説明

多孔質樹脂の製造方法

【課題】 有害な気体を発生させることなく、柔軟性等諸物性に優れた多孔質樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 合成樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有してなる樹脂エマルションを発泡剤(C)の存在下で加熱処理することにより製造される多孔質樹脂の製造方法であって、以下の(1)〜(4)を満足する多孔質樹脂の製造方法。
(1)前記(C)を含まない樹脂エマルションを加熱処理して得られる無孔樹脂の密度に対する多孔質樹脂の密度の比率が、0.1〜0.8である。
(2)前記(A)のガラス転移温度が−100〜80℃である。
(3)前記(A)の120℃における貯蔵弾性率が0.5〜20.0MPaである。
(4)前記(C)が熱により分解して気体を発生する化合物であり、120℃で10分加熱したときの分解率が20%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質樹脂の製造方法に関し、更に詳しくは発泡剤と合成樹脂エマルションを用いて得られる多孔質樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質樹脂は、無孔のものと比較し低比重であるため軽量であり、柔軟性、通気性等に優れ、断熱材、衝撃吸収剤、制振剤及び防音剤等に利用されている。特に多孔質ポリウレタン樹脂は、原料の選択により様々な物性のものが得られることから、様々な分野で使用されている。
例えば、軽量化及び耐衝撃性が求められている電子材料を保護する樹脂皮膜として、ポリオールとマイクロバルーンの混合物にイソシアネートを混合し、ウレタン樹脂を合成した後、加熱することにより製造した多孔質なポリウレタンが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、溶剤系の人工皮革に見られる柔軟性、反発性を達成するため、繊維質基材の表面に、ウレタンエマルションと熱膨張性マイクロカプセルを含む含浸液を塗布し、低温で予備乾燥した後にマイクロカプセルの熱軟化点以上に加熱することで多孔質のウレタンを有する人工皮革を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、いずれの特許文献に記載の発明も多孔質樹脂とするために、低沸点の炭化水素系有機化合物を内包したマイクロバルーンを使用しており、発生する炭化水素が低引火点であるため、作業者の安全面や環境面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−352156号公報
【特許文献2】特開2004−339614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、有害な気体を発生させることなく、柔軟性等諸物性に優れた多孔質樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、合成樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有してなる樹脂エマルションを発泡剤(C)の存在下で加熱処理することにより製造される多孔質樹脂の製造方法であって、以下の(1)〜(4)を満足する多孔質樹脂の製造方法である。
(1)前記(C)を含まない樹脂エマルションを加熱処理して得られる無孔樹脂の密度に対する多孔質樹脂の密度の比率が、0.1〜0.8である。
(2)前記(A)のガラス転移温度が−100〜80℃である。
(3)前記(A)の120℃における貯蔵弾性率が0.5〜20.0MPaである。
(4)前記(C)が熱により分解して気体を発生する化合物であり、120℃で10分加熱したときの分解率が20%以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多孔質樹脂の製造方法により、有害な気体を発生させることなく柔軟性に優れた多孔質樹脂が得られる。また、本発明の製造方法を繊維用処理に用いた場合は柔軟で風合いの優れた繊維が製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における合成樹脂(A)としては、重付加系樹脂、重縮合系樹脂、付加縮合系樹脂、開環重合系樹脂、付加重合系樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。
【0009】
重付加系樹脂にはポリウレタン樹脂(U)等;重縮合系樹脂にはポリエステル樹脂(E)、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂及びポリカーボネート樹脂等;付加縮合系樹脂にはフェノール樹脂及びアミノ樹脂(例えば尿素樹脂及びメラミン樹脂)等;開環重合系樹脂にはエポキシ樹脂等;付加重合系樹脂にはビニル系樹脂[例えばアクリル樹脂(M)、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂及びハロゲン含有ビニル系樹脂]等が含まれる。
これらの樹脂の内、好ましいのは重付加系樹脂、重縮合系樹脂及びこれらと付加重合系樹脂との併用、特にポリウレタン樹脂(U)、ポリエステル樹脂(E)並びにこれらとアクリル樹脂(M)及び/又はスチレン/アルカジエン系樹脂(D)との併用である。
【0010】
ポリウレタン樹脂(U)は、有機ポリイソシアネート(a1)と、ポリオール(a2)を含む活性水素原子含有成分とを反応させてなるものである。
【0011】
(a1)としては、従来ポリウレタンの製造に使用されているものが使用できる。このようなポリイソシアネートには、2個〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する、炭素数(以下Cと略記)(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、C2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、C4〜15の脂環式ポリイソシアネート、C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物、並びにこれらの2種以上の併用が含まれる。
【0012】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(例えば5〜20重量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリールポリイソシアネート(PAPI)]、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等;脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等;脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等;芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等;ポリイソシアネートの変性物としては、上記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含量が通常8〜33%、好ましくは10〜30%特に12〜29%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI、イソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられ、ウレタン変性ポリイソシアネート[過剰のポリイソシアネート(TDI、MDI等)とポリオールとを反応させて得られる遊離イソシアネート含有プレポリマー]の製造に用いるポリオールとしては、後述の低分子ポリオールが挙げられる。2種以上の併用としては、変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用が挙げられる。これらの内で好ましいのは官能基数2〜3のもの、特にTDI、MDI、HDI、IPDI、水添MDI、XDI及びTMXDIである。
【0013】
(a2)には、150以上の水酸基当量(水酸基当りのMn)を有する高分子ポリオール(a21)、低分子ポリオール(a22)及びこれらの2種以上の併用が含まれる。上記及び以下においてMnはゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される数平均分子量を表わす。
【0014】
(a21)には、ポリエステルポリオール(a211)、ポリエーテルポリオール(a212)、ポリオレフィンポリオール(a213)及び重合体ポリオール(a214)が含まれる。(a211)には、縮合型ポリエステル(a2111)、ポリラクトンポリオール(a2112)、ポリカーボネートポリオール(a2113)及びヒマシ油系ポリオール(a2114)が含まれる。(a212)には、活性水素原子含有化合物のアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物(a2121)、及びそのカップリング体(a2122)が含まれる。
【0015】
(a22)には、30以上150未満の水酸基当量を有する、2価〜8価又はそれ以上の、多価アルコール(a221)及び活性水素原子含有化合物のAO低モル付加物(a222)が含まれる。
(a221)には、2価アルコール、例えばC2〜12又はそれ以上の脂肪族、脂環式及び芳香族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール(アルキレングリコール及びジアルキレングリコールを表わす。以下同様の表現を用いる)、例えば(ジ)エチレングリコール、(ジ)プロピレングリコール、1,2−,1,3−,2,3−又は1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,12−ドデカンジオール;環状基を有する低分子ジオール、例えば特公昭45−1474号公報記載のもの[ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];3価〜8価又はそれ以上の多価アルコール、例えばアルカンポリオール(トリオール、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン及びヘキサントリオール;4価以上の高官能ポリオール、例えばペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトール)、これらの分子間又は分子内脱水物(ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等)、糖類(グルコース、フルクトース、ショ糖等)及びその誘導体(グリコシド、例えばα−メチルグルコシド);並びに後述の親水基含有ポリオールが含まれる。
【0016】
(a2121)及び(a222)の製造に用いるAOとしては、C2〜12又はそれ以上のAO、例えばエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(THF)、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)及びこれらの2種以上の併用(ランダム及び/又はブロック)が挙げられる。
(a212)及び(a222)の製造に用いる活性水素原子含有化合物には、2〜8個又はそれ以上の活性水素原子を有する化合物(水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等の1種又は2種以上を有する化合物)が含まれ;例えば多価アルコール、多価フェノール類、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸類、ポリチオール及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。多価アルコールとしては、上記のもの;多価フェノール類としては、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン等)及びビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)が挙げられる。
【0017】
アミン類(h1)には、モノアミン類(h11)及びポリアミン類(h12)が含まれる。モノアミン類(h11)には、アンモニア;1級モノアミン、例えばC1〜20のモノハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル)アミン(ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等);及びアルカノールアミン類(C2〜4のヒドロキシアルキル基を有するもの:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が含まれる。
【0018】
ポリアミン(h12)には、C2〜18の脂肪族ポリアミン[例えばアルキレンジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)、及びポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン等)]、C4〜15の脂環式ポリアミン(ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、C8〜15の芳香脂肪族ポリアミン(キシリレンジアミン等)、C6〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルエーテルジアミン及びポリフェニルメタンポリアミン等)、及び複素環式ポリアミン類(ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン及びその他特公昭55−21044号公報記載のもの)が挙げられる。
【0019】
ポリカルボン酸(h2)には、2価〜8価又はそれ以上の、C4〜40又はそれ以上の、脂肪族、脂環式及び芳香族カルボン酸が含まれ;ジカルボン酸例えば脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)及び芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等)、並びに3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)が挙げられる。
リン酸類としてはリン酸、亜リン酸、ホスホン酸等;ポリチオールとしては、上記多価アルコールに相当する(OHの少なくとも一部がSHに置換わった)ポリチオール、グリシジル基含有化合物と硫化水素との反応で得られるポリチオール等が挙げられる。
【0020】
活性水素原子含有化合物へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒で又は触媒(例えばアルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒)の存在下(特にAO付加の後半の段階で)に常圧又は加圧下に1段階又は多段階で行なうことができる。例えば加圧反応器に、活性水素原子含有化合物及び触媒を仕込み、AOを圧入する方法が挙げられる。触媒としては、アルカリ触媒、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物;酸[過ハロゲン酸(過塩素酸、過臭素酸及び過ヨウ素酸等)、硫酸、燐酸及び硝酸等、好ましくは過塩素酸]及びこれらの塩[好ましくは2価又は3価の金属(Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Co、Ni、Cu及びAl等)の塩]が挙げられる。反応温度は通常50〜150℃、反応時間は通常2〜20時間である。
【0021】
2種以上のAOを併用する場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型等)でもランダム付加でも両者の混合系〔ランダム付加後にチップしたもの:分子中に任意に分布されたエチレンオキシド鎖を0〜50重量%(好ましくは5〜40重量%)有し、0〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)のEO鎖が分子末端にチップされたもの〕でもよい。AOの内で好ましいものはEO単独、PO単独、THF単独、PO及びEOの併用、PO及び/又はEOとTHFの併用(併用の場合、ランダム、ブロック及び両者の混合系)である。
【0022】
AOの付加モル数は、活性水素原子1個当たり通常1〜140、好ましくは1〜110、特に好ましくは1〜90である。付加モル数が140を超えると得られるポリウレタン樹脂が軟らかくなり、強度が低下する。
AO付加反応終了後は、必要により触媒を中和し吸着剤で処理して触媒を除去・精製することができる。
【0023】
(a2121)としては、例えばポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)等]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)等]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノール類のEO及び/又はPO付加物が挙げられる。
【0024】
(a2122)には、(a2121)の2分子又はそれ以上をアルキレンハライド(C1〜6、例えばメチレンジクロライド)でカップリングさせたものが含まれる。
【0025】
(a212)としては、不飽和度が少ない(0.1meq/g以下、好ましくは0.05meq/g以下特に0.02meq/g以下)ものが望ましく、また少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%特に少なくとも70%の第1級水酸基含有率を有するものが望ましい。
【0026】
(a2111)にはポリオールとポリカルボン酸(h2)との重縮合物、(a2112)にはポリオールへのラクトン(h3)の重付加物、(a2113)にはポリオールへのアルキレンカーボネート(h4)の重付加物、(a2114)にはヒマシ油及びポリオール若しくはAOで変性されたヒマシ油が含まれる。
これらを構成するポリオールとしては上記(a22)及び/又は(a212)[好ましくは水酸基当量が500以下のもの]、(h2)としては前記活性水素原子含有化合物として挙げたポリカルボン酸[好ましくはジカルボン酸及びそれと少割合(20%以下)の3価以上のポリカルボン酸との併用]、(h3)としては、C4〜12のラクトン、例えば4−ブタノリド、5−ペンタノリド及び6−ヘキサノリド等、(h4)としてはC2〜8のアルキレンカーボネート、例えばエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等が挙げられ、これらはそれぞれ2種以上併用してもよい。
【0027】
(a211)は通常の方法で製造できる。(a2111)は、例えば(h2)若しくはそのエステル形成性誘導体[酸無水物(無水マレイン酸、無水フタル酸等)、低級アルキル(C1〜4)エステル(アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等)、酸ハライド(酸クロライド等)]と過剰当量のポリオールとの脱水縮重合若しくはエステル交換反応により、(h2)若しくはそのエステル形成性誘導体とポリオールとの脱水縮重合若しくはエステル交換反応に次いでAOを反応させることにより、又はポリオールと酸無水物及びAOとの反応により、製造することができる。(a2112)及び(a2113)は、ポリオールを開始剤として、(h3)若しくは(h4)の重付加させることにより製造できる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。
【0028】
(a2111)としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール等;(a2112)としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等;(a2113)としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等;(a2112)としては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油、ヒマシ油のEO(4〜30モル)付加物等が挙げられる。
【0029】
(a213)には、ポリアルカジエン系ポリオール、例えばポリブタジエンジオール[1,2−ビニル構造及び/又は1,4−トランス構造を有するポリブタジエン(ブタジエンホモポリマー及びコポリマー例えばスチレンブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンコポリマー)ジオール]、並びにこれらの水素添加物(水素添加率:例えば20〜100%);及びアクリル系ポリオール、例えばヒドロキシアルキル(C2〜6)(メタ)アクリレート[エチルヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等]と他の単量体[スチレン、アルキル(C1〜8)(メタ)アクリレート等]との共重合体が含まれる。ポリブタジエンジオールの例としてはNISSO−PBGシリーズ(G−1000、G−2000、G−3000等)(日本曹達・製)、PolyBd(R−45M、R−45HT、CS−15、CN−15等)(米国ARCO社製)が挙げられる。
【0030】
(a214)には、ラジカル重合性モノマーをポリオール[前記(a211)及び/又は(a212)及び必要により(a22)]中でその場で重合させてなる重合体含有ポリオールが含まれる、モノマーには、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル、これらの2種以上の混合物等が含まれる。モノマーの重合は、通常重合開始剤の存在下に行われる。重合開始剤には、遊離基を生成して重合を開始させるタイプのもの、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、AVNと略記)等のアゾ化合物;ジベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、及び特開昭61−76517号公報記載の上記以外の過酸化物あるいは過硫酸塩、過ホウ酸塩、過コハク酸等が含まれる。アゾ化合物、特にAIBN、AVNが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーの全量に基づいて通常0.1〜20%、好ましくは0.2〜10%である。ポリオール中での重合は無溶媒でも行なうことができるが、重合体濃度が高い場合には有機溶媒の存在下に行なうのが好ましい。有機溶媒としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられる。必要により、連鎖移動剤(アルキルメルカプタン類、四塩化炭素、四臭化炭素、クロロホルム、特開昭55−31880号公報記載のエノールエーテル類等)の存在下に重合を行なうことができる。重合は重合開始剤の分解温度以上、通常60〜180℃、好ましくは90〜160℃で行なうことができ、大気圧下又は加圧下、更には減圧下においても行なうことができる。重合反応終了後は、得られる重合体ポリオールはそのままポリウレタンの製造に使用できるが、反応終了後に有機溶媒、重合開始剤の分解生成物や未反応モノマー等の不純物を慣用手段により除くのが望ましい。
【0031】
(a214)は、通常30〜70%(好ましくは40〜60%特に50〜55%)の重合したモノマーすなわち重合体がポリオールに分散した、半透明ないし不透明の白色ないしは黄褐色の分散体である。(a214)の水酸基価は、通常10〜300、好ましくは20〜250特に30〜200である。
【0032】
(a21)の水酸基当量は、通常150〜5,000、好ましくは250〜3,000特に300〜2,500である。
【0033】
(a2)の内で、ポリウレタン樹脂の物性の点で好ましいのは、(a21)及び(a21)と少割合(例えば20%以下)の(a22)の併用である。(a21)の内で好ましいのは(a212)及び特に(a211)である。
【0034】
(a1)との反応に用いる活性水素原子含有成分としては、(a2)に加えて、必要により他の活性水素原子含有化合物(a3)を用いることができる。(a3)には、活性水素原子含有多官能化合物(a31)及び単官能化合物(a32)が含まれる。(a31)には前記ポリアミン(h12)、及びポリエーテルポリアミン[(a212)及び/又は(a222)のシアノアルキル(C2〜4)化物(シアノ化エチル化物等)の水素化物];(a32)には前記(h11)の内、1級モノアミン、2級モノアミン例えばジ−ハイドロカルビル(C1〜20アルキル、シクロアルキル、アリール及び/又はアラルキル)アミン(ジブチルアミン等)及びそのAO付加物、1価アルコール(C1〜20アルカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)及びそのAO付加物が含まれる。
【0035】
ポリオール(a2)からなる活性水素原子含有成分の少なくとも一部に分子内に親水性基と活性水素原子含有基を含有する化合物(a4)を使用することにより、自己乳化型のポリウレタン樹脂エマルションとすることができる。
【0036】
(a4)における親水性基には、アニオン性基(スルホン酸基、スルファミン酸基、リン酸基、カルボキシル基等、及びこれらの塩)、カチオン性基(4級アンモニウム塩基、1〜3級アミン塩基、及びこれらの塩)及び非イオン性基(オキシエチレン基、水酸基等)が含まれる。親水基の内で好ましいのは、スルファミン酸基、及びディビス法による原子団固有の基数が0.3以上の親水性基(P)である。ディビス法による原子団固有の基数は「新・界面活性剤活性剤入門」(三洋化成工業株式会社刊)133頁に記載されている。Pには、カルボキシル基のナトリウム塩(基数=19.1)、カルボキシル基のカリウム塩(基数=21.1)、スルホン酸基のナトリウム塩(基数=38.7)等のアニオン性基;4級アンモニウム塩基、3級アミン酢酸塩基等のカチオン性基;及びオキシエチレン基(基数=0.33)、水酸基(基数=0.5)等の非イオン性基が含まれる。
【0037】
(a4)には1個又は2〜8個又はそれ以上(好ましくは2個)の活性水素原子含有基を含有するものが含まれ、その活性水素原子含有基には水酸基、カルボキシル基及びアミノ基が含まれる。好ましいのは2個(特に2個)の活性水素原子含有基を含有するもの、及びこれと1個の活性水素原子含有基を有するものである。
【0038】
アニオン性基を有する(a4)としては、スルホン酸ジオール[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸等]、スルホポリカルボン酸[スルホイソフタル酸、スルホコハク酸等]及びアミノスルホン酸[2−アミノエタンスルホン酸及び3−アミノプロパンスルホン酸等];スルファミン酸ジオール[N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸(アルキル基のC1〜6)又はそのAO付加物(AOとしてはEO又はPO等、AOの付加モル数1〜6):例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸PO2モル付加物等];ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェート等;ジアルキロールアルカン酸[C6〜24のもの、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等]及びアミノ酸(2−アミノエタン酸等);及びこれらの塩、例えばアミン類(トリエチルアミン、アルカノールアミン、モルホリン等)の塩及び/又はアルカリ金属塩(ナトリウム塩等)が挙げられる。カチオン性基を含有する(a4)には、4級アンモニウム塩基含有ジオール、3級アミノ基含有ジオール及びその塩(カルボン酸塩等)が含まれ;アルキル(C1〜8)ジアルカノール(C2〜4)アミン(N−メチルジエタノールアミン等)及びジアルキル(C1〜6)アルカノール(C2〜4)アミン(N,N−ジメチルエタノールアミン等)、並びにこれらの酸類[有機酸例えばC1〜8のカルボン酸(酢酸等)、スルホン酸(トルエンスルホン酸等);無機酸例えば塩酸、硫酸、リン酸等)]による中和物及び4級化剤[C1〜8のアルキル基若しくはベンジル基を有する、硫酸エステル、炭酸エステル、ハライド等(硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、メチルクロライド、ベンジルクロライド等)]による4級化物が挙げられる。イオン性基(アニオン性基又はカチオン性基)含有ポリウレタン樹脂エマルションの具体例としては、特公昭42−24192号公報及び特公昭43−9076号公報に記載のものが挙げられる。
【0039】
非イオン性基を有する(a4)にはPEG及びポリエチレンプロピレングリコール(Mn=100〜3,000)等が含まれる。非イオン性の(a4)とアニオン性の(a4)又はカチオン性の(a4)を併用してもよい。
【0040】
自己乳化型の(U)のエマルションにおける(a4)の含有量は、ポリウレタン樹脂の重量に基づいて好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.5〜30%である。特に(a4)が非イオン性化合物の場合は、好ましくは3〜30%[(a211)又は(a212)を使用する場合で、その中にポリオキシエチレン鎖(付加モル数2以上)を含む場合は、それらの重量も含む]、好ましくは5〜20%である。また、(a4)がイオン性化合物の場合の(a4)の重量はポリウレタン樹脂の重量に基づいて好ましくは0.1〜10%、更に好ましくは0.5〜5%であり、当量に換算すると、好ましくは0.01〜2ミリ当量/g、更に好ましくは0.05〜1ミリ当量/gである。
【0041】
自己乳化型の(U)のエマルションは、例えば、(a1)と、(a2)、(a4)及び必要により停止剤(e1)からなる活性水素原子含有成分、及び必要により有機溶剤(a5)を仕込み、一段又は多段でウレタンプレポリマーを形成し、次いで該プレポリマーを親水化(中和又は4級化)した後、あるいは親水化しながら、必要により鎖伸長剤(f)、架橋剤(x)及び/又は停止剤(e2)を含む水性媒体と混合してエマルションとなし、NCO基が実質的に無くなるまで反応[水又は(f)による鎖伸長、及び必要により(x)による架橋及び/又は(e2)による反応停止]を行うことにより製造することができる。親水化(中和又は4級化)はエマルション形成後に行ってもよい。(f)による鎖伸長及び必要により(x)及び/又は(e2)による反応停止を行う場合には、プレポリマーを水性媒体中に分散させた後に、(f)及び必要により(x)及び/又は(e2)を加えてプレポリマーと反応させるのが好ましい。
【0042】
また、有機溶剤(a5)の存在下に(a1)と上記活性水素原子含有成分を反応させてプレポリマー溶液を形成し鎖伸長剤(f)及び必要により架橋剤(x)及び/又は停止剤(e2)を反応させるか、有機溶剤(a5)の存在下に(a1)と上記活性水素原子含有成分及び必要により架橋剤(x)及び/又は停止剤(e2)を一段で反応させることにより、(U)の有機溶剤溶液を形成し、水性媒体中に分散させることにより、(U)のエマルションを形成することもできる。この場合も、親水化(中和又は4級化)はエマルションの形成前に行っても形成の段階で行っても形成後に行ってもよい。
【0043】
プレポリマーは、(a1)と活性水素原子含有成分を、イソシアネート基/活性水素含有基(カルボキシル基を除く)の当量比が通常1.01〜2、好ましくは1.1〜1.6となる割合で、反応させることにより形成される。活性水素原子含有成分中に必要により加えられる(e1)の量は通常5当量%以下、好ましくは3当量%以下である。プレポリマーの形成は、通常20℃〜150℃、好ましくは60℃〜110℃の反応で行われ、反応時間は通常2〜10時間である。プレポリマーの形成は、NCO基と実質的に非反応性の有機溶剤(a5)の存在下又は非存在下で行うことができる。プレポリマーは通常0.5〜5%の遊離NCO基含量を有する。プレポリマーの親水化は、塩基[(a4)がアニオン性化合物の場合]又は酸若しくは4級化剤[(a4)がカチオン性化合物の場合]を用いて行うことができる。エマルションは、プレポリマーを、通常10℃〜60℃、好ましくは20℃〜40℃で、水性媒体[必要により(f)、(x)及び/又は(e)を含有する、水又は水と親水性有機溶剤との混合物]と混合・分散して、反応させ、必要により有機溶剤を留去することにより形成することができる。
【0044】
上記の反応の際に用いる有機溶剤(a5)としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル及びエチルセロソルブアセテート等)、エーテル類(ジオキサン及びテトラハイドロフラン等)、炭化水素類(n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、テトラリン、トルエン及びキシレン等)、塩素化炭化水素類(ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等)及びアミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等)が使用される。
【0045】
鎖伸長剤(f)及び架橋剤(x)としては、ポリアミン[前記(h12)]が使用できる。(f)及び(x)の使用量は、プレポリマー中に残存するイソシアネート基1当量に対して(f)及び(x)の1級及び2級アミノ基が通常0.5〜2当量、好ましくは0.9〜1.2当量となるような量である。停止剤(e1)には、単官能化合物[前記(a32):1級モノアミン、2級モノアミン、1価アルコール等、及び(a4)の内の単官能のもの];停止剤(e2)には、上記単官能化合物、及び[前記(a312):モノ−又はジ−アルカノールアミン等]が含まれる。(e2)の使用量は、プレポリマーの遊離NCO基1当量に対して、通常0.5当量以下、好ましくは0.03〜0.3当量となるような量である。(e2)は水性媒体中に含有させておいても、プレポリマーが鎖伸長された段階で加えてもよい。
【0046】
(a2)の少なくとも一部として(a4)を用いるのに代えて、又はそれと共に、(e1)及び/又は(e2)の少なくとも一部として(a4)を用いることにより、自己乳化型の(U)のエマルションを製造することもできる。
【0047】
(U)のエマルションは、乳化剤を用いて乳化剤乳化型の(U)のエマルションとすることもできる。
乳化剤乳化型の(U)のエマルションは、例えば、(a2)[又は(e1)及び/又は(e2)]の少なくとも一部として(a4)を用いるのに代えて、又はそれと共に、乳化剤を用いる以外は、上記と同様にして、有機溶剤の存在下又は非存在下でプレポリマーを形成し水性媒体と混合してエマルションとし反応[鎖伸長、及び必要により架橋及び/又は反応停止]を行い必要により有機溶剤を留去することにより製造することができる。
乳化剤はプレポリマー、水性媒体のいずれか一方に加えても、双方に加えてもよい。乳化剤がプレポリマーと反応性の場合には水性媒体に加えるのが好ましい。乳化剤の添加量は、ウレタンプレポリマーの重量に基づいて、通常0.2〜10%好ましくは0.3〜6%であるが、(a4)を用いた場合にはその量に応じて上記範囲より少ない量でもよい。
【0048】
乳化剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤、高分子型乳化分散剤、及びこれらの2種以上の併用が含まれ、例えば米国特許第3929678号及び米国特許第4331447号明細書に記載のものが挙げられる。
【0049】
アニオン性界面活性剤には、C8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン[重合度(以下pと略記)=1〜100]ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等]、C8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル若しくはエーテル硫酸エステル及びこれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(p=1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(p=1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、(ポリ)オキシエチレン(p=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等]、C8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、C8〜24の炭化水素基を1個若しくは2個有するスルホコハク酸塩、C8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル若しくはエーテルリン酸エステル及びこれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(p=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、C8〜24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等]及びC8〜24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]等;ノニオン性界面活性剤には、脂肪族アルコール(C8〜24)AO(C2〜8)付加物(p=1〜100)、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(C8〜24)エステル[グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート等]、脂肪酸(C8〜24)アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、(ポリ)オキシアルキレン(C2〜8、p=1〜100)アルキル(C1〜22)フェニルエーテル、(ポリ)オキシアルキレン(C2〜8、p=1〜100)アルキル(C8〜24)アミン及びアルキル(C8〜24)ジアルキル(C1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等;カチオン性界面活性剤には、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]、アミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩等]等;両性界面活性剤には、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0050】
高分子型乳化分散剤としては、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体でMn=1,000〜50,000のもの、及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン結合若しくはエステル結合を有する高分子型分散剤等[例えばポリカプロラクトンポリオール(a2112)とポリエーテルジオール(a2121)をポリイソシアネート(a1)で連結させたもの]が使用できる。
【0051】
これらの乳化剤の内で好ましいものは、ノニオン性界面活性剤及び高分子型乳化分散剤特に上記公報に記載のウレタン結合若しくはエステル結合を有する高分子型乳化分散剤である。
【0052】
本発明における(U)のエマルションの体積平均粒子径は、通常0.01〜4μm、好ましくは0.01〜3μmである。
【0053】
上記ウレタン化反応においては反応を促進させるため、必要により通常のウレタン反応に使用される触媒を使用してもよい。触媒には、アミン触媒、例えばトリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン及び米国特許第4524104号明細書に記載のシクロアミジン類[1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(サンアプロ・製造、DBU)等];錫系触媒、例えばジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート及びオクチル酸錫;チタン系触媒、例えばテトラブチルチタネートが挙げられる。
【0054】
プレポリマー又は(U)の溶液を水性媒体に乳化分散させる装置は特に限定されず、例えば下記の方式の乳化機が挙げられる:1)錨型撹拌方式、2)回転子−固定子式方式[例えば「エバラマイルダー」(荏原製作所製)]、3)ラインミル方式[例えばラインフローミキサー]、4)静止管混合式[例えばスタティックミキサー]、5)振動式[例えば「VIBROMIXER」(冷化工業社製)]、6)超音波衝撃式[例えば超音波ホモジナイザー]、7)高圧衝撃式[例えばガウリンホモジナイザー(ガウリン社)]、8)膜乳化式[例えば膜乳化モジュール]、及び9)遠心薄膜接触式[例えばフィルミックス]。これらの内、好ましいのは、5)、8)及び9)である。
(f)による鎖伸長及び必要により(x)による架橋及び/又は(e2)による反応停止を行う場合には、連続式の乳化機[好ましくは上記2)例えばエバラマイルダー]を用いてプレポリマーを水性媒体中に分散させ、次いでバッチ式乳化機[好ましくは上記1)錨型撹拌方式]を用いて(f)及び必要により(x)及び/又は(e2)を加えて混合してプレポリマーと反応させるのが好ましい。
【0055】
(U)のMwは、非架橋型(熱可塑性)の(U)の場合には通常2,000〜2,000,000又はそれ以上、好ましくは10,000〜1,500,000特に100,000〜500,000である。架橋型の(U)は上記範囲より高いMwのもの、GPCで測定できない高いMwのものでもよい。
上記及び以下においてMwはゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される重量平均分子量を表わす。
【0056】
重付加系樹脂には、(U)の外に、ポリチオウレタン樹脂、例えばポリイソチオシアネート[前記(a1)に相当する(NCO基がNCS基に置換った)化合物]とポリオール[前記(a2)]からなる活性水素原子含有成分との重付加物;ポリ(チオ)ウレア樹脂、例えばポリアミン[前記(h12)]とポリイソ(チオ)シアネート[前記(a1)及び/又は上記ポリイソチオシアネート]との重付加物;ポリメチレンマロンアミド、例えばジケテンとポリメチレンジアミンとの重付加物;ジチオール(例えばヘキサメチレンジチオール)とジビニル化合物(後述のアルカジエン、ジカルボン酸ジビニルエステル等)との重付加物が含まれる。これらの重付加系樹脂のエマルションの製造方法、自己乳化型の樹脂における(a4)の好ましい含有量及び乳化剤乳化型の樹脂のエマルションにおける乳化剤の使用量、樹脂のエマルションの体積平均粒子径、樹脂のMw及びエマルションの製造方法は(U)において例示したものと同様である。
【0057】
ポリエステル樹脂(E)にはポリオール類とポリカルボン酸の重縮合体とオキシカルボン酸の重縮合体が含まれ、後者にはポリラクトンが含まれる。
【0058】
ポリオール類には、前記(a22)及び/又は(a212)が含まれる。好ましいのは脂肪族2〜4価アルコール及びこれらの2種以上の併用、更に好ましいのは2価アルコール(特にネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール及び1,6−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種)と3価アルコール及び/又は4価アルコール(特にトリメチロールプロパン及び/又はペンタエリスリトール)との併用である。両者の比は、得られる塗膜の硬度及び塗料の粘度の点から、99.5/0.5〜70/30特に98/2〜80/20が好ましい。
【0059】
ポリカルボン酸には前記(h2)が含まれる。好ましいのはC2〜10の脂肪族ジカルボン酸、C8〜18の芳香族ジカルボン酸、C9〜18の3〜4価又はそれ以上の芳香族ポリカルボン酸及びこれらの2種以上の併用である。更に好ましいのは脂肪族ジカルボン酸(特にアジピン酸及び/又はセバシン酸)、芳香族2〜4価カルボン酸(特にイソフタル酸、テレフタル酸及びトリメリット酸から選ばれる少なくとも1種)及び特にこれらの併用(比20/80〜50/50)である。オキシカルボン酸には、C4〜12のヒドロキシアルカン酸、例えば前記(h3)に相当する酸が含まれる。
【0060】
ポリエステル樹脂(E)は、通常のポリエステル形成方法、例えばポリオール類とポリカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体〔例えば酸無水物、低級アルキル(C1〜4)エステル等〕をエステル化又はエステル交換させること、オキシカルボン酸を重縮合させること、開始剤(オキシカルボン酸、ポリオール類及び/又はポリカルボン酸、或いはこれらの部分重縮合物)に(h3)(例えばε−カプロラクトン)又は酸無水物とAOを反応させることにより製造できる。エステル化又はエステル交換は、通常100〜250℃の反応温度で、必要により触媒及び/又は溶剤を用いて、行うことができる。触媒及び溶剤としてはポリエステル化反応に通常用いられるものが使用できる。触媒としては例えばジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、p−トルエンスルホン酸、ナフテン酸リチウム等;溶剤としては例えば前記(a5)で挙げた炭化水素類の内芳香族のもの、及びケトン類が挙げられる。
【0061】
ポリエステル樹脂(E)のエマルションの製造方法は特に限定されない。乳化剤乳化型の(E)のエマルションは、前記乳化剤乳化型の(U)のエマルションの製造方法と同様にして同様の乳化剤を使用して製造することができる。また、自己乳化型の(E)のエマルションは、ポリオール類の少なくとも一部として前述の(a4)の内の活性水素原子含有基として水酸基を有するもの(PEG、ビスフェノールAのEO付加物、ジアルキロールアルカン酸、スルホン酸ジオール等)を併用することにより製造することができる。また、ポリカルボン酸類としてカルボキシル基以外のアニオン性基を有するポリカルボン酸(d1)[例えばスルホイソフタル酸(塩)及びそのエステル形成性誘導体]等を併用することにより製造することができる。
【0062】
自己乳化型の(E)における(a4)の好ましい含有量及び乳化剤乳化型の(E)のエマルションにおける乳化剤の使用量は(U)における量と同様である。
【0063】
これらの方法で得られる(E)のエマルションの体積平均粒子径は、通常0.01〜4μm、好ましくは0.01〜3μmである。また、(E)のMwは通常2,000〜2,000,000又はそれ以上、好ましくは10,000〜1,500,000である。
【0064】
シリコーン樹脂には、オルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、メチルスチレン変性シリコーン、オレフィン変性シリコーン、弗素変性シリコーン、及び親水基変性シリコーン(ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン等)が含まれる。
【0065】
ポリアミド樹脂には、ポリアミンとポリカルボン酸の重縮合体、アミノカルボン酸の重縮合体、及びポリアミド形成成分(ポリアミンとポリカルボン酸、又はアミノカルボン酸)とポリオール類を共縮合させてなるポリエステルポリアミドが含まれる。ポリアミンには、前記(h12)が含まれる。好ましいのはジアミン特にヘキサメチレンジアミンである。ポリカルボン酸には前記(h2)が含まれる。好ましいのはC2〜10の脂肪族ジカルボン酸、C8〜18の芳香族ジカルボン酸、C9〜18の3〜4価又はそれ以上の芳香族ポリカルボン酸及びこれらの2種以上の併用であり、更に好ましいものは脂肪族ジカルボン酸(特にアジピン酸及びセバシン酸)、芳香族ジカルボン酸(特にイソフタル酸及びテレフタル酸)である。アミノカルボン酸には、C4〜12のアミノアルカン酸、例えばω−カプロンアミノ酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸が含まれる。ポリエステルポリアミド形成に用いるポリオール類としては前記(a22)及び/又は(a212)を用いることができる。ポリアミドは、通常のポリアミド形成方法、例えばポリアミンとポリカルボン酸を重縮合させること、アミノカルボン酸を重縮合させること、開始剤(アミノカルボン酸、ポリアミン及び/又はポリカルボン酸、或いはこれらの部分重縮合物)にラクタム(例えばカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム及びラウロラクタムの少なくとも1種)を反応させることにより製造できる。ポリエステルポリアミドは、例えば上記ポリアミド形成成分に加えてポリオール類を共縮合させてエステル結合を導入する方法、カルボキシル基(若しくはそのエステル形成性誘導体基)含有ポリアミドとポリオール類を反応させる方法により製造することができる。
【0066】
ポリアミドのエマルションの製造方法は特に限定されない。乳化剤乳化型のポリアミドのエマルションは、前記乳化剤乳化型の(U)のエマルションの製造方法と同様にして同様の乳化剤を使用して製造することができる。自己乳化型のポリアミドのエマルションは、ポリアミン及び/又はポリカルボン酸の少なくとも一部として前述の(a4)の内の活性水素原子含有基としてアミノ基を有するもの[ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、ジアミノトルエンスルホン酸等、これらの塩、ポリオキシエチレン鎖含有ポリアミン(PEGのジアミノエチルエーテル等)]、カルボキシル基以外のアニオン性基を有するポリカルボン酸(a41)[例えばスルホイソフタル酸(塩)及びそのエステル形成性誘導体]を用いることにより製造することができる。また、(a4)の内の活性水素原子含有基として水酸基を有するもの(PEG、ビスフェノールAのEO付加物、ジアルキロールアルカン酸、スルホン酸ジオール等)を用い、これとポリアミド形成成分又はカルボキシル基(若しくはそのエステル形成性誘導体基)含有ポリアミドを反応させることにより、自己乳化型のポリエステルポリアミドのエマルションを製造することができる。自己乳化型のポリアミドにおける(a4)の好ましい含有量及び乳化剤乳化型のポリアミドのエマルションにおける乳化剤の使用量、ポリアミドのエマルションの体積平均粒子径、及びポリアミドのMwは(E)において例示したものと同様である。
【0067】
ポリカーボネート樹脂には、ジヒドロキシル化合物[例えば前記(a221)の2価アルコール、2価フェノール、及びこれらのAO付加物]から合成される[アルキレンカーボネート(h4)との反応(重付加及びエステル交換)、ジフェニルカーボネートとのエステル交換、又はホスゲン化により製造される]ものが含まれる。具体例には、ビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジアリール(シクロ)アルカン及びそのハロゲン置換体[ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−(4−メチル)ペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−1,1−シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラクロルジフェニル−2,2−プロパン等]から合成されるポリカーボネートが含まれる。好ましいのはビスフェノールAのポリカーボネートである。
【0068】
重縮合系樹脂には、上記の外に、ポリイミド樹脂、例えばピロメリット酸二無水物とジアミン[前記(h12):ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等]との重縮合物;ポリベンズイミダゾール樹脂、例えばテトラアミノビフェニルとジカルボン酸[前記(h2):セバシン酸等]との重縮合物;ポリ尿素樹脂、例えば尿素とジアミン[前記(h12)]との重縮合物;ポリスルホンアミド樹脂、例えばベンジルジスルホニルクロリドとジアミン[前記(h12):ヘキサメチレンジアミン等]との重縮合物;ポリスルホネート共重合体、例えばビスフェノール類(ビスフェノールA等)と2種の芳香族ジスルホニルクロライド(1種はカルボン酸クロライドでもよい)との重縮合物;ポリスルフォン樹脂、例えばビスフェノール類(ビスフェノールA等)とジクロロジフェニルスルホンとの重縮合物;ポリサルファイド樹脂、例えば多硫化ナトリウムとジクロロ化合物(二塩化エチレン、二塩化エチレンエーテル等)との重縮合物;ポリ−p−フェニレン樹脂が含まれる。
【0069】
これらの重縮合系樹脂のエマルションの製造方法、自己乳化型の樹脂における(a4)の好ましい含有量及び乳化剤乳化型の樹脂のエマルションにおける乳化剤の使用量、樹脂のエマルションの体積平均粒子径、樹脂のMwはポリエステル樹脂(E)において例示したものと同様である。
【0070】
付加縮合系樹脂には、フェノール樹脂、例えばフェノール類[フェノール、クレゾール、キシレノール、アルキル(C2〜10)フェノール、p−クロルフェノール等]とホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック及びレゾール);及びアミノ樹脂、例えばアミノ基含有化合物[(チオ)尿素、エチレン尿素、メラミン、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミン、アニリン、トルエンスルホンアミド等]とホルムアルデヒドとの縮合物(尿素樹脂、メラミン樹脂等)が含まれる。これらのMwは通常2,000〜2,000,000又はそれ以上、好ましくは少なくとも10,000である。
【0071】
エポキシ系樹脂には、例えば英国特許第1543099号明細書、米国特許第5238767号及び第5162437号明細書、及び「エポキシ・レジンズ」(1957年McGraw−Hill社発行)に記載のもの、グリシジル型エポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等)及び非グリシジル型エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂等)が含まれる。エポキシ樹脂のMwは通常100〜10,000又はそれ以上、好ましくは200〜5,000、エポキシ当量は通常50〜5,000又はそれ以上、好ましくは200〜2,500である。エポキシ樹脂は、通常用いられている硬化剤、例えばポリアミン[前記(h12)]、ポリカルボン酸(無水物)[前記(h2)、又はその無水物]等で硬化させることができる。硬化物のMwは通常2,000〜2,000,000又はそれ以上、好ましくは少なくとも10,000である。
【0072】
これらの樹脂のエマルションの製造方法、自己乳化型の樹脂における(a4)の好ましい含有量及び乳化剤乳化型の樹脂のエマルションにおける乳化剤の使用量、及び樹脂のエマルションの体積平均粒子径は(U)において例示したものと同様である。エポキシ樹脂は、エマルションの形成の際又は形成後に硬化させても、予め硬化させたものを水性媒体中に分散させてもよい。
【0073】
付加重合系樹脂には、以下の重合性不飽和単量体等の1種又は2種以上の(共)重合体からなるビニル系樹脂[例えばアクリル樹脂(M)、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂及びハロゲン含有ビニル系樹脂]等が含まれる。
【0074】
(1)(メタ)アクリル酸エステル:
(1−1)ハイドロカルビル(C1〜20)(メタ)アクリレート、例えば(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート[メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル及びラウリル(メタ)アクリレート等]、及び芳香環含有(メタ)アクリレート[ベンジル(メタ)アクリレート等];
(1−2)水酸基及び/又はエーテル結合含有(メタ)アクリレート:ポリオール[前記(a22)及び/又は(a212)、好ましくは水酸基当量が600以下のもの]の(メタ)アクリレート、例えばジオール[C2〜12の脂肪族2価アルコール、そのAO付加物(付加モル数1〜20)及び2価フェノールのAO付加物(付加モル数2〜20)、例えばエチレングリコール、PEG(p=2〜20)、PPG(p=2〜20)及びビスフェノールAのEO付加物]のモノ(メタ)アクリレート、及び3価〜8価又はそれ以上のポリオール[脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等)、これらのAO付加物(付加モル数1〜20)等]のモノ(メタ)アクリレート;上記ポリオールのハイドロカルビル(C1〜20)エーテルの(メタ)アクリレート、例えばメトキシPEG(メタ)アクリレート;上記ポリオールのモノ(メタ)アクリレート[2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート等]のカルボン酸[C1〜30のモノカルボン酸例えば脂肪族モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、オレイン酸、アセト酢酸等)、脂環式モノカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸、アビエチン酸等)、アルキル基(C1〜10)及び/又はハロゲン(Cl、Br等)で核置換(置換度1〜3)されていてもよい芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、キシレンカルボン酸、4−ブチル安息香酸、2−メチル−4−クロロ安息香酸、ノニル安息香酸等)]エステル、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチル及び(メタ)アクリロイルオキシプロピルアセチルアセテート;及び多官能(メタ)アクリレート、例えば上記ポリオールのポリ(メタ)アクリレート[2価アルコールのジ(メタ)アクリレート等];
(1−3)カチオン性基(アミノ基若しくは4級アンモニウム塩基)含有(メタ)アクリレート:1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、例えばアミノ(ヒドロキシ)アルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート[アミノエチル、アミノプロピル及び3−アミノ−2−ヒドロキシ−プロピル(メタ)アクリレート等]、(ジ)アルキル(C1〜4)アミノアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート[(ジ)メチルアミノエチル、(ジ)エチルアミノエチル、(ジ)メチルアミノプロピル及び3−(ジ)メチルアミノ−2−ヒドロキシ−プロピル(メタ)アクリレート]、及び複素環アミノ含有(メタ)アクリレート[モルホリノアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート例えばモルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノアルキル(C2〜4)例えばピペリジノエチル(メタ)アクリレート等];これらの中和物及び4級化物[前記カチオン性基を含有する(a4)に挙げた酸類及び4級化剤による中和物及び4級化物]、例えば(メタ)アクリロイロキシエチルトリアルキル(C1〜4)アンモニウム塩(クロライド、メトサルフェート、アセテート等);並びに(1−4)アニオン性基(カルボキシル基若しくはスルホ基)含有(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸のラクトン(C3〜12)付加物(付加モル数1〜10)[(メタ)アクリル酸のε−カプロラクトン1〜5モル付加物等]及びスルホアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート[スルホプロピル(メタ)アクリレート等];これらの塩例えばアミン類(トリエチルアミン、アルカノールアミン、モルホリン等)の塩及び/又はアルカリ金属塩(ナトリウム等);
【0075】
(2)カルボキシル基含有単量体:不飽和モノカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸及びケイヒ酸;不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸;不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(C1〜20)エステル、例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル及びイタコン酸モノブチルエステル;不飽和カルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸及び無水イタコン酸;これらの不飽和カルボン酸の塩例えば上記(1−4)と同様の塩;
【0076】
(3)アミド基含有単量体:(メタ)アクリルアミド;N−ヒドロキシアルキル若しくはハイドロカルビル(C1〜20)置換(メタ)アクリルアミド、例えばN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルキル及びN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド[N−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、(メタ)アクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、メチルα−アセトアミノアクリレート、N−ビニルピロリドン;カチオン性基(アミノ基若しくは4級アンモニウム塩基)含有(メタ)アクリルアミド、例えば上記(1−3)に相当する(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミドエチルトリアルキル(C1〜4)アンモニウム塩等];アニオン性基(カルボキシル基若しくはスルホ基)含有(メタ)アクリルアミド、例えば(メタ)アクリルアミドアルキル(C2〜4)スルホン酸[(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸等]、(メタ)アクリル酸のラクタム(C3〜12)付加物(付加モル数1〜10)[(メタ)アクリル酸のε−カプロラクタム1〜5モル付加物等]、これらの塩例えば上記(1−4)と同様の塩;多官能(メタ)アクリルアミド、例えばメチレンビス(メタ)アクリルアミド;
【0077】
(4)芳香族不飽和炭化水素:スチレン系単量体、例えばスチレン、ハイドロカルビル置換スチレン(α−又はo−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン及びインデン、並びに多官能芳香族不飽和炭化水素、例えばジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン;
【0078】
(5)脂肪族若しくは脂環式不飽和炭化水素:(5−1)オレフィン系単量体(モノエン)、例えばアルケン[エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘプテン−1、4−メチルペンテン−1、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、1−オレフィン(C20〜36)等]、及びシクロアルケン[シクロヘキセン等];(5−2)アルカジエン、例えばC4〜12の鎖状アルカジエン(ブタジエン、イソプレン、ネオプレン、1,3−又は1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,3−又は1,7−オクタジエン、1,3−ドデカジエン等)、及びC5〜12の環状アルカジエン(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等);及び(5−3)テルペン[ピネン、リモネン等];
【0079】
(6)エポキシ基(グリシジル基等)含有単量体、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルフェニルオキサイド、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン等及び(メタ)アリルグリシジルエーテル;
【0080】
(7)ニトリル基含有単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート[シアノエチル(メタ)アクリレート等];
【0081】
(8)上記(1−2)以外の、水酸基及び/又はエーテル結合含有単量体:
(8−1)不飽和モノ−又はポリオール:C2〜24の不飽和1価アルコール、例えばアルケノール[ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、クロトニルアルコール等]、芳香族不飽和アルコール[シンナミルアルコール、p−ヒドロキシルスチレン等]及びアルキノール[プロパルギルアルコール等];及び不飽和(ポリ)エーテルモノ−又はポリオール、例えば前記(a22)の低分子ポリオール又はそのAO付加物のアルケニル若しくはアルケニルアリール(C2〜24)エーテル[ビニルエーテル、(メタ)アリルエーテル、(イソ)プロペニルエーテル、クロトニルエーテル、シンナミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等]、上記不飽和1価アルコールのAO(C2〜4)付加物];
(8−2)不飽和エーテル、例えば不飽和モノ−又はポリオール[上記(8−1)]のハイドロカルビル(C1〜20)エーテル、例えばメトキシPEG(メタ)アリルエーテル;
【0082】
(9)ビニルエステル系単量体:
不飽和モノオール[上記(8)]とカルボン酸[上記(1−2)に記載のC1〜30のモノカルボン酸]とのエステル、例えばビニルエステル(ビニルホルメート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルベンゾエート、ビニルメトキシアセテート等)、酢酸イソプロペニル、酢酸(メタ)アリル、安息香酸(メタ)アリル、(メタ)アリロキシエチルアセテート及びアセトキシスチレン;上記不飽和モノオールとポリカルボン酸[前記(h2)]とのモノエステル;多官能ビニルエステル、例えば上記不飽和モノオールとポリカルボン酸[前記(h2)]とのモノエステル;多官能ビニルエステル、例えば上記不飽和モノオールと上記ポリカルボン酸とのポリエステル(ジエステル等)、及び上記不飽和モノオールと上記(2)の不飽和モノ−若しくはジカルボン酸とのエステル[(メタ)アクリレート等];
【0083】
(10)ハロゲン含有ビニル系単量体、例えばハロゲン化不飽和炭化水素[塩化ビニル、弗化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン、(メタ)アリルクロライド、モノ−又はジ−クロルスチレン、クロロプレン、米国特許第5238767号明細書に記載の弗素化オレフィン等]、及びハロゲン置換アルキル(メタ)アクリレート[米国特許第5238767号明細書に記載の弗素化アルキル(メタ)アクリレート等];
【0084】
(11)上記以外の、カチオン性基(アミノ基若しくは4級アンモニウム塩基)含有不飽和単量体:アミノ基(1級、2級若しくは3級)含有不飽和炭化水素、例えばアルケニルアミン[モノ−又はジ−(メタ)アリルアミン、クロチルアミン等]及びアミノ基含有スチレン系単量体[アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、ビニルベンジルアミン等]、及び複素環アミノ基含有不飽和単量体[4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール等];これらの中和物及び4級化物[前記(1−3)と同様の中和物及び4級化物]、例えばビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩;
【0085】
(12)不飽和ケトン、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン、及び多官能不飽和ケトン(ジビニルケトン等);
(13)イオウ含有不飽和単量体、例えばp−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルフォン、及び多官能イオウ含有不飽和単量体(ジビニルスルフォン、ジビニルスルフォキサイド、ジビニルサルファイド等);並びに
(14)イソシアネート基不飽和単量体、例えばイソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm−イソプロペニル−α,α−ジメチルメチルベンジルイソシアネート。
その他、米国特許第4130523号及び第3424706号明細書に記載の、少なくとも1個のオレフィン性不飽和基を有する単量体も用いることができる。
【0086】
アクリル樹脂(M)には、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(1)の(共)重合体及び少なくとも1種の(4)と少なくとも1種の他の単量体との共重合体が含まれる。(1)の内で好ましいのは(1−1)特にアルキル(メタ)アクリレートである。更に好ましいのはメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート及びブチルアクリレート(以下それぞれMMA、EHMA及びBAと略記)特にこれらの併用である。他の単量体は(2)〜(14)からなる群から選ばれ、これらの内好ましいのは(4)(特にスチレン)、(6)(特にアクリロニトリル)及びこれらの併用である。(M)中の(1)の含量は、全単量体の重量に基づいて(以下同様)、通常20〜100%、好ましくは50〜99%である。
【0087】
スチレン系樹脂には、少なくとも1種のスチレン系単量体(4)の(共)重合体及び少なくとも1種の(4)と少なくとも1種の他の単量体との共重合体が含まれる。(4)の内好ましいのはスチレンである。他の単量体は(1)〜(3)及び(5)〜(14)からなる群から選ばれ、これらの内好ましいのは、(1)[更に好ましくは(1−1)特にアルキル(メタ)アクリレート]、(5)[更に好ましくは(5−2)特にブタジエン及びシクロペンタジエン]、(6)(特にアクリロニトリル)及びこれらの併用である。スチレン系樹脂中の(4)の含量は、通常20〜100%、好ましくは50〜99%である。(1)の含量は、通常20%未満である。
【0088】
スチレン系樹脂の具体例には、ポリスチレン、スチレン/α−メチルスチレン共重合体、及びスチレン/アルカジエン系樹脂(D)が含まれる。樹脂(D)には、スチレンと少なくとも1種の(5−2)の(共)重合体及びスチレンと少なくとも1種の(5−2)と少なくとも1種の他の単量体との共重合体が含まれる。他の単量体は(1)〜(3)、(5−1)、(5−3)及び(6)〜(14)からなる群から選ばれ、これらの内好ましいのは、(1)[更に好ましくは(1−1)特にアルキル(メタ)アクリレート]、及び特に(6)(特にアクリロニトリル)である。(D)の具体例にはブタジエン/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、シクロペンタジエン/スチレン共重合体が含まれる。スチレン/(D)中のスチレン/(5−2)の比は通常20/80〜80/20好ましくは30/70〜70/30である。他の単量体の含量は、通常40%以下、好ましくは30%以下、(1)の含量は20%未満である。
【0089】
酢酸ビニル系樹脂には酢酸ビニルの重合体及び酢酸ビニル(通常20〜100%好ましくは50〜99%)と少なくとも1種の他の単量体[好ましくは(5)(特にエチレン)、(8)(特にビニルアルコール)、他の(9)(特に他のビニルエステル)及びこれらの2種以上の併用]との共重合体[(1)及び(4)の含量は20%未満]が含まれる。具体例にはエチレン/酢酸ビニル共重合体及びその部分加水分解物が含まれる。
【0090】
オレフィン系樹脂には、少なくとも1種のオレフィン系単量体(5−1)の(共)重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブチレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/イソブチレン共重合体、C8〜18オレフィン共重合体等)、及び少なくとも1種の(5−1)(通常20〜100%好ましくは50〜99%)と少なくとも1種の他の単量体[(1)、(4)及び酢酸ビニルの含量は20%未満]との共重合体が含まれる。
【0091】
アクリロニトリル系樹脂には、ポリアクリロニトリル、及びアクリロニトリル(通常20〜100%好ましくは50〜99%)と少なくとも1種の他の単量体(MMA、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−メチル若しくはエチルアクリルアミド、2−メチル−5−ビニルピリジン等)[(1)、(4)、(5−1)及び酢酸ビニルの含量は20%未満]との共重合体が含まれる。
【0092】
ハロゲン含有ビニル系樹脂には、少なくとも1種のハロゲン含有ビニル系単量体(10)の(共)重合体(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等)、及び少なくとも1種の(10)(通常20〜100%好ましくは50〜99%)と少なくとも1種の他の単量体[(1)、(4)、(5−1)、酢酸ビニル及びアクリロニトリルの含量は20%未満]との共重合体(例えば米国特許第3424706号明細書に記載の塩化ビニリデン共重合体)が含まれる。
【0093】
付加重合系樹脂中の親水性単量体[上記(1)〜(14)の内の親水性基(アニオン性基、カチオン性基、オキシエチレン基、水酸基等)を有する単量体及び/又は後述の反応性乳化剤]の割合は10%以下特に0.1〜8%が好ましい。多官能単量体の割合は5%以下特に1%以下が好ましい。
付加重合系樹脂は、通常2,000〜2,000,000又はそれ以上、好ましくは10,000〜1,500,000のMwを有する。
【0094】
付加重合系樹脂及びそのエマルションの製造法は特に制限されず、乳化重合若しくは懸濁重合で直接付加重合系樹脂のエマルションを製造する方法及び塊状重合若しくは溶液重合により溶融状若しくは溶液状の付加重合系樹脂を製造する方法が挙げられる。好ましいのは乳化重合及び懸濁重合法である。溶融状若しくは溶液状で得られる付加重合系樹脂のエマルションは、前記(U)と同様にして乳化剤乳化により製造することができる。重合に際しては公知の重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤、有機溶剤等を用いてもよい。
【0095】
重合開始剤には、ラジカル重合開始剤、例えばアゾ化合物(AIBN、AVN、アゾビスイソ吉草酸等);過酸化物例えば有機過酸化物(ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド等)及び無機過酸化物[過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、過ホウ酸塩、過コハク酸等]、並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。重合開始剤の使用量は単量体全量に対して通常0.1〜5%である。乳化重合において使用される乳化剤には、前述の乳化剤として挙げた界面活性剤、及び乳化重合工程で共重合しうる反応性乳化剤等が含まれる。反応性乳化剤としては、例えばアニオン系(メタ)アクリル酸エステル[ビスフェノール類若しくはそのハイドロカルビル(C1〜24)置換体(ビスフェノールA、そのスチレン化及び/又はベンジル化物等)の(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4)エーテル(EO1〜8モル付加物等)のモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(C2〜4、p=2〜200)モノ(メタ)アクリレート硫酸エステル塩等]、アニオン系(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミドアルカン(C1〜24)スルホン酸塩等]、アニオン系(メタ)アリルエステル[アルキル(C8〜24)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル塩等](これらの塩にはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩等が含まれる)、その他欧州特許EP0718379B1明細書、国際出願PCT/JP01/09863明細書等に記載のものが含まれる。乳化剤の使用量は、単量体全量に対して通常0.1〜8%好ましくは0.5〜5%である。
【0096】
連鎖移動剤には、メルカプタン類例えばアルキルメルカプタン(ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等);α−メチルスチレンダイマー;ハロゲン化炭化水素例えばクロロホルム、四塩化炭素及び四臭化炭素;エノールエーテル類例えば特開昭55−31880号公報記載のもの等;並びにこれらの2種以上の混合物が含まれる。連鎖移動剤の使用は単量体全量に対して、通常5%以下、好ましくは0.1〜3%である。
有機溶剤には、前記(a5)で挙げたものが含まれる。好ましいのはケトン類(特にMIBK)及び芳香族炭化水素である。有機溶剤は重合後に蒸留等の方法により除去してもよい。
【0097】
これらの方法で得られる付加重合系樹脂のエマルションの体積平均粒子径は、通常0.005〜4μm、好ましくは0.01〜4μm特に0.01〜3μmである。
【0098】
樹脂エマルションが含有する水性媒体(B)としては、水及び親水性有機溶剤が挙げられ、親水性有機溶剤としては、前記(a5)で挙げた有機溶剤の内、水に対する溶解度が30g以上/100g水のもの、例えば1価アルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコール等)、3価以上のアルコール(グリセリン等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等)が挙げられる。
(B)の内、水、及び水と親水性有機溶剤の混合物が好ましく、特に好ましいのは水である。水と親水性有機溶剤を併用する場合は、水性媒体中の親水性有機溶剤の量が、10重量%以下であることが好ましい。
【0099】
本発明における樹脂エマルションには必要により酸化チタン等の着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系等)や酸化防止剤[4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−1−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール;トリフェニルホスファイト、トリクロルエチルホスファイト等の有機ホスファイト等]等の各種安定剤、可塑剤、防腐剤、架橋剤(ポリエポキシ化合物及びポリイソシアネート化合物等)、無機充填剤(炭酸カルシウム等)等を添加することができる。これら各添加剤の合計量は樹脂エマルションの重量に対して5重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
【0100】
合成樹脂(A)のエマルションにおける含有量は、製造コスト及び粘度の観点から、(A)のエマルションの重量を基準として、通常20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%である。
【0101】
発泡剤(C)としては、分解することにより窒素ガスや炭酸ガス等の非引火性の気体又は引火性の低い気体を発生するものであれば特に制限されず、無機系発泡剤でも有機系発泡剤でも良いし、水溶性でも良いし、油溶性でも良い。これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0102】
無機系発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸アンモニウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0103】
有機系発泡剤としては、アゾ化合物[アゾビスホルムアミド、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、AIBN、ジアゾベンゼン、ジアゾアミノベンゼン、アゾヘキサヒドロベンゾジニトリル、AVN、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボジニトリル)(以下、ACCNと略記)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシルエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等]、ニトロソ化合物(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン及びN,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド等)、ヒドラジン誘導体(p、p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド及びトリヒドラジノトリアジン等)、セミカルバジド化合物(4,4’−オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド等)及びトリアゾール化合物(5−フェニルテトラゾール等)等が挙げられる。
これらは、水への溶解性を向上させることを目的として、塩酸や硫酸等の無機酸との塩の形態で使用することもできるし、また、水和物の形態で使用してもかまわない。
【0104】
発泡剤(C)は、得られる多孔体の均質性の観点から、25℃において水100gに対して1g以上溶解するものが好ましく、このようなものとして、例えば2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0105】
発泡剤(C)は、熱により分解して気体を発生する化合物であり、120℃で10分加熱したときの分解率が20%以上であることが必要であり、樹脂エマルションの貯蔵安定性と多孔化させた樹脂の柔軟性の観点から好ましくは40〜60%である。120℃10分の加熱による分解率が20%より少ない場合は無孔である樹脂の物性と変わらない。分解率は、下式(1)に基づいて求められる。
分解率(%)=100−100×EXP(−6.93/T) (1)
ここで、Tは120℃における発泡剤の半減期である。
尚、先に無機系発泡剤及び有機系発泡剤として例示したものの分解率は全て20%以上である。
【0106】
また、発泡剤(C)は、(C)1g当たり10〜500mLの気体を発生することが好ましく、気体の発生量は更に好ましくは100〜400mLである。気体の発生量が10mLより少ないと、発泡量が少なすぎて比重が小さくならず無孔である樹脂の物性と変わらないことがある。また、500mLより多いと比重が小さくなりすぎて樹脂の強度が著しく低くなることがある。
気体の発生量は25℃におけるものであり、下式(2)に基づいて求められる。
気体発生量 (mL) = 24,500×N/M (2)
ここで、Nは発泡剤1モルにおいて気体として発生する分子のモル数、Mは発泡剤の分子量である。
【0107】
合成樹脂(A)と発泡剤(C)の重量比率[(A):(C)]は、50:50〜99.9:0.1であることが好ましく、更に好ましくは90:10〜99.5:0.5、特に好ましくは95:5〜99:1である。
【0108】
発泡剤(C)は、予め樹脂エマルションに含有させておいてもよいし、加熱処理前に樹脂エマルションに混合してもよい。
【0109】
本発明における発泡剤(C)の存在下で、合成樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有してなる樹脂エマルション加熱処理することにより、合成樹脂(A)を母体とする多孔質樹脂を得ることができる。
【0110】
発泡剤(C)を含まない樹脂エマルションを加熱処理して得られる無孔樹脂の密度に対する多孔質樹脂の密度の比率は、柔軟性の観点から、0.1〜0.8であることが必要であり、好ましくは0.4〜0.6である。
【0111】
上記比率は、樹脂エマルションに発泡剤(C)を混合したものと混合しないものについて、同一面積のポリプロピレン製トレーにそれぞれ同量を入れて25℃で24時間乾燥後、更に120℃で2時間乾燥して得られるフィルムの平均膜厚を測定して、下式から求めた。
無孔樹脂の密度に対する多孔質樹脂の密度の比率=d1 ÷d2
但し、d1 は発泡剤(C)を混合した樹脂エマルションの乾燥後の膜厚、d2 は発泡剤(C)を混合しない樹脂エマルションの乾燥後の膜厚である。
【0112】
また、多孔質樹脂の100%応力は柔軟性の観点から、好ましくは0.1〜20MPa、多孔質樹脂の200%弾性回復率は、得られる繊維材料の弾性の観点から、好ましくは35%以上、更に好ましくは60〜100%である。
【0113】
本発明における100%応力は、樹脂エマルションに発泡剤(C)を混合したものを乾燥後の膜厚が200μmになるようにポリプロピレン製トレーに入れて25℃で24時間乾燥後、更に120℃で2時間乾燥して得られるフィルムについて、3号のダンベルカッターでカットして試験片とし、これをオートグラフ[AGS−500D{島津製作所(株)製}を用い、引張速度300mm/分]を使用して測定した値である。尚、本試験は温度25℃、相対湿度65%RHの条件下で実施し、測定前には試験サンプルを同条件下で2時間以上温調する必要がある。
また、200%弾性回復率は上記方法によってフィルムを作製した後、フィルムを1cm×9cmにカットし試験片とし、これをオートグラフ[AGS−500D{島津製作所(株)製}]を用い、引張速度200mm/分で200%伸長して2分間保持した後、張力を除き測定した値である。
【0114】
また、本発明における合成樹脂(A)のガラス転移温度は、柔軟性の観点から、−100〜80℃であることが必要である。
ガラス転移温度は、発泡剤(C)を含有しない樹脂エマルションを乾燥後の膜厚が200μmになるようにポリプロピレン製トレーに入れて25℃で24時間乾燥後、更に120℃で2時間乾燥して得られるフィルムを3.0±0.5cm×0.5±0.2cmの大きさに切り取り、動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000(ユービーエム社製)にて基本周波数11Hz、温度幅−100〜100℃の範囲で損失正接tanδを測定し、損失正接tanδが最大値を示す温度である。
【0115】
また、本発明における合成樹脂(A)の貯蔵弾性率は、発泡効率の観点から0.5〜20.0MPaであることが必要である。
貯蔵弾性率は、上述のガラス転移点の測定の場合と同様の供試体フィルムと測定装置を用いて基本周波数11Hz、温度幅40〜150℃の範囲で貯蔵弾性率を測定した際の120℃における値である。
【0116】
多孔質樹脂の密度、100%応力及び200%弾性回復率は、合成樹脂(A)の種類、発泡剤(C)の種類、及び熱処理条件(乾燥条件)を適宜選択することにより所定の範囲とすることができる。
尚、熱処理(乾燥処理)の条件は、用いる合成樹脂(A)及び発泡剤(C)の種類及び諸物性の目標値により異なるが、一般的には、処理温度は50〜200℃、処理時間は1〜3時間である。
【0117】
本発明のエマルションは、柔軟性、反発弾性に優れることから、塗料組成物、繊維加工用のバインダー組成物(顔料捺染用バインダー組成物、不織布用バインダー組成物、補強繊維用集束材組成物等)、コーティング剤、人工皮革・合成皮革用原料組成物等の用途に使用できる。特に繊維加工用のバインダー、人工皮革・合成皮革用原料として使用した場合、優れた風合いの繊維が得られる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部を示す。
【0119】
[ポリウレタンエマルションの製造]
製造例1
温度計及び攪拌機を備えた耐圧反応槽にMn2,000のポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記)537部、α,α−ジメチロールプロピオン酸(以下、DMPAと略記)16.7部、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、MDIHと略記)169部及びアセトン300部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、攪拌下90℃で10時間反応させ、末端NCO基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。系内を30℃に冷却してトリエチルアミン15.1部を加えた。次いで、発泡剤としてAIBN37.2部を加え撹拌し溶解した後、水335部を加え、ホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、エチレンジアミン6.4部を水554部に溶解したものを加え、鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、ウレタン樹脂濃度40重量%、平均分散粒子径0.2μmのポリウレタン樹脂エマルション(U1)を得た。
【0120】
製造例2
AIBNの仕込量を7.4部に代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(U2)を得た。
【0121】
製造例3
AIBNをACCNに代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(U3)を得た。
【0122】
製造例4
Mn2,000のPTMGをMn2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(以下、PHCDと略記)に代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(U4)を得た。
【0123】
製造例5
温度計及び攪拌機を備えた耐圧反応槽にMn2,000のPTMG537部、DMPA16.7部、MDIH169部及びアセトン300部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、攪拌下90℃で10時間反応させ、末端NCO基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。系内を30℃に冷却してトリエチルアミン15.1部を加えた。次いで、水335部を加え、ホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、エチレンジアミン6.4部を水554部に溶解したものを加え、鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、40℃以下でVA−067[和光純薬工業(株)製、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)の塩酸塩]37.2部を加えて溶解させた後、水で濃度調整して、ウレタン樹脂濃度40重量%、平均分散粒子径0.3μmのポリウレタン樹脂エマルション(U5)を得た。
【0124】
比較製造例1
AIBNを加えない以外は製造例1と同様にして比較用のポリウレタン樹脂エマルション(U6)を得た。
【0125】
比較製造例2
AIBNを加えない以外は製造例4と同様にして比較用のポリウレタン樹脂エマルション(U7)を得た。
【0126】
比較製造例3
温度計及び攪拌機を備えた耐圧反応槽にMn2,000のPHCD412部、エチレングリコール23.3部、DMPA28.4部、MDIH237部及びアセトン300部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、攪拌下90℃で10時間反応させ、末端NCO基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。系内を30℃に冷却してトリエチルアミン26.5部を加えた。次いで、発泡剤としてAIBN36.9部を加え撹拌し溶解した後、水335部を加え、ホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、エチレンジアミン8.9部を水554部に溶解したものを加え、鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、ウレタン樹脂濃度40重量%、平均分散粒子径0.2μmの比較用のポリウレタン樹脂エマルション(U8)を得た。
【0127】
比較製造例4
Mn2,000のPTMGをMn2,000のPHCDに、VA−067をVAm−110[和光純薬(株)製、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド);120℃で10分後の分解率3.6%]に代える以外は、製造例5と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(U9)を得た。
【0128】
[処理布の製造]
実施例1
製造例1で得られたポリウレタン樹脂エマルション(U1)100部に塩化カルシウム1.2部を水99部に溶解したものを加え、更に樹脂固形分が3%となるまで水で希釈し、繊維処理用の試験液とした。試験用の未染色ウールモスリン(寸法25cm×25cm)を試験液に浸漬し、マングルで絞り率90%となるよう調整した。この浸漬布を100℃で3時間予備乾燥し、更に150℃で2分間熱処理を施し、処理布を作製した。
【0129】
実施例2〜5及び比較例1〜4
ポリウレタン樹脂エマルション(U1)を製造例2〜5で得たポリウレタン樹脂エマルション(U2)〜(U5)又は比較製造例1〜4で得たポリウレタン樹脂エマルション(U6)〜(U9)に代える以外は実施例1と同様にして実施例2〜5及び比較例1〜4の処理布を得た。
【0130】
[処理布の風合い評価]
実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した処理布の風合いについて、手の触感による官能試験を行い、5段階で評価した。柔軟であり風合いが最も優れたものを5とした。
【0131】
実施例1〜5及び比較例1〜4で用いた合成樹脂(A)の組成及び120℃での貯蔵弾性率、発泡剤(C)の種類及び分解率、(A)と(C)の重量比、無孔樹脂の密度に対する多孔質樹脂の密度の比率、(A)のガラス転移温度、フィルム物性並びに処理布の風合いの評価結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の製造方法により、柔軟性や通気性等の諸物性に優れた多孔質樹脂が製造することができるため、種々の繊維加工処理剤用途(人工皮革、合成皮革、顔料捺染用バインダー等)に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂(A)及び水性媒体(B)を含有してなる樹脂エマルションを発泡剤(C)の存在下で加熱処理することにより製造される多孔質樹脂の製造方法であって、以下の(1)〜(4)を満足する多孔質樹脂の製造方法。
(1)前記(C)を含まない樹脂エマルションを加熱処理して得られる無孔樹脂の密度に対する多孔質樹脂の密度の比率が、0.1〜0.8である。
(2)前記(A)のガラス転移温度が−100〜80℃である。
(3)前記(A)の120℃における貯蔵弾性率が0.5〜20.0MPaである。
(4)前記(C)が熱により分解して気体を発生する化合物であり、120℃で10分加熱したときの分解率が20%以上である。
【請求項2】
前記(C)が25℃において水100gに対して1g以上溶解し、前記(C)の気体発生量が、前記(C)1g当たり10〜500mLである請求項1記載の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記(A)と前記(C)の重量比率[(A):(C)]が、50:50〜99.9:0.1である請求項1又は2記載の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記(A)が重付加系樹脂、重縮合系樹脂、付加縮合系樹脂、付加重合系樹脂及び開環重合系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂である請求項1〜3のいずれか記載の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記(A)がポリウレタン樹脂である請求項1〜4のいずれか記載の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項6】
多孔質樹脂の100%応力が0.1〜20MPaであり、200%弾性回復率が35%以上である請求項1〜5のいずれか記載の多孔質樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−116951(P2011−116951A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235062(P2010−235062)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】