説明

多官能性モノマー及びそれからのポリアリーレン組成物

i)1個又はそれ以上のジエノフィル基(A−官能基)、ii)1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを含む環構造(B−官能基)並びにiii)アセチレン系又は共役ジエン系官能基との環化付加反応が可能な基を除く、1個又はそれ以上の付加重合性、テレキリック性又はグラフト性官能基(C’−官能基)を含んでなる化合物であって、一つのモノマーのA−官能基が、環化付加反応条件下で、第二のモノマーのB−官能基と反応し、それによってポリマーを形成することができることを特徴とする化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3種の異なった反応性官能基を有する組成物及びこれらのモノマーから製造された芳香族ポリマーに関する。更に詳しくは、本発明は、単一モノマー中に、ポリフェニレンマトリックス形成性官能基及び付加−、テレキリック(telechelic)−又はグラフト−重合性反応性官能基を含む組成物に関する。得られるポリマーは、マイクロエレクトロニクスデバイスに於いて低誘電定数絶縁層を製造する際に有用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているもののようなポリアリーレン樹脂は、半導体デバイス、特に集積回路に於ける絶縁フィルムとして使用するために適している、低誘電定数材料である。このようなポリアリーレン化合物は、2個又はそれ以上のシクロペンタジエノン基を有する多官能性化合物を、2個又はそれ以上の芳香族アセチレン基を有する多官能性化合物(多官能性化合物の少なくとも幾らかは、3個又はそれ以上の反応性基を有する)と反応させることによって製造される。2個の芳香族アセチレン基と共に1個のシクロペンタジエノン基を含有する或る種の単一成分反応性モノマー、特に、3,4−ビス(3−(フェニルエチニル)フェニル)−2,5−ジシクロペンタジエノン及び3,4−ビス(4−(フェニルエチニル)フェニル)−2,5−ジシクロペンタジエノン並びにこのようなモノマーから製造されたポリマーも、上記の文献に開示されている。典型的には、これらの材料は、溶液中でb段階にあり、次いで基板(substrate)の上に被覆され、続いて硬化を完結するために400〜450℃のように高い高温度で硬化(ガラス化)される。
【0003】
特許文献2に於いて、反応剤の比を調節することにより又は他の反応性種をモノマー若しくは特許文献1の部分的に重合された生成物に添加することにより、特許文献1で教示されているようなポリマーのモジュラスを調節することが望ましいであろうことが教示された。特許文献3には、フェニルアセチレン基を含有する芳香族ポリマーと反応して、分岐した又は架橋したポリマーを与えることができる、シクロペンタジエノン基を含有する芳香族ポリマーが教示されている。特許文献4には、シクロペンタジエノン主鎖基及びフェニルアセチレン主鎖基の両方を含有するポリマーが開示されている。
【0004】
特許文献5に於いて、半導体デバイスのための低誘電定数絶縁層を形成するための、架橋性炭化水素含有マトリックス前駆体及び硬化性である別個の細孔形成性物質(ポラゲン(poragen))を含む架橋性組成物が開示された。前駆体を部分的に硬化させて、ポラゲンの吸蔵物を含有するマトリックスを形成し、次いでこの細孔発生性材料を除去して、マトリックス材料中にボイド又は細孔を形成することによって、低誘電定数絶縁フィルムを製造することができる。b段階ポリフェニレン樹脂配合物を形成するための、硬化性マトリックス樹脂と別個に添加された細孔形成性材料、特に極小サイズのポラゲンとの混合物の使用は、ポラゲン凝集を受け、大直径細孔形成及び細孔の不均一分布になり、得られるフィルムの電子特性に於ける変動をおこすおそれがある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,965,679号明細書(Godschalx等)
【特許文献2】米国特許第6,359,091号明細書
【特許文献3】米国特許第6,172,128号明細書
【特許文献4】米国特許第6,156,812号明細書
【特許文献5】国際特許出願公開第WO00/31183号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の進歩は、得られるフィルムの誘電定数に於ける改良に至ったが、フィルム特性に於ける追加の改良が、業界によって望まれている。特に、改良された物理的性質、特に、均一に分布された小さい細孔を有するフィルム及び他の硬化組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、i)1個又はそれ以上のジエノフィル基(A−官能基)、ii)1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを含む環構造(B−官能基)並びにiii)アセチレン系又は共役ジエン系官能基との環化付加反応が可能な基を除く、1個又はそれ以上の付加重合性、テレキリック性又はグラフト性官能基(C’−官能基)を含む化合物(モノマー)であって、一つのモノマーのA−官能基が、環化付加反応条件下で、第二のモノマーのB−官能基と反応し、それによって架橋したポリフェニレンポリマーを形成することができることを特徴とする化合物が提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、環化付加反応条件下での、上記のモノマー、それらの混合物又はそれらからなる組成物のA基とB基との部分的反応によって製造された、硬化性オリゴマー又はポリマーが提供される。本発明のこの態様に於いて、硬化性オリゴマー又はポリマーには、C’基の重合又はグラフト化の有り又は無しで、オリゴマー又はポリマーの、側鎖基、末端基又は主鎖内の基として、2種の反応性A官能基及びB官能基の幾らかの残留物が含まれている。
【0009】
本発明の第三の態様に従えば、モノマー上の又は第二の態様の硬化性オリゴマー若しくはポリマー上のC’基は、1種又はそれ以上の付加重合性モノマー、テレゲン(telegen)又はグラフト重合性モノマー若しくはポリマーと反応し、それによって、結合ポラゲン部分を、前記モノマー、オリゴマー又はポリマーの中に含有させる。
【0010】
本発明の第四の態様に従えば、モノマー上の又は第二の態様若しくは第三の態様の硬化性オリゴマー若しくはポリマー上の残留C’基は、お互いに、任意に1種又はそれ以上の付加重合性モノマー、テレゲン又はグラフト重合性モノマーの存在下で反応し、それによって、任意的に結合ポラゲン部分を含有する、部分的に架橋したマトリックスを形成する。
【0011】
第五の態様に従えば、本発明は、第一〜第三の態様の上記の硬化性モノマー若しくはオリゴマー又はこれらを含むポリマー若しくは組成物を、硬化させ、そして架橋させることによって製造された架橋ポリマーである。望ましくは、結合ポラゲンがモノマー又はオリゴマー中に存在する場合、得られる架橋ポリマーには、ポリマー全体に均一に分布された結合ポラゲンが含有されている。
【0012】
本発明の第六の態様に従えば、ガラス化ポリアリーレンポリマーを含む多孔質固体物品の製造方法であって、第一〜第三の態様の上記の硬化性モノマー若しくはオリゴマー又はこれらを含むポリマー若しくは組成物を提供する工程、このモノマーを、環化付加反応条件下で、任意的に溶媒、1種又はそれ以上の付加重合性モノマー、テレゲン若しくはグラフト重合性モノマー及び/又は1種又はそれ以上の別個に添加されたポラゲンの存在下で、部分的に重合させ、それによって硬化性オリゴマー又はポリマー含有組成物を形成する工程並びにこの組成物を硬化させ、そして架橋させて、結合ポラゲン及び任意的に別個に添加されたポラゲンを含有する固体ポリアリーレンポリマーを形成する工程を含んでなる方法が提供される。更なる工程に於いて、任意的な溶媒、結合ポラゲン及び/又は別個に添加されたポラゲンを除去することができる。
【0013】
第七の態様に於いて、本発明は、上記の方法によって製造された物品、望ましくは、結合ポラゲン及び/又は別個に添加されたポラゲンの除去によって形成された多孔質物品である。望ましくは、前記物品には細孔の均一な分布が含まれている。
【0014】
本発明の第八の態様に従えば、上記の物品は、フィルムであり、そして構造物は、回路ライン又はその中の回路ラインの層の間の絶縁体としてこのフィルムを含有する半導体デバイス、例えば集積回路である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモノマーは、半導体デバイスの製造に於いて使用される典型的な溶媒中に非常に可溶性であり、基板上に被覆し、そしてガラス化して、フィルム及び他の物品を形成する配合物中に使用することができる。この結合ポラゲンを含有する組成物は、チップ製造工程の間の細孔崩壊又は合体のための減少した可能性を有する、均一に分布された小さい細孔、均一な電気的特性及び低い誘電定数を有するフィルムを得るために望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
米国特許慣行の目的のために、本明細書中で引用した、全ての特許、特許出願又は刊行物の内容を、特に、モノマー、オリゴマー又はポリマー構造、合成技術及び当該技術分野に於ける一般的知識のその開示に関して、その全部を引用により本明細書に含める。本明細書中に挙げる、用語「含んでなる(又は含む)(comprising)」及びその変形は、同じものが本明細書中に開示されていても又は開示されていなくても、任意の追加の成分、工程又は手順の存在を排除することを意図しない。如何なる疑念も回避するために、用語「含んでなる(又は含む)」の使用によって本明細書中で特許請求された全ての組成物には、反対の記述がない限り、任意の追加の添加物、補助物又は化合物が含有されていてよい。反対に、本明細書中に挙げる、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、操作性のために必須でないものを除いて、いかなる後続の列挙の範囲からも、任意の他の成分、工程又は手順も排除する。使用する場合、用語「のみからなる(consisting of)」は、特に明記されていない又は挙げられていない任意の成分、工程又は手順をも排除する。用語「又は」は、文脈から明らかでない又は別段の記載がない場合、個別に及び任意の組合せで、列挙されたメンバーを指す。
【0017】
本明細書で使用する用語「芳香族」は、(4δ+2)個のπ電子(但し、δは1又はそれ以上の整数である)を含有する、多原子環式環システムを指す。用語「縮合」は、本明細書に於いて、2個又はそれ以上の多原子環式環を含有する環システムに関して使用するとき、その少なくとも2個の環に関して、少なくとも1対の隣接する原子が両方の環内に含有されていることを意味する。
【0018】
「A−官能基」は、単一のジエノフィル基を指す。
【0019】
「B−官能基」は、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを含む環構造を指す。
【0020】
「b段階」は、モノマー又はモノマー混合物の部分重合から得られる、オリゴマー混合物又は低分子量ポリマー混合物を指す。
【0021】
「C’−官能基」は、アセチレン系又は共役ジエン系官能基との環化付加反応が可能な基を除く、付加重合性、テレキリック性又はグラフト性官能基を指す。従って、C’官能基はA基又はB基ではない。
【0022】
「架橋性」は、再造形又は再成形することができない材料にまで非可逆的に硬化させることができるマトリックス前駆体を指す。架橋は、熱、UV、マイクロ波、X線又はe−ビーム照射によって助けることができる。
【0023】
「ジエノフィル」は、好ましくは、L基の除去及び芳香族環形成を含む環化付加反応に於いて、本発明に従って共役二重結合した炭素基と反応することができる基を指す。
【0024】
「不活性置換基」は、モノマー又はb段階オリゴマーのいかなる後続の望ましい重合反応をも妨害せず、本明細書に開示されたような更なる重合性部分を含有しない置換基を意味する。
【0025】
「マトリックス前駆体」は、硬化又は更なる硬化の際に、架橋ポリマー材料を形成する、モノマー、プリポリマー、ポリマー又はこれらの混合物を意味する。
【0026】
「モノマー」は、重合性化合物又はこれらの混合物を指す。
【0027】
「マトリックス」は、別個の組成物又はボイドの分散された領域を取り囲む連続相を指す。
【0028】
「ポラゲン」は、本発明のモノマー、オリゴマー又はポリマーと組合せることができ、そして最初に形成されたオリゴマーから又は更に好ましくはガラス化された(即ち完全に硬化又は架橋された)ポリマーマトリックスから除去されて、ポリマー中のボイド又は細孔の形成になることができる、ポリマー又はオリゴマー成分を指す。ポラゲンは、マトリックスポリマーから、溶媒による溶解を含む任意の適当な技術により又は更に好ましくは熱分解により除去することができる。「結合ポラゲン」は、C’−官能基との反応により、モノマー、オリゴマー又はガラス化ポリマーマトリックスに、化学的に結合された又はグラフト化されたポラゲンを指す。
【0029】
モノマー及びその合成
本発明のモノマーは、好ましくは、1個又はそれ以上のジエノフィル官能基、好ましくはアリールアセチレン基;1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを有する炭化水素環又はヘテロ原子置換炭化水素環;1個又はそれ以上の付加重合性(環化付加によるもの以外)、テレキリック性又はグラフト性官能基並びに任意に不活性置換基又は成分を含む。
【0030】
好ましいB−官能基は、環式5員共役ジエン環(但し、Lは−O−、−S−、−(CO)−又は−(SO2)−である)又は6員共役ジエン環(但し、Lは、−N=N−又は−O(CO)−である)を含む。任意的に、環構造及びそれらの置換基の炭素原子の2個は、一緒になって、芳香族環を形成することもできる。即ち、5員又は6員環構造は、縮合した多芳香族環系の一部であってよい。
【0031】
最も好ましくは、Lは−(CO)−であり、そうしてこの環は、シクロペンタジエノン基又はベンズシクロペンタジエノン基である。このような最も好ましいシクロペンタジエノン環の例は、その2、3、4又は5位で、更に好ましくはその2、3、4及び5位でアリール基を含有するものである。
【0032】
好ましいジエノフィル基(A−官能基)は、不飽和炭化水素基、最も好ましくはエチニル基又はフェニルエチニル基である。
【0033】
好ましいC’−官能基は、ベンゾシクロブテン、ピロン、シクロペンタジエン、シクロプロパン又はエチレン性不飽和基である。エチレン性不飽和基の例には、ビニル芳香族、アクリレート、メタクリレート及びビニルエーテル基が含まれる。
【0034】
本発明のモノマーは、一般的に、式:AxByC’z(式中、A、B及びC’は、それぞれ、A−官能基、B−官能基及びC’−官能基を表し、そしてx、y及びzは、1又はそれ以上の整数である)によって示すことができる。
【0035】
本発明に従った適当なモノマーの例は、式:
【0036】
【化1】

【0037】
(式中、Lは−O−、−S−、−N=N−、−(CO)−、−(SO2)−又は−O(CO)−であり、
Zは、それぞれの存在に於いて独立に、水素、ハロゲン、非置換の若しくは不活性的に置換されたヒドロカルビル基、特にアリール基、更に特にフェニル基、Z”であり又は2個の隣接するZ基は、それらが結合している炭素と一緒に、縮合芳香族環を形成し、
Z”は、2個又はそれ以上の上記の構造を結合する又はA−官能基、C’−官能基及び/若しくは上記のものの組合せを結合する、非置換の又は不活性に置換されたヒドロカルビル基の二価誘導体であり、
そして少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CR1であり又は
少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CR2であり、そして少なくとも1個の他の存在に於いて、ZはC’−官能基であり、ここで、
1は、それぞれの存在に於いて独立に、C’−官能基を含有する基からなる群から選択され、そして
2は、それぞれの存在に於いて独立に、水素、C1〜C4アルキル、C6〜C60アリール及びC7〜C60の不活性的に置換されたアリール基からなる群から選択される)
に対応する化合物である。
【0038】
本発明に従った好ましいモノマーは、式:
【0039】
【化2】

【0040】
(式中、R3は、C6〜C20のアリール又は不活性的に置換されたアリール、更に好ましくは、フェニル、ビフェニル、p−フェノキシフェニル又はナフチルであり、
wは、それぞれの存在に於いて独立に、1〜3の整数、更に好ましくは1であり、
Z”は、二価の芳香族基、更に好ましくはフェニレン、ビフェニレン、フェニレンオキシフェニレンであり、そして
C’は、前記定義された通りである)
によって表される、3−置換シクロペンタジエノン化合物又は3,4−二置換シクロペンタジエノン化合物である。
【0041】
上記のモノマーの非常に好ましい例はC’−官能基が下記の構造式:
【0042】
【化3】

【0043】
によって表されるものである。
【0044】
本発明に従った最も非常に好ましいモノマーは、C’がベンゾシクロブタン官能基であるもの、特に、式:
【0045】
【化4】

【0046】
に対応するものである。
【0047】
AxByC’zモノマーの合成
本発明に従ったモノマーは、一般的な方法を使用する、ジアリール置換アセトン化合物と芳香族ポリケトンとの縮合によって製造することができる。代表的な方法は、Macromolecules、第28巻、第124〜130頁(1995年);J.Org.Chem.、第30巻、第3354頁(1965年);J.Org.Chem.、第28巻、第2725頁(1963年);Macromolecules、第34巻、第187頁(2001年);Macromolecules、第12巻、第369頁(1979年);J.Am.Chem.Soc.、第119巻、第7291頁(1997年)及び米国特許第4,400,540号明細書に開示されている。
【0048】
更に好ましくは、このモノマーは、下記のシントン又は分子成分(式中、R及びR1は、H、フェニルエチニル又はC’置換フェニルエチニル基である)の縮合によって製造することができる。
【0049】
【化5】

【0050】
ジフェニルアセトン又はDPAシントンの例は、下記の式(式中、C’基は前記定義の通りである)によって表される。
【0051】
【化6】

【0052】
テトラケトン又はTKシントンの例は、下記の式(式中、C’基は前記定義の通りである)によって表される。
【0053】
【化7】

【0054】
種々のTK及びDPAシントンは、組合せて、任意の所望のAxByC’zモノマー、好ましくはA22C’2モノマーを製造することができる。重要な工程を、下記の図式に示す。
【0055】
【化8】

【0056】
簡潔に言うと、前記方法は、(a)4−ブロモフェニルアセチルクロリドによる、ジフェニルエーテルのフリーデル−クラフツ二アシル化、(b)ジメチルスルホキシド及び臭化水素酸を使用する、二アシル化生成物の修正コルンブルム(Kornblum)酸化、(c)パラジウム触媒、第三級アミン並びに反応剤及び生成物の両方に対して本質的に不活性である溶媒を使用する、ベンゾシクロブタンアセチレン(BCBフェニルアセチレン)によるビス−4−ブロモフェニルテトラケトンのビス(フェニルエチニル化)、(合成に於けるこの時点で、BCBフェニルアセチレンは、モノマー中の異なったC’基を与えるために、他の官能基置換フェニルアセチレン化合物によって置換されていてよい)及び最後に(d)第四級アンモニウムヒドロキシド触媒並びに反応剤及び生成物の両方に対して本質的に不活性である1種又はそれ以上の溶媒を使用する、1,3−ジフェニルアセトンによるビス(BCBエチニル)テトラケトンの二重アルドール反応によるビス(シクロペンタジエノン)生成を含む。
【0057】
AxByC’zモノマーのb段階化
オリゴマー及び部分的に架橋されたポリマーの製造(b段階化)は、下記の式(式中、FGは、未反応官能基、架橋ポリマー鎖、鎖末端基、例えばフェニルエチニル基若しくはシクロペンタジエノン基又はこれらの組合せを表す)によって、A22C’2モノマーを使用する一つの態様に於いて表すことができる。同様の架橋したポリマーは、同様に製造することができる。
【0058】
【化9】

【0059】
それらの信念に結び付けられることは望まないが、ポリフェニレンオリゴマー及びポリマーは、モノマーと任意の溶媒との混合物を加熱するとき、シクロペンタジエノンとアセチレン基とのディールス−アルダー反応により形成されると信じられる。この生成物は、多量のシクロペンタジエノン及びアセチレン末端基並びに/又はC’基を、なお含有しているであろう。この混合物又はそれで被覆した物品を更に加熱すると、残留するシクロペンタジエノン又はB基と残留するアセチレン又はA基とのディールス−アルダー反応による追加の架橋及びC’基の自己反応による分子量に於ける増加が起こり得る。理想的には、シクロペンタジエノン及びアセチレン基は、ディールス−アルダー反応条件下で、好ましくは280〜350℃、更に好ましくは285〜320℃の温度で、同じ速度で消費される。この温度は、望ましくは、2個のA基の間又は2個のB基の間での反応が、最少で起こるか又は全く起こらないように選択される。しかしながら、一つの態様に於いて、改良されたポリマー特性を、A基とB基との間の反応の前の又はこの反応に随伴する、少なくとも幾らかのC’官能基のお互いとの反応によって得ることができる。ベンゾシクロブタン(BCB)C’基の場合に、この自己反応は、主として、ポリフェニレンポリマーのフェニレン基の間で縮合した、8員環の生成になる。
【0060】
この架橋反応は、好ましくは、ゲル形成を回避するために、A、B及び/又はC’官能基の顕著な量の反応の前に停止される。次いで、オリゴマーを、組成物の更なる進行又は硬化の前に、適当な表面に適用することができる。オリゴマー化した又はb段階にある間に、この組成物は、標準的な適用技術によって基板に容易に適用され、基板の表面上のコンポーネント、対象物又はパターンを覆った(平坦化した)平らな表面被覆を形成する。好ましくは、b段階のとき、モノマーの少なくとも10%が未反応のままである。最も好ましくは、モノマーの少なくとも20%が未反応のままである。未反応モノマーの%は、可視スペクトル分析又はSEC分析によって決定することができる。
【0061】
b段階組成物の被覆組成物を製造するための適当な溶媒には、メシチレン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジベンジルエーテル、ジグリム、トリグリム、ジエチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、ジフェニルエーテル、ブチロラクトン及びエトキシエチルプロピオネートが含まれる。好ましい溶媒は、メシチレン、γ−ブチロラクトン、ジフェニルエーテル、エトキシエチルプロピオネート及びこれらの混合物である。
【0062】
その代わりに、モノマーを、高温度で1種又はそれ以上の溶媒中で重合させ、そして得られるオリゴマーの溶液を冷却し、そして1種又はそれ以上の追加の溶媒と配合して、加工を助けることができる。別アプローチに於いて、モノマーを、高温度で1種又はそれ以上の溶媒中で重合させてオリゴマーを形成し、これを非溶媒中に沈殿させることによって単離することができる。次いで、これらの単離したオリゴマーを、加工のための適当な溶媒中に再溶解させることができる。
【0063】
本発明のモノマー又はそれらのb段階オリゴマーは、硬化性組成物中で、単独で又はディールス−アルダー若しくは同様の環化付加反応の手段によって重合させることができる、2種若しくはそれ以上の官能基を含有する他のモノマー(又はそれらのb段階オリゴマー)との混合物として適切に使用される。このような他のモノマーの例には、特許文献1及び特許文献2に以前開示されているもののような、2個若しくはそれ以上のシクロペンタジエノン官能基及び/若しくはアセチレン官能基又はこれらの混合物を有する化合物が含まれる。b段階硬化反応に於いて、ジエノフィル基は、環式ジエン官能基と反応して、Lの除去及び芳香族環形成を起こす。続く硬化又はガラス化には、同様の環式付加又はジエノフィル官能基のみを含む付加反応が含まれるであろう。
【0064】
A、B及び/又はC’官能基を含有する追加の重合性モノマーが本発明に従った硬化性組成物中に含まれてよい。例には、式:
【0065】
【化10】

【0066】
(式中、Z’は、それぞれの存在に於いて独立に、水素、非置換の若しくは不活性的に置換された芳香族基、非置換の若しくは不活性的に置換されたアルキル基又は−W−(C≡C−Q)qであり、
X’は、非置換の若しくは不活性的に置換された芳香族基、−W−C≡C−W−又は
【0067】
【化11】

【0068】
であり、
Wは、非置換の又は不活性的に置換された芳香族基であり、そして
Qは、水素、非置換の若しくは不活性的に置換されたC6〜C20アリール基又は非置換の若しくは不活性的に置換されたC1〜C20アルキル基であるが、但し、X’及び/又はZ’基の少なくとも2個はアセチレン基からなり、
qは、1〜3の整数であり、そして
nは、1〜10の整数である)
の化合物が含まれる。
【0069】
本発明のモノマーと連係して使用することができる上記の多官能性モノマーの例には、式II〜XXVの化合物が含まれる。
【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
環構造がシクロペンタジエノンである上記のモノマーI−XXVは、例えばAxByC’zモノマーに関して前に開示したような一般的な方法を使用して、置換又は非置換のベンジルと置換又は非置換のベンジルケトンとの縮合(又は類似反応)によって製造することができる。他の構造を有するモノマーは、下記のようにして製造することができる。ピロンは、下記の文献及びその中に引用された文献に示されたもののような一般的な方法を使用して製造することができる。Braham等、Macromolecules、(1978年)、第11巻、第343頁;Liu等、J.Org.Chem.、(1996年)、第61巻、第6693〜99頁;van Kerckhoven等、Macromolecules、(1972年)、第5巻、第541頁;Schilling等、Macromolecules、(1969年)、第2巻、第85頁及びPuetter等、J.Prakt.Chem.、(1951年)、第149巻、第183頁。フランは、下記の文献及びその中に引用された文献に示されたもののような一般的な方法を使用して製造することができる。Feldman等、Tetrahedron Lett.、(1992年)、第47巻、第7101頁;McDonald等、J.Chem.Soc.Perkin Trans.、(1979年)、第1巻、第1893頁。ピラジンは、Turchi等、Tetrahedron、(1998年)、第1809頁及びその中に引用された文献に示されたもののような方法を使用して製造することができる。
【0079】
前に開示されたような本発明のモノマー及び他のモノマーの混合物を使用する本発明の好ましい態様に於いて、混合物中の対応するA−官能基とB−官能基との比を、反応混合物中のB−官能基のA−官能基に対する比が、1:10〜10:1、最も好ましくは2:1〜1:4の範囲内であるように維持することが望ましい。反応混合物中のA−官能基のC’−官能基に対する比を、1:1〜10:1、最も好ましくは2:1〜10:1の範囲内に維持することが、更に望ましい。好ましくは、この組成物は、追加的に、溶媒からなっていてよくそして任意的に、また、ポラゲンからなっていてよい。
【0080】
本発明に於いて使用するための適当なポラゲンには、モノマーから形成されたマトリックス中に小さいドメインを形成することができ、そして続いて、例えば熱分解により除去することができる任意の化合物が含まれる。好ましいポラゲンは、単独重合体並びにグラフトコポリマー、エマルジョンポリマー及びブロックコポリマーを含む、2種又はそれ以上のモノマーの共重合体を含む重合体である。適当な熱可塑性材料には、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、これらの材料を製造するために使用されるモノマーのコポリマー及びこれらの材料の混合物が含まれる。熱可塑性材料は、事実上、線状、分枝状、超分枝状、樹枝状又は星形であってよい。ポラゲンは、また、b段階の間に又はこれに続いて、架橋性マトリックス前駆体又はオリゴマーと反応して、ポリマー鎖のブロック又はペンダント置換を形成するように設計することができる。例えばビニル、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニルエーテル、マレイミド、スチリル、アセチレン、ニトリル、フラン、シクロペンタジエノン、ペルフルオロエチレン、BCB、ピロン、プロピオレート又はオルト−ジアセチレン基のような反応性基を含有する熱可塑性ポリマーは、架橋性マトリックス前駆体又はオリゴマー、特にそれらのC’官能基と化学結合を形成することができる。
【0081】
ポラゲンは、望ましくは、除去した際に、1〜200nm、更に好ましくは2〜100nm、最も好ましくは5〜50nmの平均細孔直径を有する、マトリックス内のボイド又は細孔の形成になる材料である。適当なブロックコポリマーポラゲンには、ブロックの一方が架橋ポリマーマトリックス樹脂と相溶性であり、そして他のブロックがそれと非相溶性であるものが含まれる。有用なポリマーブロックには、ポリスチレン、例えばポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル及びポリアセタール並びにアミン末端閉塞アルキレンオキシド(ハンツマン社(Huntsman Corp.)からジェファミン(Jeffamine)(登録商標)ポリエーテルアミンとして市販されている)が含まれてよい。
【0082】
好ましくは、マトリックス前駆体又はオリゴマーは、ポラゲンに化学的に結合又はグラフト化されている。これは、その時点で、ポラゲン上の官能基又はポラゲン生成性モノマー自体が、モノマー上のC’官能基と反応するために利用可能であるb段階の前に、モノマー中に官能化したポラゲンを含有させることによって達成できる。その代わりに、ポラゲンの添加の前に、幾らかのb−段階が起こってもよく、そして、この混合物を、グラフト化反応を起こさせるか又は他の方法でポラゲン上の残留官能基を、b−段階反応生成物中のC’基と反応させるために十分な条件に付すことによって、ポラゲンをオリゴマーにグラフト化させることができる。次いで、この混合物を、(好ましくは、例えばスピンコーティング又は他の公知の方法により溶媒被覆された)基板の上に被覆する。マトリックスを硬化させ、そして結合ポラゲンを、好ましくは、ポラゲンの熱分解温度よりも高い温度に加熱することによって除去する。この方法で製造した多孔質フィルムは、フィルムが、導電性金属ラインをお互いから分離し、そして電気的に絶縁している、集積回路物品を製造する際に有用である。
【0083】
非常に好ましいポラゲンは、溶液重合又は乳化重合によって製造された架橋ポリマーである。このような重合技術は、当該技術分野、例えば欧州特許出願公開第1,245,586号明細書及びその他で公知である。非常に小さい架橋炭化水素系ポリマー粒子は、1種又はそれ以上のアニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤の使用による乳化重合で製造された。このような製造の例は、J.Dispersion Sci.and Tech.、第22巻、第2〜3号、第231〜244頁(2001年);「合成樹脂エマルジョンの応用(The Applications of Synthetic Resin Emulsions)」、H.Warson著、Ernest Benn Ltd.、1972年、第88頁;Colloid Polym.Sci.、第269巻、第1171〜1183頁(1991年);Polymer,Bull.、第43巻、第417〜424頁(1999年);2003年2月12日出願のPCT03/04668号明細書及び2003年2月12日出願のUSSN10/366,494号明細書に記載されている。
【0084】
更に、小さい均一に分散されたポラゲンは、1種又はそれ以上の、本発明のモノマー又はb−段階オリゴマーのC’官能基を有する付加重合性モノマー、テレゲン又はグラフト形成性コモノマーの重合により、その場で(in-situ)形成することができる。この態様に於いて、得られる結合ポラゲンのサイズは、AxByC’zモノマー又はそのオリゴマーと反応させるコモノマーの量を制限することによって調節することができる。この結果、樹脂中の均一で極めて小さいポラゲン及びガラス化樹脂マトリックス中の均一で極めて小さい細孔(ナノ細孔)になる。上記の手順の両方に於いて、オリゴマー又はポリマー部分は、本発明の化合物の架橋の前に、架橋と同時に又は架橋の後に、C’官能基の手段によって化学的に結合される。
【0085】
AxByC’zモノマー及びオリゴマーからの多孔質マトリックス
本発明に於いて、C’官能基は、得られるガラス化樹脂中の均一で均質な多孔度になる、結合ポラゲンの配置を定めるテンプレートを提供する。例えばA22C’2モノマー及びポラゲン形成性化合物、例えば付加重合性モノマーの混合物を、適度に上昇した温度で適当な溶媒及びb−段階中に混合して、その場で形成されたポリマー性結合ポラゲンでグラフト化されたオリゴマー生成物を形成することができる。得られる前駆体を、マイクロエレクトロニクスデバイスのような物品の表面上に被覆し、そして加熱してオリゴマーをガラス化させ、それによって所望のナノ構造を固定することができる。ガラス化に続いて又はガラス化と同時に、結合ポラゲンを除去し、所望の高度に均一な多孔質構造を残すことができる。
【0086】
望ましくは、結合ポラゲンは、細孔ドメインが、平均直径で10〜20nmであり、そして相互連結されていない、多孔質独立気泡構造が得られるように選択される。結合ポラゲンを製造するために使用される、付加重合性モノマー、テレゲン又はグラフト性モノマーの性質は、発生させるべき細孔のサイズ及び形状、ポラゲン分解の方法、多孔質ナノ構造物中に許容される全てのポラゲン残渣のレベル並びに生成される全ての分解生成物の反応性又は毒性を含む、多数の要因に基づいて選択される。また、このマトリックスは、得られる多孔質構造物を支持するために十分な架橋密度を有することも重要である。
【0087】
特に、細孔形成が起こる温度は、前の溶媒除去及びb段階オリゴマーの少なくとも部分的ガラス化を可能にするために十分に高いが、ガラス化マトリックスのガラス温度、Tgよりも下であるように注意深く選択しなくてはならない。細孔形成が、マトリックスのTg以上の温度で起こると、細孔構造の部分的又は完全な崩壊になるであろう。
【0088】
本発明に於いて使用するための適当な結合ポラゲンの例には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリエステル、ポリスチレン、アルキル置換ポリスチレン及びブロックコポリマーを含む全てのコポリマー組合せ並びにこれらの官能化誘導体を含む、異なった巨大分子構造(macromolecular architecture)(線状、分枝状又は樹枝状)及び異なった化学的同一性(独自性)を有する部分が含まれる。好ましくは、結合ポラゲンを製造するために使用される物質は、AxByC’zモノマー又はオリゴマー中のC’基と反応するための1個又はそれ以上の官能基を有する。適当な官能化されたポリマー物質には、ビニル末端閉塞ポリスチレン、ビニル末端閉塞架橋ポリスチレンコポリマー、ビニル末端閉塞ポリスチレンボトルブラシ(bottlebrush)及びビニル末端閉塞ポリスチレン星形ポリマーが含まれる。最も好ましくは、結合ポラゲン形成化合物は、付加重合性ビニル官能基を含有する、架橋したビニル芳香族ミクロエマルジョン粒子(MEP)である。
【0089】
MEPは、ほぼ球形状の明確化できる(definable)表面を有する極めて小さい粒子サイズの分子内架橋した分子種である。非常に望ましくは、MEPは、5〜100nm、最も好ましくは5〜20nmの平均粒子サイズを有する。好ましくは、MEPは、AxByC’zモノマー又はオリゴマーの中への容易な導入を可能にする、ビニルのような付加重合性基で官能化されている。望ましくは、官能化されたMEPのグラフト化レベルは、自己整列(self-alignment)を生じ、それによってMEPの独立のマイクロフェーズ分離を生じるのに十分なものである。熱処理した際に、MEP相は分解し、その間にモノマーのA官能基及びB官能基の架橋が進行し、それによって、単一工程で、均一に分布されたナノサイズボイドを有する架橋したオリゴマー又はガラス化した固体を形成することができる。
【0090】
その代わりに、結合ポラゲンは、C’官能基、特にエチレン性不飽和と、付加重合性モノマー又はテレゲンとを反応させて、グラフト化ポリマーを形成することによって製造することができる。例は、ビニル末端閉塞ポリスチレン又はビニル末端閉塞スチレンオリゴマーと、AxByC’zモノマー又はオリゴマーとを反応させて、下記の図式(但し、式中、m及びnは1又はそれ以上の整数である)中に示されるようなブロック構造体を作ることである。
【0091】
【化20】

【0092】
異なったAxByC’z出発モノマーを使用して、種々の構造を有するブロックコポリマー又はランダムコポリマーを製造することができる。一つの反応図式を、下記のように示す。但し、式中、m及びnは、また、1又はそれ以上の整数である。
【0093】
【化21】

【0094】
更に、AxByC’zモノマーを、ビニルモノマー自体のミクロ乳化重合の間の架橋剤として使用して、架橋した官能化MEPナノ粒子を製造することができる。このようなMEPは、更に、AxByC’zモノマー又はb−段階オリゴマーと配合し、そして、所望により、ディールス−アルダー反応及び環形成により又は付加重合により、マトリックスの中に導入することができる。本発明のこの態様のための特に適当なモノマーには、式XXVIII及びXXIXの化合物が含まれる。
【0095】
【化22】

【0096】
上記の方法に於いて、その形成の間にマトリックスの中に結合ポラゲンを含有させる結果は、細孔と、初期結合ポラゲン単位並びにポラゲンの限定された又は凝集の無い及び不均一相分離とのほぼ均一な一致である。更に、結合ポラゲンの分解温度を適切に選択した場合に、細孔形成の目的のための別個の熱処理を回避することができる。得られる、フィルム又は皮膜を含む得られる物品は、細孔分布の均一性に起因する、非常に均一な電気特性を有する、極めて低い誘電定数ナノ多孔質材料である。
【0097】
非常に望ましくは、本発明のモノマーから形成されたマトリックス材料は、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも350℃、最も好ましくは少なくとも400℃の温度で、比較的熱安定性である。更に、このマトリックスポリマーは、また、完全に架橋又は硬化させた後に、300℃よりも高い、更に好ましくは350℃よりも高いTgを有する。更に望ましくは、曲げ弾性率が最も急速に増加する、加熱の際の温度として定義される、本発明の架橋又はガラス化温度は、望ましくはポラゲンの分解温度よりも低く、好ましくは400℃又はそれ以下、最も好ましくは300℃又はそれ以下である。この特性によって、実質的な細孔形成が起こる前に、架橋を起こすことが可能になり、それによって、得られる多孔質構造の崩壊を防止することができる。最後に、本発明の望ましい態様に於いて、ポラゲンの存在有り又は無しで、部分的に架橋し、そして硬化したポリマーの曲げ弾性率は、望ましくは、400℃又はそれ以下、好ましくは350℃又はそれ以下、最も好ましくは300℃又はそれ以下の温度で最大値に到達し、そして、完全に硬化したマトリックスを300℃よりも高い温度まで加熱した際に、熱分解による細孔形成の間に遭遇し得るような曲げ弾性率低下は、殆ど又は全く起こらない。
【0098】
一つの適当な操作方法に於いて、AxByC’zモノマー、官能化MEP又は他のポラゲン形成材料、任意のコモノマー及び任意の溶媒を一緒にし、そして高温度、好ましくは少なくとも160℃、更に好ましくは少なくとも170℃で、少なくとも数時間、更に好ましくは少なくとも24時間加熱して、結合ポラゲンを含有する架橋性b段階オリゴマーの溶液を製造する。ポラゲン形成性化合物の量に対するマトリックス前駆体又はモノマーの量を、所望の多孔度を有する硬化マトリックスを与えるように調節することができる。好ましくは、一緒にしたポラゲン及びモノマー重量基準のポラゲン形成性化合物の量は、5〜80%、更に好ましくは20〜70%、最も好ましくは30〜60%である。
【0099】
本発明に於いて使用するモノマー及びポラゲン形成性化合物を含有する溶液は、所望の被覆及び適用特性を有する光学的透明溶液になるように十分に希釈される。好ましくは、使用される溶媒の量は、全溶液重量基準で50〜95%の範囲内である。この溶液は、任意の適当な方法、例えばスピンコーティングによって基板に適用し、次いで加熱して、残留する溶媒の大部分を除去し、そしてその中に分散された結合ポラゲン単位を含有する、モノマー又はb段階オリゴマーを残すことができる。溶媒除去工程の間及び/又は続く熱処理の間に、ポラゲン相は、望ましくは、マトリックス前駆体又は完全に硬化したマトリックス内に、分離した均一に分散した吸蔵物を形成する。継続する又は次の加熱の際に、この吸蔵物は分解生成物に分解し、分解生成物は硬化したマトリックスを通って拡散し、それによって多孔質マトリックスを形成する。
【0100】
上記の多孔質マトリックス中の細孔の濃度は、硬化したポリマーの誘電定数又は反射指数を低下させるために十分に高いが、得られる多孔質マトリックスを、マイクロエレクトロニクスデバイスの製作に於いて必要な加工工程に耐えるようにするために十分に低い。好ましくは、得られる架橋した多孔質マトリックス中の細孔の量は、2.5よりも小さい、更に好ましくは2.0よりも小さい誘電定数を有する材料になるために十分なものである。
【0101】
この細孔の平均直径は、好ましくは100nmよりも小さく、更に好ましくは20nmよりも小さく、最も好ましくは10nmよりも小さい。この細孔サイズは、グラフト化工程に於いて使用されるMEPのサイズを調節することによって又は結合ポラゲンの製造に於いて使用される付加重合性モノマー若しくはテレゲンの量を調節することによって、容易に制御することができる。
【0102】
本発明の組成物は、公知の方法、例えば、特許文献1の方法に従って、集積回路の誘電フィルム及び中間層誘電体を製造するために使用することができる。多孔質フィルムを製造するために、結合ポラゲンは、好ましくはポラゲンの熱分解によって除去される。
【実施例】
【0103】
本発明を、本発明の限定として見なすべきではない下記の実施例によって更に例示する。反対に記載するか又は当該技術分野で一般的でない限り、全ての部及び%は重量基準である。
【0104】
実施例1:A22C’2モノマーの合成
【0105】
【化23】

【0106】
A)4−ブロモフェニルアセチルクロリドの合成
4−ブロモフェニル酢酸(99.5g、0.46mol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)を、乾燥窒素雰囲気下で、予備乾燥した磁気攪拌棒を含有する、予備乾燥した1Lの一つ口ガラス丸底シュレンク(Schlenk)反応器に添加する。乾燥窒素下で密閉した後、この反応器を、僅かに正の窒素圧力下でシュレンクラインの上に置く。塩化チオニル(300mL)を、乾燥窒素雰囲気下で、シュレンクアダプターが取り付けられている予備乾燥したガラス添加漏斗に添加し、次いで、乾燥窒素下で密閉し、そしてシュレンクラインの上に置く。反応器と添加漏斗とを動的窒素流下で接合し、その後、塩化チオニルを、攪拌した反応器に滴下により添加する。窒素流をシュレンク反応器の中に維持し、その間に、反応からのガスを、添加漏斗上のシュレンクアダプターを通して、スクラバーシステムの中に排気する。塩化チオニルの添加が完結して、添加漏斗を、動的窒素流下で、スクラバーシステムの中に排気するシュレンクアダプターで蓋をした凝縮器で取り替え、次いでサーモスタットで制御した加熱マントルを使用して、反応器内容物を60℃までゆっくり加熱する。60℃で2.5時間保持した後、過剰の塩化チオニルを、シュレンクマニホールドからの真空を適用することによって、生成物から分離する。得られる4−ブロモフェニルアセチルクロリド生成物(106g、98.1%単離収率)を、乾燥窒素下で使用するまで保持する。
【0107】
B)4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)アセチル]フェニルエーテルの合成
ジフェニルエーテル(38.6g、0.227mol)、塩化アルミニウム(60.5g、0.454mol)及び無水ジクロロメタン(250mL)を、乾燥窒素雰囲気下で、予備乾燥した磁気攪拌棒を含有する、予備乾燥した1Lのガラス一つ口丸底シュレンク反応器に添加する。乾燥窒素下で密閉した後、この反応器を、僅かに正の窒素圧力下でシュレンクラインの上に置く。次いで、氷浴を反応器の下に置く。ジクロロメタン(100mL)中に溶解させた4−ブロモフェニルアセチルクロリド(106g、0.454mol)を、乾燥窒素雰囲気下で、シュレンクアダプターが取り付けられている予備乾燥したガラス添加漏斗に添加し、次いで、乾燥窒素下で密閉し、そしてシュレンクラインの上に置く。反応器と添加漏斗とを動的窒素流下で接合し、次いで4−ブロモフェニルアセチルクロリド溶液を、攪拌した反応器に3時間かけて滴下により添加する。2時間の後反応の後、反応器をシュレンクラインから取り出し、そして内容物を4Lのビーカー内に入っている砕いた氷の上に注ぐ。この氷が完全に溶けた後、沈殿した生成物をジクロロメタン(14L)の中に溶解させ、そして分液漏斗を使用して水層を除去する。ジクロロメタン溶液を、脱イオン水(2L)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥する。得られたスラリーを中度フリットガラス漏斗を通して濾過し、次いで乾燥濾液を、必要に応じて、追加のジクロロメタン(2L)溶離剤を使用して、シリカゲルのカラムに通す。このジクロロメタン溶液を、乾固まで回転蒸発させて、119gの白色粉末を得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって、6領域%で単一の共生成物存在によって付随される、94領域%で所望の生成物の存在が明らかになる。
【0108】
沸騰アセトニトリル(14L)からの再結晶及び濾過による回収及び真空オーブン内での乾燥により、96.0g(75.0%単離収率)の4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)アセチル]フェニルエーテルが、共生成物の完全な除去を示すHPLC分析(100領域%)で、かすかに光る白色板状結晶として得られる。1H核磁気共鳴(NMR)分析は、生成物の指定された構造と一致する。
【0109】
C)4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテルの合成
4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)アセチル]フェニルエーテル(44g、0.078mol)及びジメチルスルホキシド(600mL)を、磁気攪拌を有する2Lのガラス三つ口丸底反応器に添加する。48%臭化水素酸水溶液(100g)を、添加漏斗で3分間かけて添加する。90℃への加熱を開始し、この温度に達すると、透明な明橙色溶液の形成が見られる。90℃の反応温度で3時間後に、熱い生成物溶液を3Lのトルエンの中に希釈し、続いてこのトルエン溶液を、300mL部分の脱イオン水で2回洗浄する。洗浄したトルエン溶液を、乾固まで回転蒸発させて、30g(65%単離収率)の明黄色粉末を得る。HPLC分析によって、100領域%で所望の生成物の存在が明らかになる。1H NMR分析は、生成物の指定された構造と一致する。
【0110】
D)4,4’−ビス[(3−ベンゾシクロブテン−エチニルフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテルの合成
200mLのフラスコ内に、15g(0.025mol)の4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテル、12g(0.12mol)のトリエチルアミン、6.65g(0.12mol)の3−ベンゾシクロブテン−アセチレン及び60mLのN,N−ジメチルホルムアミドを入れる。この反応混合物を、窒素で15分間パージし、次いで0.40g(0.0015mol)のトリフェニルホスフィン及び0.05g(0.0002mol)の酢酸パラジウムを添加する。この反応混合物を、80℃で窒素雰囲気下で3時間加熱した後、フラスコを室温にまで冷却し、そして水(200mL)を添加する。固体生成物を濾過し、そして2Lのトルエンの中に溶解させる。この有機溶液を、10%HCl水溶液、水及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いで無水Na2SO4で乾燥する。次いで、このトルエン溶液をシリカゲルフィルターに通し、そしてトルエンを除去し、トルエン/ヘキサンから再結晶して、純粋な生成物(16.5g、96%単離収率)を得る。
【0111】
E)モノマーの合成
4,4’−ビス[(3−ベンゾシクロブテン−エチニルフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテル(3.43g、0.005mol)及び1,3−ジフェニルアセトン(2.52g、0.012mol)を、300mLの無水1−プロパノールに添加する。攪拌及び加熱を開始し、懸濁液が還流温度に達したとき、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(水中50%、0.5mL)を3回に分けて添加し、直ちに深赤紫色を誘発する。還流を2時間維持した後、HPLC分析によって、4,4’−ビス[(3−ベンゾシクロブテン−エチニルフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテル反応剤の完全な転化が達成されたことが示される。この時点で、油浴を反応器から取り去り、そして反応混合物を室温にまで冷却する。生成物を、中度フリットガラス漏斗に通す濾過によって回収する。漏斗上の結晶性生成物を、2個の100mL部分の1−プロパノールで洗浄し、次いで真空オーブン内で乾燥して、4.0g(77%単離収率)の、HPLC分析により90%よりも高い純度を有するモノマーを得る。
【0112】
実施例2:A2BC’2モノマーの合成
【0113】
【化24】

【0114】
A)4,4’−ベンゾシクロブテンエチニルベンジルの合成
100mLの丸フラスコに、4,4’−ジブロモベンジル(3.45g、0.0091mol)、DMF(20mL)、3−ベンゾシクロブテン−アセチレン(2.56g、0.02mol)及びトリエチルアミン(4g、0.04mol)を添加する。得られる混合物を窒素で15分間パージし、次いでトリフェニルホスフィン(0.08g)及び酢酸パラジウム(0.017g)を添加する。この反応混合物を80℃で2時間加熱する。室温にまで冷却した後、水(100mL)を添加する。この粗製生成物を濾過し、そして固体を、塩化メチレンの中に再溶解させる。溶媒を蒸発させると、黄色結晶が得られ、これを塩化メチレン/ヘキサンから更に再結晶する。収量3.2g、76%。
【0115】
B)モノマー合成
4,4’−ベンゾシクロブテンエチニルベンジル(1.5g、3.3mmol)及び0.85g(4.1mmol)の1−(4−フェニルエチニルフェニル)−3−フェニル−2−プロパノンを、30mLの無水1−プロパノールを含有する反応器に添加する。攪拌及び加熱を開始し、懸濁液が還流温度に達したとき、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(水中50%、2部分で0.25mL)を添加し、直ちに深赤紫色を誘発する。還流を1.5時間維持した後、HPLC分析によって、4,4’−ベンゾシクロブテンエチニルベンジル反応剤の完全な転化が達成されたことが示される。この時点で、油浴を反応器から取り去り、そして反応混合物を40℃にまで冷却する。生成物を、中度フリットガラス漏斗に通す濾過によって回収する。漏斗上の結晶性生成物を、2個の20mL部分の1−プロパノールで洗浄し、次いで真空オーブン内で乾燥して、1.5g(72%単離収率)の、98%よりも高い純度を有する所望のA2BC’2モノマーを得る。
【0116】
実施例3:ABC’モノマーの製造
【0117】
【化25】

【0118】
A)フェニルアセチル4−ブロモフェニルエーテルの合成
0℃のCH2Cl2(130mL)中のAlCl3(62.5g、0.47mol)の攪拌した懸濁液に、ブロモジフェニルエーテル(92.7g、0.37mol)及びフェニル酢酸クロリド(63.4g、0.41mol)の混合物を、60分間かけて添加する。添加が完結した後、反応混合物を0℃で更に4時間攪拌し、次いで1Lの氷/水の中にゆっくり注ぐ。得られる生成物を、800mLのトルエンで抽出し、そしてNa2SO4で乾燥する。溶媒を蒸発させて、2−プロパノールから再結晶した後、黄色固体を得る。収量122g、89%。
【0119】
B)フェニルアセチル−4−ブロモフェニルエーテルの合成
フェニルアセチル4−ブロモフェニルエーテル(66g、0.18mol)及びジメチルスルホキシド(200mL)を、磁気攪拌を有する2Lのガラス三つ口丸底反応器に添加する。48%臭化水素酸水溶液(50g、0.3mol)を、添加漏斗で3分間かけて添加する。次いで90℃への加熱を開始し、この温度に達すると、透明な明橙色溶液の形成が見られる。90℃で4時間後に、熱い生成物溶液を250mLのトルエンの中に希釈し、続いてこのトルエン溶液を、300mL部分の脱イオン水で2回洗浄する。洗浄したトルエン溶液を、乾固まで回転蒸発させ、そしてエタノールから再結晶する。収量は60.2g(88%)の明黄色粉末である。HPLC分析によって、100領域%で所望の生成物の存在が明らかになる。1H NMR分析は、生成物の指定された構造と一致する。
【0120】
C)3−ベンゾシクロブテン−エチニルフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテルの合成
250mLの丸底フラスコに、フェニルアセチル−4−ブロモフェニルエーテル(7.6g、0.02mol)、DMF(60mL)、ベンゾシクロブテン−アセチレン(3.2g、0.025mol)及びトリエチルアミン(5.1g、0.05mol)を添加する。得られる混合物を、窒素で15分間パージし、次いでトリフェニルホスフィン(0.30g)及び酢酸パラジウム(0.04g)を添加する。この反応混合物を、80℃で4時間加熱する。室温にまで冷却した後、水(100mL)を添加する。粗製生成物を濾過し、そして固体をトルエン/ヘキサン中に再溶解させる。溶媒を蒸発させると、黄色結晶が得られ、これをトルエン/ヘプタンから更に再結晶することができる。収量5.5g、64%。
【0121】
D)ABC’モノマーの合成
3−ベンゾシクロブテン−エチニルフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテル(1.1g、0.0025mol)及び1,3−ジフェニルアセトン(0.63g、0.003mol)を、20mLの無水1−プロパノール及び5mLのトルエンに添加する。攪拌及び加熱を開始し、懸濁液が完全に溶解したとき、ホスファゼンスーパー塩基P1−tBu−トリス−(テトラメテン)(phosphazene super base P1-tBu-tris-(tetramethene))(0.3mL)を数回に分けて添加し、直ちに深赤紫色を誘発する。還流条件を2時間維持した後、HPLC分析によって、3−ベンゾシクロブテン−エチニルフェニル)グリオキサリル]フェニルエーテル反応剤の完全な転化が達成されたことが示される。この時点で、油浴を反応器から取り去り、そして反応混合物を−20℃まで冷却する。生成物を、中度フリットガラス漏斗に通す濾過によって回収する。漏斗上の結晶性生成物を、2個の20mL部分の1−プロパノールで洗浄し、次いで真空オーブン内で乾燥して、1.0g(66%単離収率)のABC’モノマーを得る。
【0122】
実施例4:多孔質マトリックスの製造
50mLの丸底フラスコに、2.0gの実施例1からのA22C’2モノマー、1.0gの架橋したポリスチレンミクロエマルジョン粒子(11nm、VSF=1.9)及び6.0gのγ−ブチロラクトン(GBL)を添加した。得られる混合物を窒素下で15分間パージし、次いで窒素下で油浴で170℃で7時間加熱する。次いで、この混合物を145℃まで冷却し、そして6gのシクロヘキサノンで希釈する。この混合物を室温にまで冷却して、GBL/シクロヘキサノン中のポリマーグラフト化ミクロエマルジョン粒子の懸濁液を得る。
【0123】
この混合物をシリカウェーハに適用し、そしてスピンコートによって流延して、1.0μmの厚さを有するフィルムを形成する。このフィルムをホットプレート上で150℃で2分間ベークし、次いで真空オーブンに移す。オーブン温度を、窒素下で7℃/分で415℃まで上昇させ、そしてこの温度で40分間保持して、ポリスチレンポラゲンの分解を起こし、その後冷却する。得られる多孔質フィルムは、透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真の目視分析を基にして、10nmの平均細孔サイズで5〜20nmの細孔サイズ範囲を有する。得られるフィルムの屈折率は、2.2のk値で1.50である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1個又はそれ以上のジエノフィル基(A−官能基)、ii)1個又はそれ以上の、2個の共役炭素−炭素二重結合及び離脱基Lを含む環構造(B−官能基)並びにiii)アセチレン系又は共役ジエン系官能基との環化付加反応が可能な基を除く、1個又はそれ以上の付加重合性、テレキリック性又はグラフト性官能基(C’−官能基)を含んでなり、一つのモノマーのA−官能基が、環化付加反応条件下で、第二のモノマーのB−官能基と反応し、それによってポリマーを形成することができることを特徴とする化合物。
【請求項2】
式:
【化1】

(式中、Lは、−O−、−S−、−N=N−、−(CO)−、−(SO2)−又は−O(CO)−であり、
Zは、それぞれの存在に於いて独立に、水素、ハロゲン、非置換の若しくは不活性的に置換されたヒドロカルビル基Z”であり又は2個の隣接するZ基が、それらが結合している炭素と一緒に、縮合芳香族環を形成し、
Z”は、2個又はそれ以上の上記構造を結合するか又はA−官能基、C’−官能基及び/若しくは上記のものの組合せを結合する、非置換の又は不活性的に置換されたヒドロカルビル基の二価誘導体であり、
そして少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CR1であり又は
少なくとも1個の存在に於いて、Zは−Z”−C≡CR2であり、そして少なくとも1個の他の存在に於いて、ZはC’−官能基であり、ここで、
1は、それぞれの存在に於いて独立に、C’−官能基を含有する基からなる群から選択され、そして
2は、それぞれの存在に於いて独立に、水素、C1〜C4アルキル、C6〜C60アリール及びC7〜C60の不活性的に置換されたアリール基からなる群から選択される)
に対応する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
【化2】

(式中、R3は、C6〜C20のアリール又は不活性的に置換されたアリールであり、
wは、それぞれの存在に於いて独立に、1〜3の整数であり、
Z”は、二価の芳香族基であり、そして
C’は、請求項1において先きに定義された通りである)
に対応する請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
C’−官能基が、それぞれの存在に於いて独立に、下記の構造:
【化3】

の1個によって表される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
それぞれ存在するC’−官能基がベンゾシクロブタン官能基である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化4】

に対応する請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物を含む組成物を硬化させることによって形成された架橋ポリマー。
【請求項8】
オリゴマー又はポリマー部分が、化合物の架橋の前に、架橋と同時に又は架橋の後に、化合物のC’官能基によって化学的に結合されている結合ポラゲンを含んでなる請求項7に記載の架橋ポリマー。
【請求項9】
請求項8に記載の架橋ポリマーから結合ポラゲンを除去することによって形成された多孔質マトリックス。

【公表番号】特表2007−515501(P2007−515501A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527003(P2006−527003)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030227
【国際公開番号】WO2005/030848
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】