説明

多層薄膜フィルムを用いた対象物の識別媒体

容易に偽造することができないとともに、真偽の識別が容易かつ確実であり、しかも、製造コストを低減することができる対象物の識別媒体を提供する。識別媒体は、所定の角度(たとえば正面)から見ると支持体31も多層薄膜フィルムからなる図柄20も同色に見えるが、視野角を大きくすると多層薄膜フィルムからなる図柄20はカラーシフトにより色が変化し、支持体31と異なる色となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、商品を梱包したパッケージ、パスポート、カード、紙幣、金券、証券、証書、商品券、絵画、切符、公共競技投票券等の平面的な対象物または各種立体的な対象物の真正性を識別するための識別媒体に関する。
【背景技術】
従来、たとえばカード、証書類の偽造防止方法としては、その対象物の表面にホログラムを貼付したり特殊なインクを塗布する技術が知られている。(たとえば、特開2001−315243号公報,第2頁,請求項14参照)。ホログラムでは、立体的に見えたり見る角度で絵柄が変わることを目視で確認して識別を行っていた。また、特殊なインクとしては、蛍光インクや磁気インクなどがあり、これらのインクを用いた場合、目視では通常のインクと変わりがないが、紫外線を照射したり磁気センサで検出することにより、隠れた情報によって対象物を識別することができる。また、対象物の識別媒体として、反射特性が視野角に依存して光の選択反射を示すフィルムを用いた、カード、証書類の偽造防止方法としては、コレステリック液晶のインクまたはフィルムを用いた例がよく知られている。(たとえば、特許第3244278号明細書,第7頁,図1,図2参照)
しかしながら、ホログラムだけで高い識別性を得ようとすると、高コストな技術が必要とされ、また対象物の種類によっては使用できない場合がある。また、蛍光インクや磁気インクは類似品が入手し易いため偽造が容易であるとともに、識別のための装置が大がかりで電源を必要とするため、使い勝手が悪いという欠点がある。また、対象物の識別媒体の原料として用いられているコレステリック液晶はコストが高く、識別媒体の製造コストが割高になり、単価の低い商品に使うには適していない。
したがって、本発明は、容易に偽造することができないとともに、真偽の識別が容易かつ確実であり、しかも、製造コストを低減することができる対象物の識別媒体を提供することを目的としている。
【発明の開示】
本発明は、対象物に識別表示を光学的に認識可能に設けて対象物の真正性を識別するための対象物の識別媒体であって、支持体の一部に、反射特性が視野角に依存する光の選択反射を示す多層薄膜フィルムを固定したことを特徴としている。
また、本発明は、対象物に識別表示を光学的に認識可能に設けて対象物の真正性を識別するための対象物の識別媒体であって、反射特性が視野角に依存する光の選択反射を示す多層薄膜フィルムの表面の一部に、隠蔽シートを固定したことを特徴としている。
まず、本発明の基本的な原理について説明する。図1は多層薄膜フィルムに入射した光が各層で選択反射する様子を示す図である。白色光が多層薄膜フィルムに入射する場合、その波長に応じて光は反射、吸収、透過され、特にその反射光は各層における反射の光路差によって相互に干渉し、ある特定波長域の光のみが反射される性質がある。これを選択反射効果という。反射波長と反射率は次の式によって求めることができる。
λ=2×(nA・dA・cosθ+nB・dB・cosθ)
R=(nA/nB−1)/(nA/nB+1)
ここに、λ:反射波長、nA:A層屈折率、nB:B層屈折率、θ:反射角、dA:A層膜厚、dB:B層膜厚、R:反射率である。
この選択反射波長域は、各層をなすポリマーなどの素材の屈折率と膜厚、層数などにより任意に設定可能である。図2は、特定の波長が選択反射されている状態を示している。
また、多層薄膜フィルムは上記式から明らかなように、見る角度によって色が変わるという特徴を有する。これは、入射光が斜めの場合には、膜厚dA,dBが見かけ上減少することから、中心波長λが短波長側へ移行するためである。この現象は、以下のようにも説明できる。すなわち、入射光は多層薄膜フィルムの各界面において屈折率の差に起因して反射され、この反射光は、光路差に応じて互いに干渉する。この光路差は、面に対して平行に近い角度から入射し、反射する程、小さくなる。よって、面に対してより平行に近い方向から多層薄膜フィルムを見る程、各界面で反射される反射光同士の光路差が小さくなり、干渉し強め合う波長が短波長側にシフトする。この原理により、多層薄膜フィルムを正面から見る状態から徐々に傾けてゆくと、干渉して強め合う光が短波長側にシフトしてゆく様子が観察される。
たとえば、垂直入射光を観察して(つまり正面から見て)赤色に呈色する多層薄膜フィルムの反射色は、視野角を大きくするに従い(つまり多層薄膜フィルムを傾けるに従い)オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化するように観察される(カラーシフト)。このため、支持体の一部に、反射特性が視野角に依存する光の選択反射を示す多層薄膜フィルムを固定した識別媒体を対象物に貼り付けることで、色の変化の有無を観察することにより、真贋判定を容易に行うことができる。また、反射特性が視野角に依存する光の選択反射を示す多層薄膜フィルムの表面に、その一部を隠蔽する隠蔽シートを固定することによっても色の変化の有無を観察することにより、真贋判定を容易に行うことができる。また、隠蔽シートを貼らずに多層薄膜フィルムの色彩変化の効果だけで真贋判定することも可能である。なお、視野角は、観察対象面への垂線と視線とがなす角度(<90°)として定義される。たとえば、観察対象を正面から見た場合は、観察対象面への垂線と視線とは一致するので、視野角は0°となる。また、より観察対象面に平行に近い角度から見る程、視野角は大きくなる(90°に近くなる)。
また、本発明では、支持体の多層薄膜フィルム以外の部分に、多層薄膜フィルムを所定の角度(たとえば正面)から見たときの色彩と同等の色彩を印刷あるいは箔転写によって施すと好適である。このような態様によれば、識別媒体を所定の角度(たとえば正面)から見ると、多層薄膜フィルムは、周囲の部分と同等の色彩であるため、境界があまりはっきりとしない。一方、視野角を変化(たとえば大きく)してゆくと、多層薄膜フィルムのカラーシフトによって多層薄膜フィルムの色が変化するが、周囲の色は変わらないので多層薄膜フィルムが周囲から徐々に際立ってゆく。したがって、識別媒体を目視によって誰でも簡単かつ確実に識別することができる。
さらに、多層薄膜フィルムの表面に隠蔽シートを固定する構成では、多層薄膜フィルムの一部に箔を箔転写で施すと好適である。ただし、本発明では、箔以外の紙、プラスチックシートあるいは印刷用の塗料などあらゆる材料を用いることができる。また、この態様においても多層薄膜フィルムを所定の角度(例えば正面)から見たときの色彩と同等の色彩の隠蔽シートを用いることにより上記と同等の効果を得ることができる。特に隠蔽シートとして箔を用いた場合には、多層薄膜フィルムの光沢と箔の光沢が類似しているため、周囲の多層薄膜フィルムの色の変化が劇的な印象を与えることができる。
前記のような特性を有する多層薄膜フィルムを支持体に固定する固定方法には、粘着剤、接着剤による貼り付け、熱転写による貼り付け、支持体あるいは対象物の製造時に混入するなど各種の方法がある。場合によっては支持体が対象物そのものであることもある。多層薄膜フィルムは加工性が良いため帯状に裁断したり、繊維状に裁断したり、小片状に砕いたり自由に加工することができる。こうして加工した多層薄膜フィルムのうち帯状のものや繊維状のものは、2層に分けられた支持体の間に挟むことにより支持体に固定することができる。この場合、2層に分けられた支持体のいずれか1層以上に、裁断された多層薄膜フィルムを視認するための開口部を設ける。
また、帯状のもの、繊維状のもの、小片状の多層薄膜フィルムは、たとえば、支持体が紙の場合は抄紙の途中で漉き込むことにより固定することができる。こうした場合、多層薄膜フィルムは完全に表面に露出していないが、周囲の紙の支持体の反射に比べて輝度が高いため視認性の低下は少ない。
また、光吸収層を第1および第2の多層薄膜フィルムで挟んだ構造とすることは好ましい。この態様によれば、得られる構造体の両面において、カラーシフト特性が得られる。したがって、この構造体を帯状、繊維状に加工した場合に、捩れや反転があっても、カラーシフトの機能が失われない。また、小片状に加工し、所定の場所に散布するような場合でも、両面において上記光学特性が得られるので、表裏が問題とならない。
なお、光吸収層は可視光を吸収する材料から構成される。たとえば、光吸収層として、黒や濃い色の樹脂材料を利用することができる。また、光吸収層として、黒や濃い色の顔料を添加した塗料や接着剤を硬化させたものを利用することができる。
多層薄膜フィルムのどちらかの面、好ましくは対象物側を向く面は、ホログラム加工あるいは型押し加工されているとさらに好適である。多層薄膜フィルムとホログラムの光学効果あるいは型押しの光学効果が複合されると、偽造品の製造はきわめて困難である。なお、ホログラム加工は、文字や図柄などをエンボス加工によって形成するもので、エンボス面で反射、回折した光が多層薄膜フィルムで屈折することにより文字や図柄等が浮き上がって見えるようにしたものである。また、エンボス面を介して多層薄膜フィルムで反射、回折した光を見ることでもホログラム加工された文字や図柄等が浮き上がって見える。したがって、ホログラムの効果を示すとともに、多層膜のカラーシフトの効果が相乗される。
ホログラム加工あるいは型押し加工は、カラーシフトを示す多層薄膜フィルムに直接施されてもよい。しかしながら、カラーシフトがより明瞭に生じるような材質および構造を選択した場合、エンボス加工や型押加工を効果的に行えない場合がある。これは、カラーシフトが明瞭に生じるような材料の組み合わせでは、エンボス加工や型押加工を行った場合に、材料の弾性によって、加工による変形が復元してしまうのが第1の要因である。また、多層に積層された構造において、加工時に層間における僅かなずれが発生し、それによりエンボス加工や型押し加工の加工精度が低下することが第2の要因である。
このような場合、エンボス加工や型押加工に適した材質のフィルムを被加工層として多層薄膜に積層し、このフィルムにエンボス加工や型押加工を施せばよい。こうすることで、良好なカラーシフトの機能を得ると共に、意図するエンボス加工や型押加工を施すことができる。エンボス加工や型押加工に適した材質のフィルムは、1層または2層以上であってもよい。エンボス加工や型押加工に適した材質としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等が挙げられる。たとえば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等が挙げられる。これらの材料は、エンボス加工や型押し加工の加工跡が明瞭に残りやすい材質を有している。エンボス加工や型押加工に適した層は、吹きつけ、コーティング、転写、印刷等の方法で形成された層であってもよい。この態様によれば、カラーシフトとホログラムの両光学特性を最大限追求した構成を得ることができる。
この態様の製造方法としては、まずカラーシフトを生じさせるための層およびエンボス加工や型押加工を施すための層(被加工層)の出発材料を積層し、この積層体を延伸して多層薄膜とし、この多層薄膜にエンボス加工を加える例を挙げることができる。また、他の製造方法として、カラーシフトを生じさせるための多層薄膜部分を延伸技術により先に形成しておき、この多層薄膜部分の表面および/または裏面にエンボス加工や型押加工を施すための被加工層を吹きつけ、コーティング、転写、印刷等の方法により積層し、その後にエンボス加工や型押加工を施す例が挙げられる。このようにして、カラーシフトを示し、かつエンボス加工や型押加工を施された多層薄膜フィルムを得ることができる。
上述の態様において、エンボス加工や型押加工に適した材質の層(被加工層)の屈折率と、カラーシフトを生じさせるための多層薄膜の屈折率とは異なるので、両者の境界面で入射光は反射する。したがって、機能的な観点から見て、カラーシフトを生じる多層薄膜の一部として被加工層を捉えることができる。
また、エンボス面での反射および回折を大きくするために、被加工層と屈折率の異なる透明薄膜層(例えばZnSやTiO)を蒸着等の方法でエンボス面上に形成してもよい。
本発明では、前記識別媒体を対象物に固定する粘着層あるいは接着層に、有色、好ましくは黒色の顔料または染料が添加されているか、前記識別媒体の対象物に向いた面に有色、好ましくは黒色の印刷あるいは箔転写が施されていることを好ましい態様とする。このような態様によれば、多層薄膜フィルムの輝度がさらに高まって視認性が向上し、偽造品と本物の区別がきわめて容易になる。また、多層薄膜フィルムを支持体の内部に漉き込んだ場合にも明瞭に視認することができる。
本発明では、前記識別媒体を対象物に固定する有色、好ましくは黒色の顔料を含んだ粘着層あるいは接着層あるいは黒色印刷層と多層薄膜フィルムとの間に、蛍光材層あるいは蓄光材層が部分的に挟まれていることを好ましい態様とする。この構成の識別媒体は通常の光線を照射されている状態では、蛍光材層あるいは蓄光材層は、白色に見えているだけで、多層薄膜フィルムの金属光沢色だけがめだっているが、これにブラックライトや殺菌灯(波長240〜400nmの光線)を照射すると、逆に多層薄膜フィルムは反応しなくなり、蛍光材層あるいは蓄光材層が強い光、蛍光材または蓄光材の種類によっては色彩を帯びた光を放つ。ただし、蛍光材層あるいは蓄光材層は、単に粘着層あるいは接着層と多層薄膜フィルムとの間に挟んでも同様の効果を発揮することができる。このことを利用して、ブラックライトや殺菌灯を用いた真贋判定に用いることができる。
本発明では、支持体に部分的に切り込みを入れることも好ましい態様としている。たとえば、離型紙に支持体を、粘着層を介して積層し、この状態で押し型を用いて支持体および粘着層をハーフカットすることで切り込みを形成することが出来る。この場合、離型紙以外の部分がすべて切り離された状態になるが、粘着層は再結合するので支持体だけが切り離された状態で残る。こうした切り込みを有する識別媒体を対象物に貼着し、支持体を対象物から剥離すると、部分的に対象物に固着した粘着層に引っ張られて支持体が断裂する。このような構成により、廃棄されたパッケージから識別媒体を剥離して模造品に貼り付けて使用することが不可能となる。また、支持体だけでなく、多層薄膜に切り込みをいれてもよい。
本発明において、薄膜フィルムの出発材料を積層し積層体を得、その積層体を延伸して得られた多層薄膜フィルムを用いることは好ましい。カラーシフトを得る場合、一層の厚みは、0.05〜0.3μm程度に制御しなければならない。単層でこのような薄膜を得ることは、均一性を確保する点で高コストな技術を必要とされるが、ある程度の厚さのフィルムを多層に積層し、それを延伸により所定の厚さにまで薄くする技術では、この問題を解決することができる。特に、単層や少ない積層構造では、反射光の光量が足りないために、視認性の高いカラーシフトを得るためには数多くの層が積層された多層構造が必要とされるので、積層したものを延伸する積層延伸法が有利となる。また、延伸を用いた場合、層間の密着性を高めることができ、一体性の高い多層薄膜フィルムを得ることができる。また、材料を選択することで、延伸により屈折率に正または負の変化を生じさせることができ、この現象を利用することで、カラーシフトに適した屈折率差を有する複数の薄膜フィルムから構成された多層薄膜フィルムを得ることができる。なお、厚さの制御された薄い薄膜を製造する方法として、蒸着による方法があるが、多層に積層するには、層の数だけ蒸着装置に掛ける必要があり、手間がかかり、量産性およびコスト面で積層延伸法に劣る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の原理を説明するための多層薄膜フィルムを示す断面図である。
第2図は、本発明の原理を説明するための多層薄膜フィルムの選択反射を示す線図である。
第3図は、部分的に多層薄膜フィルムを貼り付けた識別媒体を示す平面図である。
第4図は、部分的に多層薄膜フィルムを貼り付け、他の部分を所定の角度から見たときの色彩と同等の色彩で印刷した識別媒体を示す平面図である。
第5図は、帯状に裁断した多層薄膜フィルムを部分的に開口部のある支持体で挟む状態を説明する斜視図である。
第6図は、支持体に挟まれた、帯状に裁断した多層薄膜フィルムが開口部から見えている識別媒体を示す平面図である。
第7図は、繊維状に裁断した多層薄膜フィルムを紙に漉き込んだ構造の識別媒体を示す平面図である。
第8図は、小片状に裁断した多層薄膜フィルムを紙に漉き込んだ構造の識別媒体を示す平面図である。
第9図は、多層薄膜フィルムにホログラム加工を施した状態を示す断面図である。
第10図は、従来のホログラム形成層の状態を示す断面図である。
第11図は、識別媒体を製造するための装置の概要を示す概念図である。
第12図は、紙材を得るためのドラムの概要を示す斜視図である。
第13図は、識別媒体の概要を示す斜視図である。
第14図は、識別媒体の概要を示す断面図である。
第15図は、識別媒体を備えた対象物の概要を示す斜視図である。
第16図は、多層薄膜フィルムにホログラム加工を施す前(A)と後(B)を示す断面図である。
第17図は、被加工層へのホログラム加工が施される前(A)と後(B)を示す断面図である。
第18図は、ホログラム加工が施される被加工層を備えた多層薄膜フィルムの対象物への固定構造を示す一例(A)と他の例(B)を示す断面図である。
第19図は、ホログラム加工が施される被加工層を備えた多層薄膜フィルムの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
多層薄膜フィルムは、特開2000−141567号公報、特開2000−326467号公報等に開示された公知の方法により製造することができる。たとえば、平均粒径が0.01〜2μmのシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の不活性粒子を0.001〜0.5重量%含有するポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる層(A層)と融点が210〜245℃のコポリエチレンテレフタレートからなる層(B層)とを交互に総数で11層以上積層し、A層とB層のガラス転移点(Tg)の差が40℃以上である積層体を得る。そして、この積層体をA層およびB層の各一層の厚みが0.05〜0.3μmになるように1軸方向に延伸する。
または、ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる層(A層)を101層、イソフタル酸12モル%共重合ポリエチレンテレフタレートからなる層(B層)を100層、交互に積層して総数201層の未延伸シートを作製する。このシートを140℃の温度で縦方向に3.5倍延伸し、さらに150℃の温度で横方向に5.7倍に延伸し、210℃で熱処理を行うと、全体の厚さが20μmの積層構造を得られる。
あるいは、平均粒径が0.01〜2μmのシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等のうちの1種の不活性粒子を0.001〜0.5重量%含有するポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる層(A層)とシンジオタクティックポリスチレンからなる層(B層)とを交互に総数で11層以上積層し、A層およびB層の各一層の厚みが0.05〜0.3μmであるように1軸方向に延伸してもよい。
延伸を行うことで、隣り合う層同士の密着性が高くなり、各層が一体化した多層構造を得ることができる。また、0.05〜0.3μmというような薄いフィルムを単体で製造するのは、膜厚や物性の均一性を確保するのが面倒であるが、積層したものを薄膜化するのは、その点で有利である。またこれにより、製造歩留まりの低減、製品間における特性のばらつきを抑えることができる。
また、樹脂材料によっては、延伸により屈折率が増大または減少する変化を示すものがある。よって、延伸により屈折率が増大するフィルム材料と減少するフィルム材料とを交互に積層したものを延伸すると、隣り合う層の屈折率の差が大きくなり、カラーシフトを示す材料としてより好ましい特性のものが得られる。延伸によって屈折率が増大する材料としては、PVC(ポリ塩化ビニル)が挙げられ、延伸によって屈折率が減少する材料としては、PMMA(アクリル)が挙げられる。
支持体は、ポリプロピレン、ポリエステル、PET、TAC、紙などで構成することができる。支持体には、多層薄膜フィルムを所定の方向(例えば正面)から見たときと同等の色彩(たとえば赤色)の印刷を施してもよい。その上に上記フィルムを配置し、接着剤、粘着剤あるいは熱転写により固着する。隠蔽シートは、金属箔、プラスチックシート、紙あるいは塗料などで構成することができる。
図3は、上記のようにして支持体30に多層薄膜フィルムからなる図柄20を固着した識別媒体10を示す図である。識別媒体10を視野角を変化させて眺めると、多層薄膜フィルムからなる図柄20の部分だけが種々の色に変化し、支持体30は変化しない。この変化の有無により図柄20の存在が目立つので、容易に模造品と区別することができる。
また、図3において、多層薄膜フィルムを支持体30とし、その表面にアルミ箔などの箔を転写して、箔が存在しない部分で図柄20を形成しても良い。このような構成においても識別媒体10を視野角を変化させて眺めると、多層薄膜フィルムからなる図柄20の部分だけが種々の色に変化し、箔は変化しない。この変化の有無により図柄20の存在が目立つので、容易に模造品と区別することができる。
また図4は、図3における識別媒体10において、多層薄膜フィルムを所定の方向から見たときと同等の色彩を図柄20の部分以外の部分に箔転写した識別媒体11を示す図である。識別媒体11を所定の方向から見ると、多層薄膜フィルムからなる図柄20と箔転写部31の境界ははっきりせず、どのような模様があるのかを視認しにくいが、視野角を徐々に大きくしていくと、図柄20の色がカラーシフトにより青色側へシフトし、図柄20と箔転写部31の色調の差が顕著になる。これにより、多層薄膜フィルムによって描かれた模様(図柄20)を明瞭に視認することができ、この変化の有無により容易に模造品と区別することができる。
図5は、帯状に裁断されたカラーシフトを示す多層薄膜フィルム21を、一方が開口部を有する2層に別れた支持体30aと30bの間に挟み込む製造方法によって、識別媒体12を得る場合の例を示している。図6は図5の製造方法によって作られた識別媒体12の完成図であり、帯状に裁断された多層薄膜フィルム21が支持体30aに形成された開口部から部分的に露出している状態を示す。こうして製造された識別媒体12は、単に多層薄膜フィルムの小片を粘着や接着で貼り付けた場合に比べて、識別媒体としての機能を損なうことなく、貼り付けた対象から剥がすことが困難であり、偽造防止効果が高い。なお、得られた識別媒体12の支持体30bに粘着剤を付加し、製品番号などを表面に印字することが可能なラベルとしてもよい。このようなラベルは、識別機能を有したシールとして、任意の物品に貼り付けて使用することができる。
以下、図5および図6に例示する識別媒体12を製造する方法の一例を説明する。図11は、識別媒体を製造するための装置の概要を示す概念図である。図12は、図11に示す装置の一部を示す斜視図である。図11には、支持体30aとして機能する紙材105の原料となるスラリー102が入った容器101、スラリー102に一部が浸かり、その表面にスラリー102を付着させ、紙材を漉き上げるためのドラム103、紙材を定着させ送り出すためのガイドローラ104、漉き上げられ、送り出された紙材105、紙材105に重ねられる多層薄膜フィルム107、多層薄膜フィルム107が巻かれたロール106、紙材105と多層薄膜フィルム107とを重ねて圧力を加える一対のガイドローラ108、多層薄膜フィルム107に別の紙材116を積層するためのドラム111、ドラム111で漉かれる紙材116の原料となるスラリー110を貯めた容器109、ドラム111で漉かれた紙材116を定着させるための圧力を加えるガイドローラ112、紙材−多層薄膜フィルム−紙材と積層された帯状の部材113が示されている。ここで、多層薄膜フィルム107は、図1に示すようなカラーシフトを示す部材である。
図12に示すように、ドラム103は、表面に目の細かい網材114を備えている。また、ドラム103の表面の一部は、突起115が形成されている。ドラム103が回転することで、網材114にスラリーが付着し、紙漉が行われる。ドラム111は、ドラム103における突起115が形成されていない構造を有している。なお、図では、記載を簡単にするために突起115が、ドラム103の円周方向に一列に形成されている構造が示されているが、通常はドラム103,111の幅は1m以上で、突起115は、幅方向に複数列配置されている。
ドラム103と111を所定の角速度で回転させ、同時にロール106から所定の速度で多層薄膜フィルム107を送り出すことで、紙材−多層薄膜フィルム−紙材と積層された帯状の部材113が連続的に得られる。ロール103の表面には、突起115が形成されているので、その部分では紙材が漉かれず、結果的に紙材105に点々と後述する開口部が形成されることになる。なお、開口部を表と裏の両面に設ける場合は、突起115をドラム111にも設ければよい。
図13は、帯状の部材113の概要を示す斜視図である。図13に示すように、帯状の部材113は、上側の紙材105と下側の紙材116の間に多層薄膜フィルム107を挟み込んだ構造となる。
紙材105には、一直線上に開口部(窓部)117が周期的に形成され,ている。開口部117は、ドラム103表面に形成された突起115において紙漉が行われないために形成される。多層薄膜フィルム107は、紙材105,116より幅が狭く、また開口部117に位置するように位置合わせが行われる。帯状の部材113は、開口部117から多層薄膜フィルム107が露出し、外部から視認できる構造を有している。帯状の部材113を適当な幅で切断することで、図5および図6に示す識別媒体12を得ることができる。なお、多層薄膜フィルム107の幅を開口部117の幅よりも広い、または狭い、あるいは同じ幅の構造としてもよい。
図7は繊維状に裁断された多層薄膜フィルム22を紙でできた支持体30に漉き込んで製造した識別媒体13を示している。このような識別媒体13は、抄紙の工程において原料液に粘性が出てきた段階で、多層薄膜フィルムの繊維22を所定の位置に載せ、さらに抄紙工程を続けることにより得ることができる。このような識別媒体13では、多層薄膜フィルムの繊維は表面には露出していないが、支持体30の表皮を透かして視ることができるので、明瞭に視角の変化にしたがって色が変化する現象を視認することができる。
図7の識別媒体13は、図11に示す装置を利用して製造することもできる。この場合、多層薄膜フィルム107として細長い形状のものを用い、紙材105または116の厚さを適当な厚さに調整すればよい。
図8は小片状に裁断された多層薄膜フィルムからなる識別片23を紙でできた支持体30に漉き込んで製造した識別媒体14を示している。製造方法は図7に示すものと同じである。また、小片状の多層薄膜フィルムの対象物側に有色、好ましくは黒色の印刷、あるいは箔転写をしておくとさらに輝度が上がり良好なカラーシフトを観察することができる。
図8に示す態様において、光吸収層を挟んで両側に多層薄膜フィルムを備えた両面構造を識別片23に採用することが好ましい。以下、この例を説明する。図14は、光吸収層を挟んで両側に多層薄膜フィルムを備えた構造を備えた識別媒体の断面構造を示す断面図である。図14に示す識別媒体は、光吸収層121の両面にカラーシフトを示す多層薄膜フィルム122,123を備えている。そして多層薄膜フィルム122、123の最表面には、エンボス加工が行われる被加工層124,125が形成されている。
図14に示す識別媒体の製造方法の一例を説明する。まず、多層薄膜フィルム122,123を用意する。多層薄膜フィルム122,123は、カラーシフトを生じさせるための複数のフィルムと、エンボス加工が容易に行えるフィルムとを積層し、延伸およびエンボス加工を行うことで作製する。次に、2つの多層薄膜フィルムを黒い顔料を混ぜた接着剤で接着する。この接着剤が硬化することで、光吸収層121が形成される。なお、エンボス加工を施すための被加工層は、多層薄膜フィルムを延伸後に、吹き付け、コーティング、転写、印刷等の方法により積層し、その後にエンボス加工をしてもよい。また、被加工層を設けずに、多層薄膜フィルムに直接エンボス加工を施してもよい。
図14に示す断面構造が得られたら、それを細かく切断し、識別片23を得る。この識別片23は、両面が同じカラーシフトを示すので、表裏を気にせず利用することができる。このような特徴は、細かな識別片23を支持体30に分散させた状態で漉き込む製造法を採用する場合に有用となる。
以下、図14に示す両面構造を有する識別片の他の応用例を説明する。図15は、本発明の識別媒体を利用した対象物の一例を示す斜視図である。ここで、対象物としては、たとえば会員証カード等が挙げられる。この態様では、カード等の対象物131が識別機能を有する図柄132を備えている。図柄132は、図14にその断面構造を示す識別片23が所定の形状の領域に多数ランダムに固定されることで構成されている。この態様では、識別片23がカラーシフトを示すことで、視野角の変化に従って図柄132が浮かび上がって見え、それにより識別を行うことができる。
図15に示す態様の作製方法の一例を説明する。まず、図14にその断面構造を示す識別片23を多数用意する。次に対象物131の表面に対して、図柄132の形状に接着剤を塗布または印刷し、細かい多数の片としたフレーク状(片状)の識別片23を対象物131の表面に散布する。散布された多数の識別片23は、図柄132の部分に接着剤の機能によって付着する。その後、図示しないローラ等で軽く押さえ、識別片23の一方の面、つまり図14に図示する構造でいうところのエンボス加工が施される被加工層124または125の面が支持体131の表面と平行になるようにする。その後、接着剤を硬化させることで、識別片23が図柄132の部分に散らばった構造が得られる。この作製工程において、識別片23は両面においてカラーシフトを示すので、その表裏が問題とならない。
つぎに、多層薄膜フィルムとホログラムまたは型押しを組み合わせた例について、図9および図10(従来例)を参照して説明する。従来のホログラムのシール材は、図10にその代表例を示すように、ホログラム形成層41にエンボス加工を施し、エンボス面にアルミ等の反射層60を設け、さらに、その対象物側に粘着材層50、表面側にポリエチレンテレフタレート(PET)等の保護層70を設けている。
これに対し、多層薄膜フィルムとホログラムまたは型押しの組合せの場合は、図9に示すように、多層薄膜フィルム24にエンボス加工40を施し、対象物側に粘着層50を設けるだけでよく、保護層と反射層を設ける必要がない。さらにカラーシフトの効果を上げるためには、粘着層に有色、好ましくは黒色の顔料または染料を混ぜるとよい。あるいは、エンボス面40に有色、好ましくは黒色の印刷をするとよい。
以下、ホログラムを形成する他の例を説明する。図16は、エンボス加工によりホログラムを形成した多層薄膜フィルムの作製工程を示す断面図である。まず、屈折率の異なる2種類の光透過性のフィルムを交互に多層に積層し、それを延伸することで図16(A)に示す多層薄膜フィルム142を得る。次にホログラムを構成するエンボス模様を付けるための図示しない型を押付け、エンボス加工が施された多層薄膜フィルム143を得る。図には、全ての層が変形した状態が示されているが、一部の層に加工の影響が及び、一部の層が変形している状態であってもよい。
カラーシフト特性を追求した構成とした場合、エンボス模様を形成し難い場合がある。たとえば、エンボス模様を付けても、加工された形状が材料の弾性により変形し、意図したエンボス模様がぼけてしまう場合がある。また、明確なカラーシフトを得るには、多層薄膜フィルムの積層枚数を数百層といった多層にする必要があるが、エンボス加工時に層がずれてしまい、意図したエンボス模様が形成できない場合がある。
以下、このような不都合を避けることができる態様を説明する。図17は、エンボス加工を施した多層薄膜フィルムの作製工程を示す断面図である。まず、多層薄膜フィルム142の出発層となる積層構造を得、その上にエンボス加工を施すための被加工層となる光透過性フィルム144を積層し、延伸により両者を密着させ、また所定の厚さにする。こうして図17(A)に示す、主にカラーシフト機能を示す多層薄膜フィルム142と、後にエンボス加工が施される光透過性フィルム144とが積層された状態を得る。光透過性フィルム144の材料としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が利用できる。
次にエンボス加工を施すための図示しない型を用いて光透過性フィルム144に対してエンボス加工を施し、ホログラム機能が付与された光透過性フィルムからなる被加工層145を得る。光透過性フィルム144は、エンボス加工が施し易い材質を選択できるので、主に光透過性フィルム144にホログラムを構成するエンボス加工が施される(図17(B))。製造方法としては、まず延伸により多層薄膜フィルム142を得、そこにコーティング等の方法でエンボス加工が施される光透過性フィルム144を積層し、しかる後にエンボス加工を施す方法を採用することもできる。なお、図では被加工層である光透過性フィルム144のみにエンボス加工の影響が及んでいるように表現されているが、多層薄膜フィルム142の一部または全部の部分にエンボス加工の影響が及ぶ場合もある。
この態様では、カラーシフトの機能は多層薄膜フィルム142が主に担い、ホログラムの機能は被加工層145が主に担う。被加工層145としては、エンボス加工を施しやすい材料を選択できるので、意図するホログラムを形成することができる。この構成では、エンボス加工や型押加工に適した材質のフィルムと、カラーシフトを生じさせるための多層膜との境界面において、屈折率の違いによる反射が起こる。そのため、エンボス加工や型押加工に適した材質のフィルムは、機能的にカラーシフトを示す多層薄膜フィルム146の一部と成り得る。つまり、ホログラムが形成される被加工層145は、カラーシフトを示す多層薄膜フィルム146の一部として把握することもできる。なお、エンボス面での反射、屈折を大きくするために、被加工層に接して被加工層と屈折率の異なる透明薄膜層(例えば、ZnSやTiO)を蒸着等の方法により形成してもよい。
次に、図17(B)に示す識別媒体を対象物に固定する態様について説明する。図18は、識別媒体の対象物への固定状態を示す断面図である。図18(A)には、ホログラムが形成された被加工性145を含んだ多層薄膜フィルム146を接着層152によって対象物151に貼り付けた状態が示されている。この態様では、ホログラムが形成された被加工層145が最上面に位置している。なお、接着層152は、有色、好ましくは黒色の顔料を混ぜた接着剤を硬化させたものであり、光吸収層として機能する。
図18(B)には、ホログラムが形成された被加工層145に接して接着層152が位置し、接着層152によって多層薄膜フィルム146が対象物151に固定された状態が示されている。
図18(B)に示すように、ホログラムが形成される被加工層145は、カラーシフトを示す層142の対象物151側に存在していてもよい。ただし、視認する側から見て光吸収層の手前側にホログラムが形成される被加工層が存在している必要がある。
ホログラムが形成された被加工層は、識別媒体の両面に備えてあるのでもよい。図19は、他の識別媒体の断面構造を示す断面図である。図19に示す構造では、カラーシフトを示す多層薄膜フィルム142の両面にホログラムが形成された被加工層161を備えている。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように本発明は、支持体の表面の一部に、視野角の変化にしたがって色が変化する多層薄膜フィルムを固定し、上記支持体の上記フィルム以外の部分に、フィルムを所定の方向から見たときの色彩と同等の色彩の印刷を施しているから、容易に偽造することができないとともに、真偽の識別が容易かつ確実であり、しかも、製造コストを低減することができる等の優れた効果を奏し、商品を梱包したパッケージ、パスポート、カード、紙幣、金券、証券、証書、商品券、絵画、切符、公共競技投票券等の識別を行うための識別媒体に適している。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】




【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に識別表示を光学的に認識可能に設けて対象物の真正性を識別するための対象物の識別媒体であって、支持体の一部に、反射特性が視野角に依存する光の選択反射を示す多層薄膜フィルムを固定したことを特徴とする対象物の識別媒体。
【請求項2】
対象物に識別表示を光学的に認識可能に設けて対象物の真正性を識別するための対象物の識別媒体であって、反射特性が視野角に依存する光の選択反射を示す多層薄膜フィルムの表面に、その一部を隠蔽する隠蔽シートを固定したことを特徴とする対象物の識別媒体。
【請求項3】
前記多層薄膜フィルムを所定の方向から見たときの色彩と同等の色彩を印刷あるいは箔転写によって施した部分を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の対象物の識別媒体。
【請求項4】
前記多層薄膜フィルムの固定が、帯状または繊維状に裁断された前記多層薄膜フィルムを2層に分けられた支持体の間に挟むことにより行われ、前記2層に分けられた支持体のいずれか1層以上に、前記裁断された多層薄膜フィルムを視認するための開口部が開けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の対象物の識別媒体。
【請求項5】
前記多層薄膜フィルムの前記固定が、帯状または繊維状もしくは小片状に裁断された前記多層薄膜フィルムを前記支持体を抄紙する際に内部に混入させることにより行われることを特徴とする請求項1または3に記載の対象物の識別媒体。
【請求項6】
前記多層薄膜フィルムの前記固定が、帯状、小片状または特定の模様に裁断された前記多層薄膜フィルムを前記支持体の表面に転写貼りつけすることにより行われることを特徴とする請求項1または3に記載の対象物の識別媒体。
【請求項7】
前記多層薄膜フィルムにホログラム加工あるいは型押し加工がされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の対象物の識別媒体。
【請求項8】
前記識別媒体を対象物に固定する粘着層あるいは接着層に、有色、好ましくは黒色の顔料あるいは染料が添加されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の対象物の識別媒体。
【請求項9】
前記識別媒体の対象物に向いた面に有色、好ましくは黒色の印刷が施されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の対象物の識別媒体。
【請求項10】
前記識別媒体と前記有色、好ましくは黒色の顔料を含んだ粘着層あるいは接着層あるいは黒色印刷層との間に、蛍光材層あるいは蓄光材層を部分的に挟んだことを特徴とする請求項8または9に記載の対象物の識別媒体。
【請求項11】
前記識別媒体に部分的に切り込みを入れてあることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の対象物の識別媒体。
【請求項12】
第1の多層薄膜フィルムと、
第2の多層薄膜フィルムと、
前記第1の多層薄膜フィルムと前記第2の多層薄膜フィルムとの間の光吸収層と、
を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の対象物の識別媒体。
【請求項13】
前記第1の多層薄膜フィルム側および前記第2の多層薄膜フィルム側の両面において、視野角に依存する光の反射特性を有することを特徴とする請求項12に記載に対象物の識別媒体。
【請求項14】
前記多層薄膜フィルムに反射特性が視野角に依存する多層構造の他に、ホログラム加工または型押加工を行なうための被加工層が含まれていることを特徴とする請求項7に記載の対象物の識別媒体。
【請求項15】
前記被加工層が熱硬化性樹脂、電離放射線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂から選ばれた材料から構成されていることを特徴とする請求項14に記載の対象物の識別媒体。
【請求項16】
前記多層薄膜フィルムは、薄膜フィルムを多層に積層し、延伸したものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の対象物の識別媒体。

【国際公開番号】WO2004/024439
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535963(P2004−535963)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011716
【国際出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】