説明

多室液処理装置

【課題】空気及び液抜き機構を設けることなく空気抜きや液抜きを行う。
【解決手段】 各セル50,51を連結して水洗室内蔵ラック41を構成する。この水洗室内蔵ラック41を水洗槽本体39のメインタンク42にセットする。メインタンク42に水洗液47を満たす。セル50,51の底板部に、駆動軸88が貫通する貫通孔91を形成する。貫通孔91と駆動軸88との間に軸シール部材92を取り付ける。駆動軸88の周面に周溝130を形成する。駆動軸88を軸方向にスライド移動させるためのスライド機構131を設ける。水洗室内蔵ラック41を取り外すときは、駆動軸88を上方向にスライド移動させて、駆動軸88と軸シール部材92との間に隙間を形成する。空気及び液抜き機構を設けることなく空気抜きや液抜きを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタプロセッサなどの感光材料処理装置に用いられ、処理液が貯留される主槽と、この主槽内にセットされ、多室の処理室を有する内蔵ラックとを備えた多室液処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
写真現像所で使用されるプリンタプロセッサなどの感光材料処理装置は、印画紙(カラーペーパー)などの感光材料に画像を露光記録する露光部と、露光済みの感光材料に現像処理を施す現像処理部と、現像処理後の感光材料を乾燥させる乾燥部とを備えている。現像処理部には、発色現像液、漂白定着液、水洗液などの各種処理液を貯留した発色現像槽、漂白定着槽、水洗槽などの複数の処理槽が設けられており、感光材料を各処理液の中に順次通過させることによって現像・漂白定着・水洗の各処理を行う。
【0003】
このような感光材料処理装置で用いられている水洗槽としては、例えば特許文献1及び2に記載されているように、ブレード(シール部材)などの液中スクイズ部を備えた仕切り部材により、液密な複数(例えば6室)の水洗室に区画された多室の水洗槽を用いるのが通常である。この多室の水洗槽は、水洗液が貯留される主槽と、この主槽内にセットされ、上述の仕切り部材及び搬送ローラ対を有する処理ラックとから構成されている。そして、多室の水洗槽では、最下流の水洗室から水洗液を補充して上流側の水洗室に流下させるカスケード構造を採用することで、下流側の水洗室になるほどその水洗液中に含まれる不純物(鉄、硫化銀等)の濃度を低減させて、効率良く水洗処理を行いつつ、水洗液の補充量を低減させている。
【0004】
しかしながら、水洗槽を各仕切り部材によって複数に区切り、液密な複数の水洗室を形成する場合には、以下の問題がある。各水洗室に水洗液を導入する際に、同時に各水洗室内の空気を抜く必要がある。この空気が水洗室内に残留することで、実質的に感光材料が水洗液に浸かっている時間(水洗時間)が短くなり、水洗不良が発生する懸念がある。
【0005】
また、空気が水洗室内に残った場合で、この空気が圧逃がし用や水洗補充液カスケード用の弁付近に溜まると、空気ロックによる弁の動作不良のおそれがある。弁が動作不良となると、カスケード流が止まってしまう。その結果、水洗液の補充システムが機能しなくなり、各水洗室の液バランスが狂い水洗不良発生の懸念がある。また、カスケード流が止まると、補充液を供給する最終水洗槽がオーバーフローしてしまうという問題がある。
【0006】
また、各水洗室に規定量以上の液が入らず、ローラやガイドなどが液面から露出した場合に、この部分で硫化するおそれがある。この硫化物のローラやガイドへの付着により、感光材料を汚してしまったり、軸や軸受などの摺動部材に硫化物が付着したりすることで、これら摺動部材に磨耗が発生して、耐久性が損なわれる懸念がある。
【0007】
さらには、メンテナンス時に処理ラックを主槽から取り外す場合に、水洗液が残っているとラックの重量が増加してしまい、作業性が低下する。また、作業中に液がしたたり落ちたり、各処理室を分解する際に水洗液が残ったりするなどして、作業性が低下するおそれがある。
【0008】
そのため、この処理ラック内には、空気及び液抜き機構が設けられている。この空気及び水抜き機構は、例えば、仕切り部材に形成された貫通孔を開閉するバルブと、バルブの開閉を操作するための操作ロッドとから構成される。これにより、主槽から処理ラックを取り外すときは、操作ロッドを操作してバルブを開位置にすることで、貫通孔から水洗液が排出されるため、取り外しを容易に行える。また、主槽内にラックを取り付けるときは、各水洗室内に貫通孔から水洗液が流入するとともに、空気が抜けるので残存空気による水洗不良等の発生が抑えられる。
【特許文献1】特開2003−084412号公報(第6〜8頁、図1)
【特許文献2】特開2003−084413号公報(第4〜6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、水洗不良等の発生や作業性の低下を防止するため、上述の空気及び液抜き機構を処理ラック内に設ける場合には、処理ラック内にバルブや操作ロッドを設けるためのスペースを確保する必要があるため、装置の小型化が難しくなってしまう。また、部品数が増えてしまうため、装置の製造コストが高くなってしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は上記問題を解決するためのものであり、新たな空気及び液抜き機構を設けることなく空気抜きや液抜きを行えるようにした多室液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多室液処理装置は、処理液が貯留される主槽と、この主槽内の処理液中にセットされ、液密な複数の処理室を形成する仕切り部材、前記処理室間で感光材料の通過を許容し且つ前記処理液の流通を阻止するスクイズ部、及び前記感光材料を搬送する搬送手段を有し、前記複数の処理室に前記感光材料を順に通過させる処理室内蔵ラックと、前記仕切り部材に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入され、前記搬送手段に回転を伝達する駆動軸と、前記貫通孔内に設けられ、前記貫通孔と前記駆動軸との間をシールする略環状の軸シール部材と、前記駆動軸の周面または内部に形成され、前記処理室間を連通するための流通路と、前記駆動軸を軸方向に移動自在に保持し、前記流通路を介して前記処理室間を連通して前記処理室間での前記処理液または空気の流通を許容するシール解除位置、及び前記流通路を介した前記処理室間の連通を遮断して前記処理室間での前記処理液または空気の流通を阻止するシール位置に前記駆動軸を変位可能なスライド機構を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記流通路は、前記略環状のシール部材の開口部の径よりも前記駆動軸の径を部分的に小さくさせる周溝であることが好ましい。さらに、前記周溝の側壁に、溝開口部の面積が溝底部の面積よりも小さくなるような勾配を持たせることが好ましい。
【0013】
また、前記貫通孔が設けられる前記仕切り部材に、前記貫通孔に連通する液抜きまたは空気抜き勾配を持たせることが好ましい。また、前記スライド機構は、前記駆動軸を前記シール位置に保持するように付勢する付勢手段を有し、前記駆動軸は、前記付勢手段に抗する力を受けたときに前記シール位置から前記シール解除位置に変位されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多室液処理装置は、水洗液が貯留される主槽と、仕切り部材で仕切られた複数の処理室を有する処理室内蔵ラックと、前記仕切り部材に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入された駆動軸と、前記貫通孔に設けられた軸シール部材と、前記駆動軸の周面または内部に形成され、前記処理室間を連通するための流通路と、前記駆動軸を軸方向に移動自在に保持し、前記流通路を介して前記処理室間を連通したシール解除位置、及び前記流通路を介した前記処理室間の連通を解除したシール位置に前記駆動軸を変位可能なスライド機構とを備えているので、空気及び液抜き機構を設けることなく前記処理室内の空気抜きや液抜きを行うことができる。その結果、装置の部品数を減らすことができるので、装置を小型化し、且つその製造コストを低くすることができる。
【0015】
前記流通路として、前記略環状の軸シール部材の開口の径よりも前記駆動軸の径を部分的に小さくさせる周溝を形成したので、同様に空気及び液抜き機構を設けることなく前記処理室内の空気抜きや液抜きを行うことができる。
【0016】
前記周溝の側壁に、溝開口部の面積が溝底部の面積よりも小さくなるような勾配を持たせたので、前記駆動軸が変位される際に前記周溝のエッジで前記軸シール部材が傷付けられるおそれがなくなる。
【0017】
前記貫通孔が設けられる前記仕切り部材に、前記貫通孔に連通する液抜きまたは空気抜き勾配を持たせたので、前記処理室内の空気や処理液を円滑に抜くことができる。
【0018】
前記軸移動機構に、前記駆動軸を前記シール位置に保持するように付勢する付勢手段を設けたので、前記付勢手段に抗するような力で前記駆動軸を移動させない限り、シールが解除されないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示すように、本発明を実施した感光材料処理装置10には、一方の側面に、感光材料としての露光済みのカラーペーパー(以下、単にペーパーという)9を供給する供給部11が設けられている。供給部11の右側には、発色現像液が貯留される発色現像槽12、漂白定着液が貯留される漂白定着槽13、水洗液が貯留される水洗槽14、ペーパー9を温風乾燥する乾燥部15が順に設けられている。また、乾燥部15の側面には、乾燥の終了したペーパー9を排出する排出口16と、排出されたペーパー9を受け取る製品ストック部17とが設けられている。なお、本実施形態ではペーパー9は、各画像毎にシート状に切り離されて、発色現像槽12に送られる。また、供給部11の代わりに、シート状の感光材料に画像を焼付露光する焼付露光部を設けてもよい。また、シート状ペーパーに代えて、帯状ペーパーを供給してもよく、この場合には、ペーパーは各画像の境界で図示しないカッタにより切り離されて、排出口16からストック部17へ排出される。
【0020】
各槽12,13,14の上部にはクロスオーバーラック20,21,22が設けられ、各槽12〜14内には搬送ラック23,24,25,26が設けられる。クロスオーバーラック20〜22は、ペーパー9を搬送するための搬送ローラ対27と、ペーパー9の表面に付着した処理液を除去するスクイズ部を兼ねた搬送ローラ対28とを有している。そして、クロスオーバーラック20〜22は、ペーパー9を各槽12〜14内へ供給するとともに、各槽12〜14から排出されるペーパー9を次の槽13,14や乾燥部15に送る。なお、スクイズ部を搬送ローラ対28とは別個に設けてもよい。
【0021】
搬送ラック23〜26は、ペーパー9を各槽12〜14内で液中搬送する。そして、これら搬送ラック23〜26は、ペーパー9を挟持搬送する複数の搬送ローラ対35,36,37をそれぞれ保持している。これら、クロスオーバーラック20〜22や搬送ラック23〜26の搬送ローラ対27,28,35〜37は、モータにより回転駆動される。
【0022】
乾燥部15は、ヒータやダクト、送風ファンなどから構成され、複数の搬送ローラ対38により搬送されるペーパー9を乾燥する。乾燥済みのペーパー9は、排出口16から製品ストック部17に排出・集積される。なお、製品ストック部17に代えて周知のソータ部を設けてもよく、この場合には乾燥されたペーパー9はプリント注文毎に分けて集積される。
【0023】
図2に示すように、水洗槽14は1個の水洗槽本体39及び仕切り板40と、2個の水洗室内蔵ラック(以下、単に内蔵ラックという)41とを備えている。水洗槽本体39は箱型状に構成されており、主槽としてのメインタンク42と、副槽としての循環用サブタンク43,44、水洗液補充用サブタンク45、水洗液オーバーフロー用サブタンク46とを有する。循環用サブタンク43,44はメインタンク42の一方の側部に設けられ、水洗液補充用サブタンク45及びオーバーフロー用サブタンク46はメインタンク42の他方の側部に設けられる。循環用サブタンク43,44は、鉛直方向の連通溝43a,44aを介してメインタンク42に連通している。これら各タンク42〜46内には水洗液47(図3参照)が貯留される。水洗液47は、脱イオン水に殺菌用錠剤を混入して作成したものが用いられるが、この他にリンス液剤を用いてもよい。
【0024】
仕切り板40は、メインタンク42内の中央部に鉛直方向でセットされ、メインタンク42を2つに仕切る。この仕切り板40で仕切られた2つの水洗室内に内蔵ラック41がセットされる。内蔵ラック41は、上部が開口した2組の箱形状のセル50,51と、これらセル50,51に取り付けられる搬送ラック25,26とを有し、鉛直方向でそれぞれ3個の水洗室に仕切られている。従って、図3に示すように、仕切り板40と2個の内蔵ラック41とにより、水洗槽本体39のメインタンク42が6個の水洗室に仕切られる。以下、これら各水洗室をペーパー9が通過する順に第1〜第6水洗室42a〜42fと称する。
【0025】
図3に示すように、各セル50,51の鉛直方向の連結部には、シール部材54が配置されており、このシール部材54によりセル51内の水洗室42b,42eが液密に保持される。シール部材54は、シリコンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、オレフィン系エラストマ、水添スチレン系エラストマなどが好ましく用いられる。
【0026】
また、各セル50,51の底部には、ペーパー9の通過を許容し、水洗液47の流通を阻止する液中スクイズ部55が設けられ、仕切り板40の下部にも同様の液中スクイズ部55が設けられている。液中スクイズ部55は、シール部材として弾性ブレード56を備えている。この弾性ブレード56は、熱硬化性ポリウレタン、シリコンゴムなどの耐薬品性を有するエラストマ、或いはステンレス、チタン、ハステロイ、インコネルなどの金属から構成されている。この弾性ブレード56はスクイズ通路57に対して傾斜するようにセル50,51または仕切り板40に取り付けられており、先端がスクイズ通路57の壁面に弾発的に接触している。この接触によりスクイズ通路57は液密に閉じられ、水洗液47の流通が阻止される。また、ペーパー9の通過時には弾性ブレード56が弾性変形して、スクイズ通路57の側壁との間をペーパー9が通過する。なお、弾性ブレード56は1枚に代えて、2枚用いてもよく、この場合には先端同士を弾発的に接触させて、ペーパー9の通過を許容するとともに、水洗液47の流通を阻止する。
【0027】
さらに、各水洗室42a〜42fの間には逆止弁58が設けられており、これら各逆止弁58は、第6水洗室42fから第1水洗室42aに向かう方向に水洗液47を流し、これとは逆の第1水洗室42aから第6水洗室42fに向かう方向では水洗液47の流通を停止する。
【0028】
図4及び図5に示すように、上部セル50の横幅は下部セル51の横幅に比べて大きくされており、これにより、セル50,51を鉛直方向で一方の側面が同一鉛直面となるように面一に組み付けたときに、他方の側部が横に出た状態になる。この横に出た側部下面を以下段部50aと称する。この段部50aには、下方に向かって突出した連結ノズル59(図4参照)が形成されている。また、水洗槽本体39には、段部50aと対面する位置に受け段部39aが形成されている。そして、この受け段部39aには、水洗槽本体39にセットされた内蔵ラック41の連結ノズル59と対応する位置に、貫通孔60が形成されている。この貫通孔60に連結ノズル59が嵌合することで、第1水洗槽42aとオーバーフロー用サブタンク46とが連通される。
【0029】
図4に示すように、オーバーフロー用サブタンク46は段部50aを覆うように設けられており、このタンク内に貯留された水洗液47を排出口46aからオーバーフローする。この排出口46aには、図示しない配管を介して廃液タンク61が接続されている。
【0030】
図5に示すように、水洗液補充用サブタンク45もオーバーフロー用サブタンク46と同様に構成されている。水洗液補充用サブタンク45は、水洗液47の補充の他に循環も行えるように、補充用ノズル65及び循環用ノズル66の2本のノズルを介して第6水洗室42fと連通している。また、この水洗液補充用サブタンク45には、補充液用温調循環系67が備えられている。温調循環系67は、ポンプ68とヒータ69とこれらを連通するパイプ70と温度センサ73とから構成されている。なお、必要に応じてフィルタを循環用ノズル66とポンプ68との間に配置してもよい。
【0031】
水洗処理時には、補充タンク71及び補充用サブタンク45を介して、新鮮な水洗液47が第6水洗室42fに補充され、これが図3に示す逆止弁58を介して第6〜第1水洗室42f〜42aへ順次流れる。そして、第1水洗室42aを通過し、オーバーフロー用サブタンク46の排出口46aからオーバーフローした水洗液47は、廃液タンク61に排出される。このように、本実施形態では水洗槽14に逆止弁58を用いたカスケード構造が採用される。
【0032】
また、図2〜図5に示すように、第1〜第3水洗室42a〜42cには第1水洗液温調循環系75a(図4参照)が設けられ、第4〜第6水洗室42d〜42fには第2水洗液温調循環系75b(図5参照)が設けられている。図4に示すように、第1水洗液温調循環系75aは、フィルタ80a、ポンプ81a、ヒータ82a、及びこれらを連結するパイプ83a等から構成されている。そして、この第1循環用サブタンク43は、連通溝43a(図2参照)を介してメインタンク42と連通される。
【0033】
ポンプ81aは、第1〜第3水洗室42a〜42cの下方で水洗槽本体39に設けたフィルタ80a付きの排出口84aに接続されており、この排出口84aから吸引した水洗液47をヒータ82aを介して循環用サブタンク43に送る。このサブタンク43内には、温度センサ85a及び液面センサ86aが設けられている。これらセンサ85a,86aの出力は図示しないコントローラに送られる。コントローラは感光材料処理装置10を統括的に制御する他に、水洗液47が所定の温度範囲内になるようにヒータ82aを制御する。また、コントローラは、図5に示すように、処理量に応じて一定量の新鮮な水洗液47を補充タンク71から副水洗槽としての補充用サブタンク45へ補充する。また、液面センサ86aは液面検出の他にイオン濃度も検出し、これをコントローラに送る。コントローラは、液面やイオン濃度が一定範囲から外れたときにアラームを発する。
【0034】
図5に示すように、第2水洗液温調循環系75bも第1水洗液温調循環系75aと同じように、フィルタ80b、ポンプ81b、ヒータ82b、パイプ83bから構成されており、第1水洗液温調循環系75aと同じように、水洗液47を循環する。
【0035】
図3〜図5に示すように、セル50,51内には搬送ラック25が取り付けられている。そして、各搬送ラック25には、それぞれ2組の搬送ローラ対37が図中鉛直方向に並べて保持されている。また、第2水洗室42bを形成するセル51と第5水洗室42eを形成するセル51との下面には、搬送ラック26がそれぞれ取り付けられている。各搬送ラック26には、搬送経路Pを鉛直方向から水平方向(またはその逆)に90°転換させるように、3組の搬送ローラ対37が保持されている。そして、本実施形態では各セル50,51及び搬送ラック25,26は、仕切り板40を中心として線対称となるように取り付けられているので、水洗槽本体39内でペーパー9の搬送経路Pは略U字形状に構成される。
【0036】
図6に示すように、各搬送ローラ対37は、水洗槽本体39の上面に設けられたモータ87a,87bによりそれぞれ回転される駆動軸(縦軸)88と、駆動伝達部89とにより駆動を得て回転する。この駆動軸88は、SUS316、チタン、ハステロイ(ニッケル合金)、インコネル等の水洗液47に対する耐薬品性(耐食性)を有する金属材料から形成され、各セル50,51を鉛直方向に貫通している。
【0037】
セル50,51の底板部には、駆動軸88を通すための貫通孔91(図8及び図9参照)が形成され、その貫通孔91の下端には、環状の軸シール部材92(図8及び図9参照)を取り付けるハウジング室93が形成されている。軸シール部材92は、詳しくは後述するが貫通孔91と駆動軸88との間をシールする。なお、各搬送ローラ対37の両端部には図示は省略するが、攪拌フィンが取り付けられている。そして、この攪拌フィンが搬送ローラ対37の回転とともに回転されることで、各水洗室42a〜42f内の水洗液47が効率良く攪拌される。
【0038】
モータ87a,87bの駆動力は、モータ87a,87bの回転軸(横軸)95に取り付けられたハスバ歯車96と、このハスバ歯車96に噛み合う駆動軸88の上端部のハスバ歯車97とを介して、駆動軸88に伝達される。この際に、本実施形態では通常搬送時に、駆動軸88がそれぞれ図中下方向のスラスト加重を受けるように、モータ87a,87bの回転方向(モータ87aは図中時計方向、モータ87bは図中反時計方向)と、ハスバ歯車96,97の歯の形状が調整されている。
【0039】
駆動伝達部89は、駆動軸88に設けたウォーム100と、このウォーム100に噛み合うウォームホィール101と、ウォームホィール101に同軸で設けた中間ギヤ102と、この中間ギヤ102に噛み合う駆動ギヤ103とから構成されている。駆動ギヤ103は、搬送ローラ対37の一方のローラ軸端部104aに固定されている。
【0040】
また、図7に示すように、他方のローラ軸端部104bには連動ギヤ105がそれぞれ固定されており、これらが噛み合って回転することで、搬送ローラ対37が対向して回転する。さらに、ローラ軸端部104bの連動ギヤ105には中間ギヤ106が噛み合っており、この中間ギヤ106は他の搬送ローラ対37の連動ギヤ105と噛み合っている。従って、駆動軸88の回転は駆動伝達部89、搬送ローラ対37、連動ギヤ105、中間ギヤ106を介して他の搬送ローラ対37にも伝達され、これらが共に回転する。なお、他の搬送ラック26も搬送ラック25と同様に構成されており、同一構成部材には同一符号を用いて重複した説明を省略している。また、図6に示すように搬送ラック26は3組の搬送ローラ対37を保持し、図7に示すように中間ギヤ107を2個用いて、これら搬送ローラ対37を共に駆動している。これにより、駆動軸88を回転させることで、全ての搬送ローラ対37がペーパー9を搬送する方向に回転される。
【0041】
図8に示すように軸シール部材92は、芯材120と、キャップ状のシール本体121と、略環状のリップ123とから構成されている。芯材120は、耐薬品性を有する金属材料または合成樹脂材料から形成される。また、シール本体121及びリップ123は、耐薬品性を有するシリコンゴム、エチルプロピレン(EPDM)ゴムなどから形成される。ここで、図8は軸シール部材92による駆動軸88の軸シール構造を示した断面図である。
【0042】
セル50,51の底板部には、駆動軸88が貫通する貫通孔91と、軸シール部材92が取り付けられるハウジング室93とが形成されている。このハウジング室93には、軸シール部材92を軽く圧入して取り付けられるような外径寸法の内周面93a及び端面93bが形成されている。さらに、このセル50,51のハウジング室93の周囲には、軸シール部材92が脱落しないように押さえ板125を固定するためのネジ穴126が形成されている。そして、軸シール部材92はハウジング室93内に軽く圧入された後、金属製の押さえ板125及び取付ネジ127によって、ハウジング室93から脱落しないように押さえ付けられる。なお、押さえ板125及び取付ネジ127は、耐薬品性を有するSUS316(ステンレス)、チタン、ハステロイ、インコネル等から形成される。
【0043】
軸シール部材92をハウジング室93内に圧入する際には、この軸シール部材92とハウジング室93の端面93bとの間にOリング128をセットする。このOリング128は、例えばシリコンゴム、エチルプロピレン(EPDM)ゴムなどから形成される。そして、軸シール部材92がハウジング室93内に圧入されると、このOリング128が圧縮変形し、その反発力で軸シール部材92とハウジング室93の端面93bとの間をシールする。これにより、駆動軸88と貫通孔91との間がシールされ、各水洗室42a〜42fが液密に保たれる。
【0044】
このように、各水洗室42a〜42fは軸シール部材92により液密に保たれているが、上述したようにメンテナンス時には、メインタンク42からの内蔵ラック41の取外し及び取付けが行われる。そのため、例えばラック取外し時に各水洗室42a,42b,42e,42fに水洗液47が残っていると、内蔵ラック41の重量が重くなってしまうため、取外し作業に手間が掛かってしまう。また、ラック取付け時に、各水洗室(特に第2及び第5水洗室42b,42e)内に空気が残っていると、水洗室内に規定量以上の水洗液47が入らないため水洗不良が発生するおそれがある。そのため、ラック取外し時には水洗液47を抜き、ラック取付け時には空気を抜く必要があるが、新たにバルブや操作ロッド等からなる空気及び液抜き機構を内蔵ラック41内に設けると、部品数が増えるため小型化・低コスト化が難しくなってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、空気及び水洗液47抜き用の貫通孔をセル50、51の底部に別途形成して、空気及び液抜き機構を内蔵ラック41内に設ける代わりに、駆動軸88と貫通孔91(軸シール部材92)との間のシールを簡単な操作で解除することで空気及び液抜きを行う。具体的には、図8及び図9に示すように、セル50,51の底板部を挟んで隣接する水洗室を連通して、空気及び水洗液47を流通させる流通路として駆動軸88の周面に部分的に周溝130を形成するとともに、駆動軸88を軸方向にスライド移動可能なスライド機構131(図6参照)を内蔵ラック41内に設ける。ここで、図9はシール解除時の軸シール構造を示した断面図である。
【0046】
周溝130は、シール時に駆動軸88が軸シール部材92のリップ123と当接する箇所よりも下方に形成されている。また、この周溝130は、駆動軸88の周溝130が形成された部分の径をL1とし、軸シール部材92に形成された駆動軸88を通すための貫通孔133(図9参照)の径をL2としたときに、L1<L2となるように溝の深さが調整されている。従って、周溝130が軸シール部材92よりも下方にあるときは、駆動軸88と軸シール部材92との間がシールされたシール状態となる(図8参照)。また、周溝130が軸シール部材92内(貫通孔133内)にあるときは、駆動軸88の周面と軸シール部材92との間に隙間が形成される(図9参照)。これにより、駆動軸88と軸シール部材92との間のシールが解除されたシール解除状態となり、周溝130を介して両者の隙間から空気及び水洗液47を流通させることができる。
【0047】
周溝130の側壁130a,130bは、周溝130の開口部の面積が底部の面積よりも小さくなるような勾配を有しており、特に図中上側の側壁130aが緩やかな勾配を有するように形成されている。これにより、駆動軸88が後述するスライド機構131を介して軸方向にスライド移動される際に、側壁130aのエッジで軸シール部材92のリップ123が傷付けられるのが防止される。なお、本実施形態では、側壁130a,130bに直線テーパを持たせているが、その代わりに曲面テーパを持たせるようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では貫通孔91が形成されているセル50,51の底板部の上面と下面に、流れ勾配としての傾斜面134a,134bが形成されている。傾斜面134aを形成することで、内蔵ラック41をメインタンク42から取り出す際に、各水洗室42a,42b,42e,42f内の水洗液47を円滑に抜くことができる。また、傾斜面134bを形成することで、内蔵ラック41をメインタンク42内に取り付ける際に、第2及び第5水洗室42b,42e内の空気を円滑に抜くことができる。
【0049】
スライド機構131は、図6に示すように、駆動軸88を回動自在及び軸方向にスライド移動自在に保持する軸受け135と、駆動軸88の下端部に設けられた付勢機構136と、駆動軸88の抜けを防止するストッパ137とから構成される。このスライド機構131を介して駆動軸88を、その周溝130が貫通孔133内に移動されてシールが解除されたシール解除位置と、周溝130が貫通孔133よりも所定距離だけ下方に移動されてシールされるシール位置との間で移動させる。なお、駆動軸88が図中上下方向にスライド移動されると、軸シール部材92に含まれているカーボン等により駆動軸88が磨耗してしまうおそれがある。そのため、図示は省略するが、駆動軸88の周面に耐薬品性を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜や超高分子ポリエチレン膜をコーティングしておくことが好ましい。
【0050】
付勢機構136は、図10に示すように、駆動軸88の下端部に形成された段差部140と、段差部140にその軸方向に移動自在に取り付けられた円盤状のカラー141と、段差部140の先端部に固定されたリング142と、段差部140のカラー141とリング142との間に取り付けられた圧縮コイルバネ143とから構成される。この付勢機構136を構成するカラー141、リング142、圧縮コイルバネ143は、それぞれ耐薬品性を有する金属材料から形成されている。図10は、通常搬送時、つまり、周溝130がシール位置にあるときの状態を示した説明図である。
【0051】
付勢機構136は、駆動軸88の下端部に設けられているため、図11に示すように、駆動軸88が上方向にスライド移動されると、段差部140の軸方向に移動自在なカラー141と段差部140に固定されたリング142との間で圧縮コイルバネ143が縮められるため、駆動軸88は圧縮コイルバネ143の反発力によって図中下方向に付勢される。従って、任意の方法により圧縮コイルバネ143の反発力に抗するような力で駆動軸88を上方にスライド移動させることで、駆動軸88をシール位置からシール解除位置に移動させることができる。なお、リング124が抜け止めを兼ねているので、駆動軸88を上方にスライド移動させても駆動軸88が抜けてしまうおそれはない。また、駆動軸88がシール解除位置に移動された時に、さらなる駆動軸88の移動が規制されるようにリング124の取付け位置を調整しておく。これにより、駆動軸88をシール解除位置に移動させる際に位置調整を行う手間を省くことができる。
【0052】
通常搬送中は、上述したようにモータ87a,87b、ハスバ歯車96,97(図6参照)により、駆動軸88はそれぞれ図中下方向のスラスト加重を受けるため、駆動軸88が上方向にスライド移動されるおそれはないが、作業終了時には搬送ローラ対37を逆回転させてローラ表面の汚れを除去する自動洗浄処理が行われるため、駆動軸88は図中上方向にスラスト加重を受ける。従って、圧縮コイルバネ143には、上方向にスラスト加重を受けたときに駆動軸88がスライド移動されないようなバネ定数を有するものが用いられる。従って、圧縮コイルバネ143の反発力に抗するような力で駆動軸88が上方にスライド移動されない限り、周溝130がシール位置から移動されるおそれはない。
【0053】
図12に示すように、メンテナンスなどで内蔵ラック41をメインタンク42から取り外す時は、ハスバ歯車96,97(図6参照)の噛み合いを解除した後、例えばオペレータが駆動軸88を上方にスライド移動させ、駆動軸88をシール位置からシール解除位置に移動させる。この状態で内蔵ラック41を上方に持ち上げることで、駆動軸88と軸シール部材92との間の隙間(貫通孔133)から水洗液47が排出される。水抜きされた状態で内蔵ラック41を持ち上げることができるため、内蔵ラック41の取り外しを容易に行うことができる。なお、図示は省略するがオペレータが駆動軸88をスライド操作し易いように、駆動軸88の上部にグリップ部が形成されていることが好ましい。また、内蔵ラック41にも取っ手等を取り付けて、オペレータが内蔵ラック41を持ち上げ易くするようにしてもよい。
【0054】
また、メンテナンス終了後に内蔵ラック41をメインタンク42に取り付けるときも同様に、オペレータが駆動軸88をシール位置からシール解除位置にスライド移動させる。この状態で内蔵ラック41をメインタンク42内に取り付けることで、貫通孔133から空気抜きと水洗液47の補充とが同時に行われる。これにより、各水洗室42a,42b,42e,42f内に空気が残ることなく水洗液47が満たされる。各水洗室内42a,42b,42e,42f内に水洗液47が満たされたら、圧縮コイルバネ143の反発力を利用して駆動軸88を下方にスライド移動させ、駆動軸88をシール位置に移動させる。貫通孔91と駆動軸88との間(貫通孔133)からの水洗液47の流通が防止され、それぞれの水洗室42a〜42fが液密に保たれる。
【0055】
以上のように本実施形態によれば、駆動軸88の周面に周溝130を形成するとともに、駆動軸88を軸方向にスライド移動可能なスライド機構131を設けたので、内蔵ラック41の取外し及び取付け時に、周溝130を軸シール部材92の貫通孔133内に移動させて、駆動軸88と軸シール部材92との間のシールを解除することができる。これにより、駆動軸88と軸シール部材92との間の隙間から空気及び水洗液47を抜くことができる。
【0056】
次に本実施形態の作用を説明する。図1に示すように、給紙部11から露光済みのペーパー9が感光材料処理装置10に供給されると、クロスオーバーラック20、搬送ラック23を介して、ペーパー9が発色現像槽12を通過して発色現像処理が行われる。同様にして漂白定着槽13をペーパー9が通過して漂白定着処理が行われる。漂白定着されたペーパー9は、クロスオーバーラック21,22を介して水洗槽14に搬送される。また、これと同時に駆動軸88が回転駆動されて、内蔵ラック41内の各搬送ラック25,26に保持されている全ての搬送ローラ対37が駆動伝達部(図6及び図7参照)89を介して回転駆動される。これにより、水洗槽14に搬送されてきたペーパー9は、水洗槽本体39の各水洗室42a〜42fを順に搬送されて水洗処理される。
【0057】
水洗処理では、図5に示すように、補充タンク71からの新鮮な水洗液47がペーパー9の処理量に応じて補充用サブタンク45に一定量補充される。補充された水洗液47は、補充液用温調循環系67により補充用サブタンク45、補充用ノズル65、第6水洗室42f、循環用ノズル66、パイプ70、ポンプ68、ヒータ69を介して循環され、第6水洗室42f内の水洗液温度が一定範囲に保たれる。第6水洗室42fの水洗液47はカスケード流により各逆止弁58(図3参照)を介して、第5〜第1水洗室42e〜42aの順に送られる。そして、図4に示すように、第1水洗室42aは連結ノズル59を介してオーバーフロー用サブタンク46と連通しているため、補充水洗液の量に応じて排出口46aから余剰の水洗液47がオーバーフローし、このオーバーフローした水洗液47は廃液タンク61に送られる。
【0058】
第3水洗室42c及び第4水洗室42dはメインタンク42内で開放されているため、各水洗液温調循環系75a,75bによって、その水温が所定範囲に維持される。なお、他の第1及び第2水洗室42a,42bや、第5及び第6水洗室42e,42fは、第3及び第4水洗室42c,42dのように、各水洗液温調循環系75a,75bによって直接に温度調節は行われないが、各セル50,51を介して熱が伝達されるため、同様にして一定範囲に水温が維持される。
【0059】
また、水洗処理を行う際には、駆動軸88と、この駆動軸88が貫通する各セル50,51の底板部に形成された貫通孔91との間を軸シール部材92でシールすることで、貫通孔91と駆動軸88との間から水洗液47が流通するのを防止して、それぞれの水洗室42a〜42fが液密に保たれる。これにより、下流側の水洗室42b〜42fになるほどその水洗液中に含まれる不純物(鉄、硫化銀等)の濃度を低減させられるため、効率良く水洗処理を行うことができ、さらに、水洗液47の補充量も低減することができる。
【0060】
このようにして、各水洗室42a〜42fを順に搬送されながら水洗処理されたペーパー9は、クロスオーバーラック22の搬送ローラ対28により乾燥部15に送られる。乾燥部15に搬送されたペーパー9は、熱風乾燥された後、製品ストック部17に排出される。
【0061】
水洗槽14のメンテナンス時やペーパー9が詰まったときは、感光材料処理装置10の運転を停止して、メインタンク42内から内蔵ラック41を取り外す。この取出しの際には、オペレータが駆動軸88をシール位置からシール解除位置へ上方にスライド移動させ、周溝130を軸シール部材92の貫通孔133(図9参照)内に移動させる。次いで、この状態で内蔵ラック41を上方に持ち上げることで、各水洗室42a,42b,42e,42f内の水洗液47が貫通孔133から排出される。その結果、内蔵ラック41の重量が軽くなるため、容易に内蔵ラック41をメインタンク42から取り外すことができる(図12参照)。水抜きされた状態で、内蔵ラック41を持ち上げることができるので、内蔵ラック41の取り外しを容易に行うことができる。取り出された内蔵ラック41は、必要に応じて分解されて、クリーニング等のメンテナンスや詰まったペーパー9の除去が行われる。
【0062】
メンテナンスや詰まったペーパー9の除去が終了したら、内蔵ラック41をメインタンク42に取り付ける。この際も、オペレータが駆動軸88をシール位置からシール解除位置にスライド移動させる。そして、この状態で内蔵ラック41をメインタンク42内に戻すことにより、貫通孔133から空気抜きが行われるとともに、各セル50,51内(水洗室42a,42b,42e,42f内)に水洗液47が導入される。その結果、各水洗室42a,42b,42e,42f内に空気が残ることなく水洗液47が満たされるため、水洗不良等の発生が抑えられる。
【0063】
各水洗室42a,42b,42e,42f内から空気が完全に抜けたら、圧縮コイルバネ143の反発力を利用して駆動軸88をシール解除位置からシール位置にスライド移動させる。これにより、貫通孔133が塞がれてそれぞれの水洗室42a〜42fが液密に保たれる。その後、感光材料処理装置10の運転が再開される。
【0064】
本実施形態によれば、空気及び水洗液抜き機構を設けることなく空気抜きや液抜きを行うことができるので、水洗槽14の部品数を減らすことができる。その結果、感光材料処理装置10(水洗槽14)を小型化し、且つその製造コストを低くすることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、隣接する水洗室を連通して、空気及び水洗液47を流通させる流通路として駆動軸88の周面に部分的に周溝130が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気及び水洗液47を流通可能であれば、例えば図13に示すように駆動軸88の周面に切り欠き140形成して、駆動軸88がシール解除位置にあるときに駆動軸88と軸シール部材92との間に隙間が形成されるようにしてもよい。また、駆動軸88の周面に周溝130や切り欠き140を形成する代わりに、例えば図14に示すように、駆動軸88の内部に流通路142を形成し、駆動軸88がシール解除位置にあるときのみ流通路142を介して隣接する水洗室間を連通させるようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、通常搬送時に駆動軸88が下方向にスラスト加重を受けるため、図6及び図8に示すように、シール状態にある駆動軸88が軸シール部材92のリップ123と当接する箇所よりも下方に周溝130が形成されるとともに、駆動軸88の下端部に付勢機構136が設けられているが、駆動軸88が上方向にスラスト加重を受ける場合には逆に、リップ123と当接する箇所よりも上方に周溝130を形成するとともに、駆動軸88の上端部に付勢機構136を設ければよい。この場合には、駆動軸88を下方にスライド移動させることで、シール位置にある駆動軸88をシール解除位置に移動させる。
【0067】
なお、本実施形態では、軸シール部材92とハウジング室93の端面93bとの間をシールするため、Oリング128を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、環状で且つその断面形状がV字型、Y字型、X字型、その他の形状のシール部材を用いてもよい。また、Oリング128等のシール部材を軸シール部材92とハウジング室93の端面93bとの間に配置する代わりに、軸シール部材92の上面に一体に形成するようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、押さえ板125及び取付ネジ127により、軸シール部材92がハウジング室93から脱落しないように押さえ付けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、この軸シール部材92の外周面にもリップ等の柔軟部材を形成して、その反発力で軸シール部材92が脱落しないようにしてもよい。
【0069】
なお、本実施形態では図3に示すように、仕切り板40を用いてメインタンク42を2つに区切った後に、これら区切られたメインタンク42の内部に、内蔵ラック41を挿入することで6つの水洗室42a〜42fを形成したが、これに代えて、図示は省略するが各種形状の仕切り板やセルを用いることで、各内蔵ラックを構成してもよい。
【0070】
また、実施形態では、水洗室を縦3列、横2列の6室構成としたが、水洗室の配置及び数量はこれに限定されず、縦m列×横n列(m,nは2以上の整数)でよい。なお、nは偶数が好ましく、この場合には、ペーパーの水洗槽本体39への供給と排出とを同じ上側にすることができ、構成が簡単になる。
【0071】
なお、本実施形態では、発色現像槽12を1室、漂白定着槽13を1室、水洗槽14を6室に区画しているが、区画数は特に限定されない。また、水洗槽内を複数の水洗室に仕切るセル内の空気抜き及び水洗液抜きを行う場合に本発明を実施したが、この他に、発色現像槽12や漂白定着槽13などを複数の処理室に仕切る場合に、各処理室内の空気抜き及び水洗液抜きに本発明を実施してもよい。また、本発明は感光材料処理装置10に限定されるものではなく、各種処理液が貯留され、仕切り部材により複数の処理室に仕切られている処理室内蔵ラックを備えた多室液処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の感光材料処理装置の概略図である。
【図2】水洗槽本体と水洗室内蔵ラックと仕切り板とを示した斜視図である。
【図3】水洗槽を示した断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3における V−V 線に沿う断面図である。
【図6】図4におけるVI −VI 線に沿う断面図である。
【図7】図4におけるVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】シール時の駆動軸の軸シール構造を示した断面図である。
【図9】シール解除時の軸シール構造を示した断面図である。
【図10】シール時の付勢機構を示した概略図である。
【図11】シール解除時の付勢機構を示した概略図である。
【図12】水洗室内蔵ラック取出し時の水洗槽を示した断面図である。
【図13】駆動軸の周面に切り欠きを形成した他の実施例を示した断面図である。
【図14】駆動軸の内部に流通路を形成した他の実施例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0073】
9 ペーパー
10 感光材料処理装置
14 水洗槽
25,26 搬送ラック
29 駆動軸
37 搬送ローラ対
39 水洗槽本体
40 仕切り板
41 水洗室内蔵ラック
42 メインタンク
50,51 セル
88 駆動軸
91 貫通孔
92 軸シール部材
93 ハウジング室
130 周溝
131 スライド機構
133 貫通孔
136 付勢機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が貯留される主槽と、
この主槽内の処理液中にセットされ、液密な複数の処理室を形成する仕切り部材、前記処理室間で感光材料の通過を許容し且つ前記処理液の流通を阻止するスクイズ部、及び前記感光材料を搬送する搬送手段を有し、前記複数の処理室に前記感光材料を順に通過させる処理室内蔵ラックと、
前記仕切り部材に形成された貫通孔と、
前記貫通孔に挿入され、前記搬送手段に回転を伝達する駆動軸と、
前記貫通孔内に設けられ、前記貫通孔と前記駆動軸との間をシールする略環状の軸シール部材と、
前記駆動軸の周面または内部に形成され、前記処理室間を連通するための流通路と、
前記駆動軸を軸方向に移動自在に保持し、前記流通路を介して前記処理室間を連通して前記処理室間での前記処理液または空気の流通を許容するシール解除位置、及び前記流通路を介した前記処理室間の連通を遮断して前記処理室間での前記処理液または空気の流通を阻止するシール位置に前記駆動軸を変位可能なスライド機構を備えることを特徴とする多室液処理装置。
【請求項2】
前記流通路は、前記略環状のシール部材の開口部の径よりも前記駆動軸の径を部分的に小さくさせる周溝であることを特徴とする請求項1記載の多室液処理装置。
【請求項3】
前記周溝の側壁に、溝開口部の面積が溝底部の面積よりも小さくなるような勾配を持たせたことを特徴とする請求項2記載の多室液処理装置。
【請求項4】
前記貫通孔が設けられる前記仕切り部材に、前記貫通孔に連通する液抜きまたは空気抜き勾配を持たせたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の多室液処理装置。
【請求項5】
前記スライド機構は、前記駆動軸を前記シール位置に保持するように付勢する付勢手段を有し、
前記駆動軸は、前記付勢手段に抗する力を受けたときに前記シール位置から前記シール解除位置に変位されることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の多室液処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−215385(P2006−215385A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29456(P2005−29456)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】