説明

多層アクロマティク液晶偏光回折格子および関連する作製方法

多層偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層と、第1の偏光回折格子層上の第2の偏光回折格子層と、第2の偏光回折格子層上の第3の偏光回折格子層とを備えており、第2の偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間に位置している。第2の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って第1の偏光回折格子層の周期的分子構造に対してオフセットされている周期的分子構造を有している。第3の偏光回折格子層も、第2の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って第2の偏光回折格子層の周期的分子構造に対してオフセットされている周期的分子構造を有しているとよい。これによって、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子のそれぞれの周期的分子構造は、第1の相対的角度ずれだけ位相が異なり、第2の偏光回折格子層および第3の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造は、第2の角度ずれだけ位相が異なることになる。関連する作製方法についても、検討されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、2007年4月16日に出願された「多層アクロマティク液晶偏光回折格子および関連する作製方法」という表題の米国仮特許出願第60/912,039号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、偏光回折格子および関連する作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
液晶は、分子の規則正しい配向が存在する流動体の形態を取ることができる。典型的には、液晶(LC)分子は、異方性であり、細長の(棒状)形状または平坦な(円板)形状のいずれかを有している。異方性分子が規則的に配向することによって、バルクLCは、多くの場合、その物理的特性の異方性、例えば、機械的性質、電気的性質、磁気的性質、および/または光学的性質の異方性を呈することになる。
【0004】
棒状または円板状の性質によって、LC分子の配向分布は、光学的な用途、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)において、重要な役割を果たすことができる。これらの用途では、LC配向は、配向表面によって影響されることになる。配向表面は、LCが予測可能かつ制御可能に表面に対して配向するように、処理されるとよい。多くの場合、配向表面は、単一ドメインをLC装置の全体に至らせることを確実なものとする。処理された配向表面が存在していないと、LCは、多くのドメインおよび/または多くの配向不連続性を有することになる。光学的な用途では、これらのドメインおよび不連続性は、光の散乱を生じさせ、その結果、ディスプレイの性能が劣化することになる。
【0005】
偏光回折格子は、(従来の回折格子におけるように位相または振幅に影響を与えるのと対照的に)、通過する光の局所的な偏光状態に周期的に影響を与えるために、用いられるとよい。例えば、切換え可能な液晶偏光回折格子(LCPG)を用いて、非偏光で操作可能な強度変調器を実現することができる。さらに具体的には、このような切換え可能なLCPGは、例えば、プロジェクションディスプレイおよび光シャッターを含む用途において、(レーザのような)比較的狭帯域幅の非偏光の比較的高コントラスト変調を達成するために、用いることができる。例えば、いくつかの従来のLCPGは、中心波長の<7%の帯域幅を有する光に対して、0次光では約200:1よりも大きいコントラスト比を有する無色光を変調することができる。しかし、従来のLCPGのコントラスト変調は、多くの用途において重要である(一部のLEDのような)広帯域の光を変調するのに用いられたときに低下することがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多層偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層と、第1の偏光回折格子層上の第2の偏光回折格子層と、第3の偏光回折格子であって、第2の偏光回折格子層が第1の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間にある、第3の偏光回折格子層とを備えている。第2の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って第1の偏光回折格子層の第1の周期的分子構造に対してオフセットされている第2の周期的分子構造を有している。
【0007】
いくつかの実施形態では、第3の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って第2の偏光回折格子層の第2の周期的分子構造に対してオフセットされている第3の周期的分子構造を有していてもよい。第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造は、第1の相対的角度ずれだけ位相が異なっていてもよく、第2の偏光回折格子層および第3の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造は、第2の相対的角度ずれだけ位相が異なっていてもよい。例えば、第2の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向は、第1の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向に対する第1の角度ずれを有していてもよく、第3の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向は、第2の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向に対する第2の角度ずれを有していてもよい。
【0008】
他の実施形態では、第3の周期的分子構造は、第2の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って、第2の周期的分子構造に対して逆方向にオフセットされていてもよい。例えば、第2の角度ずれは、第1の周期的分子構造および第3の周期的分子構造が同じ位相になるように、第1の角度ずれと逆方向の角度になっていてもよい。第1の角度ずれは、0°よりも大きく、180°よりも小さくなっていてもよい。例えば、第1の角度ずれは、約+55°から約+56°の範囲内にあってもよく、第2の角度ずれは、約−55°から約−56°の範囲内にあってもよい。他の実施形態では、第3の偏光回折格子層の第3の周期的分子構造は、第1の偏光回折格子層の第1の周期的分子構造に対して、位相が異なっていてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、多層偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間で第1の偏光回折格子層上に位置する第1のキラル重合性液晶層をさらに備えていてもよい。第1のキラル重合性液晶層は、第2の偏光回折格子層の第2の周期的分子構造を第1の偏光回折格子層の第1の周期的分子構造に対して第1の角度ずれだけシフトするように、構成されていてもよい。
【0010】
他の実施形態では、多層偏光回折格子は、第3の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間で第3の偏光回折格子層上に位置する第2のキラル重合性液晶層をさらに備えていてもよい。第1のキラル重合性液晶層および第2のキラル重合性液晶層は、それぞれ、キラル分子を含んでいてもよい。第2のキラル重合性液晶層のキラル分子は、第1のキラル重合性液晶層のキラル分子と逆の旋回性を有していてもよく、これによって、第2のキラル重合性液晶層は、第3の偏光回折格子層の第3の周期的分子構造を第2の偏光回折格子層の第2の周期的分子構造に対して第2の角度ずれだけ逆方向にシフトするように、構成されることが可能になる。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1のキラル重合性液晶層は、その対向面間の厚みの全体にわたって約+55°の捩じれを有していてもよく、第2のキラル重合性液晶層は、その対向面間の厚みの全体にわたって約−55°の捩じれを有していてもよい。
【0012】
他の実施形態では、多層偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層上の第1の電極を備える第1の基板と、第3の偏光回折格子層上の第2の電極を備える第2の基板と、をさらに備えていてもよい。第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶層から構成されていてもよい。例えば、第2の偏光回折格子層は、ネマチック液晶層から構成されていてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層は、重合性液晶層から構成されていてもよい。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態によれば、多層偏光回折格子を作製する方法は、第1の偏光回折格子を形成することと、第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層を形成することと、第2の偏光回折格子層上に第3の偏光回折格子層を、第2の偏光回折格子層が第1の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間にあるように、形成することと、を含んでいる。第2の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って第1の偏光回折格子層の第1の周期的分子構造に対してオフセットされている第2の周期的分子構造を有している。
【0015】
いくつかの実施形態では、第3の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って第2の周期的分子構造に対してオフセットされている第3の周期的分子構造を有していてもよい。第2の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造が第1の相対的角度ずれだけ位相が異なるように、形成されてもよい。第3の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層および第3の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造が第2の相対的角度ずれだけ位相が異なるように、形成されてもよい。例えば、第2の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向が、第1の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向に対する第1の角度ずれを有していてもよく、第3の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向が、第2の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向に対する第2の角度ずれを有していてもよい。
【0016】
他の実施形態では、第3の偏光回折格子層は、第3の周期的分子構造が第2の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って第2の周期的分子構造に対して逆方向にオフセットされるように、第2の偏光回折格子層上に形成されてもよい。例えば、第2の角度ずれは、第1の周期的分子構造および第3の周期的分子構造が同じ位相になるように、第1の角度ずれと逆方向の角度になっていてもよい。第1の角度ずれは、0°よりも小さく、180°よりも大きくなっていてもよい。例えば、第1の角度ずれは、約+55°から約+56°の範囲内にあってもよく、第2の角度ずれは、約−55°から約−56°の範囲内にあってもよい。他の実施形態では、第3の偏光回折格子層は、第3の周期的分子構造が第1の偏光回折格子層の第1の周期的分子構造に対して位相が異なるように、形成されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層を第1の偏光回折格子層上に形成する前に、第1のキラル重合性液晶層が、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。第1のキラル重合性液晶層は、第2の偏光回折格子層の第2の周期的分子構造を第1の偏光回折格子層の第1の周期的分子構造に対して第1の角度ずれだけシフトするように、構成されていてもよい。
【0018】
他の実施形態では、第2のキラル重合性液晶層が、第3の偏光回折格子層上に形成されてもよい。第1のキラル重合性液晶層および第2のキラル重合性液晶層は、それぞれ、キラル分子を含んでいてもよい。第2のキラル重合性液晶層のキラル分子は、第2のキラル重合性液晶が第3の偏光回折格子層の第3の周期的分子構造を第2の偏光回折格子層の第2の周期的分子構造に対して第2の角度ずれだけ逆方向にシフトするように構成され得るように、第1のキラル重合性液晶層のキラル分子と逆方向の旋回性を有していてもよい。例えば、第1のキラル重合性液晶層は、その対向面間の厚みにわたって約+55°の捩じれを有していてもよく、第2のキラル重合性液晶は、その対向面間の厚みの全体にわたって約−55°を有していてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2のキラル重合性液晶が第2の偏光回折格子層上に形成され、次いで、第3の偏光回折格子層が、第2のキラル重合性液晶層上に形成されるようになっていてもよい。第2の偏光回折格子層は、反応性メソゲン層であってもよい。
【0020】
他の実施形態では、第2の偏光回折格子層を形成する前に、第2のキラル重合性液晶層が、第3の偏光回折格子層上に形成されてもよい。第2のキラル重合性液晶層を含む第3の偏光回折格子層が、第1のキラル重合性液晶層と第2のキラル重合性液晶層との間にギャップを画定するように、第1のキラル重合性液晶層を含む第1の偏光回折格子層に隣接して組み合わされてもよい。第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶であってもよく、第1のキラル重合性液晶層と第2のキラル重合性液晶層との間のギャップ内に、第2の偏光回折格子層の第2の周期的分子構造を第1の周期的分子構造に対して第1の角度ずれだけシフトし、かつ第3の周期的分子構造に対して第2の角度ずれだけシフトするように、形成されてもよい。例えば、第2の偏光回折格子は、ネマチック液晶層から構成されていてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の偏光層は、第1の電極を備える第1の基板上に形成されてもよく、第3の偏光層は、第2の電極を備える第2の基板上に形成されてもよい。第1の基板は、第1のキラル重合性液晶層と第2のキラル重合性液晶層との間にギャップを画定するように、第2の基板に隣接して組み合わされてもよい。第1のキラル重合性液晶層と第2のキラル重合性液晶層との間のギャップは、約半波長リタデーション厚みになっていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態による他の装置および/または作製方法は、以下の図面および詳細な説明を再検討すれば、当業者には明らかになるであろう。このような付加的な方法および/または装置の全ては、本明細書に含まれ、本発明の範囲内に包含され、かつ添付の請求項によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子を示す透視図である。
【図1B】本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子のx−y面におけるネマチックダイレクタのプロフィルを示す俯瞰図である。
【図2A】従来の単一偏光回折格子の使用可能な帯域幅を示すグラフである。
【図2B】本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子の使用可能な帯域幅を示すグラフである。
【図3A】本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子の作動特性を示すグラフである。
【図3B】本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子の作動特性を示すグラフである。
【図4】本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子の作動特性を示すグラフである。
【図5】図5A〜図5Eは、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子を作製する方法を示す断面図である。
【図6】図6A〜図6Cは、本発明のさらに他の実施形態による多層偏光回折格子を作製する方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明をさらに充分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が、十分かつ完全であって、本発明の範囲を当業者に十分に知らしめるために、提供されている。図面において、寸法および層および領域の相対的な大きさは、明瞭にするために、誇張されている場合がある。全体を通して、同様の番号は、同様の要素を指すものとする。
【0025】
「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などという用語が、種々の要素、構成部品、領域、層および/または区域を記述するために、ここに用いられていることがあるが、これらの要素、構成部品、領域、層、および/または区域は、これらの用語に限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、構成部品、領域、層または区域を他の領域、層、または区域から区別するために、用いられているにすぎない。従って、以下に述べる第1の要素、構成部品、領域、層、または区域は、本発明の示唆から逸脱することなく、第2の要素、構成部品、領域、層、または区域と呼ばれることもある。
【0026】
「〜の真下に (beneath)」、「〜の下方に(below)」、「〜の下側の(lower)」、「〜の下に(under)」、「〜の上方に(above)」、「〜の上側の(upper)」などの空間に関連する用語が、ここでは、図面に示されている1つの要素または特徴部と1つまたは複数の他の要素または特徴部との関係を説明するための記述を容易にするために、用いられていることがある。空間に関連する用語は、図面に描かれている方位に加え、使用時または操作時における装置の別の方位も含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、もし図面における装置が反転した場合、他の要素または特徴部の「下方に」、「真下に」、または「下に」あると記述されている要素は、他の要素または特徴部の「上方に」配向されることになる。従って、「〜の下方に」または「〜の下に」という例示的な用語は、上方の方位と下方の方位の両方を含んでいることになる。装置は、これ以外に配向されることもあり、(すなわち、90°または他の方位に回転されることもあり)、この場合、ここに用いられている空間に関連する記述用語も、これに応じて、解釈されるとよい。加えて、ある層が2つの層の「間」にあると記述されているとき、この層は、これらの2つの層の間の唯一の層であってもよいし、または1つまたは複数の介在層が存在していてもよいことも理解されたい。
【0027】
ここに用いられている専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。ここに用いられている単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。「〜を備える(comprise)」および/または「〜を備えている(comprising)」という用語は、本明細書において用いられる場合、記述されている特徴、完全体、工程、操作、要素、および/または構成部品の存在を特定することになるが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成部品、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。ここに用いられている「および/または」という用語は、1つ以上の関連して列挙されている項目のどのような組合せも含んでいる。
【0028】
ある要素または層が、他の要素または層の「上に位置している」または他の要素または層に「接続されている」、「結合されている」、または「隣接している」と記述されているときは、他の要素または層の上に直接位置するかまたは他の要素または層に直接接続、直接結合、または直接隣接するようになっていてもよいし、または介在する要素または層が存在していてもよいことを理解されたい。対照的に、ある要素が、他の要素または層の「上に直接位置している」または他の要素または層に「直接接続されている」、「直接結合されている」、または「直接隣接している」と記述されているときは、介在する要素または層が存在していないことになる。
【0029】
ここでは、本発明の理想的な実施形態(および中間的な構造)の概略図である断面図を参照して、本発明の実施形態を説明することになる。従って、例えば、製造技術および/または許容誤差の結果として、図面の形状との違いが生じることが見込まれている。従って、本発明の実施形態は、ここに図示されている領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造によって生じる形状の寸法誤差を含むべきである。すなわち、図面に示されている領域は、本質的に概略図であり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を示すことを意図したものではないし、本発明の範囲を限定することを意図したものでもない。
【0030】
特段の規定がない限り、ここに用いられている(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有している。また、一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術および/または本明細書の文脈における意味と一致している意味を有するものと解釈されるべきであり、ここに明示的に規定されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味に解釈されてはならないことをさらに理解されたい。
【0031】
ここに用いられる「透過」または「透明」基板は、入射光の少なくとも一部を透過させるものであることは、当業者によって理解されるだろう。従って、透明基板は、いくつかの実施形態では、ガラス基板であってもよい。対照的に、ここに記載されている「反射」基板は、入射光の少なくとも一部を反射するものである。また、「重合性液晶」は、重合可能な比較的低分子量の液晶材料を指し、ここでは「反応性メソゲン」と記述されることもある。対照的に、「非反応性液晶」は、重合されない比較的低分子量の液晶材料を指している。
【0032】
ここでは、液晶(LC)材料およびそれらの材料から構成される偏光回折格子を参照して、本発明の実施形態を説明することになる。ここに用いられる液晶は、ネマティク相、キラルネマティク相、スメクチック相、および/または強磁性相を有している。加えて、多数の光重合性ポリマーが、ここに記載される偏光回折格子を作り出す配向層として用いられてもよい。光重合性に加えて、これらの材料は、LCに対して不活性であるとよく、LC装置の操作温度の範囲(例えば、約−50℃から約100℃の範囲)の全体にわたって安定した配向をもたらす必要があり、かつここに記載される作製方法に適合している必要がある。光重合性ポリマーのいくつかの例として、ポリイミド(例えば、JSR Micro社(カルフォニア州、サンバレー)から市販されているAL1254およびBrewer Science社(ミズリー州、ローラ)から市販されているNissanRN−1199)、およびケイ皮酸エステル(例えば、M. Schadtら:“線状重合された感光性ポリマーによる液晶の表面誘起平行配向”、Jpn. J. Appl. Phys., Vol 31. (1992), pp. 2155-2164に記載されているポリビニル4−メトキシ−ケイ皮酸エステル)が挙げられる。光重合性ポリマーの他の例は、Vantico社(カルフォルニア州、ロスアンジェルス)から市販されているStaralign. TM.である。さらに他の例として、カルコン−エポキシ材料(例えば、Dong Hoon Choiら:“直線偏光UVの照射による光化学的2官能性カルコン−エポキシフィルム上の低分子量ネマティク液晶の光配向”、Bull. Korean Chem. Soc., Vol. 23, No. 4587 (2002) に記載されているもの)、およびクマリン側鎖ポリイミド(例えば、M. Reeら:“光感受性ポリマーの薄膜上の液晶の配向挙動−光反応性基およびUV露光の影響”、Synth. Met., Vol. 117 (1-3), pp. 273-5 (2001)(これらの材料では、LCは、偏光の方向とほぼ直交して配向する)に開示されているもの)が挙げられる。また、液晶配向の方法のさらに他の例が、Crawfordらに付与された米国特許第7,196,758号明細書において検討されている。さらに、ここに記載されているいくつかの構造は、スピンコーティング法と液晶材料とのバランスによる精緻な作製法と関連している。本発明のいくつかの実施形態と共に用いられるさらに他の構造および/または方法が、Escutiらに付与された国際公開第2006/092758号パンフレットにおいて検討されている。この開示内容は、引用することによって、本明細書の一部をなすものとする。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、偏光回折格子を用いて、アクロマティク(広帯域)の高コントラスト回折を達成することができる方法および装置を提供するものである。さらに具体的には、本発明のいくつかの実施形態では、3つの偏光回折格子が、それらの間に所定の位相ずれをもたらすように、互いに積層されるようになっている。例えば、第1の非反応性液晶層が、2つの反応性メソゲン層間に、液晶層の周期的分子配向が2つの反応性メソゲン層の周期的分子配向に対して約55°から約56°の範囲内の角度ずれだけオフセットされるように、積層されているとよい。0°よりも大きく、180°よりも小さい範囲内の他の角度ずれが用いられてもよい。また、いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の角度ずれは、第2の偏光回折格子層と第3の偏光回折格子層との間の角度ずれと異なっていてもよい。このようにして、この回折格子は、切換え可能とされ、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるのに適する空間光変調器をもたらすことができる。対照的に、単一層偏光回折格子は、非偏光を変調することは可能であるが、その高コントラスト作動は、極めて狭帯域の入力光に制限されることになる。従って、広帯域光は、多くの用途において用いられているが、そのような用途において、本発明のいくつかの実施形態は、既存の技術と比較して、極めて高コントラストおよび/または極めて高輝度を得るために、用いられることが可能である。
【0034】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子を示している。図1Aに示されているように、第1の偏光回折格子層PG1101、第2の偏光回折格子層PG2102、および第3の偏光回折格子層PG3103が、互いに積層され、多層構造105を形成している。第2の偏光回折格子層PG2102は、第1の偏光回折格子層PG1101と第3の偏光回折格子層PG3103との間に位置しているが、第2の偏光回折格子層PG2102の周期的分子構造は、回折格子ベクトルに沿って、偏光回折格子層PG1101および/またはPG3103の周期的分子構造に対して横方向にオフセットまたは「シフト」されている。さらに具体的には、第1の回折格子層PG1101および/または第3の回折格子層PG3103に対する第2の回折格子層PG2102の空間的な差異は、これらの偏光回折格子層間の界面によって画定された面に沿って、局部的ネマティクダイレクタ配向の角度ずれψをもたらしている。換言すると、中央の偏光回折格子層PG2102の周期的分子構造は、互いに平行に配列されている外側の偏光回折格子層PG1101,PG3103の少なくとも1つの周期的分子構造に対して、位相が異なるようにずらされている。図1Bに示されているように、第2の偏光回折格子層PG2102のネマティクダイレクタ配向の位相ずれまたは角度ずれψは、x−y平面において約55°である。角度ずれψは、多層構造105によって変調される光の帯域幅を広げるように、偏光回折格子層PG1101,PG2102,PG3103間の相対的な空間的差異に基づいて、調整されることが可能である。各偏光回折格子101、102、および/または103の回折格子ピッチは、約10μmであるとよく、従って、角度ずれψを制御するのは、いくらか困難な場合がある。(数10nmのオーダの)偏光回折格子層PG1101,PG2102,PG3103間のギャップが、多層偏光回折構造105の使用可能な帯域幅および/または効率に影響を与えることにも留意されたい。
【0035】
図2Aおよび図2Bは、従来の単一偏光回折格子設計(図2A)と本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子(図2B)との間の使用可能な帯域幅の差を示すシミュレーション結果の例である。図2Aおよび図2Bのシミュレーション結果は、光学回折をモデル化するために、2×2伝達行列の計算を行うジョーンズ法を用いて、および有限差分時間−ドメイン(FDTD)技術を用いて、計算されたものである。図2Bに示されているように、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子の使用可能な帯域幅は、図2Aの従来の単一偏光回折格子と比較して、約1200%の拡大をもたらすことができる。さらに具体的には、図2Aの単一偏光回折格子は、斜線部205によって示されているように、約633nmの所望の波長、すなわち、中心波長λに対して約575nmから約618nmの波長域にわたって、高コントラスト(例えば、98%よりも大きい効率のコントラスト)の光変調をもたらしている。しかし、図2Bの多層偏光回折格子は、斜線部210によって示されているように、約633nmの同一波長λに対して極めて広い波長域、すなわち、約432nmから約985nmの波長域にわたって、高コントラストの光変調をもたらしている。従って、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子は、従来の偏光回折格子よりも高い帯域幅をもたらすことができる。
【0036】
図3Aは、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子の種々の角度ずれに対するスペクトル応答を示している。さらに具体的には、図3Aは、(波形310によって表わされている)従来の単一層偏光回折格子の回折効率に対する、(波形301,302,303,304,305によって、それぞれ、表わされている)0°,22.5°、45°,67.5°,90°の角度ずれψを有する5つの異なる多層偏光回折格子の回折効率を示している。図3Aに示されているように、(波形301,302によって示されている)約45°未満の角度ずれψの場合、対応する多層偏光回折格子のスペクトル応答は、(波形310によって示されている)単一層偏光回折格子のスペクトル応答よりも大きく変動し、その結果、その使用可能な帯域幅が、単一層偏光回折格子の使用可能帯域幅よりも劣ることになる。しかし、(波形303,304によって示されている)約45°から約90°の間の角度ずれψの場合、対応する多層偏光回折格子のスペクトル応答は、波形310によって示されている単一層偏光回折格子のスペクトル応答よりも著しく広くなっている。従って、約45°から約90°の間の角度ずれψを有する多層偏光回折格子は、単一偏光回折格子よりも大きい回折効率をもたらすことができる。
【0037】
図3Bは、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子における角度ずれψと(中心波長λに対する百分率として表わされている)使用可能な帯域幅との関係を示している。スペクトル範囲Δλ(単位:波長)は、全一次回折Ση−1が≧99.5%である波長の範囲を示している。正規化帯域幅Δλ/λ(単位:%)は、中心波長λに対するスペクトル範囲の比として定義されている。図3Bに示されているように、中心波長λの約90%である最大帯域幅Δλmax325は、約55°の角度ずれψにおいて生じている。対照的に、従来の単一偏光回折格子の場合の最大帯域幅ΔSinglePG 330は、波長λの約6.8%である。
【0038】
図4は、従来の単一偏光回折格子に対する本発明のいくつかの実施形態による約55°の角度ずれψを有する多層偏光回折格子のスペクトル応答の差を示している。さらに具体的には、図4に示されているように、(波形405によって示されている)約55°の角度ずれψを有する多層偏光回折格子の一次回折効率η−1は、広いスペクトル応答によって明らかなように、(波形410によって示されている)単一偏光格子回折の一次回折効率η−1よりも著しく広くなっている。しかし、いくつかの実施形態では、例えば、異なる液晶材料および/または異なる複屈折値の使用に基づいて、角度ずれψは、変化し得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、角度ずれψは、0°よりも大きく、180°よりも小さくなっていればよい。従って、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子は、従来の単一偏光回折格子と比較して、使用可能な帯域幅を著しく改良することができる。
【0039】
図5A〜図5Eは、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子を作製する方法を示す断面図である。図5Aを参照すると、第1の偏光回折格子PG1501が基板500上に形成されている。例えば、第1の偏光回折格子PG1501は、ホログラフィ技術を用いて、透過基板または透明基板500上に形成されているとよい。第1の偏光回折格子PG1501は、重合性液晶PG層であるとよい。図5Bに示されているように、比較的薄いキラル重合性液晶層C1515が、第1の偏光回折格子PG1501上に形成されている。例えば、いくつかの実施形態では、層C1515は、約+55°の捩じれを有する薄いキラル重合性液晶層であるとよい。換言すれば、層C1515には、(図5Eに示されているように)、層C1515の分子の配向が層C1515の対向面間の厚みdの全体にわたって約55°の角度ψだけ「twist(捩じられる)」ように、キラル分子(すなわち、異なる左旋回形状および右旋回形状を有する非対称分子)がドープされているとよい。図5Cに示されているように、第2の偏光回折格子PG2502が、キラル重合性液晶層C1515上に組み合わされている。従って、第2の偏光回折格子PG2502は、層C1515のキラルの捩じれの量に基づいて、第1の偏光回折格子PG1501に対して位相がずらされていることになる。相対的な角度ずれψの大きさは、第1の偏光回折格子PG1501と第2の偏光回折格子PG2502との間の距離にも依存している、すなわち、層C1515の厚みにも基づいている。図5Dに示されているように、層C1515の旋回性と逆の旋回性を有する比較的薄いキラル重合性液晶層C2525が、第2の偏光回折格子PG2502上に形成されている。例えば、いくつかの実施形態では、層C2525は、層C2525の対向面間の厚みdの全体にわたって−55°の捩じれを有する薄いキラル重合性液晶層であるとよい。図5Eに示されているように、第3の偏光回折格子PG3503が、キラル重合性液晶層C2525上に組み合わされ、層C2525のキラルの捩じれの量に基づいて、第2の偏光回折格子PG2502に対して、前述したのと同様に、しかし、反対方向に、位相がずれている。従って、第1の偏光回折格子PG1501および第3の偏光回折格子PG3503のそれぞれの周期的分子配向は、同一の位相になっている。従って、本発明のいくつかの実施形態では、重合性液晶材料および単一基板によって、多層偏光回折格子を完全に形成することができる。しかし、他の実施形態では、互いに異なる材料および/または互いに異なる基板が用いられてもよい。例えば、いくつかの他の実施形態では、層C1515,C2525の厚みd,dは、互いに異なっていてもよく、これによって、第1の偏光回折格子PG1501および第3の偏光回折格子PG3503のそれぞれの周期的分子配向は、その位相が異なっていてもよい。
【0040】
図6A〜図6Cは、本発明のさらに他の実施形態による多層偏光回折格子を作製する方法を示す断面図である。図6Aを参照すると、第1の偏光回折格子PG1601および第2の偏光回折格子PG2603が、それぞれ、第1の基板600および第2の基板610上に形成されている。例えば、第1の偏光回折格子PG1601および/または第2の偏光回折格子PG2603は、ここではさらには述べない周知のホログラフィ技術を用いて、形成されているとよい。各基板は、インジウム−錫−酸化物(ITO)電極のような透明導電電極(図示せず)を備えていてもよい。図6Bに示されているように、互いに逆の旋回性を有する第1のキラル重合性液晶層C1615および第2のキラル重合性液晶層C2625が、それぞれ、第1の偏光回折格子PG1601および第2の偏光回折格子PG2602上に形成されている。例えば、第1の層C1615は、約+55°の捩じれを有する薄いキラル重合性液晶層であるとよく、第2の層C2625は、約―55°の捩じれを有する薄いキラル重合性液晶層であるとよい。図6Cに示されているように、第1の基板600および第2の基板610は、それらの基板間に実質的に均一のセルギャップをもたらすように、組み合わされ、次いで、液晶材料によって充填され、これによって、切換え可能な液晶層602が形成されることになる。セルギャップ621は、多層偏光回折格子の作動に用いられる光に対して半波長リタデーション(位相遅れ)厚み、例えば、約2μmよりも大きくなっているとよい。しかし、他の実施形態では、セルギャップ621は、半波長リタデーション厚み以下であってもよい。これによって、液晶層の分子は、層C1615,C2625のキラルの捩じれに従って配向され、偏光回折格子PG1601,PG2603の分子配向に対して角度ずれψをもたらすことになる。従って、本発明のいくつかの実施形態は、切換え可能なピクセル構造に広帯域の高コントラストおよび高アクロマティック作動をもたらすことができる。
【0041】
従って、本発明のいくつかの実施形態によれば、一定および/または可変の角度ずれを層間にもたらすように構成された3層偏光回折格子によって、液晶偏光回折格子のアクロマティク(広帯域)回折を達成することが可能である。このような多層偏光回折格子は、周知の薄膜技術および/または周知の液晶材料を用いて、作製することができ、これによって、例えば、携帯プロジェクションディスプレイ、消費者TV、リアルタイムホログラフィ、などのような偏光無依存性マイクロディスプレイに用いられる改良された空間光変調器を作り出すことができる。さらに、場合によっては、本発明のいくつかの実施形態による多層偏光回折格子は、所望の中心波長の約90%に至る波長域にわたって、高コントラスト変調を高めることができ、これによって、従来の単一偏光回折格子と比較して、1200%の改良がもたらされることになる。従って、ディスプレイ用途において、画像品質を著しく改良することができる。
【0042】
前述の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、本発明を限定すると解釈されるべきではない。本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を施すことが可能であることを容易に理解するだろう。例えば、前述の説明は、主に、第1の偏光回折格子層および第3の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造に対してオフセットされた周期的分子構造を含む第2の偏光回折格子層に基づいているが、第1の偏光回折格子層および第3の偏光回折格子層のそれぞれの周期的分子構造が互いにオフセットされてもよい。さらに、ここに述べた基板は、例えば、基板上の透明なインジウム−錫−酸化物(ITO)によってもたらされる1つまたは複数の電極を表面上に備えていてもよい。従って、このような修正の全ては、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。それ故、前述の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、開示されている特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないこと、かつ開示されている実施形態の修正および他の実施形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周期的分子構造を含む第1の偏光回折格子層と、
前記第1の偏光回折格子層上の第2の偏光回折格子層であって、前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って前記第1の周期的分子構造に対してオフセットされている第2の周期的分子構造を含んでいる、第2の偏光回折格子層と、
第3の周期的分子構造を含む第3の偏光回折格子層であって、前記第2の偏光回折格子層が前記第1の偏光回折格子層と前記第3の偏光回折格子層との間にあるように、前記第2の偏光回折格子層上に位置している、第3の偏光回折格子層と
を備えてなる多層偏光回折格子。
【請求項2】
前記第2の周期的分子構造は、前記第1の周期的分子構造および前記第2の周期的分子構造が第1の相対的角度ずれだけ位相が異なるように、前記第1の周期的分子構造に対してオフセットされており、前記第3の周期的分子構造は、前記第2の周期的分子構造および前記第3の周期的分子構造が第2の相対的角度ずれだけ位相が異なるように、前記第2の偏光回折格子層と前記第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って、前記第2の周期的分子構造に対してオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の多層偏光回折格子。
【請求項3】
前記第2の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向は、前記第1の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向に対して、前記第1の角度ずれを有しており、前記第3の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向は、前記第2の偏光回折格子層の前記局部的ネマチックダイレクタ配向に対して、前記第2の角度ずれを有していることを特徴とする請求項2に記載の多層偏光回折格子。
【請求項4】
前記第3の周期的分子構造は、前記第2の偏光回折格子層と前記第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って、前記第2の周期的分子構造に対して、逆方向にオフセットされていることを特徴とする請求項2に記載の多層偏光回折格子。
【請求項5】
前記第2の角度ずれは、前記第1の周期的分子構造および前記第3の周期的分子構造が同じ位相になるように、前記第1の角度ずれと逆方向の角度になっていることを特徴とする請求項4に記載の多層偏光回折格子。
【請求項6】
前記第1の角度ずれは、0°よりも大きく、180°よりも小さくなっていることを特徴とする請求項5に記載の多層偏光回折格子。
【請求項7】
前記第1の角度ずれは、+55°から+56°の範囲内にあり、前記第2の角度ずれは、−55°から−56°の範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の多層偏光回折格子。
【請求項8】
前記第3の偏光回折格子層の前記第3の周期的分子構造は、前記第1の偏光回折格子層の前記第1の周期的分子構造に対して、位相が異なっていることを特徴とする請求項4に記載の多層偏光回折格子。
【請求項9】
前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間にあり、前記第1の偏光回折格子層上に位置する第1のキラル重合性液晶層をさらに備えており、
前記第1のキラル重合性液晶層は、前記第2の偏光回折格子層の前記第2の周期的分子構造を、前記第1の偏光回折格子層の前記第1の周期的分子構造に対して、前記第1の角度ずれだけシフトするように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の多層偏光回折格子。
【請求項10】
前記第3の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間にあり、前記第3の偏光回折格子層上に位置する第2のキラル重合性液晶層をさらに備えており、
前記第1のキラル重合性液晶層および前記第2のキラル重合性液晶層は、キラル分子をそれぞれ含んでおり、前記第2のキラル重合性液晶層の前記キラル分子は、前記第2のキラル重合性液晶層が前記第3の偏光回折格子層の前記第3の周期的分子構造を前記第2の偏光回折格子層の前記第2の周期的分子構造に対して前記第2の角度ずれだけ逆方向にシフトするように構成されるように、前記第1のキラル重合性液晶層の前記キラル分子と逆の旋回性を有していることを特徴とする請求項9に記載の多層偏光回折格子。
【請求項11】
前記第1のキラル重合性液晶層は、その対向面間の厚みの全体にわたって+55°の捩じれを含んでおり、前記第2のキラル重合性液晶層は、その対向面間の厚みの全体にわたって−55°の捩じれを含んでいることを特徴とする請求項10に記載の多層偏光回折格子。
【請求項12】
前記第1の偏光回折格子層上の第1の電極を備える第1の基板と、
前記第3の偏光回折格子層上の第2の電極を備える第2の基板と
をさらに備えており、
前記第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層偏光回折格子。
【請求項13】
前記第2の偏光回折格子層は、ネマチック液晶層から構成されていることを特徴とする請求項12に記載の多層偏光回折格子。
【請求項14】
前記第2の偏光回折格子層は、重合性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層偏光回折格子。
【請求項15】
第1の周期的分子構造を含む第1の偏光回折格子を形成するステップと、
前記第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層を形成するステップであって、前記第2の偏光回折格子層は、前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って前記第1の周期的分子構造に対してオフセットされた第2の周期的分子構造を含んでいる、ステップと、
前記第2の偏光回折格子層が前記第1の偏光回折格子層と前記第3の偏光回折格子層との間にあるように、前記第2の偏光回折格子層上に第3の周期的分子構造を含む第3の偏光回折格子層を形成するステップと
を含んでなる、多層偏光回折格子を作製する方法。
【請求項16】
前記第2の偏光回折格子層および第3の偏光回折格子層を形成するステップは、
前記第2の偏光回折格子を前記第1の偏光回折格子層上に、前記第1の周期的分子構造および前記第2の周期的分子構造が第1の相対的角度ずれだけ位相が異なるように、形成することと、
前記第3の偏光回折格子層を前記第2の偏光回折格子層上に、前記第2の周期的分子構造および前記第3の周期的分子構造が前記第2の偏光回折格子層と前記第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って第2の相対的角度ずれだけ位相が異なるように、形成することと
を含んでいることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の偏光回折格子層および前記第3の偏光回折格子層を形成するステップは、
前記第2の偏光回折格子層を前記第1の偏光回折格子層上に、前記第2の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向が前記第1の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向に対する角度ずれを有するように、形成することと、
前記第3の偏光回折格子層を前記第2の偏光回折格子層上に、前記第3の偏光回折格子層の局部的ネマチックダイレクタ配向が前記第2の偏光回折格子層の前記局部的ネマチックダイレクタ配向に対する第2の角度ずれを有するように、形成することと
をさらに含んでいることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の偏光回折格子を形成するステップは、
前記第3の周期的分子構造が前記第2の偏光回折格子層と前記第3の偏光回折格子層との間の界面に沿って前記第2の周期的分子構造に対して逆方向にオフセットされるように、前記第3の偏光回折格子層を前記第2の偏光回折格子層上に形成すること
をさらに含んでいることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の角度ずれは、前記第1の周期的分子構造と前記第3の周期的分子構造が同じ位相になるように、前記第1の角度ずれと逆方向の角度になっていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の角度ずれは、0°よりも小さく、180°よりも大きくなっていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の角度ずれは、+55°から+56°の範囲内にあり、前記第2の角度ずれは、−55°から−56°の範囲内にあることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第3の偏光回折格子層を形成するステップは、
前記第3の周期的分子構造が前記第1の周期的分子構造に対して位相が異なるように、前記第3の偏光回折格子層を形成すること
を含んでいることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の偏光回折格子層を前記第1の偏光格子層上に形成する前に、前記第1の偏光回折格子層上に第1のキラル重合性液晶層を形成するステップをさらに含んでおり、
前記第1のキラル重合性液晶層は、前記第2の偏光回折格子層の前記第2の周期的分子構造を前記第1の偏光回折格子層の前記第1の周期的分子構造に対して前記第1の角度ずれだけシフトするように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記第3の偏光回折格子層上に第2のキラル重合性液晶層を形成するステップをさらに含んでおり、
前記第1のキラル重合性液晶層および前記第2のキラル重合性液晶層は、キラル分子をそれぞれ含んでおり、前記第2のキラル重合性液晶層の前記キラル分子は、前記第2のキラル重合性液晶が前記第3の偏光回折格子層の前記第3の周期的分子構造を前記第2の偏光回折格子層の前記第2の周期的分子構造に対して前記第2の角度ずれだけ逆方向にシフトするように構成されるように、前記第1のキラル重合性液晶層の前記キラル分子と逆方向の旋回性を有していることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のキラル重合性液晶層は、その対向面間の厚みの全体にわたって+55°の捩じれを含んでおり、前記第2のキラル重合性液晶は、その対向面間の厚みの全体にわたって−55°の捩じれを含んでいることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のキラル重合性液晶層を形成するステップは、
前記第2のキラル重合性液晶層を前記第2の偏光回折格子層上に形成することと、
前記第3の偏光回折格子層を前記第2のキラル重合性液晶層上に形成することと
を含んでおり、
前記第2の偏光回折格子層は、反応性メソゲン層から構成されていることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のキラル重合性液晶層を形成するステップは、
前記第2の偏光回折格子層を形成する前に、前記第3の偏光回折格子層上に前記第2のキラル重合性液晶層を形成することと、
前記第1のキラル重合性液晶層と前記第2のキラル重合性液晶層との間にギャップを画定するように、前記第2のキラル重合性液晶層を備える前記第3の偏光回折格子層を、前記第1のキラル重合性液晶層を備える前記第1の偏光層に隣接して組み合わせることと
を含んでおり、
前記第2の偏光回折格子層を形成することは、非反応性液晶層を前記第1のキラル重合性液晶層と前記第2のキラル重合性液晶層との間の前記ギャップ内に、前記第2の偏光回折格子層の前記第2の周期的分子構造が前記第1の周期的分子構造に対して前記第1の角度ずれだけシフトされ、前記第3の周期的分子構造に対して前記第2の角度ずれだけシフトされるように形成することを含んでいることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の偏光回折格子層は、ネマチック液晶層から構成されていることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の偏光回折格子層および前記第3の偏光回折格子層を形成するステップは、
前記第1の偏光回折格子層を第1の電極を含む第1の基板上に形成することと、
前記第3の偏光回折格子層を第2の電極を備える第2の基板上に形成することと
を含んでおり、
前記第3の偏光層を前記第1の偏光層に隣接して組み合わせることは、前記第1のキラル重合性液晶層と前記第2のキラル重合性液晶層との間にギャップを画定するように、前記第1の基板を前記第2の基板に隣接して組み合わせることを含んでいることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のキラル重合性液晶層と前記第2のキラル重合性液晶層との間の前記ギャップは、約半波長リタデーション厚みになっていることを特徴とする請求項27に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−525396(P2010−525396A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504076(P2010−504076)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/004897
【国際公開番号】WO2008/130561
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508290987)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (7)
【Fターム(参考)】