説明

多層薄膜粒子の製造

【課題】多層構造を維持して材料源の高回収率を提供する、多層構造を有する薄膜から粒子を製造する方法が求められる。
【解決手段】薄膜から粒子を製造する方法が提供される。本方法は、顆粒を用いて薄膜を粉砕する工程を含み、粒子に薄膜の構造及び/又は1つ以上の性質を維持させる。さらに、本方法は、材料源の高回収率を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、粒子の製造方法、より詳細には、多層構造を有する粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
粒子、粉末などの製造は一般的なものである。典型的な製造方法としては、ガス噴霧法、ボールミル、ゾルーゲル法による沈殿などの使用が挙げられる。しかしながら、幾つかの場合には、薄膜からの粒子の製造が求められる。例えば、多層構造を有する薄膜は、粒子形態で有効な場合がある。さらに、多層構造を有する薄膜は、そのような材料の粉砕及び/又は従来の製粉による取り扱いに対して比較的弱い場合があり、結果として多層構造の損傷及び/又は破壊につながる。したがって、多層構造を維持して材料源の高回収率を提供する、多層構造を有する薄膜から粒子を製造する方法が求められるであろう。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
多層構造を有する薄膜の多層構造を維持しながら、その薄膜から粒子を製造する方法が提供される。幾つかの場合には、本方法は、高い割合の材料源(つまり、薄膜)を粒子の形態で回収する能力をさらに含む。
【0004】
本方法は、基材を準備する工程、次に多層構造を有する薄膜を基材に形成する工程を含むことができる。その後、薄膜は基材から無傷で取り外され、そして薄膜は第一の硬度を有する。第一の硬度より低い第二の硬度を有する顆粒が準備される。さらに、顆粒は、すすぎ液に対して十分に溶解性である。
【0005】
無傷の薄膜は、顆粒で粉砕されて粒子になり、そして粒子は薄膜の多層構造を保持している。粒子が形成された後、粒子及び顆粒は、すすぎ液ですすがれ、顆粒は、すすぎ液に溶解し、そして粒子は回収される。幾つかの場合には、薄膜の70%超が粒子の形態で回収され、一方で、他の場合には、薄膜の80%超が回収される。さらに他の場合には、薄膜の85%超が粒子の形態で回収される。
【0006】
薄膜は、粒子に必要な任意の薄膜(例えば、全方向構造色である薄膜)でよい。全方向構造色は、複数の酸化物層、複数のポリマー層、又はそれらの組み合わせから形成された多層構造を有することができる。
【0007】
顆粒は、塩、ポリマー、及び/又はバイオマスから形成されることができる。例示及び説明のみを目的とするが、顆粒は塩でよく、そしてすすぎ液は水でよい。別の態様では、顆粒は、ナイロン、テフロン(登録商標)(Teflon)、ポリウレタンなどのようなポリマーでよい。さらに、バイオマスの形態の顆粒は、木材、サトウキビ(sugarcane)、ソルガム(sorghum)、ヤナギ(willow)、ポプラ(poplar)、トウモロコシ(corn)、麻(hemp)、スイッチグラス(switchgrass)、及び/又はススキ(miscanthus)から形成されることができる。
【0008】
粒子は、フレークの形態であるかどうかを問わないが、上及び/又は下面、並びに厚さを有する。上及び/又は下面は、長さ及び幅を有してよく、そしてフレークは、厚さに対する上面幅の比が5を超えてよい。幾つかの場合には、フレークは、厚さに対する上面幅の比が10を超えてよく、一方で、他の場合には、フレークは、厚さに対する上面幅の比が20を超えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】多層構造を有する薄膜の概略図である。
【図2】多層構造を有するフレークの形態の粒子の概略図である。
【図3】本発明の実施形態による方法を示す略図である。
【図4】従来法(図4A)と本発明の実施形態による方法(図4B)から形成された多層構造を有する薄膜から形成された粒子の走査電子顕微鏡像の比較である。
【図5】粒径分布における粉砕時間の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、薄膜の好ましい性質を維持し、かつ材料源(つまり、薄膜)の高回収率を可能にしながら、薄膜から粒子を製造する方法を提供する。それ故に、本発明は、粒子の製造方法として有用である。
【0011】
本方法は、薄膜を準備する工程、及びすすぎ液中での十分な溶解性を有する顆粒を準備する工程を含むことができる。薄膜は、第一の硬度を有してよく、そして顆粒は、第一の硬度より低くても低くなくてもよい第二の硬度を有してよい。また、顆粒は、すすぎ液に対して十分に溶解性である。薄膜は、所定の時間に亘って、及び/又は所望の粒径が得られるまで、顆粒を用いる粉砕に供される。その後、粒子及び顆粒は、すすぎ液ですすがれて、結果として顆粒は、溶解し、すすがれるか、又は流され、一方で、粒子は回収される。
【0012】
幾つかの場合には、本方法は、基材を準備する工程及び基材に薄膜を形成する工程、次に、基材から薄膜を無傷で取り外す工程をさらに含むことができる。次に、この無傷の薄膜は、上記の通り、顆粒を用いる粉砕工程に移されて、粉砕を受ける。本方法は、薄膜である材料源の70%超を粒子の形態で回収させることを可能にする。幾つかの場合には、材料源の80%超が粒子の形態で回収され、さらに他の場合には、材料源の85%超が回収される。
【0013】
薄膜は、当業者に知られている任意の薄膜でよく、多層構造を有するかどうかを問わない。例示及び説明のみを目的とするが、薄膜は、複数の酸化物層、複数のポリマー層、それらの組み合わせなどから形成された全方向構造色であることができる。
【0014】
顆粒は、薄膜より低い硬度を有する任意の適切な材料(例示及び説明のみを目的とすると、塩、ポリマー、バイオマス、それらの組み合わせなど)から選択されることができる。例えば、顆粒は塩でよく、すすぎ液は水でよく、そして顆粒は、ナイロン、テフロン(登録商標)(Teflon)、ポリウレタンなどのようなポリマー;ススキ、スイッチグラス、麻、トウモロコシ、ポプラ、ヤナギ、ソルガム、サトウキビ、様々な異なる種類の木材の1種などのようなバイオマス;及び/又はそれらの組み合わせでよい。
【0015】
本方法は、上面及び/又は下面、並びに厚さを有するフレークの形態である粒子を製造することができる。上面は、長さ及び幅を有してよく、そしてフレークは、厚さに対する上面幅の比が5を超えるか、10を超えるか、及び/又は20を超えることができる。
【0016】
次に図1を検討すると、多層構造を有する薄膜の概略図が参照数字10で概ね示されており、薄膜10は、複数の層110、120、130、140などを有している。多層構造は、かなり多数の理由、用途などのために、例示及び説明のみを目的とすると全方向構造色として、形成されるか、及び/又は使用されることができる。薄膜は、当業者に知られている任意の方法又はプロセス(例えば、スパッタリング、プラズマ真空堆積、ゾル−ゲル処理、多層加工などを含む)により形成されることができる。幾つかの場合には、膜が粒子へと微細化又は破砕された後も薄膜10の多層構造及び/又は1つ以上の性質が維持されなければならないという観点において、多層構造は壊れ易い。つまり、薄膜10の構造及び/又は1つ以上の性質は粒子によって維持されることが好適及び/又は重要である。
【0017】
例えば、図2において、薄膜10の多層110、120、130、140を維持したフレーク20の形態の粒子が図示されている。この態様では、粒子20は、薄膜10と類似又は同一の性質を提供することができる。例示及び説明のみを目的とすると、薄膜10が全方向構造色であるならば、粒子20は、薄膜10と類似又は同一の反射性を示すことができる。図2で分かる通り、粒子は、長さ「l」及び幅「w」を有する上面22を有することができる。本発明のために、長さは、上面22を横切る最長の物理的寸法として定義されており、そして幅は、上面22の長さに沿って最も幅が広い物理的寸法として定義されており、幅寸法は、長さ寸法の方向及び測定値に対して直角に得られる。また、粒子20は厚さ「t」を有する。
【0018】
本方法は、多層構造110、120、130、140が複数の粒子20により維持されるように、薄膜10から粒子を製造することを可能にする。さらに、粒子20は、厚さtに対する上面22寸法の好ましい比を維持するか、又は提供することができる。例えば、粒子20は、厚さtに対する上面幅wの比が5を超えることができる。或いは、粒子20は、厚さに対する上面幅の比が10を超え、そして幾つかの場合には20を超える。
【0019】
次に図3を検討すると、本発明の実施形態による方法の概略図が概ね参照数字30で示される。本方法は、工程300で基材を準備すること、及び工程310で基材に薄膜を形成することを含む。工程320では、薄膜は、基材から無傷で取り外され、そして工程330では、適切な顆粒が選択されて準備される。本方法は、顆粒を用いて粉砕されることになる薄膜を単純に準備する工程を含むことができるので、工程300〜320は必須ではないことを理解されたい。
【0020】
薄膜は、工程340で粒子を形成する顆粒を用いて粉砕され、そして粒子及び顆粒は、工程350で準備されるすすぎ液ですすがれる。上記の通り、顆粒は、すすぎ液中で十分に溶解性であり、それ故に、工程350ですすぎ液を用いて粒子及び顆粒をすすぐと、顆粒は溶解して、洗浄されるか、又は流し出される。それにより、粒子は工程360で回収されることができる。
【実施例】
【0021】
本発明をより詳細に説明するか、及び/又は教示するために、薄膜を粉砕して、粒子をフレークの形態で形成するための方法の一例を下記に示す。
【0022】
実施例
チタニア、シリカ、及びハフニアから形成された多層構造色の膜を基材上に調製し、次に基材から無傷で回収した。塩化ナトリウム塩をシグマ・アルドリッチ・ケミカル(Sigma-Aldrich Chemical)社(ミズーリ州、セントルイス)から購入した。塩化ナトリウム塩粉末を加えながら、得られた薄膜を瑪瑙乳鉢に入れた。約80質量%の塩及び20質量%の薄膜を瑪瑙乳鉢に入れた。瑪瑙乳棒を用いて薄膜及び塩を粉砕し、8〜12分の粉砕後、蒸留水を乳鉢に入れ、その溶液を一連の積層ステンレス鋼ふるい中に注いだ。それを通して蒸留水を3回を加えるか、又は流すことにより、塩をふるいから除去した。この積層ふるい(それは、上部から下部まで50、30、20及び15μmのカットオフ径/孔を有する)を用いて、粒子の定寸を制御した。最後に、粒子を集めて、個別のガラス瓶へ移し、次に走査電子顕微鏡(SEM)分析などのために、回収された材料の量を決定するために使用した。さらに、塩を加えずに、多層構造色膜の直接粉砕により得られた粒子を調製して、対象サンプルとして役立てた。
【0023】
次に図4を検討すると、2つのSEM像は、塩を加えずに形成した粒子(図4A)及び塩を加えて形成した粒子(図4B)について提供されている。図4Aに示す通り、画像中で矢印により強調した粒子は、図4Bに示した粒子と比較して激しい粉砕を示し、そして全方向構造色性を有していない。一方で、図4Bに示した(塩の追加を利用して形成した粒子である)粒子は、フレークの外観を有しており、実際に、元の薄膜内に存在していた多層構造を未だに有していた。さらに、本発明の対象ではないとしても、バインダーと合わせられた場合の粒子は、全方向構造色性を有する塗料を提供した。
【0024】
粒径分布における粉砕時間の影響を図5のグラフに示す。15〜50μmの粒径範囲にある粒子の全収率は約90%であり、その粒径分布は、粉砕時間が長くなるにつれて、より小さい粒径にシフトした。それ故に、粉砕時間を単純に調整することにより、粒径分布の制御を達成できる。
【0025】
本明細書に存在する教示の観点において、当業者が本発明の多数の改良及び変化を直ぐに分かることを理解されたい。例えば、本発明は、主として多層構造を有する薄膜について説明されたが、単層構造を有する薄膜であるものの、フレークの形態の粒子及び/又は薄膜と同じ性質を有する粒子が必要とされている薄膜にも本発明を利用できる。それ故に、前述の内容は、本発明の特定の実施形態の説明であるが、その実施における制限を意味するものではない。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定するものであり、全ての均等を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造を有する薄膜から粒子を製造する方法であって、前記方法は、薄膜の多層構造を維持しながら粒子の高回収率を与えており、そして前記方法は:
基材を準備する工程;
多層構造を有する薄膜を該基材に形成する工程;
該基材から第一の硬度を有する無傷の薄膜を取り外す工程;
該第一の硬度より低い第二の硬度を有する顆粒を準備する工程であって、該顆粒は、すすぎ液に対して十分に溶解性である工程;
該顆粒で該無傷の薄膜を粉砕して粒子にする工程であって、該粒子は該薄膜の多層構造を保持している工程;及び
該すすぎ液中で該粒子及び該顆粒をすすぎ、該顆粒を該すすぎ液に溶解して、該粒子を回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記薄膜の70%超を前記粒子の形態で回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄膜の80%超を前記粒子の形態で回収する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜の85%超を前記粒子の形態で回収する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜は、全方向構造色多層構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記全方向構造色多層構造は、複数の酸化物層である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記全方向構造色多層構造は、複数のポリマー層である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記顆粒は、塩、ポリマー及びバイオマスから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記顆粒は塩であり、そして前記すすぎ液は水である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオマスは、ススキ、スイッチグラス、麻、トウモロコシ、ポプラ、ヤナギ、ソルガム、サトウキビ及び木材から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子は、上面及び厚さを有するフレークの形態であり、該上面は、長さ及び幅を有し、そして該フレークは、厚さに対する上面幅の比が5を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フレークは、厚さに対する上面幅の比が10を超える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フレークは、厚さに対する上面幅の比が20を超える、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125763(P2012−125763A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−274895(P2011−274895)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】