説明

多孔質微粒子およびその製造方法

【課題】多孔質微粒子に色素、香料、農薬等を内包させた微粒子は、被担持物質の放出速度を制御し、徐放性の多孔質微粒子又は薬剤を水中で徐放する水中薬剤徐放性微粒子を製造できたが、保管時には被担持物質の放出を防止し、熱、光、機械的衝撃等の外部要因により、被担持物質が放出されるという機能をもった微粒子は存在せず、任意の時期に特定の条件を付与することにより、被担持物質を微粒子から速やかに放出するという機能が求められていた。
【解決手段】被担持物質を多孔質微粒子内に内包し、その表面を硬化性化合物または高分子化合物で被覆することにより被担持物質を保持し、外部要因により被担持物質を放出する多孔質微粒子及びその製造方法並びに被担持物質及び硬化性化合物もしくは高分子化合物の相溶化物を、多孔質微粒子内に内包することにより、被担持物質を保持し、外部要因により被担持物質を放出する多孔質微粒子及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被担持物質を多孔質微粒子に内包し、さらにその表面を硬化性化合物もしくは高分子化合物で被覆することにより被担持物質を保持した、または被担持物質と硬化性化合物もしくは高分子化合物の相溶化物とを、多孔質微粒子内に内包することにより被担持物質を保持した、特定の外部要因により被担持物質を放出することができる多孔質微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物または無機物からなる多孔質微粒子に、色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素、生理活性物質などを内包あるいは吸着させた微粒子は、種々の用途に供されてきた。例えば、香料については合成樹脂などに直接混合することが難しい場合には、一旦多孔質微粒子に吸着させた後、樹脂に混合するということが行われていた。防虫剤などの機能性物質についても直接繊維に付着させることが難しい場合には、一旦多孔質微粒子に吸着させて、その後防虫剤を吸着した多孔質微粒子を繊維に付着させることが行われてきた。また、外用剤を多孔質樹脂微粒子に配合して、塗布時の擦り付けや押し付けによる変形を利用して有効成分を微粒子外へ放出することが提案された(例えば、特許文献1など参照。)。しかし、これらの多孔質微粒子に吸着させた色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素、生理活性物質などは、速やかに放散されて、その効果を長期間持続させることはできなかった。
【0003】
さらに、色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素、生理活性物質などの被担持物質を透過性物質で被覆した内包物を多孔質微粒子に担持させた徐放性多孔質微粒子あるいは水中において薬剤を徐放する水中薬剤徐放性微粒子が提案された(例えば、特許文献2、特許文献3など参照。)。この多孔質微粒子は徐放効果を長時間持続させる効果はあるものの、吸着させた物質の効果を潜在化させ、何らかの外部要因が加わった際にその効果を速やかに発現させることはできなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−265529号公報
【特許文献2】特開2003−286196号公報
【特許文献3】特開2007−91716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来採用されてきた多孔質微粒子に色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素、生理活性物質などを内包させた微粒子は、一旦保持した被担持物質の放出速度を制御し、徐放性の多孔質微粒子あるいは薬剤を水中で徐放する水中薬剤徐放性微粒子を製造することはできたが、保管時には被担持物質の放出を防止し、熱、光、機械的衝撃などの外部要因により、被担持物質が放出されるという機能をもった微粒子は存在せず、任意の時期に特定の条件を付与することにより、被担持物質を微粒子から速やかに放出するという機能が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、被担持物質を多孔質微粒子内に内包し、さらにその表面を硬化性化合物または高分子化合物で被覆することにより被担持物質を保持し、特定の外部要因により被担持物質を放出することを特徴とする多孔質微粒子であって、上記多孔質微粒子が、無機物質からなる場合には、無機物質が、二酸化珪素、珪酸カルシウム、アパタイト、アルミナ、ゼオライト、リン酸塩および炭酸塩のいずれか1種または2種以上からなることが好ましい。
【0007】
また、上記多孔質微粒子が、有機物質からなる場合には、有機物質が、ポリエチレン、ポリウレタン、セルロース、ポリアミド、ポリビニルホルマール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂および天然繊維物質のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることが好ましい。
【0008】
さらに、上記被担持物質が、色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素および生理活性物質のいずれか1種であることが好ましい。
【0009】
次いで、上記硬化性化合物または高分子化合物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物および天然有機高分子化合物のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることが好ましい。
【0010】
本発明の第2は、被担持物質並びに硬化性化合物および高分子化合物のいずれか1種の相溶化物を、多孔質微粒子内に内包することにより、被担持物質を保持し、特定の外部要因により被担持物質を放出することを特徴とする多孔質微粒子であって、上記多孔質微粒子が、無機物質からなる場合には、無機物質が、二酸化珪素、珪酸カルシウム、アパタイト、アルミナ、ゼオライト、リン酸塩および炭酸塩のいずれか1種または2種以上からなることが好ましい。
【0011】
また、上記多孔質微粒子が、有機物質からなる場合には、有機物質が、ポリエチレン、ポリウレタン、セルロース、ポリアミド、ポリビニルホルマール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂および天然繊維物質のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることが好ましい。
【0012】
さらに、上記被担持物質が、色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素および生理活性物質のいずれか1種であることが好ましい。
【0013】
次いで、上記硬化性化合物または高分子化合物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物および天然有機高分子化合物のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることが好ましい。
【0014】
被担持物質を放出させるための上記特定の外部要因が、熱、機械的破壊、溶媒および光のいずれか1種であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明の第3は、被担持物質を内包した多孔質微粒子を硬化性化合物および高分子化合物のいずれか1種を用いて被覆することを特徴とする多孔質微粒子の製造方法であって、上記硬化性化合物または高分子化合物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物および天然有機高分子化合物のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることが好ましい。
【0016】
本発明の第4は、被担持物質並びに硬化性化合物および高分子化合物のいずれか1種の相溶化物を多孔質微粒子に内包させ多孔質微粒子内で硬化物を調製することを特徴とする多孔質微粒子の製造方法であって、上記硬化性化合物または高分子化合物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物および天然有機高分子化合物のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多孔質微粒子は、被担持物質を長期間安定的に保持し、被担持物質を必要とする際には、特定の外的要因を与えることにより、外部に速やかに放出することができるという有用な微粒子である。このことは、被担持物質が触媒あるいはインディケーターなどの場合には、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における被担持物質とは、多孔質微粒子に内包される色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素、生理活性物質などをいい、色素としては各種染料、香料としては植物から抽出された精油、合成香料など、機能性物質としては反応を制御するための触媒、染料と組み合わせて使用する発色剤、消色剤、難燃剤、消泡剤、帯電防止剤など、農薬としては防虫剤、昆虫忌避剤、猫忌避剤など、医薬としては抗菌剤、消毒剤など、酵素としてはジャスターゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼなど、生理活性物質としてはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、 ビタミンCなどの水溶性ビタミン類、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなどの脂溶性ビタミン類、リジン、グルタミン酸などのアミノ酸類などを例示することができる。
【0019】
本発明における多孔質微粒子とは、図1乃至図3の模式図に示したように、無機物質または有機物質の粒子骨格からなり、多孔質微粒子が無機物質からなる場合には、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、アパタイトなどのリン酸塩、金属酸化物として二酸化ケイ素、アルミナなどを、例示することができる。多孔質微粒子が有機物質からなる場合には、ポリエチレン、ポリウレタン、セルロース、ポリアミド、ポリビニルホルマール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂および天然繊維物質などを例示することができる。なお、天然繊維物質としては、各種木材の粉砕チップをあげることができる。
【0020】
本発明における硬化性化合物あるいは高分子化合物とは、被担持物質を内包した多孔質微粒子の表面を被覆するため、あるいは被担持物質を相溶させる物質をいい、被担持物質の保護と拡散防止の効果を持つ物質であって、特定の外部要因を受けた際に破壊されることで被担持物質の放出を行うことができる物質をいう。硬化性化合物あるいは高分子化合物としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物、天然有機高分子化合物などが挙げることができる。
【0021】
これらの樹脂をより詳細に例示すると、エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂を挙げることができる。フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール樹脂などが挙げられる。シリコン樹脂としては、自己架橋型、付加重合型などを挙げることができる。アクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどを挙げることができる。また、有機珪素化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ブチルシリケート、アルキルアルコキシシラン、ポリシロキサンオリゴマーなどを挙げることができる。
【0022】
本発明にいう天然有機高分子化合物とは、セルロースおよびセルロース誘導体、タンパク質、などであって、ゼラチン、アラビアゴム、シェラック、蝋、パラフィンワックス、セレシンワックスなどを挙げることができる。
【0023】
本発明にいう相溶化物とは、被担持物質と硬化性化合物または高分子化合物が、完全に溶け合ったもので、放置しても被担持物質と分離しない状態のものをいう。
【0024】
本発明にいう複合物とは、被担持物質と硬化性化合物または高分子化合物の混合物を指し、存在状態において各成分が分離している場合も含めたものをいう。
【0025】
本発明の多孔質微粒子の製造において、被担持物質を被覆する硬化性化合物あるいは高分子化合物は、被担持物質の物理的、化学的特性および使用条件に基づいて選定するが、多孔質微粒子を被覆した後に硬化して皮膜を形成するもの、または溶媒除去により皮膜を形成するものを用いることが好ましい。また、被担持物質と相溶させて製造する場合においては、被担持物質と相溶するかもしくは溶剤中で相溶するものを用いることが好ましい。
【0026】
多孔質微粒子の製造方法としては、被担持物質を多孔質に内包させた後、膜剤により被覆させる方法、膜剤に被担持物質を相溶させたものを多孔質微粒子に内包させる方法のいずれの手法を用いてもよく、被担持物質の物理的、化学的特性および使用条件に基づいて選定を行えばよく、また被担持物質を内包した多孔質微粒子の表面をさらに膜剤で被覆してもよい。
【0027】
多孔質微粒子に被担持物質を内包させる方法としては、特に限定はないが、被担持物質を融点以上に加熱し、液状化させたものを多孔質微粒子に圧入する方法、あるいは溶媒に溶解させたものを多孔質微粒子に圧入させた後に溶媒を取り除く方法などが挙げられる。
【実施例】
【0028】
本発明の詳細を実施例に基づいて説明するが、本発明の趣旨はこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
発色剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径4μm、比表面積300m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/4)40重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した発色剤(ビスフェノールA)30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。さらに、ガラス転移温度(Tg)100℃のアクリル樹脂30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した発色剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させた。次いで、アクリル樹脂溶液を真空チャンバーに投入し、減圧下で攪拌しながら浸透させた。次に、再び真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させてアクリル樹脂を皮膜物質とする発色剤内包シリカ微粒子を得た。
【0030】
(実施例2)
ロイコ染料内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径4μm、比表面積300m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/4)40重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意したロイコ染料(クリスタルバイオレット)30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。さらに、ガラス転移温度(Tg)100℃のアクリル樹脂30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製したロイコ染料の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させた。次いで、アクリル樹脂溶液を真空チャンバーに投入し、減圧下で攪拌しながら浸透させた。次に、再び真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させてアクリル樹脂を皮膜物質とするロイコ染料内包シリカ微粒子を得た。
【0031】
(実施例3)
イミダゾール内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径18μm、比表面積350m2/gの多孔質シリカ(エネッ
クス社製MCB−FP/18)50重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意したイミダゾール(四国化成社製 2E4MZ)20重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 JER828)30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製したイミダゾールの溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させた。次いで、エポキシ樹脂溶液を真空チャンバーに投入し、減圧下で攪拌しながら浸透させた。次に、再び真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させ、さらに、80℃で2時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ皮膜物質とし、イミダゾール内包シリカ微粒子を得た。
【0032】
(実施例4)
硬化剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径6μm、比表面積350m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/6)45重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した硬化剤(ジアミノジフェニルスルホン)45重量部をメチルエチルケトン200重量部に溶解したものを用意した。さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 JER828)10重量部を純水100重量部に分散したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した硬化剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させた。次いで、エポキシ樹脂溶液を真空チャンバーに投入し、減圧下で攪拌しながら浸透させた。次に、再び真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、純水を蒸発分離させ、さらに、100℃で3時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ皮膜物質とし、硬化剤内包シリカ微粒子を得た。
【0033】
(実施例5)
除草剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径50μm、比表面積300m2/gの多孔質シリカ(エネッ
クス社製MCB−FP/50)50重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した除草剤(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)30重量部を純水100重量部に溶解したものを用意した。さらに、ゼラチン(ゼライス社製 AU−G)20重量部を純水200重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した除草剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、水を蒸発分離させた。次いで、ゼラチン溶液を真空チャンバーに投入し、減圧下で攪拌しながら浸透させた。次に、再び真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、純水を蒸発分離させ、徐々に冷却しながらゼラチンを硬化させ皮膜物質とし、除草剤内包シリカ微粒子を得た。
【0034】
(実施例6)
食品香料内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径3μm、比表面積250m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/3)50重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した食品香料(バニラエッセンス)10重量部と寒天(松木寒天社製)10重量部を純水100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した食品香料の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、純水を蒸発分離させた。徐々に冷却しながらゼラチンを硬化させ皮膜物質とし、食品香料内包シリカ微粒子を得た。
【0035】
(実施例7)
難燃剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径6μm、比表面積350m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/6)45重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した難燃剤(ペンタブロモジフェニルエーテル)45重量部をメチルエチルケトン200重量部に溶解したものを用意した。さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製JER828)10重量部を純水100重量部に分散したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した難燃剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させた。次いで、エポキシ樹脂溶液を真空チャンバーに投入し、減圧下で攪拌しながら浸透させた。次に、再び真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、純水を蒸発分離させ、さらに、100℃で3時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ皮膜物質とし、難燃剤内包シリカ微粒子を得た。
【0036】
(比較例1)
発色剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径4μm、比表面積300m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/4)40重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した発色剤(ビスフェノールA)30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した発色剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させ発色剤内包シリカ微粒子を得た。
【0037】
(比較例2)
ロイコ染料内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径4μm、比表面積300m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/4)40重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意したロイコ染料(クリスタルバイオレット)30重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製したロイコ染料の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させロイコ染料内包シリカ微粒子を得た。
【0038】
(比較例3)
イミダゾール内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径18μm、比表面積350m2/gの多孔質シリカ(エネッ
クス社製MCB−FP/18)50重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意したイミダゾール(四国化成社製 2E4MZ)20重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製したイミダゾールの溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させイミダゾール内包シリカ微粒子を得た。
【0039】
(比較例4)
硬化剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径6μm、比表面積350m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/6)45重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した硬化剤(ジアミノジフェニルスルホン)45重量部をメチルエチルケトン200重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した硬化剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させ硬化剤内包シリカ微粒子を得た。
【0040】
(比較例5)
除草剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径50μm、比表面積300m2/gの多孔質シリカ(エネッ
クス社製MCB−FP/50)50重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した除草剤(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)30重量部を純水100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した除草剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、水を蒸発分離させ除草剤内包シリカ微粒子を得た。
【0041】
(比較例6)
食品香料内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径3μm、比表面積250m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/3)50重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した食品香料(バニラエッセンス)10重量部を純水100重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した食品香料の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を80℃に加熱しながら減圧し、純水を蒸発分離させ食品香料内包シリカ微粒子を得た。
【0042】
(比較例7)
難燃剤内包多孔質微粒子の調製
真空チャンバー内に平均粒径6μm、比表面積350m2/gの多孔質シリカ(エネック
ス社製MCB−FP/6)45重量部を投入した。これとは別に、被担持物質として用意した難燃剤(ペンタブロモジフェニルエーテル)45重量部をメチルエチルケトン200重量部に溶解したものを用意した。真空チャンバー内を減圧下におきながら、先に調製した難燃剤の溶液を加え、多孔質シリカに充分浸透させた後、30分間攪拌して大気圧に戻した。真空チャンバー内を60℃に加熱しながら減圧し、メチルエチルケトンを蒸発分離させ難燃剤内包シリカ微粒子を得た。
【0043】
(試験例1)
発色剤内包シリカ微粒子、ロイコ染料内包シリカ微粒子による発色性試験
実施例1及び2、比較例1及び2で得られた発色剤内包シリカ微粒子、ロイコ染料内包シリカ微粒子及び発色剤、ロイコ染料を混合し、長期保管性、耐水性および加熱時、溶剤添加時の発色応答性について評価したところ、膜剤を使用することにより長期保管性の向上、耐水性の向上が確認された。また加熱時、溶剤添加時には容易に発色することが確認された。発色試験の結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
(試験例2)
イミダゾール内包シリカ微粒子によるエポキシ樹脂の硬化試験
実施例3及び比較例3で得られたイミダゾール内包シリカ微粒子及びイミダゾール(未処理)を硬化触媒に用いて液状エポキシ樹脂(JER製 JER828)の硬化促進試験を実施した。エポキシ樹脂に対してイミダゾールが5phrになるように添加し、常温(25℃)及び昇温時(10℃/分)の粘度変化を測定したところ、膜剤を使用することにより、常温での反応性を制御し、高温時の反応性を維持していることが確認された。硬化試験の結果を図4及び図5に示した。
【0046】
(試験例3)
硬化剤内包シリカ微粒子によるエポキシ樹脂の硬化試験
実施例4及び比較例4で得られた硬化剤内包シリカ微粒子および硬化剤(未処理)を硬化剤に用いて液状エポキシ樹脂(JER製 JER828)の硬化促進試験を実施した。エポキシ樹脂に対して硬化剤が70phrになるように添加し、恒温(70℃)、昇温時(10℃/分)の粘度変化を測定したところ、膜剤を使用することにより、恒温(70℃)での反応性を制御し、高温時の反応性を維持していることが確認された。硬化試験の結果を図5及び図6に示した。
【0047】
(試験例4)
除草剤内包シリカ微粒子による成分保持試験
実施例5及び比較例5で得られた除草剤内包シリカ微粒子を用いて、除草剤成分の長期保持試験を実施した。除草剤成分残存量の比較と散布時の除草剤の溶出性の試験をしたところ、常温放置条件では除草剤の減量はなく、散布時(水付加)により除草剤成分の溶出が確認された。除草剤成分の揮発を防止できることが判明した。除草剤有効成分量は、水抽出による溶出量を測定し、その試験結果を表2に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
(試験例5)
食品香料内包シリカ微粒子による、香気保持、加熱時の発香試験
実施例6及び比較例6で得られた食品香料内包シリカ微粒子を用いて、香気成分の長期保持試験及び加熱時の香気試験を実施した。長期放置後の過熱による香気の確認をしたところ、長期保管後においても香料の劣化、減少がなく、加熱時に香気が確認された。その試験結果を表3に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
(試験例6)
難燃剤内包シリカ微粒子による、難燃性、耐洗濯試験
実施例7及び比較例7で得られた難燃剤内包シリカ微粒子を、バインダーを用いて生地加工を行った。加工生地の複数回の洗濯後の難燃性を試験したところ、洗濯後も難燃性の維持をしていることが確認された。その試験結果を表4に示した。
【0052】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0053】
以上の結果より、本発明により確立された製造方法で得られる多孔質微粒子は、微粒子内の被担持物質を強く保持するとともに、特定の条件を与えることにより被担持物質を放出し、その機能を発現することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】多孔質粒子構造の1例
【図2】多孔質粒子構造の他の1例
【図3】多孔質粒子構造の他の1例
【図4】常温におけるエポキシ樹脂の粘度変化
【図5】昇温時におけるエポキシ樹脂の粘度変化
【図6】恒温(70℃)におけるエポキシ樹脂の粘度変化
【図7】昇温時におけるエポキシ樹脂の粘度変化
【符号の説明】
【0055】
1.多孔質微粒子
2.多孔質微粒子骨格
3.被担持物質
4.硬化性化合物または高分子化合物
5.被担持物質と硬化性化合物または高分子化合物の相溶化物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被担持物質を多孔質微粒子内に内包し、さらにその表面を硬化性化合物または高分子化合物で被覆することにより被担持物質を保持し、特定の外部要因により被担持物質を放出することを特徴とする多孔質微粒子。
【請求項2】
被担持物質並びに硬化性化合物および高分子化合物のいずれか1種の相溶化物を、多孔質微粒子内に内包することにより、被担持物質を保持し、特定の外部要因により被担持物質を放出することを特徴とする多孔質微粒子。
【請求項3】
上記多孔質微粒子が、無機物質からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質微粒子。
【請求項4】
上記無機物質が、二酸化珪素、珪酸カルシウム、アパタイト、アルミナ、ゼオライト、リン酸塩および炭酸塩のいずれか1種または2種以上からなることを特徴とする請求項3に記載の多孔質微粒子。
【請求項5】
上記多孔質微粒子が、有機物質からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質微粒子。
【請求項6】
上記有機物質が、ポリエチレン、ポリウレタン、セルロース、ポリアミド、ポリビニルホルマール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂および天然繊維物質のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質微粒子。
【請求項7】
上記硬化性化合物または高分子化合物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物および天然有機高分子化合物のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多孔質微粒子。
【請求項8】
上記被担持物質が、色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素および生理活性物質のいずれか1種であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多孔質微粒子。
【請求項9】
被担持物質を放出させるための上記特定の外部要因が、熱、機械的破壊、溶媒および光のいずれか1種であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の多孔質微粒子。
【請求項10】
被担持物質を内包した多孔質微粒子を硬化性化合物および高分子化合物のいずれか1種を用いて被覆することを特徴とする多孔質微粒子の製造方法。
【請求項11】
被担持物質並びに硬化性化合物および高分子化合物のいずれか1種の相溶化物を多孔質微粒子に内包させ多孔質微粒子内で硬化物を調製することを特徴とする多孔質微粒子の製造方法。
【請求項12】
上記硬化性化合物または高分子化合物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、有機珪素化合物および天然有機高分子化合物のいずれか1種または2種以上からなる複合物であることを特徴とする請求項10または11に記載の多孔質微粒子の製造方法。
【請求項13】
上記被担持物質が、色素、香料、機能性物質、農薬、医薬、酵素および生理活性物質のいずれか1種であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の多孔質微粒子。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−12996(P2009−12996A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174762(P2007−174762)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000182236)エネックス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】