多心シールドフラットケーブル及び多心シールドフラットケーブルの製造方法
【課題】高周波特性及び電磁シールド性に優れ、且つ、製造が容易な多心シールドフラットケーブル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多心シールドフラットケーブル(10)は、内部導体(12)及び絶縁体(14)を含む複数の被覆導体(16)と、複数の被覆導体(16)を一括して覆う外部導体(18)とを備える。外部導体(18)は、複数の被覆導体(16)を互いに協働して挟む第1シェル(20)及び第2シェル(20)を含み、第1シェル(20)及び第2シェル(20)の各々は、被覆導体(16)の外周面を覆う複数の溝部(22)、及び、溝部(22)の両側に一体に連なる複数の縁部(24)を含む。多心シールドフラットケーブル(10)は、第1シェル(20)の縁部(24)と第2シェル(20)の縁部(24)の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段として、例えば半田層(16)を更に備える。
【解決手段】多心シールドフラットケーブル(10)は、内部導体(12)及び絶縁体(14)を含む複数の被覆導体(16)と、複数の被覆導体(16)を一括して覆う外部導体(18)とを備える。外部導体(18)は、複数の被覆導体(16)を互いに協働して挟む第1シェル(20)及び第2シェル(20)を含み、第1シェル(20)及び第2シェル(20)の各々は、被覆導体(16)の外周面を覆う複数の溝部(22)、及び、溝部(22)の両側に一体に連なる複数の縁部(24)を含む。多心シールドフラットケーブル(10)は、第1シェル(20)の縁部(24)と第2シェル(20)の縁部(24)の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段として、例えば半田層(16)を更に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多心シールドフラットケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多心シールドフラットケーブルは、電子機器内において配線として用いられている。
例えば特許文献1が開示する多心シールド付きフラットケーブルは、導体及び導体を覆う絶縁体からなる複数の絶縁線を有し、絶縁線は、1対ずつ個別シールド層及び導電性高分子樹脂によって覆われている。1対の絶縁線、個別シールド層及び導電性高分子樹脂は内部シース付線心を構成し、複数の内部シース付線心が、一括絶縁層及び一括シールド層によって覆われている。
【0003】
また例えば、特許文献1の第3図に従来技術として記載された多心シールド付きフラットケーブルでは、1対の絶縁線及びこれら絶縁線を覆う内部シースが内部シース付線心を構成している。複数の内部シース付線心は、間隔を存して平行に配列され、一括シールド層及び一括外被によって覆われている。一括シールド層は、内部シース付線心の間においてブリッジ部を形成し、ブリッジ部において、対向する一括シールド層が相互に圧接させられている。
【0004】
一方、高周波信号の伝送に適した伝送媒体として、セミリジッドケーブルも知られている。セミリジッドケーブルは、外部導体として銅パイプを有し、銅パイプによって、内部導体及び絶縁体が覆われている。
セミリジッドケーブルの銅パイプにあっては、内径が一定であり、内周面が平滑であり、そして、周方向にて継ぎ目がない。これらの理由により、セミリジッドケーブルを用いた場合、特性インピーダンスのばらつきが少ないために負荷インピーダンスとの整合が取り易く、高周波信号であるために表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−127018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する多心シールドフラットケーブルでは、1対の絶縁線が個別シールド層によって覆われている。個別シールド層は、アルミニウム−ポリエチレン・ラミネートテープからなり、軟質であるため、導体と個別シールド層との間の距離にばらつきが生じる。
従って、この多心シールドフラットケーブルでは、特性インピーダンスがばらつき易く、負荷インピーダンスとの不整合が生じ易い。このため、この多心シールドフラットケーブルには、高周波特性が安定しないという問題がある。
また、巻き付けられたラミネートテープによってシールド層が形成されているケーブルでは、サックアウトと呼ばれる、高周波特性の大きな乱れが出るという本質的な問題がある。
【0007】
また、特許文献1の第3図に記載された従来技術の多心シールドフラットケーブルにあっては、ブリッジ部において、一括シールド層が相互に圧接させられているのみである。
一括シールド層及び一括外被は、アルミニウム−ポリエチレン・ラミネートテープからなり、軟質であるため、ブリッジ部において、一括シールド層の間に隙間が生じてしまう。このため、この多心シールドフラットケーブルには、ブリッジ部での電磁波のシールド性が低いという問題がある。
【0008】
一方、外部導体として銅パイプを用いたセミリジッドケーブルが知られている。しかし、セミリジッドケーブルを1本ずつ配線する作業は煩雑であり、電子機器の配線には、セミリジッドケーブルは不向きである。また、セミリジッドケーブルにあっては、内部導体及び絶縁体を銅パイプに押し込んで製造するため、製造が容易ではなく、製造コストが高いという問題もある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、高周波特性及び電磁シールド性に優れ、且つ、製造が容易な多心シールドフラットケーブル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルにおいて、前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備える、ことを特徴とする多心シールドフラットケーブルが提供される(請求項1)。
【0011】
好ましい態様として、前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、成形された金属板からなる(請求項2)。
【0012】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた半田層を含む(請求項3)。
【0013】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を折り曲げて形成された、V字の横断面形状を有するかしめ部を含む(請求項4)。
【0014】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部に形成されたかしめ孔と、前記第2シェルの縁部に形成され、前記かしめ孔への挿通後に拡開されたかしめ部とを含む(請求項5)。
【0015】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を貫通して取り付けられたリベットを含む(請求項6)。
【0016】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を溶接して形成された溶接部を含む(請求項7)。
【0017】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた導電性接着層を含む(請求項8)。
【0018】
好ましい態様として、前記被覆導体は、それぞれ2つの前記内部導体を含む(請求項9)。
【0019】
好ましい態様として、前記被覆導体は、楕円の横断面形状を有し、前記楕円の長軸方向は、前記被覆導体に含まれる前記内部導体の配列方向及び前記被覆導体の配列方向に一致している(請求項10)。
【0020】
また、本発明の一態様によれば、それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルの製造方法において、前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備え、前記第1シェルと前記第2シェルの間に、前記被覆導体を配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記第1シェル及び前記第2シェルを相互に固定する固定工程と、を備えることを特徴とする多心シールドフラットケーブルの製造方法が提供される(請求項11)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高周波特性及び電磁シールド性に優れ、且つ、製造が容易な多心シールドフラットケーブル及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の多心シールドフラットケーブルの外観を概略的に示す斜視図である。
【図2】第1実施形態及び第6実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図3】図1の多心シールドフラットケーブルの製造に用いられる部品を横断面にて示す図である。
【図4】図1の多心シールドフラットケーブルの製造方法において、ローラを用いて半田を溶融させ、シェル同士を固定する工程を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の多心シールドフラットケーブルの外観を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図7】第3実施形態の多心シールドフラットケーブルの外観を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図9】第4実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図10】第5実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図11】第7実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の多心シールドフラットケーブル10の外観を概略的に示す斜視図であり、図2は、多心シールドフラットケーブル10の横断面を概略的に示す図である。
【0024】
多心シールドフラットケーブル10は、例えば、スイッチングハブやメディアコンバータ等の中継装置や、サーバやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置等の配線部材として用いられる。例えば、多心シールドフラットケーブル10は、プリント回路基板に実装されたIC(集積回路)間、又は、ICとインターフェースとの間の接続に用いられる。多心シールドフラットケーブル10は、特に10Gbps以上の高速信号の伝送に好適である。
【0025】
図1及び図2に示したように、多心シールドフラットケーブル10は、複数の内部導体12を有する。内部導体12は、例えば銅等の金属線からなる。内部導体12の外周面は、絶縁体14によって覆われている。絶縁体14は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、又は、これらの発泡体等からなる。
【0026】
本実施形態では、多心シールドフラットケーブル10は、差動信号伝送用であり、間隔を存して互いに平行な2本の内部導体12が一つの絶縁体14によって一括して覆われている。そして、好ましい態様として、絶縁体14の横断面形状は楕円形状であり、楕円の長軸方向は、2本の内部導体12,12の配列方向に一致している。
以下、2本の内部導体12,12、及び、これら内部導体12,12を覆う絶縁体14をまとめて被覆導体16という。
【0027】
多心シールドフラットケーブル10は、複数の被覆導体16を有し、本実施形態では4本の被覆導体16を有する。被覆導体16は、互いに間隔を存して平行に配列されている。
【0028】
複数の被覆導体16の外周面、即ち絶縁体14の外周面は、外部導体18によって一括して覆われている。外部導体18は、相互に固定された2つのシェル(第1シェル,第2シェル)20,20によって覆われている。シェル20,20は、それぞれ成形された金属板(例えば、銅等)によって構成されている。
【0029】
シェル20,20の各々は、例えば、プレス成形によって成形されており、100μm以上500μm以下の厚さを有する。従って、多心シールドフラットケーブル10は、ある程度の可撓性を有するセミリジッドケーブルである。ただし、500μmという上限は一応の目安であり、用途や使用周波数によっては、この上限を超える場合も有り得る。
シェル20,20の各々は、被覆導体16の数に対応した複数の半楕円形状の溝部22と、溝部の両脇に一体に連なる複数の縁部24とを有する。
【0030】
溝部22の内周面の曲率は、被覆導体16の外周面の曲率に一致させられており、溝部22の内周面は、半楕円の横断面形状を有する。溝部22の内周面は被覆導体16の外周面に密着する。
好ましくは、溝部22の半楕円の長軸は、被覆導体16の配列方向に一致しており、これにより、各被覆導体16における内部導体12,12の配列方向が、被覆導体16の配列方向に一致させられる。
【0031】
一方、2つのシェル20,20の縁部24,24は、それぞれ平坦であり、相互に対向させられている。そして、本実施形態では、縁部24,24は、半田層26によって相互に固定されている。半田層26は、自身を介して縁部24,24同士を相互に固定し、縁部24,24の間に、導電体が存在しない隙間が発生することを防止する隙間発生防止手段を構成している。
好ましくは、半田層26は、縁部24,24の長手方向に隙間無く設けられる。
【0032】
以下、上述した多心シールドフラットケーブル10の製造方法について説明する。
まず、図3に示したように部品を用意する。即ち、金属板をプレス成形し、2つのシェル20,20を用意する。一方、2本の内部導体12,12を絶縁体14で覆う押し出し成形により、被覆導体16を用意する。また、半田層26の材料として、リボン状の半田28を用意する。
【0033】
そして、図4に示したように、用意した被覆導体16及び半田28をシェル20,20で挟むように配置する。この配置にて、加熱された高温のローラ30,30で縁部24,24を外側から押さえ付けるように挟み、そして、縁部24,24の全長に渡ってローラ30,30を相対的に移動させる。これにより半田28が溶融して半田層26を形成し、半田層26を介して縁部24,24同士が相互に固定される。
【0034】
なお、多心シールドフラットケーブル10を1個ずつ製造するのではなく、連続的に製造してもよい。即ち、シェル20,20、被覆導体16及び半田28の部品を連続的に繰り出しながら、ローラ30で加熱してこれらの部品を一体化し、この後、一体化した部品を切断して、多心シールドフラットケーブル10を製造してもよい。或いは、一体化した部品を巻き取って、多心シールドフラットケーブル10のロールとして出荷してもよい。
また、リボン状の半田28に代えて、縁部24に半田めっき層を予め形成しておき、加熱によって、半田めっき層を半田層26に変化させてもよい。
【0035】
上述した第1実施形態の多心シールドフラットケーブル10によれば、シェル20,20が金属からなり、溝部22の形状が高精度にて成形され、且つ、成形後の溝部22の形状が安定に保たれる。また、シェル20,20が金属からなり、溝部22の内周面の平滑性が確保される。
【0036】
これらの結果、この多心シールドフラットケーブル10によれば、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0037】
そして、この多心シールドフラットケーブル10によれば、縁部24,24同士の間が導体である半田層26を介して相互に固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無く、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル20,20の電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
かくして、この多心シールドフラットケーブル10は、高周波特性及び電磁シールド性に優れている。
なお、隙間発生防止手段は、電磁シールド性が悪化しない範囲で、縁部24,24の間に僅かな隙間が発生することを許容してもよい。
【0038】
一方、この多心シールドフラットケーブル10を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル20が得られる。また、リボン状の半田28を用い、高温のローラ30で加熱することによって、半田層26を介して縁部24,24同士を容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル10は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0039】
そして、この多心シールドフラットケーブル10を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10が複数の被覆導体16を含んでおり、外部導体18及び絶縁体14を剥いて内部導体12を露出させる端末処理作業や、露出させた内部導体12を接続対象のコネクタ等に接続する作業を一括して行うことができる。このため、この多心シールドフラットケーブル10を使用すれば、従来のセミリジッドケーブルを1本ずつ使用する場合に比べて、端末処理作業やコネクタ等への接続作業が容易になる。
【0040】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の説明では、先行する実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図5は、第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100の外観を概略的に示す斜視図であり、図6は、多心シールドフラットケーブル100の横断面を概略的に示す図である。
【0042】
多心シールドフラットケーブル100は、半田層26を有さず、シェル102a,102bが、縁部24,24にかしめ部104a,104bを更に有する点において、多心シールドフラットケーブル10とは異なる。
【0043】
かしめ部104a,104bは、2つのシェル102a,102bの重ね合わせ方向にて一方の側に向けて、縁部24から突出している。かしめ部104aは、V字の横断面形状を有し、かしめ部104bは、かしめ部104aと相似の略V字の横断面形状を有する。かしめ部104bは、自身のV字の間にかしめ部104aを挟み込み、かしめ部104aに密接している。
また、かしめ部104a,104bは、それぞれ、被覆導体16に沿うように、縁部24,24の長手方向にて、多心シールドフラットケーブル100の端から端まで延びている。
【0044】
一方、シェル102a,102bのうち、一方のシェル102bにおいては、多心シールドフラットケーブル100の両側に位置する平坦部(両側平坦部)24bが、他方のシェル102aの両側縁部24aよりも幅広に成形されている。そして、幅広の両側縁部24bは、他方の両側縁部24aの側縁を覆うように折り曲げられ、略180度折り返されている。
【0045】
上述した第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100の製造方法は、2つのシェル102a,102bの固定方法において、第1実施形態と異なる。即ち、多心シールドフラットケーブル100の製造方法では、かしめ部104bのV字の間にかしめ部104aを配置した状態で、かしめ部104bを圧縮することによって、かしめ部104a,104bが相互に密接して固定される。
【0046】
そして、一方のシェル102bの両側縁部24bを折り曲げることによって、両側縁部24a,24b同士が相互に密接して固定される。
つまり、かしめ部104a,104bが、被覆導体16間において、隙間発生防止手段を構成し、折り曲げられた両側縁部24bが、多心シールドフラットケーブル100の両側において、隙間発生防止手段を構成している。
【0047】
上述した第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0048】
また、この多心シールドフラットケーブル100によれば、被覆導体16間において、かしめ部104aにかしめ部104bが密接して固定され、かしめ部104a,104b同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル100の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル100では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル102a,102bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0049】
一方、この多心シールドフラットケーブル100を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル102a,102bが得られる。また、かしめ部104bを圧縮し、両側縁部24bを折り曲げることによって、かしめ部104a,104b同士、及び、両側縁部24a,24b同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル100は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0050】
そして、この多心シールドフラットケーブル100を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0051】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態の多心シールドフラットケーブル200の外観を概略的に示す斜視図であり、図8は、多心シールドフラットケーブル200の横断面を概略的に示す図である。
【0052】
多心シールドフラットケーブル200は、一方のシェル202bが、縁部24にかしめ孔204bを有し、他方のシェル202aが、かしめ孔204bの周縁部と係合するかしめ部204aを有する点において、第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100と異なっている。
【0053】
より詳しくは、一方のシェル202bの縁部24には、長手方向にて間隔を存して、複数のかしめ孔204bが形成されている。そして、他方のシェル202aには、かしめ孔204bの位置に対応して、複数のかしめ部204aが設けられている。
【0054】
各かしめ部204aは、縁部24から、重ね合わされるシェル202bに向けて突出し、かしめ孔204bに一方の側から挿通されている。そして、かしめ部204aは、かしめ孔204bの反対側において拡開され、縁部24と協働して、かしめ孔204bの周縁部を挟んでいる。かしめ部204a及び縁部24が、かしめ孔204bの周縁部を挟むことによって、被覆導体16間において、2つのシェル202a,202bの縁部24,24同士が相互に密接して固定される。
【0055】
上述した第3実施形態の多心シールドフラットケーブル200の製造方法は、2つのシェル202a,202bの固定方法において、第2実施形態と異なる。即ち、多心シールドフラットケーブル200の製造方法では、かしめ孔204bに、かしめ加工前の円筒形状のかしめ部204aを挿入してから、かしめ部204aの先端を拡開するように圧縮する。
【0056】
これによって、拡開されたかしめ部204a及び縁部24によって、かしめ孔204bの周縁が挟まれ、縁部24,24が相互に密接して固定される。
つまり、かしめ孔204b及びかしめ部204aが、被覆導体16間において、隙間発生防止手段を構成している。
【0057】
上述した第3実施形態の多心シールドフラットケーブル200によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0058】
また、この多心シールドフラットケーブル200によれば、被覆導体16間において、かしめ孔204b及びかしめ部204aによって、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル200の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル200では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル202a,202bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0059】
一方、この多心シールドフラットケーブル200を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル202a,202bが得られる。また、かしめ部204aを圧縮し、両側縁部24bを折り曲げることによって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル200は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0060】
そして、この多心シールドフラットケーブル200を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0061】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態について説明する。
図9は、第4実施形態の多心シールドフラットケーブル300の横断面を概略的に示す図である。
多心シールドフラットケーブル300では、隙間発生防止手段として、シェル302a,302bにリベット孔304a,304bが設けられ、リベット孔304a,304bを貫通して、縁部24,24にリベット306が取り付けられている。
【0062】
多心シールドフラットケーブル300を製造する場合、リベット孔304a,304bに、潰す前のリベット306を挿通し、それからリベット306を潰せばよい。なおリベット306は、縁部24,24の長手方向にて適当な間隔を存して、複数取り付けられる。
【0063】
上述した第4実施形態の多心フラットケーブル300によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0064】
また、この多心シールドフラットケーブル300によれば、被覆導体16間において、リベット孔304a,304b及びリベット306によって、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル300の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル300では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル302a,302bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0065】
一方、この多心シールドフラットケーブル300を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル302a,302bが得られる。また、リベット306を潰し、両側縁部24bを折り曲げることによって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル300は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0066】
そして、この多心シールドフラットケーブル300を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0067】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態について説明する。
図10は、第5実施形態の多心シールドフラットケーブル400の横断面を概略的に示す図である。
多心シールドフラットケーブル400では、シェル402a,402bの縁部24,24が溶接され、溶接によって形成されたウェルド部(溶接部)404によって、縁部24,24が相互に固定されている。つまり、ウェルド部404が、隙間発生防止手段を構成している。
【0068】
多心シールドフラットケーブル400を製造する場合、重ね合わされた縁部24,24を溶接すればよい。
溶接方法としては、例えば、レーザ溶接、電流によるスポット溶接若しくは抵抗溶接を用いることができるが、レーザ溶接によって、縁部24,24を長手方向全体に渡って溶接するのが好ましい。
【0069】
上述した第5実施形態の多心フラットケーブル400によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0070】
また、この多心シールドフラットケーブル400によれば、被覆導体16間において、ウェルド部404によって、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル400の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル400では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル402a,402bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0071】
一方、この多心シールドフラットケーブル400を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル402a,402bが得られる。また、溶接によって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル400は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0072】
そして、この多心シールドフラットケーブル400を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0073】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態について説明する。
図2は、第6実施形態の多心シールドフラットケーブル500の横断面も概略的に示している。
多心シールドフラットケーブル500では、半田層26に代えて、導電性接着材からなる導電性接着層502を介して、縁部24,24同士が相互に固定されている。
【0074】
多心シールドフラットケーブル500を製造する場合、縁部24に導電性接着材を塗布してから、縁部24,24を重ね合わせ、必要に応じて加熱して導電性接着材を硬化させる。
【0075】
上述した第6実施形態の多心フラットケーブル500によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0076】
また、この多心シールドフラットケーブル500によれば、導電性接着層502を介して、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。この結果、この多心シールドフラットケーブル500では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル20,20の電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0077】
一方、この多心シールドフラットケーブル500を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル20,20が得られる。また、溶接によって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル500は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0078】
そして、この多心シールドフラットケーブル500を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0079】
〔第7実施形態〕
以下、第7実施形態について説明する。
図11は、第7実施形態の多心シールドフラットケーブル600の横断面を概略的に示す図である。多心シールドフラットケーブル600では、1つの内部導体12を1つの絶縁体602が覆っている。つまり、多心シールドフラットケーブル600は、差動信号ではない信号の伝送に適用される。
【0080】
絶縁体602は、真円の横断面形状を有し、シェル604の溝部606は半円形状を有する。溝部606の内周面の半径は、絶縁体602の外周面の半径に一致し、溝部606の内周面は、絶縁体602の外周面に密接する。
第7実施形態の多心シールドフラットケーブル600は、内部導体12と絶縁体602からなる被覆導体608を用いる以外は、第1実施形態の多心シールドフラットケーブル10と同一の製造方法によって製造可能であり、そして、同一の効果を奏する。
【0081】
本発明は、上述した第1乃至第7実施形態に限定されることはなく、第1乃至第7実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0082】
例えば、上述した第1乃至第7実施形態では、多心フラットケーブル10,100,200,300,400,500,600が、4つの被覆導体16,608をそれぞれ含んでいたが、少なくとも2つの被覆導体16,608を含んでいればよい。
【0083】
上述した第1乃至第6実施形態では、絶縁体14は楕円の横断面形状を有していたが、真円の横断面形状を有していてもよい。ただしこの場合、2つの内部導体12,12の配列方向を、被覆導体16の配列方向に対して一定の方向に揃えるための整列手段を設けるのが好ましい。整列手段として、例えば、絶縁体14及び外部導体18に、相互に係合する凹部及び凸部をそれぞれ設けることができる。
【0084】
また、上述した第1乃至第7実施形態では、溝部22,606の内周面に、平滑性を高めるために、めっきを施してもよい。
【0085】
最後に、本発明の多心シールドフラットケーブルは、中継装置及び情報処理装置以外の電子機器にも適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
10 多心シールドフラットケーブル
12 内部導体
14 絶縁体
16 被覆導体
18 外部導体
20 シェル(第1シェル,第2シェル)
22 溝部
24 縁部
26 半田層
【技術分野】
【0001】
本発明は多心シールドフラットケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多心シールドフラットケーブルは、電子機器内において配線として用いられている。
例えば特許文献1が開示する多心シールド付きフラットケーブルは、導体及び導体を覆う絶縁体からなる複数の絶縁線を有し、絶縁線は、1対ずつ個別シールド層及び導電性高分子樹脂によって覆われている。1対の絶縁線、個別シールド層及び導電性高分子樹脂は内部シース付線心を構成し、複数の内部シース付線心が、一括絶縁層及び一括シールド層によって覆われている。
【0003】
また例えば、特許文献1の第3図に従来技術として記載された多心シールド付きフラットケーブルでは、1対の絶縁線及びこれら絶縁線を覆う内部シースが内部シース付線心を構成している。複数の内部シース付線心は、間隔を存して平行に配列され、一括シールド層及び一括外被によって覆われている。一括シールド層は、内部シース付線心の間においてブリッジ部を形成し、ブリッジ部において、対向する一括シールド層が相互に圧接させられている。
【0004】
一方、高周波信号の伝送に適した伝送媒体として、セミリジッドケーブルも知られている。セミリジッドケーブルは、外部導体として銅パイプを有し、銅パイプによって、内部導体及び絶縁体が覆われている。
セミリジッドケーブルの銅パイプにあっては、内径が一定であり、内周面が平滑であり、そして、周方向にて継ぎ目がない。これらの理由により、セミリジッドケーブルを用いた場合、特性インピーダンスのばらつきが少ないために負荷インピーダンスとの整合が取り易く、高周波信号であるために表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−127018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する多心シールドフラットケーブルでは、1対の絶縁線が個別シールド層によって覆われている。個別シールド層は、アルミニウム−ポリエチレン・ラミネートテープからなり、軟質であるため、導体と個別シールド層との間の距離にばらつきが生じる。
従って、この多心シールドフラットケーブルでは、特性インピーダンスがばらつき易く、負荷インピーダンスとの不整合が生じ易い。このため、この多心シールドフラットケーブルには、高周波特性が安定しないという問題がある。
また、巻き付けられたラミネートテープによってシールド層が形成されているケーブルでは、サックアウトと呼ばれる、高周波特性の大きな乱れが出るという本質的な問題がある。
【0007】
また、特許文献1の第3図に記載された従来技術の多心シールドフラットケーブルにあっては、ブリッジ部において、一括シールド層が相互に圧接させられているのみである。
一括シールド層及び一括外被は、アルミニウム−ポリエチレン・ラミネートテープからなり、軟質であるため、ブリッジ部において、一括シールド層の間に隙間が生じてしまう。このため、この多心シールドフラットケーブルには、ブリッジ部での電磁波のシールド性が低いという問題がある。
【0008】
一方、外部導体として銅パイプを用いたセミリジッドケーブルが知られている。しかし、セミリジッドケーブルを1本ずつ配線する作業は煩雑であり、電子機器の配線には、セミリジッドケーブルは不向きである。また、セミリジッドケーブルにあっては、内部導体及び絶縁体を銅パイプに押し込んで製造するため、製造が容易ではなく、製造コストが高いという問題もある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、高周波特性及び電磁シールド性に優れ、且つ、製造が容易な多心シールドフラットケーブル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルにおいて、前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備える、ことを特徴とする多心シールドフラットケーブルが提供される(請求項1)。
【0011】
好ましい態様として、前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、成形された金属板からなる(請求項2)。
【0012】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた半田層を含む(請求項3)。
【0013】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を折り曲げて形成された、V字の横断面形状を有するかしめ部を含む(請求項4)。
【0014】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部に形成されたかしめ孔と、前記第2シェルの縁部に形成され、前記かしめ孔への挿通後に拡開されたかしめ部とを含む(請求項5)。
【0015】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を貫通して取り付けられたリベットを含む(請求項6)。
【0016】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を溶接して形成された溶接部を含む(請求項7)。
【0017】
好ましい態様として、前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた導電性接着層を含む(請求項8)。
【0018】
好ましい態様として、前記被覆導体は、それぞれ2つの前記内部導体を含む(請求項9)。
【0019】
好ましい態様として、前記被覆導体は、楕円の横断面形状を有し、前記楕円の長軸方向は、前記被覆導体に含まれる前記内部導体の配列方向及び前記被覆導体の配列方向に一致している(請求項10)。
【0020】
また、本発明の一態様によれば、それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルの製造方法において、前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備え、前記第1シェルと前記第2シェルの間に、前記被覆導体を配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記第1シェル及び前記第2シェルを相互に固定する固定工程と、を備えることを特徴とする多心シールドフラットケーブルの製造方法が提供される(請求項11)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高周波特性及び電磁シールド性に優れ、且つ、製造が容易な多心シールドフラットケーブル及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の多心シールドフラットケーブルの外観を概略的に示す斜視図である。
【図2】第1実施形態及び第6実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図3】図1の多心シールドフラットケーブルの製造に用いられる部品を横断面にて示す図である。
【図4】図1の多心シールドフラットケーブルの製造方法において、ローラを用いて半田を溶融させ、シェル同士を固定する工程を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の多心シールドフラットケーブルの外観を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図7】第3実施形態の多心シールドフラットケーブルの外観を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図9】第4実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図10】第5実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【図11】第7実施形態の多心シールドフラットケーブルの横断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の多心シールドフラットケーブル10の外観を概略的に示す斜視図であり、図2は、多心シールドフラットケーブル10の横断面を概略的に示す図である。
【0024】
多心シールドフラットケーブル10は、例えば、スイッチングハブやメディアコンバータ等の中継装置や、サーバやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置等の配線部材として用いられる。例えば、多心シールドフラットケーブル10は、プリント回路基板に実装されたIC(集積回路)間、又は、ICとインターフェースとの間の接続に用いられる。多心シールドフラットケーブル10は、特に10Gbps以上の高速信号の伝送に好適である。
【0025】
図1及び図2に示したように、多心シールドフラットケーブル10は、複数の内部導体12を有する。内部導体12は、例えば銅等の金属線からなる。内部導体12の外周面は、絶縁体14によって覆われている。絶縁体14は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、又は、これらの発泡体等からなる。
【0026】
本実施形態では、多心シールドフラットケーブル10は、差動信号伝送用であり、間隔を存して互いに平行な2本の内部導体12が一つの絶縁体14によって一括して覆われている。そして、好ましい態様として、絶縁体14の横断面形状は楕円形状であり、楕円の長軸方向は、2本の内部導体12,12の配列方向に一致している。
以下、2本の内部導体12,12、及び、これら内部導体12,12を覆う絶縁体14をまとめて被覆導体16という。
【0027】
多心シールドフラットケーブル10は、複数の被覆導体16を有し、本実施形態では4本の被覆導体16を有する。被覆導体16は、互いに間隔を存して平行に配列されている。
【0028】
複数の被覆導体16の外周面、即ち絶縁体14の外周面は、外部導体18によって一括して覆われている。外部導体18は、相互に固定された2つのシェル(第1シェル,第2シェル)20,20によって覆われている。シェル20,20は、それぞれ成形された金属板(例えば、銅等)によって構成されている。
【0029】
シェル20,20の各々は、例えば、プレス成形によって成形されており、100μm以上500μm以下の厚さを有する。従って、多心シールドフラットケーブル10は、ある程度の可撓性を有するセミリジッドケーブルである。ただし、500μmという上限は一応の目安であり、用途や使用周波数によっては、この上限を超える場合も有り得る。
シェル20,20の各々は、被覆導体16の数に対応した複数の半楕円形状の溝部22と、溝部の両脇に一体に連なる複数の縁部24とを有する。
【0030】
溝部22の内周面の曲率は、被覆導体16の外周面の曲率に一致させられており、溝部22の内周面は、半楕円の横断面形状を有する。溝部22の内周面は被覆導体16の外周面に密着する。
好ましくは、溝部22の半楕円の長軸は、被覆導体16の配列方向に一致しており、これにより、各被覆導体16における内部導体12,12の配列方向が、被覆導体16の配列方向に一致させられる。
【0031】
一方、2つのシェル20,20の縁部24,24は、それぞれ平坦であり、相互に対向させられている。そして、本実施形態では、縁部24,24は、半田層26によって相互に固定されている。半田層26は、自身を介して縁部24,24同士を相互に固定し、縁部24,24の間に、導電体が存在しない隙間が発生することを防止する隙間発生防止手段を構成している。
好ましくは、半田層26は、縁部24,24の長手方向に隙間無く設けられる。
【0032】
以下、上述した多心シールドフラットケーブル10の製造方法について説明する。
まず、図3に示したように部品を用意する。即ち、金属板をプレス成形し、2つのシェル20,20を用意する。一方、2本の内部導体12,12を絶縁体14で覆う押し出し成形により、被覆導体16を用意する。また、半田層26の材料として、リボン状の半田28を用意する。
【0033】
そして、図4に示したように、用意した被覆導体16及び半田28をシェル20,20で挟むように配置する。この配置にて、加熱された高温のローラ30,30で縁部24,24を外側から押さえ付けるように挟み、そして、縁部24,24の全長に渡ってローラ30,30を相対的に移動させる。これにより半田28が溶融して半田層26を形成し、半田層26を介して縁部24,24同士が相互に固定される。
【0034】
なお、多心シールドフラットケーブル10を1個ずつ製造するのではなく、連続的に製造してもよい。即ち、シェル20,20、被覆導体16及び半田28の部品を連続的に繰り出しながら、ローラ30で加熱してこれらの部品を一体化し、この後、一体化した部品を切断して、多心シールドフラットケーブル10を製造してもよい。或いは、一体化した部品を巻き取って、多心シールドフラットケーブル10のロールとして出荷してもよい。
また、リボン状の半田28に代えて、縁部24に半田めっき層を予め形成しておき、加熱によって、半田めっき層を半田層26に変化させてもよい。
【0035】
上述した第1実施形態の多心シールドフラットケーブル10によれば、シェル20,20が金属からなり、溝部22の形状が高精度にて成形され、且つ、成形後の溝部22の形状が安定に保たれる。また、シェル20,20が金属からなり、溝部22の内周面の平滑性が確保される。
【0036】
これらの結果、この多心シールドフラットケーブル10によれば、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0037】
そして、この多心シールドフラットケーブル10によれば、縁部24,24同士の間が導体である半田層26を介して相互に固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無く、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル20,20の電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
かくして、この多心シールドフラットケーブル10は、高周波特性及び電磁シールド性に優れている。
なお、隙間発生防止手段は、電磁シールド性が悪化しない範囲で、縁部24,24の間に僅かな隙間が発生することを許容してもよい。
【0038】
一方、この多心シールドフラットケーブル10を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル20が得られる。また、リボン状の半田28を用い、高温のローラ30で加熱することによって、半田層26を介して縁部24,24同士を容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル10は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0039】
そして、この多心シールドフラットケーブル10を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10が複数の被覆導体16を含んでおり、外部導体18及び絶縁体14を剥いて内部導体12を露出させる端末処理作業や、露出させた内部導体12を接続対象のコネクタ等に接続する作業を一括して行うことができる。このため、この多心シールドフラットケーブル10を使用すれば、従来のセミリジッドケーブルを1本ずつ使用する場合に比べて、端末処理作業やコネクタ等への接続作業が容易になる。
【0040】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の説明では、先行する実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図5は、第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100の外観を概略的に示す斜視図であり、図6は、多心シールドフラットケーブル100の横断面を概略的に示す図である。
【0042】
多心シールドフラットケーブル100は、半田層26を有さず、シェル102a,102bが、縁部24,24にかしめ部104a,104bを更に有する点において、多心シールドフラットケーブル10とは異なる。
【0043】
かしめ部104a,104bは、2つのシェル102a,102bの重ね合わせ方向にて一方の側に向けて、縁部24から突出している。かしめ部104aは、V字の横断面形状を有し、かしめ部104bは、かしめ部104aと相似の略V字の横断面形状を有する。かしめ部104bは、自身のV字の間にかしめ部104aを挟み込み、かしめ部104aに密接している。
また、かしめ部104a,104bは、それぞれ、被覆導体16に沿うように、縁部24,24の長手方向にて、多心シールドフラットケーブル100の端から端まで延びている。
【0044】
一方、シェル102a,102bのうち、一方のシェル102bにおいては、多心シールドフラットケーブル100の両側に位置する平坦部(両側平坦部)24bが、他方のシェル102aの両側縁部24aよりも幅広に成形されている。そして、幅広の両側縁部24bは、他方の両側縁部24aの側縁を覆うように折り曲げられ、略180度折り返されている。
【0045】
上述した第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100の製造方法は、2つのシェル102a,102bの固定方法において、第1実施形態と異なる。即ち、多心シールドフラットケーブル100の製造方法では、かしめ部104bのV字の間にかしめ部104aを配置した状態で、かしめ部104bを圧縮することによって、かしめ部104a,104bが相互に密接して固定される。
【0046】
そして、一方のシェル102bの両側縁部24bを折り曲げることによって、両側縁部24a,24b同士が相互に密接して固定される。
つまり、かしめ部104a,104bが、被覆導体16間において、隙間発生防止手段を構成し、折り曲げられた両側縁部24bが、多心シールドフラットケーブル100の両側において、隙間発生防止手段を構成している。
【0047】
上述した第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0048】
また、この多心シールドフラットケーブル100によれば、被覆導体16間において、かしめ部104aにかしめ部104bが密接して固定され、かしめ部104a,104b同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル100の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル100では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル102a,102bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0049】
一方、この多心シールドフラットケーブル100を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル102a,102bが得られる。また、かしめ部104bを圧縮し、両側縁部24bを折り曲げることによって、かしめ部104a,104b同士、及び、両側縁部24a,24b同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル100は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0050】
そして、この多心シールドフラットケーブル100を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0051】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態の多心シールドフラットケーブル200の外観を概略的に示す斜視図であり、図8は、多心シールドフラットケーブル200の横断面を概略的に示す図である。
【0052】
多心シールドフラットケーブル200は、一方のシェル202bが、縁部24にかしめ孔204bを有し、他方のシェル202aが、かしめ孔204bの周縁部と係合するかしめ部204aを有する点において、第2実施形態の多心シールドフラットケーブル100と異なっている。
【0053】
より詳しくは、一方のシェル202bの縁部24には、長手方向にて間隔を存して、複数のかしめ孔204bが形成されている。そして、他方のシェル202aには、かしめ孔204bの位置に対応して、複数のかしめ部204aが設けられている。
【0054】
各かしめ部204aは、縁部24から、重ね合わされるシェル202bに向けて突出し、かしめ孔204bに一方の側から挿通されている。そして、かしめ部204aは、かしめ孔204bの反対側において拡開され、縁部24と協働して、かしめ孔204bの周縁部を挟んでいる。かしめ部204a及び縁部24が、かしめ孔204bの周縁部を挟むことによって、被覆導体16間において、2つのシェル202a,202bの縁部24,24同士が相互に密接して固定される。
【0055】
上述した第3実施形態の多心シールドフラットケーブル200の製造方法は、2つのシェル202a,202bの固定方法において、第2実施形態と異なる。即ち、多心シールドフラットケーブル200の製造方法では、かしめ孔204bに、かしめ加工前の円筒形状のかしめ部204aを挿入してから、かしめ部204aの先端を拡開するように圧縮する。
【0056】
これによって、拡開されたかしめ部204a及び縁部24によって、かしめ孔204bの周縁が挟まれ、縁部24,24が相互に密接して固定される。
つまり、かしめ孔204b及びかしめ部204aが、被覆導体16間において、隙間発生防止手段を構成している。
【0057】
上述した第3実施形態の多心シールドフラットケーブル200によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0058】
また、この多心シールドフラットケーブル200によれば、被覆導体16間において、かしめ孔204b及びかしめ部204aによって、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル200の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル200では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル202a,202bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0059】
一方、この多心シールドフラットケーブル200を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル202a,202bが得られる。また、かしめ部204aを圧縮し、両側縁部24bを折り曲げることによって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル200は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0060】
そして、この多心シールドフラットケーブル200を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0061】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態について説明する。
図9は、第4実施形態の多心シールドフラットケーブル300の横断面を概略的に示す図である。
多心シールドフラットケーブル300では、隙間発生防止手段として、シェル302a,302bにリベット孔304a,304bが設けられ、リベット孔304a,304bを貫通して、縁部24,24にリベット306が取り付けられている。
【0062】
多心シールドフラットケーブル300を製造する場合、リベット孔304a,304bに、潰す前のリベット306を挿通し、それからリベット306を潰せばよい。なおリベット306は、縁部24,24の長手方向にて適当な間隔を存して、複数取り付けられる。
【0063】
上述した第4実施形態の多心フラットケーブル300によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0064】
また、この多心シールドフラットケーブル300によれば、被覆導体16間において、リベット孔304a,304b及びリベット306によって、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル300の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル300では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル302a,302bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0065】
一方、この多心シールドフラットケーブル300を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル302a,302bが得られる。また、リベット306を潰し、両側縁部24bを折り曲げることによって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル300は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0066】
そして、この多心シールドフラットケーブル300を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0067】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態について説明する。
図10は、第5実施形態の多心シールドフラットケーブル400の横断面を概略的に示す図である。
多心シールドフラットケーブル400では、シェル402a,402bの縁部24,24が溶接され、溶接によって形成されたウェルド部(溶接部)404によって、縁部24,24が相互に固定されている。つまり、ウェルド部404が、隙間発生防止手段を構成している。
【0068】
多心シールドフラットケーブル400を製造する場合、重ね合わされた縁部24,24を溶接すればよい。
溶接方法としては、例えば、レーザ溶接、電流によるスポット溶接若しくは抵抗溶接を用いることができるが、レーザ溶接によって、縁部24,24を長手方向全体に渡って溶接するのが好ましい。
【0069】
上述した第5実施形態の多心フラットケーブル400によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0070】
また、この多心シールドフラットケーブル400によれば、被覆導体16間において、ウェルド部404によって、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。そして、多心シールドフラットケーブル400の両側においても、両側縁部24aに両側縁部24bが密接して固定され、両側縁部24a,24b同士の間に隙間が無い。これらの結果、この多心シールドフラットケーブル400では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル402a,402bの電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0071】
一方、この多心シールドフラットケーブル400を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル402a,402bが得られる。また、溶接によって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル400は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0072】
そして、この多心シールドフラットケーブル400を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0073】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態について説明する。
図2は、第6実施形態の多心シールドフラットケーブル500の横断面も概略的に示している。
多心シールドフラットケーブル500では、半田層26に代えて、導電性接着材からなる導電性接着層502を介して、縁部24,24同士が相互に固定されている。
【0074】
多心シールドフラットケーブル500を製造する場合、縁部24に導電性接着材を塗布してから、縁部24,24を重ね合わせ、必要に応じて加熱して導電性接着材を硬化させる。
【0075】
上述した第6実施形態の多心フラットケーブル500によれば、多心シールドフラットケーブル10と同様に、特性インピーダンスが安定し、負荷インピーダンスとの整合が容易に図られる。また、高周波信号を伝送したときに表皮効果が顕著になっても、伝送損失が抑制される。
【0076】
また、この多心シールドフラットケーブル500によれば、導電性接着層502を介して、縁部24,24同士が密接して固定され、縁部24,24同士の間に隙間が無い。この結果、この多心シールドフラットケーブル500では、優れた電磁シールド性が確保される。そしてこの結果として、クロストークが殆ど皆無に抑えられる。
更に、シェル20,20の電位が、高周波領域においても常に同じになるため、被覆導体16の寸法が理想値からずれていても、特性劣化が起こりにくい。
【0077】
一方、この多心シールドフラットケーブル500を製造する場合、金属板をプレス成形することによって容易にシェル20,20が得られる。また、溶接によって、縁部24,24同士をそれぞれ容易に固定することができる。従って、この多心シールドフラットケーブル500は、製造が容易であり、大量生産により安価に供給可能である。
【0078】
そして、この多心シールドフラットケーブル500を使用する場合、多心シールドフラットケーブル10と同様に、端末処理作業や接続作業が容易になる。
【0079】
〔第7実施形態〕
以下、第7実施形態について説明する。
図11は、第7実施形態の多心シールドフラットケーブル600の横断面を概略的に示す図である。多心シールドフラットケーブル600では、1つの内部導体12を1つの絶縁体602が覆っている。つまり、多心シールドフラットケーブル600は、差動信号ではない信号の伝送に適用される。
【0080】
絶縁体602は、真円の横断面形状を有し、シェル604の溝部606は半円形状を有する。溝部606の内周面の半径は、絶縁体602の外周面の半径に一致し、溝部606の内周面は、絶縁体602の外周面に密接する。
第7実施形態の多心シールドフラットケーブル600は、内部導体12と絶縁体602からなる被覆導体608を用いる以外は、第1実施形態の多心シールドフラットケーブル10と同一の製造方法によって製造可能であり、そして、同一の効果を奏する。
【0081】
本発明は、上述した第1乃至第7実施形態に限定されることはなく、第1乃至第7実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0082】
例えば、上述した第1乃至第7実施形態では、多心フラットケーブル10,100,200,300,400,500,600が、4つの被覆導体16,608をそれぞれ含んでいたが、少なくとも2つの被覆導体16,608を含んでいればよい。
【0083】
上述した第1乃至第6実施形態では、絶縁体14は楕円の横断面形状を有していたが、真円の横断面形状を有していてもよい。ただしこの場合、2つの内部導体12,12の配列方向を、被覆導体16の配列方向に対して一定の方向に揃えるための整列手段を設けるのが好ましい。整列手段として、例えば、絶縁体14及び外部導体18に、相互に係合する凹部及び凸部をそれぞれ設けることができる。
【0084】
また、上述した第1乃至第7実施形態では、溝部22,606の内周面に、平滑性を高めるために、めっきを施してもよい。
【0085】
最後に、本発明の多心シールドフラットケーブルは、中継装置及び情報処理装置以外の電子機器にも適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
10 多心シールドフラットケーブル
12 内部導体
14 絶縁体
16 被覆導体
18 外部導体
20 シェル(第1シェル,第2シェル)
22 溝部
24 縁部
26 半田層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、
間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルにおいて、
前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、
前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、
前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備える、
ことを特徴とする多心シールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、成形された金属板からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた半田層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を折り曲げて形成された、V字の横断面形状を有するかしめ部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項5】
前記隙間発生防止手段は、
前記第1シェルの縁部に形成されたかしめ孔と、
前記第2シェルの縁部に形成され、前記かしめ孔への挿通後に拡開されたかしめ部とを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項6】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を貫通して取り付けられたリベットを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項7】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を溶接して形成された溶接部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項8】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた導電性接着層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項9】
前記被覆導体は、それぞれ2つの前記内部導体を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項10】
前記被覆導体は、楕円の横断面形状を有し、
前記楕円の長軸方向は、前記被覆導体に含まれる前記内部導体の配列方向及び前記被覆導体の配列方向に一致している
ことを特徴とする請求項9に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項11】
それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、
間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルの製造方法において、
前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、
前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、
前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備え、
前記第1シェルと前記第2シェルの間に、前記被覆導体を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記第1シェル及び前記第2シェルを相互に固定する固定工程と、
を備えることを特徴とする多心シールドフラットケーブルの製造方法。
【請求項1】
それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、
間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルにおいて、
前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、
前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、
前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備える、
ことを特徴とする多心シールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、成形された金属板からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた半田層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を折り曲げて形成された、V字の横断面形状を有するかしめ部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項5】
前記隙間発生防止手段は、
前記第1シェルの縁部に形成されたかしめ孔と、
前記第2シェルの縁部に形成され、前記かしめ孔への挿通後に拡開されたかしめ部とを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項6】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を貫通して取り付けられたリベットを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項7】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部及び前記第2シェルの縁部を溶接して形成された溶接部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項8】
前記隙間発生防止手段は、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間に設けられた導電性接着層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項9】
前記被覆導体は、それぞれ2つの前記内部導体を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項10】
前記被覆導体は、楕円の横断面形状を有し、
前記楕円の長軸方向は、前記被覆導体に含まれる前記内部導体の配列方向及び前記被覆導体の配列方向に一致している
ことを特徴とする請求項9に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項11】
それぞれ内部導体及び前記内部導体を覆う絶縁体を含む、複数の被覆導体と、
間隔を存して相互に平行に配列された前記被覆導体を一括して覆う外部導体とを備える多心シールドフラットケーブルの製造方法において、
前記外部導体は、前記複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルを含み、
前記第1シェル及び前記第2シェルの各々は、前記被覆導体の外周面を覆う複数の溝部、及び、前記溝部の両側に一体に連なる複数の縁部を含み、
前記多心シールドフラットケーブルは、前記第1シェルの縁部と前記第2シェルの縁部の間における隙間の発生を防止する隙間発生防止手段を更に備え、
前記第1シェルと前記第2シェルの間に、前記被覆導体を配置する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記第1シェル及び前記第2シェルを相互に固定する固定工程と、
を備えることを特徴とする多心シールドフラットケーブルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−227037(P2012−227037A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94716(P2011−94716)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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