説明

多層重合体

【課題】 フィルムに含有させたときに優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)とを両立させうる多層重合体を提供する。
【解決手段】 弾性重合体層(A)の外側に弾性重合体層(B)を備え、該弾性重合体層(B)の外側に硬質グラフト層(C)を備えた3層構造の多層重合体であって、弾性重合体層(A)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99.9重量%以下の範囲で、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.1重量%以上1重量%未満の範囲で含有する単量体成分(a)が重合してなり、弾性重合体層(B)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99重量%以下の範囲で、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を1重量%以上10重量%以下の範囲で含有する単量体成分(b)が重合してなり、硬質グラフト層(C)は、メタクリル酸アルキルを主体とする単量体成分(c)が重合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルム用の耐衝撃性改良剤などに有用な(メタ)アクリル系の多層重合体に関する。また、本発明は、前記多層重合体とメタクリル樹脂とを含有するメタクリル樹脂組成物や、該組成物からなるフィルムに関する。かかるフィルムは、例えば、自動車の内装用資材、家電製品の外装用資材、建築用資材(エクステリア)等に利用される。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系の多層重合体からなるゴム粒子は、例えばメタクリル樹脂等からなるフィルムの耐衝撃性改良剤として有用であることが知られており、かかる重合体の粒子を含むフィルム形成用の樹脂組成物が種々提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−60876号公報
【特許文献2】特開2003−128734号公報
【特許文献3】特開2004−137299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、(メタ)アクリル系の多層重合体のようなゴム粒子を含有させて耐衝撃性を改良したフィルムは、応力白化しやすくなる傾向があるため、耐応力白化性を改善することが求められる。フィルムの耐応力白化性を向上させるには、耐衝撃性改良剤として含有させるゴム粒子を得る際の架橋剤の濃度を高くし、該ゴム粒子の架橋度を上げればよいのであるが、一方で、ゴム粒子の架橋度をあまりに高くすると、伸び性が低下し、フィルムの加工段階での取り扱い性や得られたフィルムの物性(引張強度など)を損なうといった問題を招くことになる。そのため、優れた耐応力白化性と伸び性とを両立させることは極めて困難であり、特許文献1〜3の樹脂組成物においても、加工段階での取り扱い性や得られたフィルムの物性(引張強度など)をある程度確保しうる範囲内でゴム粒子の架橋度を上げて、耐応力白化性の向上を図っているが、その耐応力白化性は、充分に満足しうるレベルとは言えなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、フィルムに含有させたときに優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)とを両立させうる多層重合体と、該多層重合体を含有するメタクリル樹脂組成物および該組成物からなるフィルムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を所定の割合で含有する単量体成分を重合してなる第一の弾性重合体層の外側に、前記単量体成分とは異なるラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を所定の割合で含有する単量体成分を重合してなる第二の弾性重合体層を備え、さらに第二の弾性重合体層の外側に硬質グラフト層を備える多層重合体とすることにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)弾性重合体層(A)の外側に弾性重合体層(B)を備え、該弾性重合体層(B)の外側に硬質グラフト層(C)を備えた3層構造の多層重合体であって、前記弾性重合体層(A)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99.9重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.1重量%以上1重量%未満の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を49.9重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(a)が重合してなり、前記弾性重合体層(B)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を1重量%以上10重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を49重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(b)が重合してなり、前記硬質グラフト層(C)は、メタクリル酸アルキルを50重量%以上100重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を3重量%以下の範囲で含有してもよく、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体50重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(c)が重合してなる、ことを特徴とする多層重合体。
(2)弾性重合体層(A)、弾性重合体層(B)及び硬質グラフト層(C)の合計100重量部に対し、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計が30〜95重量部である前記(1)に記載の多層重合体。
(3)弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計100重量部に対し、弾性重合体層(A)が5〜50重量部である前記(1)又は(2)に記載の多層重合体。
(4)粒子状である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の多層重合体。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の多層重合体とメタクリル樹脂とを、多層重合体:メタクリル樹脂(重量比)=1:99〜99:1の割合で含有するメタクリル樹脂組成物。
(6)メタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキルを70重量%以上100重量%以下の範囲で含有し、該メタクリル酸アルキルと共重合可能な単量体を30重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(d)が重合してなる前記(5)に記載のメタクリル樹脂組成物。
(7)前記(5)又は(6)に記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層重合体によれば、フィルムに含有させたときに優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)とを両立させることが可能になる。この多層重合体をメタクリル樹脂組成物に含有させてフィルム化すると、優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)とを兼ね備えたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔多層重合体〕
本発明の多層重合体は、弾性重合体層(A)の外側に特定の弾性重合体層(B)を備え、該弾性重合体層(B)の外側に硬質グラフト層(C)を備えた3層構造の多層重合体である。ここで、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)は、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を必須とする単量体成分を、それぞれ重合してなるものであり、弾性重合体層(A)と弾性重合体層(B)とは、それぞれの単量体成分(単量体成分(a)及び単量体成分(b))に含まれる前記多官能単量体の割合が異なっている。このように、2つの弾性重合体層を備え、かつ、それぞれの弾性重合体層を得るための原料となる単量体成分(a)及び(b)が、前記多官能単量体をそれぞれ異なる所定の割合で含有することにより、本発明の多層重合体は、例えば、これをメタクリル樹脂に配合したメタクリル樹脂組成物から得られるフィルムに耐応力白化性と伸び性とを両立させることが可能になる。
【0010】
前記弾性重合体層(A)は、アクリル酸アルキルとラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体とを含有する単量体成分(a)が重合してなる重合体層である。該単量体成分(a)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99.9重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.1重量%以上1重量%未満の範囲で含有するものであり、さらに必要に応じて、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を49.9重量%以下の範囲で含有してもよい(ここで、単量体成分(a)の総量は100重量%である)。該単量体成分(a)は、アクリル酸アルキルを、好ましくは55重量%以上80重量%以下の範囲で含有し、前記多官能単量体を、好ましくは0.2重量%以上0.8重量%以下の範囲で含有する。また、前記単官能単量体は、任意で含有させうる成分であり、単量体成分(a)中に、好ましくは20重量%以上45重量%以下の範囲で含有される。単量体成分(a)における前記多官能単量体の含有量が0.1重量%未満であると、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性が得られなくなり、一方、1重量%以上であると、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な伸び性(引張強度)が得られなくなる。
【0011】
前記弾性重合体層(B)は、アクリル酸アルキルとラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体とを含有する単量体成分(b)が重合してなる重合体層である。該単量体成分(b)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を1重量%以上10重量%以下の範囲で含有するものであり、さらに必要に応じて、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を49重量%以下の範囲で含有してもよい(ここで、単量体成分(b)の総量は100重量%である)。該単量体成分(b)は、アクリル酸アルキルを、好ましくは55重量%以上80重量%以下の範囲で含有し、前記多官能単量体を、好ましくは1.2重量%以上5重量%以下の範囲で含有する。また、前記単官能単量体は、任意で含有させうる成分であり、単量体成分(b)中に、好ましくは20重量%以上45重量%以下の範囲で含有される。単量体成分(b)における前記多官能単量体の含有量が1重量%未満であると、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性が得られなくなり、一方、10重量%を超えると、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な伸び性(引張強度)が得られなくなくなる。
【0012】
単量体成分(a)及び(b)中のアクリル酸アルキルとしては、通常、炭素数が1〜8のアルキル基を有するものを用いることができる。中でも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのように炭素数が4〜8のアルキル基を有するものが好ましい。なお、これらアクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、単量体成分(a)中のアクリル酸アルキルと、単量体成分(b)中のアクリル酸アルキルとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0013】
単量体成分(a)及び(b)中のラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体は、いわゆる架橋剤として機能する。前記多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが特に好ましい。なお、これら多官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、単量体成分(a)中の多官能単量体と、単量体成分(b)中の多官能単量体とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
単量体成分(a)及び(b)に含まれうるラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸エステル;スチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物;等が挙げられる。なお、これら単官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、単量体成分(a)中の単官能単量体と、単量体成分(b)中の単官能単量体とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
前記硬質グラフト層(C)は、メタクリル酸アルキルを含有する単量体成分(c)が重合してなる重合体層である。該単量体成分(c)は、メタクリル酸アルキルを50重量%以上100重量%以下の範囲で含有するものであり、さらに必要に応じて、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を3重量%以下の範囲で含有してもよく、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体50重量%以下の範囲で含有してもよい(ここで、単量体成分(c)の総量は100重量%である)。該単量体成分(c)は、メタクリル酸アルキルを、好ましくは60重量%以上98重量%以下の範囲で含有する。また、前記多官能単量体は、任意で含有させうる成分であるが、含有量が3重量%を超えると、フィルムに含有させたときに充分な伸び性(引張強度)が得られなくなるおそれがあるため、単量体成分(c)中に、通常3重量%以下の範囲で含有され、好ましくは1重量%以下の範囲で含有される。また、前記単官能単量体は、任意で含有させうる成分であり、単量体成分(c)中に、好ましくは2重量%以上40重量%以下の範囲で含有される。
【0016】
単量体成分(c)中のメタクリル酸アルキルとしては、通常、炭素数が1〜8程度のアルキル基を有するものが用いられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらメタクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0017】
単量体成分(c)に含まれうるラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体は、いわゆる架橋剤として機能する。該多官能単量体としては、具体的には、前述した弾性重合体(A)及び弾性重合体(B)を得るための多官能単量体と同様のものを例示することができる。例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。これらの中でも、グリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、多塩基酸のポリアルケニルエステルが特に好ましい。なお、これら多官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
単量体成分(c)に含まれうるラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸エステル;スチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物;等が挙げられる。これら単官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0019】
本発明の多層重合体において、弾性重合体層(A)、弾性重合体層(B)及び硬質グラフト層(C)の重量割合(各層を構成する単量体成分(a)、(b)及び(c)の重量比)は、本発明の効果を奏する範囲で適宜選択されうるが、例えば、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計量は、弾性重合体層(A)、弾性重合体層(B)及び硬質グラフト層(C)の合計100重量部に対して30〜95重量部であることが好ましく、より好ましくは40〜80重量部であるのがよい。弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計量の割合が、前記割合よりも少ないと、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性や引張強度を得られないおそれがあり、一方、前記割合よりも多いと、フィルム内での多層重合体の均一分散性が低下するおそれがある。また、弾性重合体層(A)は、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部であるのがよい。弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計量に対する弾性重合体層(A)の割合が、前記割合よりも少ないと、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な伸び性(引張強度)が得られないおそれがあり、一方、前記割合よりも多いと、得られる多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性が得られないおそれがある。
【0020】
本発明の多層重合体は、例えば、各層を得るための原料となる単量体成分(a)、(b)及び(c)を、重合体の内層(中心)に配するものから順に、乳化重合法により多段重合させていくことにより、容易に製造することができる。この場合、重合によって粒子状の多層重合体を含むラテックスが得られるので、このラテックスに単離・精製操作等を施して、粒子状の多層重合体を回収すればよい。以下、本発明の多層重合体を得る際の重合方法の一実施形態について説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
初めに、窒素等の不活性ガス雰囲気下、乳化剤や重合開始剤等を含む水系媒体中で、内層とする弾性重合体層(A)を得るための原料となる単量体成分(a)を重合させることにより、内層である弾性重合体層(A)となる重合体粒子がラテックスの状態で得られる。このとき、最終的に得られる多層重合体の粒子径や粒子個数を調整する目的で、単量体成分(a)は2段階で重合させてもよい。すなわち、まず、単量体成分(a)の全量のうちの所定量を重合させてシード粒子を形成させ、このシード粒子の存在下に残りの単量体成分(a)を重合させてもよい。次に、得られた重合体粒子を含むラテックスに、中間層とする弾性重合体層(B)を得るための原料となる単量体成分(b)を添加して重合させることにより、弾性重合体層(A)の外側に弾性重合体層(B)を備えた2層構造の重合体粒子がラテックスの状態で得られる。最後に、得られた2層の重合体粒子を含むラテックスに、適宜乳化剤や重合開始剤等を追加した後、外層とする硬質グラフト層(C)を得るための原料となる単量体成分(c)を添加して重合させることにより、弾性重合体層(A)の外側に弾性重合体層(B)を備え、該弾性重合体層(B)の外側に硬質グラフト層(C)を備えた3層構造の重合体粒子がラテックスの状態で得られる。
【0022】
各単量体成分(a)、(b)及び(c)を重合させる際に用いることのできる水系媒体としては、例えば、水や、水と水混和性溶剤との混合溶媒等が挙げられる。水系媒体は、単量体成分(a)、(b)及び(c)の全ての総量100重量部に対して50〜300重量部程度の割合となるように、一括、分割または連続して添加するのが好ましい。
各単量体成分(a)、(b)及び(c)を重合させる際に用いることのできる乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン系の乳化剤等が好ましく挙げられる。アニオン系の乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の直鎖または分岐したアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。乳化剤は、単量体成分(a)、(b)及び(c)の全ての総量100重量部に対して0.01〜5重量部程度の割合となるように、一括、分割または連続して添加するのが好ましい。
各単量体成分(a)、(b)及び(c)を重合させる際に用いることのできる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物等が挙げられる。重合開始剤は、単量体成分(a)、(b)及び(c)の全ての総量100重量部に対して0.01〜1重量部程度の割合となるように、一括、分割または連続して添加するのが好ましい。
【0023】
なお、各単量体成分(a)、(b)及び(c)を重合させる際には、各層となる(共)重合体の分子量を制御するために、公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタンなどのアルキル基または置換アルキル基を有する第一、第二級および第三級メルカプタン、フェニルメルカプタンなどの芳香族メルカプタン、チオグリコール酸とそのエステルおよびエチレングリコールなどが挙げられる。また、各単量体成分(a)、(b)及び(c)を重合させる際には、必要に応じて、炭酸ナトリウム等のpH調整剤を用いてもよい。各単量体成分(a)、(b)及び(c)の重合温度は、特に限定されないが、通常、60〜90℃程度である。
【0024】
かくして3層構造を有する本発明の多層重合体を含むラテックスを得ることができる。
このラテックスから多層重合体を回収する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、塩析や酸析、凍結などで凝固させた後、ろ過し、次いで洗浄する方法や、スプレー乾燥処理により回収する方法等が挙げられる。
【0025】
本発明の多層重合体が粒子状である場合には、その粒子径(すなわち、弾性重合体層(A)、弾性重合体層(B)及び硬質グラフト層(C)からなる全体の粒子径)は、特に制限されないが、重量平均粒子径で、通常30〜200nm、好ましくは50〜150nm、より好ましくは60〜120nmである。多層重合体の粒子径が小さすぎると、多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な引張強度を得ることができないおそれがある。一方、多層重合体の粒子径が大きすぎると、多層重合体をフィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性や透明性を得ることができないおそれがある。
【0026】
また、本発明の多層重合体が粒子状である場合において、弾性重合体層(A)の粒子径(すなわち、弾性重合体層(A)のみからなる単層の重合体粒子の粒子径)や、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の2層の粒子径(すなわち、弾性重合体層(A)と弾性重合体層(B)とからなる2層構造の重合体粒子の粒子径)は、特に限定されないが、例えば、弾性重合体層(A)の粒子径は、重量平均粒子径で、10〜120nmであることが好ましく、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の2層の粒子径は、重量平均粒子径で、30〜180nmであることが好ましい。
なお、多層重合体の粒子径、弾性重合体層(A)の粒子径、ならびに弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の2層の粒子径は、それぞれ、各単量体成分(a)、(b)及び(c)の量や、その際に用いる乳化剤の使用量等を調節することによって調整することができる。
本発明の多層重合体は、単独でフィルム状に成形して使用することもできるが、後述する本発明のフィルムのように、メタクリル樹脂と混合したメタクリル樹脂組成物をフィルム状に成形して使用されるのが好ましい。
【0027】
〔メタクリル樹脂組成物〕
本発明のメタクリル樹脂組成物は、上述した本発明の多層重合体とメタクリル樹脂とを含むものである。このとき、両者の含有割合は、通常、多層重合体:メタクリル樹脂(重量比)=1:99〜99:1である。好ましくは、多層重合体:メタクリル樹脂(重量比)=20:80〜80:20であるのがよい。
【0028】
前記メタクリル樹脂は、メタクリル酸アルキルを主体とする単量体成分(d)の重合体である。該単量体成分(d)は、好ましくはメタクリル酸アルキルを70重量%以上100重量%以下の範囲で含有し、さらに必要に応じて、該メタクリル酸アルキルと共重合可能な単量体を30重量%以下の範囲で含有してもよい。ここでいうメタクリル酸アルキルとしては、通常、炭素数が1〜8程度のアルキル基を有するものが用いられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。また、ここでいうメタクリル酸アルキルと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸エステル;スチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物;等が挙げられる。なお、得ようとするメタクリル樹脂組成物に透明性が求められる場合、多層重合体とメタクリル樹脂の屈折率が実質的に同じになるように、多層重合体を構成する各単量体の種類を考慮して選択するのが好ましい。メタクリル樹脂は、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の従来公知の方法により前記単量体成分(d)を重合することで得られる。
【0029】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記多層重合体と前記メタクリル樹脂とを混合し、必要に応じて成形等の加工を施すことにより、得ることができる。多層重合体とメタクリル樹脂との混合には、例えば、混練機、単軸押出機や二軸押出機で溶融混練する方法等の従来公知の方法を採用することができる。
【0030】
本発明のメタクリル樹脂組成物には、必要に応じて、膠着防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、染料等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。中でも、紫外線吸収剤は、耐候性を向上させるうえで好ましく用いられる。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、メタクリル樹脂組成物に添加剤を含有させる際には、多層重合体の重合の際に添加してもよいし、多層重合体とメタクリル樹脂との混合時や、その後の加工時に添加してもよい。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。また、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤の具体例としては、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、メタクリル樹脂組成物の全量に対して、通常0.1重量%以上であり、好ましくは0.3重量%以上、2重量%以下であるのがよい。
【0032】
〔フィルム〕
本発明のフィルムは、上述した本発明のメタクリル樹脂組成物からなる。かかる本発明のフィルムは、例えば、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法等のフィルム化方法によって作製することができる。中でも、前記メタクリル樹脂組成物を、例えばTダイから溶融押出して得られるフィルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、フィルムの表面平滑性及び表面光沢性を向上させる観点からは、前記メタクリル樹脂組成物を溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面又はベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。
【0033】
本発明のフィルムは、着色されていてもよい。着色法としては、前記メタクリル樹脂組成物自体に顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂組成物自体を着色する方法や、染料が分散した液中にメタクリル樹脂組成物からなるフィルムを浸漬して着色させる染色法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、本発明のフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムの少なくとも一方の面に、絵柄などの印刷を施したり、着色層を設けたりして形成された意匠層を設けたものであってもよい。このような意匠層は、深みのある外観を与えるうえで、内装壁材を構成する基材と接する側に施されているのが好ましい。
【0034】
本発明のフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムの片面に、メタクリル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂からなる層(以下「熱可塑性樹脂層」と称する)が少なくとも1層積層されたものであってもよい。このとき、前述したように、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムの片面に印刷や着色などの意匠層を設けた場合には、意匠層を設けた側の面に熱可塑性樹脂層を積層するのがよい。なお、熱可塑性樹脂層は、1層であってもよいし2層以上であってもよい。また、熱可塑性樹脂層が2層以上である場合には、その一部の層を意匠層とするのがよい。
前記熱可塑性樹脂層を形成するメタクリル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、前記メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂以外の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、特に、ABS樹脂が好ましい。
【0035】
前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムに熱可塑性樹脂層を積層する際の積層一体成形法は、特に制限されるものではなく、例えば、前記メタクリル樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを、予めそれぞれ別個にフィルム状に成形しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション)、予め成形した一方の樹脂フィルムを、Tダイから溶融押出しされたもう一方の樹脂とラミネートする方法などが挙げられる。なお、これらの方法を採用するにあたり、必要に応じて、フィルム状に成形した前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムは、熱可塑性樹脂層が貼合される側の面に、コロナ処理などが施されていてもよいし、接着層が設けられていてもよい。また、前記他の熱可塑性樹脂を予めフィルム状に成形する際には、例えば、他の熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂等の如きメタクリル樹脂組成物と相溶性の高い樹脂である場合には、成形されたフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムと直接積層すればよく、ポリオレフィン樹脂等の如きメタクリル樹脂組成物と非相溶な樹脂である場合には、成形されたフィルムは、ドライラミネート等の手法により接着剤を介して前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムと積層すればよい。
【0036】
例えば、無色透明であるメタクリル樹脂組成物からなるフィルムの片面に、着色された熱可塑性樹脂層を積層してなる本発明のフィルムは、着色面(熱可塑性樹脂層側)に内装壁材の基材が貼合成形されるようにすれば、深み感のある着色状態を呈する優れた加飾部材となる。
本発明のフィルムの厚さは、特に制限されないが、通常0.03〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.15mmである。
かかる本発明のフィルムは、例えば、自動車の内装用資材、家電製品の外装用資材、建築用資材(エクステリア)等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味するものとする。
【0038】
(実施例1)
〔多層重合体の製造〕
まず、5Lのガラス製反応容器に下記水系媒体原料(ア)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器の中に、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(A)の原料(イ)の全量を13分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で20分間熟成することにより、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(B)の原料(ウ)の全量を47分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる弾性重合体層(B)を備えた2層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、下記追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、下記硬質グラフト層(C)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して中間層となる弾性重合体層(B)を備え、さらにその外側に密接して外層となる硬質グラフト層(C)を備えた3層重合体を含むラテックスを得た。
【0039】
<水系媒体原料(ア)>
イオン交換水 64.7部
炭酸ナトリウム 0.04部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.16部
過硫酸カリウム 0.013部
【0040】
<弾性重合体層(A)の原料(イ)>
アクリル酸ブチル 2.32部
メタクリル酸メチル 1.05部
スチレン 0.49部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.015部
【0041】
<弾性重合体層(B)の原料(ウ)>
アクリル酸ブチル 8.14部
メタクリル酸メチル 3.31部
スチレン 1.70部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.41部
【0042】
<追加開始剤原料(エ)>
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.16部
過硫酸カリウム 0.017部
<硬質グラフト層(C)の原料(オ)>
メタクリル酸メチル 15.69部
アクリル酸メチル 1.74部
【0043】
得られたラテックスは、内層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(A)、中間層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(B)、外層がメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが重合してなる硬質グラフト層(C)からなり、各層の割合が、内層:中間層:外層(重量比)=11:39:50である、略球状の3層構造の3層重合体を含むものであった。この3層重合体を含むラテックスの固形分濃度は35%であった。
なお、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックス、弾性重合体層(A)と弾性重合体層(B)とからなる2層重合体を含むラテックス、及び、得られた3層重合体を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体の重量平均粒子径(すなわち、各層の径)を、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて測定したところ、それぞれ、30nm、50nm、76nmであった。
【0044】
次に、得られた3層重合体を含むラテックスを、−20℃で24時間冷却して凍結凝集させた後、凝集物を融解させ、得られた融解物を濾過することにより、3層重合体の粒子を単離した。次いで、単離した3層重合体粒子に、20重量倍のイオン交換水の中に投入して攪拌した後、濾過することにより洗浄する操作を、合計5回繰返して施し、その後、60℃に設定した真空乾燥機で乾燥して、本発明の多層重合体であるパウダー状の3層重合体粒子を得た。
【0045】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
単量体成分(d)としてメタクリル酸メチル95%とアクリル酸メチル5%とからなる単量体成分を、バルク重合することにより得られたペレット状のメタクリル樹脂を50部と、上記で得られたパウダー状の3層重合体粒子50部とを、スーパーミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混錬して、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを、20mmΦの一軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて溶融させ、設定温度260℃のT型ダイを介して押し出し、2本のポリシングロールに両面が完全に接するようにして冷却することにより、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張強度を以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0046】
<応力白化性の評価>
得られたフィルム(厚さ80μm)をサンプルとし、これを、突き上げ試験機(LLOYD INSTRUMENTS LTD.製「LF−Plus Universal Test Machine」)のサンプルホルダーに、15mmΦの穴の空いた二枚のステンレス板で挟み込んだ状態で水平に固定した。そして、23℃の雰囲気下、先端が半球状である10mmΦのダートを、1200mm/分の速度で、ステンレス板の穴の中央部のフィルム面から下方へ5mm突き下ろした。このとき、半球状に変形したフィルムの応力白化した状態を目視で観察し、以下の基準で5段階のレベルに判定した。なお、この試験は5回行い、5回の判定レベルの平均値を求めた。
レベル0:全く白化が認められない。
レベル1:極薄く白化が認められる。(ほとんど白化していない。)
レベル2:薄い白化が認められる。(僅かに白化している。)
レベル3:白化が認められる。
レベル4:著しく白化が認められる。
【0047】
<引張強度の評価>
得られたフィルム(厚さ80μm)から幅10mmの短冊状のサンプルを切り出し、これを用いて、万能材料試験機(INSTRON社製「1122RF55型」)にて、チャック間隔を90mmにセットし、引張りスピードを50mm/分として、23℃で、引張強度(%)を測定した。
【0048】
(実施例2)
〔多層重合体の製造〕
まず、5Lのガラス製反応容器に実施例1と同じ水系媒体原料(ア)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器の中に、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(A)の原料(イ)の全量を30分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(B)の原料(ウ)の全量を30分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる弾性重合体層(B)を備えた2層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、実施例1と同じ追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、実施例1と同じ硬質グラフト層(C)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して中間層となる弾性重合体層(B)を備え、さらにその外側に密接して外層となる硬質グラフト層(C)を備えた3層重合体を含むラテックスを得た。
【0049】
<弾性重合体層(A)の原料(イ)>
アクリル酸ブチル 5.23部
メタクリル酸メチル 2.36部
スチレン 1.09部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.035部
【0050】
<弾性重合体層(B)の原料(ウ)>
アクリル酸ブチル 5.23部
メタクリル酸メチル 2.13部
スチレン 1.09部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.26部
【0051】
得られたラテックスは、内層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(A)、中間層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(B)、外層がメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが重合してなる硬質グラフト層(C)からなり、各層の割合が、内層:中間層:外層(重量比)=25:25:50である、略球状の3層構造の3層重合体を含むものであった。この3層重合体を含むラテックスの固形分濃度は35%であった。
なお、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックス、弾性重合体層(A)と弾性重合体層(B)とからなる2層重合体を含むラテックス、及び、得られた3層重合体を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体の重量平均粒子径を、実施例1と同様にして測定したところ、それぞれ、41nm、54nm、82nmであった。
【0052】
次に、得られた3層重合体を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、3層重合体の粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、本発明の多層重合体であるパウダー状の3層重合体粒子を得た。
【0053】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の3層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張強度を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0054】
(実施例3)
〔多層重合体の製造〕
まず、5Lのガラス製反応容器に実施例1と同じ水系媒体原料(ア)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器の中に、同温度(80℃)で、実施例2と同じ弾性重合体層(A)の原料(イ)の全量を30分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、実施例2と同じ弾性重合体層(B)の原料(ウ)の全量を30分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる弾性重合体層(B)を備えた2層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、実施例1と同じ追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、下記硬質グラフト層(C)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して中間層となる弾性重合体層(B)を備え、さらにその外側に密接して外層となる硬質グラフト層(C)を備えた3層重合体を含むラテックスを得た。
【0055】
<硬質グラフト層(C)の原料(オ)>
メタクリル酸メチル 15.65部
アクリル酸メチル 1.74部
エチレングリコールジメタクリレート(架橋剤) 0.035部
【0056】
得られたラテックスは、内層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(A)、中間層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(B)、外層がメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレートが重合してなる硬質グラフト層(C)からなり、各層の割合が、内層:中間層:外層(重量比)=25:25:50である、略球状の3層構造の3層重合体を含むものであった。
この3層重合体を含むラテックスの固形分濃度は35%であった。
なお、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックス、弾性重合体層(A)と弾性重合体層(B)とからなる2層重合体を含むラテックス、及び、得られた3層重合体を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体の重量平均粒子径を、実施例1と同様にして測定したところ、それぞれ、42nm、54nm、82nmであった。
【0057】
次に、得られた3層重合体を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、3層重合体の粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、本発明の多層重合体であるパウダー状の3層重合体粒子を得た。
【0058】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の3層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張強度を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0059】
(比較例1)
〔多層重合体の製造〕
まず、5Lのガラス製反応容器に実施例1と同じ水系媒体原料(ア)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器の中に、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(A)の原料(イ)の全量を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、実施例1と同じ追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、実施例1と同じ硬質グラフト層(C)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質グラフト層(C)を備えた2層重合体を含むラテックスを得た。
【0060】
<弾性重合体層(A)の原料(イ)>
アクリル酸ブチル 10.46部
メタクリル酸メチル 4.71部
スチレン 2.30部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.070部
【0061】
得られたラテックスは、内層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(A)、外層がメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが重合してなる硬質グラフト層(C)からなり、各層の割合が、内層:外層(重量比)=50:50である、略球状の2層構造の2層重合体を含むものであった。この2層重合体を含むラテックスの固形分濃度は35%であった。
なお、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックス、及び、得られた2層重合体を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体の重量平均粒子径を、実施例1と同様にして測定したところ、それぞれ、56nm、83nmであった。
【0062】
次に、得られた2層重合体を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、2層重合体の粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、比較用の多層重合体であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0063】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張強度を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0064】
(比較例2)
〔多層重合体の製造〕
まず、5Lのガラス製反応容器に実施例1と同じ水系媒体原料(ア)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器の中に、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(B)の原料(ウ)の全量を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(B)のみからなる単層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、実施例1と同じ追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、実施例1と同じ硬質グラフト層(C)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(B)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質グラフト層(C)を備えた2層重合体を含むラテックスを得た。
【0065】
<弾性重合体層(B)の原料(ウ)>
アクリル酸ブチル 10.46部
メタクリル酸メチル 4.26部
スチレン 2.19部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.52部
【0066】
得られたラテックスは、内層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(B)、外層がメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが重合してなる硬質グラフト層(C)からなり、各層の割合が、内層:外層(重量比)=50:50である、略球状の2層構造の2層重合体を含むものであった。この2層重合体を含むラテックスの固形分濃度は35%であった。
なお、弾性重合体層(B)のみからなる単層重合体を含むラテックス、及び、得られた2層重合体を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体の重量平均粒子径を、実施例1と同様にして測定したところ、それぞれ、58nm、85nmであった。
【0067】
次に、得られた2層重合体を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、2層重合体の粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、比較用の多層重合体であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0068】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張強度を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0069】
(比較例3)
〔多層重合体の製造〕
まず、5Lのガラス製反応容器に実施例1と同じ水系媒体原料(ア)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器の中に、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(A)の原料(イ)の全量を30分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、下記弾性重合体層(B)の原料(ウ)の全量を30分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる弾性重合体層(B)を備えた2層重合体を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度(80℃)で、実施例1と同じ追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、実施例1と同じ硬質グラフト層(C)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して中間層となる弾性重合体層(B)を備え、さらにその外側に密接して外層となる硬質グラフト層(C)を備えた3層重合体を含むラテックスを得た。
【0070】
<弾性重合体層(A)の原料(イ)>
アクリル酸ブチル 5.23部
メタクリル酸メチル 2.38部
スチレン 1.09部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.010部
【0071】
<弾性重合体層(B)の原料(ウ)>
アクリル酸ブチル 5.23部
メタクリル酸メチル 2.37部
スチレン 1.09部
メタクリル酸アリル(架橋剤) 0.021部
【0072】
得られたラテックスは、内層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(A)、中間層がアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及びメタクリル酸アリルが重合してなる弾性重合体層(B)、外層がメタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが重合してなる硬質グラフト層(C)からなり、各層の割合が、内層:中間層:外層(重量比)=25:25:50である、略球状の3層構造の3層重合体を含むものであった。この3層重合体を含むラテックスの固形分濃度は35%であった。
なお、弾性重合体層(A)のみからなる単層重合体を含むラテックス、弾性重合体層(A)と弾性重合体層(B)とからなる2層重合体を含むラテックス、及び、得られた3層重合体を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体の重量平均粒子径を、実施例1と同様にして測定したところ、それぞれ、42nm、54nm、80nmであった。
【0073】
次に、得られた3層重合体を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、3層重合体の粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、比較用の多層重合体であるパウダー状の3層重合体粒子を得た。
【0074】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の3層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張強度を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0075】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性重合体層(A)の外側に弾性重合体層(B)を備え、該弾性重合体層(B)の外側に硬質グラフト層(C)を備えた3層構造の多層重合体であって、
前記弾性重合体層(A)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99.9重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.1重量%以上1重量%未満の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を49.9重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(a)が重合してなり、
前記弾性重合体層(B)は、アクリル酸アルキルを50重量%以上99重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を1重量%以上10重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を49重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(b)が重合してなり、
前記硬質グラフト層(C)は、メタクリル酸アルキルを50重量%以上100重量%以下の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を3重量%以下の範囲で含有してもよく、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体50重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(c)が重合してなる、ことを特徴とする多層重合体。
【請求項2】
弾性重合体層(A)、弾性重合体層(B)及び硬質グラフト層(C)の合計100重量部に対し、弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計が30〜95重量部である請求項1に記載の多層重合体。
【請求項3】
弾性重合体層(A)及び弾性重合体層(B)の合計100重量部に対し、弾性重合体層(A)が5〜50重量部である請求項1又は2に記載の多層重合体。
【請求項4】
粒子状である請求項1〜3のいずれかに記載の多層重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の多層重合体とメタクリル樹脂とを、多層重合体:メタクリル樹脂(重量比)=1:99〜99:1の割合で含有するメタクリル樹脂組成物。
【請求項6】
メタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキルを70重量%以上100重量%以下の範囲で含有し、該メタクリル酸アルキルと共重合可能な単量体を30重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分(d)が重合してなる請求項5に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。

【公開番号】特開2011−116952(P2011−116952A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236576(P2010−236576)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】