説明

多層配線構造体の製造法

【目的】金属配線の腐食およびポリイミドの劣化を防止し、かつ簡便な方法で多層配線構造体を得ることができる多層配線構造体の製造法を提供する。
【構成】パターンが形成された配線層を有する基板上に、ラダーシリコーン樹脂層および該ラダーシリコーン樹脂層上に感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層を形成し、スルーホールを形成した後、熱処理し、次いで該熱処理により生成したポリイミド系樹脂層上に上層配線層を形成する多層配線構造体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多層配線構造体の製造法に関し、さらに詳しくは低誘電率高耐熱性絶縁膜であるポリイミドと低抵抗の銅などの金属配線を有する多層配線構造体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高密度配線板としては銅とポリイミドからなる配線基板が使用されている。この配線基板は、シリコン基板やセラミック基板の上に低誘電率のポリイミドと低抵抗の銅を、半導体の配線製造プロセスと同様の方法で微細加工して製造されるため、きわめて高い性能を有する(特開昭57−181857号公報等)。しかしながら、銅などの金属配線とポリイミド前駆体とを接触させて加熱硬化して多層配線構造体を形成すると、金属配線の腐食とポリイミドの劣化を生じるという問題があった。この問題を解決する方法として、不活性なクロムなどの金属や、SiO2やSi34などの不活性な膜を形成した上にポリイミド前駆体ワニスを塗布して加熱硬化するという方法が提案されている。しかし、これらの方法では大幅な工程増加が生じるという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の従来技術の問題点を解決し、金属配線の腐食およびポリイミドの劣化を防止し、かつ簡便な方法で多層配線構造体を得ることができる多層配線構造体の製造法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、パターンが形成された配線層を有する基板上に、ラダーシリコーン樹脂層および該ラダーシリコーン樹脂層上に感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層を形成し、スルーホールを形成した後、熱処理し、次いで該熱処理により生成したポリイミド系樹脂層上に上層配線層を形成する多層配線構造体の製造法、該製造法において、感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層の現像液により感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層の現像とラダーシリコーン樹脂層のエッチングを同時に行う多層配線構造体の製造法および前記製造法において、ラダーシリコーン樹脂が一般式(I)
【化2】


(式中、R1およびR2はフェニル基または低級アルキル基を意味し、n個のR1およびR2はそれぞれ同じでもよく異なっていてもよく、nは20〜1000の整数を示す)で表されるラダーシリコーン樹脂である多層配線構造体の製造法に関する。
【0005】ラダーシリコーン樹脂は、既に公知の化合物であり、たとえば、フェニル基または低級アルキル基を有するトリクロロシランを公知の方法によって加水分解し、さらに水酸化カリウム、カルボジイミド類、クロロギ酸エステル類などの縮合触媒を必要に応じて用い、縮合させることにより合成される。本発明に用いられるラダーシリコーン樹脂は上記の一般式(I)で表される樹脂が好ましく、この樹脂は、通常、芳香族系の有機溶剤、例えばベンゼン、トルエン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、オルトジメトキシベンゼンなどの単独の溶剤またはこれらを2種類以上混合した溶剤に溶解させたワニスとして使用される。該ラダーシリコーン樹脂ワニスの市販品としては、例えばSQ−1000(日立化成工業社製製品名)などが挙げられる。ラダーシリコーン樹脂層は上記ラダーシリコーン樹脂ワニスを、例えば配線層を有する基板上にスピン塗布し、ホットプレート、温風式乾燥器等で100〜400℃の範囲で熱処理し、完全に溶剤を除去して得られる。該ラダーシリコーン樹脂層の膜厚は通常0.1〜20μmの範囲とされる。
【0006】感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物も既に公知の組成物であり、ポリイミド系樹脂前駆体および感光成分を含むものである。ポリイミド系樹脂前駆体とは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得たポリアミド酸系樹脂で、これらの樹脂を熱処理すると、ポリイミド系樹脂となる。テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。ジアミンの例としては、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどがあげられる。感光成分としては、ビスアジド化合物、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、アリルアミンなどがあげられる。この組成物は、紫外線などの光照射により、光照射部と非照射部において現像液に対する溶解性に差を生じる。この感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物の市販品としては、例えばPL−1035(日立化成工業社製製品名)などが挙げられる。絶縁膜としての感光性ポリイミド系樹脂膜は、上記感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物を配線層を有する基板上に、例えばスピン塗布して感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層とし、ホットプレート、温風式乾燥器等で100〜350℃の範囲で熱処理し、脱水閉環することにより生成される。該感光性ポリイミド系樹脂組成物層の膜厚は通常2〜50μmとされる。
【0007】本発明に用いられる感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜の現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよいが、感光性ポリイミド系樹脂前駆体の非溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水などと混合して用いることもできる。この現像液は、感光性ポリイミド系樹脂前駆体のみならず、ラダーシリコーン樹脂をも溶解するため、感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜の現像とラダーシリコーン樹脂層のエッチングを同時に行うことが好ましい。
【0008】以下、本発明の多層配線構造体の製造法の一例を図1に示す製造工程a〜gにより説明する。まず、基板1上に銅等の導体金属層を形成し、周知のフォトリソグラフィ技術により、所定のパターンが形成された第1配線層2を形成する(工程a)。次に、第1配線層2が形成された基板1上にラダーシリコーン樹脂ワニスを回転塗布した後、所定の温度(例えば200〜250℃)でプリベークを行い、第1層ラダーシリコーン樹脂層3を形成する(工程b)。
【0009】次に、このラダーシリコーン樹脂層3上に、第1層感光性ポリイミド系樹脂前駆体ワニスを回転塗布した後、所定の温度(例えば80〜120℃)でプリベークを行い、第1層感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4を形成する(工程c)。次に、感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4上にマスク5を載置し、絶縁膜として必要な部分のみに紫外線を照射する(工程d)。次に、現像液により、未照射部分の感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4の現像と未照射部分に対応した部分のラダーシリコーン樹脂層3のエッチングを同時に行ってスルーホール6を形成し、この部分の第1配線層2を露出させ、次いで例えば300〜400℃の温度で熱処理を行い、ラダーシリコーン樹脂層3の溶剤を完全に除去し、かつ感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4を感光性ポリイミド系樹脂膜7とする(工程e)。
【0010】次に、上記スルーホール6に、蒸着、メッキ等により銅等の導体金属層を形成し、公知のフォトリソグラフィー技術により、第2配線層8を形成して(工程f)二層配線構造体とする。さらに上記の工程b〜fと同様の工程を行って第2層ラダーシリコーン樹脂層9および第2層感光性ポリイミド系樹脂膜10を形成し、さらに第3配線層11を形成し、三層配線構造体としてもよい(工程g)。さらに多層の配線構造体を製造する場合には工程gを繰返すことにより任意の層数を有する多層配線構造体を得ることができる。本発明において、基材には、例えば、シリコン基板、セラミック基板等が用いられ、また配線には銅、銀などの導体金属が用いられる。
【0011】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1図1の製造工程a〜gに従って二層配線構造体を製造した。まず工程aにおいて、セラミック基板1上に蒸着により銅箔層(厚さ1μm)を形成し、周知のフォトリソグラフィ技術により、銅からなる所定のパターンの第1配線層2を形成した。
(1)銅蒸着条件装置:電子ビーム加熱式蒸着装置(神港精機社製)
蒸着時気圧:2×10-5Torr基板加熱:200℃(2)銅の配線パターン形成条件レジスト:ポジレジスト、膜厚2μm銅エッチング条件:過硫酸アンモニウム90g/lおよび塩化アンモニウム6g/lの混合水溶液をエッチング液とした。エッチング時間は2分次に工程bにおいて、第1配線層2が形成された基板1上に、ラダーシリコーン樹脂ワニス(SQ−1000、日立化成工業社製商品名)を回転塗布した後、オーブンで150℃で30分、さらに250℃で60分プリベークして層厚1μmのラダーシリコーン樹脂層3を形成した。
【0012】次に工程cにおいて、感光性ポリイミド系樹脂前駆体ワニス(PL−1035、日立化成工業社製商品名)を回転塗布した後、90℃で30分オーブンでプリベークを行い、膜厚9μmの感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4を形成した。次に工程dにおいて、感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4およびラダーシリコーン樹脂層3が必要な部分に光が当たるようなマスク5を使用して紫外線を300mJ/cm2として照射した。その後、N−メチル−2−ピロリドンを3容およびメタノールを2容の割合で混合した混合液を現像液として浸漬法で、120秒間感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜4の現像とラダーシリコーン樹脂層3のエッチングを行った。
【0013】次いで工程eにおいて、140℃で30分、200℃で30分および350℃で60分加熱処理し、スルーホール6が形成されたポリイミド系樹脂膜7とラダーシリコーン樹脂層3を得た。次に工程fにおいて、ポリイミド系樹脂膜7上に蒸着より銅箔層(厚さ1μm)を形成し、周知のフォトリソグラフィ技術により銅からなる所定のパターンの第2配線層8を形成した。得られた二層配線構造体の配線には腐食は見られず、断線も生じなかった。また感光性ポリイミド系樹脂膜に劣化は生じなかった。
【0014】比較例1実施例1において、ラダーシリコーン樹脂層3を形成しなかった以外は実施例1と同様にして行い、二層配線構造体を製造した。このときの配線には腐食が発生し、断線が生じた。また感光性ポリイミド系樹脂膜は劣化してピンホールが発生したため、第1配線層と第2配線層の間にリーク電流が生じた。
【0015】
【発明の効果】本発明の多層配線構造体の製造法によれば、金属配線の腐食およびポリイミドの劣化のない体多層配線構造体を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線構造体の製造法の一例を示す製造工程図。
【符号の説明】
1…基板、2…第1配線層、3…第1層ラダーシリコーン樹脂層、4…第1層感光性ポリイミド系樹脂前駆体膜、5…マスク、6、11…スルーホール、7…第1層感光性ポリイミド系樹脂膜、8…第2配線層、9…第2層ラダーシリコーン樹脂層、10…第2層感光性ポリイミド系樹脂膜、11…第3配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パターンが形成された配線層を有する基板上に、ラダーシリコーン樹脂層および該ラダーシリコーン樹脂層上に感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層を形成し、スルーホールを形成した後、熱処理し、次いで該熱処理により生成したポリイミド系樹脂層上に上層配線層を形成することを特徴とする多層配線構造体の製造法。
【請求項2】 感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層の現像液により感光性ポリイミド系樹脂前駆体組成物層の現像とラダーシリコーン樹脂層のエッチングを同時に行うことを特徴とする請求項1記載の多層配線構造体の製造法。
【請求項3】 ラダーシリコーン樹脂が一般式(I)
【化1】


(式中、R1およびR2はフェニル基または低級アルキル基を意味し、n個のR1およびR2はそれぞれ同じでもよく異なっていてもよく、nは20〜1000の整数を示す)で表されるラダーシリコーン樹脂である請求項1または2記載の多層配線構造体の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開平7−249875
【公開日】平成7年(1995)9月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−42302
【出願日】平成6年(1994)3月14日
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)