説明

多層熱収縮性ポリオレフィンフィルム

【課題】 本発明は、低温収縮性、ヒートシール性、包装性及び環境衛生性に優れた多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の多層熱収縮性包装用フィルムは、密度が0.920g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレン20〜50重量%とポリプロピレン系樹脂50〜80重量%とからなる中間層の両面に、上記中間層に使用したものと同一のポリプロピレン系樹脂からなる表面層が積層一体化されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に商業包装用に用いられる多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムに関する。詳細には、本発明は、厚み精度が良くて包装機適性に優れていると共に低温収縮性に優れ、更に、ヒートシール性及び環境衛生に優れた多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、熱収縮性包装用フィルムとしては、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムが広く使われている。この熱収縮性包装フィルムは、従来から使用されてきたポリ塩化ビニル(PVC)からなるフィルムと比較して、ヒートシール性に優れていると共に、使用後の処理においても燃焼時にダイオキシンなどの有害なガスを発生しないという利点を有している。
【0003】
加えて、ポリプロピレン系樹脂からなる熱収縮性包装用フィルムは、ポリ塩化ビニルからなる熱収縮性包装用フィルムと比較して常温保管において経時的にフィルムの品質が劣化することがなく、包装機適性(包装性)に優れており、ポリ塩化ビニルからなるフィルムではなし得なかった高速収縮包装が可能となった。
【0004】
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂からなる熱収縮性包装用フィルムは、ポリ塩化ビニルからなる熱収縮性包装用フィルムに比較して透明性・光沢性・低温収縮性に劣ることから、異形物の包装や高温加熱に適さない包装物の収縮包装においては、不向きであった。
【0005】
そこで、特許文献1に、線状低密度ポリエチレンから本質的に成る芯の層と、80重量%のエチレン・プロピレン共重合体と20重量%のプロピレン均質重合体との配合物から本質的に成る二枚の表皮層を含有する多層ポリオレフィンフィルムが提案されており、ポリプロピレン樹脂からなる熱収縮性包装用フィルムが有していた上記課題は解決されたが、ヒートシール強度が充分でないという別の問題を生じ、ポリプロピレン系樹脂の得意としていた高速収縮包装を円滑に行えないという問題を生じていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−166049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温収縮性、ヒートシール性、包装性及び環境衛生に優れた多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムは、密度が0.920g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレン20〜50重量%とポリプロピレン系樹脂50〜80重量%とからなる中間層の両面に、上記中間層に使用したものと同一のポリプロピレン系樹脂からなる表面層が積層一体化されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムの中間層を構成する直鎖状低密度ポリエチレンは、Ziegler 触媒やメタロセン触媒などのシングルサイト系触媒を用いてエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られ、α−オレフィンの種類及び量を制御することによって密度範囲を制御することができる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、又、直鎖状低密度ポリエチレンは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0010】
そして、本発明の多層熱収縮性包装用フィルムで用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、高いと、多層熱収縮性包装用フィルムの熱収縮性及びヒートシール性が低下するので、0.920g/cm以下に限定される。
【0011】
本発明の多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムの中間層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレンと他のモノマーとの共重合体などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、プロピレンを主成分とするプロピレンと他のモノマーとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体などの何れであってもよい。
【0012】
上記プロピレンを主成分とするプロピレンと他のモノマーとの共重合体としては、プロピレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられ、エチレン、1−ブテンが好ましい。なお、プロピレン−α−オレフィン共重合体は、一種類以上のα−オレフィンが共重合されていてもよい。
【0013】
上記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトは、高いと、多層熱収縮性包装用フィルムのヒートシール性が低下し、高速包装時に多層熱収縮性包装用フィルムにピンホールが発生し易くなるので、5.0g/10分以下が好ましく、0.5〜3.0g/10分がより好ましい。なお、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して230℃、荷重21.18Nの条件下にて測定されたものをいう。
【0014】
そして、多層熱収縮性包装用フィルムの中間層中における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、少ないと、多層熱収縮性包装用フィルムの熱収縮性が低下する一方、多いと、多層熱収縮性包装用フィルムの熱収縮性は向上するものの、多層熱収縮性包装用フィルムのヒートシール性が低下するので、20〜50重量%に限定される。
【0015】
又、多層熱収縮性包装用フィルムの中間層中におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、少ないと、多層熱収縮性包装用フィルムの熱収縮性は向上するものの、多層熱収縮性包装用フィルムのヒートシール性が低下する一方、多いと、多層熱収縮性包装用フィルムの熱収縮性が低下するので、50〜80重量%に限定される。
【0016】
そして、本発明の多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムの表面層は、中間層に用いられているポリプロピレン系樹脂と同一のポリプロピレン系樹脂が用いられる。これは、表面層と中間層に用いられるポリプロピレン系樹脂が異なった場合には、層間の接着強度が低下してしまって、多層熱収縮性包装用フィルムのヒートシール性が低下してしまうからである。なお、同一のポリプロピレン系樹脂とは、モノマー成分、重合度、重量平均分子量、メルトフローレイトなどの物理的及び化学的特性が互いに同一であるポリプロピレン系樹脂をいう。従って、例えば、市販されているポリプロピレン系樹脂の場合、表面層を構成しているポリプロピレン系樹脂と、中間層を構成しているポリプロピレン系樹脂とが共に同一製品グレードである時は、表面層及び中間層を構成しているポリプロピレン系樹脂は同一であるとする。
【0017】
上記多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムの中間層及び表面層には、その物性を損なわない範囲内において、必要に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤(ブロッキング防止剤)、結晶造核剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0018】
上記多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムは、中間層の両面に表面層がそれぞれ積層一体化されてなり、中間層及び表面層の厚さや、中間層と表面層との間の厚さ比は、特に限定されないが、多層熱収縮性包装用フィルムのヒートシール性や熱収縮性などの点から、多層熱収縮性包装用フィルムの全厚さは5〜50μmであることが好ましい。
【0019】
又、中間層と表面層との間の厚さ比(中間層/表面層)は、小さいと、多層熱収縮性包装用フィルムの熱収縮性が低下することがある一方、大きいと、多層熱収縮性包装用フィルムのヒートシール性が低下することがあるので、2〜10が好ましい。なお、中間層の両面に積層一体化される両表面層の厚さは同一であっても異なっていてもよく、両表面層の厚さが異なる場合、中間層と表面層との間の厚さ比は、厚さが薄い方の表面層の厚さを採用する。
【0020】
本発明の多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、多層Tダイキャスト法や多層ダイスを用いた水冷インフレーション法などの公知の多層製膜法で製膜した後、ロール一軸延伸、テンター二軸延伸、チューブラー二軸延伸などの公知の延伸法で延伸する方法が挙げられる。この際、延伸前のフィルムの厚さ、延伸条件などは特に限定されないが、延伸前のフィルムの厚さは200〜500μmが好ましく、延伸条件としては、延伸倍率は縦横各2〜10倍、延伸速度は10〜100m/分、延伸温度は延伸前のシート温度で50〜120℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムは、密度が0.920g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレン20〜50重量%とポリプロピレン系樹脂50〜80重量%とからなる中間層の両面に、上記中間層に使用したものと同一のポリプロピレン系樹脂からなる表面層が積層一体化されてなることを特徴とするので、低温収縮性、ヒートシール性、包装性及び環境衛生に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施例1)
両表面層を構成するポリプロピレン系樹脂として、プロピレン−エチレン共重合体(メルトフローレイト:2.0g/10分、融点:142℃)を用い、中間層を構成する合成樹脂として、上記表面層に使用したプロピレン−エチレン共重合体80重量%と、直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.920g/cm、メルトフローレイト:1.0g/10分、融点:123℃)20重量%とからなる混合物を用いた。なお、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nの条件下にて測定されたものをいう。
【0023】
これらの樹脂材料を、円形の多層ダイスが取付けられた3台の押出機を用いて水冷インフレーション法によりサンドイッチ構造に製膜し、得られた膜をチューブラー二軸延伸により縦横方向にそれぞれ5倍、延伸して、直鎖状低密度ポリエチレン20重量%とプロピレン−エチレン共重合体80重量%とからなる中間層の両面に、この中間層を構成しているプロピレン−エチレン共重合体からなる表面層がそれぞれ積層一体化してなる多層熱収縮性包装用フィルムを得た。
【0024】
なお、多層熱収縮性包装用フィルムの全体厚さは15μmであった。多層熱収縮性包装用フィルムの両表面層の厚さは同一厚さを有しており、中間層と表面層との間の厚さ比(中間層/表面層)は4であった。
【0025】
(実施例2)
中間層を構成するプロピレン−エチレン共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンの含有量をそれぞれ、プロピレン−エチレン共重合体50重量%、直鎖状低密度ポリエチレン50重量%としたこと以外は実施例1と同様にして多層熱収縮性包装用フィルムを得た。
【0026】
(比較例1)
中間層を構成する合成樹脂として、プロピレン−エチレン共重合体(メルトフローレイト:2.0g/10分、融点:142℃)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0027】
(比較例2)
中間層を構成するプロピレン−エチレン共重合体及び直鎖状低密度ポリエチレンの含有量をそれぞれ、プロピレン−エチレン共重合体30重量%、直鎖状低密度ポリエチレン70重量%としたこと以外は実施例1と同様にして多層熱収縮性包装用フィルムを得た。
【0028】
(比較例3)
両表面層を構成するポリプロピレン系樹脂として、プロピレン−エチレン共重合体(メルトフローレイト:2.0g/10分、融点:142℃)を用い、中間層を構成する合成樹脂として、プロピレン−エチレン共重合体(メルトフローレイト:7.0g/10分、融点:142℃)80重量%と、直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.920g/cm、メルトフローレイト:1.0g/10分、融点:123℃)20重量%とからなる混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層熱収縮性包装用フィルムを得た。
【0029】
(比較例4)
中間層を構成している直鎖状低密度ポリエチレンの代わりに、中密度ポリエチレン(密度:0.930g/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムを得た。
【0030】
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた多層熱収縮性ポリオレフィンフィルムについて、熱収縮率、ヒートシール性及び包装性を以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0031】
〔熱収縮率〕
多層熱収縮性包装用フィルムにおける100℃、110℃及び120℃での縦方向及び横方向の熱収縮率(%)をJIS Z1709「収縮包装用フィルム」に準拠して測定した。なお、縦方向とは、多層熱収縮性包装用フィルムの製造時における押出方向とし、横方向とは、多層熱収縮性包装用フィルムの表面に沿い且つ押出方向に直交する方向とした。
【0032】
〔ヒートシール性〕
L型シール包装機(ハナガタ社製 商品名「HP−10」)を用いて、直方体形状の10個の木箱(縦130mm×横170mm×高さ50mm)をそれぞれ全体的に、多層熱収縮性包装用フィルムによって130℃にて連続的に熱収縮包装した。
【0033】
次に、各木箱を包装している多層熱収縮性包装用フィルムをそれぞれ目視観察し、各木箱毎に、多層熱収縮性包装用フィルムに生じている最も大きな孔(ピンホール)の孔径を測定した。
【0034】
そして、ピンホールがないものを5点、ピンホールの孔径が2mm未満のものを3点、ピンホールの孔径が2mm以上で且つ5mm未満のものを1点、ピンホールの孔径が5mm以上のものを0点として50点満点で採点し、下記基準によりヒートシール性を評価した。なお、ピンホールの孔径とは、ピンホールを包囲し得る真円の最小径とした。
○:合計点が40点以上であった。
△:合計点が35点以上40点未満であった。
×:合計点が35点未満であった。
【0035】
〔包装性〕
L型シール包装機(ハナガタ社製 商品名「HP−10」)を用いて、このL型シール包装機のトンネル温度を140℃から160℃まで10℃刻みで変化させ、各温度にて直方体形状の木箱(縦130mm×横170mm×高さ50mm)を1個づつ多層熱収縮性包装用フィルムによって連続的に全体的に熱収縮包装した。
【0036】
そして、各木箱を包装している多層熱収縮性包装用フィルムを目視観察して下記基準に基づいて包装性を評価した。
○:収縮不足や加熱溶融破れなどは認められず、仕上がり状態は良好であった。
△:収縮不足が若干認められたが、実用面での支障はなかった。
×:収縮不足や加熱溶融破れなどが認められ、仕上がり状態が悪かった。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.920g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレン20〜50重量%とポリプロピレン系樹脂50〜80重量%とからなる中間層の両面に、上記中間層に使用したものと同一のポリプロピレン系樹脂からなる表面層が積層一体化されてなることを特徴とする多層熱収縮性ポリオレフィンフィルム。

【公開番号】特開2007−1102(P2007−1102A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182852(P2005−182852)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】