不透明記録体が開示されている。層の付着力の改善のために、上側の画像形成層の塗布前に、下側のマイクロ多孔質材料にコロナ放電処理を施すことができる。しかし、ドットの広がりを高めるために最も上側の表面層にプラズマ処理を施すことについては言及されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、顔料インクで印刷するときに、ドットの広がり及び印刷濃度が高められるインクジェット受理要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの、及びその他の目的は、画像を受理するための表面を含む多孔質画像受理層を含むインクジェット記録要素であって、該表面がプラズマ処理によって改質されており、プラズマ処理前の該多孔質画像受理層が、該表面に約40%以上の元素炭素を含有する、インクジェット記録要素を含む本発明に従って達成される。
【0012】
多くの多孔質インクジェット受理体の場合、顔料インクで印刷するときのドットの広がりは極めて僅かでしかない。結果として、帯状アーチファクト並びに低減された光学濃度が発生する。これらの問題は、印刷されたインクのドットの広がりを或る程度増大させることにより、最小限に抑えることができる。
【0013】
出願人が見いだしたところによれば、これらの多孔質光沢受理体の表面に、印刷前にプラズマ処理を施すことによって、顔料インクによる印刷時にドットの広がりを著しく増大させることはない。しかし、予期せぬことに、表面に40%以上の元素炭素を含有する多孔質受理体にプラズマ処理を施す結果、ドットの広がりが増大され、そして印刷濃度が高められた。
【0014】
本発明はまた、このようなインクジェット記録媒体の対応する製造方法であって、該方法が、元素炭素含有率が約40%以上のインク浸透性多孔質インク受理層であるトップ層を有する1つ以上のインクジェット記録要素を含むシート材料を、カット済形態又は未カット形態で用意し;そして該インク受理層の上面にプラズマ処理を施す、ことを含む方法に関する。処理を施されるシート材料が複数の要素を含む場合、これらは処理に続いて個々の単位にカット又は分割することができる。あるいは、既にカットされた個々の単位をプラズマ処理することもできる。いずれの場合にも、この方法はさらに、インクジェット印刷プロセスに使用する目的で該インクジェット記録要素を使用者に配布して販売するために、複数の該プラズマ処理済インクジェット記録要素をパッケージングすることを含むことができる。
【0015】
本発明はまた、インクジェット印刷方法であって、
A) デジタルデータ信号に対して応答性のインクジェット・プリンターを用意し;
B) 上記インクジェット記録要素を、該プリンターに装填し;
C) 該プリンターにインクジェット・インク組成物を装填し;そして
D) 該デジタルデータ信号に応答して該インクジェット・インクを使用して、該インクジェット記録要素上にプリントする
工程を含む、インクジェット印刷方法に関する。
【0016】
この印刷方法の好ましい態様の場合、インク組成物は、色素系インクよりもむしろ顔料インクである。
【0017】
「インク浸透性」という用語は、インク記録剤及び/又は記録剤のためのキャリヤが、使用中にミクロボイド含有層内に効率的に輸送され得ることを意味するように、出願人によって定義される。
【0018】
本明細書中に使用された「真上の」、「上に」及び「下に」などという用語は、インクジェット媒体内の層に関して、支持体上の層の順序を意味するが、しかし、すぐに隣接していること、又は中間層がないことを必ずしも示すものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい態様の場合、本発明によるインクジェット記録要素は、インク受理層又は画像形成層を、少なくとも1つの表面の上(必ずしも隣接する必要はない)に有する支持体を含む。インク受理層は多孔質である。支持体は、相互連通ボイドによって多孔質の場合、追加のインク受理層を有さず、それ自体がインクジェット記録要素であってもよい。
【0020】
上記のように、多孔質インク受理層は、プラズマ処理が施される前に、その表面層内に40パーセント以上の元素炭素を含有する。この「表面層内の元素炭素パーセント」は、本明細書中では、X線光電子分光法(XPS)測定に基づいて定義される。この測定において、インクジェット記録要素の試料は、深さ5 nmにおける画像形成側面上の元素含有量に関して分析される。分析は、水素を除く全ての元素を含み、100パーセントを基準として標準化される。このような測定は、例において説明される。同等のXPS分析技術及び設備をこの測定のために採用することができる。
【0021】
好ましくは、プラズマ処理前の多孔質インク受理層は、その表面層内に、元素含有量を基準として45パーセント以上、より好ましくは50パーセント以上、最も好ましくは60パーセント以上の元素炭素を含有する。好ましい態様では、プラズマ処理前の多孔質インク受理層は、その表面層内に、約35パーセント以下の元素酸素を含有する。
【0022】
表面層内の元素炭素パーセントは、1種又は2種以上の有機材料によって提供することができる。態様では、このような有機材料は、粒子を用いてボイド形成され且つ/又は充填された有機ポリマー含有連続相を含む。好ましくは、このような態様の場合、有機ポリマーは、40パーセント以上の元素炭素の要件を満たすのに十分な量の炭素を提供するが、追加の有機材料が存在してもよい。他の態様の場合、有機材料は有機ポリマー粒子によって提供することができる。有機ポリマー粒子は印刷後、後で溶融させることができる。
【0023】
インク受理層又は表面層を形成するのに有用な材料の一例としては、表面において40%の炭素元素含有率を提供する限り、オープンセル型ボイド含有高分子フィルム、通常は無機の多孔質粒子、ナノファイバー及び/又はマイクロファイバーを充填されたマイクロ多孔質高分子フィルム、発泡フィルム、有機粒子から形成されたシート、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。加えて、表面層は、表面のための顔料親和性、顔料安定性、一般的な美的特性(例えば光沢又は色)、インク湿潤、基体との層付着力、基体との層適合性及び製造可能性を有することができる。しばしば、カチオン又はアニオン官能性を(使用する場合にはインク顔料の装入量に応じて)層に加えることによって表面のための顔料親和性を高めることにより、顔料を引き付けるか又は媒染剤処理することができる。
【0024】
具体的には、一つの態様は、表面層がマイクロファイバー及び/又はナノファイバーを含むインクジェット記録要素に関与する。これらのファイバーは、不織微細繊維層にすることができる微細繊維である。このことは例えば、下層又は多孔質基体上へのコーティングとして適用することができる。ラミネートすることも可能である。種々の材料を使用することができ、ポリオレフィン、例えばTyvek(商標)ポリオレフィン(Dupont, Wilmington, DE)を含む広範囲な高分子組成物を含むことができる。
【0025】
「ナノファイバー」という用語は、断面(エッジを有するアングル形繊維)又は直径(丸形)が1ミクロン未満の細長い構造を意味する。「マイクロファイバー」という用語は、直径が1ミクロンよりも大きく、10ミクロン以下である繊維を意味する。この微細繊維は、改善された単層又は多層マイクロファイバー構造の形態で形成することができる。このような微細繊維層は、結合することによりインターロック網状構造を形成することができる微細繊維のランダムな分布を含むことができる。大部分は顔料粒子の通過に対する微細繊維バリアの結果として、顔料トラップを得ることができる。微細繊維インターロック網状構造は、繊維間に比較的小さなスペースを有する。このようなスペースは典型的には、約0.01〜約25ミクロンであり、又はしばしば約0.1〜約10ミクロンである。好ましくは、微細繊維は、インクジェット媒体全体に3ミクロン未満の厚みを追加する。
【0026】
ナノファイバー又はマイクロファイバーの高分子組成物中に使用することができるポリマー材料は、付加ポリマー及び縮合ポリマーの両方、例えばポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマー、及びこれらの混合物を含む。これらの総称的クラスに含まれる好ましい材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(及びその他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、及びこれらのコポリマー(ABA型ブロック・コポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、架橋形態及び非架橋形態を成す種々の加水分解度のポリビニルアルコールを含む。
【0027】
別の態様の場合、表面層又はインク受理層のための材料は、無機又は有機粒子によってボイド形成されるボイド含有高分子フィルムを含むことができる。ボイド形成プロセスはしばしば一軸又は二軸延伸によって達成される。例えばCampbellの米国特許第6,489,008号明細書(その全体を参考のため本明細書中に引用する)及びLaney他のUSSN(整理番号86688)(これも参考のため本明細書中に引用する)を参照されたい。好ましくは、オープンセル型ボイド含有高分子材料の場合、材料はポリエステル又はポリオレフィン又はこれらのコポリマーを含む。オープンセル型ボイド含有コポリマーフィルムの一例は、米国特許第6,409,334号明細書に記載されたボイド含有ポリエステル・フィルムである。この多孔質ポリエステル・ベースユニット層は、追加の支持体が望まれる場合にはボイド非含有ポリエステル支持層と同時押出することができる。
【0028】
さらに別の態様の場合、表面層は発泡フィルムを含み、発泡ポリエチレン材料を含むことができる。例えば、種々のオープンセル発泡技術の例に関して米国特許第5,869,544号;同第5,677,355号;及び同第6,353,037号の各明細書を参照されたい。これらの特許明細書全体を引用することにより本明細書の内容とする。
【0029】
さらに別の態様の場合、表面層は、通常は無機の多孔質粒子を充填された高分子フィルムから形成されたマイクロ多孔質材料を含む。例えば米国特許第5,605,750号明細書(引用することにより本明細書の内容とする)に記載されたマイクロ多孔質材料は、熱可塑性有機ポリマー、例えばポリオレフィン(例えばポリエチレン又はポリプロピレン)のマトリックス全体にわたって分配されたケイ質充填剤粒子を含む。Pekalaの米国特許第6,025,068号明細書に記載されている同様の材料の場合、有機ポリマーはポリ(エチレンオキシド)と架橋可能なウレタン-アクリル・ハイブリッドポリマーを含み、Anderson他の米国特許第5,326,391号明細書に記載されている同様の材料の場合、有機材料は、特に線状超高分子量オレフィン、例えばシリカ粒子を充填されるポリエチレンを含む。上記両特許明細書全体を本明細書中に引用する。
【0030】
本発明の別の態様の場合、表面層又はインク受理層のための材料は、例えばWexlerの米国特許第6,497,480号明細書に記載されているような有機高分子ビーズを含むことができる。これらのビーズは、画像の印刷後に可融性である。この場合、インク受理層又は上側層は、一時的にのみインクを受理し、そしてインクを保持しない。インクは事実上、下側のインク保持層に輸送される。その後、ビーズは溶融される。
【0031】
表面層内で使用される一次材料に加えて、表面層はさらに、当業者には明らかなように、層の表面のための顔料親和性を提供する媒染剤を含む。例えば、媒染剤は、インク顔料の装入量に応じて、カチオン又はアニオン官能性を含むことができる。カチオン性媒染剤の例は、金属原子含有基及び第四級アンモニウム基を含む。
【0032】
本発明において使用される多孔質画像受理層は、好ましくは相互連通ボイドを含有する。これらのボイドは、インクが基体内にかなり浸透するための経路を提供し、ひいては、相互連通ボイドによって多孔質の場合には、基体が乾燥時間に関与するのを可能にする。無孔質画像受理層又はクローズド・セルを含有する多孔質画像受理層は、基体が乾燥時間に関与するのを可能にすることはない。
【0033】
画像受理層内の相互連通ボイド(オープンセルとも呼ばれる)は、種々の方法によって得ることができる。例えば、層は、高分子バインダー中に分散された粒子を含有することができる。粒子は有機又は無機粒子を含む。このような粒子は、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ブチルアクリレート)を含む種々の材料を含むことができる。画像受理層は、無機粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭酸カルシウム、又は硫酸バリウムを含むこともできる。このような粒子の粒子サイズは約5 nm〜約15 μmである。
【0034】
画像受理層内には、他の添加物、例えば硝酸のようなpH改質剤、架橋剤、レオロジー改質剤、界面活性剤、UV吸収剤、殺生剤、滑剤、色素、色素定着剤又は媒染剤、蛍光増白剤などを含むこともできる。
【0035】
インク記録要素において、コンベンショナルな前計量又は後計量コーティング法、例えばブレード、エアナイフ、ロール・コーティングなどによって、一方又は両方の基体表面に、画像受理層を塗布することができる。作業の経済性からコーティング法が選択され、この選択によって、配合仕様、例えばコーティング固形物、コーティング粘度、及びコーティング速度が決定される。
【0036】
画像受理層厚は約1〜約60 μm、好ましくは約5〜約40 μmとなることができる。
【0037】
本発明において使用されるインクジェット記録要素のための支持体は、インクジェット受理体のために通常使用されるもの、例えば樹脂コート紙、ポリエステル、ラミネート紙、例えば二軸延伸支持体ラミネート、及びポリオレフィン、例えばポリプロピレン・フィルムのうちのいずれかであってよい。支持体は、相互連通ボイドによって性質上多孔質であってもよく、例えば紙、Tyvek(商標)合成紙(Dupont Corp.)、二軸延伸されたボイド含有ポリエステル・フィルム、及びTeslin(商標)SP合成印刷用シート(PPG Industries Inc.)であってもよい。
【0038】
本発明において使用される支持体の厚さは、約50〜約500ミクロン、好ましくは約75〜約300ミクロンであってよい。抗酸化剤、静電防止剤、可塑剤及びその他の既知の添加物を、所望の場合には支持体内に内蔵することができる。
【0039】
コーティング後、インクジェット記録要素にカレンダリング又はスーパーカレンダリングを施すことにより、表面平滑さを高めることができる。
【0040】
本発明の記録要素を画像形成するために使用されるインクジェット・インクが当業者によく知られている。インクジェット印刷に使用されるインク組成物は典型的には、溶剤又はキャリヤ液、色素又は顔料、湿潤剤、有機溶剤、浄化剤、増粘剤、及び保存剤などを含む液状組成物である。溶剤又はキャリヤ液は単に水であってよく、又は、他の水混和性溶剤、例えば多価アルコールと混合された水であってもよい。多価アルコールのような有機材料が主なキャリヤ又は溶剤液であるようなインクを使用することもできる。特に有用なのは、水と多価アルコールとから成る混合型溶剤である。このような液状組成物に使用される色素は、典型的には水溶性のダイレクト・タイプ又は酸タイプの色素である。このような液状組成物は、例えば米国特許第4,381,946号;同第4,239,543号;同第4,781,758号の各明細書を含む従来技術において幅広く記載されている。これらの開示内容を引用することにより本明細書の内容とする。
【0041】
本発明の一つの形態に基づく印刷方法の好ましい態様の場合、1種以上の顔料を使用することにより、インクジェット記録要素上に画像を印刷する。本発明において使用される顔料は、米国特許第5,630,868号明細書に記載されているような自己分散性顔料、係属中の米国特許出願第09/822,723号明細書に記載されているようなカプセル化顔料であってよく、あるいは分散剤によって安定化することができる。顔料からインクを製造する方法は一般に2つの工程:(a)顔料を一次粒子に分解する分散又はミル工程、及び(b)分散された顔料濃縮物をキャリア及びその他の添加物で希釈して使用濃度インクにする希釈工程を伴う。ミル工程において、顔料は通常、剛性の不活性ミル媒体とともにキャリヤ(典型的には完成済インク中のものと同じキャリア)中に懸濁される。この顔料分散剤に機械エネルギーが供給され、そしてミル媒体と顔料との衝突により、顔料は脱凝集してその一次粒子になる。顔料分散体に分散剤又は安定剤、又はその両方を添加することにより、生の顔料の脱凝集を容易にし、コロイド粒子安定性を維持し、そして粒子再凝集及び沈降を遅らせることが一般的である。
【0042】
本発明において使用することができる顔料は、米国特許第5,026,427号;同第5,086,698号;同第5,141,556号;同第5,160,370号;及び同第5,169,436号の各明細書に開示されているような有機及び無機顔料を単独又は組み合わせで含む。顔料は具体的な用途及び性能要件、例えば色再現性及び画像安定性に応じて、正確に選択される。本発明において使用するのに適した顔料は例えば、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ濃縮顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン及びイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインディゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、酸化チタン、酸化鉄、及びカーボンブラックを含む。使用することができる顔料の典型例は、カラーインデックス(C. I.)顔料イエロー1, 2, 3, 5, 6, 10, 12, 13, 14, 16, 17, 62, 65, 73, 74, 75, 81, 83, 87, 90, 93, 94, 95, 97, 98, 99, 100, 101, 104, 106, 108, 109, 110, 111, 113, 114, 116, 117, 120, 121, 123, 124, 126, 127, 128, 129, 130, 133, 136, 138, 139, 147, 148, 150, 151, 152, 153, 154, 155, 165, 166, 167, 168, 169, 170, 171, 172, 173, 174, 175, 176, 177, 179, 180, 181, 182, 183, 184, 185, 187, 188, 190, 191, 192, 193, 194; C. I.顔料オレンジ1, 2, 5, 6, 13, 15, 16, 17, 17:1, 19, 22, 24, 31, 34, 36, 38, 40, 43, 44, 46, 48, 49, 51, 59, 60, 61, 62, 64, 65, 66, 67, 68, 69; C. I.顔料レッド1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 21, 22, 23, 31, 32, 38, 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 49:3, 50:1, 51, 52:2, 53:1, 57:1, 60:1, 63:1, 66, 67, 68, 81, 95, 112, 114, 119, 122, 136, 144, 146, 147, 148, 149, 150, 151, 164, 166, 168, 169, 170, 171, 172, 175, 176, 177, 178, 179, 181, 184, 185, 187, 188, 190, 192, 194, 200, 202, 204, 206, 207, 210, 211, 212, 213, 214, 216, 220, 222, 237, 238, 239, 240, 242, 243, 245, 247, 248, 251, 252, 253, 254, 255, 256, 258, 261, 264; C. I.顔料バイオレット1, 2, 3, 5:1, 13, 19, 23, 25, 27, 29, 31, 32, 37, 39, 42, 44, 50; C. I.顔料ブルー1, 2, 9, 10, 14, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 15:6, 15, 16, 18, 19, 24:1, 25, 56, 60, 61, 62, 63, 64, 66; C. I.顔料グリーン1, 2, 4, 7, 8, 10, 36, 45; C. I.顔料ブラック1, 7, 20, 31, 32及びC.I.顔料ブラウン1, 5, 22, 23, 25, 38, 41, 42を含む。本発明の好ましい態様の場合、採用される顔料は、C. I.顔料ブルー15:3、C. I.顔料レッド122、C. I.顔料イエロー155、C. I.顔料イエロー74、ビス(フタロシアニルアルミノ)テトラフェニルジシロキサン又はC. I.顔料ブラック7である。
【0043】
インク組成物のための水性キャリヤ媒質に関して、水と1種以上の水混和性補助溶剤との好適な混合物は、具体的な用途の要件、例えば所望の表面張力及び粘度、選択された顔料、顔料インクジェット・インクの乾燥時間、及びインクが印刷される紙のタイプに応じて選択することができる。選択することができる水混和性補助溶剤の代表例は、(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソ-ブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコール;(2)ケトン又はケトアルコール、例えばアセトン、メチルエチルケトン及びジアセトンアルコール;(3)エーテル、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサン;(4)エステル、例えばエチルアセテート、エチルラクテート、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート;(5)多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール1,2,6-ヘキサントリオール及びチオグリコール;(6)アルキレングリコールから誘導された低級アルキルモノ-又はジ-エーテル、例えばエチレングリコールモノ-メチル(又は-エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ-メチル(又は-エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ-ブチル(又は-エチル)エーテル、プロピレングリコールモノ-メチル(又は-エチル)エーテル、ポリ(エチレングリコール)ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-メチル(又は-エチル)エーテル及びジエチレングリコールジ-メチル(又は-エチル)エーテル;(7)窒素含有環状化合物、例えばピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;及び(8)硫黄含有化合物、例えばジメチルスルホキシド、2,2'-チオジエタノール、及びテトラメチレンスルホンを含む。
【0044】
一般に、濃縮ミル粉砕物の形態で顔料インクジェット・インクを形成することが望ましい。この濃縮ミル粉砕物は、続いてインクジェット印刷システムにおいて使用するための好適な濃度に希釈される。この技術は、設備からより多量の顔料インクを調製することを可能にする。ミル粉砕物が溶剤中で形成された場合には、ミル粉砕物は水及び随意選択的に他の溶剤で適切な濃度に希釈される。ミル粉砕物が水中で形成された場合には、ミル粉砕物は付加的な水及び水混和性溶剤で適切な濃度に希釈される。希釈により、インクは、特定の用途のための所望の粘度、色、色相、飽和濃度、及び印刷域被覆率に調節される。ミル粉砕物の調製方法は、米国特許第5,679,138号;同第5,670,139号;及び同第6,152,999号の各明細書に開示されている。本発明の好ましい態様の場合、インクジェット・インク組成物に分散剤も添加され、この分散剤を使用することにより、ミル過程中に顔料をサブミクロン・サイズに分解し、そして分散剤はコロイド分散体を長時間にわたって安定で凝集のない状態に保つ。
【0045】
有機顔料の場合、インクは最大約30重量%の顔料を含有することができるが、一般には、たいていのインクジェット印刷用途のための総インク組成物の約0.1〜10%、好ましくは約0.1〜5%となる。無機顔料が選択される場合、インクは、有機顔料を採用する比較可能なインクと比較してより高い重量パーセンテージの顔料を含有する傾向があり、また、いくつかの事例において約75%も高くてよい。それというのも無機顔料の比重が一般に有機顔料よりも高いからである。
【0046】
採用される水性キャリヤ媒質の量は、インクの総重量を基準として、約70〜99重量%、好ましくは約90〜98重量%である。水と多価アルコールとの混合物、例えばジエチレングリコールが水性キャリヤ媒質として有用である。好ましい態様の場合、インクは5〜60重量%の水混和性有機溶剤を含有する。パーセンテージは、水性キャリヤ媒質の総重量を基準とする。
【0047】
インク組成物に湿潤剤を添加することにより、インクがインクジェット・プリントヘッドのオリフィス内で乾燥するか又はかさぶた状になるのを防止するのを助けることができる。この目的で本発明で採用される組成物に有用な多価アルコール湿潤剤は例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール及びチオグリコールを含む。湿潤剤は、10〜50重量%の濃度で採用することができる。好ましい態様の場合、ジエチレングリコール、又はグリセロールとジエチレングリコールとの混合物が、10〜20重量%の濃度で採用される。
【0048】
インクは好ましくは、広範囲の射出条件、すなわちサーマル・インクジェット印刷デバイスの駆動電圧及びパルス幅、ドロップ-オン-デマンド・デバイス又は連続デバイスの圧電素子の駆動周波数、並びにノズルの形状及びサイズと適合可能な物理特性を有する。
【0049】
本発明の方法において採用されるインク組成物に浸透剤(0〜10重量%)を添加することにより、特に基体が高サイズ紙である場合、インクが受理基体を浸透するのを助けることもできる。本発明において採用されるインクの好ましい浸透剤は、最終濃度1〜6重量%のn-プロパノールである。
【0050】
本発明の方法において採用されるインク組成物に殺生剤(0.01〜1.0重量%)を添加することにより、時間とともにインク中に発生し得る不所望の微生物成長を防止することもできる。本発明において採用されるインクのための好ましい殺生剤は濃度0.05〜0.5重量%のProxel(商標) GXL(Zeneca Colours Co.)である。インクジェット・インク中に随意選択的に存在し得る付加的な添加物は、増粘剤、導電率増強剤、コゲーション防止剤、乾燥剤、及び脱泡剤を含む。
【0051】
顔料インクに高分子バインダーを添加することもできる。高分子バインダーは水溶性又は水分散性であってよい。ポリマーは一般には、縮合ポリマー又は付加ポリマーとして分類される。縮合ポリマーは例えばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル、ポリカーボネート、多酸無水物、及び上記タイプの組み合わせを含むポリマーを含む。付加ポリマーは、例えばアリル化合物、ビニルエーテル、ビニル複素環式化合物、スチレン、オレフィン及びハロゲン化オレフィン、不飽和型酸及びこれらから誘導されたエステル、不飽和型ニトリル、ビニルアルコール、アクリルアミド及びメタクリルアミド、ビニルケトン、多官能価モノマーを含むビニルタイプのモノマーの重合から形成されたポリマー、これらのモノマーの種々の組み合わせから形成されたコポリマーを含む。
【0052】
本発明の別の形態はインクジェット印刷方法であって:(1) デジタルデータ信号に対して応答性のインクジェット・プリンターを用意し;(2) 上記インクジェット記録要素を前記プリンターに装填し;(3) 前記プリンターにインクジェット・インク組成物、好ましくは、例えば水、湿潤剤、及び顔料又は色素を含む顔料系インク組成物を装填し;そして(4) 該デジタルデータ信号に応答して該インクジェット・インクを使用して、該インクジェット記録要素上にプリントする、工程を含む、インクジェット印刷方法に関する。
【0053】
上記のように、商業的に入手可能なインクジェット・プリンターは、インク液滴の付着を制御するためにいくつかの種々異なる方法を用いる。このような方法は一般に2つのタイプ:連続流及びドロップ-オン-デマンドから成る。
【0054】
ドロップ-オン-デマンド・システムの場合、インクの液滴は、例えばデジタル・データ信号に従って制御される圧電デバイス、音響デバイス、又は熱プロセスによって形成された圧力によって、オリフィスからインク受理層上の位置に直接的に噴射される。インク液滴は、これが必要とならない限り発生せず、またプリントヘッドのオリフィスを通して噴射されることはない。インクジェット印刷方法、及び関連プリンターは商業的に入手可能であり、詳細に説明する必要はない。
【0055】
種々の有機層及び無機層と有機ポリマー・基体との付着力を高めるために、プラズマ処理(放電処理とも呼ばれる)が幅広く用いられる。放電処理の利用例が米国特許第5,538,841号明細書、及びそこに引用された参考文献に見いだされる。これらを引用することにより本明細書の内容とする。種々の処理ジオメトリー(すなわち、放電電極に対する処理されるべき物品の位置決め、電極の形状、及び処理されるべき物品の形状)が可能である(例えば米国特許第3,288,638号明細書及び同第3,309,299号明細書参照)。放電又はプラズマ処理を、空気(酸素及び窒素を含む)、酸素、窒素などを含む種々のガスの存在において実施することにより、ドットの広がりを改善するための所望の表面化学特性を付与することができる。プラズマ処理は、グロー放電処理とも呼ばれることのあるコロナ放電処理(CDT)を含む。コロナ放電処理は、大気圧で表面処理を行うための、業界において一般的な技術である。例えば、R.H. Cramm及びD.V. Bibee, Tappi, 65(8), 第75-8(1982);及びW.J. Ambusk, 米国特許第3,549,406号明細書を参照されたい。連続シート、又はウェブが放電ゾーンを通して搬送される材料ロール(すなわちウェブ)を処理するための技術及び装置は、Grace他の米国特許第6,399,159号明細書及び同第6,149,985号明細書に記載されている。両特許明細書を引用することにより本明細書の内容とする。製造スケールでウェブ処理するためには、ドットの改善された広がりを生成するための好適な線量パラメーターは、供給される出力、処理ゾーンの幅、及びウェブ速度に基づいて計算することができる:線量=出力/[幅 X ウェブ速度]。態様では、空気中でCDTを用いて、約0.5〜20 J/cm2、好ましくは約2〜10 J/cm2の線量を用いることにより、ドットの広がりを改善する。
【実施例】
【0056】
下記例により本発明をさらに説明する。
【0057】
例受理体1: 7ミルのTeslin(商標)SP(多孔質)合成印刷用シート(PPG Industries INC.) Teslin(商標)シートは、ポリオレフィンを基剤とする高充填型多孔質フィルムであり、典型的には約60重量%の無機充填剤と、約65容積%の空気とを含む。
【0058】
例受理体2: 下記のように形成されるインク浸透性ポリエステル・フィルム:不浸透性コア・ポリエステル層とインク浸透性の上側及び下側ポリエステル層とを含む三層ポリエステル・基体を、1)コアのためのポリ(エチレンテレフタレート)(PET)樹脂(IV = 0.70 dl/g);2)29重量%の非晶質ポリエステル樹脂、PETG(商標) 6763樹脂(IV = 0.73 dl/g)(Eastman Chemical Company)、29重量%のポリ(エチレンテレフタレート)(PET)樹脂(IV = 0.70 dl/g)、及び約1.7 μmの42重量%の架橋型ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)粒子とから成る、トップ層及びボトム層のための配合ブレンド、を使用して調製した。
【0059】
ペレット化用ダイに取り付けられた対向回転式二軸スクリュー押出機内で混合することにより、架橋型PMMA粒子を、PETG(商標) 6763及びPETポリエステル樹脂と配合した。押出物を水浴に通し、そしてペレット化した。
【0060】
3つの層のための2種の樹脂を65℃で乾燥させ、そして2つの可塑化用スクリュー押出機によって同時押出ダイ・マニホルド内に供給することにより、三層溶融流を生成し、この溶融流を、ダイから出た後で冷却ロール上で急冷した。押出機のスループットを調節することにより、流延ラミネート・シート内の層の厚さ比を調節することが可能であった。この場合、3つの層の厚さ比は、1:6:1で調節され、この場合、2つの外側の層の厚さは約250 μmであった。比3.3及び温度110℃で延伸することにより、流延シートを先ず機械方向に延伸した。
【0061】
次いで、延伸された基体を比3.3及び温度100℃でテンター・フレーム内で横方向に延伸した。これらの例の場合、ヒートセット処理は適用されなかった。最終的な総フィルム厚は200 μmであり、浸透性のトップ層及びボトム層はそれぞれ50 μmであり、そして基体内部の層は十分に一体化され、強力に結合された。異種のトップ層及びボトム層の延伸により、硬質架橋型PMMAビーズの周りに相互連通型ミクロボイドが形成され、ひいてはこの層は不透明(白)及び高多孔質及び浸透性になる。しかしPETコア層は不浸透性であり、その自然の透明性を保持した。
【0062】
対照受理体1: ポリエチレンでコーティングされた紙上の2つの層から成る多孔質光沢受理体。ボトム層は、重量比87:9:4及び厚さ38 μmで、ヒュームド・アルミナ、Cab-O-Sperse(商標) PG033(Cabot Corp)、ポリビニルアルコール、GH-23(商標)(Nippon Ghosei)及び2,3-ジヒドロキシ-1,4-ジオキサン(Clarient Corp.)から成った。トップ層は、重量比69:6:5:20及び厚さ2 μmで、ヒュームド・アルミナ、Cab-O-Sperse(商標) PG033(Cabot Corp)、ポリビニルアルコール、GH-23(商標)(Nippon Ghosei)、界面活性剤Zonyl(商標) FSN(DuPont Corp)及び色素媒染材料M 1から成った。M-1は、87重量%のN-ビニルベンジル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド及び13重量%のジビニルベンゼンから調製された平均粒子サイズ80 nmの架橋型ヒドロゲル・ポリマー粒子であった。
【0063】
対照受理体2: Epson(商標) Premium Glossy Photo Paper S041286(Seiko Epson Corporation)。これは高レベルの無機粒子を有する対照受理体1と類似し、この場合、粒子はアルミナの代わりにシリカである。
【0064】
対照受理体3: 0.1 μm MF Millipore(商標)膜フィルター(Millipore Corporation)。これは、混合型セルロース・エステルから形成されたマイクロ多孔質高分子膜材料である。
【0065】
対照受理体4: インクジェット印刷用Kodak(商標) Premium Picture Paper(Eastman Kodak Company)。この受理要素は、連続的な、同一の広がりを有する、無孔質膨潤性インク受理層を有する支持体から成り、インク受理層は、インクを吸収して保持することができる親水性ポリマーを含む。
【0066】
受理体試料の表面分析
X線光電子分光法(XPS)を用いて、元素含有率に関して、画像形成側面上(深さ5 nm)で全ての受理体試料を分析した。物理電子装置Model PHI 5600(商標) ESCA Systemによって、XPSユニットを形成した。表1に示すのは、受理体試料の表面元素組成である。
【0067】
【表1】

【0068】
プラズマ処理
Enercon Industries Corporation, Model LM2483-02(商標)によって形成されたコロナ放電処理(CDT)ユニットを用いて、空気環境において、全ての試料の画像形成側を処理した。CDTは、68.59 KJ/m2(6372ジュール/ft2)で適用した。プラズマ処理は、XPSで測定して元素含有率に影響を与えることができる。
【0069】
印刷
Mutoh 3038(商標)幅広フォーマット・プリンター、並びに、カートリッジ・ブラックT474、イエローT475、マゼンタT476及びシアンT477を有するEpson 9500(商標)顔料系インクを用いて、コロナ処理された試料及びコロナ処理されていない試料の両方に、画像を印刷した。画像は、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの色から成る25%、50%、75%及び100%インク被覆率ブロックを含有した。これらのブロックは約1 cm × 1 cmのサイズであった。加えて画像は、乾燥時間の測定のために、互いに隣接するシアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー及びブラックから成る100%インク被覆率ブロックを含有した。これらのブロックは約1 cm × 1.5 cmのサイズであった。
【0070】
乾燥時間
プリンターからの射出直後に、印刷済画像を平らな表面上に置いた。次いで、7つの隣接するカラー・ブロックをワンパスで通常の加圧力で人さし指を用いて拭った。人さし指にはゴム指サックをカバーした。カラー・ブロックの全てが払拭後に汚れた場合には、乾燥時間を5とランク付けした。汚れが観察されなかった場合には、乾燥時間を1とランク付けした。中間の乾燥時間を1〜5とランク付けした。
【0071】
凝集
凝集は、インクが表面に溜まり、不均一な濃度をもたらす不所望な画像形成アーチファクトである。このことは通常、レッド、グリーン、ブルー及びブラックのような二次色を含有する印刷済み域において最も明らかである。レッド、グリーン及びブルーのカラー・ブロックを検査することにより、凝集を視覚的にランク付けした。1のランクは、凝集が観察されないことを示した。5のランクは、重度の凝集を示した。中間の凝集アーチファクトは1〜5でランク付けされた。
【0072】
画像濃度
印刷済み画像における50%インク被覆率マゼンタ・ブロックの濃度を、X-Rite(商標)濃度計モデル820を使用して測定した。5%未満の%濃度変化率は、人間の眼では検出不能であり、試験のばらつき内にあると考えられる。
【0073】
平均インク・ドット面積
インクドットの広がりに対するプラズマ処理の効果を示すために、処理されていない受理体及びプラズマ処理済受理体の両方におけるシアン・ドットの面積(25%インク被覆率ブロックにおいて測定)を、Zeiss Axioplan 2(商標)顕微鏡によって10X倍率で測定した。3つのドットの平均に基づいて、計算を行った。ドットサイズ及び画像濃度の変化を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
上記結果が示すように、本発明において採用される、プラズマ処理された受理要素は、対照要素と比較して改善されたドットの広がり、印刷濃度、凝集及び乾燥時間をもたらした。プラズマ処理された対照受理体1, 2及び3は、良好な乾燥時間結果を示すものの、これらは印刷濃度の有意な増大を示すことはなかった。無孔質のプラズマ処理された対照受理体4は、印刷濃度の有意な改善を示したが、しかしその凝集及び乾燥時間の結果は許容できないものであった。
【0076】
本発明をその具体的な態様を参照しながら説明してきたが、言うまでもなく、本発明の思想及び範囲内で変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を受理するための表面を含む多孔質画像受理層を含むインクジェット記録要素であって、該表面がプラズマ処理によって改質されており、プラズマ処理前の該多孔質画像受理層が、該表面に約40%以上の元素炭素を含有する、インクジェット記録要素。
【請求項2】
該多孔質画像受理層が、オープンセル型ボイド含有高分子フィルムを含む、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項3】
該オープンセル型ボイド含有高分子フィルムが、ボイド非含有高分子バッキング・フィルムと同時押出される、請求項2に記載のインクジェット記録要素。
【請求項4】
該オープンセル型高分子フィルムが、ポリエステル又はポリオレフィン・ポリマー又はコポリマーを含む、請求項2に記載のインクジェット記録要素。
【請求項5】
該オープンセル型高分子フィルムが、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらのコポリマーを含む、請求項4に記載のインクジェット記録要素。
【請求項6】
該多孔質画像受理層が、随意選択的に支持層を覆う合成不織繊維シートを含む、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項7】
該合成不織繊維シートが、スパン・ポリオレフィンである、請求項6に記載のインクジェット記録要素。
【請求項8】
該多孔質画像受理層が、随意選択的に支持層を覆う発泡フィルムを含む、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項9】
該多孔質画像受理層が、支持体を覆う可融性有機ビーズを含む、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項10】
該可融性有機ビーズが、ポリウレタン、ポリエステル、又はアクリルポリマーを含む、請求項9に記載のインクジェット記録要素。
【請求項11】
該多孔質画像受理層が、ナノファイバー及び/又はマイクロファイバーを含む繊維シートである、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項12】
該多孔質画像受理層が、多孔質粒子を充填された高分子フィルムを含む、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項13】
該高分子フィルムはポリオレフィンを含み、そして該多孔質粒子はケイ質粒子を含む、請求項12に記載のインクジェット記録要素。
【請求項14】
該高分子フィルムが、無機多孔質粒子を充填されたポリオレフィン又はポリエステル・フィルムを含む、請求項12に記載のインクジェット記録要素。
【請求項15】
該多孔質画像受理層が、該多孔質画像受理層のための顔料親和性を提供するための媒染剤をさらに含む、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項16】
該多孔質画像受理層が、相互連通ボイドを有している、請求項1に記載のインクジェット記録要素。
【請求項17】
該多孔質画像受理層は支持体の上に位置する、請求項1に記載の記録要素。
【請求項18】
該支持体が、セルロース紙、樹脂コート紙、ポリエステル、ポリオレフィン、合成紙、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される材料である、請求項17に記載のインクジェット記録要素。
【請求項19】
該支持体が、その裏側がポリエチレン層で樹脂コートされている紙を含む、請求項18に記載のインクジェット記録システム。
【請求項20】
該支持体の下側に静電防止層又はカール防止層をさらに含む、請求項18に記載のインクジェット記録システム。
【請求項21】
該支持体と該画像受理層との間に1つ以上の中間インク浸透性ベース層をさらに含む、請求項17に記載の記録要素。
【請求項22】
該ベース層が、該ベース層の約30容積%〜約50容積%未満の範囲でボイド形成剤を含む、請求項21に記載の記録要素。
【請求項23】
該ベース層が、ポリエステルを含む、請求項21に記載の記録要素。
【請求項24】
該支持体が、該ベース層の、該画像受理層を有しない側にラミネート紙を含む、請求項21に記載の記録要素。
【請求項25】
A) デジタルデータ信号に対して応答性のインクジェット・プリンターを用意し;
B) 画像形成面にプラズマ処理が施されている上記請求項1に記載のインクジェット記録要素を、該プリンターに装填し;
C) 該プリンターにインクジェット・インク組成物を装填し;そして
D) 該デジタルデータ信号に応答して該インクジェット・インク組成物を使用して、該インクジェット記録要素上にプリントする
工程を含む、インクジェット印刷方法。
【請求項26】
該インク組成物が顔料インクである、請求項19に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項27】
インクジェット記録要素の製造方法であって、該方法は:
(a)元素炭素含有率が約40%以上のインク浸透性多孔質インク受理層であるトップ層を有する1つ以上のインクジェット記録要素を含むシート材料を、カット済形態又は未カット形態で用意し;そして
(b)該インク浸透性多孔質インク受理層の上面にプラズマ処理を施す
ことを含んで成る。
【請求項28】
インクジェット印刷プロセスに使用する目的で該インクジェット記録要素を使用者に配布して販売するために、複数の該プラズマ処理済インクジェット記録要素をパッケージングすることをさらに含む、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2007−512985(P2007−512985A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542629(P2006−542629)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/039334
【国際公開番号】WO2005/061238
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】