説明

多成分繊維の溶融紡糸のための装置

本発明は、多成分繊維の溶融紡糸のための、個別に案内された溶融成分の導入のための少なくとも2つの溶融入口を備える装置に関する。該装置は、溶融成分の分配のための複数の供給通路を有する供給プレート、供給プレートに配設された分配ブロック、並びに分配ブロックに隣接していて複数のノズル孔を有するノズルプレートを備えており、分配ブロックは、互いに積層されかつ複数の分配開口部の各穴パターンを有する薄い複数の分配プレートを含んでいる。薄い分配プレートは、分配ブロック内で一緒に複数の溶融通路を形成するように配列されており、溶融通路は、供給プレートの供給通路とノズルプレートのノズル孔とをつないでいる。特に分配プレートのプレート平面内での溶融成分の流れに際して大きな流過量を達成するために、分配ブロック内において、分配開口部の同一の穴パターンを有する複数の分配プレートが、互いに直接に密接して積層されている。これにより、分配プレートの製造のための簡単な製造技術で大きな流れ横断面を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分繊維の溶融紡糸のための、請求項1の上位概念に記載の形式の装置に関する。
【0002】
多成分繊維の溶融紡糸において、2つの溶融成分は一緒に1つのノズル開口部から押し出され、結果として、ノズル開口部から押し出される繊維ストランド又はフィラメントは、横断面で見て複数の材料成分を有している。例えば、供給される2つのポリマー材料から成る二重構造繊維は、横断面で見て、コアと周壁とから成るパターン若しくは一方の側部と他方の側部とから成るパターンを有している。この種の複数構造繊維は、例えば1つの糸、紡糸ケーブル若しくは不織布を成形するために、多数互いに並行に押し出される。この場合に、溶融成分は分配され、かつ各ノズル孔に供給されねばならない。溶融成分を多くの数のノズル孔にわたって均一に分配するために、多成分繊維の溶融紡糸のための公知技術の装置においては、ノズル孔への溶融成分の分配及び供給は、薄い個別の複数の分配プレートを積層して形成された分配ブロックによって行われるようになっている。公知技術において、原理的に2種類の溶融紡糸装置が知られている。
【0003】
欧州特許出願公開第0677600号明細書に開示の多成分繊維の溶融紡糸のための装置においては、分配ブロックは2つの群の複数の分配プレートによって形成されている。分配プレートはすべて、該分配プレートを完全に貫通する分配開口部の個々の穴パターンを有している。第1群の分配プレートは、プレート平面の方向への溶融流を可能にするために、溝状若しくはスリット状の分配開口部を有している。第2群の分配プレートは、溶融流を流過案内するために、円形の分配開口部を有している。第1群のいわゆるパターンプレートと第2群のいわゆる画定プレートとは互いに交互に組み合わされており、これによって溶融成分は、プレート平面の方向と、プレート平面に対して垂直な方向とに交互に導かれるようになっている。この場合に自由な流れ横断面は、特にプレート平面の方向では一般的に分配プレートの厚さによって規定されるようになっている。
【0004】
前記公知の装置においては欠点が、溶融成分の分配及び供給のために、分配ブロック内の比較的長い溶融通路を、異なる群の分配プレートによって形成することにある。この場合に溶融通路内の大きな流過量は、相応の厚さの分配プレートによってしか実現され得ないことになる。このような肉厚の分配プレートにおいては、欠点として、分配プレートの分配開口部の製作は、大きな製作費用を伴ってしか行われない。一面において、すべての分配開口部は、溶融成分の均一な分配を実現するために、できるだけ同一の横断面を有していなければならない。他面においてプレートは、漏れを避けるために高い直線性を有していなければならない。この場合に、例えば分配開口部のエッチング加工のような簡単かつ正確な製作手段が望まれる。このような製作手段は、しかしながら極めて薄いプレートにしか適していない。
【0005】
欧州特許第0413688B1号明細書に開示の多成分繊維の溶融紡糸のための別の装置においては、分配ブロックとして積層される分配プレートは、その表面に分配溝を有しており、該分配溝は分配プレートの分配開口部に通じている。この場合に、プレート平面の方向に向けられる溶融流は、分配プレートの上面及び下面における分配溝によって案内されるようになっている。大きな流過量は、大きな溝横断面を必要としており、大きな溝横断面は、著しく厚い分配プレートによってしか得られないか、若しくは分配プレートの表面における高い面割合によってしか得られない。つまり、分配プレートの厚さを著しく大きくすることによってか、溝が分配プレートの表面に占める面割合を高くすることによって、例えば溝の数を増やすことによってしか、大きな溝横断面を得ることはできない。しかしながら、大きな溶融流のために分配ブロック内におけるノズル孔当たりの多くの数の個別の溶融通路を設けることは、単位面積当たりのノズル孔の数の大きいことに基づき不可能である。溝深さの深い分配溝を成形することには、すでに述べてあるように製造上の問題がある。
【0006】
溶融紡糸のための公知の装置の場合に、複数の溶融成分をノズル孔に対して分配及び案内する分配ブロックにおいて、分配ブロック内のプレート装置によっては比較的小さい溶融流量しか可能にしないものであり、またプレート装置の分配プレートは、煩雑な製作手間をかけて、ひいては大きな製作誤差を伴ってしか、つまり低い精度でしか成形されないものである。分配プレートの製造の際の大きな製作誤差は、必然に、分配プレートが互いに密に積層されて保持されてなる分配ブロック内におけるシールの問題を発生させることになる。
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式に多成分繊維の溶融紡糸のための装置を改良して、数の多い分配プレートを有する分配ブロックによって、数の多いノズル孔の形成並びに大きな溶融流量を可能にすることである。
【0008】
さらに本発明の課題は、多くの数の分配プレートを用いて1つの分配ブロック内に形成された溶融通路により、一様な圧力差のもとでの均一な調量が可能であるような多成分繊維の溶融紡糸のための装置を形成することである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の構成によれば、多成分繊維の溶融紡糸のための装置であって、それぞれ個別に案内された各溶融成分の導入のための少なくとも2つの溶融入口、溶融成分の分配のための複数の供給通路を有する供給プレート、供給プレートに配設(対応配置)された分配ブロック、並びに分配ブロックに隣接していて複数のノズル孔を有するノズルプレートを備えており、分配ブロックは、互いに積層されかつ複数の分配開口部の各穴パターンを有する複数の分配プレートを含んでおり、分配プレートは、一緒に複数の溶融通路を形成しており、溶融通路は、供給プレートの供給通路とノズルプレートのノズル孔とをつないでいる形式のものにおいて、分配開口部の同一の穴パターンを有する薄い複数の分配プレートが、互いに直接に密接して分配ブロック内に積層されている。
【0010】
本発明は、分配ブロック内で分配プレートの分配開口部によって形成される溶融通路の流れ横断面が各プレート厚さに依存していないことを特徴としている。これにより、各溶融通路内における溶融流の調量のために必要な圧力差は、もっぱら開口部の形状によって規定されるようになっている。各分配プレートの厚さに依存することなしに、分配ブロック内で大きな溶融流量を複数のノズル孔へ導くことができるようになっている。このために分配ブロック内には、分配開口部の同一の穴パターンを有する複数の分配プレートが互いに直接に接して密に積層されている。このような構成により、極めて薄い分配プレートのみを用いて、溶融通路内、特にプレート平面内の大きな流れ横断面を形成することができるようになっている。さらに、薄い分配プレートは特に次のような利点を有しており、つまり分配開口部を簡単な製造方法により高い製作精度で成形することができる。
【0011】
複数の溶融成分を1つのノズルプレートの個別の各ノズル孔に均一に分配するために、本発明の有利な実施の形態によれば、分配開口部の同一の穴パターンを有する積層された分配プレートは、1つのプレート積層を形成しており、かつ分配ブロックは、分配開口部の互いに異なる穴パターンを有する複数のプレート積層を含んでおり、該プレート積層は互いに積層されている。このような構成により、各溶融成分は、個別の各溶融通路を通して導かれるようになっており、該各溶融通路の自由な流れ横断面はもっぱら各分配開口部によって規定されている。
【0012】
溶融通路の、1つのプレート積層における上面及び下面で画定される流れ横断面を互いに一致させた状態に保つために、有利な実施の形態によれば、分配プレートは、プレート積層の1つにおいて該プレート積層の分配開口部により形成される溶融通路が一様な大きさの流れ断面を有するように、少なくとも1つのセンタリング手段によって保持されるようになっている。
【0013】
1つのプレート積層における分配プレートの数の大きい場合に、本発明の別の実施の形態によれば、該プレート積層の中央の領域に配置される分配プレートは、該プレート積層の外側の分配プレートの分配開口部に比べて断面の大きな分配開口部を有している。このような構成に基づき、1つのプレート積層若しくは各プレート積層における上方の分配プレートと下方の分配プレートとの間の誤差によるずれは、中央の分配プレートの大きな分配開口部により補償される。
【0014】
同一の穴パターンを有する分配プレートを多重配置する場合に分配ブロック内の分配プレートの数をできるだけ小さく保つために、本発明の実施の形態によれば、分配ブロック内の分配プレートはそれぞれ少なくとも2種類の分配開口部を有しており、第1の種類の配開口部は、連通開口部として形成されていて、溶融流をプレート面に対して垂直に導くようになっており、第2の種類の分配開口部は、転向開口部として形成されていて、溶融流をプレートの平面内で導く、つまりプレート面に対して実質的に平行な方向(プレート面の方向)に導くようになっており、つまり各分配プレートにおいて、溶融流はプレート面に対して垂直に導かれ、かつプレートの平面内を導かれる。この場合に分配開口部の穴パターンは、各分配プレート内における連通開口部の位置及び転向開口部の位置を規定している。
【0015】
各ノズル孔への溶融成分の正確な調量及び供給を達成するために、本発明の有利な実施の形態によれば、分配ブロック内における、分配開口部の互いに異なる穴パターンを有する分配プレートの配置は、各溶融成分がそれぞれ個別に分配ブロックの各溶融通路を介してノズルプレートのノズル孔に供給されるように選ばれている。このような構成により、各ノズル孔に1つ若しくは複数の溶融通路が配設され、該溶融通路を通して溶融成分が送られるようになっている。
【0016】
ノズルプレートのノズル孔への複数の溶融成分の供給に際して複数の溶融成分の同一の滞留時間を達成するために、本発明の有利な実施の形態によれば、分配ブロック内の各溶融通路は、供給プレートとノズルプレートとの間で同一の長さに形成されている。このような構成により、溶融成分の品質及び特性に関して高い均一性を有する繊維ストランドが押し出される。従って本発明に係る装置は、質の高い繊維製品の製造に適している。
【0017】
ノズル開口を通して繊維ストランドを押し出すための充分な圧力を得るために、分配ブロック内における分配プレートの配置及び配列若しくは組み合わせは、溶融通路が供給プレートの供給通路とノズルプレートのノズル孔との間で、溶融成分における<120バール、有利には<60バールの圧力低下(圧力落差)しか発生させないように、つまり、溶融成分における<120バールの圧力差、有利には<60バールの圧力差しか有さないように行われている。このような構成により、溶融成分の一般的な供給圧力において200バールを超える充分な押し出し圧力が保証されている。
【0018】
分配プレート内の穴パターンの適切な選択並びに分配プレートの適切な配置及び配列により、溶融通路の所定の配設を行うことができ、このような構成に基づき各ノズル孔によって、横断面で見てコアと周壁とから成るパターン、つまり例えば同心円状のパターン若しくは一方の側部(半部)と他方の側部(半部)とから成るパターンを有する各1つの繊維又はファイバーが押し出されるようになっている。本発明の有利な実施の形態によれば、分配ブロック内における、溶融流に関してノズルプレートの前に位置する最後の分配プレートの穴パターンが、コアと周壁とから成る横断面(パターン)を有する繊維若しくは一方の側部と他方の側部とから成る横断面を有する繊維を各ノズル孔から押し出すことができるように、構成されている。本発明に係る装置は、多成分繊維の押し出しのために極めてフレキシブルに用いられるものである。
【0019】
分配プレートの分配開口部をできるだけ簡単に成形するために、本発明の有利な実施の形態によれば、分配プレートは、1mmよりも小さい、有利には0.5mmよりも小さい材料厚さ(肉厚)を有する金属から形成されており、この場合に分配プレートの分配開口部は、エッチングにより加工成形されるようになっている。このような構成に基づき、分配プレートを貫通する分配開口部(貫通開口部)をエッチングにより成形するために、一回の作業工程しか必要とされない。
【0020】
一面において分配プレートの分配開口部の高いシール性を達成しかつ他面において分配開口部の成形性を可能にするために、本発明の有利な実施の形態によれば、分配プレートの連通開口部又は貫通開口部は、分配プレートの材料厚さの少なくとも1.0倍の直径を有する円形穴として形成されている。
【0021】
分配プレートの転向開口部は、溝若しくはスリットによって形成されており、該溝若しくはスリットは、分配プレートの材料厚さの少なくとも1.0倍の溝幅若しくはスリット幅を有している。
【0022】
分配プレートの金属と、供給プレート及びノズルプレートの材料とは、該すべてのプレート(分配プレート、供給プレート及びノズルプレート)がほぼ同一の熱膨張を有するように選ばれている。このような構成により、各プレート間の接合継ぎ目若しくはシール継ぎ目は、温度の高い場合にも確実に密閉され、漏れは発生しないようになっている。さらに、プレート間の材料応力も避けられる。
【0023】
本発明に係る装置の有利な実施の形態によれば、供給プレート、分配ブロック内の分配プレート及びノズルプレートは、互いにセルフシール式に保持されている。追加的なシール手段は不要になっている。
【0024】
次に、本発明に係る装置を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る装置の第1の実施の形態の概略的な断面図である。
【図2】図1の実施の形態の概略的な平面図である。
【図3】図1の実施の形態の概略的な部分断面図である。
【図4】分配プレートの実施の形態の概略的な平面図である。
【図5】本発明に係る装置の別の実施の形態の概略的な断面図である。
【図6.1】分配プレートの穴パターンの実施の形態の概略的な平面図である。
【図6.2】分配プレートの穴パターンの別の実施の形態の概略的な平面図である。
【図6.3】分配プレートの穴パターンの更に別の実施の形態の概略的な平面図である。
【図6.4】分配プレートの穴パターンの更に別の実施の形態の概略的な平面図である。
【0026】
図1及び図2には、本発明に係る装置の第1の実施の形態が概略的に示してある。図1は、該装置の断面図であり、図2は該装置の平面図である。
【0027】
図1及び図2に示す前記実施の形態は、長方形の複数のプレートを互いに接合することによりプレート構造で形成されている。上方の接続プレート1が設けられており、該接続プレートは、2つの溶融入口6.1,6.2を有している。溶融入口6.1,6.2は、運転時には個別に溶融成分を装置に供給するために、それぞれ各溶融通路を介して個別の2つの溶融源に接続されている。
【0028】
接続プレート1には1つの供給プレート2が接続してあり、該供給プレートは上面において各溶融入口6.1,6.2に対応するそれぞれ1つの流入室7.1,7.2を有している。流入室7.1,7.2は、複数の溶融通路を介して供給プレート2の下面に接続されている。溶融通路は、複数の流入溝10,11及び複数の流入孔8,9により形成されている。流入孔8は、1つの端部でもって流入室7.1に通じており、かつ相対する別の端部でもって流入溝10に通じている。流入孔9は、1つの端部でもって流入室7.2に通じており、かつ相対する別の端部でもって流入溝11に通じている。流入溝10と流入溝11とは互いに並列に並べて供給プレート2の下面に形成されていて、供給プレート2の機能面全体にわたって延びている。
【0029】
図1の横断面において、接続プレート1の互いにずらして形成された溶融入口6.1,6.2と供給プレート2のずらされた流入室7.1,7.2とは、互いに並べられた位置で示されている。ずれは、接続プレート1及び供給プレート2の中央領域に描かれた破線によって明らかにしてある。
【0030】
図1に示してあるように、下面には分配ブロック3が接続されており、該分配ブロックは複数の分配プレートによって形成されている。分配ブロック3の構成及び機能を次に詳細に説明する。
【0031】
分配ブロック3にノズルプレート4が接続されており、該ノズルプレートは、該ノズルプレートの機能面内に均一に分配された複数のノズル孔22を有している。ノズル孔22は有利には列をなして形成されており、各ノズル孔22は、ノズルプレートの下面に設けられた細管路区分24に通じている。ノズルプレート4の上面には、ノズル孔22の入口区分23が形成されており、該入口区分は分配ブロック3の下面に通じている。
【0032】
図1及び図2に示してあるように、接続プレート1の外側の縁部には複数の結合手段5が設けられており、該結合手段は、接続プレート1と、供給プレート2と、分配ブロック3と、ノズルプレート4とを互いに結合することにより、各プレート1〜4間に形成されるシール継ぎ目を密閉しており、その結果、外部への漏れや、溶融成分を混合してしまうような内部漏れは発生しないようになっている。
【0033】
供給プレート2とノズルプレート4との間に配置された分配ブロック3の説明のために、図3が添付してある。図3には、分配ブロック3の領域の横断面が部分的に示してある。分配ブロック3の上面には供給プレート2が配置されている。下面に並べて配置された流入溝10,11は、該流入溝の開いた溝端部でもって直接に分配ブロック3の上面に通じている。分配ブロック3は、複数の分配プレート12.1〜12.6によって形成されている。分配プレートの数は一例として上げられているものである。各分配プレート12.1〜12.6は複数の分配開口部14を有しており、該分配開口部は該分配プレートを上面から下面まで完全に貫通している。分配ブロック3内において分配開口部14によって分配ブロック3の上面と下面との間の接続のための溶融通路を形成するために、分配開口部14は所定の穴パターンで分配プレート12.1〜12.6内に配置されている。この場合に分配プレート12.1〜12.6の穴パターンは、それぞれ2つの種類の分配開口部14を含んでいる。第1の種類の分配開口部14は、プレート平面に対して横方向への溶融流の案内のみを可能にする連通開口部15によって形成されている。第2の種類の分配開口部は、プレート平面の方向への溶融流の案内を可能にする溝状若しくはスリット状の転向開口部16によって形成されている。穴パターンの選択及び組み合わせによって、分配ブロックの下面において両方の溶融成分を各ノズル孔へ供給するための種々の溶融通路を形成することができる。
【0034】
図3に示す実施の形態においては、第1の両方の分配プレート12.1,12.2は、分配開口部の同一の穴パターンを有している。図3の断面部分において、分配プレート12.1,12.2は、中央の1つの転向開口部16及び外側の2つの連通開口部15を有している。分配プレート12.1,12.2は、穴パターンが同一である1つのプレート積層13.1を形成している。自由な流れ断面は、実質的に連通開口部15及び転向開口部16の幾何学形状によって形成されている。このような構成により、プレート平面に向けられた溶融流の圧力は、分配プレートの各材料厚さに依存することなしに形成される。転向開口部16の溝幅は、該転向開口部により形成される溶融通路内での必要な圧力を維持するために利用されてよい。プレート積層13.1内における分配プレート12.1,12.2の複数倍重ねられた配置、つまり多重配置によって、大きな溶融流過量を実現することも可能である。分配プレートの数の選択によって、同一の溝幅で溝深さを任意に大きくすることができる。
【0035】
分配プレート12.1,12.2の下流に配置される分配プレート12.3,12.4は、同様に同一の穴パターンを有する1つのプレート積層13.2を形成している。分配プレート12.3,12.4はそれぞれ中央の2つの連通開口部15を有しており、該連通開口部は、分配プレート12.2の転向開口部16と連通するように配置されている。分配プレート12.3,12.4内の他の2つの転向開口部16は、分配プレート12.2の連通開口部15と連通するように形成されている。
【0036】
分配プレート12.4には、同一の穴パターンを有する他の2つの分配プレート12.5,12.6が接続している。分配プレート12.5,12.6の穴パターンは、それぞれ1つの連通開口部15と1つの転向開口部16とが、一緒に1つのノズル孔22の入口区分23に通じるように形成されている。分配プレート12.5,12.6は、他の1つのプレート積層を形成しており、結果として、分配ブロックは全体で3つのプレート積層13.1〜13.3によって形成されている。各プレート積層13.1〜13.3は、分配開口部の同一の穴パターンを有する複数の分配プレートを含んでいる。図2に示す部分では全体で4つの溶融通路が形成されており、該溶融通路は、流入溝10,11を両方のノズル孔22に接続している。中央の両方の溶融通路は、一緒に分配プレート12.2の1つの転向開口部16から供給を受けるようになっており、該転向開口部は、溶融成分を流入溝11から直接に受け取るようになっている。外側の両方の溶融通路は、それぞれ異なる溶融成分を流入溝10からノズル孔22へ導くようになっている。このような構成により、各ノズル孔22内では、多成分繊維若しくは複数成分繊維が押し出されるようになっており、該繊維の横断面は、1つの溶融成分の側部と別の溶融成分の側部とから成るパターン(側部対側部の構造)を有している。
【0037】
プレート積層13.1〜13.3内において溶融通路のできるだけ同一の入口断面及び出口断面を形成するために、分配プレート12.1〜12.6は、分配ブロック3内でセンタリング手段によって相互に位置固定されている。図1に示してあるように、センタリング手段は、例えばセンタリングピン20によって形成されていてよい。
【0038】
図1に示す実施の形態において、分配プレート12.1〜12.6は、材料厚さ<0.5mmの金属から成っている。分配プレート内の分配開口部14は、エッチングにより成形されるようになっており、従って、分配開口部の任意の穴パターンを分配プレート12.1〜12.6内に形成することができる。分配プレート12.1〜12.6の金属は、熱膨張に関して、供給プレート2及びノズルプレート4の材料とほぼ同じ値のものが選ばれており、従って、200℃を上回る高い運転温度でも相互の著しい応力は発生しないようになっている。図1に示すプレートは、追加的なシール手段を用いることなしに互いに直接にかつ密に積層されている。これによって、プレート1〜4の各上面及び下面、並びに分配ブロック3の分配プレート12.1〜12.6の各上面及び下面は、互いにセルフシール状態に保たれている。ノズル孔22への供給のために分配ブロック3内に設けられる溶融通路は、同一長さに形成されており、その結果として、分配中の複数の溶融成分の同一の滞留時間が保証されている。
【0039】
分配ブロック内における各溶融通路により、できるだけ大きな数のノズル孔への供給を可能にするために、分配開口部14は、列をなして配置されるように形成されている。図4には、例として本発明に係る装置に用いられ得る分配プレート12.1の平面が示してある。複数の連通開口部15及び転向開口部16が複数の列をなして互いに対称的に配置されている。連通開口部15は、直径dを有する円形穴17として形成されている。円形穴17の直径dは、円形穴17を分配プレート12.1にエッチングにより形成できるようにするために、分配プレート12.1の材料厚さとの比較で、1.0×材料厚さの最小値を有している。
【0040】
分配プレート12.1内に設けられる転向開口部16は、溝18によって形成されており、該溝はその溝幅bでもって分配プレート12.1を完全に貫通している。図示の実施の形態においては、溝幅bも、分配プレート12.1の材料厚さの1.0倍の大きさで形成されている。転向開口部16と連通開口部15との相対的な位置は、穴パターン19によって規定されている。この種の分配プレートを用いて、ノズルプレートにおけるノズル孔の列状の配置に基づき両方の溶融成分を同時に供給することができる。
【0041】
各ノズル孔に対する溶融成分のできるだけ正確な調量を達成するために、本発明に係る装置は、有利には図5に示す実施の形態に基づき形成されている。図5の実施の形態は、接続される供給プレート2及びノズルプレート4を備える分配ブロック3の部分断面図でのみ示してある。次に、図1及び図2に示した実施の形態と異なる点のみを説明する。
【0042】
本発明に係る装置の図5に示す実施の形態において、分配ブロック3は、全体で3つのプレート積層13.1〜13.3によって形成されており、該各プレート積層はそれぞれ3つの分配プレート12.1〜12.9を含んでいる。つまり、プレート積層13.1は、分配プレート12.1〜12.3によって形成され、プレート積層13.2は、分配プレート12.4〜12.6によって形成され、かつプレート積層13.3は、分配プレート12.7〜12.9によって形成されている。プレート積層13.1〜13.3において、分配プレートは、分配開口部14の同一の穴パターンを有している。各分配プレート12.1〜12.9は複数の連通開口部15及び転向開口部16を有しており、該連通開口部及び転向開口部は、予め規定されたパターンで互いに重ねて配置されている。上面及び下面におけるプレート積層13.1,13.3内に溶融通路のための同一の入口横断面及び出口横断面を得るために、プレート積層13.1における外側の分配プレート12.1,12.3の連通開口部15及び転向開口部16はその大きさを同一に形成されている。同一の穴パターンを有する中央の分配プレート12.2は、いくらか大きな連通開口部15及び転向開口部16を有しており、結果として、上方の分配プレート12.1と下方の分配プレート12.3との間の位置ずれによって、プレート積層13.1により形成される溶融通路の自由な流れ横断面が狭められることがないようになっている。
【0043】
プレート積層13.2,13.3は同様に形成されており、つまり、中央の分配プレート12.5,12.8はそれぞれ、隣接する外側の分配プレートに比べて大きな連通開口部15及び転向開口部16を有している。
【0044】
図4に示してある実施の形態において、分配プレート12.1〜12.9によって、流入溝10,11とノズル孔22との間に2つの溶融通路が形成されている。このような構成により、各溶融成分は個別のノズル通路を介してノズルプレートのノズル孔22に供給されるようになっている。
【0045】
分配プレート12.1〜12.9の配置は有利には、溶融通路が流入溝10,11とノズル孔22との間でできるだけ小さい圧力差しか発生させないように選ばれている。これにより、溶融成分は、60バール以下の圧力差若しくは60バールよりも小さい圧力差で分配ブロック3を通して導かれるようになっており、結果として、フィラメントの押し出しのための高い押し出しエネルギーが維持されている。溶融成分における120バール以下の圧力差若しくは120バールよりも小さい圧力差も、繊維(フィラメント)を、一方の側部と他方の側部とから成るパターンの繊維横断面若しくはコアと周壁とから成るパターンの繊維横断面で押し出すためにまだ可能である。
【0046】
図6.1〜図6.4には、図1、図3及び図5に基づく実施の形態の分配ブロック内に用いられる分配プレートの穴パターンの各例を示してある。図6.1〜図6.4に描かれている穴パターンは、ノズルプレートのノズル孔と関連して示してあり、ノズル孔の入口区分23は、各穴パターンに対応して配置され鎖線で描かれている。
【0047】
図6.1〜図6.4に示してある各穴パターンは、連通開口部と転向開口部との組合せによって構成されているものである。転向開口部は縦長の溝18若しくは長孔又はスリットによって形成されていて、各溶融流を実質的にプレート面の方向に導くようになっている。連通開口部は円形穴17として形成されていて、溶融流をプレート面に対して垂直な方向に導くようになっている。
【0048】
図6.1〜図6.4に示してある穴パターン19の実施の形態において、円形穴17及び溝18の位置及び数量は、分配をどのように行うかに対応して種々に規定されるものである。図6.1〜図6.3に示してある穴パターンは、溶融成分を供給側へかつ分配ブロックの中央の領域へ導くのに特に適している。図6.4に示してある穴パターンは、2つの溶融成分を1つのノズル孔内へ導入するのに特に適している。円形穴17及び溝18の図6.4に示してある配置によっては、押し出されるフィラメント内における溶融成分のセグメント状の分配が可能になっている。
【0049】
図6.1〜図6.4に示してある穴パターンは、1つの分配ブロック内に組み込まれてよいものである。このような構成において、例えば第1のプレート積層は、図6.1に示す穴パターンを有する複数の分配プレートによって形成される。このようなプレート積層は、供給プレートの下面に直接に配置されてよい。第1のプレート積層に第2のプレート積層が接続され、該第2のプレート積層は、図6.2に示す穴パターンを有している。溶融成分の引き続く分配は、図6.3若しくは図6.4に示す穴パターンを有する別の2つのプレート積層を介して行われてよい。
【0050】
分配プレートにおける穴パターンの適切な選択及び配置により、フィラメントの押し出しに際して通常のあらゆる繊維断面を得ることができるようになっている。さらに、例えば断面で見て芯と周壁とからなる構造の繊維や断面で見て所定の成分が断面内に点在する構造の繊維を製造することができる。
【0051】
複数の成分から成る多成分繊維の溶融紡糸のための本発明に係る装置の図1〜図5に示す実施形態は、ノズルから押し出された各繊維を冷却の後に糸にするか、或いは不織布にするかに係わらず、周知のあらゆるプロセスに有利に用いられるものである。この種の装置により、不織布製造に際して7メートルまでの範囲並びにそれを超える範囲での大きな作業幅若しくは加工幅が問題なく可能になっている。
【0052】
ノズルプレートの実施の形態で選ばれた形状は、例として挙げられたものである。原理的には、楕円形、円形若しくは他の形状のプレートやこれらの形状の組合せも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 接続プレート、 2 供給プレート、 3 分配ブロック、 4 ノズルプレート、 5 結合手段、 6.1,6.2 溶融入口、 7.1,7.2 流入室、 8,9 流入孔、 10,11 流入溝、 12.1〜12.9 分配プレート、 13.1〜13.3 プレート積層、 14 分配開口部、 15 連通開口部、 16 転向開口部、 17 円形穴、 22 ノズル孔、 23 入口区分、 24 細管路区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分繊維の溶融紡糸のための装置であって、個別に案内された溶融成分の導入のための少なくとも2つの溶融入口(6.1,6.2)、前記溶融成分の分配のための複数の供給通路(8,9,10,11)を有する供給プレート(2)、該供給プレート(2)に配設された分配ブロック(3)、並びに該分配ブロック(3)に隣接していて複数のノズル孔(22)を有するノズルプレート(4)を備えており、前記分配ブロック(3)は、互いに積層されかつ複数の分配開口部(14)の各穴パターン(19)を有する薄い複数の分配プレート(12.1,12.6)を含んでおり、該薄い分配プレート(12.1,12.6)は、一緒に複数の溶融通路を形成しており、該溶融通路は、前記供給プレート(2)の前記供給通路(10,11)と前記ノズルプレート(4)の前記ノズル孔(22)とをつないでいる形式のものにおいて、前記分配ブロック(3)内では、前記分配開口部(14)の同一の穴パターン(19)を有する複数の分配プレート(12.1,12.2)が、互いに直接に密接して積層されていることを特徴とする、多成分繊維の溶融紡糸のための装置。
【請求項2】
前記分配開口部(14)の前記同一の穴パターン(19)を有する前記積層された分配プレート(12.1,12.2)は、1つのプレート積層(13.1)を形成しており、かつ前記分配ブロック(3)は、前記分配開口部(14)の互いに異なる穴パターン(19)を有する複数の前記プレート積層(13.1,13.2)を含んでおり、該プレート積層(13.1,13.2)は互いに積層されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記分配プレート(12.1〜12.6)は、前記プレート積層(13.1)の1つにおいて前記分配開口部により形成された溶融通路が一様な大きさの流れ断面を有しているように、少なくとも1つのセンタリング手段(20)によって保持されている請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記プレート積層(13.1,13.2)のうちの1つのプレート積層の中央の領域に配置された分配プレート(12.2,12.5)は、該プレート積層(13.1,13.2)の外側の分配プレート(12.1,12.3,12.4,12.6)の前記分配開口部(14)に比べて断面の大きな分配開口部(14)を有している請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記分配ブロック(3)の前記分配プレート(12.1〜12.6)はそれぞれ少なくとも2種類の前記分配開口部(14)を有しており、第1の種類の前記分配開口部は、連通開口部(15)として形成されていて、溶融流をプレート面に対して垂直に導くようになっており、第2の種類の前記分配開口部は、転向開口部(16)として形成されていて、溶融流をプレート面内で導くようになっており、前記分配開口部(14)の前記穴パターン(19)は、前記分配プレート(12.1〜12.6)内における前記連通開口部(15)の位置及び前記転向開口部(16)の位置を規定している請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記分配ブロック(3)における、前記分配開口部(14)の互いに異なる穴パターン(19)を有する前記分配プレート(12.1,12.2)の配置は、溶融成分が個別に前記分配ブロック(3)の前記溶融通路を介して前記ノズルプレート(4)の前記ノズル孔(22)に供給されるように選ばれている請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記分配ブロック(3)における前記溶融通路は、前記供給プレート(2)と前記ノズルプレート(4)との間で同一の長さに形成されている請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記分配ブロック(3)内における前記分配プレート(12.1〜12.6)の配置及び配列は、前記溶融通路が前記供給通路(10,11)と前記ノズル孔(22)との間で、溶融成分における120バール以下の圧力差、有利には60バール以下の圧力差を有するように行われている請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記分配ブロック(3)における、前記ノズルプレート(4)の前に位置する最後の前記分配プレート(12.6,12.9)の穴パターン(19)は、前記各ノズル孔(22)により、コアと周壁とから成る横断面を有する繊維若しくは一方の側部と他方の側部とから成る横断面を有する繊維が押し出されるように構成されている請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記分配プレート(12.1〜12.6)は、1mmよりも小さい、有利には0.5mmよりも小さい材料厚さを有する金属から形成されており、該分配プレート(12.1〜12.6)における前記分配開口部(14)は、エッチングにより成形されるようになっている請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記分配プレート(12.1〜12.6)の金属と、前記供給プレート(2)及び前記ノズルプレート(4)の材料とは、該すべてのプレートがほぼ同一の熱膨張を有するように選ばれている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記分配プレート(12.1〜12.6)内における前記連通開口部(15)は、円形穴(17)によって形成されており、該円形穴は、該分配プレート(12.1〜12.6)の材料厚さの少なくとも1.0倍の直径を有している請求項5から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記分配プレート(12.1〜12.6)内における前記転向開口部(16)は、溝(18)によって形成されており、該溝は、該分配プレート(12.1〜12.6)の材料厚さの少なくとも1.0倍の溝幅を有している請求項5から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記供給プレート(2)、前記分配ブロック(3)の前記分配プレート(12.1〜12.6)及び前記ノズルプレート(4)は、互いにセルフシール式に保持されている請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6.1】
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【図6.2】
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【図6.3】
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【図6.4】
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【公表番号】特表2011−515592(P2011−515592A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550041(P2010−550041)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055649
【国際公開番号】WO2009/112082
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】