説明

多室型空気調和機

【課題】運転される室内機の室内熱交換器容量(熱交換器凝縮能力)がある一定以下の場合であっても、圧縮機が保護停止するのを回避し快適性を維持することができる多室型空気調和機を提供すること。
【解決手段】本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機6を有する室外機1と、室外機1に接続可能な複数台の室内機とを有する多室型空気調和機であって、各室内機には室内空気と冷媒とが熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器の温度を検知する室内熱交換器温度検出手段とを備え、室内熱交換器の温度に応じて圧縮機の回転数を決定し、複数台の室内機の運転から、単独の室内機の運転へ切り替わったときに、単独の室内機に配置された室内熱交換器の能力が所定の能力を下回る場合は、圧縮機の回転数を決定する室内熱交換器の温度の閾値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一台の室外機に複数台の室内機を接続する多室型空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機では、暖房運転時において、圧縮機の保護の目的で、室内機の熱交換器温度がある設置値を超えると圧縮機の運転周波数を低下させるように制御されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−119149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、室内負荷が高いとき(室内温度が高いとき)、複数台の室内機の運転から、単独の室内機の運転へ切り換えられた場合、室内熱交換器温度(圧縮機吐出圧力)が上昇するのを回避するために、室内機の熱交換器温度がある設置値を超えると圧縮機周波数が低下するように制御する。
【0005】
しかしながら、接続されている室内機のうちで極端に室内熱交換器容量(熱交換器凝縮能力)の小さなものが存在している場合は、複数台の室内機の運転から、室内熱交換器容量の小さな室内機の単独運転に切り替わった場合は、室内熱交換器温度(圧縮機吐出圧力)が著しく上昇し、室内熱交換器温度が上昇するのを回避するための圧縮機周波数が低下が間に合わず、圧縮機が保護停止してしまい快適性を低下させてしまうという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、運転される室内機の室内熱交換器容量(熱交換器凝縮能力)がある一定以下の場合であっても、圧縮機が保護停止するのを回避し快適性を維持することができる多室型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機と、室外機に接続可能な複数台の室内機とを有する多室型空気調和機であって、各室内機には室内空気と冷媒とが熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器の温度を検知する室内熱交換器温度検出手段とを備え、室内熱交換器の温度に応じて圧縮機の回転数を決定し、複数台の室内機の運転から、単独の室内機の運転へ切り替わったときに、単独の室内機に配置された室内熱交換器の能力が所定の能力を下回る場合は、圧縮機の回転数を決定する室内熱交換器の温度の閾値を変更することにより、室内機の快適性に影響にない範囲内で圧縮機の運転周波数を早めに変更することにより、快適性の影響を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、運転される室内機の室内熱交換器容量(熱交換器凝縮能力)がある一定以下の場合であっても、圧縮機が保護停止するのを回避し快適性を維持することができる多室型空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における多室型空気調和機の冷凍サイクル構成図
【図2】同実施の形態1における多室型空気調和機のブロック図
【図3】(a)同実施の形態1におけるパターンAの圧縮機の周波数決定図(b)同実施の形態1におけるパターンBの圧縮機の周波数決定図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機と、室外機に接続可能な複数台の室内機とを有する多室型空気調和機であって、各室内機には室内空気と冷媒とが熱交換を行う室内熱交換器と、室内熱交換器の温度を検知する室内熱交換器温度検出手段とを備え、室内熱交換器の温度に応じて圧縮機の回転数を決定し、複数台の室内機の運転から、単独の室内機の運転へ切り替わったときに、単独の室内機に配置された室内熱交換器の能力が所定の能力を下回る場合は、圧縮機の回転数を決定する室内熱交換器の温度の閾値を変更することにより、室内機の快適性に影響にない範囲内で圧縮機の運転周波数を早めに変更することにより、快適性の影響を回避することが可能となる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、単独の室内機に配置された室内熱交換器の能力が所定の能力を下回る場合には、上回る場合に比べて圧縮機の回転数を早く下げる方向となるように、室内熱交換器の温度の閾値を変更することにより、室内熱交換器の能力に合わせて適切な制御を行うことができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における多室型空気調和機の冷凍サイクルの構成図である。まず、図1を用いて本実施の形態における多室型空気調和機の構成について説明する。本実施の形態1における多室型空気調和機は、室外機1に二台の室内機2および室内機3が冷媒配管で接続されて構成されている。なお、室内機の台数は本実施の形態で示す二台に限定されるものではない。また、図1に示す実線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示すものである。
【0014】
室外機1には、冷媒と大気とが熱交換を行う室外熱交換器4と、室外熱交換器4に送風する室外ファン5と、冷媒を圧縮し高温高圧の冷媒とする圧縮機6と、冷媒流路の順逆を変更する四方弁7と、冷媒を減圧する減圧装置8および減圧装置9とを備える。なお、本実施の形態では室内機が二台接続することが可能であるため、室内機の接続口は二箇所設けており、減圧装置8および減圧装置9は並列に配置されて冷凍サイクルを構成している。
【0015】
また、室内機2には、室内空気と冷媒とが熱交換を行う室内熱交換器10と、室内熱交換器10へ送風する室内ファン11を配置し、室内機3には、室内空気と冷媒とが熱交換を行う室内熱交換器12と、室内熱交換器12へ送風する室内ファン13を配置している。
【0016】
そして、室外機1に設けた接続口14および接続口16で室内機2と接続され、室外機1に設けた接続口15および接続口17で室内機3と接続される。接続口14および接続口15は冷房運転時において冷媒往き側となり、接続口16および接続口17は冷房運転時において冷媒戻り側となる。
【0017】
以上のように構成された多室型空気調和機において、冷房運転時を例にとって冷媒の流
れを説明する。
【0018】
まず、冷房運転時には、圧縮機6から吐出された冷媒が室外熱交換器4へ入るように四方弁7を切り換える。そして、室外熱交換器4を経由して減圧装置8および減圧装置9のそれぞれの流路に分岐される。その後、減圧装置8を経由する冷媒流路は、室内機2に設けられた室内熱交換器10に流入し、接続口16を経て室外機1に戻ってくる。
【0019】
一方、減圧装置9を経由する冷媒流路は、室内機3に設けられた室内熱交換器12へ流入し、接続口17を経て室外機1に戻ってくる。そして、接続口16および接続口17を経て戻ってきた冷媒が合流し、再度、圧縮機6へ吸入される。
【0020】
すなわち、冷房運転時には、圧縮機6、四方弁7、室外熱交換器4、減圧装置8(または減圧装置9)、室内熱交換器10(または室内熱交換器12)、四方弁7、圧縮機6の順で冷媒が流れるように冷凍サイクルが構成され、暖房運転時には、圧縮機6、四方弁7、室内熱交換器10(または室内熱交換器12)、減圧装置8(または減圧装置9)、室外熱交換器4、四方弁7、圧縮機6の順で冷媒が流れるように冷凍サイクルが構成される。
【0021】
なお、減圧装置8および減圧装置9は、例えばステッピングモータ等により弁開度をパルス制御可能な電動膨張弁で構成され、圧縮機6は、インバータ駆動の容量(周波数)可変形圧縮機が用いられ、減圧装置8および減圧装置9は、室内の負荷に見合った開度となるようにステッピングモータ等によりパルス制御され、冷媒も室内負荷に応じた流量で制御される。
【0022】
また、室内機2にはリモコン装置14が有線もしくは無線で接続され、室内機3にはリモコン装置15が有線もしくは無線で接続されている。
【0023】
また、室内機2には、室内熱交換器10の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段である温度センサ19と、室内温度を検出する吸い込み温度検出手段である温度センサ17と、室内熱交換器10の熱交換器能力を設定する室内容量設定装置18とを備えており、室内機3には、室内熱交換器12の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段である温度センサ22と、室内温度を検出する吸い込み温度検出手段である温度センサ20と、室内熱交換器12の熱交換器能力を設定する室内容量設定装置21とを備えている。
【0024】
さらに、室外機1には、圧縮機6の周波数を決定し変更指示を行ったり、減圧装置8または減圧装置9の開度を決定したりなどの、駆動機器を制御する制御装置16が設けられており、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等で構成されている。また、図2は制御装置16のブロック図であり、図2に示すように、制御装置16は、圧縮機6や減圧装置9などの駆動機器を制御する出力リレー回路23と、判断を行う判定装置24と、情報を記憶する記憶部25とを備える。
【0025】
以上のように構成された多室型空気調和機において、以下、圧縮機6の保護制御について説明する。
【0026】
ユーザーは、リモコン装置14(または、リモコン装置15)を操作することによって、室内機2(または、室内機3)の運転モードの設定や、風量、風向の設定等を行う。そしてユーザーの好みの運転モードを設定し、室内機2(または室内機3)の運転を行う。以下、室内機2の運転を例にとって説明するが、室内機3でも同じような制御を行う。
【0027】
まず、ユーザーがリモコン装置14で暖房を選択し、設定温度Taとして運転を開始す
ると、室内機2は吸い込み温度Thinを検出し、設定温度Taと吸い込み温度Thinとの温度差によって運転状況を判断決定する。吸い込み温度Thinの信号をサンプリング時間毎に受けて運転状況を判定装置24で判断し、設定温度Taと吸い込み温度Thinとの差温TXの信号によって圧縮機6の駆動周波数や室外ファン5の回転数を決定し、各駆動機構を制御する出力リレー回路25へ信号を送る。
【0028】
しかしながら、温度センサ19で検出する室内熱交換器10の温度が高くなると、圧縮機6の保護のために圧縮機6の周波数の制御を行う。具体的には、図3(a)に示すように、室内熱交換器10の温度がTd(例えば、50℃)以下の時は、保護制御による圧縮機6の周波数の変更を行わないが、Tc(例えば、54℃)を超えるとX秒毎(例えば、15秒毎)にAHz(例えば、2Hz)の周波数を落とす制御を行う。
【0029】
さらに、室内熱交換器10の温度が、Tb(例えば、57℃)を超えるとX秒毎にBHz(例えば、5Hz)の周波数を落とす制御を行い、Ta(例えば、60℃)を超えると圧縮機6の保護のために圧縮機6を停止する。なお、上述のTa〜Tdの値は上記に限定されるものではなく、システムに応じて適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0030】
次に、多室型空気調和機の場合、室内機2と室内機3とを同時に運転している状態から、一方を停止したとき、例えば室内機3を停止した時に、室内機2に配置されている室内熱交換器10の能力によっては、上記の圧縮機の保護制御では間に合わないくらい急激に室内熱交換器10の温度が上昇してしまい、すぐに圧縮機6を停止してしまわなければならなくなってしまう。
【0031】
そこで、本実施の形態では、図3(b)に示すような室内熱交換器の温度の閾値を用いて圧縮機の保護制御を行う。
【0032】
まず、室内容量設定装置18によって設定されている熱交換器の能力が所定の能力(例えば、1.6Kw)以下かどうかを判断し、所定の能力以上であれば、従来から実施の図3(a)に示す閾値で保護制御を行い、所定の能力以下であれば、図3(b)に示す閾値で保護制御を行う。以下、説明では図3(a)に基づく制御をパターンA制御とし、図3(b)に基づく制御をパターンB制御とする。なお、パターンAの閾値とパターンBの閾値は記憶部25に記憶されており、適宜読み出されて制御される。
【0033】
次に、図3(b)に基づく制御について説明する。単独運転になったときに室内熱交換器10の能力が所定の能力以下であった場合には、室内熱交換器10の温度がTa、Te、Tf、Tgに基づいて圧縮機6の運転周波数が制御される。
【0034】
パターンAとパターンBとの差異は、室内熱交換器10の温度の閾値が、TbがTeへ変更され、TcがTfへ変更され、TdがTgへ変更されたことである。それぞれの関係はTb>Te、Tc>Tf、Td>Tgとなっている。すなわち、室内熱交換器10の温度の閾値が引き下げられたため、パターンAに比べて室内熱交換器10の温度が低いときに圧縮機6の周波数が引き下げられる制御が実施される。
【0035】
このように、室内熱交換器10の熱交換能力が小さい室内機の単独運転になったときには、パターンAの保護制御から、パターンAに比べて閾値が引き下げられたパターンBの保護制御へ変更することによって、圧縮機6の運転停止を出来るだけ避けることができるので、快適性を維持しつつ、圧縮機6の保護が可能な空気調和機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように本発明にかかる多室型空気調和装置は、複数台接続された室内機のうち容量(能力)の小さな室内機が運転されたとき、快適性に影響のない範囲で早めに圧縮機周波数を低下することにより、快適性への影響を最小限に抑えることが可能となるので、ビル用マルチエアコン等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 室外機
6 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機を有する室外機と、前記室外機に接続可能な複数台の室内機とを有する多室型空気調和機であって、各室内機には室内空気と冷媒とが熱交換を行う室内熱交換器と、前記室内熱交換器の温度を検知する室内熱交換器温度検出手段とを備え、前記室内熱交換器の温度に応じて前記圧縮機の回転数を決定し、複数台の室内機の運転から、単独の室内機の運転へ切り替わったときに、前記単独の室内機に配置された室内熱交換器の能力が所定の能力を下回る場合は、前記圧縮機の回転数を決定する前記室内熱交換器の温度の閾値を変更することを特徴とする多室型空気調和機。
【請求項2】
前記単独の室内機に配置された室内熱交換器の能力が所定の能力を下回る場合には、上回る場合に比べて前記圧縮機の回転数を早く下げる方向となるように、前記室内熱交換器の温度の閾値を変更することを特徴とする請求項1に記載の多室型空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−72619(P2013−72619A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213946(P2011−213946)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】