説明

多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料とその製造法およびその使用法

【課題】環境に優しい緩効性および制御放出性肥料とその製造法と農業における使用法を提供する。
【解決手段】下記一般式を持つ、多数の栄養素を含むポリマー肥料。


(式中、nは50〜200、mは0〜5の範囲にあり、MはK、NH、NHCONH、微量要素金属等からなる群より選択される。)本ポリマー肥料の制御された放出作用は土壌中で分解することを利用し、植物が吸収できる栄養素を緩効的に放出できるところにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料、特に、環境保全型の、多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性肥料に関する。本発明は更に、本肥料の製造法と農業における本肥料の使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術においては、窒素、リン、カリウムの3元素全てを含む肥料、例えば、カルバミド(尿素)とリン酸二水素カリウムとの組み合わせ、または尿素とリン酸カルシウムと硫酸カリウムとの混合物を得るには、複雑な混合法が用いられる。環境、特に水系(water bodies)への肥料の流出による汚染を抑えるため、緩効性(制御放出性)肥料の研究と応用が注目されるようになってきた。しかし現在使用できる緩効性および制御放出性肥料は、一般に被覆法を用いたもの、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂膜の層で覆った尿素であって、尿素−ホルムアルデヒド樹脂が分解するにつれて被膜が次第に損壊し、肥料がゆっくりと放出されるものである。国際公開第2003/082005号は、非常に良く分散した尿素−ホルムアルデヒドポリマー肥料緩効性放出剤の製造法を開示している。このポリマーは窒素肥料をゆっくりと放出することができ、炭酸カルシウム、プラスター、金属ケイ酸塩、タルカムパウダ、イオウ、活性炭、キレート化鉄、亜鉛、およびマンガンの混合物を造粒工程で加えたものである。しかしこの物質は、作物の生長に必要なリンとカリウムを物質分解後には供給することができない。米国特許出願公開第1981/0288456号は、尿素とホルムアルデヒドとアンモニアとの液状混合物を調製する工程と、混合物を加熱および酸性化してメチレン尿素の重合を開始する工程と、加熱してメチレン尿素の重合を終了する工程と、次に、得られた生成物を乾燥する工程とを含む、固体の尿素−ホルムアルデヒドポリマー緩効性肥料の製造法を開示しているが、この生成物は、作物の生長に必要なリンとカリウムを土壌中で分解した後には供給することができない。日本国特開平10−259083号公報は、肥料を生分解性ポリマーの管に入れた後、特定の間隔で管に穴を開け、肥料をゆっくりと土壌に放出するものである。日本国特開平10−259083号公報の製品を用いると、土壌に与える栄養素を管に詰める肥料の成分によって変えることができる。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/082005号
【特許文献2】米国特許出願公開第1981/0288456号
【特許文献3】日本国特開平10−259083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術と異なり、本発明は、窒素、リン、カリウムの主要3元素を物理的に混合したり化学的に結合させるのではなく、一つのポリマーを生成するもので、これら3元素それぞれの割合を、様々な作物や土壌の要求に合うよう特定の範囲に調節することができ、これにより肥料の有効利用度は格段に向上する。一方、本発明は、被覆による緩効性放出ではなく、土壌中でポリマーが徐々に生分解および加水分解することを利用して、植物が吸収できる栄養素を放出するものである。このように、本発明の肥料の遅く、制御された放出のメカニズムは、通常の緩効性肥料のそれとは全く異なる。本発明の緩効性および制御放出性肥料は、ポリマー肥料自体の分解と加水分解により、栄養素を遅くかつ制御して放出するものであるが、通常の緩効性(または制御放出性)肥料は、ポリマー被膜の働きによって放出を遅くするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、本発明の態様の一つは、緩効性および制御放出性ポリマー肥料の提示である。前記緩効性および制御放出性ポリマー肥料は、次の一般式を持つ化合物である。
【化1】

(I)
式中、nは50〜200の範囲にあり、mは0〜5の範囲にあり、各繰り返し単位において、Mは同じまたは異なるものであって、K、NH、NHCONH、等から成る群より独立して選ばれ、望ましくは、Mは更に、Fe、Cu、Zn、Mn、Mgなど、または作物に必要なその他の微量要素から成る群より選ばれる。
【0006】
本発明の緩効性および制御放出性ポリマー肥料の望ましい実施の形態において、この肥料は、緩効性および制御放出性ポリマー肥料の総重量を基にして、mが0で、全てのMがKである場合、27.9%のKOと、42%のPと、16.6%のNとを含み、mが3で、全てのMがKである場合、12%のKOと、18.2%のPと、28.7%のNとを含み、mが5で、全てのMがKである場合、8.2%のKOと、12.5%のPと、29.4%のNとを含み、このとき、K、P、およびNの量はそれぞれ、KO、P、およびNの量として計算する。
【0007】
更に、本発明の緩効性および制御放出性ポリマー肥料は、緩効性および制御放出性ポリマー肥料の総重量を基にして、mが0で、全てのMがNHである場合、48.4%のPと、28.6%のNとを含み、mが3で、全てのMがNHである場合、19.5%のPと、34.5%のNとを含み、このとき、K、P、およびNの量はそれぞれ、KO、P、およびNの量として計算する。
【0008】
本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料では、窒素、リン、およびカリウムの含量を、作物および土壌の要求に応じて調節することができる。栄養素の調節可能な範囲は、窒素が16〜35重量%、P(リン)が13〜48重量%、KO(カリウム)が6〜27重量%、各微量要素が0.1〜1重量%であり、このとき、K、P、およびNの含量はそれぞれ、KO、P、およびNの含量として計算する。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、一般式(I)を持つポリマー肥料の製造法の提示であって、この方法は次の工程を含む。
(1)反応物とリン酸とを反応器に加えて加熱し、二価リン酸塩を生成する工程。前記反応物は、塩化カリウム、炭酸カリウム、または水酸化カリウムなどである。反応物は更に、Fe、Cu、Zn、Mn、Mg、または必要なその他の金属元素の酸化物または水酸化物から成る群より選ぶことができる。
(2)もう一つの反応器に尿素(カルバミド)とホルムアルデヒドとを加えてpH値を調整し、適当な温度でメチレン尿素オリゴマーを生成する工程。
(3)もう一つの反応器に、工程(1)で得られた二価リン酸塩と、工程(2)の生成物、または必要な量の窒素となるに足る量の尿素(カルバミド)とを加え、加熱して重縮合反応を開始し、反応熱の作用により重縮合反応を継続させる工程。
(4)溶融した重縮合生成物を造粒する工程。
【0010】
本発明のもう一つの態様は更に、一般式(I)を持つ緩効性および制御放出性ポリマー肥料の作物への使用法に関するものであって、前記肥料は単独で、または堆肥と組み合わせて施用する。作物は望ましくは実を結ぶ作物であり、より望ましくは作物はトウモロコシおよびジャガイモである。更に、本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料は、微量要素を含む特殊な肥料としても使用できる。
【0011】
本発明の緩効性および制御放出性肥料は、窒素、リン、カリウムの主要3元素を一つのポリマーに組み込んだポリマー化合物である。施肥後、土壌中の水と微生物の作用によって肥料は次第に分解および加水分解され、植物が吸収できる栄養素を生じる。分解および加水分解過程は次第に加速されるため、肥料からの栄養素の放出は、初期では遅く、中期で早く、後期では再び遅くなるが、これは植物の栄養要求サイクルにちょうど合致するため、肥料の利用度が高い。更に、主要3元素の窒素、リン、カリウム以外に本発明の緩効性および制御放出性肥料に含まれる元素は、炭素、水素、および酸素である。この肥料は土壌に有害な元素を全く含まず、その水溶液は中性、無害、無臭、非腐食性であるため、この肥料は環境に優しく、環境を汚染せず、また土壌の酸性化やアルカリ化を引き起こさない環境保全型の肥料である。
【0012】
先行技術と比べて、本発明は例えば次のような注目すべき長所を持つ。
(1)窒素、リン、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどの栄養素全てを一つのポリマー中に含むため、より使用に便利な肥料である。
(2)肥料の合計養分含量(N%+P%+KO%)が50〜86重量%であるため、本肥料の施用量は同じ生産増に必要な現在入手可能な肥料の量の僅か1/3〜1/2である。
(3)必要に応じて肥料の持続時間を調整できる。
(4)肥料の水溶液のpH値が6.5〜7.5であって、土壌や植物に対して害を与えない。
(5)分解および加水分解後、肥料から放出される栄養素は全て植物によって完全に吸収され、残分がないため、環境に優しい緩効性および制御放出性肥料である。
(6)原材料の一つである塩化カリウムは資源が豊富でコストが安い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施例における全ての部および百分率は重量で示す。
【実施例】
【0014】
1.本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料の調製
塩化カリウムとリン酸の供給重量をカリウムの要求量に従って算出し、次に、撹拌機と塩化水素吸収装置とを備えた耐酸反応器にこれらの原材料を入れ、塩化水素が発生しなくなるまで加熱して反応溶液Iを得た。後に使用するため、反応溶液Iを約60℃まで冷やした。
【0015】
尿素(カルバミド)とホルムアルデヒドの供給重量を窒素の要求量に従って算出し、次に、撹拌機を備えたもう一つのステンレススチール製反応器にこれらの原材料を入れた。pH値を8〜9に調整し、系を80℃に加熱後、1時間反応させて反応溶液IIを得た。後に使用するため、反応溶液IIを約60℃まで冷やした。
【0016】
強力な撹拌機を備えた反応器に溶液Iと溶液IIとを移した。これらはすぐに反応して軟らかい固体の塊となった。この塊を直接造粒器に送って肥料をペレット化し、肥料粒を乾燥して、本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料を得た。
【0017】
鉄、銅、マンガン、亜鉛などの微量要素の添加法は、初めにこれらの微量要素を二価リン酸塩に変え、後にこれらを重縮合反応に加えるものである。
【0018】
<実施例1>
[m=5で、全てのMがKである特定の肥料の調製]
2.3kgの85%工業用リン酸を10リットルのエナメル製反応器に入れ、次に、1.05kgの塩化カリウムを加えた。塩化水素が放出されなくなるまで系を加熱した。2kgの水を加え、続いて0.34kgの水酸化カリウムを加えた。後に使用するため、系を80℃に加熱した。
【0019】
8.1kgの37%工業用ホルムアルデヒドを、撹拌機を備えた30リットルのステンレススチール製反応器に加えた。pH値を8〜9に調整し、系を60℃に加熱した。次に、バッチに7.2kgの尿素(カルバミド)を加えた。反応温度を80℃に上げて0.5時間反応させ、後に使用するための生成物を得た。
【0020】
前述の2つの反応溶液を熱いうちに混ぜ合わせ、この混合物を造粒器でペレット化して乾燥させた。11.4kgの生成物が得られた。生成物中のNの含量は29.4%、Pは12.5%、KOは8.2%である。
【0021】
<実施例2>
[m=3で、全てのMがKである特定の肥料の調製]
実施例1と同じ方法を用いて、リン酸二水素カリウム溶液を調製した。4.9kgの37%工業用ホルムアルデヒドを、撹拌機を備えた30リットルのステンレススチール製反応器に加えた。pH値を8〜9に調整し、系を60℃に加熱後、バッチに4.8kgの尿素を加えた。温度を80℃に上げて0.5時間反応させ、後に使用するための生成物を得た。
【0022】
前述の2つの反応溶液を熱いうちに混ぜ合わせ、この混合物を造粒器でペレット化して乾燥させた。7.8kgの生成物が得られた。生成物中のNの含量は28.7%、Pは18.2%、KOは12%である。
【0023】
<実施例3>
[m=0で、全てのMがKである特定の肥料の調製]
撹拌機と塩化水素吸収装置とを備えた30リットルのエナメル製反応器に、6.9kgの85%工業用リン酸を加え、3.15kgの塩化カリウムを加えた。塩化水素が放出されなくなるまで系を加熱した。3kgの水を加えた後、1kgの水酸化カリウムを加えた。反応系が熱いうちに、長さ/直径比の大きい反応器に系を移した。次に、3.6kgの尿素(カルバミド)を加えた。反応系を約60℃まで熱すると、澄んで透明な溶液となった。適当な時間加熱し続けると、重縮合反応は発熱反応であるため、系は沸騰する。反応系が粘稠となったらヒーターを外し、得られた生成物が半固体状となるまで放冷後、生成物を造粒器でペレット化して乾燥させた。10.1kgの生成物が得られた。この生成物中のNの含量は16.6%、Pは42.0%、KOは27.9%である。
【0024】
<実施例4>
[m=0で、全てのNがNHである特定の肥料の調製]
6.9kgの85%工業用リン酸を長さ/直径比の大きいステンレススチール製反応器に加えた後、撹拌しながらバッチに4.8kgの重炭酸アンモニウムを加えた。COが発生しなくなるまで系を60℃で加熱した後、3.6kgの尿素(カルバミド)を加えた。反応溶液が沸騰状態になるまで温度を上げた。反応溶液が粘稠となったらヒーターを外し、反応溶液が半固体状になるまで放冷後、生成物を造粒器でペレット化して乾燥させた。8.8kgの生成物が得られた。この生成物中のNの含量は28.6%、Pは48.4%である。
【0025】
<実施例5>
[m=3で、全てのMがNHである特定の肥料の調製]
4.6kgの85%工業用リン酸を10リットルのステンレススチール製反応器に加え、撹拌しながらバッチに3.2kgの工業用重炭酸アンモニウムを加えた。COが発生しなくなるまで系を60℃で加熱し、後に使用するためこのまま保持した。
【0026】
9.8kgの37%工業用ホルムアルデヒドを、撹拌機を備えたステンレススチール製反応器に加えた。pH値を8〜9に調整し、温度を60℃に上げた。バッチに9.6kgの尿素(カルバミド)を加えた後、温度を80℃に上げて0.5時間反応させ、後に使用するための生成物を得た。
【0027】
前述の2つの反応溶液を熱いうちに混ぜ合わせた後、この混合物を造粒器でペレット化して乾燥させた。14.6kgの生成物が得られた。この生成物中のNの含量は34.5%、Pは19.5%である。
【0028】
<実施例6>
[トウモロコシ用肥料の調製]
3.5kgの85%工業用リン酸を40リットルのエナメル製反応器に加えた後、1.6kgの塩化カリウムを加えた。塩化水素が放出されなくなるまで系を加熱した。次に、0.7kgの重炭酸アンモニウムをバッチに加え、COが発生しなくなるまで反応を続けた。5.4kgの尿素(カルバミド)を加え、以降の操作を実施例4に従って行った。6.8kgの生成物が得られた。この生成物中のNの含量は35.7%、Pは31.3%、KOは6.1%である。
【0029】
<実施例7>
[ジャガイモ用肥料の調製]
5.8kgの85%工業用リン酸を40リットルのエナメル製反応器に加えた後、2.6kgの塩化カリウムを加えた。塩化水素が放出されなくなるまで系を加熱した。次に、8kgの尿素(カルバミド)を加え、以降の操作を実施例4に従って行った。12kgの生成物が得られた。この生成物中のNの含量は28%、Pは29.6%、KOは9.8%である。
【0030】
<実施例8>
[微量要素を含む特殊な肥料の調製]
4.6kgの85%工業用リン酸を40リットルのステンレススチール製反応器に加えた後、68gの酸化マグネシウムと40gの酸化亜鉛とを加えた。これらが溶解したら、新たに調製した50gの水酸化銅と50gの水酸化鉄(ironic hydroxide)とを加えた。これら2成分の溶解後、2.7kgの炭酸カリウムを加えた。COが発生しなくなるまで系を加熱した。3.6kgの尿素(カルバミド)を加え、以降の操作を実施例4に従って行った。6.4kgの僅かに緑色の生成物が得られた。この生成物中のNの含量は16.0%、Pは42.0%、KOは27.0%であり、微量要素のマグネシウム、亜鉛、銅、および鉄はそれぞれ、0.64%、0.5%、0.5%、および0.48%である。
【0031】
2.本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料の肥効試験
(1)トウモロコシでの圃場試験
1)材料および方法
試験用土壌:試験用土壌として、山西農業大学(Shanxi Agriculture University)の試験用播種苗圃のブランク地区(blank area)内の空土壌(empty soil)を選定した。ここは平坦で輸送および灌水に便利な条件を備え、管理および観察が容易であった。試験用土壌は中程度の地味(soil)と中程度の地力(fertility)を備えた炭酸塩質(carbonate type)の褐色土(brown earth)であった。その対象面積は約1,000hmであった。前作物はトウモロコシであり、耕地1ヘクタール当たり22,500kgの牛厩肥と1,200kgのトウモロコシ用SV肥料を施用し、生産量は約9,900kg/hmであった。
【0032】
供試肥料:トウモロコシ用の、本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料
試験作物:トウモロコシ(Jin Dan 42)
試験スキームおよび方法:試験は4種類の配合で行った。
(I)配合1:供試肥料;0.03kg/m(1.5kg/区画)
(II)配合2:供試肥料+堆肥(牛厩肥);供試肥料0.03kg/m(1.5kg/区画)+堆肥2.25kg/m(112.5kg/区画)
(III)配合3:通常の施肥;トウモロコシ用SV肥料0.12kg/m(6kg/区画)+堆肥2.25kg/m(112.5kg/区画)
(IV)配合4:対照;施肥せず
4種類の配合それぞれを4回繰り返した。
【0033】
部分対照(partial control)法により試験圃場を4つの区域に分けた(4連)後、各区域を10m×5m(区画面積50m)の4つの区画に分割した(4種類の配合)。区域毎に区画をランダムに配置した。この試験での配置は以下のとおりであった。
【表1】

【0034】
播種前に、5点サンプリング法で圃場から土壌試料を採取し、実験室で試験および分析した。
【0035】
耕耘および播種は2004年5月20日に行った。所定量の肥料を施した後、耕起と播種を行い、木製の標識で境界線と区画を標した。種子の量は90kg/hmで、播種後に除草剤“ETHOXALAMINE”を施した。作物に、区画に応じた灌水法で6月24日と7月30日の2回灌水し、7月26日に土寄せした。除草剤を施した圃場に雑草はほとんど無く、2004年中に災害はなかった。10月13日に区画毎にトウモロコシを収穫し、その場で脱穀した。各区画の生産量を計量した。結果を表に示した。
【0036】
2)結果および解析
(I)試験圃場の土壌試料の実験室における試験および分析の結果を表2に示した。
【表2】

【0037】
(II)各区画の生産量の試験結果を表3に示した。
【表3】

【0038】
(III)トウモロコシでの試験におけるヘクタール当たり収量を表4に示した。
【表4】

【0039】
(IV)4種類の配合はトウモロコシの生物学的性質にあまり影響を与えなかった。地表より上の苗部の発芽時期、色、および生長、雄穂の出穂時期、一本当たりの雌穂の数、種子の配列と色などの様相に明らかな差は見られなかった。このように、4種類の配合はトウモロコシの生物学的性質にあまり影響を与えなかった。
【0040】
(V)4種類の配合はトウモロコシの収量と生産量に著しい効果を与えた。表3および表4に示すように、肥料を与えた区画と与えなかった区画との収量の差は大きかった。トウモロコシの収量の増加は、供試肥料を用いた区画で16.56%、供試肥料+堆肥を施した区画で56.51%、通常の施肥を用いた区画で49.11%であった。全てにおいて生産量の増大効果は非常に明白であった。
【0041】
(VI)投入−生産比を見る場合、施した肥料が異なる以外、他の投入部材は同じであるため、配合2と配合3のみを比較した。
【0042】
配合2では、1ヘクタール当たり300kgの供試肥料を施用し、そのコストは5元×300=1,500元(肥料のコストが5元/kgであるという事実に基づいて算出)である。22,500kgの堆肥を施し、そのコストは0.05元×22,500=1,125元(堆肥のコストが0.05元/kgであるという事実に基づいて算出)であり、合計は2,625元である。生産物の価格は1元×11,820=11,820元(この年のトウモロコシ価格1元/kgより算出)である。投入−生産比は1:4.50である。
【0043】
配合3では、1,200kgのトウモロコシ用SV肥料を施用し、そのコストは1,400×1.2=1,680元であり、堆肥のコストは1,125元であるため、合計は2,805元である。生産物の価格は1元×10,100=10,100元である。投入−産出比は1:3.54である。
【0044】
(VII)表3のデータの統計分析
【表5】

【0045】
表中のデータを統計的に計算し、分散分析を行った。その結果を表6に示した。
【表6】

【0046】
配合間(inter-arrangement)では、F=187.09>>F0.01=6.69であるため、配合間の差は非常に明白であったが、繰り返し間(inter-repeat)では、F=0.13<F0.05=3.86であって、繰り返し間の差は明らかではなかった。
【0047】
4種類の配合の差の有意性をLSR法で比較し、その結果を表7および表8に示した(SE=1.160)。
【表7】

【表8】

【0048】
表8に、4種類の配合間の差が全て明白であり、トウモロコシ用の本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料に堆肥を加えた混合物の肥効は、他の配合より明らかに高いことが示された。
【0049】
(2)ジャガイモでの圃場試験
1)材料および方法
試験用土壌:試験用土壌として、Xinzhou県Wuzhai地方Lijiaping郡Qingyanglin村北部の土壌を選定した。この土壌は主にジャガイモを栽培し、平坦で、輸送、管理、および観察に便利であった。試験用土壌は中程度の地味と中程度の地力を備えた褐色の山土(mountain brown earth)であった。その対象面積は約100hmであった。前作物はジャガイモであり、耕地1ヘクタール当たり15,000kgの堆肥と1,125kgの尿素(カルバミド)と375kgの過リン酸カルシウムとを施用し、生産量は約14,250kg/hmであった。
【0050】
供試肥料:ジャガイモ用の、本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料
試験作物:ジャガイモ(DiXi-rui)
【0051】
試験スキームおよび方法:試験は4種類の配合で行った。
(I)配合1’:供試肥料;0.03kg/m(1.5kg/区画)
(II)配合2’:供試肥料+堆肥;供試肥料0.03kg/m(1.5kg/区画)+堆肥1.58kg/m(79kg/区画)
(III)配合3’:通常の施肥;尿素(カルバミド)0.11kg/m(5.5kg/区画)+過リン酸カルシウム0.04kg/m(2kg/区画)+堆肥1.58kg/m(79kg/区画)
(IV)配合4’:対照;施肥せず
4種類の配合それぞれを4回繰り返した。
【0052】
部分対照法により試験圃場を4つの区域に分けた(4連)後、各区域を10m×5m(区画面積50m)の4つの区画に分割した(4種類の配合)。区域毎に区画をランダムに配置した。この試験での配置は以下のとおりであった。
【表9】

【0053】
播種前に、5点サンプリング法で圃場から土壌試料を採取し、実験室で試験および分析した。
【0054】
耕耘および播種は2004年5月16日に行った。所定量の肥料を施した後、耕起と播種を行い、木製の標識で境界線および区画を標した。種芋の量は840kg/hmであった。耕地は乾燥地で灌水はできなかった。6月25日と7月22日の2回、圃場を除草し、8月9日に作物に土寄せした。2004年中に災害はなかった。2004年10月10日に区画毎にジャガイモを収穫し、区画毎に計量した。結果を表に示した。
【0055】
2)結果および解析
(I)試験圃場の土壌試料の実験室における試験および分析の結果を表10に示した。
【表10】

【0056】
(II)各区画の収穫量の試験結果を表11に示した。
【表11】

【0057】
(III)ジャガイモでの試験におけるヘクタール当たり収量を表12に示した。
【表12】

【0058】
(IV)4種類の配合はジャガイモの生物学的性質にあまり影響を与えなかった。地表より上の苗部の発芽時期、色、および生長、または開花時期に明らかな差は見られず、地下のジャガイモ塊茎の色、表面の滑らかさ、形にも明らかな差はなかった。このように、4種類の配合はジャガイモの生物学的性質にあまり影響を与えなかった。
【0059】
(V)4種類の配合はジャガイモの収量と生産量に著しい効果を与えた。表11および表12に示すように、肥料を与えた区画と与えなかった区画との収量の差は大きかった。ジャガイモの収量の増加は、供試肥料を用いた区画で15.89%、供試肥料+堆肥を施した区画で53.29%、通常の肥料を用いた区画で46.71%であった。全てにおいて収量の増大効果は非常に明白であった。
【0060】
(VI)投入−生産比を見る場合、施した肥料が異なる以外、他の投入部材は同じであるため、配合2’と配合3’のみを比較した。
【0061】
配合2’では、1ヘクタール当たり300kgの供試肥料を施用し、そのコストは5元×300=1,500元(肥料のコストが5元/kgであるという事実に基づいて算出)である。堆肥のコストは、0.05元×15,800=790元(堆肥のコストが0.05元/kgであるという事実に基づいて算出)であり、合計は2,290元である。生産物の価格は0.6元×17,000=10,200元(この年のジャガイモ価格0.6元/kgより算出)である。投入−生産比は1:4.45である。
【0062】
配合3’では、1ヘクタール当たり1,100kgの尿素を施用し、そのコストは1,500×1.1=1,650元であり、1ヘクタール当たりのリン肥料の量は400kgであって、そのコストは600×0.4=240元であり、堆肥のコストは790元であり、以上の合計は2,680元である。生産物の価格は0.6元×14,900=8,940元である。投入−産出比は1:3.34である。
【0063】
(VII)表13のデータの統計分析
【表13】

【0064】
表中のデータを統計的に計算し、その結果について分散分析を行った。結果を表14に示した。
【表14】

【0065】
配合間では、F=794.86>>F0.01=6.69であるため、配合間の差は非常に明白であったが、繰り返し間では、F=2.41<F0.05=3.86であって、繰り返し間の差は明らかではなかった。
【0066】
4種類の配合の差の有意性をLSR法で比較し、その結果を表15および表16に示した(SE=0.766)。
【表15】

【表16】

【0067】
表16に、4種類の配合間の差が全て明白であり、ジャガイモ用の本発明の多数の栄養素を含む緩効性および制御放出性ポリマー肥料に堆肥を加えた混合物の肥効は、他の配合より明らかに高いことが示された。更に、それぞれ施用した肥料の効果は、肥料を施用しなかった対照に比べ明らかであった。
【0068】
本発明の望ましい実施の形態を本明細書にいくつか開示したが、当業者には、これらの実施の形態は制限するものではなく、本発明に関する改良となるという理由で、本発明がいずれの特定の実施例または実施の形態によっても制限されるものではないことは理解されよう。当業者が、本発明の原理に基づく他の実施の形態を知り得ることは確実である。故に、本発明の範囲は、請求項の目的、意図、および範囲に含まれるとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)の一般式を持ち、
【化1】

(I)
式中、nは50〜200の範囲にあり、mは0〜5の範囲にあり、各繰り返し単位において、Mは同じまたは異なるものであって、K、NH、NHCONH、等から成る群より独立して選ばれることを特徴とする、緩効性および制御放出性ポリマー肥料。
【請求項2】
請求項1に記載の緩効性および制御放出性ポリマー肥料であって、
前記肥料は、前記緩効性および制御放出性ポリマー肥料の総重量を基にして、
mが0で、全てのMがKである場合、27.9%のKOと、42%のPと、16.6%のNとを含み、
mが3で、全てのMがKである場合、12%のKOと、18.2%のPと、28.7%のNとを含み、
mが5で、全てのMがKである場合、8.2%のKOと、12.5%のPと、29.4%のNとを含み、
このとき、K、P、およびNの量はそれぞれ、KO、P、およびNの量として計算する、
ことを特徴とする緩効性および制御放出性ポリマー肥料。
【請求項3】
請求項1に記載の緩効性および制御放出性ポリマー肥料であって、
前記肥料は、前記緩効性および制御放出性ポリマー肥料の総重量を基にして、
mが0で、全てのMがNHである場合、48.4%のPと、28.6%のNとを含み、
mが3で、全てのMがNHである場合、19.5%のPと、34.5%のNとを含み、
このとき、K、P、およびNの量はそれぞれ、KO、P、およびNの量として計算する、
ことを特徴とする緩効性および制御放出性ポリマー肥料。
【請求項4】
請求項1に記載の緩効性および制御放出性ポリマー肥料であって、
栄養素K、P、およびNの含量はそれぞれ、作物および土壌の要求に応じて製造工程において調節され、
栄養素の含量の調節可能な範囲はそれぞれ、窒素が16〜35重量%、リンが13〜48重量%、カリウムが6〜27重量%である、
ことを特徴とする緩効性および制御放出性ポリマー肥料。
【請求項5】
請求項1に記載の緩効性および制御放出性ポリマー肥料であって、
Mは更に、Fe、Cu、Zn、Mn、Mg、および作物および土壌に必要なその他の微量要素から成る群より選ばれ、
各微量要素の含量は0.1〜1重量%の範囲にある、
ことを特徴とする緩効性および制御放出性ポリマー肥料。
【請求項6】
請求項1に記載の緩効性および制御放出性ポリマー肥料の製造法であって、
前記製造法は、
(1)反応物とリン酸とを反応器に加えて加熱し、二価リン酸塩を生成する工程であって、前記反応物は、カリウムの塩化物、水酸化物、または炭酸塩であり、
(2)もう一つの反応器にカルバミド(尿素)とホルムアルデヒドとを加えてpH値を調整し、適当な温度でメチレン尿素(methylene urea)オリゴマーを生成する工程と、
(3)もう一つの反応器に、工程(1)で得られた二価リン酸塩と、工程(2)の生成物、または十分な量の窒素となるに足る量の尿素とを加え、加熱して重縮合反応を開始し、反応熱の作用により重縮合反応を継続させる工程と、
(4)溶融した重縮合生成物を造粒する工程と、
を含むことを特徴とする緩効性および制御放出性ポリマー肥料の製造法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造法であって、前記反応物は更に、Fe、Cu、Zn、Mn、Mg、および必要なその他の金属元素の酸化物または水酸化物から成る群より選ばれることを特徴とする製造法。
【請求項8】
請求項1に記載の緩効性および制御放出性ポリマー肥料の使用法であって、前記肥料は単独で、または堆肥と組み合わせて施用することを特徴とする使用法。

【公開番号】特開2006−290735(P2006−290735A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−105864(P2006−105864)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(506120286)
【Fターム(参考)】